JP2006061953A - 溶融亜鉛めっき鋼板とその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】塗装後の鮮映性に優れた溶融亜鉛めっき鋼板を提供する。
【解決手段】調質圧延を施すことで、その表面ろ波うねり曲線のカットオフ値を0.8mm とした場合におけるろ波中心線うねり高さ(Wca) およびろ波中心線うねり間隔(Wc −sm) 、調質圧延加工を受けていない部分の面積率 (M) 、粗さ曲線のカットオフ値を0.8mm とした場合における粗さ曲線の平均線方向の長さ25.4mmあたりの凸部ピーク数(ppi)および中心線粗さ平均間隔(Rsm) がそれぞれ下記の条件を満足している。
Wca ≦ 0.5μm ppi≧200
Wc−sm≦1000μm Rsm≦80μm
M≦60%
ここで、Mは、S0を観察視野の面積、S1をそのうちの調質圧延加工を受けた部分の面積とすると、下記式により求められる値であり、またppi は粗さ曲線の中心線からの高さが0.5 μm 以上のピークの数とする。
M={(S0 −S1) /S0}×100
【選択図】図1
【解決手段】調質圧延を施すことで、その表面ろ波うねり曲線のカットオフ値を0.8mm とした場合におけるろ波中心線うねり高さ(Wca) およびろ波中心線うねり間隔(Wc −sm) 、調質圧延加工を受けていない部分の面積率 (M) 、粗さ曲線のカットオフ値を0.8mm とした場合における粗さ曲線の平均線方向の長さ25.4mmあたりの凸部ピーク数(ppi)および中心線粗さ平均間隔(Rsm) がそれぞれ下記の条件を満足している。
Wca ≦ 0.5μm ppi≧200
Wc−sm≦1000μm Rsm≦80μm
M≦60%
ここで、Mは、S0を観察視野の面積、S1をそのうちの調質圧延加工を受けた部分の面積とすると、下記式により求められる値であり、またppi は粗さ曲線の中心線からの高さが0.5 μm 以上のピークの数とする。
M={(S0 −S1) /S0}×100
【選択図】図1
Description
本発明は、自動車、家電および建材等の外板として用いられる、塗装後の鮮映性に優れた溶融亜鉛めっき鋼板とその製造方法に関する。
一般に、溶融亜鉛めっき鋼板は、めっき直後に合金化処理を施した合金化溶融亜鉛めっき鋼板 (以下単に「GA鋼板」という) と合金化処理を施さない溶融亜鉛めっき鋼板 (以下単に「GI鋼板」という) とに大別されるが、本明細書においては、「溶融亜鉛めっき鋼板」と云う場合には、後者の「GI鋼板」を云う。
ここに、自動車用鋼板を例にとり本発明を説明する。
GA鋼板は、溶接性や成形性が優れていることから自動車用鋼板として従来から広く用いられてきた。一方、最近は鋼板の耐食性向上の要求がつよくなってきたことから、厚目付け(めっき付着量が多いこと)が容易にでき、かつ製造コストの低いGI鋼板を自動車用鋼板として使用することが検討されている。
GA鋼板は、溶接性や成形性が優れていることから自動車用鋼板として従来から広く用いられてきた。一方、最近は鋼板の耐食性向上の要求がつよくなってきたことから、厚目付け(めっき付着量が多いこと)が容易にでき、かつ製造コストの低いGI鋼板を自動車用鋼板として使用することが検討されている。
めっき鋼板が自動車用として用いられる場合、めっき鋼板は自動車の部品の形状にプレス成形された後に塗装されるが、一般に、塗装後の鋼板の鮮映性はGI鋼板を用いた場合の方が、GA鋼板を用いた場合よりも劣る。
ここに、塗装後の鮮映性も結局は目視で判断する鋼板の外観であり、従来にあってもそのような外観性に関しては、外観性に優れた溶融亜鉛めっき鋼板として、いくつか提案されていることから、そのような外観性と鮮映性との特性の違いをはっきりさせておく。
特許文献1には、JIS に規定の十点平均粗さ(Rz)が1〜5μm で、かつ中心線平均粗さ(Ra)が0.1 〜1.5 μm 未満である冷延鋼板に溶融亜鉛めっきを施したGI鋼板および必要により合金化処理したGA鋼板とそれらの製造方法が開示されている。
特許文献2および特許文献3には、素地鋼板である冷延鋼板の集合組織を規定したGI鋼板またはGA鋼板が開示されている。
しかしながら、引用文献1ないし3においては、「めっき皮膜が外観性に優れた」ということは、目視観察でめっき皮膜それ自体に白斑点状の欠陥や筋状のムラが見られるか否かで判断する特性であり、これは塗装後の鮮映性とは直接の関連はなく、それをもって塗装後の鮮映性を推測することもできない。
しかしながら、引用文献1ないし3においては、「めっき皮膜が外観性に優れた」ということは、目視観察でめっき皮膜それ自体に白斑点状の欠陥や筋状のムラが見られるか否かで判断する特性であり、これは塗装後の鮮映性とは直接の関連はなく、それをもって塗装後の鮮映性を推測することもできない。
ここに、鮮映性とは、塗装表面に物体を映したときの像の鮮明さ、また像の歪みの度合いを表す特性である。具体的には、例えば後述する実施例で述べる鮮映性評価装置によるNSIC値をもって評価される特性である。
特許文献4には、溶融亜鉛めっき皮膜中のFe、Pb、SbおよびAl含有量を規定し、さらに平均線中心粗さをRaを1.0 μm 以上、粗さ曲線の平均線方向の長さ1インチあたりの山の数ppi を80〜250 と規定しためっき密着性および連続スポット溶接性に優れた溶融亜鉛めっき鋼板とその製造方法が開示されている。
特許文献4では、めっき皮膜のRaやppi をもって溶融亜鉛めっき鋼板の表面性状を規定しているが、そのときのめっき皮膜に要求される特性は、めっき密着性、プレス成形性、そしてスポット溶接性であって、塗装後鮮映性については何一つ関連しない。段落0020において「美麗な外観」が得られるとしているが、その内容は実施例に示すように、「スパングル模様が判別できないことを意味しているにすぎない。明らかにこれは塗装後の鮮映性には直接の関連は見られない。つまり、めっき皮膜のRaやppi と塗装後の鮮映性との関連については何一つ明らかにすることはない。
特許文献5には、調質圧延後の鋼板表面の性状を、ろ波うねり曲線のカットオフ値800 μm の中心線うねり高さWca を0.65μm 以下、Wca ×PCが6以下(PC:表面のろ波うねり曲線のカットオフ値800 μm で高さが1.0 μm 以上の山の1インチ当たりの数)に規定した鮮映性鋼板が開示されている。
特許文献6には、調質圧延後の鋼板の表面性状を、ろ波うねり曲線のカットオフ値800 μm の中心線うねり高さWca が0.65以下、ろ波うねり曲線の高さ1.0 μm 以上の山の1インチ当たりの数PC1を3以下、同じく深さ1.0 μm 以上の谷の1インチ当たりの数PC2を3以下に規定した、塗装後の鮮映性に優れた鋼板が開示されている。
しかしながら、特許文献5および6はいずれもGA鋼板や電気めっき鋼板に関するものであり、コスト高は免れず、また、GI鋼板についても同様の指標によって鮮映性を評価できるか否か明らかではなく、さらには、GI鋼板の場合にいかにして鮮映性を改善するかについて何一つ示唆することはない。
本発明の課題は、塗装後の鮮映性に優れた溶融亜鉛めっき鋼板およびその製造方法を提供することにある。
本発明者は、GI鋼板について塗装後の鮮映性を改善するため鮮映性に悪影響をおよぼしている要因を究明し、種々実験検討した結果、以下の知見を得るに至った。
a)溶融亜鉛めっき後の調質圧延は、塗装後の鮮映性に大きな影響を及ぼしており、GI鋼板にGA鋼板の調質圧延と同じ条件で調質圧延を施しても、良好な鮮映性を安定して得ることはできない。換言すれば、前述の引用文献5および6の指標によってGI鋼板の鮮映性を評価することはできない。GI鋼板独自の指標をもって評価する必要がある。
a)溶融亜鉛めっき後の調質圧延は、塗装後の鮮映性に大きな影響を及ぼしており、GI鋼板にGA鋼板の調質圧延と同じ条件で調質圧延を施しても、良好な鮮映性を安定して得ることはできない。換言すれば、前述の引用文献5および6の指標によってGI鋼板の鮮映性を評価することはできない。GI鋼板独自の指標をもって評価する必要がある。
b)それはGA鋼板とGI鋼板とではめっき皮膜の表面状態が異なるためである。すなわち、GI鋼板のめっき皮膜表面では、めっきの凝固時に生じる結晶粒界や、不均一な凝固状態に起因する一般にタレ、サザナミと呼ばれる凹凸状の不規則形状が生じているのに対して、GA鋼板や電気めっき鋼板ではそのような不規則形状は生じないからである。
c)したがって、溶融亜鉛めっき鋼板の調質圧延は、めっきままの表面状態の影響をできるだけ小さくすることのできる条件で実施する必要がある。換言すれば、そのような溶融亜鉛めっき鋼板の不規則形状の影響を表す指標をできるだけ小さくする必要がある。
d)GA鋼板の場合、表面に存在するミクロ陥没とも呼ばれる微細凹凸が鮮映性を良くしているが、GI鋼板にはその様な凹凸は存在していない。
e)GI鋼板の場合にも、GA鋼板表面に存在する微細凹凸に似た凹凸をその表面に適度に設けることにより塗装後の鮮映性が改善される。したがって、これに関する限りは、調質圧延を工夫することにより、GI鋼板にもそのような微細凹凸を適度に設ける必要がある。
e)GI鋼板の場合にも、GA鋼板表面に存在する微細凹凸に似た凹凸をその表面に適度に設けることにより塗装後の鮮映性が改善される。したがって、これに関する限りは、調質圧延を工夫することにより、GI鋼板にもそのような微細凹凸を適度に設ける必要がある。
f)ここに、上記c)を実現するには、調質圧延時に放電ダル加工を施したロールを用いて、めっき表面にロールの表面性状ができるだけ転写されるような条件で、調質圧延を施すことが有効である。
g) 上記e)を実現するには、調質圧延に際して、放電加工でダル表面としたロールを用い、さらに、調質圧延油も使用して、できるだけ大荷重で調質圧延を施すことが有効である。
かくして、本発明は、調質圧延後の鋼板表面における(ア)ろ波中心線うねり高さ(Wca )、(イ)ろ波中心線うねり間隔(Wc−sm)(ウ)調質圧延加工を受けていない部分の面積率(M)および(エ)粗さ曲線の平均線方向の長さ25.4mmあたりの凸部ピーク数(ppi)および(オ)中心線粗さ平均間隔(Rsm)を所定の条件となるように調質圧延を施すときすぐれた塗装後鮮映性が得られること、および、これらの条件が相互に密接に関係しており、これらの所定の条件が1つでも外れると良好な塗装後鮮映性は得られないことを知り、完成された。
本発明はこのような知見に基づきなされたもので、その要旨は下記の通りである。
(1) めっき後に調質圧延を施した溶融亜鉛めっき鋼板であって、調質圧延後のめっき面が、下記の条件を満足していることを特徴とする塗装後の鮮映性に優れた溶融亜鉛めっき鋼板。
(1) めっき後に調質圧延を施した溶融亜鉛めっき鋼板であって、調質圧延後のめっき面が、下記の条件を満足していることを特徴とする塗装後の鮮映性に優れた溶融亜鉛めっき鋼板。
Wca ≦0.5 μm ppi≧200
Wc−sm≦1000μm Rsm≦80μm
M≦60%
ここで、
Wca : 表面ろ波うねり曲線のカットオフ値を0.8mm とした場合におけるろ波中心線 うねり高さ (μm)
Wc−sm : ろ波中心線うねり間隔 (μm)
M : 調質圧延加工を受けていない部分の面積率 (%)
ここで、Mは、S0を観察視野の面積、S1をそのうちの調質圧延加工を受けた 部分の面積とすると、下記式により求められる値である。
Wc−sm≦1000μm Rsm≦80μm
M≦60%
ここで、
Wca : 表面ろ波うねり曲線のカットオフ値を0.8mm とした場合におけるろ波中心線 うねり高さ (μm)
Wc−sm : ろ波中心線うねり間隔 (μm)
M : 調質圧延加工を受けていない部分の面積率 (%)
ここで、Mは、S0を観察視野の面積、S1をそのうちの調質圧延加工を受けた 部分の面積とすると、下記式により求められる値である。
M={(S0−S1)/S0}×100
ppi : 粗さ曲線のカットオフ値を0.8mm とした場合における粗さ曲線の平均線方向 の長さ25.4mmあたりの、粗さ曲線の中心線からの高さが0.5 μm 以上の凸部 ピーク数
Rsm : 中心線粗さ平均間隔 (μm)。
ppi : 粗さ曲線のカットオフ値を0.8mm とした場合における粗さ曲線の平均線方向 の長さ25.4mmあたりの、粗さ曲線の中心線からの高さが0.5 μm 以上の凸部 ピーク数
Rsm : 中心線粗さ平均間隔 (μm)。
(2) さらに、中心線平均粗さ(Ra)が下記の条件を満足する上記(1) 記載の溶融亜鉛めっき鋼板。
0.8 μm ≦Ra≦1.5 μm
(3) 溶融亜鉛めっき鋼板に調質圧延を施すに際し、表面に放電ダル加工を施したロールを用いると共に、有機または無機の調質圧延油を使用し、線荷重で1kN/mm 以上の圧延荷重で圧延を行うことを特徴とする上記(1) または(2) に記載の溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
0.8 μm ≦Ra≦1.5 μm
(3) 溶融亜鉛めっき鋼板に調質圧延を施すに際し、表面に放電ダル加工を施したロールを用いると共に、有機または無機の調質圧延油を使用し、線荷重で1kN/mm 以上の圧延荷重で圧延を行うことを特徴とする上記(1) または(2) に記載の溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
本発明によれば、通常のめっきラインにより塗装後の鮮映性に優れた溶融亜鉛めっき鋼板が安定して得られ、特に厚目付による耐食性および塗装後の鮮映性が要求される自動車外板用等の用途において極めて優れた効果を発揮する。
本発明の溶融亜鉛めっき鋼板および製造方法について詳しく説明する。
1) めっき鋼板の母材:
めっき鋼板の母材の鋼種は特に限定されない。用途に応じ適宜選べばよい。例えば自動車用鋼板として用いることを想定した場合の鋼種は、極低炭素鋼、低炭素鋼、さらには、Si、Mn、P、Al、Cr、Ni、Cu、およびMoなどの各種の合金元素を含有する炭素鋼などである。機械特性の観点からいえば、一般用、(深)絞り加工用、高強度用などの鋼種で、それらの冷延鋼板や熱延鋼板などを用いることができる。
1) めっき鋼板の母材:
めっき鋼板の母材の鋼種は特に限定されない。用途に応じ適宜選べばよい。例えば自動車用鋼板として用いることを想定した場合の鋼種は、極低炭素鋼、低炭素鋼、さらには、Si、Mn、P、Al、Cr、Ni、Cu、およびMoなどの各種の合金元素を含有する炭素鋼などである。機械特性の観点からいえば、一般用、(深)絞り加工用、高強度用などの鋼種で、それらの冷延鋼板や熱延鋼板などを用いることができる。
なお、母材鋼板の表面形状についても特に限定はしないものの、ろ波中心線うねり高さWca はできるだけ小さい方が好ましい。これは、母材表面のWca が大きいと、めっき後のWca も大きくなりやすく、塗装後の鮮映性に不利に働く方向にあるためである。好ましい母材表面のWca は、0.8 μm 以下である。
2)めっき皮膜:
本発明においてめっき処理自体は従来のそれであってよく、特に制限されるものではない。そのとき得られるめっき皮膜も、通常のGI鋼板のめっき皮膜であればよいが、好ましい形態は以下の通りである。
本発明においてめっき処理自体は従来のそれであってよく、特に制限されるものではない。そのとき得られるめっき皮膜も、通常のGI鋼板のめっき皮膜であればよいが、好ましい形態は以下の通りである。
塗装後の鮮映性に優れた溶融亜鉛めっき鋼板を得るためには、めっき皮膜表面には、タレ、サザナミと呼ばれる凝固ムラや不めっき、ドロス等の欠陥が極力少ないほうが好ましい。これらの欠陥には、めっき浴中のAl量が大きく影響する。具体的には、浴中のAl量が0.13〜0.3 %程度が好ましく、このときめっき皮膜のAl量は概ね0.15〜0.5 %程度となる。
また、めっき皮膜中にはPbやSbは極力含まない方がよい。PbやSbを含むと、めっき表面にスパングル模様が発生しやすくなり、塗装後の鮮映性に悪影響を及ぼす場合が多い。PbはGI鋼板の性能(例えば耐食性や耐経時剥離性)に悪影響を及ぼすことも知られている。めっき皮膜中の好ましい含有量は、PbとSbの合計量で50ppm 以下である。
めっき皮膜の目付量は、用途に応じて適宜選べばよいが、ある程度の高耐食性と、溶接性や加工性とのバランスが求められる場合には、片面あたり90〜120 (g/m2)が好ましい。
3)調質圧延後のめっき皮膜の表面性状:
めっき後、調質圧延を施してめっき皮膜表面を以下に述べる所定の表面性状とすることにより、塗装後の鮮映性に優れたGI鋼板が得られる。
めっき後、調質圧延を施してめっき皮膜表面を以下に述べる所定の表面性状とすることにより、塗装後の鮮映性に優れたGI鋼板が得られる。
(i) ろ波中心線うねり高さ:Wca ≦0.5 μ
(ii) ろ波中心線うねり間隔:Wc−sm≦1000μm
但し、うねり曲線のカットオフ値は 0.8mmとする。
(ii) ろ波中心線うねり間隔:Wc−sm≦1000μm
但し、うねり曲線のカットオフ値は 0.8mmとする。
Wca 、Wc−smは、日本工業規格(JIS B 0610)に基づくものとする。
図1は、Wca、Wc-smの求め方の概要を説明するものである。めっき表面のろ波うねり曲線f(x) [(JIS B0601(1994)) による。ただし、本発明において、ろ波うねり曲線のカットオフ値は0.8mm とする] ) に基づいて、Wca、Wc-smは、以下の式で求められるものである。
図1は、Wca、Wc-smの求め方の概要を説明するものである。めっき表面のろ波うねり曲線f(x) [(JIS B0601(1994)) による。ただし、本発明において、ろ波うねり曲線のカットオフ値は0.8mm とする] ) に基づいて、Wca、Wc-smは、以下の式で求められるものである。
L:基準長さ、
Sn:ろ波うねり曲線が山から谷に向けて中心線 (図1のL1) とn番目に交差する点から(n+1)番目に交差する点までの距離
Wca、Wc-smは、調質圧延時のワークロールの表面形状、伸び率、圧延油等の調質圧延条件で変更することができる。
Sn:ろ波うねり曲線が山から谷に向けて中心線 (図1のL1) とn番目に交差する点から(n+1)番目に交差する点までの距離
Wca、Wc-smは、調質圧延時のワークロールの表面形状、伸び率、圧延油等の調質圧延条件で変更することができる。
Wca 、Wc-sm は、ともに小さいほど塗装後の鮮映性が良好となる。Wca が0.5 μm を超えると鮮映性がきわめて悪くなるため、上限を0.5 μm とした。好ましくは、0.4 μm 以下である。
Wc-sm は1000μm を超えると鮮映性がきわめて悪くなるため、上限を1000μm とした。好ましくは 800μm 以下である。なお、それぞれの下限については特に制限されないが、実用的に入手可能なワークロールの表面粗さその他調質圧延時のコストの観点から、それぞれの下限は Wca≧0.2 μm 、Wc-sm ≧300 μm 程度とするのがよい。
(iii) 調質圧延加工を受けていない部分の面積率:M≦60%
前述のように、めっきままのGI鋼板表面には、多くの場合、結晶粒界等に起因する凹凸が存在するので、調質圧延を施すことによりめっきままの皮膜表面の凹凸の悪影響を受けないような表面状態にすることができる。
前述のように、めっきままのGI鋼板表面には、多くの場合、結晶粒界等に起因する凹凸が存在するので、調質圧延を施すことによりめっきままの皮膜表面の凹凸の悪影響を受けないような表面状態にすることができる。
図2は、調質圧延後のGI鋼板表面のミクロ写真(倍率100 倍)である。表面をダル加工されたワークロールを用いて調質圧延した後のGI鋼板表面は、同図に示すように、調質圧延加工を受けた部分(スキンパス加工部:黒い部分)と受けていない部分(未加工のめっき部:白い部分)とが混在する。このとき、調質圧延加工を受けていない部分の面積率が小さいほど、鮮映性が良好になる。
S0を観察視野の面積、S1をそのうちの調質圧延加工を受けた部分の面積とすると、下記式で求まる未加工のめっき部の面積率Mは60%以下とする必要がある。
M={(S0−S1)/S0}×100
Mが60%を超えると本発明で規定する他の条件を満たしていても鮮映性が悪化する。好ましくは40%以下、さらに好ましくは35%以下である。なお、Mがあまりにも小さい鋼板を得ようとすると、調質圧延ロールにめっき皮膜(亜鉛)がピックアップされるいわゆる巻き付き現象が発生しやすくなる。したがって、Mの下限としては20%程度が現実的であり、また塗装後の鮮映性の改善効果はM=20%で十分発揮される。
M={(S0−S1)/S0}×100
Mが60%を超えると本発明で規定する他の条件を満たしていても鮮映性が悪化する。好ましくは40%以下、さらに好ましくは35%以下である。なお、Mがあまりにも小さい鋼板を得ようとすると、調質圧延ロールにめっき皮膜(亜鉛)がピックアップされるいわゆる巻き付き現象が発生しやすくなる。したがって、Mの下限としては20%程度が現実的であり、また塗装後の鮮映性の改善効果はM=20%で十分発揮される。
ここに、Mは、調質圧延時の圧延荷重や伸び率を調整することで変えることができる。
(iv)粗さ曲線の中心線方向の25.4mm当たりの凸部ピーク数:ppi ≧200
(v) 中心線粗さ平均間隔:Rsm ≦80μm
但し、粗さ曲線のカットオフ値は0.8mm とする。
(iv)粗さ曲線の中心線方向の25.4mm当たりの凸部ピーク数:ppi ≧200
(v) 中心線粗さ平均間隔:Rsm ≦80μm
但し、粗さ曲線のカットオフ値は0.8mm とする。
図3は、ppi およびRsmの求め方の概要を説明するものである。ppi は、本発明では米国のSAE911規格にしたがって、めっき表面の粗さ曲線 (ただし、本発明において、ろ波うねり曲線のカットオフ値は0.8mm とする) の中心線 (図3のL1) 25.4mm あたり粗さ曲線の凸部めっき表面の粗さ曲線[JIS B0601(1994)による] において、長さ25.4mm(1インチ) あたりの、粗さ曲線の中心線からの高さが0.5 μm 以上の山 (すなわち図3のL2 よりも高い山) の数をカウントしたものである。
Rsmは、以下の式で表されるものである。
Rsm=(1/n) ×ΣSn
Sn:粗さ曲線が山から谷に向けて中心線 (図3のL1)とn番目に交差する点から(n +1)番目に交差する点までの距離
Rsm=(1/n) ×ΣSn
Sn:粗さ曲線が山から谷に向けて中心線 (図3のL1)とn番目に交差する点から(n +1)番目に交差する点までの距離
ppi は、2.54mm当たりの粗さ曲線の凸部ピーク数を表す数値であるが、本発明では、米国のSAE911規格に従って粗さ曲線の中心線からの高さが0.5 μm 以上のピークの数とする。ppi が多いほど、Rsm が小さいほど、塗装後の鮮映性は良好となる。なお、ppi が多い状態あるいはRsm が小さい状態とは、細かい凹凸が数多く存在する状態を表すものであるから、これらの細かい凹凸はGA鋼板の表面に存在する微細凹凸に相当するものであり、塗装後の鮮映性に好影響を与えているものと考えられる。
GI鋼板の場合には、このような微細凹凸は本来存在しないため、調質圧延に際して積極的に導入するものであり、具体的には、放電加工ロールを使用して、できるだけ大荷重で調質圧延することによってその積極的導入を図ることができる。
(vi)中心線平均粗さRa:
上記の表面性状に関する各条件が規定の範囲内にあれば、Raは、塗装後の鮮映性にはあまり影響しない。しかし、プレス成形性をより良好にするにはRaは、0.8 〜1.5 μm の範囲内にするのがよい。Ra0.8 〜1.5 の付与は、上記各条件が本発明で規定する範囲を逸脱することなく実現することができる。
上記の表面性状に関する各条件が規定の範囲内にあれば、Raは、塗装後の鮮映性にはあまり影響しない。しかし、プレス成形性をより良好にするにはRaは、0.8 〜1.5 μm の範囲内にするのがよい。Ra0.8 〜1.5 の付与は、上記各条件が本発明で規定する範囲を逸脱することなく実現することができる。
本発明において、RaはJIS B 0601 の規定に基づくものとする。Raは、すでに述べたところからも明らかなようにワークロールの表面性状も含めて調質圧延条件を変えることで調整することができる。
4)製造方法:
上記のような表面性状のGI鋼板は、すでに述べたように、溶融亜鉛めっき処理に際してめっき浴の組成を調整することにより、また、そのようにして得られた溶融亜鉛めっき鋼板に調質圧延を施すことにより得られる。
上記のような表面性状のGI鋼板は、すでに述べたように、溶融亜鉛めっき処理に際してめっき浴の組成を調整することにより、また、そのようにして得られた溶融亜鉛めっき鋼板に調質圧延を施すことにより得られる。
ここで、本発明にかかる製造方法について詳細に説明するが、溶融亜鉛めっき処理自体はすでに述べたところであり、以下においては、調質圧延について説明する。
(a) 調質圧延に用いるワークロール:
鋼板と接触するワークロールには、ロール表面に放電ダル加工を施したロールを用いるのがよい。放電ダル加工を施したロールは、ショットブラスト加工を施したロールと比較して、高ppi と低Wca とを両立させるのが容易で、本発明で規定するGI鋼板の表面性状を得るのが容易となる。なお、鋼板のRaを前述の範囲とするには、ワークロール表面のRaは、放電加工状態やその他圧延条件にはよるものの、2.0 〜3.5 μm 程度とするのが適当である。
(a) 調質圧延に用いるワークロール:
鋼板と接触するワークロールには、ロール表面に放電ダル加工を施したロールを用いるのがよい。放電ダル加工を施したロールは、ショットブラスト加工を施したロールと比較して、高ppi と低Wca とを両立させるのが容易で、本発明で規定するGI鋼板の表面性状を得るのが容易となる。なお、鋼板のRaを前述の範囲とするには、ワークロール表面のRaは、放電加工状態やその他圧延条件にはよるものの、2.0 〜3.5 μm 程度とするのが適当である。
(b) 調質圧延油:
本発明のGI鋼板を得るには後述するように圧下荷重を高めに設定して調質圧延をおこなうため、ワークロールにめっき (亜鉛) が巻き付きやすい。そこで、この巻き付きを抑制するために、ウェット状態で調質圧延するのが好ましい。しかも、単なる水では巻きつき抑制効果が乏しいため、潤滑効果のある有機または無機の調質圧延油を使用することが好ましい。有機調質油を水希釈後で1%以上としたものを、鋼板にスプレーしながら調質圧延を施すのがよい。
本発明のGI鋼板を得るには後述するように圧下荷重を高めに設定して調質圧延をおこなうため、ワークロールにめっき (亜鉛) が巻き付きやすい。そこで、この巻き付きを抑制するために、ウェット状態で調質圧延するのが好ましい。しかも、単なる水では巻きつき抑制効果が乏しいため、潤滑効果のある有機または無機の調質圧延油を使用することが好ましい。有機調質油を水希釈後で1%以上としたものを、鋼板にスプレーしながら調質圧延を施すのがよい。
(c) 調質圧延における圧下荷重:
調質圧延加工を受けない部分の面積率を小さくするために、圧下荷重を十分にかける必要がある。好ましい荷重は1kN/mm 以上で、1kN/mm 未満の荷重では、調質圧延を受けていない部分の面積率を60%以下にすることができない。したがって、線荷重の下限を1kN/mm とした。上限は特に限定しないが、例えばRaが2.5 μm 程度の放電ダル加工ロールを使用した場合の上限線荷重は3kN/mm が適している。
調質圧延加工を受けない部分の面積率を小さくするために、圧下荷重を十分にかける必要がある。好ましい荷重は1kN/mm 以上で、1kN/mm 未満の荷重では、調質圧延を受けていない部分の面積率を60%以下にすることができない。したがって、線荷重の下限を1kN/mm とした。上限は特に限定しないが、例えばRaが2.5 μm 程度の放電ダル加工ロールを使用した場合の上限線荷重は3kN/mm が適している。
なお、めっき直後(凝固時)の処理としては、めっき浴から鋼板を引上げた後、ガスワイピング等でめっき付着量がコントロールされる。さらに、凝固時にミストスプレー等による急冷を施すこともある。ガスワイピングや急冷による表面状態への影響は、後述する調質圧延が及ぼす影響と比較して小さいことから、これらの条件については、とくに制限はない。とはいえ、ガスワイピングにおいては、大気を用いるよりは、窒素ガス等の不活性ガスを用いる方が、表面のタレ、サザナミの少ない表面が得られやすいので好ましい。
また、ミストスプレー等による急冷についても、スパングル模様の生成、成長を抑制する効果があることから、用いた方が好ましい場合もある。ただし、本発明においては、その影響はあまり大きくなく、必ずしも必要ない場合も多い。
連続溶融亜鉛めっきラインは通常調質圧延設備も有しているため、インラインで圧延すればよい。ただし、場合によっては調質圧延を別ラインで行ってもよい。また、調質圧延後に鋼板の形状修正 (おもに平坦化) の軽度の圧延が施される場合もあるが、最終的に本発明の表面状態が得られていればよい。
次に、実施例により本発明の作用効果についてさらに具体的に説明する。
表1に示す化学組成を有する板厚0.8mm の極低炭素−Ti添加冷延鋼板を母材とし、Al濃度0.15%、Pb、Sbが合計で50ppm 以下のめっき浴を用いて、片面あたりのめっき付着量80g/m2のGI鋼板を得た。なお、ワイピングガスは窒素ガスで行い、ミストスプレー等は用いていない。
これらの溶融亜鉛めっき鋼板に、さらに以下の条件で調質圧延を施した。
ワークロール表面:放電グル加工仕上げ、Raは2μm と3μm の二種、ppi は0.5 と1.0 の二種(表2)
調質圧延油:クエーカ(Quaker)社製商品名クワールJ263の有機圧延油を、水によって5%に希釈したもの
圧下荷重 :0.8 〜1.4kN/mm(表2)
伸び率 :0.5 、1.0 %(表2)
ワークロール表面:放電グル加工仕上げ、Raは2μm と3μm の二種、ppi は0.5 と1.0 の二種(表2)
調質圧延油:クエーカ(Quaker)社製商品名クワールJ263の有機圧延油を、水によって5%に希釈したもの
圧下荷重 :0.8 〜1.4kN/mm(表2)
伸び率 :0.5 、1.0 %(表2)
このようにして製造されたGI鋼板について、調質圧延加工を受けていない部分の面積率を、以下のようにして算出した。
GI鋼板の表面を光学顕微鏡で100 〜300 倍で観察した像(例えば図2)について、調質圧延加工を受けた部分と受けてない部分を画像処理によって識別し、観察総面積に対する調質圧延加工を受けていない部分の面積率を算出した。たとえば、図2の場合、調質圧延加工を受けていない部分の面積率は50%である。
なお、Wca 、Wc-sm、ppi およびRsmについては、2次元の表面粗さ測定装置を用いて測定した。
次に、得られたGI鋼板に、リン酸塩処理、電着塗装(膜厚20μm)、中塗り塗装 (膜厚35μm)、上塗り塗装 (膜厚35μm)、クリアー塗装 (膜厚25μm)をこの順で施した。
次に、得られたGI鋼板に、リン酸塩処理、電着塗装(膜厚20μm)、中塗り塗装 (膜厚35μm)、上塗り塗装 (膜厚35μm)、クリアー塗装 (膜厚25μm)をこの順で施した。
得られた塗装板の鮮映性について、鮮映性評価装置 (スガ試験機製HA-NSIC)を用いてNSIC値を測定した。なお、評価基準は次の通りとした。NSIC値70以上を合格とした。
◎: NSIC値80以上
○: 同 70以上80未満
△: 同 50以上70未満
×: 同 50未満
測定結果は表2に示す通りであった。
◎: NSIC値80以上
○: 同 70以上80未満
△: 同 50以上70未満
×: 同 50未満
測定結果は表2に示す通りであった。
表2から明らかなように、本発明で規定する条件のうち1条件でも規定範囲を外れている比較例では、優れた鮮映性が得られなかった。一方、規定条件を全て満足している本発明例では全てについて優れた鮮映性が得られた。
本発明によれば、塗装後の鮮映性に優れ、厚目付けにより耐食性に優れた溶融亜鉛めっき鋼板が容易に安定して得られ、自動車、家電および建材等に用いられる鋼板として、特に優れた耐食性が要求される自動車用鋼板として好適であり、本発明の産業上の意義が大きいことが分かる。
Claims (3)
- めっき後に調質圧延を施した溶融亜鉛めっき鋼板であって、調質圧延後のめっき面が、下記の条件を満足していることを特徴とする塗装後の鮮映性に優れた溶融亜鉛めっき鋼板。
Wca ≦0.5 μm ppi≧200
Wc−sm≦1000μm Rsm≦80μm
M≦60%
ここで、
Wca : 表面ろ波うねり曲線のカットオフ値を0.8mm とした場合におけるろ波中心線 うねり高さ (μm)
Wc−sm : ろ波中心線うねり間隔 (μm)
M : 調質圧延加工を受けていない部分の面積率 (%)
ここで、Mは、S0を観察視野の面積、S1をそのうちの調質圧延加工を受けた 部分の面積とすると、下記式により求められる値である。
M={(S0−S1)/S0}×100
ppi : 粗さ曲線のカットオフ値を0.8mm とした場合における粗さ曲線の平均線方向 の長さ25.4mmあたりの、粗さ曲線の中心線からの高さが0.5 μm 以上の凸部 ピーク数
Rsm : 中心線粗さ平均間隔 (μm)。 - さらに、中心線平均粗さ(Ra)が下記の条件を満足する請求項1記載の溶融亜鉛めっき鋼板。
0.8 μm ≦Ra≦1.5 μm - 溶融亜鉛めっき鋼板に調質圧延を施すに際し、表面に放電ダル加工を施したロールを用いると共に、有機または無機の調質圧延油を使用し、線荷重で1kN/mm 以上の圧延荷重で圧延を行うことを特徴とする請求項1または2に記載の溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
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