本発明のビシナル置換型官能基含有重合体は、前記一般式(I)で示される重合体である。
一般式(I)中、Aで表される基を形成する炭素数2〜20のオレフィンとしては、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、3−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテンなどを例示することができる。これらの中の1種又は2種以上が用いられる。この中でも特にエチレン、プロピレン、1−ブテンが好ましい。
一般式(I)において、Aで表される基のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下、GPCと略す)により測定した重量平均分子量(Mw)は400〜500000であり、好ましくは800〜200000,更に好ましくは1000〜100000である。
本発明のビシナル置換型官能基含有重合体は、対応する一般式(C)
(式中、A、Rは一般式(I)と同様の原子または基を示す)
で示される末端エポキシ基含有重合体自身または、末端エポキシ基含有重合体から製造することができる誘導体であり、Aで表される基の重量平均分子量は該末端エポキシ基含有重合体の重量平均分子量から、エポキシ基の分子量42とRで表される基の分子量を差し引いた値として求めることができる。
一般式(I)においてAで表される基のGPCにより測定した重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比、すなわち分子量分布(Mw/Mn)は、1.0〜4.0が好ましく、より好ましくは1.0〜3.0、更に好ましくは1.0〜2.5の範囲である。
重量平均分子量(Mw)及び分子量分布(Mw/Mn)は、ミリポア社製GPC−150を用い以下のようにして測定した。すなわち、分離カラムは、TSK GNH HTであり、カラムサイズは直径7.5mm、長さ300mmのものを使用した。カラム温度は140℃とし、移動相にはオルトジクロルベンゼン(和光純薬)及び酸化防止剤としてBHT(武田薬品)0.025質量%を用い、1.0ml/分で移動させた。試料濃度は0.1質量%とし、試料注入量は500マイクロリットルとした。検出器として示差屈折計を用いた。標準ポリスチレンは東ソー社製を用いた。
本発明の一般式(I)中、Rとしては、Aを構成するオレフィンの二重結合に結合した置換基である。例えば、水素、炭素数1〜18のアルキル基であり、水素、メチル基、エチル基、プロピル基等である。
一般式(I)のX、Yのポリアルキレングリコール基としては下記一般式(V)
(式中、R7はアルキレン基を表し、R8は水素原子、またはアルキル基を表し、nは1〜10000の整数を表す)で表される基である。ここで、ポリアルキレングリコール基には一般式(V)中、nが1の場合も包含される。
一般式(II)、(III)のR1〜R3のポリアルキレングリコール基としては、下記一般式(CI)
(式中、R7はアルキレン基を表し、R8は水素原子、またはアルキル基を表し、nは1〜10000の整数を表す)で表される基である。ここで、ポリアルキレングリコール基には一般式(V)中、nが1の場合も包含される。
R7のアルキレン基としては、炭素数1〜20のアルキレン基が好ましい。アルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、エチルエチレン基、1,2−ジメチルエチレン基、フェニルエチレン基、クロロメチルエチレン基、ブロモメチルエチレン基、メトキシメチルエチレン基、アリールオキシメチルエチレン基、プロピレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ヘキサメチレン基、1,2−シクロヘキシレン基等が挙げられる。R7は単独のアルキレン基でもよく2種以上のアルキレン基が混在していてもよい。
R8のアルキル基としては、直鎖、分岐または環状の炭素数1〜18のアルキル基が好ましい。アルキル基の具体例としては、一般式(1)のRと同様のものが挙げられる。一般式(I)のX、Yのアシルオキシ基としては、炭素数2〜15のアシルオキシ基が好ましく、ヘテロ原子を含む官能基が結合していてもよい。アシルオキシ基としては、例えば、アセトキシ基、プロピオニルオキシ基、3−カルボキシプロピオニルオキシ基、3−カルボキシ−2−プロペノイルオキシ基、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、ヘキサノイルオキシ基、オクタノイルオキシ基、ベンゾイルオキシ基、4−トリフルオロメチルベンゾイルオキシ基、3−ニトロベンゾイルオキシ基、2−カルボキシベンゾイルオキシ基、ナフトイルオキシ基、パーフルオロヘプタノイルオキシ基、パーフルオロオクタノイルオキシ基等を挙げることができる。
一般式(II)、一般式(III)、一般式(IV)中、R1〜R6の炭化水素基としてはアルキル基、アルケニル基、アラルキル基、アリール基が好ましく、ヘテロ原子を含む官能基が結合していてもよい。
この場合のアルキル基としては、直鎖、分岐または環状の炭素数1〜18のアルキル基が好ましい。アルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、ネオペンチル基、n-へキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、2,3−ジヒドロキシプロピル基、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)-3−ヒドロキシプロパン、n-デシル基、n-テトラデシル基、n-オクタデシル基、シクロプロピルメチル基、シクロペンチルメチル基、シクロヘキシルメチル基、10-ブロモデシル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロピル基、パーフルオロオクチル基等が挙げられる。
アルケニル基としては、直鎖または分岐の炭素数2〜6のアルケニル基が好ましい。アルケニル基としては、例えば、ビニル基、アリル基、3−フルオロアリル基、イソプロペニル基、4−ペンテニル基、5−ヘキセニル基等が挙げられる。
アラルキル基としては、炭素数7〜15のアラルキル基が好ましい。アラルキル基としては、例えば、ベンジル基、2,4−ジフルオロベンジル基、ペンタフルオロフェニルメチル基、ビス(4−メトキシフェニル)メチル基、フェネチル基、ベンズヒドリル基、フェニルプロピル基等が挙げられる。
また、アリール基としては、炭素数6〜15のアリール基が好ましい。アリール基としては、例えば、フェニル基、2,4−ジクロロフェニル基、4−メトキシフェニル基、4−メトキシカルボニルフェニル基、4−ニトロフェニル基、ヘキサフルオロフェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等が挙げられる。
一般式(II)、一般式(III)、一般式(IV)中、R1〜R6のアシル基としては、炭素数2〜15のアシル基が好ましい。アシル基としては、例えば、アセチル基、プロピオニル基、3−カルボキシプロピオニル基、3−カルボキシ−2−プロペノイル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、ヘキサノイル基、オクタノイル基、ベンゾイル基、4−トリフルオロメチルベンゾイル基、3−ニトロベンゾイル基、2−カルボキシベンゾイル基、ナフトイル基、パーフルオロヘプタノイル基、パーフルオロオクタノイル基等を挙げることができる。
一般式(I)のX、Y、一般式(IV)のR4〜R6のエステル基としては、炭素数2〜20のアルコキシカルボニル基またはアリールオキシカルボニル基が好ましい。アルコキシカルボニル基またはアリールオキシカルボニル基としては、例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基、n-ブトキシカルボニル基、シクロヘキシルオキシカルボニル基、4−tert−ブチルシクロヘキシルオキシカルボニル基、2−シクロペンチルエトキシカルボニル基、ビニルオキシカルボニル基、アリルオキシカルボニル基、2−ペンテノキシカルボニル基、パーフルオロヘキシルオキシカルボニル基、パーフルオロオクチルオキシカルボニル基、ベンジルオキシカルボニル基、4−メトキシベンジルオキシカルボニル基、フェノキシカルボニル基、4−フルオロフェノキシカルボニル基、4−(4−メトキシカルボニルフェニル)フェノキシカルボニル基、1−ナフトキシカルボニル基等を挙げることができる。
一般式(I)のX、Y、一般式(IV)のR4〜R6のアミド基としては、カルバモイル基、N−メチルカルバモイル基、N,N−ジメチルカルバモイル基、N−(2−ヒドロキシエチル)カルバモイル基、N,N−ジブチルカルバモイル基、1−ピロリジニルカルボニル基、1−ピペリジニルカルボニル基等を挙げることができる。
XとYが結合して5員環を形成する場合の−X−Y−で表される2価の基は、下記の何れかの基が好ましい。
-O−CO−O-
-O−CR9R10−O-
-O−CO−CHL-
(Lは水素原子、シアノ基、エステル基、カルボキシル基を表し、R9〜R10は水素原子、アルキル基を表す)
この場合のLのエステル基としては、炭素数2〜20のアルコキシカルボニル基またはアリールオキシカルボニル基が好ましい。エステル基の具体例としては、一般式(I)のX、Y、一般式(IV)のR4〜R6と同様のものが挙げられる。
R9〜R10で表されるアルキル基としては、直鎖、分岐または環状の炭素数1〜18のアルキル基が好ましい。アルキル基の具体例としては、一般式(I)のRと同様のものが挙げられる。
<ビシナル置換型官能基含有重合体の製造方法>
一般式(I)で示されるビシナル置換型官能基含有重合体のうち、XとYが結合してオキシラン環を形成した末端エポキシ基含有重合体は、特公平7−91338号公報、US5252677号公報、特開2001−2731号公報および特開2003−73412号公報記載の方法により、対応する片末端二重結合含有重合体をエポキシ化することにより得ることができる。該片末端二重結合含有重合体の分子量は、重合触媒の種類、エチレンまたはα-オレフィンの圧力等の反応条件により、特開2001−2731号公報および特開2003−73412号公報記載の方法により調節することができる。末端エポキシ基含有重合体以外の一般式(I)で示されるビシナル置換型官能基含有重合体は、対応する末端エポキシ基含有重合体から製造することができる。
ここで、末端エポキシ基含有重合体のエポキシ基含有率は、全片末端の30%以上が好ましく、より好ましくは50%以上、更に好ましくは70%以上である。
末端エポキシ基含有重合体の全片末端中のエポキシ含有率は1H-NMRによって決定される。例えば、エチレンのみからなる片末端二重結合含有重合体をエポキシ化して得られた末端エポキシ基含有重合体の場合、飽和末端におけるメチル基の3プロトン分のピーク(A)が0.65〜0.9ppm、エポキシ基付け根の3プロトン分のピーク(B)が1プロトンずつ2.3〜2.4ppm、2.6〜2.7ppm、2.8〜2.9ppmに観測される。エポキシ変性が十分でない場合は、末端二重結合の3プロトン分のピーク(C)が4.85〜5.0ppmに2プロトン、5.5〜5.8ppmに1プロトン観測される。各ピーク(A)、(B)および(C)のピーク面積を各々SA、SBおよびSCとすれば、エポキシ基含有率(Ep(%))は下記式にて算出される。
Ep(%)=SB/(SA+SB+SC)×200
なお、1H-NMRについては、測定サンプル管中で重合体を、ロック溶媒と溶媒を兼ねた重水素化-1,1,2,2-テトラクロロエタンに完全に溶解させた後、120℃において測定した。ケミカルシフトは、重水素化-1,1,2,2-テトラクロロエタンのピークを5.92ppmとして、他のピークのケミカルシフト値を決定した。
本発明では、一般式(S)で表される末端エポキシ基含有重合体を、後述する反応剤と反応させることにより、末端エポキシ基含有重合体以外のビシナル置換型官能基含有重合体を製造することができる。
本発明のビシナル置換型官能基含有重合体の官能基含有率は、全片末端の30%以上が好ましく、より好ましくは50%以上、更に好ましくは70%以上である。ビシナル置換型官能基含有重合体の官能基含有率は1H−NMRによって決定される。例えば、エチレンのみからなる末端エポキシ基含有重合体を官能基化して得られたビシナル置換型官能基含有重合体の場合、ビシナル置換型官能基付け根の3プロトン分のピーク(D)が1プロトンずつ3.2〜3.4ppm、3.4〜3.5ppm、3.6〜3.8ppmに観測される。官能基化が十分でない場合は、エポキシ基付け根の3プロトン分のプロトンピーク(E)が1プロトンずつ2.3〜2.4ppm、2.6〜2.7ppm、2.8〜2.9ppmに観測される。各ピーク(D)および(E)のピーク面積を各々SDおよびSEとし、原料の末端エポキシ基含有重合体のエポキシ基含有率をEp(%)とすれば、ビシナル置換型官能基含有重合体の官能基含有率(Fc(%))は下記式にて算出される。
Fc(%)=SD/(SD+SE)×Ep(%)
[(1) 一般式(I)においてX、Yの一方が水酸基である重合体の製造方法]
[(1a) X、Yの一方が水酸基で、他方が一般式(II)で示される基である重合体の製造方法]
末端エポキシ基含有重合体に、酸または塩基触媒存在下、一般式(VI)
(式中、E,R1は一般式(II)と同様の原子または基を表す)
で示される化合物(以下、反応試剤Aと表記する)を反応させることにより、X,Yの一方が水酸基で、他方が一般式(II)で示される基である重合体を得ることができる。
一般式(VI)としては、例えば、水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、tert-ブタノール、n-オクタノール、アリルアルコール、シクロプロパノール、シクロペンタノール、シクロヘキサノール、シクロヘプタノール、イソプロペニルアルコール、4−ペンテノール、5−ヘキセノール、10-ブロモデカノール、2,2,2−トリフルオロエタノール、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ-2−プロパノール、パーフルオロオクタノール、ベンジルアルコール、2,4−ジフルオロベンジルアルコール、ペンタフルオロフェニルメタノール、ビス(4−メトキシフェニル)メタノール、フェネチルアルコール、フェニルプロピルアルコール、フェノール、2,4−ジクロロフェノール、4−メトキシフェノール、4−メトキシカルボニルフェノール、4−ニトロフェノール、ヘキサフルオロフェノール、4−メチルフェノール、2,6-ジメチルフェノール、2−ナフチルアルコール等のアルコール類、グリセリン、1,2,4−ブタントリオール、ペンタエリスリトール等の多価アルコール類、チオメタノール、チオエタノール等のチオアルコール類、酢酸、プロピオン酸、マレイン酸、コハク酸、マロン酸、ブタン酸、ヘキサン酸、オクタン酸、アクリル酸、メタクリル酸、安息香酸、4−トリフルオロメチル安息香酸、3−ニトロ安息香酸、フタル酸、2−ナフチル酸、パーフルオロヘプタン酸、パーフルオロオクタン酸等のカルボン酸類、モノエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、フェニルエチレングリコール、モノプロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1−クロロ−2,3−プロパンジオール、1−ブロモ−2,3−プロパンジオール、1−メトキシ−2,3−プロパンジオール、1−アリルオキシ−2,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンメタンジオール等のポリアルキレングリコール類を挙げることができる。これらは単独で用いてもよく2種以上の混合物でもよい。
酸触媒としては例えば、塩酸、硫酸、リン酸等の鉱酸類、p-トルエンスルホン酸等のスルホン酸類、アンバーリスト-15(登録商標)等の固体酸類、三フッ化ホウ素エーテル錯体、三塩化ホウ素、三臭化ホウ素、三塩化アルミニウム、三臭化アルミニウム、四塩化スズ、二塩化亜鉛等のルイス酸を挙げることができる。
塩基触媒としては例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、セシウム等のアルカリ金属の水酸化物、炭酸塩、炭酸水素塩、マグネシウム、カルシウム等のアルカリ土類金属の水酸化物、炭酸塩、炭酸水素塩、ピリジン、4−ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミン等の有機アミン類、アンバーリスト−21(登録商標)、アンバーリスト−93(登録商標)等の弱塩基性イオン交換樹脂等が挙げられる。
酸または塩基触媒の使用量は、末端エポキシ基含有重合体に対して、0.01〜10質量倍が好ましく、より好ましくは0.1〜5質量倍、最も好ましくは0.5〜2質量倍である。これらの酸または塩基触媒は単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いても構わない。
反応溶媒としては、原料の末端エポキシ基含有重合体に対して不活性なものが使用でき、例えばn-ヘキサン等の脂肪族炭化水素類、シクロヘキサン等の脂環式炭化水素類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、酢酸エチル等のエステル類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジエチルケトン、メチルプロピルケトン等のケトン類、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等のエーテル類、クロロホルム、ジクロルエタン、トリクロルエタン、パークロルエタン等のハロゲン化炭化水素などが挙げられる。原料の末端エポキシ基含有重合体がその溶媒に対して不溶でない限り、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素が好ましい。溶媒の使用量は原料の溶解性に作用するが、原料の末端エポキシ基含有重合体に対し0.8〜100質量倍が好ましく、より好ましくは1〜50質量倍、更に好ましくは2〜20質量倍である。
反応は、例えば次のようにして行うことができる。反応器に、末端エポキシ基含有重合体、反応剤A、酸または塩基触媒を入れて混合し、均一に溶解するまで昇温する。ここで反応剤Aをあらかじめアルカリ金属またはアルカリ土類金属の塩として使用してもよい。反応温度は用いる末端エポキシ基含有重合体が溶解する温度が好ましい。反応温度は、25〜300℃が好ましく、より好ましくは50〜250℃、更に好ましくは80〜200℃である。使用する化合物、溶媒によっては反応温度が沸点を超える場合があるためオートクレーブ等適切な反応装置を選択する。反応時間は使用する触媒の量、反応温度、重合体類の反応性等の反応条件により変わるが、通常数分から50時間である。
反応後は晶析操作、洗浄等の簡単な操作により、過剰の触媒、反応剤A、反応溶媒を除去して目的とするビシナル置換型官能基含有重合体を得ることができる。上記反応において、末端エポキシ基含有重合体の製造工程から単離精製せずに上記反応を実施することもできる。
また、一般式(I)においてX、Yともに水酸基である重合体の製造方法としては、アルコール等の相溶化溶媒の共存下、末端エポキシ基含有重合体と水を反応させる方法が好ましい。
[(1b) X、Yの一方が水酸基で、他方が一般式(III)で示される基である重合体の製造方法]
末端エポキシ基含有重合体に、一般式(VII)
(式中、R2,R3は一般式(III)と同様の原子または基を表す)で示される化合物を反応させることにより、X、Yの一方が水酸基で、他方が一般式(III)で示される基である重合体を得ることができる。反応は、酸または塩基触媒を共存させてもよい。
一般式(VII)としては、例えば、アンモニア、メチルアミン、エチルアミン、メチルプロピルアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、1−エチルプロピルアミン、1,3−ジメチルブチルアミン、tert-ブチルアミン、n-ヘキシルアミン、n-ヘプチルアミン、tert-オクチルアミン、デシルアミン、ヘキサデシルアミン、オクタデシルアミン、ピロリジン、ピペリジン、ピペラジン、ヘキサメチレンイミン、ヘプタメチレンイミン、エチレンジアミン、1,3−ジアミノプロパン、1,2−ジアミノプロパン、1,4−ジアミノブタン、1,6-ジアミノヘキサン、ジエチレントリアミン、N-(2−アミノエチル)-1,3−プロパンジアミン、3,3'-イミノビスプロピルアミン、スペルミジン、スペルミン、トリエチレンテトラミン、シクロプロピルアミン、シクロブチルアミン、N-メチルシクロヘキシルアミン、trans-1,4−ジアミノシクロヘキサン、ピペリジン、ピペラジン、ベンジルアミン、トリス(3−アミノプロピル)アミン、トリス(2−アミノエチル)アミン、4−アミノメチル−1,7−ヘプタンジアミン、アニリン、3−クロロアニリン、p-トルイジン、4−アミノフェノール、4,4'-メチレンジアニリン、1,3−フェニレンジアミン、1−アミノナフタレン、ジェファーミン類(登録商標)等を挙げることができる。
酸、塩基触媒とその使用量、反応溶媒とその使用量については、(1a)と同様である。
反応方法は、(1a)の場合と同様に行うことができるが、酸、塩基触媒の非存在下でも反応は進行する。
[(1c) X、Yの一方が水酸基で、他方が一般式(IV)で示される基である重合体の製造方法]
末端エポキシ基含有重合体に、一般式(VIII)
(式中、R4〜R6は一般式(IV)と同様の原子または基を表す。Mはアルカリ金属、アルカリ土類金属、アルミニウム原子、珪素原子、スズ原子を表し、Qはハロゲン原子を表し、kは1〜4の整数を、mは0〜3の整数を表す)で示される有機金属化合物を反応させることにより、X、Yの一方が水酸基で、他方が一般式(IV)で示される基である重合体を得ることができる。
Qで表されるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
Mで示されるアルカリ金属としては、リチウム原子、ナトリウム原子、カリウム原子、ルビジウム原子、セシウム原子が挙げられる。
Mで示されるアルカリ土類金属としては、ベリリウム原子、マグネシウム原子、カルシウム原子、ストロンチウム原子、バリウム原子が挙げられる。
一般式(VIII)で表される有機金属化合物としては、例えば、酢酸エチル-ナトリウムエノレート、マロン酸ジエチル-ナトリウムエノレート、マロノニトリル-カリウムエノレート、コハク酸ジエチル-リチウムエノレート、2−シアノ酢酸エチル-ナトリウムエノレート等のエノレート類、 メチルリチウム、n-ブチルリチウム、tert-ブチルリチウム、ジエチル亜鉛、トリプロピルアルミニウム等の有機金属化合物等を挙げることができる。
これらの有機金属化合物の製造は、一般的な方法を用いる事ができる。
反応方法は、(1a)の場合と同様に行うことができる。この場合、酸、塩基触媒を用いないで反応を行うことができる。また、反応後は、水またはメタノール、エタノール等の低級アルコールで処理して金属を取り除くことができる。
反応溶媒とその使用量については(1a)と同様である。
[(1d) X、Yの一方が水酸基で、他方がシアノ基、カルボキシル基、エステル基、アミド基で示される基である重合体の製造方法]
末端エポキシ基含有重合体にシアノ化剤を反応させることにより、X、Yの一方が水酸基で、他方がシアノ基の重合体が得られる。
得られたシアノ基を含む重合体を加水分解によりカルボキシル基に誘導できる。更にこのカルボキシル基をエステル化することによりエステル基に誘導でき、アミド化することによりアミド基に誘導できる。これらの加水分解、エステル化、アミド化は、一般的な方法を用いる事ができる。
シアノ化剤としてはシアン化ナトリウム、シアン化カリウム、トリメチルシリルシアニド、ジエチルアルミニウムシアニド、アセトンシアノヒドリン等を挙げることができる。シアノ化剤の使用量は原料の末端エポキシ基含有重合体の0.9〜20質量倍が好ましく、より好ましくは1〜10質量倍、更に好ましくは1.1〜10質量倍である。
反応方法は、(1a)の場合と同様に行うことができる。この場合、酸、塩基触媒を用いないで反応を行うことができる。
反応溶媒とその使用量については(1a)と同様である。
[(2) 一般式(I)においてX、Yの一方がポリエチレングリコール基である重合体の製造方法]
一般式(I)においてXまたはYの一方が水酸基のビシナル置換型官能基含有重合体(以下、重合体Aと表記する)を原料とし、該水酸基にエポキシ化合物を反応させることにより、一般式(I)においてX、Yの一方がポリエチレングリコール基である重合体を得ることができる。
上記水酸基に付加重合するエポキシ化合物としては、プロピレンオキシド、エチレンオキシド、1,2−ブチレンオキシド、2,3−ブチレンオキシド、スチレンオキシド、シクロヘキセンオキシド、エピクロロヒドリン、エピブロモヒドリン、メチルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル等が挙げられる。これらは2種以上併用してもよい。これらの中で、好ましくは、プロピレンオキシド、エチレンオキシド、1,2−ブチレンオキシド、2,3−ブチレンオキシド、スチレンオキシドである。より好ましくはプロピレンオキシド、及びエチレンオキシドである。
本反応に用いる触媒としては、例えばアルカリ金属水酸化物が挙げられる。また、ホスファゼニウム化合物、ホスフィンオキシド化合物、及びホスファゼン化合物(以下、P=N結合を有する化合物と表記する)を用いることもできる。
アルカリ金属水酸化物としては、例えば水酸化カルシウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化ルビシウム、水酸化セシウム等が挙げられる。
ホスファゼニウム化合物としては、例えば、テトラキス[トリス(ジメチルアミノ)ホスフォラニリデンアミノ]ホスフォニウムヒドロキシド、テトラキス[トリス(ジメチルアミノ)ホスフォラニリデンアミノ]ホスフォニウムメトキシド、テトラキス[トリス(ジメチルアミノ)ホスフォラニリデンアミノ]ホスフォニウムエトキシド、テトラキス[トリ(ピロリジン−1−イル)ホスフォラニリデンアミノ]ホスフォニウムtert−ブトキシド等が挙げられる。
ホスフィンオキシド化合物としては、例えば、トリス[トリス(ジメチルアミノ)ホスフォラニリデンアミノ]ホスフィンオキシド、又はトリス[トリス(ジエチルアミノ)ホスフォラニリデンアミノ]ホスフィンオキシド等が挙げられる。
ホスファゼン化合物としては、例えば、1−tert−ブチル−2,2,2−トリメチルホスファゼン、1−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−2,2,4,4,4−ペンタイソプロピル−2λ5,4λ5−カテナジ(ホスファゼン)、1−tert−ブチル−2,2,2−トリアリルホスファゼン、1−シクロヘキシル−2,2,4,4,4−ペンタアリル−2λ5,4λ5−カテナジ(ホスファゼン)、1−エチル−2,4,4,4−トリベンジル−2−トリベンジルホスフォラニリデンアミノ−2λ5,4λ5−カテナジ(ホスファゼン)、1−メチル−2,2,2−トリシクロペンチルホスファゼンまたは1−プロピル−2,2,4,4,4−シクロヘキシル−2λ5,4λ5−カテナジ(ホスファゼン)等が挙げられる。
触媒であるアルカリ金属水酸化物の使用量は原料の重合体Aの1モルに対して、0.05〜0.5モルが好ましく、より好ましくは0.1〜0.3モルの範囲である。
触媒であるP=N結合を有する化合物の使用量は、重合速度、経済性等の点から、原料の重合体Aの1モルに対して1×10−4〜5×10−1モルが好ましい。より好ましくは5×10−4〜1×10−1モル、更に好ましくは1×10−3〜1×10−2モルである。
原料である重合体Aにエポキシ化合物を付加重合する温度は、重合速度、副反応抑制の点から、15〜130℃が好ましい。より好ましくは40〜120℃、更に好ましくは50〜110℃の範囲である。エポキシ化合物の付加重合温度を上記範囲内の低い温度で行う場合は、原料の重合体Aに対するP=N結合を有する化合物の濃度を先に述べた範囲内で高めることが好ましい。
エポキシ化合物の付加重合反応の圧力は、副反応抑制の点から、882kPa以下が好ましい。通常、耐圧反応器内でエポキシ化合物の付加重合が行われる。エポキシ化合物の反応は減圧状態から開始しても、大気圧の状態から開始してもよい。大気圧の状態から開始する場合には、窒素、又は、ヘリウム等の不活性気体存在下で行うことが望ましい。反応圧力は、より好ましくは686kPa以下、更に好ましくは490kPa以下である。エポキシ化合物としてプロピレンオキシドを用いる場合には、反応圧力は490kPa以下が好ましい。
反応におけるエポキシ化合物の供給方法は、必要量のエポキシ化合物の一部を一括して供給し、残部を連続的に供給する方法、又は、全てのエポキシ化合物を連続的に供給する方法等が用いられる。必要量のエポキシ化合物の一部を一括して供給する方法においては、エポキシ化合物の重合反応初期の反応温度は、上記温度範囲内でより低温側とし、エポキシ化合物の装入後に、次第に反応温度を上昇する方法が好ましい。
エポキシ化合物としてプロピレンオキシド及びエチレンオキシドを併用する場合の重合方法には、(a)プロピレンオキシドを重合した後、エチレンオキシドをブロックで共重合するエチレンオキシドキャップ反応、(b)プロピレンオキシドとエチレンオキシドをランダムに共重合するランダム反応、(c)プロピレンオキシドを重合した後、エチレンオキシドを重合し、次いで、プロピレンオキシドを重合するトリブロック共重合反応が挙げられる。これらの中で好ましい重合方法は、エチレンオキシドキャップ反応とトリブロック共重合反応である。
付加重合器の最大圧力は、エポキシ化合物の装入速度、重合温度、触媒量等に影響される。エポキシ化合物の装入速度は、付加重合機の最大圧力が882kPaを超えないように制御することが好ましい。エポキシ化合物の装入が完了すると、付加重合器の内圧は徐々に低下する。内圧の変化が認められなくなるまで付加重合反応を継続することが好ましい。ポリアルキレングリコール基を含有するビシナル置換型官能基含有重合体の水酸基価(OHV)を基準とすると、OHVが2〜200mgKOH/gとなるまで付加重合を継続することが好ましい。
エポキシ化合物の付加重合反応に際して、溶媒を使用することもできる。溶媒としては、例えば、ペンタン、ヘキサン、ペプタン等の脂肪族炭化水素類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミド等の非プロトン性極性溶媒等が挙げられる。
次に、上記のようにして製造されたポリアルキレングリコール基を含有するビシナル置換型官能基含有重合体の精製方法について説明する。ポリアルキレングリコール基を含有する粗製ビシナル置換型官能基含有重合体中に残存するアルカリ金属水酸化物またはP=N結合を有する化合物は、塩酸、リン酸等の鉱酸類、酢酸等の有機酸、炭酸ガス等による中和、吸着剤による吸着除去、水あるいは水/有機溶媒を用いた水洗、イオン交換樹脂によるイオン交換等の方法により除去することができる。
[(3) 一般式(I)においてX、Yの一方がアシルオキシ基である重合体の製造方法]
前記重合体Aを原料とし、該水酸基等をアシル化することにより、一般式(I)においてX、Yの一方がアシルオキシ基である重合体を得ることができる。アシル化は、重合体Aと、対応する酸ハロゲン化物あるいは酸無水物を塩基触媒存在下反応させる一般的な方法で実施できる。
酸ハロゲン化物としては、例えば塩化アセチル、臭化プロピオニル、塩化アクリロイル、塩化メタクリロイル、臭化ヘキサノイル、ヨウ化オクタノイル、塩化ベンゾイル、ヨウ化4−トリフルオロメチルベンゾイル、臭化3−ニトロベンゾイル、塩化ナフトイル、臭化パーフルオロヘプテノイル、ヨウ化パーフルオロオクテノイル等を挙げることができる。
酸無水物としては、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水アクリル酸、無水メタクリル酸、無水フタル酸、無水マレイン酸、無水コハク酸等を挙げることができる。
塩基触媒としては(1a)で例示した触媒を挙げることができる。
[(4) 一般式(I)においてXとYが互いに結合して5員環を形成する重合体の製造方法]
[(4a) −X−Y−で表される2価の基が -O−CO−O- である重合体の製造方法]
原料となる末端エポキシ基含有重合体に触媒存在下、二酸化炭素を反応させることにより、−X−Y−で表される2価の基が -O−CO−O- である重合体を得ることができる。
触媒としては、塩化リチウム、臭化リチウム、ヨウ化リチウム、塩化ナトリウム、臭化ナトリウム、ヨウ化ナトリウム、塩化カリウム、臭化カリウム、ヨウ化カリウム、塩化セシウム、臭化セシウム、ヨウ化セシウム等のアルカリ金属ハロゲン化物、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化セシウム等のアルカリ金属水酸化物、トリエチルアミン過塩素酸塩等の三級アンモニウム塩、テトラブチルアンモニウムブロミド、テトラブチルアンモニウムヨージド等の四級アンモニウム塩、四級アンモニウム塩を活性基として保有する塩基性アニオン交換樹脂、酸化マグネシウム等を挙げることができる。
本発明における、触媒の使用量は特に限定されないが、原料である末端エポキシ基含有重合体と二酸化炭素の総重量に対して0.1〜200質量%が好ましく、より好ましくは1.0〜50質量%である。これらの触媒は単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
本反応は無溶媒で行うことが可能であるが、必要に応じて溶媒を使用することも可能である。使用できる溶媒とその使用量は(1a)と同様である。
反応は、液相、気相、液−気混合相の何れでも行うことができる。更に常圧、加圧、減圧の何れの状態で実施する事も可能である。反応効率の面から液相反応で行うことが好ましい。
液相反応において、原料または生成物の沸点以上の反応温度で反応を行う場合には、原料および反応生成物に対して不活性な気体(例えばアルゴン、窒素またはヘリウムなど)により加圧状態として反応を行う事もできる。
反応温度は特に限定はされないが、好ましくは0〜250℃、更に好ましくは50〜200℃の範囲である。
反応時間は特に限定されないが、好ましくは数分から30時間程度であり、更に好ましくは0.5〜15時間程度である。
原料である末端エポキシ基含有重合体と二酸化炭素の仕込み組成は特に限定はされないが、例えば末端エポキシ基含有重合体の高い転化率を達成するには末端エポキシ基含有重合体に対する二酸化炭素のモル比を高くすることが好ましい。本発明においては末端エポキシ基含有重合体に対する二酸化炭素のモル比は0.05〜50の範囲で行うことが好ましく0.5〜25の範囲が更に好ましい。
本反応後、生成物である末端カーボネートは晶出、洗浄等の精製方法により単離精製される。
また、−X−Y−で表される2価の基が-O−CO−O-である重合体は、一般式(I)におけるXとYが両方とも水酸基のもの(重合体Bと表す)を、カーボネート化剤を用いてカーボネート化することによっても合成できる。カーボネート化剤としては、ホスゲン、ジフェニルカーボネート、ジメチルカーボネート、メチルクロロホーメート、フェニルクロロホーメートを挙げることができる。
カーボネート化においては、塩基触媒および溶媒を共存させても良い。塩基触媒とその使用量、反応溶媒とその使用量は(1a)と同様である。
反応は、前記重合体B、カーボネート化剤、塩基触媒を混合し、加熱撹拌することにより進行する。反応温度は用いる重合体が溶解する温度が好ましいが、25〜300℃が好ましく、より好ましくは50〜250℃、更に好ましくは80〜200℃である。使用する化合物、溶媒によっては反応温度が沸点を超える場合があるためオートクレーブ等適切な反応装置を選択する。反応時間は使用する触媒の量、反応温度、重合体類の反応性等の反応条件により変わるが、通常数分から50時間である。本発明の製造方法では、副生物の生成が少なく、反応後は晶析操作、洗浄等の簡単な操作により、過剰の触媒、反応溶媒を除いて目的とするビシナル置換型官能基含有重合体を得ることができる。
[(4b) −X−Y−で表される2価の基が-O−CR9R10−O- である重合体の製造方法]
末端エポキシ基含有重合体のエポキシ基とカルボニル化合物を、触媒存在下、反応させることにより、−X−Y−で表される2価の基が-O−CR9R10−O- である重合体を得ることができる。ここで用いられるカルボニル化合物としては、該構造に対応するR9R10C=Oで表されるカルボニル化合物であり、例えばホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ベンズアルデヒド、アセトン、メチルエチルケトン、イソブチルメチルケトン、アセトフェノン、ベンゾフェノン、γ-ブチロラクトン、δ-バレロラクトンを挙げることができる。カルボニル化合物の使用量は、原料の末端エポキシ基含有重合体1モルに対し、1〜100モルが好ましく、より好ましくは1.1〜50モル、更に好ましくは1.2〜20モルの範囲である。
本反応で使用できる触媒としては、例えば塩基触媒およびベンジルピリジニウム塩を挙げることができる。塩基触媒とその使用量は(1a)と同様である。
ベンジルピリジニウム塩としては、例えば、4−メトキシベンジル−4’−シアノピリジニウム塩、4−メチルベンジル−4’−シアノピリジニウム塩、1−フェニルエチル−1−(4’−シアノピリジニウム)塩、ベンジル−4−シアノピリジニウム塩、4−メトキシベンジル−2’−シアノピリジニウム塩、4−メチルベンジル−2’−シアノピリジニウム塩、1−フェニルエチル−1−(2’−シアノピリジニウム)塩、ベンジル−2−シアノピリジニウム塩等を挙げることができる。触媒として使用するベンジルピリジニウム塩の使用量は、原料の末端エポキシ基含有重合体1モルに対し、0.0001〜1モルの範囲が好ましく、より好ましくは0.001〜0.1モルの範囲内である。
反応の条件は特に制限されないが、例えば室温〜80℃で5〜120分間撹拌することにより反応を行うことができる。
本反応は無溶媒で行うことが可能であるが、溶媒を使用することも可能である。使用できる溶媒とその使用量は(1a)と同様である。
また、−X−Y−で表される2価の基が-O−CR9R10−O- である重合体は、前記重合体Bの水酸基をR9R10C=Oで表されるカルボニル化合物によりアセタール化することによっても合成できる。反応は、アルコールによるカルボニル化合物のアセタール化反応の一般的な方法により行うことができる。
[(4c) −X−Y−で表される2価の基が -O−CO−CHL- である重合体の製造方法]
一般式(I)において、X、Yの一方が水酸基であり、他方が一般式(X)
(式中、Lは前記と同様の原子または基を表し、R11は水素原子またはアルキル基を表す)で示される基であるビシナル置換型官能基含有重合体(重合体Cと表す)を、(1c)の方法により合成し、該重合体を酸または塩基触媒存在下、加熱することにより、−X−Y−で表される2価の基が -O−CO−CHL- である重合体を得ることができる。
R11のアルキル基は、直鎖、分岐または環状の炭素数1〜18のアルキル基が好ましい。アルキル基の具体例としては、一般式(I)のRにおいて例示したものと同様のものが挙げられる。
反応は、重合体Cと触媒を溶媒存在下、加熱することにより進行する。酸または塩基触媒とその使用量、反応溶媒とその使用量は(1a)と同様である。
反応は、例えば次のようにして行うことができる。反応器に、重合体C、酸または塩基触媒を入れて混合し、均一に溶解するまで昇温する。反応温度は用いる重合体が溶解する温度が好ましい。25〜300℃が好ましく、より好ましくは50〜250℃、更に好ましくは80〜200℃である。使用する化合物、溶媒によっては反応温度が沸点を超える場合があるためオートクレーブ等適切な反応装置を選択する。反応時間は使用する触媒の量、反応温度、重合体類の反応性等の反応条件により変わるが、通常数分から50時間である。
反応後は晶析操作、洗浄等の簡単な操作により、過剰の触媒、反応溶媒を除いて目的とする重合体を得ることができる。
本発明の塗料用添加剤としては、上記のビシナル置換型官能基含有重合体を有効成分として含むものである。本発明の塗料用添加剤の有効成分としては、上記のビシナル置換型官能基含有重合体の1種あるいは2種以上のブレンド物のいずれでもよく、他の重合体を含んでいてもよい。
本発明の塗料用添加剤は、上記のビシナル置換型官能基含有重合体そのものでもよく、一般的な有機溶剤に希釈されたものでもよい。さらに、本発明の塗料用添加剤以外の添加剤である、酸化防止剤や耐候安定剤、耐熱防止剤等の各種安定剤、無機顔料、有機顔料等の着色剤、カーボンブラック、フェライト等の導電性付与剤等の成分を含有させることができ、所望の色調の顔料等を含んでいてもよい。
この塗料用添加剤として用いるビシナル置換型官能基含有重合体のAで表される基の重量平均分子量は、500ないし5000の範囲が好ましく、より好ましくは800ないし3000の範囲である。
本発明の塗料用添加剤は、塗料に配合して塗布することにより、塗膜表面に滑り性を付与し、塗膜の硬度、耐スクラッチ性を向上させることができる。
本発明における塗料用添加剤を塗料へ配合する際には、加熱、攪拌等の操作を行い、十分混合することが好ましい。また、塗料用添加剤を塗料へ配合する際、本発明の塗料用添加剤の有する官能基と、塗料中の塗料樹脂が有する官能基とを反応させて使用することもできる。例えば、塗料用添加剤のエポキシ基と、塗料樹脂の水酸基などを反応させる等である。その際、反応を促進する酸または塩基触媒を用いてもよい。酸触媒としては例えば、塩酸、硫酸、リン酸等の鉱酸類、p-トルエンスルホン酸等のスルホン酸類、アンバーリスト-15(登録商標)等の固体酸類、三フッ化ホウ素エーテル錯体、三塩化ホウ素、三臭化ホウ素、三塩化アルミニウム、三臭化アルミニウム、四塩化スズ、二塩化亜鉛等のルイス酸を挙げることができる。塩基触媒としては例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、セシウム等のアルカリ金属の水酸化物、炭酸塩、炭酸水素塩、マグネシウム、カルシウム等のアルカリ土類金属の水酸化物、炭酸塩、炭酸水素塩、ピリジン、4−ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミン等の有機アミン類、アンバーリスト−21(登録商標)、アンバーリスト−93(登録商標)等の弱塩基性イオン交換樹脂等が挙げられる。これらの酸または塩基触媒は単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いても構わない。
本発明の塗料用添加剤を配合する塗料としては、水系塗料および溶剤系塗料等が挙げられる。水系塗料としては、水性アクリル樹脂塗料、水性エポキシ樹脂塗料、水性ポリエステル樹脂塗料、水性アルキッド樹脂塗料、水性ウレタン樹脂塗料、水性メラミン樹脂塗料或いはこれらの樹脂を含有する塗料が、溶剤系塗料としては、溶剤型熱可塑性アクリル樹脂塗料、溶剤型熱硬化性アクリル樹脂塗料、アクリル変性アルキド樹脂塗料、ポリエステル塗料、エポキシ樹脂塗料、ポリウレタン樹脂塗料、メラミン樹脂塗料或いはこれらの樹脂を含有する塗料等が挙げられる。また、本発明の塗料用添加剤の配合量としては、通常の場合、塗料の100重量部に対して0.01〜5重量部程度、好ましくは0.05〜1重量部程度である。
上記の塗料は、本発明の塗料用添加剤以外の添加剤である、酸化防止剤や耐候安定剤、耐熱防止剤等の各種安定剤、無機顔料、有機顔料等の着色剤、カーボンブラック、フェライト等の導電性付与剤等の成分を含有させることができ、所望の色調の顔料等を含んでいてもよい。
本発明の塗料用添加剤を含有する塗料を塗布方法は特に限定するものではないが、刷毛塗り、スプレー塗装、ロールコーター、及び含浸塗装等の方法が挙げられる。塗布は通常、常温にて容易に行うことができ、また塗布後の乾燥方法についても特に限定はなく、自然乾燥や加熱強制乾燥等、適宜の方法で乾燥することができる。
また、本発明の塗料用添加剤を含有する塗料を塗布する基材としては、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン、天然ゴムやクロロプレン等のゴム、アミド樹脂、不飽和ポリエステル、ポリカーボネート、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、ABS樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、塩化ビニル、ポリスチレン等のプラスチック成型品、鋼鈑、鉄、ブリキ、トタン、アルミ板、ガラス、セラミックス等の無機成型品、紙、木材等が挙げられ、これらの上塗り、プライマー、接着剤として好適に用いる事ができる。
その他の用途
本発明の塗料用添加剤は、ワックスなどの公知の低分子量ポリエチレンが用いられる用途に広く利用することができる。この際には、必要に応じて種々の添加剤を添加して用いることもできる。
本発明の塗料用添加剤は、インキ用耐摩耗性向上剤としても好適であり、耐摩耗性向上剤として用いたときには、インキ表面の耐摩耗性、耐熱性を向上させることができる。
本発明の塗料用添加剤は、接着剤用添加剤としても好適であり、接着剤に耐熱性、流動性を付与することができる。自動車、建材などの耐熱性が要求される分野での接着剤の品質を向上させることができる。
以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、重量平均分子量(Mw)及び分子量分布(Mw/Mn)はGPCを用い、本文中で記載した方法で測定した。