JP2006052251A - 熱可塑性樹脂組成物および成形品 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 本発明の熱可塑性樹脂組成物は、ゴム含有アクリル系樹脂(A)100質量部に対して、下記一般式(I)で示されるスルホン酸のアルカリ金属塩(B)0.05〜5質量部と多価アルコール(C)0.2〜5質量部とが配合されてなる。
R−SO3M (I)
(但し、Rは直鎖ないし分岐状のアルキル基または置換基を有してもよいフェニル基(置換基は直鎖ないし分岐状のアルキル基)、Mはアルカリ金属。)
【選択図】 なし
Description
そこで、これまでにも樹脂の耐傷付き性を向上させる方法が提案されてきた。例えば、特許文献1では、特定の単量体を共重合した共重合体を含有させることで熱可塑性樹脂組成物の耐傷付き性を向上させることを提案している。
また、スチレン系樹脂に耐傷付き性を付与させる方法として、メタクリル酸メチル樹脂(PMMA)に代表されるメタクリル酸エステル樹脂等を混合し、表面硬度を高めて耐傷付き性を高める方法や、樹脂にシリコーン等を添加することにより摺動性を付与して、耐傷付き性を向上させる方法等が広く知られている(例えば、特許文献2〜5参照)。
また、本発明者らが特許文献2〜5に記載された方法を追試したところ、これらの方法では、シリコーン等の量が少ないと耐傷付き性を十分に確保でできない上に、傷付き性が向上するまでシリコーン等の添加量を増やすと低温時に白化するなどして製品の使用環境下で外観が悪化することがあった。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、成形品の外観および耐傷付き性が共に優れた熱可塑性樹脂組成物および成形品を提供することを目的とする。
R−SO3M (I)
(但し、Rは直鎖ないし分岐状のアルキル基または置換基を有してもよいフェニル基(置換基は直鎖ないし分岐状のアルキル基)、Mはアルカリ金属。)
本発明の熱可塑性樹脂組成物においては、前記多価アルコール(C)が、グリセリン系化合物および/またはそのアルキレンオキサイド付加物であることが好ましい。
また、本発明の熱可塑性樹脂組成物においては、前記ゴム含有アクリル系樹脂(A)がグラフト体(a)を含有することが好ましい。
本発明の成形品は、上述した熱可塑性樹脂組成物が成形されてなることを特徴とする。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、ゴム含有アクリル系樹脂(A)と特定のスルホン酸のアルカリ金属塩(B)と多価アルコール(C)とが配合されてなるものである。
ゴム含有アクリル系樹脂(A)は、ゴムを含有するアクリル系樹脂であれば特に制限されないが、耐衝撃性が高くなるため、グラフト体(a)を含有することが好ましい。
グラフト体(a)は、ゴムにビニル系単量体をグラフト重合したものである。ゴムとしては、例えば、ポリブタジエン、ブタジエンと共重合可能なビニル系単量体との共重合体、アクリル酸エステル重合体、アクリル酸エステル重合体と共重可能なビニル系単量体との共重合体、エチレン−プロピレンまたはブテン−非共役ジエン共重合体、ポリオルガノシロキサン等が使用できる。
メタクリル酸エステル系単量体としては、例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチルおよびこれらの誘導体等が挙げられ、この中でも特にメタクリル酸メチルが耐傷付き性の面から好ましい。アクリル酸エステル系単量体としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチルおよびこれらの誘導体等が挙げられ、この中でも特にアクリル酸メチルが耐傷付き性の面から好ましい。
芳香族ビニル系単量体としては、スチレン、α−メチルスチレン、パラメチルスチレン、ブロムスチレン等が挙げられ、特にスチレン、α−メチルスチレンが好ましい。
シアン化ビニル単量体としては、アクリロニトリル、メタクリルニトリル等が挙げられ、特にアクリロニトリルが好ましい。
マレイミド化合物としては、N−メチルマレイミド、N−フェニルマレイミド、シクロヘキシルマレイミド等が挙げられ、N−フェニルマレイミドが好ましい。
上記ビニル系単量体はそれぞれ、1種または2種以上を選択して使用できる。
さらに、硬質(共)重合体(b)は、メタクリル酸エステル系単量体単位および/またはアクリル酸エステル系単量体単位が80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましい。
さらに、得られる熱可塑性樹脂組成物および成形品の特性として、耐衝撃性を優先させる場合には、(a):10〜40質量部、(b):90〜60質量部、(c):0〜30質量部であることが好ましい。また、耐傷付き性を優先させる場合には、(a):5〜35質量部、(b):95〜65質量部、(c):0〜30質量部であることが好ましい。
スルホン酸のアルカリ金属塩(B)のアルキル基Rは、直鎖ないし分岐状のアルキル基または置換基(置換基は直鎖ないし分岐状のアルキル基)を有してもよいフェニル基であるが、耐傷付き性をより高くできることから、炭素数8〜22の直鎖ないし分岐状アルキル基であるアルキルベンゼン基が好ましい。また、アルキル金属Mについても特に限定されないが、汎用性の点から、ナトリウム、カリウムが好ましい。
スルホン酸のアルカリ金属塩(B)の含有量は、ゴム含有アクリル系樹脂(A)100質量部に対して0.05〜5質量部、好ましくは0.5〜3質量部である。スルホン酸のアルカリ金属塩(B)の含有量が0.5質量部未満では耐傷つき性が不足し、5質量部を超える場合には成形品表面に剥離が生じることがあり、また、ブリードアウトによる外観不良が起こることがある。
多価アルコール(C)としては特に限定されず、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、トリメチロールプロパン、ソルビット、グリセリン系化合物およびそのアルキレンオキサイド付加物などが挙げられる。これらの中でも、耐傷付き性をより高くできることから、特にグリセリン系化合物またはそのアルキレンオキサイド付加物が好ましい。ここで、グリセリン系化合物としては、グリセリン、ジグリセリン、重合度が3〜20のポリグリセリンが挙げられる。
多価アルコール(C)の含有量は、ゴム含有アクリル系樹脂(A)100質量部に対して0.2〜5質量部、好ましくは0.5〜3質量部である。多価アルコール(C)の含有量が0.2質量部未満では耐傷つき性が不足し、5質量部を超える場合には、得られる熱可塑性樹脂組成物の耐熱性が低下したり、ブリードアウトによる外観不良が起きたりする。さらには、成形品表面にべたつきが生じるなどして、美麗さの要求される製品性能を満足できない。
また、ヒンダードアミン系化合物としては、例えば、市販品として、旭電化工業(株)から販売されているアデカスタブ(登録商標)LA−52、同LA−57、同LA−62、同LA−67、同LA−63P、同LA−77や、チバ・スペシャリティケミカルズ(株)より販売されているTINUVIN(登録商標)622、同770が挙げられる。
また、上記製造方法においては、得られる熱可塑性樹脂組成物の性能、特に剛性を低下させず混練できることから、押出し機を使用することが好ましい。
この成形品は、耐傷付き性に優れることから、自動車の外装用部品、例えば、ドアミラーやラジエーターグリル、ガーニッシュ、ピラー等に好適に利用でき、また、家電用途としては、テレビ筐体、パソコン筐体、カメラ筐体、ビデオカメラ筐体等に好適に利用できる。
[EPDM含有架橋ラテックスの製造]
三井化学(株)製EPDM(商品名:EPT3012P(エチレン:82mol%,ジエン成分(5−エチリデン−2−ノルボルネン):1mol%))100部をn−ヘキサン566部に溶解した後、三井化学(株)製酸変性ポリエチレン(商品名:ハイワックス2203A(ポリエチレン99%、カルボキシル基含有単位1%、質量平均分子量2700))を1.0部添加し、更に、オレイン酸を加え、完全に溶解させて重合体溶液を調製した。これとは別に、水700部にKOH0.9部を溶解したKOH水溶液を60℃に保ち、これに上記重合体溶液を徐々に加えて乳化した後、ホモミキサで攪拌した。次いで、溶剤と水の一部を留去して粒径0.37〜0.45μmのラテックスを得た。このラテックスにゴム成分であるEPDM100部に対してジビニルベンゼン1.5部、ジ−t−ブチルパーオキシトリメチルシクロヘキサンを1.0部添加し、120℃で1時間反応させて、EPDM含有架橋ラテックスを調製した。
攪拌機付きステンレス重合槽に、表1に示す成分1を仕込んだ。次いで、表1に示す成分2、成分3を順に仕込み、重合温度80℃一定で重合した。なお、成分2の添加時間は150分、成分3の添加時間は180分とした。
重合後、酸化防止剤を添加し、硫酸にて固形分の析出を行い、洗浄、脱水、乾燥の工程を経て、グラフト体(a−1)の粉末を得た。なお、この重合における単量体転化率は92%で、粒子径は0.45μmであった。単量体転化率は、ラテックスの一部を採取してガスクロマトグラフィにより求めた残存単量体から算出した。
オートクレーブに、脱イオン水240部、半硬化牛脂ナトリウム石鹸1.5部、水酸化カリウム0.05部、ポリブタジエンラテックス60部を仕込み、60℃に加熱した。次いで、60℃に保持したままスチレン(ST)28部、アクリロニトリル(AN)12部を添加し、60分間放置した。その後、クメンハイドロパーオキサイド0.25部を添加し、硫酸第一鉄0.004部、ピロリン酸ナトリウム0.02部、結晶ブドウ糖0.3部を2時間かけて連続添加し、70℃に昇温して1時間保って反応を完結した。かかる反応によって得た重合体ラテックスを硫酸により凝固し、充分水洗後、乾燥してグラフト体(a−2)を得た。
オートクレーブに表2に示す原料A(ポリブタジエンラテックスのゲル含有量は60%)を仕込み、60℃に加熱した。60℃に保持したまま90分間放置後、反応率が70%以上に達したことを確認し、原料Bを仕込んだ。次いで、原料Cを100分かけて連続添加し、70℃に昇温した後、1時間保って反応を完結させた。かかる反応によって得た重合体ラテックスを硫酸により凝固させ、十分水洗後、乾燥してグラフト体(a−3)を得た。
窒素置換した反応器に水120部、ポリビニルアルコール0.5部、アゾビスイソブチロニトリル0.3部、ターシャリードデシルメルカプタン(t−DM)0.5部と、メタクリル酸メチル(MMA)98部およびアクリル酸メチル(MA)2部とからなる単量体混合物を仕込んだ。そして、反応器の温度を60℃として5時間加熱後、120℃に昇温し、4時間反応後、重合物を取り出した。転化率は94%で、得られた硬質共重合体(b−1)の質量平均分子量は150,000であった。
単量体混合物をメタクリル酸メチル90部とアクリル酸メチル10部に変更した以外は、合成例4と同様にして硬質共重合体(b−2)を合成した。転化率は96%で、硬質共重合体(b−2)の質量平均分子量は135,000であった。
窒素置換した反応器に水120部、ポリビニルアルコール0.5部、アゾビスイソブチロニトリル0.3部、ターシャリードデシルメルカプタン(t−DM)0.5部と、メタクリル酸メチル50部、アクリロニトリル15部およびスチレン35部からなる単量体混合物を仕込んだ。そして、反応器の温度を60℃として5時間加熱後、120℃に昇温し、4時間反応後、重合物を取り出した。転化率は96%で、質量平均分子量は130,000であった。
窒素置換した反応器に蒸留水120部、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.002部、ポリビニルアルコール0.5部、アゾイソブチロニトリル0.3部と、アクリルニトリル20部およびスチレン80部からなる単量体混合物を仕込んだ。そして、反応器の温度を60℃として5時間加熱後、120℃に昇温し、4時間反応後、重合物を取り出した。転化率は98%で、質量平均分子量は125,000であった。
得られた成形品の外観観察、平面磨耗試験、落砂磨耗試験、熱変形温度を下記のように行った。評価結果を表3に示す。
◎:傷が全く付いていない。
○:極僅かに傷が付いている。
△:極僅かに傷が付いており、若干の擦り傷が見られる。
×:傷が浅く付いており、擦り傷も多い。
××:傷が深く付いており、擦り傷の他、削り粉も見られる。
(2)落砂磨耗試験:100×100mm、3mm厚のプレートを45度傾斜させたまま固定し、直径φ3の穴から砂(JIS R 6111の褐色アルミナ研削材A、粒度はJIS R 6001の#36)を30cmの高さから30秒落下させた。そして、試験前光沢、試験後の光沢値より光沢保持率((試験前光沢―試験後光沢)/試験前光沢×100%)を算出した。
(4)外観(剥離)試験:成形品表面を目視にて観察し、下記判定基準に基づいて判定した。
○:層状剥離等が認められず、外観良好。
△:若干層状剥離現象が認められる。
×:層状剥離現象が酷く、外観が悪い。
(5)べたつき試験:成形品表面を手で触って下記判定基準に基づいて判定した。
○:べたつき感全く無し。
△:若干べたつき感あり。
×:べたつき酷く、手にブリード物が付着する。
本願請求項1の範囲を満たす実施例1〜4の熱可塑性樹脂組成物は、平面磨耗試験、落砂磨耗試験といった過酷な試験にも耐えるなど、耐傷付き性に優れていた。なおかつ、熱変形温度も極端に低下しておらず、成形品表面に層状剥離等の外観不良が見られず、手で触れてもべたつきが全く無い。よって、これらの熱可塑性樹脂組成物は、自動車の外装用部品や家電製品筐体として使用する際の要求性能を満足させることができる。
グリセリンの配合量が本願請求項1の範囲より少ない比較例1および比較例2の熱可塑性樹脂組成物は、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウムを含んでいるものの、平面磨耗試験、落砂磨耗試験の結果が不充分であった。
また、硬質共重合体を多量に配合し、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウムおよびグリセリンを含まない比較例3の熱可塑性樹脂組成物は、耐傷付き性が低かった。
アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム量が本願請求項1の範囲を超えた比較例4の熱可塑性樹脂組成物は、耐傷つき性に優れるものの、成形品表面に層状剥離現象が認められるなど、製品として要求される外観を満足させることができなかった。さらには、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウムの配合量が多いため、熱変形温度が低かった。
アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム量およびグリセリン量が本願請求項1の範囲を超える比較例5は、層状剥離、べたつきがひどく外観上問題がある上に、熱変形温度が低かった。
Claims (4)
- ゴム含有アクリル系樹脂(A)100質量部に対して、下記一般式(I)で示されるスルホン酸のアルカリ金属塩(B)0.05〜5質量部と多価アルコール(C)0.2〜5質量部とが配合されてなることを特徴とする熱可塑性樹脂組成物。
R−SO3M (I)
(但し、Rは直鎖ないし分岐状のアルキル基または置換基を有してもよいフェニル基(置換基は直鎖ないし分岐状のアルキル基)、Mはアルカリ金属。) - 前記多価アルコール(C)が、グリセリン系化合物および/またはそのアルキレンオキサイド付加物であることを特徴とする請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
- 前記ゴム含有アクリル系樹脂(A)がグラフト体(a)を含有することを特徴とする請求項1または2に記載の熱可塑性樹脂組成物。
- 請求項1〜3のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物が成形されてなることを特徴とする成形品。
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JP2004233116A JP2006052251A (ja) | 2004-08-10 | 2004-08-10 | 熱可塑性樹脂組成物および成形品 |
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