金属帯、中でも、帯鋼に代表される薄鋼板は、溶製後、鋳造されてスラブ状の被圧延材にされ、しかる後、熱間圧延、冷間圧延を経て製造され、あるいは更に鍍金処理等を施される場合もある。
図15は、従来から多くある熱間圧延ライン100の一例を示す。加熱炉10により数百〜千数百℃に加熱された厚み150〜300mmの金属材料(以下、被圧延材)8は、粗圧延機(列)20、仕上圧延機(列)30により厚み1〜25mmまで圧延されて薄く延ばされる。
前記粗圧延機20は、図15に示す熱間圧延ライン100の場合、R1、R2、R3の3基であるが、必ずしも基数はこれに限らない。1基だけのものや2基のもののほか、最も一般的なのは4基のものであり、基数の多いものだと6基のものまである。
最も一般的な4基のものの場合、4基のうち一部(多くの場合1機)を往復圧延するものとし、残る圧延機が一方向圧延を行う3/4連続と呼ばれるタイプが多い。しかし、4機中3機が一方向のタイプに限らず、例えば3機中1機が一方向のタイプも含め、3/4連続という。
粗圧延機20のすぐ上流に幅プレス(サイジングプレスとも称する)16を設置したものもある。
図において、21は粗圧延機20のワークロール(単にロールとも称する)、22は同じくエッジャロールである。
前記仕上圧延機30を構成する各圧延機(スタンド)の数は、図15に示す熱間圧延ライン100の場合、F1〜F7の7基であるが、6基のものもある。図において、31は仕上圧延機30のワークロール(単にロールとも称する)、F1EはF1スタンド入側のエッジャロールである。
これら各種基数の違いはあるが、粗圧延機20は、往復圧延あるいは一方向圧延あるいは両者により、一般的に合計で6回あるいは7回の粗圧延を行なって、粗圧延後の被圧延材8を、それに続く仕上圧延機30に向け供給する。6回あるいは7回というように複数回圧延することを、6パスで圧延するとか7パスで圧延するとも言う。
仕上圧延機30の各スタンド間を除いて、その他の圧延機(スタンド)間には図示しない多数(百以上)のテーブルローラが設置されており、被圧延材8を搬送する。
ところで、先述のように数百〜千数百℃に加熱された高温の被圧延材8には、加熱炉10から抽出されたとき、その表裏面に酸化物の層(以下、スケール)が生成している。この他、圧延され薄く延ばされるとともに放熱により降温していく過程でも、被圧延材8は高温の状態で大気に曝されるため、新たなスケールが被圧延材8の表裏面に生成する。このため、粗圧延機20の中の各圧延機の入側には、ポンプからの供給圧にして10〜30MPa内外の高圧水を被圧延材8の表裏面に吹き付けてスケールを除去するデスケーリング装置18が設置され、スケールを除去している。
図15において、24はクロップシャーであり、仕上圧延前に被圧延材8の先後端クロップ(被圧延材8の先後端の、いびつな平面形状の部分)を切断除去し、仕上圧延機30にスムーズに噛み込みやすい略矩形の平面形状に整形する。
40は冷却ゾーンであり、仕上圧延後の被圧延材8を水冷する。42はランナウトテーブルと呼ばれる、冷却ゾーン40のテーブルローラ群である。50はコイラであり、冷却後の被圧延材8を巻き取る。
60は制御装置、70はプロセスコンピュータ、90はビジネスコンピュータである。
26は仕上入側温度計であり、仕上圧延前の被圧延材8の温度を測定し、仕上圧延機30に被圧延材8が噛み込む際の、ロール間隙その他の各種の設定(セットアップ)を、プロセスコンピュータ70内での計算により設定値の決定を行なった結果に基づいて行なうための温度データの、制御装置60とプロセスコンピュータ70への提供の役割を果たす。
28は仕上圧延機入側に設置された仕上入側幅計、34は仕上圧延機出側に設置された仕上出側幅計、48はコイラ入側に設置されたコイラ入側幅計、をそれぞれ示し、幅データを制御装置60とプロセスコンピュータ70に提供する役割を果たす。
かような熱間圧延ラインで製造される熱延金属板としては、JISG3131に規定される熱延鋼板(鋼帯を含む)、JISG3141に規定される冷延鋼板(鋼帯を含む)やJISG3303に規定されるぶりき原板の素材熱延板、JISG4304に規定されるステンレス鋼板の他、アルミニウム板、銅板等がある。本発明にいう熱延金属板は、その後に冷間圧延されたものも含め、これらを総称したものとする。
熱間圧延における被圧延材幅の制御は、概略以下に述べるようにして行う。
加熱炉10で加熱されたスラブ状の被圧延材8を、幅プレス16が有る場合にはまず幅プレス16により幅圧下し、無い場合はそのまま、その後に続く各粗圧延機20に供給し、各粗圧延機20に付設されたエッジャロール22により、適宜な回数(粗圧延のパス数全部までいかない場合が殆ど)幅圧下し、粗圧延機出側被圧延材幅とする。仕上圧延機30の第1スタンドF1の入側にもエッジャロールF1Eが付設されている場合があり、これにて追加的に幅圧下する場合もある。
その後、仕上圧延機30においては、図16に示す、各スタンド間に設置したルーパL1、L2・・・L6から被圧延材8に与えられる張力により、幅縮みが起こるため、この幅縮みの分(以下、仕上圧延機内幅変化量)を粗圧延機出側被圧延材幅から差し引いたものが、最終的な仕上圧延機出側被圧延材幅となる。
各スタンド間に設置したルーパL1、L2・・・L6から被圧延材8に与えられる張力により、仕上圧延機内幅変化量を制御する方法について、今少し詳しく説明する。
図17は、粗圧延終了後、被圧延材8を仕上圧延し巻き取るまでの被圧延材幅の制御について、従来の方法を説明する図である。
図17に示したように、仕上圧延機内幅変化量は、大きく分けて、張力セットアップによるものと、張力AWC(Automatic Width Control)によるものと、の2つによる制御で結果的に決まる。この2つによる制御が、結果的にうまく配分されるよう調整することが好ましい。
張力セットアップについて最初に説明する。
張力はそもそも、仕上圧延中の被圧延材8の通板安定性を確保するために、例えば、あるスタンド間で言えば、被圧延材8の厚さと幅で除したユニット張力の値にして0.1乃至30MPa程度を被圧延材8の全長にわたり均一に与えるのが、原初的な方法である。この範囲を外れる場合がないわけではないが、比率としては少ない。
具体的なユニット張力の値に調整すべく、各スタンド間に設置したルーパL1、L2・・・L6から被圧延材8に与える張力の、各設定値をプロセスコンピュータ70内で決めて、図示しない各ルーパ駆動用アクチュエータ(電動機が一般的)に送る。
ここで、各設定値をプロセスコンピュータ70内で決めるにあたっては、被圧延材8の先端が仕上入側温度計26に感知されたタイミングで、計算が起動して決める。
被圧延材8の先端が、該当するルーパのすぐ下流側のスタンドに噛み込んだら、その決めたユニット張力の値に調整できるよう、各ルーパ駆動用アクチュエータの出力(電動機であれば図16中の円弧状矢印Rの向きの増減される駆動トルク)を発揮させるべく、被圧延材8の先端が噛み込んでくるまで待ち構えておく。このことを張力セットアップという。
そして、被圧延材8の先端が、該当するルーパのすぐ下流側のスタンドに噛み込んだら、その決めたユニット張力の値に向け、各ルーパ駆動用アクチュエータの出力を発揮させるべく動作させるようにする。
被圧延材8の先端が実際に噛み込み、その決めたユニット張力の値に調整が行なわれると、各スタンド間に設置したルーパL1、L2・・・L6から被圧延材8に与えられる張力により、結果的に被圧延材の幅が縮む。
仕上圧延機内幅変化量のうち、張力セットアップによるものは、この、被圧延材の幅が結果的に縮む分を計算により正確に予測できればそれに越したことはない。
しかし、これをモデル式等により正確に予測するのは困難であったため、加熱炉から被圧延材を抽出する以前等には、従来から、代わりに例えば、材質、仕上圧延後厚、その他をキーとして、経験的に知見して得たテーブル値を、プロセスコンピュータ70内に持ち、各被圧延材8が仕上圧延機18に噛み込もうとする度毎に索引して設定し、予測する、という方法が取られていた。
このことにより、仕上圧延機内幅変化量のうち、張力セットアップによるものは、加熱炉10から被圧延材を抽出する以前等には、経験的にある程度の予測精度で予測されるに止まっていた。
張力AWCについて次に説明する。張力AWCは、仕上圧延機出側での被圧延材幅の目標値と実績値の差が被圧延材8の長さ方向に変動する分を小さくするべく、各スタンド間での被圧延材8に働く張力を、目標値と実績値の差が小さくなりそうな長さ方向部分については弱め、大きくなりそうな長さ方向部分については強めるよう制御することで、仕上圧延機出側での被圧延材幅の精度を向上できる有効な方法として用いられている。
例えば、従来、図16に示すように、仕上圧延機入側での被圧延材幅を、仕上入側幅計28にて実測し、各スタンド間での被圧延材8に働く張力を、被圧延材8の全長にわたり、目標値と実績値の差(目標値<実績値)が小さくなりそうな長さ方向部分については弱め、大きくなりそうな長さ方向部分については強めるよう制御していた。
各スタンド間での被圧延材8に働く張力を、目標値と実績値の差が小さくなりそうな長さ方向部分については弱め、大きくなりそうな長さ方向部分については強めるに際し、それが結果的にどの程度の値になるかは、制御ゲイン次第で決まる。
張力セットアップが、張力の目標値を、被圧延材の全長にわたり、均一に与えるのに対し、張力AWCは、特に張力の目標値を持つわけではなく、張力セットアップによる張力の目標値に対する、張力の増減分が、制御ゲイン次第で結果的に発揮されて決まる点、張力を被圧延材の長さ方向で変化させる点、が異なる。
張力AWCによる仕上圧延機内幅変化量は、制御ゲイン次第で結果的に決まることは前述した通りであるが、その量の大小は、各被圧延材8に、スキッドマークによる長さ方向温度変動等の幅変動要因がどの程度あったか等の実績による。
よって、これもまた、モデル式等により正確に予測するのは困難であったため、加熱炉10から被圧延材8を抽出する以前等には、従来から、代わりに例えば、材質、仕上圧延後厚、その他をキーとして、経験的に知見して得たテーブル値を、プロセスコンピュータ70内に持ち、各被圧延材8が仕上圧延機30に噛み込もうとする度毎に索引して設定し、予測する、という方法が取られていた。
このことにより、仕上圧延機内幅変化量のうち、張力AWCによるものもまた、加熱炉10から被圧延材8を抽出する以前等には、経験的にある程度の予測精度で予測されるに止まっていた。
ちなみに、仕上圧延機30出側からコイラ50にかけてのランナウトテーブル(ROT)42上でも、張力が作用するため、被圧延材8の幅縮みが起こる。幅縮みが起こってもなお、巻取時における被圧延材幅目標値(製品幅)を実績値が下回ってはいけない。よって、これも従来から、仕上出側被圧延材幅に対し、巻取時における被圧延材幅がそれをどれだけ下回るか、その差をROT幅変化量として予測し、巻取時における被圧延材幅目標値(製品幅)にROT幅変化量を足し算することで仕上出側被圧延材幅の目標値を決定するようにしていた。
しかし、このROT幅変化量については、モデル式等により正確に予測するのは困難であるとはいえ、従来から、代わりに例えば、材質、仕上圧延後厚、その他をキーとして、経験的に知見して得たプロセスコンピュータ70内のテーブル値(図17に示すROT幅変化量テーブル)を、各被圧延材8が仕上圧延機30に噛み込もうとするたびごとに索引して設定し、予測する、という方法がとられ、それでそこそこの精度で予測できていたことから、あまり問題とはなっていなかった。
以上のように、仕上圧延機内幅変化量(張力セットアップによるもの、張力AWCによるもの)とROT幅変化量を、特に仕上圧延機内幅変化量の場合は、経験的にある程度の予測精度で予測されるに止まるにもかかわらず、予測しなければならなかった理由は、それを予測しないと、粗圧延機出側被圧延材幅の目標値が決められず、結果的に、粗圧延における、幅プレス16やエッジャロール22による幅圧下は一切これを行なうことができなくなってしまうからである。
ちなみに図17は、F1スタンド入側エッジャロールF1Eを備えた場合を例に取っているので、F1Eでの幅圧下による仕上圧延機内幅変化量をモデル式により予測しているが、F1Eを備えていない場合は省略される。
さて、ここから、話は変わり、本発明をなすきっかけになった、従来の張力AWCの問題に関して、以下に述べていく。
従来の張力AWCでは、実際に被圧延材8を圧延する際に、図17中の仕上圧延機内幅変化量に影響を与える因子、例えば、ロール冷却水の漏れた分が被圧延材上に乗る、いわゆる水乗りの状態その他が変動しても、被圧延材幅目標値を一定としており、思うように被圧延材幅目標値に近づけられない場合があった。
図18はその例である。黒丸は張力AWCを行なわない場合を示す。これに対し、もし今仮に、白丸に示すごとく、F4出側からF7出側(仕上出側)にかけての仕上圧延機内幅変化量が予測より大きいと、L1、L2、L3が張力AWCの制御出力により被圧延材幅が目標値通りになったとしても、F7出側での被圧延材幅(仕上出側幅)実績値が目標値より狭くなる、いわゆる幅マイナスの幅不良が発生する場合が有り得ることを模式的に示している。
また、図18には示していないが、逆の例も同様で、F4出側からF7出側(仕上出側)にかけての仕上圧延機内幅変化量が予測より小さいと、L1、L2、L3が張力AWCの制御出力により被圧延材幅が目標値通りになったとしても、F7出側での被圧延材幅(仕上出側幅)実績値が目標値より広くなる、いわゆる過幅の幅不良が発生する場合もある。
ここで、一つ注記しておくべきことがある。これは、熱間圧延における被圧延材幅の制御が宿命的に抱えている本質的な課題とも言える。それについて以下に述べることにするが、第一の問題は、もしも、需要家の注文した幅を被圧延材幅実績値が下回る、いわゆる幅マイナスの幅不良が発生すると、需要家の注文重量を下回らなければ、需要家の注文した幅を被圧延材幅実績値が下回る部分を切除することで対応がつくものの、運悪く注文重量を下回るということになると、別途需要家の注文の条件を満たす幅の被圧延材を、まるまる新たに再生産する必要が生じ、納期遅延につながる不利益を蒙るということである。
第二の問題は、付随的に、需要家の注文した幅を被圧延材幅実績値が下回る部分を持つに至った被圧延材の方は、転用できそうな他の注文が入るまで何日もの間そのままの状態で待つ必要が生じ、在庫増加につながる不利益も蒙るということである。
そして、第三の問題は、需要家の注文した幅を上回れば一応合格ではあるが、上回る分がある一定以上大きい場合、いわゆる過幅の幅不良ということで、許容範囲を越えて幅の広い分を切捨てただけ歩留まり低下につながり、これも不利益を蒙ることにつながるということである。
が、いずれにせよ、従来の張力AWCでは、先述のように、図17中に示した仕上圧延機内幅変化量の目標値が張力セットアップの段階で一度テーブル値で決定されてしまうと、実際に被圧延材を圧延する際に、仕上圧延機内幅変化量に影響を与える因子が変動しても、これに対応できない。
このため、従来は、安全のため、歩留まりがある程度低下するのには目をつぶりつつ、仕上圧延機出側における被圧延材幅の目標値を大きめに設定することで、対応せざるを得ないという問題があった。
そこで、この問題を解決しようと、例えば、特許文献1には、仕上圧延機のスタンド間および仕上圧延機出側に設置された幅計を用い、張力AWCをフィードバック的に行うことが提案されている。
また、特許文献2には、仕上圧延機のスタンド間または仕上圧延機出側に設置された幅計を用い、張力AWCを行う際の張力の設定値を圧延途中で変更することが提案されている。
特開平09−024404号公報
特開平07−178427号公報
以下、本発明の一つの実施の形態について説明する。熱間圧延における被圧延材幅の制御は、大別して、
(1)加熱炉から被圧延材を抽出後、粗圧延終了までの被圧延材幅の制御
(2)粗圧延終了後、被圧延材を仕上圧延し巻き取るまでの被圧延材幅の制御
の2段階で実施されるが、本発明は、中でも後者の、粗圧延終了後、被圧延材を仕上圧延し巻き取るまでの部分に特徴があるため、便宜上、後者の、粗圧延終了後、被圧延材を仕上圧延し巻き取るまでの被圧延材幅の制御について先に説明し、加熱炉から被圧延材を抽出後、粗圧延終了までの被圧延材幅の制御については後で説明する。
(2)粗圧延終了後、被圧延材を仕上圧延し巻き取るまでの被圧延材幅の制御
図1は図16のものを基本的に踏襲した、本発明を適用すべき熱間圧延ラインの仕上圧延機30の部分を、拡大して示した図である。
図1の例では、仕上出側幅計34が仕上圧延機30の出側に、スタンド間幅計32,33がF4出側(F4とF5の間)とF5出側(F5とF6の間)にそれぞれ、設置されている。以降、この場合を例に説明するが、本発明は、これら3台の幅計を用いる場合に限られるものではなく、スタンド間幅計32,33の設置位置もF4出側とF5出側に限られるものではない。
(第一の実施の形態)
ここで、本発明の一つの実施の形態についての具体的な説明に移る。
被圧延材8の最先端が各幅計32〜34の直下を通過した瞬間に、各幅計とも被圧延材幅実績値の出力を開始し、以降、圧延継続中ずっと出力し続け、制御装置60経由でプロセスコンピュータ70にリアルタイムに伝送し続ける。
被圧延材8の最先端には、後述するように、フレア変形による局部的に幅広な部分ができていることや、張力が作用しないために起こる被圧延材8の先端何mかの部分のばたつき、蛇行が起こり得るため、正確に被圧延材8の幅を測定できない可能性があること、等の事情があるため、第一義的には、被圧延材8の先端何mかの部分を除いた、先端からある程度、長手方向中央寄りの位置の幅を以って代表させ、圧延初期に実測した被圧延材幅実績値とする。
また、第二義的には、あまりに被圧延材8の長手方向中央寄りになると、本発明の趣旨である、圧延初期に実測した被圧延材幅実績値の目標値からの偏差の分、被圧延材幅目標値を補正する、という方法をとっても、仕上圧延後の被圧延材幅の精度を向上できる長さ方向領域がそれだけ短くなるため、できる限り被圧延材8の最先端寄りの位置の幅を以って代表させ、前記の通り、圧延初期に実測した被圧延材幅実績値とする。
具体的には、例えば、被圧延材8が幅プレス16によるプレスすらも未だされていないスラブの段階での、被圧延材8の先端から尾端側に向かって0.5mのポイントを以って代表させる、という具合にするのが好ましいが、あくまで一例であり、別な例としては、粗圧延機20の出側での段階での、被圧延材8の最先端から尾端側に向かって3mのポイントを以って代表させるようにする、あるいは、それら固定的なポイントでの値ではなく、周辺何点かの平均値を以って代表させるようにする等、その他の方法によっても良く、本発明の実施の形態は前述のものに限られない。
被圧延材8の最先端から尾端側に向かって何mかのポイントあるいは周辺何点かの平均値を以って代表させたポイントのことを代表ポイントと称することにすると、本発明では、代表ポイントにおける被圧延材幅(周辺何点かの平均値を以って代表させた場合は各点での被圧延材幅の平均値)を、圧延初期の被圧延材幅として、仕上圧延機のスタンド間および出側に設置された幅計32〜34により実測して求める。
ところで、仕上圧延の各パスを経ることにより、被圧延材8は次第に薄くなっていく。従って、何パス目の圧延の終了後かにより、代表ポイントの、被圧延材8の、最先端からの距離が異なることになる。してみれば、各幅計32〜34の別によっても、圧延初期に実測した被圧延材幅実績値とすべき、被圧延材8の最先端からの距離は、異なることになる。
そこで、被圧延材幅実績値とすべき、被圧延材8の最先端からの距離と、各幅計32〜34の設置位置での被圧延材8の厚みと、の積が略一定になる(正確には、更にそれに幅を掛けた値が一定だが誤差は無視できるほど小さい)関係を利用し、下記のように表せることを利用する。
t0×d0=ti×di ・・・(1)
t0:粗圧延後の被圧延材厚
d0:代表ポイントの、粗圧延後の被圧延材の、最先端からの距離
ti:仕上圧延機第iスタンドで圧延後の被圧延材厚
di:代表ポイントの、仕上圧延機第iスタンドで圧延後の被圧延材の、最先端からの距離
ここで、被圧延材厚については、プロセスコンピュータ70内でデータとして各種計算に使うため等の目的で所有している、仕上圧延の各パス圧延の終了後の被圧延材厚の目標値を用いても良いし、あるいは、図示しないが、各スタンドの出側に板厚計を有していたり、新たに設置したりしても良いが、その板厚計によって実測した被圧延材厚を以って、上記(1)式に代入したりして得ても良い。
ちなみに、ここでは直接関係ないが、仕上圧延の各パス圧延の終了後の被圧延材幅の目標値も同様にプロセスコンピュータ70内にデータとして存在する。
代表ポイントの、仕上圧延機第iスタンドで圧延後の被圧延材8の、最先端からの距離については、具体的に被圧延材8の最先端が各幅計32〜34の直下を通過してから、代表ポイントが各幅計32〜34の直下に到達するまでの圧延によって延びた長さの分だけを認識する必要があり、それには次に述べるトラッキングを用いる。
トラッキングは、プロセスコンピュータ70にオペレータにより手入力あるいは図示しないロール研削用のグラインダから自動入力される各スタンドに投入するロール31の直径に円周率を掛け、更に、それらロール31による被圧延材8の最先端噛み込みによる荷重の起立タイミングを起点とするロール31の延べ回転数(微小角度回転ごとにパルスを発するロータリーエンコーダ等をロール31の軸に取り付け、制御装置60でパルス数をカウントすることで可能)に先進率を掛け算することでリアルタイムに行う。
先進率は、プロセスコンピュータ70内で、仕上圧延の各パス圧延の終了後の被圧延材厚の目標値からそのスタンドでの圧下率を求め、それに係数を掛ける等の方法で、モデル式により計算するのが好ましいが、代わりに例えば、材質、仕上圧延後厚、その他をキーとして、経験的に知見して得たプロセスコンピュータ70内のテーブル値を用いる等しても良い。
あるいは、トラッキングは、次のようにして行ってもよい。
まず、スラブ段階で実貫した被圧延材重量を図示しない秤量計で実測した値をプロセスコンピュータ70に送り、それを比重(材質をキーに、プロセスコンピュータ70内のテーブル値を索引する)で割り算して体積を求め、体積熱膨張係数(材質をキーに、プロセスコンピュータ70内のテーブル値を索引する)と各パスでの温度予測値(詳説しない予測計算ロジックによる)の常温との差を掛け算したものを、各パスの圧延終了後の被圧延材幅、被圧延材厚の設定値でそれぞれ割り算して被圧延材長を求める(被圧延材幅、被圧延材厚は設定値通りに実際になるものと想定する)。
そして、ロール31の直径に円周率を掛け、ロール31による被圧延材8の最先端噛み込みによる荷重の起立タイミングを起点とするロール31の延べ回転数(微小角度回転ごとにパルスを発するロータリーエンコーダをロール31の回転軸に取り付け、制御装置60でパルス数をカウントすることで可能)を掛け算し、更に、先進率を掛け算したものが、被圧延材8の最先端から尾端側に向かってのそれらポイントの距離に達したら、それらポイントが各幅計32〜34の直下に達したと認識するようにする。
あるいは更に、トラッキングには、以上述べた二つの方法の他に、レーザ板速計を用いて行なう方法もある。
ここで、本発明では、圧延初期に仕上圧延機30のスタンド間及び/又は出側に設置された幅計32〜34により実測した被圧延材幅実績値の、同幅計設置位置での被圧延材幅目標値からの偏差に基づき、被圧延材幅目標値を補正し、以降の圧延を継続する。
それには、代表ポイントが、図1に示すスタンド間幅計32,33,34のいずれかの直下に到達したら、図2に示すように、被圧延材幅目標値と、代表ポイントにおける被圧延材幅実績値の差をとり、それに適宜なゲインを掛けて張力加算値に換算する。このゲインは、例えば、被圧延材幅目標値と、被圧延材幅実績値の差を入力したときに、その差の分を丁度補償するような張力加算値が出力されるような値に調整する。あるいはそれに0より大で1以下の値を掛けたような値としても良い。
張力制御用アクチュエータ、例えば、L1,L2・・・L6で示すような各スタンド間に設置されたルーパが、幅計よりも下流側にある場合(例えば、スタンド間幅計32に対しL5,L6がこれに該当)には、即座に、あるいは、代表ポイントが該張力制御用アクチュエータに到達したタイミングにて、被圧延材幅目標値を補正する。
すると、結果的に、被圧延材幅目標値を補正した分に相当する張力加算値の分が、張力目標値に加算され、以降の圧延を継続することになる。
張力制御用アクチュエータが幅計直下あるいはそれよりも上流側にある場合(例えば、スタンド間幅計32に対しL1,L2,L3,L4がこれに該当)には、代表ポイントが該幅計の直下に到達したタイミングにて、即座に、その張力加算値の分を、張力目標値に加算して、目標幅を補正し、以降の圧延を継続する。
図3はF4を上方から見た平面図である。被圧延材先端部を除いた長さ方向中央域は、長さ方向と、わずかではあるが幅方向にも、広がろうとするのに対し、被圧延材先端部は、非拘束な自由端であるが故、3方向に同等に広がろうとする、いわゆるフレア変形が起こる。これにより、被圧延材先端部には、局部的に幅広な部分ができている。
今もし仮に被圧延材8について、圧延初期にF4出側スタンド間幅計32の設置位置での被圧延材幅目標値が、図3に点線で示したように、wとなることを予定していたところ、同位置でスタンド間幅計32により実測した被圧延材幅実績値は、実線で示すWであったとする。
F4出側ではなくてF5出側で、スタンド間幅計32でなくて33で実測した場合でも、あるいはF4出側でもF5出側でもなくて、仕上圧延機30の最終圧延機であるF7出側で、仕上出側幅計34にて実測した場合も、状況は同じである。
このときの本発明の作用を以下に説明する。先述の図3の例のごとく、F4出側に至るまでの仕上圧延機内幅変化量(幅縮み量)が予測より大きく、被圧延材の先端部の幅の実績値が目標値よりも4.0mm狭く出たとする。すると、このままでは、F7出側(仕上出側)での被圧延材幅(仕上出側幅)実績値が同目標値より4.0mm狭くなり、幅マイナスの幅不良が発生する。
この幅不良の発生を防止するためには、例えば、仕上出側での被圧延材幅の当初の目標値を、4.0mmだけ広げれば良い。あるいは、いずれかのスタンド間幅計の設置位置における被圧延材幅の当初の目標値の方を、4.0mmだけ広げても良い。
しかし、そのようにすると、結果的に、仕上出側での被圧延材幅の実績値と目標値との偏差として、結果的に、0を狙うことになるため、何らかの誤差により、被圧延材幅実績値がマイナス側に振れた場合、これを補償する方法がない。
そのため、図4に示すように、仕上出側での被圧延材幅の当初の目標値と補正後の目標値との偏差として、余裕代α(図では0.5mm)を確保できるような仕上出側被圧延材幅目標値を狙うようにするのが好ましい。あるいは更に、このαの分を、下流側の仕上出側幅計34を用い、張力AWCをフィードバック的に行って補償するようにしても良い。
(第二の実施の形態)
幅計が仕上圧延機30の出側にだけ設置され、スタンド間に設置されていない場合は、代表ポイントが仕上出側幅計34の直下に到達したタイミングにて、仕上出側幅計34よりも上流側にある張力制御用アクチュエータ(L1,L2,L3,L4,L5,L6全てがこれに該当)に対し、即座に、その張力加算値の分を、張力目標値に加算して、目標幅を補正し、以降の圧延を継続する。
(第三の実施の形態)
あるいは、本発明の別な実施の形態としては、仕上出側での被圧延材幅の目標値と、スタンド間幅計の設置位置における被圧延材幅の目標値の、両方を合わせて補正するようにしても良い。それには、図5に示すように、スタンド間幅計(ここでは32)の設置位置における被圧延材幅の目標値は、
仕上出側での被圧延材幅の当初の目標値と、補正後の目標値との偏差−β
だけ補正するようし、仕上出側幅計34における被圧延材幅の目標値は、βだけ補正すれば良い。
βは、「仕上出側での被圧延材幅の当初の目標値と、補正後の目標値との偏差−β」が、結果的に、仕上圧延機30の下流側の各スタンド間に設置したルーパL4、L5、L6にて被圧延材幅を制御可能な範囲(例えば4.0mm)の1/2程度とするのが妥当であり、おおむねβ=2.0mm程度とするのが好ましく、補正の分担としては、スタンド間幅計32の設置位置より上流で2.0mm補正し、下流で2.0mm補正する、という位が好ましい。(図5では、上流側に相当するF4出側では、2.0mm+2.0mmの合計4.0mm分補正するように描いている。)
また、この場合も余裕代α=0.5mmを確保するようにする方が好ましい。
なお、以上述べた例では、被圧延材8の先端部の幅の実績値が目標値よりも4.0mm狭く出た場合を例にとったが、逆に、被圧延材8の先端部の幅の実績値が目標値よりも広く出た場合も同様に考えてよい。
(第四の実施の形態)
また、以上述べた例では、スタンド間幅計としてF4出側に設置したスタンド間幅計32を用いる場合を例に説明したが、図6に示すように、F5出側幅計33を用いる等しても勿論良く、その場合でも、βの値は、F5より下流側の各スタンド間に設置したルーパL5、L6にて被圧延材幅を制御可能な範囲の1/2程度とするのが好ましい。図6では、L5、L6にて制御可能な範囲(例えば3.0mm)の1/2程度のβ1=1.5mm、L4にて制御可能な範囲(例えば1.0mm)の1/2程度のβ2=0.5mmとしている。(図6では、上流側に相当するF5出側ではβ1+β2=2.0mmが、F4出側では、β1+β2=2.0mmに加え、更に2.0mmを合計した4.0mm分補正するように描いている。)
また、この場合も余裕代α=0.5mmを確保するようにする方が好ましい。
その他、第四の実施の形態に加え、更に他のスタンド間にも幅計を設置し、これも用いるようにしても勿論良い。
(1)加熱炉から被圧延材を抽出後、粗圧延終了までの被圧延材幅の制御方法
以下、順を追って説明する。
ビジネスコンピュータ90内には、その製品が、熱間圧延終了後に更に冷間圧延されるものであるか、熱間圧延終了後に冷間圧延を経ないで需要家に納入されるものか、の情報が、需要家からオーダを受けた段階で入力される。その中に製品幅(常温における)も含まれる。
熱間圧延終了後に更に冷間圧延されるものであれば、冷間圧延による幅変動分を見越して熱間圧延終了後の被圧延材幅の基準値が決められる。熱間圧延終了後に冷間圧延を経ないで需要家に納入されるものであれば、冷間圧延による幅変動分を見越して熱間圧延終了後の被圧延材幅の基準値を決定する必要はない。がしかし、熱間圧延終了後までの被圧延材幅の制御方法は両者で共通しているため、以下、後者の場合を例に説明する。
ビジネスコンピュータ90から伝送経路92を通じてそれら製品に関する情報を受信する、熱間圧延ライン100に付設のプロセスコンピュータ70内では、詳説しないロジックにより、需要家の要求する製品幅に対し、安全代(いわゆるスキッドマークによる幅変動分や、制御の誤差分を見越した値)を足し算した値を目標に、仕上圧延後の被圧延材幅を可及的にそれに近づけるよう、エッジャロール22の開度、仕上圧延機30のスタンド間で被圧延材8に働く張力を主とする各種設定値を計算し、それらは制御装置60に伝送され、制御装置60からの指令を受けて各種アクチュエータが制御される。仕上圧延後の被圧延材幅の目標値としては、正確には、仕上圧延終了後の被圧延材の温度の目標値と常温との温度差による、被圧延材幅の熱膨張分だけ広めの値がプロセスコンピュータ70内で設定される。
同じく、プロセスコンピュータ70内においては、先述の図17で詳説したロジックにより、仕上圧延中、仕上圧延機間で被圧延材8に働く張力によって起こる幅縮み(仕上圧延機内幅変化量)を、ある値に設定し、仕上圧延後の被圧延材幅の目標値に足し算して、仕上圧延前すなわち粗圧延後の被圧延材幅の目標値として設定する。
図7は、仕上圧延後の被圧延材幅の目標値を基に、以上述べた各種の上乗せ分について、粗圧延後の被圧延材幅の目標値が決まるまでの、それらの関係を模式的に示したものである。
例えば、極低炭素鋼の製品幅970mm(基準値)、許容代(−側ゼロmm、+側20mm)の場合の例でいえば、安全代を15mm見越して985mmとし、更に熱膨張分を、線膨張係数1.0×10-5(1/m/℃)×仕上圧延後の被圧延材幅の目標値0.985m×仕上圧延終了後の被圧延材の温度の目標値と常温との温度差900℃=8.865mm上乗せし、少数点以下四捨五入して994mmとし、最後に仕上圧延機間で被圧延材8に働く張力セットアップならびに張力AWCによる仕上圧延機内幅変化量を6mmと見込んで上乗せし、最終的に粗圧延後の被圧延材幅の目標値を1000mmと設定した場合の例である。
ここで、加熱炉10から被圧延材8を抽出後、粗圧延終了までの被圧延材幅の制御方法のうちの、エッジャロール22の開度のセットアップ、即ち、粗圧延各パスでの、被圧延材8の先尾端部を除いた部分における、エッジャロール22の開度の目標値の決定方法について、以下に説明する。
粗圧延後の被圧延材1本単位に、プロセスコンピュータ70内において、各粗圧延機20に付設のエッジャロール22の各パスについて、目標とする幅圧下量を、材質、製品幅をキーとして(製品厚等、その他のキーを設けてもよい。)、同じプロセスコンピュータ70内に記憶してあるテーブル値を索引することで、例えば下表1に示すように設定する。表1中、E1、E2、E3はそれぞれ、R1、R2、R3に付設のエッジャロールを意味する。表1中、下欄は、例えば、粗圧延後の被圧延材幅の目標値が1000mmのとき、目標通りに実績が推移した場合の各パス後の被圧延材幅の予定値を参考までに示したものである。参考値であるため、括弧書きしている。あくまで、幅圧下制御は上欄の各パス幅圧下量に基づいて行われる。
充当すべきスラブは1200mmのものとし、表1の最左欄に示す通り、幅プレス16で125mm幅圧下して1075mmにすればよい計算になることを付記しておく。
また、表1中、E1の1パス目の幅圧下量が5mmと小さくなっているのは、E1の1パス目では、幅プレス16によってできる微小な幅の段差(段差プレス分を除く)をならすために行っているものだからである。ちなみにF1Eについてはフリー(圧下しない状態)を想定し、幅圧下量は0mmを想定している。
各パスについて、目標とする幅圧下量を設定したら、各パスでの幅圧下後の被圧延材幅も簡単に決まるから、ここで用いる、幅圧下と被圧延材変形のモデルについて、以下に登場する各パラメータの幾何学的関係は図8に示すが、以下に述べるロジックにより、各パスにおける、エッジャロール開度の設定値を決める。
但し、各パスについて、目標とする幅圧下量を設定したら、そのときにエッジャロール22にかかる荷重による、エッジャロール22の開度の増加分を詳説しないロジックにより予測計算し、それを見越したエッジャロール22の開度を設定するようにする。
ここにおいて、各パス後の被圧延材幅をWiとすると、1つ前のパスによる幅圧下後の被圧延材幅がWi-1に相当し、各パスについて、上記表1の目標値が設定され、各計算が行われる。
計算のタイミングは、例えば、まだ対象である被圧延材8が加熱炉10内にあり、次々抽出の番になった時、等とすればよいが、これに限るものではない。そして、被圧延材8の先端が各粗圧延機20に付設のエッジャロール22に噛み込む直前に、各エッジャロール開度となるよう、下記(1)式におけるエッジャロール開度XEを設定する。
XE=Wi−(ΔWH+ΔWD)−P/M・・・(1)
ΔWH=f(WE、Hi-1、Hi、RH)
ΔWD=g(Wi-1、WE、RE、Hi-1)
XE:エッジャロール開度の設定値
Wi:圧延後被圧延材幅
ΔWH:圧延により被圧延材が幅広がりする量(矩形幅広がり)
ΔWD:エッジャロールによる幅方向の圧延でできるドッグボーンが水平圧延により被圧延材が幅広がりする量
P:被圧延材を幅圧下時にエッジャロールにかかる荷重によるエッジャロール開度の増加分
M:エッジャミル定数
Hi-1:圧延前板厚
Hi:圧延後板厚
RE:エッジャロール半径
RH:ロール半径
Wi-1:エッジャロール入側被圧延材幅
ここで、Wi-1は、一つ前のパスまでの被圧延材幅が目標値通りに制御されているものとして、一つ前のパス後の被圧延材幅の目標値とする。図8を参照すると、今、E2の1パス目の被圧延材8の先端を除いた部分におけるエッジャロール開度を設定しようとしている場合は、E1の最終パス後の被圧延材幅の目標値がWi-1に相当する。もしもE3(一方向にしか圧延しない)における、被圧延材8の先端を除いた部分におけるエッジャロール開度を設定しようとしている場合は、E2の最終パス後の被圧延材幅の目標値がWi-1に相当する。同様に、E1の1パス目の被圧延材8の先端を除いた部分におけるエッジャロール開度を設定しようとしている場合は、プレス後の被圧延材幅の目標値が、Wi-1に相当する。F1Eの被圧延材8の先端を除いた部分におけるエッジャロール開度を設定しようとしている場合は、E3の出側の幅の目標値が、Wi-1に相当する。
ところで、被圧延材先尾端に発生するフレアへの対策としては、ショートストローク制御を行うことで対応する。このショートストローク制御について、以下に今少し詳しく説明する。
ちなみに、フレアとは、図9に示すような、水平圧延によって被圧延材8の先端と尾端にできる、局部的な幅の広い部分B、Cのことである。
図9は、被圧延材8を幅方向に圧下しない場合について示したものであるが、粗圧延機20の入側に付設の先述のエッジャロール22にて、その開度を、例えば、被圧延材8の全長にわたり、被圧延材8の幅よりも若干狭い開度で一定にして、被圧延材8の幅方向の圧延(以下、エッジャの開度一定制御)と、それにつづく水平圧延(ワークロール31による被圧延材8の厚さ方向の圧延)を行うと、今度は、先端も尾端も図10にB’、C’で示すように局部的に幅狭になる。
水平圧延だけを考えれば、被圧延材8の先端と尾端では、若干、幅が広がる方向にフレアができる作用があるはずであるが、多くの場合、水平圧延に先立って行われるエッジャロール22による幅圧下によって生じた被圧延材8の幅端部の局部的な増厚分(いわゆるドッグボーンD)は、図11に示すように被圧延材8の先端と尾端では小さく、先端と尾端を除いた中間では大きいため、エッジャロール22による幅方向の圧延に続く水平圧延でその増厚分が幅外側に広がる、いわゆる幅戻り量も先端と尾端では小さく、先端と尾端を除いた中間部分では大きくなり、先端と尾端を除いた中間部分の幅戻りが先端と尾端の幅戻りに勝って、そのようになるのである。
よって、この解決策として、先尾端のフレア量を計算により予測し、この計算により予測したフレア量を補償するよう被圧延材先端について行なう幅圧下制御がショートストローク制御である。
ショートストローク制御は、その幅狭になりそうな分に相当する開度だけ、幅狭になりそうな被圧延材長さについて、エッジャロール22の開度を広くするよう制御することで、これを行なう。
図12に示すように、被圧延材8の先端でかつ幅端からΔVs・s/2だけ幅方向に入った位置を始点とし、被圧延材長さ方向にlsだけ入り、かつ幅端からΔVE/2だけ幅方向に入った位置を終点として、両者を結ぶように、エッジャロール周面が軌跡を描いて動くようにしている。(被圧延材8の長さ方向に対してエッジャロール周面の軌跡は結果的に図12中の角度θsをなすようにテーパ状に幅中央側に動く)
図12の例の場合、一対、即ち2つあるエッジャロール22の双方合わせて、被圧延材8の最先尾端でのエッジャ開度の、同中間部分でのエッジャ開度に対する広さ、即ち、Vs=(ΔVE/2−ΔVs・s/2)×2を、先述の幅狭になりそうな分に相当する開度(以下、ショートストローク量)としているわけである。また、先述のlsはショートストローク長と称する。