JP2006048840A - 磁気記録媒体およびその製造方法、ならびに磁気記録媒体の記録再生方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 2以上の方向で記録および再生が可能であり、量産性に優れた信頼性の高い磁気記録媒体を提供する。
【解決手段】 非磁性支持体の少なくとも一方の表面に、柱状結晶構造を有する磁性金属膜を、その厚さをδ(nm)、残留磁束密度をBr(G)としたときに、δ(nm)≦100、Br(G)≦3000、およびBr・δ・10-3(G・μm)≧50を満たすように形成し、必要に応じて磁性金属膜の上に保護膜および潤滑剤層を形成し、非磁性支持体の磁性金属膜が形成された面とは反対側の面にバックコート層を形成して、磁気記録媒体を得る。
【選択図】なし
【解決手段】 非磁性支持体の少なくとも一方の表面に、柱状結晶構造を有する磁性金属膜を、その厚さをδ(nm)、残留磁束密度をBr(G)としたときに、δ(nm)≦100、Br(G)≦3000、およびBr・δ・10-3(G・μm)≧50を満たすように形成し、必要に応じて磁性金属膜の上に保護膜および潤滑剤層を形成し、非磁性支持体の磁性金属膜が形成された面とは反対側の面にバックコート層を形成して、磁気記録媒体を得る。
【選択図】なし
Description
本発明は、情報機器で使用される、2方向で記録再生が可能である磁気記録媒体ならびに当該磁気記録媒体に関し、特にリニア方式の記録に適した磁気記録媒体に関する。
蒸着またはスパッタリングにより形成された磁性金属膜を記録層として用いる磁気記録媒体は、金属薄膜型磁気記録媒体と称され、短波長領域では記録密度の点で他の磁気記録媒体(例えば塗布型の磁気記録媒体)を上回る特性を有している。金属薄膜型磁気記録媒体は、例えばデジタルビデオカセット用の記録媒体として既に実用化されている。
テープ状の金属薄膜型磁気記録媒体においてはヘリカルスキャン方式が一般に採用される。これは、金属薄膜型磁気記録媒体の磁性層が、その形成方法に起因して特定方向に磁化容易軸を有し、信号の記録方向が一方向に限定されることによる。即ち、金属薄膜型磁気記録媒体の磁性層は、通常、入射角が20°〜90°である斜方蒸着法により形成され、柱状結晶が斜め方向に成長した構造を有し、一方向の磁化容易軸を有する。そのため、金属薄膜型磁気記録媒体に信号を記録するときの方向(即ち、ヘッドの走行方向)は一方向に特定される。換言すれば、金属薄膜型磁気記録媒体の磁性層を構成する柱状結晶の成長方向は、磁気ヘッドが一方向に摺動することを想定して設計されている。このため、設計とは逆の方向に磁気ヘッドを摺動させて記録再生を行った場合には、十分な特性が得られず、記録時の方向性により順方向と逆方向の再生出力に差が生じるという問題があった。ここで順方向とは再生出力が高くなる記録方向であり、逆方向とは再生出力が低くなる記録方向である。この問題は記録時の減磁に起因する問題(即ち、記録時のヘッドの走行方向に起因する問題)であり、ある1つの方向で記録した信号を再生するときに、再生ヘッドの走行方向の違いにより再生出力に差は生じない。
上記問題を解決するために、例えば特開平3−178028号公報(特許文献1)および特開平5−182168号公報(特許文献2)には、磁性層が2つの斜方蒸着膜から成る2層構造を有し、上層の斜方蒸着膜と下層の斜方蒸着膜の柱状構造の成長方向が互いに逆方向に傾斜しており、かつ各層の膜厚比が規定された磁気記録媒体を開示している。
特開平3−178028号公報
特開平5−182168号公報
上記文献に記載された2層構造の磁性層は、例えば、非磁性支持体を走行させながら第1層の磁性金属膜を成膜した後、非磁性支持体の走行方向を反対にして、斜方蒸着を実施して第2層の磁性金属膜を成膜する方法で形成される。しかし、そのような操作は場合によっては煩雑であり、生産性が低下し、製造コストが上昇することもある。
本発明はかかる実情に鑑みてなされたものであり、長手方向の2方向で走行させて記録した信号の出力差が小さく、かつ磁性層が単層構造である磁気記録媒体を提供することを課題とする。
上記課題を解決するため検討した結果、金属薄膜型磁気記録媒体において、磁性層の厚さを薄くし、かつ残留磁束密度が所定値以下となり、残留磁束密度と磁性層の厚さとの積が所定値以上となるように磁性層を形成すると、磁性層が単層構造であっても長手方向の2方向で走行させて信号を記録させるのに好都合であることが判明し、本発明を案出するに至った。
本発明は、非磁性支持体の少なくとも一方の表面に形成された磁性金属膜を有する磁気記録媒体であって、磁性金属膜が柱状結晶構造を有し、磁性金属膜の保磁力をHc(Oe)、残留磁束密度をBr(G)、磁性金属膜の厚さをδ(nm)としたときに、
Br(G)≦3000
δ(nm)≦100
Br・δ・10-3(G・μm)≧50
を満たす、磁気記録媒体を提供する。
Br(G)≦3000
δ(nm)≦100
Br・δ・10-3(G・μm)≧50
を満たす、磁気記録媒体を提供する。
この磁気記録媒体は、磁気ヘッドと摺動することにより信号を記録再生するものであり、互いに反対である2つの方向で記録再生が可能なものである。ここで、「互いに反対である2つの方向で記録再生が可能である」とは2つの方向で信号を記録し各方向の信号を再生したときに、再生出力差及びC/N差が実用可能なほど小さいことをいう。具体的には、所定の記録再生装置で用いられる記録波長のうち任意の少なくとも1つの記録波長(例えばドライブ毎に設定されている使用帯域のほぼ中心の波長、より具体的には例えば0.4μm程度)で記録した各方向の信号の再生出力差及びC/N差の絶対値が3dB以下であれば、方向性に応じて記録密度および再生回路等を調整することにより実用上問題なく使用することが可能である。
この磁気記録媒体は、磁性金属膜の厚さが100nm以下と薄いこと、残留磁束密度Brが3000(G)以下であること、ならびBr・δ・10-3が50(G・μm)以上であることを特徴とする。これらの特徴を満たすことにより、単層構造の磁性層であっても、2つの異なる方向で記録した信号を再生するときに再生出力差を小さくすることが可能となる。ここで、Br・δに10-3を乗じているのは、δ(nm)をμmに換算するためである。
磁性金属膜の厚さが100nmを越えると、逆方向で記録する際に磁性層の厚み方向の記録状態に差が発生するために、逆方向でのC/N(信号ノイズ比)が低下し、高密度記録に不利である。
ここでいう残留磁束密度Brおよび保磁力Hcは、一般的な磁気記録媒体と同様、媒体の走行方向(テープ状の媒体にあっては長手方向)に平行な方向で磁界を印加して測定される残留磁束密度および保磁力である。残留磁束密度が3000Gを越えると、順方向記録においても媒体ノイズが高くなり、C/N特性が低下する。
テープの走行方向によらず出力はBr・δに比例する。そのため、Br・δ・10-3が50(G・μm)未満であると出力低下を招く可能性がある。
本発明の磁気記録媒体はテープ状(即ち、磁気テープ)であることが好ましい。テープ状の磁気記録媒体は、その長手方向に平行な軸をx軸とし、その厚さ方向に平行な軸をy軸として、印加する磁界の角度をx軸と0〜180度の角度をなすようにx−y平面において変化させて保磁力を測定したときに、
1.0≦Hce/Hch<3.5
を満たすことが好ましい。ここで、Hchは、上記のように印加磁界の角度を変えて保磁力を測定したときの、保磁力の最小値を示す。Hceは、保磁力Hchを示すときの印加磁界の角度をθhとし、θe=θh+90(θh≦90)またはθe=θh−90(θh>90)として求められるθeを印加磁界の方向として測定したときに測定される保磁力である。図3に、テープ状の磁気記録媒体(100)の長手方向と厚さ方向をそれぞれx軸およびy軸とするx−y平面において、印加磁界の角度を変化させる様子を示す。印加磁界の方向を図3において矢印pで示す順に破線で示すように角度を変化させて保磁力を測定すると、特に磁性金属膜が斜方蒸着膜である場合に、保磁力が角度に応じて変化することとなる。図3では、θh<90となるようにθ=0を設定して、印加磁界の方向を変化させている様子を示す。この図において、θ=180となる方向を、θ=0に設定して印加磁界の方向を変化させると、θh>90となる。
1.0≦Hce/Hch<3.5
を満たすことが好ましい。ここで、Hchは、上記のように印加磁界の角度を変えて保磁力を測定したときの、保磁力の最小値を示す。Hceは、保磁力Hchを示すときの印加磁界の角度をθhとし、θe=θh+90(θh≦90)またはθe=θh−90(θh>90)として求められるθeを印加磁界の方向として測定したときに測定される保磁力である。図3に、テープ状の磁気記録媒体(100)の長手方向と厚さ方向をそれぞれx軸およびy軸とするx−y平面において、印加磁界の角度を変化させる様子を示す。印加磁界の方向を図3において矢印pで示す順に破線で示すように角度を変化させて保磁力を測定すると、特に磁性金属膜が斜方蒸着膜である場合に、保磁力が角度に応じて変化することとなる。図3では、θh<90となるようにθ=0を設定して、印加磁界の方向を変化させている様子を示す。この図において、θ=180となる方向を、θ=0に設定して印加磁界の方向を変化させると、θh>90となる。
本発明の磁気記録媒体は、好ましくは、θ=θhのときの保磁力Hchに対するθ=θeのときの保磁力Hceの比Hce/Hchが1.0以上3.5未満となるものである。これを満たすことにより、保磁力の角度依存性が小さくなり、したがって走行方向による出力差をより小さくすることが可能となる。
本発明の磁気記録媒体において、磁性金属膜は、柱状結晶構造の成長方向が磁気記録媒体の表面に対して実質的に一つの方向である、単層構造の膜として形成されることが好ましい。ここで、「柱状結晶構造の成長方向が磁気記録媒体の表面に対して実質的に一つの方向である」とは、柱状結晶1つ1つを微視的に見たときには湾曲等してその成長方向は一定でないとしても、全体として柱状結晶の成長方向が磁気記録媒体の表面に対して右斜め方向である又は左斜め方向であるといえることをいう。したがって、本発明の磁気記録媒体は、柱状結晶の成長方向が互いに逆向きである2層の磁性金属膜を形成しなくとも実現され得る。このことは、本発明の磁気記録媒体の製造を容易にし、製造コストの点でも有利である。
本発明の磁気記録媒体は、好ましくは、リニア方式で記録および再生する磁気記録媒体である。リニア方式による記録再生は、磁気記録媒体に対して磁気ヘッドを磁気記録媒体の長手方向の一方向およびその反対の方向に相対的に走行させて実施する。長手方向において、一方向は磁性金属膜に対して順方向となり、その反対方向は磁性金属膜に対して逆方向となる。ここで、順方向とは、磁性金属膜の柱状結晶の成長方向と同じ方向をいい、逆方向とはその反対の方向をいう。リニア方式は、高速の書込みが可能である、ならびに磁気記録媒体の摩耗が抑制されるといった利点を有する。したがって、これらの利点を有するリニア方式を金属薄膜型磁気記録媒体に適用することができれば、当該媒体の使用範囲をより広くすることが可能となる。本発明の磁気記録媒体は、これを長手方向の2方向で走行させてリニア方式により信号を記録したときでも、少なくとも1つの記録波長(例えば、0.4μm程度)で記録した信号の再生出力の方向差が3dB以内となるものである。したがって、本発明の磁気記録媒体は、方向性に応じて記録密度や再生回路などを調整することにより実用上問題無く使用できる。
本発明の磁気記録媒体は、磁性金属膜を酸素雰囲気下で金属蒸気流の入射角が35度以上90度以下となるように実施する反応性蒸着法により形成することを含む製造方法により製造される。酸素を導入しながら、入射角が当該範囲内にある蒸気流を蒸着させることによって、Br(G)が低く、かつBr・δ・10−3(G・μm)が上記特定値以上である磁気記録媒体を得ることが可能となる。ここで、入射角とは、蒸気流と非磁性支持体の垂線とがなす角度をいう。
本発明はまた、上記本発明の磁気記録媒体の記録再生方法であって、磁気記録媒体を長手方向の2方向で走行させて信号を記録し、磁気記録媒体を2方向で走行させて再生する磁気記録媒体の記録再生方法を提供する。この記録再生方法は、蒸着により形成された強磁性金属薄膜を磁性層として有する磁気記録媒体に、2つの方向でデータを記録し、各方向で記録されたデータを再生する方法である。記録はリニア方式であってよく、あるいはヘリカルスキャン方式であってよい。
本発明の磁気記録媒体は、記録層となる磁性金属膜が100nm以下と薄く、残留磁束密度Br(G)が低く、かつ残留磁束密度Br(G)と磁性金属膜の厚さδ(nm)との積に10-3を乗じた値が50(G・μm)以上であることを特徴とする。この特徴によれば、磁性金属膜が単層構造の斜方蒸着膜である場合でも、互いに逆向きの方向で記録した信号の再生出力の方向差を小さくすることができる。したがって、本発明によれば、例えば、リニア方式で且つ2方向で記録するのに適した磁気記録媒体を、二層構造の磁性層を形成するのに必要とされるような複雑な製造工程を要することなく製造できる。
以下、本発明の実施の形態について説明する。
以下の説明を含む本明細書において、磁気記録媒体を構成する各層または膜の「表面」とは、各層または膜が形成されたときに露出している面、即ち、各層または膜の非磁性支持体から遠い側の面を意味する。また、各層の「表面に」というときは、特に断りのない限り当該表面に接する位置をいう。さらにまた、以下の説明を含む本明細書において、磁気記録媒体の構成に関して、磁気記録媒体を構成する各層または膜の「上」というときは、特に断りのない限り、各層または膜の非磁性支持体から遠い側の表面に接していることを意味する。したがって、例えば、「磁性金属膜の上に」というときは、「磁性金属膜の非磁性支持体から遠い側の表面に隣接する位置に」を意味する。
以下の説明を含む本明細書において、磁気記録媒体を構成する各層または膜の「表面」とは、各層または膜が形成されたときに露出している面、即ち、各層または膜の非磁性支持体から遠い側の面を意味する。また、各層の「表面に」というときは、特に断りのない限り当該表面に接する位置をいう。さらにまた、以下の説明を含む本明細書において、磁気記録媒体の構成に関して、磁気記録媒体を構成する各層または膜の「上」というときは、特に断りのない限り、各層または膜の非磁性支持体から遠い側の表面に接していることを意味する。したがって、例えば、「磁性金属膜の上に」というときは、「磁性金属膜の非磁性支持体から遠い側の表面に隣接する位置に」を意味する。
前述のように、本発明の磁気記録媒体はその残留磁束密度Brが3000(G)以下であり、より好ましくは500(G)以上2500(G)以下である。また、本発明の磁気記録媒体は、そのBr・δ・10-3(G・μm)が50以上である。Br・δ・10-3(G・μm)は、より好ましくは300(G・μm)以下であるが、それ以上であってもよい。
本発明の磁気記録媒体においては、Hce/Hchが1.0以上3.5未満であることが好ましい。Hce/Hchがこの範囲内にあると、磁化方向が面内方向である磁性粒子と磁化方向が垂直である磁性粒子の両方がともに含まれて、それぞれの粒子が2方向での記録に寄与し、それにより記録方向の相違による出力差およびCN差が小さくなると考えられる。尤も、本発明はこの推察によって限定されるわけではない。
本発明の磁気記録媒体がBr≦3000、Br・δ・10-3(G・μm)≧50を満たすように磁性金属膜の磁気特性を調節することは、磁性金属膜を酸素を導入しながら真空斜方蒸着法により形成するときに、金属蒸気流の入射角および酸素の導入量を制御することにより行われる。
本発明においては、反応性蒸着を金属蒸気流の入射角が35度以上90度以下となるように実施することが好ましい。ここで、入射角は、強磁性金属の蒸気流と非磁性支持体表面の法線とがなす角度に相当し、図1および図2においてαおよびα’ならびにβおよびβ’で示される。入射角が35度未満であると保磁力が小さくなり、十分な電磁変換特性を得ることが困難となる。
酸素の導入量が多いほど、残留磁束密度Brは小さくなる傾向にある。本発明においては、Br≦3000およびBr・δ・10-3(G・μm)≧50を満たすように、蒸着させる磁性金属の種類に応じて、十分な量の酸素を導入することが好ましい。具体的には、真空斜方蒸着法により磁性金属膜を形成するに際し、酸素ガスを磁性金属蒸気流または蒸着された磁性金属膜に導入する。ガスの導入方向およびガスの流量等を適宜選択することにより、所望の磁気特性を得ることが可能である。
磁性金属膜を形成する装置の例を図1に示す。図1は、連続巻取真空蒸着法により磁性金属膜を形成する装置である。この装置において、非磁性支持体(1)は巻出軸(102)にセットされ、直径1mの冷却回転ドラム(104)を経て巻取軸(103)で巻き取られる。この時、電子ビーム(7)で、坩堝(6)内の磁性金属(5)を溶解して蒸発させ、下方より非磁性支持体(1)の表面上に蒸着する。図1においては、最小入射角(α’)から最大入射角(α)までの磁性金属蒸気流(108)が蒸着されるように、遮蔽板(111a、111b)で不要な磁性金属がカットされる。本発明の磁気記録媒体を得るためには、前述のように、最小入射角(α’)が35度以上となり、最大入射角(α)が90度以下となるように蒸着を実施することが好ましい。
図1において、最小入射角(α’)は、遮蔽板(111a、111b)によって広がりが制限された磁性金属蒸気流と、非磁性支持体(1)の表面(即ち、冷却回転ドラム(104)の表面)の垂線とが、垂線からみて非磁性支持体の進行方向側に形成する角度のうち、最も小さい角度に相当する。最大入射角(α)は、遮蔽板(111a、111b)によって広がりが制限された磁性金属蒸気流と非磁性支持体(1)の表面の垂線とが、垂線から見て非磁性支持体(1)の進行方向側に形成する角度のうち、最も大きい角度に相当する。
図1に示す装置には、酸素ノズルが1箇所に設けられている。酸素ノズル(110)は、低入射角成分に酸素を導入するためのものであり、導入方向は非磁性支持体の進行方向と逆向きである。酸素ノズルは、例えば、ガスの吐出部が矩形(またはスリット)であって、ガスのフローが非磁性支持体の幅全体に均等に吹きつけられるように、その横方向の長さが非磁性支持体の幅と同じ幅、またはそれよりも大きい幅を有することが好ましい。吐出部の面積が大きいほど、吐出部から放出されるガスが広がる傾向にあるため、ガスの広がりを考慮して矩形の縦方向の長さを決定するとよい。そして、このような矩形の吐出部を有するノズルは基板の幅と吐出部の幅とが平行となるように配置させるとよい。また、ノズルの吐出部は、その横方向に垂直な断面形状がラッパ形となっていてよい。ノズルの吐出部は、微細な開口部を形成し得る適当な機械加工、またはレーザ加工等によって形成できる。ノズルは適当な管状部材等によってガス供給源に接続される。ガス導入手段の位置は、真空蒸着槽内の蒸発源の位置および基板の走行方向等に応じて、適当な角度でガスが導入されるように適宜選択する。
図1は、酸素ノズルの位置の一例を示すものであり、酸素は蒸着終了点付近以外の場所からも導入してよい。酸素の導入箇所を増やし、磁気特性に悪影響を及ぼさない限りにおいて、磁性金属蒸気流への酸素導入量を増やせば、磁性金属膜の磁気特性をより向上させ、電磁変換特性をより改善することができる場合がある。あるいは、酸素は、蒸着終了点からではなく、他の場所から導入してよい。酸素の導入箇所(位置)、酸素の導入量および導入角度等を調節することによって、磁性金属蒸気流の一部にのみ酸素を導入することや、磁性金属蒸気流の向きを変えることが可能となるので、磁性金属膜の所定部分(例えば上側部分)の結晶成長方向の配向および/または酸素濃度をコントロールできる。
また、磁性金属蒸気流は2箇所以上から非磁性支持体に蒸着してよい。即ち、2以上の蒸発源から磁性金属蒸気流が発生させてよい。この方法に基づいて、例えば、1つの蒸発源を蒸着開始点付近に配した場合、磁性金属薄膜の下側部分に蒸着される磁性金属の量を増やすことができ、また、磁性金属蒸気流の付着効率を改善(または向上)するという効果がもたらされる。
2箇所以上から磁性金属蒸気流を非磁性支持体に蒸着する方法は、蒸発源を2以上有する真空蒸着槽を含む金属薄膜形成装置において実施できる。各蒸発源は、例えば、坩堝に入った金属であってよい。あるいは、1つの蒸発源から金属蒸気流を発生させたときに、蒸気流の一部を適当な板状体(例えば、防着マスク)に蒸着させ、これを蒸発源として用いてもよい。板状体に蒸着した金属は、イオンビーム等を照射することによって再度蒸気となり、非磁性支持体に蒸着される。
磁性金属蒸気流は、遮蔽板によってその広がりがほぼ直線的に規定されるが、場合によっては、遮蔽板側に回り込むようにして磁性金属蒸気流が広がることもある。その場合には、この回り込んだ磁性金属蒸気流をも利用して蒸着を実施してよい。
本発明の磁気記録媒体の磁性金属膜を形成する装置の別の例を図2に示す。図2も連続巻取真空蒸着法により磁性金属膜を形成する装置であり、量産装置として有用である。この装置において、非磁性支持体(1)は巻出軸(202)にセットされ、上部冷却回転ドラム(204a)、板状ベルト(212)、下部冷却ドラム(204b)を経て巻取軸(203)で巻き取られる。この時、電子ビーム(7)で、坩堝(6)内の磁性金属(5)を溶解して蒸発させ、酸素ノズル(211)より酸素を導入しながら、下方より非磁性支持体(1)の表面上に蒸着する。図2においては、最小入射角(β’)から最大入射角(β)までの磁性金属蒸気流(208)が蒸着されるように、遮蔽板(209、210)で不要な磁性金属がカットされる。本発明の磁気記録媒体を得るためには、前述のように、最小入射角(β’)が35度以上となり、最大入射角(β)が90度以下となるように蒸着を実施することが好ましい。
図2において、最小入射角(β’)は、遮蔽板(209、210)によって広がりが制限された磁性金属蒸気流と、非磁性支持体(1)の表面(即ち、ベルト(212)の表面)の垂線とが、垂線からみて非磁性支持体の進行方向側に形成する角度のうち、最も小さい角度に相当する。最大入射角(β)は、遮蔽板(209,210)によって広がりが制限された磁性金属蒸気流と非磁性支持体(1)の表面の垂線(図示した態様では冷却ドラム(204a)表面の法線に相当)とが、垂線から見て非磁性支持体(1)の進行方向側に形成する角度のうち、最も大きい角度に相当する。
図2に示す装置において酸素ノズルの位置等が図示した位置に限定されないことは、先に図1を参照して説明したとおりである。
磁性金属膜を構成する金属は強磁性金属であり、具体的には、Fe系金属、Co系金属またはNi系金属である。本発明においてはCo系金属で磁性金属膜を形成することが特に好ましい。ここで、「Co系金属」とは、コバルト、およびコバルトを主成分として好ましくは50原子%以上含む合金をいう。「Fe系金属」および「Ni系金属」も同様である。
強磁性金属薄膜は、より具体的には、Fe、CoおよびNi、ならびにCo−Ni、Co−Fe、Co−Cr、Co−Cu、Co−Pt、Co−Pd、Co−Sn、Co−Au、Fe−Cr、Fe−Co−Ni、Fe−Cu、Ni−Cr、Fe−Co−Cr、Co−Ni−Cr、Co−Pt−CrおよびFe−Co−Ni−Cr等の合金から選択される1または複数の材料で形成される。
磁性金属膜をCoで形成する場合、例えば、コバルトの原子数に対する酸素の原子数の比は、0.60以上であることが好ましい。それにより、上記磁気特性を呈する、厚さ100nm以下の磁性金属膜を得ることができる。
前述のように、磁性金属膜の厚さは100nm以下の範囲内にあることが好ましい。その理由は先に説明したとおりである。磁性金属膜の厚さは一般に10nm以上であるが、それより小さくてもよい。磁性金属膜の厚さは、記録波長が予め定められている場合には、その1/4以下の厚さとすることが好ましい。磁性金属膜の厚さが記録波長の1/4よりも大きいと、記録減磁の厚み方向の位相特性差により実効的な記録減磁問題が大きくなるからである。したがって、例えば、記録波長が0.4μmである場合には、記録波長によって決まる反磁界の強さの点からも、磁性金属膜の厚さは100nm以下とすることが好ましい。磁性金属膜の厚さは、例えば、図1または図2に示す装置を用いて磁性金属蒸気流を蒸着する際には、冷却回転体支持体(104)の回転速度またはベルト(212)速度、および電子線ビームの出力等を調節することにより制御される。
本発明の磁気記録媒体がテープ状である場合には、前述のように、θ=θhのときの保磁力Hchに対するθ=θeのときの保磁力Hceの比Hce/Hchが1.0以上3.5未満であることが好ましい。その理由は先に説明したとおりである。
本発明の磁気記録媒体がテープ状である場合には、その長手方向に平行な軸をx軸とし、その厚さ方向に平行な軸をy軸として、印加する磁界の角度θをx軸に対して0〜180度の範囲でx−y平面において変化させて保磁力を測定したときに、保磁力が最小値となるときの印加磁界の角度θhが、30≦|90−θh|≦60を満たすことが好ましい。そのような磁性金属膜は、真空斜方蒸着法において、低入射角の成分がより多く蒸着されるようにすることによって形成される。
本発明の磁気記録媒体は、磁性金属膜が磁気記録媒体に上記所定の磁気特性を与えるように構成されている限りにおいて、任意の構成とすることができる。以下、上記において説明した磁性金属膜以外の要素、即ち、非磁性支持体、ならびに必要に応じて形成される保護層、潤滑剤層およびバックコート層の構成を説明する。
本発明の磁気記録媒体を構成する非磁性支持体は、高分子フィルムであることが好ましい。高分子フィルムは、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアミド、ポリイミド、ポリ塩化ビニルおよびポリカーボネート等から1または複数の材料を適宜選択して形成される。非磁性支持体の厚さが薄すぎると強度が弱くなりすぎ、厚すぎると媒体全体の厚さが大きくなりすぎて記録容量の大容量化に不利である。非磁性支持体の厚さは、具体的には5〜10μmであることが好ましい。なお、用途等に応じた強度を確保できる限りにおいて、さらに薄い非磁性支持体を使用してよいことはいうまでもなく、また、大容量化が特に求められない場合には、厚い非磁性支持体を使用してもよい。
非磁性支持体の磁性金属膜が形成される面(即ち、磁性金属と接する側の面)には、磁気記録媒体の磁性層側表面の走行性を向上させるために、SiO2、TiO2、Al2O3またはZrO2等の無機物質、あるいはポリスルホン等の有機物質から成る微粒子が例えば1μm2につき3〜150個、分散し、固着していることが好ましい。微粒子は、非磁性支持体の表面に、例えば高さ5〜25nmの表面突起を形成するような形状および寸法を有することが好ましい。一般に、突起の高さが5nm未満では良好な走行性を確保することが難しい。突起の高さが25nmを超えると再生出力のスペーシング損が大きくなり、磁気記録媒体として使用することができない。
非磁性支持体の表面突起は、例えば、前記微粒子と高分子樹脂(例えば、非磁性支持体が高分子フィルムである場合には、高分子フィルムを形成する樹脂と同じ樹脂)とを混合し、この混合物を高分子フィルムにコーテイングすることによって形成できる。あるいは、微粒子を含む高分子材料でフィルムを製造することによっても、表面に突起を有する非磁性支持体を得ることができる。表面突起を有する非磁性支持体は、特開平9−164644号公報および特開平10−261215号公報等に開示されている。
磁性金属膜の表面には、保護層を形成してよい。保護層は、磁気ヘッドと接触する磁気記録媒体の損傷を防止するために設けられる。保護層は、例えば、スパッタリングもしくはプラズマCVD等の方法で得られる、アモルファス状、グラファイト状もしくはダイヤモンド状の炭素から成る炭素膜、あるいはそれらの炭素を混合および/または積層して形成した炭素膜である。保護層は、好ましくはダイヤモンド状の炭素、即ちダイヤモンドライクカーボン(Diamond Like Carbon;DLC)で形成される。保護層の厚さは、いずれの材料についても1〜50nmであることが好ましい。
磁性金属膜の上に保護層を形成する場合において、保護層の上には更に潤滑剤層を形成してよい。潤滑剤層は、磁気記録媒体の走行性を向上させるために設けられる。潤滑剤層を形成する潤滑剤は、磁気記録媒体用の潤滑剤として汎用されているものから任意に選択できる。潤滑剤は、例えば、パーフルオロポリエーテル等のフッ素系潤滑剤または炭化水素系潤滑剤であることが好ましい。潤滑剤層は、潤滑剤以外の成分として、例えば極圧剤および/または防錆剤等を含んでよい。潤滑剤層は、例えば、潤滑剤を適当な溶媒に溶解または分散させた塗布液を保護層(保護層が形成されていない場合には磁性層)の上に塗布した後、溶媒を蒸発させることによって形成できる。潤滑剤層の厚さは一般に0.5〜50nmである。
記録再生装置における走行性を向上させるために、本発明の磁気記録媒体は、非磁性支持体の磁性金属膜が形成される面とは反対側の面に形成されたバックコート層を有してよい。バックコート層は、ポリウレタン系樹脂、ニトロセルロース系樹脂、ポリエステル系樹脂(例えばバイロン)、カーボン、および炭酸カルシウム等から選択される1種または複数種の材料を、適当な溶媒(例えば、トルエンとメチルエチルケトンの混合溶媒)に溶解および/または分散させた塗布液を調製し、この塗布液を非磁性支持体の磁性金属膜が形成された面とは反対の表面に塗布した後、乾燥して溶媒を蒸発させる湿式塗布法により形成できる。このようにしてバックコート層を形成する場合、その厚さは100〜500nmとすることが好ましい。
非磁性支持体とバックコート層との間には、補強層を形成してよい。補強層は、磁気記録媒体の非磁性支持体の薄手化に伴う機械強度の低下を防止するために設けられる。補強層は、例えば、蒸着、スパッタリングもしくはイオンプレーティング等の方法で得られる金属薄膜で形成される。金属薄膜は、例えば、Cu、Mn、Ti、Cr、Fe、Ni、Co、Si、Al、Zn、Sn、Pb、Au、MgおよびAgからなる群から選択される1種またはそれ以上の金属を含んで成る。金属薄膜は、酸化物、窒化物、硫化物あるいは炭化物であってもよく、単層膜および多層膜のいずれの形態であってもよい。補強層の厚さは、10〜500nmであることが好ましい。
本発明の磁気記録媒体への記録は、好ましくはリニア方式で実施される。記録は、例えばインダクティブヘッド等の磁気ヘッドを用いて、再生はインダクティブヘッドまたは好ましくは磁気抵抗型ヘッド(MRヘッドもしくはGMRヘッド)等の磁気ヘッドを用いて実施される。リニア方式による記録および再生は、磁気記録媒体を長手方向で走行させながら行う。本発明の磁気記録媒体は、特に記録波長を0.4μm程度以下にして信号を記録するのに適しており、その場合、異なる走行方向で同一波長で記録した信号の再生出力差およびC/N差は3dB以下となる。あるいは、本発明の磁気記録媒体への記録はヘリカルスキャン方式で実施してよい。また、本発明の磁気記録媒体は、一方向にのみ走行させて信号を記録する媒体としても好ましく使用される。
(試験1:試料1−1〜1−9の作製)
図1に示すような装置を用いて、非磁性支持体上に磁性金属膜を反応性蒸着法により形成した。非磁性支持体として、幅250mm、厚さ6.3μmのポリエステル(PET)フィルム(1)を使用した。このフィルムの片面には、SiO2から成る直径15nmの微粒子が1μm2当り50個分散し、固着していた。また、強磁性金属としてCo(純度99wt%以上)を用意した。
図1に示すような装置を用いて、非磁性支持体上に磁性金属膜を反応性蒸着法により形成した。非磁性支持体として、幅250mm、厚さ6.3μmのポリエステル(PET)フィルム(1)を使用した。このフィルムの片面には、SiO2から成る直径15nmの微粒子が1μm2当り50個分散し、固着していた。また、強磁性金属としてCo(純度99wt%以上)を用意した。
冷却回転ドラム(104)を冷却する冷媒の設定温度は−20℃とした。非磁性支持体(1)は巻出軸(送り軸)(102)にセットし、蒸着時のライン速度を試料ごとに異なるように220m/分〜90m/分に設定して、冷却回転ドラム(104)上を走行させて巻取軸(103)で巻き取るようにした。
真空蒸着は、強磁性金属であるCo(6)に電子ビーム(7)を照射して、Coを溶解および蒸発させ、下方より斜方蒸着されるようにして実施した。金属蒸気流の広がりは2つの遮蔽板(111a,111b)により制限し、最大入射角(α)90°から最小入射角(α’)35°までの成分が蒸着されるようにした。
蒸着中、反応性ガスとして、酸素ガスを、遮蔽板(111b)に近接して設けたノズル(110)から金属蒸気流(108)に導入して、強磁性金属薄膜中に酸素が含まれるようにした。酸素ノズル(111)から2.0リットル/分の流量で酸素を導入した。その結果、厚さが10〜140nmであって、柱状結晶の成長方向が実質的に一方向である単層構造を有する磁性金属膜が形成された、9種類の試料が得られた。
磁性層(強磁性金属薄膜)を形成した後、磁性金属膜の表面に保護層としてDLC膜を設けた。更に、DLC膜の上にフッ素系潤滑剤を溶媒に溶解して調製した塗布液を塗布した後、乾燥することにより、潤滑剤層を形成した。非磁性支持体の磁性層が形成された面とは反対の面には厚さ400nmのバックコート層を形成した。バックコート層はポリウレタン樹脂等をメチルエチルケトンに溶解して調製した塗布液を塗布した後、乾燥してメチルエチルケトンを蒸発させることにより形成した。このようにして製造した磁気記録媒体をスリッティングしてテープとし、カセットに組み込んで、性能評価用のサンプルを作製した。
(試験2:試料2−1〜2−4の作製)
図2に示すような装置を用いて、非磁性支持体上に磁性金属膜を反応性蒸着法により形成した。非磁性支持体として、幅250mm、厚さ6.3μmのポリエステル(PET)フィルム(1)を使用した。このフィルムの片面には、SiO2から成る直径15nmの微粒子が1μm2当り50個分散し、固着していた。また、強磁性金属としてCo金属(純度99wt%以上)を用意した。
図2に示すような装置を用いて、非磁性支持体上に磁性金属膜を反応性蒸着法により形成した。非磁性支持体として、幅250mm、厚さ6.3μmのポリエステル(PET)フィルム(1)を使用した。このフィルムの片面には、SiO2から成る直径15nmの微粒子が1μm2当り50個分散し、固着していた。また、強磁性金属としてCo金属(純度99wt%以上)を用意した。
上部および下部冷却回転ドラム(204a、204b)を冷却する冷媒の設定温度は−20℃とした。非磁性支持体(1)は巻出軸(送り軸)(202)にセットし、蒸着時のライン速度を200m/分に設定して上部冷却回転ドラム(204a)、板状のエンドレスベルト(212)、下部冷却回転ドラム(204b)上を走行させて巻取軸(203)で巻き取るようにした。エンドレスベルト(212)の傾斜角γは磁性金属(6)の溶解面(本試験においては水平面に相当)に対し55°とした。
真空蒸着は、強磁性金属であるCo(6)に電子ビーム(7)を照射して、Coを溶解および蒸発させ、下方より斜方蒸着されるようにして実施した。金属蒸気流(208)の広がりは2つの遮蔽板(209,210)により制限し、最大入射角(β)90°から最小入射角(β’)38°までの成分が蒸着されるようにした。
蒸着中、反応性ガスとして、酸素ガスを、遮蔽板(210)に近接して設けたノズル(211)から金属蒸気流に導入して、強磁性金属薄膜中に酸素が含まれるようにした。酸素ノズル(211)から試料ごとに表1に示すように1.5〜2.5リットル/分の範囲内で流量を変化させて導入した。ノズル(211)からは、非磁性支持体の進行方向とは反対側の方向に向かって非磁性支持体と35度の角度をなす方向で酸素を導入した。このようにして、柱状結晶の成長方向が実質的に一方向である単層構造の磁性金属膜を蒸着により形成した。
磁性層(強磁性金属薄膜)を形成した後、磁性金属膜の表面に保護層としてDLC膜を設けた。更に、DLC膜の上にフッ素系潤滑剤を溶媒に溶解して調製した塗布液を塗布した後、乾燥することにより、潤滑剤層を形成した。非磁性支持体の磁性層が形成された面とは反対の面には厚さ400nmのバックコート層を形成した。バックコート層はポリウレタン樹脂等をメチルエチルケトンに溶解して調製した塗布液を塗布した後、乾燥してメチルエチルケトンを蒸発させることにより形成した。このようにして製造した磁気記録媒体をスリッティングしてテープとし、カセットに組み込んで、性能評価用のサンプルを作製した。
(試験3:試料3−1〜3−5)
蒸着時のライン速度を180m/分とし、5種類の試料が得られるように酸素導入量を表1に示すように試料ごとに異なるようにしたこと以外は、試験1と同様にして、厚さ50nmの単層構造の磁性金属膜を形成した。それから、試験1と同様にして、磁性金属膜の表面に保護層としてのDLC膜および潤滑剤層を形成し、非磁性支持体の磁性金属膜が形成されていない面にバックコート層を設け、これをスリッティングしてテープ状の磁気記録媒体を得た。
蒸着時のライン速度を180m/分とし、5種類の試料が得られるように酸素導入量を表1に示すように試料ごとに異なるようにしたこと以外は、試験1と同様にして、厚さ50nmの単層構造の磁性金属膜を形成した。それから、試験1と同様にして、磁性金属膜の表面に保護層としてのDLC膜および潤滑剤層を形成し、非磁性支持体の磁性金属膜が形成されていない面にバックコート層を設け、これをスリッティングしてテープ状の磁気記録媒体を得た。
(試験4:試料4−1〜4−5)
蒸着時のライン速度を150m/分とし、5種類の試料が得られるように酸素導入量を表1に示すように試料ごとに異なるようにしたこと以外は、試験1と同様にして、厚さ80nmの単層構造の磁性金属膜を形成した。それから、試験1と同様にして、DLC膜および潤滑剤層、ならびにバックコート層を形成し、これをスリッティングしてテープ状の磁気記録媒体を得た。
蒸着時のライン速度を150m/分とし、5種類の試料が得られるように酸素導入量を表1に示すように試料ごとに異なるようにしたこと以外は、試験1と同様にして、厚さ80nmの単層構造の磁性金属膜を形成した。それから、試験1と同様にして、DLC膜および潤滑剤層、ならびにバックコート層を形成し、これをスリッティングしてテープ状の磁気記録媒体を得た。
(試験5:試料5−1〜5−4)
蒸着時のライン速度を130m/分とし、4種類の試料が得られるように酸素導入量を表1に示すように試料ごとに異なるようにしたこと以外は、試験1と同様にして、厚さ100nmの単層構造の磁性金属膜を形成した。それから、試験1と同様にして、DLC膜および潤滑剤層、ならびにバックコート層を形成し、これをスリッティングしてテープ状の磁気記録媒体を得た。
蒸着時のライン速度を130m/分とし、4種類の試料が得られるように酸素導入量を表1に示すように試料ごとに異なるようにしたこと以外は、試験1と同様にして、厚さ100nmの単層構造の磁性金属膜を形成した。それから、試験1と同様にして、DLC膜および潤滑剤層、ならびにバックコート層を形成し、これをスリッティングしてテープ状の磁気記録媒体を得た。
得られた各試料について、下記に示す方法に従って、磁気特性、磁性金属膜の厚さ、および電磁変換特性を測定した。
[磁性金属膜の厚さ]
磁性金属膜の厚さδは、各試料の磁性金属膜の断面を走査型電子顕微鏡(SEM)により観察して求めた。
磁性金属膜の厚さδは、各試料の磁性金属膜の断面を走査型電子顕微鏡(SEM)により観察して求めた。
[磁気特性]
磁気テープを作製した後、長手方向に平行な軸をx軸とし、厚さ方向に平行な軸をy軸として、x−y平面において磁界を印加し、印加する磁界の角度θをx軸に対して0〜180度の範囲で変化させて求めた。残留磁束密度と磁性金属膜厚みの積Br・δ、および保磁力Hcはθを0度にして求めた。印加磁界は10kOeとした。測定に使用した振動試料型磁気特性測定装置(VSM)はDMS社のモデル1660(商品名)である。また、この種の磁性金属膜は厚み方向にBrが変化していることが知られているが、本実施例においてBrはBr・δとδから計算して求めた。
磁気テープを作製した後、長手方向に平行な軸をx軸とし、厚さ方向に平行な軸をy軸として、x−y平面において磁界を印加し、印加する磁界の角度θをx軸に対して0〜180度の範囲で変化させて求めた。残留磁束密度と磁性金属膜厚みの積Br・δ、および保磁力Hcはθを0度にして求めた。印加磁界は10kOeとした。測定に使用した振動試料型磁気特性測定装置(VSM)はDMS社のモデル1660(商品名)である。また、この種の磁性金属膜は厚み方向にBrが変化していることが知られているが、本実施例においてBrはBr・δとδから計算して求めた。
[電磁変換特性]
長手方向の2方向で走行させて信号を記録再生できる磁気記録再生装置を用いて、各方向での電磁変換特性を測定した。信号の記録は、ギャップ長0.18μmのメタルインギャップ型のインダクティブヘッドを用いて記録波長を0.4μmとして実施し、信号の再生は、トラック幅5.0μmの磁気抵抗型ヘッドを用いて実施した。ヘッドとテープの相対速度は10m/sとした。各方向で試料を走行させて記録した信号を再生したときの出力の値から、記録方向の違いによる信号の出力差を求めた。この場合、記録信号は25MHzとなる。再生時にはスペクトラムアナライザーを用いてバンド幅100kHzで測定を行い、25MHzの再生出力をC、24MHzと26MHzでノイズレベルを測定した平均値をNとし、CとNの比率をC/Nとした。
各試料の磁気特性、磁性金属膜の厚さ、および電磁変換特性(方向による出力差およびC/N差)を表1に示すとともに、本発明のBr、δ、およびBr・δの範囲を示すグラフを図4に、BrとC/Nの方向差を示すグラフを図5に示す。なお、表1において、出力およびC/Nは、試料No.1−3の出力およびC/Nを基準(0)とする相対値で示している。
長手方向の2方向で走行させて信号を記録再生できる磁気記録再生装置を用いて、各方向での電磁変換特性を測定した。信号の記録は、ギャップ長0.18μmのメタルインギャップ型のインダクティブヘッドを用いて記録波長を0.4μmとして実施し、信号の再生は、トラック幅5.0μmの磁気抵抗型ヘッドを用いて実施した。ヘッドとテープの相対速度は10m/sとした。各方向で試料を走行させて記録した信号を再生したときの出力の値から、記録方向の違いによる信号の出力差を求めた。この場合、記録信号は25MHzとなる。再生時にはスペクトラムアナライザーを用いてバンド幅100kHzで測定を行い、25MHzの再生出力をC、24MHzと26MHzでノイズレベルを測定した平均値をNとし、CとNの比率をC/Nとした。
各試料の磁気特性、磁性金属膜の厚さ、および電磁変換特性(方向による出力差およびC/N差)を表1に示すとともに、本発明のBr、δ、およびBr・δの範囲を示すグラフを図4に、BrとC/Nの方向差を示すグラフを図5に示す。なお、表1において、出力およびC/Nは、試料No.1−3の出力およびC/Nを基準(0)とする相対値で示している。
表1から明らかなように、磁性金属膜の厚さが100nm以下の範囲内にある試料1−1〜1−5はいずれも、出力差、C/N差ともが3dB以下であった。試料1−1〜1−2はBr・δが小さいため、出力が低く、システムノイズの占める割合が高くなり、C/Nが低くなった。磁性金属膜の厚さが100nmを超える試料1−6〜1−9は、順方向での出力は高いが、逆方向での出力が低く、それ以上に逆方向での媒体ノイズが高くなるため、C/N差は大きくなった。
表1から明らかなように、Brが3000G以下である試料2−2〜2−4,3−2〜3−5,4−3〜4−5,5−3〜5−4はいずれも、信号の記録方向の相違による出力差、及びC/N差が3dB以内となり、Hce/Hchが1.0以上3.5未満の場合、さらに、出力差、及びC/N差が小さくなった。
表1の結果を、図4および図5にまとめた。図4において、■で表示されているものは、出力方向差およびC/N方向差が3dB以下である試料に相当し、▲で表示されているものは、出力方向差およびC/N方向差が3dBを越えた試料に相当する。図4において、■はδ=100nm、Br=3000G、およびBr・δ・10−3=50のラインで囲まれる範囲内(斜線にて表示)に存在し、したがって図4はδ≦100(nm)、Br≦3000G、Br・δ・10−3≧50(G・μm)の範囲内で良好な結果が得られることを示している。図5は、BrとC/N方向差との関係を示している。図5から明らかなように、C/N方向差が絶対値で3dB以下である試料は、いずれもBrが3000以下で、δが100nm以下の試料であり、Brが3000Gを越える試料(図中、△ Br:NG)およびBr≦3000Gであるが、δが100nmを越えるもの(図中、菱形 δ:NG)は、いずれもC/N方向差が大きかった。
さらに、試料3−1、試料3−4、試料5−1および試料5−3について、記録波長を4.0μm、0.4μm、0.2μmとして出力方向差及びC/N方向差を測定した。その結果を表2に示す。表2に示すように、いずれの試料についても記録波長により出力方向差及びC/N方向差が異なり、記録波長が小さくなると、出力方向差及びC/N方向差ともに大きくなることが確認された。本発明の実施品である試料3−4および試料5−3については、記録波長が0.2μmであっても、出力方向差及びC/N方向差ともに3dB以下にし得ることがわかった。このことから、少なくとも、本発明によれば、0.2μm程度の短い記録波長を使用する場合でも、実用上問題のないレベルで、長手方向の2方向で走行させて信号を記録再生できることがわかった。
本発明の磁気記録媒体は、磁性層が単層構造であっても、信号記録時の走行方向の違いによる再生出力差が小さくすることができるので、データストレージテープのようなリニア方式で記録する媒体として特に好ましく用いられる。
1 非磁性支持体
102,202 巻出軸
103,203 巻取軸
104,204a、204a 冷却ドラム
5 磁性金属
6 坩堝
7 電子ビーム
108,208 磁性金属蒸気流
111a,111b,209、210 遮蔽板
110,211 酸素ノズル
212 板状ベルト
100 磁気記録媒体
102,202 巻出軸
103,203 巻取軸
104,204a、204a 冷却ドラム
5 磁性金属
6 坩堝
7 電子ビーム
108,208 磁性金属蒸気流
111a,111b,209、210 遮蔽板
110,211 酸素ノズル
212 板状ベルト
100 磁気記録媒体
Claims (9)
- 非磁性支持体の少なくとも一方の表面に形成された磁性金属膜を有する磁気記録媒体であって、磁性金属膜が柱状結晶構造を有し、磁性金属膜の保磁力をHc(Oe)、残留磁束密度をBr(G)、磁性金属膜の厚さをδ(nm)としたときに、
Br(G)≦3000
δ(nm)≦100
Br・δ・10-3(G・μm)≧50
を満たす、磁気記録媒体。 - 磁気記録媒体がテープ状であり、その長手方向に平行な軸をx軸とし、その厚さ方向に平行な軸をy軸として、印加する磁界の角度をx軸に対して0〜180度の範囲でx−y平面において変化させて保磁力を測定したときに、
1.0≦Hce/Hch<3.5
(ここで、Hchは保磁力の最小値を示し、Hceは、保磁力Hchを示すときの印加磁界の角度をθhとし、θe=θh+90(θh≦90)またはθe=θh−90(θh>90)として求められるθeを印加磁界の方向として測定したときに測定される保磁力である。)
を満たす、請求項1に記載の磁気記録媒体。 - 磁性層が単層であり、柱状結晶構造の成長方向が磁気記録媒体の表面に対して実質的に一つの方向である、請求項1または2に記載の磁気記録媒体。
- 前記磁性金属膜の表面に保護層が形成されている請求項1〜3のいずれか1項に記載の磁気記録媒体。
- 前記磁性金属膜の表面に保護層が形成され、当該保護層の表面に潤滑剤層が形成されている請求項1〜3のいずれか1項に記載の磁気記録媒体。
- 前記非磁性支持体の磁性金属膜が形成された面とは反対側の面にバックコート層が形成されている請求項1〜5のいずれか1項に記載の磁気記録媒体。
- 請求項1〜6のいずれか1項に記載の磁気記録媒体を製造する方法であって、磁性金属膜を、酸素ガスと磁性金属との反応性蒸着法により形成し、反応性蒸着を金属蒸気流の入射角が35度以上90度以下となるように実施する、磁気記録媒体の製造方法。
- 請求項1〜6のいずれか1項に記載の磁気記録媒体の記録再生方法であって、当該磁気記録媒体を長手方向に平行な2つの方向で走行させて信号を記録することを含む磁気記録媒体の記録再生方法。
- 記録した信号を、磁気抵抗型ヘッドを用いて再生することを含む、請求項8に記載の磁気記録媒体の記録再生方法。
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Cited By (2)
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CN111611733A (zh) * | 2020-04-20 | 2020-09-01 | 费勉仪器科技(上海)有限公司 | 一种中小型磁偏转电子束蒸发源磁路结构构建方法 |
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2004
- 2004-08-05 JP JP2004229272A patent/JP2006048840A/ja active Pending
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Legal Events
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