JP2001143236A - 磁気記録媒体及びその製造方法 - Google Patents

磁気記録媒体及びその製造方法

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JP2001143236A
JP2001143236A JP32593599A JP32593599A JP2001143236A JP 2001143236 A JP2001143236 A JP 2001143236A JP 32593599 A JP32593599 A JP 32593599A JP 32593599 A JP32593599 A JP 32593599A JP 2001143236 A JP2001143236 A JP 2001143236A
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JP32593599A
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English (en)
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Kazunari Motohashi
一成 本橋
Takao Mori
敬郎 森
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Sony Corp
Original Assignee
Sony Corp
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 磁性層の厚みを小としても優れた耐食性を有
するとともに、MRヘッドを用いて確実に再生する。 【解決手段】 非磁性支持体の少なくとも一主面側に成
膜された磁性層を有し、上記磁性層の残留磁化Mrと上
記磁性層の厚みtとの積Mr・tが26mA以下である
ことを特徴とする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、いわゆる金属磁性
薄膜型の磁気記録媒体及びその製造方法に関し、特に磁
気抵抗効果型再生ヘッドを用いた磁気記録システムに用
いて好適な磁気記録媒体及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来より、磁気記録媒体としては、非磁
性支持体上に酸化物磁性粉末あるいは合金磁性粉末等の
粉末磁性材料を塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリ
エステル樹脂、ポリウレタン樹脂等の結合剤中に分散せ
しめた磁性塗料を塗布、乾燥することにより作製され
る、いわゆる塗布型の磁気記録媒体が広く使用されてい
る。
【0003】これに対して、高密度記録への要求の高ま
りとともに、Co−Ni、Co−Cr、Co等の金属磁
性材料をメッキや真空薄膜形成手段(真空蒸着法、スパ
ッタリング法、イオンプレーティング法等)によって非
磁性支持体上に直接被着した、いわゆる金属磁性薄膜型
の磁気記録媒体が提案され、注目を集めている。
【0004】この金属磁性薄膜型の磁気記録媒体は、保
磁力、残留磁化、角形比等に優れ、短波長での電磁変換
特性に優れるばかりでなく、磁性層の厚みをきわめて薄
くできるため、記録減磁や再生時の厚み損失が小さいこ
と、磁性層中に非磁性材である結合剤を混入する必要が
ないため、磁性材料の充填密度を高め、大きな磁化を得
ることができる等、数々の利点を有している。
【0005】さらに、この種の磁気記録媒体の電磁変換
特性を向上させ、より大きな出力を得ることができるよ
うにするため、磁気記録媒体の磁性層を形成するに際
し、磁性層を斜方に蒸着する、いわゆる斜方蒸着が提案
され、高画質VTR用、デジタルVTR用の磁気テープ
として実用化されている。
【0006】さらにまた、磁気記録媒体では、例えば民
生用デジタルVTR等に使用する場合、耐久性及び耐食
性を向上させるために、カーボンなどによる保護膜を磁
性層上に形成している。
【0007】一方、この種の磁気記録媒体においても、
更なる高密度記録化の要請を受け、再生過程において従
来の誘導型磁気ヘッドに代わり、磁気抵抗効果素子を用
いた磁気ヘッド(MRヘッド)が利用されるようになっ
てきている。一般に、MRヘッドは、磁気記録媒体から
の微小な漏洩磁束を高感度に検出することができる特徴
を持っている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】ところで、この種の磁
気記録媒体において、磁性層を形成する非磁性支持体の
表面には、走行耐久性を確保するために非磁性体球など
による微小突起が形成されていると同時に、製造工程中
や表面処理工程中で不測に発生した微小突起が存在す
る。このような微小突起を有する表面形状の非磁性支持
体に対し、斜方蒸着によって強磁性金属薄膜を形成する
と、徴小突起近傍には自己陰影効果によって蒸着粒子が
届きにくい部分が現れ、磁性層にくぼみが発生してしま
う。
【0009】磁性層に上述したようなくぼみが鋭い形状
で存在してしまうと、当該くぼみ上には、保護膜が確実
に形成されないことがある。このように、保護膜が確実
に形成されず、磁性層が直接外方に臨むような場合、当
該磁性層は、外気等に対して曝されることとなり腐食す
ることがある。すなわち、磁気記録媒体には、磁性層の
くぼみに起因して所望の耐久性及び耐食性を得ることが
できないといった問題があった。
【0010】磁性層表面にくぼみを生じさせず優れた表
面性を有する磁性層を形成する方法としては、蒸着粒子
の入射角を非磁性支持体表面に対してより垂直な方向に
規制することが知られている。しかしながら、この方法
では、磁性層の磁気特性が大幅に変化してしまい電磁変
換特性を劣化させてしまうといった不都合が生じる。
【0011】また、磁気記録媒体では、磁性層の厚みを
大きくすることによって、磁性層の耐久性を向上させる
ことが考えられる。しかしながら、磁気記録媒体におい
て、磁性層の厚みを厚くすると、残留磁化Mrと磁性層
の厚みtとの積Mr・tで表される磁性層からの漏洩磁
束が大きくなることとなり、MRヘッドにより再生を行
う場合には磁気抵抗効果素子を磁気的に飽和させてしま
い再生出力を得ることができないといった問題がある。
したがって、磁気記録媒体において、磁性層の厚みを大
として磁性層の耐食性を向上させることはできない。
【0012】そこで、本発明は、上述したような従来の
実情に鑑みて案出されたものであり、磁性層の厚みを小
としても優れた耐食性を有するとともに、MRヘッドを
用いて確実に再生することのできる磁気記録媒体及びそ
の製造方法を提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】上述した目的を達成した
本発明の磁気記録媒体は、非磁性支持体の少なくとも一
主面側に成膜された磁性層を有し、上記磁性層の残留磁
化Mrと上記磁性層の厚みtとの積Mr・tが26mA
以下であることを特徴とする。
【0014】以上のように構成された本発明に係る磁気
記録媒体は、磁性層の残留磁化Mrと厚みtとの積Mr
・tを所定の値に規定するため、例えば、磁気抵抗効果
型磁気ヘッドを備える記録再生システムに用いても、磁
気抵抗効果素子を磁気的に飽和させることなく、確実な
再生を行うことができる。
【0015】また、磁気記録媒体は、非磁性支持体の磁
性層が成膜される側の主面に微小突起が形成されてな
り、磁性層が上記微小突起に起因して形成されるくぼみ
有するとともに、当該くぼみの直径を当該くぼみの深さ
で割った値が7以上であり、且つ、当該くぼみの深さが
8nm以下であることが好ましい。
【0016】このように構成された磁気記録媒体では、
磁性層表面に形成されるくぼみの形状を規定しているた
め、例えば、磁性層を覆うように保護膜等を形成した場
合に当該保護膜等がくぼみを確実に覆うことができる。
このため、この磁気記録媒体においては、磁性層がくぼ
み部分から腐食するようなことを防止できる。
【0017】また、上述した目的を達成した本発明に係
る磁気記録媒体の製造方法は、長尺状の非磁性支持体を
長手方向に走行させ、走行する非磁性支持体の一主面側
に磁性粒子を堆積させて磁性層を形成する磁気記録媒体
の製造方法であって、上記非磁性支持体の一主面の法線
方向とのなす角度の最大値を65°〜75°とし、且
つ、上記非磁性支持体の一主面の法線方向とのなす角度
の最小値を45°〜60°として、上記非磁性支持体の
一主面に上記磁性粒子を入射させることを特徴とする。
【0018】以上のように構成された本発明の磁気記録
媒体の製造方法では、非磁性支持体の一主面に磁性粒子
を入射させる際に、磁性粒子の入射方向と非磁性支持体
の一主面の法線方向とがなす角度(入射角)を規定して
いる。すなわち、入射角の最大値及び最小値を所定の範
囲に規定している。本手法では、入射角の最大値及び最
小値を規定することによって、所望の柱状構造をとらせ
ることができ、所望の磁気特性を有する磁性層を形成す
ることができる。
【0019】
【発明の実施の形態】以下、本発明に係る磁気記録媒体
及びその製造方法の好適な実施の形態を図面を参照して
詳細に説明する。
【0020】本発明を適用した磁気記録媒体は、図1に
示すように、非磁性支持体1と、非磁性支持体1上に成
膜された磁性層2と、磁性層2上に成膜された保護層3
とから構成されている。また、本発明が適用される磁気
記録媒体としては、このような構成に限定されず、非磁
性支持体1の磁性層2が形成された面とは反対側の面に
バックコート層を有していたり、保護層3上に潤滑剤を
塗布したものであっても良い。
【0021】非磁性支持体1は、通常、この種の磁気記
録媒体に使用されるものであれば如何なる材料を使用し
ても良い。非磁性支持体1としては、ポリエチレンテレ
フタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレート等の
ポリエステル類、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポ
リオレフィン類、セルローストリアセテート等のセルロ
ース誘導体、ポリカーボネイト、ポリイミド、ポリアミ
ド、ポリアミドイミド等のプラスチック類を例示するこ
とができる。非磁性支持体1の厚さは、通常3〜10μ
m程度とされるが、走行時の機械的強度が高い材料を用
いれば2〜4μm程度であっても良い。
【0022】また、非磁性支持体1上には、微小突起1
aが形成されている。この微小突起1aは、微粒子を結
合剤と共に溶剤中に分散した塗料を基板上に塗布する方
法、基板内部に微粒子をフィラーとして含有させる方
法、或いは、これらを併用する方法等、公知の方法によ
り形成される。これらの方法に使用される徴粒子として
は、有機高分子、無機化合物等の徴粒子があげられる。
無機化合物としては、SiO2、TiO2等があげられ
る。この他にも、リソグラフィー技術によつて非磁性支
持体1上に人工的に凹凸を形成する方法、メッキ法や、
真空薄膜形成技術によつて金属、無機化合物または有機
高分子の島状構造を形成する方法を用いて、非磁性支持
体1の一主面上に徴小突起1aを形成してもよい。微小
突起1aの高さは、通常、5〜50nmであることが好
ましい。特に、微小突起1aは、後述する磁性層2の膜
厚よりも小さいことが望ましい。なお、こお微小突起1
aの高さとは、非磁性支持体1の徴小突起1aの存在し
ない平滑な表面から微小突起1aまでの高さのことを指
す。また、この微小突起1aには、非磁性支持体1を作
製する過程において不測に発生した突起も含んで考え
る。
【0023】磁性層2は、非磁性支持体1の微小突起1
aが形成された一主面上に、真空蒸着法等の手法により
成膜される。磁性層2を形成する強磁性金属材料として
は、従来公知の金属または合金が挙げられ、具体的に
は、Co、CoNi、CoFe、CoNiFe、CoC
r、CoCrPt、CoCrTa、CoCrPtTa等
の材料を例示することができる。また、磁性層2は、上
記材料を酸素雰囲気中で成膜することにより膜中に酸素
を含んでなるもの、又は、上記材料に1種又は2種のそ
の他の金属を含んでなるもの、さらには、Co−Al2
3、CoPt−SiO2等の既存の強磁性金属合金を含
んだ非固溶系磁性層からなるものであってもよい。
【0024】特に、この磁性層2は、面内方向における
残留磁化Mrと磁性層2自身の厚みとの積Mr・tが2
6mA以下となるように規定されている。特に、上記M
r・tの値は、好ましくは5〜26mAである。また、
このとき磁性層2自身の厚みtは、必要以上に厚くなる
と表面形状が平滑でなくなりノイズが増加するため、7
5nm以下が好ましく、30nm〜70nmであること
がより好ましい。
【0025】また、非磁性支持体1上に非磁性下地層を
形成し、当該非磁性下地層上に磁性層2を形成しても良
い。この非磁性下地層は、磁性層2の付着力向上、磁性
層2の磁気的配向性の向上、磁性層2の耐食性向上を目
的として形成される。非磁性下地層としては、Co、Z
r、Pt、Au、Ta、W、Ag、Al、Mn、Cr、
Ti、V、Nb、Mo、Taなどの金属のほか、これら
を組み合わせた合金、酸素や窒素などとの化合物でもよ
い。
【0026】磁性層2を形成する際には、図2に示すよ
うな真空蒸着装置を用いる。
【0027】この真空蒸着装置は、いわゆる斜方蒸着用
として構成され、内部が例えば1×10-3Pa程度の真
空にされた真空室11内に、例えば−20℃程度に冷却
され、図中矢印Aで示すように反時計回り方向に回転す
る冷却キャン12と、これに対向するように強磁性金属
薄膜用の蒸着源13が配置されてなるものである。
【0028】また、この真空蒸着装置においては、真空
室11内に、図中の反時計回り方向に回転する供給ロー
ル14と図中の反時計回り方向に回転する巻き取りロー
ル15も配設されており、非磁性支持体16は供給ロー
ル14から図中矢印Bで示す方向に繰り出され、冷却キ
ャン12の周面に沿って走行した後、巻き取りロール1
5に巻き取られる。
【0029】なお、供給ロール14と冷却キャン12と
の間、及び冷却キャン12と巻き取りロール15との間
にはそれぞれガイドローラー17、18が配置され、供
給ロール14から冷却キャン12、及びこの冷却キャン
12から巻き取りロール15に従って走行する非磁性支
持体16に所定のテンションをかけ、非磁性支持体16
が円滑に走行するようになされている。
【0030】上記蒸着源13は坩堝等の容器に、上述し
たようなCo等の強磁性金属材料が収容されたものであ
り、この真空蒸着装置においては、この蒸着源13の強
磁性金属材料を加熱、蒸発させるための電子ビーム発生
源19も配設されている。すなわち、上記電子ビーム発
生源19から電子ビーム20を蒸着源13の強磁性金属
材料に加速照射してこれを図中矢印Cで示すように加
熱、蒸発させる。すると、強磁性金属材料は蒸着源13
と対向する冷却キャン12の周面に沿って走行する非磁
性支持体16上に被着し、非磁性支持体16上に強磁性
金属薄膜が形成されることとなる。
【0031】なお、上記真空蒸着装置においては、蒸着
源13と冷却キャン12との間に第1のシャッタ21及
び第2のシャッタ22が配設されている。第1のシャッ
タ21は、走行する非磁性支持体の前段側に位置すると
ともに、第2のシャッタ22は、走行する非磁性支持体
の後段側に位置する。これら第1のシャッタ21及び第
2のシャッタ22は、冷却キャン12の主面に沿って走
行する非磁性支持体1のうちで所定の領域のみを外方に
露出させる。
【0032】なお、このような強磁性金属薄膜の蒸着に
際し、図示しない酸素ガス導入口を介して非磁性支持体
16の表面近傍に酸素ガスを供給し、これによって強磁
性金属薄膜の磁性特性、耐久性及び耐候性の向上が図ら
れるようにすることもできる。また、蒸着源を加熱する
ためには、上述のような電子ビームによる加熱手段の
他、例えば抵抗加熱手段、高周波加熱手段、レーザ加熱
手段等の公知の手段を使用できる。
【0033】このように構成された真空蒸着装置では蒸
着源から強磁性金属材料を蒸発させるとともに冷却キャ
ンの周面に非磁性支持体1を走行させる。この真空蒸着
装置において、蒸発した強磁性金属材料は、第1のシャ
ッタ21及び第2のシャッタ22により遮蔽され、第1
のシャッタ21及び第2のシャッタ22の間から外方に
露出する非磁性支持体上にのみ堆積することとなる。こ
こで、第1のシャッタ21は、走行する非磁性支持体の
前段側に配設されて、蒸発する強磁性金属材料のうち最
大入射角を規定する。また、第2のシャッタ22は、走
行する非磁性支持体の後段側に配設されて、蒸発する強
磁性金属材料のうち最小入射角を規定する。このとき、
入射角とは、蒸発した強磁性金属材料が非磁性支持体上
に入射する方向と、非磁性支持体の強磁性金属材料が入
射した場所における法線方向とがなす角度を指す。
【0034】具体的に、真空蒸着装置では、第1のシャ
ッタ21により最大入射角を65〜75°に規定すると
ともに、第2のシャッタ22により最小入射角を45〜
60°に規定している。このように最大入射角と最小入
射角とを所定の範囲に規定することによって、真空蒸着
装置は、非磁性支持体1の一主面上に成膜される磁性層
2を所望の柱状構造とすることができる。
【0035】また、この真空蒸着装置は、第1のシャッ
タ21側から第2のシャッタ22側に向かって非磁性支
持体を走行させるため、蒸発した強磁性金属材料を、先
ず、第1のシャッタ21側の非磁性支持体上に堆積させ
る。そして、第1のシャッタ21側から第2のシャッタ
22側に向かって非磁性支持体が走行するに連れて、蒸
発した金属磁性材料が順次堆積することとなる。このた
め、金属磁性材料は、先ず、最大入射角で非磁性支持体
上に堆積することとなり、最終的に、最小入射角で堆積
し終わることとなる。
【0036】このように、強磁性金属材料を成膜して磁
性層2を形成する場合には、図1に示すように、微小突
起1aに対応したくぼみ2aが磁性層2表面に形成され
ることとなる。言い換えると、磁性層2表面のくぼみ2
aは、非磁性支持体1の一主面に形成された微小突起1
aに起因して発生する。上述したように斜め蒸着を行う
場合、非磁性支持体1の一主面に微小突起1aが形成さ
れていると、当該微小突起1a上に先ず強磁性金属材料
が堆積する。続いて、微小突起1a自体や微小突起1a
上に堆積した強磁性金属材料等により、いわゆる、自己
陰影効果を示しながら、強磁性金属材料が堆積する。こ
のように、微小突起1aが形成された非磁性支持体1上
に強磁性金属材料を成膜するため、磁性層2表面には、
くぼみ2aが形成されることとなる。
【0037】上述したように、図2に示した真空蒸着装
置では、最大入射角と最小入射角とを規定したため、く
ぼみ2aの直径(図1中wで示す。)を当該くぼみ2a
の深さ(図1中dで示す。)で割った値を7以上とする
ことができ、且つ、当該くぼみ2aの深さdを8nm以
下とすることができる。すなわち、この磁性層2には、
くぼみ2aの直径wを当該くぼみ2aの深さdで割った
値が7未満、或いは、くぼみ2aの深さが8nmより大
であるような鋭利なくぼみ2aが形成されるようなこと
がない。
【0038】また、この磁気記録媒体は、磁性層2上に
形成された保護膜3を有している。具体的に、保護膜3
としては、カーボン、CrO2、Al23、BN、Co
酸化物、MgO、SiO2、Si34、SiNx、Si
C、SiNx−SiO2、ZrO2、TiO2、TiC、M
oS等の材料を成膜することにより形成される。これら
の材料を成膜する際には、公知の成膜技術、例えば、真
空蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタリング法
及びCVD法等を使用することができる。
【0039】中でも、保護膜3としては、CVD法によ
り成膜されたカーボン保護膜を使用することが好まし
い。CVD法により成膜されたカーボン保護膜は、耐久
性や耐食特性に優れると同時に、生産性に優れている。
特に、CVD法によれば、ダイヤモンドライクカーボン
と呼ばれる、耐摩耗性、耐食性及び表面被覆率に優れ、
平滑な表面形状と高い電気抵抗率とを有する硬質カーボ
ンを磁性層上に成膜することができる。
【0040】具体的に、カーボン保護膜を形成する際に
は、炭素化合物をプラズマ中で分解し磁性層上に成膜す
る。炭素化合物としては、炭化水素系、ケトン系、アル
コール系などの公知の材料を使用することができる。ま
た、プラズマ中で分解するには、高周波バイアス電圧を
用いることが好ましい。さらに、プラズマ生成時に、炭
素化合物の分解を促進するためのガスとしてAr、H2
などが導入されることが好ましい。さらにまた、カーボ
ン保護膜の膜硬度及び耐食性をより向上させるため、保
護膜3中のカーボンが窒素、フッ素などと反応した状態
で単層または多層の状態で存在していてもよい。この場
合、プラズマを生成時に、N2、CHF3又はCH22
のガスを単独又は混合した状態とし、カーボン保護膜を
成膜することにより形成することができる。
【0041】また、保護膜3の膜厚は、4nm〜12n
mであることが好ましい。保護膜3の膜厚が4nm未満
の場合には、耐摩耗性、耐食性が劣化する虞がある。逆
に、保護膜3の膜厚が12nmより厚い場合には、スベ
ーシングによる損失が増加してしまい、電磁変換特性が
劣化してしまう虞がある。上述したCVD法を用いた場
合には、カーボン保護膜を10nm以下の厚みで安定し
て成膜することができる。
【0042】ところで、この磁気記録媒体では、上述し
たように、磁性層2に形成されるくぼみ2aが、w/d
で表される値を7以上とし、且つ、dが8nm以下に規
制されている。このため、保護膜3は、磁性層2に形成
されたくぼみ2aを確実に覆うように形成されることと
なる。言い換えると、保護膜3は、くぼみ2a上で不連
続となるようなことが無く、磁性層2上に連続した膜と
して形成される。
【0043】仮に、磁性層2に形成されるくぼみ2a
が、w/dで表される値が7未満であるか、又は、dが
8nmより大であるような形状である場合には、くぼみ
2aが鋭利な形状となり、当該くぼみ2a上に形成され
る保護膜3が不連続なものとなってしまう。したがっ
て、この場合、磁気記録媒体としては保護膜3の不連続
部分から空気や水分等の流入を防止することができず、
磁性層2を劣化させてしまう。この場合、磁気記録媒体
は、耐食性が劣化してしまうこととなる。
【0044】このことから、磁性層2表面に形成される
くぼみ2aを、w/dが7以上であり、且つ、dが8n
m以下となるように規制することによって、磁気記録媒
体は、保護膜3により確実に耐食性を向上させることが
できる。また、この磁気記録媒体では、磁性層2の劣化
を確実に防止することができるため、出力の低下を防止
することができ、電磁変換特性を維持することができ
る。特に、この磁気記録媒体では、磁性層2の残留磁化
Mrと厚みtとの積Mr・tが26mA以下となってい
るために磁性層2の劣化による電磁変換特性の低下が顕
著なものとなるが、磁性層2の劣化を確実に防止してい
るため、所定の電磁変換特性を確実に維持することがで
きる。
【0045】以上のように構成された本発明に係る磁気
記録媒体は、磁性層2の残留磁化Mrと厚みtとの積M
r・tを所定の値に規定するため、例えば、磁気抵抗効
果型磁気ヘッドを備える記録再生システムに用いても、
磁気抵抗効果素子を磁気的に飽和させることなく、確実
な再生を行うことができる。
【0046】磁性層2の厚さは、ラインスピードを変化
させることにより制御することが可能であり、残留磁化
量は成膜中の酸素導入量を変化させることにより制御す
ることが可能である。これら二つのパラメータを制御す
ることにより、MR再生ヘッドを飽和させず、歪みの無
い状態で、最大の出力が得られるようにする。Mr・t
の値が26mAより大である場合、MR再生ヘッドが飽
和してしまい、歪みが生ずる。
【0047】ここで、MRヘッドとは、磁気記録媒体か
らの信号を、磁気抵抗効果を利用して検出する再生専用
の磁気ヘッドである。一般に、MRヘッドは、電磁誘導
を利用して記録再生を行うインダクティブ型磁気ヘッド
よりも感度が高く再生出力が大きいので、高密度記録に
適している。したがって、再生用磁気ヘッドとしてMR
ヘッドを用いることで、より高密度記録化を図ることが
できる。
【0048】そして、このMRヘッドは、例えば、Ni
−Zn多結晶フェライト等のような軟磁性材料からなる
一対の磁気シールドに絶縁体を介して挟持された略矩形
状のMR素子部を備える。なお、MR素子部の両端から
は、一対の端子が導出されており、これらの端子を介し
て、MR素子部にセンス電流を供給できるようになされ
ている。
【0049】MRヘッドを用いて磁気記録媒体からの信
号を再生する際は、磁気記録媒体をMR素子部に摺動さ
せる。そして、磁気記録媒体をMR素子部に摺動させた
状態で、MR素子部の両端に接続された端子を介して、
MR素子部にセンス電流を供給し、当該センス電流の電
圧変化を検出する。磁気記録媒体を摺動させた状態でM
R素子部にセンス電流を供給すると、磁気記録媒体から
の磁界に応じて、MR素子部の磁化方向が変化し、MR
素子部に供給されたセンス電流と磁化方向との相対角度
が変化する。そして、MR素子部の磁化方向とセンス電
流の方向とがなす相対角度に依存して抵抗値が変化する
こととなる。このため、MR素子部に供給するセンス電
流の電流値を一定にすることにより、センス電流に電圧
変化を生ずることとなる。そこで、このセンス電流の電
圧変化を検出することにより、磁気記録媒体からの信号
磁界が検出され、磁気記録媒体に記録されている信号が
再生される。
【0050】
【実施例】以下、本発明を適用した具体的な実施例につ
いて、実験結果に基づき詳細に説明する。
【0051】サンプル1 先ず、厚さ6μm、幅150mmのポリエチレンテレフ
タレートフィルムを用意し、この表面にアクリルエステ
ルを主成分とする水溶性ラテックスを密度が107個/
mm2 なるように塗布して下塗層を形成した。
【0052】続いて、下塗層上にCoからなる金属磁性
薄膜を蒸着法により成膜した。なお、金属磁性薄膜は、
下記の成膜条件で形成した。
【0053】成膜条件 テープ送り速度:55m/min 酸素導入量:6.0×10-43/min 蒸着時真空度:7×10-2Pa このとき、真空蒸着装置としては、図2に示したような
ものを使用し、第1のシャッタ21及び第2のシャッタ
22の位置を調節することにより、最小入射角を45
°、最大入射角を70°とした。
【0054】その後、磁性層上にCVD法によりカーボ
ン保護膜を厚さ約10nm形成した。そして、非磁性支
持体における磁性層が形成された面とは反対側の面に、
カーボンとウレタン樹脂からなるバックコート層を0.
5μmなる厚さに形成するとともに、カーボン保護膜表
面にパーフルオロポリエーテルよりなる潤滑剤を塗布
し、その後、8mm幅に裁断して磁気テープを完成し
た。
【0055】サンプル2 成膜条件において、テープ送り速度を60m/minと
し、最大入射角を75°とした以外はサンプル1と同様
にして磁気テープを作製した。
【0056】サンプル3 成膜条件において、テープ送り速度を60m/minと
し、最大入射角を60°とした以外はサンプル1と同様
にして磁気テープを作製した。
【0057】サンプル4 成膜条件において、テープ送り速度を60m/minと
し、最大入射角を80°とした以外はサンプル1と同様
にして磁気テープを作製した。
【0058】サンプル5 成膜条件において、最大入射角を90°とした以外はサ
ンプル1と同様にして磁気テープを作製した。
【0059】以上のようにして作製したサンプル1〜サ
ンプル5における磁気特性及び電磁変換特性の評価を行
った。磁気特性は、試料振動型磁力計を用いて測定し
た。電磁変換特性測定において、記録ヘッドはギャップ
長0.22μmトラック幅86μmのMIGヘッドを使
用した。電磁変換特性の測定は、MIGヘッドで記録波
長0.3μmにて記録し、トラック幅5μmのNi−F
eMRヘッドを用いて再生することにより行った。Ni
−FeMRヘッドでは、Bst/2=200G・μmで
ある。なお、磁気テープとMRヘッドとの相対達度を1
m/minとして測定した。
【0060】また、サンプル1〜サンプル5に関してS
2ガス雰囲気中における耐食性を評価した。耐食性試
験は、気温30℃、相対湿度80%、SO2ガス濃度
0.5ppm雰囲気中に、磁気テープを13時間保存
し、保存前後の磁化量を測定することにより行った。評
価方法としては、下記の式に従って磁化劣化率を算出し
て行った。
【0061】磁化劣化率(%)={1−(試験後の磁化
量)/(試験前の磁化量)}×100 磁化劣化率は、上記式で算出されるためサンプルの耐食
性を数値として評価することができ、腐食が発生しなか
った方が低い値を示すこととなる。このとき、磁気テー
プの磁化量の測定は、試料振動型磁力計を用いて行っ
た。
【0062】さらに、サンプル1〜サンプル5に関し
て、磁性層表面に発生したくぼみの形状を測定した。く
ぼみの形状は、保護膜を形成する前のサンプルについて
原子間力顕微鏡(AFM)を用いて行い、くぼみを横切
つた断面のプロファイルより同定した。
【0063】これらの結果を表1に示す。
【0064】
【表1】
【0065】表1から判るように、磁性層の保磁力を1
00kA/m程度になるように調節した場合、最大入射
角が75°以下になると(サンプル1〜サンプル3)磁
性層表面に形成されるくぼみの深さが最大入射角が小さ
くなるにつれ小となり、w/dの値が大きくなることか
ら、くぼみの形状が緩やかになっていることが判った。
その結果、最大入射角が75°以下になると耐食性が劇
的に改善されている。
【0066】しかしながら、最大入射角を60°まで下
げた場合(サンプル3)、耐食性は優れるが、磁性層の
磁気特性が劣化してしまう結果、再生出力が劣化してし
まっている。したがって、最大入射角は65°〜75°
の範囲であることが好ましいことがわかる。
【0067】また、磁気記録媒体は、最大入射角を65
°〜75°の範囲として磁性層を形成することによっ
て、磁性層のMr・tの値を26mA以下とすることが
でき、MRヘッドを用いた再生システムに適したものと
なることがわかった。
【0068】
【発明の効果】以上の説明からも明らかなように、本発
明においては、磁性層の残留磁化量Mrと膜厚tの積M
r・tの値をMR再生ヘッドの特性に合わせて最適化し
ているので、MR素子の飽和を防ぎ、高出力、低ノイズ
を実現可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一例として示す磁気記録媒体の要部断
面図である。
【図2】本発明に係る磁気記録媒体の製造方法に使用さ
れる蒸着装置の概略構成図である。
【符号の説明】
1 非磁性支持体、2 磁性層、3 保護層

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 非磁性支持体の少なくとも一主面側に金
    属磁性材料を成膜してなる磁性層を有する磁気記録媒体
    において、 上記磁性層の残留磁化Mrと上記磁性層の厚みtとの積
    Mr・tが26mA以下であることを特徴とする磁気記
    録媒体。
  2. 【請求項2】 上記非磁性支持体は、金属磁性材料が成
    膜される側の主面に微小突起が形成されてなり、 上記磁性層は、上記微小突起に起因して形成されるくぼ
    み有するとともに、当該くぼみの直径を当該くぼみの深
    さで割った値が7以上であり、且つ、当該くぼみの深さ
    が8nm以下であることを特徴とする請求項1記載の磁
    気記録媒体。
  3. 【請求項3】 上記磁性層の厚みtが75nm以下であ
    ることを特徴とする請求項1記載の磁気記録媒体。
  4. 【請求項4】 上記磁性層上に保護膜が成膜されてなる
    ことを特徴とする請求項1記載の磁気記録媒体。
  5. 【請求項5】 磁気抵抗効果型再生ヘッドを用いた磁気
    記録システムに用いられることを特徴とする請求項1記
    載の磁気記録媒体。
  6. 【請求項6】 長尺状の非磁性支持体を長手方向に走行
    させ、走行する非磁性支持体の一主面側に磁性粒子を堆
    積させて磁性層を形成する磁気記録媒体の製造方法にお
    いて、 上記非磁性支持体の一主面の法線方向とのなす角度の最
    大値を65°〜75°とし、且つ、上記非磁性支持体の
    一主面の法線方向とのなす角度の最小値を45°〜60
    °として、上記非磁性支持体の一主面に上記磁性粒子を
    入射させることを特徴とする磁気記録媒体の製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
EP1434198A1 (en) * 2002-12-25 2004-06-30 Sony Corporation Magnetic recording medium
US7258935B2 (en) 2003-04-23 2007-08-21 Sony Corporation Magnetic recording medium

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EP1434198A1 (en) * 2002-12-25 2004-06-30 Sony Corporation Magnetic recording medium
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