JP2002373410A - 磁気記録媒体、磁気記録媒体の記録再生方法、および磁気記録媒体の製造方法 - Google Patents

磁気記録媒体、磁気記録媒体の記録再生方法、および磁気記録媒体の製造方法

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JP2002373410A
JP2002373410A JP2001180080A JP2001180080A JP2002373410A JP 2002373410 A JP2002373410 A JP 2002373410A JP 2001180080 A JP2001180080 A JP 2001180080A JP 2001180080 A JP2001180080 A JP 2001180080A JP 2002373410 A JP2002373410 A JP 2002373410A
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Application number
JP2001180080A
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English (en)
Inventor
Kaji Maezawa
可治 前澤
秀樹 ▲吉▼田
Hideki Yoshida
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Panasonic Holdings Corp
Original Assignee
Matsushita Electric Industrial Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 オーデイオ機器、ビデオ機器、および各種情
報機器等の磁気記録装置に用いる磁気記録媒体であっ
て、2以上の方向で記録および再生が可能であり、量産
性に優れた信頼性の高い磁気記録媒体およびその記録再
生方法を提供する。 【解決手段】 非磁性支持体とその一方の表面に形成さ
れた強磁性金属薄膜から成る磁性層を含むテープ状の磁
気記録媒体において、磁性層を形成する金属粒子の粒径
を5〜20nmとし、磁気記録媒体の残留磁束密度Brと
磁性層の厚さδの積を2×10-3〜30×10-3T・μ
mとすることで2以上の方向で記録再生が可能である磁
気記録媒体を得、これを長手方向の2方向で走行させて
リニア方式により記録する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、情報機器、オーデ
ィオ機器およびビデオ機器で使用される、2以上の方向
で記録再生が可能である磁気記録媒体ならびに当該磁気
記録媒体の記録再生方法および製造方法に関し、特にリ
ニア方式の記録に適したA面およびB面を有する磁気記
録媒体に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、高機能性薄膜の技術的発展は目ざ
ましく、その応用分野も多岐にわたっている。高機能性
薄膜が利用される一例として磁気記録媒体がある。磁気
記録媒体においては磁性層(即ち、記録層)が高機能性
薄膜の一種とみなされ、その性状は磁気記録密度の向上
と密接に関係している。
【0003】磁性層が高機能性薄膜である磁気記録媒体
としては、強磁性金属が蒸着されて成る金属薄膜で磁性
層を形成した磁気記録媒体がある。かかる磁気記録媒体
は、金属薄膜型磁気記録媒体または高密度磁気記録媒体
と称されている。金属薄膜型磁気記録媒体は、磁性層が
バインダー等の介在物を有しないために、従来の塗布型
磁気記録媒体よりも高密度記録に適している。
【0004】塗布型磁気記録媒体とは、具体的には、γ
−Fe23粉末、CrO2粉末、または純鉄粉末等を、
樹脂等のバインダーとともに高分子フィルム上に塗着せ
しめて磁性層を形成したものをいう。塗布型磁気記録媒
体は一般に、オーディオ用またはビデオ用テープとして
用いられる。
【0005】一方、金属薄膜型磁気記録媒体は、真空蒸
着、イオンプレーティング、スパッタリングまたはクラ
スターイオンビーム蒸着等の方法を用いて、Fe、C
o、Niおよび/またはCr等の磁性金属を単独で又は
合金の形態で高分子フィルムまたはガラス基板上に蒸着
して磁性層を形成したものである。金属薄膜型磁気記録
媒体は、高分子フィルムに斜方蒸着法により磁性層を形
成したビデオ用テープ、ならびにガラス基板にスパッタ
法で磁性層を形成したハードデイスクとして既に実用化
されている。
【0006】金属薄膜型磁気記録媒体の製造方法の一例
を図2を参照して説明する。図2は、非磁性支持体に、
記録層として磁性金属薄膜を真空蒸着法により形成する
方法を模式的に示している。図2に示す真空蒸着法は、
連続巻取真空蒸着法とも呼ばれるもので、生産性におい
て優れており、現実的な量産方法として有力な製造方法
である。図2において、非磁性支持体は高分子フィルム
(1)である。一般に、高分子フィルムの一方の表面に
は、SiO2等から成る微粒子が分散し、固着してい
る。微粒子は磁気記録媒体の磁性層側の表面に凹凸を付
与し、それにより磁気記録媒体の走行性を向上させてい
る。
【0007】高分子フィルム(201)は巻出軸(202)に
セットされ、ここから連続的に送り出され、ニップロー
ラ(204)、冷却回転ドラム(206)を経て、巻取軸(21
0)で巻き取られる。このとき、電子ビーム(212)で強
磁性金属(214)を溶解して蒸発させ、下方より高分子
フィルム(201)の表面に蒸着させる。蒸着中、不要な
磁性金属は遮蔽板(216,220)でカットされる。磁性層
に酸素が含まれるようにする場合には、ノズル(218,2
22)から酸素が供給される。磁性層の真空蒸着が終了し
た後、必要に応じて磁性層の上に保護層および潤滑剤層
等を形成し、高分子フィルムの磁性層が形成された面と
は反対の面にバックコート層を形成する。それから、ス
リッティングしてテープ状の磁気記録媒体を得る。この
ようにして得られるテープ状の磁気記録媒体は、「蒸着
テープ」または「MEテープ」とも称される。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】テープ状の磁気記録媒
体へのデータ記録方式として、データ用DLT(Digita
l Linear Tape)等で採用されているリニア方式と、ビ
デオ用DVC、8mmテープおよびVHS等で採用され
ているヘリカルスキャン方式とがある。
【0009】ヘリカルスキャン方式は、テープの長手方
向に対して斜めにデータを記録する記録方式であり、一
般に高密度記録に適している。リニア記録方式は、テー
プの長手方向と平行な方向にデータを記録する方式であ
る。
【0010】一般に、塗布型テープ(「MPテープ」と
も呼ぶ)においてはリニア記録方式が採用される。これ
は、塗布型テープの磁性層の磁化容易軸が等方的である
ことによる。リニア記録方式を塗布型テープに適用する
場合には、磁性層を幅方向で2つのチャンネルに分割
し、一方のチャンネルを1の方向(順方向)でテープを
走行させてデータを記録するために使用し、他方のチャ
ンネルを反対の方向(逆方向)でテープを走行させてデ
ータを記録するために使用できる。これは、塗布型テー
プの磁性層の磁化容易軸が等方的であり、順方向および
逆方向でテープを走行させて記録した信号の再生出力の
差が小さいことによる。したがって、塗布型テープとリ
ニア記録方式を組み合わせれば、例えば市販のカセット
テープのように、A面およびB面を有する、双方向記録
が可能な磁気記録媒体が得られる。
【0011】一方、蒸着テープにおいてはヘリカルスキ
ャン方式が一般に採用される。これは、蒸着テープの磁
性層が、その形成方法に起因して特定方向に磁化容易軸
を有し、信号の記録方向が一方向に限定されることによ
る。即ち、蒸着テープの磁性層は、通常、入射角が40
〜90°である斜方蒸着法により形成され、柱状結晶が
斜め方向に成長した構造を有するために、一方向の磁化
容易軸を有し、それにより蒸着テープに信号を記録する
ときの方向(即ち、ヘッドの走行方向)は一方向に特定
される。
【0012】かかる蒸着テープにおいては、記録方式の
如何を問わず、2つの方向で記録した信号の再生出力の
差は大きくなる傾向にある。例えば、デジタルビデオカ
セット(DVC)にヘリカルスキャン方式により、磁化
容易方向および磁化困難方向を記録方向として磁気ヘッ
ドで記録した信号を再生した場合、記録波長が20MH
z程度であるときには磁化容易方向と磁化困難方向で4
〜5dB以上の出力差が認められた。この出力差は、塗
布型テープに同条件で記録したときの出力差(1dB)
より相当大きい。
【0013】このように蒸着テープの記録方式は、記録
方向が一方向に特定されたヘリカルスキャン方式に実質
的に限られている。このことは、蒸着テープが優れた特
性を有するにもかかわらず、より広範に使用されること
を阻害し、蒸着テープの利用分野を限定している。
【0014】本発明はかかる実情に鑑みてなされたもの
であり、磁性層が蒸着により形成された磁気記録媒体で
あって、2以上の方向で記録再生が可能である磁気記録
媒体を提供することを課題とする。
【0015】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するた
め、本発明は、非磁性支持体とその一方の表面に形成さ
れた磁性層を含むテープ状の磁気記録媒体であって、磁
性層が強磁性金属薄膜であり、磁性層を形成する金属粒
子の粒径が5〜20nmの範囲内にあり、磁気記録媒体の
残留磁束密度Brと磁性層の厚さδの積が2×10-3
30×10-3T・μmの範囲内にある、2以上の方向で
記録再生が可能である磁気記録媒体を提供する。
【0016】「2以上の方向で記録再生が可能である」
とは、2以上の方向で信号を記録したときに、各方向の
信号の再生出力の差が実用可能なほど小さいことをい
う。具体的には、記録波長0.1μm以上で記録した信
号を再生したときに、同じ波長(例えば0.5μm)で
記録した各方向の信号の再生出力差が1.5dB以下で
あれば、各方向の信号の再生出力の差は実用可能なほど
小さいといえる。
【0017】本発明の磁気記録媒体は、磁性層を形成す
る金属粒子の粒径、および磁気記録媒体の残留磁束密度
Brと磁性層の厚さδの積がそれぞれ特定範囲内にある
ことを特徴とする。この特徴により、磁性層が斜方蒸着
で形成されたものであっても磁化容易軸が等方性を示
し、2以上の方向で信号を記録し再生することが可能な
磁気記録媒体を得ることができる。
【0018】本発明の磁気記録媒体において、磁性層は
強磁性金属薄膜であり、磁性層を形成する金属粒子の粒
径は5〜20nmの範囲内にある。強磁性金属薄膜は一般
に柱状結晶構造を有する。柱状結晶は金属粒子が集合し
て成長することにより形成される。金属粒子は一般に略
球形であり、その径が粒径に相当する。
【0019】金属粒子の粒径が小さいほど、各方向で記
録した信号の再生出力差はより小さくなる。しかし、金
属粒子の粒径が5nm未満であると、熱揺動が生じ、磁性
層が消磁されて記録された信号が消去されることがあ
る。また、金属粒子の粒径が20nmを越えると磁性層の
表面粗さが大きくなるため、スペーシングロスが無視で
きなくなり、電磁変換特性が不十分となる。
【0020】本発明の磁気記録媒体はまた、磁気記録媒
体の残留磁束密度Brと磁性層の厚さδの積Br・δが
2×10-3〜30×10-3T・μmの範囲内にあるもの
である。Br・δは、磁気記録媒体の磁気特性を表す指
標の1つとして採用される。
【0021】Brが小さいと十分な再生出力が得られ
ず、大きいと各方向で記録した信号の再生出力差が大き
くなる。また、磁性層の厚さδが小さいほど、各方向で
記録した信号の再生出力差はより小さくなり、δが大き
いと、厚み損失が再生信号の品質に好ましくない影響を
及ぼす場合がある。本発明の磁気記録媒体は、再生出力
差等に影響を及ぼすBrおよびδをBr・δが上記特定
範囲内にあるように選択されることで、2以上の方向で
記録再生することが実用的に可能となったものである。
【0022】Br・δが2×10-3T・μm未満では、
熱揺動が生じ、磁性層が消磁されて記録された信号が消
去されることがある。Br・δが30×10-3T・μm
を越えると厚み損失が大きくなり、電磁変換特性が不十
分となる。
【0023】本発明の磁気記録媒体は、好ましくは、リ
ニア方式で記録する磁気記録媒体であり、長手方向で一
方向(順方向)およびその反対の方向(逆方向)に走行
させて信号を記録および再生し得る磁気記録媒体であ
る。リニア方式は、高速の書込みが可能である、磁気記
録媒体の摩耗が抑制されるといった利点を有する。した
がって、これらの利点を有するリニア方式を蒸着テープ
に適用することができれば、蒸着テープの使用範囲をよ
り広くすることが可能となる。
【0024】本発明の磁気記録媒体は、ヘリカルスキャ
ン方式で記録する磁気記録媒体であってよい。リニア方
式と異なり、ヘリカルスキャン方式を利用して1つの磁
気記録媒体に2つの異なる方向でデータを記録すること
はできない。しかし、本発明の磁気記録媒体のように磁
化容易軸が等方性を示す場合には、磁気記録媒体をカセ
ットに組み込む際に磁化容易軸を信号の記録方向(即
ち、ヘッドの走行方向)と整合させることを要しない。
このことは、磁気記録媒体製品のより効率的な製造を可
能にする。
【0025】本発明の磁気記録媒体は、磁性層が柱状結
晶構造を有する強磁性金属薄膜であり、柱状結晶の結晶
軸が非磁性支持体の表面に対して30〜70°の角度で
傾斜している磁気記録媒体であることが好ましい。即
ち、柱状結晶の結晶軸と非磁性支持体の表面との間に形
成される角度(この角度を「傾斜角」と呼ぶ場合があ
る)は30〜70度であることが好ましい。傾斜角が3
0°未満であると、データの再生出力の差が大きくな
る。また、蒸着により磁性層を形成する場合、傾斜角を
30°未満とするには、高入射角成分を蒸着させる必要
があるため、蒸着効率が悪くなり生産性に劣る。一方、
傾斜角が70°を越えると、十分な電磁変換特性が得ら
れないことがある。
【0026】本発明はまた、上記本発明の磁気記録媒体
の記録再生方法であって、磁気記録媒体を長手方向の2
方向で走行させてリニア方式で信号を記録し、磁気記録
媒体を2方向で走行させて再生する磁気記録媒体の記録
再生方法を提供する。この記録再生方法は、蒸着により
形成された強磁性金属薄膜を磁性層として有する磁気記
録媒体に、リニア方式により2つの方向でデータを記録
し、各方向で記録されたデータを再生する方法である。
【0027】本発明の磁気記録媒体は、短波長記録に適
したものである。したがって、上記記録再生方法におい
て、記録波長を例えば0.1〜1.0μm程度とするこ
とができる。また、各方向で記録したデータの再生出力
差は、記録波長が短いほど小さくなる傾向にある。
【0028】本発明の磁気記録媒体に、記録波長を0.
1μm以上として、互いに反対である2つの方向(例え
ば長手方向の順方向および逆方向)で信号を記録したと
き、各方向の信号の再生出力差は1.5dB以下とな
る。この値は、塗布型テープと同程度の値である。した
がって、本発明の磁気記録媒体は、双方向で記録した信
号がそれぞれ同じレベルの出力を与えるように再生され
ることを可能とし、2方向で記録する場合でも十分な実
用信頼性を発揮する。
【0029】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態につい
て説明する。以下の説明を含む本明細書において、磁気
記録媒体を構成する各層または膜の「表面」とは、各層
または膜が形成されたときに露出している面、即ち、各
層または膜の非磁性支持体から遠い側の面を意味する。
磁気記録媒体の構成に関して、磁気記録媒体を構成する
各層または膜の「上に」というときは、特に断りのない
限り、各層または膜の「非磁性支持体から遠い側の面の
上に」を意味する。したがって、例えば、「磁性層の上
に」というときは、「磁性層の非磁性支持体から遠い側
の面に隣接する位置に」を意味する。また、各層または
膜の「上方に」というときは、各層または膜から「非磁
性支持体から遠ざかる方向に離れた位置に」を意味す
る。
【0030】本明細書において、磁気記録媒体の「磁性
層側表面」とは、磁気記録媒体の露出表面であって、磁
性層の上もしくは上方に形成された層または膜の露出表
面をいう。したがって、例えば、磁性層の上に保護層が
形成され、保護層の上に潤滑剤層が形成されている場
合、当該潤滑剤層の露出表面が「磁性層側表面」に相当
する。
【0031】本発明の磁気記録媒体は、非磁性支持体と
その一方の表面に形成された磁性層を含むテープ状の磁
気記録媒体であって、磁性層が強磁性金属薄膜であり、
磁性層を形成する金属粒子の粒径が5〜20nmの範囲内
にあり、磁気記録媒体の残留磁束密度Brと磁性層の厚
さδの積が2×10-3〜30×10-3T・μmの範囲内
にある、2以上の方向で記録再生が可能である磁気記録
媒体である。
【0032】本発明の磁気記録媒体を構成する非磁性支
持体は、高分子フィルムであることが好ましい。高分子
フィルムは、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレ
ンナフタレート、ポリアミド、ポリイミド、ポリ塩化ビ
ニルおよびポリカーボネート等から1または複数の材料
を適宜選択して形成される。
【0033】非磁性支持体の磁性層が形成される面(即
ち、磁性層と接する側の面)には、磁気記録媒体の磁性
層側表面の走行性を向上させるために、SiO2、Ti
2、Al23またはZrO2等の無機物質、あるいはポ
リスルホン等の有機物質から成る微粒子が例えば1μm
2につき3〜150個、分散し、固着していることが好
ましい。微粒子は、非磁性支持体の表面に、例えば高さ
5〜25nmの表面突起を形成するような形状および寸法
を有することが好ましい。一般に、突起の高さが5nm未
満では良好な走行性を確保することが難しい。突起の高
さが25nmを超えると再生出力のスペーシング損が大き
くなり、磁気記録媒体として使用することができない。
【0034】非磁性支持体の表面突起は、例えば、前記
微粒子と高分子樹脂(例えば、非磁性支持体が高分子フ
ィルムである場合には、高分子フィルムを形成する樹脂
と同じ樹脂)とを混合し、この混合物を高分子フィルム
にコーテイングすることによって形成できる。あるい
は、微粒子を含む高分子材料でフィルムを製造すること
によっても、表面に突起を有する非磁性支持体を得るこ
とができる。表面突起を有する非磁性支持体は、特開平
9−164644号公報および特開平10−26121
5号公報等に開示されている。
【0035】本発明の磁気記録媒体において、磁性層は
強磁性金属薄膜である。磁性層に適した強磁性金属とし
ては、Fe系金属、Co系金属、およびNi系金属があ
る。本発明においてはCo系金属で磁性層を形成するこ
とが特に好ましい。ここで、「Co系金属」とは、コバ
ルト、およびコバルトを主成分として好ましくは50原
子%以上含む合金をいう。「Fe系金属」および「Ni
系金属」も同様である。
【0036】強磁性金属薄膜は、具体的には、Fe、C
oおよびNi、ならびにCo−Ni、Co−Fe、Co
−Cr、Co−Cu、Co−Pt、Co−Pd、Co−
Sn、Co−Au、Fe−Cr、Fe−Co−Ni、F
e−Cu、Ni−Cr、Fe−Co−Cr、Co−Ni
−Cr、Co−Pt−CrおよびFe−Co−Ni−C
r等の合金から選択される1または複数の材料で形成さ
れる。強磁性金属薄膜は酸素を含んでいてよく、酸素は
これらの金属または合金の酸化物の形態で含まれていて
よい。強磁性金属薄膜は、単層膜の形態であってもよ
く、あるいは多層膜の形態であってもよい。
【0037】磁性層の厚さは、Br・δが上記範囲内に
あるように選択される。磁性層の厚さは、一般に好まし
くは3〜150nm、より好ましくは5〜120nm、さら
により好ましくは10〜120nmである。
【0038】磁性層の厚さは、Br・δだけでなく、磁
性層を形成する金属粒子の粒径とも関係する。一般に、
磁性層の厚さが大きいと粒径は大きくなる傾向にある。
したがって、磁性層の厚さは金属粒子の粒径をも考慮し
て選択することが好ましい。
【0039】磁性層である強磁性金属薄膜は、好ましく
は蒸着法またはスパッタ法により形成される。より好ま
しくは、強磁性金属薄膜は、強磁性金属と化学反応する
ガス雰囲気下(例えば酸素雰囲気下)にて実施する反応
性蒸着法または反応性スパッタ法により形成される。
【0040】強磁性金属薄膜を反応性蒸着法により形成
する場合、反応性蒸着は、冷却回転支持体に沿って非磁
性支持体を走行させながら、強磁性金属の入射角が20
°以上となるように実施することが好ましい。入射角
は、強磁性金属の蒸気流と非磁性支持体表面の法線とが
なす角度に相当し、図1および図2においてαおよびβ
で示される。入射角が20°未満であると十分な電磁変
換特性を得ることが難しくなる。入射角は、柱状結晶の
傾斜角に影響を及ぼす。入射角が小さいほど、傾斜角は
90°(即ち、非磁性支持体の表面に対して垂直な方
向)に近づき、入射角が大きいほど傾斜角は0°(即
ち、非磁性支持体の表面と平行な方向)に近づく。した
がって、入射角は、磁性層の磁気特性が所望のものとな
るように適宜調節される。
【0041】冷却回転支持体は、例えば、回転ドラムま
たはエンドレスベルトである。一般に、エンドレスベル
トを用いれば、蒸着領域を広くでき、蒸着効率を回転ド
ラムの3倍とすることができるので、量産に適してい
る。また、エンドレスベルトを使用して形成した磁性層
は、リニア方式で記録したときに順方向および逆方向の
信号の再生出力差が、回転ドラムを使用して形成した磁
性層のそれと比較して、約0.5dB小さくなる。これ
は、エンドレスベルトを用いる場合の蒸着効率が回転ベ
ルトのそれよりも大きく、蒸着速度が大きいために磁性
層を形成する粒塊が小さくなることによると考えられ
る。
【0042】このようにして形成される強磁性金属薄膜
は、斜め方向に成長した柱状結晶から成る。例えば、酸
素を導入した雰囲気下でCoを斜方蒸着すると、Coと
CoOとが混合した粒塊が集合して成る柱状結晶が形成
される。
【0043】強磁性金属薄膜を反応性スパッタ法により
形成する場合、反応性スパッタは、冷却回転支持体に沿
って非磁性支持体を走行させながら、強磁性金属の入射
角が20°以上となるように実施することが好ましい。
入射角が20°以上であることが好ましい理由、ならび
に入射角と強磁性金属薄膜を構成する柱状結晶の傾斜角
との関係は先に蒸着法に関連して説明したとおりであ
る。反応性スパッタ法においても、冷却回転支持体とし
て、回転ドラムまたはエンドレスベルトを使用できる。
回転ドラムとエンドレスベルトをそれぞれ使用した場合
の相違点は、先に蒸着法に関連して説明したとおりであ
る。
【0044】蒸着またはスパッタの条件を適宜選択する
ことによって、磁性層を構成する金属粒子の粒径、およ
び磁気記録媒体の残留磁束密度を調節することが可能で
ある。
【0045】非磁性支持体の表面に金属および/または
金属酸化物から成る下地層を形成し、下地層の上に磁性
層を形成すると、磁性層を形成する金属粒子の粒径は小
さくなる傾向にある。したがって、下地層は金属粒子の
粒径を小さくするために好ましく形成される。下地層
は、磁性層を構成する金属と同じ結晶構造をとる金属お
よび/またはその酸化物で形成することが好ましい。下
地層は非磁性金属および磁性金属のいずれで形成しても
よい。下地層は、例えば蒸着法によって形成される。金
属酸化物を含む下地層は、例えば、酸素を導入して金属
を真空蒸着させることにより形成される。
【0046】例えば、Coで磁性層を蒸着法で形成する
場合、先に蒸着される部分(磁性層の下側部分)に含ま
れる酸素の量が多くなるように酸素を導入すれば、Co
Oを含む下地層の上に形成されたCoの磁性層を形成で
きる。この方法によれば、1つの蒸着装置で簡易に下地
層を形成できる。この方法でCoOを含む下地層を形成
するには、酸素を導入するノズルの数、ノズルと非磁性
支持体との間の距離、および酸素を供給する際の流量等
を調節する必要がある。具体的には、蒸着開始点に酸素
導入ノズルを設けて局所的に酸素を導入すれば、1つの
蒸着装置内で1つの蒸着源を使用して下地層および磁性
層を形成できる。同様にして、スパッタ法によっても、
下地層および磁性層を形成することができる。
【0047】磁気記録媒体の残留磁束密度は、ガス(例
えば酸素ガス)を導入しながら磁性層を蒸着により形成
する場合に、ガスの流量およびガスを導入するノズルと
非磁性支持体との間の距離を調節することによって調節
できる。例えば、ガスの流量が多いほど、残留磁束密度
は小さくなる傾向にある。残留磁束密度はまた、ガスを
導入する角度を調節することによっても調節できる。例
えば、ガスを金属蒸気流の低入射角成分に導入する場
合、ガスの流れが非磁性支持体と平行となる方向にガス
を導入すれば、ガスが進行するにつれて非磁性支持体か
ら遠ざかる方向にガスを導入する場合よりも、残留磁束
密度は小さくなる傾向にある。ガスが進行するにつれて
非磁性支持体に近づく方向に(即ち、ガスが非磁性支持
体と衝突するように)ガスを金属蒸気流の低入射角成分
に導入すれば、残留磁束密度はさらに小さくなる傾向に
ある。これらのことは、スパッタ法で磁性層を形成する
場合も同様である。
【0048】磁気記録媒体の残留磁束密度はまた、蒸着
時の入射角を調節することによっても調節できる。例え
ば、最小入射角を小さくして、金属がより高い入射角で
蒸着されるようにすれば、残留磁束密度は大きくなる傾
向にある。これらのことは、スパッタ法で磁性層を形成
する場合も同様である。
【0049】本発明の磁気記録媒体は、磁性層の構成が
上記の構成である限りにおいて、任意の構成とすること
ができる。以下、上記において説明した非磁性支持体お
よび磁性層以外の要素、即ち、必要に応じて形成される
保護層、潤滑剤層およびバックコート層の構成を説明す
る。
【0050】磁性層の上には、保護層を形成してよい。
保護層は、例えば、スパッタリングもしくはプラズマC
VD等の方法で得られる、アモルファス状、グラファイ
ト状もしくはダイヤモンド状の炭素から成る炭素膜、あ
るいはそれらの炭素を混合および/または積層して形成
した炭素膜である。
【0051】本発明では特にダイヤモンド状の炭素、す
なわちダイヤモンドライクカーボン(Diamond Like Car
bon;DLC)で保護層を形成することが好ましい。D
LCは適度な硬度を有するため、磁性層側表面と接する
走行系部材を損傷することなく、磁気記録媒体の損傷を
抑制することから、最も好ましい材料である。いずれの
材料を用いて保護層を形成する場合も、保護層の厚さは
1〜50nmであることが好ましい。
【0052】潤滑剤層を形成する潤滑剤は、磁気記録媒
体用の潤滑剤として汎用されているものから任意に選択
できる。潤滑剤は、例えば、パーフルオロポリエーテル
等のフッ素系潤滑剤または炭化水素系潤滑剤であること
が好ましい。潤滑剤層は、潤滑剤以外の成分として、例
えば極圧剤および/または防錆剤等を含んでよい。潤滑
剤層は、例えば、潤滑剤を適当な溶媒に溶解または分散
させた塗布液を保護層(保護層が形成されていない場合
には磁性層)の上に塗布した後、溶媒を蒸発させること
によって形成できる。潤滑剤層の厚さは一般に0.05
〜50nmである。
【0053】記録再生装置における走行性を向上させる
ために、本発明の磁気記録媒体は、非磁性支持体の磁性
層が形成される面とは反対の面に形成されたバックコー
ト層を有してよい。バックコート層は、ポリウレタン系
樹脂、ニトロセルロース系樹脂、ポリエステル系樹脂
(例えばバイロン)、カーボン、および炭酸カルシウム
等から選択される1種または複数種の材料を、適当な溶
媒(例えば、トルエンとメチルエチルケトンの混合溶
媒)に溶解および/または分散させた塗布液を調製し、
この塗布液を非磁性支持体の磁性層が形成された面とは
反対の表面に塗布した後、乾燥して溶媒を蒸発させる湿
式塗布法により形成できる。このようにしてバックコー
ト層を形成する場合、その厚さは100〜500nmとす
ることが好ましい。
【0054】本発明の磁気記録媒体への記録は、好まし
くはリニア方式で実施される。記録は、例えばインダク
ティブヘッドまたは磁気抵抗型ヘッド(MRヘッドもし
くはGMRヘッド)等の磁気ヘッドを用いて、0.1μ
m以上の記録波長で実施され、再生はインダクティブヘ
ッドまたは磁気抵抗型ヘッド(MRヘッドもしくはGM
Rヘッド)等の磁気ヘッドを用いて実施される。リニア
方式による記録および再生は、磁気記録媒体を長手方向
で走行させながら行う。本発明の磁気記録媒体は磁性層
の磁化容易軸が等方性であるため、順方向および逆方向
のいずれの方向で走行させてデータを記録した場合で
も、各方向のデータの再生出力差は1.5dB以下とな
る。即ち、本発明の磁気記録媒体は、従来のオーディオ
カセットテープのように、A面およびB面を有するもの
となる。
【0055】
【実施例】次に、実施例により本発明をさらに詳細に説
明する。 (実施例1)図1に示すようにして、非磁性支持体上に
強磁性金属薄膜を反応性蒸着法により形成した。非磁性
支持体として、幅250mm、厚さ6.3μmのポリエス
テル(PET)フィルム(1)を使用した。このフィル
ムの片面には、SiO2から成る直径15nmの微粒子が
1μm2当り50個分散し、固着していた。また、強磁
性金属としてCo金属を用意した。
【0056】上部および下部冷却回転ドラム(106a、1
06b)を冷却する冷媒の設定温度は−20℃とした。非
磁性支持体(101)は巻出軸(送り軸)(102)にセット
し、蒸着時のライン速度を200m/分に設定して、ニ
ップローラ(104)、上部冷却回転ドラム(106a)、板
状のエンドレスベルト(108)、下部冷却回転ドラム(1
06b)上を走行させて巻取軸(110)で巻き取るように
した。エンドレスベルト(108)の傾斜角(θ)は磁性
金属(114)の溶解面(本実施例においては水平面に相
当)に対し55°とした。
【0057】真空蒸着は、強磁性金属であるCo(11
4)に電子ビーム(112)を照射して、Coを溶解および
蒸発させ、下方より斜方蒸着されるようにして実施し
た。金属蒸気流の広がりは2つの遮蔽板(116,120)に
より制限し、最大入射角(β)87°から最小入射角
(α)38°までの成分が蒸着されるようにした。この
とき、立体角(ω)は34°であった。ここで、立体角
(ω)は、金属蒸気流の最小入射角(α)および最大入
射角(β)を規定する2つの線分の間に形成される角度
であり、金属蒸気流の広がりを示している。
【0058】蒸着中、反応性ガスとして、酸素ガスを、
遮蔽板(116,120)に近接して設けたノズル(118,12
2)から金属蒸気流に導入して、強磁性金属薄膜中に酸
素が含まれるようにした。使用したノズルはいずれも、
直径1mmの小孔がフィルム幅の1.2倍の長さにわたっ
て等間隔に50個形成されたパイプであって、小孔から
ガスが吐出されるものであった。蒸着開始点付近に位置
するノズル(122)とPETフィルム(101)との間の距
離は50mmとした。蒸着終了点付近に位置するノズル
(118)とPETフィルム(101)との間の距離は20mm
とした。酸素のガス圧は156kPa(1.6Kgf/c
m2)に設定した。ノズル(122)からは、酸素を0.2
リットル/分の流量で、非磁性支持体(101)に向けて
非磁性支持体と90°の角度をなすように導入した。ノ
ズル(118)からは、酸素を2.0リットル/分の流量
で、非磁性支持体(101)の進行方向とは反対の方向に
向けて非磁性支持体と平行となるように導入した。蒸着
は強磁性金属薄膜の厚さが100nmとなるように実施し
た。
【0059】磁性層(強磁性金属薄膜)を形成した後、
強磁性金属薄膜の表面に保護層としてDLC膜を設け
た。更に、DLC膜の上にフッ素系潤滑剤を溶媒に溶解
して調製した塗布液を塗布した後、乾燥することによ
り、潤滑剤層を形成した。非磁性支持体の磁性層が形成
された面とは反対の面には厚さ400nmのバックコート
層を形成した。バックコート層はポリウレタン樹脂等を
メチルエチルケトンに溶解して調製した塗布液を塗布し
た後、乾燥してメチルエチルケトンを蒸発させることに
より形成した。このようにして製造した磁気記録媒体を
スリッティングしてテープとし、カセットに組み込ん
で、性能評価用のサンプルを作製した。実施例1で得ら
れた磁気記録媒体のBr・δは25×10-3T・μm
(250G・μm)であった。
【0060】(実施例2)図2に示す装置を用いて、非
磁性支持体上に強磁性金属薄膜を反応性蒸着法により形
成した。非磁性支持体として、幅250mm、厚さ4μm
のポリアラミドフイルム(PA)を使用した。このフィ
ルムの片面には、一方の表面にSiO2から成る直径1
2nmの微粒子が1μm2当り30個分散し固着してい
た。また、強磁性金属としてCo金属を使用した。
【0061】非磁性支持体(201)は送り軸(202)にセ
ットし、蒸着時のライン速度を50m/分に設定して、
ニップローラ(204)および冷却回転ドラム(206)上を
走行させて巻取軸(210)で巻き取るようにした。
【0062】冷却回転ドラム(206)を冷却する冷媒の
設定温度は0℃とした。真空蒸着は、電子ビーム(21
2)を使用して実施例1と同様にして実施した。金属蒸
気流の広がりは2つの遮蔽板(216,220)により制限
し、最大入射角(β)90°から最小入射角(α)38
°までの成分が蒸着されるようにした。立体角(ω)は
15°であった。
【0063】蒸着中、反応性ガスとして、156kPa
(1.6Kgf/cm2)の酸素ガスを、遮蔽板(216,22
0)に近接して設けたノズル(218,222)から金属蒸気
流に導入した。使用したノズルはいずれも、実施例1で
使用したものと同じノズルである。蒸着開始点付近に位
置するノズル(222)とPAフィルム(201)との間の距
離は50mmとし、蒸着終了点付近に位置するノズル(21
8)とPAフィルム(201)との間の距離は20mmとし
た。ノズル(222)からは、酸素を、非磁性支持体に向
けて非磁性支持体(201)と90°の角度をなす方向
に、0.1リットル/分の流量で導入した。ノズル(21
8)からは、酸素を、非磁性支持体(201)の進行方向と
は逆向きの方向に(即ち、ガスのフローと非磁性支持体
(201)との間に形成される角度を0°として)、1.
5リットル/分の流量で酸素を導入した。蒸着は強磁性
金属薄膜の厚さが100nmとなるように実施した。
【0064】磁性層を形成した後、実施例1と同様にし
て、保護層および潤滑剤層を形成するとともに、実施例
1と同様にして厚さ400nmのバックコート層を形成
し、磁気記録媒体を得た。それから、この磁気記録媒体
をスリッティングしてテープとし、カセットに組み込ん
で、性能評価用のサンプルを作製した。実施例2で得ら
れた磁気記録媒体のBr・δは30×10-3T・μm
(300G・μm)であった。
【0065】(実施例3)非磁性支持体として、一方の
表面にポリスルホンから成る直径10nmの微粒子が1μ
2当り70個分散し固着している、幅250mm、厚さ
4.5μmのポリエチレンナフタレート(PEN)フィ
ルムを用い、蒸着時のライン速度を300m/分とする
ことにより磁性層の厚さを50nmとしたこと以外は、実
施例1と同様にして磁気記録媒体を製造し、性能評価用
のサンプルを作製した。実施例3で得た磁気記録媒体の
Br・δは15×10-3T・μm(150G・μm)で
あった。
【0066】(実施例4)非磁性支持体として実施例1
で使用したPETフィルムと同じフィルムを用意した。
実施例1の装置において、るつぼに入った強磁性金属
(Co)に代えてCoターゲットを配置し、反応性スパ
ッタ法により磁性層を形成した。反応性スパッタは、A
rガス中にて5kWの電力を供給して実施した。このと
き、反応性ガスとして酸素ガスを、実施例1と同様にし
て導入した。また、スパッタは、強磁性金属蒸気流の最
大入射角(β)が90°となり、最小入射角(α)が3
0°となるように実施した。磁性層の厚さは30nmとし
た。磁性層を形成した後、実施例1と同様の方法で保護
層等を形成して磁気記録媒体を製造し、これをスリッテ
ィングしてカセットに組み込み、性能評価用のサンプル
を作製した。実施例4で得た磁気記録媒体のBr・δは
8×10-3T・μm(80G・μm)であった。
【0067】(実施例5)非磁性支持体として実施例2
で使用したPAフィルムと同じフィルムを用意した。実
施例2の装置において、るつぼに入った強磁性金属(C
o)に代えてCoターゲットを配置し、反応性スパッタ
法により磁性層を形成した。反応性スパッタは、Arガ
ス中にて5kWの電力を供給して実施した。このとき、
反応性ガスとして酸素ガスを、実施例2と同様にして導
入した。また、スパッタは、強磁性金属蒸気流の最大入
射角(β)が90°となり、最小入射角(α)が40°
となるように実施した。磁性層の厚さは80nmとした。
磁性層を形成した後、実施例1と同様の方法で保護層等
を形成して磁気記録媒体を製造し、これをスリッティン
グしてカセットに組み込み、性能評価用のサンプルを作
製した。実施例5で得た磁気記録媒体のBr・δは23
×10-3T・μm(230G・μm)であった。
【0068】(比較例1)非磁性支持体として実施例1
で使用したPETフィルムと同じフィルムを用いたこ
と、図2に示す装置を使用し、電子ビームのパワーを大
きくすることにより磁性層の厚さを180nmとしたこ
と、ならびにバックコート層の厚さを500nmとしたこ
と以外は実施例2と同様にして磁気記録媒体を製造し、
性能評価用のサンプルを作製した。比較例1で得た磁気
記録媒体のBr・δは95×10-3T・μm(950G
・μm)であった。
【0069】(比較例2)非磁性支持体として実施例1
で使用したPETフィルムと同じフィルムを用い、図2
に示す装置を用いて、最大入射角(β)90°から最小
入射角(α)50°までの成分を蒸着することにより磁
性層(厚さ100nm)を実施例2と同様にして形成し
た。さらに保護層、潤滑剤層およびバックコート層を実
施例2と同様にして形成して磁気記録媒体を製造し、性
能評価用のサンプルを作製した。比較例2で得た磁気記
録媒体のBr・δは30×10-3T・μm(300G・
μm)であった。
【0070】[磁性層の厚さ] テープの破断面の透過
型電子顕微鏡(TEM)写真(倍率500,000)か
ら求めた。
【0071】[金属粒子の粒径] 原子間力顕微鏡(A
FM)で、磁性層表面1μm2当たりの粒子の数を測定
し、1μm2を粒子の数で除して、粒子1個あたりの面
積を近似的に求め、この面積から粒径(粒子の直径)を
算出した。この測定を場所を変えて10箇所で実施し
て、粒径を算出した。10箇所で算出した粒径の平均を
金属粒子の粒径とした。
【0072】[残留磁束密度] 東英工業株式会社製の
振動型磁力計(型番VSM)を用いて、磁気記録媒体の
残留磁束密度を測定した。
【0073】[磁性層の傾斜角] 磁性層を構成する柱
状結晶の結晶軸と非磁性支持体の表面とがなす角度を、
テープの破断面を透過型電子顕微鏡(TEM)(倍率5
00,000)で観察することにより測定した。
【0074】[電磁変換特性] ヘリカルスキャン方式
の市販のデジタルビデオデッキ(DVデッキ)を評価用
デッキに改造したものを用い、相対速度10.2m/
s、トラック幅17μm、記録周波数21MHz(記録波
長0.5μm)で信号を記録した。信号の記録は、各実
施例で得たサンプルについて、互いに反対である2つの
方向が信号の記録方向となるように2方向で実施した。
各方向で記録した信号の再生出力を測定して各方向で記
録した信号の再生出力差を求めることによって、各サン
プルの電磁変換特性を評価した。
【0075】表1に各実施例で作製したサンプルの性能
を示す。
【0076】
【表1】
【0077】表1に示すように、実施例1〜5はいずれ
も各方向の出力差が1dB前後であり、比較例1(従来
品に相当)と比較して3dB程度小さいものであった。
このことは、本発明の磁気記録媒体においては、異なる
2の方向で記録した信号の出力差が実用可能なほど小さ
く、したがって、本発明の磁気記録媒体が2つの方向で
記録再生が可能な磁気記録媒体として有用であることを
示す。
【0078】実施例1と実施例2を比較すると、2つの
実施例は磁性層の厚さが同じであるものの、実施例1の
方が金属粒子の粒子径が小さく、出力差が小さい。これ
は、エンドレスベルトを用いたときの蒸着効率が、回転
ベルトを用いたときの蒸着効率よりも高いことによると
考えられる。
【0079】比較例2は、実施例と比較して異なる方向
で記録した信号の出力差が大きいものであった。これ
は、比較例2で得た磁気記録媒体の磁性層を構成する金
属粒子の粒子径が大きいことによると考えられる。
【0080】本実施例においては、ヘリカルスキャン方
式を用いて2方向で記録した信号の出力差から各サンプ
ルが2方向で記録可能であるかどうかを評価した。ヘリ
カルスキャン方式により2方向で記録した信号の出力差
が小さい磁気記録媒体は、リニア方式により長手方向の
2方向(順方向および逆方向)で記録した信号の出力差
も小さいものであることが確認された。したがって、上
記実施例1〜5の磁気記録媒体は、長手方向に平行な2
つの方向で信号を記録する磁気記録媒体としても有用で
ある。
【0081】
【発明の効果】本発明の磁気記録媒体は、強磁性金属薄
膜から成る磁性層を形成する金属粒子の粒径が5〜20
nmの範囲内にあり、磁気記録媒体の残留磁束密度Brと
磁性層の厚さδの積が2×10-3〜30×10-3T・μ
mの範囲内にある、2以上の方向で記録再生が可能な磁
気記録媒体である。したがって、例えば、本発明の磁気
記録媒体に2以上の方向で画像を記録したときでも、各
方向で記録した画像の画質の差は小さい。かかる磁気記
録媒体は種々の分野に適用することができる。
【0082】本発明の磁気記録媒体は、磁性層が好まし
くは蒸着法またはスパッタ法により形成された金属薄膜
型磁気記録媒体である。したがって、本発明によれば、
短い記録波長で記録した場合でも高い出力が確保される
という金属薄膜型磁気記録媒体の特性に加えて、2以上
の方向で記録できるという特性をも有する磁気記録媒体
が提供される。
【0083】本発明の磁気記録媒体の記録再生方法は、
本発明の磁気記録媒体を用いて、リニア方式で記録およ
び再生を実施する方法である。この方法により、従来に
ない記録再生システムを構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の磁気記録媒体の磁性層を形成するた
めの真空蒸着装置の一例の模式図である。
【図2】 本発明の磁気記録媒体の磁性層を形成するた
めの真空蒸着装置の一例の模式図である。
【符号の説明】
101,201...非磁性支持体(高分子フイルム) 102,202...巻出軸 104,204...ニップローラ 106a,106b,206...冷却回転ドラム 108...エンドレスベルト 110,210...巻取軸 112,212...電子ビーム 114,214...強磁性金属(蒸着源) 116,216...遮蔽板(低入射角側) 120,220...遮蔽板(高入射角側) 118,218...酸素ノズル(低入射角側) 122,222...酸素ノズル(高入射角側)
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) G11B 5/851 G11B 5/851 Fターム(参考) 5D006 BB01 BB07 EA03 FA09 5D091 AA03 CC05 GG18 HH20 5D112 AA05 AA22 BB05 BB06 FA02 FA04

Claims (12)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 非磁性支持体とその一方の表面に形成さ
    れた磁性層を含むテープ状の磁気記録媒体であって、磁
    性層が強磁性金属薄膜であり、磁性層を形成する金属粒
    子の粒径が5〜20nmの範囲内にあり、磁気記録媒体の
    残留磁束密度Brと磁性層の厚さδの積が2×10-3
    30×10-3T・μmの範囲内にある、2以上の方向で
    記録再生が可能である磁気記録媒体。
  2. 【請求項2】 互いに反対である2つの方向で記録再生
    が可能である請求項1に記載の磁気記録媒体。
  3. 【請求項3】 磁気記録媒体の長手方向に平行な方向で
    記録再生が可能である請求項2に記載の磁気記録媒体。
  4. 【請求項4】 記録波長0.1μm以上で記録した信号
    を再生したときの、一方の方向の再生出力と他方の方向
    の再生出力の差が1.5dB以下である請求項2または
    請求項3に記載の磁気記録媒体。
  5. 【請求項5】 磁性層がスパッタ法または蒸着法により
    形成されたものである請求項1〜4のいずれか1項に記
    載の磁気記録媒体。
  6. 【請求項6】 磁性層が柱状結晶構造を有する強磁性金
    属薄膜であり、柱状結晶の結晶軸が非磁性支持体の表面
    に対して30〜70°の角度で傾斜している請求項1〜
    5のいずれか1項に記載の磁気記録媒体。
  7. 【請求項7】 請求項1〜6のいずれか1項に記載の磁
    気記録媒体を長手方向の2方向で走行させてリニア方式
    で信号を記録し、磁気記録媒体を2方向で走行させて再
    生する磁気記録媒体の記録再生方法。
  8. 【請求項8】 記録波長が0.1μm以上である請求項
    7に記載の磁気記録媒体の記録再生方法。
  9. 【請求項9】 請求項1〜6のいずれか1項に記載の磁
    気記録媒体を製造する方法であって、磁性層を反応性蒸
    着法により形成し、反応性蒸着を、冷却回転支持体に沿
    って非磁性支持体を走行させながら、強磁性金属の入射
    角が20°以上となるように実施することを特徴とする
    磁気記録媒体の製造方法。
  10. 【請求項10】 請求項1〜6のいずれか1項に記載の
    磁気記録媒体を製造する方法であって、磁性層を反応性
    スパッタ法により形成し、反応性スパッタを、冷却回転
    支持体に沿って非磁性支持体を走行させながら、強磁性
    金属の入射角が20°以上となるように実施することを
    特徴とする磁気記録媒体の製造方法。
  11. 【請求項11】 冷却回転支持体が、回転ドラムまたは
    エンドレスベルトである請求項9または請求項10に記
    載の磁気記録媒体の製造方法。
  12. 【請求項12】 強磁性金属がコバルトである請求項9
    〜11のいずれか1項に記載の磁気記録媒体の製造方
    法。
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