JP2004334989A - 磁気記録媒体及びそれを用いた磁気記録再生装置 - Google Patents
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Abstract
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、情報機器、オーディオ機器およびビデオ機器で使用される、2以上の方向で記録再生が可能である磁気記録媒体ならびに当該磁気記録媒体の記録再生装置に関し、特にリニア方式の記録に適した磁気記録媒体に関する。さらに、本発明は、2つの金属薄膜から成る磁性層を有する磁気記録媒体の記録再生方法および当該磁気記録媒体のための磁気記録再生装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
蒸着またはスパッタリングにより形成された磁性金属膜を記録層として用いる磁気記録媒体は、金属薄膜型磁気記録媒体と称され、記録密度の点で他の磁気記録媒体(例えば塗布型の磁気記録媒体)を上回る特性を有している。金属薄膜型磁気記録媒体は、例えばデジタルビデオカセット用の記録媒体として既に実用化されている。
【0003】
テープ状の金属薄膜型磁気記録媒体においてはヘリカルスキャン方式が一般に採用される。これは、金属薄膜型磁気記録媒体の磁性層が、その形成方法に起因して特定方向に磁化容易軸を有し、信号の記録方向が一方向に限定されることによる。即ち、金属薄膜型磁気記録媒体の磁性層は、通常、入射角が40〜90°である斜方蒸着法により形成され、柱状結晶が斜め方向に成長した構造を有し、一方向の磁化容易軸を有する。そのため、金属薄膜型磁気記録媒体に信号を記録するときの方向(即ち、ヘッドの走行方向)は一方向に特定される。換言すれば、金属薄膜型磁気記録媒体の磁性層を構成する柱状結晶の成長方向は、磁気ヘッドが一方向に摺動することを想定して設計されている。このため、設計とは逆の方向に磁気ヘッドを摺動させて記録再生を行った場合には、十分な特性が得られず、順方向と逆方向の再生出力に差が生じるという問題があった。
【0004】
上記問題を解決するために、例えば特開平5−182168号公報(特許文献1)および特開平10−334441号公報(特許文献2)には、磁性層が2つの斜方蒸着膜から成る2層構造を有し、上層の斜方蒸着膜と下層の斜方蒸着膜の柱状構造の成長方向が互いに逆方向に傾斜しており、かつ各層の膜厚比または角形比を規定した磁気記録媒体が開示されている。
【0005】
【特許文献1】
特開平5−182168号公報
【特許文献2】
特開平10−334441号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
特許文献1に記載された上層および下層の斜方蒸着膜の膜厚比、および特許文献2に記載された上層および下層の斜方蒸着膜の角形比の関係は、信号の記録再生条件の如何にかかわらず、適用されるものと認められる。即ち、上記文献はいずれも、記録波長が特定の範囲内にある記録再生装置で記録するための記録媒体を開示したものではない。しかし、上記特許文献1および2の開示に基づいて作製した磁気記録媒体について2方向の記録再生を実施すると、使用する機器によって出力差が異なる。換言すれば、上記文献に記載の磁気記録媒体は、使用条件によっては、走行方向の違いに起因する出力差を小さくするという所期の効果を達成できない。使用条件により磁気記録媒体の特性が変化する場合において最適な使用条件が示されていなければ、その磁気記録媒体を実用に供することは非常に難しく、実質的に不可能である。したがって、実用性という点からみて、上記文献に開示された磁気記録媒体はいずれも、走行方向による出力差に関する問題を抜本的に解決したものではなかった。
【0007】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、2方向で記録再生が行われる磁気記録媒体において、記録される信号の波長に応じて、走行方向による出力差が最適化された磁気記録媒体を提供することを課題とする。さらにまた、本発明は、本発明の磁気記録媒体を長手方向の2方向で走行させてリニア方式で信号を記録再生する磁気記録再生装置、ならびに2つの金属薄膜から成る磁性層を有し、2つの金属薄膜がそれぞれ特定の残留磁束密度を有する磁気記録媒体の最適な記録再生方法を提供することを課題とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため種々検討した結果、2層の金属薄膜から成る磁性層を有する磁気記録媒体において、2つの金属薄膜の残留磁束密度の比の最適値が記録再生条件の中でも最短記録波長による影響を最も受けることが判明し、本発明に至った。即ち、本発明は、非磁性支持体の一方の表面に形成された磁性金属膜を記録層として有する磁気記録媒体であって、この磁性金属膜が、下側層である第1金属薄膜および上側層である第2金属薄膜から成り、第1金属薄膜と第2金属薄膜がともに斜方柱状構造を有し、その成長方向がこれらの2つの金属薄膜において互いに逆方向であり、かつ、第1金属薄膜(下側層)の残留磁束密度をB1、第2金属薄膜(上側層)の残留磁束密度をB2、この磁気記録媒体に記録される信号の最短波長をλminμmとしたときに、B1、B2、およびλminが下記の式(1):
【数3】
を満たす磁気記録媒体である。この磁気記録媒体は、磁気ヘッドと摺動することにより信号を記録再生するものであり、互いに反対である2つの方向で記録再生が可能なものである。ここで、「互いに反対である2つの方向で記録再生が可能である」とは2つの方向で信号を記録し各方向の信号を再生したときに、再生出力差が実用可能なほど小さいことをいう。具体的には最短波長で記録した各方向の信号の再生出力が1dB以下であれば実用上問題ないといえる。また長波長領域(一般には、記録装置で用いる最短波長λminの2〜4倍の範囲内にある波長)においては、2〜3dBの差があっても実用上問題ないことを確認した。
【0009】
この磁気記録媒体は、2方向で記録再生するのに有利な構造の記録層、即ち斜方柱状構造の成長方向が互いに逆である2層構造の記録層において、各層の残留磁束密度を、記録する信号の最短波長λminに基づいて決定することを特徴とする。それにより、最短波長λminで記録した信号の走行方向の違いによる出力差が小さい磁気記録媒体を得ることが可能となる。上述のように、互いに反対の2方向で記録再生する場合には、記録波長が最も短い信号の出力差に関する要求が最も厳しい。したがって、得ようとする磁気記録媒体へ記録再生を行なうに際し使用される最短波長λmin(通常、この値は規格等により予め定められている)に基づいて残留磁束密度の比を最適値とすることにより、当該媒体が使用される機器において当該媒体の性能を良好に発揮させることができる。
【0010】
本発明の磁気記録媒体において、第1金属薄膜の厚さT1と第2金属薄膜の厚さT2とは同じであることが好ましい。|T1−T2|が大きい場合には、B2/B1とλminが上記式(1)を満たすとしても、λminで記録した信号の走行方向の違いによる出力差が大きくなり、所期の効果が達成されないことがある。ここで、T1とT2は厳密に同じである必要はなく、20nm程度までの差は許容される。換言すれば、T1とT2とは「実質的に」同一であることが好ましい。
【0011】
本発明の磁気記録媒体において、第1金属薄膜および第2金属薄膜の柱状構造の成長方向はそれぞれ、非磁性支持体の表面に対して30〜70度の角度で傾斜していることが好ましい。柱状構造の傾斜角が30度未満であると走行方向の違いによる再生出力差が大きくなる傾向にある。柱状構造の傾斜角が70度を超えると、十分な電磁変換特性を得られないことがある。
【0012】
本発明の磁気記録媒体において、第1金属薄膜および第2金属薄膜はともに、強磁性金属薄膜であることが好ましく、特にコバルトを含む薄膜であることが好ましい。コバルトで磁性金属膜を形成した磁気記録媒体によれば、高出力および高CNRを確保できることによる。
【0013】
本発明の磁気記録媒体において、第1金属薄膜および第2金属薄膜はともに、スパッタ法または蒸着法により形成されたものであることが好ましい。それらの方法によれば、柱状結晶が斜め方向に成長した構造の膜を容易に得ることができるからである。
【0014】
本発明の磁気記録媒体は、最短波長λminが0.2〜2.0μmの範囲内にある記録波長を用いて記録されるものであることが好ましい。より好ましくは、本発明の磁気記録媒体は、最短波長λminが0.2〜1.0μmの範囲内にある記録波長を用いて記録されるものである。本発明は最短波長λminにおいて走行方向による出力差が最も小さくなるように磁性層を構成したものであるから、最短波長λminが上述の範囲のように短いものであっても、当該波長を用いて実用上問題なく2方向で記録することが可能である。
【0015】
本発明の磁気記録媒体は、好ましくは、リニア方式で記録および再生する磁気記録媒体である。リニア方式による記録再生は、磁気記録媒体に対して磁気ヘッドを磁気記録媒体の長手方向の一方向およびその反対の方向に相対的に走行させて実施する。長手方向において、一方向は2つの金属薄膜のいずれか一方に対して順方向となり、その反対方向は当該一方の金属薄膜に対して逆方向となる。ここで、順方向とは、金属薄膜の柱状結晶の成長方向と同じ方向をいい、逆方向とはその反対の方向をいう。リニア方式は、高速の書込みが可能である、ならびに磁気記録媒体の摩耗が抑制されるといった利点を有する。したがって、これらの利点を有するリニア方式を金属薄膜型磁気記録媒体に適用することができれば、当該媒体の使用範囲をより広くすることが可能となる。
【0016】
本発明はまた、上記本発明の磁気記録媒体の記録再生方法であって、磁気記録媒体を長手方向の2方向で走行させて、リニア方式により、最短波長をλminμmとして信号を記録し、磁気記録媒体を2方向で走行させて再生する磁気記録媒体の記録再生方法を提供する。上述のように、最短波長λminμmは好ましくは0.2〜2.0μmの範囲内にあり、より好ましくは0.2〜1.0μmの範囲内にある。本発明の磁気記録媒体によれば、このように最短波長が短くても、2方向での記録再生を良好に実施できる。
【0017】
本発明はさらにまた、本発明の磁気記録媒体を長手方向の2方向で走行させて、リニア方式により、最短波長をλminμmとして信号を記録し、当該磁気記録媒体を2方向で走行させて再生する、磁気記録再生装置をも提供する。この装置は、上記本発明の磁気記録媒体を使用するための装置であり、また、上記本発明の磁気記録媒体の記録再生方法を実施するための装置である。この装置によれば、最短波長がλminμmの信号の記録再生を行っても、走行方向による出力差を小さくすることが可能となる。
【0018】
本発明は、非磁性支持体の一方の表面に形成された磁性金属膜を記録層として有する磁気記録媒体であって、当該磁性金属膜が下側の第1金属薄膜と上側の第2金属薄膜の2層から成り、2つの金属薄膜が斜方柱状構造を有し、第1金属薄膜と第2金属薄膜の斜方柱状構造の成長方向が媒体走行方向の法線に対して互いに逆方向であるような磁気記録媒体を記録再生する好ましい方法をも提供する。具体的には、この構成の磁気記録媒体において、前記第1金属薄膜の残留磁束密度がB1であり、前記第2金属薄膜の残留磁束密度がB2である場合には、下記の式(2):
【数4】
を満たすλを最短波長として(即ち、これより短い記録波長を用いずに)信号を記録し、これを再生する記録再生方法を提供する。この記録再生方法は、上述の特許文献1および2で開示されているような構成の記録媒体に関して、2方向での記録再生に適した記録条件(より具体的には最短記録波長)を決定する方法に相当する。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
以下の説明を含む本明細書において、磁気記録媒体を構成する各層または膜の「表面」とは、各層または膜が形成されたときに露出している面、即ち、各層または膜の非磁性支持体から遠い側の面を意味する。また、各層の「表面に」というときは、特に断りのない限り当該表面に接する位置をいう。さらにまた、以下の説明を含む本明細書において、磁気記録媒体の構成に関して、磁気記録媒体を構成する各層または膜の「上」というときは、特に断りのない限り、各層または膜の非磁性支持体から遠い側の表面に接していることを意味する。したがって、例えば、「磁性層の上に」というときは、「磁性層の非磁性支持体から遠い側の表面に隣接する位置に」を意味する。
【0020】
上述のように、本発明の磁気記録媒体は、少なくとも非磁性支持体とその一方の表面に形成された磁性層とを含む。本発明の磁気記録媒体を構成する非磁性支持体は、高分子フィルムであることが好ましい。高分子フィルムは、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアミド、ポリイミド、ポリ塩化ビニルおよびポリカーボネート等から1または複数の材料を適宜選択して形成される。非磁性支持体の厚さが薄すぎると強度が弱くなりすぎ、厚すぎると媒体全体の厚さが大きくなりすぎて記録容量の大容量化に不利である。非磁性支持体の厚さは、具体的には5〜10μmであることが好ましい。なお、用途等に応じた強度を確保できる限りにおいて、さらに薄い非磁性支持体を使用してよいことはいうまでもなく、また、大容量化が特に求められない場合には、厚い非磁性支持体を使用してもよい。
【0021】
非磁性支持体の磁性層が形成される面(即ち、磁性層と接する側の面)には、磁気記録媒体の磁性層側表面の走行性を向上させるために、SiO2、TiO2、Al2O3またはZrO2等の無機物質、あるいはポリスルホン等の有機物質から成る微粒子が例えば1μm2につき3〜150個、分散し、固着していることが好ましい。微粒子は、非磁性支持体の表面に、例えば高さ5〜25nmの表面突起を形成するような形状および寸法を有することが好ましい。一般に、突起の高さが5nm未満では良好な走行性を確保することが難しい。突起の高さが25nmを超えると再生出力のスペーシング損が大きくなり、磁気記録媒体として使用することができない。
【0022】
非磁性支持体の表面突起は、例えば、前記微粒子と高分子樹脂(例えば、非磁性支持体が高分子フィルムである場合には、高分子フィルムを形成する樹脂と同じ樹脂)とを混合し、この混合物を高分子フィルムにコーテイングすることによって形成できる。あるいは、微粒子を含む高分子材料でフィルムを製造することによっても、表面に突起を有する非磁性支持体を得ることができる。表面突起を有する非磁性支持体は、特開平9−164644号公報および特開平10−261215号公報等に開示されている。
【0023】
磁性層は、通常、非磁性支持体の一方の表面(前記表面突起が形成されている場合には、表面突起が形成されている面)に形成される。本発明の磁気記録媒体においては、第1金属薄膜がまず非磁性支持体の表面に形成され、第1金属薄膜の表面に第2金属薄膜が形成されて、これら第1および第2金属薄膜が磁性層を構成する。
【0024】
第1金属薄膜および第2金属薄膜は、同じ材料(蒸着法により形成する場合には、同じ蒸着源)を用いて成膜することが好ましい。但し、後述するように、両方の金属薄膜の残留磁束密度B1およびB2を、B2/B1が上記式(1)を満たすように互いに異なるようにする場合には、各層を形成する際に酸素の供給量を変えることがある。その結果、磁気記録媒体において、第1金属薄膜および第2金属薄膜は、互いに異なる組成を有することがあり、より具体的には、互いに異なる金属/酸素の比を有することがある。同様のことは、同じ金属及び非磁性体を用いて第1金属薄膜および第2金属薄膜を形成する場合に、各金属薄膜中の非磁性体の割合を制御して所望のB2/B1を得ようとする場合にも生じる。第1金属薄膜と第2金属薄膜は、互いに異なる金属を用いて形成してもよい。
【0025】
第1および第2金属薄膜は強磁性金属薄膜であり、好ましくはコバルト薄膜である。他に使用できる強磁性金属としては、Fe、Ni、ならびにCo−Ni、Co−Fe、Co−Cr、Co−Cu、Co−Pt、Co−Pd、Co−Sn、Co−Au、Fe−Cr、Fe−Co−Ni、Fe−Cu、Ni−Cr、Fe−Co−Cr、Co−Ni−Cr、Co−Pt−CrおよびFe−Co−Ni−Cr等の合金がある。第1金属薄膜および第2金属薄膜は、酸素を含んでいてよく、酸素はこれらの金属または合金の酸化物の形態で含まれていてよい。
【0026】
第1および第2金属薄膜は、好ましくはスパッタ法または蒸着法により形成され、より好ましくは、強磁性金属と化学反応するガス雰囲気下(例えば酸素雰囲気下)にて実施する反応性蒸着法または反応性スパッタ法により形成される。
【0027】
第1および第2金属薄膜を蒸着法により形成する場合、蒸着は、冷却回転支持体に沿って非磁性支持体を走行させながら、強磁性金属(好ましくはコバルト)の入射角が20°以上となるように実施する斜方蒸着であることが好ましい。入射角は、強磁性金属の蒸気流と非磁性支持体表面の法線とがなす角度に相当する。入射角が20°未満であると十分な電磁変換特性を得ることが難しくなる。入射角は、柱状結晶の傾斜角に影響を及ぼす。入射角が小さいほど、傾斜角は90°(即ち、非磁性支持体の表面に対して垂直な方向)に近づき、入射角が大きいほど傾斜角は0°(即ち、非磁性支持体の表面と平行な方向)に近づく。したがって、入射角は、第1および第2金属薄膜の磁気特性がそれぞれ所望のものとなるように適宜調節される。斜方蒸着は、好ましくは第1および第2金属薄膜の柱状構造の傾斜角(柱状結晶と非磁性支持体の表面とがなす角度)が30〜70度となるように実施される。
【0028】
本発明の磁気記録媒体において、磁性層は、第1金属薄膜と第2金属薄膜の柱状結晶の成長方向が媒体走行方向の法線に対して互いに逆となる構造を有する。かかる構造は、上記の斜方蒸着法により第1金属薄膜を形成した後、第1金属薄膜を形成したときの走行方向とは反対の方向に、第1金属薄膜を形成した非磁性支持体を冷却回転支持体に沿って走行させながら、第2金属薄膜を同様に斜方蒸着法で形成することにより、実現できる。スパッタ法で磁性層を形成する場合にも、同様の手法により、柱状結晶の成長方向が互いに逆向きである第1金属薄膜および第2金属薄膜を形成することができる。なお、第1金属薄膜の柱状構造が磁気記録媒体の法線となす角度は、第2金属薄膜のそれと成長方向の向きが互いに反対である限りにおいて、必ずしも完全に一致している必要はない。
【0029】
磁性層(より具体的には第1金属薄膜)は、非磁性支持体の表面に形成された下地膜の上に形成してもよい。即ち、本発明の磁気記録媒体は、磁性層と非磁性支持体との間に下地膜を有する構成を有してよい。下地膜は、金属または金属酸化物で形成され、より具体的には、酸化コバルトから成る膜であることが好ましい。下地膜を形成することにより、粒子サイズの均一化と微細化の制御が可能となり、また磁性層と非磁性支持体との間の付着力を向上させることができる。
【0030】
上述のように、第1金属薄膜および第2金属薄膜は、それぞれの残留磁束密度B1およびB2が、最終的に得られる磁気記録媒体に信号を記録する際に使用する記録波長のうち、最も短い波長、即ち最短波長λminと、下記の式(1)を満足するように形成される。
【数5】
したがって、例えば、λminが0.5μmである場合には、0.20≦B2/B1≦0.30となり、λminが1μmである場合には、0.40≦B2/B1≦0.60となる。
【0031】
残留磁束密度は、第1金属薄膜および第2金属薄膜をガス(例えば酸素ガス)を導入しながら磁性層を蒸着により形成する場合に、ガスの流量およびガスを導入するノズルと非磁性支持体との間の距離を調節することによって調節できる。例えば、ガスの流量が多いほど、残留磁束密度は小さくなる傾向にある。このことは、スパッタ法で磁性層を形成する場合も同様である。
【0032】
あるいは、残留磁束密度は、金属薄膜中に非磁性体を含有させ、その割合を変化させることによっても、調節することができる。一般に、非磁性体の割合が大きいほど、残留磁束密度は小さくなる傾向にある。非磁性体としては、具体的にには、CoOを使用できる。
【0033】
なお、第1金属薄膜および第2金属薄膜の残留磁束密度B1およびB2は、第1金属薄膜および第2金属薄膜をそれぞれ、磁気記録媒体を製造するときに採用する成膜条件と同じ条件で単層体として形成し、その残留磁束密度を各々測定することにより求める。残留磁束密度は、例えば、DMS社製のVSM(振動試料型磁力計)モデル1660を用いて測定することができる。
【0034】
第1および第2金属薄膜の厚さT1およびT2は、前述のように実質的に同一であることが好ましい。T1およびT2はそれぞれ、好ましくは10〜200nmの範囲内にある。T1およびT2がそれぞれ10nm未満であると、出力の低下を招く可能性があり、200nmを超えると、クラックが発生しやすくなる。また、磁性金属膜全体の厚さ(即ち、T1+T2)は好ましくは20〜400nmの範囲内にある。磁性層全体の厚さが20nm未満では、出力の低下を招く可能性があり、400nmを超えると、クラックが発生しやすくなる。
【0035】
本発明の磁気記録媒体は、磁性層の構成が上記の構成である限りにおいて、任意の構成とすることができる。以下、上記において説明した非磁性支持体および磁性層以外の要素、即ち、必要に応じて形成される保護層、潤滑剤層およびバックコート層の構成を説明する。
【0036】
磁性層の上、より具体的には第2金属薄膜の表面には、保護層を形成してよい。保護層は、磁気ヘッドと接触する磁気記録媒体の損傷を防止するために設けられる。保護層は、例えば、スパッタリングもしくはプラズマCVD等の方法で得られる、アモルファス状、グラファイト状もしくはダイヤモンド状の炭素から成る炭素膜、あるいはそれらの炭素を混合および/または積層して形成した炭素膜である。保護層は、好ましくはダイヤモンド状の炭素、即ちダイヤモンドライクカーボン(Diamond Like Carbon;DLC)で形成される。保護層の厚さは、いずれの材料についても1〜50nmであることが好ましい。
【0037】
磁性層の上に保護層を形成する場合において、保護層の上には更に潤滑剤層を形成してよい。潤滑剤層は、磁気記録媒体の走行性を向上させるために設けられる。潤滑剤層を形成する潤滑剤は、磁気記録媒体用の潤滑剤として汎用されているものから任意に選択できる。潤滑剤は、例えば、パーフルオロポリエーテル等のフッ素系潤滑剤または炭化水素系潤滑剤であることが好ましい。潤滑剤層は、潤滑剤以外の成分として、例えば極圧剤および/または防錆剤等を含んでよい。潤滑剤層は、例えば、潤滑剤を適当な溶媒に溶解または分散させた塗布液を保護層(保護層が形成されていない場合には磁性層)の上に塗布した後、溶媒を蒸発させることによって形成できる。潤滑剤層の厚さは一般に0.05〜50nmである。
【0038】
記録再生装置における走行性を向上させるために、本発明の磁気記録媒体は、非磁性支持体の磁性層が形成される面とは反対側の面に形成されたバックコート層を有してよい。バックコート層は、ポリウレタン系樹脂、ニトロセルロース系樹脂、ポリエステル系樹脂(例えばバイロン)、カーボン、および炭酸カルシウム等から選択される1種または複数種の材料を、適当な溶媒(例えば、トルエンとメチルエチルケトンの混合溶媒)に溶解および/または分散させた塗布液を調製し、この塗布液を非磁性支持体の磁性層が形成された面とは反対の表面に塗布した後、乾燥して溶媒を蒸発させる湿式塗布法により形成できる。このようにしてバックコート層を形成する場合、その厚さは100〜500nmとすることが好ましい。
【0039】
本発明の磁気記録媒体への記録は、好ましくはリニア方式で実施される。記録は、例えばインダクティブヘッド等の磁気ヘッドを用いて、予め規定されたλmin以上の記録波長で実施され、再生はインダクティブヘッドまたは磁気抵抗型ヘッド(MRヘッドもしくはGMRヘッド)等の磁気ヘッドを用いて実施される。リニア方式による記録および再生は、磁気記録媒体を長手方向で走行させながら行う。本発明の磁気記録媒体は、順方向および逆方向のいずれの方向で走行させてデータを記録した場合でも、λminμmで記録した信号の再生出力差は1dB以下となり、λminμmより長波長の信号の再生出力差も3dBを超えることはない。即ち、本発明の磁気記録媒体は、サーペンタイン方式にも適したものとなる。
【0040】
あるいは、本発明によれば、例えば、上記特許文献1および2に開示された構成の磁気記録媒体に信号を記録するに際し、最適な最短波長を決定できる。具体的には、磁性層が、柱状結晶の成長方向が互いに逆向きである2つの金属薄膜から成る磁気記録媒体において、上層である第1金属薄膜の残留磁束密度がb1であり、下層の第2金属薄膜の残留磁束密度がb2である場合には、下記の式(2)を満たすλを最短波長に設定して信号を記録し、これを再生すれば、当該磁気記録媒体の有する性能を最も有効に利用し得る。あるいは、この式(2)によれば、ある磁気記録媒体が、所与の記録再生装置で記録再生するのに適しているか否かを簡易に判断できる。
【数6】
【0041】
【実施例】
次に、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。
図1に本実施例で作製した磁気記録媒体の断面図を模式的に示す。図1の磁気記録媒体10は、高分子フィルム1の一方の表面に、第1金属薄膜2aおよび第2金属薄膜2bが磁性層2として形成され、磁性層2の表面に保護層3が形成され、保護層3の表面に潤滑剤層4が形成され、高分子フィルム1の他方の表面にバックコート層5が形成された構成を有する。この磁気記録媒体おいて、第1金属薄膜2aおよび第2金属薄膜2bの柱状構造は、媒体走行方向の法線Pに対して互いに逆方向である。
【0042】
図1に示す構成を有し、第1金属薄膜2aの残留磁束密度B1の第2金属薄膜2bの残留磁束密度B2に対する比(B2/B1)をそれぞれ変化させたサンプルを5種類、次の手順に従って作製した。まず、非磁性支持体として厚さ9μmのPETフィルム1を使用した。このフィルムの磁性層を形成する側の表面には、SiO2から成る直径11nmの微粒子が1μm2当り65個分散し、固着していた。
【0043】
この微粒子が固着している表面に、第1金属薄膜2aを、Coを蒸着源として斜方反応性蒸着法により形成した。蒸着は、冷却回転支持体に沿ってPETフィルム1を走行させながら、入射角70度から35度までの金属蒸気流の成分が蒸着されるように成膜した。第1金属薄膜2aを形成した後、テープの走行方向を逆にして、入射角を同じにして蒸着を実施し、第2金属薄膜2bを形成した。蒸着は、酸素を供給しながら実施した。いずれのサンプルにおいても、第1金属薄膜2aおよび第2金属薄膜2bの厚さは、それぞれ100nmとした。B1およびB2は、蒸着中に供給する酸素流量を2〜0.25リットル/分の流量の範囲内で変化させることにより調節し、各サンプルについて表1に示すようなB1およびB2を得た。なお、表1に示すB1およびB2は、第1金属薄膜および第2金属薄膜の成膜条件とそれぞれ同じ成膜条件にて形成した、厚さ100nmの金属薄膜(単層体)について、DMS社製VSM(振動試料型磁力計)モデル1660を用いてそれぞれ測定した値である。
【0044】
各サンプルについて、第1金属薄膜2aおよび第2金属薄膜2bの柱状構造の傾斜角を日本電子株式会社製の電界放射走査型電子顕微鏡で測定したところ、ともに50度であった。なお、傾斜角は、図1においてαで表される角度である。
【0045】
また、比較のために、厚さ200nmの単層構造の磁性層を形成し、これを比較サンプルとした。比較サンプルの磁性層の残留磁束密度も表1に示す。
【0046】
いずれのサンプルも、磁性層を形成した後、磁性層(サンプルA〜Eについては第2金属薄膜2b)の表面に、保護層3として、厚さが約10nmであるダイヤモンド状炭素膜を形成した。さらに、フッ素を含有する有機化合物を潤滑剤として使用して、保護層3の表面に、厚さが約5nmである潤滑剤層4を形成した。潤滑剤層4は、フッ素系潤滑剤を溶媒に溶解して調製した塗布液を塗布した後、乾燥することにより形成した。次に、高分子フィルム1の磁性層2が形成された面とは反対側の面に、カーボンブラックを添加したポリウレタン樹脂から成る厚さ500nmのバックコート層を形成した。バックコート層はポリウレタン樹脂等をメチルエチルケトンに溶解して調製した塗布液を塗布した後、乾燥してメチルエチルケトンを蒸発させることにより形成した。このようにして作製した磁気記録媒体を所定の幅(1/2インチ)にスリットし磁気テープとした。
【0047】
【表1】
【0048】
作製した各磁気テープサンプルについて、長手方向の2方向で走行させて信号を記録再生できる磁気記録再生装置を用いて、各方向での電磁変換特性を測定した。磁気ヘッドとしては、ギャップ長0.16μmのメタルインギャップ型のインダクティブヘッドを用い、ヘッドとテープの相対速度は5m/sとした。各磁気テープサンプルについて、各方向の出力の記録波長依存性を図2に示し、比較磁気テープサンプルについて、各方向の出力の記録波長依存性を図3に示す。図2において、順方向とは、上側の金属薄膜である第2金属薄膜に対して順方向であることを指し、逆方向とはその反対の方向をいう。
【0049】
図2および図3から、磁性層が単層構造である比較サンプルに比べて、サンプルA〜Eは、その走行方向の違いによる出力差が概して小さいことがわかる。また、各サンプルにおいて、走行方向の違いによる出力差がほぼゼロとなる記録波長が存在することがわかる。前述のとおり、長波長側の記録波長で記録した信号については、走行方向の違いによる出力差が2〜3dB程度であってもよい。したがって、図2より、各サンプルについて、出力差がゼロとなる記録波長を最短波長として信号の記録を実施すれば、走行方向の違いによる出力差は実用上、許容できることがわかる。
【0050】
出力差がゼロとなる記録波長は、各サンプルごとに、即ち、第2金属薄膜(上層)の残留磁束密度B2と第1金属薄膜(下層)の残留磁束密度B1の比B2/B1によって異なる。そこで、上層/下層の残留磁束密度の比(B2/B1)を横軸とし、記録方向による出力差がゼロとなる記録波長(最適波長)をプロットしたグラフを図4に示す。図4において、実験値は実施例で作製したサンプルに基づく値である。図示するように、残留磁束密度の比をy、記録波長をxとしたときに、実験値はほぼy=0.5xの線上にあることがわかる。しかし、実際に磁気記録媒体を設計および製造するに際し、B2/B1が図示した線上に正確に位置するようにすることは困難であると考えられた。そこで、出力差がゼロとなる記録波長において残留磁束密度比B2/B1を変化させたところ、B2/B1が0.5xの±20%(即ち、0.8〜1.2倍)の範囲内にあれば、許容可能な程度の出力差が得られることを確認した。その範囲は、図4において破線で示されている。以上の結果より、最短波長λminμmが予め与えられている場合には、B2/B1を(0.5λmin)×0.8〜(0.5λmin)×1.2の範囲内に設定して磁性層を形成すれば、走行方向の違いによる出力差の小さい磁気記録媒体を実現し得ることがわかった。
【0051】
なお、実施例では非磁性支持体としてPETフィルムを用いたが、PENフィルムおよびアラミドフィルム等、他の高分子フィルムを用いても同様の効果が得られる。また、磁性層を形成する強磁性金属としてCoを用いたが、CoCr合金等、蒸着等によって、柱状構造を有し且つ磁気異方性を有する磁性金属薄膜を形成することができる金属を使用した場合でも、同様の効果が得られる。さらにまた、成膜方法は、蒸着法およびスパッタ法のいずれであってもよい。さらに、必要に応じて、柱状構造の制御および付着力向上を目的として下地膜を形成し、当該下地膜の上に磁性層を形成した場合でも同様の効果が得られる。
【0052】
図4のグラフにおいて、y=0.5x(y:残留磁束密度比、x:最適波長)で表される直線を、xとyを反対にして、最適波長をY軸、残留磁束密度比をX軸とする場合には、Y=2Xで表される式が直線としてグラフに表示される。図4と同様にして、この直線の±20%を許容範囲として破線で表示すると、残留磁束密度比が既知の場合に最短記録波長の最適範囲を知ることができる。具体的には、磁性層が、斜方柱状構造の成長方向が媒体走行方向の法線に対して互いに反対である2つの金属薄膜から成り、下側の金属薄膜の残留磁束密度がb1、上側の金属薄膜の残留磁束密度がb2である場合に、b2/b1(X)の値から当該磁性層を有する磁気記録媒体に信号を記録するのに適した最短記録波長(Y)を求めることができる。
【0053】
【発明の効果】
本発明は、信号を記録する際の最短波長λminμmに応じて、柱状構造の成長方向が媒体走行方向の法線に対して互いに逆方向である2つの金属薄膜の残留磁束密度の比を決定することを特徴とする。この特徴によれば、磁気記録媒体に、長手方向の2方向で、最短波長がλminμmの信号を記録した場合に、走行方向による再生出力の差を小さくすることができる。したがって、本発明によれば、リニア方式で且つ2方向で記録するのに適した磁気記録媒体を実現できる。
【0054】
本発明はまた、本発明の磁気記録媒体を記録再生するのに適した、磁気記録媒体を長手方向の2方向で走行させてリニア方式により記録再生する磁気記録再生装置を提供する。この装置は、最短記録波長λminμmとして例えば0.2〜2.0μm程度の波長を使用できるので、高密度磁気記録装置として有用である。
【0055】
さらに、本発明は、磁性層が柱状構造の成長方向が媒体走行方向の法線に対して互いに逆方向である2つの金属薄膜から成る磁気記録媒体が所与のものである場合に、当該磁気記録媒体を記録するのに適した最短波長を求めて、当該波長以上の長い波長の信号を2方向で記録し、これを再生する方法を提供する。この方法によれば、最短波長を用いて2方向で記録した信号の再生出力差を最も小さくし得る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の磁気記録媒体の一例を模式的に示す断面図である。
【図2】(a)〜(e)はそれぞれ、実施例で作製したサンプルA〜Eについて、異なる2方向で走行させて信号を記録したときの各方向の信号の出力の記録波長依存性を示すグラフである。
【図3】実施例で作製した比較サンプルについて、異なる2方向で走行させて信号を記録したときの各方向の信号の出力の記録波長依存性を示すグラフである。
【図4】残留磁束密度比(B2/B1)と、各方向の信号の出力差がゼロになる波長(最適波長)との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
1...非磁性基板、2...磁性層、2a...第1金属薄膜、2b...第2金属薄膜、3...保護層、4...潤滑剤層、5...バックコート層、10...磁気記録媒体。
Claims (15)
- 前記第1金属薄膜の厚さT1と前記第2金属薄膜の厚さT2とが同じである請求項1に記載の磁気記録媒体。
- 前記最短波長λminが0.2〜2.0μmの範囲内にある、請求項1または請求項2に記載の磁気記録媒体。
- 前記第1金属薄膜および前記第2金属薄膜の柱状構造の成長方向が前記非磁性支持体の表面に対して30〜70度の角度で傾斜している請求項1〜3のいずれか1項に記載の磁気記録媒体。
- 前記第1金属薄膜および前記第2金属薄膜がコバルトを含む請求項1〜4のいずれか1項に記載の磁気記録媒体。
- 前記第1金属薄膜および前記第2金属薄膜がスパッタ法または蒸着法により形成されたものである請求項1〜5のいずれか1項に記載の磁気記録媒体。
- 前記第2金属薄膜の表面に保護層が形成されている請求項1〜6のいずれか1項に記載の磁気記録媒体。
- 前記第2金属薄膜の表面に保護層が形成され、当該保護層の表面に潤滑剤層が形成されている請求項1〜7のいずれか1項に記載の磁気記録媒体。
- 前記非磁性支持体と前記第1金属薄膜との間に下地膜が形成されている請求項1〜8のいずれか1項に記載の磁気記録媒体。
- 前記非磁性支持体の磁性金属膜が形成された面とは反対側の面にバックコート層が形成されている請求項1〜9のいずれか1項に記載の磁気記録媒体。
- 互いに反対である2つの方向で記録再生が可能である請求項1〜10のいずれか1項に記載の磁気記録媒体。
- 磁気記録媒体の長手方向に平行な方向で記録再生が可能である請求項11に記載の磁気記録媒体。
- 請求項1〜12のいずれか1項に記載の磁気記録媒体の記録再生方法であって、当該磁気記録媒体を長手方向の2方向で走行させて、リニア方式により、最短波長をλminμmとして信号を記録し、当該磁気記録媒体を2方向で走行させて再生する磁気記録媒体の記録再生方法。
- 請求項1〜12のいずれか1項に記載の磁気記録媒体を長手方向の2方向で走行させて、リニア方式により、最短波長をλminとして信号を記録し、当該磁気記録媒体を2方向で走行させて再生する、磁気記録再生装置。
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