JP2006028029A - 血清コレステロールの上昇抑制または低下のための組成物 - Google Patents

血清コレステロールの上昇抑制または低下のための組成物 Download PDF

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Abstract

【課題】血清コレステロールの上昇抑制または低下を可能にする組成物を提供する。
【解決手段】ベタニン、ベタニジン、イソベタニン及びイソベタニジンからなる群から選択される少なくとも1つを有効成分として含むことを特徴とする、血清コレステロール上昇を抑制するための、または、血清コレステロールを低下させるための組成物。
【選択図】図1

Description

本発明は、ベタニン、ベタニジン、イソベタニン及びイソベタニジンからなる群から選択される少なくとも1つを有効成分として含む、血清コレステロールを上昇抑制または低下するための組成物に関する。
近年、機器分析の向上により、数多くの植物に含まれる色素の化学構造や性質が明らかになってきた。植物天然色素には生体に対して抗酸化作用をもち防御機能を向上させ、疾病の予防や回復、老化抑制などの生体調節機能を促す効果があることが知られている。食品に利用されている植物天然色素では、黄〜赤色のカロチノイド色素、赤色のアントシアニン色素にこれらの効果が確認され、食品に利用されている。
天然色素であり、赤色色素の一つであるベタニン(Betanin)は、赤ビートや花卉のケイトウ中に含有されている。ベタニンはベタシアニン(Betacyanin)に分類され、ベタシアニンはベタレイン(Betalain)に分類される。ベタシアニンは、下記の構造式I:
Figure 2006028029
を有しており、R基がグルコースの場合にはベタニンであり、R基が水素(H)の場合にはベタニジンである。ベタニンは、化学構造や物理化学的性質は確認されているものの生体に対する栄養生理機能についてはほとんど解明されていない。ベタニンの物理化学的性質として、(1)鮮明な赤色色素である、(2)pHによる色調変化が少ない(pH4〜7)、(3)pH9以上になると黄変する、(4)水によく溶けるが無水エタノールや油脂には不溶である、(5)熱に不安定で退色する、(6)光や金属イオンにより変色する、などの性質が知られている。
ベタニンの安全性および毒性については、DD−KBL系マウスに高濃度のベタニンを経口投与した結果、死亡例は認められなかったことが報告されている。従って、ベタニンは天然物であり、食用として安全性のある素材であることから、食肉の着色剤としてすでに利用されている(特開2002−51726号公報(特許文献1))。また、ベタニン、ベタニジン、イソベタニン及びイソベタニジンから選択される少なくとも1種を有効成分とする抗酸化剤が特開2004−18828号公報(特許文献2)に記載されている。
ところで、摂取した食物は、消化管内に入り込み、先ず胃で胃酸中の蛋白質分解酵素の作用を受け、十二指腸を経て小腸にたどり着き吸収に至る。摂取した食物が小腸を通過する際に、小腸上皮に存在するI細胞がそれを察知し、コレシストキニン(CCK)というホルモンを分泌する。このホルモンはヒトにおいて胆嚢の収縮と胆管出口の括約筋の弛緩に働きかけ、これにより、胆汁酸が分泌される。分泌された胆汁酸は、小腸にまでたどり着くと、主に小腸粘膜から吸収され、再び肝臓へ戻るというサイクルで循環している。このサイクルは腸肝循環と呼ばれている。それは、使用し終わった胆汁酸を小腸、大腸で吸収し再利用する経路である。その再利用率は健常人で95%以上であり、再利用された胆汁酸の腸各部位における割合は小腸で90%、大腸で10%であると報告されている(日本外科学会誌83巻677〜690頁1982年(非特許文献1)。そして大腸で再吸収しきれなかった胆汁酸が血液中のコレステロールから肝臓中で生合成される。従って、胆汁酸の腸肝循環を抑制すれば、排泄される胆汁酸が増え、必要となる胆汁酸が血清コレステロールから盛んに合成されるようになり、結果として血清コレステロールが低下すると考えられる(特開平6−321786号公報(特許文献3))。
従来から血清コレステロールの上昇は循環器系疾患のリスク要因の1つに数えられてきた。コレステロールは、例えば動脈などの血管の壁面中に溜まると容易に放出されずに動脈硬化症斑の形成に導き、さらに低密度リポタンパク質(LDL)と結合して動脈硬化症を発症させる。さらにまた、血清コレステロールが高いことに起因する他の疾患として、大腸癌が知られている。このために血清コレステロール濃度を低下させる医薬品や飲食品が多数報告されている(特開平7−215871号公報(特許文献4)、特開2001−169753号公報(特許文献5)、特開2001−302529号公報(特許文献6)、特開2003−306436号公報(特許文献7)、特開2002−212083号公報(特許文献8)など)。
特開2002−51726号公報 特開2004−18828号公報 特開平6−321786号公報 特開平7−215871号公報 特開2001−169753号公報 特開2001−302529号公報 特開2003−306436号公報 特開2002−212083号公報 日本外科学会誌 83巻 677〜690頁 1982年
本発明者らは、今回、ベタニンが血清コレステロール濃度の上昇を有意に抑制または血清コレステロール濃度を有意に低下させることを見出した。従って、本発明の目的は、ベタニン及び(エピマーを含む)その誘導体を有効成分として含む、血清コレステロールの上昇抑制または低下のための組成物を提供することである。
従って、本発明は、以下のものからなる。
本発明は、ベタニン、ベタニジン、イソベタニン及びイソベタニジンからなる群から選択される少なくとも1つを有効成分として含むことを特徴とする血清コレステロール上昇を抑制するための、または、血清コレステロールを低下させるための組成物を提供する。
第1の実施態様において、該組成物は医薬組成物または飲食品である。
第2の実施態様において、該組成物は血清コレステロール上昇抑制剤または血清コレステロール低下剤である。
第3の実施態様において、該組成物が飲食品であって、コレステロールの上昇抑制または低下のために用いられるものである旨の表示を付した飲食品である。
第4の実施態様において、前記有効成分が、ベタニン、イソベタニン又はそれらの混合物である。
第5の実施態様において、前記有効成分が、ベタニンである。
第6の実施態様において、前記有効成分が、アカザ科ビートからのベタニン又はイソベタニンの抽出物、半精製物又は精製物である。
第7の実施態様において、前記有効成分が、ベタニン又はイソベタニンからそれぞれ誘導されたベタニジンまたはイソベタニジンである。
本発明の組成物は、体重及び肝機能(GOT、GPTなど)を実質的に変化させることなく、総血清コレステロール濃度を有意に上昇抑制または低下する効果がある。
本発明をさらに具体的に説明する。
本発明は、ベタニン、ベタニジン、イソベタニン及びイソベタニジンからなる群から選択される少なくとも1つを有効成分として含むことを特徴とする、血清コレステロールの上昇抑制または低下のための組成物を提供する。
該組成物には、たとえば医薬組成物または飲食品が含まれる。医薬組成物には、血清コレステロール上昇抑制剤または血清コレステロール低下剤が含まれる。また、飲食品として使用する場合、コレステロール上昇抑制または低下のために用いられるものである旨の表示を付すことができる。
本発明の組成物の有効成分であるベタニン、ベタニジン、イソベタニン及びイソベタニジンは、ベタシアニン系の赤色色素を呈する化合物であって、アカザ科ビート(Beta vulgaris)、ヒユ科ホウキギ(Kocihia scoparia)、オシロイバナ科オシロイバナ(Mirabilis jalapa)、ヤマゴボウ科ヨウシュヤマゴボウ(Phytolacca Americana)、スベリヒユ科マツバボタン(Portulaca grandiflora)、ケイトウ、サボテン(Opuntia)などの植物に存在する天然色素成分である。特にビートに見出される色素成分の75〜95%がベタニン、ベタニジン、イソベタニン及びイソベタニジンからなるが、主成分はベタニンとイソベタニンである。上記構造式Iにおいて、グルコース結合体(R基=グルコース)がベタニンであり、ベタニンのC−15エピマーがイソベタニンであり、ベタニンの脱グルコース誘導体(R基=H)がベタニジンであり、そしてイソベタニンの脱グルコース誘導体(R基=H)がイソベタニジンである。本発明の組成物においては、ベタニン、ベタニジン、イソベタニン及びイソベタニジンから選択される1種または2種以上を任意に組み合わせることができる。好ましくはベタニン、イソベタニン、またはそれらの任意比率の混合物であり、更に好ましくはベタニンである。
ベタニンおよび/またはイソベタニンは、上記例示の植物、好ましくはアカザ科ビートからの抽出物、半精製物又は精製物である。本明細書中で使用される「半精製物」という用語は、有効成分が50%以上、好ましくは、70%以上、より好ましくは80%以上含まれるが、90%未満の含量である精製途中の処理物を意味する。また、「精製物」とは、有効成分を90%〜100%含有するものをいう。さらにまた、ベタニジンまたはイソベタニジンは、天然から抽出、精製されたもの以外に、ベタニンまたはイソベタニンから脱グリコシル化によって誘導されたものであってもよい。脱グリコシル化は、たとえば植物や微生物(細菌、菌類、酵母など)由来の天然または組換えグリコシダーゼを使用して行うことができる。グリコシダーゼの例として、アカザ科ビート、Aspergillus属、Penicillium属、Thermococcus属、Pyrococcus属、Saccharomyces属などのグリコシダーゼが挙げられる。
ベタニン、ベタニジン、イソベタニン及びイソベタニジンは、上記の植物から抽出・精製することによって得ることができる。例えば、アカザ科ビートの塊根、ヒユ科ホウキギの花弁、ヤマゴボウ科ヨウシュヤマゴボウの実、スベリヒユ科マツバボタンおよびケイトウの花弁などから抽出することができる。あるいは、市販のビートパウダー、例えばスルチアN2(三菱化学フーズ)、から抽出することも可能である。好ましくは、収量の点でアカザ科ビートから抽出するのがよい。抽出方法は、例えば原料を細切、破砕したのち、赤色色素を搾汁し、室温または微温下で水、酸性水溶液、もしくは含水エタノールで抽出、分離することを含む。このとき、搾汁液を濾過やフィルタープレスなどの手段により固形分を除去することによって抽出物を得ることができる。得られる抽出物をさらに減圧もしくは真空下で濃縮するか、あるいは、凍結乾燥もしくは減圧乾燥により乾燥して濃縮液又は乾燥粉末として使用することもできるが、好ましくはさらなる精製工程に供するのがよい。精製法としては、陰イオン交換樹脂を用いて目的成分を吸着させ、適当な溶出剤で溶出する方法が挙げられる。陰イオン交換樹脂の種類は特に限定されず市販のいずれの樹脂も使用できる。そのような樹脂の例は、Dowex 50W X−2(ダウ・ケミカル)、Diaion HP−20(三菱化学)、アンバーライトXAD−7(オルガノ)などである。陰イオン交換樹脂を使用する利点は、ベタシアニン系色素が内部塩(対イオン)を形成する構造を有するためにヘテロ環上の窒素原子と樹脂上のカルボキシル基との間で四級イオンの形成が生じ、したがってベタシアニン系色素が樹脂に吸着することによる。吸着後、希塩酸(たとえば0.1%塩酸)、1〜10%酢酸水などの酸で樹脂を洗浄し、水、含水エタノール(エタノール含量約40%以下)、1〜10%酢酸−メタノールなどの溶媒で色素を溶出することができる。ベタシアニン系色素は熱に比較的不安定であるため50℃以下の温度で減圧または真空下で濃縮し、濃縮液を凍結し凍結乾燥に処すことができる。このようにして約90%以上の純度でベタニンおよび/またはイソベタニンを主成分とする色素を得ることができる。混合形態として得られる場合、ベタニン:イソベタニン比は約90〜80:約10〜20(重量%)であるが、この範囲に限定されない。
本発明で使用される有効成分としてのベタニン、ベタニジン、イソベタニンまたはイソベタニジン、あるいはこれらの任意の混合物は、血清または血中のコレステロールを有意に上昇抑制または低下する作用を有する。図1には特にベタニンの一定量をラットに摂取させたときの、血清コレステロールの経時的変化を調べた結果を示しているが、餌に0.1%程度のベタニンを混合した場合には血清コレステロールの上昇をほぼ完全に抑制する、あるいは血清コレステロールを低下させる。ベタニンの含量を約3倍に増やすと、抑制または低下のレベルは幾分減弱するが、それでも対照(すなわち、コントロール)に比べると、効果は有意である。本明細書で使用する「有意」という用語は、生体内で起こるコレステロール上昇という事象を明らかに抑制または低下させることを意味する。本発明の有効成分をラットに摂取させたときには、(弱い糖新生に基づく)若干の体重増加、また血中のGOT(グルタミン酸−オキサロ酢酸トランスアミナーゼ)、GPT(グルタミン酸−ピルビン酸トランスアミナーゼ)およびHDLコレステロールの若干の低下を惹起するようであるが、生体にはほとんど影響しない程度のレベル低下にすぎなかった(後述の実施例)。GOTおよびGPTの値から、本発明の有効成分は肝臓に及ぼす影響は少ないと考えられる。また、HDLコレステロールの血中レベルの低下が小さいことから、いわゆる悪玉と称されるLDLコレステロールのレベル低下がより大きいと推定される。
コレステロールは、生体内で細胞膜の形成、ホルモンの原料、胆汁酸の原料として重要な役割を担い、ヒトに必要なコレステロールの80%は肝臓で作られる。しかし、コレステロールが過剰に摂取され体内に蓄積されると、動脈硬化をはじめとしてそこから心筋梗塞、脳出血、脳血栓、高脂血症、糖尿病、肝臓病、胆石症、心不全、不整脈などの生活習慣病を引き起こす原因となる。HDLとLDLのバランスが重要であるが、LDLが血中に増えすぎるとLDLは血液中に留まる一方、HDLはLDLを回収しようとするものの多すぎるため、LDLは動脈壁に沈着して血管を狭くして血液の流れを悪くし、その結果、動脈硬化を引き起こす。また、女性は中高年期になると、LDLの合成を促進する女性ホルモンの分泌が減少するため、HDLが減少し、一方、LDLが増加し、総コレステロール値が増加する傾向にある。
本発明の組成物は、血清コレステロールの上昇を抑制するかあるいは低下する作用効果があり、このために動脈硬化症などの予防、したがって動脈硬化症に起因して発症する上記疾患、すなわち心筋梗塞、脳出血、脳血栓、高脂血症、糖尿病、肝臓病、胆石症、心不全、不整脈などの生活習慣病の予防または治療に有効である。
理論に拘束されるつもりはないが、本発明における血清コレステロールの上昇抑制または低下は、胆汁酸の腸肝循環を抑制し血清コレステロールから胆汁酸への異化作用を促進することによって達成されているかもしれない。これは、ラットにおける実験で、ベタシアニン系色素の摂取後に、胆汁中の胆汁酸濃度が増加することから推定された。胆汁酸は、体内総量が2〜4gで、そのレベルはほぼ一定に保持され、小腸に入った胆汁酸の95〜98%は再吸収され、排泄された分が生合成される。胆汁酸は、コレステロールや脂質の消化吸収、細菌の増殖抑制、結腸の運動促進、整腸、胆石溶解などの役割をもつが、本発明の上記有効成分は、血清コレステロールの異化作用に何らかの形で関与し、血清コレステロールから胆汁酸の生合成を誘発することによって、血清コレステロールの上昇抑制または低下に導くと推定される。
本発明の組成物は、有効量のベタニン、ベタニジン、イソベタニンまたはイソベタニジンあるいはそれらの混合物とともに、製薬上または食品上許容されうる担体または賦形剤および必要に応じての添加剤を含むことができる。本明細書で使用される「有効量」とは、被験体(特にヒト、イヌ、ネコなどの哺乳動物、好ましくはヒト)が摂取するかまたは被験体に投与されたとき、血清コレステロールの上昇抑制または低下を引き起こすのに十分な量を指し、例えば医薬用途の場合には、用量は被験体の種類、年齢、性別、体重、症状などに応じて適宜変化させうる。一般に、ベタシアニン系色素は毒性がきわめて低いことが知られており、例えばベタニンの場合、マウス経口LD50>44g/kg、ラット経口LD50>5g/kgであり、死亡例は認められていない。本発明の組成物が医薬である場合、投与量は有効成分の量として約0.001g/kg体重以上、好ましくは約0.01〜約2g/kg体重、或いはそれ以上である。また、本発明の組成物が飲食品である場合、有効成分の含量は、飲食品100gあたり0.01g以上、好ましくは、0.05〜0.5g以上である。しかし、本発明では、本発明の上記効果が達成される限り、上記の投与量および含量に限定されないものとする。
本発明の組成物を医薬として使用する場合、医薬組成物は、任意の形態、たとえば、溶液剤、懸濁剤、乳濁液剤、錠剤、丸剤、顆粒剤、散剤、細粒剤、座剤、カプセル剤、トローチ剤、エキス剤、ドリンク剤、エリキシル剤、シロップ剤などの形態をとることができる。
投与方法としては、医薬に一般に使用されている経口又は非経口投与方法のいずれかによって投与しうる。非経口投与方法としては、例えば皮下、静脈内、筋肉内、経皮、経粘膜、経鼻、経直腸などが挙げられる。好ましくは、経口投与である。
本発明の医薬組成物に含まれる担体または賦形剤は、液体または固体のいずれでもよく、任意の形態の組成物を製剤化するために使用される。担体または賦形剤の例は、例えば、乳糖、ステアリン酸マグネシウム、デンプン、タルク、ゼラチン、寒天、ペクチン、アラビアゴム、オリーブ油、ゴマ油、カカオバター、エチレングリコールなどである。
添加剤の例は、希釈剤、香味剤、保存剤、崩壊剤、滑沢剤、溶解補助剤、湿潤剤、乳化剤、安定化剤、結合剤、着色剤、甘味剤、緩衝剤などが含まれ、医薬品の製造のために一般的に使用されるいずれのものも任意に選択して使用できる。
例えば、希釈剤の例は、乳糖、マンニトール、ブドウ糖、ヒドロキシプロピルセルロース、微結晶性セルロース、デンプン、ポリビニルピロリドン、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、精製水、注射用水、生理食塩水、エタノールなどである。
崩壊剤の例は、乾燥デンプン、アルギン酸ナトリウム、カンテン末、炭酸水素ナトリウム、炭酸カルシウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリン酸モノグリセリド、乳糖、繊維素グリコール酸カルシウムなどである。
結合剤の例は、水、エタノール、プロパノール、単シロップ、ブドウ糖液、デンプン液、ゼラチン液、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルスターチ、メチルセルロース、エチルセルロース、リン酸カルシウム、ポリビニルピロリドンなどである。
滑沢剤の例は、ステアリン酸塩(例えばステアリン酸マグネシウム)、精製タルク、ホウ砂、ポリエチレングリコールなどである。
香味剤の例は、橙皮、クエン酸、酒石酸などである。
溶解補助剤剤の例は、グルタミン酸、アスパラギン酸などである。
緩衝剤の例は、クエン酸塩、リン酸塩、酢酸塩、炭酸塩、重炭酸塩などである。
安定化剤の例は、トラガントゴム、アラビアゴム、ゼラチンなどである。
医薬品が錠剤や丸剤である場合、必要によりショ糖、ゼラチン、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレートなどで糖衣状に被覆してもよいし、腸溶性にするために公知の腸溶性物質(例えば、メタアクリル酸−メチルメタアクリレートコポリマー、メタアクリル酸-エチルアクリレートコポリマー、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレートなど)のフィルムで被覆してもよいし、あるいは遅延放出性を付与するために多層構造に被覆してもよい。非水性の溶液剤、懸濁剤に処方する場合、例えば、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブ油などの植物油、エタノールなどのアルコール類、ポリソルベート80(登録商標)などを含むことができる。
本発明の組成物が飲食品の場合、任意の飲料または食品の中に本発明の有効成分を含有させることができる。有効成分は比較的熱に不安定であるため、それを50℃を超える温度に晒すことは望ましくないが、そうでない限り、あらゆる飲食品(加熱調理後のものを含む)の中に有効量を含有させて製品とすることもできるし、あるいは、健康食品または機能性食品のような、ドリンク、トローチ、カプセル、錠剤もしくは丸剤などの形態の中に有効成分を有効量含有させることができる。健康食品または機能性食品の場合、組成物中に医薬で使用される上記のような担体または賦形剤、添加剤、ビタミン類(例えばビタミンE)やアミノ酸類(例えばアルギニン)などの補助剤などを含有させることができる。あるいは、果汁飲料、スポーツドリンク、コーヒーなどの飲料中に有効成分を含有させてもよいし、また乳製品、卵加工品、菓子類などの食品中に含有させることもできる。いずれにしても、ベタニン、ベタニジン、イソベタニンまたはイソベタニジンあるいはそれらの混合物の有効量を含み、かつ血清コレステロールの上昇抑制または低下を引き起こす効果をもつ、飲食品のすべてが本発明の範囲内である。さらにまた、飲食品の容器には、この商品が、コレステロールの上昇抑制または低下のために用いられるものである(または有効である)旨の表示を付すことができる。このような表示をすることによって、本発明の飲食品がコレステロールの上昇抑制または低下に効果があることがだれにでも明確に分かるようになる。
本発明の詳細を以下の製造例および実施例によって説明する。本発明はそれらの実施例によって限定されるものではない。
[製造例1]
ビートパウダーからのベタニン(主成分)の製造
ビートパウダー(三菱化学フーズ製、スルチアN2)50gを0.1%塩酸(pH1.9)500mlに溶解し、ろ紙にてろ過した後、そのろ液を、予め垂直になるように立ててある外套管付ガラス製カラム(内径2.7x25cm)にH型イオン交換樹脂(ダウ・ケミカル製 Dowex 50W X−2型)を充填し、その樹脂を1N NaOHで洗浄後、中性になるまで純水で洗浄し、さらに1N塩酸で洗浄後、中性になるまで純水で洗浄した。その洗浄樹脂に上記ろ液を空間流速(SV)1で通液して色素分を樹脂に吸着させた。その樹脂を0.1%塩酸1Lで洗浄後、さらに、イオン交換樹脂に吸着している色素を純水で溶出させて色素分を採取した。採取した液を減圧下40℃で50%w/wまで濃縮し、次にそれを−20℃で凍結乾燥した。この結果、色素粉末物0.337g(ベタニン:イソベタニン比、約85:約15)が得られた。純度は約90%であった。なお、ベタニン等の構造決定は、T.J. Mabryら,Chem.Acta.,45,640−647(1962);M.E. Wilcoxら,Helv.Chim.Acta.,48,252−258(1965);および知地英征 北海道大学農学部邦文紀要 第9巻(第4号)303−372頁(1976年)等に基いて行った。
[製造例2]
赤ビートからのベタニン(主成分)の製造
栽培した赤ビート(Beta vulgaris L.)3.2kgを0.1%塩酸(pH1.9)(赤ビート重量と同量)でホモジネートし、ハンドジューサーで搾汁し、4℃、8000回転で15分間遠心分離した。その後上清を吸引ろ過し、Dowex 50W X−2カラムに吸着し、製造例1と同様に処理して色素粉末1.8gを得た。純度は約90%であった。
ベタニンによる血清コレステロール上昇抑制
6週齢のSD系雄ラット((株)ホクドー、初期体重約175g)18匹を、明暗周期12時間(午前8:00〜午後8:00)に設定された室内(温度約24℃、湿度約55%)に個別に収容した。摂食時には、網ケージに移し1日1時間(午前8:00〜午前9:00)の摂食をさせた。基本飼料(全量1kgあたり、カゼイン250g、ミネラル35g、ビタミン類10g、塩化ナトリウム2.5g、コーン油50g、セルロース50g、スクロース約600g)のみ、あるいは基本飼料に製造例1の精製ベタニン0.1%重量または0.3%重量を混ぜた試験飼料を用意し、先ず基本飼料で10日間予備飼育し、平均体重および尾静脈採血の分析による総コレステロール値が等しくなるように1群6匹の3群に分けた。各群をコントロール群、0.1%ベタニン添加食群、0.3%ベタニン添加食群とし、21日間飼育した。水は水道水を使用し、2日に1度取り替え自由摂取させた。
体重測定は、毎日午前7:30〜午前8:00に行い、採血は、0日目、7日目、14日目に餌を与えてから6時間後に行った。
21日目にラットを犠牲にし、腹部大動脈から約10mlの血液を採り、採血した血液は遠心分離(3000 rpm、15分)し、血清を得たのち、総コレステロール、GOT、GPTおよび高密度リポタンパク質(HDL)コレステロールの各値を測定した。
血清総コレステロールの測定は、酵素法によって行った(W.Richmond,Clin.Chem.19:1350−1356)。
GOTおよびGPTの測定は、UV法によって行った(日本臨床化学会:臨床化学18(4):226−249、250−262(1989))。
HDLコレステロールの測定は、選択阻害法によって行った(田口隆由ら、臨床検査機器・試薬24(1):35−41(2001))。
血清総コレステロールの測定値を図1に、HDLコレステロールの測定値を図2に、GOTの測定値を図3に、GPTの測定値を図4にそれぞれ示した。
各図から、コントロール群、0.1%ベタニン添加食群および0.3%ベタニン添加食群において、血清総コレステロールは、ベタニン添加食群において、コントロール群と比較してその上昇量が抑制されている。特に0.1%ベタニン添加食群では0〜3週目までの間コレステロール濃度がほぼ横ばいでありほぼ完全に血清総コレステロールの上昇が抑制された。0.3%ベタニン添加食群についてもコントロール群と比較すると、0.1%ベタニン添加食群よりは抑制作用は低いが有意に抑制されていることが分かる。
これとは別に、9週齢のSD系雄ラット(1群あたり6匹)を1週間予備飼育したのち、ベタニンの乾固物(製造例1)の水溶液(2g/l)をラット体重1kgあたり15ml経口投与し、すぐに腹腔内にネンブタール麻酔薬を注射し、経口投与後30分後に開腹し胆管にカテーテルを留置し15分ずつ60分間にわたり胆汁を採取した。胆汁内の総胆汁酸濃度を市販のキット(商品名テストワコー、和光純薬工業)を用いて測定した。その結果、最初の15分間にコントロール群と比べてベタニン投与群では約20%の胆汁酸の増加を示し、その後コントロール群およびベタニン投与群のいずれでも胆汁酸は徐々に減少したが0〜60分の間の総胆汁酸濃度はベタニン投与群で有意に高い傾向を示した。
ベタニン摂取後の胆汁中の総胆汁酸濃度の増加から、血清コレステロールは胆汁酸の生合成に使われたことが推定される。
一方、測定されたGOT、GPT、高密度リポタンパク質(HDL)コレステロールのいずれもが、べタニン添加食群でわずかに低下することが認められた。また、体重についてはベタニン添加食群でわずかな体重増加が認められた。
したがって、上記の実験は、ベタニンが、体重及び肝機能(GOT、GPTから判定された)を実質的に変化させることなく、血清コレステロール濃度の上昇を有意に抑制する効果があることを実証したものである。また、ベタニン摂取における血清中の総コレステロール濃度の低下と胆汁中の総胆汁酸濃度の増加は、コレステロールからの胆汁酸生成量が増加したためであると推定される。
動脈硬化症の原因となる血清コレステロールの上昇抑制または低下を可能にするため、動脈硬化症およびこの疾患に起因する生活習慣病の予防または治療に有用である。
血清総コレステロールの経日変化の測定結果を示す。各値は、平均±SEMを示す(p<0.05)。 血清HDLコレステロールの測定結果を示す。各値は、平均±SEMを示す。 血清GOTの測定結果を示す。各値は、平均±SEMを示す(p<0.05)。 血清GPTの測定結果を示す。各値は、平均±SEMを示す。

Claims (8)

  1. ベタニン、ベタニジン、イソベタニン及びイソベタニジンからなる群から選択される少なくとも1つを有効成分として含むことを特徴とする、血清コレステロール上昇を抑制するための、または、血清コレステロールを低下させるための組成物。
  2. 医薬組成物または飲食品である、請求項1記載の組成物。
  3. 血清コレステロール上昇抑制剤または血清コレステロール低下剤である、請求項2記載の組成物。
  4. 前記組成物が飲食品であって、コレステロールの上昇抑制または低下のために用いられるものである旨の表示を付した飲食品である、請求項2記載の組成物。
  5. ベタニン、イソベタニン又はそれらの混合物を有効成分として含む、請求項1〜4のいずれか1項記載の組成物。
  6. ベタニンを有効成分として含む、請求項1〜4のいずれか1項記載の組成物。
  7. 前記ベタニン又はイソベタニンはアカザ科ビートからの抽出物、半精製物又は精製物である、請求項1〜6のいずれか1項記載の組成物。
  8. 前記ベタニジン又はイソベタニジンはそれぞれベタニン又はイソベタニンから誘導されたものである、請求項1〜4のいずれか1項記載の組成物。
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