JP2006024917A - コイル含浸絶縁処理用アクリル系ワニス - Google Patents

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Abstract

【課題】高真空におけるゲル化を抑制し、真空含浸、加熱真空含浸、加熱真空脱泡などの真空状態を含む処理方法が適用可能なコイル含浸絶縁処理用アクリル系ワニスを提供する。
【解決手段】樹脂および/またはモノマーならびに重合禁止剤からなるコイル含浸絶縁処理用アクリル系ワニスであって、該樹脂および/または該モノマーがアクリル基またはメタクリル基を有し、高真空状態でゲル化しないコイル含浸絶縁処理用アクリル系ワニスである。
【選択図】なし

Description

本発明は優れた硬化特性、保存安定性、作業性をもつコイル含浸絶縁処理用アクリル系ワニスであって、これらの特徴を失うことなく、高真空におけるゲル化を抑制したアクリル系ワニスに関する。より詳細には真空含浸、加熱真空含浸、加熱真空脱泡、加熱真空注型などの真空状態を含む処理方法を適用可能とすることによって、使用可能分野を画期的に拡大させることができたコイル含浸絶縁処理用アクリル系ワニスに関する。
(メタ)アクリル樹脂は真空状態において重合しやすく、重合禁止効果のある大気中の酸素によって重合阻害しなければゲル化してしまうことは周知である。特に金属の存在や熱によってその傾向は大きくなり、機器を(メタ)アクリル樹脂で処理する場合、真空含浸、加熱真空含浸、加熱真空注型などの処理方法は適用できず、また長時間の真空脱泡、加熱真空脱泡、真空保存などの手法の適用もできなかった。
そのため、従来これらの処理条件を適用する場合、(メタ)アクリル樹脂を含む樹脂を使用せず、エポキシ樹脂、ビニル樹脂、アルキッド樹脂など真空状態において問題が起こらない、または真空状態が好ましい樹脂を適用していた(例えば、特許文献1〜4参照)。
ビニル樹脂、代表的にはスチレン希釈した不飽和ポリエステル樹脂は、保存安定性や一液化による易作業性、さらには特定の温度で鋭敏な反応性においては反応開始剤の選択によって反応開始温度を容易に変更でき、かつそれ以下の温度において優れたポットライフを示すラジカル重合系樹脂である。しかしながら、臭気による作業環境問題が発生するという問題がある。また、アルキッド樹脂についても、シンナー、例えばトルエンなどを含むため臭気と毒性の問題により適用が好ましくないことがある。
特に昨今においては環境問題が大きくクローズアップされてきたためこれらの傾向が強く、臭気や毒性などの環境問題が少ないエポキシ樹脂が使用される傾向にある。しかしながら、エポキシ樹脂は他の熱硬化性樹脂に比べてポットライフの確保が難しく、保存安定性、作業性の改善が求められている。
特開平10−285886号公報 特開平11−307384号公報 特開平10−60084号公報 特開2000−44636号公報
本発明は上記した従来技術の問題点を解決する方法として提案されたもので、ビニル樹脂であるスチレンやビニルトルエンの代わりに同じくラジカル重合が可能である(メタ)アクリル樹脂を使用し、これに従来困難とされていた高真空におけるゲル化を抑制することによって高真空状態で優れた保存安定性、硬化特性、作業性を有するコイル含浸絶縁処理用アクリル系ワニスを提供することを目的としている。
発明者は上記の問題を解決すべく検討した結果、低温で強力な重合禁止効果をもち、かつ高温にて失活または分解する重合禁止剤を使用し、低温で安定しており高温で重合開始効果を発現する過酸化物と組み合わせることにより、樹脂保存中は常温で発生するフリーラジカルを重合禁止剤が酸素の代わりにトラップすることで重合を阻害して高真空中でも使用可能とし、加熱硬化時には重合禁止剤は失活または分解して高温での重合開始剤による反応開始は阻害しないようにするという従来技術にはない解決方法を見出した。
すなわち、本発明は、樹脂および/またはモノマーならびに重合禁止剤からなるコイル含浸絶縁処理用アクリル系ワニスであって、該樹脂および/または該モノマーがアクリル基またはメタクリル基を有し、高真空状態でゲル化しないコイル含浸絶縁処理用アクリル系ワニスに関する。
重合禁止剤が0〜80℃において重合禁止効果を発現し、かつ100〜170℃において失活または分解することが好ましい。
さらに、重合禁止剤の失活または分解する温度よりも高い温度で重合開始効果を発現する過酸化物を含むことが好ましい。
重合禁止剤がN−ニトロソフェニルヒドロキシルアミン塩であることが好ましい。
また、本発明は、高真空状態においてコイルに前記コイル含浸絶縁処理用アクリル系ワニスを含浸させ、該コイルを絶縁化させる工程を含む絶縁コイルの製造方法に関する。
さらに、本発明は、前記製造方法により製造された絶縁コイルに関する。
本発明によって構成される樹脂はアクリル系ワニスでありながら真空を含む処理条件または工程に適用可能であり、アクリル系ワニスの優れた硬化性、保存安定性、易作業性といった特徴も失うことはない。よって、従来は困難であった真空状態、特には長時間、加熱状態における真空状態という作業領域でのアクリル系ワニス使用を可能とすることでその適用可能範囲を拡大できる。
本発明は、樹脂および/またはモノマーならびに重合禁止剤からなるコイル含浸絶縁処理用アクリル系ワニスであって、該樹脂および/または該モノマーがアクリル基またはメタクリル基を有し、高真空状態でゲル化しないコイル含浸絶縁処理用アクリル系ワニスであり、真空含浸、加熱真空含浸、加熱真空脱泡などの真空状態を含む処理方法に適用可能としたものである。
本発明のアクリル系ワニスにおけるアクリル基またはメタクリル基をもつ樹脂としてはエポキシアクリレート樹脂、ウレタンアクリレート樹脂などがある。
前記エポキシアクリレート樹脂としては、たとえば一般式(I):
Figure 2006024917
(式中、R1、R2およびR3はそれぞれ独立してHまたはCH3、R4は一般式(II):
Figure 2006024917
(式中、R5はHまたはCH3を示す)で表わされる基、nは1〜6の整数を示す)で表わされる化合物、一般式(III):
Figure 2006024917
(式中、R6、R7およびR8はそれぞれ独立してHまたはCH3、R9は前記一般式(II)で表わされる基、mは1〜6の整数を示す)で表わされる化合物、一般式(IV):
Figure 2006024917
(式中、R10、R11およびR12はそれぞれ独立してHまたはCH3、R13、R14およびR15は前記一般式(II)で表わされる基、pは1〜6の整数を示す)で表わされる化合物などがあげられ、これらは単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。
前記ウレタンアクリレート樹脂としては、たとえば化学構造式(V):
Figure 2006024917
で表わされるフェニルグリシジルエーテルアクリレートヘキサメチレンジイソシアネートウレタンポリマーなどがあげられる。
また、(メタ)アクリルモノマーとしては、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、イソデシルメタクリレート、n−ラウリルメタクリレート、アルキルメタクリレート、トリデシルメタクリレート、n−ステアリルメタクリレート、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、フェノキシエチルメタクリレート、イソボルニルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、2−ヒドロキシブチルメタクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート、2−メタクリロイロキシエチル−2−ヒドロキシプロピルフタレート、グリシジルメタクリレート、2−メタクリロイロキシエチルアシッドホスフェート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、1,4−ブタンジオールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、1,9−ノナンジオールジメタクリレート、1,10−デカンジオールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、グリセリンジメタクリレート、2−ヒドロキシー3−アクリロイロキシプロピルメタクリレート、t−ブチルメタクリレート、メトキシトリエチレングリコールメタクリレート、n−ブトキシエチルメタクリレート、ブトキシジエチレングリコールメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、トリフルオロエチルメタクリレート、パーフルオロオクチルエチルメタクリレート、メタクリル酸、2−メタクリロイロキシエチルコハク酸、2−メタクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、イソアミルアクリレート、ラウリルアクリレート、ステアリルアクリレート、ブトキシエチルアクリレート、エトキシジエチレングリコールアクリレート、メトキシトリエチレングリコールアクリレート、メトキシジプロピレングリコールアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、フェノキシポリエチレングリコールアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、イソボルニルアクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート、2−アクリロイロキシエチルコハク酸、2−アクリロイロキシエチルフタル酸、2−アクリロイロキシエチル−2−ヒドロキシエチルフタル酸、2−アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、3−メチル−1,5−ペンタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオールジアクリレート、1,9−ノナンジオールジアクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ネオペンチルグリコールアクリル酸安息香酸エステル、2−ヒドロキシー3−アクリロイロキシプロピルメタクリレート、イソオクチルアクリレート、イソミリスチルアクリレート、2−エチルヘキシルジグリコールアクリレート、2−ヒドロキシブチルアクリレート、2−アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジアクリレート、ポリテトラメチレングリコールジアクリレート、パーフルオロオクチルエチルアクリレートなどがあげられる。
本発明のアクリル系ワニスにおける樹脂としては、アクリル基またはメタクリル基をもつ樹脂のほかにエポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、ビニル樹脂などを混合したものであってもよい。
エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、脂肪酸グリシジルエーテル、フェノールノボラック型エポキシ樹脂などがあげられる。
ポリエステル樹脂としては、飽和ポリエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、イミド変性不飽和ポリエステル樹脂、シェイク変性不飽和ポリエステル樹脂、イソフタル酸変性不飽和ポリエステル樹脂、テレフタル酸変性不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ変性不飽和ポリエステル樹脂などがあげられる。なお、前記不飽和ポリエステル樹脂としては、たとえば一般式(VI):
Figure 2006024917
(式中、sは1〜8の整数を示す)で表わされる、プロピレングリコールと無水フタル酸と無水マレイン酸とから合成される不飽和ポリエステル樹脂などがあげられる。
アルキッド樹脂としては、フタル酸アルキッド、イソフタル酸アルキッド、テレフタル酸アルキッド、フェノリックアルキッド、イミド変性アルキッド、シェイク変性アルキッド、ジフェニルオキサイド変性アルキッドなどがあげられる。
ビニル樹脂としては、スチレン希釈不飽和ポリエステル樹脂、スチレン化エポキシ樹脂、ビニルトルエン希釈不飽和ポリエステル樹脂、ビニルトルエン化エポキシ樹脂などがあげられる。
なお、アクリル系ワニスにおけるアクリル基またはメタクリル基をもつ樹脂の含有量は、20〜80重量%であることが好ましく、40〜60重量%であることがより好ましい。
前記重合禁止剤の重合禁止効果の発現する温度は0〜80℃であることが好ましく、0〜60℃であることがより好ましい。重合禁止効果の発現温度が80℃をこえると、低温での重合禁止効果に乏しく、かつワニスの硬化阻害の原因となり、好ましくない。
また、前記重合禁止剤の失活または分解する温度は100〜170℃であることが好ましく、100〜150℃であることがより好ましい。重合禁止剤が失活または分解する温度が100℃未満であると保存安定性が低くなり、170℃をこえるとワニス硬化温度条件が高くなり好ましくない。
このような特性を有する重合禁止剤としては、例えば一般式(VII)で表されるN−ニトロソフェニルヒドロキシルアミンの塩であることが好ましい。具体例としては、クペロン(N−ニトロソフェニルヒドロキシルアミンアンモニウム塩)があげられる。
Figure 2006024917
(式中、R16およびR17は、水素、直鎖、分枝、または環式のアルキル基、アリール基、アラルキル基、およびアルカリル基からなる群よりそれぞれ独立して選択され、N、OおよびSよりなる群から選択される1つ以上のヘテロ原子を含んでいてもよい。また、一方の炭素に結合するR16およびR17の一つ以上が、他方の炭素に結合するR16およびR17と結合して、環状アルキル基、アルキレン基およびアラルキレン基からなる群より選択される環状基を形成していてもよい。また、R18はアルカリ金属またはアンモニウム塩である。)
前記重合禁止剤は、一般式(VIII)に示すように複数のN−ニトロソフェニルヒドロキシルアミンの塩であってもよい。
Figure 2006024917
(式中、R16およびR17は式(VII)で定義したとおりである。mは金属中心と錯体を形成するN−ニトロソフェニルヒドロキシルアミンの数を表し、2〜4の整数のうちいずれかをとる。Mは錯体を形成する中心となる金属元素であり、アルカリ土類金属または遷移金属である。)
ここで、式(VIII)中のmとしては錯体の安定性の点から2〜4であることが好ましい。また、金属Mとしては、なかでも錯体形成能の点から、コバルト、アルミニウム、マンガンであることが好ましい。
本発明における重合禁止剤は、(メタ)アクリルモノマー成分に対して10〜10000ppm、好ましくは100〜3000ppmの範囲で含まれる。重合禁止剤の含有量が10ppm未満であると重合禁止効果が乏しくなり、10000ppmをこえるとワニス硬化時の硬化阻害の原因となる。なお、2種以上の重合禁止剤を組み合わせて用いてもよい。
また、本発明のアクリル系ワニスは、さらに、重合禁止剤の失活または分解する温度よりも高い温度で重合開始効果を発現する過酸化物を含むことが好ましい。
このような特性を有する過酸化物としては、ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、p−メタンヒドロパーオキサイドなどがあげられる。なかでも、ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサンが反応開始温度と保存安定性の点で好ましい。
本発明における過酸化物は、(メタ)アクリルモノマー成分に対して200〜50000ppm、好ましくは500〜20000ppmの範囲で含まれる。過酸化物の含有量が200ppm未満であると発生ラジカル不足のためワニス硬化不良となり、50000ppmをこえると過剰発熱によるワニス硬化物の割れなどが発生し好ましくない。なお、2種以上の過酸化物を組み合わせて用いてもよい。
本発明のアクリル系ワニスは、塗膜表面および内部の乾燥性の点から、添加剤として有機酸金属塩などの金属ドライヤーを含んでいてもよい。前記有機酸金属塩としては、たとえばオクチル酸、ナフテン酸などの有機酸と、Co、Mn、Sn、Ni、Zn、Pb、Cr、Feなどの金属との塩があげられ、たとえばナフテン酸コバルト、ナフテン酸マンガン、ナフテン酸スズ、ナフテン酸ニッケル、ナフテン酸亜鉛、ナフテン酸鉛、ナフテン酸クロム、ナフテン酸鉄などが好ましく例示される。
本発明のアクリル系ワニスは、濡れ性、消泡性、糸切れ性、分散性、塗膜表面調整改善の点から、有機および/または無機流動調整剤を含んでいてもよい。有機流動調整剤としては、ポリシロキサン、ポリメチルアルキルシロキサン、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン、ポリエーテル変性ポリメチルアルキルシロキサン、アラルキル変性ポリメチルアルキルシロキサン、ポリエーテルエステル変性水酸基含有ポリジメチルシロキサン、アクリル系共重合物、ポリカルボン酸のアルキルアミン塩、ポリアミノアマイドのポリカルボン酸塩などがあげられる。また、無機流動調整剤としては、シリカ微粉末、ベントナイト微粉末などがあげられる。
本発明のアクリル系ワニスは、無機フィラーを含んでいてもよい。無機フィラーとしては炭酸カルシウム、シリカ、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、チッ化ホウ素、アルミナ、炭化ケイ素、チッ化アルミニウム、カーボンなどがあげられる。
本発明のアクリル系ワニスは、粘度調整、溶解性向上、塗膜性改善の点から、トルエン、キシレン、n−ヘキサン、ミネラルスピリット、アセトン、メチルエチルケトン、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドンなどの溶剤を含んでいてもよい。
また、本発明のアクリル系ワニスは染料および/または顔料を含んでいてもよい。
本発明における絶縁コイルの製造方法としては、素体導体コイルを被覆するようにマイカテープ、ガラスクロス、カプトンフィルムなどを巻きつけたコイルに本発明のアクリル系ワニスを含浸させる工程からなる場合、またはマグネットワイヤでコイルを形成し本発明のアクリル系ワニスを含浸させる場合などがあるが本ワニスは何れの場合にも適用できる。
前記マグネットワイヤのエナメル材質としては、ポリウレタン、ポリエステル、ポリエステルイミド、ポリアミドイミド、ポリイミドなどが好ましく用いられる。
マイカテープなどを巻きつけた素体導体、またはマグネットワイヤで形成されたコイルに高真空状態において本発明のアクリル系ワニスを含浸させる。ここで、高真空状態とは、0〜5000Pa、特には10〜500Paの圧力下にある状態をいう。含浸方法としては、例えば真空含浸、真空加圧含浸、加熱真空含浸、加熱真空加圧含浸などの手法により行なうことができる。
このような手法によりコイルにアクリル系ワニスを含浸させた後、加熱処理してアクリル系ワニスを硬化させることにより絶縁コイルを製造することができる。なお、加熱処理は100〜180℃で行なうことが好ましく、処理時間は温度にもよるが0.5〜20時間であることが好ましい。
本発明において製造された絶縁コイルは、モーター、発電機などの回転機、またはトランスなどの静止機に使用される。
上記のような構成のアクリル系ワニスは、通常保管時には常温で発生するフリーラジカルを重合禁止剤が酸素と共にトラップし重合禁止することで保存安定性を高め、真空保存または加熱真空保存状態では重合禁止剤が常温で発生するフリーラジカルをトラップすることで高真空におけるゲル化を抑制している。そして加熱硬化させるにあたってはまず重合禁止剤が反応開始温度より低い温度で失活または分解し、ついで反応開始温度に達した後には過酸化物(重合開始剤)によりラジカル反応が開始され硬化する。
したがって、本発明は、(メタ)アクリル系ワニスでありながら真空を含む処理条件または工程に適用可能であり、その優れた硬化性、保存安定性、易作業性といった特徴も失うことはない。換言すれば本発明は従来の(メタ)アクリル系ワニスには困難であった真空状態、特には長時間、加熱状態における真空状態という作業領域での使用を可能とする工業的に有用な技術である。
次に、本発明のアクリル系ワニスを実施例に基づいて説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
実施例1
撹拌機、還流冷却機、不活性ガス導入口および温度計を備えたフラスコにプロピレングリコール12重量部、ネオペンチルグリコール8重量部、ポリオール(商品名:アクトコールKB−300K、三井武田ケミカル(株)製)10重量部、フマル酸18重量部、テトラヒドロキシ無水フタル酸12重量部を仕込み、窒素ガス雰囲気下で150℃に昇温し反応温度を±5℃に保ちながら2時間反応させた。次に反応水を取り除きながら210℃まで昇温し、キシレンを加えて210±5℃で共沸脱水を3時間行なった。キシレンを取り除き100℃まで冷却した後、反応性希釈剤として2−ヒドロキシエチルメタクリレート50重量部を加えて溶解し、反応開始剤としてジクミルパーオキサイド1重量部、重合禁止剤としてクペロン0.05重量部を加えて一液性のメタクリル含有ポリエステル絶縁ワニス(無溶剤型ワニス)とした。
このワニスを透明なプラスチック容器にSPCC鋼板と共に入れ、温調可能な真空デシケーター内にて60℃真空保存した。この時容器内の内部圧は200〜800Paに保たれていた。
得られたワニスの状態を1日ごとに確認したところ、31日目にゲル化が確認された。
実施例2
エポキシアクリレート(ビスフェノールAタイプ、1分子中のアクリロイル基:2個、数平均分子量:約520)50重量部と、反応性希釈剤として2−ヒドロキシメチルメタクリレート25重量部およびジエチレングリコールジメタクリレート45重量部と、有機過酸化物としてジクミルパーオキサイド1重量部と、有機酸金属塩としてナフテン酸コバルト0.05重量部(6重量%溶液として添加)とナフテン酸マンガン0.05重量部(6重量%溶液として添加)および禁止剤としてクペロン0.05重量部を溶解させ、均一に混合して一液性のメタクリル絶縁ワニス(無溶剤型ワニス)を得た。
このワニスを透明なプラスチック容器にSPCC鋼板と共に入れ、温調可能な真空デシケーター内にて40℃真空保存した。この時容器内の内部圧は200〜800Paに保たれていた。
ワニスを任意の時間に取り出し揮発した(メタ)アクリルモノマーを補充した後に粘度を測定した。結果を図1に示す。
実施例3
エポキシアクリレート(ビスフェノールAタイプ、1分子中のアクリロイル基:2個、数平均分子量:約1040)を用いた以外は、実施例2と同様の方法でメタクリル絶縁ワニス(無溶剤型ワニス)を得た。
得られたワニスを透明なプラスチック容器にSPCC鋼板と共に入れ、温調可能な真空デシケーター内にて40℃真空保存した。この時容器内の内部圧は200〜800Paに保たれていた。
ワニスを任意の時間に取り出し揮発した(メタ)アクリルモノマーを補充した後に粘度を測定したところ、実施例2と同様、ほとんど粘度変化は見られなかった。
比較例1
実施例1で使用したものと同じ不飽和ポリエステル樹脂50gに反応性希釈剤として2−ヒドロキシエチルメタクリレート50gを加えて溶解し、反応開始剤としてジクミルパーオキサイド1gを加えて一液性のメタクリル含有ポリエステルワニスとした。このワニスには重合禁止剤は添加しなかった。
このワニスを透明なプラスチック容器にSPCC鋼板と共に入れ、温調可能な真空デシケーター内にて60℃真空保存した。この時容器内の内部圧は200〜800Paに保たれていた。
得られたワニスの状態を1時間ごとに確認したところ、7時間目にゲル化が確認された。
比較例2
実施例1で使用したものと同じ不飽和ポリエステル樹脂50gに反応性希釈剤として2−ヒドロキシエチルメタクリレート50gを加えて溶解し、反応開始剤としてジクミルパーオキサイド1g、重合禁止剤としてハイドロキノン0.05gを加えて一液性のメタクリル含有ポリエステルワニスとした。
このワニスを透明なプラスチック容器にSPCC鋼板と共に入れ、温調可能な真空デシケーター内にて60℃真空保存した。この時容器内の内部圧は200〜800Paに保たれていた。
得られたワニスの状態を1時間ごとに確認したところ、7時間目にゲル化が確認された。
実施例4
温調可能な容器内に2−ヒドロキシエチルメタクリレートを8重量部、テトラヒドロ無水フタル酸を5重量部、ハイドロキノンを0.01重量部加え反応温度120℃にて1時間撹拌した。これにオクチル酸亜鉛0.08重量部、ネオペンチルグリコールジメタクリレートを5重量部、エピコート828を8重量部加え5時間撹拌した。これにクペロン0.05重量部、ナフテン酸コバルト0.05重量部(6重量%溶液として添加)、ナフテン酸マンガン0.05重量部(6重量%溶液として添加)、エポキシアクリレート(ビスフェノールAタイプ、1分子中のアクリロイル基:2個、数平均分子量:約520)22重量部、2−ヒドロキシエチルメタクリレートを19重量部、ネオペンチルグリコールジメタクリレートを33重量部、ジクミルパーオキサイドを0.08重量部を溶解させ、均一に混合して一液性のメタクリル絶縁ワニスを得た。
このワニスを透明なプラスチック容器にSPCC鋼板と共に入れ、温調可能な真空デシケーター内にて40℃真空保存した。このとき容器内の内部圧は200〜800Paに保たれていた。
ワニスを任意の時間に取り出し揮発した(メタ)アクリルモノマーを補充した後に粘度を測定した。結果を図2に示す。
実施例1と比較例1および2の結果より、N−ニトロソフェニルヒドロキシルアミン系重合禁止剤であるクペロンが高真空において優れたゲル化抑制効果を示すことがわかる。また、一般的な重合禁止剤であるハイドロキノンでは低温から常温での高真空におけるゲル化抑制効果は確認できなかったため、クペロンの重合禁止剤としての特殊性は明らかである。
また図1および2によると、本発明のアクリル系ワニスは高真空において粘度上昇がなく、高真空におけるラジカル重合さらにはゲル化が抑制できていると言える。
実施例2で得られた本発明のアクリル系ワニスの高真空下における粘度の経時変化を示すグラフである。 実施例4で得られた本発明のアクリル系ワニスの高真空下における粘度の経時変化を示すグラフである。

Claims (6)

  1. 樹脂および/またはモノマーならびに重合禁止剤からなるコイル含浸絶縁処理用アクリル系ワニスであって、該樹脂および/または該モノマーがアクリル基またはメタクリル基を有し、高真空状態でゲル化しないコイル含浸絶縁処理用アクリル系ワニス。
  2. 重合禁止剤が0〜80℃において重合禁止効果を発現し、かつ100〜170℃において失活または分解する請求項1記載のコイル含浸絶縁処理用アクリル系ワニス。
  3. さらに、重合禁止剤の失活または分解する温度よりも高い温度で重合開始効果を発現する過酸化物を含む請求項1または2記載のコイル含浸絶縁処理用アクリル系ワニス。
  4. 重合禁止剤がN−ニトロソフェニルヒドロキシルアミン塩である請求項1、2または3記載のコイル含浸絶縁処理用アクリル系ワニス。
  5. 高真空状態においてコイルに請求項1、2、3または4記載のコイル含浸絶縁処理用アクリル系ワニスを含浸させる工程を含む絶縁コイルの製造方法。
  6. 請求項5記載の方法により製造された絶縁コイル。
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