JP2006024906A - プリント回路用アルミニウム基板及びその製造方法、並びにプリント基板及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】良好な酸化皮膜を形成できて、樹脂板との接着性を向上できるプリント回路用アルミニウム基板の製造方法を提供する。
【解決手段】本発明は、皮膜形成工程と、加熱乾燥工程とを含む。皮膜形成工程においては、アルミニウム板に対し、リン酸濃度3〜20質量%、浴温25℃以上40℃未満の電解液中で陽極酸化処理を施して、少なくとも片面に陽極酸化皮膜を形成する。加熱乾燥工程においては、前記酸化皮膜に対し、150〜300℃の温度で0.5〜3時間加熱する。
【選択図】 図3
【解決手段】本発明は、皮膜形成工程と、加熱乾燥工程とを含む。皮膜形成工程においては、アルミニウム板に対し、リン酸濃度3〜20質量%、浴温25℃以上40℃未満の電解液中で陽極酸化処理を施して、少なくとも片面に陽極酸化皮膜を形成する。加熱乾燥工程においては、前記酸化皮膜に対し、150〜300℃の温度で0.5〜3時間加熱する。
【選択図】 図3
Description
この発明は、プリント回路用基板として用いられるアルミニウム基板及びその製造方法、並びにプリント基板及びその製造方法に関する。
なお、本明細書において、「アルミニウム」の語は、純アルミニウム及びその合金を含む意味で用いている。
プリント基板としては、例えば銅製ベース板にガラスエポキシ樹脂からなる絶縁層を積層した積層板が周知であるが、近年においては、電子部品の高集積化に伴い、放熱性の向上及び軽量化が強く望まれるため、プリント回路用基板として、軽量かつ熱伝導性に優れたアルミニウム合金からなるものが好んで用いられる傾向にある。
従来、アルミニウム基板に絶縁層としての樹脂板を積層状に貼り合わせる場合、密着性を確保するために、アルミニウム基板に対し予め、硫酸陽極酸化処理や蓚酸陽極酸化処理を施したり、あるいは機械的に砂目立て処理を施して、基板表面を粗面化し、樹脂板との密着性を向上させるようにしているが、十分な接着性を得ることが困難であった。
このような技術背景の下、アルミニウム基板に樹脂板を高強度で接着させるための技術として、下記特許文献1〜3に示すように、アルミニウム基板にリン酸による陽極酸化処理を施して、基板表面に立体網目構造の酸化皮膜を形成する技術が注目されている。
特開平10−135593号(請求項1)
特開昭62−193296号(特許請求の範囲)
特開平1−312894号(特許請求の範囲)
しかしながら、上記特許文献1に示す酸化皮膜形成方法では、電解浴のリン酸濃度が高いため、酸化皮膜の成長度合を高精度に制御するのが困難であり、良好な立体網目構造を得ることができず、安定した接着性を得ることができないばかりか、リン酸の酸化皮膜への吸着による汚染が発生する恐れもある。更にリン酸の水溶液中に浸漬して皮膜を形成するものであるため、皮膜に水分が残存し、その残留水分によって、樹脂板(絶縁層)との接着性を低下させてしまうという問題があった。
特許文献2に示す酸化皮膜形成方法は、電解液の浴温が高いため、酸化皮膜の制御が困難であり、安定した接着性を得ることができないという問題を抱えている。更にこの酸化皮膜形成方法においても、上記特許文献1と同様に、電解浴中で酸化皮膜を形成するものであるため、皮膜中に水分が残存することにより、樹脂板との密着性を低下させてしまうという問題が依然として残されている。
特許文献3に示す皮膜形成方法は、酸化皮膜の成長度合を精度良く制御することができ、良好な立体網目構造を得ることができ、接着時の安定性を十分に期待できるものの、上記特許文献1、2と同様に、電解液中で酸化皮膜を形成するものであるため、皮膜中の水分残存による密着性の低下が懸念されるところである。
この発明は、上記従来技術の問題を解消し、良好な酸化皮膜を高精度に形成できて、樹脂製絶縁材に対し安定した接着性を得ることができる上更に、樹脂製絶縁材との接着性を向上させることができるプリント回路用アルミニウム基板及びその製造方法、並びにプリント基板及びその製造方法等を提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、本発明は以下の構成を要旨とするものである。
[1] アルミニウム板に対し、リン酸濃度3〜20質量%、浴温25℃以上40℃未満の電解液中で陽極酸化処理を施して、少なくとも片面に陽極酸化皮膜を形成する皮膜形成工程と、
前記酸化皮膜に対し、150〜300℃の温度で0.5時間以上加熱する加熱乾燥工程とを含むプリント回路用アルミニウム基板の製造方法。
前記酸化皮膜に対し、150〜300℃の温度で0.5時間以上加熱する加熱乾燥工程とを含むプリント回路用アルミニウム基板の製造方法。
この発明の製造方法によって得られるプリント回路用アルミニウム基板は、樹脂板等の樹脂製絶縁材を貼り付けた際に、その樹脂板との接着強度を十分に確保することができる。
すなわち本発明においては、アルミニウム基板としてのアルミニウム板に酸化皮膜を形成する際に、本発明特有の条件でリン酸陽極酸化処理を行うものであるため、ボア径の大きい所望の網目構造の酸化皮膜を確実に形成することができる。このためこのアルミニウム基板の酸化皮膜上に樹脂板を加熱接着した際、樹脂板の樹脂成分が酸化皮膜の孔内部まで深く含浸して皮膜のセルと複雑に絡み合うことにより、良好な接着性を安定して得ることができる。
しかも本発明においては、アルミニウム基板の酸化皮膜を加熱乾燥して、皮膜の水分を除去するものであるため、樹脂板を貼り合わせる際に、皮膜の残留水分の悪影響によって樹脂板との接着性が低下するのを防止でき、接着性を一段と向上させることができる。
[2] 前記酸化皮膜の厚さを0.01〜1μmに調整するものとした前項1記載のプリント回路用アルミニウム基板の製造方法。
この発明においては、樹脂板との接着性をより安定させることができる。
[3] 前記加熱乾燥工程における加熱温度を200〜250℃に設定するものとした前項1又は2記載のプリント回路用アルミニウム基板の製造方法。
この発明においては、樹脂板との接着性をより一層向上させることができる。
[4] 前記加熱乾燥工程における加熱時間を1〜2時間に設定するものとした前項1ないし3のいずれかに記載のプリント回路用アルミニウム基板の製造方法。
この発明においては、樹脂板との接着性を更に向上させることができる。
[5] 前記アルミニウム板として、Al−Mg系合金を用いる前項1ないし4のいずれかに記載のプリント回路用アルミニウム基板の製造方法。
この発明においては、加工性を向上させることができて、製品品質を向上させることができる。
[6] 前記アルミニウム板として、5052合金を用いる前項5記載のプリント回路用アルミニウム基板の製造方法。
この発明においては、加工性を一層向上させることができて、製品品質を一層向上させることができる。
[7] 前記アルミニウム板として、Al−Mg−Si系合金を用いる前項1ないし4のいずれかに記載のプリント回路用アルミニウム基板の製造方法。
この発明においては、加工性をより一層向上させることができて、製品品質をより一層向上させることができる。
[8] 前記アルミニウム板として、Si:0.2〜0.8質量%、Mg:0.3〜1質量%を含有し、残部がAl及び不可避不純物からなるものを用いる前項7記載のプリント回路用アルミニウム基板の製造方法。
この発明においては、加工性を一段と向上させることができて、製品品質を一段と向上させることができる。
[9] 前記アルミニウム板として、Si:0.2〜0.8質量%、Mg:0.3〜1質量%、Fe:0.5質量%以下、Cu:0.5質量%以下を含有し、更にTi:0.1質量%以下及びB:0.1質量%以下の少なくとも1種を含有し、残部がAl及び不可避不純物からなるものを用いる前項7記載のプリント回路用アルミニウム基板の製造方法。
この発明においては、加工性を更に向上させることができて、製品品質を更に向上させることができる。
[10] アルミニウム板に対し、リン酸濃度3〜20質量%、浴温25℃以上40℃未満の電解液中で陽極酸化処理を施して、少なくとも片面に陽極酸化皮膜を形成する皮膜形成工程と、
皮膜付きのアルミニウム板を加熱して前記酸化皮膜の水分を放出させる加熱乾燥工程を含むプリント回路用アルミニウム基板の製造方法。
皮膜付きのアルミニウム板を加熱して前記酸化皮膜の水分を放出させる加熱乾燥工程を含むプリント回路用アルミニウム基板の製造方法。
この発明においては、上記と同様に、良好な酸化皮膜を有し、樹脂製絶縁材に対し安定した接着性を得ることができる上更に、樹脂製絶縁材との接着性を向上させることができるアルミニウム基板を製造することができる。
[11] 前項1ないし10のいずれかに記載された製造方法によって製造されてなることを特徴とするプリント回路用アルミニウム基板。
この発明のプリント回路用アルミニウム基板においては、上記と同様に、良好な酸化皮膜を有し、樹脂製絶縁材に対し安定した接着性を得ることができる上更に、樹脂製絶縁材との接着性を向上させることができる。
[12] 陽極酸化皮膜が形成されたプリント回路用アルミニウム基板の前記酸化皮膜の水分を放出させるための方法であって、
前記酸化皮膜に対し、150〜300℃の温度で0.5時間以上加熱するものとしたプリント回路用アルミニウム基板における酸化皮膜の水分放出方法。
前記酸化皮膜に対し、150〜300℃の温度で0.5時間以上加熱するものとしたプリント回路用アルミニウム基板における酸化皮膜の水分放出方法。
この発明においては、上記と同様に、良好な酸化皮膜を有し、樹脂製絶縁材に対し安定した接着性を得ることができる上更に、樹脂製絶縁材との接着性を向上させることができるアルミニウム基板を製造することができる。
[13] アルミニウム板に対し、リン酸濃度3〜20質量%、浴温25℃以上40℃未満の電解液中において浴電圧10V以上で陽極酸化処理を施して、少なくとも片面に陽極酸化皮膜を形成する皮膜形成工程と、
アルミニウム板の酸化皮膜上に、樹脂製絶縁材を積層して絶縁層を形成する積層工程とを含み、
前記積層工程を行う前に、前記酸化皮膜を予備加熱してその皮膜の水分を放出させるものとしたプリント回路用積層板の製造方法。
アルミニウム板の酸化皮膜上に、樹脂製絶縁材を積層して絶縁層を形成する積層工程とを含み、
前記積層工程を行う前に、前記酸化皮膜を予備加熱してその皮膜の水分を放出させるものとしたプリント回路用積層板の製造方法。
この発明においては、上記と同様に、良好な酸化皮膜を有し、樹脂製絶縁材に対し安定した接着性を得ることができる上更に、樹脂製絶縁材との接着性を向上させることができるプリント回路用積層板を製造することができる。
[14] 前記酸化皮膜を予備加熱するに際し、150〜300℃の温度で0.5〜3時間加熱するものとした前項13記載のプリント回路用積層板の製造方法。
この発明においては、絶縁層としての樹脂板等の樹脂製絶縁材との接着性をより向上させることができる。
[15] 前項13又は14に記載された製造方法によって製造されてなることを特徴とするプリント回路用積層板。
この発明のプリント回路用積層板においては、上記と同様に、良好な酸化皮膜を有し、樹脂製絶縁材に対し安定した接着性を得ることができる上更に、樹脂製絶縁材との接着性を向上させることができる。
[16] 陽極酸化皮膜を有するアルミニウム基板の前記酸化皮膜上に、樹脂製絶縁材を積層して絶縁層を形成するようにしたプリント回路用アルミニウム基板の絶縁層形成方法であって、
皮膜付きのアルミニウム基板に前記樹脂製絶縁材を積層するに際して、予め、前記酸化皮膜を予備加熱しておきその皮膜の水分を放出させておくものとしたプリント回路用アルミニウム基板の絶縁層形成方法。
皮膜付きのアルミニウム基板に前記樹脂製絶縁材を積層するに際して、予め、前記酸化皮膜を予備加熱しておきその皮膜の水分を放出させておくものとしたプリント回路用アルミニウム基板の絶縁層形成方法。
この発明においては、上記と同様に、樹脂製絶縁材に対し安定した接着性を得ることができる上更に、樹脂製絶縁材との接着性を向上させることができる。
[17] 前記酸化皮膜を予備加熱するに際し、150〜300℃の温度で0.5〜3時間加熱するものとした前項16記載のプリント回路用アルミニウム基板の絶縁層形成方法。
この発明においては、樹脂板等の樹脂製絶縁材との接着性をより一層向上させることができる。
[18] アルミニウム板に対し、リン酸濃度3〜20質量%、浴温25℃以上40℃未満の電解液中で陽極酸化処理を施して、少なくとも片面に陽極酸化皮膜を形成する皮膜形成工程と、
アルミニウム板の酸化皮膜上に、樹脂製絶縁材及び金属製回路材を積層配置して加熱成形することにより絶縁層及び回路層を形成する貼り合わせ工程とを含み、
前記貼り合わせ工程を行う前に、前記酸化皮膜を予備加熱してその皮膜の水分を放出させるものとしたプリント基板の製造方法。
アルミニウム板の酸化皮膜上に、樹脂製絶縁材及び金属製回路材を積層配置して加熱成形することにより絶縁層及び回路層を形成する貼り合わせ工程とを含み、
前記貼り合わせ工程を行う前に、前記酸化皮膜を予備加熱してその皮膜の水分を放出させるものとしたプリント基板の製造方法。
この発明においては、上記と同様に、良好な酸化皮膜を有し、樹脂製絶縁材に対し安定した接着性を得ることができる上更に、樹脂製絶縁材との接着性を向上させることができるプリント基板を製造することができる。
[19] 前記酸化皮膜を予備加熱するに際し、150〜300℃の温度で0.5〜3時間加熱するものとした前項18記載のプリント基板の製造方法。
この発明においては、樹脂板等の樹脂製絶縁材との接着性をより一層向上させることができる。
[20]前記酸化皮膜を予備加熱するに際し、前記貼り合わせ工程での加熱温度よりも高い温度で加熱するものとした前項19記載のプリント基板の製造方法。
この発明においては、樹脂板との接着性を一段と向上させることができる。
[21] 前記樹脂製絶縁材として、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂、架橋ポリオレフィン、高融点ポリオレフィン、ポリエーテルイミド、ポリエーテルサルホン、フッ素樹脂のいずれかを含む絶縁材が用いられる前項18に記載のプリント基板の製造方法。
この発明においては、良好な絶縁層を形成することができる。
[22] 前記金属製回路材として、銅、アルミニウム及びニッケルのいずれかを含む金属箔が用いられる前項18に記載のプリント基板の製造方法。
この発明においては、良好な回路層を形成することができる。
[23] 前項18ないし22のいずれかに記載された製造方法によって製造されてなることを特徴とするプリント基板。
この発明のプリント基板においては、上記と同様に、良好な酸化皮膜を有し、樹脂製絶縁材に対し安定した接着性を得ることができる上更に、樹脂製絶縁材との接着性を向上させることができる。
以上のように、本発明によれば、良好な酸化皮膜を高精度に形成できて、樹脂製絶縁材に対し安定した接着性を得ることができる上更に、樹脂製絶縁材との接着性を向上させることができる。
本発明のプリント回路用アルミニウム基板の製造方法は、アルミニウム板に対し、リン酸濃度3〜20質量%、浴温25℃以上40℃未満の電解液中で陽極酸化処理を施して、少なくとも片面に陽極酸化皮膜を形成する皮膜形成工程と、前記酸化皮膜を加熱する加熱乾燥工程(予備加熱工程)とを含むものである。
本発明において、アルミニウム板の材料としては、純アルミニウム及びアルミニウム合金のいずれも使用することができるが、アルミニウム合金を用いるのが良い。中でも5052合金等のAl−Mg系合金、Al−Mg−Si系合金を好適に用いることができる。
Al−Mg−Si系合金として具体的には、Si:0.2〜0.8質量%、Mg:0.3〜1質量%、Fe:0.5質量%以下、Cu:0.5質量%以下を含有し、更にTi:0.1質量%以下及びB:0.1質量%以下の少なくとも1種を含有し、残部がAl及び不可避不純物からなるものを用いるのが好ましく、中でも特に導電率が55〜60%(IACS)のものを用いるのが一層好ましい。
すなわちAl−Mg系合金及びAl−Mg−Si系合金は、良好な加工性を備える上、熱伝導性及び強度に優れるため、プリント回路用アルミニウム基板として最適である。
本発明においては、アルミニウム板に対し、リン酸電解液による陽極酸化処理を施して、樹脂板接着面に陽極酸化皮膜を形成するものである。
電解液のリン酸濃度は、3〜20重量%に設定するのが良く、より好ましくは8〜12質量%に調整するのが良い。すなわちリン酸濃度が高過ぎる場合には、酸化皮膜の成長度合を高精度で制御するのが難しく、所望の立体網目構造を得ることができず、樹脂板との間で安定した接着性を得ることができないばかりか、リン酸の酸化皮膜への吸着による汚染が発生する恐れがある。逆にリン酸濃度が低過ぎる場合には、酸化皮膜を十分に形成できない恐れがあり、好ましくない。
本発明において、皮膜形成時の浴電圧は8〜40V、より好ましくは10〜15Vに設定するのが良い。すなわちこの浴電圧が8V未満では皮膜生成速度が低下する恐れがあり、40V超過では電圧コントロールが困難になる恐れがある。なお電解電流としては、直流、交流、交直重畳、矩形波交流電流等を好適に用いることができる。
また樹脂板との接着性を十分に確保するためには、酸化皮膜の膜厚を、0.01〜1μmに調整するのが望ましい。
本発明において、電解液の浴温は、25℃以上40℃未満(40℃は含まない)に設定するのが良く、より好ましくは28℃〜32℃に設定するのが良い。すなわち浴温が高過ぎる場合には、酸化皮膜の成長度合を制御するのが困難になり、安定した接着性を得ることができなくなる恐れがある。逆に浴温が低過ぎる場合には、所望の酸化皮膜を形成できないので、好ましくない。
ここで本発明者らは、電解液の浴温と酸化皮膜の構成との関係について、以下に説明するように綿密な実験を行って詳細に分析した。
まず、上記本発明の条件、すなわちリン酸濃度15質量%、浴温30℃、浴電圧12V(直流)の電解液によりアルミニウム板の表面に、厚さ0.5μmの陽極酸化皮膜を形成した。図1はその皮膜表面の走査電子顕微鏡(SEM)写真、図2は図1の拡大写真、図3はその皮膜断面のSEM写真、図4は皮膜断面の一部を模式化して示す図である。
また浴温を45℃とした以外は、上記図1のものと同様に酸化皮膜を形成した。図4はその皮膜表面のSEM写真、図6はを図5の拡大写真、図7はその皮膜断面のSEM写真、図8は皮膜断面の一部を模式化して示す図である。
更に浴温を20℃とした以外は、上記と同様に酸化皮膜を形成した。図9はその皮膜表面のSEM写真、図10はその拡大写真、図11はその皮膜断面のSEM写真である。
図1ないし図4に示すように、適当な浴温で形成した酸化皮膜(1)は、多孔質ないしは網目構造を有し、孔(ボア2)の径が大きくて、内部において枝分かれし、更に表面も比較的安定した形状に形成されている。従ってこの酸化皮膜(1)上に後述の樹脂製絶縁材を加熱接着した際には、樹脂成分が孔(2)内に奥深く十分に含浸していき皮膜(1)のセルと複雑に絡み合うことにより、高い接着強度を得ることができるものと考えられる。
これに対し、図5ないし図8に示すように、高い浴温で形成した酸化皮膜(1)は、孔(2)の径が小さくて、枝分かれも少なくほぼ直線状に延び、しかも上部が針状に尖鋭な形状の網目構造を有している。従って樹脂製絶縁材を加熱接着した際に、樹脂成分が孔(2)内に十分に含浸せず、樹脂成分が皮膜(1)のセルに絡み合うこともないため、接着強度が低下するものと考えられる。
更に図9ないし図11に示すように、低い浴温で形成した酸化皮膜は、孔径にばらつきがあり、孔の位置分布にも偏りがある網目構造を有している。従って樹脂製絶縁材を加熱接着した際に、樹脂が皮膜表面全域にバランス良く浸透せず、安定した接着強度が得られないものと考えられる。
本発明においては、上記したように酸化皮膜を形成した後、そのアルミニウム板の酸化皮膜に対し、加熱乾燥(予備加熱)を行うことにより、酸化皮膜に吸着した水分、特に陽極酸化処理時に吸着した水分を放出させて、アルミニウム基板として構成するものである。
本発明においては、皮膜付きアルミニウム板における酸化皮膜の水分を放出させることにより、後の工程で貼り合わされる樹脂製絶縁材との接着性を向上させるものである。すなわち、酸化皮膜に多量の水分が残存した状態で、その皮膜上に樹脂板等の絶縁層を加熱接着すると、残留水分の悪影響によって、樹脂板との接着性が低下してしまう。
そこで本発明においては、アルミニウム板の酸化皮膜の水分を放出させて低減させておくものであるため、後の樹脂板加熱接着時における残留水分による悪影響を消失できて、樹脂板の接着強度を十分に確保することができる。
本発明において、水分を放出するために皮膜付きアルミニウム板に加熱乾燥処理を施すに際して、加熱温度を150〜300℃に設定する必要があり、好ましくは200〜250℃に設定するのが良い。すなわち加熱温度が高過ぎる場合には、熱によって酸化皮膜が破壊されたり、酸化皮膜にクラックが生じてしまい、樹脂板との接着性が低下する恐れがある。なお加熱温度が低過ぎる場合には、皮膜の水分の放出を十分に行うことができず、残留水分の影響により、樹脂板との接着性が低下してしまうので、好ましくない。
また加熱乾燥処理における加熱時間は、0.5時間(30分)以上に設定する必要があり、好ましくは3時間以内、より好ましくは1〜2時間に設定するのが良い。すなわち加熱時間をむやみに長く設定したところで、それに見合うだけの効果が期待できず、却ってエネルギー損失の増大や、生産性の低下を来す恐れがある。逆に加熱時間が短過ぎる場合には、皮膜水分を十分に放出することができず、残留水分の影響により、樹脂板との接着性が低下してしまうので、好ましくない。
本発明において、皮膜付きアルミニウム板(陽極酸化基板)を予備加熱した場合、150℃付近から水分の放出を開始し、200℃付近で水分放出のピークを迎え、その際に基板(皮膜)表面の水分が放出されるものと考えられる。
なお加熱温度が400℃付近においても水分放出のピークを迎えるが、この際には、皮膜中のポア内に取り込まれた水分が放出されるものと推定される。
一方、本発明においては、皮膜付きアルミニウム板を予備加熱するに際し、後述する樹脂製絶縁材及び金属製回路材の貼り合わせ時(加熱成形時)の加熱温度よりも高く設定することによっても、水分の放出を効率良く行えて、十分な接着性を得ることができる。
すなわち貼り合わせ工程において、アルミニウム板に、絶縁層としての樹脂製絶縁材、回路層としての金属製回路材を貼り合わせる際には、樹脂成分を硬化するために200℃程度、詳細には150℃〜230℃に加熱するが、この貼り合わせ工程での加熱温度よりも、予備加熱(加熱乾燥)工程での加熱温度を高く設定することにより、皮膜の水分を効率良く放出させることができ、良好な接着性を得ることができる。
本発明においては、上記したように予備加熱処理したアルミニウム板(アルミニウム基板)に、樹脂製絶縁材及び銅製等の金属製回路材を積層して、プリント基板を形成するものである。
樹脂製絶縁材の素材としては、熱硬化性樹脂及び熱可塑性樹脂のいずれをも用いることができる。熱硬化性樹脂としては、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂等を例示することができる。また熱可塑性樹脂としては、架橋ポリオレフィン、高融点ポリオレフィン、ポリエーテルイミド、ポリエーテルサルホン、フッ素樹脂等を例示することができる。
樹脂製絶縁材は、熱成形板、熱成形シートないしはフィルム、プリプレグ、塗膜等の形態でアルミニウム基板上に積層されるものである。
なおプリプレグの補強材としては、紙、合成繊維布、ガラス繊維布を例示することができるが、特にガラス繊維織布やガラス繊維不織布を好適に用いることができる。
金属製回路材としては、銅、アルミニウム、ニッケル等の金属箔を用いることができる。更に金属製回路材は絶縁層との接着面に、予め機械的又は化学的に粗面化処理を施して、接着性を向上させるようにするのが好ましい。
アルミニウム基板に樹脂製絶縁材及び金属製回路材を貼り合わせる方法としては、例えばアルミニウム基板の酸化皮膜上に、絶縁材としての樹脂板やプリプレグ等を積層状に重ね合わせ、更にその上に回路材としての銅箔等を積層状に重ね合わせ、その状態で、加熱加圧成形して、アルミニウム基板上に絶縁層及び回路層を接着固定する方法等を例示することができる。
なおこの貼り合わせ工程において、加熱条件としては、加熱温度を150〜230℃、好ましくは170〜180℃に設定するのが望ましく、加熱時間を30分〜3時間、好ましくは1〜2時間に設定するのが望ましい。
こうしてアルミニウム基板上に樹脂製絶縁層を介して金属製回路層が貼り合わせられることにより、本発明に関連したプリント基板が形成されるものである。
このプリント基板においては、樹脂板(絶縁層)のアルミニウム基板に対する接着強度を十分に高くすることができる。すなわち本発明においては、アルミニウム基板に酸化皮膜を形成する際に、本発明特有の条件でリン酸陽極酸化処理を行うものであるため、図1ないし図4等に示すように、ボア径の大きい所望の網目構造の酸化皮膜を確実に形成することができる。このためこのアルミニウム基板の酸化皮膜上に樹脂板を加熱接着する際に、樹脂成分が酸化皮膜の孔内部まで深く含浸して皮膜のセルと複雑に絡み合うことにより、良好な接着性を安定して得ることができる。
しかも本発明においては、樹脂板を貼り合わせる前に、皮膜付きアルミニウム板を予備加熱して、皮膜の水分を除去しておくものであるため、皮膜の残留水分の悪影響によって樹脂板との接着性が低下するのを防止でき、接着性を一段と向上させることができる。
以下、本発明に関連した実施例、及びその効果を検証するための比較例について説明する。
<実施例1>
表1に示すように、Al−Mg−Si系合金(Si:0.5質量%、Mg:0.5質量%、残部Al及び不可避不純物)からなる100mm×100mm×1mmのアルミニウム板を準備した。そのアルミニウム板に対し、リン酸濃度10質量%、浴温30℃の電解液中において電圧12V(直流)で陽極酸化処理を施し、表面に厚さ0.5μmの陽極酸化皮膜を形成した。
表1に示すように、Al−Mg−Si系合金(Si:0.5質量%、Mg:0.5質量%、残部Al及び不可避不純物)からなる100mm×100mm×1mmのアルミニウム板を準備した。そのアルミニウム板に対し、リン酸濃度10質量%、浴温30℃の電解液中において電圧12V(直流)で陽極酸化処理を施し、表面に厚さ0.5μmの陽極酸化皮膜を形成した。
続いてこの皮膜付きのアルミニウム板を、200℃で1時間予備加熱(加熱乾燥)して、皮膜の水分を放出した。
その後、加熱乾燥済みのアルミニウム板の表面(皮膜表面)に、エポキシ樹脂製の樹脂板を重ね合わせ、更にその上に、下面を粗面化した厚さ70μmの銅箔を重ね合わせ、その状態で、加熱温度175℃で1時間、加熱加圧成形することにより、アルミニウム基板上に絶縁層及び回路層が積層一体化された実施例1のプリント基板を作製した。
<実施例2>
表1に示すように、リン酸濃度10質量%、浴温30℃の電解液中において電圧12V(直流)で陽極酸化処理を施し、表面に厚さ0.5μmの陽極酸化膜を形成した。
表1に示すように、リン酸濃度10質量%、浴温30℃の電解液中において電圧12V(直流)で陽極酸化処理を施し、表面に厚さ0.5μmの陽極酸化膜を形成した。
続いてこの皮膜付きアルミニウム板を、200℃で2時間予備加熱して、皮膜の水分を放出した。その後、上記と同様に樹脂板及び銅箔を積層接着して、実施例2のプリント基板を作製した。
<実施例3>
表1に示すように、リン酸濃度10質量%、浴温30℃の電解液中において電圧12V(直流)で陽極酸化処理を施し、表面に厚さ0.1μmの陽極酸化膜を形成した。
表1に示すように、リン酸濃度10質量%、浴温30℃の電解液中において電圧12V(直流)で陽極酸化処理を施し、表面に厚さ0.1μmの陽極酸化膜を形成した。
続いてこの皮膜付きアルミニウム板を、250℃で1時間予備加熱して、皮膜の水分を放出した。その後、上記と同様に樹脂板及び銅箔を積層接着して、実施例3のプリント基板を作製した。
<実施例4>
表1に示すように、リン酸濃度5質量%、浴温38℃の電解液中において電圧12V(直流)で陽極酸化処理を施し、表面に厚さ0.9μmの陽極酸化膜を形成した。
表1に示すように、リン酸濃度5質量%、浴温38℃の電解液中において電圧12V(直流)で陽極酸化処理を施し、表面に厚さ0.9μmの陽極酸化膜を形成した。
続いてこの皮膜付きアルミニウム板を、220℃で2時間予備加熱して、皮膜の水分を放出した。その後、上記と同様に樹脂板及び銅箔を積層接着して、実施例4のプリント基板を作製した。
<実施例5>
表1に示すように、リン酸濃度19質量%、浴温26℃の電解液中において電圧12V(直流)で陽極酸化処理を施し、表面に厚さ0.05μmの陽極酸化膜を形成した。
表1に示すように、リン酸濃度19質量%、浴温26℃の電解液中において電圧12V(直流)で陽極酸化処理を施し、表面に厚さ0.05μmの陽極酸化膜を形成した。
続いてこの皮膜付きアルミニウム板を、180℃で1.5時間(1時間30分間)予備加熱して、皮膜の水分を放出した。その後、上記と同様に樹脂板及び銅箔を積層接着して、実施例5のプリント基板を作製した。
<実施例6>
表1に示すように、リン酸濃度10質量%、浴温30℃の電解液中において電圧12V(直流)で陽極酸化処理を施し、表面に厚さ0.5μmの陽極酸化膜を形成した。
表1に示すように、リン酸濃度10質量%、浴温30℃の電解液中において電圧12V(直流)で陽極酸化処理を施し、表面に厚さ0.5μmの陽極酸化膜を形成した。
続いてこの皮膜付きアルミニウム板を、160℃で2.9時間(2時間54分間)予備加熱して、皮膜の水分を放出した。その後、上記と同様に樹脂板及び銅箔を積層接着して、実施例6のプリント基板を作製した。
<実施例7>
表1に示すように、リン酸濃度15質量%、浴温26℃の電解液中において電圧12V(直流)で陽極酸化処理を施し、表面に厚さ0.5μmの陽極酸化膜を形成した。
表1に示すように、リン酸濃度15質量%、浴温26℃の電解液中において電圧12V(直流)で陽極酸化処理を施し、表面に厚さ0.5μmの陽極酸化膜を形成した。
続いてこの皮膜付きアルミニウム板を、300℃で0.6時間(36分間)予備加熱して、皮膜の水分を放出した。その後、上記と同様に樹脂板及び銅箔を積層接着して、実施例7のプリント基板を作製した。
<比較例1>
表1に示すように、リン酸濃度10質量%、浴温30℃の電解液中において電圧12V(直流)で陽極酸化処理を施し、表面に厚さ0.5μmの陽極酸化膜を形成した。
表1に示すように、リン酸濃度10質量%、浴温30℃の電解液中において電圧12V(直流)で陽極酸化処理を施し、表面に厚さ0.5μmの陽極酸化膜を形成した。
続いてこの皮膜付きアルミニウム板を、予備加熱を行わずに、上記と同様に樹脂板及び銅箔を積層接着して、比較例1のプリント基板を作製した。
<比較例2>
表1に示すように、浴温を過度に高くして陽極酸化処理を行った。すなわち、リン酸濃度10質量%、浴温45℃の電解液中において電圧12V(直流)で陽極酸化処理を施し、表面に厚さ0.1μmの陽極酸化膜を形成した。
表1に示すように、浴温を過度に高くして陽極酸化処理を行った。すなわち、リン酸濃度10質量%、浴温45℃の電解液中において電圧12V(直流)で陽極酸化処理を施し、表面に厚さ0.1μmの陽極酸化膜を形成した。
続いてこの皮膜付きアルミニウム板を、予備加熱を行わずに、上記と同様に樹脂板及び銅箔を積層接着して、比較例2のプリント基板を作製した。
<比較例3>
表1に示すように、浴温を過度に低くして陽極酸化処理を行った。すなわち、リン酸濃度10質量%、浴温20℃の電解液中において電圧12V(直流)で陽極酸化処理を施し、表面に厚さ0.1μmの陽極酸化膜を形成した。
表1に示すように、浴温を過度に低くして陽極酸化処理を行った。すなわち、リン酸濃度10質量%、浴温20℃の電解液中において電圧12V(直流)で陽極酸化処理を施し、表面に厚さ0.1μmの陽極酸化膜を形成した。
続いてこの皮膜付きアルミニウム板を、予備加熱を行わずに、上記と同様に樹脂板及び銅箔を積層接着して、比較例3のプリント基板を作製した。
<比較例4>
表1に示すように、リン酸濃度を過度に高くして陽極酸化処理を行った。すなわち、リン酸濃度25質量%、浴温30℃の電解液中において電圧12V(直流)で陽極酸化処理を施し、表面に厚さ0.5μmの陽極酸化膜を形成した。
表1に示すように、リン酸濃度を過度に高くして陽極酸化処理を行った。すなわち、リン酸濃度25質量%、浴温30℃の電解液中において電圧12V(直流)で陽極酸化処理を施し、表面に厚さ0.5μmの陽極酸化膜を形成した。
続いてこの皮膜付きアルミニウム板を、予備加熱を行わずに、上記と同様に樹脂板及び銅箔を積層接着して、比較例4のプリント基板を作製した。
<比較例5>
表1に示すように、浴温を過度に高くして陽極酸化処理を行った。すなわち、リン酸濃度10質量%、浴温42℃の電解液中において電圧12V(直流)で陽極酸化処理を施し、表面に厚さ0.1μmの陽極酸化膜を形成した。
表1に示すように、浴温を過度に高くして陽極酸化処理を行った。すなわち、リン酸濃度10質量%、浴温42℃の電解液中において電圧12V(直流)で陽極酸化処理を施し、表面に厚さ0.1μmの陽極酸化膜を形成した。
続いてこの皮膜付きアルミニウム板を、200℃で2時間予備加熱した後、上記と同様に樹脂板及び銅箔を積層接着して、比較例5のプリント基板を作製した。
<比較例6>
表1に示すように、浴温を過度に低くて陽極酸化処理を行った。すなわち、リン酸濃度10質量%、浴温20℃の電解液中において電圧12V(直流)で陽極酸化処理を施し、表面に厚さ0.1μmの陽極酸化膜を形成した。
表1に示すように、浴温を過度に低くて陽極酸化処理を行った。すなわち、リン酸濃度10質量%、浴温20℃の電解液中において電圧12V(直流)で陽極酸化処理を施し、表面に厚さ0.1μmの陽極酸化膜を形成した。
続いてこの皮膜付きアルミニウム板を、200℃で1時間予備加熱した後、上記と同様に樹脂板及び銅箔を積層接着して、比較例6のプリント基板を作製した。
<比較例7>
表1に示すように、リン酸濃度を過度に高くて陽極酸化処理を行った。すなわち、リン酸濃度25質量%、浴温30℃の電解液中において電圧12V(直流)で陽極酸化処理を施し、表面に厚さ0.5μmの陽極酸化膜を形成した。
表1に示すように、リン酸濃度を過度に高くて陽極酸化処理を行った。すなわち、リン酸濃度25質量%、浴温30℃の電解液中において電圧12V(直流)で陽極酸化処理を施し、表面に厚さ0.5μmの陽極酸化膜を形成した。
続いてこの皮膜付きアルミニウム板を、200℃で1時間予備加熱した後、上記と同様に樹脂板及び銅箔を積層接着して、比較例7のプリント基板を作製した。
<比較例8>
表1に示すように、予備加熱を高温で行った。すなわち、リン酸濃度10質量%、浴温30℃の電解液中において電圧12V(直流)で陽極酸化処理を施し、表面に厚さ0.1μmの陽極酸化膜を形成した。
表1に示すように、予備加熱を高温で行った。すなわち、リン酸濃度10質量%、浴温30℃の電解液中において電圧12V(直流)で陽極酸化処理を施し、表面に厚さ0.1μmの陽極酸化膜を形成した。
続いてこの皮膜付きアルミニウム板を、340℃で0.5時間(30分間)予備加熱した後、上記と同様に樹脂板及び銅箔を積層接着して、比較例8のプリント基板を作製した。
<評価>
上記実施例及び比較例の各プリント基板において、絶縁層の接着性及び耐熱性の評価を行った。
上記実施例及び比較例の各プリント基板において、絶縁層の接着性及び耐熱性の評価を行った。
接着性の評価においては、各プリント基板における樹脂製絶縁層のアルミニウム基板に対するピール強度(kN/m)を測定した。
耐熱性の評価においては、JIS C6481に準拠して、各プリント基板をはんだ浴に浸漬した際に、膨れが発生する時間(秒)を測定した。これらの測定結果を表2に示す。
表2から明らかなように、本発明に関連した実施例1〜6のものは、ピール強度が高く、絶縁層が十分な強度で接着されており、更に耐熱性にも優れている。特に実施例1〜3のように、陽極酸化処理及び予備加熱処理を本発明の好適範囲の条件で行ったものは、ピール強度や耐熱性が、より一層優れている。
これに対し、比較例1〜8のように本発明の要旨を逸脱するものは、接着性及び耐熱性のいずれかにおいて、不満足な結果が得られた。
この発明のプリント回路用アルミニウム基板の製造方法は、各種電気製品の電子回路基板等に用いられるプリント基板を製造する際に利用可能であり、特にそのようなプリント回路用基板としてのアルミニウム基板を製造する際に好適に利用可能である。
1…酸化皮膜
Claims (23)
- アルミニウム板に対し、リン酸濃度3〜20質量%、浴温25℃以上40℃未満の電解液中で陽極酸化処理を施して、少なくとも片面に陽極酸化皮膜を形成する皮膜形成工程と、
前記酸化皮膜に対し、150〜300℃の温度で0.5時間以上加熱する加熱乾燥工程とを含むプリント回路用アルミニウム基板の製造方法。 - 前記酸化皮膜の厚さを0.01〜1μmに調整するものとした請求項1記載のプリント回路用アルミニウム基板の製造方法。
- 前記加熱乾燥工程における加熱温度を200〜250℃に設定するものとした請求項1又は2記載のプリント回路用アルミニウム基板の製造方法。
- 前記加熱乾燥工程における加熱時間を1〜2時間に設定するものとした請求項1ないし3のいずれかに記載のプリント回路用アルミニウム基板の製造方法。
- 前記アルミニウム板として、Al−Mg系合金を用いる請求項1ないし4のいずれかに記載のプリント回路用アルミニウム基板の製造方法。
- 前記アルミニウム板として、5052合金を用いる請求項5記載のプリント回路用アルミニウム基板の製造方法。
- 前記アルミニウム板として、Al−Mg−Si系合金を用いる請求項1ないし4のいずれかに記載のプリント回路用アルミニウム基板の製造方法。
- 前記アルミニウム板として、Si:0.2〜0.8質量%、Mg:0.3〜1質量%を含有し、残部がAl及び不可避不純物からなるものを用いる請求項7記載のプリント回路用アルミニウム基板の製造方法。
- 前記アルミニウム板として、Si:0.2〜0.8質量%、Mg:0.3〜1質量%、Fe:0.5質量%以下、Cu:0.5質量%以下を含有し、更にTi:0.1質量%以下及びB:0.1質量%以下の少なくとも1種を含有し、残部がAl及び不可避不純物からなるものを用いる請求項7記載のプリント回路用アルミニウム基板の製造方法。
- アルミニウム板に対し、リン酸濃度3〜20質量%、浴温25℃以上40℃未満の電解液中で陽極酸化処理を施して、少なくとも片面に陽極酸化皮膜を形成する皮膜形成工程と、
皮膜付きのアルミニウム板を加熱して前記酸化皮膜の水分を放出させる加熱乾燥工程を含むプリント回路用アルミニウム基板の製造方法。 - 請求項1ないし10のいずれかに記載された製造方法によって製造されてなることを特徴とするプリント回路用アルミニウム基板。
- 陽極酸化皮膜が形成されたプリント回路用アルミニウム基板の前記酸化皮膜の水分を放出させるための方法であって、
前記酸化皮膜に対し、150〜300℃の温度で0.5時間以上加熱するものとしたプリント回路用アルミニウム基板における酸化皮膜の水分放出方法。 - アルミニウム板に対し、リン酸濃度3〜20質量%、浴温25℃以上40℃未満の電解液中において浴電圧10V以上で陽極酸化処理を施して、少なくとも片面に陽極酸化皮膜を形成する皮膜形成工程と、
アルミニウム板の酸化皮膜上に、樹脂製絶縁材を積層して絶縁層を形成する積層工程とを含み、
前記積層工程を行う前に、前記酸化皮膜を予備加熱してその皮膜の水分を放出させるものとしたプリント回路用積層板の製造方法。 - 前記酸化皮膜を予備加熱するに際し、150〜300℃の温度で0.5〜3時間加熱するものとした請求項13記載のプリント回路用積層板の製造方法。
- 請求項13又は14に記載された製造方法によって製造されてなることを特徴とするプリント回路用積層板。
- 陽極酸化皮膜を有するアルミニウム基板の前記酸化皮膜上に、樹脂製絶縁材を積層して絶縁層を形成するようにしたプリント回路用アルミニウム基板の絶縁層形成方法であって、
皮膜付きのアルミニウム基板に前記樹脂製絶縁材を積層するに際して、予め、前記酸化皮膜を予備加熱しておきその皮膜の水分を放出させておくものとしたプリント回路用アルミニウム基板の絶縁層形成方法。 - 前記酸化皮膜を予備加熱するに際し、150〜300℃の温度で0.5〜3時間加熱するものとした請求項16記載のプリント回路用アルミニウム基板の絶縁層形成方法。
- アルミニウム板に対し、リン酸濃度3〜20質量%、浴温25℃以上40℃未満の電解液中で陽極酸化処理を施して、少なくとも片面に陽極酸化皮膜を形成する皮膜形成工程と、
アルミニウム板の酸化皮膜上に、樹脂製絶縁材及び金属製回路材を積層配置して加熱成形することにより絶縁層及び回路層を形成する貼り合わせ工程とを含み、
前記貼り合わせ工程を行う前に、前記酸化皮膜を予備加熱してその皮膜の水分を放出させるものとしたプリント基板の製造方法。 - 前記酸化皮膜を予備加熱するに際し、150〜300℃の温度で0.5〜3時間加熱するものとした請求項18記載のプリント基板の製造方法。
- 前記酸化皮膜を予備加熱するに際し、前記貼り合わせ工程での加熱温度よりも高い温度で加熱するものとした請求項18記載のプリント基板の製造方法。
- 前記樹脂製絶縁材として、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂、架橋ポリオレフィン、高融点ポリオレフィン、ポリエーテルイミド、ポリエーテルサルホン、フッ素樹脂のいずれかを含む絶縁材が用いられる請求項18に記載のプリント基板の製造方法。
- 前記金属製回路材として、銅、アルミニウム及びニッケルのいずれかを含む金属箔が用いられる請求項18に記載のプリント基板の製造方法。
- 請求項18ないし22のいずれかに記載された製造方法によって製造されてなることを特徴とするプリント基板。
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