JP2006021988A - 炭酸塩の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 配向複屈折性を有する針状及び棒状のいずれかの炭酸塩を効率的かつ簡便に形成することができ、粒子サイズを制御可能な炭酸塩の製造方法の提供。
【解決手段】 Sr2+イオン、Ca2+イオン、Ba2+イオン、Zn2+イオン、及びPb2+イオンから選択される少なくとも1種の金属イオンを含む金属イオン源と炭酸源とをダブルジェット法により液中で反応させてアスペクト比が1より大きく、針状及び棒状のいずれかの形状を有する炭酸塩を製造することを特徴とする炭酸塩の製造方法である。前記炭酸源が尿素であり、該尿素と金属イオン源とをウレアーゼを含む30℃以上の液中で反応させる態様、30〜55℃の液中で反応させる態様、前記金属イオン源がNO3 −、Cl−及びOH−の少なくともいずれかを含む態様、前記液中に溶剤を含む態様などが好ましい。
【選択図】 図1
【解決手段】 Sr2+イオン、Ca2+イオン、Ba2+イオン、Zn2+イオン、及びPb2+イオンから選択される少なくとも1種の金属イオンを含む金属イオン源と炭酸源とをダブルジェット法により液中で反応させてアスペクト比が1より大きく、針状及び棒状のいずれかの形状を有する炭酸塩を製造することを特徴とする炭酸塩の製造方法である。前記炭酸源が尿素であり、該尿素と金属イオン源とをウレアーゼを含む30℃以上の液中で反応させる態様、30〜55℃の液中で反応させる態様、前記金属イオン源がNO3 −、Cl−及びOH−の少なくともいずれかを含む態様、前記液中に溶剤を含む態様などが好ましい。
【選択図】 図1
Description
本発明は、配向複屈折性を有する針状及び棒状のいずれかの炭酸塩を効率的かつ簡便に形成することができ、粒子サイズを制御可能な炭酸塩の製造方法に関する。
従来より、炭酸塩(例えば、炭酸カルシウムなど)は、ゴム、プラスチック、製紙などの分野で広く使用されてきたが、近年、高機能性を付与した炭酸塩が次々と開発され、粒子形状や粒子径などに応じて、多用途、多目的に使用されるようになっている。
炭酸塩の結晶形としては、カラサイト、アラゴナイト、バテライトなどが挙げられるが、これらの中でも、アラゴナイトは針状であり、強度や弾性率に優れる点で、様々な用途に有用である。
炭酸塩の結晶形としては、カラサイト、アラゴナイト、バテライトなどが挙げられるが、これらの中でも、アラゴナイトは針状であり、強度や弾性率に優れる点で、様々な用途に有用である。
炭酸塩を製造する方法としては、炭酸イオンを含む溶液と塩化物の溶液とを反応させて炭酸塩を製造する方法や、塩化物と炭酸ガスとの反応によって炭酸塩を製造する方法などが一般的に知られている。また、アラゴナイト構造を有する針状の炭酸塩の製造方法としては、例えば、前者の方法において、炭酸イオンを含む溶液と塩化物の溶液との反応を超音波照射下に行う方法(特許文献1参照)や、Ca(OH)2水スラリーに二酸化炭素を導入する方法において、あらかじめCa(OH)2水スラリー中に、種晶となる針状アラゴナイト結晶を入れ、該種晶を一定方向にのみ成長させる方法(特許文献2参照)が提案されている。
しかし、特許文献1に記載の炭酸塩の製造方法では、得られる炭酸塩の長さが30〜60μmと大きいだけでなく、粒子サイズの分布幅が広く、所望の粒子サイズに制御した炭酸塩を得ることができないという問題がある。また、特許文献2に記載の炭酸塩の製造方法を用いても、長さが20〜30μmの大きな粒子しか得ることができない。
しかし、特許文献1に記載の炭酸塩の製造方法では、得られる炭酸塩の長さが30〜60μmと大きいだけでなく、粒子サイズの分布幅が広く、所望の粒子サイズに制御した炭酸塩を得ることができないという問題がある。また、特許文献2に記載の炭酸塩の製造方法を用いても、長さが20〜30μmの大きな粒子しか得ることができない。
ところで、近年、眼鏡レンズ、透明板などの一般的光学部品やオプトエレクトロニクス用の光学部品、特に、音響、映像、文字情報等を記録する光ディスク装置などのレーザ関連機器に用いる光学部品の材料として、高分子樹脂が用いられる傾向が強まっている。その理由としては、高分子光学材料(高分子樹脂からなる光学材料)は、一般に、他の光学材料(例えば、光学ガラスなど)に比べて、軽量、安価で加工性、量産性に優れている点が挙げられる。また、高分子樹脂には、射出成形や押出成形などの成形技術の適用が容易であるという利点もある。
しかし、従来より使用されている一般的な高分子光学材料に成形技術を施して製品化した場合、得られた製品が複屈折性を示すという性質があった。複屈折性を有する高分子光学材料は、比較的高精度が要求されない光学素子に用いる場合には、特に問題となることはないが、近年、より高精度が要求される光学用物品が求められてきており、例えば、書込/消去型の光磁気ディスクなどにおいては、複屈折性が大きな問題となる。すなわち、このような光磁気ディスクには、読取ビームあるいは書込ビームに偏向ビームが用いられており、光路中に複屈折性の光学素子(例えば、ディスク自体、レンズなど)が存在すると、読取り、あるいは、書込みの精度に悪影響を及ぼす。
そこで、複屈折性の低減を目的として、複屈折性の符号が互いに異なる高分子樹脂と無機微粒子とを用いた非複屈折光学樹脂材料が提案されている(特許文献3参照)。該光学樹脂材料は、結晶ドープ法とよばれる手法により得られるものであり、具体的には、高分子樹脂中に多数の無機微粒子を分散させ、延伸などにより成形力を外部から作用させ、高分子樹脂の結合鎖と多数の無機微粒子とを略平行に配向させ、高分子樹脂の結合鎖の配向によって生ずる複屈折性を、符号の異なる無機微粒子の複屈折性で減殺したものである。
このように、結晶ドープ法を用いて非複屈折光学樹脂材料を得るためには、結晶ドープ法に使用可能な無機微粒子が必要不可欠となるが、この無機微粒子としては、微細な針状又は棒状の炭酸塩が特に好適に使用可能であることが認識されている。
本発明は、従来における前記問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、配向複屈折性を有する針状及び棒状のいずれかの炭酸塩を効率的かつ簡便に形成することができ、粒子サイズを制御可能な炭酸塩の製造方法を提供することを目的とする。
本発明者は、前記課題に鑑み鋭意検討を重ねた結果、以下の知見を得た。即ち、ダブルジェット法を用いて、Sr2+イオン、Ca2+イオンなどの金属イオンを含む金属イオン源と、尿素などの炭酸源とを液中で反応させることにより、粒子サイズを制御可能で、アスペクト比が1より大きく、針状及び棒状のいずれかの形状を有する炭酸塩を効率的かつ簡便に製造することができるという知見である。
本発明は、本発明者の前記知見に基づくものであり、前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
<1> Sr2+イオン、Ca2+イオン、Ba2+イオン、Zn2+イオン、及びPb2+イオンから選択される少なくとも1種の金属イオンを含む金属イオン源と炭酸源とをダブルジェット法により液中で反応させてアスペクト比が1より大きく、針状及び棒状のいずれかの形状を有する炭酸塩を製造することを特徴とする炭酸塩の製造方法である。該<1>に記載の炭酸塩の製造方法においては、前記金属イオン源と前記炭酸源とが、前記ダブルジェット法により添加され、前記液中で瞬時に反応する。その結果、アスペクト比が1より大きく、針状及び棒状のいずれかの形状を有する炭酸塩が得られる。また、本発明の炭酸塩の製造方法により得られる炭酸塩は、多目的、多用途に使用可能であり、非複屈折光学樹脂材料への応用も可能である。
<2> 炭酸源が尿素であり、該尿素と金属イオン源とをウレアーゼを含む30℃以上の液中で反応させる前記<1>に記載の炭酸塩の製造方法である。該<2>に記載の炭酸塩の製造方法においては、前記炭酸源が尿素であるので、尿素の加水分解酵素である前記ウレアーゼを用いることにより、前記反応が促進される。
<3> 尿素と金属イオン源とを30〜55℃の液中で反応させる前記<2>に記載の炭酸塩の製造方法である。
<4> 炭酸源が炭酸アンモニウムであり、該炭酸アンモニウムと金属イオン源とを30℃以上の液中で反応させる前記<1>に記載の炭酸塩の製造方法である。
<5> ダブルジェット法が、金属イオン源と炭酸源とを等モル添加速度で滴下することにより行われる前記<1>から<4>のいずれかに記載の炭酸塩の製造方法である。
<6> 等モル添加速度が、0.001〜0.1mol/minである前記<5>に記載の炭酸塩の製造方法である。
<7> 金属イオン源が、NO3 −、Cl−、及びOH−の少なくともいずれかを含む前記<1>から<6>のいずれかに記載の炭酸塩の製造方法である。
<8> 液中に水を含む前記<1>から<7>のいずれかに記載の炭酸塩の製造方法である。
<9> 液中に溶剤を含む前記<1>から<8>のいずれかに記載の炭酸塩の製造方法である。該<9>に記載の炭酸塩の製造方法においては、前記溶剤が含まれるので、得られる炭酸塩の溶解度の低下が可能である。
<10> 溶剤が、メタノール、エタノール、及びイソプロピルアルコールから選択される少なくとも1種である前記<9>に記載の炭酸塩の製造方法である。
<1> Sr2+イオン、Ca2+イオン、Ba2+イオン、Zn2+イオン、及びPb2+イオンから選択される少なくとも1種の金属イオンを含む金属イオン源と炭酸源とをダブルジェット法により液中で反応させてアスペクト比が1より大きく、針状及び棒状のいずれかの形状を有する炭酸塩を製造することを特徴とする炭酸塩の製造方法である。該<1>に記載の炭酸塩の製造方法においては、前記金属イオン源と前記炭酸源とが、前記ダブルジェット法により添加され、前記液中で瞬時に反応する。その結果、アスペクト比が1より大きく、針状及び棒状のいずれかの形状を有する炭酸塩が得られる。また、本発明の炭酸塩の製造方法により得られる炭酸塩は、多目的、多用途に使用可能であり、非複屈折光学樹脂材料への応用も可能である。
<2> 炭酸源が尿素であり、該尿素と金属イオン源とをウレアーゼを含む30℃以上の液中で反応させる前記<1>に記載の炭酸塩の製造方法である。該<2>に記載の炭酸塩の製造方法においては、前記炭酸源が尿素であるので、尿素の加水分解酵素である前記ウレアーゼを用いることにより、前記反応が促進される。
<3> 尿素と金属イオン源とを30〜55℃の液中で反応させる前記<2>に記載の炭酸塩の製造方法である。
<4> 炭酸源が炭酸アンモニウムであり、該炭酸アンモニウムと金属イオン源とを30℃以上の液中で反応させる前記<1>に記載の炭酸塩の製造方法である。
<5> ダブルジェット法が、金属イオン源と炭酸源とを等モル添加速度で滴下することにより行われる前記<1>から<4>のいずれかに記載の炭酸塩の製造方法である。
<6> 等モル添加速度が、0.001〜0.1mol/minである前記<5>に記載の炭酸塩の製造方法である。
<7> 金属イオン源が、NO3 −、Cl−、及びOH−の少なくともいずれかを含む前記<1>から<6>のいずれかに記載の炭酸塩の製造方法である。
<8> 液中に水を含む前記<1>から<7>のいずれかに記載の炭酸塩の製造方法である。
<9> 液中に溶剤を含む前記<1>から<8>のいずれかに記載の炭酸塩の製造方法である。該<9>に記載の炭酸塩の製造方法においては、前記溶剤が含まれるので、得られる炭酸塩の溶解度の低下が可能である。
<10> 溶剤が、メタノール、エタノール、及びイソプロピルアルコールから選択される少なくとも1種である前記<9>に記載の炭酸塩の製造方法である。
本発明によると、従来における問題を解決することができ、配向複屈折性を有する針状及び棒状のいずれかの炭酸塩を効率的かつ簡便に形成することができ、粒子サイズを制御可能な炭酸塩の製造方法を提供することができる。
(炭酸塩の製造方法)
本発明の炭酸塩の製造方法は、金属イオン源と炭酸源とをダブルジェット法により液中で反応させてアスペクト比が1より大きく、針状及び棒状のいずれかの形状を有する炭酸塩を製造する。
本発明の炭酸塩の製造方法は、金属イオン源と炭酸源とをダブルジェット法により液中で反応させてアスペクト比が1より大きく、針状及び棒状のいずれかの形状を有する炭酸塩を製造する。
−金属イオン源−
前記金属イオン源としては、金属イオンを含む限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記炭酸源と反応して、カラサイト、アラゴナイト、バテライト、及びアモルファスのいずれかの形態を有する炭酸塩を形成するものが好ましく、アラゴナイト型の結晶構造を有する炭酸塩を形成するものが特に好ましい。
前記アラゴナイト型の結晶構造は、CO3 2−ユニットで表され、該CO3 2−ユニットが積層されて針状及び棒状のいずれかの形状を有する炭酸塩を形成する。このため、該炭酸塩が、後述する延伸処理により、任意の一方向に延伸されると、その延伸方向に粒子の長軸方向が一致した状態で結晶が並ぶ。
また、表1にアラゴナイト型鉱物の屈折率を示す。表1に示すように、前記アラゴナイト型の結晶構造を有する炭酸塩は、複屈折率δが大きいため、配向複屈折性を有するポリマーへのドープに好適に使用することができる。
前記金属イオン源としては、金属イオンを含む限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記炭酸源と反応して、カラサイト、アラゴナイト、バテライト、及びアモルファスのいずれかの形態を有する炭酸塩を形成するものが好ましく、アラゴナイト型の結晶構造を有する炭酸塩を形成するものが特に好ましい。
前記アラゴナイト型の結晶構造は、CO3 2−ユニットで表され、該CO3 2−ユニットが積層されて針状及び棒状のいずれかの形状を有する炭酸塩を形成する。このため、該炭酸塩が、後述する延伸処理により、任意の一方向に延伸されると、その延伸方向に粒子の長軸方向が一致した状態で結晶が並ぶ。
また、表1にアラゴナイト型鉱物の屈折率を示す。表1に示すように、前記アラゴナイト型の結晶構造を有する炭酸塩は、複屈折率δが大きいため、配向複屈折性を有するポリマーへのドープに好適に使用することができる。
前記金属イオン源は、Sr2+イオン、Ca2+イオン、Ba2+イオン、Zn2+イオン、及びPb2+イオンから選択される少なくとも1種の金属イオンを含む限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、Sr、Ca、Ba、Zn、及びPbから選択される少なくとも1種の金属の硝酸塩、塩化物、水酸化物などが挙げられる。
前記金属イオン源は、NO3 −、Cl−、及びOH−の少なくともいずれかを含むのが好ましい。したがって、前記金属イオン源の具体例としては、Sr(NO3)2、Ca(NO3)2、Ba(NO3)2、Zn(NO3)2、Pb(NO3)2、SrCl2、CaCl2、BaCl2、ZnCl2、PbCl2、Sr(OH)2、Ca(OH)2、Ba(OH)2、Zn(OH)2、Pb(OH)2、などが好適に挙げられる。
−炭酸源−
前記炭酸源としては、CO3 2−イオンを生ずるものである限り特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、尿素[(NH2)2CO]、炭酸アンモニウム[(NH4)2CO3]などが好適に挙げられる。
前記炭酸源としては、CO3 2−イオンを生ずるものである限り特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、尿素[(NH2)2CO]、炭酸アンモニウム[(NH4)2CO3]などが好適に挙げられる。
−ダブルジェット法−
前記ダブルジェット法は、前記金属イオン源と前記炭酸源とを、それぞれ反応用の液面上又は液中に、噴射あるいはゆるやかに滴下することにより添加し、反応させる方法であり、例えば、図1に示すように、前記金属イオン源を含むA液と、前記炭酸源を含むB液とを、同時にC液に添加し、該C液の液中でこれらを反応させる方法である。
前記ダブルジェット法による前記金属イオン源及び前記炭酸源のモル添加速度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、最終生成物の化学量論比となるようにモル添加速度を決定するのが好ましく、本発明では、等モル添加速度であるのが好ましい。
前記等モル添加速度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.001〜0.1mol/minが好ましい。
前記ダブルジェット法は、前記金属イオン源と前記炭酸源とを、それぞれ反応用の液面上又は液中に、噴射あるいはゆるやかに滴下することにより添加し、反応させる方法であり、例えば、図1に示すように、前記金属イオン源を含むA液と、前記炭酸源を含むB液とを、同時にC液に添加し、該C液の液中でこれらを反応させる方法である。
前記ダブルジェット法による前記金属イオン源及び前記炭酸源のモル添加速度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、最終生成物の化学量論比となるようにモル添加速度を決定するのが好ましく、本発明では、等モル添加速度であるのが好ましい。
前記等モル添加速度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.001〜0.1mol/minが好ましい。
前記ダブルジェット法は、例えば、ダブルジェット反応晶析装置を用いて行うことができる。該装置は、反応容器中に攪拌翼を有し、攪拌翼の近傍に原料溶液を供給するノズルが具備されている。該ノズルの数は2本以上の複数本である。そして、ノズルから供給された前記金属イオン源(前記A液)と前記炭酸源(前記B液)とが攪拌翼による混合作用により高速に均一状態になり、前記C液中で瞬時に均一反応させることが可能である。
なお、ダブルジェット法における撹拌速度としては、500〜1500rpmが好ましい。
なお、ダブルジェット法における撹拌速度としては、500〜1500rpmが好ましい。
前記炭酸源が前記尿素である場合には、該尿素と前記金属イオン源とをウレアーゼを含む30℃以上の液中で反応させるのが好ましい。前記ウレアーゼが前記尿素の加水分解酵素であるため、前記尿素の加水分解が促進される。ここで、前記炭酸源が前記尿素である場合の炭酸塩の合成反応を以下に示すが、前記尿素の分解反応は、反応液が酸性であるかアルカリ性であるかによって反応式が異なる。即ち、尿素の水溶液は中性に近いため、前記金属イオン源の選択や酸やアルカリの添加によって系全体のpHが変化し、前記尿素の分解反応が変わってくる。
まず、酸性領域では、前記尿素の加水分解が下記式(1)のように行われる。
(NH2)2CO+3H2O→2NH4 ++OH−+CO2・・・・・式(1)
また、アルカリ性領域では、前記尿素の加水分解が下記式(2)のように行われる。
(NH2)2CO+2OH−→CO3 2−+2NH3・・・・・式(2)
そして、前記式(1)あるいは式(2)で示す加水分解中に発生する炭酸イオン(CO3 2−)と、例えば、電離したストロンチウムイオン(Sr2+)とが、下記式(3)のように反応し、前記炭酸塩としての炭酸ストロンチウム(SrCO3)が合成される。
Sr2++CO3 2−→SrCO3・・・・・式(3)
まず、酸性領域では、前記尿素の加水分解が下記式(1)のように行われる。
(NH2)2CO+3H2O→2NH4 ++OH−+CO2・・・・・式(1)
また、アルカリ性領域では、前記尿素の加水分解が下記式(2)のように行われる。
(NH2)2CO+2OH−→CO3 2−+2NH3・・・・・式(2)
そして、前記式(1)あるいは式(2)で示す加水分解中に発生する炭酸イオン(CO3 2−)と、例えば、電離したストロンチウムイオン(Sr2+)とが、下記式(3)のように反応し、前記炭酸塩としての炭酸ストロンチウム(SrCO3)が合成される。
Sr2++CO3 2−→SrCO3・・・・・式(3)
前記尿素と前記金属イオン源との反応温度は、30℃以上であることが必要であり、30℃〜55℃が好ましい。該反応温度が30℃未満であると、針状及び棒状のいずれかの形状を有する炭酸塩が得られず、球状又は楕円状の炭酸塩が生成されることがあり、55℃を超えると、前記尿素の加水分解酵素である前記ウレアーゼ自体が分解され、酵素としての機能が失われることがある。
前記炭酸源が炭酸アンモニウムである場合には、該炭酸アンモニウムと前記金属イオン源とを、30℃以上の液中で反応させるのが好ましい。反応温度が30℃未満であると、針状及び棒状のいずれかの形状を有する炭酸塩が得られず、球状又は楕円状、ひょうたん型などの炭酸塩が生成されることがある。
前記金属イオン源と前記炭酸源とを反応させる液中には、水を含むのが好ましい。したがって、前記金属イオン源と前記炭酸源とを反応させる液は、水溶液又は懸濁液であるのが好ましい。
更に、合成される炭酸塩の結晶の溶解度を下げることを目的として、前記液中に溶剤を含むのが好ましい。
前記溶剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールなどが好適に挙げられる。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記溶剤の添加量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、炭酸塩製造後の溶媒量の1〜80体積%が好ましく、10〜80体積%がより好ましい。
更に、合成される炭酸塩の結晶の溶解度を下げることを目的として、前記液中に溶剤を含むのが好ましい。
前記溶剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールなどが好適に挙げられる。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記溶剤の添加量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、炭酸塩製造後の溶媒量の1〜80体積%が好ましく、10〜80体積%がより好ましい。
−炭酸塩の物性−
本発明の炭酸塩の製造方法により製造される炭酸塩は、アスペクト比が1より大きいことが必要であり、針状及び棒状のいずれかの形状を有してなる。なお、前記アスペクト比は、前記炭酸塩の長さと直径との比を表し、その数値は大きいほど好ましい。
前記炭酸塩の平均粒子長さとしては、0.05〜30μmが好ましく、0.05〜5μmがより好ましい。該平均粒子長さが30μmを超えると、散乱の影響を大きく受けることがあり、光学用途への適応性が低下することがある。
また、〔平均粒子長さ±α〕の長さを有する炭酸塩の全炭酸塩における割合としては、60%以上が好ましく、70%以上がより好ましく、75%以上が更に好ましく、80%以上が特に好ましい。該割合が60%以上であると、粒子サイズの制御が高精度であると認められる。
ここで、前記αとしては、0.05〜1.0μmが好ましく、0.05〜0.8μmがより好ましく、0.05〜0.1μmが特に好ましい。
本発明の炭酸塩の製造方法により製造される炭酸塩は、アスペクト比が1より大きいことが必要であり、針状及び棒状のいずれかの形状を有してなる。なお、前記アスペクト比は、前記炭酸塩の長さと直径との比を表し、その数値は大きいほど好ましい。
前記炭酸塩の平均粒子長さとしては、0.05〜30μmが好ましく、0.05〜5μmがより好ましい。該平均粒子長さが30μmを超えると、散乱の影響を大きく受けることがあり、光学用途への適応性が低下することがある。
また、〔平均粒子長さ±α〕の長さを有する炭酸塩の全炭酸塩における割合としては、60%以上が好ましく、70%以上がより好ましく、75%以上が更に好ましく、80%以上が特に好ましい。該割合が60%以上であると、粒子サイズの制御が高精度であると認められる。
ここで、前記αとしては、0.05〜1.0μmが好ましく、0.05〜0.8μmがより好ましく、0.05〜0.1μmが特に好ましい。
−用途−
本発明の炭酸塩の製造方法により製造される炭酸塩は、アスペクト比が1より大きい、すなわち、球状ではなく、針状及び棒状のいずれかの形状を有するため、成形品内部での配向が少なく、等方性を示し、プラスチックの強化材、摩擦材、断熱材、フィルター等として有用である。
特に、延伸材料などの変形を施した複合材料においては、粒子が配向することによりその強度や光学特性を改良することが可能である。
本発明の炭酸塩の製造方法により製造される炭酸塩は、アスペクト比が1より大きい、すなわち、球状ではなく、針状及び棒状のいずれかの形状を有するため、成形品内部での配向が少なく、等方性を示し、プラスチックの強化材、摩擦材、断熱材、フィルター等として有用である。
特に、延伸材料などの変形を施した複合材料においては、粒子が配向することによりその強度や光学特性を改良することが可能である。
また、本発明の炭酸塩の製造方法により製造される炭酸塩(結晶)を複屈折性を有する光学ポリマーに分散させ、延伸処理を施して前記光学ポリマーの結合鎖と前記炭酸塩とを略平行に配向させると、前記光学ポリマーの結合鎖の配向によって生ずる複屈折性を、前記炭酸塩の複屈折性で打ち消すことができる。
前記延伸処理としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、一軸延伸が挙げられる。該一軸延伸の方法としては、必要に応じて加熱しながら、延伸機で所望の延伸倍率に延伸することが挙げられる。
前記延伸処理としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、一軸延伸が挙げられる。該一軸延伸の方法としては、必要に応じて加熱しながら、延伸機で所望の延伸倍率に延伸することが挙げられる。
複屈折性を有する光学ポリマーの固有複屈折率の一例としては、「ここまできた透明樹脂−ITに挑む高性能光学材料の世界−」(井出文雄著、工業調査会、初版)p.29に記載されている通りであり、具体的には下記表2に示す通りである。表2より、前記光学ポリマーは、正の複屈折性を有するものが多いことが認められる。また、前記炭酸塩として炭酸ストロンチウムを用い、例えば、前記光学ポリマーとしてのポリカーボネートに添加すると、該混合物の正の複屈折性を打ち消し、0にすることができるだけでなく、負にすることもできる。このため、光学部品、特に、偏向特性が重要で高精度が要求される光学素子に好適に使用することができる。
本発明の炭酸塩の製造方法によれば、配向複屈折性を有する針状及び棒状のいずれかの形状の炭酸塩を効率的かつ簡便に形成することができる。また、粒子サイズを制御可能で、一定の粒子サイズを有する炭酸塩を高い割合で得ることができる。
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明は下記実施例に何ら限定されるものではない。
(実施例1)
−炭酸塩の製造−
図1に示すように、前記金属イオン源としての1M硝酸ストロンチウム[Sr(NO3)2]溶液300mlをA液とし、前記炭酸源としての1M尿素[(NH2)2CO]水溶液300mlをB液とし、ウレアーゼ4.00gを溶解した水400mlをC液とし、前記A液及び前記B液を、ダブルジェット法により前記C液に滴下及び撹拌して、これらを反応温度50℃で反応させ、前記炭酸塩としての炭酸ストロンチウム結晶を得た。
ここで、ダブルジェット法による前記A液及び前記B液の滴下は、ダブルジェット反応装置を用い、滴下速度1ml/min、モル滴下速度0.001mol/minの等モル添加速度で行った。また、撹拌速度は500rpmで行った。
−炭酸塩の製造−
図1に示すように、前記金属イオン源としての1M硝酸ストロンチウム[Sr(NO3)2]溶液300mlをA液とし、前記炭酸源としての1M尿素[(NH2)2CO]水溶液300mlをB液とし、ウレアーゼ4.00gを溶解した水400mlをC液とし、前記A液及び前記B液を、ダブルジェット法により前記C液に滴下及び撹拌して、これらを反応温度50℃で反応させ、前記炭酸塩としての炭酸ストロンチウム結晶を得た。
ここで、ダブルジェット法による前記A液及び前記B液の滴下は、ダブルジェット反応装置を用い、滴下速度1ml/min、モル滴下速度0.001mol/minの等モル添加速度で行った。また、撹拌速度は500rpmで行った。
得られた炭酸ストロンチウム結晶を濾過により取り出し、乾燥させた。乾燥後の炭酸ストロンチウム結晶を、走査型電子顕微鏡(SEM)(日立製作所製、S−900)により観察した。このときのSEM写真を図2に示す。該SEM写真から、平均粒子長さ2.5μm程度の針状の炭酸ストロンチウム結晶が得られたことが判った。また、平均粒子長さ±αの長さ(α=1.0μm)を有する結晶の全結晶における割合は65%であった。結果を表3に示す。
(実施例2)
−炭酸塩の製造−
実施例1において、硝酸ストロンチウム溶液及び尿素水溶液の滴下速度を10ml/min、モル滴下速度を0.01mol/minに変えた以外は、実施例1と同様な方法により炭酸塩としての炭酸ストロンチウム結晶を製造した。
−炭酸塩の製造−
実施例1において、硝酸ストロンチウム溶液及び尿素水溶液の滴下速度を10ml/min、モル滴下速度を0.01mol/minに変えた以外は、実施例1と同様な方法により炭酸塩としての炭酸ストロンチウム結晶を製造した。
得られた炭酸ストロンチウム結晶を濾過により取り出し、乾燥させた。乾燥後の炭酸ストロンチウム結晶を、透過型電子顕微鏡(TEM)(日本電子製、JEM−1010)により観察した。このときのTEM写真を図3に示す。該TEM写真から、平均粒子長さ3.5μm程度の針状の炭酸ストロンチウム結晶が得られたことが判った。また、平均粒子長さ±αの長さ(α=1.0μm)を有する結晶の全結晶における割合は75%であった。結果を表3に示す。
(実施例3)
−炭酸塩の製造−
実施例1において、硝酸ストロンチウム溶液及び尿素水溶液の滴下速度を100ml/min、モル滴下速度を0.1mol/minに変えた以外は、実施例1と同様な方法により炭酸塩としての炭酸ストロンチウム結晶を製造した。得られた炭酸ストロンチウム結晶をSEM写真により観察した。各種測定結果を表3に示す。
−炭酸塩の製造−
実施例1において、硝酸ストロンチウム溶液及び尿素水溶液の滴下速度を100ml/min、モル滴下速度を0.1mol/minに変えた以外は、実施例1と同様な方法により炭酸塩としての炭酸ストロンチウム結晶を製造した。得られた炭酸ストロンチウム結晶をSEM写真により観察した。各種測定結果を表3に示す。
(実施例4)
−炭酸塩の製造−
実施例1において、前記炭酸源としての尿素を炭酸アンモニウムに代え、前記溶液Cにウレアーゼを添加しなかった以外は、実施例1と同様な方法により炭酸塩としての炭酸ストロンチウム結晶を製造した。得られた炭酸ストロンチウム結晶を、SEM写真により観察した。各種測定結果を表3に示す。
−炭酸塩の製造−
実施例1において、前記炭酸源としての尿素を炭酸アンモニウムに代え、前記溶液Cにウレアーゼを添加しなかった以外は、実施例1と同様な方法により炭酸塩としての炭酸ストロンチウム結晶を製造した。得られた炭酸ストロンチウム結晶を、SEM写真により観察した。各種測定結果を表3に示す。
(実施例5)
−炭酸塩の製造−
実施例4において、前記金属イオン源としての硝酸ストロンチウム溶液を、水酸化ストロンチウム溶液に代えた以外は、実施例4と同様にして炭酸塩としての炭酸ストロンチウム結晶を製造した。得られた炭酸ストロンチウム結晶をSEM写真により観察した。各種測定結果を表3に示す。
−炭酸塩の製造−
実施例4において、前記金属イオン源としての硝酸ストロンチウム溶液を、水酸化ストロンチウム溶液に代えた以外は、実施例4と同様にして炭酸塩としての炭酸ストロンチウム結晶を製造した。得られた炭酸ストロンチウム結晶をSEM写真により観察した。各種測定結果を表3に示す。
(実施例6)
−炭酸塩の製造−
実施例4において、前記金属イオン源としての硝酸ストロンチウム溶液を、塩化カルシウム溶液に代えた以外は、実施例4と同様な方法により前記炭酸塩としての炭酸カルシウム結晶を製造した。得られた炭酸カルシウム結晶をSEM写真により観察した。各種測定結果を表4に示す。
−炭酸塩の製造−
実施例4において、前記金属イオン源としての硝酸ストロンチウム溶液を、塩化カルシウム溶液に代えた以外は、実施例4と同様な方法により前記炭酸塩としての炭酸カルシウム結晶を製造した。得られた炭酸カルシウム結晶をSEM写真により観察した。各種測定結果を表4に示す。
(実施例7)
−炭酸塩の製造−
実施例4において、得られる結晶の溶解度を低下させることを目的として、前記溶液C中に前記溶剤としてのイソプロピルアルコール(IPA)を添加した以外は、実施例4と同様な方法により、前記炭酸塩としての炭酸ストロンチウム結晶を製造した。得られた炭酸ストロンチウム結晶をSEM写真により観察した。各種測定結果を表4に示す。
−炭酸塩の製造−
実施例4において、得られる結晶の溶解度を低下させることを目的として、前記溶液C中に前記溶剤としてのイソプロピルアルコール(IPA)を添加した以外は、実施例4と同様な方法により、前記炭酸塩としての炭酸ストロンチウム結晶を製造した。得られた炭酸ストロンチウム結晶をSEM写真により観察した。各種測定結果を表4に示す。
(比較例1)
−炭酸塩の製造−
実施例1において、硝酸ストロンチウム溶液及び尿素水溶液の滴下速度を10ml/minに、反応温度を25℃に、それぞれ変えた以外は実施例1と同様な方法により、炭酸ストロンチウム結晶を製造した。得られた炭酸ストロンチウム結晶をSEMにより観察した。このときのSEM写真を図4に示す。該SEM写真より、平均粒子長さ9.0μm程度の球状の炭酸ストロンチウム結晶の凝集体が得られたことが判った。また、平均粒子長さ±αの長さ(α=1.0μm)を有する結晶の全結晶における割合は63%であった。結果を表4に示す。
−炭酸塩の製造−
実施例1において、硝酸ストロンチウム溶液及び尿素水溶液の滴下速度を10ml/minに、反応温度を25℃に、それぞれ変えた以外は実施例1と同様な方法により、炭酸ストロンチウム結晶を製造した。得られた炭酸ストロンチウム結晶をSEMにより観察した。このときのSEM写真を図4に示す。該SEM写真より、平均粒子長さ9.0μm程度の球状の炭酸ストロンチウム結晶の凝集体が得られたことが判った。また、平均粒子長さ±αの長さ(α=1.0μm)を有する結晶の全結晶における割合は63%であった。結果を表4に示す。
(比較例2)
−炭酸塩の製造−
実施例1において、硝酸ストロンチウム溶液及び尿素水溶液の滴下速度を10ml/minに代え、ウレアーゼ4.00gを溶解した水400ml(前記C液)に、更に分散剤としてゼラチン3質量%を添加した以外は、実施例1と同様な方法により、炭酸ストロンチウム結晶を製造した。得られた炭酸ストロンチウム結晶をSEMにより観察した。このときのSEM写真を図5に示す。該SEM写真より、平均粒子長さ6.0μm程度のひょうたん型の炭酸ストロンチウム結晶が得られたことが判った。また、平均粒子長さ±αの長さ(α=0.8μm)を有する結晶の全結晶における割合は44%であった。結果を表4に示す。
−炭酸塩の製造−
実施例1において、硝酸ストロンチウム溶液及び尿素水溶液の滴下速度を10ml/minに代え、ウレアーゼ4.00gを溶解した水400ml(前記C液)に、更に分散剤としてゼラチン3質量%を添加した以外は、実施例1と同様な方法により、炭酸ストロンチウム結晶を製造した。得られた炭酸ストロンチウム結晶をSEMにより観察した。このときのSEM写真を図5に示す。該SEM写真より、平均粒子長さ6.0μm程度のひょうたん型の炭酸ストロンチウム結晶が得られたことが判った。また、平均粒子長さ±αの長さ(α=0.8μm)を有する結晶の全結晶における割合は44%であった。結果を表4に示す。
表3〜4の結果より、実施例1〜7で得られた炭酸塩は、アスペクト比が1より大きく、形状が針状であることが認められた。また、実施例1〜7の炭酸塩の製造方法によれば、粒子サイズを制御可能で、一定の粒子サイズを有する炭酸塩が高い割合で得られることが確認された。
(比較例3)
−炭酸塩の製造−
実施例1において、硝酸ストロンチウム溶液(前記A液)及び尿素水溶液(前記B液)を、ウレアーゼ4.00gを溶解させた水溶液(前記C液)にダブルジェット法により滴下及び攪拌させる際に、ダブルジェット反応装置を用いないで、手動で攪拌することにより混合させて炭酸ストロンチウム結晶を製造した。得られた炭酸ストロンチウム結晶をSEMにより観察した。その結果、一部に針状組織を有する平均粒子長さが10μm以上の凝集したストロンチウム結晶が多分散な状態で得られたことが判った。なお、炭酸ストロンチウム結晶の粒子サイズが大きく、しかも該粒子サイズの分散が広範囲にわたっていたため、他の比較例のように詳細な定量を行わなかった。
−炭酸塩の製造−
実施例1において、硝酸ストロンチウム溶液(前記A液)及び尿素水溶液(前記B液)を、ウレアーゼ4.00gを溶解させた水溶液(前記C液)にダブルジェット法により滴下及び攪拌させる際に、ダブルジェット反応装置を用いないで、手動で攪拌することにより混合させて炭酸ストロンチウム結晶を製造した。得られた炭酸ストロンチウム結晶をSEMにより観察した。その結果、一部に針状組織を有する平均粒子長さが10μm以上の凝集したストロンチウム結晶が多分散な状態で得られたことが判った。なお、炭酸ストロンチウム結晶の粒子サイズが大きく、しかも該粒子サイズの分散が広範囲にわたっていたため、他の比較例のように詳細な定量を行わなかった。
本発明の炭酸塩の製造方法は、粒子サイズを制御可能で、一定の粒子サイズを有する炭酸塩を高い割合で効率的かつ簡便に製造することができる。
本発明の炭酸塩の製造方法により製造される炭酸塩は、アスペクト比が1より大きく、針状及び棒状のいずれかの形状を有するため、成形品内部での配向が少なく、等方性を示し、プラスチックの強化材、摩擦材、断熱材、フィルターなどに好適に使用することができる。特に、延伸材料などの変形を施した複合材料においては、粒子が配向することによりその強度や光学特性を改良することが可能である。
また、本発明の炭酸塩の製造方法により製造される炭酸塩(結晶)を複屈折性を有する光学ポリマーに分散させ、延伸処理を施して前記光学ポリマーの結合鎖と前記炭酸塩とを略平行に配向させると、前記光学ポリマーの結合鎖の配向によって生ずる複屈折性を、前記炭酸塩の複屈折性で打ち消すことができる。このため、光学部品、特に、偏向特性が重要で高精度が要求される光学素子に好適に使用することができる。
本発明の炭酸塩の製造方法により製造される炭酸塩は、アスペクト比が1より大きく、針状及び棒状のいずれかの形状を有するため、成形品内部での配向が少なく、等方性を示し、プラスチックの強化材、摩擦材、断熱材、フィルターなどに好適に使用することができる。特に、延伸材料などの変形を施した複合材料においては、粒子が配向することによりその強度や光学特性を改良することが可能である。
また、本発明の炭酸塩の製造方法により製造される炭酸塩(結晶)を複屈折性を有する光学ポリマーに分散させ、延伸処理を施して前記光学ポリマーの結合鎖と前記炭酸塩とを略平行に配向させると、前記光学ポリマーの結合鎖の配向によって生ずる複屈折性を、前記炭酸塩の複屈折性で打ち消すことができる。このため、光学部品、特に、偏向特性が重要で高精度が要求される光学素子に好適に使用することができる。
Claims (10)
- Sr2+イオン、Ca2+イオン、Ba2+イオン、Zn2+イオン、及びPb2+イオンから選択される少なくとも1種の金属イオンを含む金属イオン源と炭酸源とをダブルジェット法により液中で反応させてアスペクト比が1より大きく、針状及び棒状のいずれかの形状を有する炭酸塩を製造することを特徴とする炭酸塩の製造方法。
- 炭酸源が尿素であり、該尿素と金属イオン源とをウレアーゼを含む30℃以上の液中で反応させる請求項1に記載の炭酸塩の製造方法。
- 尿素と金属イオン源とを30〜55℃の液中で反応させる請求項2に記載の炭酸塩の製造方法。
- 炭酸源が炭酸アンモニウムであり、該炭酸アンモニウムと金属イオン源とを30℃以上の液中で反応させる請求項1に記載の炭酸塩の製造方法。
- ダブルジェット法が、金属イオン源と炭酸源とを等モル添加速度で滴下することにより行われる請求項1から4のいずれかに記載の炭酸塩の製造方法。
- 等モル添加速度が、0.001〜0.1mol/minである請求項5に記載の炭酸塩の製造方法。
- 金属イオン源が、NO3 −、Cl−、及びOH−の少なくともいずれかを含む請求項1から6のいずれかに記載の炭酸塩の製造方法。
- 液中に水を含む請求項1から7のいずれかに記載の炭酸塩の製造方法。
- 液中に溶剤を含む請求項1から8のいずれかに記載の炭酸塩の製造方法。
- 溶剤が、メタノール、エタノール、及びイソプロピルアルコールから選択される少なくとも1種である請求項9に記載の炭酸塩の製造方法。
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