JP2008247692A - 炭酸塩及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】金属イオン源を含むアルコール液中に、炭酸源を含有する水溶液を添加する工程を少なくとも含み、前記炭酸源と前記金属イオン源とを反応させる際にアルカリ剤を添加する炭酸塩の製造方法である。金属イオン源における金属イオンがSr2+である態様、炭酸源を含有する水溶液中にアルカリ剤を添加する態様、炭酸源を含有する水溶液中にアルコールを添加する態様などが好ましい。
【選択図】図1B
Description
炭酸塩の結晶形としては、カラサイト、アラゴナイト、バテライトなどが挙げられるが、これらの中でも、アラゴナイトは針状であり、強度や弾性率に優れる点で、様々な用途に有用である。
しかし、前記特許文献1に記載の炭酸塩の製造方法では、得られる炭酸塩の長さが30μm〜60μmと大きいだけでなく、粒子サイズの分布幅が広く、所望の粒子サイズに制御した炭酸塩を得ることができないという問題がある。また、前記特許文献2に記載の炭酸塩の製造方法を用いても、長さが20μm〜30μmの大きな粒子しか得ることができない。更に、前記特許文献3に記載の炭酸塩の製造方法では、製造工程において、加熱制御を行わなければならない。
尿素の熱分解反応は遅いので、生成する核の数が少なくなってしまう。アスペクト比の大きな針状粒子は得られるが、粒子は大きくなってしまう(Figure 1c)。また、酵素を用いて尿素分解を行った場合は、そもそも粒子が球状形態となってしまうが、粒子中に酵素(たんぱく質)が含まれてしまうので、この粒子を最終的な材料に導入した際にコンタミ等の影響が懸念される。
具体的には、Sr2+イオン、Ca2+イオン、Ba2+イオン、Zn2+イオン、及びPb2+イオンから選択される少なくとも1種の金属イオンを含む金属イオン源と炭酸源とを液中で反応させて、アスペクト比が1より大きい形状を有する炭酸塩を製造する方法であって、炭酸塩粒子数を増加させる炭酸塩粒子数増加工程と、該炭酸塩粒子の体積のみを増加させる炭酸塩粒子体積増加工程とを含む炭酸塩の製造方法であり、サイズや形態の揃った粒子を得るためには、粒子数増加工程と、粒子体積増加工程を明確に分離することが重要であることを規定している。
しかし、単に上述した工程の分離を実現しても、はじめの粒子数増加工程で、微細な粒子を得ていなければ、最終的に小さなサイズの粒子を得ることは難しく、少なくともサブμmレベルでなければ、透明な高分子膜中に添加し、提供することが実質的に難しくなってしまうという課題がある。
<1> 金属イオン源を含むアルコール液中に、炭酸源を含有する水溶液を添加する工程を少なくとも含む炭酸塩の製造方法であって、
前記炭酸源と前記金属イオン源とを反応させる際にアルカリ剤を添加することを特徴とする炭酸塩の製造方法である。
<2> 金属イオン源における金属イオンがSr2+である前記<1>に記載の炭酸塩の製造方法である。
<3> 炭酸源を含有する水溶液中にアルカリ剤を添加する前記<1>から<2>のいずれかに記載の炭酸塩の製造方法である。
<4> アルカリ剤が、NaOH、KOH、及びLiOHから選択される少なくとも1種を含む前記<1>から<3>のいずれかに記載の炭酸塩の製造方法である。
<5> 炭酸源を含有する水溶液中にアルコールを添加する前記<1>から<4>のいずれかに記載の炭酸塩の製造方法である。
<6> 炭酸源を含有する水溶液の添加が、少なくとも2つの異なる温度で、低温から高温の順に行われる前記<1>から<5>のいずれかに記載の炭酸塩の製造方法である。
<7> 炭酸源を含有する水溶液の添加が、10℃以下の温度と、30℃以上の温度とで行われる前記<1>から<6>のいずれかに記載の炭酸塩の製造方法である。
<8> 金属イオン源が、ストロンチウムの水酸化物、塩化物、及び硝酸塩から選択される少なくとも1種を含み、かつ炭酸源が、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、及び炭酸アンモニウムから選択される少なくとも1種を含む前記<1>から<7>のいずれかに記載の炭酸塩の製造方法である。
<9> 前記<1>から<8>のいずれかに記載の製造方法により製造されることを特徴とする炭酸塩である。
<10> 平均アスペクト比が2以上であり、平均長径が1μm未満である前記<9>に記載の炭酸塩である。
<11> 平均長径が200nm未満で、該平均長径の変動係数が45%以下であり、かつ平均短径が65nm未満で、該平均短径の変動係数が20%以下であることを特徴とする炭酸塩である。
本発明の炭酸塩の製造方法は、金属イオン源を含むアルコール液中に、炭酸源を含有する水溶液を添加する工程を少なくとも含んでなり、更に必要に応じてその他の工程を含んでなる。
本発明の炭酸塩は、本発明の炭酸塩の製造方法により製造される。
以下、本発明の炭酸塩の製造方法の説明を通じて、本発明の炭酸塩の詳細についても明らかにする。
前記金属イオン源としては、金属イオンを含む限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記炭酸源と反応して、カルサイト、アラゴナイト、バテライト、及びアモルファスのいずれかの形態を有する炭酸塩を形成するものが好ましく、アラゴナイト型の結晶構造を有する炭酸塩を形成するものが特に好ましい。
前記アラゴナイト型の結晶構造は、CO3 2−ユニットで表され、該CO3 2−ユニットが積層されて針状及び棒状のいずれかの形状を有する炭酸塩を形成する。このため、該炭酸塩が、後述する延伸処理により、任意の一方向に延伸されると、その延伸方向に粒子の長軸方向が一致した状態で結晶が並ぶ。
また、表1にアラゴナイト型鉱物の屈折率を示す。表1に示すように、前記アラゴナイト型の結晶構造を有する炭酸塩は、複屈折率δが大きいため、配向複屈折性を有するポリマーへのドープに好適に使用することができる。
これらの中でも、ストロンチウムの水酸化物、塩化物、及び硝酸塩から選択される少なくとも1種が特に好ましい。
炭酸ストロンチウムを作製する際には、イオン源として、Sr(OH)2・8H2Oが特に好ましい。
前記金属源を含むアルコール液におけるアルコールとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えばメタノール、エタノール、イソプロピルアルコールなどが挙げられる。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
なお、前記金属源を含むアルコール液中には、水を含んでいてもよいが、可能な限りアルコールを多く含んでいることが好ましく、反応させる前においては金属源を含むアルコール液は水を含まない(アルコール100%)ことが特に好ましい。
前記炭酸源としては、CO3 2−イオンを生ずるものである限り特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、炭酸アンモニウム[(NH4)2CO3]、炭酸ナトリウム[Na2CO3]、炭酸水素ナトリウム[NaHCO3]、炭酸カリウム[KHCO3]、炭酸ガス、尿素[(NH2)2CO]などが好適に挙げられる。これらの中でも、炭酸アンモニウム[(NH4)2CO3]、炭酸ナトリウム[Na2CO3]、炭酸カリウム[KHCO3]が特に好ましい。
前記アルカリ剤の添加は、前記炭酸源と前記金属イオン源とを反応させる際であれば特に制限はなく、炭酸源を含有する水溶液中にアルカリ剤を添加してもよく、アルカリ剤を独立に添加してもよいが、濃度(pH)をできるだけ不均一にしないためには、予め混合した形、つまり、前記炭酸源を含有する水溶液中にアルカリ剤を添加する方が特に好ましい。
ここで、図7は、炭酸ストロンチウムの溶解度積値を用いて計算した溶解度曲線(溶媒:水)と実際に市販の炭酸ストロンチウム粒子(和光純薬工業株式会社製)を、pHを変化させた水溶液中に分散させ、固形の炭酸ストロンチウムを除去(ろ過処理)して得られる過飽和溶液をICP発光分析にかけて定量した結果である(実験値)。炭酸ストロンチウムの溶解度は、pHが上昇するほど低下することがわかっている。概ねpH10以上でほぼ溶解度の低下が限界に達するので、pH10以上を維持した状態での析出を行うことが、微細化に結びつくと考えられる。
前記炭酸源を含有する水溶液におけるアルコールの含有量は、95体積%以下が好ましく、90体積%以下がより好ましい。前記アルコールの含有量が95体積%を超えると、粒子が析出しやすくなるので、平均アスペクト比が小さなままとなることがある。
前記金属イオン源と炭酸源とを液中で反応させる方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、反応性の観点から、金属イオン源と炭酸源とを、液中で反応させる方法としては、以下に説明するシングルジェット法が特に好ましい。
前記シングルジェット法は、前記金属イオン源及び前記炭酸源のいずれか一方を他方の液面上又は液中に噴射により添加し、反応させる方法である。
前記シングルジェット法は、例えば、シングルジェット反応晶析装置を用いて行うことができる。該装置は反応容器中に攪拌翼を有し、攪拌翼の近傍に原料溶液を供給するノズルが具備されている。ノズルは1本でよいが、2本以上でも構わない。例えば、図8に示すように、ノズルから噴射された炭酸源(B液)をタンク内の金属イオン源(A液)に添加することにより、反応させることができる。
前記シングルジェット法による前記金属イオン源及び前記炭酸源のモル添加速度は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、最終生成物の化学量論比となるようにモル添加速度を決定するのが好ましい。前記モル添加速度は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
本発明においては、選択するモル添加速度によっては、シングルジェット法というよりはシングルアディション法と表現する方が適切な表現となる場合もあるが、実験方法に違いが生じるわけではない。
なお、シングルジェット法における撹拌速度は、500rpm〜1,500rpmが好ましい。
前記炭酸塩粒子数増加工程としては、炭酸塩を形成した後、その粒子数を増やせる限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、金属イオン源と炭酸源の少なくとも一方を、所定の反応温度の液中に添加後、混合する工程が挙げられる。より具体的な好ましい工程としては、シングルジェット法により反応させる場合として、例えば、金属イオン源を含む水溶液及び懸濁液のいずれかを、所定の反応温度に保ちながら、炭酸源を含む水溶液を、所定の添加速度により添加後、混合する添加混合工程が挙げられる。
前記反応温度は、−10℃〜40℃であることが好ましく、1℃〜40℃がより好ましい。該炭酸塩粒子数増加工程の温度が−10℃より低いと、針状及び棒状のいずれかの形状を有する炭酸塩が得られず、球状又は楕円状の炭酸塩が生成されることがあり、40℃より高いと、一次粒子のサイズが大きくなってしまい、ナノサイズ領域でアスペクト比が1より大きい形状を有する炭酸塩が得られないことがある。
前記添加速度は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
なお、前記金属イオン及び炭酸源は、例えば、前記シングルジェット法により反応させる場合には、いずれか一方を他方に添加中あるいは添加後、混合すればよい。
前記炭酸塩粒子体積増加工程としては、前記炭酸塩粒子数を増やさずに体積のみを増やせる限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、金属イオン源及び炭酸源の少なくとも一方を、該炭酸塩粒子数増加工程の反応温度以上の温度条件下で、かつ前記炭酸塩粒子数増加工程より遅い速度で添加後、混合する工程が挙げられる。なお、前記炭酸塩粒子体積増加工程において、炭酸塩粒子数を増やさないとは、炭酸塩粒子数増加工程終了後の炭酸塩粒子数に比して、炭酸塩粒子体積増加工程後の炭酸塩粒子数が40%を超えて増加していないことを表し、30%を超えて増加していないことが好ましく、20%を超えて増加していないことがより好ましい。
より具体的な好ましい工程としては、例えば、前記炭酸源を含む水溶液及びガスのいずれかを、前記炭酸塩粒子数増加工程の反応温度以上の温度条件下で添加後、混合する添加混合工程が挙げられる。
前記反応温度は、−10℃以上であることが好ましく、1℃〜40℃がより好ましい。前記反応温度が−10℃より低いと、使用する溶媒に制約を受けるため、粒子形成後の取り扱いが面倒になることがある。
前記添加速度は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
また、前記炭酸塩粒子数増加工程において、金属イオン源のモル数(a)を、炭酸源のモル数(b)より多くなるようにして反応させることにより炭酸塩粒子を形成した場合には、高アスペクト比を有する炭酸塩を得る観点から、該金属イオン源のモル数(a)と炭酸源のモル数(b)との差以上のモル数の炭酸源を反応させることにより前記炭酸塩粒子の体積を増加させるのが好ましい。
また、前記炭酸塩粒子体積増加工程において反応させる炭酸源としては、冒頭で述べた炭酸源である限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、反応の効率性の観点から、上述の炭酸塩粒子数増加工程で反応させる炭酸源と、該炭酸塩粒子体積増加工程で反応させる炭酸源とが同一化合物であってもよい。
前記金属イオン源と前記炭酸源とを反応させる液中には、水を含むのが好ましい。したがって、前記金属イオン源と前記炭酸源とを反応させる液は、水溶液又は懸濁液であるのが好ましい。
更に、合成される炭酸塩の結晶の溶解度を下げることを目的として、前記液中に溶剤を含むのが好ましい。
前記溶剤としては、水に混和する溶剤であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、イソプロピルアルコール、2−アミノエタノール、2−メトキシエタノール、アセトン、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリドン、ジメチルスルホキシドなどが好適に挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、反応性の観点、及び材料の入手の容易の点から、エタノール、イソプロピルアルコール、及び2−アミノエタノールが特に好ましい。
前記溶剤の添加量は、炭酸塩製造後の溶媒量の1体積%〜50体積%が好ましく、5体積%〜40体積%がより好ましい。
本発明の炭酸塩の製造方法により製造される炭酸塩は、平均アスペクト比としては、2以上が好ましく、3.0〜20がより好ましい。前記平均アスペクト比が2未満になると、炭酸塩結晶が粒状又は球状に近くなり、前記樹脂中で透明樹脂の分子配向に伴って粒子配向が発現する確率が減少するか、又はまったく発現しなくなり、本発明の効果が得られなくなる。
なお、前記平均アスペクト比は、前記炭酸塩の長さと直径との比を表し、その数値は大きいほど好ましい。
前記平均長径は1μm未満が好ましく、300nm以下がより好ましく、200nm以下が更に好ましい。前記平均長径が1μmを超えると、光学樹脂材料中に添加した場合に、その透過率を大幅に低下させてしまうことがある。
ここで、前記長径及び短径の変動係数とは、長径及び短径の平均値に対する該長径及び短径の標準偏差の比で表され、以下の数式(1)で求められ、この数式(1)の値を100倍して表示したものである。
前記nの値は100以上と定義するが、nの値としては大きいことが好ましく、200以上がより好ましい。nの値が100未満となると、粒子の分散を正確に反映することができなくなる。
本発明の炭酸塩の製造方法により製造される炭酸塩は、平均アスペクト比が2より大きい、即ち、球状ではなく、針状及び棒状などの形状を有するため、プラスチックの強化材、摩擦材、断熱材、フィルター等として有用である。特に、延伸材料などの変形を施した複合材料においては、粒子が配向することによりその強度や光学特性を改良することが可能である。
前記延伸処理としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、一軸延伸が挙げられる。該一軸延伸の方法としては、必要に応じて加熱しながら、延伸機で所望の延伸倍率に延伸することが挙げられる。
以下の実施例及び比較例において、炭酸塩結晶の粒子サイズ、平均アスペクト比、変動係数は、充分に分散させた炭酸塩粒子を透過型電子顕微鏡(TEM)にて観察し、撮影した粒子画像ファイル情報を、株式会社マウンテック製、画像解析式粒度分布測定ソフトウエア「Mac−View」Ver.3を用いて1粒子ごとに測定して、集計することで求めた。
A液として、メタノール268.5ml中に、9.96gのSr(OH)2・8H2O(関東化学株式会社製)を添加し、攪拌したものを準備した。
B液として、純水750ml、メタノール250ml中に9.80gの炭酸アンモニウム(関東化学株式会社製)と5.07gのNaOH顆粒を溶解させたものを準備した。
次に、A液を恒温槽に入れ、5℃の状態を保ち、攪拌700rpmを維持したままの状態で、B液62.5mlを2本のノズルに分け、0.30ml/minの添加速度で添加した。添加完了後、純水61.25mlを添加し、このまま45℃に昇温し、更に攪拌回転数を900rpmに上昇し、維持させて、B液132.8mlを2本のノズルに分けて、0.90ml/minの添加速度で添加した。
得られた溶液を、遠心分離にかけ、回収できた沈殿を水洗し、その一部を透過型電子顕微鏡(TEM)で観察した。結果を図1A及び図1Bに示す。残りの沈殿を60℃で乾燥し、粉砕させた後、結晶相の同定を行うためにX線回折(XRD)測定を行った。また、図1A及び図1BのTEM写真の結果から、炭酸ストロンチウム粒子の粒子サイズ、平均アスペクト比、及び変動係数を測定した。それぞれの結果を表3に示す。
A液としては、実施例1と同じものを準備した。B液としては、メタノールを入れず、水のみでNaOH入りの炭酸アンモニウム水溶液を調製し、準備した。
次に、A液を恒温槽に入れ、8℃の状態を保ち、攪拌700rpmを維持したままの状態で、B液62.5mlを2本のノズルに分け、0.30ml/minの添加速度で添加した。添加完了後、純水61.25mlを添加し、8℃を維持した状態で、更に攪拌回転数を900rpmに上昇し、維持させて、B液132.8mlを2本のノズルに分けて、0.90ml/minの添加速度で添加した。
得られた溶液を、遠心分離にかけ、回収できた沈殿を水洗し、その一部を透過型電子顕微鏡(TEM)で観察した。結果を図2A及び図2Bに示す。残りの沈殿を60℃で乾燥し、粉砕させた後、結晶相の同定を行うためにX線回折(XRD)測定を行った。また、図2A及び図2BのTEM写真の結果から、炭酸ストロンチウム粒子の粒子サイズ、平均アスペクト比、及び変動係数を測定した。それぞれの結果を表3に示す。
実施例1において、B液中にNaOH顆粒を添加する代わりに、A液中に5.07gのNaOH顆粒を添加した以外は、実施例1と同様にして、炭酸ストロンチウム粒子を作製した。透過型電子顕微鏡(TEM)で観察した結果を図3A及び図3Bに示す。図3A及び図3BのTEM写真の結果から、炭酸ストロンチウム粒子の粒子サイズ、平均アスペクト比、変動係数を測定した。それぞれの結果を表3に示す。
表3、図3A及び図3Bに示したように、得られた沈殿は、炭酸ストロンチウム粒子とわかったが、粒子形態は多分散となり、平均アスペクト比が1より大きいといえない球状に近い粒子が含まれてしまっていた。
また、図5には実施例1における長径と短径との測定値をプロットした図を示す。図6には比較例1における長径と短径との測定値をプロットした図を示す。これらの結果から、図5の実施例1は図6の比較例1に比べて長径と短径とのバラツキが小さいことが分かった。
実施例1において、B液中にNaOH顆粒を添加しなかった以外は、実施例1と同様にして、炭酸ストロンチウム粒子を作製した。透過型電子顕微鏡(TEM)で観察した結果を図4A及び図4Bに示す。図4A及び図4BのTEM写真の結果から、得られた炭酸ストロンチウム粒子の粒子サイズ、平均アスペクト比、及び変動係数を測定した。それぞれの結果を表3に示す。
表3、図4A及び図4Bに示したように、得られた沈殿は、炭酸ストロンチウム粒子とわかった。粒子形態は多様な形態が混ざっていたが平均アスペクト比が1より大きい粒子が支配的であった。また、平均長径が1μmよりも大きな粒子が含まれていた。
本発明の炭酸塩の製造方法により製造される炭酸塩は、結晶性が高く、凝集しにくく、アスペクト比が1より大きい(特に、針状、棒状などである)ため、成形品内部での配向が少なく、等方性を示し、プラスチックの強化材、摩擦材、断熱材、フィルターなどに好適に使用することができる。特に、延伸などの変形を施した複合材料においては、粒子が配向することによりその強度や光学特性を改良することが可能である。
また、本発明の炭酸塩の製造方法により製造される炭酸塩(結晶)を複屈折性を有する光学ポリマーに分散させ、延伸処理を施して前記光学ポリマーの結合鎖と前記炭酸塩とを略平行に配向させると、前記光学ポリマーの結合鎖の配向によって生ずる複屈折性を、前記炭酸塩の複屈折性で打ち消すことができる。このため、光学部品、特に、偏向特性が重要で高精度が要求される光学素子に好適に使用することができる。
Claims (11)
- 金属イオン源を含むアルコール液中に、炭酸源を含有する水溶液を添加する工程を少なくとも含む炭酸塩の製造方法であって、
前記炭酸源と前記金属イオン源とを反応させる際にアルカリ剤を添加することを特徴とする炭酸塩の製造方法。 - 金属イオン源における金属イオンが、Sr2+である請求項1に記載の炭酸塩の製造方法。
- 炭酸源を含有する水溶液中にアルカリ剤を添加する請求項1から2のいずれかに記載の炭酸塩の製造方法。
- アルカリ剤が、NaOH、KOH、及びLiOHから選択される少なくとも1種を含む請求項1から3のいずれかに記載の炭酸塩の製造方法。
- 炭酸源を含有する水溶液中にアルコールを添加する請求項1から4のいずれかに記載の炭酸塩の製造方法。
- 炭酸源を含有する水溶液の添加が、少なくとも2つの異なる温度で、低温から高温の順に行われる請求項1から5のいずれかに記載の炭酸塩の製造方法。
- 炭酸源を含有する水溶液の添加が、10℃以下の温度と、30℃以上の温度とで行われる請求項1から6のいずれかに記載の炭酸塩の製造方法。
- 金属イオン源が、ストロンチウムの水酸化物、塩化物、及び硝酸塩から選択される少なくとも1種を含み、かつ炭酸源が、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、及び炭酸アンモニウムから選択される少なくとも1種を含む請求項1から7のいずれかに記載の炭酸塩の製造方法。
- 請求項1から8のいずれかに記載の製造方法により製造されることを特徴とする炭酸塩。
- 平均アスペクト比が2以上であり、平均長径が1μm未満である請求項9に記載の炭酸塩。
- 平均長径が200nm未満で、該平均長径の変動係数が45%以下であり、かつ平均短径が65nm未満で、該平均短径の変動係数が20%以下であることを特徴とする炭酸塩。
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