JP2007055866A - 炭酸ストロンチウム結晶及びその製造方法、並びに樹脂組成物 - Google Patents

炭酸ストロンチウム結晶及びその製造方法、並びに樹脂組成物 Download PDF

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Abstract

【課題】 配向複屈折性を有し、針状乃至棒状であり、樹脂中に存在させた際に、凝集が少なく、該樹脂の光透過率を低減させない炭酸ストロンチウム結晶及びその製造方法、並びに該炭酸ストロンチウム結晶を含有する樹脂組成物の提供。
【解決手段】 下記一般式(1)で表される化合物により表面修飾されていることを特徴とする炭酸ストロンチウム結晶である。一般式(1)におけるAが、脂肪族基又は芳香族基を表す態様が好ましい。
【化6】

ただし、前記一般式(1)中、Mは一価の金属原子又は水素を表し、Aは有機基を表す。
【選択図】 なし

Description

本発明は、配向複屈折性を有し、針状乃至棒状であり、樹脂中に存在させた際に、凝集が少なく、該樹脂の光透過率を低減させない炭酸ストロンチウム結晶及びその製造方法、並びに該炭酸ストロンチウム結晶を含有する樹脂組成物に関する。
従来より、炭酸カルシウム等の炭酸塩としては、例えば、ゴム、プラスチック、製紙などの分野で広く使用されている。しかし、近年、高機能性を付与した炭酸塩が次々と開発され、粒子形状や粒子径などに応じて、多用途、多目的に使用されるようになってきている。
前記炭酸塩の結晶形としては、例えば、カラサイト、アラゴナイト、バテライトなどが挙げられるが、これらの中でも、アラゴナイトは針状であり、強度や弾性率に優れる点で、様々な用途に有用である。
前記炭酸塩を製造する方法としては、例えば、(1)炭酸イオンを含む溶液と塩化物の溶液とを反応させて炭酸塩を製造する方法、(2)塩化物と炭酸ガスとの反応によって炭酸塩を製造する方法、などが一般的に知られている。また、アラゴナイト構造を有する針状の炭酸塩の製造方法としては、例えば、前記(1)の方法において、炭酸イオンを含む溶液と塩化物の溶液との反応を超音波照射下に行う方法が提案されている(特許文献1参照)。しかしながら、この炭酸塩の製造方法では、得られる炭酸塩の長さが30〜60μmと大きいだけでなく、粒子サイズの分布幅が広く、所望の粒子サイズに制御した炭酸塩を得ることができない。
また、Ca(OH)水スラリーに二酸化炭素を導入する方法において、予め、Ca(OH)水スラリー中に、種晶となる針状アラゴナイト結晶を入れ、該種晶を一定方向にのみ成長させる方法が提案されている(特許文献2参照)。しかしながら、この炭酸塩の製造方法を用いても、長さが20〜30μmの大きな粒子しか得ることができないという問題がある。
一方、近年、高分子材料は、軽さ、加工性の容易さ、量産性に優れている、射出成形や押出成形などの成形技術の適用が容易である等の理由から、従来、光学ガラスが使用されていた眼鏡レンズ、撮影用レンズ等の製品において大部分が高分子光学材料に置き換わってきている。また、オプトエレクトロニクス用の光学部品、特に、音響、映像、文字情報等を記録する光ディスク装置などのレーザ関連機器に用いる光学部品の材料として、高分子材料が広く用いられるようになっている。
ところで、複屈折性を有する高分子材料は、比較的高精度が要求されない光学部品に用いる場合には、特に問題となることはないが、近年、より高精度が要求される光学部品が求められてきており、例えば、書込/消去型の光磁気ディスクなどにおいては、複屈折性が大きな問題となる。複屈折性とは、光線がある種の物質を透過したときに、その偏光の状態によって、2つの光線に分けられることをいい、その物質にそれぞれの偏光の向きに対する2つの異なる屈折率の差が、複屈折率となる。
前記一般的な高分子材料に成形技術を施して製品化した光学部品の場合、複屈折性を示してしまうという問題がある。例えば、光磁気ディスクには、読取り又は書込みに半導体レーザ等が用いられており、光路中に複屈折性の光学部品(例えば、ディスク自体、レンズなど)が存在すると、読取り、又は書込みの精度に悪影響を及ぼすことがある。
そこで、複屈折性の低減を目的として、複屈折性の符号が互いに異なる高分子樹脂と無機微粒子とを用いた非複屈折光学樹脂材料が提案されている(特許文献3参照)。この非複屈折光学樹脂材料は、結晶ドープ法とよばれる手法により得られ、例えば、高分子樹脂中に多数の無機微粒子を分散させ、延伸などにより成形力を外部から作用させ、高分子樹脂の結合鎖と多数の無機微粒子とを略平行に配向させ、高分子樹脂の結合鎖と多数の無機微粒子とを略平行に配向させ、高分子樹脂の結合鎖の配向によって生ずる複屈折性を、符号の異なる無機微粒子の複屈折性で減殺したものである。
このように、結晶ドープ法を用いて非複屈折光学樹脂材料を得るには、結晶ドープ法に使用可能な無機微粒子が必要不可欠となる。この無機微粒子としては、高分子樹脂の結合鎖の配向に従って粒子を配向させるため、アスペクト比が大きい形状、例えば、針状乃至棒状の炭酸塩であることが必要となる。また、光学材料としての重要な性能である光透過率に影響を与えない炭酸塩粒子が、特に必要となることが認識されている。更に、光透過率に影響を与えないためには、光の散乱が極力少なくなるように、使用する光源の波長に比べて、平均粒子サイズが十分に小さな炭酸塩結晶が、特に必要となることが認識されている。
一方、光学樹脂等のポリマー中に粒子を分散させる方法として、層間挿入法、in−situ法、微粒子直接分散法、などが知られているが、これらの中でも粒子のサイズや形状をコントロールしやすく、工業的に大量生産が可能な公知の方法で作成した粒子をポリマー中に分散させる観点からは、微粒子直接分散法が好ましい。しかし、この方法は、粒子サイズを小さくするに従って表面エネルギーの影響が無視できなくなり、粒子間の凝集が非常に起こりやすくなる問題があった。
したがって、大サイズ粒子の混入の少ない単分散な小サイズ粒子について、凝集による光学樹脂材料の透明性の低化を防ぐ技術の開発が強く望まれているのが現状である。
特開昭59−203728号公報 米国特許第5164172号明細書 国際公開第01/25364号パンフレット 中條澄著「ポリマー系ナノコンポジット」工業調査会出版
本発明は、従来における前記問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、配向複屈折性を有し、針状乃至棒状であり、樹脂中に存在させた際に、凝集が少なく、該樹脂の光透過率を低減させない炭酸ストロンチウム結晶及びその製造方法、並びに該炭酸ストロンチウム結晶を含有する樹脂組成物を提供することを目的とする。
本発明者は、前記課題を解決するため鋭意検討を重ねた結果、以下の知見を得た。即ち、所定の化合物により表面修飾されている炭酸ストロンチウム結晶を樹脂に分散させると、凝集が少なく、該樹脂の光透過率を低減させないという知見である。
本発明は、本発明者らによる前記知見に基づくものであり、前記課題を解決するための手段は以下の通りである。即ち、
<1> 下記一般式(1)で表される化合物により表面修飾されていることを特徴とする炭酸ストロンチウム結晶である。
ただし、前記一般式(1)中、Mは一価の金属イオン又は水素イオンを表し、Aは有機基を表す。
<2> 一般式(1)におけるAが、脂肪族基又は芳香族基を表す前記<1>に記載の炭酸ストロンチウム結晶である。
<3> 一般式(1)で表される化合物の含有量が、炭酸ストロンチウム結晶に対して1.0〜5.0質量%である前記<1>から<2>のいずれかに記載の炭酸ストロンチウム結晶である。
<4> 比表面積が少なくとも4m/gである前記<1>から<3>のいずれかに記載の炭酸ストロンチウム結晶である。
<5> アスペクト比が1.5以上であり、長径の平均値が500nm以下であり、かつ下記数式(1)で表される長径の変動係数が0.40以下である前記<1>から<4>のいずれかに記載の炭酸ストロンチウム結晶である。
ただし、前記数式(1)中、rは、長径の平均値を表し、nは、長径を測定した粒子の数を表し、rは、i番目に測定した粒子の長径を表す。
<6> 形状が針状乃至棒状である前記<1>から<5>のいずれかに記載の炭酸ストロンチウム結晶である。
<7> 結晶成長中に下記一般式(1)で表される化合物により炭酸ストロンチウムを表面修飾する表面処理工程を含むことを特徴とする炭酸ストロンチウム結晶の製造方法である。
ただし、前記一般式(1)中、Mは一価の金属イオン又は水素イオンを表し、Aは有機基を表す。
<8> 表面処理工程がアルコール存在下で行われる前記<7>に記載の炭酸ストロンチウム結晶の製造方法である。
<9> 表面処理工程後に炭酸ストロンチウムを乾燥させる乾燥工程を含む前記<7>から<8>のいずれかに記載の炭酸ストロンチウム結晶の製造方法である。
<10> 前記<1>から<6>のいずれかに記載の炭酸ストロンチウム結晶と、樹脂とを含有することを特徴とする樹脂組成物である。
<11> 波長450nmの光透過率が、86%以上である前記<10>に記載の樹脂組成物である。
<12> 炭酸ストロンチウム結晶の含有量が、樹脂に対し、0.01質量%以上15質量%以下である前記<10>から<11>のいずれかに記載の樹脂組成物である。
<13> 樹脂が、ポリカーボネート樹脂である前記<10>から<12>のいずれかに記載の樹脂組成物である。
本発明によると、従来における前記問題を解決することができ、配向複屈折性を有し、針状乃至棒状であり、樹脂中に存在させた際に、凝集が少なく、該樹脂の光透過率を低減させない炭酸ストロンチウム結晶及びその製造方法、並びに該炭酸ストロンチウム結晶を含有する樹脂組成物を提供することができる。
(炭酸ストロンチウム結晶)
本発明の炭酸ストロンチウム結晶は、下記一般式(1)で表される化合物により表面修飾されていることを特徴とする。
ただし、前記一般式(1)中、Mは一価の金属イオン又は水素イオンを表し、Aは有機基を表す。
前記Mの金属イオンとしては、例えば、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオンなどが好ましいが、前記Mは、水素イオンであることがより好ましい。
前記有機基としては、特に制限はないが、例えば、脂肪族基、芳香族基が好ましく、脂肪族基がより好ましい。前記脂肪族基及び芳香族基は、置換されていてもよいし、無置換であってもよい。
前記一般式(1)で表される化合物の具体例としては、ベヘン酸、ステアリン酸、オレイン酸、ラウリン酸、カプロン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、マレイン酸、フマル酸、酒石酸、リノール酸、酪酸、樟脳酸、これらのナトリウム塩、カリウム塩等の塩などが好適に挙げられる。また、これらの混合物も好適に用いることができる。
前記炭酸ストロンチウム結晶が、一般式(1)で表される化合物を有すること、すなわち、一般式(1)で表される化合物により表面修飾されていることは、例えば、熱重量示差熱分析装置(TG−DTA)により加熱時の重量変化を測定したり、赤外線分光装置(IR)により波長を分析することにより確認することができる。
前記一般式(1)で表される化合物の含有量は、表面修飾を行うことができれば、特に制限はないが、炭酸ストロンチウム結晶に対して0.1〜10.0質量%が好ましく、0.5〜5.0質量%がより好ましく、1.0〜5.0質量%が特に好ましい。前記含有量が10.0質量%を超えると、透明樹脂と混合したときに、透明樹脂のガラス転移温度の低下を招いたり、膜強度を低下させたりすることがある。
前記炭酸ストロンチウム結晶は、Sr2+イオンと炭酸源とを液中で反応させることにより得ることができる。
−Sr2+イオン−
前記Sr2+イオンとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、炭酸源と反応して、カラサイト、アラゴナイト、バテライト、及びアモルファスのいずれかの形態を有する炭酸塩を形成するものが好ましく、アラゴナイト型(霰石型構造)の結晶構造を有する炭酸塩を形成するものが特に好ましい。
前記アラゴナイト型の結晶構造は、CO 2−ユニットで表され、該CO 2−ユニットが積層されて針状及び棒状のいずれかの形状を有する炭酸ストロンチウム結晶を形成する。このため、該炭酸塩が、後述する延伸処理により、任意の一方向に延伸されると、その延伸方向に粒子の長軸方向が一致した状態で結晶が並ぶことから、正の配向複屈折性を有する樹脂へ混合することで樹脂の配向複屈折を制御することができる。
Sr2+イオン源としては、Sr2+イオンを含む限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、硝酸塩、塩化物、水酸化物などが挙げられる。これらの中でも、反応性の観点から、水酸化物、塩化物が特に好ましい。
前記Sr2+イオン源としては、NO 、Cl、及びOHの少なくともいずれかを含むのが好ましく、このような具体例としては、Sr(NO、SrCl、Sr(OH)、これらの水和物などが好適に挙げられる。
−炭酸源−
前記炭酸源としては、CO 2−イオンを生ずるものである限り特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、炭酸ナトリウム[NaCO]、炭酸アンモニウム[(NHCO]、炭酸水素ナトリウム[NaHCO]、炭酸ガス、尿素[(NHCO]、炭酸カリウム[KCO]、炭酸水素カリウム[KHCO]、炭酸リチウム[LiCO]などが好適に挙げられる。これらの中でも、反応性の観点から、炭酸ナトリウム、炭酸アンモニウム、炭酸ガスが特に好ましい。
−比表面積、アスペクト比、長径の平均値、及び長径のバラツキ−
炭酸ストロンチウム結晶の比表面積は、少なくとも4m/gであることが必要であり、6m/g以上が好ましく、8m/g以上がより好ましい。前記比表面積が、4m/g未満であると、炭酸ストロンチウム結晶を製造した時点ですでに凝集が生じていることが多く、樹脂中に添加し分散させても、すでに凝集が生じていた炭酸ストロンチウム結晶が更に凝集を重ねてより大きな凝集体が発生し、光透過率の低下が著しくなることがある。
なお、前記比表面積は、市販の窒素吸着装置で行うことができ、例えば、日本ベル株式会社製の自動比表面積/細孔分布測定装置(BELSORP−mini)を用いて測定することができる。
前記炭酸ストロンチウム結晶のアスペクト比は、1.5以上であることが好ましく、3〜20がより好ましく、3〜8が特に好ましい。
前記アスペクト比が、1.5未満であると、炭酸ストロンチウム結晶が粒状又は球状に近くなり、前記樹脂中で透明樹脂の分子配向に伴って粒子配向が発現する確率が減少乃至ゼロとなり、本発明の効果が得られなくなることがあり、一方、20を超えると、本発明は、樹脂の分子配向に伴って粒子配向が発現することで分子配向に伴う配向複屈折を補償する技術に関するが、樹脂組成物製造時に炭酸ストロンチウム結晶が破壊され、結果的に炭酸ストロンチウム結晶の長軸方向が向きを揃えて配向しないことがある。
前記炭酸ストロンチウム結晶における、針状乃至棒状の長軸方向の径である、長径の平均値は、透明光学樹脂の透過率減少を極力小さくする必要があり、可視光線の波長(約400〜780nm)より短いことが好ましい。このため、前記炭酸ストロンチウム結晶の長径の平均値が、500nm以下であることが好ましく、300nm以下がより好ましく、200nm以下が特に好ましい。前記長径の平均値が、500nmを超えると、粒子によるMie散乱の割合が増加するため、樹脂の光透過率が大幅に減少し、透明光学材料としての価値が低下することがある。
前記長径のバラツキとしては、光散乱による透過率減少を起こす粒子の含有率を下げ、実質的に散乱の少ない状態を実現する観点からは、該長径の変動係数が0.40以下であることが好ましい。前記長径の変動係数とは、長径の平均値に対する該長径の標準偏差の比で表され、以下の数式(1)で求められる。
前記数式(1)において、rは、長径の平均値を表し、nは、長径を測定した粒子の数を表し、rは、i番目に測定した粒子の長径を表す。
前記nの値は100以上と定義するが、nの値は大きいことが好ましく、200以上がより好ましい。前記nの値が、100未満となると、粒子の分散を正確に反映することができなくなることがある。変動係数を百分率で表示する場合には、上記数式(1)の値を100倍した値として表示することができる。例えば、前記変動係数の値が、0.40以下である場合には、百分率表示では、40%以下と表示することができる。
前記長径の変動係数は小さいことが好ましく、具体的には、0.30以下が好ましく、0.20以下がより好ましい。前記長径の変動係数が、0.40を超えると、長径の平均値より長い粒子の混合比が増加し、樹脂の光透過率が低下する弊害が生じてしまうことがある。
前記炭酸ストロンチウム結晶における、長径、アスペクト比、変動係数等の測定方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、よく分散させた炭酸塩粒子を透過型電子顕微鏡(TEM)にて観察し、撮影した粒子写真をスキャナーで取り込んで画像ファイルとして保存し、この保存した画像ファイル情報を、株式会社マウンテック製、画像解析式粒度分布測定ソフトウエア「Mac−View」Ver.3を用いて1粒子ごとに測定して、集計することで求めることができる。
−分散径、及び含有量−
混練などによる樹脂と粒子の混合工程後の、炭酸ストロンチウム結晶が実際に樹脂中に存在している大きさの平均値を平均分散径とした場合、炭酸ストロンチウム結晶を樹脂に分散する際の平均分散径は、大きくとも500nmが好ましく、450nm以下がより好ましく、400nm以下が特に好ましい。前記平均分散径が、500nmを超えると、炭酸ストロンチウム結晶を含む樹脂の透明性を大きく低下させてしまうことがある。前記平均分散径は、樹脂中に存在する炭酸塩結晶を走査型電子顕微鏡(SEM)にて観察することにより求めることができる。
炭酸ストロンチウム結晶の含有量は、樹脂に対し、0.01質量%以上15質量%以下が好ましく、0.05質量%以上3質量%以下がより好ましく、0.1質量%以上2質量%以下が特に好ましい。前記含有量が、0.01質量%未満であると、粒子の添加による複屈折の調節効果が発現しないことがあり、15質量%を超えると、複屈折の調節効果はあっても光学用材料として必要な透明性を維持できなくなることがある。
(炭酸ストロンチウム結晶の製造方法)
前記炭酸ストロンチウム結晶の製造方法は、前記Sr2+イオン源と炭酸源とを液中で反応させる反応工程、該反応工程により得られたストロンチウム結晶を表面修飾する表面処理を含み、必要に応じて炭酸ストロンチウムを乾燥させる乾燥工程、適宜選択したその他の工程等を含む。
−反応工程−
前記反応工程では、ストロンチウム粒子数を増加させる処理(以下、単にストロンチウム粒子数増加処理という。)と、該ストロンチウム粒子の体積のみを増加させる処理(以下、単にストロンチウム粒子体積増加処理という。)とを、分離して行うことがある。
−−反応方法−−
前記Sr2+イオン源と炭酸源とを液中で反応させる方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、反応性の観点から、前記Sr2+イオン源と前記炭酸源とを、液中に同時に添加して反応させる方法などが挙げられる。
前記Sr2+イオン源と前記炭酸源とを、液中に同時に添加して反応させる方法としては、ダブルジェット法やシングルジェット法などが挙げられる。本発明の炭酸ストロンチウム結晶を得るためには、両方法とも用いることができるが、Sr2+イオン源としてストロンチウム水酸化物を用いる場合は、シングルジェット法の使用が好ましい。更に詳しくは、反応時の溶媒として水を含む場合、ストロンチウム水酸化物の水への溶解性が小さいために、濃度を上げていくと全てが溶解せずに、懸濁液となってしまい、この懸濁液を静置しておくと、ストロンチウム水酸化物は沈降する。ダブルジェット法やシングルジェット法で用いられる原料タンクには攪拌設備がついていないことが多いので、懸濁液をこの原料タンクに入れることは好ましくない。つまり、はじめから攪拌翼を具備した反応溶液中にこのストロンチウム水酸化物懸濁液を入れておくことが最も望ましく、この懸濁液中に炭酸源をノズルを用いて添加する方式が望ましいために、シングルジェット法の使用が好ましい。
−−−ダブルジェット法−−−
前記ダブルジェット法は、前記Sr2+イオン源と前記炭酸源とを、それぞれ反応用の液面上又は液中に噴射により添加し、反応させる方法であり、例えば、図1に示すように、前記Sr2+イオン源を含むA液と、前記炭酸源を含むB液とを、同時にC液に噴射し、該C液の液中でこれらを反応させる方法である。
前記ダブルジェット法による前記Sr2+イオン源及び前記炭酸源の添加速度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。また、モル添加速度として、最終生成物の化学量論比となるように決定するのが好ましく、本発明では等モル速度であるのが最も好ましい。最終生成物の形成までの過程を、炭酸ストロンチウム粒子数増加処理と炭酸ストロンチウム粒子体積増加処理を分離して行う場合には、それぞれの添加速度及び反応温度を変更させることがある。
前記ダブルジェット法は、例えば、特開平5−107668号公報に開示されているダブルジェット反応晶析装置を用いて行うことができる。該装置は、反応容器中に攪拌翼を有し、攪拌翼の近傍に原料溶液を供給するノズルが具備されている。該ノズルの数は2本以上の複数本である。そして、ノズルから供給された前記Sr2+イオン源(前記A液)と前記炭酸源(前記B液)とが攪拌翼による混合作用により高速に均一状態になり、前記C液中で瞬時に均一反応させることが可能である。
なお、ダブルジェット法における撹拌速度としては、連続的に変化する系内の濃度分布を均一にするとの観点から、500〜1,500rpmが好ましい。
−−−シングルジェット法−−−
前記シングルジェット法は、前記Sr2+イオン源及び前記炭酸源のいずれか一方を他方の液面上又は液中に噴射により添加し、反応させる方法である。
前記シングルジェット法も、例えば、上述したダブルジェット反応晶析装置を用いて行うことができる。但し、前記シングルジェット法では、ノズルは1本でよく、例えば、図2に示すように、ノズルから噴射された炭酸源(B液)をタンク内のSr2+イオン源(A液)に添加することにより、ダブルジェット法と同様にして反応させることができる。
前記シングルジェット法による前記Sr2+イオン源及び前記炭酸源の添加速度、及び前記シングルジェット法における攪拌速度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、ダブルジェット法による添加速度、及び前記ダブルジェット法における攪拌速度と同様の速度範囲が好ましい。ここでも、最終生成物の形成までの過程を、炭酸ストロンチウム粒子数増加処理と炭酸ストロンチウム粒子体積増加処理を分離して行う場合には、それぞれの添加速度及び反応温度を変更させてもよい。
−−炭酸ストロンチウム粒子数増加処理−−
前記炭酸ストロンチウム粒子数増加処理としては、炭酸ストロンチウムを形成した後、その粒子数を増加させることができる限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、Sr2+イオン源と炭酸源の少なくとも一方を、所定の反応温度の液中に添加及び混合する方法が挙げられる。
前記添加及び混合する方法としては、シングルジェット法により反応させる場合として、例えば、Sr2+イオン源を含む水溶液及び懸濁液のいずれかを、所定の反応温度に保ちながら、炭酸源を含む水溶液を、所定の添加速度により添加後、混合する添加混合方法が挙げられる。
前記反応温度としては、−10℃〜40℃であることが必要であり、1℃〜25℃が好ましい。該炭酸ストロンチウム粒子増加処理の温度が、−10℃未満であると、針状及び棒状のいずれかの形状を有する炭酸ストロンチウムが得られず、球状又は楕円状の炭酸ストロンチウムが生成されることがあり、40℃を超えると、一次粒子のサイズが大きくなってしまい、ナノサイズ領域でアスペクト比が2より大きい形状を有する炭酸ストロンチウムが得られないことがある。
前記添加速度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、具体的な速度としては、例えば、0.01ml/〜500ml/minが好ましく、0.01ml〜100ml/minがより好ましい。
−−炭酸ストロンチウム粒子体積増加処理−−
前記炭酸ストロンチウム粒子体積増加処理としては、前記炭酸ストロンチウム粒子数を増加させることなく体積のみを増加させることができる限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、Sr2+イオン源と炭酸源の少なくとも一方を、該炭酸ストロンチウム粒子数増加処理の反応温度以上の温度条件下で、かつ前記炭酸ストロンチウム粒子数増加処理より速い速度で添加及び混合する方法が挙げられる。なお、前記炭酸ストロンチウム粒子体積増加処理において、炭酸ストロンチウム粒子数を増加させないとは、炭酸ストロンチウム粒子数増加処理終了後の炭酸ストロンチウム粒子数に比して、炭酸ストロンチウム体積増加処理後の炭酸ストロンチウム粒子数が40%を超えて増加していないことを表し、30%を超えて増加していないことが好ましく、20%を超えて増加していないことがより好ましい。
前記添加及び混合する方法としては、例えば、前記炭酸源を含む水溶液及びガスのいずれかを、前記炭酸ストロンチウム粒子数増加処理の反応温度以上の温度条件下で、かつ前記炭酸ストロンチウム粒子数増加処理より速い速度で添加後、混合する添加混合方法が挙げられる。
前記反応温度としては、1℃〜60℃であることが好ましく、1℃〜55℃がより好ましい。前記反応温度が、1℃未満であると、使用する溶媒に制約を受けるため、粒子形成後の取扱いが面倒になることがあり、60℃を超えると、水以外の溶媒を用いている際に、これらの溶媒が蒸発してしまうことがある。
前記添加速度としては、前記炭酸ストロンチウム粒子数増加処理より速い速度であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、0.1〜100ml/minが好ましく、0.1〜50ml/minがより好ましい。前記添加速度が、前記炭酸ストロンチウム粒子数増加処理より遅いと、得られるアスペクトの形状を制御できないことがある。
−−pH−−
前記Sr2+イオン源と前記炭酸源とを反応させる液中のpHとしては、針状や棒状の炭酸ストロンチウム結晶を得やすい点で、アルカリ雰囲気下であることが好ましく、具体的には、9以上が好ましく、9.5以上がより好ましい。前記液中のpHが、9未満であると、本発明の炭酸ストロンチウム結晶が添加される樹脂の透明性が失われることがある。
また、前記Sr2+イオン源が、OH基を含む場合には、反応の開始から終了までの間、上記pHを保つことが好ましく、前記Sr2+イオン源が、OH基を含まない場合には、例えば、NaOH等のアルカリ雰囲気を形成する薬品を添加して、上記pHとなるように調整して反応を行うのが好ましい。
−−反応に供するSr2+イオン源及び炭酸源の濃度−−
反応に供する前記Sr2+イオン源中のSr2+イオン濃度及び前記炭酸源中の炭酸イオン濃度は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記Sr2+イオン源中のSr2+イオン濃度は、反応性の点で、0.05mol/L以上が好ましく、0.10mol/L以上がより好ましい。
前記Sr2+イオン源と前記炭酸源とを反応させる際には、有機溶剤存在下で反応させることが好ましい。
前記有機溶剤の種類としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、イソプロピルアルコール、2−アミノエタノール、2−メトキシエタノール、アセトン、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリドン、ジメチルスルホキシドなどが好適に挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。特に、これらの中でも、アルコール類が好ましく、反応性の観点、及び材料の入手の容易さという点から、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、及び2−アミノエタノールがより好ましい。
前記溶剤の添加量は、炭酸塩製造後の溶媒量の1〜80体積%が好ましく、20〜80体積%がより好ましい。
−表面処理工程−
本発明の炭酸ストロンチウム結晶の製造方法は、前記表面処理工程を含むことを特徴とする。
前記表面処理工程は、結晶成長中に前記一般式(1)で表される化合物(以下、単に表面処理剤ともいう。)により炭酸ストロンチウムを表面修飾する。
通常、溶液中での沈殿法による結晶成長では、イオン強度が高まると結晶粒子間の電気二重層による反発力が失われるために凝集を引き起こしやすく、高濃度で効率的に調製することが困難とされ、結晶粒子形成に非常に制約がある。また、乾燥し固体として回収する工程を含む場合には、凝集体が非常に強く結合しやすい性質がある。前記表面処理工程は、これら、溶液中で発生する凝集や、凝集体の結合、前記表面処理剤を用いることで防止することを意図している。
前記表面処理剤による表面修飾は、結晶成長中であれば、どのタイミングで行ってもよいが、乾燥前に行い、前記化合物を十分に結晶表面に吸着させることが好ましい。前記化合物を乾燥後に使用する場合には、炭酸ストロンチウム粒子の凝集を防止する効果を十分に得ることができなくなることがある。
前記表面処理工程は、表面処理剤を炭酸ストロンチウム結晶粒子に均一吸着させる観点から、アルコール存在下で行うことが好ましい。アルコールが存在しない場合には、前記表面処理剤の不均一吸着が起こり、乾燥後に凝集が起こることがある。
前記アルコールとしては、特に制限はないが、例えば、エタノール、メタノール、2−アミノエタノール、イソプロピルアルコールなどが好適に挙げられる。
前記表面処理剤の含有量については、既に述べた通りである。
前記表面処理剤による処理温度は、特に制限はないが、前記表面処理剤が溶解する温度が好ましく、10℃以上100℃以下がより好ましく、15℃以上95℃以下が特に好ましい。また、表面処理剤により表面修飾する際の系のpHは、6以上が好ましく、7以上がより好ましい。
−乾燥処理−
本発明の炭酸ストロンチウム結晶の製造方法では、前記表面処理工程を行った炭酸ストロンチウム結晶を、乾燥させる乾燥処理を行うことが好ましい。
前記炭酸ストロンチウム結晶を乾燥させる方法としては、特に制限はなく、適宜選択することができ、例えば、濾過、などが挙げられる。
−用途−
本発明の炭酸ストロンチウム結晶の製造方法によれば、所定の比表面積を有し、表面の吸着物が除去されて凝集のない、配向複屈折性を有するアスペクト比が大きい炭酸ストロンチウム結晶を効率的かつ簡便に形成することができる。
(樹脂組成物)
本発明の樹脂組成物は、前記本発明の炭酸ストロンチウム結晶と、樹脂とを含有し、更に必要に応じて、その他の成分を含有してなる。なお、前記炭酸ストロンチウム結晶については、既に述べた通りである。
−樹脂−
前記樹脂としては、一般に光学部品等に用いられるものであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、ある程度の透明性を有することが好ましいが、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン類;ポリスチレン等の芳香族ビニルポリマー類;ポリメチルメタクリレート等のポリ(メタ)アクリル酸エステル類;ポリフェニレンオキサイド、ポリカーボネート類、ポリビニルクロライド、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、シクロヘキシルメタクリレート、セルロースアシレート、脂環式ポリオレフィン類(例えば、ノルボルネン系ポリオレフィンなどの環状オレフィンの開環(共)重合体など);イソボルニルメタクリレート等の脂環式(メタ)アクリレートとメシルメタクリレート等の(メタ)アクリフェニレンエーテルとの共重合体、などを挙げることができる。これらの中でも、好ましい光学特性、物理特性を有するものとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、セルロースアシレート、ポリカーボネートを挙げることができ、斜め方向の入射光に対しても本発明の効果を十分に発現するポリカーボネートが最も好ましい。
−−波長450nmの光透過率−−
前記波長450nmの光透過率は、前記樹脂に前記炭酸ストロンチウム結晶を添加した樹脂組成物において、86%以上が好ましく、86.5%以上がより好ましく、87%以上が特に好ましい。前記光透過率が、86%未満であると、前記樹脂の透明度が低くなり、光学情報が低下してしまうことがある。
また、前記樹脂の膜の厚みを100μmとした場合において、前記炭酸ストロンチウム結晶を添加する前の前記樹脂における、波長450nmの光透過率をx%とし、前記炭酸ストロンチウム結晶を添加した後の前記樹脂における、波長450nmの光透過率をy%としたとき、y/xが、0.98以上であることが好ましく、0.99以上が特に好ましく、1が最も好ましい。前記y/xが、0.98未満であると、本発明の炭酸ストロンチウム結晶が添加される樹脂の透明性が失われることがある。
−炭酸ストロンチウム結晶を樹脂に分散させる方法−
前記炭酸ストロンチウム結晶を樹脂に分散させる方法は、本発明の目的を達成できる限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記炭酸ストロンチウム結晶を前記樹脂に混練することにより分散させることもできるし、重縮合反応させて前記樹脂を合成する際に、少なくとも重縮合反応が終了する前に前記炭酸ストロンチウム結晶を添加して、分散させることもできる。前記炭酸ストロンチウム結晶粒子と前記樹脂を混練により分散させる際の温度としては、使用する樹脂にもよるが、ポリカーボネートを主成分とする樹脂の場合には、例えば、200℃〜290℃が好ましく、220℃〜280℃がより好ましい。前記分散させる際の温度が、200℃未満であると、前記樹脂と前記炭酸ストロンチウムが混合しないことがあり、290℃を超えると、樹脂の物性を大きく変えてしまうことがある。
前記炭酸ストロンチウム結晶を分散された樹脂組成物の成型方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、射出成型、プレス成型、押出成型などが挙げられる。これらの成型方法は、単独で用いてもよいし、適宜組み合わせて用いてもよい。前記成型方法により得られた成型体の形態としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、シート状、膜状などの平面状、柱状、ブロック状などの不定形の立体状などが挙げられる。
前記射出成型する際の温度としては、使用する樹脂にもよるが、ポリカーボネートを主成分とする樹脂の場合には、150℃〜270℃が好ましく、150℃〜240℃がより好ましい。前記射出成型する際の温度が、150℃未満や270℃を超えると、目的とする成型体を得られないことがある。
前記プレス成型する際の温度及び圧力としては、150℃〜240℃及び15MPa〜45MPaが好ましく、160℃〜230℃及び10MPa〜40MPaがより好ましい。前記分散させる際の温度が、150℃未満であると、目的の膜厚までプレスできないことがあり、240℃を超えると、膜形態のサンプルを得られないことがある。前記分散させる際の圧力が、10MPa未満であると、目的の膜厚までプレスできないことがあり、40MPaを超えると、使用する膜厚調節用のスペーサーにもよるが、目標の膜厚にあわせられないことがある。
また、金型を用いず、押し出して連続的に成型品を得る押出成型によって、低コストでシートを作製してもよい。押出成型する際の温度としては、220℃〜280℃が好ましく、230℃〜270℃がより好ましい。前記押出成型する際の温度が、220℃未満であると、安定して樹脂が出てこないことがあり、280℃を超えると、膜の面状が非常に悪くなってしまうことがある。
前記成型されたシートを分子に配向を付与する方法としては、本発明の目的を達成できる限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、1軸延伸法によってもよいし、2軸延伸法によってもよい。2軸延伸の場合は、縦及び横方向に逐次又は同時に延伸することでもよい。成型されたシートを、所定のサイズに切り出してから、延伸してもよいし、成型の後、引き続いて延伸装置に送って延伸することもできる。
延伸の方法としては、例えば、射出成型又はプレス成型された厚み100μmのシートを、2軸延伸装置を用いて、165℃、3mm/minの条件で2倍の延伸を行って、光学用樹脂組成物のフイルムを得ることができる。また、押出成型によって得られたシートを、押し出された後、引き続いて2軸延伸装置に送って、165℃、3mm/minの条件で2倍の延伸をすることもできる。
−−用途−−
複屈折性を有する樹脂の固有複屈折率は、例えば、「ここまできた透明樹脂 −ITに挑む高性能光学材料の世界−」(井出文雄著、工業調査会、初版)p29に記載されており、下記表1に示す通りである。表1より、前記樹脂は、正の複屈折性を有するものが多いことが認められる。また、針状や棒状といったアスペクト比の大きな炭酸ストロンチウムを用い、例えば、光学ポリマーとしてのポリカーボネートに添加して延伸すると、ポリマーの分子の配向とともに炭酸塩粒子が配向する。例えば、「高分子先端材料 One Point 1 フォトニクスポリマー」(小池康博・多加谷明広著、共立出版初版)に記載されているように、配向状態で、ポリマーの複屈折と正負反対符号の複屈折を示す高アスペクト比の無機結晶を選択すれば、それぞれの複屈折が相殺しあう。よって、該ポリカーボネート樹脂の正の複屈折性を打ち消し、0にすることができるだけでなく、負にすることもできる。このため、前記樹脂組成物は、光学部品、特に、偏向特性が重要で高精度が要求される光学素子を構成する樹脂に好ましく使用することができる。
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明は下記実施例に何ら限定されるものではない。
(実施例1)
−炭酸ストロンチウム結晶の調製−
Sr2+イオン源としての0.25molの水酸化ストロンチウム水溶液650mlと、エタノール400mlとを混合して8℃に冷却した溶液に、炭酸源としての0.13molの炭酸アンモニウム水溶液650mLを攪拌混合して反応させた。反応液中のpHは12.6であった。
次いで、反応液を攪拌しながら、炭酸源としての炭酸ガスを、Sr2+イオン源より過剰に供給し、メタノールに溶解した表面処理剤としてのステアリン酸を炭酸ストロンチウムに対して2質量%となるように加え、十分に攪拌して表面修飾を行い、結晶成長を終了した。前記炭酸ストロンチウム結晶が、ステアリン酸により表面修飾されて、該ステアリン酸を有していることは、TG−DTA(エスエスアイナノテクノロジー(株)製)により確認した。
最後に、水洗を行って濾過後乾燥させ、炭酸ストロンチウム結晶T−1を得た。この結晶を透過型電子顕微鏡で観察し、株式会社マウンテック製、画像解析式粒度分布測定ソフトウエア「Mac−View」Ver.3を用いて150個の粒子の長径を測定したところ、アスペクト比が3.7、長径の平均値が340nm、該長径の下記数式(1)で求められる変動係数が0.32であった。さらに、粒子の比表面積測定については、日本ベル株式会社製の自動比表面積/細孔分布測定装置(BELSORP−mini)にて測定を行い、11m/gであった。
ただし、前記数式(1)中、rは、長径の平均値を表し、nは、長径を測定した粒子の数を表し、rは、i番目に測定した粒子の長径を表す。
−炭酸ストロンチウム結晶粒子入り樹脂ペレットの調製−
上記のように調製した炭酸ストロンチウム結晶T−1を、ポリカーボネート(分子量22000)に、1.0質量%となるように混合し、8時間120℃で加熱した後、220℃で十分に混練し、炭酸ストロンチウム結晶粒子入り樹脂混合ペレットを調製した。さらに、前記ペレットをプレス製膜により膜厚100μmとなるように膜を調製した。
−波長450nmの光透過率の測定−
上記のように調製したペレットについて、前記自動複屈折計(王子計測機器社製)を用いて波長450nmの光透過率(%)を測定した。結果を表2に示す。
−粒子分散性の評価−
上記のように調製したペレットの断面を走査型電子顕微鏡(日立製作所(株)製)にて、炭酸ストロンチウム結晶粒子の樹脂中への分散状態を観察し、分散状態を以下の基準で評価した。結果を表2に示す。
◎・・・・非常にきれいに分散されている。
○・・・・わずかに凝集が見られるが、実用上許容されるレベルである。
△・・・・凝集が多く観察され、実用的には問題がある。
×・・・・凝集が非常に多く発生している。
(実施例2)
実施例1の炭酸ストロンチウム結晶の調製において、ステアリン酸の添加量を4質量%に変えた以外は同様にして、炭酸ストロンチウム結晶T−2を調製した。炭酸ストロンチウム結晶T−2の粒子形状、比表面積は炭酸ストロンチウム結晶T−1と同等であった。
得られた炭酸ストロンチウム結晶T−2を混合し、実施例1と同様の方法で炭酸ストロンチウム結晶粒子入り樹脂ペレットを調製して、調製したペレットについて、波長450nmの光透過率(%)の測定及び粒子分散性の評価を行った。結果を表2に示す。
(実施例3)
実施例1の炭酸ストロンチウム結晶の調製において、エタノールを除き、ステアリン酸に等モルのNaOHを使用して懸濁液を作成した以外は同様にして、炭酸ストロンチウム結晶T−3を調製した。炭酸ストロンチウム結晶T−3の粒子形状、比表面積は炭酸ストロンチウム結晶T−1と同等であった。
得られた炭酸ストロンチウム結晶T−3を混合し、実施例1と同様の方法で炭酸ストロンチウム結晶粒子入り樹脂ペレットを調製して、調製したペレットについて、波長450nmの光透過率(%)の測定及び粒子分散性の評価を行った。結果を表2に示す。
(実施例4)
実施例1の炭酸ストロンチウム結晶の調製において、メタノールに溶解したステアリン酸を使用せずに濾過乾燥まで行い、その後、炭酸ストロンチウムとステアリン酸をメタノール中で攪拌し、炭酸ストロンチウム結晶表面にステアリン酸を吸着させ、再度、濾過乾燥させた以外は同様にして、炭酸ストロンチウム結晶T−4を調製した。炭酸ストロンチウム結晶T−4の粒子形状、比表面積は炭酸ストロンチウム結晶T−1と同等であった。
得られた炭酸ストロンチウム結晶T−4を混合し、実施例1と同様の方法で炭酸ストロンチウム結晶粒子入り樹脂ペレットを調製して、調製したペレットについて、波長450nmの光透過率(%)の測定及び粒子分散性の評価を行った。結果を表2に示す。
(比較例1)
実施例1の炭酸ストロンチウム結晶T−1の調製において、ステアリン酸を使用せずに炭酸ストロンチウム結晶H−1を調製した以外は同様にして、炭酸ストロンチウム結晶H−1を調製した。粒子形状、比表面積は炭酸ストロンチウム結晶T−1と同等であった。
得られた炭酸ストロンチウム結晶H−1を混合し、実施例1と同様の方法で炭酸ストロンチウム結晶粒子入り樹脂ペレットを調製して、調製したペレットについて、波長450nmの光透過率(%)の測定及び粒子分散性の評価を行った。結果を表2に示す。
(比較例2)
炭酸ストロンチウム結晶T−1の調製において、ステアリン酸の代わりにシランカップリング剤(3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)を2質量%添加した以外は同様にして、炭酸結晶ストロンチウムH−2を調製した。なお、粒子形状、比表面積は炭酸ストロンチウム結晶T−1と同等であった。
得られた炭酸ストロンチウム結晶H−2を混合し、実施例1と同様の方法で炭酸ストロンチウム結晶粒子入り樹脂ペレットを調製して、調製したペレットについて、波長450nmの光透過率(%)の測定及び粒子分散性の評価を行った。結果を表2に示す。
表2の結果から、実施例1〜4の炭酸ストロンチウム結晶では、表面処理剤として、脂肪酸であるステアリン酸を使用することにより、樹脂への分散が非常に良好で、高い透過率が実現できることが判った。特に、実施例1及び2の炭酸ストロンチウム結晶のように、アルコール存在下でステアリン酸により表面修飾する場合や、結晶成長中、特に乾燥工程の前にステアリン酸により表面修飾する場合に、非常に分散性がよく、透過率が高いことが判った。
(実施例5)
実施例1の炭酸ストロンチウム結晶の調製において、ステアリン酸の代わりに、パルミチン酸を2質量%となるように加えた以外は同様にして、炭酸ストロンチウム結晶T−5を調製した。炭酸ストロンチウム結晶T−5の粒子形状、比表面積は炭酸ストロンチウム結晶T−1と同等であった。
得られた炭酸ストロンチウム結晶T−5を混合し、実施例1と同様の方法で炭酸ストロンチウム結晶粒子入り樹脂ペレットを調製して、調製したペレットについて、波長450nmの光透過率(%)の測定及び粒子分散性の評価を行ったところ、樹脂への分散性が良好で、高い透過率が実現されていることが確認された。
(実施例6)
実施例1の炭酸ストロンチウム結晶の調製において、ステアリン酸の代わりに、ステアリン酸ナトリウムを2質量%となるように加えた以外は同様にして、炭酸ストロンチウム結晶T−6を調製した。炭酸ストロンチウム結晶T−6の粒子形状、比表面積は炭酸ストロンチウム結晶T−1と同等であった。
得られた炭酸ストロンチウム結晶T−6を混合し、実施例1と同様の方法で炭酸ストロンチウム結晶粒子入り樹脂ペレットを調製して、調製したペレットについて、波長450nmの光透過率(%)の測定及び粒子分散性の評価を行ったところ、樹脂への分散性が良好で、高い透過率が実現されていることが確認された。
(実施例7)
実施例1の炭酸ストロンチウム結晶の調製において、ステアリン酸の含有量を20質量%に変更した以外は同様にして、炭酸ストロンチウム結晶T−7を調製した。炭酸ストロンチウム結晶T−7の粒子形状、比表面積は炭酸ストロンチウム結晶T−1と同等であった。この炭酸ストロンチウム結晶T−7の粒子については、樹脂と混合した場合にガラス転移温度の動きが大きくなったが、高い透過率、樹脂への良好な分散性が確認された。
本発明の炭酸ストロンチウム結晶は、配向複屈折性を有し、針状乃至棒状であり、樹脂中に存在させた際に、凝集が少なく、該樹脂の光透過率を低減させないため、光学部品、特に、偏向特性が重要で高精度が要求される光学素子を構成する樹脂材料として好適に用いることができる。
本発明の炭酸ストロンチウム結晶の製造方法は、所定の比表面積を有し、表面の吸着物が除去されて凝集のない、配向複屈折性を有するアスペクト比が大きい炭酸塩を効率的かつ簡便に形成することができるため、例えば、本発明の炭酸ストロンチウム結晶の製造に好適に用いることができる。
本発明の樹脂組成物は、前記本発明の炭酸ストロンチウム結晶を含有するため、前記本発明の炭酸ストロンチウム結晶と同様の用途に好適に用いることができる。
図1は、ダブルジェット法による本発明の炭酸ストロンチウム結晶の製造方法における反応工程の一例を説明する工程図である。 図2は、シングルジェット法による本発明の炭酸ストロンチウム結晶の製造方法における反応工程の一例を説明する工程図である。

Claims (10)

  1. 下記一般式(1)で表される化合物により表面修飾されていることを特徴とする炭酸ストロンチウム結晶。
    ただし、前記一般式(1)中、Mは一価の金属イオン又は水素イオンを表し、Aは有機基を表す。
  2. 一般式(1)におけるAが、脂肪族基又は芳香族基を表す請求項1に記載の炭酸ストロンチウム結晶。
  3. 一般式(1)で表される化合物の含有量が、炭酸ストロンチウム結晶に対して1.0〜5.0質量%である請求項1から2のいずれかに記載の炭酸ストロンチウム結晶。
  4. 比表面積が少なくとも4m/gである請求項1から3のいずれかに記載の炭酸ストロンチウム結晶。
  5. アスペクト比が1.5以上であり、長径の平均値が500nm以下であり、かつ下記数式(1)で表される長径の変動係数が0.40以下である請求項1から4のいずれかに記載の炭酸ストロンチウム結晶。
    ただし、前記数式(1)中、rは、長径の平均値を表し、nは、長径を測定した粒子の数を表し、rは、i番目に測定した粒子の長径を表す。
  6. 形状が針状乃至棒状である請求項1から5のいずれかに記載の炭酸ストロンチウム結晶。
  7. 結晶成長中に下記一般式(1)で表される化合物により炭酸ストロンチウムを表面修飾する表面処理工程を含むことを特徴とする炭酸ストロンチウム結晶の製造方法。
    ただし、前記一般式(1)中、Mは一価の金属イオン又は水素イオンを表し、Aは有機基を表す。
  8. 表面処理工程がアルコール存在下で行われる請求項7に記載の炭酸ストロンチウム結晶の製造方法。
  9. 表面処理工程後に炭酸ストロンチウムを乾燥させる乾燥工程を含む請求項7から8のいずれかに記載の炭酸ストロンチウム結晶の製造方法。
  10. 請求項1から6のいずれかに記載の炭酸ストロンチウム結晶と、樹脂とを含有することを特徴とする樹脂組成物。
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CN109796630A (zh) * 2019-01-07 2019-05-24 卢氏国嵩莱纳米科技有限公司 一种塑料制品用二次改性轻质碳酸钙的制备方法

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