JP2006015952A - 車両の減速制御装置 - Google Patents

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Kazuyuki Shiiba
一之 椎葉
Kunihiro Iwatsuki
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Abstract

【課題】ブレーキを用いた車両の減速制御技術において、ブレーキの利用による効果が十分に得られる車両の減速制御装置を提供する。
【解決手段】ブレーキ200による制動と、変速機10を相対的に低速用の変速段又は変速比に変速する変速動作とにより減速制御を行う車両の減速制御装置であって、路面の滑り易さが所定値よりも大きくないとき(ステップSA10−N)には、路面の滑り易さが前記所定値よりも大きいとき(ステップSA10−Y)に比べて、前記ブレーキによる制動力に占める前記ブレーキにより後輪に加えられる制動力の割合が大きくされる。前記ブレーキによる制動力に占める前記ブレーキにより後輪に加えられる制動力の割合が大きい場合には、前記ブレーキにより前輪に加えられる制動力がゼロである場合が含まれることが可能である。
【選択図】 図4

Description

本発明は、車両の減速制御装置に関する。
コーナR、道路勾配、先行車との車間距離などの車両前方の状況に基づいて自動的に車両の減速制御が行われる場合に、ブレーキを作動させて車両の減速制御を行う技術が知られている。
また、自動変速機をエンジンブレーキを働かせる方向にマニュアルシフトする際に、ブレーキを作動させるものが知られている。そのような自動変速機とブレーキの協調制御装置として、特開昭63−38030号公報(特許文献1)に開示された技術がある。
上記特許文献1には、自動変速機(A/T)においてエンジンブレーキを動作するためのマニュアルシフトの際に、変速開始時から実際にエンジンブレーキが働くまでのニュートラル状態による空走を車両のブレーキを作動して防止する技術が開示されている。
特開昭63−38030号公報
上記のようなブレーキを用いた車両の減速制御技術において、ブレーキの詳細な制御内容の検討が不十分である。そのため、ブレーキの利用による効果が十分には得られていない。
例えば、発生させるべき目標の減速度(目標減速度)が小さい場合には、一般に、微小のブレーキ油圧を制御性良くコントロールすることは困難であることから、ブレーキの制御性が問題となる。この場合には、例えば、目標減速度に対して実際の減速度がオーバーシュートしたり(減速度が過大となる)、応答遅れ(所定のタイミングで減速度が発生しない)や、応答が速過ぎる(ショック)などの問題が生じることがある。
本発明の目的は、ブレーキを用いた車両の減速制御技術において、ブレーキの利用による効果が十分に得られる車両の減速制御装置を提供することである。
本発明の車両の減速制御装置は、ブレーキによる制動と、変速機を相対的に低速用の変速段又は変速比に変速する変速動作とにより減速制御を行う車両の減速制御装置であって、路面の滑り易さが所定値よりも大きくないときには、路面の滑り易さが前記所定値よりも大きいときに比べて、前記ブレーキによる制動力に占める前記ブレーキにより後輪に加えられる制動力の割合が大きくされることを特徴としている。
ここで、前記ブレーキによる制動力に占める前記ブレーキにより後輪に加えられる制動力の割合が大きい場合には、前記ブレーキにより前輪に加えられる制動力がゼロである場合が含まれることが可能である。
本発明の車両の減速制御装置は、ブレーキによる制動と、変速機を相対的に低速用の変速段又は変速比に変速する変速動作とにより減速制御を行う車両の減速制御装置であって、前記車両の減速制御装置により生じさせるべき目標減速度が所定値よりも大きくないときには、目標減速度が前記所定値よりも大きいときに比べて、前記ブレーキによる制動力に占める前記ブレーキにより後輪に加えられる制動力の割合が大きくされることを特徴としている。
本発明の車両の減速制御装置は、ブレーキによる制動により減速制御を行う車両の減速制御装置であって、路面の滑り易さが所定値よりも大きくないときには、路面の滑り易さが前記所定値よりも大きいときに比べて、前記ブレーキによる制動力に占める前記ブレーキにより後輪に加えられる制動力の割合が大きくされることを特徴としている。
本発明の車両の減速制御装置は、ブレーキによる制動により減速制御を行う車両の減速制御装置であって、前記車両の減速制御装置により生じさせるべき目標減速度が所定値よりも大きくないときには、目標減速度が前記所定値よりも大きいときに比べて、前記ブレーキによる制動力に占める前記ブレーキにより後輪に加えられる制動力の割合が大きくされることを特徴としている。
本発明の車両の減速制御装置によれば、ブレーキの利用による効果が十分に得られる。
以下、本発明の車両の減速制御装置の一実施形態につき図面を参照しつつ詳細に説明する。
(第1実施形態)
図1から図5を参照して、第1実施形態について説明する。本実施形態は、ブレーキ(制動装置)と自動変速機の協調制御を行う車両の減速制御装置に関する。
本実施形態では、マニュアルダウンシフトを行う時における制動装置(ブレーキ)と自動変速機(有段式でも無段式でもよい)との協調制御装置であって、通常時には、後輪ブレーキのみを作動させ、路面が滑り易いと判定された場合、又は目標減速度が所定値を超えた場合には、前輪ブレーキと後輪ブレーキの両方を作動させる。上記において、マニュアルダウンシフトとは、運転者がエンジンブレーキ力の増加を望むときに手動操作により行うダウンシフトを意味する。
自動変速機とブレーキの協調制御装置において、例えば、自動変速機のマニュアルシフトがなされたときにブレーキを用いる場合などでは、目標減速度は比較的小さく設定される。そのため、ブレーキ油圧としては、通常のフットブレーキで使用される油圧領域よりも極端に低い油圧領域が使用される。このように、特にブレーキ油圧が小さい場合には、油圧に対する制動力の制御性が問題となる。一般に、微小油圧のコントロールは難しく、油圧に対する制動力のゲインが大きくなるためである。そのため、目標減速度に対して実際の減速度がオーバーシュート(減速度過大)したり、応答遅れ(所定のタイミングで減速度が発生しない)や、応答速過ぎ(ショック)などの問題が発生することがある。
ところで、通常一般に、車両のブレーキ仕様においては、前輪(フロント)のブレーキ容量は、後輪(リア)のブレーキ容量よりも大きく構成されており、前輪のブレーキは後輪のブレーキよりも良く効く(大きな制動力を作用させることが可能である)ように構成されている。このように、前輪ブレーキは、後輪ブレーキに比べて、ブレーキ容量が相対的に大きいことから、ブレーキ油圧に対する制動力の制御性が良くない。
そこで、本実施形態では、自動変速機のダウンシフトとブレーキによる制動を協調して実行する車両の減速制御装置において、通常時は後輪ブレーキのみが使用される。後輪ブレーキは、前輪ブレーキに比べてブレーキ容量が小さく、前輪ブレーキと後輪ブレーキを両方使用する場合に比べて、ブレーキ油圧に対する制動力の制御性が向上する。
また、車両が低μ路を走行していると判定される場合には、前輪ブレーキと後輪ブレーキの両方が使用されて、車両安定性が確保される。またさらに、協調制御の目標減速度が大きい場合にも、前輪ブレーキと後輪ブレーキの両方が使用されて、大きい制動力が確保される。
つまり、本実施形態では、車両の安定性(低μ路判定)及び目標減速度の大きさに基づいて、前後のブレーキ配分が変更されることにより、ブレーキ制動力の制御性の確保、車両安定性の確保、及び大きな制動力の確保の3つが同時に達成されることができる。
本実施形態の構成としては、以下に詳述するように、自動変速機のダウンシフト制御に協調して、ブレーキによる制動を実施する手段と、ブレーキの制動力の前後配分を可変にできる手段と、低μ路を判定できる手段とが前提となる。より具体的には、変速段ないしは変速比を変更可能な変速機と、変速判断指令手段(マニュアルシフト、変速点制御)と、制動力制御手段(ブレーキ)と、先方道路状況(コーナRやコーナ進入までの距離)を検出する先方道路状況手段と、先方道路状況手段による検出結果に基づいて、変速判断指令手段及び制動力制御手段を制御する手段とが前提となる。また、本実施形態では、FR車(エンジンブレーキ力が後輪に作用する)を対象として説明するが、本実施形態は、FF車にも適用可能である。
図2において、符号10は有段の自動変速機、40はエンジン、200はブレーキ装置である。自動変速機10は、電磁弁121a、121b、121cへの通電/非通電により油圧が制御されて5段変速が可能である。図2では、3つの電磁弁121a、121b、121cが図示されるが、電磁弁の数は3に限定されない。電磁弁121a、121b、121cは、制御回路130からの信号によって駆動される。
スロットル開度センサ114は、エンジン40の吸気通路41内に配置されたスロットルバルブ43の開度を検出する。エンジン回転数センサ116は、エンジン40の回転数を検出する。車速センサ122は、車速に比例する自動変速機10の出力軸120cの回転数を検出する。シフトポジションセンサ123は、シフトポジションを検出する。パターンセレクトスイッチ117は、変速パターンを指示する際に使用される。加速度センサ90は、車両の減速度(減速加速度)を検出する。舵角センサ91は、ステアイング・ホイール(図示せず)の操舵角を検出するセンサである。
ナビゲーションシステム装置95は、自車両を所定の目的地に誘導することを基本的な機能としており、演算処理装置と、車両の走行に必要な情報(地図、直線路、カーブ、登降坂、高速道路など)が記憶された情報記憶媒体と、自立航法により自車両の現在位置や道路状況を検出し、地磁気センサやジャイロコンパス、ステアリングセンサを含む第1情報検出装置と、電波航法により自車両の現在位置、道路状況などを検出するためのもので、GPSアンテナやGPS受信機などを含む第2情報検出装置等を備えている。
路面μ検出・推定部92は、路面の摩擦係数μに代表される路面の滑り易さ(低μ路か否か)を検出又は推定する。ここで、低μ路には、悪路(路面の凹凸が大きい場合や路面に段差がある等を含む)が含まれる。即ち、路面μ検出・推定部92では、走行路面の摩擦係数μが演算され、その演算された摩擦係数μが予め定められたしきい値を超えているか否かによって、低μ路か否かが決定される。
路面μ検出・推定部92では、上記に代えて、演算により摩擦係数μの具体的数値を求めることなく、各種条件、例えば、フロント車輪速センサ(図示せず)により検出された前輪(図示せず)の回転速度(従動輪速度)及び車速センサ122により検出された後輪(図示せず)の回転速度(駆動輪速度)の差に基づいて、路面が低μ路であるか否かを検出することができる。
ここで、路面μ検出・推定部92による低μ路であるか否かの検出・推定の具体的方法は、特に限定されず、公知の方法を適宜採用することができる。例えば、上記の前後の車輪速差の他に、スリップ量、車輪速の変化率や、ABS(アンチロック・ブレーキ・システム)やTRC(トラクション・コントロール)やVSC(ビークル・スタビリティ・コントロール)の作動履歴、車両の加速度と車輪スリップ率の関係の少なくともいずれか一つを用いて、低μ路であるか否かの検出・推定を行うことができる。
路面μ検出・推定部92は、現在又は将来に走行予定の路面についての情報(ナビ情報など)に基づいて、低μ路であるか否かを予測する。ここで、ナビ情報には、ナビゲーションシステム装置95のように予め記憶媒体(DVDやHDなど)に記録されている路面(例えば非舗装路)の情報の他、車両自体が過去の実走行や他の車両や通信センターとの通信(車車間通信や路車間通信を含む)を介して得た情報(道路状況を示す情報や天候状況を示す情報を含む)が含まれる。その通信には、道路交通情報通信システム(VICS)やいわゆるテレマティクスが含まれる。路面μ検出・推定部92は、気温や降雨の情報に基づいて、低μ路であるか否かを判定することができる。
マニュアルシフト判断部93は、運転者の手動操作に基づいて、運転者の手動操作によるダウンシフト(マニュアルダウンシフト)又はアップシフトの必要性を示す信号を出力する。相対車速検出・推定部97は、自車と前方の車両との相対車速を検出又は推定する。車間距離計測部101は、車両前部に搭載されたレーザーレーダーセンサ又はミリ波レーダーセンサなどのセンサを有し、先行車両との車間距離を計測する。
道路勾配計測・推定部118は、CPU131の一部として設けられることができる。道路勾配計測・推定部118は、加速度センサ90により検出された加速度に基づいて、道路勾配を計測又は推定するものであることができる。また、道路勾配計測・推定部118は、平坦路での加速度を予めROM133に記憶させておき、実際に加速度センサ90により検出した加速度と比較して道路勾配を求めるものであることができる。
制御回路130は、スロットル開度センサ114、エンジン回転数センサ116、車速センサ122、シフトポジションセンサ123、加速度センサ90、舵角センサ91の各検出結果を示す信号を入力し、また、パターンセレクトスイッチ117のスイッチング状態を示す信号を入力し、また、ナビゲーションシステム装置95からの信号を入力し、車間距離計測部101による計測結果を示す信号を入力し、また、マニュアルシフト判断部93からのシフトの必要性を示す信号を入力し、相対車速検出・推定部97及び路面μ検出・推定部92のそれぞれによる検出又は推定の結果を示す信号を入力する。
制御回路130は、周知のマイクロコンピュータによって構成され、CPU131、RAM132、ROM133、入力ポート134、出力ポート135、及びコモンバス136を備えている。入力ポート134には、上述の各センサ114、116、122、123、90、91からの信号、上述のスイッチ117からの信号、ナビゲーションシステム装置95からの信号、路面μ検出・推定部92からの信号、マニュアルシフト判断部93からの信号、車間距離計測部101からの信号、相対車速検出・推定部97からの信号が入力される。出力ポート135には、電磁弁駆動部138a、138b、138c、及びブレーキ制御回路230へのブレーキ制動力信号線L1が接続されている。ブレーキ制動力信号線L1では、ブレーキ制動力信号SG1が伝達される。
ROM133には、予め図1及び図4のフローチャートに示す動作(制御ステップ)が記述されたプログラムが格納されているとともに、自動変速機10の変速段を変速するための変速マップ及び変速制御の動作(図示せず)が記述されたプログラムが格納されている。制御回路130は、入力した各種制御条件に基づいて、自動変速機10の変速を行う。
ブレーキ装置200は、制御回路130からブレーキ制動力信号SG1を入力するブレーキ制御回路230によって制御されて、車両を制動する。ブレーキ装置200は、油圧制御回路220と、車両の車輪204、205、206、207に各々設けられる制動装置208、209、210、211とを備えている。各制動装置208、209、210、211は、油圧制御回路220によって制動油圧が制御されることにより、対応する車輪204、205、206、207の制動力を制御する。油圧制御回路220は、ブレーキ制御回路230により、制御される。
油圧制御回路220は、ブレーキ制御信号SG2に基づいて、各制動装置208、209、210、211に供給する制動油圧を制御することで、ブレーキ制御を行う。ブレーキ制御信号SG2は、ブレーキ制動力信号SG1に基づいて、ブレーキ制御回路230により生成される。ブレーキ制動力信号SG1は、自動変速機10の制御回路130から出力され、ブレーキ制御回路230に入力される。ブレーキ制御の際に車両に与えられるブレーキ力は、ブレーキ制動力信号SG1に含まれる各種データに基づいてブレーキ制御回路230により生成される、ブレーキ制御信号SG2によって定められる。
ブレーキ制御回路230は、周知のマイクロコンピュータによって構成され、CPU231、RAM232、ROM233、入力ポート234、出力ポート235、及びコモンバス236を備えている。出力ポート235には、油圧制御回路220が接続されている。ROM233には、ブレーキ制動力信号SG1に含まれる各種データに基づいて、ブレーキ制御信号SG2を生成する際の動作が格納されている。ブレーキ制御回路230は、入力した各制御条件に基づいて、ブレーキ装置200の制御(ブレーキ制御)を行う。
図1、図2及び図5を参照して、本実施形態の動作を説明する。
図1は、第1実施形態の制御フローを示すフローチャートである。
図5は、本実施形態を説明するためのタイムチャートである。図5には、自動変速機10の入力回転速度、アクセル開度、ブレーキ制御量、クラッチトルク、車両に作用する減速加速度(G)が示されている。
[ステップS1]
図1に示すように、ステップS1では、スロットル開度センサ114の検出結果に基づいて、制御回路130により、アクセル(スロットル開度)が全閉か否かが判定される。ここでは、アクセルが全閉であることにより、運転者の減速意図が検出されて、アイドル接点がONとされる。アクセルが全閉である場合(ステップS1−Y)に、マニュアルダウンシフトが行われた時にはエンジンブレーキが望まれるシフトであると判断されて、ステップS2以降に規定される本実施形態のブレーキ制御に進む。図5では、符号601に示すように、t1の時点でアクセル開度が全閉になっている。
一方、ステップS1の判定の結果、アクセルが全閉であるとは判定されない場合(ステップS1−N)には、本実施形態のブレーキ制御を終了する旨の指令が出力される(ステップS13)。ここで、ブレーキ制御が実行されていない場合には、そのままの状態が継続される。次いで、ステップS14にて、フラグFが0にリセットされた後、本制御フローはリセットされる。
[ステップS2]
ステップS2では、制御回路130により、フラグFがチェックされる。本制御フローの最初は、フラグFは0であるので、ステップS3に進む。一方、フラグFが1である場合には、ステップS9に進む。
[ステップS3]
ステップS3では、制御回路130により、シフト判断(指令)の有無が判定される。ここでは、マニュアルシフト判断部93から、自動変速機10の変速段を相対的に低速側に変速(ダウンシフト)する必要性を示す信号が出力されているか否かが判定される。
図5では、t1の時点でステップS3の判定が行われる。ステップS3の判断の結果、マニュアルシフト判断部93から、ダウンシフトする必要性を示す信号が出力されていると判定された場合(ステップS3−Y)には、ステップS4に進む。一方、そのように判定されない場合(ステップS3−N)には、本制御フローは、リセットされる。
なお、上記ステップS1では、アクセルの全閉操作が、t1の時点で行われた例について説明したが、ステップS3が行われる時期t1よりも以前に行われていればよい。図5の例では、マニュアルシフト判断部93から出力されたダウンシフトする必要性を示す信号に関して、制御回路130では、t1の時点において、ダウンシフトする必要性有りと判定された場合が示されている。後述するように、制御回路130は、上記t1の時点におけるダウンシフトする必要性有りとの判定結果に基づいて、同じくt1の時点にて、ダウンシフト指令を出力する(ステップS6)。
[ステップS4]
ステップS4では、制御回路130により、最大目標減速度Gtが求められる。ここで、最大目標減速度Gtは、変速の種類(例えば4速→3速、3速→2速のように、変速前の変速段と変速後の変速段の組合わせ)と車速から決まる最大減速度(後述)と同じ、又はそれ以上となるように決定される。以下では、最大目標減速度Gtは、上記最大減速度と同じ値とされる例について説明するが、最大目標減速度Gtは、上記最大減速度よりも大きな値とされることができ、その場合には、特に高速段側でのシフト時にしっかりとした減速の応答感が得られる。図5において、符号602で示す破線は、自動変速機10の出力軸120cの負トルク(制動力、エンジンブレーキ)に対応した減速加速度を示しており、変速の種類と車速によって決まる。
自動変速機10の変速により車両に作用する減速度602の最大値(上記最大減速度)602maxと概ね同じとなるように、最大目標減速度Gtが決定される。自動変速機10の変速による減速度602の最大値602maxは、予めROM133に格納された最大減速度マップ(図3)が参照されて決定される。図3に示すように、最大減速度マップには、最大減速度602maxの値が、変速の種類と、車速に対応する自動変速機10の出力軸の回転数(NO)に基づく値として定められている。ステップS4の次に、ステップS5が行われる。
[ステップS5]
ステップS5では、制御回路130により、目標減速度603の勾配αが決定される。勾配αの決定に際しては、まず、ダウンシフト指令が出力されてから(後述のように、ステップS6にてt1の時点に出力される)、変速が実際に(実質的に)開始(t3)されるまでの時間taに基づいて、その変速開始時点t3までに車両に実際に作用する減速度(以下、車両の実減速度という)604が最大目標減速度Gtに到達するように目標減速度603の初期の勾配最小値が決定される。ステップS5において、目標減速度603の勾配αは、勾配最小値よりも大きく設定される。上記において、ダウンシフト指令が出力された時点t1から実際に変速が開始される時点t3までの時間taは、変速の種類に基づいて決定される。
上記ステップS4及びS5により、本実施形態における目標減速度603の大部分(図5の太線で示す)が決定される。即ち、図5に示すように、目標減速度603は、ステップS4及びS5にて求められた勾配αにて最大目標減速度Gtに達するように設定され、その後は、自動変速機10の変速が終了する時点t5まで目標減速度603が、最大目標減速度Gtに維持される。自動変速機10の変速により生じる最大減速度602max(≒最大目標減速度Gt)までの減速度を、短時間で減速ショックを抑制しつつ、応答性の良いブレーキで実現するためである。応答性の良いブレーキで初期の減速度を実現することで、車両に不安定現象が生じた時に、その対応を速やかに行うことができる。自動変速機10の変速が終了した時点t5よりも後の目標減速度603の設定については後述する。ステップS5の次に、ステップS6が行われる。
[ステップS6]
ステップS6では、制御回路130のCPU131から電磁弁駆動部138a〜138cにダウンシフト指令(変速指令)が出力される。ダウンシフト指令に応答して、電磁弁駆動部138a〜138cは、電磁弁121a〜121cを通電又は非通電にする。これにより、自動変速機10では、ダウンシフト指令に指示される変速が実行される。ダウンシフト指令は、ダウンシフトする必要性有りとt1の時点で制御回路130により判断されると(ステップS3−Y)、それと同時(t1の時点)に出力される。
図5に示すように、t1の時点にダウンシフト指令が出力される(ステップS6)と、その時点から変速の種類に基づいて決定される上記時間taが経過した後のt3の時点で、自動変速機10の変速が実際に開始されて、クラッチトルク608が上昇し始めるとともに、自動変速機10の変速による減速度602が上昇し始める。ステップS6の次に、ステップS7が実行される。
[ステップS7]
ステップS7において、制御回路130は、ダウンシフトと協調してブレーキ制御を実施するか否かを判定する。ここで、制御回路130は、ブレーキの協調制御を実施するときの前提条件として、車速やエンジンの水温等の走行状況に関する条件を判定するとともに、ブレーキの協調制御のためのシステムのチェック(異常判定)を行う。その判定の結果、ブレーキ制御が実施される場合(ステップS7−Y)には、ステップS8に進み、そうで無い場合(ステップS7−N)には、本制御フローは、リセットされる。なお、このステップS7の判定は、図5のt1の時点にて行われる。
[ステップS8]
ステップS8では、ブレーキのフィードバック制御がブレーキ制御回路230により実行される。符号606に示すように、ブレーキのフィードバック制御は、ダウンシフト指令が出力された時点t1にて開始される。
即ち、t1の時点から目標減速度603を示す信号がブレーキ制動力信号SG1として制御回路130からブレーキ制動力信号線L1を介してブレーキ制御回路230に出力される。ブレーキ制御回路230は、制御回路130から入力したブレーキ制動力信号SG1に基づいて、ブレーキ制御信号SG2を生成し、そのブレーキ制御信号SG2を油圧制御回路220に出力する。
油圧制御回路220は、ブレーキ制御信号SG2に基づいて、制動装置208、209、210、211に供給する油圧を制御することで、ブレーキ制御信号SG2に含まれる指示通りのブレーキ力(ブレーキ制御量606)を発生させる。
ステップS8のブレーキ装置200のフィードバック制御において、目標値は目標減速度603であり、制御量は車両の実減速度であり、制御対象はブレーキ(制動装置208、209、210、211)であり、操作量はブレーキ制御量606であり、外乱は主として自動変速機10の変速による減速度602である。車両の実減速度は、加速度センサ90により検出される。
即ち、ブレーキ装置200では、車両の実減速度604が目標減速度603となるように、ブレーキ制動力(ブレーキ制御量606)が制御される。即ち、ブレーキ制御量606は、車両に目標減速度603を生じさせるに際して、自動変速機10の変速による減速度602では不足する分の減速度を生じさせるように設定される。
図5の例では、ダウンシフト指令が出力された時点t1から自動変速機10の変速が実際に開始される時点t3までは、自動変速機10による減速度602はゼロであるため、ブレーキで目標減速度603の全ての減速度が生じさせるような、ブレーキ制御量606とされている。t3の時点から自動変速機10の変速が開始され、自動変速機10による減速度602が増加するに伴って、ブレーキ制御量606は減少する。
また、ステップS8では、前輪と後輪のブレーキ力(制動力)の配分が制御される。
この前輪の制動力と後輪の制動力の配分の制御に際しては、図4に示す動作が行われる。以下、図4を参照して、前後輪の制動力配分方法について説明する。
[ステップSA10]
まず、図4のステップSA10では、制御回路130により、路面が低μ路(車両が滑り易い状態)であるか否かが判定される。制御回路130は、路面μ検出・推定部92により検出又は推定された結果に基づいて、路面が低μ路であるか否かを判定する。その判定の結果、路面が低μ路である場合(ステップSA10−Y)には、ステップSA40に進み、そうでない場合(ステップSA10−N)には、ステップSA20に進む。
[ステップSA20]
ステップSA20では、制御回路130により、最大目標減速度Gtが所定値よりも大きいか否かが判定される。ここで、所定値は、予めROM133に格納されている。ステップSA20の判定の結果、最大目標減速度Gtが所定値よりも大きい場合(ステップSA20−Y)には、ステップSA40に進み、そうでない場合(ステップSA20−N)にはステップSA30に進む。
[ステップSA30]
ステップSA30では、図1のステップS8のブレーキ制御に際しては、後輪ブレーキのみが使用されることが決定される。即ち、前輪ブレーキは使用されずに、後輪ブレーキのみを用いて、ブレーキ制御が行われる。この場合、後輪のブレーキによる制動力は、上記ブレーキ制動力(ブレーキ制御量606)に一致する。ステップSA30の次には、図4の本制御フローは終了する。
[ステップSA40]
ステップSA40では、図1のステップS8のブレーキ制御に際しては、前輪ブレーキと後輪ブレーキの両方が使用されることが決定される。この場合、前輪のブレーキによる制動力と後輪のブレーキによる制動力の和が、上記ブレーキ制動力(ブレーキ制御量606)に一致する。ここで、前後輪のブレーキによる制動力の大小関係は、前輪のブレーキによる制動力≧後輪のブレーキによる制動力であってもよいし、または、前輪のブレーキによる制動力<後輪のブレーキによる制動力であってもよい。
また、この場合、制御回路130は、例えば、予め設定されたマップを参照して、前後輪の理想制動力配分比を最大目標減速度Gtから求めることができ、その場合、前輪のブレーキによる制動力と、(後輪のブレーキによる制動力+後輪に作用するエンジンブレーキ力)との比が上記理想制動力配分比となるように、前後輪のブレーキによる制動力配分比が決定されることができる。ステップSA40の次には、本制御フローは終了する。
以上では、図1のステップS8におけるブレーキの配分制御が、図4のステップSA10〜ステップSA40の動作により行われる点について説明した。以下では、図1のステップS9以降について説明する。
[ステップS9]
ステップS9では、制御回路130により、自動変速機10の変速が終了する前(又はその付近)か否かが判定される。その判定は、自動変速機10の回転メンバーの回転速度に基づいて行われ(図5の入力回転速度参照)、ここでは、以下の関係式が成立するか否かにより判定される。
No*If−Nin≦ΔNin
ここで、Noは、自動変速機10の出力軸120cの回転速度、Ninは入力軸回転速度(タービン回転速度等)、Ifは変速後のギヤ比、ΔNinは定数値である。制御回路130は、自動変速機10の入力軸回転速度(タービン翼車24の回転速度等)Ninを検出する検出部(図示せず)から、その検出結果を入力している。
ステップS9の上記関係式が成立しない場合には、自動変速機10の変速が終了する段階ではないと判断され、ステップS15にてフラグFが1に設定された後に、本制御フローがリセットされる。その後、ステップS1→ステップS2→ステップS9にて、上記関係式の成立を待つ。この間、アクセル開度が全閉以外となったときには、ステップS13に進み、本実施形態のブレーキ制御は終了する。
一方、ステップS9の上記関係式が成立した場合には、ステップS10に進む。図5では、t5の時点(の直前)で変速が終了し、上記関係式が成立する。図5に示すように、t5の時点では、自動変速機10の変速により車両に作用する減速加速度602がその最大値602max(≒最大目標減速度Gt)に到達し、自動変速機10の変速が終了したことが示されている。
[ステップS10]
ステップS10では、上記ステップS8にて開始されたブレーキのフィードバック制御が終了する。ステップS10以降において、制御回路130は、ブレーキ制御回路230に出力するブレーキ制動力信号SG1に、ブレーキのフィードバック制御に対応する信号を含めないこととする。
即ち、ブレーキのフィードバック制御は、自動変速機10の変速の終了まで行われる。図5に示すように、ブレーキ制御量606は、自動変速機10の変速が終了したt5の時点でゼロになっている。t5の時点で自動変速機10の変速が終了したときに、自動変速機10により生じる減速加速度602は、その最大値602maxに達する。そのt5の時点では、自動変速機10により生じる減速加速度602の最大値602maxと概ね同じになるように設定(ステップS4)された目標減速度603の最大目標減速度Gtを達成するには、自動変速機10により生じる減速加速度602のみで足り、ブレーキ制御量606はゼロでよい。ステップS10の次に、ステップS11が行われる。
[ステップS11]
ステップS11では、制御回路130は、ブレーキ制御回路230に出力するブレーキ制動力信号SG1を介して、ブレーキに変速イナーシャ分のブレーキトルク(減速加速度)を出力させ、その後、漸次減少させる。変速イナーシャは、自動変速機10の変速が終了した後の図5のt5とt6の間からt7の時期にかけて発生している。変速イナーシャ(イナーシャトルク)は、自動変速機10の変速が終了した時点(t5)の自動変速機10の回転メンバーの回転速度の時間微分値とイナーシャ値から決まる。
図5において、ステップS11は、t5からt7の間に実行されている。変速に伴うショックを最小限に抑えるべく、制御回路130において、t5の時点以降の目標減速度603は、t5の後は緩やかな勾配になるように設定される。その目標減速度603の緩やかな勾配は、自動変速機10のシフトダウンによって得られる最終減速度Geに到達するまで延びる。目標減速度603の設定は、最終減速度Geに到達したところで終了する。その時点において、シフトダウンにより望まれたエンジンブレーキである最終減速度Geが車両の実減速度として車両に作用しているため、その時点からは、本実施形態のブレーキ制御が不要であるためである。
ステップS11では、ブレーキ制御回路230において入力したブレーキ制動力信号SG1に基づいて生成されたブレーキ制御信号SG2に応答して、油圧制御回路220により、変速イナーシャ分のブレーキ制御量606が与えられた後、目標減速度603の勾配に対応するように、ブレーキ制御量606が漸次減少される。ステップS11の次にステップS12が行われる。
[ステップS12]
ステップS12において、制御回路130により、フラグFが0にクリアされた後に、本制御フローがリセットされる。
なお、本実施形態においては、マニュアルシフトによってダウンシフトが行われる場合に、自動変速機10とブレーキの協調制御を行うとともに、そのブレーキ制御に際しては、ブレーキ制動力の制御性、車両の安定性(低μ路判定)及び目標減速度の大きさを考慮して、後輪ブレーキのみを使用するのか、又は後輪ブレーキ及び前輪ブレーキの両方を使用するのかが決定されるとして説明した。本実施形態では、マニュアルシフトによってダウンシフトが行われる場合に限定されること無く、通常の変速マップ(車速とスロットル開度に基づく通常の変速マップ)に従ってダウンシフトが行われる場合にも、自動変速機10とブレーキの協調制御を行うとともに、そのブレーキ制御に際しては、ブレーキ制動力の制御性、車両の安定性(低μ路判定)及び目標減速度の大きさを考慮して、後輪ブレーキのみを使用するのか、又は後輪ブレーキ及び前輪ブレーキの両方を使用するのかが決定されることが可能である。その場合の、使用するブレーキの決定方法は、マニュアルシフトの場合と同様であることができる。
本実施形態によれば、以下の効果が得られる。
自動変速機のダウンシフト制御に協調して、ブレーキ制御を実施する場合に、通常は、後輪ブレーキのみが使用される。後輪ブレーキは、前輪ブレーキに比べて、ブレーキ容量が小さく、後輪ブレーキと前輪ブレーキの両方が使用される場合に比べて、ブレーキ油圧に対する制動力の制御性が向上する。
また、車両が滑り易い状況であると判定される場合や、目標減速度(最大目標減速度Gt)が大きい場合には、前輪ブレーキと後輪ブレーキの両方を使用して、車両安定性や大きな制動力を確保することができる。即ち、車両の安定性(低μ路判定)及び目標減速度の大きさに基づいて、前後のブレーキ配分を変更することで、ブレーキ制動力の制御性の確保、車両安定性の確保、及び大きな制動力の確保の3つを同時に達成させることができる。
また、本実施形態によれば、図5の目標減速度603に示されるような理想的な減速過渡特性が得られる。減速度が駆動輪から被駆動輪に滑らかに移行する。その後も自動変速機10のシフトダウンによって得られる最終減速度Geに滑らかに移行する。更に上記の理想的な減速過渡特性について述べると、次のようになる。
即ち、ステップS3(t1)にてダウンシフトの必要性が確認(判断)されると、その確認と同時(t1)に開始されるブレーキ制御(ステップS8)により、車両の実減速度は、そのダウンシフトの必要性の確認から直ちに、勾配αにて大きな減速ショックを発生することなく、かつ、車両不安定現象の発生時にも対応可能な範囲で漸次上昇し、変速が開始される時点(t3)よりも以前に、変速による減速度602の最大値602max(≒最大目標減速度Gt)まで上昇する。また、車両の実減速度は、変速終期(t5以降)の大きな変速ショックも発生することなく、変速によって得られる最終減速度Geまで漸次下降する。
上記のように、本実施形態では、車両の実減速度が、速やかに、即ち、ダウンシフトの必要性が確認された時点(t1)から直ちに上昇し始め、変速が開始される時点(t3)よりも以前(t2)に、変速による減速度602の最大値602max(≒最大目標減速度Gt)まで漸次上昇する。その後は、変速が終了する時点(t5)まで、車両の実減速度は、最大目標減速度Gtに維持される。
上記のような車両の実減速度の時間的推移から、車両に不安定現象が生じるとすれば、車両の実減速度が最大目標減速度Gtまで上昇している間(t1からt2)又は、遅くとも車両の実減速度が最大目標減速度Gtに到達した直後の変速が開始される前(t3)までに生じる可能性が高い。この車両の不安定現象の発生可能性が高い時期に、作動しているのはブレーキのみである(実質的な変速を開始していない自動変速機10は作動していない)。自動変速機に比べて、ブレーキは応答性が良好であることから、ブレーキを制御することにより、車両に不安定現象が発生した場合であってもその対応を迅速かつ容易にとることができる。
即ち、車両の不安定現象の発生に対応して、ブレーキ制動力(ブレーキ制御量606)をゼロにしたり低下させたりする動作を、迅速かつ容易に制御性良く行うことができる。これに対し、自動変速機の変速が開始された後に車両の不安定現象が発生した場合には、その時点で変速をキャンセルしたとしても、実際に変速がキャンセルされるまでに時間がかかってしまう。
また、車両に不安定現象が生じる可能性が高い上述の時期(t1からt2又はt1からt3)は、自動変速機10の変速は開始されておらず、自動変速機10のクラッチやブレーキ等の摩擦係合装置の係合がなされていないため、車両の不安定現象の発生に対応して、自動変速機10の変速がキャンセルされても何ら問題が生じない。
(第1実施形態の第1変形例)
次に、上記第1実施形態の第1変形例について説明する。
上記第1実施形態では、図4に示すように、通常時は後輪ブレーキのみが使用され(ステップSA30)、通常時以外の場合、即ち、車両が低μ路を走行していると判定される場合(ステップSA10−Y)又は目標減速度が大きい場合(ステップSA20−Y)には、前輪ブレーキと後輪ブレーキの両方が使用される(ステップSA40)として説明した。
本変形例では、上記ステップSA30及びステップSA40の組み合わせに代えて、以下の(1)から(3)の組み合わせが採用されることが可能である。
(1)上記通常時には、後輪ブレーキのみが使用され(ステップSA30に対応)、上記通常時以外の場合には、前輪ブレーキのみが使用される(ステップSA40に対応)。
(2)上記通常時には、前輪ブレーキと後輪ブレーキの両方が使用されるが、後輪ブレーキが主体に(後輪ブレーキによる制動力>前輪ブレーキによる制動力の関係となるように)使用され(ステップSA30に対応)、上記通常時以外の場合には、前輪ブレーキと後輪ブレーキの両方が使用されるが、前輪ブレーキが主体に(前輪ブレーキによる制動力>後輪ブレーキによる制動力の関係となるように)使用される(ステップSA40に対応)。
(3)上記通常時には、前輪ブレーキと後輪ブレーキの両方が使用されるが、後輪ブレーキが主体に(後輪ブレーキによる制動力>前輪ブレーキによる制動力の関係となるように)使用され(ステップSA30に対応)、上記通常時以外の場合には、前輪ブレーキのみが使用される(ステップSA40に対応)。
上記のように、上記通常時には、後輪ブレーキのみ、又は後輪ブレーキが主体に使用され(ステップSA30に対応)、上記通常時以外の場合には、その上記通常時よりも前輪ブレーキの制動力の割合が増加されるように、前後輪のブレーキ制動力の割合が決定される(ステップSA40に対応)。
(第1実施形態の第2変形例)
次に、第1実施形態の第2変形例について説明する。
上記第1実施形態及びその第1変形例では、上記通常時には、後輪ブレーキのみ、又は後輪ブレーキが主体に使用され(ステップSA30に対応)、上記通常時以外の場合、即ち、車両が低μ路を走行していると判定される場合(ステップSA10−Y)又は目標減速度が大きい場合(ステップSA20−Y)には、その上記通常時よりも前輪ブレーキの制動力の割合が増加されるように、前後輪のブレーキ制動力の割合が決定される(ステップSA40に対応)として説明した。
本変形例では、上記第1実施形態及びその第1変形例と同様に、上記通常時以外の場合、即ち、車両が低μ路を走行していると判定される場合(ステップSA10−Y)又は目標減速度が大きい場合(ステップSA20−Y)には、その上記通常時よりも前輪ブレーキの制動力の割合が増加されるように、前後輪のブレーキ制動力の割合が決定される(ステップSA40に対応)点では共通する。ここで、本変形例では、車両が低μ路を走行していると判定される場合(ステップSA10−Y)と、目標減速度が大きい場合(ステップSA20−Y)とでは、その上記通常時よりも前輪ブレーキの制動力の割合が増加される際のその増加の割合が異なるように設定されることができる。
例えば、上記第1変形例の上記(2)の場合を例にとって説明すると、上記通常時には、前後輪のブレーキ制動力の割合(比)が、前輪30:後輪70に設定される場合(ステップSA40に対応)に、車両が低μ路を走行していると判定される場合(ステップSA10−Y)には、前輪55:後輪45に設定され(ステップSA40に対応)、目標減速度が大きい場合(ステップSA20−Y)には、前輪70:後輪30に設定されることができる(ステップSA40に対応)。
(第1実施形態の第3変形例)
次に、第1実施形態の第3変形例について説明する。
本変形例は、上記第2変形例の応用である。
上記第2変形例では、車両が低μ路を走行していると判定される場合(ステップSA10−Y)と、目標減速度が大きい場合(ステップSA20−Y)とでは、その上記通常時よりも前輪ブレーキの制動力の割合が増加される際のその増加の割合が異なるように設定されるとして説明した。この場合、本変形例では、上記ステップSA20において、目標減速度と所定値とが比較される際に、所定値に対して目標減速度がどの程度大きいかによって、目標減速度が大きい場合(ステップSA20−Y)の前後輪のブレーキ制動力の割合が可変とされることができる(ステップSA40に対応)。
(第2実施形態)
次に、図6−1から図9を参照して、第2実施形態について説明する。
第2実施形態において、上記第1実施形態と共通する部分についての説明は省略する。
本実施形態では、先方のコーナRに基づく変速点制御が行われるときの自動変速機とブレーキとを協調制御して所望の減速度を得る車両の減速制御装置において、通常時には、後輪ブレーキのみを作動させ、路面が滑り易いと判定された場合、又は目標減速度が所定値を超えた場合には、前輪ブレーキと後輪ブレーキの両方を作動させる。
図6−1、図6−2及び図9を参照して、本実施形態の動作を説明する。
以下では、目標減速度がダウンシフト後の変速段で得られる減速度よりも大きい場合(=ブレーキ制御が必要な場合)について記す。
図9は、本実施形態の減速制御を説明するためのチャートである。図9には、制御実施境界線L、必要減速度401、道路形状上面視、自動変速機10の入力回転速度307、アクセル開度301、車両に作用する減速度303、目標減速度304(初期目標減速度304a、非初期目標減速度304b)、自動変速機10での減速度(エンジンブレーキ力、自動変速機10の出力軸トルク)310、ブレーキ制御量(ブレーキでの減速度)302、前輪の制動力305、後輪の制動力306が示されている。
図9の符号Aに対応する場所(時点)407では、符号301に示すように、アクセルがOFF(アクセル開度が全閉)の状態で、かつ符号302に示すように、ブレーキがOFF(ブレーキ力がゼロ)の状態である。
[ステップS10]
ステップS10では、制御回路130により、スロットル開度センサ114からの信号に基づいて、アクセルがOFFの状態(全閉)か否かが判定される。ステップS10の結果、アクセルがOFFの状態であると判定されれば、ステップS20に進む。アクセルが全閉である場合(ステップS10−Y)に、運転者に減速の意図があると判断されて、本実施形態の減速制御が行われる。一方、アクセルがOFFの状態であると判定されなければ、ステップS180に進む。上記のように、図9では、符号Aの位置(時点)にてアクセル開度301がゼロ(全閉)とされている。
[ステップS20]
ステップS20では、制御回路130により、フラグFがチェックされる。その結果、フラグFが0であればステップS30に進み、フラグFが1であればステップS80に進み、フラグFが2であればステップS100に進み、フラグFが3であればステップS120に進む。本制御フローが実行されたときに、最初は、フラグFが0であるので、ステップS30に進む。
[ステップS30]
ステップS30では、制御回路130により、必要減速度が計算により求められる。必要減速度は、先方のコーナを予め設定された所望の旋回Gで旋回するために(所望の車速でコーナに進入するために)必要とされる減速度である。図9において、必要減速度は、符号401で示されている。図9において、必要減速度401は、車速と、「車両G(車両に作用する減速度)」の2箇所に示されている。
図9において、横軸は距離を示しており、「道路形状上面視」に示すように、先方のコーナ402は、符号Eの地点403からGの地点404に存在している。そのコーナ402を予め設定された所望の旋回Gで旋回するために、コーナ402の入口403において、コーナ402の半径(又は曲率)R405に対応した、目標車速406にまで減速されている必要がある。即ち、目標車速406は、コーナ402のR405に対応した値である。
上記ステップS10においてアクセルが全閉であると判定された符号Aの場所407の車速から、コーナ402の入口403で要求される目標車速406まで減速するには、必要減速度401で示すような減速が必要とされる。制御回路130は、車速センサ122から入力した現在の車速と、ナビゲーションシステム装置95から入力した、現在位置からコーナ402の入口403までの距離及びコーナ402のR405に基づいて、必要減速度401を算出する。必要減速度401を示す信号は、ブレーキ制動力信号SG1として、制御回路130からブレーキ制動力信号線L1を介してブレーキ制御回路230に出力される。
図9において、コーナ402のR405よりもRが小さいコーナ(以下、仮想コーナと称する。図示せず)を考える。比較のため、その仮想コーナは、コーナ402の入口403と同じ位置に入口が存在しているとする。その仮想コーナの入口403では、仮想コーナのRがR405よりも小さいため、コーナ402の目標車速406よりも低い車速406vにまで減速されている必要がある。このことから、その仮想コーナの必要減速度は、必要減速度401よりも勾配が大きな符号401vで示され、必要減速度401よりも、大きな減速度が要求されていることが示される。
なお、ステップS30では、制御回路130がナビゲーションシステム装置95から入力したデータに基づいて、先方にコーナが無いと判定すれば、必要減速度は求められない。ステップS30の次に、ステップS40が実行される。
[ステップS40]
ステップS40では、制御回路130により、例えば制御実施境界線Lに基づいて、本制御の要否が判定される。その判定では、図9において、現在の車速とコーナ402の入口403までの距離との関係で、制御実施境界線Lよりも上方に位置すれば、本制御が必要と判定され、制御実施境界線Lよりも下方に位置すれば、本制御は不要と判定される。ステップS40の判定の結果、本制御が必要と判定された場合には、ステップS50に進み、本制御が不要と判定された場合には、本制御フローはリターンされる。
制御実施境界線Lは、現在の車速とコーナ402の入口403までの距離との関係で、予め設定された通常制動による減速度を超えた減速度が車両に作用しない限り、コーナ402の入口403において目標車速406に到達できない(コーナ402を所望の旋回Gで旋回できない)範囲に対応した線である。即ち、制御実施境界線Lよりも上方に位置する場合には、コーナ402の入口403において目標車速406に到達するためには、予め設定された通常制動による減速度を超えた減速度が車両に作用することが必要である。
そこで、制御実施境界線Lよりも上方に位置する場合には、本実施形態のコーナRに対応した減速制御が実行されて(ステップS50)、減速度の増大によって、運転者によるブレーキの操作量がなくても、ないしは操作量が相対的に小さくても(フットブレーキを少ししか踏まなくても)、コーナ402の入口403において目標車速406に到達できるようにしている。
図7は、制御実施境界線Lを説明するための図である。図の斜線部分において、車両進行方向の道路のコーナ402の曲率半径Rから決定される目標車速406に基づいて算出された減速領域を示している。この減速領域は、高車速側且つコーナからの距離が小さい側の位置に設けられており、その減速領域の境界を示す制御実施境界線Lは、コーナ402の曲率半径Rが大きくなるほど高車速側且つコーナ402に接近する側へ移動させられるように設定されている。コーナ領域手前を走行する車両の実際の車速が、図7の制御実施境界線Lを越えたときに、本実施形態のコーナRに対応した減速制御が実行される。
本実施形態の制御実施境界線Lとしては、従来一般のコーナRに対応した変速点制御に使用される制御実施境界線がそのまま適用可能である。制御実施境界線Lは、ナビゲーションシステム装置95から入力した、コーナ402のR405とコーナ402までの距離を示すデータに基づいて、制御回路130により作成される。
本実施形態では、図9において、アクセル開度301がゼロとされた符号Aに対応する場所(場所407)は、制御実施境界線Lよりも上方に位置するため、本制御が必要と判定され(ステップS40−Y)、ステップS50に進む。なお、上記ステップS40では、制御実施境界線Lを用いて、本実施形態のコーナRに対応した減速制御の実行の有無が判定される例について説明したが、制御実施境界線L以外のものに基づいて、本実施形態のコーナRに対応した減速制御の実行の有無が判定されることができる。
[ステップS50]
ステップS50では、制御回路130により、自動変速機10の変速制御(シフトダウン)に際して選択すべき変速段(ダウンシフト量)が決定される。ステップS50の決定に際しては、図8に示すダウンシフトの判定マップが使用される。図8には、コーナ402の半径(又は曲率)Rと、アクセルがOFFかつブレーキもOFFの場所A(ステップS10−Y)の道路勾配θRに基づいて、コーナ制御におけるダウンシフト先の変速段が定められている。
図8は、車両の前方の曲がり道路の曲率半径Rを表す横軸と走行路面の勾配θR を表す縦軸との二次元座標内において、運転操作に対応した複数種類の領域を有するダウンシフト判定マップである。このダウンシフト判定マップでは、第1ダウン変速領域A1 、第2ダウン変速領域A2 、非ダウン変速領域A3が設けられている。ダウンシフト判定マップでは、登坂駆動力或いは降坂時のエンジンブレーキ力が、変速点制御時以外の通常時に使用される変速線図を用いた自動変速制御による場合に比較して一層得られるように設定されている。
第1ダウンシフト領域A1 は、比較的大きな登坂駆動力(降坂時にはエンジンブレーキ力)を必要とする道路カーブがきつく(曲率半径Rが小さく)且つ路面傾斜θR がきつい(大きい)路面、又は比較的大きなエンジンブレーキを必要とする比較的大きな勾配θR の直線的降坂路に対応するものであって、その曲率半径Rおよび路面傾斜θR を示す点がその領域A1 内にある場合には第3速ギヤ段への変速が判定される。
第2ダウンシフト領域A2 は、中程度の登坂駆動力(降坂時にはエンジンブレーキ力)を必要とする道路カーブが中程度(曲率半径Rが中程度)であり且つ路面傾斜θR も中程度の路面、又は比較的小さな登坂駆動力(降坂時にはエンジンブレーキ力)増量ですむ道路カーブがゆるく(曲率半径Rが比較的大きく)且つ路面傾斜θR も比較的緩い(小さい)路面に対応するものであって、その曲率半径Rおよび路面傾斜θRを示す点がその領域A2 内にある場合は第4速ギヤ段への変速が判定される。
非ダウンシフト領域A3 は、エンジンブレーキ力の増加を必要としない直線的な登坂路或いは緩い降坂路に対応するものであって、曲率半径Rおよび路面傾斜θR を示す点がその領域A3 内にある場合は運転操作状態に拘らずダウンシフトが判定されないためのものである。
いま、コーナ402のコーナRが中程度の中コーナであり、場所Aが緩降坂であるとする。この場合には、図8のダウンシフト判定マップによれば、4速が最適な変速段であることが示されている。ステップS50では、ダウンシフト判定マップに定められる最適な変速段と、現在の変速段とが比較されて、現在の変速段の方が最適な変速段よりも高い変速段であるか否かが判定される。その判定の結果、現在の変速段の方が最適な変速段よりも高い場合には、コーナ制御のダウンシフト出力有りと判定され、変速指令が出力され、一方、現在の変速段の方が最適な変速段よりも高くない場合には、コーナ制御のダウンシフト出力無しと判定され、変速指令は出力されない。
本例では、場所Aでの現在の変速段は5速であるとすると、ステップS50では、4速へのダウンシフト出力が有りと判定されるとする。
ステップS50では、上記のように、制御回路130により、選択されるべき変速段(本例では、4速)が決定されると、変速指令が出力される。即ち、制御回路130のCPU131から電磁弁駆動部138a〜138cにダウンシフト指令(変速指令)が出力される。ダウンシフト指令に応答して、電磁弁駆動部138a〜138cは、電磁弁121a〜121cを通電又は非通電にする。これにより、自動変速機10では、ダウンシフト指令に指示される変速が実行される。
ダウンシフト指令は、本実施形態の変速点制御としてダウンシフトする必要性有りと図9の符号Aに対応する場所(時点)で制御回路130により判断されると、それと同時(点Aの時点)に出力される。ここで、図9に示されるように、点Aの時点でダウンシフト指令が出力されてから、変速が実際に(実質的に)開始されるまでには、所定の時間(図9の点Aから点Bまでの時間)が必要であり、その時間が経過した後の点Bの時点から変速が開始されて、変速によるエンジンブレーキ力310が車両に作用し始める。図9において、斜線で示した部分がエンジンブレーキ力310である。ここで、アクセルがOFFにされた時点(点A)から、変速が開始される時点Bよりも前にも、エンジンブレーキ力310が発生しているが、これは変速による減速度ではなく、アクセルをOFFにしたことに伴うエンジンブレーキ力である。
なお、上記において、ダウンシフト指令が出力された時点Aから実際に変速が開始される時点Bまでの時間は、変速の種類(例えば4速→3速、3速→2速のように、変速前の変速段と変速後の変速段の組合わせ)に基づいて決定される。また、点Bの時点から実際にダウンシフトが開始されると、自動変速機10の入力軸回転数307は引き上げられる。ステップS50の次にステップS60が実行される。
[ステップS60]
ステップS60では、制御回路130により、初期目標減速度304aが設定される。この初期目標減速度304aは、必要減速度401に到達するまでの目標減速度304である。図9においては、実減速度303が必要減速度401に到達する場所(時点)(符号Bに対応する場所)までの実減速度303に一致する線304aに対応している。即ち、初期目標減速度304aは、符号Aに対応する場所から符号Bに対応する場所まで、スウィープアップするように設定される。初期目標減速度304aは、急激な制動によるショック・違和感を抑制するため、本減速制御の初期(図9の初期フェーズ)は徐々に減速度を増大させるようにしている。ステップS60の次に、ステップS70が実行される。
[ステップS70]
ステップS70では、ブレーキのフィードバック制御がブレーキ制御回路230により実行される。ブレーキのフィードバック制御とは、目標減速度304と実減速度303との偏差に応じてブレーキ力302を制御することを意味する。ここで、ステップS70における目標減速度304には、ステップS60で求められた初期目標減速度304aと、後述するステップS90で設定され、ステップS110で漸減される非初期目標減速度304bの両方が含まれる。
符号302に示すように、ブレーキのフィードバック制御は、ダウンシフト指令が出力された符号Aに対応する場所(時点)にて開始される。即ち、符号Aに対応する場所(時点)から目標減速度304(ここでは初期目標減速度304a)を示す信号がブレーキ制動力信号SG1として制御回路130からブレーキ制動力信号線L1を介してブレーキ制御回路230に出力される。ブレーキ制御回路230は、制御回路130から入力したブレーキ制動力信号SG1に基づいて、ブレーキ制御信号SG2を生成し、そのブレーキ制御信号SG2を油圧制御回路220に出力する。
油圧制御回路220は、ブレーキ制御信号SG2に基づいて、制動装置208、209、210、211に供給する油圧を制御することで、ブレーキ制御信号SG2に含まれる指示通りのブレーキ力(ブレーキ制御量302)を発生させる。
ステップS70のブレーキ装置200のフィードバック制御において、目標値は目標減速度304であり、制御量は車両の実減速度303であり、制御対象はブレーキ(制動装置208、209、210、211)であり、操作量はブレーキ制御量302であり、外乱は主として自動変速機10の変速による減速度310である。車両の実減速度303は、加速度センサ90等により検出される。
即ち、ブレーキ装置200では、車両の実減速度303が目標減速度304となるように、ブレーキ制動力(ブレーキ制御量302)が制御される。即ち、ブレーキ制御量302は、車両に目標減速度304を生じさせるに際して、自動変速機10の変速による減速度310では不足する分の減速度を生じさせるように設定される。目標減速度304からエンジンブレーキ力310をマイナスした分がブレーキ制御量302となる。
ステップS70のブレーキ制御のうち、上記の初期目標減速度304aに対するフィードバック制御は、そのフィードバック制御に代えて、スウィープ制御であってもよい。即ち、ブレーキ力を予め決められていた所定の勾配で増加させる(スウィープ制御)方法でもよい。図9の符号A〜Bに対応する場所(時点)において、ブレーキ力302が所定の勾配で増加し、それに伴い、現在の減速度303は増加し、Bに対応する時点にて、現在の減速度303が必要減速度401に達するまで(ステップS80−Y)、ブレーキ力302は増加し続ける。
ステップS70の初期目標減速度304a又はスウィープ制御の上記所定の勾配は、ブレーキ制御信号SG2の生成時に参照されるブレーキ制動力信号SG1によって定められる。上記所定の勾配は、ブレーキ制動力信号SG1に含まれる、本制御の開始時(図9の符号Aに対応する時点の直前)のアクセルの戻し速度、アクセルを戻す前の開度に基づいて変更されることができる。例えば、アクセル戻し速度又はアクセルを戻す前の開度が大きい場合には、上記勾配は大きくされることができる。また、ブレーキ制動力信号SG1に路面の摩擦係数μを示すデータを含ませることによって、例えば、路面の摩擦係数μが低い場合には、上記勾配は小さくされることができる。また、車速によって変更することも可能で車速が大きいほど大きくすることができる。
また、ステップS70では、前輪と後輪のブレーキ力(制動力)の配分が制御される。この前輪の制動力305と後輪の制動力306の配分制御の方法は、上記第1実施形態と同様に、図4に示す方法で行われることができる。または、上記第1実施形態の第1変形例から第3変形例は、このステップS70における前輪と後輪のブレーキ力の配分制御に適用することが可能である。
図9の前輪の制動力305と後輪の制動力306の例では、車両が走行している路面が低μ路であると判定されるか(図4のステップSA10−Y)、又は、目標減速度が所定値よりも大きいと判定され(図4のステップSA20−Y)た結果として、前輪ブレーキと後輪ブレーキの両方が使用され、前輪の制動力305の方が後輪の制動力306に比べて大きく設定された場合が示されている。ステップS70の次には、ステップS80が実行される。
[ステップS80]及び[ステップ210]
ステップS80では、制御回路130により、実減速度303が必要減速度401以上になったか否かが判定される。その判定の結果、実減速度303が必要減速度401以上であれば、ステップS90に進み、そうでなければ、ステップS210に進む。
本制御フローが実施された最初の段階では、実減速度303は必要減速度401以上ではないため(ステップS80−N)、ステップS210でフラグFが1にセットされて、本制御フローはリセットされる。再度の制御フローでは、アクセルが全閉である場合(ステップS10−Y)には、フラグFが1であるので(ステップS20−1)、ステップS80に進み、ステップS80の条件が成立するまで繰り返される。
ステップS80の条件が成立したら(ステップS80−Y)、ステップS90に進む。図9では、符号Bに対応する時点で、実減速度303が必要減速度401以上となっている。なお、ステップS80以降においても、ステップS70のブレーキ制御(配分制御が含まれる)は、ステップS130にてブレーキ制御が終了するまで継続して実行される。
[ステップS90]
ステップS90では、制御回路130により、目標減速度304=必要減速度401に設定される。即ち、図9の符号Bに対応する場所(時点)以降は、実減速度303(初期目標減速度304a)のスウィープアップ領域は終了する。ステップS90において設定された後の目標減速度304は、ステップS60において設定された初期目標減速度304aと区別するために、非初期目標減速度304bと称する。ステップS90の次に、ステップS100が行われる。
なお、上記ステップS90では、目標減速度304の逐次計算が行われないものとして説明されているが、目標減速度304の逐次計算が行われることができる。即ち、上記ステップS90の内容に代えて、制御回路130により、必要減速度401が再計算により求められ、その求められた必要減速度401に応じて、目標減速度304が再設定されることができる。ステップS30の後に、減速制御(変速制御及びブレーキ制御の両方)が始まると(ステップS50、ステップS70)、車速や現在位置も変化するので、その変化に応じた必要減速度401が再度求められる。この場合、目標減速度304は、ここで求められた必要減速度401と同じ値又は近い値が設定されることができる。一度、車両に作用する減速度303が必要減速度401に到達した後であるので(ステップS80−Y)、目標減速度304が再計算された必要減速度401と同じ値又は近い値となっても、急激な制動によるショック・違和感は相対的に少ないためである。
[ステップS100]及び[ステップS220]
ステップS100では、制御回路130により、変速が終了したか否かが判定される。変速が終了したか否かは、図1のステップS9で説明した方法により検出されることができる。ステップS100の判定の結果、変速が終了していない場合には、フラグFが2にセットされた後に(ステップS220)、本制御フローはリセットされる。再度の制御フローでは、アクセルが全閉である場合(ステップS10−Y)には、フラグFが2であるので(ステップS20−2)、ステップS100に進み、ステップS100の条件が成立するまで繰り返される。
ステップS100の条件が成立したら(ステップS100−Y)、ステップS110に進む。図9では、符号Dの近傍に対応する時点で、変速が終了している。
[ステップS110]
ステップS110では、制御回路130により、目標減速度304(非初期目標減速度304b)の漸減指令が出力される。ステップS110の時点では、変速が終了しており、変速の終了後は、エンジンブレーキ力310の値は安定し、概ね一定である。そのため、目標減速度304の漸減指令がされると、その目標減速度304に漸減に対応するように、ブレーキ制御量302が漸減される。ステップS110の次には、ステップS120が行われる。なお、このステップS110の内容は、目標減速度304の漸減指令に代えて、変速が終了する前と同じ指令が継続される構成が採用されることが可能である。
[ステップS120]及び[ステップS230]
ステップS120では、制御回路130により、車両がコーナ402に進入したか否かが判定される。制御回路130は、ナビゲーションシステム装置95から入力した、車両の現在位置とコーナ402の入口403の位置を示すデータに基づいて、ステップS120の判定を行う。ステップS120の判定の結果、コーナ402に進入を開始した後であれば、ステップS130に進み、そうでない場合にはステップS230に進む。
本制御フローが実施された最初の段階では、車両はコーナ402に進入していないため(ステップS120−N)、ステップS230でフラグFが3にセットされて、本制御フローはリセットされる。再度の制御フローでは、アクセルが全閉である場合(ステップS10−Y)には、フラグFが3であるので(ステップS20−3)、ステップS120に進み、ステップS120の条件が成立するまで繰り返される。
ステップS120の条件が成立したら(ステップS120−Y)、ステップS130に進む。図9では、符号Eに対応する場所(時点)で、車両がコーナ402に進入している。
[ステップS130]
ステップS130では、制御回路130により、ブレーキ制御が終了される。車両がコーナ402に進入した後は、ブレーキによる制動力が車両に作用しない方が運転者にとって違和感が少ないためである。そのブレーキ制御の終了に際しては、ブレーキ力302がスウィープダウン(漸減)するように行われる。ブレーキ制御の終了は、ブレーキ制動力信号SG1によってブレーキ制御回路230に伝達される。図9では、コーナ進入が確認された場所(時点)(コーナ進入時点E)でブレーキ制御が終了されている。ステップS130の次には、ステップS140が行われる。
[ステップS140]
ステップS140では、制御回路130により、アップシフトが規制される。コーナ402に進入後のコーナリング中には、上記ステップS50でダウンシフトした変速段よりも相対的に高速用の変速段にアップシフトされることが規制される。通常一般のコーナに対する変速点制御においても、コーナ進入後のコーナリング中のアップシフトは禁止されている。なお、ダウンシフトに関しては、コーナ402に進入後のコーナリング中に、運転者がキックダウン等による加速力を望む場合があることに備えて、特に規制されない。ステップS140の次には、ステップS150に進む。
[ステップS150]及び[ステップS240]
ステップS150では、制御回路130により、車両がコーナ402を脱出したか否かが判定される。制御回路130は、、ナビゲーションシステム装置95から入力した、車両の現在位置とコーナ402の出口404の位置を示すデータに基づいて、ステップS150の判定を行う。ステップS150の判定の結果、コーナ402を脱出した後であれば、ステップS160に進み、そうでない場合にはステップS240に進む。
本制御フローが実施された最初の段階では、車両はコーナ402を脱出していないため(ステップS150−N)、ステップS240でフラグFが4にセットされて(ステップS240)、本制御フローはリセットされる。再度の制御フローでは、アクセルが全閉である場合(ステップS10−Y)には、フラグFが4であるので(ステップS20−4)、アップシフトが規制されたまま(ステップS140)、ステップS150に進み、ステップS150の条件が成立するまで繰り返される。
ステップS150の条件が成立したら(ステップS150−Y)、ステップS160に進む。図9では、符号Gに対応する場所(時点)で、車両がコーナ402を脱出している。
[ステップS160]
ステップS160では、制御回路130により、シフト規制が解除される。ステップS160の次には、ステップS170が行われる。
[ステップS170]
ステップS170では、制御回路130により、フラグFが0にセットされる。ステップS170の次には、本制御フローはリセットされる。
[ステップS180]〜[ステップS200]
ステップS180では、制御回路130により、ブレーキ制御の終了指令が出力される。ステップS180は、アクセルが非全閉であると判定されたときに(ステップS10−N)、行われるが、以下では、アクセルが非全閉であると判定された状況ごとに分けて説明する。
まず、本制御フローが実施された最初の段階(本制御が実行されていない段階)、即ち、フラグFが0であるときに、アクセルが非全閉であると判定された場合(ステップS10−N)について説明する。この場合、本制御(ブレーキ力の制御を含む)が開始されていないので、そのままの状態である(ステップS180)。ステップS180に次いで、ステップS190にてフラグFがチェックされ、この場合にはフラグFは0であるので(ステップS190−0)、本制御フローはリターンされる。
次に、ステップS80又はステップS100にて、それぞれの条件が成立するのを待っている段階で、アクセルが踏まれて非全閉であると判定された場合(ステップS10−N)について説明する。この場合、ブレーキ制御が終了され(ステップS180)、次いで、フラグFがチェックされ(ステップS190)、この場合にはフラグFは1又は2であるので(ステップS190−1or2)、フラグFが0にセットされてから(ステップS200)、本制御フローはリターンされる。この場合には、既に、本制御によるダウンシフトが行われているが(ステップS50)、そのダウンシフトされた変速段は、そのまま維持され、ブレーキ制御のみが終了される。変速の応答性は相対的に良くないため、再度アクセルがオフされた場合の対応等を考慮して、ダウンシフトされた変速段がそのまま維持されるようになっている。この場合、再度、アクセルが戻されて全閉とされれば、フラグFは0であるので(ステップS20−0)、再度ステップS30以降の制御が行われる。ここで、ステップS50においてダウン変速量が前回と同じであれば、同一の変速段への指令が出力される(変速せず)。
次に、ステップS120にて条件が成立するのを待っている段階(フラグFが3である状態)で、アクセルが踏まれた場合には、ブレーキ制御が終了された(ステップS180)後、そのまま本制御フローがリターンされる(ステップS190−3)。一方、コーナ402に進入した後、ステップS150にて条件が成立するのを待っている段階(フラグFが4である状態)において、アクセルが踏まれた場合には、ブレーキ制御が終了された(ステップS180)後、そのまま本制御フローがリターンされる(ステップS190−4)。この場合には、再度の制御フローにおいて、既にコーナ402に進入しているため、アクセルが全閉である場合(ステップS10−Y)には、コーナから脱出されるのを待ち(ステップS20−4、ステップS150)、アクセルが踏まれなければ、コーナ402を脱出した場所(時点)でシフト規制が解除される(ステップS160)。
図9のE点からコーナ402に進入し(ステップS120−Y)、アップシフトが規制され(ステップS140)、G点のコーナ402からの脱出(ステップS150−Y)により、シフト規制が解除される(ステップS160)。この間、アクセルが踏まれれば、ブレーキ制御は終了する。
なお、上記においては、本制御が行われているときに運転者によりブレーキ操作が行われた場合の取り扱いには触れていないが、運転者によりブレーキが操作されたときには、運転者によるブレーキ操作に従うことにし、ブレーキ制御が中止されるようにすることができる。
以上に述べた本実施形態によれば、以下の効果を奏することができる。
先方のコーナRに基づいて、変速機とブレーキを協調制御する技術において、通常時は、後輪ブレーキを主体に使用し、低μ路の場合、又は目標減速度が大きい場合には、その通常時よりも前輪ブレーキによる制動力の割合が増大するように前後輪のブレーキ制動力の割合が設定されることで、ブレーキ制動力の制御性の確保、車両安定性(低μ路判定)の確保、及び大きい制動力の確保を同時に実現することができる。
また、従来、変速段による減速度のみを用いてコーナRに基づく変速点制御を行っていた場合には、あるコーナRに基づく変速点制御において、大きな減速度が必要な場合であっても、変速段のみでその大きな減速度を発生させると、車両が不安定になるおそれを考慮して、十分に大きな減速度を与えることができなかった。変速段による減速度は、前後輪のうち、駆動輪のみに作用するため、大きな減速度を駆動輪のみに与えると、車両の安定性が十分に得られないことが考えられた。これに対して、本実施形態では、変速段のみならず、ブレーキを用いて、適正な前後配分比で減速度を発生させることができるため、車両の安定性を確保したまま大きな減速度を与えることができる。
有段の自動変速機を単独で用いる場合(ブレーキ制御装置を使用しない場合)、自動変速機が有段であるゆえに、必要減速度にあった減速度を出すことは難しい。また、車速の低下とともにエンジンブレーキ力は一般に低下するが、これを補正することも困難である。さらに、変速特性の自由度も低いため、所望の初期勾配を作ることも難しい。
これに対し、本実施形態では、ステップ状の減速度しか出せない有段の自動変速機に対して、アナログ値として減速度を出すことのできる(アナログ的な制御が可能な)ブレーキを併用することで、上記した有段の自動変速機を単独で用いた場合の問題点を解消し、最適な減速特性を得ることができる。コーナの入口までの距離や車速が様々な状況にある場合であっても、各状況に応じた必要な減速度を求め、自動変速機とブレーキを用いることで、その必要な減速度を確実かつ円滑に車両に作用させることができる。また、ブレーキと自動変速機の変速段の減速度を協調させることによって、コーナの立ち上がりも良好な加速特性を得ることができる。この場合、自動変速機のダウンシフトによる減速度(エンジンブレーキ力)が駆動輪に作用する分だけ、前後輪に対するブレーキによる制動力の配分比は、従動輪側を相対的に大きくすることが車両の安定性という点で有効である。
(第3実施形態)
次に、図10−1から図15を参照して、第3実施形態について説明する。
第3実施形態において、上記実施形態と共通する構成についての説明は省略する。
第3実施形態では、車間距離情報に基づいて、車間距離が所定値以下になったことを検出すると、制動装置の制御(自動ブレーキ制御)と変速制御(自動変速機によるダウンシフト制御)を協調して行うことにより、制動装置(ブレーキ)の応答性、制御性、ダウンシフトによるエンジンブレーキの増加の両方の利点を組合わせた、減速制御が提供され、その場合に、通常時には、後輪ブレーキのみを作動させ、路面が滑り易いと判定された場合、又は目標減速度が所定値を超えた場合には、前輪ブレーキと後輪ブレーキの両方を作動させる。
図10−1、及び図10−2を参照して、本実施形態の動作を説明する。
[ステップS1]
まず、図10−1のステップS1に示すように、制御回路130では、車間距離計測部101から入力した車間距離を示す信号に基づいて、自車と前方の車両との車間距離が所定値以下であるか否かを判定する。ステップS1の結果、車間距離が所定値以下であると判定されれば、ステップS2に進む。一方、車間距離が所定値以下であると判定されなければ、本制御フローは終了する。
制御回路130では、車間距離が所定値以下であるか否かを直接的に判定する代わりに、車間距離が所定値以下に詰まったことが判るパラメータ、例えば衝突時間(車間距離/相対車速)、車間時間(車間距離/自車速)、それらの組み合わせなどにより、間接的に車間距離が所定値以下であるか否かを判定してもよい。
[ステップS2]
ステップS2では、制御回路130により、スロットル開度センサ114からの信号に基づいて、アクセルがOFFの状態か否かが判定される。ステップS2の結果、アクセルがOFFの状態であると判定されれば、ステップS3に進む。ステップS3から車両の追従制御が開始される。一方、アクセルがOFFの状態であると判定されなければ、本制御フローは終了する。
[ステップS3]
ステップS3では、制御回路130により、目標減速度が求められる。目標減速度は、自車に対してその目標減速度に基づく減速制御(後述)が行われたときに、前方車両との関係が目標の車間距離や相対車速になるような値(減速加速度)として求められる。目標減速度を示す信号は、ブレーキ制動力信号SG1として、制御回路130からブレーキ制動力信号線L1を介してブレーキ制御回路230に出力される。
目標減速度は、予めROM133に記憶された目標減速度マップ(図11)を参照して求められる。図11に示すように、目標減速度は、自車と前方車両との相対車速[km/h]と車間時間[sec]に基づいて求められる。なお、ここで、車間時間は、上記の通り、車間距離/自車速である。
図11において、例えば、相対車速が−20[km/h]であって、車間時間が1.0[sec]であるときの目標減速度は−0.20(G)である。自車と前方車両との関係が安全な相対車速や車間距離に近づく程、目標減速度は、小さな値として(減速しないように)設定される。即ち、目標減速度は、自車と前方車両との距離が十分に確保される程、図11の目標減速度マップの右上側の小さな値として求められ、自車と前方車両とが接近している程、同目標減速度マップの左下側の大きな値として求められる。
このステップS3で求められる目標減速度は、減速制御の開始条件(ステップS1及びS2)が成立した後、変速制御(ステップS6)及びブレーキ制御(ステップS7)が実際に実行される前の時点(減速制御開始時点)での目標減速度として、特に、最大目標減速度と称される。即ち、目標減速度は、後述するように、減速制御の途中段階においてもリアルタイムに求められるため、ブレーキ制御及び変速制御が実際に実行された後(実行継続中)に求められる目標減速度と区別する意味で、ステップS3で求められる目標減速度は、特に、最大目標減速度と称される。ステップS3の次に、ステップS4が実行される。
[ステップS4]
ステップS4では、制御回路130により、自動変速機10による目標減速度(以下、変速段目標減速度)が求められ、その変速段目標減速度に基づいて、自動変速機10の変速制御(シフトダウン)に際して選択すべき変速段が決定される。以下、このステップS4の内容を(1)、(2)に項分けして説明する。
(1)まず、変速段目標減速度を求める。
変速段目標減速度は、自動変速機10の変速制御により得ようとするエンジンブレーキ力(減速加速度)に対応したものである。変速段目標減速度は、最大目標減速度以下の値として設定される。変速段目標減速度の求め方としては、以下の3つの方法が考えられる。
まず、変速段目標減速度の第1の求め方について説明する。
変速段目標減速度は、ステップS3において図11の目標減速度マップにより求めた最大目標減速度に、0よりも大きく1以下の係数を乗算した値として設定する。例えば、ステップS3の上記例の場合と同様に、最大目標減速度が−0.20Gである場合には、例えば0.5の係数を乗算してなる値である、−0.10Gが変速段目標減速度として設定されることができる。
次に、変速段目標減速度の第2の求め方について説明する。
予めROM133に、変速段目標減速度マップ(図12)が登録されている。図12の変速段目標減速度マップが参照されて、変速段目標減速度が求められる。図12に示すように、変速段目標減速度は、図11の目標減速度と同様に、自車と前方車両との相対車速[km/h]と車間時間[sec]に基づいて求められる。例えば、ステップS3の上記例の場合と同様に、相対車速が−20[km/h]であって、車間時間が1.0[sec]である場合には、−0.10Gが変速段目標減速度として求められる。図11及び図12から明らかなように、相対車速が大きく急激に接近する場合、車間時間が短い場合、あるいは車間距離が短い場合は、早期に車間距離を適正な状態にする必要があるため、減速度をより大きくする必要がある。また、このことから、上記の状況ではより低速段が選択されることになる。
次に、変速段目標減速度の第3の求め方について説明する。
まず、自動変速機10の現状のギヤ段のアクセルOFF時のエンジンブレーキ力(減速G)を求める(以下、現状ギヤ段減速度と称する)。予めROM133に現状ギヤ段減速度マップ(図3と同様のマップ)が登録されている。図3の現状ギヤ段減速度マップが参照されて、現状ギヤ段減速度(減速加速度)が求められる。図3に示すように、現状ギヤ段減速度は、ギヤ段と自動変速機10の出力軸120cの回転数NOに基づいて求められる。例えば、現状ギヤ段が5速で出力回転数が1000[rpm]であるときには、現状ギヤ段減速度は−0.04Gである。
次いで、現状ギヤ段減速度と最大目標減速度との間の値として、変速段目標減速度が設定される。即ち、変速段目標減速度は、現状ギヤ段減速度よりも大きく、最大目標減速度以下の値として求められる。変速段目標減速度と現状ギヤ段減速度及び最大目標減速度との関係の一例を図13に示す。
変速段目標減速度は、以下の式により求められる。
変速段目標減速度=(最大目標減速度−現状ギヤ段減速度)×係数+現状ギヤ段減速度
上記式において、係数は0より大きく1以下の値である。
上記例では、最大目標減速度=−0.20G、現状ギヤ段減速度=−0.04Gであり、係数を0.5と設定して計算すると、変速段目標減速度は−0.12Gとなる。
上記のように、変速段目標減速度の第1及び第3の求め方では、係数が用いられたが、その係数の値は、理論上から求まる値ではなく、各種条件から適宜設定可能な適合値である。即ち、例えば、スポーツカーでは、減速すべきときには相対的に大きな減速度が好まれるため、上記係数の値を大きな値に設定することができる。また、同じ車両であっても、車速やギヤ段に応じて、上記係数の値を可変に制御することができる。
変速段目標減速度は、このステップS4で求められた後は、減速制御が終了するまで再度設定し直されることはない。即ち、変速段目標減速度は、この減速制御開始時点(変速制御(ステップS6)及びブレーキ制御(ステップS7)が実際に実行される前の時点)で求められた後は、減速制御が終了するまで同じ値として設定される。図13に示すように、変速段目標減速度(破線で示される値)は、時間が経過しても同じ値である。
(2)次に、上記(1)で求めた変速段目標減速度に基づいて、自動変速機10の変速制御に際して選択すべき変速段が決定される。予めROM133に、図14に示すようなアクセルOFF時の各ギヤ段の車速毎の減速Gを示す車両特性のデータが登録されている。
ここで、上記例と同様に、出力回転数が1000[rpm]であり、変速段目標減速度が−0.12Gである場合を想定すると、図14において、出力回転数が1000[rpm]のときの車速に対応し、かつ変速段目標減速度の−0.12Gに最も近い減速度となるギヤ段は、4速であることが判る。これにより、上記例の場合、ステップS4では、選択すべきギヤ段は、4速であると決定される。
なお、ここでは、変速段目標減速度に最も近い減速度となるギヤ段を選択すべきギヤ段として選択したが、選択すべきギヤ段は、変速段目標減速度以下(又は以上)の減速度であって変速段目標減速度に最も近い減速度となるギヤ段を選択してもよい。ステップS4の次にステップS5が実行される。
[ステップS5]
ステップS5では、制御回路130により、アクセルがOFFの状態でかつブレーキがOFFの状態であるか否かが判定される。ステップS5において、ブレーキがOFF状態であるとは、運転者によるブレーキペダル(図示せず)の操作がなくてブレーキがOFF状態であることを意味しており、ブレーキ制御回路230を介して入力したブレーキセンサ(図示せず)の出力に基づいて判定される。ステップS5の判定の結果、アクセルがOFFの状態でかつブレーキがOFFの状態であると判定されれば、ステップS6に進む。一方、アクセルがOFFの状態でかつブレーキがOFFの状態であると判定されなければ、ステップS11に進む。
図15は、本実施形態の減速制御を説明するためのタイムチャートである。図15には、現状ギヤ段減速度、変速段目標減速度、最大目標減速度、自動変速機10の変速段、自動変速機10(AT)の入力軸回転数、ATの出力軸トルク、ブレーキ力、アクセル開度が示されている。
図15のT0の時点では、符号501に示すように、アクセルがOFF(アクセル開度が全閉)の状態で、かつ符号502に示すように、ブレーキがOFF(ブレーキ力がゼロ)の状態である。この時点T0において、現在の減速度(減速加速度)は、符号503に示すように、現状ギヤ段減速度と同じである。
[ステップS6]
ステップS6では、制御回路130により、変速制御が開始される。即ち、ステップS4で決定された選択すべきギヤ段(上記例では、4速)に変速制御される。図15のT0の時点において、符号504に示すように、自動変速機10は変速制御によりダウンシフトされている。それに伴い、エンジンブレーキ力が増加し、T0の時点から現在の減速度503は増加する。ステップS6の次に、ステップS7が実行される。
[ステップS7]
ステップS7では、ブレーキ制御回路230により、ブレーキ制御が開始される。即ち、目標減速度まで、ブレーキ力を予め決められていた所定の勾配で増加させる(スウィープ制御)。図15のT0〜T1の時点において、ブレーキ力502が所定の勾配で増加し、それに伴い、現在の減速度503は増加し、T1の時点にて、現在の減速度503が目標減速度に達するまでブレーキ力502は増加し続ける(ステップS8)。
ステップS7の上記所定の勾配は、ブレーキ制御信号SG2の生成時に参照されるブレーキ制動力信号SG1によって定められる。上記所定の勾配は、ブレーキ制動力信号SG1に含まれる、路面の摩擦係数μや本制御の開始時(図15のT0の時点の直前)のアクセルの戻し速度、アクセルを戻す前の開度に基づいて変更される。例えば、路面の摩擦係数μが低い場合には勾配(傾斜)は小さくされ、アクセル戻し速度又はアクセルを戻す前の開度が大きい場合には勾配を大きくされる。
上記のように、所定の勾配でブレーキ力502を増加させる方法に代えて、現在の減速度503が目標減速度となるように、現在の減速度503と目標減速度との偏差に基づいて、車両に与えるブレーキ力502のフィードバック制御を行うことができる。また、ブレーキ制御によるブレーキ力502は、自動変速機10の入力軸回転数の時間微分値とイナーシャにより決まる変速イナーシャトルク分を考慮して決定してもよい。
ここで、ステップS7における「目標減速度」には、ステップS3で求められた最大目標減速度と、後述するステップS9で再度求められる目標減速度の両方が含まれ、ステップS7のブレーキ制御は、ステップS11にてブレーキ制御が終了するまで継続して実行される。
また、ステップS7では、前輪と後輪のブレーキ力(制動力)の配分が制御される。この前輪の制動力と後輪の制動力の配分制御の方法は、上記第1実施形態と同様に、図4に示す方法で行われることができる。この場合、図4のステップSA20では、ステップS7における上記「目標減速度」と所定値とが比較されることができる。
即ち、最初の時点では、ステップSA20において、ステップS7における上記「目標減速度」は所定値よりも大きいと判定されていたが、車間距離が小さくなるに連れて、ステップS7における上記「目標減速度」が小さくなると、「目標減速度」は所定値よりも小さいと判定されるに至り、それに応じて、前後ブレーキ力の配分がステップSA40からステップSA30の内容に変更されることができる。また、上記第1実施形態の第1変形例から第3変形例は、ステップS7における前輪と後輪のブレーキ力の配分制御に適用可能である。ステップS7の次には、ステップS8が実行される。
[ステップS8]
ステップS8では、制御回路130により、現在の減速度503が目標減速度であるか否かが判定される。その判定の結果、現在の減速度503が目標減速度であると判定されれば、ステップS9に進む。一方、現在の減速度503が目標減速度であると判定されなければ、ステップS7に戻る。図15のT1の時点までは現在の減速度503は目標減速度に到達していないため、それまではステップS7においてブレーキ力502が所定の勾配で増加される。
[ステップS9]
図10−2に示すように、ステップS9では、目標減速度が再度求められる。制御回路130は、ステップS3と同様に、上記目標減速度マップ(図11)を参照して、目標減速度を求める。目標減速度は、上述した通り、相対車速や車間距離に基づいて設定されており、減速制御(変速制御及びブレーキ制御の両方)が始まると、相対車速や車間距離も変化するので、その変化に応じた目標減速度がリアルタイムで求められる。
ステップS9にてリアルタイムに目標減速度が求められると、ステップS7にて開始されて継続中のブレーキ制御により、現在の減速度503が目標減速度になるようにブレーキ力502が与えられる(ステップS7、S8参照)。
ステップS9の目標減速度を求める動作は、ステップS11にてブレーキ制御が終了するまで継続して行われる。後述するように、ブレーキ制御は、現在の減速度503が変速段目標減速度に一致するまで、継続される(ステップS10、S11)。上記のように、現在の減速度503は、目標減速度に一致するように制御されるため(ステップS7、S8)、結果として、ステップS9の目標減速度を求める動作は、その求めた目標減速度が変速段目標減速度に一致するまで継続される。
ステップS9の時点では、既に減速制御が行われている分だけ、減速制御開始前のステップS3の時点よりも自車の車速が低下している。このことから、ステップS9において、目標の車間距離や相対車速にするために求められる目標減速度は、通常、ステップS3で求めた最大目標減速度に比べて小さな値となる。
図15のT1〜T7の時点では、“リアルタイムに目標減速度を求めて現在の減速度503がその目標減速度に合うようにブレーキ力502を与える”という動作が繰り返されるが、その間、ブレーキ制御が継続される結果として、ステップS9で繰り返し求められる目標減速度が漸次小さくなり、その目標減速度の値の減少に応じて、ブレーキ制御で与えられるブレーキ力502も漸次小さくなり、現在の減速度503は、その目標減速度に概ね一致しながら漸次減少する。ステップS9の次には、ステップS10が実行される。
[ステップS10]及び[ステップS11]
ステップS10では、制御回路130により、現在の減速度503が変速段目標減速度に一致したか否かが判定される。その判定の結果、現在の減速度503が変速段目標減速度に一致したと判定されれば、ブレーキ制御は終了する(ステップS11)。ブレーキ制御の終了は、ブレーキ制動力信号SG1によってブレーキ制御回路230に伝達される。一方、現在の減速度503が変速段目標減速度に一致しなければ、ブレーキ制御は終了しない。図15のT7の時点で現在の減速度503が変速段目標減速度に一致するので、車両に与えられるブレーキ力502はゼロになる(ブレーキ制御の終了)。
[ステップS12]
ステップS12では、制御回路130により、アクセルがONにされたか否かが判定される。アクセルがONにされた場合には、ステップS13に進む。アクセルがONにされていない場合には、ステップS16に進む。図15の例では、T8の時点でアクセルがONにされたと判定される。
[ステップS13]
ステップS13では、復帰タイマーがスタートする。図15の例では、T8の時点から復帰タイマーがスタートする。ステップS13の次にステップS14に進む。復帰タイマーは、制御回路130のCPU131に設けられている(図示せず)。
[ステップS14]
ステップS14では、制御回路130により、復帰タイマーのカウント値が所定値以上であるか否かが判定される。カウント値が所定値以上でなければ、ステップS12に戻る。カウント値が所定値以上になれば、ステップS15に進む。図15の例では、T9の時点でカウント値が所定値以上となる。
[ステップS15]
ステップS15では、制御回路130による、変速制御(ダウンシフト制御)が終了し、予めROM133に格納された通常の変速マップ(変速線)に従いアクセル開度と車速に基づき決定される変速段に復帰する。図15の例では、T9の時点で変速制御が終了し、アップシフトが実施される。ステップS15が実施されると、本制御フローは終了する。
[ステップS16]
ステップS16では、制御回路130により、車間距離が所定値を超えたか否かが判定される。このステップS16は、ステップS1に対応したものである。車間距離が所定値を超えていると判定されれば、ステップS15に進む。車間距離が所定値を超えていると判定されなければ、ステップS12に戻る。
以上に述べた本実施形態によれば、以下の効果を奏することができる。
車間距離に基づいて、変速機とブレーキを協調制御する技術において、通常時は、後輪ブレーキを主体に使用し、低μ路の場合、又は目標減速度が大きい場合には、その通常時よりも前輪ブレーキによる制動力の割合が増大するように前後輪のブレーキ制動力の割合が設定されることで、ブレーキ制動力の制御性の確保、車両安定性(低μ路判定)の確保、及び大きい制動力の確保を同時に実現することができる。
本実施形態では、変速段目標減速度が現状ギヤ段減速度と最大目標減速度との間になるように設定される(ステップS4)。即ち、選択すべきギヤ段へのダウンシフト(変速制御)により得られるエンジンブレーキ力による減速度が、減速制御開始前の変速段のエンジンブレーキ力(現状ギヤ段減速度)と最大目標減速度との間となるように設定される(ステップS4)。これにより、ブレーキ制御と変速制御を協調して同時に行う減速制御を実施した場合(ステップS6、S7)であっても、過度な減速度にならず、運転者に違和感を与えることがない。しかも、車間距離や相対車速が目標値に到達し、ブレーキ制御を終了した後(ステップS11)でも、ダウンシフトによるエンジンブレーキが継続して効くので、ブレーキ制御の終了(ステップS11)に伴う車速の増加(特に下り坂の場合)によるブレーキ制御のハンチングも有効に抑えられる。
また、本実施形態では、現在の減速度503が最大目標減速度に一致(ステップS8)した後の、図15のT1〜T7の時点では、現在の減速度503は、リアルタイムに演算される目標減速度に概ね一致しながら漸次減少し、ステップS10及びS11に示すように、目標減速度(ここでは現在の減速度503と同じ)が変速段目標減速度に一致するまで減少した時点で、ブレーキ制御は終了する。つまり、ブレーキ制御は、リアルタイムに演算される目標減速度が変速段目標減速度(ダウンシフト制御後の減速度)に一致したときに、終了する。即ち、目標減速度(ここでは現在の減速度503)が、減速制御が開始された時点(T0)での減速度(現状ギヤ段減速度)に戻るまでブレーキ制御が継続されるわけではない。
仮に変速制御を行うことなくブレーキ制御のみで減速制御を行う場合には、目標減速度が現状ギヤ段減速度近くまで戻り、現状ギヤ段減速度のみで目標の車間距離や相対車速が実現される状態になるまで、ブレーキ制御を継続する必要がある。これに対し、本実施形態では、変速制御とブレーキ制御とが同時に協調して実行されるため、目標減速度が変速制御により得られる減速度(変速段目標減速度)に概ね一致し、変速制御により得られる減速度のみで目標の車間距離や相対車速が実現される状態になると、ブレーキ制御を終了することができる。これにより、本実施形態では、より短い時間でブレーキ制御を終了することができる。これにより、ブレーキの耐久性が確保(ブレーキのフェードやパッド、ディスクの磨耗の防止)される。
また、本実施形態では、ブレーキ制御は、目標減速度(ここでは現在の減速度503)が変速段目標減速度(ダウンシフト制御後の減速度)に一致したときに終了し、その時点から変速制御のみの減速制御が行われる(ステップS10、S11、図15のT7)。これにより、現在の減速度503と変速制御後の減速度(エンジンブレーキ力による減速度)とが概ね一致した状態で、変速制御のみの減速制御になるので、エンジンブレーキ力による減速にスムーズに移行することができる。
上記のように、ブレーキ制御は、目標減速度が変速段目標減速度(変速制御後のエンジンブレーキ力による減速度)に概ね一致したときに終了する。一方、変速制御は、ブレーキ制御終了(ステップS11)後のアクセルオンから所定時間経過後(ステップS12、S13)か、又はブレーキ制御終了後に車間距離が所定値を超えた時(ステップS16)に、終了する。このように、ブレーキ制御と変速制御の終了(復帰)条件を分けることにより、ブレーキ制御は短時間で終了することができ、ブレーキの耐久性の確保につながる。また、車間距離が所定値を超えない限り、変速制御が終了しないため、エンジンブレーキが継続して効く。
(第4実施形態)
次に、図16及び図17を参照して、第4実施形態について説明する。
第4実施形態において、上記実施形態と共通する部分についての説明は省略し、特徴部分についてのみ説明する。
上記第1から第3実施形態では、ブレーキ装置200と自動変速機10の協調制御により減速制御が行われたが、第4実施形態では、自動変速機10の変速制御を用いることなく、ブレーキ装置200の単独により減速制御が行われる。以下、上記第2実施形態と対比しつつ説明する。
第4実施形態では、図16に示すように、図6−1及び図6−2と異なり、上記第2実施形態のステップS50、ステップS100、ステップS140、及びステップS160に対応するステップが無い。第4実施形態では、コーナに対する変速点制御として、自動変速機10のダウンシフトを行うことがなく、また、変速に関する規制が行われることが無い。
即ち、第4実施形態では、図17に示すように、必要減速度401ないし目標減速度304に対応する減速がブレーキ装置200のみを用いて実施される。第4実施形態では、上記第2実施形態における自動変速機10の変速によるエンジンブレーキ力に対応する減速度の分まで、ブレーキ装置200のみで出すことになる。
第4実施形態では、必要減速度ないし目標減速度に対応する減速がブレーキ装置200のみを用いて実施され、そのステップSC60におけるブレーキ制御(フィードバック制御)の際に、前後輪に対するブレーキ力の配分制御が行われる点については、上記第2実施形態と共通である。
その前後輪に対するブレーキ力の配分制御は、図4に示す方法で行われることができ、またさらに、上記第1実施形態の第1変形例から第3変形例が適用可能である。また、これらに代えて、以下の方法が採用されることができる。
即ち、上記通常時(図4のステップSA20−N)には、前輪ブレーキと後輪ブレーキの両方が使用されるが、後輪ブレーキが主体に使用され(後輪のブレーキによる制動力>前輪のブレーキによる制動力)、上記通常時以外の場合、即ち、車両が走行している路面が低μ路である場合(ステップSA10−Y)、又は、目標減速度が所定値よりも大きい場合(ステップSA20−Y)には、上記通常時の場合に比べて、後輪のブレーキによる制動力と前輪のブレーキによる制動力の比が50:50に近づくように、設定される。
上記では、コーナR、道路勾配に基づいて自動的に車両の減速制御が行われるときに、変速機の変速を伴わずに、制動装置の作動のみで車両の減速制御を行う技術について説明したが、第4実施形態は、コーナR、道路勾配に基づく制御に限定されない。即ち、第4実施形態のように、自動変速機10の変速制御を用いることなく、ブレーキ装置200の単独により減速制御が行われる技術は、例えば、先行車との車間距離などの車両前方の状況に基づいて、自動的に車両の減速制御が行われるときに、変速機の変速を伴わずに、制動装置の作動のみで車両の減速制御を行う技術に対しても適用可能である。
なお、上記実施形態のそれぞれにおけるブレーキ制御は、上記ブレーキに代えて、パワートレーン系に設けたMG(モータジェネレータ)装置による回生ブレーキなどの他の、車両に制動力を生じさせる制動装置を用いても可能である。この場合、前輪及び後輪の両方にMG装置が設けられる場合には、前後輪のブレーキによる制動力の制御性とともにMG装置による回生動作量の制御性を考慮して、前後配分比を制御することが可能であり、前輪にのみMG装置が設けられる場合には、制動力の制御性の良い後輪のブレーキ力と、(大容量の前輪ブレーキによるブレーキ力+MG装置による回生動作量)との間でバランスをとることができる。
また、上記においては、変速機として、有段の自動変速機10を用いた例について説明したが、無段変速機(CVT)にも適用することが可能である。更に、上記においては、車両が減速すべき量を示す減速度は、減速加速度(G)を用いて説明したが、減速トルクをベースに制御を行うことも可能である。
本発明の車両の減速制御装置の第1実施形態の動作を示すフローチャートである。 本発明の車両の減速制御装置の第1実施形態の概略構成図である。 本発明の車両の減速制御装置の第1実施形態における出力軸回転数と変速段に応じて生じる減速度を示す図である。 本発明の車両の減速制御装置の第1実施形態における制動力の配分比を求める動作を示すフローチャートである。 本発明の車両の減速制御装置の第1実施形態の動作を示すタイムチャートである。 本発明の車両の減速制御装置の第2実施形態の動作の一部を示すフローチャートである。 本発明の車両の減速制御装置の第2実施形態の動作の他の一部を示すフローチャートである。 本発明の車両の減速制御装置の第2実施形態における制御実施境界線を説明するための図である。 本発明の車両の減速制御装置の第2実施形態におけるダウンシフト判定マップである。 本発明の車両の減速制御装置の第2実施形態の動作を示すタイムチャートである。 本発明の車両の減速制御装置の第3実施形態の動作の一部を示すフローチャートである。 本発明の車両の減速制御装置の第3実施形態の動作の他の一部を示すフローチャートである。 本発明の車両の減速制御装置の第3実施形態における目標減速度マップを示す図である。 本発明の車両の減速制御装置の第3実施形態における変速段目標減速度マップを示す図である。 本発明の車両の減速制御装置の第3実施形態における変速段目標減速度と、現状ギヤ段減速度と最大目標減速度との関係を示す図である。 本発明の車両の減速制御装置の第3実施形態における各ギヤ段の車速毎の減速度を示す図である。 本発明の車両の減速制御装置の第3実施形態の動作を示すタイムチャートである。 本発明の車両の減速制御装置の第4実施形態の制御内容を示すフローチャートである。 本発明の車両の減速制御装置の第4実施形態の動作を示すタイムチャートである。
符号の説明
10 自動変速機
40 エンジン
90 加速度センサ
91 舵角センサ
92 路面μ検出・推定部
93 マニュアルシフト判断部
95 ナビゲーションシステム装置
97 相対車速検出・推定部
101 車間距離計測部
114 スロットル開度センサ
116 エンジン回転数センサ
117 パターンセレクトスイッチ
122 車速センサ
123 シフトポジションセンサ
130 制御回路
131 CPU
133 ROM
200 ブレーキ装置
230 ブレーキ制御回路
301 アクセル開度
302 ブレーキ力(自動ブレーキ)
303 現在の減速度
304 目標減速度
304a 初期目標減速度
304b 非初期目標減速度
305 前輪の制動力
306 後輪の制動力
307 入力回転速度
310 エンジンブレーキ力
401 必要減速度
402 コーナ
403 入口
404 出口
405 コーナR
406 目標車速
501 アクセル開度
502 ブレーキ力(自動ブレーキ)
503 現在の減速度
504 変速段
601 アクセル開度
602 自動変速機の変速による減速度
602max 自動変速機の変速による減速度の最大値
603 目標減速度
604 車両に作用する実際の減速度
606 ブレーキ制御量
608 クラッチトルク
Gt 最大目標減速度
ta ダウンシフト指令から変速が開始されるまでの時間
L 制御実施境界線
L1 ブレーキ制動力信号線
SG1 ブレーキ制動力信号
SG2 ブレーキ制御信号

Claims (4)

  1. ブレーキによる制動と、変速機を相対的に低速用の変速段又は変速比に変速する変速動作とにより減速制御を行う車両の減速制御装置であって、
    路面の滑り易さが所定値よりも大きくないときには、路面の滑り易さが前記所定値よりも大きいときに比べて、前記ブレーキによる制動力に占める前記ブレーキにより後輪に加えられる制動力の割合が大きくされる
    ことを特徴とする車両の減速制御装置。
  2. ブレーキによる制動と、変速機を相対的に低速用の変速段又は変速比に変速する変速動作とにより減速制御を行う車両の減速制御装置であって、
    前記車両の減速制御装置により生じさせるべき目標減速度が所定値よりも大きくないときには、目標減速度が前記所定値よりも大きいときに比べて、前記ブレーキによる制動力に占める前記ブレーキにより後輪に加えられる制動力の割合が大きくされる
    ことを特徴とする車両の減速制御装置。
  3. ブレーキによる制動により減速制御を行う車両の減速制御装置であって、
    路面の滑り易さが所定値よりも大きくないときには、路面の滑り易さが前記所定値よりも大きいときに比べて、前記ブレーキによる制動力に占める前記ブレーキにより後輪に加えられる制動力の割合が大きくされる
    ことを特徴とする車両の減速制御装置。
  4. ブレーキによる制動により減速制御を行う車両の減速制御装置であって、
    前記車両の減速制御装置により生じさせるべき目標減速度が所定値よりも大きくないときには、目標減速度が前記所定値よりも大きいときに比べて、前記ブレーキによる制動力に占める前記ブレーキにより後輪に加えられる制動力の割合が大きくされる
    ことを特徴とする車両の減速制御装置。
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