JP2006013463A - Iii族窒化物半導体発光素子 - Google Patents

Iii族窒化物半導体発光素子 Download PDF

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Abstract

【課題】 圧縮歪が緩和された多重量子井戸構造の発光層を有する高強度の発光をもたらすIII族窒化物半導体発光素子を提供すること。
【解決手段】 基板101上にn型層104,105、発光層106およびp型層107,108を有し、当該発光層が井戸層106bおよび障壁層106あが交互に積層された多重量子構造からなり、当該発光層がn型層とp型層で挟まれるように配置され、当該障壁層が層内全体に亙って不純物を含有し、かつ、厚み方向における中央部の該不純物の濃度が井戸層に接する部分よりも高濃度であることを特徴とするIII族窒化物半導体発光素子。
【選択図】 図2

Description

本発明はIII族窒化物半導体発光素子に関し、特に特定の多重量子井戸構造の発光層を有する高強度の発光をもたらすIII族窒化物半導体発光素子に関する。
従来から、III族窒化物半導体は、短波長の可視光を放射する発光ダイオード(LED)等のpn接合型ヘテロ接合構造のIII族窒化物半導体発光素子を構成するための機能材料として利用されている(例えば特許文献1参照)。例えば、近紫外帯、青色帯、或いは緑色帯の発光を呈するLEDを構成するに際し、n型またはp型の窒化アルミニウム・ガリウム(AlXGaYN:0≦X,Y≦1、X+Y=1)は、クラッド層を構成するために利用されている(例えば特許文献2参照)。また、窒化ガリウム・インジウム(GaYInZN:0≦Y,Z≦1、Y+Z=1)は、発光層を構成するのに利用されている(例えば特許文献3参照)。
従来に於いて、数量的に単一のGaYInZN(0≦Y,Z≦1、Y+Z=1)層から発光層を構成する技術例が開示されている(例えば特許文献3参照)。また、量子井戸構造と称する超格子構造から発光層を構成する例も知られている(例えば特許文献4参照)。量子井戸構造とは、障壁層と井戸層とを交互に積層させた、周期的な積層構造を指している(例えば特許文献5参照)。例えば、Ga0.7In0.3N層を井戸層とし、窒化ガリウム(GaN)を障壁層として多重量子井戸構造の発光層を構成する実施例が開示されている(例えば特許文献4参照)。
更に、多重量子井戸構造を構成する井戸層に水平方向に圧縮歪みが加わることによって発生するピエゾ電界による発光強度の低下を押さえるための提案が幾つかなされている。例えば、不純物の濃度を徐々に減少させた障壁層を用いたり、不純物の濃度を階段状に変化させた障壁層を利用している(例えば特許文献1参照)。また、上記のピエゾ電界の発生を抑止するために、n型不純物がドーピングされたn型領域とアンドープ領域とを含む障壁層を用いて量子井戸構造の発光層を構成する技術が開示されている(例えば特許文献2参照)。一方、前出の特許文献4には、順方向電圧の低い窒化物半導体発光素子を得るために、不純物がドーピングされたGaN層とその両側に配置されたアンドープのGaN層との重層構造からなる障壁層が開示されている。
しかしながら、III族窒化物半導体発光素子に於ける上記のピエゾ電界に因る発光強度の低下や加えて発光波長の長波長化の問題を充分に解決するには未だ至っていない。例えば、(1)前出の特許文献5に開示されている、アンドープ井戸層とSiドープ障壁層との接合からなる多重量子井戸構造では、井戸層中の点欠陥が増加して、結晶性が低下し、発光強度が低下する。また、(2)前出の特許文献1に開示される、ドーピングするSiの濃度が階段状に変化した障壁層を用いた多重量子井戸構造にしても、上記の様なピエゾ電界の影響を必ずしも充分に排除できない。また、(3)前出の特許文献4に開示される、アンドープ領域の両側をn型不純物がドーピングされた領域で挟持した構成の障壁層を用いて多重量子井戸構造にしてもピエゾ電界の影響を充分に排除するのは困難である。
一方、前出の特許文献2に記載の発明では、上記(1)乃至(3)項の従来技術の欠点を解決して、ピエゾ電界の影響を充分に排除し、発光強度に優れた半導体素子を提供できるとされている。
しかしながら、本発明者が鋭意検討したところ、特許文献2に開示される、n型不純物がドーピングされたn型領域とアンドープ領域とを含む障壁層を利用して多重量子井戸構造の発光層を構成しても、未だ、ピエゾ電界の影響の排除と発光強度の向上とを、必ずしも、充分に両立させて達成できないことが確認されている。
特開2000−332364号公報 特開2003−229645号公報 特公昭55−3834号公報 特開2001−102629号公報 特開2000−133883号公報
本発明は上記従来技術の問題点を解決するためになされたものであり、本発明の目的は圧縮歪が緩和された多重量子井戸構造の発光層を有する高強度の発光をもたらすIII族窒化物半導体発光素子を提供することである。
本発明者は、従来技術が有する問題点の主たる原因が、(a)障壁層におけるアンドープ領域またはアンドープ層のキャリア濃度が不安定であること、及び(b)井戸層と不純物を高濃度にドーピングした障壁層とが接していることにあると解明した。これらの(a)及び(b)項の何れの原因からも、発光層はピエゾ電界を排除できない程不安定となり、ピエゾ電界の影響を受けて、電子−正孔間の放射再結合確率が不安定となる。その結果、例えば、発光強度の低いIII族窒化物半導体発光素子となる。本発明は、前記の(a)及び(b)の原因を、多重量子井戸構造の発光層を構成する障壁層に、新たな構成要件を加えることによって、発光強度を向上させ、高い発光強度のIII族窒化物半導体発光素子を提供するものである。
すなわち、本発明は以下の発明を提供する。
(1)基板上にn型層、発光層およびp型層を有し、当該発光層が井戸層および障壁層が交互に積層された多重量子構造からなり、当該発光層がn型層とp型層で挟まれるように配置され、当該障壁層が層内全体に亙って不純物を含有し、かつ、厚み方向における中央部の不純物の濃度が井戸層に接する部分よりも高濃度であることを特徴とするIII族窒化物半導体発光素子。
(2)基板上にn型層、発光層およびp型層を有し、当該発光層が井戸層および障壁層が交互に積層された多重量子構造からなり、当該発光層がn型層とp型層で挟まれるように配置され、当該障壁層が層内全体に亙って不純物を含有し、かつ、厚み方向における中央部の該不純物の濃度が井戸層に接する部分よりも高い高ドーピング領域と、井戸層に接し、不純物濃度の低い低ドーピング領域を有することを特徴とするIII族窒化物半導体発光素子。
(3)障壁層の厚さが5〜50nmであることを特徴とする上記1または2項に記載のIII族窒化物半導体発光素子。
(4)高ドーピング領域の不純物濃度が1×1018cm-3以上1×1019cm-3以下であることを特徴とする上記2または3項に記載のIII族窒化物半導体発光素子。
(5)低ドーピング領域の不純物濃度が1×1016cm-3以上1×1018cm-3未満であることを特徴とする上記2〜4項のいずれか一項に記載のIII族窒化物半導体発光素子。
(6)高ドーピング領域の厚さが2.5〜45nmであることを特徴とする上記2〜5項のいずれか一項に記載のIII族窒化物半導体発光素子。
(7)低ドーピング領域の厚さが少なくとも2.5nmであることを特徴とする上記2〜6項のいずれか一項に記載のIII族窒化物半導体発光素子。
(8)各障壁層の高ドーピング領域の不純物濃度がn型層からp型層に向かって順次増加または減少していることを特徴とする上記2〜7項のいずれか一項に記載のIII族窒化物半導体発光素子。
(9)各障壁層が禁止帯幅の異なる複数の層からなることを特徴とする上記2〜8項のいずれか一項に記載のIII族窒化物半導体発光素子。
(10)高ドーピング領域の禁止帯幅が低ドーピング領域の禁止帯幅よりも大きいことを特徴とする上記9項に記載のIII族窒化物半導体発光素子。
(11)高ドーピング領域の不純物が珪素であり、低ドーピング領域の不純物がゲルマニウムであることを特徴とする上記2〜10項のいずれか一項に記載のIII族窒化物半導体発光素子。
(12)発光層の多重量子構造の周期数が3〜6であることを特徴とする上記1〜11項のいずれか一項に記載のIII族窒化物半導体発光素子。
(13)上記1〜12項のいずれか一項に記載のIII族窒化物半導体を使用したランプ。
(14)上記1〜12項のいずれか一項に記載のIII族窒化物半導体を使用した照明装置。
(15)上記1〜12項のいずれか一項に記載したIII族窒化物半導体を使用した表示装置。
発光層を構成する多重量子井戸構造の障壁層を、層内全体に亙って不純物を含有させ、かつその不純物濃度を厚さ方向における中央部が井戸層に接する部分よりも高濃度にすることによって、井戸層へ印可される歪を低減する作用をもたらす。その結果、高い強度の発光が得られる。
各障壁層の高ドーピング領域の不純物濃度を、n型層またはp型層との接合界面方向に向けて順次変化させた障壁層は、井戸層での放射再結合効率を向上させる作用を有し、その結果、高い強度の発光が得られる。また、逆方向電圧を低下させずに順方向電圧の徒な増加を防止する。
ドーピング効率の高い不純物、例えばSiを高ドーピング領域にドーピングし、かつ結合半径を程よく大きくする不純物、例えばGeを低ドーピング領域にドーピングした障壁層は、井戸層へ印可される歪を低減する作用を有し、その結果、高い強度の発光が得られる。
厚さ方向の中央部に禁止帯幅の大きいIII族窒化物半導体からなる高ドーピング領域が設けられ、その領域の両側に低ドーピング領域を備えた障壁層は、順方向電圧を低減させる。
本発明のIII族窒化物半導体発光素子は、ダイオードの順方向に流す順方向電流が1μA〜100μAの範囲で、順方向電流の常用対数値に対し1.9倍〜3.1倍の低い順方向電圧が安定して得られるpn接合型ヘテロ接合構造のIII族窒化物半導体発光素子である。
特に、井戸層に接する領域を従来の如くアンドープ領域から構成するのではなく、低濃度に不純物をドーピングした領域から構成することとしたため、10μAの順方向電流で、順方向電圧が2.0V〜2.4Vと低いpn接合型ヘテロ接合構造のIII族窒化物半導体発光素子を提供できる。併せて、本発明に係わる障壁層はピエゾ電界の悪影響を除外できるので、徒に発光波長を変化させることなく、所望の発光波長を有するIII族窒化物半導体発光素子が安定して得られる。
本発明では、基板上、特に、単結晶基板上に形成されたIII族窒化物半導体層を利用して、III族窒化物半導体発光素子を構成する。III族窒化物半導体層を形成する際に、基板として好適に利用できる単結晶材料としては、融点が比較的高く、耐熱性のあるサファイア(α−Al23単結晶)や酸化亜鉛(ZnO)或いは酸化ガリウム・リチウム(LiGaO2)等の酸化物単結晶材料、珪素単結晶(シリコン)や立方晶或いは六方晶結晶型の炭化珪素(SiC)等のIV族半導体単結晶、更に、リン化ガリウム(GaP)等のIII−V族化合物半導体単結晶材料を例示できる。発光層から放射される発光を基板側から外部に取り出す方式のIII族窒化物半導体発光素子の場合は、例えば酸化物単結晶材料のような光学的に透明な基板が好ましい。
基板上に設けるIII族窒化物半導体層は、組成式AlXGaYInZ1-aa(0≦X≦1、0≦Y≦1、0≦Z≦1で且つ、X+Y+Z=1。記号Mは窒素とは別の第V族元素を表し、0≦a<1である。)で表わされる。基板とその上に形成するIII族窒化物半導体層との格子ミスマッチを緩和して、結晶性に優れるIII族窒化物半導体層を形成させるために、当業界周知の低温緩衝層或いは高温緩衝層を基板とIII族窒化物半導体層との間に介在させることが好ましい。これらの緩衝層は例えば、窒化アルミニウム・ガリウム(AlXGaYN:0≦X≦1,0≦Y≦1で且つ、X+Y=1)から構成する。
これらのIII族窒化物半導体層は、有機金属化学的気相堆積法(MOCVD、MOVPEまたはOMVPEなどと略称される)、分子線エピタキシャル法(MBE)、ハロゲン気相成長法、ハイドライド気相成長法等の気相成長手段に依り形成できる。特に、MOCVD法は、リン(P)や砒素(As)等の揮発性の高い元素を含むIII族窒化物化合物半導体も成長できるため、好ましい。III族窒化物半導体発光素子の各構成層を異なる気相成長手段で形成することも許容される。例えば、発光層を構成する障壁層或いは井戸層を常圧(略大気圧)または減圧MOCVD法で形成し、n型層および/またはp型層を、例えばMBE法で形成する手法が想到される。しかし、同一の気相成長法で各構成層を形成するのが簡便である。
n型層とp型層との中間に配置する多重量子井戸構造の発光層は、例えば、窒化ガリウム・インジウム(GaYInZN:0≦Y≦1、0≦Z≦1で且つ、Y+Z=1)から構成する。GaYInZNのインジウム組成比(ガリウム組成比)は、所望の波長の発光が得られるように適宣選択する。近紫外帯、青色帯、或いは緑色帯の短波長の発光を期す発光素子の発光層は、インジウム組成比を、大凡、0.40(=40%)以下、望ましくは0.25とするGaYInZN(0.25≦Z≦0.40で且つ、Y+Z=1)から構成できる。多重量子井戸構造の発光層を構成する井戸層は、また、例えば、窒化・リン化ガリウム(GaN1-aa:0≦a<1)等の窒素と窒素以外の第V族元素を含むIII族窒化物半導体から構成できる。GaN1-aaでは、リン組成比(=a)に依存して(換言すれば、窒素組成比(=1−a)に依存して)、禁止帯幅が急激に変化する。このバンドボーイング性を利用して、GaN1-aaからは、紫外帯から赤色帯に亘る発光を放射できる井戸層を形成できる。障壁層よりも禁止帯幅を小とするIII族窒化物半導体から井戸層を構成することは量子効果を得るための常套手段である。
多重量子井戸構造を構成する障壁層は、好ましくは、AlXGaYN(0≦X≦1,0≦Y≦1、X+Y=1)から構成する。また、井戸層を構成するIII族窒化物半導体の禁止帯幅に比較して、室温での電子の熱運動エネルギー(=0.026eV)の約10倍以上高い禁止帯幅のGaN1-aa等の複数のV族元素を含むIII族窒化物半導体から構成することもできる。
本発明に係わる発光層は、始端及び終端を共に障壁層とする多重量子井戸構造から構成できる。また、始端及び終端の双方を井戸層とする多重量子井戸構造から構成できる。更に、例えば、始端を障壁層とし、終端を井戸層とする、或いは、その逆の構成として多重量子井戸構造を構成できる。例えば、始端を障壁層とし、終端を井戸層とする、或いはその逆の構成からなる多重量子井戸構造は、障壁層と井戸層とを交互に積層させた一対の積層単位を、例えば3以上6以下の周期数で積層させて構成する。また、始端と終端とを同一の層から構成する場合にあっては、上記の一対の積層単位を例えば3以上6以下の周期で積層させた後、最後に始端をなす層である井戸層或いは障壁層の何れかを重層させて構成する。本発明に係わる障壁層を備えた多重量子井戸構造にあっては、順方向電圧を徒に増加させずに、且つ高い強度の発光を得るために井戸層の数は3以上で6以下であることが好ましい。
本発明では、井戸層に大きな歪が発生するのを避けるため、不純物を全体にドーピングした障壁層を使用して多重量子井戸構造の発光層を構成する。さらに、障壁層の厚さ方向で不純物の濃度を変化させ、井戸層に接する上面および下面に低ドーピング領域を設け、中央部を高ドーピング領域とする。
全体にドーピングとは、障壁層の水平方向及び垂直方向(厚さ方向)の双方向に不純物を故意に添加することを云う。即ち、層内の厚さ方向に添加する不純物の濃度を変化させるとは云え、障壁層の全領域に不純物がドーピングされていることを指す。また、始端または終端に在る障壁層の場合、井戸層と接するのは障壁層の上面(始端の障壁層の場合)または下面(終端の障壁層の場合)の何れかの面のみである。この場合、上記の低ドーピング領域を設けるのは、井戸層と接する側の一面のみでもよい。
障壁層中の井戸層に接する領域を、敢えて不純物を低濃度にドーピングして構成することにより、低ドーピング領域に含有する不純物濃度を一定に、しかも安定させられる効果がある。低濃度にドーピングすると云えども、層内に残留している不純物の濃度、しいては、残留ドナーまたは残留アクセプターに因るキャリア濃度を上回る様に不純物を添加する。井戸層と接する領域をアンドープ層から構成する従来例では、層内の残留不純物の濃度が一定でないために不安定となっていたが、低濃度にドーピングすることにより、順方向電圧を一定とさせる効果が奏される。一定の安定した順方向電圧を得るには、低ドーピング領域の不純物濃度は、1×1016cm-3以上で1×1018cm-3未満とするのが好ましい。5×1016cm-3以上で5×1017cm-3以下とするのが更に好ましい。
一方、高ドーピング領域の不純物濃度は1×1018cm-3以上で1×1019cm-3以下が好ましい。不純物濃度は障壁層内において、連続的に変化しても、段階的に変化してもよい。高ドーピング領域において、特に、障壁層内部の層厚方向の中央で不純物濃度を最高とした高ドーピング領域を設けた障壁層は本発明にあって最も効果的である。即ち、障壁層内部の不純物の濃度分布は形状的に例えれば、デルタ(δ)関数的な分布形状がよい。
障壁層の内部にドーピングされた不純物の濃度は、例えば、2次イオン質量分析法(SIMS)、オージェ電子分析法等の元素分析手段を利用して定量できる。本発明ではSIMSにより定量する。
添加する不純物は導電型(n型またはp型)に鑑みて適宣選択する。n型の障壁層を得るに適する不純物として、珪素(Si)、ゲルマニウム(Ge)および錫(Sn)等のIV族元素、並びにセレン(Se)やテルル(Te)等のVI族元素を例示できる。p型の障壁層を得るに適する不純物としては、マグネシウム(Mg)やカルシウム(Ca)等のII族元素がある。
障壁層の中央部に配置される高ドーピング領域をn型半導体で形成するには、特に、珪素(Si)のドーピングに依る手段が適する。他のIV族元素より、熱拡散の程度が少ないため、高ドーピング領域の厚さを安定して制御するに優位である。高ドーピング領域と低ドーピング領域とは導電型を同一にする。高ドーピング領域に接して設けるn型の低ドーピング領域には、珪素(Si)やゲルマニウム(Ge)、錫(Sn)、セレン(Se)、テルル(Te)等のn型不純物をドーピングする。高ドーピング領域と低ドーピング領域とに添加する不純物は同一であっても何ら差し支えはない。しかし、高ドーピング領域を形成するための不純物と低ドーピング領域へ添加する不純物とを相違させると、ピエゾ電界の悪影響を削減する効果はさらに高まる。
高い不純物濃度の領域を形成するためには、拡散し難く、かつドーピング効率(例えば、添加した不純物の総量に対する、電気的に活性化された不純物により発生したキャリア濃度の比率で表せる。)の高い珪素(Si)が適する。一方、低ドーピング領域へ添加する不純物は、ドーピング効率は高くなくとも良く、むしろ原子半径が程良く大きな元素が適する。特に、障壁層をなすIII族窒化物半導体の主たるIII族構成元素のアルミニウム(イオン半径=0.50Å)やガリウム(イオン半径=0.62Å)(「ダフィー 無機化学」、昭和46年4月15日、(株)廣川書店発行、5版、140頁)よりも半径の大きな元素が不純物として適する。例えば、ゲルマニウム(共有結合半径=1.22Å)や錫(1.41Å)(前出の「ダフィー 無機化学」、140頁)が好適である。特に、珪素(Si)に比較して約1桁、ドーピング効率が低く、ガリウム(Ga)のイオン半径(=0.62Å)に対して、約2倍に大きい共有結合半径のゲルマニウム(Ge)は好適に用いられる。
さらに、低ドーピング領域に添加されたゲルマニウム(Ge)の様な程良い結合半径の不純物は、低ドーピング領域を構成するIII族窒化物半導体、例えばAlXGaYN(0≦X,Y≦1,X+Y=1)層の結晶格子間の間隔を拡張する作用を発揮する。このため、主に井戸層をなすGaYInYN(0≦Y,Z≦1,Y+Z=1)の結晶格子面との間隔の差異が縮小され、従って、井戸層に印可される歪みの量を減ずる作用を発揮する。即ち、井戸層への応力の印可に因るピエゾ電界の発生を減ずる効果が奏される。
また、障壁層の全体の層厚(全厚)は、5nm以上で50nm以下とするのが好ましい。特に、障壁層を、n型不純物をドーピングしたn型AlXGaYN(0≦X≦1,0≦Y≦1、X+Y=1)から構成する場合、この層厚は特に好適である。この内、高ドーピング領域の厚さは2.5nm以上で45nm以下とするのが好ましい。残りが低ドーピング領域の厚さである。上面および下面に低ドーピング領域が存在する場合、それぞれの低ドーピング領域の厚さは少なくとも2.5nm以上あることが好ましい。
順方向電圧の低いIII族窒化物半導体発光素子を得るためには、高ドーピング領域の厚さを増加させると有利である。一方、井戸層への結晶欠陥の導入を避けるためには、低ドーピング領域の厚さを増加させると効果を上げられる。双方の兼ね合いを考慮すると、高ドーピング領域の層厚と、上面および下面に存在する低ドーピング領域の合計の厚さとは略同一であるのが最適である。例えば、高い不純物濃度の領域の厚さを10nmとし、その両側に各々層厚を5nmとする低ドーピング領域(従って、低ドーピング領域の合計の層厚は5nm×2(両側)=10nmとなる。)を備えた障壁層を例示できる。始端或いは終端に在る障壁層については、井戸層と接合する側に厚さ10nmの低ドーピング領域を設け、それとは反対側のn型層またはp型層側を厚さ10nmの高ドーピング領域とした全厚を20nmとする障壁層を例示できる。
また、高ドーピング領域の厚さを薄くする程、その不純物濃度を高くする方が順方向電圧増加を防止するために有利となる。例えば、厚さ2.5〜5nmの高ドーピング領域の不純物濃度は、5×1018cm-3から1×1019cm-3とすると好結果が得られる。
すなわち、高ドーピング領域に於ける不純物濃度にとって好適な仕様を、不純物濃度(N:単位cm-3)と層厚(D:単位cm)との積値(=N×D)、即ち、シート(面)濃度で表せば、5.0×1011cm-2以上で2.5×1013cm-2以下の範囲である。高ドーピング領域のN×D値が5.0×1011cm-2未満であると、順方向電圧が増加する傾向にある。高ドーピング領域の不純物濃度が極端に高く、N×D値が2.5×1013cm-2を超える場合、障壁層の結晶性が悪化するため、それに接合して成長する井戸層の結晶性も悪化する傾向にある。この高ドーピング領域に於ける具体的に好ましい不純物濃度の範囲が上述の1×1018cm-3以上で1×1019cm-3以下の範囲である。また、この不純物の濃度範囲では、キャリア濃度は、ドーピングした不純物の濃度の増加に依り、増加すると考えて差し支えはない。
更にまた、高ドーピング領域を、その周囲の低ドーピング領域を構成するIII族窒化物半導体よりも高い禁止帯幅のIII族窒化物半導体から構成すると発光強度に優れるIII族窒化物半導体発光素子を提供できる。例えば、低ドーピング領域を不純物濃度の低いGaN層から構成し、高ドーピング領域をAlXGaYN(此処では、X>0で、X+Y=1)層から構成した障壁層である。また、不純物を高濃度にドーピングしたGaN層を高ドーピング領域とし、その領域の両側に接合させる低ドーピング領域をGaYInZN(此処では、Z>0、Y+Z=1)層とした障壁層を例示できる。禁止帯幅が異なるIII族窒化物半導体を重層させて障壁層を構成することに依り、キャリア並びに発光がより効率的に井戸層へ閉じ込められ、発光強度が向上する。
禁止帯幅の高いIII族窒化物半導体からなる高ドーピング領域を設けた障壁層において、その領域の両側に設ける各低ドーピング領域を、同一のIII族窒化物半導体から構成する必要は必ずしも無い。即ち、同一の禁止帯幅を有するIII族窒化物半導体から、各低ドーピング領域を構成する必要は必ずしも無い。例えば、高ドーピング領域をGaNから構成し、その両側の低ドーピング領域の一方を、インジウム組成比をZ1とするGaY1InZ1N(0<Y1<1,0<Z1<Z2,で且つ、Y1+Z1=1)から構成し、他の一方をGaY2InZ2N(0<Y2<1,Z1<Z2<1,で且つ、Y2+Z2=1)から構成する例が挙げられる。各低ドーピング領域を、禁止帯幅が相違するIII族窒化物半導体から構成する場合において、n型層側に配置される低ドーピング領域を、より禁止帯幅の大きなIII族窒化物半導体から構成すると、順方向電圧の低減に効果がある。
多重量子井戸構造では障壁層および井戸層が交互に複数積層されているが、各障壁層の高ドーピング領域に於ける不純物濃度をp型層の方向に向けて順次変化させることが好ましい。例えば、多重量子井戸構造を構成する障壁層の高ドーピング領域の不純物濃度を、n型層側からp型層側に向けて順次高くする。これとは逆に、多重量子井戸構造を構成する障壁層の高ドーピング領域の不純物濃度を、p型層側からn型層側に向けて順次高くする。不純物濃度を変化させる様式には、例えば、階段状に、直線的に、または指数関数状に増加させる様式がある。特に、指数関数的な曲線状に不純物濃度を滑らかに増加させる様式が好ましい。p型層側に向けて順次不純物濃度を増加させた高ドーピング領域を含む障壁層を備えた多重量子井戸構造発光層は、放射再結合効率の高いIII族窒化物半導体発光素子を得るに貢献できる。一方、n型層側に向けて順次不純物濃度を増加させた高ドーピング領域を含む障壁層を備えた多重量子井戸構造発光層は、むしろ、逆方向電圧の低下を生ぜずに順方向電圧の徒な増加を防止するに効果を奏する。
一方、障壁層と接合する井戸層は、不純物がドーピングされていても、アンドープであっても差し支えはない。例えば、Siをドーピングした井戸層は、順方向電圧を低下させるに効果がある。アンドープの井戸層からは結晶欠陥の少ない層がもたらせる。但し、井戸層の導電型は、障壁層と同一とする。井戸層と障壁層共にn型(またはp型)のIII族窒化物半導体から構成する。井戸層の層厚は、障壁層の1/16以上で1/2以下とすることが好ましい。例えば、厚さ16nmの障壁層には、層厚が1nm以上で8nm以下の井戸層を接合させて多重量子井戸構造とする。この様な範囲の層厚の井戸層は、障壁層との異種接合に因って発生する歪を程良く緩和することができ、ピエゾ電界に起因する悪影響を排除しつつ、高強度の発光をもたらす多重量子井戸構造を構成するのに貢献できる。
n型層およびp型層は、AlXGaYN(0≦X≦1,0≦Y≦1、X+Y=1)で表わされるIII族窒化物半導体層から好適に構成できる。n型層およびp型層を同一の組成比のIII族窒化物半導体層から構成する必要は必ずしも無い。例えば、n型層を窒化ガリウム(GaN)から構成し、p型層を窒化アルミニウム・ガリウム(AlXGaYN)から構成できる。n型層およびp型層は、発光層を構成する障壁層よりも禁止帯幅を大とするIII族窒化物半導体から構成することが好ましい。
n型層は通常1〜10μm、好ましくは2〜5μm程度の厚さで、オーミック電極(n型)を形成するためのnコンタクト層と発光層よりも禁止帯幅が大きく発光層に接しているnクラッド層からなる。nコンタクト層とnクラッド層は兼ねてもよい。nコンタクト層としてはSiまたはGeを高濃度にドープすることが好ましい。これらの不純物をドープして形成したn型層は、不純物濃度が5×1018cm-3から2×1019cm-3程度に調整されていることが好適である。
p型層は通常0.01〜1μmの厚さで、発光層に接しているpクラッド層とオーミック電極(p型)を形成するためのpコンタクト層からなる。pクラッド層とpコンタクト層は兼ねることができる。pクラッド層は、GaN、AlGaNなどを用いて形成し、p型不純物としてMgをドープする。電子のオーバーフローを防ぐため、発光層の材料よりも大きな禁止帯幅を有する材料で形成することが望ましい。また、効率的に発光層にキャリアを注入できるように、高不純物濃度の層として形成することが望ましい。
本発明に係わるIII族窒化物半導体発光素子は、本発明の構成からなる障壁層を含む多重量子井戸構造の発光層を備えた積層構造体にオーミック電極を設けて構成する。基板として導電性に優れる、例えば、珪素(Si)或いは立方晶3C結晶型、六方晶4Hまたは6H結晶型の炭化珪素(SiC)である場合、基板材料の導電型に対応させて、n型またはp型用途の一方のオーミック電極を基板に設けられる。他方の導電型(p型またはn型)のオーミック電極は、本発明に係わる構成からなる多重量子井戸構造上の、基板とは反対の導電型を有するクラッド層上またはクラッド層と接するコンタクト層上に設ける。
基板が高抵抗または電気絶縁性の、例えば、サファイアである場合、n型およびp型いずれのオーミック電極も基板に接触させて設けられない。このため、両方とも積層構造体を構成するn型層およびp型層上に設ける。例えば、n型用途のオーミック電極は、nクラッド層上或いは同クラッド層に接するコンタクト層上に設ける。または、nクラッド層とn型発光層との中間に、発光層との禁止帯幅の差異を緩やかに縮小するための、或いは発光層の結晶性を向上させるため等の、例えば、GaYInZN(0≦Y,Z≦1,Y+Z=1)層を含む中間層を配置し、その上に設けてもよい。
絶縁性または高抵抗の基板には、電気的に導通するオーミック電極を設けるのは不都合であるが、光学的に透明である基板では、積層構造体が形成されている面と反対側の基板背面に、例えば、単層の金属膜或いは多層に重層させた多重金属膜からなる、基板を透過して来る発光を外部取り出し方向へ反射させる機能を有する反射膜を設けることができる。発光の反射機能を備えた透明な高抵抗基板を利用すれば、発光強度の高いIII族窒化物半導体発光素子を得るのに優位である。青色帯や緑色帯の波長の発光を反射させる反射層は、例えば、銀(Ag)、ロジウム(Rh)、ニッケル(Ni)及びそれらの合金類から構成できる。
接触抵抗の低いオーミック電極を形成するために設けるコンタクト層は、n型またはp型の低抵抗の例えば、III−V族化合物半導体材料から構成する。発光層からの発光を外部へ透過させる側に設けるコンタクト層は、発光波長に対応する禁止帯幅を超える禁止帯幅を有し、かつ発光を透過できる材料から構成する。例えば、本発明の多重量子井戸構造を構成する井戸層の構成材料よりも禁止帯幅を大とするIII族窒化物半導体材料から構成する。また、リン化硼素(BP)またはそれを素材とした高禁止帯幅のリン化硼素・ガリウム(BQGaRP:0<Q,R<1,Q+R=1)やリン化硼素・インジウム(BQInRP:0<Q,R<1,Q+R=1)等の混晶から構成できる。単量体のBPでは、アンドープ状態でも成長温度等の調整に依り、容易に低抵抗層が得られるため、コンタクト層を構成するに適する一材料である。
本発明に係わる多重量子井戸構造の発光層から出射される発光を、発光素子の外部へ取り出す方向に設けるオーミック電極を、開口部を設けた網状電極、或いは電極を升目状に配置した格子状電極等から構成すると、高強度の発光素子を得るのに有利である。オーミック電極を設けるクラッド層或いはコンタクト層の表面を部分的に被覆する形状の電極とすると、電極材料によって発光が吸収される割合が低減され、逆に、開口部を介して吸収されずに透過して来る発光が増量されるからである。従って、高い発光強度の発光素子を得るに寄与できる。
以下に実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例にのみ限定されるものではない。
(実施例1)
図1に本実施例で作製したLED10の平面構造を模式的に示す。また、図2に図1の破線A−Bに沿ったLED10の断面構造を模式的に示す。
LED10を作製するためのエピタキシャル積層構造体11は、一般的な減圧MOCVD手段を利用して以下の手順で形成した。先ず、(0001)−サファイア基板101を、高周波(RF)誘導加熱式ヒータで成膜温度に加熱される半導体用高純度グラファイト製のサセプタ上に載置した。載置後、ステンレス鋼製の気相成長反応炉内に窒素ガスを流通し、炉内をパージした。
気相成長反応炉内に、窒素ガスを8分間に亘って流通させた後、誘導加熱式ヒータを作動させ、基板101の温度を、10分間で室温から600℃に昇温した。基板101の温度を600℃に保ったまま、水素ガスと窒素ガスを流通させて、気相成長反応炉内の圧力を1.5×104パスカル(Pa)とした。この温度及び圧力下で2分間、放置して、基板101の表面をサーマルクリーニングした。サーマルクリーニングの終了後、気相成長反応炉内への窒素ガスの供給を停止した。水素ガスの供給は継続させた。
その後、水素雰囲気中で、基板101の温度を1180℃に昇温させた。1180℃で温度が安定したのを確認した後、トリメチルアルミニウム(TMAl)の蒸気を随伴する水素ガスを8分30秒間、気相成長反応炉内へ供給した。これにより、気相成長反応炉の内壁に以前より付着していた窒素(N)を含む堆積沈着物の分解により生じる窒素(N)原子と反応させて、サファイア基板101上に、数nmの厚さの窒化アルミニウム(AlN)薄膜102を付着させた。TMAlの蒸気を随伴する水素ガスの気相成長反応炉内への供給を停止しAlN薄膜102の成長を終了させた後、4分間待機し、気相成長炉内に残ったTMAlを完全に排出した。
続いて、アンモニア(NH3)ガスの気相成長反応炉内への供給を開始し、開始して4分が経過した後、アンモニアガスの流通を続けながら、サセプタの温度を1040℃に降温した。サセプタの温度が1040℃になったのを確認した後、暫時、温度が安定するのを待ち、トリメチルガリウム(TMGa)の気相成長反応炉内への供給を開始し、アンドープのGaN層103を1時間に亘って成長させた。アンドープGaN層103の層厚は2μmとした。
更に、アンドープGaN層103上には、高濃度に珪素(Si)をドーピングしたn型GaN層104を成長した。Siのドーピング源には、モノシラン(SiH4)を使用し、それを、層104内の電子濃度が1×1019cm-3となる様な流量で気相反応成長炉内へ供給した。n型GaN層104の層厚は2μmとした。
Siドープn型GaN層104を成長した後、1020℃で、n型GaN層104上に、Siドープn型Al0.07Ga0.93Nクラッド層105を堆積した。クラッド層105の成長時には、電子濃度が1×1018cm-3となる様に、上記のSiH4をドーピング源として使用してSiをドーピングした。クラッド層105の層厚は12.5nmとした。
次に、基板101の温度を730℃として、Al0.03Ga0.97Nからなる障壁層106aと、In0.25Ga0.75Nよりなる井戸層106bとを含む5周期構造の多重量子井戸構造発光層106をSiドープn型Al0.07Ga0.93Nクラッド層105上に設けた。多重量子井戸構造の発光層106にあっては、先ず、Al0.03Ga0.97N障壁層106aをSiドープn型Al0.07Ga0.93Nクラッド層105に接合させて設けた。
Al0.03Ga0.97N障壁層106aは、Siを低濃度にドーピングした膜厚2nmの低ドーピング領域と、Siを高い濃度でドーピングした層厚4nmの高ドーピング領域と、更にまた、層厚2nmの低濃度ドーピング領域とを、順次、重層させて構成した。つまり、障壁層106aの全厚としては8nmとした。また、低ドーピング領域のSi不純物濃度は、1×1017cm-3とし、高ドーピング領域の不純物濃度は7×1018cm-3とした。
In0.25Ga0.75N井戸層106bは、トリエチルガリウム(TEGa)をガリウム源とし、トリメチルインジウム(TMIn)をインジウム源として成長させた。井戸層106bの形成時には、Siは敢えて、添加(ドーピング)しなかった。井戸層106bの層厚は2.5nmとした。また、上部クラッド層105より最も遠隔に在る井戸層には、更に、上記の構成からなる障壁層106aを接合させて設けて、始端及び終端を共にAl0.03Ga0.97N障壁層106aとする量子井戸構造からなる発光層106を構成した。
多重量子井戸構造からなる発光層106上には、マグネシウム(Mg)をドーピングしたp型Al0.07Ga0.93Nクラッド層107を形成した。p型クラッド層107の層厚は10nmとした。p型クラッド層107上には、更に、Mgをドーピングしたp型のGaN層108を形成した。Mgのドーピング源には、ビスシクロペンタジエニルマグネシウムを用いた。Mgは、層108の正孔濃度が8×1017cm-3となる様に添加した。MgドープGaN層108の層厚は100nmとした。
MgドープGaN層108の成長を終了した後、誘導加熱式ヒータへの通電を停止して、基板101の温度を、室温迄、約20分間で降温した。降温中は、気相成長反応炉内の雰囲気を窒素のみから構成した。基板101の温度が室温まで降温したのを確認して、積層構造体11を気相成長反応炉より外部へ取り出した。この時点で、上記のMgドープGaN層108は、p型キャリア(Mg)を電気的に活性化するためのアニール処理を行わなくても、既に、p型の伝導性を示した。
次いで、公知のフォトリソグラフィー技術及び一般的なドライエッチング技術を利用して、n型オーミック電極109を形成する予定の領域に限り、高SiドープGaN層104の表面を露出させた。露出させたn型GaN層104の表面には、表面側をチタン(Ti)とし、その上層をアルミニウム(Al)としたn型オーミック電極109を形成した。残置した積層構造体11の表面をなすMgドープGaN層108の表面の全域には、一般的な真空蒸着手段、及び公知のフォトリソグラフィー手段等を利用して、半導体側から順に、白金(Pt)、ロジウム(Rh)、及び金(Au)を積層させた、発光を反射する金属反射鏡を兼ねるp型オーミック電極110を形成した。
然る後、サファイア基板101の背面を研削して、当初の厚さ約350μmから約100μmに薄板化した。更に、研削した背面を、ダイヤモンド砥粒を使用して精密に研磨し、鏡面に仕上げた。その後、350μm角の正方形のLEDチップ10に切断し、上記のn型及びp型オーミック電極109および110をサブマウント(図示せず)上に接合させた。更に、そのマウントしたLEDチップ10をリードフレーム(図示せず)上に載置し、金導線(図示せず)をリードフレームに結線して、リードフレームよりLEDチップ10へ素子駆動電流を通流できる様にした。
リードフレームを介してn型及びp型オーミック電極109および110間に順方向に素子駆動電流を通流させた。順方向電流を20mAとした際の順方向電圧は3.2Vと低値であった。また、20mAの順方向電流を通流した際の出射される青色帯発光の中心波長は460nmであった。また、一般的な積分球を使用して測定される発光の強度は、7.6mWに達し、低い順方向電圧で、高い強度の発光をもたらすIII族窒化物半導体LEDが得られた。
(実施例2)
本実施例では、障壁層を構成するIII族窒化物半導体としてAl0.01Ga0.99Nを用いた以外は、実施例1と同様にIII族窒化物半導体LEDを作製した。得られたLEDを実施例1と同様に評価したところ、順方向電圧は実施例1よりも低い3.0Vであり、発光強度は実施例1よりも高い8.2mWであった。
(実施例3)
本実施例では、各障壁層の高ドーピング領域の不純物濃度をn型層からp型層に向かって、6.0×1018cm-3、6.5×1018cm-3、7.0×1018cm-3、7.5×1018cm-3、8.0×1018cm-3及び8.5×1018cm-3とした以外は、実施例1と同様にIII族窒化物半導体LEDを作製した。得られたLEDを実施例1と同様に評価したところ、順方向電圧は実施例1よりも低い3.1Vであり、発光強度は実施例1よりも高い8.0mWであった。
(実施例4)
本実施例では、低ドーピング領域の不純物にGeを用いた以外は、実施例2と同様にIII族窒化物半導体LEDを作製した。得られたLEDを実施例1と同様に評価したところ、順方向電圧は実施例2と同じ3.0Vであり、発光強度は実施例2よりも高い8.6mWであった。
(比較例1)
本比較例では、低ドーピング領域をアンドープとした以外は、実施例1と同様にIII族窒化物半導体LEDを作製した。得られたLEDを実施例1と同様に評価したところ、発光強度は実施例1と同じ7.6mWであったが、順方向電圧は3.5Vと実施例1よりかなり高かった。
(比較例2)
本比較例では、低ドーピング領域を設けずに、障壁層全体を高ドーピング領域と同じ不純物濃度である7×1018cm-3とした以外は、実施例1と同様にIII族窒化物半導体LEDを作製した。得られたLEDを実施例1と同様に評価したところ、順方向電圧は3.0Vであったが、発光強度は6.0mWと非常に低かった。
本発明のIII族窒化物半導体発光素子は順方向電圧が低く、かつ発光強度が高いので、産業上の利用価値は極めて大きく、各種のランプ、ライト、照明装置および表示装置に使用することができる。
実施例1で作製したLEDの平面構造を模式的に示した図である。 図1の破線A−Bに沿った断面構造を模式的に示した図である。
符号の説明
10 LED
101 基板
104 nコンタクト層
105 nクラッド層
106 発光層
106a 障壁層
106b 井戸層
107 pクラッド層
108 pコンタクト層
109 n型オーミック電極
110 p型オーミック電極

Claims (15)

  1. 基板上にn型層、発光層およびp型層を有し、当該発光層が井戸層および障壁層が交互に積層された多重量子構造からなり、当該発光層がn型層とp型層で挟まれるように配置され、当該障壁層が層内全体に亙って不純物を含有し、かつ、厚み方向における中央部の該不純物の濃度が井戸層に接する部分よりも高濃度であることを特徴とするIII族窒化物半導体発光素子。
  2. 基板上にn型層、発光層およびp型層を有し、当該発光層が井戸層および障壁層が交互に積層された多重量子構造からなり、当該発光層がn型層とp型層で挟まれるように配置され、当該障壁層が層内全体に亙って不純物を含有し、かつ、厚み方向における中央部の該不純物の濃度が井戸層に接する部分よりも高い高ドーピング領域と、井戸層に接し、不純物の濃度の低い低ドーピング領域を有することを特徴とするIII族窒化物半導体発光素子。
  3. 障壁層の厚さが5〜50nmであることを特徴とする請求項1または2に記載のIII族窒化物半導体発光素子。
  4. 高ドーピング領域の不純物濃度が1×1018cm-3以上1×1019cm-3以下であることを特徴とする請求項2または3に記載のIII族窒化物半導体発光素子。
  5. 低ドーピング領域の不純物濃度が1×1016cm-3以上1×1018cm-3未満であることを特徴とする請求項2〜4のいずれか一項に記載のIII族窒化物半導体発光素子。
  6. 高ドーピング領域の厚さが2.5〜45nmであることを特徴とする請求項2〜5のいずれか一項に記載のIII族窒化物半導体発光素子。
  7. 低ドーピング領域の厚さが少なくとも2.5nmであることを特徴とする請求項2〜6のいずれか一項に記載のIII族窒化物半導体発光素子。
  8. 各障壁層の高ドーピング領域の不純物濃度がn型層からp型層に向かって順次増加または減少していることを特徴とする請求項2〜7のいずれか一項に記載のIII族窒化物半導体発光素子。
  9. 各障壁層が禁止帯幅の異なる複数の層からなることを特徴とする請求項2〜8のいずれか一項に記載のIII族窒化物半導体発光素子。
  10. 高ドーピング領域の禁止帯幅が低ドーピング領域の禁止帯幅よりも大きいことを特徴とする請求項9に記載のIII族窒化物半導体発光素子。
  11. 高ドーピング領域の不純物が珪素であり、低ドーピング領域の不純物がゲルマニウムであることを特徴とする請求項2〜10のいずれか一項に記載のIII族窒化物半導体発光素子。
  12. 発光層の多重量子構造の周期数が3〜6であることを特徴とする請求項1〜11のいずれか一項に記載のIII族窒化物半導体発光素子。
  13. 請求項1〜12のいずれか一項に記載のIII族窒化物半導体発光素子を使用したランプ。
  14. 請求項1〜12のいずれか一項に記載のIII族窒化物半導体発光素子を使用した照明装置。
  15. 請求項1〜12のいずれか一項に記載のIII族窒化物半導体発光素子を使用した表示装置。
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