JP2006012215A - 磁気記録媒体及びこれを用いた磁気記録再生装置 - Google Patents

磁気記録媒体及びこれを用いた磁気記録再生装置 Download PDF

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Abstract

【課題】 低温環境下であっても、潤滑層の修復性及びそれによる摺動特性が長期にわたり良好であって、極低浮上型あるいは接触型ヘッドを搭載した磁気記録再生装置に適用しても信頼性が高い磁気記録媒体を得る。
【解決手段】 両端に各々1以上のCH3基またはCF3基を有する第1のパーフルオロポリエーテル、及び少なくとも一末端に極性基を有する第2のパーフルオロポリエーテルを含有する潤滑剤を用いて潤滑層を形成する。
【選択図】 図1

Description

本発明は、磁気記録技術を用いたハードディスク装置等に用いられる磁気記録媒体に係り、特に改良された潤滑層を有する磁気記録媒体に関する。
磁気記録媒体には、ヘッドスライダが摺動する際に、媒体表面との間に介在して摩耗を抑制する潤滑層が設けられている。潤滑層に使用される潤滑剤には、媒体表面には固着するが、ヘッドスライダには付着しないという相反する特性が要求される。
最近の薄膜化された磁気記録媒体では、媒体表面に表面保護層が形成されている。潤滑層は、1nm以下であると島状になり、表面保護層全体を保護できない。このため、通常、厚さを約2nmとしている。このような磁気記録媒体は、末端に活性基を有するパーフルオロポリエーテル等の潤滑剤を使用して、塗布後に熱処理を行うことにより表面保護層に結合させている。しかしながら、末端基を結合させると、液体に特徴的な自己修復機能が低下し、半固体的となり媒体表面を摩耗させる。このため、潤滑層の下層の1nmを媒体表面に結合させてボンド層を形成し、上層に流動性を持たせてモバイル層を形成するなどの工夫がなされている。
例えば潤滑剤の分解反応を進行させると考えられているLewis酸をpassivateするジアルキルアミンの末端基を有する新潤滑剤ZDPAを磁気ディスクに塗布することにより、潤滑特性劣化を抑制し、摺動耐力を向上させることができる(例えば、非特許文献1参照)。
この先行技術の新潤滑剤ZDPAは耐分解性には確かに優れているが、極性基を有していないため保護層との相互作用が弱く、ボンド層が非常に少ない。その結果、摺動箇所で潤滑層は容易に押しのけられ、保護層表面がむき出しになり、ヘッドと保護層との固体接触に至り、媒体の摺動耐力は低下する。潤滑層厚を厚くしてこれを避けることもできるが、ボンド層は増加しない一方でモバイル層が過多になり摩擦力が大きくなる。また極性基を持たせてボンド層を増加させることもできるが、自己修復性が低下し、摺動耐力が悪化するという問題があった。特に、低温環境下では、潤滑層の粘性が低下し易いため、摺動耐力の悪化が顕著になるという問題があった。
「トライボロジー・レターズ(Tribology Letters)」2002年2月,第12巻,第2号,p.117
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、低温環境下であっても、潤滑層の修復性及びそれによる摺動特性が長期にわたり良好な磁気記録媒体を得、これを用いることにより、極低浮上型あるいは接触型ヘッドを搭載しても信頼性が高い磁気記録再生装置を得ることを目的とする。
本発明の磁気記録媒体は、
非磁性基板と、
該非磁性基板上に設けられた磁気記録層と、
該磁気記録層上に設けられた保護層と、
該保護層上に設けられ、両端に各々1以上のCH3基またはCF3基を有する第1のパーフルオロポリエーテル、及び少なくとも一末端に極性基を有する第2のパーフルオロポリエーテルを含有する潤滑剤を用いて形成された潤滑層とを含み、
前記潤滑層は、該第2のパーフルオロポリエーテルの大部分の量を含み、該保護層表面に結合されたボンド層、及び該ボンド層上に設けられ、該第1のパーフルオロポリエーテルの大部分の量を含み、流動性を有するモバイル層を有することを特徴とする。
また、本発明の磁気記録再生装置は、非磁性基板、
該非磁性基板上に設けられた磁気記録層、
該磁気記録層上に設けられた保護層、
及び該保護層上に設けられ、両端に各々1以上のCH3基またはCF3基を有する第1のパーフルオロポリエーテル、及び少なくとも一末端に極性基を有する第2のパーフルオロポリエーテルを含有する潤滑剤を用いて形成された潤滑層を含む磁気記録媒体と、磁気記録再生ヘッドとを有し、
前記潤滑層は、該第2のパーフルオロポリエーテルの大部分の量を含み、該保護層表面に結合されたボンド層、及び該ボンド層上に設けられ、該第1のパーフルオロポリエーテルの大部分の量を含み、流動性を有するモバイル層を有することを特徴とする。
本発明を用いると、磁気記録媒体の潤滑層の修復性及びそれによる摺動特性が長期にわたり良好となり、この磁気記録媒体を用いることにより極低浮上型あるいは接触型ヘッドを搭載しても信頼性が高い磁気記録再生装置が得られる。
本発明の磁気記録媒体は、非磁性基板と、非磁性基板上に設けられた磁気記録層と、磁気記録層上に設けられた保護層と、保護層上に設けられ、保護層表面に結合されたボンド層、及びボンド層上に設けられ、流動性を有するモバイル層を有する潤滑層とを具備する。
また、本発明の磁気記録再生装置は、上記磁気記録媒体と、記録再生ヘッドとを有する。
記録再生ヘッドは、好ましくは極低浮上型あるいは接触型ヘッドである。
本発明に用いられる潤滑層は、少なくとも2種類のパーフルオロポリエーテルを用いて形成される。そのうち一方は、両端に各々1以上のメチル(CH3)基またはフルオロカーボン(CF3)基を有する第1のパーフルオロポリエーテルであり、他方は、少なくとも一末端に極性基を有する第2のパーフルオロポリエーテルである。
潤滑層は、上記2種類のパーフルオロポリエーテルと適当な溶媒を含む塗布液を保護層上に塗布し、加熱することにより形成し得る。
あるいは、第2のパーフルオロポリエーテルを塗布、加熱し、保護層に結合されない潤滑剤を洗い流した後、第1のパーフルオロポリエーテルを塗布することにより形成し得る。
形成された潤滑層は、加熱により保護層に結合された少なくとも一末端に極性基を有する第2のパーフルオロポリエーテルを主成分とするボンド層と、このボンド層上に存在し、両端に各々1以上のCH3基またはCF3基を有する第1のパーフルオロポリエーテルを主成分とする流動性を有するモバイル層とから実質的に構成される。
図1に本発明に係る磁気記録媒体の一例を表す断面図を示す。
図示するように、この磁気記録媒体10は、非磁性基板1上に、磁気記録層2、保護層3、及び潤滑層4が順に形成された構成を有する。
図2に、本発明に用いられる潤滑層の構成を表すモデル図を示す。
図示するように、この潤滑層4は、保護層3に結合した第2のパーフルオロポリエーテルを主成分とするボンド層5とその上に設けられ第1のパーフルオロポリエーテルを主成分とするモバイル層6から実質的に構成される。図中、11は保護層に結合した第2のパーフルオロポリエーテルの極性基を表す。
モバイル層に用いられ、CH3基またはCF3基を有する第1のパーフルオロポリエーテルは、粘性が低く、かつ低温環境下でも潤滑剤の修復性が良好で、摺動特性が劣化しないため、ヘッドに対する磁気記録媒体の摩擦力を長期にわたり低減し得る。一方、ボンド層に用いられ、加熱により保護層に上に結合された少なくとも一末端に極性基を有する第2のパーフルオロポリエーテルは、ヘッドによる摺動に供されても保護層を露出させることがなく、ヘッドに対する磁気記録媒体の良好な摺動耐力を長期にわたり維持し得る。このように、本発明の磁気記録媒体では、ボンド層による良好な摺動耐力と、モバイル層による良好な摩擦力低減が、長期にわたり、かつ低温環境下でも両立し得る。
第1のパーフルオロポリエーテルは、両端に各々1以上のCH3基またはCF3基を有するアミン構造、または両端に各々1以上のCH3基またはCF3基を有する環状ホスファゼン構造を含むことが好ましい。
両末端に1以上のCH3基またはCF3基を有するパーフルオロポリエーテルの一例として、例えばFomblin Z15(アウジモント(株)製)(平均分子量8000,動粘度160 20deg:cSt,比重1.84 20deg:g/cm3)があげられる。末端にCH3基を有するアミン構造を含むパーフルオロポリエーテルとして例えばZDPA((株) 松村石油研究所製)(平均分子量4000,動粘度28 20deg:cSt,比重1.65 20deg:g/cm3)があげられる。
また、一末端に、極性基例えばOH基を有するパーフルオロポリエーテルとして、例えばFomblin Z-Tetraol(アウジモント(株)製)(平均分子量2000,粘度2200 20deg:cSt,比重1.75 20deg:g/cm3)があげられる。
また、耐分解性を向上するために、極性基を有する環状ホスファゼン構造を含むパーフルオロポリエーテルとしてA20H((株) 松村石油研究所製)(平均分子量2000,動粘度176 20deg:cSt,比重1.7 20deg:g/cm3)をさらに添加することができる。
本発明に用いられる潤滑層は、潤滑層全膜厚に対するボンド層膜厚の比で表されるボンド率が70%以上であることが好ましい。
ボンド率が70%未満であると、潤滑剤で被覆されていない領域が多くなり、固体接触が生じやすく結果として摺動耐力が低下する傾向がある。
ここでいうボンド率とは、潤滑剤をディップコート法により膜厚が2.3nmになるように塗布し、ボンド率を更に上げるため150℃で10分間加熱し、必要に応じてUVを20秒照射し、得られた潤滑層の厚さをFT−IR高感度反射法でC−Fピーク吸光度より求めた後、得られた潤滑層をフッ素系溶媒例えばAK225(旭硝子(株)製)またはVertrel(デュポン(株)製)等に浸漬して保護層と結合していない成分を洗い落とし、残った層の厚さをFT−IR高感度反射法でC−Fピーク吸光度より求め、洗い落とされた層をモバイル層、残った層をボンド層として、潤滑層全膜厚に対するボンド層膜厚の比を求めたものである。
本発明に使用される第1及び第2のパーフルオロポリエーテルは、上記ボンド比が70%以上になるように配合され得る。その好ましい配合比は、使用するパーフルオロポリエーテルにより異なる。
配合比の一例として、第1のパーフルオロポリエーテルとしてFomblinZ15、第2のパーフルオロポリエーテルとしてFomblin Z-Tetraolを使用し、さらにA20Hを添加した場合、Fomblin Z15は30重量%以下、Fomblin Z-Tetraolは50ないし95重量%、及びA20Hは5ないし20重量%であることが好ましい。
また、配合比の他の一例として、第1のパーフルオロポリエーテルとしてZDPA、第2のパーフルオロポリエーテルとしてFomblin Z-Tetraolを使用し、さらにA20Hを添加した場合、ZDPAは30重量%以下、Fomblin Z-Tetraolは50ないし95重量%、及びA20Hは0ないし10重量%であることが好ましい。
図3に、本発明の磁気記録再生装置の一例を一部分解した斜視図を示す。
本発明に係る、情報を記録するための剛構成の磁気ディスク121はスピンドル122に装着されており、図示しないスピンドルモータによって一定回転数で回転駆動される。磁気ディスク121にアクセスして情報の記録を行う記録ヘッド及び情報の再生を行うためのMRヘッドを搭載したスライダー123は、薄板状の板ばねからなるサスペンション124の先端に取付けられている。サスペンション124は図示しない駆動コイルを保持するボビン部等を有するアーム125の一端側に接続されている。
アーム125の他端側には、リニアモータの一種であるボイスコイルモータ126が設けられている。ボイスコイルモータ126は、アーム125のボビン部に巻き上げられた図示しない駆動コイルと、それを挟み込むように対向して配置された永久磁石および対向ヨークにより構成される磁気回路とから構成されている。
アーム125は、固定軸127の上下2カ所に設けられた図示しないボールベアリングによって保持され、ボイスコイルモータ126によって回転揺動駆動される。すなわち、磁気ディスク121上におけるスライダー123の位置は、ボイスコイルモータ126によって制御される。なお、図3中、128は蓋体を示している。
実施例1ないし4,比較例1ないし4
基板として,厚さ0.5mm、1.8インチ型結晶化ガラス基板(オハラ社製TS10SXL)を用意した。その表面を酸化セリウムを含む研磨剤スラリーにて加工を施し、表面粗さはRa=1.0nmにした。
このガラス基板表面を洗浄した後、その上にスパッタリング装置(アネルバ社製C−3010)を用いて、スパッタリングを行うことにより、その両面にCo系合金からなる第1の下地層を形成した。さらに、同装置を用いて厚さ10nmのCr系合金からなる第2の下地層、その上に厚さ2nmのCoCrPtB合金からなる安定化層、及び厚さ1nmのRuからなる中間層、さらに厚さ5nmCoCrPtB合金からなる記録層、最後に厚さ3nmのカーボン保護層を順次形成した。
その後、カーボン保護層上に、保護層とのボンド率が高いパーフルオロポリエーテルのFomblin Z-Tetraolと、ホスファゼン環を有するA20H、末端がメチル基で終端しているパーフルオロポリエーテルFomblin Z15をそれぞれ下記表1に示す8種類の混合比で混合した潤滑剤を、ディップコート法により膜厚が2.3nmになるように塗布した。ボンド率を更に上げるため、150℃で10分間加熱し、UVを20秒照射し、潤滑層を形成し、本発明の磁気記録媒体を得た。なお、潤滑層は、3種類のパーフルオロポリエーテルを混合して塗布する方法以外に、例えば最初にFomblin Z-Tetraolと、A20Hを塗布した後、フッ素系溶媒を用いて保護層と結合していない成分を洗い落とし、更に150℃で10分間加熱した後、Fomblin Z15を塗布するという方法を用いることができる。
得られた磁気記録媒体の構成を表す断面図を図4に示す。
図示するように、この磁気記録媒体20は、基板21上に、第1の下地層25、第2の下地層26、安定化層27、中間層28、磁気記録層22、保護層23、及び潤滑層24が順に積層された構成を有する。
ボンド率の測定
得られた潤滑層の膜厚をFT−IR高感度反射法でC−Fピーク吸光度より求めた。
その後、溶媒AK225(旭硝子(株)製)で浸漬し、潤滑層のうち、保護層に固着していない部分を洗い落とした。残った潤滑層をボンド層としてその厚さをC−Fピーク吸光度より求めた。先に求めた潤滑層の厚さに対するボンド層の厚さを%で示した。得られた結果を下記表1に示す。
摺動耐力の測定
また、同様に作成した磁気記録媒体をヘッド荷重が2.5gfの接触型磁気ヘッドを備えた磁気ディスク装置に組み込み、磁気記録媒体の中心から半径方向に16.3mmの位置にヘッドを位置決めして、回転数4200rpmで摺動させ、クラッシュするまでの日数を摺動耐力として測定した。得られた結果を下記表1に示す。
実施例5ないし6、比較例5
Fomblin Z15の代わりに、ZDPAを用いること以外は、実施例1と同様にして磁気記録媒体を作成し、同様に、ボンド率、摺動耐力を測定した。得られた結果を下記表1に示す。
Figure 2006012215
表1に示すように、比較例1〜4と比較して、実施例1ないし3ではボンド率の高いZ-Tetraolに適量の耐分解性の高いA20H、低温での修復性が良いZ15を混合すると摺動耐力が向上した。実施例3に示すように、Z15の割合が多いとボンド率が70%以下になり、ボンド層の被覆性が十分でないため摺動耐力が多少低下した。比較例1〜4の中で比較すると、A20Hの割合が20wt%以下である方が多少摺動耐力が良かった。実施例4では、A20Hの割合が0wt%であり、耐分解性が低くなるため、若干、摺動耐力が低下した。
表2に示すように実施例5では、ボンド率の高いZ-Tetraolに適量の耐分解性が高く、低温での修復性が良いZDPAを混合すると著しく摺動耐力が向上した。また実施例6のようにA20Hを混合しても摺動耐力が向上した。また、比較例5のように、Z-TetraolもA20Hも含まず、ZDPAだけを含む場合、ボンド率が低下し、摺動耐力が劣っていた
本発明に係る磁気記録媒体の一例を表す断面図 本発明に用いられる潤滑層のモデル図 本発明に係る磁気記録再生装置の一例を表す概略図 本発明に係る磁気記録媒体の他の一例を表す断面図
符号の説明
1,21…非磁性基板、2,22…磁気記録層、3,23…保護層、4,24…潤滑層、25,26…下地層、27…安定化層、28…中間層、10,20,121…磁気記録媒体、122…スピンドル、123…スライダー、124…サスペンション、125…アーム、126…ボイスコイルモータ、127…固定軸

Claims (4)

  1. 非磁性基板と、
    該非磁性基板上に設けられた磁気記録層と、
    該磁気記録層上に設けられた保護層と、
    該保護層上に設けられ、両端に各々1以上のCH3基またはCF3基を有する第1のパーフルオロポリエーテル、及び少なくとも一末端に極性基を有する第2のパーフルオロポリエーテルを含有する潤滑剤を用いて形成された潤滑層とを含み、
    前記潤滑層は、該第2のパーフルオロポリエーテルの大部分の量を含み、該保護層表面に結合されたボンド層、及び該ボンド層上に設けられ、該第1のパーフルオロポリエーテルの大部分の量を含み、流動性を有するモバイル層を有することを特徴とする磁気記録媒体。
  2. 前記第1のパーフルオロポリエーテルは、末端に、CH3基またはCF3基を有する、アミン構造または環状ホスファゼン構造を含むことを特徴とする請求項1に記載の磁気記録媒体。
  3. 前記潤滑層は、前記潤滑層全膜厚に対する前記ボンド層膜厚の比で表されるボンド率が70%以上であることを特徴とする請求項1または2のいずれか1項に記載の磁気記録媒体。
  4. 請求項1ないし3のいずれか1項に記載の磁気記録媒体、及び記録再生ヘッドを具備することを特徴とする磁気記録再生装置。
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