JP2006010403A - 時計用外装部品の補修方法 - Google Patents

時計用外装部品の補修方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 時計用外装部品が本来有している優れた審美性を発揮させつつ、時計用外装部品の腐食を補修することができる、時計用外装部品の補修方法を提供することにある。特に、補修後の耐食性に優れた時計用外装部品の補修方法を提供すること。
【解決手段】 本発明の時計用外装部品1の補修方法は、時計用外装部品1を構成する金属性基材2(1a)に付着した錆9を除去する工程(1b)と、錆9を除去した腐食部3に、主としてエポキシ樹脂と金属粉末とで構成された充填材4を充填する工程(1c)と、充填材4を充填した領域を含む時計用外装部品1の表面を平滑化する工程(1d)と、充填材4を充填した領域を含む時計用外装部品1の表面に、被覆層5を形成する工程(1e)とを有することを特徴とする。時計用外装部品1を構成する金属性基材2がステンレス鋼で構成されたものである場合は、金属粉末がAl粉末であることが好ましい。
【選択図】 図1

Description

本発明は、時計用外装部品の補修方法に関する。
時計用外装部品は、使用の間に埃や汗等が付着することにより、腐食性環境におかれ、その表面付近に錆(腐食部)が形成されることがある。この程度が進むと、錆は、部品の表面付近だけでなく孔食にまで進展する場合もある。
現行の携帯時計の構造(例えば、特許文献1参照)においては、特に、裏蓋の裏蓋パッキンとの接触部、ケースの裏蓋パッキンとの接触部、裏蓋とケースの螺合部で腐食が進展することが多い。
このような場合は、従来、腐食が顕在化するたびに、腐食部品を廃棄して新しいものに交換するか、または腐食が発生した時計本体を廃棄することがなされてきたが、腐食部の適切な補修方法があれば、部品や時計本体を廃棄することなく有効利用でき、環境保護に資することとなる。
実開平5−84888号公報(第2頁図1〜図3)
本発明の目的は、時計用外装部品が本来有している優れた審美性を発揮させつつ、時計用外装部品の腐食を補修することができる、時計用外装部品の補修方法を提供することにある。特に、補修後の耐食性に優れた時計用外装部品の補修方法を提供することにある。
このような目的は、下記の本発明により達成される。
本発明の時計用外装部品の補修方法は、時計用外装部品を構成する金属性基材において発生した錆を除去する錆除去工程と、
前記錆を除去した腐食部に、エポキシ樹脂と金属粉末とを含む充填材を充填する充填工程と、
前記充填材を充填した領域を含む時計用外装部品の表面の少なくとも一部に、被覆層を形成する被覆層形成工程とを有することを特徴とする。
これにより、時計用外装部品が本来有している優れた審美性を発揮させつつ、時計用外装部品の腐食を補修することができ、かつ、補修後の耐食性に優れた、時計用外装部品の補修方法を提供することができる。
本発明の時計用外装部品の補修方法では、前記金属性基材は少なくとも表面付近がステンレス鋼で構成されたものであり、金属粉末がAl粉末であることが好ましい。
これにより、補修後の時計用外装部品において、特に優れた審美性を発揮させることができる。
本発明の時計用外装部品の補修方法では、前記金属粉末の平均粒径は、0.5〜5.0μmであることが好ましい。
これにより、補修後の時計用外装部品において、特に優れた審美性を発揮させることができる。また、補修(充填)の際の作業性と充填性とのいずれをも向上させることができる。
本発明の時計用外装部品の補修方法では、前記金属粉末は、フレーク状の形態のものであることが好ましい。
これにより、補修後の時計用外装部品において、特に優れた光沢感を有する外観を呈することができる。
本発明の時計用外装部品の補修方法では、前記被覆層は、ポリビニル系樹脂を含む材料で構成されたものであることが好ましい。
これにより、補修後の時計用外装部品において、特に優れた審美性を発揮させることができるとともに、補修後の耐食性を特に優れたものとすることができる。また、補修後の時計用外装部品の使用(特に、長期間の使用)に伴う、被覆層の不本意な剥離、変色等を効果的に防止することができ、結果として、時計用外装部品の耐久性を特に優れたものとすることができる。
本発明の時計用外装部品の補修方法では、前記被覆層の平均厚さは、0.1〜2.0μmであることが好ましい。
これにより、補修後の時計用外装部品の耐食性等を特に優れたものとすることができる。
本発明の時計用外装部品の補修方法では、前記充填工程の後に、さらに、前記充填材を充填した領域を含む時計用外装部品の表面を平滑化する平滑化工程を有し、当該平滑化工程の後に前記被覆層を形成することが好ましい。
これにより、補修後の時計用外装部品において、特に優れた審美性を発揮させることができる。また、被覆層の密着性を特に優れたものとすることができ、その結果、補修後の時計用外装部品の使用(特に、長期間の使用)に伴う、被覆層の不本意な剥離等を効果的に防止することができ、時計用外装部品としての耐久性を特に優れたものとすることができる。
本発明によれば、時計用外装部品が本来有している優れた審美性を発揮させつつ、時計用外装部品の腐食を補修することができ、かつ、補修後の耐食性に優れた、時計用外装部品の補修方法を提供することができる。
以下、本発明の時計用外装部品の補修方法の好適な実施形態について、添付図面を参照しつつ説明する。
図1は、本発明の時計用外装部品の補修方法の好適な実施形態を示す断面図である。
図1に示すように、本実施形態の時計用外装部品の補修方法は、時計用外装部品1を構成する金属性基材2(1a)において発生(付着)した錆9を除去する錆除去工程(1b)と、錆9を除去した腐食部3を、エポキシ樹脂と金属粉末とを含む充填材4を充填する充填工程(1c)と、余剰の充填材4を除去し、充填材4を充填した領域を含む時計用外装部品1の表面を平滑化する平滑化工程(1d)と、少なくとも充填材4を充填した領域を含む時計用外装部品の表面の少なくとも一部に、被覆層5を形成する被覆層形成工程(1e)とを有する。
[時計用外装部品]
本明細書中において使用する「時計用外装部品」とは、当該時計用外装部品を備えた時計において、その少なくとも一部が、外部から接触可能なもののことを指し、特に、使用に伴い、汗、埃等の付着が起こり得る部品であるのが好ましい。このような部品(時計外装用部品)においては、各種時計用部品の中でも、腐食等の問題が生じ易く、本発明を好適に適用することができる。このような部品としては、例えば、時計ケース、時計用裏蓋、時計バンド(バンド中留、バンド・バングル着脱機構等を含む)、ベゼル(例えば、回転ベゼル等)、りゅうず(例えば、ネジロック式りゅうず等)、ボタン、ガラス縁、ダイヤルリング等が挙げられるが、本発明は、使用時において人体等との接触時間が長く、腐食等の問題が特に生じ易い時計用裏蓋に適用するのが好ましい。
[金属性基材]
時計用外装部品1を構成する金属性基材2は、主として銀白色を呈する金属材料で構成されたものである(1a)。
金属性基材2を構成する金属材料としては、各種金属(合金を含む)を用いることができ、好ましくは、Fe、Cu、Zn、Ni、Mg、Cr、Mn、Mo、Nb、Al、V、Zr、Sn、Au、Pd、Pt、Ag、Co、In、W、Ti、Rhや、これらのうち少なくとも1種を含む合金(例えば、ステンレス鋼等)等が挙げられる。また、金属性基材2としては、少なくとも表面付近が銀白色を呈する金属材料で構成されたものを用いることができ、例えば、各種プラスチック材料(樹脂材料)や、真鍮等の銀白色を呈さない各種金属材料で構成された部材を母材(基部)とし、その表面に、上述したような銀白色を呈する金属材料のめっきが施された基材を用いてもよい。金属性基材2は、上記のような材料の中でもステンレス鋼で構成されたもの(特に、その全体がステンレス鋼で構成されたもの)であるのが好ましい。これにより、時計用外装部品1の機械的強度、審美性が特に優れたものとともに、後述するような充填材4を用いた場合においては、時計用外装部品1が本来有している優れた審美性をより効果的に発揮させつつ(補修による外観上の違和感を生じさせることなく)、補修後の耐久性(耐食性等)をより高いものとすることができる。
上記のような金属性基材に発生した腐食部を本発明の方法により補修することができる。
[錆除去工程]
まず、錆除去工程において、時計用外装部品1に発生(付着)した錆9を除去する(1b)。錆9を除去せずに腐食部3に後述するような充填材4を充填すると、補修後に、充填した充填材4が錆9とともに剥離してしまう場合があることから、この工程により、錆9を十分に除去することで、補修効果の持続性を向上することができる。
錆9の除去は、例えば、溶液状等の錆除去剤等を時計用外装部品1の腐食部3(錆9が発生した部位)付近に付与することにより行うことができる。
錆除去剤としては、例えば、酸化剤溶液等を用いることができる。酸化剤溶液としては、特に限定されず、当技術分野において知られているものを用いることができ、金属性基材2の材質等に依存して適宜選択して使用することができる。例えば、有機硫黄化合物、硝酸、過塩素酸から選択される少なくも1種を含む溶液等を使用して錆9を除去することができる。
時計用外装部品1に錆除去剤を付与する方法としては、例えば、時計用外装部品1を錆除去剤中に浸漬する方法(浸漬法)、時計用外装部品1に錆除去剤を塗布、噴霧する方法等が挙げられる。このとき、除錆を促進するため、例えば、超音波洗浄器等を使用してもよい。
通常、錆9を除去した後、多量の水により洗浄して、錆除去剤を洗い落とし、さらに、時計用部品1を乾燥する。
[充填工程]
前記錆除去工程に続いて、充填工程において、錆を除去した腐食部3に、充填材4を充填する(1c)。ここで、本明細書中における「腐食部」とは、金属性基材の酸化等により変性、変質した部位のことを指し、形成された錆等を除去することにより生じた凹部、孔等も含むものとする。
充填材4は、エポキシ樹脂と金属粉末とを含む材料で構成されたものであるが、好ましくは、主としてエポキシ樹脂と金属粉末とで構成されたものである。
このように、本発明においては、各種樹脂材料の中でもエポキシ樹脂を用いる点に特徴を有する。これにより、粘度をコントロールすることが可能となり細部までの充填が可能になる。また、樹脂の硬化や、経時変化による体積減少を効果的に抑制することができ、より長期間にわたって優れた審美性を保つことができる。
充填材4に含まれるエポキシ樹脂としては、光硬化性を有するもの、熱硬化性を有するもの、二液硬化性を有するもの等、いかなるものを用いてもよいが、二液硬化性(二液硬化タイプ)のものを用いるのが好ましい。二液硬化タイプのエポキシ樹脂としては、例えば、液状エポキシ樹脂を主剤とし、芳香族アミンを硬化剤とするもの等が挙げられる。また、エポキシ樹脂は、実質的に透明のものであるのが好ましい。これにより、補修後の時計用外装部品1において、特に優れた審美性を発揮させることができる。
また、上記のように、充填材4には、金属粉末が含まれている。充填材4に金属粉末が含まれることにより、エポキシ樹脂の経時的な収縮を抑制することができ、これにより補修した部分(充填部)の窪みの発生を効果的に防止し、補修後の時計用外装部品1の美観を長期間にわたって維持することができる。すなわち、本発明においては、エポキシ樹脂と金属粉末とを含む充填材を用いることにより、これらの相乗的な効果が発揮され、補修後の時計用外装部品1において、特に優れた審美性を発揮させつつ、優れた耐久性(耐食性)等を発揮させることができる。
充填材4に含まれる金属粉末は、少なくとも、表面付近が金属材料で構成されたものであればよいが、実質的に粉末全体が金属材料で構成されたものであるのが好ましい。これにより、補修後の時計用外装部品1において、特に優れた審美性を発揮させることができる。
金属粉末を構成する金属材料は、金属性基材2の構成材料に応じて適宜選択されるものであり、特に限定されないが、例えば、Fe、Cu、Zn、Ni、Mg、Cr、Mn、Mo、Nb、Al、V、Zr、Sn、Au、Pd、Pt、Ag、Co、In、W、Ti、Rhや、これらのうち少なくとも1種を含む合金(例えば、ステンレス鋼等)等が挙げられる。特に、金属性基材2がステンレス鋼で構成されたものである場合、金属粉末としては、Al粉末(表面付近がAlで構成された粉末を含む)が好ましい。これにより、補修後の時計用外装部品1において、特に優れた審美性を発揮させることができる。このように、金属粉末として、必ずしも、金属性基材の構成材料と同一の組成または類似の組成を有するものを用いる必要はなく、むしろ、金属性基材の構成材料によっては、敢えて異なる組成の材料で構成されたものを用いるのが好ましいことを、本発明者は見出した。これは、補修部付近における時計用外装部品(補修された時計用外装部)の外観は、その構成材料の組成のみに依存するのではなく、充填部(充填材)を構成する金属材料の形状等にも依存するものであるためであると考えられる。言い換えると、充填部(充填材)が金属の粉末(金属粉末)を含むものであるため、その形状等に由来する光の反射特性等の影響により、金属粉末として、金属性基材の構成材料とは異なる組成の材料で構成されたものを用いるのが好ましい場合があると考えられる。
また、上記のように、金属性基材2がステンレス鋼で構成されたものである場合、金属粉末としてAl粉末を用いることにより、補修後の時計用外装部品1を、特に優れた耐久性(耐食性等)を有するものとすることができる。
充填材4中における金属粉末の含有率は、補修すべき腐食部3の大きさ、深さ等を考慮して、適宜決定することができる。充填材の収縮量は配合される接着剤の量等に依存し、腐食部が比較的小さい場合、すなわち、必要とする充填材の体積が比較的小さい場合には、充填材の収縮の度合いが小さくなる傾向があり、腐食部が比較的大きい場合、すなわち、必要とする充填材の体積が比較的大きい場合には、充填材の収縮の度合いが大きくなる傾向がある。
一方、腐食部が比較的小さい場合には、充填材4中における金属粉末の含有率が高いと、充填材4の粘度が高くなり、腐食部3内に充填材4を効率良く充填するのが困難となる。
したがって、補修すべき腐食部3が比較的大きい場合には、充填材4の収縮により補修後の外観に与える影響を最小限にするため、充填材4として金属粉末の含有率が比較的高いものを用いるのが好ましく、補修すべき腐食部3が比較的小さい場合には、充填材4として金属粉末の含有率が比較的低いものを用いるのが好ましい。より具体的には、腐食部3の大きさが1.0mm以下の場合には、充填材4中における金属粉末の含有率が5〜40vol%であるのが好ましく、10〜25vol%であるのがより好ましい。また、腐食部3の大きさが1.0mmを超える場合には、充填材4中における金属粉末の含有率が40〜80vol%であるのが好ましく、60〜70vol%であるのがより好ましい。
金属粉末の平均粒径は、特に限定されないが、0.5〜5.0μmであるのが好ましく、0.7〜3.5μmであるのがより好ましく、0.8〜2.0μmであるのがさらに好ましい。金属粉末の平均粒径が前記範囲内の値であると、補修後の時計用外装部品1において、特に優れた審美性を発揮させることができるとともに、補修の際の作業性と充填性を特に優れたものとすることができる。これに対し、金属粉末の平均粒径が小さ過ぎると、充填材4中における気泡の残存確率が高くなるという問題点が有る。また、金属粉末の平均粒径が小さ過ぎると、充填材4を調製する際に、金属粉末が飛散しやすく取扱い性が低下し、さらには、金属粉末の組成等によっては粉塵爆発等の危険性もある。また、金属粉末の平均粒径が大き過ぎると、金属粉末の含有率などによっては、充填材4の粘度が高くなり、補修の際の作業性、充填性が低下する傾向を示す。また、金属粉末の平均粒径が大き過ぎると、金属粉末、エポキシ樹脂の組成等によっては、金属粉末とエポキシ樹脂との比重差が大きくなり、充填材4が2層に分離してしまう場合がある。
金属粉末の形状は、特に限定されないが、補修後の光沢感が特に優れていることから、フレーク状(薄片状)の形態が好ましい。
錆9を除去した腐食部3に、上記のような充填材4を充填し、その後、硬化させる。充填材4は、エポキシ樹脂の組成等により異なるが、例えば、24時間程度放置すること等により硬化させることができる。このとき、硬化を促進するため、加熱(例えば、60℃〜80℃)に加熱してもよい。
また、充填材4の充填方法は、特に限定はないが、例えば、楊枝等の針状部材、棒状部材、刷毛、へら等を使用して充填することができる。
[平滑化工程]
上記充填工程の後に、充填材4を充填した領域を含む時計用外装部品1の表面を平滑化する(1d)。この工程により、充填材4の充填により(前記充填工程で)形成され得る凸部を平滑化することができ、補修後の時計用外装部品1において、特に優れた審美性を発揮させることができる。また、時計用外装部品1の防水性を高めたり、時計用外装部品1のがたつき(時計に適用したときのがたつき)等を効果的に防止したり、可動部での可動性等を特に優れたものにすることができる、等の効果が得られる。また、後述する被覆層5の密着性を特に優れたものとすることができ、その結果、補修後の時計用外装部品1の使用(特に、長期間の使用)に伴う、被覆層5の不本意な剥離等を効果的に防止することができ、時計用外装部品1としての耐久性を特に優れたものとすることができる。
平滑化の方法は、特に限定されないが、例えば、各種切削、研削、研磨等の方法により行うことができる。
[被覆層形成工程]
その後、充填材4を充填した領域を含む時計用外装部品1の表面に、被覆層5を形成する(1e)。本工程により、錆9を除去し充填材4を充填した部分を保護するとともに、補修後の耐食性を特に優れたものとすることができる。また、本発明の補修方法を防水性携帯時計(防水性携帯時計用外装部品)に適用する場合は、補修後においても、十分な防水性を発揮することができる。
被覆層5の形成は、例えば、被覆層形成用の材料(被覆層形成用材料)を、少なくとも時計用外装部品1の充填材4が充填された領域に付与することにより行うことができる。
被覆層形成用材料としては、例えば、エポキシ樹脂、フッ素系樹脂、ポリビニル系樹脂等の各種樹脂材料や、これらに対応するモノマー、ダイマー、トリマー、オリゴマー、プレポリマー等の前駆体等(以下これらを総称して「樹脂材料」という)を含むものを使用することができる。上記のような樹脂材料を含む被覆層形成用材料を用いることにより、補修後の耐食性、防水性等を特に優れたものとすることができる。また、上記樹脂材料の中でも特に、ポリビニル系樹脂(またはその前駆体)を含む被覆層形成用材料を用いることにより、上記のような効果に加えて、特に優れた耐汗性も得られ、さらに、金属性基材2、充填材4との密着性、耐変色性(経時的な変色のし難さ)等も優れたものとなる。また、ポリビニル系樹脂(またはその前駆体)を含む被覆層形成用材料は、一般に、速乾性であり、作業性にも優れていることから、特に好ましい。
時計用外装部品1に被覆層形成用材料を付与する方法としては、例えば、時計用外装部品1を被覆層形成用材料中に浸漬する方法(浸漬法)、時計用外装部品1に被覆層形成用材料を塗布、噴霧する方法等が挙げられる。
その後、時計用外装部品1に付与した被覆層形成用材料を固化させることにより、被覆層5が形成される。被覆層形成用材料を固化させる方法は、被覆層形成用材料の構成成分等により異なるが、被覆層形成用材料が溶剤(溶媒)を含む溶液タイプのものである場合、前記溶媒を除去すること(乾燥)により行うことができる。溶媒の除去方法(乾燥方法)は、特に限定されず、例えば、風乾、熱乾燥等により行うことができる。
被覆層5の厚さは、特に限定されないが、0.1μm〜2.0μmが好ましく、0.5μm〜1.3μmがより好ましく、0.6〜1.0μmがさらに好ましい。被覆層5の厚さが前記下限値未満であると、被覆層形成用材料の組成等によっては、補修後の時計用外装部品1(時計用外装部品1を備えた時計)の耐食性、防水性、耐寒性等が低下する傾向を示す。一方、被覆層5の厚さが前記上限値を超えると、被覆層形成用材料の組成等によっては、被覆層5の透明性が低下し、補修後の時計用外装部品1(時計用外装部品1を備えた時計)の審美性が低下する可能性がある。
なお、図示の構成では、被覆層5を金属性基材2の全面に形成しているが、少なくとも充填材4が充填された充填部の表面を被覆するように形成すればよい。
以上説明してきた本発明の補修方法は、腐食部の大きさによらず、好適に適用することができることから有益である。また、従来、行われてきた、腐食による部品や時計本体の廃棄を行うことなく有効利用することができるので、環境保護に資することとなる。さらに、本発明は、補修後の耐食性、防水性、耐汗性を保証することができる有益な補修方法である。
以上、本発明の時計用外装部品の補修方法について、図示の実施形態に基づいて説明してきたが、本発明はこれらに限定されるものではない。
例えば、前述した実施形態では、充填工程と被覆層形成工程との間に、平滑化工程を有するものとして説明したが、このような工程は省略してもよい。
また、本発明では、必要に応じて、任意の目的の工程を追加することもできる。例えば、錆除去工程と充填工程との間や、平滑化工程と被覆層形成工程との間に、洗浄等の中間工程を有していてもよい。
また、前述した実施形態では、充填材がエポキシ樹脂と金属粉末とで構成されるものとして説明したが、充填材は、これら以外の成分を含むものであってもよい。このような成分としては、例えば、エポキシ樹脂以外の各種樹脂材料や、可塑剤、酸化防止剤、着色剤、光沢剤等の各種添加物等が挙げられる。
次に、本発明の具体的実施例について説明する。
(実施例1)
以下に示すような方法により、時計用裏蓋に形成された腐食を補修した。
まず、腐食(錆)が発生したステンレス鋼を基材(金属性基材)とする時計用裏蓋を300ccビーカーに置き、次いで、有機硫黄化合物を主体とする液(錆除去剤)を時計用裏蓋が浸漬するまでビーカーに添加した。除錆を促進するため、ビーカーごと超音波洗浄器に入れ、これを2分間放置して、錆を除去した。その後、時計用裏蓋をビーカーから取り出し、多量の水で洗浄し、乾燥させた。錆が除去されることにより現れた凹部の大きさは、約2.0mmであった。
次いで、錆を除去した腐食部(凹部)に、エポキシ樹脂(セメダイン、CS−2340−5)とAl粉末とを混合してなる充填材を、楊枝を用いて充填した。ここで、エポキシ樹脂としては、液状エポキシ樹脂を主剤とし芳香族アミンを硬化剤とする二液硬化タイプのものを使用し、Al粒子としては、平均粒径1.0μmのフレーク状の形態のものを使用した。また、充填材中におけるAl粉末の含有率は、60vol%であった。
その後、時計用外装部品を80℃に置き、30分放置して充填材を硬化させた。
次いで、充填材を充填した領域を含む時計用外装部品の表面をやすりで研磨することにより、表面を平滑化した。
次いで、時計用外装部品の表面全体に、ポリビニル系樹脂(SUNHAYATO社、ハヤコートマーク2)からなる被覆層形成用材料を筆塗りにより塗布し、その後、乾燥させた。その結果、形成された被覆層の平均厚さは、0.8μmであった。
以上の方法により、腐食が発生した時計用裏蓋を補修したところ、充填材の充填部は、ステンレス鋼製の基材の銀白色と調和する発色を示し、優れた光沢感を有する外観を呈した。また、補修後の時計用裏蓋は、全体としても優れた外観を有していた。また、時計用裏蓋の補修部とそれ以外の部位とを、外観上識別するのは困難であった。
(実施例2)
上記実施例1により補修した時計用裏蓋について、浸漬腐食試験を行った。浸漬腐食試験は、補修後の時計用裏蓋を、パッキン部を介して時計用ケースと嵌合させることにより時計(10気圧防水時計)を組み立て、この時計を人工汗(5%食塩水)に半浸漬し、温度40℃、湿度90%の環境下で放置後、腐食の発生を評価することにより行った。
35日間経過後において、時計用裏蓋の充填材を充填した部分および素地部分ともに、腐食の発生は認められなかった。また、被覆層の剥離や変色も認められなかった。また、上記のような浸漬腐食試験に用いた時計は、10気圧の水に対する防水性を有することが確認された。
本発明の時計用外装部品の補修方法の好適な実施形態を示す断面図である。
符号の説明
1…時計用外装部品 2…金属性基材 3…腐食部 4…充填材 5…被覆層 9…錆

Claims (7)

  1. 時計用外装部品を構成する金属性基材において発生した錆を除去する錆除去工程と、
    前記錆を除去した腐食部に、エポキシ樹脂と金属粉末とを含む充填材を充填する充填工程と、
    前記充填材を充填した領域を含む時計用外装部品の表面の少なくとも一部に、被覆層を形成する被覆層形成工程とを有することを特徴とする時計用外装部品の補修方法。
  2. 前記金属性基材は少なくとも表面付近がステンレス鋼で構成されたものであり、金属粉末がAl粉末である請求項1に記載の時計用外装部品の補修方法。
  3. 前記金属粉末の平均粒径は、0.5〜5.0μmである請求項1または2に記載の時計用外装部品の補修方法。
  4. 前記金属粉末は、フレーク状の形態のものである請求項1ないし3のいずれかに記載の時計用外装部品の補修方法。
  5. 前記被覆層は、ポリビニル系樹脂を含む材料で構成されたものである請求項1ないし4のいずれかに記載の時計用外装部品の補修方法。
  6. 前記被覆層の平均厚さは、0.1〜2.0μmである請求項1ないし5のいずれかに記載の時計用外装部品の補修方法。
  7. 前記充填工程の後に、さらに、前記充填材を充填した領域を含む時計用外装部品の表面を平滑化する平滑化工程を有し、当該平滑化工程の後に前記被覆層を形成する請求項1ないし6のいずれかに記載の時計用外装部品の補修方法。
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