JP2006008970A - ナノ空間制御高分子イオン交換膜の製造方法 - Google Patents

ナノ空間制御高分子イオン交換膜の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 高分子イオン交換膜における欠点であるイオン交換容量が小さく、かつ、耐酸化性や耐メタノール性が悪いことなどを解決課題とする。
【解決手段】 基材とした高分子フィルムをイオン照射してナノサイズの貫通孔を多数あけ、さらにこれに電離性放射線を照射して官能性モノマーをフィルム表面や孔内にグラフトまたは共グラフトし、さらに、グラフト鎖へのスルホン酸基の導入することによって、優れた耐酸化性、寸法安定性、電気伝導性と耐メタノール性を有し、かつ、イオン交換容量が広い範囲内に制御された高分子イオン交換膜の製造法を確立した。
【選択図】 なし

Description

本発明は、燃料電池への使用に適した固体高分子電解質膜である高分子イオン交換膜の製造方法に関する。
また、本発明は、燃料電池に適した固体高分子電解質膜で、優れた耐酸化性、耐熱性及び寸法安定性と共に、優れた電気伝導性を有する高分子イオン交換膜の製造方法に関する。
固体高分子電解質型イオン交換膜を用いた燃料電池は、エネルギー密度が高いことから、電気自動車の電源や簡易補助電源として期待されている。この燃料電池において、優れた特性を有する高分子イオン交換膜の開発は最も重要な技術の一つである。
高分子イオン交換膜型燃料電池において、イオン交換膜は、プロトンを伝導するための電解質として作用し、また、燃料である水素やメタノールと酸化剤である空気(酸素)とを直接混合させないための隔膜としての役割も有する。このようなイオン交換膜としては、電解質としてイオン交換容量が大きいこと、長期間電流を通すので膜の化学的な安定性、特に、膜の劣化の主因となる水酸化ラジカル等に対する耐性(耐酸化性)が優れていること、電池の動作温度である80℃以上での耐熱性があること、また、電気抵抗を低く保持するために膜の保水性が一定で高いことが要求される。一方、隔膜としての役割から、膜の力学的な強度や寸法安定性が優れていること、水素ガス、メタノール又は酸素ガスについて過剰な透過性を有しないことなどが要求される。
初期の高分子イオン交換膜型燃料電池では、スチレンとジビニルベンゼンの共重合で製造した炭化水素系高分子イオン交換膜が使用された。しかし、このイオン交換膜は耐酸化性に起因する耐久性が非常に劣っていたため実用性に乏しく、その後はデュポン社により開発されたパーフルオロスルホン酸膜「ナフィオン(デュポン社登録商標)」等が一般に用いられてきた。
しかしながら、「ナフィオン(登録商標)」等の従来の含フッ素系高分子イオン交換膜は、化学的な耐久性や安定性には優れているが、イオン交換容量が1meq/g前後と小さく、また、保水性が不十分でイオン交換膜の乾燥が生じてプロトン伝導性が低下したり、メタノールを燃料とする場合に膜の膨潤やメタノールのクロスオーバーが起きたりする。
また、イオン交換容量を大きくするため、スルホン酸基を多く導入しようとすると、高分子鎖中に架橋構造がないため、膜が膨潤して強度が著しく低下し、容易に破損するようになる。したがって、従来の含フッ素系高分子のイオン交換膜ではスルホン酸基の量を膜強度が保持される程度に抑える必要があり、このためイオン交換容量が1meq/g程度ものしかできなかった。
さらに、ナフィオン(登録商標)などの含フッ素系高分子イオン交換膜はモノマーの合成が困難かつ複雑であり、また、これを重合してポリマー膜を製造する工程も複雑であるため、製品は非常に高価であり、プロトン交換膜型燃料電池を自動車などへ搭載して実用化する場合の大きな障害となっている。そのため、前記ナフィオン(登録商標)等に替わる低コストで高性能な電解質膜を開発する努力がおこなわれてきた。
一方、本発明と密接に関連する放射線グラフト重合法では、高分子膜にスルホン酸基を導入することができるモノマーをグラフトして、固体高分子電解質膜を作製する試みがなされている。本発明者らはこれらの新しい固体高分子電解質膜を開発すべく検討を重ね、架橋構造を有するポリテトラフルオロエチレンフィルムにスチレンモノマーを放射線グラフト反応により導入し、次いでスルホン化することにより、イオン交換容量を広い範囲に制御できることを特徴とする固体高分子電解質膜及びその製造方法を出願した(特許文献1)。しかし、このイオン交換膜はスチレングラフト鎖が炭化水素で構成されているため、膜に長時間電流を通すとグラフト鎖部の一部に酸化が起こり、膜のイオン交換能が低下した。
さらに、本発明者らは、架橋構造を有するポリテトラフルオロエチレンフィルムにフッ素系モノマーの放射線グラフト、または放射線共グラフトに続き、グラフト鎖にスルホン基を導入することによって、広いイオン交換容量と優れた耐酸化性とを特徴とする固体高分子電解質膜及びその製造方法を出願した(特許文献2)。しかし、通常のフッ素系高分子膜ではフッ素系モノマーはグラフト反応が膜の内部まで進行しにくく、反応条件によってはグラフト反応がフィルム表面に限られてしまうため、電解質膜としての特性を向上させにくいことが判明した。
特開2001−348439号公報 特開2002−348389号公報
本発明は、上述のような従来技術の問題点を克服するためになされたものであり、高分子固体電解質として、高分子イオン交換膜の欠点である、イオン交換容量が小さく、膜の寸法安定性が悪いこと、耐酸化性が低いこと、並びに作動温度が低い、即ち耐熱性が低いことを解決課題とする。
本発明は、広いイオン交換容量と優れた耐酸化性や電気伝導性とを有する高分子イオン交換膜及びその製造方法を提供するものであり、特に燃料電池への使用に適したイオン交換膜及びその製造方法を提供する。
高分子フィルムに放射線を照射し、種々のモノマーをグラフト又は共グラフトし、得られたグラフト鎖にスルホン酸基を導入することに関して研究を進めた結果、基材として高分子フィルムを用い、これに高エネルギー重イオンを照射してナノからミクロンサイズの直径を有する微細なシリンダー状の貫通孔を多数形成させ、この孔に特定の官能性モノマーを電離性放射線によってグラフトし、その際、グラフトを膜中心部まで進行させ、その後、導入されたスルホニル基、エステル基、ハロゲン基などの官能基をスルホン酸基とすることを特徴とする高分子イオン交換膜の製造法を発明するに至った。本発明の高分子イオン交換膜は、高分子フィルムへのモノマーのグラフト率が10〜150%、イオン交換容量が0.3〜2.5meq/gであることを特徴とする。また、本発明の高分子イオン交換膜は、イオン交換容量などの各特性を適切で広い範囲内に制御できること、耐酸化性、耐熱性や電気伝導性が高いこと、並びに膜の寸法安定性が高いことなどのきわめて優れた特徴を有する。
本発明によって製造された高分子イオン交換膜は、優れた耐酸化性、電気伝導性、及び寸法安定性、耐メタノール性と共に、イオン交換容量を広い範囲で制御できる特徴を有する。
上記の特徴を有する本発明のイオン交換膜は、特に燃料電池膜への使用に適している。また、安価で耐久性のある電解膜やイオン交換膜として有用である。
本発明の一態様においては、高分子フィルム基材として、耐熱性が高く、耐酸化性のあるポリフッ化ビニリデン(以下、PVDFと略す。)を使用する。高分子フィルム基材は架橋構造を有するものを用いてもよく、高分子構造中の架橋構造により、膜の耐熱性とモノマーのグラフト率が向上し、さらに、照射による膜強度の低下を抑制することができる。架橋構造を有する高分子フィルム基材は、高温作動で高性能の燃料電池膜には好適である。
このフィルム基材にサイクロトロン加速器などによって高エネルギー重イオンを照射する。本発明における重イオンとは炭素イオン以上のイオンを指す。炭素イオンより質量の小さなイオンでは、イオン照射後の穿孔において、孔の径に対する孔の深さの比が小さく、口径が小さくて深い穴を高分子フィルム基材に作製することが難しい。重イオンとして種々のイオンが使用できるが、高分子フィルムにナノからミクロンサイズの微少な貫通孔を形成するためには、1個のイオンによる照射損傷領域が数ナノサイズから数百ナノサイズの広がりを必要とする(H. Kudoh and Y. Morita, J. Poly. Sci. ,Part B. Vol.39, 757 (2001))。照射損傷領域の大きさは照射するイオンの質量やエネルギーに依存する。照射に用いる重イオンの種類としては、炭素、窒素、酸素、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノンなどがイオンを発生させるのに容易であり、照射イオン種として有用である。
また、1個のイオンの照射損傷領域を大きくするためには、金イオン、ビスマスイオン、又はウランイオンなどの質量の大きなイオンを用いる。イオンの照射エネルギーは、高分子フィルム基材を厚さ方向に貫通することができるエネルギーであればよく、例えば、ポリフッ化ビニリデンフィルム基材50μm厚では、炭素イオンは40MeV以上、ネオンイオンは80MeV以上、アルゴンイオンでは180MeV以上であり、同じく100μm厚では、炭素イオンは62MeV以上、ネオンイオンは130MeV以上、アルゴンイオンでは300MeV以上である。また、キセノンイオン450MeVでは40μm厚、ウランイオン2.6GeVでは20μm厚の高分子フイルム基材を貫通する。
次いで、イオン照射したフィルムを、0.1N〜10NのKOHやNaOHの溶液(水、又はメタノール、エタノール、n−又はイソプロパノール、t−ブタノールなどのアルコールと水の混合溶液)、室温〜80℃で処理してイオンの照射損傷領域を中心とした微細なシリンダー状の貫通孔を開ける(特開平5−51479、特開平6−7656)。
また、フッ素系のフィルム基材では、100℃以上の温度で加熱することによって照射損傷部分が分解されてモノマーやモノマー類似の気体に分解するので、これにより穿孔することも可能である。フィルム基材表面での孔の平均直径は走査型電子顕微鏡で容易に測定できる。本発明で使用するフィルム基材の孔の平均径はフィルム表面で10nm以上で10μm以下がよいが、イオン交換膜とするには10nm以上で1μm以下がより望ましい。これ以上小さい孔はエッチングで貫通孔を作製するのが困難であり、これ以上大きい孔ではフィルム基材の強度が低下してしまう。また、同様に基材表面における孔の数はイオン照射量と比例関係があり、孔の数は104〜1014個/cm2がよい。
104個/cm2以下では下記のグラフト、スルホン化反応によってイオン交換膜を作製しても十分な膜の電気伝導特性などが得られず、1014個/cm2以上では孔が互いに重なり独立した孔が少なくなり膜特性が低下することから、好ましくない。
本発明による高分子イオン交換膜は、この穿孔されたPVDFフィルム基材に以下に説明するモノマー溶液、又は、モノマーとコモノマーの混合溶液を加えて減圧脱気し、γ線、高エネルギー電子線、X線などの電離放射線を照射して、フィルム基材表面や孔表面にグラフトのための活性点を生成せしめ、ここに該モノマーを同時グラフト重合させ、さらに、グラフト分子鎖内のスルホニルハライド基[−SO21]、スルホン酸エステル基[−SO31]、又はハロゲン基[−X2]をスルホン酸基[−SO3H]とすることにより製造する。また、炭化水素系モノマーに存在するフェニル基、ケトン、エーテル基などはクロルスルホン酸でスルホン酸基を導入して製造する。ここで、同時グラフト重合とは、フィルム基材とモノマーを共存させた状態で電離放射線を照射してグラフト重合を行う方法である。
本発明において、高分子フィルム基材にグラフト重合するモノマーは、以下の(1)〜(10)に示すモノマー、又は、モノマー/コモノマー系を使用することができる(以下、モノマーとは、グラフト後にこのモノマー単位にスルホン酸基を導入できるものをいい、コモノマーとは、グラフト後このコモノマー単位にスルホン酸基を容易には導入できないものをいうものとする。)。
(1)A群:スルホニルハライド基を有するモノマーである、CF2=CF(SO21)(式中、X1はハロゲン基で−F又は−Clである。以下同じ。)、CH2=CF(SO21)、CF2=CF(O(CF214SO21)、及びCF2=CF(OCH2(CF214SO21
からなる群から選択される1種類又は2種類以上のモノマー。
(2)B群:スルホン酸エステルを有するモノマーである、CF2=CF(SO31)(式中、R1はアルキル基で−CH3、−C25又は−C(CH33である。以下同じ。)、CH2=CF(SO31)、CF2=CF(O(CF214SO31)、及びCF2=CF(OCH2(CF214SO31)からなる群から選択される1種類又は2種類以上のモノマー。
(3)C群:ハロゲン化フッ化アルキルエーテル基を有するCF2=CF(O(CF2142)(式中、X2はハロゲン基で−Br又は−Clである。以下同じ。)、及びCF2=CF(OCH2(CF2142)からなる群から選択される1種類又は2種類のモノマー。
(4)次のA〜C群:
A群:CF2=CF(SO21)(式中、X1はハロゲン基で−F又は−Clである。以下同じ。)、CH2=CF(SO21)、CF2=CF(O(CF214SO21)、及びCF2=CF(OCH2(CF214SO21);
B群:CF2=CF(SO31)(式中、R1はアルキル基で−CH3、−C25、又は−C(CH33である。以下同じ。)、CH2=CF(SO31)、CF2=CF(O(CF214SO31)、及びCF2=CF(OCH2(CF214SO31);及び
C群;CF2=CF(O(CF2142)(式中、X2はハロゲン基で−Br又は−Clである。以下同じ。)、及びCF2=CF(OCH2(CF2142
のうち少なくとも2以上の異なる群から選択される2種類以上のモノマー。
(5)A群:CF2=CF(SO21)(式中、X1はハロゲン基で−F又は−Clである。以下同じ。)、CH2=CF(SO21)、CF2=CF(O(CF214SO21)、及びCF2=CF(OCH2(CF214SO21)からなる群から選択される1種類又は2種類以上のモノマーに、アクリル系コモノマーとして、CF2=CR2(COOR3)(式中、R2は−CH3又は−Fであり、R3は−H、−CH3、−C25又は−C(CH33)である。以下同じ。)、及びCH2=CR2(COOR3)からなる群から選択される1種類以上のコモノマーを、全モノマー基準で50モル%以下の量加えたモノマー/コモノマー系。
(6)B群:CF2=CF(SO31)(式中、R1はアルキル基で−CH3、−C25又は−C(CH33である。以下同じ。)、CH2=CF(SO31)、CF2=CF(O(CF214SO31)、及びCF2=CF(OCH2(CF214SO31)からなる群から選択される1種類又は2種類以上のモノマーに、アクリル系コモノマーとして、CF2=CR2(COOR3)(式中、R2は−CH3又は−Fであり、R3は−H、−CH3、−C25又は−C(CH33)である。以下同じ。)、及びCH2=CR2(COOR3)からなる群から選択される1種類以上のコモノマーを、全モノマー基準で50モル%以下の量加えたモノマー/コモノマー系。
(7)C群:CF2=CF(O(CF2142)(式中、X2はハロゲン基で−Br又は−Clである。以下同じ。)、及びCF2=CF(OCH2(CF2142)からなる群から選択される1種類又は2種類のモノマーに、アクリル系コモノマーとして、CF2=CR2(COOR3)(式中、R2は−CH3又は−Fであり、R3は−H、−CH3、−C25又は−C(CH33)である。以下同じ。)、及びCH2=CR2(COOR3)からなる群から選択される1種類以上のコモノマーを、全モノマー基準で50モル%以下の量加えたモノマー/コモノマー系。
(8)D群:スチレン、α−メチルスチレン、スチレン誘導体モノマーである2,4−ジメチルスチレン、ビニルトルエン、及び4−tert−ブチルスチレンからなる群から選択される1種類又は2種類以上のモノマー。
(9)E群:アセナフチレン、インデン、ベンゾフラン、5−ビニル−2−ノルボルネン、ビニルケトンCH2=CH(COR4)(式中、R4は−CH3、−C25、又はフェニル基(−C65)である。)、ビニルエーテルCH2=CH(OR5)(式中、R5は−Cn2n+1(n=1〜5)、−CH(CH3)2、−C(CH3)3、又はフェニル基である。)、及びフッ化ビニルエーテルCF2=CF(OR5)若しくはCH2=CF(OR5)からなる群から選択される1種類又は2種類以上のモノマー。
(10)次のD〜F群:
D群:スチレン、α−メチルスチレン、スチレン誘導体モノマーである2,4−ジメチルスチレン、ビニルトルエン、及び4−tert−ブチルスチレン;及び
E群:アセナフチレン、インデン、ベンゾフラン、5−ビニル−2−ノルボルネン、ビニルケトンCH2=CH(COR4)(式中、R4は−CH3、−C25、又はフェニル基(−C65)である。)、ビニルエーテルCH2=CH(OR5)(式中、R5は−Cn2n+1(n=1〜5)、−CH(CH3)2、−C(CH3)3、又はフェニル基である。)、及びフッ化ビニルエーテルCF2=CF(OR5)若しくはCH2=CF(OR5
F群:CF2=CR2(COOR3)(式中、R2は−CH3又は−Fであり、R3は−H、−CH3、−C25又は−C(CH33である。以下同じ。)、及びCH2=CR2(COOR3
の各群から選択される2種類以上のモノマー/コモノマー系。
ここで、上記の(5)〜(7)、及び(10)におけるアクリル系コモノマーとしては、例えば、CF2=CF(COOCH3)、CF2=C(CH3)(COOCH3)、CH2=C(CH3)(COOH)、CH2=CF(COOCH3)、CH2=CF(COOC(CH33)などがある。これらのコモノマーはグラフト後、これらのコモノマー単位にスルホン酸基を容易には導入できないので、全モノマー基準で50モル%以下の量に抑えて混合するのが良い。
(1)〜(3)のモノマーを使用する単独グラフト重合では、グラフト重合はフィルム基材の表面及び孔表面まで十分に進行し、(4)〜(7)のコモノマーを使用する共グラフト重合では、単独グラフトに比べグラフト速度が著しく増大する。例えば、CF2=CF(O(CF214SO21)、CF2=CF(O(CF214SO31)、CF2=CF(O(CF2142)はモノマーとして単独での重合性は低いが、コモノマーと共グラフトさせると十分に有用である。(8)〜(10)のモノマーを使用すると、後述するように、クロルスルホン酸などのスルホン化反応により有効量のスルホン酸基をグラフト鎖に導入することができる。
(1)〜(10)のモノマー、及びモノマー/コモノマー系は、フレオン112(CCl2FCCl2F)、フレオン113(CCl2FCClF2)、ジクロロエタン、クロロメタン、n−ヘキサン、アルコール、t−ブタノール、ベンゼン、トルエン、シクロヘキサン、シクロヘキサノンやジメチルスルホオキシドの各溶媒で希釈したものを用いてもよい。
また、上記のモノマー及びモノマー/コモノマー系に、ジビニルベンゼン、ビス(ビニルフェニル)基を有する(CH2=CH(C64))2(CH2n(n=1〜4)、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、3,5−ビス(トリフルオロビニル)フェノール、及び3,5−ビス(トリフルオロビニロキシ)フェノールからなる群から選択される1種類以上の架橋剤を、全モノマー基準で30モル%以下の量添加してグラフト重合してもよい。
更に、グラフトモノマー溶液中に放射線照射によって重合の基点となり易く、結晶水や吸着水を保ちやすい、無機物である超微粒子状無定形シリカ(SiO2)、H+型モルデナイト (Ca,Na2,K2)Al2Si10O24・7H2O)、アルミナ(Al2O3)、及び、酸化ジルコニウム(ZrO2)、無機のプロトン伝導体であるジルコニウムホスフェイト(Zr(HPO4)2・nH2O)、りんタングステン酸水和物(H3PW12O40・nH2O) 、けいタングステン酸水和物(H4SiW12O40・nH2O) 、及び、モリブドりん酸水和物(MoO3H3PO4・nH2O)、並びに、これらの複合体である、りんタングステン酸水和物、ジルコニウムホスフェイト、又は、けいタングステン酸水和物を吸着させたアモルファスシリカ、及び、りんタングステン酸水和物、ジルコニウムホスフェイト、又は、けいタングステン酸水和物を吸着させたモルデナイトやアルミナからなる群から選択される1種類以上の微粉末を、全モノマー基準で1重量%〜30重量%の範囲で加えてグラフト重合させることによって、モノマーの重合収率を上げることができる。また、作製されたグラフト高分子イオン交換膜の導電性を大きくすることができる。
超微粒子状無定形シリカ(アエロジル、Aerosil ()は比表面積、凝集性、疎水性の異なった種類のものがあり、これをモノマー溶液に加えることによって液の流動性を変化させて他の微粒子をモノマー溶液に均一に分散させ易くすることができる。
また、複合体の作り方の一例として、無定形シリカ微粉末にりんタングステン酸水和物を吸着させたものは、りんタングステン酸水和物の水溶液にテトラエチルオルソシリケート(Si(OC2H5)4)とプロパノールを少量加えた溶液を無定形シリカ粉末に加え、室温でかき混ぜて放置後、濾過し減圧乾燥して得た。
モノマー溶液と無機の粉末との混合は、これらを混ぜた後、流動性の調節に超微粒子状無定形シリカを適量加えて攪拌し、グラフト用のモノマー溶液とした。
イオン穿孔したフィルム基材への上記モノマーのグラフト重合は、ステンレス又はガラス製の耐圧容器に、穿孔フィルム基材を入れて十分に真空に引き、予め不活性ガスのバブリングや凍結脱気により酸素ガスを除いたモノマーを加えて、60Co−γ線を、室温、不活性ガス中で5〜500kGy照射する。グラフト重合は、穿孔フィルム基材とモノマーを同時に放射線照射してグラフト反応させる、いわゆる同時照射法と、穿孔フィルム基材を先に放射線照射した後にモノマーと接触させてグラフト反応させる、いわゆる後グラフト重合法のいずれかの方法によって行うことができる。グラフト重合温度は同時照射法では室温、後グラフト重合法では、モノマーや溶媒の沸点以下の温度で通常0℃〜100℃で行なう。酸素の存在はグラフト反応を阻害するため、これら一連の操作はアルゴンガスや窒素ガスなどの不活性ガス中で行い、また、モノマーやモノマーを溶媒に溶かした溶液は常法の処理(バブリングや凍結脱気)で酸素を除去した状態で使用する。
グラフト率(実施例の式(1)参照)は、同時照射法では放射線の線量が多いほど、若しくは、放射線の線量率が低く照射時間が長いほどグラフト率が高く、後グラフト重合法では、線量が多いほど、グラフト温度が高いほど、若しくは、グラフト時間が長いほどグラフト率は高くなる。
電離放射線は、物質の透過率が高いγ線やX線、また、照射容器、フィルム基材やモノマー溶液を透過するに十分な高エネルギー電子線を用いるのが良い。
イオン照射による穿孔は高分子の構成分子や固体構造、即ち結晶性か非晶性かなどによらず広く有機高分子材料に適用できる。高分子フィルム基材は、本発明の一態様で使用するポリフッ化ビニリデン(PVDF)のほかに、高分子量ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリアミド、芳香族ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネイト、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンサルファイド、又はポリスルホンフィルム基材を用いることができる。また、ポリイミド系の高分子フィルムであるポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミド、ポリベンゾイミダゾール、又はポリエーテルエーテルイミドフィルム基材も使用することができる。さらに、フッ素系の高分子であるエチレン−テトラフルオロエチレン共重合体、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン−六フッ化プロピレン共重合体、又はテトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体フィルム基材を用いてもよい。これらのフィルム基材は、架橋構造を有さないフィルム基材を使用することができるが、予め架橋したフィルム基材を用いることにより、得られるイオン交換膜の耐熱性が向上する、膜の膨潤が少ない、架橋構造の導入によりモノマーのグラフト率が向上する、照射による膜強度の低下を抑制できる等の利点があるので、高温作動で高性能の燃料電池膜には好適である。例えば、グラフトモノマーとしてスチレンを用いた場合、未架橋のポリテトラフルオロエチレンに比較し、架橋ポリテトラフルオロエチレンはグラフト率を著しく増加させることができ、このため未架橋ポリテトラフルオロエチレンの2〜10倍のスルホン酸基を架橋ポリテトラフルオロエチレンに導入できることを本発明者らはすでに見出した(特開2001‐348439号公報:特願2000-170450)。架橋構造を有するテトラフルオロエチレン−六フッ化プロピレン共重合体やテトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体の製造方法はRadiation Physical Chemistry vol. 42, NO. 1/3, pp. 139-142(1993)に掲載されている。
上記で得られたグラフトした穿孔フィルムにスルホン酸基を導入するには、上記の(1)〜(7)のグラフトした分子鎖中の[−SO21]基は、0.1N〜10N濃度の苛性カリ(KOH)又は苛性ソーダ(NaOH)の水溶液、水/アルコール溶液、又は水/ジメチルスルホオキシド溶液中、室温〜100℃以下の温度で反応させて、スルホン酸塩[−SO3M](式中、Mはアルカリ金属でNa又はKである。)とし、次いでスルホン酸塩基を1N〜2N硫酸溶液中、60℃でスルホン酸基[−SO3H]とすることにより、高分子イオン交換膜が得られる。また、グラフトした分子鎖中の[−SO31]基は、0.1N〜10N濃度の硫酸溶液中など酸性溶液中で、室温〜100℃で反応させて加水分解するか、又は同濃度の水酸化カリウムやナトリウム溶液中で加水分解し、スルホン酸基[−SO3H]とすることにより、高分子イオン交換膜が得られる。更に、グラフトした分子鎖中のハロゲン基[−X2]は、亜硫酸塩若しくは亜硫酸水素塩の水溶液、又は、水/アルコールの溶液中などで反応させてスルホン酸塩基[−SO3M](式中、Mはアルカリ金属でNa又はKである。)とし、次いで上記と同様にスルホン酸塩基をスルホン酸基[−SO3H]とする。
上記(8)〜(10)のグラフトした分子鎖、又はグラフトした分子鎖中のフェニル基、ケトン、及びエーテル基は、クロルスルホン酸のジクロルエタン溶液やクロロホルム溶液を反応させることによって、グラフト鎖中にスルホン酸基を導入することができる。ケトン、及びエーテル基ではこれらの基やこの周辺の構造に対する脱塩酸反応によって、グラフト鎖中にスルホン酸基が導入される。芳香環を有する炭化水素系のフィルム基材ではクロルスルホン酸によるスルホン基の導入は基材自身もスルホン化されるので、この場合には特に架橋構造を有するフィルム基材が有効である。
更に、(5)〜(7)により得られるグラフト鎖中のエステル基も、苛性ソーダ(NaOH)や苛性カリ(KOH)溶液との反応によってカルボキシル基とすることができる。カルボキシル基は、本発明により得られるイオン交換膜を燃料電池膜として用いた場合に、フィルム中の水分の保持にきわめて有用である。
以上のグラフト反応を用いる場合とは別に、架橋構造を有しないか、又は架橋構造を有するポリフッ化ビニリデン、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体、超高分子量ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリアミドである高分子フィルム基材に高エネルギー重イオンによる穿孔を行い、これにクロルスルホン酸を反応させてフィルム基材分子鎖中に直接、スルホン酸基[−SO3H]を導入して高分子イオン交換膜を製造しても良い。これは、上記の高分子フィルム基材では分子内に−CH2−CH2−単位やCH2−CF2−単位が存在し、重イオン照射によってフィルム内の照射損傷領域に多くの二重結合や三級炭素についた水素原子が生成する。そして、穿孔された孔の表面にもこれらの二重結合や三級炭素についた水素原子が多く残存し、これがクロルスルホン酸と反応して孔表面に高い濃度のスルホン酸基が固定されて、イオン交換能を示す高分子イオン交換膜が得られるためである。
酸素プラズマを用いて高分子フィルム基材に微細な孔をあける場合には、通常の酸素プラズマ照射装置(例えば、AXIC社製、HF-8型リアクティブイオンエッチング装置)の試料台に微細孔の開いたSUS製金属マスクを貼りつけた厚さ50(m以下の高分子フィルム膜を置く。装置内を真空にして、例えば、酸素圧を200x10-3torrトール程度とし、電力300Wで酸素プラズマを照射する。おおよその穿孔速度は高分子フィルム基材の種類にも依るが2〜4(m/min程度であり、10〜25分程度で貫通孔が開く。高分子フィルムにグラフトモノマーがいくらか浸透する場合は貫通孔でなく、厚みを数(m残した非貫通孔でもよい。孔をあけた後、マスクを取り除き高分子フィルム膜をアセトンで洗浄後減圧乾燥して、放射線を照射してグラフト反応を行う。SUS製金属マスクは直径10(m の孔が約105個/cm2あるものなどを用いる。酸素プラズマを用いて高分子フィルム基材に微細な孔をあけるもう一つの方法は、高分子フィルム基材にアルミニュウムを蒸着し、この上にホトレジストを塗って光によってホトレジストに直径数(mの多数の孔をあけ、これをマスクとしてアルミニュウム蒸着膜を酸でエッチングして孔を開ける。さらに、この微細孔のあるアルミ蒸着膜をマスクとして高分子フィルム基材を酸素プラズマでエッチングして多数の孔を開ける。最後に蒸着アルミニュウム膜を酸で除いて、直径数(mの多数の孔の開いた高分子フィルム基材を得る。酸素プラズマによる高分子フィルム基材の穿孔は、上に記載したフッ素系及び炭化水素系のすべての高分子フィルム基材に有効である。
この酸素プラズマによって穿孔された高分子フィルム基材に、イオン穿孔高分子フィルム基材膜と同様に、上記のモノマー、及び、モノマー/コモノマー系を放射線でグラフトし、さらに、苛性カリ(KOH)若しくは苛性ソーダ(NaOH)溶液、又は亜硫酸塩若しくは亜硫酸水素塩の溶液による処理を行ってスルホン酸基を導入して高分子イオン交換膜を作製する。
本発明による高分子イオン交換膜はグラフト量やスルホン化反応量、即ち、導入されるスルホン酸基の量を制御することによって、得られる膜のイオン交換容量を変えることができる。グラフト反応は、グラフト率60〜80%で徐々に飽和してくる傾向を示す。本発明において、グラフト率は、フィルム基材に対し、10〜150%、より好ましくは15〜100%である。
ここで、イオン交換容量とは、乾燥イオン交換膜の重量1g当たりのイオン交換基量(meq/g)である。グラフトモノマーの種類に依存するが、グラフト率が10%以下の場合はイオン交換容量が0.3meq/g以下であり、グラフト率が150%以上の場合は膜の膨潤が大きくなる。すなわち、グラフト率を高くしてイオン交換基を多く導入すれば、イオン交換容量は高くなる。しかし、イオン交換基量を多くしすぎると、含水時に膜が膨潤して膜の強度が低下する。これらのことから、本発明の高分子イオン交換膜においては、イオン交換容量は0.3meq/g〜2.5meq/g、好ましくは0.5meq/g〜2.0meq/gである。
本発明の高分子イオン交換膜においては、グラフト基材の選択、導入するスルホン酸基の量やグラフトモノマーの分子構造によって、膜の含水率を制御することができる。この膜を燃料電池用イオン交換膜として使用する場合、含水率が低すぎると運転条件のわずかな変化によって電気伝導度やガス透過係数が変わり好ましくない。従来のナフィオン膜は分子鎖のほとんどが−CF2−で構成されているために、80℃以上の高い温度で電池を作動させると膜中に水分子が不足し、膜の導電率が急速に低下する。
これに対し、本発明のイオン交換膜は、グラフト鎖にスルホン酸基の他にカルボキシル基などの親水基や炭化水素構造を導入することができるため、含水率は、主にスルホン酸基の量によるが、10〜120重量(wt)%の範囲で制御することができる。一般的には、イオン交換容量が増すにつれて含水率も増大するが、本発明のイオン交換膜の含水率は、10〜120wt%、好ましくは20〜80wt%とすることができる。
また、本発明の高分子膜は、微細孔内へのグラフト重合により約2.5meq/gのイオン交換容量まで多量にスルホン酸基を導入しても、膜の力学特性や寸法安定性が保たれ、実用に供することができる。高いイオン交換容量と膜の力学的特性の優れた膜は実用上極めて重要である。
高分子イオン交換膜は、イオン交換容量とも関係する電気伝導度が高いものほど電気抵抗が小さく、電解質膜としての性能はすぐれている。しかし、25℃におけるイオン交換膜の電気伝導度が0.05(Ω・cm)-1以下である場合は、燃料電池としての出力性能が著しく低下する場合が多いため、イオン交換膜の電気伝導度は0.05(Ω・cm)-1以上、より高性能のイオン交換膜では0.10(Ω・cm)-1以上に設計されていることが多い。本発明によるイオン交換膜では25℃におけるイオン交換膜の電気伝導度がナフィオン(登録商標)膜と同等かそれよりも高い値が得られた。これはイオンの伝達する経路が微細孔内のグラフト領域に限られているため、イオンの伝達が比較的に高くなったと思われる。
イオン交換膜の電気伝導度を高めるため、イオン交換膜の厚みを薄くすることも考えられる。しかし現状では、過度に薄いイオン交換膜では破損しやすく、イオン交換膜自体の製作が困難である。したがって、通常では30〜200μmのイオン交換膜が使われている。本発明の場合、膜厚は10〜200μm、好ましくは20〜150μmの範囲のものが有効である。
燃料電池膜においては、現在、燃料の候補の一つとして考えられているメタノールがあるが、パーフルオロスルホン酸膜であるナフィオン(登録商標)膜は分子間の架橋構造がないためにメタノールによって大きく膨潤し、燃料であるメタノールが電池膜を通してアノード(燃料極)からカソード(空気極)へと拡散する燃料のクロスオーバーが、発電効率を低下させるとして大きな問題となっている。しかし、本発明による高分子イオン交換膜では、フィルム基材がメタノールを透過しないものであれば、水素イオンの移動は穿孔内のスルホン酸化されたグラフト鎖を通して起こるのでメタノールを含めたアルコール類による膜の膨潤はほとんど認められない。このため、改質器を用いずにメタノールを直接燃料とするダイレクト・メタノール型燃料電池(Direct methanol Fuel cell)の膜として有用である。
燃料電池膜においては、膜の耐酸化性は膜の耐久性(寿命)に関係する極めて重要な特性である。これは電池稼働中に発生するOHラジカル等がイオン交換膜を攻撃して、膜を劣化させるものである。高分子フィルムに炭化水素系のスチレンをグラフトした後、ポリスチレングラフト鎖をスルホン化して得た高分子イオン交換膜の耐酸化性は極めて低い。例えば、グラフト率93%のポリスチレン鎖をスルホン化したポリスチレングラフト架橋フッ素樹脂イオン交換膜は、80℃の3%過酸化水素水溶液中、約60分でイオン交換膜が劣化し、イオン交換容量がほぼ半分となる(比較例3)。これは、OHラジカルの攻撃によって、ポリスチレン鎖が容易に分解するためである。
これに対し、本発明による高分子イオン交換膜は、グラフト鎖がフッ素系モノマーの重合体、ないしは、炭化水素系モノマーの高度架橋体であり、しかも、グラフト体が極微細な穿孔内にあるため耐酸化性がきわめて高く、80℃の3%過酸化水素水溶液中に24時間以上置いてもイオン交換容量はほとんど変化しない。
以上のように、本発明の高分子イオン交換膜は優れた寸法安定性や耐酸化性、耐メタノール性を有すると共に、膜としての重要な特性であるイオン交換容量を0.3〜2.5meq/gの広い範囲に制御できる。
以下、本発明を実施例及び比較例により説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。なお、各測定値は以下の測定によって求めた。
(1)グラフト率
フィルム基材を主鎖部、フッ素モノマーやこれらと炭化水素系モノマー等とのグラフト重合した部分をグラフト鎖部とすると、主鎖部に対するグラフト鎖部の重量比は、次式のグラフト率(Xdg(重量%))として表される。
Figure 2006008970
(2)イオン交換容量
膜のイオン交換容量(Iex(meq/g))は次式で表される。
Figure 2006008970
n(酸基)obsの測定は、正確を期すため、膜を再度1M(1モル)硫酸溶液中に50℃で4時間浸漬し、完全に酸型(H型)とした。その後、3MのNaCl水溶液中50℃、4時間浸漬して−SO3Na型とし、置換されたプロトン(H+)を0.2NのNaOHで中和滴定し酸基濃度を求めた。
(3)含水率
室温で水中に保存しておいたH型のイオン交換膜を水中から取り出し軽くふき取った後(約1分後)の膜の重量をWs(g)とし、その後、この膜を60℃にて16時間、真空乾燥した時の膜の重量Wd(g)を乾燥重量とすると、Ws、Wdから次式により含水率が求められる。
Figure 2006008970
(4)電気伝導度
イオン交換膜の電気伝導性は、交流法による測定(新実験化学講座19、高分子化学〈II
〉、p. 992,丸善)で、通常の膜抵抗測定セルとヒュ−レットパッカード製のLCRメータ、E-4925Aを使用して膜抵抗(Rm)の測定を行った。1M硫酸水溶液をセルに満たして膜の有無による白金電極間(距離5mm)の抵抗を測定し、膜の電気伝導度(比伝導度)は次式を用いて算出した。
Figure 2006008970
電気伝導度測定値の比較のために、直流法でMark W. Verbrugge, Robert F. Hill等(J. Electrochem. Soc., 137, 3770-3777(1990))と類似のセル及びポテンショスタット、関数発生器を用いて測定した。交流法と直流法の測定値には良い相関性が見られた。下記の表1の値は交流法による測定値である。
(5)耐酸化性(重量残存率%)
60℃で16時間真空乾燥後のイオン交換膜の重量をW3とし、80℃の3%過酸化水素溶液に24時間処理したイオン交換膜の乾燥後重量をW4とする。
Figure 2006008970
(6)膜の長さ膨潤度(%)
スルホン酸型膜の室温における湿潤状態(水)の膜の一辺の長さをL0とし、膜を所定の条件にてメタノール溶液に浸漬した後、室温におけるメタノール溶液湿潤状態での膜の同じ片の長さをLMとすると
Figure 2006008970
(実施例1)
架橋したポリフッ化ビニリデンフィルム基材(以下PVDFと略す)を得るために以下の照射を行った。厚さ25μmのポリフッ化ビニリデンフィルムフィルム(クレハ化学製)の10cmx10cmをSUS製オートクレーブ照射容器(内径7cmφx高さ30cm)に入れ、容器内を10-3Torrに脱気してアルゴンガスに置換した。その後、60Co−γ線を室温にて線量率5kGy/hで線量500kGy(100時間)照射した。照射PVDFフィルムの架橋状態はジメチルホルムアミド溶媒でゲル化率を測定したところ80%であった。
得られた架橋PVDFをAVFサイクロトロン加速器(原研、高崎研)のビームラインにある照射装置(内径60cmφx高さ100cm)内の照射台に取付け、容器内を10-6Torrに脱気して、450MeVのXe(キセノン)イオンを3x108個/cm2量照射した。照射容器からフィルムを取りだし、9NのKOH水溶液に60℃、100時間浸漬して、イオン照射による照射損傷部位をエッチングした。十分水洗後、乾燥して、走査型電子顕微鏡で孔の平均の大きさを測定したところ0.4(mであった。
この穿孔PVDFフィルム基材を2cmx2cmに切断しコック付きのガラス製セパラブル容器(内径3cmφx15cm高さ)に入れて、さらに、1,2,2-トリフルオロエチレンスルホニルフルオライド(CF2=CF(SO2F))をフィルムが浸るまで入れ、凍結脱気を繰り返してモノマー液体や穿孔フィルム中の空気を除いた。最後に、ガラス容器内をアルゴンガスで置換して密封した。この状態で穿孔PVDFフィルムに、γ線(線量率10kGy/h)を300kGy室温で照射した。照射後、さらに60℃にして24時間反応させ、トルエン、ついでアセトンで洗浄し、フィルムを乾燥した。式(1)によって求めたグラフト率は18%であった。
このグラフト穿孔PVDFフィルムを20重量%、KOHのジメチルスルホオキシド/水(1:2)溶液、80℃で24時間反応させた。反応後、膜を取り出し、水洗し、2Nの硫酸溶液中、60℃で4時間処理した。本実施例で得られた膜のグラフト率、イオン交換容量(式(2))、含水率(式(3))、及び、電気伝導度(式(4))を下記の表1に示す。
(実施例2)
厚さ38μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(ヘキスト社製、以下PETと略す)を、実施例1と同様にAVFサイクロトロン加速器(原研、高崎研)のビームラインにある照射装置(内径60cmφx高さ100cm)内の照射台に取付け、容器内を10-6Torrに脱気して、450MeVのXe(キセノン)イオンを3x108個/cm2量照射した。照射容器からフィルムを取りだし、0.2NのNaOH水溶液に70℃、17時間浸漬して、イオン照射による照射損傷部位をエッチングした。十分水洗後、乾燥して、走査型電子顕微鏡で孔の平均の大きさを測定したところ0.5(mであった。
得られた穿孔ポリエチレンテレフタレートフィルム基材を2cmx2cmに切断しコック付きのガラス製セパラブル容器(内径3cmφx15cm高さ)に入れて、さらに、3-クロル-2,2,3,3-テトラフルオロプロピオキシトリフルオロエチレン(CF2=CF(OCH2(CF2)2Cl))をフィルムが浸るまで入れ、凍結脱気を繰り返してモノマー液体や穿孔フィルム中の空気を除いた。最後に、ガラス容器内をアルゴンガスで置換して密封した。この状態で穿孔ポリエチレンテレフタレートフィルムに、γ線(線量率10kGy/h)を300kGy室温で照射した。照射後、さらに60℃にして24時間反応させ、トルエンついでアセトンで洗浄し、フィルムを乾燥した。式(1)によって求めたグラフト率は38%であった。
このグラフトポリエチレンテレフタレート膜を耐圧オートクレーブに入れ、これに亜硫酸ナトリウム(Na2SO3)の20wt%水溶液にイソプロパノール(1:3(水))を加えた溶液で膜を浸し、簡単にバブリングして空気を窒素に置換した。このオートクレーブを120℃のオイルバスに入れ、30分間反応させた。冷却後、膜をオートクレーブから取り出し、水洗し、2Nの硫酸溶液中、60℃で4時間処理した。本実施例で得られた膜のグラフト率、イオン交換容量、含水率、および、電気伝導度を表1に示す。
(実施例3)
実施例1と同様にして、450MeVのXe(キセノン)イオンを3x108個/cm2量照射した。
得られた穿孔PVDFフィルムを2cmx2cmに切断しコック付きのガラス製セパラブル容器(内径3cmφx15cm高さ)に入れて、さらに、1,2,2-トリフルオロエチレンスルホニルフルオライド(CF2=CFSO2F)とメチル-1,2,2-トリフルオロアクリレート(CF2=CFCOOCH3)を容量比3:2に混合した溶液をフィルムが浸るまで入れ、凍結脱気を繰り返してモノマー液体や穿孔フィルム中の空気を除いた。最後に、ガラス容器内をアルゴンガスで置換して密封した。この状態で穿孔PVDFフィルムに、γ線(線量率10kGy/h)を160kGy室温で照射した。照射後、さらに60℃にして24時間反応させた。反応後、トルエン、ついでアセトンで洗浄し、乾燥した。以下の式(1)によって求めたグラフト率は26%であった。
このグラフト穿孔PVDFフィルムを20重量%、KOHのジメチルスルホオキシド/水(1:2)溶液、80℃で24時間反応させた。反応後、膜を取り出し、水洗し、2Nの硫酸溶液中、60℃で4時間処理した。本実施例で得られた膜のグラフト率、イオン交換容量(式(2))、含水率(式(3))、及び、電気伝導度(式(4))を下記の表1に示す。
(実施例4)
実施例2と同様にして、450MeVのXe(キセノン)イオンを3x108個/cm2量照射した。
得られた穿孔PETフィルム基材を2cmx2cmに切断しコック付きのガラス製セパラブル容器(内径3cmφx15cm高さ)に入れて、さらに、1,2,2-トリフルオロエチレンスルホニルフルオライド(CF2=CFSO2F)とメチル-1-フルオロアクリレート(CH2=CFCOOCH3)を容量比3:1に混合した溶液をフィルムが浸るまで入れ、凍結脱気を繰り返してモノマー液体や穿孔フィルム中の空気を除いた。最後に、ガラス容器内をアルゴンガスで置換して密封した。この状態で穿孔PETフィルムに、γ線(線量率10kGy/h)を100kGy室温で照射した。照射後、さらに60℃にして24時間反応させた。反応後、トルエン、ついでアセトンで洗浄し、乾燥した。以下の式(1)によって求めたグラフト率は48%であった。
このグラフト穿孔PETフィルムを2NのメタノールKOH溶液にで12時間処理後、硫酸溶液で処理した。本実施例で得られた膜のグラフト率、イオン交換容量(式(2))、含水率(式(3))、及び、電気伝導度(式(4))を下記の表1に示す。
(実施例5)
実施例1と同様にして、450MeVのXe(キセノン)イオンを3x108個/cm2量照射した。
得られた穿孔PVDFフィルムを2cmx2cmに切断しコック付きのガラス製セパラブル容器(内径3cmφx15cm高さ)に入れて、さらに、2-ブロモ-1,1,2,2-テトラフルオロエトキシトリフルオロエチレン(CF2=CF(O(CF2)2Br))とメチル-1,2,2-トリフルオロアクリレート(CF2=CFCOOCH3)を容量比3:2に混合した溶液をフィルムが浸るまで入れ、凍結脱気を繰り返してモノマー液体や穿孔フィルム中の空気を除いた。最後に、ガラス容器内をアルゴンガスで置換して密封した。この状態で穿孔PVDFフィルムに、γ線(線量率10kGy/h)を200kGy室温で照射した。照射後、さらに60℃にして24時間反応させた。反応後、トルエン、ついでアセトンで洗浄し、乾燥した。以下の式(1)によって求めたグラフト率は23%であった。
このグラフトPVDF膜を耐圧オートクレーブに入れ、これに亜硫酸ナトリウム(Na2SO3)の20wt%水溶液にイソプロパノール(1:3(水))を加えた溶液で膜を浸し、簡単にバブリングして空気を窒素に置換した。このオートクレーブを120℃のオイルバスに入れ、30分間反応させた。冷却後、膜をオートクレーブから取り出し、水洗し、2Nの硫酸溶液中、60℃で4時間処理した。本実施例で得られた膜のグラフト率、イオン交換容量、含水率、および、電気伝導度を表1に示す。
(実施例6)
実施例2と同様にして、PETフィルム基材に500MeV、Au(金)イオンを3x108個/cm2量照射した。照射容器からフィルムを取りだし、0.2NのNaOH水溶液に70℃、17時間浸漬して、イオン照射による照射損傷部位をエッチングした。十分水洗後、乾燥して、走査型電子顕微鏡で孔の平均の大きさを測定したところ0.6(mであった。
得られた穿孔PETフィルム基材を2cmx2cmに切断し、コック付きの耐圧ガラス製セパラブル容器(内径3cmφx15cm高さ)に入れて、さらに、2-ブロモ-1,1,2,2-テトラフルオロエトキシトリフルオロエチレン(CF2=CF(O(CF2)2Br))とメチル-1-フルオロアクリレート(CH2=CFCOOCH3)を容量比3:2に混合した溶液をフィルムが浸るまで入れ、凍結脱気を繰り返してモノマー液体や穿孔フィルム中の空気を除いた。最後に、ガラス容器内をアルゴンガスで置換して密封した。この状態で穿孔PETフィルムに、γ線(線量率10kGy/h)を200kGy室温で照射した。照射後、さらに60℃にして24時間反応させた。反応後、トルエン、ついでアセトンで洗浄し、乾燥した。以下の式(1)によって求めたグラフト率は56%であった。
このグラフト穿孔PET膜を耐圧オートクレーブに入れ、これに亜硫酸ナトリウム(Na2SO3)の20wt%水溶液にイソプロパノール(1:3(水))を加えた溶液で膜を浸し、簡単にバブリングして空気を窒素に置換した。このオートクレーブを120℃のオイルバスに入れ、30分間反応させた。冷却後、膜をオートクレーブから取り出し、水洗し、2Nの硫酸溶液中、60℃で4時間処理した。本実施例で得られた膜のグラフト率、イオン交換容量、含水率、および、電気伝導度を表1に示す。
(実施例7)
実施例1と同様にして、450MeVのXe(キセノン)イオンを3x108個/cm2量照射した。
得られた穿孔PVDFフィルムを2cmx2cmに切断しコック付きの耐圧ガラス製セパラブル容器(内径3cmφx15cm高さ)に入れて脱気後アルゴンガスで置換した。この状態でPVDFフィルム基材に、γ線(線量率2.5kGy/h)を60kGy室温で照射した。凍結脱気によって空気を除いたスチレンと2,4-ジメチルスチレンを容量比1:1に混合した溶液に7vol%のジビニルベンゼンを加えた溶液を、照射したフイルム入りの耐圧ガラス製セパラブル容器にフィルムが浸されるまで導入した。容器をアルゴンガスで密閉し、攪拌しながら60℃にして24時間、後グラフト重合させた。反応後、トルエン、ついでアセトンで洗浄し、乾燥した。式(1)によって求めたグラフト率は78%であった。
このグラフトPVDF膜を室温にて0.5Nのクロルスルホン酸/ジクロロエタン溶液でスルホン化した。本実施例で得られた膜のグラフト率、イオン交換容量、含水率、および、電気伝導度を表1に示す。
(実施例8)
膜のアルコールによる膨潤度を測定した。本実施例により得られた膜、及びナフィオン117を3Nの硫酸溶液に浸漬し、スルホン酸基をH型とした。そして、室温水に浸漬し、湿潤状態で寸法を測定した。次に膜をメタノール濃度80vol%水溶液に浸けて60℃、3時間保持し、その後、室温まで一夜放冷した後、膜の寸法変化を測定した。その結果を表1に示す。本実施例で得られた膜は、ナフィオン膜に比べメタノールによる膜の膨潤がほとんど認められないので、直接メタノール型燃料電池の膜材料としてきわめて有効である。表1より本発明の有効性が実証された。
Figure 2006008970
(実施例9)
実施例1と同様にして、450MeVのXe(キセノン)イオンを3x108個/cm2量照射した。
得られた穿孔PVDFフィルムを2cmx2cmに切断しコック付きのガラス製セパラブル容器(内径3cmφx15cm高さ)に入れて、これに1,2,2-トリフルオロエチレンスルホニルフルオライド(CF2=CFSO2F)とメチル-1,2,2-トリフルオロアクリレート(CF2=CFCOOCH3)を容量比3:2に混合した溶液にアモルファスシリカ(SiO2:アエロゾル(Aerosol)、A380)を重量比で約5%加えたものを超音波下に攪拌して均一な懸濁液とした溶液をフィルムが浸るまで入れ、凍結脱気を繰り返してモノマー溶液や穿孔フィルム中の空気を除いた。最後に、ガラス容器内をアルゴンガスで置換して密封した。この状態で穿孔PVDFフィルムに、γ線(線量率10kGy/h)を160kGy室温で照射した。照射後、さらに60℃にして24時間反応させた。反応後、トルエン、ついでアセトンで洗浄し、乾燥した。以下の式(1)によって求めたグラフト率は66%であった。
このグラフト穿孔PVDFフィルムを20重量%、KOHのジメチルスルホオキシド/水(1:2)溶液、80℃で24時間反応させた。反応後、膜を取り出し、水洗し、2Nの硫酸溶液中、60℃で4時間処理した。本実施例で得られた膜のグラフト率、イオン交換容量(式(2))、含水率(式(3))、及び、電気伝導度(式(4))を下記の表2に示す。また、実施例8方法に従って、膜のメタノールによる膨潤度を測定した。これも表2に示す。
(実施例10)
実施例1と同様にして、450MeVのXe(キセノン)イオンを3x108個/cm2量照射した。
得られた穿孔PVDFフィルムを2cmx2cmに切断しコック付きのガラス製セパラブル容器(内径3cmφx15cm高さ)に入れて、これに2-ブロモ-1,1,2,2-テトラフルオロエトキシトリフルオロエチレン(CF2=CF(O(CF2)2Br))とメチル-1,2,2-トリフルオロアクリレート(CF2=CFCOOCH3)を容量比3:2に混合した溶液にりんタングステン酸水和物(H4PW1240・36H2O)の微粉末を重量比で5%加え、さらに、この溶液を懸濁状にするため少量のアモルファスシリカ(重量比で1〜2%程度)を加えたものを超音波下に攪拌して均一な懸濁液とした溶液をフィルムが浸るまで入れ、凍結脱気を繰り返してモノマー溶液や穿孔フィルム中の空気を除いた。最後に、ガラス容器内をアルゴンガスで置換して密封した。この状態で穿孔PVDFフィルムに、γ線(線量率10kGy/h)を160kGy室温で照射した。照射後、さらに60℃にして24時間反応させた。反応後、トルエン、ついでアセトンで洗浄し、乾燥した。以下の式(1)によって求めたグラフト率は73%であった。
このグラフト穿孔PVDFフィルムを20重量%、KOHのジメチルスルホオキシド/水(1:2)溶液、80℃で24時間反応させた。反応後、膜を取り出し、水洗し、2Nの硫酸溶液中、60℃で4時間処理した。本実施例で得られた膜のグラフト率、イオン交換容量(式(2))、含水率(式(3))、及び、電気伝導度(式(4))を下記の表2に示す。また、実施例8方法に従って、膜のメタノールによる膨潤度を測定した。これも表2に示す。
(実施例11)
実施例1と同様にして、450MeVのXe(キセノン)イオンを3x108個/cm2量照射した。
得られた穿孔PVDFフィルムを2cmx2cmに切断しコック付きのガラス製セパラブル容器(内径3cmφx15cm高さ)に入れて、さらに、1,2,2-トリフルオロエチレンスルホニルフルオライド(CF2=CFSO2F)とメチル-1,2,2-トリフルオロアクリレート(CF2=CFCOOCH3)を容量比3:2に混合した溶液にシリカ表面にりんタングステン酸水和物を吸着させた微粉末を重量比重量比で5%加え、さらに、このモノマー溶液を懸濁状にするため少量のアモルファスシリカ(重量比で1〜2%程度)を加えたものを超音波下に攪拌して均一な懸濁液とした溶液をフィルムが浸るまで入れ、凍結脱気を繰り返してモノマー液体や穿孔フィルム中の空気を除いた。最後に、ガラス容器内をアルゴンガスで置換して密封した。この状態で穿孔PVDFフィルムに、γ線(線量率10kGy/h)を160kGy室温で照射した。照射後、さらに60℃にして24時間反応させた。反応後、トルエン、ついでアセトンで洗浄し、乾燥した。以下の式(1)によって求めたグラフト率は62%であった。
このグラフト穿孔PVDFフィルムを20重量%、KOHのジメチルスルホオキシド/水(1:2)溶液、80℃で24時間反応させた。反応後、膜を取り出し、水洗し、2Nの硫酸溶液中、60℃で4時間処理した。本実施例で得られた膜のグラフト率、イオン交換容量(式(2))、含水率(式(3))、及び、電気伝導度(式(4))を下記の表2に示す。また、実施例8方法に従って、膜のメタノールによる膨潤度を測定した。これも表2に示す。
Figure 2006008970
(実施例12)
架橋したポリフッ化ビニリデンフィルム基材を得るために以下の照射を行った。厚さ25μmのポリフッ化ビニリデンフィルムフィルム(クレハ化学製)の10cmx10cmをSUS製オートクレーブ照射容器(内径7cmφx高さ30cm)に入れ、容器内を10-3Torrに脱気してアルゴンガスに置換した。その後、60Co-γ線を室温にて線量率5kGy/hで線量500kGy(100時間)照射した。照射PVDFフィルムの架橋状態はジメチルホルムアミド溶媒でゲル化率を測定したところ80%であった。
酸素プラズマ照射装置(AXIC社製、HF-8型リアクティブイオンエッチング装置)の試料台に直径10(m の孔が約105個/cm2あるSUS製金属マスクを密着させた2cmx2cmx厚さ25(mの上記の架橋PVDF膜を置いた。装置内を真空にして酸素圧を190x10-3Torrとし、電力300Wで、断続的に30分間酸素プラズマを照射した。プラズマ照射後、マスクを取り除き高分子フィルム膜をアセトンで洗浄後減圧乾燥した。
得られた穿孔PVDFフィルムをコック付きのガラス製セパラブル容器(内径3cmφx15cm高さ)に入れて、これに2-ブロモ-1,1,2,2-テトラフルオロエトキシトリフルオロエチレン(CF2=CF(O(CF2)2Br))とイソブテンの容量比2:1のモノマー溶液を0℃にてフィルムが浸るまで入れ、室温/液体窒素温度の凍結脱気を繰り返してモノマー溶液や穿孔フィルム中の空気を除いた。最後に、ガラス容器内をアルゴンガスで置換して密封した。この状態で穿孔PVDFフィルムに、γ線(線量率10kGy/h)を220kGy室温で照射した。照射後、さらに60℃にして24時間反応させた。反応後、トルエン、ついでアセトンで洗浄し、乾燥した。以下の式(1)によって求めたグラフト率は56%であった。
このグラフト穿孔PVDF膜を耐圧オートクレーブに入れ、これに亜硫酸ナトリウム(Na2SO3)の20wt%水溶液にイソプロパノール(1:3(水))を加えた溶液で膜を浸し、簡単にバブリングして空気を窒素に置換した。このオートクレーブを100℃のオイルバスに入れ、10時間反応させた。冷却後、膜をオートクレーブから取り出し、水洗し、2Nの硫酸溶液中、60℃で4時間処理した。本実施例で得られた膜のグラフト率、イオン交換容量、含水率、および、電気伝導度を下記の表3に示す。また、実施例8方法に従って、膜のメタノールによる膨潤度を測定した。これも表3に示す。
Figure 2006008970
(比較例1,2)
下記の表1に示したナフィオン115、ナフィオン117(デュポン社製)について測定されたイオン交換容量、含水率、及び電気伝導度の結果を表1の比較例1、2に示す。
(比較例3)
実施例1で得た架橋PTFEフィルム(厚さ50μm)をコック付きのガラス製セパラブル容器(内径3cmφ×高さ15cm)に入れて脱気後アルゴンガスで置換した。この状態で架橋PTFEフィルムに、再び、γ線(線量率10kGy/h)を45kGy室温で照射した。アルゴンガスのバブリングによって酸素を除きアルゴンガス置換したスチレンモノマーを架橋PTFEフィルムの入ったガラス容器に、膜が浸漬されるまで導入した。容器内を攪拌し、60℃で6時間反応させた。その後、グラフト共重合膜をトルエン、続いてアセトンで洗浄し、乾燥した。グラフト率は93%であった。このグラフト重合膜を0.5Mクロルスルホン酸(1,2−ジクロロエタン溶媒)に浸漬し60℃、24時間スルホン化反応を行った。その後、この膜を水洗いしてスルホン酸基とした。


Claims (29)

  1. 高分子フィルム基材に高エネルギー重イオンを照射して照射損傷を形成した後、該照射損傷を化学的又は熱的にエッチング処理して、該フィルム基材に、基材表面における平均直径が10nm以上、数が104〜1014個/cm2の微細なシリンダー状の貫通孔を形成し、得られた穿孔フィルム基材に、スルホニルハライド基を有するモノマーである、CF2=CF(SO21)(式中、X1はハロゲン基で−F又は−Clである。以下同じ。)、CH2=CF(SO21)、CF2=CF(O(CF214SO21)、及びCF2=CF(OCH2(CF214SO21)からなる群から選択される1種類又は2種類以上のモノマーを加えて脱気し、γ線、X線、電子線の電離性放射線を照射することよって、該フィルム基材の表面や孔内に該モノマーをグラフト重合させ、グラフトした分子鎖中の[−SO21]基をスルホン酸塩基[−SO3M](式中、Mはアルカリ金属でNa又はKである。)とし、次いでスルホン酸基[−SO3H]とすることを特徴とする、高分子イオン交換膜の製造方法。
  2. 高分子フィルム基材に高エネルギー重イオンを照射して照射損傷を形成した後、該照射損傷を化学的又は熱的にエッチング処理して、該フィルム基材に、基材表面における平均直径が10nm以上、数が104〜1014個/cm2の微細なシリンダー状の貫通孔を形成し、得られた穿孔フィルム基材に、スルホン酸エステル基を有するモノマーである、CF2=CF(SO31)(式中、R1はアルキル基で−CH3、−C25又は−C(CH33である。以下同じ。)、CH2=CF(SO31)、CF2=CF(O(CF214SO31)、及びCF2=CF(OCH2(CF214SO31)からなる群から選択される1種類又は2種類以上のモノマーを加えて脱気し、γ線、X線、電子線の電離性放射線を照射することよって、該フィルム基材の表面や孔内に該モノマーをグラフト重合させ、グラフトした分子鎖中の[−SO31]基を加水分解してスルホン酸基[−SO3H]とすることを特徴とする、高分子イオン交換膜の製造方法。
  3. 高分子フィルム基材に高エネルギー重イオンを照射して照射損傷を形成した後、該照射損傷を化学的又は熱的にエッチング処理して、該フィルム基材に、基材表面における平均直径が10nm以上、数が104〜1014個/cm2の微細なシリンダー状の貫通孔を形成し、得られた穿孔フィルム基材に、CF2=CF(O(CF2142)(式中、X2はハロゲン基で−Br又は−Clである。以下同じ。)、及びCF2=CF(OCH2(CF2142)からなる群から選択される1種類又は2種類のモノマーを加えて脱気し、γ線、X線、電子線の電離性放射線を照射することよって、該フィルム基材の表面や孔内に該モノマーをグラフト重合させ、グラフトした分子鎖中のハロゲン基[−X2]を亜硫酸塩若しくは亜硫酸水素塩の水溶液又は水とアルコールの混合溶液中で反応させて、スルホン酸塩基[−SO3M](式中、Mはアルカリ金属でNa又はKである。)とし、次いでスルホン酸基[−SO3H]とすることを特徴とする、高分子イオン交換膜の製造方法。
  4. 高分子フィルム基材に高エネルギー重イオンを照射して照射損傷を形成した後、該照射損傷を化学的又は熱的にエッチング処理して、該フィルム基材に、基材表面における平均直径が10nm以上、数が104〜1014個/cm2の微細なシリンダー状の貫通孔を形成し、得られた穿孔フィルム基材に、次のA〜C群:
    A群:CF2=CF(SO21)(式中、X1はハロゲン基で−F又は−Clである。以下同じ。)、CH2=CF(SO21)、CF2=CF(O(CF214SO21)、及びCF2=CF(OCH2(CF214SO21);
    B群:CF2=CF(SO31)(式中、R1はアルキル基で−CH3、−C25、又は−C(CH33である。以下同じ。)、CH2=CF(SO31)、CF2=CF(O(CF214SO31)、及びCF2=CF(OCH2(CF214SO31);及び
    C群;CF2=CF(O(CF2142)(式中、X2はハロゲン基で−Br又は−Clである。以下同じ。)、及びCF2=CF(OCH2(CF2142
    のうち少なくとも2以上の異なる群から選択される2種類以上のモノマーを加えて脱気し、γ線、X線、電子線の電離性放射線を照射することよって、該フィルム基材の表面や孔内に該モノマーをグラフト重合させ、グラフトした分子鎖中の官能基をスルホン酸基[−SO3H]とすることを特徴とする、高分子イオン交換膜の製造方法。
  5. 更に、アクリルモノマーである、CF2=CR2(COOR3)(式中、R2は−CH3又は−Fであり、R3は−H、−CH3、−C25又は−C(CH33)である。以下同じ。)、及びCH2=CR2(COOR3)からなる群から選択される1種類以上のコモノマーを、全モノマー基準で50モル%以下の量加えてグラフト重合させる、請求項1〜3のいずれか1項に記載の高分子イオン交換膜の製造方法。
  6. 高分子フィルム基材に高エネルギー重イオンを照射して照射損傷を形成した後、該照射損傷を化学的又は熱的にエッチング処理して、該フィルム基材に、基材表面における平均直径が10nm以上、数が104〜1014個/cm2の微細なシリンダー状の貫通孔を形成し、得られた穿孔フィルム基材に、スチレン、スチレン誘導体モノマーである2,4−ジメチルスチレン、ビニルトルエン、及び4−tert−ブチルスチレンからなる群から選択される1種類又は2種類以上のモノマー加えて脱気し、γ線、X線、電子線の電離性放射線を照射することよって、該フィルム基材の表面や孔内に該モノマーをグラフト重合させ、グラフトした分子鎖や分子鎖中の芳香環にクロルスルホン酸でスルホン酸基[−SO3H]を導入することを特徴とする、高分子イオン交換膜の製造方法。
  7. 高分子フィルム基材に高エネルギー重イオンを照射して照射損傷を形成した後、該照射損傷を化学的又は熱的にエッチング処理して、該フィルム基材に、基材表面における平均直径が10nm以上、数が104〜1014個/cm2の微細なシリンダー状の貫通孔を形成し、得られた穿孔フィルム基材に、アセナフチレン、ビニルケトンCH2=CH(COR4)(式中、R4は−CH3、−C25、又はフェニル基(−C65)である。)、ビニルエーテルCH2=CH(OR5)(式中、R5は−Cn2n+1(n=1〜5)、−CH(CH3)2、−C(CH3)3、又はフェニル基である。)、及びフッ化ビニルエーテルCF2=CF(OR5)若しくはCH2=CF(OR5)からなる群から選択される1種類又は2種類以上のモノマーを加えて脱気し、γ線、X線、電子線の電離性放射線を照射することよって、該フィルム基材の表面や孔内に該モノマーをグラフト重合させ、グラフトした分子鎖や分子鎖中の芳香環にクロルスルホン酸でスルホン酸基[−SO3H]を導入することを特徴とする、高分子イオン交換膜の製造方法。
  8. 高分子フィルム基材に高エネルギー重イオンを照射して照射損傷を形成した後、該照射損傷を化学的又は熱的にエッチング処理して、該フィルム基材に、基材表面における平均直径が10nm以上、数が104〜1014個/cm2の微細なシリンダー状の貫通孔を形成し、得られた穿孔フィルム基材に、次のD〜F群:
    D群:スチレン、スチレン誘導体モノマーである2,4−ジメチルスチレン、ビニルトルエン、及び4−tert−ブチルスチレン;及び
    E群:アセナフチレン、ビニルケトンCH2=CH(COR4)(式中、R4は−CH3、−C25、又はフェニル基(−C65)である。)、ビニルエーテルCH2=CH(OR5)(式中、R5は−Cn2n+1(n=1〜5)、−CH(CH3)2、−C(CH3)3、又はフェニル基である。)、及びフッ化ビニルエーテルCF2=CF(OR5)若しくはCH2=CF(OR5
    F群:CF2=CR2(COOR3)(式中、R2は−CH3又は−Fであり、R3は−H、−CH3、−C25又は−C(CH33である。以下同じ。)、及びCH2=CR2(COOR3
    の各群から選ばれた2種類以上のモノマー/コモノマーを加えて脱気し、γ線、X線、電子線の電離性放射線を照射することよって、該フィルム基材の表面や孔内に該モノマーをグラフト重合させ、グラフトした分子鎖や分子鎖中の芳香環にクロルスルホン酸でスルホン酸基[−SO3H]を導入することを特徴とする、高分子イオン交換膜の製造方法。
  9. グラフト重合が同時グラフト重合法により行われる、請求項1〜8のいずれか1項に記載の高分子イオン交換膜の製造方法。
  10. グラフト重合が後グラフト重合法により行われる、請求項1〜8のいずれか1項に記載の高分子イオン交換膜の製造方法。
  11. 高分子フィルム基材が、ポリフッ化ビニリデン、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン−六フッ化プロピレン共重合体、又はテトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体フィルム基材である、請求項1〜10のいずれか1項に記載の高分子イオン交換膜の製造方法。
  12. 高分子フィルム基材が、高分子量ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリアミド、芳香族ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネイト、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンサルファイド、又はポリスルホンフィルム基材である、請求項1〜10のいずれか1項に記載の高分子イオン交換膜の製造方法。
  13. 高分子フィルム基材が、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミド、ポリベンゾイミダゾール、又はポリエーテルエーテルイミドフィルム基材である、請求項1〜10のいずれか1項に記載の高分子イオン交換膜の製造方法。
  14. 高分子フィルム基材が架橋構造を有する、請求項1〜13のいずれか1項に記載の高分子イオン交換膜の製造方法。
  15. 更に、ジビニルベンゼン、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、3,5−ビス(トリフルオロビニル)フェノール、及び3,5−ビス(トリフルオロビニロキシ)フェノールからなる群から選択される1種類以上の架橋剤を、全モノマー基準で30モル%以下の量加えてグラフト重合させる、請求項1〜14のいずれか1項に記載の高分子イオン交換膜の製造方法。
  16. 高分子フィルム基材に高エネルギー重イオンを照射して照射損傷を形成した後、該照射損傷を化学的又は熱的にエッチング処理して、該フィルム基材に、基材表面における平均直径が10nm以上、数が104〜1014個/cm2の微細なシリンダー状の貫通孔を形成し、得られた穿孔フィルム基材に、クロルスルホン酸を反応させてフィルム基材分子鎖中にスルホン酸基[−SO3H]を導入することを特徴とする、高分子イオン交換膜の製造方法。
  17. 高分子フィルム基材が、架橋構造を有しないか、又は架橋構造を有するポリフッ化ビニリデン、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体、超高分子量ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリアミドフィルム基材である、請求項16に記載の高分子イオン交換膜の製造方法。
  18. 請求項6のモノマー群にα−メチルスチレンを加えて成る請求項6に記載の高分子イオン交換膜の製造方法。
  19. 請求項7のモノマー群にインデン、ベンゾフラン、5−ビニル−2−ノルボルネンを加えて成る請求項7に記載の高分子イオン交換膜の製造方法。
  20. 請求項8のD群のモノマーにα−メチルスチレンを、E群のモノマーにインデン、ベンゾフラン、5−ビニル−2−ノルボルネンを加えて成る請求項8に記載の高分子イオン交換膜の製造方法。
  21. グラフト重合が同時グラフト重合法により行われる、請求項18〜20のいずれか1項に記載の高分子イオン交換膜の製造方法。
  22. グラフト重合が後グラフト重合法により行われる、請求項18〜20のいずれか1項に記載の高分子イオン交換膜の製造方法。
  23. 高分子フィルム基材が請求項11〜14のいずれか1項に記載のフィルム基材である、請求項18〜22のいずれか1項に記載の高分子イオン交換膜の製造方法。
  24. 請求項15の架橋剤の群にビス(ビニルフェニル)基を有する(CH2=CH(C64))2(CH2n(n=1〜4)を加えて成る請求項15に記載の高分子イオン交換膜の製造方法で請求項1〜23のいずれか1項に記載の高分子イオン交換膜の製造方法。
  25. 更に、グラフトモノマー溶液中に無機物である超微粒子状無定形シリカ(SiO2)、H+型モルデナイト (Ca,Na2,K2)Al2Si10O24・7H2O)、アルミナ(Al2O3)、及び、酸化ジルコニウム(ZrO2)からなる群から選択される1種類以上の微粉末を、全モノマー基準で1重量%〜30重量%の範囲で加えてグラフト重合させる、請求項1〜24のいずれか1項に記載の高分子イオン交換膜の製造方法。
  26. 更に、グラフトモノマー溶液中にジルコニウムホスフェイト(Zr(HPO4)2・nH2O)、りんタングステン酸水和物(H3PW12O40・nH2O) 、けいタングステン酸水和物(H4SiW12O40・nH2O) 、及び、モリブドりん酸水和物(MoO3H3PO4・nH2O) からなる群から選択される1種類以上の微粉末を、全モノマー基準で1重量%〜30重量%の範囲で加えてグラフト重合させる、請求項1〜24のいずれか1項に記載の高分子イオン交換膜の製造方法。
  27. 更に、グラフトモノマー溶液中にりんタングステン酸水和物、ジルコニウムホスフェイト、及び、けいタングステン酸水和物を吸着させた無定形シリカ、又は、りんタングステン酸水和物、ジルコニウムホスフェイト、及び、けいタングステン酸水和物を吸着させたモルデナイトやアルミナからなる群から選択される1種類以上の微粉末を、全モノマー基準で1重量%〜30重量%の範囲で加えてグラフト重合させる、請求項1〜24のいずれか1項に記載の高分子イオン交換膜の製造方法。
  28. 請求項1〜27のいずれか1項に記載の高分子イオン交換膜の製造方法において、高エネルギー重イオンを照射した後に化学的又は熱的にエッチング処理して高分子フィルム基材に微細なシリンダー状の貫通孔を形成する方法の代わりに、微細孔を有する金属マスクで覆った高分子フィルム基材を酸素プラズマで照射し、高分子フィルム基材に基材表面における平均直径が1(m以上、数が108個/cm2以下の微細なシリンダー状の貫通孔を形成する。この方法によって得られた穿孔高分子フィルム基材に請求項1〜27のいずれか1項に記載されたグラフトモノマー、グラフト方法、及び、高分子フイルム基材を用いた高分子イオン交換膜の製造方法。
  29. 得られる高分子イオン交換膜のグラフト率が10〜150%、イオン交換容量が0.3〜2.5meq/gであることを特徴とする、請求項1〜28のいずれか1項に記載の高分子イオン交換膜の製造方法。

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