JP2006008970A - ナノ空間制御高分子イオン交換膜の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 基材とした高分子フィルムをイオン照射してナノサイズの貫通孔を多数あけ、さらにこれに電離性放射線を照射して官能性モノマーをフィルム表面や孔内にグラフトまたは共グラフトし、さらに、グラフト鎖へのスルホン酸基の導入することによって、優れた耐酸化性、寸法安定性、電気伝導性と耐メタノール性を有し、かつ、イオン交換容量が広い範囲内に制御された高分子イオン交換膜の製造法を確立した。
【選択図】 なし
Description
また、本発明は、燃料電池に適した固体高分子電解質膜で、優れた耐酸化性、耐熱性及び寸法安定性と共に、優れた電気伝導性を有する高分子イオン交換膜の製造方法に関する。
(1)A群:スルホニルハライド基を有するモノマーである、CF2=CF(SO2X1)(式中、X1はハロゲン基で−F又は−Clである。以下同じ。)、CH2=CF(SO2X1)、CF2=CF(O(CF2)1〜4SO2X1)、及びCF2=CF(OCH2(CF2)1〜4SO2X1)
からなる群から選択される1種類又は2種類以上のモノマー。
(2)B群:スルホン酸エステルを有するモノマーである、CF2=CF(SO3R1)(式中、R1はアルキル基で−CH3、−C2H5又は−C(CH3)3である。以下同じ。)、CH2=CF(SO3R1)、CF2=CF(O(CF2)1〜4SO3R1)、及びCF2=CF(OCH2(CF2)1〜4SO3R1)からなる群から選択される1種類又は2種類以上のモノマー。
(3)C群:ハロゲン化フッ化アルキルエーテル基を有するCF2=CF(O(CF2)1〜4X2)(式中、X2はハロゲン基で−Br又は−Clである。以下同じ。)、及びCF2=CF(OCH2(CF2)1〜4X2)からなる群から選択される1種類又は2種類のモノマー。
(4)次のA〜C群:
A群:CF2=CF(SO2X1)(式中、X1はハロゲン基で−F又は−Clである。以下同じ。)、CH2=CF(SO2X1)、CF2=CF(O(CF2)1〜4SO2X1)、及びCF2=CF(OCH2(CF2)1〜4SO2X1);
B群:CF2=CF(SO3R1)(式中、R1はアルキル基で−CH3、−C2H5、又は−C(CH3)3である。以下同じ。)、CH2=CF(SO3R1)、CF2=CF(O(CF2)1〜4SO3R1)、及びCF2=CF(OCH2(CF2)1〜4SO3R1);及び
C群;CF2=CF(O(CF2)1〜4X2)(式中、X2はハロゲン基で−Br又は−Clである。以下同じ。)、及びCF2=CF(OCH2(CF2)1〜4X2)
のうち少なくとも2以上の異なる群から選択される2種類以上のモノマー。
D群:スチレン、α−メチルスチレン、スチレン誘導体モノマーである2,4−ジメチルスチレン、ビニルトルエン、及び4−tert−ブチルスチレン;及び
E群:アセナフチレン、インデン、ベンゾフラン、5−ビニル−2−ノルボルネン、ビニルケトンCH2=CH(COR4)(式中、R4は−CH3、−C2H5、又はフェニル基(−C6H5)である。)、ビニルエーテルCH2=CH(OR5)(式中、R5は−CnH2n+1(n=1〜5)、−CH(CH3)2、−C(CH3)3、又はフェニル基である。)、及びフッ化ビニルエーテルCF2=CF(OR5)若しくはCH2=CF(OR5)
F群:CF2=CR2(COOR3)(式中、R2は−CH3又は−Fであり、R3は−H、−CH3、−C2H5又は−C(CH3)3である。以下同じ。)、及びCH2=CR2(COOR3)
の各群から選択される2種類以上のモノマー/コモノマー系。
イオン穿孔したフィルム基材への上記モノマーのグラフト重合は、ステンレス又はガラス製の耐圧容器に、穿孔フィルム基材を入れて十分に真空に引き、予め不活性ガスのバブリングや凍結脱気により酸素ガスを除いたモノマーを加えて、60Co−γ線を、室温、不活性ガス中で5〜500kGy照射する。グラフト重合は、穿孔フィルム基材とモノマーを同時に放射線照射してグラフト反応させる、いわゆる同時照射法と、穿孔フィルム基材を先に放射線照射した後にモノマーと接触させてグラフト反応させる、いわゆる後グラフト重合法のいずれかの方法によって行うことができる。グラフト重合温度は同時照射法では室温、後グラフト重合法では、モノマーや溶媒の沸点以下の温度で通常0℃〜100℃で行なう。酸素の存在はグラフト反応を阻害するため、これら一連の操作はアルゴンガスや窒素ガスなどの不活性ガス中で行い、また、モノマーやモノマーを溶媒に溶かした溶液は常法の処理(バブリングや凍結脱気)で酸素を除去した状態で使用する。
イオン照射による穿孔は高分子の構成分子や固体構造、即ち結晶性か非晶性かなどによらず広く有機高分子材料に適用できる。高分子フィルム基材は、本発明の一態様で使用するポリフッ化ビニリデン(PVDF)のほかに、高分子量ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリアミド、芳香族ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネイト、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンサルファイド、又はポリスルホンフィルム基材を用いることができる。また、ポリイミド系の高分子フィルムであるポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミド、ポリベンゾイミダゾール、又はポリエーテルエーテルイミドフィルム基材も使用することができる。さらに、フッ素系の高分子であるエチレン−テトラフルオロエチレン共重合体、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン−六フッ化プロピレン共重合体、又はテトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体フィルム基材を用いてもよい。これらのフィルム基材は、架橋構造を有さないフィルム基材を使用することができるが、予め架橋したフィルム基材を用いることにより、得られるイオン交換膜の耐熱性が向上する、膜の膨潤が少ない、架橋構造の導入によりモノマーのグラフト率が向上する、照射による膜強度の低下を抑制できる等の利点があるので、高温作動で高性能の燃料電池膜には好適である。例えば、グラフトモノマーとしてスチレンを用いた場合、未架橋のポリテトラフルオロエチレンに比較し、架橋ポリテトラフルオロエチレンはグラフト率を著しく増加させることができ、このため未架橋ポリテトラフルオロエチレンの2〜10倍のスルホン酸基を架橋ポリテトラフルオロエチレンに導入できることを本発明者らはすでに見出した(特開2001‐348439号公報:特願2000-170450)。架橋構造を有するテトラフルオロエチレン−六フッ化プロピレン共重合体やテトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体の製造方法はRadiation Physical Chemistry vol. 42, NO. 1/3, pp. 139-142(1993)に掲載されている。
(1)グラフト率
フィルム基材を主鎖部、フッ素モノマーやこれらと炭化水素系モノマー等とのグラフト重合した部分をグラフト鎖部とすると、主鎖部に対するグラフト鎖部の重量比は、次式のグラフト率(Xdg(重量%))として表される。
膜のイオン交換容量(Iex(meq/g))は次式で表される。
室温で水中に保存しておいたH型のイオン交換膜を水中から取り出し軽くふき取った後(約1分後)の膜の重量をWs(g)とし、その後、この膜を60℃にて16時間、真空乾燥した時の膜の重量Wd(g)を乾燥重量とすると、Ws、Wdから次式により含水率が求められる。
イオン交換膜の電気伝導性は、交流法による測定(新実験化学講座19、高分子化学〈II
〉、p. 992,丸善)で、通常の膜抵抗測定セルとヒュ−レットパッカード製のLCRメータ、E-4925Aを使用して膜抵抗(Rm)の測定を行った。1M硫酸水溶液をセルに満たして膜の有無による白金電極間(距離5mm)の抵抗を測定し、膜の電気伝導度(比伝導度)は次式を用いて算出した。
60℃で16時間真空乾燥後のイオン交換膜の重量をW3とし、80℃の3%過酸化水素溶液に24時間処理したイオン交換膜の乾燥後重量をW4とする。
スルホン酸型膜の室温における湿潤状態(水)の膜の一辺の長さをL0とし、膜を所定の条件にてメタノール溶液に浸漬した後、室温におけるメタノール溶液湿潤状態での膜の同じ片の長さをLMとすると
架橋したポリフッ化ビニリデンフィルム基材(以下PVDFと略す)を得るために以下の照射を行った。厚さ25μmのポリフッ化ビニリデンフィルムフィルム(クレハ化学製)の10cmx10cmをSUS製オートクレーブ照射容器(内径7cmφx高さ30cm)に入れ、容器内を10-3Torrに脱気してアルゴンガスに置換した。その後、60Co−γ線を室温にて線量率5kGy/hで線量500kGy(100時間)照射した。照射PVDFフィルムの架橋状態はジメチルホルムアミド溶媒でゲル化率を測定したところ80%であった。
厚さ38μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(ヘキスト社製、以下PETと略す)を、実施例1と同様にAVFサイクロトロン加速器(原研、高崎研)のビームラインにある照射装置(内径60cmφx高さ100cm)内の照射台に取付け、容器内を10-6Torrに脱気して、450MeVのXe(キセノン)イオンを3x108個/cm2量照射した。照射容器からフィルムを取りだし、0.2NのNaOH水溶液に70℃、17時間浸漬して、イオン照射による照射損傷部位をエッチングした。十分水洗後、乾燥して、走査型電子顕微鏡で孔の平均の大きさを測定したところ0.5(mであった。
(実施例3)
実施例1と同様にして、450MeVのXe(キセノン)イオンを3x108個/cm2量照射した。
(実施例4)
実施例2と同様にして、450MeVのXe(キセノン)イオンを3x108個/cm2量照射した。
(実施例5)
実施例1と同様にして、450MeVのXe(キセノン)イオンを3x108個/cm2量照射した。
(実施例6)
実施例2と同様にして、PETフィルム基材に500MeV、Au(金)イオンを3x108個/cm2量照射した。照射容器からフィルムを取りだし、0.2NのNaOH水溶液に70℃、17時間浸漬して、イオン照射による照射損傷部位をエッチングした。十分水洗後、乾燥して、走査型電子顕微鏡で孔の平均の大きさを測定したところ0.6(mであった。
(実施例7)
実施例1と同様にして、450MeVのXe(キセノン)イオンを3x108個/cm2量照射した。
(実施例8)
膜のアルコールによる膨潤度を測定した。本実施例により得られた膜、及びナフィオン117を3Nの硫酸溶液に浸漬し、スルホン酸基をH型とした。そして、室温水に浸漬し、湿潤状態で寸法を測定した。次に膜をメタノール濃度80vol%水溶液に浸けて60℃、3時間保持し、その後、室温まで一夜放冷した後、膜の寸法変化を測定した。その結果を表1に示す。本実施例で得られた膜は、ナフィオン膜に比べメタノールによる膜の膨潤がほとんど認められないので、直接メタノール型燃料電池の膜材料としてきわめて有効である。表1より本発明の有効性が実証された。
実施例1と同様にして、450MeVのXe(キセノン)イオンを3x108個/cm2量照射した。
(実施例10)
実施例1と同様にして、450MeVのXe(キセノン)イオンを3x108個/cm2量照射した。
(実施例11)
実施例1と同様にして、450MeVのXe(キセノン)イオンを3x108個/cm2量照射した。
架橋したポリフッ化ビニリデンフィルム基材を得るために以下の照射を行った。厚さ25μmのポリフッ化ビニリデンフィルムフィルム(クレハ化学製)の10cmx10cmをSUS製オートクレーブ照射容器(内径7cmφx高さ30cm)に入れ、容器内を10-3Torrに脱気してアルゴンガスに置換した。その後、60Co-γ線を室温にて線量率5kGy/hで線量500kGy(100時間)照射した。照射PVDFフィルムの架橋状態はジメチルホルムアミド溶媒でゲル化率を測定したところ80%であった。
下記の表1に示したナフィオン115、ナフィオン117(デュポン社製)について測定されたイオン交換容量、含水率、及び電気伝導度の結果を表1の比較例1、2に示す。
実施例1で得た架橋PTFEフィルム(厚さ50μm)をコック付きのガラス製セパラブル容器(内径3cmφ×高さ15cm)に入れて脱気後アルゴンガスで置換した。この状態で架橋PTFEフィルムに、再び、γ線(線量率10kGy/h)を45kGy室温で照射した。アルゴンガスのバブリングによって酸素を除きアルゴンガス置換したスチレンモノマーを架橋PTFEフィルムの入ったガラス容器に、膜が浸漬されるまで導入した。容器内を攪拌し、60℃で6時間反応させた。その後、グラフト共重合膜をトルエン、続いてアセトンで洗浄し、乾燥した。グラフト率は93%であった。このグラフト重合膜を0.5Mクロルスルホン酸(1,2−ジクロロエタン溶媒)に浸漬し60℃、24時間スルホン化反応を行った。その後、この膜を水洗いしてスルホン酸基とした。
Claims (29)
- 高分子フィルム基材に高エネルギー重イオンを照射して照射損傷を形成した後、該照射損傷を化学的又は熱的にエッチング処理して、該フィルム基材に、基材表面における平均直径が10nm以上、数が104〜1014個/cm2の微細なシリンダー状の貫通孔を形成し、得られた穿孔フィルム基材に、スルホニルハライド基を有するモノマーである、CF2=CF(SO2X1)(式中、X1はハロゲン基で−F又は−Clである。以下同じ。)、CH2=CF(SO2X1)、CF2=CF(O(CF2)1〜4SO2X1)、及びCF2=CF(OCH2(CF2)1〜4SO2X1)からなる群から選択される1種類又は2種類以上のモノマーを加えて脱気し、γ線、X線、電子線の電離性放射線を照射することよって、該フィルム基材の表面や孔内に該モノマーをグラフト重合させ、グラフトした分子鎖中の[−SO2X1]基をスルホン酸塩基[−SO3M](式中、Mはアルカリ金属でNa又はKである。)とし、次いでスルホン酸基[−SO3H]とすることを特徴とする、高分子イオン交換膜の製造方法。
- 高分子フィルム基材に高エネルギー重イオンを照射して照射損傷を形成した後、該照射損傷を化学的又は熱的にエッチング処理して、該フィルム基材に、基材表面における平均直径が10nm以上、数が104〜1014個/cm2の微細なシリンダー状の貫通孔を形成し、得られた穿孔フィルム基材に、スルホン酸エステル基を有するモノマーである、CF2=CF(SO3R1)(式中、R1はアルキル基で−CH3、−C2H5又は−C(CH3)3である。以下同じ。)、CH2=CF(SO3R1)、CF2=CF(O(CF2)1〜4SO3R1)、及びCF2=CF(OCH2(CF2)1〜4SO3R1)からなる群から選択される1種類又は2種類以上のモノマーを加えて脱気し、γ線、X線、電子線の電離性放射線を照射することよって、該フィルム基材の表面や孔内に該モノマーをグラフト重合させ、グラフトした分子鎖中の[−SO3R1]基を加水分解してスルホン酸基[−SO3H]とすることを特徴とする、高分子イオン交換膜の製造方法。
- 高分子フィルム基材に高エネルギー重イオンを照射して照射損傷を形成した後、該照射損傷を化学的又は熱的にエッチング処理して、該フィルム基材に、基材表面における平均直径が10nm以上、数が104〜1014個/cm2の微細なシリンダー状の貫通孔を形成し、得られた穿孔フィルム基材に、CF2=CF(O(CF2)1〜4X2)(式中、X2はハロゲン基で−Br又は−Clである。以下同じ。)、及びCF2=CF(OCH2(CF2)1〜4X2)からなる群から選択される1種類又は2種類のモノマーを加えて脱気し、γ線、X線、電子線の電離性放射線を照射することよって、該フィルム基材の表面や孔内に該モノマーをグラフト重合させ、グラフトした分子鎖中のハロゲン基[−X2]を亜硫酸塩若しくは亜硫酸水素塩の水溶液又は水とアルコールの混合溶液中で反応させて、スルホン酸塩基[−SO3M](式中、Mはアルカリ金属でNa又はKである。)とし、次いでスルホン酸基[−SO3H]とすることを特徴とする、高分子イオン交換膜の製造方法。
- 高分子フィルム基材に高エネルギー重イオンを照射して照射損傷を形成した後、該照射損傷を化学的又は熱的にエッチング処理して、該フィルム基材に、基材表面における平均直径が10nm以上、数が104〜1014個/cm2の微細なシリンダー状の貫通孔を形成し、得られた穿孔フィルム基材に、次のA〜C群:
A群:CF2=CF(SO2X1)(式中、X1はハロゲン基で−F又は−Clである。以下同じ。)、CH2=CF(SO2X1)、CF2=CF(O(CF2)1〜4SO2X1)、及びCF2=CF(OCH2(CF2)1〜4SO2X1);
B群:CF2=CF(SO3R1)(式中、R1はアルキル基で−CH3、−C2H5、又は−C(CH3)3である。以下同じ。)、CH2=CF(SO3R1)、CF2=CF(O(CF2)1〜4SO3R1)、及びCF2=CF(OCH2(CF2)1〜4SO3R1);及び
C群;CF2=CF(O(CF2)1〜4X2)(式中、X2はハロゲン基で−Br又は−Clである。以下同じ。)、及びCF2=CF(OCH2(CF2)1〜4X2)
のうち少なくとも2以上の異なる群から選択される2種類以上のモノマーを加えて脱気し、γ線、X線、電子線の電離性放射線を照射することよって、該フィルム基材の表面や孔内に該モノマーをグラフト重合させ、グラフトした分子鎖中の官能基をスルホン酸基[−SO3H]とすることを特徴とする、高分子イオン交換膜の製造方法。 - 更に、アクリルモノマーである、CF2=CR2(COOR3)(式中、R2は−CH3又は−Fであり、R3は−H、−CH3、−C2H5又は−C(CH3)3)である。以下同じ。)、及びCH2=CR2(COOR3)からなる群から選択される1種類以上のコモノマーを、全モノマー基準で50モル%以下の量加えてグラフト重合させる、請求項1〜3のいずれか1項に記載の高分子イオン交換膜の製造方法。
- 高分子フィルム基材に高エネルギー重イオンを照射して照射損傷を形成した後、該照射損傷を化学的又は熱的にエッチング処理して、該フィルム基材に、基材表面における平均直径が10nm以上、数が104〜1014個/cm2の微細なシリンダー状の貫通孔を形成し、得られた穿孔フィルム基材に、スチレン、スチレン誘導体モノマーである2,4−ジメチルスチレン、ビニルトルエン、及び4−tert−ブチルスチレンからなる群から選択される1種類又は2種類以上のモノマー加えて脱気し、γ線、X線、電子線の電離性放射線を照射することよって、該フィルム基材の表面や孔内に該モノマーをグラフト重合させ、グラフトした分子鎖や分子鎖中の芳香環にクロルスルホン酸でスルホン酸基[−SO3H]を導入することを特徴とする、高分子イオン交換膜の製造方法。
- 高分子フィルム基材に高エネルギー重イオンを照射して照射損傷を形成した後、該照射損傷を化学的又は熱的にエッチング処理して、該フィルム基材に、基材表面における平均直径が10nm以上、数が104〜1014個/cm2の微細なシリンダー状の貫通孔を形成し、得られた穿孔フィルム基材に、アセナフチレン、ビニルケトンCH2=CH(COR4)(式中、R4は−CH3、−C2H5、又はフェニル基(−C6H5)である。)、ビニルエーテルCH2=CH(OR5)(式中、R5は−CnH2n+1(n=1〜5)、−CH(CH3)2、−C(CH3)3、又はフェニル基である。)、及びフッ化ビニルエーテルCF2=CF(OR5)若しくはCH2=CF(OR5)からなる群から選択される1種類又は2種類以上のモノマーを加えて脱気し、γ線、X線、電子線の電離性放射線を照射することよって、該フィルム基材の表面や孔内に該モノマーをグラフト重合させ、グラフトした分子鎖や分子鎖中の芳香環にクロルスルホン酸でスルホン酸基[−SO3H]を導入することを特徴とする、高分子イオン交換膜の製造方法。
- 高分子フィルム基材に高エネルギー重イオンを照射して照射損傷を形成した後、該照射損傷を化学的又は熱的にエッチング処理して、該フィルム基材に、基材表面における平均直径が10nm以上、数が104〜1014個/cm2の微細なシリンダー状の貫通孔を形成し、得られた穿孔フィルム基材に、次のD〜F群:
D群:スチレン、スチレン誘導体モノマーである2,4−ジメチルスチレン、ビニルトルエン、及び4−tert−ブチルスチレン;及び
E群:アセナフチレン、ビニルケトンCH2=CH(COR4)(式中、R4は−CH3、−C2H5、又はフェニル基(−C6H5)である。)、ビニルエーテルCH2=CH(OR5)(式中、R5は−CnH2n+1(n=1〜5)、−CH(CH3)2、−C(CH3)3、又はフェニル基である。)、及びフッ化ビニルエーテルCF2=CF(OR5)若しくはCH2=CF(OR5)
F群:CF2=CR2(COOR3)(式中、R2は−CH3又は−Fであり、R3は−H、−CH3、−C2H5又は−C(CH3)3である。以下同じ。)、及びCH2=CR2(COOR3)
の各群から選ばれた2種類以上のモノマー/コモノマーを加えて脱気し、γ線、X線、電子線の電離性放射線を照射することよって、該フィルム基材の表面や孔内に該モノマーをグラフト重合させ、グラフトした分子鎖や分子鎖中の芳香環にクロルスルホン酸でスルホン酸基[−SO3H]を導入することを特徴とする、高分子イオン交換膜の製造方法。 - グラフト重合が同時グラフト重合法により行われる、請求項1〜8のいずれか1項に記載の高分子イオン交換膜の製造方法。
- グラフト重合が後グラフト重合法により行われる、請求項1〜8のいずれか1項に記載の高分子イオン交換膜の製造方法。
- 高分子フィルム基材が、ポリフッ化ビニリデン、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン−六フッ化プロピレン共重合体、又はテトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体フィルム基材である、請求項1〜10のいずれか1項に記載の高分子イオン交換膜の製造方法。
- 高分子フィルム基材が、高分子量ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリアミド、芳香族ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネイト、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンサルファイド、又はポリスルホンフィルム基材である、請求項1〜10のいずれか1項に記載の高分子イオン交換膜の製造方法。
- 高分子フィルム基材が、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミド、ポリベンゾイミダゾール、又はポリエーテルエーテルイミドフィルム基材である、請求項1〜10のいずれか1項に記載の高分子イオン交換膜の製造方法。
- 高分子フィルム基材が架橋構造を有する、請求項1〜13のいずれか1項に記載の高分子イオン交換膜の製造方法。
- 更に、ジビニルベンゼン、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、3,5−ビス(トリフルオロビニル)フェノール、及び3,5−ビス(トリフルオロビニロキシ)フェノールからなる群から選択される1種類以上の架橋剤を、全モノマー基準で30モル%以下の量加えてグラフト重合させる、請求項1〜14のいずれか1項に記載の高分子イオン交換膜の製造方法。
- 高分子フィルム基材に高エネルギー重イオンを照射して照射損傷を形成した後、該照射損傷を化学的又は熱的にエッチング処理して、該フィルム基材に、基材表面における平均直径が10nm以上、数が104〜1014個/cm2の微細なシリンダー状の貫通孔を形成し、得られた穿孔フィルム基材に、クロルスルホン酸を反応させてフィルム基材分子鎖中にスルホン酸基[−SO3H]を導入することを特徴とする、高分子イオン交換膜の製造方法。
- 高分子フィルム基材が、架橋構造を有しないか、又は架橋構造を有するポリフッ化ビニリデン、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体、超高分子量ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリアミドフィルム基材である、請求項16に記載の高分子イオン交換膜の製造方法。
- 請求項6のモノマー群にα−メチルスチレンを加えて成る請求項6に記載の高分子イオン交換膜の製造方法。
- 請求項7のモノマー群にインデン、ベンゾフラン、5−ビニル−2−ノルボルネンを加えて成る請求項7に記載の高分子イオン交換膜の製造方法。
- 請求項8のD群のモノマーにα−メチルスチレンを、E群のモノマーにインデン、ベンゾフラン、5−ビニル−2−ノルボルネンを加えて成る請求項8に記載の高分子イオン交換膜の製造方法。
- グラフト重合が同時グラフト重合法により行われる、請求項18〜20のいずれか1項に記載の高分子イオン交換膜の製造方法。
- グラフト重合が後グラフト重合法により行われる、請求項18〜20のいずれか1項に記載の高分子イオン交換膜の製造方法。
- 高分子フィルム基材が請求項11〜14のいずれか1項に記載のフィルム基材である、請求項18〜22のいずれか1項に記載の高分子イオン交換膜の製造方法。
- 請求項15の架橋剤の群にビス(ビニルフェニル)基を有する(CH2=CH(C6H4))2(CH2)n(n=1〜4)を加えて成る請求項15に記載の高分子イオン交換膜の製造方法で請求項1〜23のいずれか1項に記載の高分子イオン交換膜の製造方法。
- 更に、グラフトモノマー溶液中に無機物である超微粒子状無定形シリカ(SiO2)、H+型モルデナイト (Ca,Na2,K2)Al2Si10O24・7H2O)、アルミナ(Al2O3)、及び、酸化ジルコニウム(ZrO2)からなる群から選択される1種類以上の微粉末を、全モノマー基準で1重量%〜30重量%の範囲で加えてグラフト重合させる、請求項1〜24のいずれか1項に記載の高分子イオン交換膜の製造方法。
- 更に、グラフトモノマー溶液中にジルコニウムホスフェイト(Zr(HPO4)2・nH2O)、りんタングステン酸水和物(H3PW12O40・nH2O) 、けいタングステン酸水和物(H4SiW12O40・nH2O) 、及び、モリブドりん酸水和物(MoO3H3PO4・nH2O) からなる群から選択される1種類以上の微粉末を、全モノマー基準で1重量%〜30重量%の範囲で加えてグラフト重合させる、請求項1〜24のいずれか1項に記載の高分子イオン交換膜の製造方法。
- 更に、グラフトモノマー溶液中にりんタングステン酸水和物、ジルコニウムホスフェイト、及び、けいタングステン酸水和物を吸着させた無定形シリカ、又は、りんタングステン酸水和物、ジルコニウムホスフェイト、及び、けいタングステン酸水和物を吸着させたモルデナイトやアルミナからなる群から選択される1種類以上の微粉末を、全モノマー基準で1重量%〜30重量%の範囲で加えてグラフト重合させる、請求項1〜24のいずれか1項に記載の高分子イオン交換膜の製造方法。
- 請求項1〜27のいずれか1項に記載の高分子イオン交換膜の製造方法において、高エネルギー重イオンを照射した後に化学的又は熱的にエッチング処理して高分子フィルム基材に微細なシリンダー状の貫通孔を形成する方法の代わりに、微細孔を有する金属マスクで覆った高分子フィルム基材を酸素プラズマで照射し、高分子フィルム基材に基材表面における平均直径が1(m以上、数が108個/cm2以下の微細なシリンダー状の貫通孔を形成する。この方法によって得られた穿孔高分子フィルム基材に請求項1〜27のいずれか1項に記載されたグラフトモノマー、グラフト方法、及び、高分子フイルム基材を用いた高分子イオン交換膜の製造方法。
- 得られる高分子イオン交換膜のグラフト率が10〜150%、イオン交換容量が0.3〜2.5meq/gであることを特徴とする、請求項1〜28のいずれか1項に記載の高分子イオン交換膜の製造方法。
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