JP3932338B2 - フッ素系高分子イオン交換膜からなる燃料電池用電解質膜 - Google Patents

フッ素系高分子イオン交換膜からなる燃料電池用電解質膜 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、燃料電池に適した固体高分子電解質膜で優れた耐酸化性と広範囲なイオン交換容量を有するフッ素系高分子イオン交換膜及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
固体高分子電解質型イオン交換膜を用いた燃料電池はエネルギー密度が高いことから、電気自動車の電源や簡易補助電源として期待されている。この燃料電池では優れた特性を有する高分子イオン交換膜の開発は最も重要な技術の一つである。
【0003】
高分子イオン交換膜型燃料電池においては、イオン交換膜はプロトンを伝導するための電解質として作用し、また、加圧下においても燃料である水素やメタノールと酸化剤とを直接混合させないための隔膜としての役割も有する。このようなイオン交換膜としては、電解質としてイオン交換容量が高いこと、大きな電流を長期間流すので膜の化学的な安定性、特に、膜の劣化の主因となる水酸化ラジカル等に対する耐性(耐酸化性)が優れていること、電気抵抗を低く保持するために保水性が一定で高いことが要求される。一方、隔膜としての役割から、膜の力学的な強度が強いこと及び寸法安定性が優れていること、燃料である水素ガスや酸素ガスについて過剰なガス透過性を有しないことなどが要求される。
【0004】
初期の高分子イオン交換膜型燃料電池では、スチレンとジビニルベンゼンの共重合で製造した炭化水素系高分子イオン交換膜が使用された。しかし、このイオン交換膜は耐酸化性に起因する耐久性が非常に劣っていたため実用性に乏しく、その後はデュポン社により開発されたパーフルオロスルホン酸膜「ナフィオン(デュポン社登録商標)」等が一般に用いられてきた。
【0005】
しかしながら、「ナフィオン」等の従来のフッ素系高分子イオン交換膜は、化学的な耐久性や安定性には優れているが、イオン交換容量が1meq/g前後と小さく、また、保水性が不十分でイオン交換膜の乾燥が生じてプロトン伝導性が低下したり、あるいは、メタノールを燃料とする場合にはアルコール類に対する膜の膨潤が起きる。これは、イオン交換容量を大きくするため、スルホン酸基を多く導入しようとすると、高分子鎖中に架橋構造がないために膜強度が著しく低下し、容易に破損するようになる。したがって、従来のフッ素系高分子のイオン交換膜ではスルホン酸基の量を膜強度が保持される程度に抑える必要があり、このためイオン交換容量が1meq/g程度ものしかできなかった。また、ナフィオンなどのフッ素系高分子イオン交換膜はモノマーの合成が困難かつ複雑であり、また、これを重合してポリマー膜を製造する工程も複雑なため非常に高価であり、プロトン交換膜型燃料電池を自動車などへ搭載して実用化する場合の大きな障害になっている。そのため、前記ナフィオン等に替わる低コストで高性能な電解質膜を開発する努力がおこなわれてきた。
【0006】
また、本発明と密接に関連する放射線グラフト重合法では、フッ素系高分子膜にスルホン酸基を導入することができるモノマーをグラフトして、固体高分子電解質膜を作製する試みがなされている。しかし、通常のフッ素系高分子膜ではグラフト反応が膜の内部まで進行せず膜表面に限られるため、電解質膜としての特性が向上しない。また、電子線やγ線などの放射線を照射した場合に、選んだフッ素樹脂の構造によっては樹脂が劣化する場合があった。さらに、グラフトモノマーとして炭化水素構造のみのモノマーでは耐酸化性が低いことが問題であった。例えば、炭化水素構造を含むエチレン−テトラフルオロエチレン共重合体(以下ETFEと略す)にスチレンモノマーを放射線グラフト反応により導入し、次いでスルホン化することにより合成したイオン交換膜は燃料電池用イオン交換膜として機能する(特開平9−102322)。しかし、欠点として高分子膜の主鎖やポリスチレングラフト鎖が炭化水素で構成されているため、膜に大きな電流を長時間流すと炭化水素鎖部やポリスチレングラフト鎖部の酸化劣化が起こり、膜のイオン交換能が大幅に低下する。さらに、この炭化水素構造を多く含むイオン交換膜を固体電解質膜に用いるとガス拡散電極の触媒層に十分な撥水性がない場合には、特に燃料電池反応で水が生成する正極で、電極が湿り過ぎることに起因する出力低下が起こる問題が指摘されている(特開平11−111310)。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上述のような従来技術の問題点を克服するためになされたものであり、放射線グラフトによるフッ素系高分子イオン交換膜において、固体高分子電解質としての特性に優れ、かつ、耐酸化性の優れた膜を提供するものである。
【0008】
また、本発明は、フッ素系高分子イオン交換膜における最大の欠点であるイオン交換容量が小さく、かつ、保水性が悪いこと、また、炭化水素モノマーのみをグラフトした架橋PTFE系イオン交換膜における最大の欠点である耐酸化性が低いことなどを解決課題とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、優れた耐酸化性と広いイオン交換容量を有するフッ素系高分子イオン交換膜であり、特に燃料電池に適したイオン交換膜を提供する。
【0010】
即ち、基材として、フッ素系高分子をマトリックスとし、これに放射線照射して各種のモノマーをグラフトし、さらに、グラフト鎖へのスルホン酸基の導入について研究を進めた結果、フッ素化ブタジエンをモノマーに選択することで、イオン交換容量などの各特性を適切で広い範囲内に制御することができるフッ素系高分子イオン交換膜を発明するに至った。フッ素化ブタジエンをグラフト共重合させた後、発煙硫酸で直接、スルホン酸基とするか、或いは、亜硫酸ナトリウム若しくは亜硫酸水素ナトリウムの溶液でスルホン酸ナトリウム基とし、これをさらにスルホン酸基とすることを特徴としたフッ素系高分子イオン交換膜を提供するものであり、かつ、このイオン交換膜のグラフト率が10〜150%、イオン交換容量が0.3〜3.0meq/gであることを特徴とするフッ素系高分子イオン交換膜、及び、その製造方法を提供するものである。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明で使用できる基材ポリマーとして、フッ素系高分子が挙げられる。そして、フッ素系高分子は予め架橋しておくと、耐熱性が向上するので、高温作動の燃料電池には好適である。具体的には、ポリテトラフルオロエチレン(以下PTFEと略す)、ポリテトラフルオロエチレン−六フッ化プロピレン共重合体(以下FEPと略す)、ポリテトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(以下PFAと略す)、ポリフッ化ビニリデン(以下PVDFと略す)、又はエチレン−テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)の架橋、未架橋フィルムが適応できるが、未架橋PTFEだけは耐放射線性に乏しく、適応困難である。即ち、PTFEは予め、架橋した後にグラフト重合することが必要である。また、FEPあるいはPFAは、予め架橋しておく方が好ましいが、未架橋でもグラフト重合の際の吸収線量を30kGy以下に抑制すれば、膜強度の低下は小さい。一方、PVDFやETFEは未架橋でも耐放射線を有するが、架橋することで、耐熱性が向上する。
【0012】
架橋PTFEの製造方法は特開平6−116423に開示されている。
架橋FEPやPFAの製造方法はRadiation Physical Chemistry vol.42、NO.1/3、pp.139−142、1993に掲載されている。
【0013】
特に本発明に最も好適なフッ素系高分子として、架橋PTFEが好ましく、詳述する。
架橋PTFEと記載しているが、分子構造的には、長鎖分岐型で、長鎖分岐型PTFEとは、下記の式【化1】及び【化2】で示されるくり返し単位を有するフッ素系高分子、及び【化1】と【化2】が結合したものを繰り返し単位とするフッ素系高分子の混合物を指す。
【0014】
【化1】
Figure 0003932338
または、分子末端が−CF=CF2
式中のn、m、r、kは1以上の任意の整数変数。m、n、k>r。
【0015】
【化2】
Figure 0003932338
式中のn、m、r、kは【化1】に同じ。また、c≒n,d≒m,r≒fである。また、PTFE主鎖と長鎖分岐との結合がエーテル結合(−O−)となっているもの、さらに、分子鎖中に放射線照射によって生成した二重結合を含む。
【0016】
その分子構造から見ても無定型部分が多く、未架橋のPTFEのグラフト率が低いという欠点を解決できる。例えば、グラフトモノマーとしてスチレンを用いた場合、未架橋のPTFEに比較し、架橋PTFEはグラフト率を著しく増加させることができ、このため未架橋のPTFEの2〜10倍のスルホン酸基をPTFEに導入できることを本発明者らはすでに見出した(特願2000−170450)。
【0017】
架橋PTFEの製法は、PTFEを300〜365℃の温度範囲、10-3〜10Torrの減圧下、または、10-3〜2Torr(1Torr=1mm水銀柱)の酸素分圧の不活性ガス中でγ線、X線や電子線の放射線を5〜500kGy照射して作製することができる。不活性ガスとしては窒素、アルゴン、ヘリウムガスなどを用いる。
【0018】
本発明によるフッ素系高分子イオン交換膜は、上記の方法によって得られた架橋PTFEやFEP,PFA,ETFE,PVDF等の他のフッ素系高分子に下記の(1)〜(2)の各モノマーを放射線照射によってグラフト重合させる。
(1)次式:
4nm n+m=6、n≧1
の構造を有するフッ素化ブタジエン、例えば、1,1,2,2−テトラフルオロ−1,3ブタジエン、2,3−ジフルオロ−1,3ブタジエンがあげられる。及び、ヘキサフルオロ−1,3ブタジエン。
(2)主成分モノマーとして(1)のフッ素化ブタジエンと、コモノマーとして、フッ素化ブタジエンの50モル%以下の量の下記のa)〜c)から選ばれたモノマー:
a)炭素数4以下で、重合性二重結合を有する炭化水素系モノマーとして、例えば、エチレン、プロピレン、ブテン−1、ブテン−2、イソブテンなど;
b)CH2=CR1(COOR2)若しくはCF2=CF(COOR2)で、R1=−H,−CH3,−F、R2=−H,−CH3,−C25,−C37,−C49であるアクリル系モノマーとしては、例えば、CH2=CH(COOH)、CH2=CH(COOCH3)、CH2=C(CH3)(COOH)、CH2=C(CH3)(COOCH3)、CH2=CF(COOCH3)、又は、CF2=CF(COOCH3)など;
c)炭素数4以下で、共重合性二重結合を有するフッ化炭素系モノマー、例えば、CF2=CF2、CF2=CHF、CF2=CFCl、CF2=CFBr、CF2=CH2、CHF=CH2などのフロオロエチレン系モノマー、CF2=CFCF3のフルオロプロピレン系モノマー、CF2=CFCF2CF3(フルオロブテン−1)、CF2=C(CF32(フロオロイソブテン)、CF3CF=CFCF3(フルオロブテン−2)、CF2=CFCF=CF2(フルオロブタジエン)のフルオロブテン系モノマーなど、及び、CF2=CFCH2CH3のハイドロフルオロビニル系モノマーやCF2=CFOCH2CH3のハイドロフルオロビニルエーテル系モノマーなど。
【0019】
これら(1)〜(2)の各モノマーは、フレオン112(CCl2FCCl2F)、フレオン113(CCl2FCClF2)、n−ヘキサン、イソプロピルアルコール、t−ブタノール、ベンゼン、トルエン、ヘキサフルオロベンゼン、クロロエタンやクロロメタン系溶媒などの溶媒で該モノマーを希釈したものを用いても良い。ガス状のモノマーを用いるときは、不活性なガスを用いてモノマーガスの分圧を1〜50気圧とし、液体状モノマー溶液と接触させ、かつ、この溶液を攪拌しながらグラフト重合すると良い。
【0020】
架橋PTFEフィルムへの上記モノマーのグラフト重合は、架橋PTFEに電子線、γ線やX線を室温、不活性ガス中で5〜500kGy照射した後、不活性ガスのバブリングや凍結脱気で酸素ガスを除いたモノマー溶液中にこの照射した架橋PTFEを浸漬する。
【0021】
グラフト重合は、架橋PTFEを放射線照射後モノマーとグラフト反応させる、いわゆる前照射法か、又は架橋PTFEとモノマーを同時に放射線照射してグラフトさせる、いわゆる同時照射法のいずれかの方法によってもよい。
【0022】
グラフト重合温度は、モノマーや溶媒の沸点以下の温度で、通常0℃〜100℃で行なうのがよい。酸素の存在はグラフト反応を阻害するため、これら一連の操作はアルゴンガスや窒素ガスなどの不活性ガス中で、また、モノマーやモノマーを溶媒に溶かした溶液は常法の処理(バブリングや凍結脱気)で酸素を除去した状態で使用する。
【0023】
グラフト率(実施例の式(1)参照)は放射線の線量とほぼ比例関係にあり、線量が多いほどグラフト率は高くなるが、グラフト率は徐々に飽和してくる。グラフト率は架橋PTFEに対し、10〜150%、より好ましくは15〜100%である。
【0024】
上記(1)〜(2)で得られたグラフト鎖中のブタジエンの二重結合に発煙硫酸で直接、スルホン酸基を導入する、或いは、亜硫酸ナトリウム(Na2SO3)若しくは亜硫酸水素ナトリウム(NaHSO3)の水溶液、又は亜硫酸ナトリウム若しくは亜硫酸水素ナトリウムの水とアルコールの混合溶液中で反応させて、スルホン酸ナトリウム基[−SO3Na]とし、引き続き、得られた[−SO3Na]基を硫酸溶液でスルホン酸基[−SO3H]とした架橋PTFEグラフト共重合体であるフッ素系高分子イオン交換膜が得られる。
【0025】
発煙硫酸、或いは、亜硫酸ナトリウム(Na2SO3)若しくは亜硫酸水素ナトリウム(NaHSO3)の水溶液、または、亜硫酸ナトリウム若しくは亜硫酸水素ナトリウムの水とアルコールの混合溶液中の濃度は、室温における亜硫酸ナトリウムや亜硫酸水素ナトリウムの飽和濃度以下が良い。また、アルコールとしてはイソプロピルアルコールやブチルアルコールなどが良い。
【0026】
架橋PTFEグラフト共重合膜における上記のスルホン化反応温度は室温〜200℃で、より好ましくは80℃〜160℃である。膜の厚さが20μm〜500μmであるとき、反応時間は5〜60分である。反応に際しては、水溶液で最高で50気圧程度になるので、耐圧のオートクレーブを用い、水/アルコール溶液系では安全上、空気を除いて窒素置換し、温度の上限も160℃が望ましい。
【0027】
引き続いて、得られたグラフト鎖中のスルホン酸ナトリウム基[−SO3Na]を1N〜2N硫酸溶液中、60℃でスルホン酸基[−SO3H]とする。
本発明によるフッ素系高分子イオン交換膜はグラフト量と導入されたスルホン酸基の量によって、この膜のイオン交換容量を変えることができる。イオン交換容量とは、乾燥イオン交換膜の重量1g当たりのイオン交換基量(meq/g)である。グラフトモノマーの種類にもよるが、グラフト率が10%で以下ではイオン交換容量が0.3meq/g、以下であり、グラフト率が150%以上では膜の膨潤が大きくなる。すなわち、グラフト率を高くしてイオン交換基を多く導入すれば、イオン交換容量は高くなる。しかし、イオン交換基量を多くしすぎると、含水時に膜が膨潤して膜の強度が低下する。これらのことから、本発明によるフッ素系高分子イオン交換膜のイオン交換容量は0.3meq/g〜3.0meq/g、より好ましくは、0.5meq/g〜2.0meq/gである。
【0028】
本発明のフッ素系高分子イオン交換膜では導入されたスルホン酸基の量によって、本発明のフッ素系高分子の含水率を制御できる。この膜を燃料電池用イオン交換膜として使用する場合、含水率が低すぎると運転条件のわずかな変化によって電気伝導度やガス透過係数が変わり好ましくない。従来のナフィオン膜はほとんどが−(CF2)−で構成されているために、80℃以上の高い温度で電池を作動させると水原子が膜中に不足し、膜の導電率が急速に低下する。これに対し、本発明のイオン交換膜はグラフト鎖中にカルボキシル基などの親水基を導入することができるため、含水率は主にスルホン酸基の量によるが10〜80重量(wt)%の範囲で制御できる。一般的にはイオン交換容量が増すにつれて含水率も増大するが、本発明のイオン交換膜は含水率を変化させることができることから、膜の含水率は10〜80wt%、好ましくは20〜60wt%とすることができる。
【0029】
本発明のフッ素系高分子膜は【化1】や【化2】におけるPTFE主鎖末端の絡み合いや長鎖分岐両末端の結合によってイオン交換容量が3.0meq/g程度まで多量のスルホン酸基を導入しても、膜の力学特性や寸法安定性が保たれ、実用に供することができる。高いイオン交換容量と膜の力学的特性の優れた膜は実用上極めて重要な発明である。
【0030】
高分子イオン交換膜はイオン交換容量とも関係する電気伝導度が高いものほど電気抵抗が小さく、電解質膜としての性能は高い。しかし、25℃におけるイオン交換膜の電気伝導度が0.05(Ω・cm)-1以下であると燃料電池としての出力性能が著しく低下する場合が多いため、イオン交換膜の電気伝導度は0.05(Ω・cm)-1以上、より高性能のイオン交換膜では0.10(Ω・cm)-1以上に設計されていることが多い。本発明によるイオン交換膜では25℃におけるイオン交換膜の電気伝導度がナフィオン膜と同等かそれよりも高い値が得られた。
【0031】
イオン交換膜の電気伝導度を上げるために、イオン交換膜の厚みを薄くすることも考えられる。しかし現状では、あまり薄いイオン交換膜では破損しやすく、イオン交換膜自体の製作も難しいのが実状である。したがって、通常では30〜200μm厚の範囲のイオン交換膜が使われている。本発明の場合、膜厚は10〜500μm、好ましくは20μm〜100μmの範囲のものが有効である。
【0032】
燃料電池膜においては、現在、燃料の候補の一つとして考えられているメタノールがあるが、パーフルオロスルホン酸膜であるナフィオン膜(デュポン社)は分子間の架橋構造や絡み合い構造がないためにメタノールによって大きく膨潤し、燃料であるメタノールが電池膜を通してアノード(燃料極)からカソード(空気極)へと拡散し、発電効率が低下することが重大な問題とされている。しかし、本発明によるフッ素系高分子膜では高いイオン交換容量にも拘わらず、架橋PTFEのPTFE主鎖末端の絡み合いや長鎖分岐鎖両末端での結合、さらに、グラフト鎖の絡み合いにより、メタノールを含めたアルコール類による膜の膨潤はほとんど認められない。このため、改質器を用いずにメタノールを直接燃料とするダイレクト・メタノール型燃料電池(Direct methanol Fuel cell)の膜として有用である。
【0033】
燃料電池膜においては、膜の耐酸化性は膜の耐久性(寿命)に関係する極めて重要な特性である。これは電池稼働中に発生するOHラジカル等がイオン交換膜を攻撃して、膜を劣化させるものである。架橋PTFEに炭化水素系のスチレンをグラフトした後、ポリスチレングラフト鎖をスルホン化して得た高分子イオン交換膜の耐酸化性は極めて低い。例えば、グラフト率100%のポリスチレン鎖をスルホン化したポリスチレングラフト架橋PTFEイオン交換膜は80℃の3%過酸化水素水溶液中、約60分でイオン交換膜が劣化しイオン交換容量がほぼ半分となる。これは、OHラジカルの攻撃によって、ポリスチレン鎖が容易に分解するためである。これに対し、本発明によるフッ素系高分子イオン交換膜はグラフト鎖がフッ素系モノマーの重合体、ないしは、主にフッ素系モノマー同志の共重合体であるために、フッ素化合物の優れた耐性が発揮されるため耐酸化性がきわめて高く、80℃の3%過酸化水素水溶液中に24時間以上置いてもイオン交換容量はほとんど変化しない。
【0034】
以上のように、本発明のフッ素系高分子イオン交換膜は優れた耐酸化性や耐メタノール性を有すると共に、膜としての重要な特性、すなわち、イオン交換容量0.3〜3.0meq/gを広い範囲に制御できることも本発明の特徴である。
【0035】
【実施例】
以下、本発明を実施例及び比較例により説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0036】
なお、各測定値は以下の測定によって求めた。
(1)グラフト率
架橋PTFEを主鎖部、フッ素化ブタジエンのグラフト重合した部分をグラフト鎖部とすると、主鎖部に対するグラフト鎖部の重量比は、次式のグラフト率(Xdg(wt%))として表される。
【0037】
dg=100(W2−W1)/W1 (1)
1:グラフト前の架橋PTFEフィルムの重さ(g)
2:グラフト後の架橋PTFEフィルム(乾燥状態)の重さ(g)
(2)イオン交換容量
膜のイオン交換容量(Iex(meq/g))は次式で表される。
【0038】
ex=n(酸基)obs/Wd (2)
n(酸基)obs:イオン交換膜の酸基濃度(mM/g)
d :イオン交換膜の乾燥重量(g)
n(酸基)obsの測定は、完璧を期すため、膜を再度1M(1モル)硫酸溶液中に50℃で4時間浸漬し、完全に酸型(H型)とした。その後、3MのNaCl水溶液中50℃、4時間浸漬して−SO3Na型とし、置換されたプロトン(H+)を0.2NのNaOHで中和滴定し酸基濃度を求めた。
(3)含水率
室温で水中に保存しておいたH型のイオン交換膜を水中から取出し軽くふき取った後(約1分後)の膜の重量をWs(g)とし、その後、この膜を60℃にて16時間、真空乾燥した時の膜の重量Wd(g)を乾燥重量とすると、Ws、Wdから次式により含水率が求められる。
【0039】
含水率(%)=100・(Ws−Wd)/Wd (3)
(4)電気伝導度
イオン交換膜の電気伝導性は、交流法による測定(新実験化学講座19、高分子化学〈II〉、p.992,丸善)で、通常の膜抵抗測定セルとヒュ−レットパッカード製のLCRメータ、E−4925Aを使用して膜抵抗(Rm)の測定を行った。1M硫酸水溶液をセルに満たして膜の有無による白金電極間(距離5mm)の抵抗を測定し、膜の電気伝導度(比伝導度)は次式を用いて算出した。
【0040】
κ=1/Rm・d/S (Ω-1cm-1) (4)
κ:膜の電気伝導度((Ω-1cm-1
d:イオン交換膜の厚み(cm)
S:イオン交換膜の通電面積(cm2
電気伝導度測定値の比較のために、直流法でMark W.Verbrugge,Robert F.Hill等(J.Electrochem.Soc.,.137,3770−3777(1990))と類似のセル及びポテンショスタット、関数発生器を用いて測定した。交流法と直流法の測定値には良い相関性が見られた。下記の表1の値は交流法による測定値である。
(5)耐酸化性(重量残存率%)
60℃で16時間真空乾燥後の重量をW3とし、80℃の3%過酸化水素溶液に24時間処理した膜の乾燥後重量をW4とする。
耐酸化性=100(W4/W3
実施例1
架橋PTFEフィルムを得るために以下の照射を行った。厚さ50μmのPTFEフィルム(日東電工製、品番No.900)の10cm角をヒーター付きのSUS製オートクレーブ照射容器(内径7cmφx高さ30cm)に入れ、容器内を10-3Torrに脱気してアルゴンガスに置換した。その後、電気ヒータで加熱してPTFEフィルムの温度を340℃として、60Co−γ線を線量率3kGy/hで線量90kGy(30時間)照射した。照射後、容器を冷却してPTFEフィルムを取り出した。この高温照射で得られた架橋PTFEフィルムは、フィルムの透明性が上がっていることから、結晶サイズが未架橋PTFEよりもかなり小さくなっていることを示している。この架橋PTFEフィルムの引張り強度は18MPa、破断伸びは320%(引張り速度200mm/minで試料片ダンベル状4号(JIS−K6251−1993))、DSC測定による融解温度は315℃であった。
【0041】
この架橋PTFEフィルムをコック付きのガラス製セパラブル容器(内径3cmφx15cm高さ)に入れて脱気後アルゴンガスで置換した。この状態で架橋PTFEフィルム4cm2に、再び、γ線(線量率10kGy/h)を60kGy室温で照射した。引き続いて、フレオン112の25mlをアルゴンガスのバブリングによって酸素を除いた後、照射された架橋PTFEフィルムの入ったガラス容器中にフィルムが浸漬されるまで入れ、さらに、容器を0℃に冷やしてヘキサフルオロ−1,3−ブタジエン(CF2=CF−CF=CF2)10gを導入した。容器を密閉し、60℃にして48時間反応させた。反応後、トルエン、ついでアセトンで洗浄し、乾燥した。以下の式(1)によって求めたグラフト率は58%であった。
【0042】
このグラフト重合した架橋PTFEフィルムを耐圧オートクレーブに入れ、これに亜硫酸ナトリウム(Na2SO3)の20重量%(wt%)水溶液を加えて、溶液に膜を浸し、簡単にバブリングして空気を窒素に置換した。このオートクレーブを135℃のオイルバスに入れ、30分間反応させた。冷却後、膜をオートクレーブから取り出し、水洗し、2Nの硫酸溶液中、60℃で4時間処理した。本実施例で得られた膜のグラフト率、イオン交換容量、含水率、および、電気伝導度を下記の表1に示す。
【0043】
実施例2
実施例1と同様にγ線を90kGy照射して得た架橋PTFEフィルム(4cm2)をコック付きのガラス製セパラブル容器(内径3cmφx15cm高さ)に入れて脱気後アルゴンガスで置換した。この状態で再び、γ線(線量率10kGy/h)を60kGy室温で照射した。照射後、容器を真空脱気し、アルゴンガスのバブリングで酸素を除いたフレオン112を照射された架橋PTFEフィルムが浸漬(約25ml)されるまで入れ、さらに、容器を0℃に冷やしてヘキサフルオロ−1,3−ブタジエン(CF2=CF−CF=CF2)10gを導入した。さらに、2気圧に調整したテトラフルオロエチレン(CF2=CF2)ガスを反応容器に接続し、容器内を2気圧とした。磁気スターラーで溶液を攪拌しながら、室温で48時間反応させた。反応後、トルエン、ついでアセトンで洗浄し、乾燥した。実施例の式(1)によって求めたグラフト率は71%であった。
【0044】
このグラフト共重合した架橋PTFE膜を耐圧オートクレーブに入れ、これに亜硫酸ナトリウム(Na2SO3)の20重量%(wt%)水溶液にイソプロパノール(1:3(水))を加えた溶液で膜を浸し、簡単にバブリングして空気を窒素に置換した。このオートクレーブを120℃のオイルバスに入れ、30分間反応させた。冷却後、膜をオートクレーブから取りだし、水洗し、2Nの硫酸溶液中、60℃で4時間処理した。本実施例で得られた膜のグラフト率、イオン交換容量、含水率、および、電気伝導度を表1に示す。
【0045】
なお、各測定値は実施例1と同様にして求めた。
実施例3
室温、空気中で電子線を100kGy照射して架橋した厚さ50μm、4cm2のETFEフィルムをコック付きのSUS製耐圧オートクレーブ(内径4cmφx12cmH)に入れて脱気後アルゴンガスで置換した。この状態で再び、γ線(線量率10kGy/h)を60kGy室温で照射した。照射後、容器を真空脱気し、アルゴンガスのバブリングで空気を除いたフレオン112をETFEフィルムが浸漬される量(25ml)を入れた後、容器を0℃に冷却してヘキサフルオロ−1,3−ブタジエン(CF2=CF−CF=CF2)10gを導入した。容器を密封して溶液を攪拌しながら、60℃で48時間反応させた。反応後、トルエン、ついでアセトンで洗浄し、乾燥した。実施例の式(1)によって求めたグラフト率は76%であった。
【0046】
このグラフト重合したETFEフィルムを耐圧オートクレーブに入れ、これに亜硫酸ナトリウム(Na2SO3)の20重量%(wt%)水溶液にイソプロパノール(1:3(水))を加えた溶液で膜を浸し、簡単にバブリングして空気を窒素に置換した。このオートクレーブを120℃のオイルバスに入れ、30分間反応させた。冷却後、膜をオートクレーブから取りだし、水洗し、2Nの硫酸溶液中、60℃で4時間処理した。本実施例で得られた膜のグラフト率、イオン交換容量、含水率、および、電気伝導度を表1に示す。
【0047】
なお、各測定値は実施例1と同様にして求めた。
実施例4
厚さ50μmのFEPフィルムの3cm角を20メッシュの2枚のカーボン布ではさみ、ヒーター付きのSUS製オートクレーブ照射容器(内径7cmφx高さ30cm)に入れ、容器内を10-3Torrに脱気してアルゴンガスに置換した。その後、電気ヒータで加熱してFEPフィルムの温度を305℃として、60Co−γ線を線量率3kGy/hで線量90kGy(30時間)照射した。照射後、容器を冷却して架橋FEPフィルムを取り出した。架橋FEPフィルム4cm2をコック付きのガラス製セパラブル容器(内径3cmφx15cmH)に入れて脱気後アルゴンガスで置換した。この状態でFEPフィルムに、再び、γ線(線量率10kGy/h)を60kGy室温で照射した。引き続いて、アルゴンガスのバブリングで空気を除いたフレオン112をFEPフィルムが浸漬される量(25ml)を入れ、容器を0℃に冷却してヘキサフルオロ−1,3−ブタジエン(CF2=CF−CF=CF2)10gを導入した。その後、容器を密封して50℃にして48時間反応させた。反応後、トルエン、ついでアセトンで洗浄し、乾燥した。実施例の式(1)によって求めたグラフト率は62%であった。
【0048】
このグラフト重合したFEPフィルムを耐圧オートクレーブに入れ、これに亜硫酸ナトリウム(Na2SO3)の20重量%(wt%)水溶液を加えて、溶液に膜を浸漬し、簡単にバブリングして空気を窒素に置換した。このオートクレーブを135℃のオイルバスに入れ、30分間反応させた。冷却後、膜をオートクレーブから取りだし、水洗し、2Nの硫酸溶液中、60℃で4時間処理した。本実施例で得られた膜のグラフト率、イオン交換容量、含水率、および、電気伝導度を表1に示す。
【0049】
なお、各測定値は以下の測定によって求めた。
実施例5
厚さ50μm、4cm2の架橋してないPFAフィルムをコック付きのガラス製セパラブル容器(内径3cmφx15cmH)に入れて脱気後アルゴンガスで置換した。この状態で、γ線(線量率10kGy/h)を20kGy室温で照射した。引き続いて、アルゴンガスのバブリングで空気を除いたフレオン112をPFAフィルムが浸漬される量(25ml)を入れ、容器を0℃に冷却してヘキサフルオロ−1,3−ブタジエン(CF2=CF−CF=CF2)10gを導入した。その後、容器を密封して50℃にして48時間反応させた。反応後、トルエン、ついでアセトンで洗浄し、乾燥した。実施例の式(1)によって求めたグラフト率は43%であった。
【0050】
このグラフト重合したPFAフィルムを耐圧オートクレーブに入れ、これに亜硫酸ナトリウム(Na2SO3)の20重量%(wt%)水溶液にイソプロパノール(1:3(水))を加えた溶液で膜を浸し、簡単にバブリングして空気を窒素に置換した。このオートクレーブを120℃のオイルバスに入れ、30分間反応させた。冷却後、膜をオートクレーブから取りだし、水洗し、2Nの硫酸溶液中、60℃で4時間処理した。本実施例で得られた膜のグラフト率、イオン交換容量、含水率、および、電気伝導度を表1に示す。
【0051】
なお、各測定値は実施例1と同様にして求めた。
実施例6
室温、空気中で電子線を100kGy照射して架橋した厚さ50μm、4cm2のPVDFフィルムをコック付きのSUS製耐圧オートクレーブ(内径4cmφx12cmH)に入れて脱気後アルゴンガスで置換した。この状態で再び、γ線(線量率10kGy/h)を60kGy室温で照射した。
引き続いて、アルゴンガスのバブリングで空気を除いたフレオン112をPVDFフィルムが浸漬される量(25ml)を入れ、容器を0℃に冷却してヘキサフルオロ−1,3−ブタジエン(CF2=CF−CF=CF2)10gを導入した。その後、容器を密封して50℃にして48時間反応させた。反応後、トルエン、ついでアセトンで洗浄し、乾燥した。実施例の式(1)によって求めたグラフト率は78%であった。
【0052】
このグラフト重合したPVDFフィルムを耐圧オートクレーブに入れ、これに亜硫酸ナトリウム(Na2SO3)の20重量%(wt%)水溶液にイソプロパノール(1:3(水))を加えた溶液で膜を浸し、簡単にバブリングして空気を窒素に置換した。このオートクレーブを120℃のオイルバスに入れ、30分間反応させた。冷却後、膜をオートクレーブから取り出し、水洗し、2Nの硫酸溶液中、60℃で4時間処理した。
【0053】
本実施例で得られた膜のグラフト率、イオン交換容量、含水率、および、電気伝導度を表1に示す。なお、各測定値は実施例1と同様にして求めた。
比較例1、2
下記の表1に示したナフィオン115、ナフィオン117(デュポン社製)について測定されたイオン交換容量、含水率、および、電気伝導度の結果を表1の比較例1、2に示す。
【0054】
比較例3
実施例1で得た架橋PTFEフィルム(厚さ50μm)をコック付きのガラス製セパラブル容器(内径3cmφx15cmH)に入れて脱気後アルゴンガスで置換した。この状態で架橋PTFEフィルムに、再び、γ線(線量率10kGy/h)を45kGy室温で照射した。アルゴンガスのバブリングによって酸素を除きアルゴンガス置換したスチレンモノマーを架橋PTFEフィルムの入ったガラス容器に、膜が浸漬されるまで導入した。容器内を攪拌し、60℃で6時間反応させた。その後、グラフト共重合膜をトルエン、続いてアセトンで洗浄し、乾燥した。グラフト率は93%であった。このグラフト重合膜を0.5Mクロルスルホン酸(1,2−ジクロロエタン溶媒)に浸漬し60℃、24時間スルホン化反応を行った。その後、この膜を水洗いしてスルホン酸基とした。
(アルコールの膨潤度の測定)
実施例1およびナフィオン117を3Nの硫酸溶液に浸漬し、スルホン酸基をH型とした。そして、室温水に浸漬し、湿潤状態で寸法を測定した。次に膜をメタノール、イソプロパノール、の各アルコール溶液に浸けて60℃、3時間保持し、その後、室温まで一夜放冷した後、膜の寸法変化を測定し、その結果を図1に示す。本実施例で得られた膜は、ナフィオン膜に比べメタノールなどによる膜の膨潤がほとんど認められないので、直接メタノール型燃料電池の膜材料としてきわめて有効である。
図1.及び表1.より本発明の有効性が実証された。
【0055】
【表1】
Figure 0003932338
【0056】
【発明の効果】
本発明のフッ素樹脂イオン交換膜は、広い範囲のイオン交換容量と優れた保水性、及び高い耐酸化性を有するフッ素系高分子イオン交換膜を提供するものである。本発明のイオン交換膜は、特に燃料電池膜に適している。また、安価で耐久性のある電解膜やイオン交換膜として有用である。
【図面の簡単な説明】
【図1】アルコールと水の混合溶媒による膜の膨潤性を示す図である。

Claims (7)

  1. フッ素系高分子フィルム基材にモノマーとして、次式:
    n+m=6、n≧1
    の構造を有するフッ素化ブタジエンを放射線グラフト重合した後、グラフト鎖中の二重結合にスルホン酸基を導入したフッ素系高分子イオン交換膜。
  2. 前記フッ素系高分子が、ポリテトラフルオロエチレン、ポリテトラフルオロエチレン−六フッ化プロピレン共重合体、ポリテトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、ポリフッ化ビニリデン、又はエチレン−テトラフルオロエチレン共重合体であって、架橋構造を有するものである、請求項1記載のフッ素系高分子イオン交換膜。
  3. 前記フッ素系高分子が、ポリテトラフルオロエチレン−六フッ化プロピレン共重合体、ポリテトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、ポリフッ化ビニリデン、又はエチレン−テトラフルオロエチレン共重合体であって、架橋構造を有しないものである、請求項1のフッ素系高分子イオン交換膜。
  4. スルホン酸基を導入する方法が、発煙硫酸によってグラフト鎖中の二重結合にスルホン酸基を導入するか、或いは、亜硫酸ナトリウム若しくは亜硫酸水素ナトリウムの水溶液、又は、亜硫酸ナトリウム若しくは亜硫酸水素ナトリウムの水とアルコールの混合溶液中で反応させて、グラフト鎖中の二重結合にスルホン酸ナトリウム基[−SONa]を導入し、得られたスルホン酸ナトリウム基を酸でスルホン酸基[−SOH]とした、請求項1〜3のいずれか1項に記載のフッ素系高分子イオン交換膜。
  5. 更に、グラフトコモノマーとして、
    a)炭素数4以下で、重合性二重結合を有する炭化水素系モノマー;
    b)CH=CR(COOR)若しくはCF=CF(COOR)で、R=−H,−CH,−F、R=−H,−CH,−C,−C,−Cであるアクリル系モノマー;又は
    c)炭素数4以下で、共重合性二重結合を有するフッ化炭素系モノマー
    の中から選ばれた一つのモノマーをフッ素化ブタジエンの50モル%以下の量でグラフト共重合した、請求範囲1〜4のいずれか1項に記載のフッ素系高分子イオン交換膜。
  6. グラフト率が10〜150%、イオン交換容量が0.3〜3.0meq/gであることを特徴とする、請求範囲1〜5のいずれか1項に記載のフッ素系高分子イオン交換膜。
  7. フッ素化ブタジエンがCである、請求範囲1〜6のいずれか1項に記載のフッ素系高分子イオン交換膜。
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