JP5105340B2 - 広いイオン交換容量を有するフッ素系高分子イオン交換膜及びその製造方法 - Google Patents

広いイオン交換容量を有するフッ素系高分子イオン交換膜及びその製造方法

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、燃料電池に適した固体高分子電解質膜としてのみならず、広く隔膜としての性能を備え、かつ、耐酸化性の優れたフッ素系高分子イオン交換膜及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
固体高分子電解質型イオン交換膜を用いた燃料電池は作動温度が100℃以下と低く、そのエネルギー密度が高いことから、電気自動車の電源や簡易補助電源として期待されている。この燃料電池においては固体高分子電解質であるイオン交換膜、白金系の触媒、ガス拡散電極、及び高分子電解質膜と電極の接合体などの重要な要素技術がある。しかし、この中でも燃料電池用としての良好な特性を有する高分子イオン交換膜の開発は最も重要な技術の一つである。
【0003】
高分子イオン交換膜型燃料電池においては、イオン交換膜は両面にガス拡散電極が接合されており、膜と電極とは実質的に一体構造になっている。このため、イオン交換膜はプロトンを伝導するための電解質として作用し、また、加圧下においても燃料である水素やメタノールと酸化剤とを直接混合させないための隔膜としての役割も有する。このようなイオン交換膜としては、電解質としてプロトンの移動速度が大きくイオン交換容量が高いこと、大きな電流を長期間流すので膜の化学的な安定性、特に、膜の劣化の主因となる水酸化ラジカル等に対する耐性(耐酸化性)が優れていること、電気抵抗を低く保持するために保水性が一定で高いことが要求される。一方、隔膜としての役割から、膜の力学的な強度が強いこと及び寸法安定性が優れていること、燃料である水素ガスや酸素ガスについて過剰なガス透過性を有しないこと、これらの特性に長期間の耐久性があることなどが要求される。
【0004】
初期の高分子イオン交換膜型燃料電池では、スチレンとジビニルベンゼンの共重合で製造した炭化水素系高分子イオン交換膜が使用された。しかし、このイオン交換膜は耐酸化性に起因する耐久性が非常に劣っていたため実用性に乏しく、その後はデュポン社により開発された炭化フッ素系(フッ素系)高分子のパーフルオロスルホン酸膜「ナフィオン(デュポン社登録商標)」等が一般に用いられてきた。
【0005】
しかしながら、「ナフィオン」等の従来のフッ素系高分子イオン交換膜は、化学的な耐久性や安定性には優れているが、イオン交換容量が1meq/g前後と小さいために十分な電気出力が得られず、また、保水性が不十分でイオン交換膜の乾燥が生じてプロトン伝導性が低下したり、電極触媒での燃料ガスや酸化剤のガスの反応が阻害されたりすることがあった。また、ナフィオンなどのフッ素系高分子イオン交換膜はモノマーの合成が困難かつ複雑であり、また、これを重合してポリマー膜を製造する工程も複雑なため非常に高価であり、プロトン交換膜型燃料電池を自動車などへ搭載して実用化する場合の大きな障害になっている。そのため、前記ナフィオン等に替わる低コストで高性能な電解質膜を開発する努力がおこなわれてきた。
【0006】
上記の他にも、従来のフッ素系高分子イオン交換膜では架橋構造が導入できないために、イオン交換容量を大きくすることができなかった。すなわち、イオン交換容量を大きくしようとしてスルホン酸基を多く導入しようとすると、高分子鎖中に架橋構造がないために膜強度が著しく低下し、容易に破損するようになる。したがって、従来のフッ素系高分子のイオン交換膜ではスルホン酸基の量を膜強度が保持される程度に抑える必要があり、このためイオン交換容量の比較的小さなものしかできなかった。これは燃料電池用などの大きな電流を流すイオン交換膜としては必要な性能を備えたものではなかった。
【0007】
また、本発明と密接に関連する放射線グラフト重合法では、フッ素系高分子膜にスルホン酸基を導入することができるモノマーをグラフトして、固体高分子電解質膜を作製する試みがなされている。しかし、フッ素系高分子膜ではグラフト反応を行うために電子線やγ線などの放射線を照射した場合に、照射による劣化のために著しい膜強度の低下が認められ、また、グラフト率も極めて低いものしか得られない。このため、放射線グラフト法でフッ素系イオン交換膜を作製した場合、膜は非常にもろく、かつ、イオン交換容量の極めて低い膜しか作製できず、電池膜として実用上使用に耐えない場合がほとんどであった。
【0008】
例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)あるいはPTFE−六フッ化プロピレン共重合体(FEP)あるいはPTFE−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)等では、放射線を照射した際に高分子主鎖の著しい切断がおこることが知られている。FEP膜にスチレンを放射線グラフト重合させ、これにスルホン酸基を導入した固体高分子電解質膜を用いて作製した電池においては、電池運転直後から、膜の分解によるスルホン酸基の脱離や膜の膨潤が起こり、この結果、電池内部抵抗が上昇し、数十時間の短時間運転においても電池性能の大幅な低下が起こると報告されている(Electrochimica Acta40,345 (1995))。
【0009】
これに対し、高分子の主鎖に一部オレフィン炭化水素構造を含むフッ素系高分子の場合、放射線照射による主鎖の切断は大きく低下する。例えば、炭化水素構造を含むエチレン−テトラフルオロエチレン共重合体膜にスチレンモノマーを放射線グラフト反応により導入し、次いでスルホン化することにより合成したイオン交換膜は燃料電池用イオン交換膜として機能する(特開平9-102322)。しかし、欠点として高分子膜の主鎖やポリスチレングラフト鎖が炭化水素で構成されているため、膜に大きな電流を長時間流すと発生する水酸化ラジカル等によって、炭化水素鎖部やポリスチレングラフト鎖部の酸化劣化が起こり、膜のイオン交換能が大幅に低下する。さらに、この炭化水素構造を多く含むイオン交換膜を固体電解質膜に用いるとガス拡散電極の触媒層に十分な撥水性がない場合には、特に燃料電池反応で水が生成する正極で、電極が湿り過ぎることに起因する出力低下が起こる問題が指摘されている(特開平11-111310)。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
フッ素化された炭素骨格の主鎖をもつ高分子、特にポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を主体とするイオン交換膜では、架橋構造の導入が困難であったために、実際上、イオン交換容量を大きくすることができなかった。また、グラフト反応を行うためにγ線や電子線などの放射線をこれらの膜に照射すると分子鎖の切断などによって膜強度の著しい低下が認められ、さらに、グラフト率も低いものしか得られなかった。このため、放射線グラフトによってイオン伝導性を有するフッ素系高分子膜を作製した場合、膜強度が低く、また、イオン交換容量が小さいため電解質膜や隔膜として十分に必要な性能を備えたものではなかった。さらに、PTFEのようなフッ素系高分子にスチレンのような炭化水素系のモノマーをグラフトした場合、大きな電流が流れると発生する水酸化ラジカルによってスチレングラフト鎖が劣化し、長時間使用した場合、膜のイオン交換能が消失することが知られている。これらのことから、放射線グラフトによるフッ素系高分子、特に、PTFEを主体とした燃料電池用イオン交換膜は実用上、使用に耐えないものであった。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明は、このような従来技術の問題点を克服するためになされたものであり、放射線グラフトによるフッ素系高分子イオン交換膜において、固体高分子電解質としての特性に優れ、かつ、耐酸化性の優れた膜を安価に提供するものである。すなわち、長鎖分岐型ポリテトラフルオロエチレン構造を主体とし、これにスルホン酸基を有するオキシハイドロフルオロカーボン側鎖 である[−CH2CF2CF2SO3H]が結合したフッ素系高分子イオン交換膜から成り、かつ、このイオン交換膜のイオン交換容量が0.5〜2.0 meq/g、含水状態におけるイオン交換膜の引張り破断強度が5〜25MPa、25℃での電気伝導度が0.05〜0.25Ω−1・cm−1であることを特徴とする優れたフッ素系高分子イオン交換膜を提供することであり、また、放射線グラフト法によって長鎖分岐型ポリテトラフルオロエチレン膜に特定のハイドロフルオロビニルエーテルモノマーをグラフトし、これにスルホン酸基を導入することによってフッ素系高分子イオン交換膜を製造する方法を提供するものである。
【0012】
即ち、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)に高温放射線照射を行なって長鎖分岐型PTEFとし、引き続きこれに放射線照射して各種のモノマーをグラフトし、さらに、グラフト鎖へのスルホン酸基の導入について研究を進めた結果、フッ素系高分子イオン交換膜における最大の欠点であるイオン交換容量が小さく、かつ、容量範囲が狭いこと、また、炭化水素モノマーをグラフトしたPTFE系イオン交換膜における最大の欠点である耐酸化性が低いこと、さらに、放射線グラフトPTFE膜に見られる膜強度の大幅な低下など、これらの問題をすべて解決することができた。また、含水率や電気伝導度も含めた各特性を適切で広い範囲内に制御することができるPTFE系高分子イオン交換膜を発明するに至った。
【0013】
ここで長鎖分岐型PTFEとは、下記の式【化1】及び【化2】で示されるくり返
し単位を有するフッ素系高分子、及び【化1】と【化2】が結合したものを繰り返し単位とするフッ素系高分子の混合物を指す。
【0014】
【化1】
Figure 0005105340
【0015】
【化2】
Figure 0005105340
【0016】
このような長鎖分岐型PTFEは、PTFEを300〜365℃の温度範囲、10−3〜10Torrの減圧下、または、10−3〜2Torrの酸素分圧の不活性ガス中でγ線や電子線の放射線を5〜500kGy照射して作製することができる。不活性ガスとしては窒素、アルゴン、ヘリウムガスなどを用いる。PTFE膜を上記の条件下で照射しても長鎖分岐型PTFE膜を作製できるが、シンターしたブロック状のPTFEを同様の条件下で照射し、削り出すことによっても長鎖分岐型PTFE膜を得ることができる。長鎖分岐型PTFEは、その分子構造から見ても無定型部分が多く、グラフト率が低いという欠点を解決できる。例えば、グラフトモノマーとしてスチレンを用いた場合、通常のPTFEに比較し、長鎖分岐型PTFEはグラフト率を著しく増加させることができ、このため通常のPTFEの2〜10倍のスルホン酸基を長鎖分岐型PTFEに導入できる(特願2000-170450)。本発明によるフッ素系高分子イオン交換膜は、PTFEの高温放射線照射によって得られた長鎖分岐型ポリテトラフルオロエチレン構造を主体とし、これにスルホン酸基を有するオキシハイドロフルオロカーボン側鎖である[−CH2CF2CF2SO3H]が結合したフッ素系高分子イオン交換膜から成る。上記の長鎖分岐型PTFE膜に、10−3torr以下の減圧下、または、不活性ガス中、室温で再び電子線やγ線を5〜500kGy照射した後、酸素ガスを除去したハイドロフルオロビニルエーテルモノマーであるCF2=CFOCH2CF2CF2SR、CF2=CFOCH2CF2CF2 R、CF2=CFOCH2CF2CF2SX、および/またはCF2=CFOCH2CF2CF2 X(ここで、R:−CH3、または、−C(CH3)3、および、X:−Cl、または、−F)を加えて反応させて、長鎖分岐型PTFE膜に該モノマーをグラフトする。この時、1,1,2-トリクロロトリフルオロエタンなどの溶媒を用いて該モノマーを希釈してもよい。グラフト温度は不活性ガス下、−78℃〜100℃あるいは溶媒の沸点以下の温度範囲で該モノマー単独、または該モノマーを溶媒で希釈した溶液中で行なう。酸素の存在はグラフト反応を阻害するため、これら一連の操作はアルゴンガスや窒素ガスなどの不活性ガス中で、また、モノマーやモノマーを溶媒に溶かした溶液は常法の処理(凍結脱気やバブリング)で酸素を除去した状態で使用する。放射線の線量はグラフト率(実施例2の式(1)参照)と比例関係にあり、線量が多いほどグラフト率は高くなるが、グラフト率が100重量%(wt%)以上になると徐々に飽和してくる。グラフト率に関しては長鎖分岐型PTFEに対し、5〜200wt%、より好ましくは15〜150wt%である。長鎖分岐型PTFEに放射線グラフトを行う場合に、上記ハイドロフルオロビニルエーテルモノマーに対しテトラフルオロエチレンをコモノマー(共単量体)として用い、グラフト鎖中に23〜80wt%のテトラフルオロエチレン単位が導入されたフッ素系高分子イオン交換膜を製造することができる。これは該グラフト鎖を導入する際に、例えば、溶媒に溶かした上記のハイドロフルオロビニルエーテルモノマー1モルに対してテトラフルオロエチレンコモノマー2モル相当を反応容器内に導入して反応させると、高分解能NMR分析から約2:3の比率で共グラフトしていることが分かる。このように、該ハイドロフルオロビニルエーテルモノマーとテトラフルオロエチレンコモノマーの仕込み組成比を変えることによって、長鎖分岐型PTFE膜のグラフト鎖中に23〜80wt%のテトラフルオロエチレン単位が導入されたものが好ましい。上記グラフト鎖中に、さらに、ジビニルベンゼンによる共重合によって架橋構造を有するフッ素系高分子イオン交換膜を製造することができる。これは上記の長鎖分岐型PTFEに放射線グラフトを行う場合に、上記のハイドロフルオロビニルエーテルモノマー、ないしは、ハイドロフルオロビニルエーテルモノマーとテトラフルオロエチレンコモノマーの加算した量に対し1〜10wt%の架橋助剤であるジビニルベンゼンを加えて反応を行うことによって得られる。長鎖分岐型PTFEのグラフト鎖中に架橋構造を導入することによって、本フッ素系高分子イオン交換膜の耐酸化性を向上させることができる。
【0017】
引き続き、得られた長鎖分岐型PTFE膜のグラフト鎖中の−SR基や−S R基(R:−CH3、または、−C(CH3)3)、ないしは、−SX基や−S X基(X:−Cl、または、−F)をスルホン酸基である[−SO3H]に変えて、スルホン酸基を有するオキシハイドロフルオロカーボン側鎖 である[−CH2CF2CF2SO3H]が導入されたフッ素系高分子イオン交換膜を特徴とする。
【0018】
例えば、グラフト鎖中に−SCH3基や−SC(CH33基をもつグラフト長鎖分岐型PTFE膜は、1,1,2-トリクロロトリフルオロエタン溶媒中、85〜125℃の温度で塩素ガスと反応させて−SCl基とし、引き続き、同溶媒中にトリフルオロ酢酸と水の存在させて−S Cl基とする。これを、さらに、NaOH溶液につづいて硫酸溶液で処理して−S OH基とする。また、−SC(CH33基をもつグラフト長鎖分岐型PTFE膜は、アセトニトリル・HOF試薬で酸化し、引き続き、トリフッ化ブロム(BrF3)で−SO2F基に変換する。これを、NaOH溶液につづいて硫酸溶液で処理して−S OH基とする。また、−SClや−SF基をもつグラフト長鎖分岐型PTFE膜は、アセトニトリル・HOF試薬で酸化して−SO2F基に変換し、さらに、NaOH溶液につづいて硫酸溶液で処理して−S OH基とする。これらの方法によって、上記の得られた長鎖分岐型PTFE膜のグラフト鎖中の−SR基や−S R基、ないしは、−SX基や−S X基をスルホン酸基(−SO2 OH)に変えて、スルホン酸基を有するオキシハイドロフルオロカーボン側鎖である[−CH2CF2CF2SO3H]を有するフッ素系高分子イオン交換膜を得ることができる。
【0019】
【発明の実施の形態】
本発明によるフッ素系高分子イオン交換膜は、上記のハイドロフルオロビニルエーテルモノマー、ないしは、ハイドロフルオロビニルエーテルモノマーとテトラフルオロエチレンコモノマーのグラフト量によってイオン交換容量(実施例2の式(2)参照)を変えることができる。
【0020】
ハイドロフルオロビニルエーテルモノマーの単独グラフトの場合、例えば、CF2=CFOCH2CF2CF2SFモノマーを用いて長鎖分岐型PTFEにグラフトした後、スルホン酸基を導入したものでは、グラフト率が17%でイオン交換容量が約0.5meq/g、グラフト率50%で約1.2meq/g、グラフト率100%で約1.8 meq/g、グラフト率150%で約2.2 meq/gの膜が得られる。ここでイオン交換膜のイオン交換容量とは、乾燥イオン交換膜の重量1g当たりの交換基量(meq/g)である(実施例2参照)。
【0021】
また、ハイドロフルオロビニルエーテルモノマーとテトラフルオロエチレンコモノマーの共グラフトでは、モノマー仕込みモル比が1:2の場合、グラフト率が30%でイオン交換容量が約0.5meq/g、グラフト率80%で約1.0meq/g、グラフト率160%で約1.4meq/gの膜が得られる。
【0022】
しかし、グラフト率を150%以上にすると、徐々に含水時の膜の力学的強度が低下し始める。これらのことから、本発明の膜のイオン交換容量は0.3meq/g〜2.5meq/g、好ましくは、グラフト率や膜強度を考慮してイオン交換容量は0.5meq/g〜2.0meq/gである。
【0023】
本発明のフッ素系高分子イオン交換膜では導入されたスルホン酸基の量、および、【化1】や【化2】における分子末端の2重結合がスルホン化反応時に一部転化した−COOH基の量によって、フッ素系高分子の含水率(実施例2参照)を制御できる。この膜を燃料電池用イオン交換膜として使用する場合、含水率が低すぎると酸素や水素の圧力が低い場合や酸素源として空気を用いた場合に出力電圧が低下し、高電流密度や高出力が維持できない。また、運転条件のわずかな変化によって電気伝導度やガス透過係数が変わり好ましくない。したがって、イオン交換膜が乾燥状態になりにくく、ガス透過係数や電気伝導度の変化が比較的少ないことが必要である。本発明のイオン交換膜の含水率は10〜80wt%の範囲で制御できる。一般的にはイオン交換容量が増すにつれて含水率も増大するが、本発明のイオン交換膜は含水率を変化させることができることから、膜の含水率は10〜100wt%、好ましくは10〜80wt%である。
本発明によるフッ素系高分子では高いイオン交換容量にも拘わらず、長鎖分岐型PTFEの絡み合いと長鎖分岐両末端での結合により膜の膨潤による含水率の増大も抑制され、適度の膜強度を維持できる。ここで膜の含水状態とは、室温の精製水中に24時間以上イオン交換膜を保存しておいた状態のもので、含水率(実施例2の式(3)参照)とは水中に保存しておいたイオン交換膜の重量とこの膜を60℃にて16時間、真空乾燥した時の膜の重量百分率である。
従来、フッ素系のイオン交換膜では膜の力学的強度や寸法安定性の点からイオン交換容量が1meq/g前後のものしか実用に供することができなかった。これはフッ素系の高分子、特にPTFEでは一般に架橋構造を導入することが困難であり、このためPTFE膜ではPTFEの結晶部によって主に膜強度が保たれている。このため多量のグラフト鎖やスルホン酸基を導入するとPTFE膜の強度が急激に低下し、使用に耐えなくなる。
これに対して、本発明の長鎖分岐型PTFE構造のフッ素系高分子は長鎖分岐の絡み合いや長鎖分岐両末端の結合によってイオン交換容量が2.0meq/g程度まで多量のグラフト鎖やスルホン酸基を導入しても、膜の力学特性や寸法安定性が保たれているため実用に供することができる(実施例2、3)。イオン交換容量が2.0meq/g以上の膜も作製可能であるが膜の力学特性が低下し、膜の寸法安定性が低下する。
これらのことから、本発明におけるフッ素系高分子イオン交換膜は、0.5〜2.0meq/gのイオン交換容量を有し、かつ、含水状態における膜材料の引張り破断強度が3〜25MPa、より好ましくは5〜25MPaである。このときの、膜材料の引張り伸びは15%以上、より好ましくは30%以上である。高いイオン交換容量と膜の力学的特性の優れた膜は実用上極めて重要な発明である。膜の力学特性から、グラフト率に関しては5〜200wt%、より好ましくは15〜150wt%である。
燃料電池用高分子イオン交換膜は電気伝導度が高いものほど電気抵抗が小さく、電解質膜としての性能は高い。そして、25℃におけるイオン交換膜の電気伝導度(実施例2の式(4)参照)が0.05Ω-1・cm-1以下であると燃料電池としての出力性能が著しく低下する場合が多いため、イオン交換膜の電気伝導度は0.05Ω-1・cm-1以上、より高性能のイオン交換膜では0.10Ω-1・cm-1以上であることが必要である。一方、通常のフッ素系イオン交換膜では25℃におけるイオン交換膜の電気伝導度が0.12Ω-1・cm-1以上ではイオン交換膜の強度が低下することが知られている。すなわち、イオン交換膜の交換容量を増大させ、電気伝導度をあまり大きくすると、膜の強度が低下するという不都合が生じる。
しかし、本発明によるイオン交換膜では25℃におけるイオン交換膜の電気伝導度が0.11Ω-1・cm-1においても大きな膜強度が保持されることが明らかとなった〈実施例2〉。これは長鎖分岐型PTFEの長鎖分岐末端での結合や分子の絡み合いによる効果と長鎖分岐とグラフト鎖であるオキシハイドロフルオロカーボン側鎖の絡み合いよる効果と思われる。これらのことから本発明のフッ素系高分子イオン交換膜は25℃での電気伝導度が0.03〜0.25Ω-1・cm-1、好ましくは0.05〜0.25Ω-1・cm-1のものである。
【0024】
イオン交換膜の特性を上げるために、イオン交換膜の厚みを薄くすることも考えられる。しかし現状では、あまり薄いイオン交換膜では破損しやすく、イオン交換膜自体の製作も難しいのが実状である。また、イオン交換膜内に含まれる水の絶対量も少なくなるためイオン交換膜が乾燥しやすく、高性能を長時間維持することができなくなる場合も考えられる。したがって、通常では30〜500μm厚の範囲のイオン交換膜が使われている。本発明の場合、膜厚は特に限定されないが 50μm〜300μmの範囲のものが有効である。
長鎖分岐型PTFEに炭化水素系のスチレンをグラフトした後、ポリスチレングラフト鎖をスルホン化して得た高分子イオン交換膜の耐酸化性は極めて低い。例えば、長鎖分岐型PTFEにグラフト率100%でスチレンをグラフトし、その後スルホン化した長鎖分岐型PTFE−グラフトポリスチレン高分子イオン交換膜は100℃の3%過酸化水素水溶液中、5〜15分でイオン交換膜が劣化しイオン交換容量がほぼゼロとなる。これに対し、本発明によるフッ素系高分子イオン交換膜はポリスチレングラフト鎖のように三級炭素についた水素がなく、また、スルホン基がついた炭素にはフッ素原子が結合しているため耐酸化性がきわめて高く、100℃の3%過酸化水素水溶液中に24時間置いてもイオン交換容量はほとんど変化しない。
【0025】
以上のように、本発明のフッ素系高分子イオン交換膜は膜としての重要な各特性、すなわち、イオン交換容量は広い範囲である0.5〜2.0meq/g、膜強度は5〜25MPa、含水率は10〜80wt%、25℃における電気伝導度は0.05〜0.25Ω-1・cm-1の各々の数値範囲内に制御して作製することができる。特性をこれらの限られた範囲内に制御できることも本発明の特徴である。
【0026】
ハイドロフルオロビニルエーテルモノマーやこのモノマーとテトラフルオロエチレンモノマーをグラフトする場合に、電子線やγ線の代わりにヘリウム、炭素、窒素、酸素、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン、または、金などの重イオンで長鎖分岐型ポリテトラフルオロエチレン膜の厚さを十分に貫通するエネルギーを有する上記イオンビームを照射し、上記の各モノマーをグラフト後、スルホン化してフッ素系高分子イオン交換膜を作製することができる。重イオンビームを照射した長鎖分岐型PTFE膜を用いると、重イオンの飛跡に沿ってラジカルが生成し、ここに密なグラフト鎖が生成する。この飛跡は膜を貫通しているため、同じ線量のγ線や電子線を用いた場合よりもより有効にイオンが移動し、電気伝導度が高い膜が生成できる。50μm厚の膜ならば、ヘリウムイオンは8MeV以上、炭素イオンは40MeV以上、ネオンイオンは80MeV以上、アルゴンイオンは180MeV以上であり、同じく100μm厚の膜ならば、ヘリウムイオンは12MeV以上、炭素イオンは62MeV以上、ネオンイオンは130MeV以上、アルゴンイオンは300MeV以上が望ましい。照射量は1×108〜1×1013個/cm2の範囲が好ましい。
【0027】
上述の一連の操作、反応によって本発明に係わるフッ素系高分子イオン交換膜が作製されることを特徴とする。以下、本発明を実施例及び比較例により説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0028】
【実施例】
(実施例1)
長鎖分岐型PTFEシートを得るために以下の照射を行った。厚さ50μm又は100μmで数平均分子量 1×107のポリテトラフロオロエチレン(PTFE)シートの各10cm×10cmをヒーター付きのSUS製オートクレーブ照射容器(内径7cmφ×30cmH)に入れ、容器内を10-3Torr程度に脱気してアルゴンガスに置換した。その後、電気ヒータで加熱してPTFEシートの温度を340℃として、60Co−γ線を線量率3kGy/hで線量90kGy(30h)又は線量 180kGy(60h)照射した。照射後、容器を冷却して高温照射PTFEシートを取り出した。
【0029】
また、厚さ50μm又は100μmで数平均分子量 1×107のポリテトラフロオロエチレン(PTFE)シートの10cm×6cmをSUS枠で固定し、電子線入射用の50μm厚のチタン箔の窓の付いた加熱型のSUS製照射容器(内径8cm×80cmx10cmH)に入れ、容器内を10-3Torr程度に脱気してアルゴンガスに置換した。その後、電気ヒータで加熱してPTFEシートの温度を335〜340℃として、ごくわすかにアルゴンガスを流しながら電子線2MV(電流0.5mA(線量率0.5kGy/s))照射した。線量は100kGy(200s)又は200kGy(400s)とした。照射後、容器を冷却して高温照射PTFEシートを取り出した。得られた長鎖分岐型PTFE膜の特性を表1に示す。
【0030】
高温照射で得られた長鎖分岐型PTFEは引張試験においてネッキングを起こさず、通常の架橋ゴムのような切断挙動を示す。また、膜の透明性が上がっていることや膜の融点が低下していることから、長鎖分岐型PTFE中の結晶サイズがもとのPTFEよりもかなり小さくなっていることを示している。また、線量を多くすることで、引張強度が向上した。これは線量を多くすることで長鎖分岐型PTFE鎖同士の結合が密になり、膜の強度が増大したと思われる。また、γ線照射と電子線照射では、ほぼ同じ長鎖分岐型PTFEが生成していることが分かる。
【0031】
(比較例1)
照射していない厚さ100μmのPTFE膜の特性を表1に示す。
【0032】
【表1】
Figure 0005105340
【0033】
(実施例2)実施例1のγ線を90kGy照射して得た長鎖分岐型PTFE膜(厚さ50μm)をコック付きのガラス製セパラブル容器(内径3cmφ×15cmH)に入れて脱気後アルゴンガスで置換した。この状態で長鎖分岐型PTFEに、再び、γ線(線量率1×104Gy/h)を45kGy室温で照射した。引き続いて、3回の凍結脱気によって酸素を除きアルゴンガス置換したハイドロフルオロビニルエーテルモノマーであるCF2=CFOCH2CF2CF2SCH3を0℃の照射された長鎖分岐型PTFE膜の入ったガラス容器に、膜が浸されるまで導入した。0℃で24時間反応させた後、室温にして24時間反応させた。その後、THFを加え、冷やしたn-ペンタンで洗浄し、乾燥した。下記式(1)によって求めたグラフト率は65%であった。このグラフトした長鎖分岐型PTFE膜を1,1,2-トリクロロトリフルオロエタン溶媒中、125℃の温度で塩素ガスと反応させ、さらに引き続き、同溶媒中にトリフルオロ酢酸と水の存在させて100℃、6時間反応させた。得られた膜をTHFで洗浄し、乾燥後、さらに、60℃のNaOH溶液12時間処理後、硫酸溶液で処理した。本実施例で得られた膜のイオン交換容量、含水率、電気伝導度、引張り破断強度、および、耐酸化性を表2に示す。
【0034】
なお、長鎖分岐型ポリテトラフルオロエチレンを主鎖部、ハイドロフルオロビニルエーテルの重合した部分をグラフト鎖部とすると、主鎖部に対するグラフト鎖部の重量比は、一般に次式のグラフト率(Xdg(wt%))として表される。
【0035】
X=100・(Wt−W0)/W0 (1)
W0:グラフト前のPTFE膜の重さ(g)
Wt:グラフト後のPTFE膜(乾燥状態)の重さ(g)
また、 膜のイオン交換容量(Iex(meq/g))は次式で表される。
【0036】
ex=n(SO3H)obs/Wd(2)
n(SO )obs:イオン交換膜のスルホン酸基濃度(mM/g)
d :イオン交換膜の乾燥重量(g)
n(S H)obsの測定は、膜を1M(1モル)硫酸溶液中に50℃で4時間浸漬し、交換基をすべて−S H型とした。その後、3MのNaCl水溶液中50℃、4時間浸漬して−SO Na型とし、置換されたプロトン(H+)を0.2NのNaOHで中和滴定しスルホン酸基濃度を求めた。また、室温で水中に保存しておいたSO 型のイオン交換膜を水中から取出し軽くふき取った後の膜の重量をWs(g)とし、その後、この膜を60℃にて16時間、真空乾燥した時の膜の重量Wd(g)を乾燥重量とした。また、測定値Ws、Wdから次式により含水率が求められる。
【0037】
含水率(%)= 100・(Ws−Wd)/Wd (3)
イオン交換膜の電気伝導性は、交流法による測定(新実験化学講座19、高分子化学〈II〉、p.992,丸善)で、通常の膜抵抗測定セルとヒュ−レットパッカード製のLCRメータ、E-4925Aを使用して膜抵抗(Rm)の測定を行った。1M硫酸水溶液をセルに満たして膜の有無による白金電極間(距離5mm)の抵抗を測定し、膜の電気伝導度(比伝導度)は次式を用いて算出した。
【0038】
κ=(1/Rm)・(d/S)(Ω-1cm-1) (4)
κ:膜の電気伝導度((Ω‐1cm‐1
d:イオン交換膜の厚み(cm)
S:イオン交換膜の通電面積(cm2
電気伝導度測定値の比較のために、直流法でMark W.Verbrugge,Robert F.Hill等(J. Electrochem. Soc.,.137, 3770-3777(1990))と類似のセル及びポテンショスタット、関数発生器を用いて測定した。交流法と直流法の測定値には良い相関性が見られた。下記表2の値は交流法による測定値である。また、引張り試験は引張り速度200mm/minで、試料片の大きさはJIS−4号ダンベル相当(含水時)を用いた。さらに、耐酸化性の測定は試料膜を100℃の3%過酸化水素溶液中に入れ、24時間後の重量変化、および、イオン交換容量を測定した。
【0039】
(実施例3)
実施例1のγ線を90kGy照射して得た長鎖分岐型PTFE膜(厚さ50μm)をコック付きの耐圧ガラス製セパラブル容器(内径3cmφ×15cmH)に入れて脱気後アルゴンガスで置換した。この状態で長鎖分岐型PTFEに、再び、γ線(線量率10kGy/h)を60kGy室温で照射した。禁止剤を除いたテトラフルオロエチレンガスをこの照射された長鎖分岐型PTFE膜の入ったガラス容器に導入し1気圧とした。
【0040】
引き続いて、3回の凍結脱気によって酸素を除きアルゴンガス置換したハイドロフルオロビニルエーテルモノマーであるCF2=CFOCH2CF2CF2 Fと溶媒である1,1,2-トリクロロトリフルオロエタンの溶液(容積比で約1:1)をこのガラス容器に、膜が浸されるまで導入した。容器内を攪拌し、テトラフルオロエチレンガスをほぼ1気圧付近に保ちながら室温で48時間反応させた。その後、膜をアセトンで洗浄し、乾燥した。グラフト率は98%であった。
【0041】
このグラフトした長鎖分岐型PTFE膜を60℃のNaOH溶液にで12時間処理し、さらに、硫酸溶液で処理した。本実施例で得られた膜のイオン交換容量、含水率、電気伝導度、引張り破断強度、および、耐酸化性を表2に示す。
【0042】
実施例2,3で得られたイオン交換膜のイオン交換容量は1meq/g以上と従来のフッ素系高分子イオン交換膜に比べて高い。また、膜の含水時の引張り強度は10MPa以上の値であり、高分子イオン交換膜としては十分な強度を有している。
【0043】
(比較例2及び3)
表2に示したナフィオン 115、ナフィオン 117について測定されたイオン交換容量、含水率、電気伝導度、引張り破断強度、および、耐酸化性の結果を比較例2、3に示す。
【0044】
(比較例4)
実施例1のγ線を90kGy照射して得た長鎖分岐型PTFE膜(厚さ50μm)をコック付きのガラス製セパラブル容器(内径3cmφx15cmH)に入れて脱気後アルゴンガスで置換した。この状態で長鎖分岐型PTFEに、再び、γ線(線量率10kGy/h)を45kGy室温で照射した。アルゴンガスのバブリングによって酸素を除きアルゴンガス置換したスチレンモノマーを照射された長鎖分岐型PTFE膜の入ったガラス容器に、膜が浸されるまで導入した。容器内を攪拌し、60℃で6時間反応させた。その後、膜をトルエン、続いてアセトンで洗浄し、乾燥した。グラフト率は93%であった。
このグラフト膜を0.5Mクロルスルホン酸(1,2-ジクロロエタン溶媒)に浸漬し60℃、24時間スルホン化反応を行った.その後、この膜を水洗いしてスルホン酸基とした。本比較例で得られた膜のイオン交換容量、含水率、電気伝導度、引張り破断強度、および、耐酸化性を表2に示す。
【0045】
【表2】
Figure 0005105340
【0046】
【発明の効果】
本発明のフッ素樹脂イオン交換膜は、イオン交換容量が0.5〜2.0meq/g、含水状態における膜材料の引張り破断強度が5〜25MPa、25℃における電気伝導度が0.05〜0.25Ω-1・cm-1、かつ、非常に高い耐酸化性を有するものである。低コストで広い範囲のイオン交換容量、高い耐酸化性と膜強度のフッ素系高分子イオン交換膜である。本発明のイオン交換膜は、特に燃料電池膜に適している。また、安価で耐久性のある電解膜やイオン交換膜として有用である。

Claims (3)

  1. ポリテトラフルオロエチレン膜を300〜365℃の温度範囲、10−3〜10Torrの減圧下、または、不活性ガス雰囲気下で、γ線の放射線を5〜500kGy照射して長鎖分岐型ポリテトラフルオロエチレン膜を作製し、当該膜に再び電子線又はγ線を室温、不活性ガス中で5〜500kGy照射した後、不活性ガス下、ハイドロフルオロビニルエーテルモノマーであるCF=CFOCHCFCFSR、CF=CFOCHCFCFSOR、CF=CFOCHCFCFSX、および/または、CF=CFOCHCFCFSOX(ここで、R:−CH、または、−C(CH、および、X:−Cl、または、−F)を−78℃〜100℃あるいは溶媒の沸点以下の温度範囲で該モノマー単独、または該モノマーを溶媒で希釈した溶液中でグラフト反応させて長鎖分岐型ポリテトラフルオロエチレン膜に該モノマーによるグラフト鎖を導入し、さらに、このグラフト鎖にスルホン酸基を導入することから成ることを特徴とするフッ素系高分子イオン交換膜の製造方法。
  2. 長鎖分岐型ポリテトラフルオロエチレンに該グラフト鎖を導入する際に、該ハイドロフルオロビニルエーテルモノマーに対しテトラフルオロエチレンをコモノマー(共単量体)として用い、グラフト鎖中に23〜80重量%(wt%)のテトラフルオロエチレン単位が導入されることを特徴とする請求項記載の製造方法。
  3. 請求項1又は2に記載の方法により製造され、長鎖分岐型ポリテトラフルオロエチレン構造を主体とし、これにスルホン酸基を有するオキシハイドロフルオロカーボン側鎖である[−OCHCFCFSOH]が結合したフッ素系高分子イオン交換膜から成り、かつ、このイオン交換膜のイオン交換容量が0.5〜2.0meq/g、含水状態におけるイオン交換膜の引張り破断強度が5〜25MPa、電気伝導度が0.05〜0.25Ω−1・cm−1であることを特徴とするフッ素系高分子イオン交換膜。
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