JP2004300360A - グラフト高分子イオン交換膜からなる燃料電池用電解質膜の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】含フッ素系高分子イオン交換膜における最大の欠点であるイオン交換容量が小さく、かつ、保水性が悪いこと、また、炭化水素モノマーをグラフトした含フッ素系イオン交換膜における最大の欠点である耐酸化性が低いことなどを解決課題とする。
【解決手段】基材として、架橋構造を有する含フッ素系高分子をマトリックスとし、これに放射線照射して種々のモノマーをグラフトまたは共グラフトし、さらに、グラフト鎖へのスルホン酸基の導入について研究を進めた結果、ある特定のフッ素系モノマーを選択することで、基材膜の中心部までグラフトし、イオン交換容量などの各特性を適切で広い範囲内に制御することができる含フッ素系高分子イオン交換膜。
【選択図】 図1
【解決手段】基材として、架橋構造を有する含フッ素系高分子をマトリックスとし、これに放射線照射して種々のモノマーをグラフトまたは共グラフトし、さらに、グラフト鎖へのスルホン酸基の導入について研究を進めた結果、ある特定のフッ素系モノマーを選択することで、基材膜の中心部までグラフトし、イオン交換容量などの各特性を適切で広い範囲内に制御することができる含フッ素系高分子イオン交換膜。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、燃料電池に適した固体高分子電解質膜で、優れた耐酸化性と広範囲なイオン交換容量を有する含フッ素系高分子イオン交換膜及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
固体高分子電解質型イオン交換膜を用いた燃料電池は、エネルギー密度が高いことから、電気自動車の電源や簡易補助電源として期待されている。この燃料電池では、優れた特性を有する高分子イオン交換膜の開発は最も重要な技術の一つである。
【0003】
高分子イオン交換膜型燃料電池においては、イオン交換膜は、プロトンを伝導するための電解質として作用し、また、燃料である水素やメタノールと酸化剤である空気(酸素)を直接混合させないための隔膜としての役割も有する。このようなイオン交換膜としては、電解質としてイオン交換容量が高いこと、長期間電流を通すので膜の化学的な安定性、特に、膜の劣化の主因となる水酸化ラジカル等に対する耐性(耐酸化性)が優れていること、電気抵抗を低く保持するために膜の保水性が一定で高いことが要求される。一方、隔膜としての役割から、膜の力学的な強度や膜の寸法安定性が優れていること、水素ガス、メタノール又は酸素ガスについて過剰な透過性を有しないことなどが要求される。
【0004】
初期の高分子イオン交換膜型燃料電池では、スチレンとジビニルベンゼンの共重合で製造した炭化水素系高分子イオン交換膜が使用された。しかし、このイオン交換膜は耐酸化性に起因する耐久性が非常に劣っていたため実用性に乏しく、その後はデュポン社により開発されたパーフルオロスルホン酸膜「ナフィオン(デュポン社登録商標)」等が一般に用いられてきた。
【0005】
しかしながら、「ナフィオン」等の従来の含フッ素系高分子イオン交換膜は、化学的な耐久性や安定性には優れているが、イオン交換容量が1meq/g前後と小さく、また、保水性が不十分でイオン交換膜の乾燥が生じてプロトン伝導性が低下したり、あるいは、メタノールを燃料とする場合には膜の膨潤やメタノールのクロスオーバーが起きる。
【0006】
また、イオン交換容量を大きくするため、スルホン酸基を多く導入しようとすると、高分子鎖中に架橋構造がないために膜強度が著しく低下し、容易に破損するようになる。したがって、従来の含フッ素系高分子のイオン交換膜ではスルホン酸基の量を膜強度が保持される程度に抑える必要があり、このためイオン交換容量が1meq/g程度ものしかできなかった。
【0007】
さらに、ナフィオンなどの含フッ素系高分子イオン交換膜はモノマーの合成が困難かつ複雑であり、また、これを重合してポリマー膜を製造する工程も複雑なため非常に高価であり、プロトン交換膜型燃料電池を自動車などへ搭載して実用化する場合の大きな障害になっている。そのため、前記ナフィオン等に替わる低コストで高性能な電解質膜を開発する努力がおこなわれてきた。
【0008】
また、本発明と密接に関連する放射線グラフト重合法では、含フッ素系高分子膜にスルホン酸基を導入することができるモノマーをグラフトして、固体高分子電解質膜を作製する試みがなされている。本発明者らはこれらの新しい含フッ素固体高分子電解質膜を開発すべく検討を重ね、架橋構造を有するポリテトラフルオロエチレンフィルムにスチレンモノマーを放射線グラフト反応により導入し、次いでスルホン化することにより広いイオン交換容量を特徴とする固体高分子電解質膜、及びその製造方法を出願(特許文献1)した。しかし、スチレングラフト鎖のみの場合、膜に長時間電流を通すとグラフト鎖部の酸化劣化により、膜のイオン交換能が低下する場合がある。
【0009】
さらに、架橋構造を有するポリテトラフルオロエチレンフィルムにフッ素系のモノマーの放射線グラフト、また、フッ素系のモノマーの放射線共グラフトに引き続き、グラフト鎖にスルホン基を導入することによって広いイオン交換容量を有する優れた耐酸化性を特徴とする固体高分子電解質膜、及びその製造方法を出願(特許文献2)した。しかし、通常のフッ素系高分子膜ではフッ素系のモノマーグラフト率が低い場合には、電解質膜としての特性向上が顕著でない場合もあることが判明した。
【0010】
【特許文献1】
特開2001−348439号公報
【特許文献2】
特開2002‐348389号公報(特願2001−153926号)
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上述のような従来技術の問題点を克服するためになされたものであり、放射線グラフトによる含フッ素系高分子イオン交換膜において、グラフトが膜中心部まで進行し、固体高分子電解質としての特性に優れ、かつ、耐酸化性の優れた膜を提供するものである。即ち、本発明は、含フッ素系高分子イオン交換膜における最大の欠点であるイオン交換容量が小さく、かつ、保水性が悪いこと、また、炭化水素モノマーをグラフトした含フッ素系イオン交換膜における最大の欠点である耐酸化性が低いことなどを解決課題とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明は、広いイオン交換容量と優れた耐酸化性を有する含フッ素系高分子イオン交換膜であり、特に燃料電池に適したイオン交換膜を提供する。
【0013】
即ち、基材として、架橋構造を有する含フッ素系高分子をマトリックスとし、これに放射線照射して種々のモノマーをグラフトまたは共グラフトし、さらに、グラフト鎖へのスルホン酸基の導入について研究を進めた結果、ある特定のフッ素系モノマーを選択することで、基材膜の中心部までグラフトし、イオン交換容量などの各特性を適切で広い範囲内に制御することができる含フッ素系高分子イオン交換膜を発明するに至った。
【0014】
本発明では、フッ素系モノマーをグラフト重合させた後、ハロゲン基やスルホニル基等をスルホン酸基とすることを特徴とした含フッ素系高分子イオン交換膜を提供するものであり、かつ、このイオン交換膜のグラフト率が10〜150%、イオン交換容量が0.3〜3.0 meq/gであることを特徴とする含フッ素系高分子イオン交換膜、及び、その製造方法を提供するものである。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明で使用する基材ポリマーとして、放射線により架橋構造を有するポリテトラフルオロエチレン(以下PTFEと略す)フィルムがある。架橋構造を有するPTFEの製造方法は特開平6−116423公報に開示されている。この架橋構造を有するフィルム基材は膜の耐熱性が向上する、高分子の結晶/無定型の比率やモルホロジーが変化してモノマーのグラフト率が向上する、さらに、グラフトのための照射による膜強度の低下を抑制することができるので、高温作動で高性能の燃料電池膜には好適である。特に、PTFEの放射線グラフト反応では架橋構造をフィルム基材の分子構造に導入することによって無定型部分が多くなり、未架橋のPTFEのグラフト率が低いという欠点を解決できる。例えば、グラフトモノマーとしてスチレンを用いた場合、未架橋のPTFEに比較し、架橋PTFEはグラフト率を著しく増加させることができ、このため未架橋のPTFEの2〜10倍のスルホン酸基を架橋PTFEに導入できることを本発明者らはすでに見出した(特開2001‐348439号公報:特願2000−170450)。
【0016】
本発明による含フッ素系高分子イオン交換膜は、架橋構造を有するPTFEに下記の(1)〜(8)の各モノマーを放射線照射によってグラフト重合させる。
(1)架橋構造を有するPTFEフィルム基材に、次式:CH2=CF(SO2X)(Xはハロゲン基で−F又は−Cl)のモノマーを電離放射線照射によってグラフト重合させる。
(2)架橋構造を有するPTFEフィルム基材に、次式:CH2=CF(SO3R1)(R1はアルキル基で−CH3,−C2H5又は−C3H7)のモノマーを電離放射線照射によってグラフト重合させる。
(3)架橋構造を有するPTFEフィルム基材に、次式:CF2=CF(SO3R1)(R1はアルキル基で−CH3,−C2H5又は−C3H7)のモノマーを電離放射線照射によってグラフト重合させる。
(4)架橋構造を有するPTFEフィルム基材に、(1)〜(3)のモノマーから選ばれた2種類以上のモノマーを放射線共グラフト重合させる。
(5)架橋構造を有するPTFEフィルム基材に、次式:CH2=CF(SO2X)(Xはハロゲン基で−F又は−Cl)のモノマーと、(A)モノマー群:
a.炭素数4以下で、重合性二重結合を有する炭化水素系モノマー;
b.CH2=CR2(COOR3)若しくはCF2=CR2(COOR3)の化合物で 、R2は−CH3,−Fであり、R3は−H、−CH3,−C2H5,−C3 H7であるアクリル系モノマー;又は
c.炭素数4以下で、共重合性二重結合を有するフッ化炭素系モノマー
から選ばれた1種類以上のモノマーを放射線照射によって共グラフト重合させる。
(6)架橋構造を有するPTFEフィルム基材に、次式:CH2=CF(SO3R1)(R1はアルキル基で−CH3,−C2H5又は−C3H7)のモノマーから選ばれた1種類以上のモノマーと、(A)モノマー群:
a.炭素数4以下で、重合性二重結合を有する炭化水素系モノマー;
b.CH2=CR2(COOR3)若しくはCF2=CR2(COOR3)の化合物で 、R2は−CH3,−Fであり、R3は−H、−CH3,−C2H5,−C3 H7であるアクリル系モノマー;又は
c.炭素数4以下で、共重合性二重結合を有するフッ化炭素系モノマー
から選ばれた1種類以上のモノマーを放射線照射によって共グラフト重合させる。
(7)架橋構造を有するPTFEフィルム基材に、次式:CF2=CF(SO3R1)(R1はアルキル基で−CH3,−C2H5又は−C3H7)のモノマーから選ばれた1種類以上のモノマーと、(A)モノマー群:
a.炭素数4以下で、重合性二重結合を有する炭化水素系モノマー;
b.CH2=CR2(COOR3)若しくはCF2=CR2(COOR3)の化合物で 、R2は−CH3,−Fであり、R3は−H、−CH3,−C2H5,−C3 H7であるアクリル系モノマー;又は
c.炭素数4以下で、共重合性二重結合を有するフッ化炭素系モノマー
から選ばれた1種類以上のモノマーを放射線照射によって共グラフト重合させる。
(8)架橋構造を有するPTFEフィルム基材に、(1)〜(3)のモノマーから選ばれた2種類以上のモノマーと、(A)モノマー群:
a.炭素数4以下で、重合性二重結合を有する炭化水素系モノマー;
b.CH2=CR2(COOR3)若しくはCF2=CR2(COOR3)の化合物で 、R2は−CH3,−Fであり、R3は−H、−CH3,−C2H5,−C3 H7であるアクリル系モノマー;又は
c.炭素数4以下で、共重合性二重結合を有するフッ化炭素系モノマー
から選ばれた1種類以上のモノマーを放射線照射によって共グラフト重合させる。
【0017】
(5)〜(8)における(A)モノマー群の、a.炭素数4以下で重合性二重結合を有する炭化水素系モノマーとしては、例えば、エチレン、プロピレン、ブテン−1、ブテン−2、イソブテンなどがある。同じく、b.CH2=CR2(COOR3)若しくはCF2=CR2(COOR3)の化合物で、R2は−CH3,−Fであり、R3は−H、−CH3,−C2H5,−C3H7であるアクリル系モノマーとしては、例えば、CH2=C(CH3)(COOH)、 CH2=C(CH3)(COOCH3)、CH2=CF(COOCH3)、CF2=CF(COOCH3) 、又は、CF2=C(CH3)(COOCH3)などがある。同じく、c.炭素数4以下で、共重合性二重結合を有するフッ化炭素系モノマーとしては、例えば、CF2=CF2、CF2=CHF、CF2=CFCl、CF2=CFBr、CF2=CH2、CHF=CH2などのフロオロエチレン系モノマー、CF2=CFCF3のフルオロプロピレン系モノマー、CF2=CFCF2CF3(フルオロブテン−1)、CF2=C(CF3)2(フロオロイソブテン)、CF3CF=CFCF3(フルオロブテン−2)、CF2=CFCF=CF2(フルオロブタジエン)、CFCl=CFCF=CFCl、 CF2=CClCCl=CF2(クロロフルオロブタジエン)のフルオロブテン系モノマーなど、及び、CF2=CFCH2CH3のハイドロフルオロビニル系モノマーやCF2=CFOCH2CH3のハイドロフルオロビニルエーテル系モノマーなどがある。
【0018】
これら(1)〜(8)の各モノマーは、フレオン112(CCl2FCCl2F)、フレオン113(CCl2FCClF2)、クロロメタン、n−ヘキサン、アルコール、t−ブタノール、ベンゼン、トルエン、シクロヘキサン、シクロヘキサノンやジメチルスルホオキシドの溶媒で該モノマーを希釈したものを用いても良い。ガス状のモノマーを用いるときは、不活性なガスを用いてモノマーガスの分圧を1〜30気圧とし、液体状モノマー溶液と接触させ、かつ、この溶液を攪拌しながらグラフト重合すると良い。
【0019】
本発明で用ることのできる基材ポリマーとして、架橋構造を有するPTFEの代わりに、テトラフルオロエチレン−六フッ化プロピレン共重合体(以下、FEPと略記)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(同PFA)、ポリフッ化ビニリデン(同PVDF)、及びエチレン−テトラフルオロエチレン共重合体(同ETFE)の架橋構造を有するフィルムが適応できる。これらのフィルム基材は予め架橋しておくと、膜の耐熱性が向上する、架橋構造を導入することによりモノマーのグラフト率が向上する、さらに、グラフトのための照射による膜強度の低下を抑制することができるので、高温作動で高性能の燃料電池膜には好適である。架橋FEPやPFAの製造方法はRadiation Physical Chemistry vol.42、NO.1/3、pp.139−142、1993に掲載されている。
【0020】
架橋構造を有するPTFE、FEP、PFA、PVDF、又はETFEフィルム基材への上記モノマーのグラフト重合は、これらの架橋フィルム基材に電離放射線(γ線、高エネルギー電子線やX線のように、照射された物質の原子、分子を電離して活性種を生成させるもの)を室温、不活性ガス中で5〜500kGy照射した後、不活性ガスのバブリングや凍結脱気で酸素ガスを除いた上記(1)〜(8)のモノマー溶液やガス状モノマーに照射した架橋フィルム基材を浸漬したり、接触させたりする。
【0021】
グラフト重合は、これらの架橋フィルム基材を放射線照射後モノマーとグラフト反応させる、いわゆる前照射法か、又は架橋フィルム基材とモノマーを同時に放射線照射してグラフトさせる、いわゆる同時照射法のいずれかの方法によってもよい。
グラフト重合温度は、モノマーや溶媒の沸点以下の温度で、通常0℃〜100℃で行なうのがよい。酸素の存在はグラフト反応を阻害するため、これら一連の操作はアルゴンガスや窒素ガスなどの不活性ガス中で、また、モノマーやモノマーを溶媒に溶かした溶液は常法の処理(バブリングや凍結脱気)で酸素を除去した状態で使用する。
【0022】
グラフト率(実施例の式(1)参照)は放射線の線量とほぼ比例関係にあり、線量が多いほどグラフト率は高くなるが、グラフト率は徐々に飽和してくる。グラフト率は架橋フィルム基材に対し、10〜150%、より好ましくは15〜100%である。
【0023】
上記(1)、(4)、(5)及び(8)で得られたグラフト架橋フィルムにスルホン酸基を導入するには、得られたフィルムのグラフト鎖中のハロゲン基[−X]を苛性ソーダ(NaOH)や苛性カリ(KOH) の水溶液やジメチルスルホオキシド/水溶液中で室温〜100℃で反応させて、スルホン酸ナトリウム[−SO3Na]やスルホン酸カリウム[−SO3K]とし、引き続き、得られた [−SO3Na]や[−SO3K]基を1N〜2N硫酸溶液中、60℃でスルホン酸基[−SO3H]として、含フッ素系高分子イオン交換膜が得られる。
【0024】
また、(2)、(3)、(4)、(6)、(7)及び(8)で得られたグラフト架橋フィルムにスルホン酸基を導入するには、得られたフィルムのグラフト鎖中のエステル基を1N程度の硫酸溶液中などの酸性溶液中で室温〜100℃で反応させて加水分解するか、又は同程度濃度の水酸化カリウム溶液中で加水分解し、スルホン酸基[−SO3H]として、含フッ素系高分子イオン交換膜が得られる。
【0025】
さらに、(5)〜(8)で得られたアクリル系モノマーを共グラフトした架橋フィルムのグラフト鎖中のエステル基も苛性ソーダ(NaOH)や苛性カリ(KOH) の水溶液やジメチルスルホオキシド/水溶液中の反応によって、カルボキシル基となる。このようなカルボキシル基はこのグラフトフィルムを燃料電池膜として用いた場合、フィルム中の水分の保持にきわめて有用である。
【0026】
本発明による含フッ素系高分子イオン交換膜はグラフト量と導入されたスルホン酸基の量によって、この膜のイオン交換容量を変えることができる。イオン交換容量とは、乾燥イオン交換膜の重量1g当たりのイオン交換基量(meq/g)である。グラフトモノマーの種類にもよるが、グラフト率が10%で以下ではイオン交換容量が0.3meq/g、以下であり、グラフト率が150%以上では膜の膨潤が大きくなる。すなわち、グラフト率を高くしてイオン交換基を多く導入すれば、イオン交換容量は高くなる。しかし、イオン交換基量を多くしすぎると、含水時に膜が膨潤して膜の強度が低下する。これらのことから、本発明による含フッ素系高分子イオン交換膜のイオン交換容量は0.3meq/g〜3.0meq/g、より好ましくは、0.5meq/g〜2.0meq/gである。
【0027】
本発明の含フッ素系高分子イオン交換膜では導入されたスルホン酸基の量やグラフトモノマーの分子構造によって、本発明の含フッ素系高分子の含水率を制御できる。この膜を燃料電池用イオン交換膜として使用する場合、含水率が低すぎると運転条件のわずかな変化によって電気伝導度やガス透過係数が変わり好ましくない。従来のナフィオン膜はほとんどが−(CF2)−で構成されているために、80℃以上の高い温度で電池を作動させると水原子が膜中に不足し、膜の導電率が急速に低下する。
【0028】
これに対し、本発明のイオン交換膜はグラフト鎖にスルホン酸基の他にカルボキシル基などの親水基や炭化水素構造を導入することができるため、含水率は主にスルホン酸基の量によるが10〜80重量(wt)%の範囲で含水率を制御できる。一般的にはイオン交換容量が増すにつれて含水率も増大するが、本発明のイオン交換膜は含水率を制御できることから、膜の含水率は10〜80wt%、好ましくは20〜60wt%とすることができる。
【0029】
また、本発明の含フッ素系高分子膜は架橋構造やフッ素樹脂主鎖末端の絡み合いよってイオン交換容量が3.0meq/g程度まで多量のスルホン酸基を導入しても、膜の力学特性や寸法安定性が保たれ、実用に供することができる。高いイオン交換容量と膜の力学的特性の優れた膜は実用上極めて重要な発明である。高分子イオン交換膜は、イオン交換容量とも関係する電気伝導度が高いものほど電気抵抗が小さく、電解質膜としての性能は良い。しかし、25℃におけるイオン交換膜の電気伝導度が0.05(Ω・cm)−1以下であると燃料電池としての出力性能が著しく低下する場合が多いため、イオン交換膜の電気伝導度は0.05(Ω・cm)−1以上、より高性能のイオン交換膜では0.10(Ω・cm)−1以上に設計されていることが多い。本発明によるイオン交換膜では25℃におけるイオン交換膜の電気伝導度がナフィオン膜と同等かそれよりも高い値が得られた。
【0030】
イオン交換膜の電気伝導度を上げるために、イオン交換膜の厚みを薄くすることも考えられる。しかし現状では、あまり薄いイオン交換膜では破損しやすく、イオン交換膜自体の製作も難しいのが実状である。したがって、通常では30〜200μm厚の範囲のイオン交換膜が使われている。本発明の場合、膜厚は 10〜500μm、好ましくは20μm〜100μmの範囲のものが有効である。
【0031】
燃料電池膜においては、現在、燃料の候補の一つとして考えられているメタノールがあるが、パーフルオロスルホン酸膜であるナフィオン膜(デュポン社)は分子間の架橋構造がないためにメタノールによって大きく膨潤し、燃料であるメタノールが電池膜を通してアノード(燃料極)からカソード(空気極)へと拡散する燃料のクロスオーバーが、発電効率を低下させるとして大きな問題となっている。
【0032】
しかし、本発明による含フッ素系高分子膜では高いイオン交換容量にも拘わらず、基材分子鎖やグラフト鎖の架橋構造や絡み合いにより、80℃の温度においてもメタノールを含めたアルコール類による膜の膨潤はほとんど認められない。このため、改質器を用いずにメタノールを直接燃料とするダイレクト・メタノール型燃料電池(Direct methanol Fuel cell)の膜として有用である。
燃料電池膜においては、膜の耐酸化性は膜の耐久性(寿命)に関係する極めて重要な特性である。これは電池稼働中に発生するOHラジカル等がイオン交換膜を攻撃して、膜を劣化させるものである。架橋フッ素樹脂膜に炭化水素系のスチレンをグラフトした後、ポリスチレングラフト鎖をスルホン化して得た高分子イオン交換膜の耐酸化性は極めて低い。例えば、グラフト率100%のポリスチレン鎖をスルホン化したポリスチレングラフト架橋フッ素樹脂イオン交換膜は80℃の3%過酸化水素水溶液中、約60分でイオン交換膜が劣化しイオン交換容量がほぼ半分となる。これは、OHラジカルの攻撃によって、ポリスチレン鎖が容易に分解するためである。
【0033】
これに対し、本発明による含フッ素系高分子イオン交換膜はグラフト鎖が含フッ素系モノマーの重合体、ないしは、含フッ素系モノマーと炭化水素系モノマーの主に交互共重合体であるために、フッ素化合物の優れた耐性が発揮されるため耐酸化性がきわめて高く、80℃の3%過酸化水素水溶液中に24時間以上置いてもイオン交換容量はほとんど変化しない。
【0034】
以上のように、本発明の含フッ素系高分子イオン交換膜は優れた耐酸化性や耐メタノール性を有すると共に、膜としての重要な特性、すなわち、イオン交換容量0.3〜3.0meq/gを広い範囲に制御できることが本発明の特徴である。
【0035】
【実施例】
以下、本発明を実施例及び比較例により説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0036】
なお、各測定値は以下の測定によって求めた。
(1)グラフト率
フィルム基材を主鎖部、フッ素モノマーやこれらと炭化水素系モノマー等とのグラフト重合した部分をグラフト鎖部とすると、主鎖部に対するグラフト鎖部の重量比は、次式のグラフト率(Xdg(wt%))として表される。
【0037】
【数1】
Xdg=100(W2−W1)/W1 (1)
W1:グラフト前のフィルム基材の重さ(g)
W2:グラフト後のフィルム(乾燥状態)の重さ(g)
(2)イオン交換容量
膜のイオン交換容量(Iex(meq/g))は次式で表される。
【0038】
【数2】
Iex=n(酸基)obs/Wd (2)
n(酸基)obs:スルホン化グラフトフィルム(イオン交換膜)の酸基濃度(mM/g)
Wd :スルホン化グラフトフィルム(イオン交換膜)の乾燥重量(g)
n(酸基)obsの測定は、完璧を期すため、膜を再度1M(1モル)硫酸溶液中に50℃で4時間浸漬し、完全に酸型(H型)とした。その後、3MのNaCl水溶液中50℃、4時間浸漬して−SO3Na型とし、置換されたプロトン(H+)を0.2NのNaOHで中和滴定し酸基濃度を求めた。
(3)含水率
室温で水中に保存しておいたH型のイオン交換膜を水中から取出し軽くふき取った後(約1分後)の膜の重量をWs(g)とし、その後、この膜を60℃にて16時間、真空乾燥した時の膜の重量Wd(g)を乾燥重量とすると、Ws 、Wdから次式により含水率が求められる。
【0039】
【数3】
含水率(%)=100・(Ws−Wd)/Wd (3)
(4)電気伝導度
イオン交換膜の電気伝導性は、交流法による測定(新実験化学講座19、高分子化学〈II〉、p.992,丸善)で、通常の膜抵抗測定セルとヒュ−レットパッカード製のLCRメータ、E−4925Aを使用して膜抵抗(Rm)の測定を行った。1M硫酸水溶液をセルに満たして膜の有無による白金電極間(距離5mm)の抵抗を測定し、膜の電気伝導度(比伝導度)は次式を用いて算出した。
【0040】
【数4】
κ=1/Rm・d/S (Ω‐ 1cm‐ 1) (4)
κ:膜の電気伝導度((Ω‐ 1cm‐ 1)
d:イオン交換膜の厚み(cm)
S:イオン交換膜の通電面積(cm2 )
電気伝導度測定値の比較のために、直流法でMark W.Verbrugge,Robert F.Hill等(J. Electrochem. Soc.,.137, 3770−3777(1990))と類似のセル及びポテンショスタット、関数発生器を用いて測定した。交流法と直流法の測定値には良い相関性が見られた。下記の表1の値は交流法による測定値である。
(5)耐酸化性(重量残存率%)
60℃で16時間真空乾燥後のイオン交換膜の重量をW3とし、80℃の3%過酸化水素溶液に24時間処理したイオン交換膜の乾燥後重量をW4とする。
【0041】
【数5】
耐酸化性=100(W4/W3) (5)
(実施例1)
架橋したポリテトラフルオロエチレン(PTFE)フィルムを得るために以下の照射を行った。厚さ50μmのPTFEフィルム(日東電工製、品番No.900)の10cm角をヒーター付きのSUS製オートクレーブ照射容器(内径7cmφx高さ30cm)に入れ、容器内を10−3Torrに脱気してアルゴンガスに置換した。その後、電気ヒーターで加熱してPTFEフィルムの温度を340℃として、60Co−γ線を線量率3kGy/hで線量90kGy(30時間)照射した。照射後、容器を冷却してPTFEフィルムを取り出した。この高温照射で得られた架橋PTFEフィルムは、フィルムの透明性が上がっていることから、結晶サイズが未架橋PTFEよりもかなり小さくなっていることを示している。この架橋PTFEフィルムの引張り強度は18MPa、破断伸びは320%(引張り速度200mm/min(試料片ダンベル状4号型(JIS−K6251−1993))、DSC測定による融解温度は312℃であった。
【0042】
この架橋PTFEフィルムをコック付きのガラス製セパラブル容器(内径3cmφx15cm高さ)に入れて脱気後アルゴンガスで置換した。この状態で架橋PTFEフィルム(4cm2)に、再び、γ線(線量率10kGy/h)を60kGy室温で照射した。引き続き、1−フルオロエテン スルホニル フルオライド(CH2=CF(SO2F))をアルゴンガスのバブリングによって空気を除いた後、照射された架橋PTFEフィルムの入ったガラス容器中にフィルムが浸されるまで導入した。容器を密閉し、攪拌しながら50℃にして24時間反応させた。反応後、トルエン、ついでアセトンで洗浄し、乾燥した。式(1)によって求めたグラフト率は25%であった。
【0043】
このグラフト架橋PTFEフィルム(膜)を20重量%、KOHのジメチルスルホオキシド/水(1:2)溶液、80℃で24時間反応させた。反応後、膜を取り出し、水洗し、2Nの硫酸溶液中、60℃で4時間処理した。本実施例で得られた膜のグラフト率、イオン交換容量(式(2))、含水率(式(3))、及び、電気伝導度(式(4))を下記の表1に示す。
【0044】
(実施例2)
実施例1と同様にγ線を90kGy照射して得た架橋PTFEフィルム(4cm2)をコック付きのガラス製セパラブル容器(内径3cmφx15cm高さ)に入れて脱気後アルゴンガスで置換した。この状態で再び、γ線(線量率10kGy/h)を60kGy室温で照射した。照射後、容器を真空脱気し、アルゴンガスのバブリングで空気を除いた1−フルオロエテン スルホン酸メチルエステル(CH2=CF(SO3CH3))を照射された架橋PTFEフィルムの入ったガラス容器中にフィルムが浸されるまで導入した。容器を密閉し、攪拌しながら60℃にして24時間反応させた。反応後、トルエン、ついでアセトンで洗浄し、乾燥した。式(1)によって求めたグラフト率は74%であった。
【0045】
このグラフト架橋PTFEフィルム(膜)を10重量%、KOHのジメチルスルホオキシド/水(1:2)溶液、80℃で24時間反応させた。本実施例で得られた膜のグラフト率、イオン交換容量(式(2))、含水率(式(3))、及び、電気伝導度(式(4))を下記の表1に示す。
【0046】
(実施例3)
実施例1と同様にγ線を90kGy照射して得た架橋PTFEフィルム(4cm2)をコック付きのガラス製セパラブル容器(内径3cmφx15cm高さ)に入れて脱気後アルゴンガスで置換した。この状態で再び、γ線(線量率10kGy/h)を60kGy室温で照射した。照射後、容器を真空脱気し、アルゴンガスのバブリングで空気を除いた1−フルオロエテン スルホン酸メチルエステル(CF2=CF(SO3CH3))を照射された架橋PTFEフィルムの入ったガラス容器中にフィルムが浸されるまで導入した。容器を密閉し、攪拌しながら60℃にして24時間反応させた。反応後、トルエン、ついでアセトンで洗浄し、乾燥した。式(1)によって求めたグラフト率は52%であった。
【0047】
このグラフト架橋PTFEフィルム(膜)を10重量%、KOHのジメチルスルホオキシド/水(1:2)溶液、80℃で24時間反応させた。本実施例で得られた膜のグラフト率、イオン交換容量(式(2))、含水率(式(3))、及び、電気伝導度(式(4))を下記の表1に示す。
【0048】
(実施例4)
実施例1と同様にγ線を90kGy照射して得た架橋PTFEフィルム(4cm2)をコック付きの耐圧ガラス製セパラブル容器(内径3cmφx15cm高さ)に入れて脱気後アルゴンガスで置換した。この状態で再び、γ線(線量率10kGy/h)を60kGy室温で照射した。照射後、容器を真空脱気し、アルゴンガスのバブリングで空気を除いたCF2=CF(SO3CH3)を照射された架橋PTFEフィルムの入ったガラス容器中にフィルムが浸されるまで導入した。さらに、2気圧程度に調整したイソブテン(CH2=C(CH3)2)ガスを反応容器に接続した。容器を密閉し、溶液を攪拌しながら、60℃にして48時間反応させた。反応後、トルエン、ついでアセトンで洗浄し、乾燥した。式(1)によって求めたグラフト率は63%であった。
【0049】
このグラフト架橋PTFEフィルム(膜)を10重量%、KOHのジメチルスルホオキシド/水(1:2)溶液、80℃で24時間反応させた。本実施例で得られた膜のグラフト率、イオン交換容量(式(2))、含水率(式(3))、及び、電気伝導度(式(4))を下記の表1に示す。
【0050】
(実施例5)
室温、空気中で電子線を100kGy照射して架橋した厚さ50μmのETFEフィルム(4cm2)を、コック付きの耐圧ガラス製セパラブル容器(内径3cmφx15cm高さ)に入れて脱気後アルゴンガスで置換した。この状態でETFEに、再び、γ線(線量率10kGy/h)を60kGy室温で照射した。バブリングによって酸素を除きアルゴンガス置換した。引き続き、1−フルオロエテン スルホニル フルオライド(CH2=CF(SO2F))をアルゴンガスのバブリングによって空気を除いた後、照射された架橋ETFEフィルムの入ったガラス容器中にフィルムが浸されるまで導入した。容器を密閉し、攪拌しながら50℃にして24時間反応させた。反応後、トルエン、ついでアセトンで洗浄し、乾燥した。式(1)によって求めたグラフト率は53%であった。
【0051】
このグラフト架橋PTFEフィルム(膜)を20重量%、KOHのジメチルスルホオキシド/水(1:2)溶液、80℃で24時間反応させた。反応後、膜を取り出し、水洗し、2Nの硫酸溶液中、60℃で4時間処理した。本実施例で得られた膜のグラフト率、イオン交換容量(式(2))、含水率(式(3))、及び、電気伝導度(式(4))を下記の表1に示す。
【0052】
(実施例6)
膜のアルコールによる膨潤度を測定した。実施例1およびナフィオン117を3Nの硫酸溶液に浸漬し、スルホン酸基をH型とした。そして、室温水に浸漬し、湿潤状態で寸法を測定した。次に膜をメタノール、イソプロパノール(IPA)の各アルコール溶液に浸けて60℃、3時間保持し、その後、室温まで一夜放冷した後、膜の寸法変化を測定した。その結果を図1に示す。本実施例で得られた膜は、ナフィオン膜に比べメタノールなどによる膜の膨潤がほとんど認められないので、直接メタノール型燃料電池の膜材料としてきわめて有効である。図1及び表1より本発明の有効性が実証された。
【0053】
(比較例1,2)
下記の表1に示したナフィオン 115、ナフィオン 117(デュポン社製)について測定されたイオン交換容量、含水率、および、電気伝導度の結果を表1の比較例1、2に示す。
【0054】
(比較例3)
実施例1で得た架橋PTFEフィルム(厚さ50μm)をコック付きのガラス製セパラブル容器(内径3cmφx15cmH)に入れて脱気後アルゴンガスで置換した。この状態で架橋PTFEフィルムに、再び、γ線(線量率10kGy/h)を45kGy室温で照射した。アルゴンガスのバブリングによって酸素を除きアルゴンガス置換したスチレンモノマーを架橋PTFEフィルムの入ったガラス容器に、膜が浸漬されるまで導入した。容器内を攪拌し、60℃で6時間反応させた。その後、グラフト共重合膜をトルエン、続いてアセトンで洗浄し、乾燥した。グラフト率は93%であった。このグラフト重合膜を0.5Mクロルスルホン酸(1,2−ジクロロエタン溶媒)に浸漬し60℃、24時間スルホン化反応を行った。その後、この膜を水洗いしてスルホン酸基とした。
【0055】
【表1】
【0056】
【発明の効果】
本発明の含フッ素樹脂イオン交換膜は広い範囲のイオン交換容量と優れた耐メタノール特性、及び高い耐酸化性を有する高分子イオン交換膜を提供するものである。
【0057】
本発明のイオン交換膜は、特に燃料電池膜に適している。また、安価で耐久性のある電解膜やイオン交換膜として有用である。
【図面の簡単な説明】
【図1】アルコールと水の混合溶媒による膜の膨潤性を示す図である。
【発明の属する技術分野】
本発明は、燃料電池に適した固体高分子電解質膜で、優れた耐酸化性と広範囲なイオン交換容量を有する含フッ素系高分子イオン交換膜及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
固体高分子電解質型イオン交換膜を用いた燃料電池は、エネルギー密度が高いことから、電気自動車の電源や簡易補助電源として期待されている。この燃料電池では、優れた特性を有する高分子イオン交換膜の開発は最も重要な技術の一つである。
【0003】
高分子イオン交換膜型燃料電池においては、イオン交換膜は、プロトンを伝導するための電解質として作用し、また、燃料である水素やメタノールと酸化剤である空気(酸素)を直接混合させないための隔膜としての役割も有する。このようなイオン交換膜としては、電解質としてイオン交換容量が高いこと、長期間電流を通すので膜の化学的な安定性、特に、膜の劣化の主因となる水酸化ラジカル等に対する耐性(耐酸化性)が優れていること、電気抵抗を低く保持するために膜の保水性が一定で高いことが要求される。一方、隔膜としての役割から、膜の力学的な強度や膜の寸法安定性が優れていること、水素ガス、メタノール又は酸素ガスについて過剰な透過性を有しないことなどが要求される。
【0004】
初期の高分子イオン交換膜型燃料電池では、スチレンとジビニルベンゼンの共重合で製造した炭化水素系高分子イオン交換膜が使用された。しかし、このイオン交換膜は耐酸化性に起因する耐久性が非常に劣っていたため実用性に乏しく、その後はデュポン社により開発されたパーフルオロスルホン酸膜「ナフィオン(デュポン社登録商標)」等が一般に用いられてきた。
【0005】
しかしながら、「ナフィオン」等の従来の含フッ素系高分子イオン交換膜は、化学的な耐久性や安定性には優れているが、イオン交換容量が1meq/g前後と小さく、また、保水性が不十分でイオン交換膜の乾燥が生じてプロトン伝導性が低下したり、あるいは、メタノールを燃料とする場合には膜の膨潤やメタノールのクロスオーバーが起きる。
【0006】
また、イオン交換容量を大きくするため、スルホン酸基を多く導入しようとすると、高分子鎖中に架橋構造がないために膜強度が著しく低下し、容易に破損するようになる。したがって、従来の含フッ素系高分子のイオン交換膜ではスルホン酸基の量を膜強度が保持される程度に抑える必要があり、このためイオン交換容量が1meq/g程度ものしかできなかった。
【0007】
さらに、ナフィオンなどの含フッ素系高分子イオン交換膜はモノマーの合成が困難かつ複雑であり、また、これを重合してポリマー膜を製造する工程も複雑なため非常に高価であり、プロトン交換膜型燃料電池を自動車などへ搭載して実用化する場合の大きな障害になっている。そのため、前記ナフィオン等に替わる低コストで高性能な電解質膜を開発する努力がおこなわれてきた。
【0008】
また、本発明と密接に関連する放射線グラフト重合法では、含フッ素系高分子膜にスルホン酸基を導入することができるモノマーをグラフトして、固体高分子電解質膜を作製する試みがなされている。本発明者らはこれらの新しい含フッ素固体高分子電解質膜を開発すべく検討を重ね、架橋構造を有するポリテトラフルオロエチレンフィルムにスチレンモノマーを放射線グラフト反応により導入し、次いでスルホン化することにより広いイオン交換容量を特徴とする固体高分子電解質膜、及びその製造方法を出願(特許文献1)した。しかし、スチレングラフト鎖のみの場合、膜に長時間電流を通すとグラフト鎖部の酸化劣化により、膜のイオン交換能が低下する場合がある。
【0009】
さらに、架橋構造を有するポリテトラフルオロエチレンフィルムにフッ素系のモノマーの放射線グラフト、また、フッ素系のモノマーの放射線共グラフトに引き続き、グラフト鎖にスルホン基を導入することによって広いイオン交換容量を有する優れた耐酸化性を特徴とする固体高分子電解質膜、及びその製造方法を出願(特許文献2)した。しかし、通常のフッ素系高分子膜ではフッ素系のモノマーグラフト率が低い場合には、電解質膜としての特性向上が顕著でない場合もあることが判明した。
【0010】
【特許文献1】
特開2001−348439号公報
【特許文献2】
特開2002‐348389号公報(特願2001−153926号)
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上述のような従来技術の問題点を克服するためになされたものであり、放射線グラフトによる含フッ素系高分子イオン交換膜において、グラフトが膜中心部まで進行し、固体高分子電解質としての特性に優れ、かつ、耐酸化性の優れた膜を提供するものである。即ち、本発明は、含フッ素系高分子イオン交換膜における最大の欠点であるイオン交換容量が小さく、かつ、保水性が悪いこと、また、炭化水素モノマーをグラフトした含フッ素系イオン交換膜における最大の欠点である耐酸化性が低いことなどを解決課題とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明は、広いイオン交換容量と優れた耐酸化性を有する含フッ素系高分子イオン交換膜であり、特に燃料電池に適したイオン交換膜を提供する。
【0013】
即ち、基材として、架橋構造を有する含フッ素系高分子をマトリックスとし、これに放射線照射して種々のモノマーをグラフトまたは共グラフトし、さらに、グラフト鎖へのスルホン酸基の導入について研究を進めた結果、ある特定のフッ素系モノマーを選択することで、基材膜の中心部までグラフトし、イオン交換容量などの各特性を適切で広い範囲内に制御することができる含フッ素系高分子イオン交換膜を発明するに至った。
【0014】
本発明では、フッ素系モノマーをグラフト重合させた後、ハロゲン基やスルホニル基等をスルホン酸基とすることを特徴とした含フッ素系高分子イオン交換膜を提供するものであり、かつ、このイオン交換膜のグラフト率が10〜150%、イオン交換容量が0.3〜3.0 meq/gであることを特徴とする含フッ素系高分子イオン交換膜、及び、その製造方法を提供するものである。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明で使用する基材ポリマーとして、放射線により架橋構造を有するポリテトラフルオロエチレン(以下PTFEと略す)フィルムがある。架橋構造を有するPTFEの製造方法は特開平6−116423公報に開示されている。この架橋構造を有するフィルム基材は膜の耐熱性が向上する、高分子の結晶/無定型の比率やモルホロジーが変化してモノマーのグラフト率が向上する、さらに、グラフトのための照射による膜強度の低下を抑制することができるので、高温作動で高性能の燃料電池膜には好適である。特に、PTFEの放射線グラフト反応では架橋構造をフィルム基材の分子構造に導入することによって無定型部分が多くなり、未架橋のPTFEのグラフト率が低いという欠点を解決できる。例えば、グラフトモノマーとしてスチレンを用いた場合、未架橋のPTFEに比較し、架橋PTFEはグラフト率を著しく増加させることができ、このため未架橋のPTFEの2〜10倍のスルホン酸基を架橋PTFEに導入できることを本発明者らはすでに見出した(特開2001‐348439号公報:特願2000−170450)。
【0016】
本発明による含フッ素系高分子イオン交換膜は、架橋構造を有するPTFEに下記の(1)〜(8)の各モノマーを放射線照射によってグラフト重合させる。
(1)架橋構造を有するPTFEフィルム基材に、次式:CH2=CF(SO2X)(Xはハロゲン基で−F又は−Cl)のモノマーを電離放射線照射によってグラフト重合させる。
(2)架橋構造を有するPTFEフィルム基材に、次式:CH2=CF(SO3R1)(R1はアルキル基で−CH3,−C2H5又は−C3H7)のモノマーを電離放射線照射によってグラフト重合させる。
(3)架橋構造を有するPTFEフィルム基材に、次式:CF2=CF(SO3R1)(R1はアルキル基で−CH3,−C2H5又は−C3H7)のモノマーを電離放射線照射によってグラフト重合させる。
(4)架橋構造を有するPTFEフィルム基材に、(1)〜(3)のモノマーから選ばれた2種類以上のモノマーを放射線共グラフト重合させる。
(5)架橋構造を有するPTFEフィルム基材に、次式:CH2=CF(SO2X)(Xはハロゲン基で−F又は−Cl)のモノマーと、(A)モノマー群:
a.炭素数4以下で、重合性二重結合を有する炭化水素系モノマー;
b.CH2=CR2(COOR3)若しくはCF2=CR2(COOR3)の化合物で 、R2は−CH3,−Fであり、R3は−H、−CH3,−C2H5,−C3 H7であるアクリル系モノマー;又は
c.炭素数4以下で、共重合性二重結合を有するフッ化炭素系モノマー
から選ばれた1種類以上のモノマーを放射線照射によって共グラフト重合させる。
(6)架橋構造を有するPTFEフィルム基材に、次式:CH2=CF(SO3R1)(R1はアルキル基で−CH3,−C2H5又は−C3H7)のモノマーから選ばれた1種類以上のモノマーと、(A)モノマー群:
a.炭素数4以下で、重合性二重結合を有する炭化水素系モノマー;
b.CH2=CR2(COOR3)若しくはCF2=CR2(COOR3)の化合物で 、R2は−CH3,−Fであり、R3は−H、−CH3,−C2H5,−C3 H7であるアクリル系モノマー;又は
c.炭素数4以下で、共重合性二重結合を有するフッ化炭素系モノマー
から選ばれた1種類以上のモノマーを放射線照射によって共グラフト重合させる。
(7)架橋構造を有するPTFEフィルム基材に、次式:CF2=CF(SO3R1)(R1はアルキル基で−CH3,−C2H5又は−C3H7)のモノマーから選ばれた1種類以上のモノマーと、(A)モノマー群:
a.炭素数4以下で、重合性二重結合を有する炭化水素系モノマー;
b.CH2=CR2(COOR3)若しくはCF2=CR2(COOR3)の化合物で 、R2は−CH3,−Fであり、R3は−H、−CH3,−C2H5,−C3 H7であるアクリル系モノマー;又は
c.炭素数4以下で、共重合性二重結合を有するフッ化炭素系モノマー
から選ばれた1種類以上のモノマーを放射線照射によって共グラフト重合させる。
(8)架橋構造を有するPTFEフィルム基材に、(1)〜(3)のモノマーから選ばれた2種類以上のモノマーと、(A)モノマー群:
a.炭素数4以下で、重合性二重結合を有する炭化水素系モノマー;
b.CH2=CR2(COOR3)若しくはCF2=CR2(COOR3)の化合物で 、R2は−CH3,−Fであり、R3は−H、−CH3,−C2H5,−C3 H7であるアクリル系モノマー;又は
c.炭素数4以下で、共重合性二重結合を有するフッ化炭素系モノマー
から選ばれた1種類以上のモノマーを放射線照射によって共グラフト重合させる。
【0017】
(5)〜(8)における(A)モノマー群の、a.炭素数4以下で重合性二重結合を有する炭化水素系モノマーとしては、例えば、エチレン、プロピレン、ブテン−1、ブテン−2、イソブテンなどがある。同じく、b.CH2=CR2(COOR3)若しくはCF2=CR2(COOR3)の化合物で、R2は−CH3,−Fであり、R3は−H、−CH3,−C2H5,−C3H7であるアクリル系モノマーとしては、例えば、CH2=C(CH3)(COOH)、 CH2=C(CH3)(COOCH3)、CH2=CF(COOCH3)、CF2=CF(COOCH3) 、又は、CF2=C(CH3)(COOCH3)などがある。同じく、c.炭素数4以下で、共重合性二重結合を有するフッ化炭素系モノマーとしては、例えば、CF2=CF2、CF2=CHF、CF2=CFCl、CF2=CFBr、CF2=CH2、CHF=CH2などのフロオロエチレン系モノマー、CF2=CFCF3のフルオロプロピレン系モノマー、CF2=CFCF2CF3(フルオロブテン−1)、CF2=C(CF3)2(フロオロイソブテン)、CF3CF=CFCF3(フルオロブテン−2)、CF2=CFCF=CF2(フルオロブタジエン)、CFCl=CFCF=CFCl、 CF2=CClCCl=CF2(クロロフルオロブタジエン)のフルオロブテン系モノマーなど、及び、CF2=CFCH2CH3のハイドロフルオロビニル系モノマーやCF2=CFOCH2CH3のハイドロフルオロビニルエーテル系モノマーなどがある。
【0018】
これら(1)〜(8)の各モノマーは、フレオン112(CCl2FCCl2F)、フレオン113(CCl2FCClF2)、クロロメタン、n−ヘキサン、アルコール、t−ブタノール、ベンゼン、トルエン、シクロヘキサン、シクロヘキサノンやジメチルスルホオキシドの溶媒で該モノマーを希釈したものを用いても良い。ガス状のモノマーを用いるときは、不活性なガスを用いてモノマーガスの分圧を1〜30気圧とし、液体状モノマー溶液と接触させ、かつ、この溶液を攪拌しながらグラフト重合すると良い。
【0019】
本発明で用ることのできる基材ポリマーとして、架橋構造を有するPTFEの代わりに、テトラフルオロエチレン−六フッ化プロピレン共重合体(以下、FEPと略記)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(同PFA)、ポリフッ化ビニリデン(同PVDF)、及びエチレン−テトラフルオロエチレン共重合体(同ETFE)の架橋構造を有するフィルムが適応できる。これらのフィルム基材は予め架橋しておくと、膜の耐熱性が向上する、架橋構造を導入することによりモノマーのグラフト率が向上する、さらに、グラフトのための照射による膜強度の低下を抑制することができるので、高温作動で高性能の燃料電池膜には好適である。架橋FEPやPFAの製造方法はRadiation Physical Chemistry vol.42、NO.1/3、pp.139−142、1993に掲載されている。
【0020】
架橋構造を有するPTFE、FEP、PFA、PVDF、又はETFEフィルム基材への上記モノマーのグラフト重合は、これらの架橋フィルム基材に電離放射線(γ線、高エネルギー電子線やX線のように、照射された物質の原子、分子を電離して活性種を生成させるもの)を室温、不活性ガス中で5〜500kGy照射した後、不活性ガスのバブリングや凍結脱気で酸素ガスを除いた上記(1)〜(8)のモノマー溶液やガス状モノマーに照射した架橋フィルム基材を浸漬したり、接触させたりする。
【0021】
グラフト重合は、これらの架橋フィルム基材を放射線照射後モノマーとグラフト反応させる、いわゆる前照射法か、又は架橋フィルム基材とモノマーを同時に放射線照射してグラフトさせる、いわゆる同時照射法のいずれかの方法によってもよい。
グラフト重合温度は、モノマーや溶媒の沸点以下の温度で、通常0℃〜100℃で行なうのがよい。酸素の存在はグラフト反応を阻害するため、これら一連の操作はアルゴンガスや窒素ガスなどの不活性ガス中で、また、モノマーやモノマーを溶媒に溶かした溶液は常法の処理(バブリングや凍結脱気)で酸素を除去した状態で使用する。
【0022】
グラフト率(実施例の式(1)参照)は放射線の線量とほぼ比例関係にあり、線量が多いほどグラフト率は高くなるが、グラフト率は徐々に飽和してくる。グラフト率は架橋フィルム基材に対し、10〜150%、より好ましくは15〜100%である。
【0023】
上記(1)、(4)、(5)及び(8)で得られたグラフト架橋フィルムにスルホン酸基を導入するには、得られたフィルムのグラフト鎖中のハロゲン基[−X]を苛性ソーダ(NaOH)や苛性カリ(KOH) の水溶液やジメチルスルホオキシド/水溶液中で室温〜100℃で反応させて、スルホン酸ナトリウム[−SO3Na]やスルホン酸カリウム[−SO3K]とし、引き続き、得られた [−SO3Na]や[−SO3K]基を1N〜2N硫酸溶液中、60℃でスルホン酸基[−SO3H]として、含フッ素系高分子イオン交換膜が得られる。
【0024】
また、(2)、(3)、(4)、(6)、(7)及び(8)で得られたグラフト架橋フィルムにスルホン酸基を導入するには、得られたフィルムのグラフト鎖中のエステル基を1N程度の硫酸溶液中などの酸性溶液中で室温〜100℃で反応させて加水分解するか、又は同程度濃度の水酸化カリウム溶液中で加水分解し、スルホン酸基[−SO3H]として、含フッ素系高分子イオン交換膜が得られる。
【0025】
さらに、(5)〜(8)で得られたアクリル系モノマーを共グラフトした架橋フィルムのグラフト鎖中のエステル基も苛性ソーダ(NaOH)や苛性カリ(KOH) の水溶液やジメチルスルホオキシド/水溶液中の反応によって、カルボキシル基となる。このようなカルボキシル基はこのグラフトフィルムを燃料電池膜として用いた場合、フィルム中の水分の保持にきわめて有用である。
【0026】
本発明による含フッ素系高分子イオン交換膜はグラフト量と導入されたスルホン酸基の量によって、この膜のイオン交換容量を変えることができる。イオン交換容量とは、乾燥イオン交換膜の重量1g当たりのイオン交換基量(meq/g)である。グラフトモノマーの種類にもよるが、グラフト率が10%で以下ではイオン交換容量が0.3meq/g、以下であり、グラフト率が150%以上では膜の膨潤が大きくなる。すなわち、グラフト率を高くしてイオン交換基を多く導入すれば、イオン交換容量は高くなる。しかし、イオン交換基量を多くしすぎると、含水時に膜が膨潤して膜の強度が低下する。これらのことから、本発明による含フッ素系高分子イオン交換膜のイオン交換容量は0.3meq/g〜3.0meq/g、より好ましくは、0.5meq/g〜2.0meq/gである。
【0027】
本発明の含フッ素系高分子イオン交換膜では導入されたスルホン酸基の量やグラフトモノマーの分子構造によって、本発明の含フッ素系高分子の含水率を制御できる。この膜を燃料電池用イオン交換膜として使用する場合、含水率が低すぎると運転条件のわずかな変化によって電気伝導度やガス透過係数が変わり好ましくない。従来のナフィオン膜はほとんどが−(CF2)−で構成されているために、80℃以上の高い温度で電池を作動させると水原子が膜中に不足し、膜の導電率が急速に低下する。
【0028】
これに対し、本発明のイオン交換膜はグラフト鎖にスルホン酸基の他にカルボキシル基などの親水基や炭化水素構造を導入することができるため、含水率は主にスルホン酸基の量によるが10〜80重量(wt)%の範囲で含水率を制御できる。一般的にはイオン交換容量が増すにつれて含水率も増大するが、本発明のイオン交換膜は含水率を制御できることから、膜の含水率は10〜80wt%、好ましくは20〜60wt%とすることができる。
【0029】
また、本発明の含フッ素系高分子膜は架橋構造やフッ素樹脂主鎖末端の絡み合いよってイオン交換容量が3.0meq/g程度まで多量のスルホン酸基を導入しても、膜の力学特性や寸法安定性が保たれ、実用に供することができる。高いイオン交換容量と膜の力学的特性の優れた膜は実用上極めて重要な発明である。高分子イオン交換膜は、イオン交換容量とも関係する電気伝導度が高いものほど電気抵抗が小さく、電解質膜としての性能は良い。しかし、25℃におけるイオン交換膜の電気伝導度が0.05(Ω・cm)−1以下であると燃料電池としての出力性能が著しく低下する場合が多いため、イオン交換膜の電気伝導度は0.05(Ω・cm)−1以上、より高性能のイオン交換膜では0.10(Ω・cm)−1以上に設計されていることが多い。本発明によるイオン交換膜では25℃におけるイオン交換膜の電気伝導度がナフィオン膜と同等かそれよりも高い値が得られた。
【0030】
イオン交換膜の電気伝導度を上げるために、イオン交換膜の厚みを薄くすることも考えられる。しかし現状では、あまり薄いイオン交換膜では破損しやすく、イオン交換膜自体の製作も難しいのが実状である。したがって、通常では30〜200μm厚の範囲のイオン交換膜が使われている。本発明の場合、膜厚は 10〜500μm、好ましくは20μm〜100μmの範囲のものが有効である。
【0031】
燃料電池膜においては、現在、燃料の候補の一つとして考えられているメタノールがあるが、パーフルオロスルホン酸膜であるナフィオン膜(デュポン社)は分子間の架橋構造がないためにメタノールによって大きく膨潤し、燃料であるメタノールが電池膜を通してアノード(燃料極)からカソード(空気極)へと拡散する燃料のクロスオーバーが、発電効率を低下させるとして大きな問題となっている。
【0032】
しかし、本発明による含フッ素系高分子膜では高いイオン交換容量にも拘わらず、基材分子鎖やグラフト鎖の架橋構造や絡み合いにより、80℃の温度においてもメタノールを含めたアルコール類による膜の膨潤はほとんど認められない。このため、改質器を用いずにメタノールを直接燃料とするダイレクト・メタノール型燃料電池(Direct methanol Fuel cell)の膜として有用である。
燃料電池膜においては、膜の耐酸化性は膜の耐久性(寿命)に関係する極めて重要な特性である。これは電池稼働中に発生するOHラジカル等がイオン交換膜を攻撃して、膜を劣化させるものである。架橋フッ素樹脂膜に炭化水素系のスチレンをグラフトした後、ポリスチレングラフト鎖をスルホン化して得た高分子イオン交換膜の耐酸化性は極めて低い。例えば、グラフト率100%のポリスチレン鎖をスルホン化したポリスチレングラフト架橋フッ素樹脂イオン交換膜は80℃の3%過酸化水素水溶液中、約60分でイオン交換膜が劣化しイオン交換容量がほぼ半分となる。これは、OHラジカルの攻撃によって、ポリスチレン鎖が容易に分解するためである。
【0033】
これに対し、本発明による含フッ素系高分子イオン交換膜はグラフト鎖が含フッ素系モノマーの重合体、ないしは、含フッ素系モノマーと炭化水素系モノマーの主に交互共重合体であるために、フッ素化合物の優れた耐性が発揮されるため耐酸化性がきわめて高く、80℃の3%過酸化水素水溶液中に24時間以上置いてもイオン交換容量はほとんど変化しない。
【0034】
以上のように、本発明の含フッ素系高分子イオン交換膜は優れた耐酸化性や耐メタノール性を有すると共に、膜としての重要な特性、すなわち、イオン交換容量0.3〜3.0meq/gを広い範囲に制御できることが本発明の特徴である。
【0035】
【実施例】
以下、本発明を実施例及び比較例により説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0036】
なお、各測定値は以下の測定によって求めた。
(1)グラフト率
フィルム基材を主鎖部、フッ素モノマーやこれらと炭化水素系モノマー等とのグラフト重合した部分をグラフト鎖部とすると、主鎖部に対するグラフト鎖部の重量比は、次式のグラフト率(Xdg(wt%))として表される。
【0037】
【数1】
Xdg=100(W2−W1)/W1 (1)
W1:グラフト前のフィルム基材の重さ(g)
W2:グラフト後のフィルム(乾燥状態)の重さ(g)
(2)イオン交換容量
膜のイオン交換容量(Iex(meq/g))は次式で表される。
【0038】
【数2】
Iex=n(酸基)obs/Wd (2)
n(酸基)obs:スルホン化グラフトフィルム(イオン交換膜)の酸基濃度(mM/g)
Wd :スルホン化グラフトフィルム(イオン交換膜)の乾燥重量(g)
n(酸基)obsの測定は、完璧を期すため、膜を再度1M(1モル)硫酸溶液中に50℃で4時間浸漬し、完全に酸型(H型)とした。その後、3MのNaCl水溶液中50℃、4時間浸漬して−SO3Na型とし、置換されたプロトン(H+)を0.2NのNaOHで中和滴定し酸基濃度を求めた。
(3)含水率
室温で水中に保存しておいたH型のイオン交換膜を水中から取出し軽くふき取った後(約1分後)の膜の重量をWs(g)とし、その後、この膜を60℃にて16時間、真空乾燥した時の膜の重量Wd(g)を乾燥重量とすると、Ws 、Wdから次式により含水率が求められる。
【0039】
【数3】
含水率(%)=100・(Ws−Wd)/Wd (3)
(4)電気伝導度
イオン交換膜の電気伝導性は、交流法による測定(新実験化学講座19、高分子化学〈II〉、p.992,丸善)で、通常の膜抵抗測定セルとヒュ−レットパッカード製のLCRメータ、E−4925Aを使用して膜抵抗(Rm)の測定を行った。1M硫酸水溶液をセルに満たして膜の有無による白金電極間(距離5mm)の抵抗を測定し、膜の電気伝導度(比伝導度)は次式を用いて算出した。
【0040】
【数4】
κ=1/Rm・d/S (Ω‐ 1cm‐ 1) (4)
κ:膜の電気伝導度((Ω‐ 1cm‐ 1)
d:イオン交換膜の厚み(cm)
S:イオン交換膜の通電面積(cm2 )
電気伝導度測定値の比較のために、直流法でMark W.Verbrugge,Robert F.Hill等(J. Electrochem. Soc.,.137, 3770−3777(1990))と類似のセル及びポテンショスタット、関数発生器を用いて測定した。交流法と直流法の測定値には良い相関性が見られた。下記の表1の値は交流法による測定値である。
(5)耐酸化性(重量残存率%)
60℃で16時間真空乾燥後のイオン交換膜の重量をW3とし、80℃の3%過酸化水素溶液に24時間処理したイオン交換膜の乾燥後重量をW4とする。
【0041】
【数5】
耐酸化性=100(W4/W3) (5)
(実施例1)
架橋したポリテトラフルオロエチレン(PTFE)フィルムを得るために以下の照射を行った。厚さ50μmのPTFEフィルム(日東電工製、品番No.900)の10cm角をヒーター付きのSUS製オートクレーブ照射容器(内径7cmφx高さ30cm)に入れ、容器内を10−3Torrに脱気してアルゴンガスに置換した。その後、電気ヒーターで加熱してPTFEフィルムの温度を340℃として、60Co−γ線を線量率3kGy/hで線量90kGy(30時間)照射した。照射後、容器を冷却してPTFEフィルムを取り出した。この高温照射で得られた架橋PTFEフィルムは、フィルムの透明性が上がっていることから、結晶サイズが未架橋PTFEよりもかなり小さくなっていることを示している。この架橋PTFEフィルムの引張り強度は18MPa、破断伸びは320%(引張り速度200mm/min(試料片ダンベル状4号型(JIS−K6251−1993))、DSC測定による融解温度は312℃であった。
【0042】
この架橋PTFEフィルムをコック付きのガラス製セパラブル容器(内径3cmφx15cm高さ)に入れて脱気後アルゴンガスで置換した。この状態で架橋PTFEフィルム(4cm2)に、再び、γ線(線量率10kGy/h)を60kGy室温で照射した。引き続き、1−フルオロエテン スルホニル フルオライド(CH2=CF(SO2F))をアルゴンガスのバブリングによって空気を除いた後、照射された架橋PTFEフィルムの入ったガラス容器中にフィルムが浸されるまで導入した。容器を密閉し、攪拌しながら50℃にして24時間反応させた。反応後、トルエン、ついでアセトンで洗浄し、乾燥した。式(1)によって求めたグラフト率は25%であった。
【0043】
このグラフト架橋PTFEフィルム(膜)を20重量%、KOHのジメチルスルホオキシド/水(1:2)溶液、80℃で24時間反応させた。反応後、膜を取り出し、水洗し、2Nの硫酸溶液中、60℃で4時間処理した。本実施例で得られた膜のグラフト率、イオン交換容量(式(2))、含水率(式(3))、及び、電気伝導度(式(4))を下記の表1に示す。
【0044】
(実施例2)
実施例1と同様にγ線を90kGy照射して得た架橋PTFEフィルム(4cm2)をコック付きのガラス製セパラブル容器(内径3cmφx15cm高さ)に入れて脱気後アルゴンガスで置換した。この状態で再び、γ線(線量率10kGy/h)を60kGy室温で照射した。照射後、容器を真空脱気し、アルゴンガスのバブリングで空気を除いた1−フルオロエテン スルホン酸メチルエステル(CH2=CF(SO3CH3))を照射された架橋PTFEフィルムの入ったガラス容器中にフィルムが浸されるまで導入した。容器を密閉し、攪拌しながら60℃にして24時間反応させた。反応後、トルエン、ついでアセトンで洗浄し、乾燥した。式(1)によって求めたグラフト率は74%であった。
【0045】
このグラフト架橋PTFEフィルム(膜)を10重量%、KOHのジメチルスルホオキシド/水(1:2)溶液、80℃で24時間反応させた。本実施例で得られた膜のグラフト率、イオン交換容量(式(2))、含水率(式(3))、及び、電気伝導度(式(4))を下記の表1に示す。
【0046】
(実施例3)
実施例1と同様にγ線を90kGy照射して得た架橋PTFEフィルム(4cm2)をコック付きのガラス製セパラブル容器(内径3cmφx15cm高さ)に入れて脱気後アルゴンガスで置換した。この状態で再び、γ線(線量率10kGy/h)を60kGy室温で照射した。照射後、容器を真空脱気し、アルゴンガスのバブリングで空気を除いた1−フルオロエテン スルホン酸メチルエステル(CF2=CF(SO3CH3))を照射された架橋PTFEフィルムの入ったガラス容器中にフィルムが浸されるまで導入した。容器を密閉し、攪拌しながら60℃にして24時間反応させた。反応後、トルエン、ついでアセトンで洗浄し、乾燥した。式(1)によって求めたグラフト率は52%であった。
【0047】
このグラフト架橋PTFEフィルム(膜)を10重量%、KOHのジメチルスルホオキシド/水(1:2)溶液、80℃で24時間反応させた。本実施例で得られた膜のグラフト率、イオン交換容量(式(2))、含水率(式(3))、及び、電気伝導度(式(4))を下記の表1に示す。
【0048】
(実施例4)
実施例1と同様にγ線を90kGy照射して得た架橋PTFEフィルム(4cm2)をコック付きの耐圧ガラス製セパラブル容器(内径3cmφx15cm高さ)に入れて脱気後アルゴンガスで置換した。この状態で再び、γ線(線量率10kGy/h)を60kGy室温で照射した。照射後、容器を真空脱気し、アルゴンガスのバブリングで空気を除いたCF2=CF(SO3CH3)を照射された架橋PTFEフィルムの入ったガラス容器中にフィルムが浸されるまで導入した。さらに、2気圧程度に調整したイソブテン(CH2=C(CH3)2)ガスを反応容器に接続した。容器を密閉し、溶液を攪拌しながら、60℃にして48時間反応させた。反応後、トルエン、ついでアセトンで洗浄し、乾燥した。式(1)によって求めたグラフト率は63%であった。
【0049】
このグラフト架橋PTFEフィルム(膜)を10重量%、KOHのジメチルスルホオキシド/水(1:2)溶液、80℃で24時間反応させた。本実施例で得られた膜のグラフト率、イオン交換容量(式(2))、含水率(式(3))、及び、電気伝導度(式(4))を下記の表1に示す。
【0050】
(実施例5)
室温、空気中で電子線を100kGy照射して架橋した厚さ50μmのETFEフィルム(4cm2)を、コック付きの耐圧ガラス製セパラブル容器(内径3cmφx15cm高さ)に入れて脱気後アルゴンガスで置換した。この状態でETFEに、再び、γ線(線量率10kGy/h)を60kGy室温で照射した。バブリングによって酸素を除きアルゴンガス置換した。引き続き、1−フルオロエテン スルホニル フルオライド(CH2=CF(SO2F))をアルゴンガスのバブリングによって空気を除いた後、照射された架橋ETFEフィルムの入ったガラス容器中にフィルムが浸されるまで導入した。容器を密閉し、攪拌しながら50℃にして24時間反応させた。反応後、トルエン、ついでアセトンで洗浄し、乾燥した。式(1)によって求めたグラフト率は53%であった。
【0051】
このグラフト架橋PTFEフィルム(膜)を20重量%、KOHのジメチルスルホオキシド/水(1:2)溶液、80℃で24時間反応させた。反応後、膜を取り出し、水洗し、2Nの硫酸溶液中、60℃で4時間処理した。本実施例で得られた膜のグラフト率、イオン交換容量(式(2))、含水率(式(3))、及び、電気伝導度(式(4))を下記の表1に示す。
【0052】
(実施例6)
膜のアルコールによる膨潤度を測定した。実施例1およびナフィオン117を3Nの硫酸溶液に浸漬し、スルホン酸基をH型とした。そして、室温水に浸漬し、湿潤状態で寸法を測定した。次に膜をメタノール、イソプロパノール(IPA)の各アルコール溶液に浸けて60℃、3時間保持し、その後、室温まで一夜放冷した後、膜の寸法変化を測定した。その結果を図1に示す。本実施例で得られた膜は、ナフィオン膜に比べメタノールなどによる膜の膨潤がほとんど認められないので、直接メタノール型燃料電池の膜材料としてきわめて有効である。図1及び表1より本発明の有効性が実証された。
【0053】
(比較例1,2)
下記の表1に示したナフィオン 115、ナフィオン 117(デュポン社製)について測定されたイオン交換容量、含水率、および、電気伝導度の結果を表1の比較例1、2に示す。
【0054】
(比較例3)
実施例1で得た架橋PTFEフィルム(厚さ50μm)をコック付きのガラス製セパラブル容器(内径3cmφx15cmH)に入れて脱気後アルゴンガスで置換した。この状態で架橋PTFEフィルムに、再び、γ線(線量率10kGy/h)を45kGy室温で照射した。アルゴンガスのバブリングによって酸素を除きアルゴンガス置換したスチレンモノマーを架橋PTFEフィルムの入ったガラス容器に、膜が浸漬されるまで導入した。容器内を攪拌し、60℃で6時間反応させた。その後、グラフト共重合膜をトルエン、続いてアセトンで洗浄し、乾燥した。グラフト率は93%であった。このグラフト重合膜を0.5Mクロルスルホン酸(1,2−ジクロロエタン溶媒)に浸漬し60℃、24時間スルホン化反応を行った。その後、この膜を水洗いしてスルホン酸基とした。
【0055】
【表1】
【0056】
【発明の効果】
本発明の含フッ素樹脂イオン交換膜は広い範囲のイオン交換容量と優れた耐メタノール特性、及び高い耐酸化性を有する高分子イオン交換膜を提供するものである。
【0057】
本発明のイオン交換膜は、特に燃料電池膜に適している。また、安価で耐久性のある電解膜やイオン交換膜として有用である。
【図面の簡単な説明】
【図1】アルコールと水の混合溶媒による膜の膨潤性を示す図である。
Claims (10)
- 架橋構造を有するポリテトラフルオロエチレンフィルム基材に、次式:
CH2=CF(SO2X)(Xはハロゲン基で−F又は−Cl)のモノマーを電離放射線照射によってグラフト重合させ、得られたフィルムのグラフト鎖中のハロゲン基[−X]をスルホン酸塩[−SO3M](Mはアルカリ金属でNa、K)とし、引き続きスルホン酸塩基をスルホン酸基[−SO3H]とした含フッ素系高分子イオン交換膜の製造方法。 - 架橋構造を有するポリテトラフルオロエチレンフィルム基材に、次式:
CH2=CF(SO3R1)(R1はアルキル基で−CH3,−C2H5又は−C3H7)のモノマーを電離放射線照射によってグラフト重合させ、得られたフィルムのグラフト鎖中のエステル基を酸性又はアルカリ性液中で加水分解してスルホン酸基[−SO3H]とした含フッ素系高分子イオン交換膜の製造方法。 - 架橋構造を有するポリテトラフルオロエチレンフィルム基材に、次式:
CF2=CF(SO3R1)(R1はアルキル基で−CH3,−C2H5又は−C3H7)のモノマーを電離放射線照射によってグラフト重合させ、得られたフィルムのグラフト鎖中のエステル基を酸性又はアルカリ性液中で加水分解してスルホン酸基[−SO3H]とした含フッ素系高分子イオン交換膜の製造方法。 - 架橋構造を有するポリテトラフルオロエチレンフィルム基材に、請求項1乃至請求項3のいずれかのモノマーから選らばれた2種類以上のモノマーを電離放射線照射によってグラフト重合させ、得られたフィルムのグラフト鎖中のハロゲン基[−X]をスルホン酸塩[−SO3M](Mはアルカリ金属でNa、K)とし、引き続き、スルホン酸塩基をスルホン酸基[−SO3H]とするか、また、得られたフィルムのグラフト鎖中のエステル基を酸性又はアルカリ性液中で加水分解してスルホン酸基[−SO3H]とした含フッ素系高分子イオン交換膜の製造方法。
- 架橋構造を有するポリテトラフルオロエチレンフィルム基材に、次式:
CH2=CF(SO2X)(Xはハロゲン基で−F又は−Cl)のモノマーと、(A)モノマー群:
a.炭素数4以下で、重合性二重結合を有する炭化水素系モノマー;
b.CH2=CR2(COOR3)若しくはCF2=CR2(COOR3)の化合物で 、R2は −CH3,−Fであり、R3は−H,−CH3,−C2H5,−C3 H7であるアクリル系モノマー;又は
c.炭素数4以下で、共重合性二重結合を有するフッ化炭素系モノマー
から選ばれた1種類以上のモノマーを電離放射線照射によって共グラフト重合させ、該共グラフト鎖中のハロゲン基[−X]をスルホン酸塩[−SO3M] (Mはアルカリ金属でNa、K)とし、引き続き、得られた共グラフト鎖中のスルホン酸塩基をスルホン酸基[−SO3H]とした含フッ素系高分子イオン交換膜の製造方法。 - 架橋構造を有するポリテトラフルオロエチレンフィルム基材に、次式:
CH2=CF(SO3R1)(R1はアルキル基で−CH3,−C2H5又は−C3H7)のモノマーから選ばれた1種類以上のモノマーと、(A)モノマー群:
a.炭素数4以下で、重合性二重結合を有する炭化水素系モノマー;
b.CH2=CR2(COOR3)若しくはCF2=CR2(COOR3)の化合物で、R2は−CH3,−Fであり、R3は−H,−CH3,−C2H5,−C3 H7であるアクリル系モノマー;又は
c.炭素数4以下で、共重合性二重結合を有するフッ化炭素系モノマー
から選ばれた1種類以上のモノマーを放射線照射によって共グラフト重合させ、該共グラフト鎖中のエステル基を酸性又はアルカリ性液中で加水分解してスルホン酸基[−SO3H]とした含フッ素系高分子イオン交換膜の製造方法。 - 架橋構造を有するポリテトラフルオロエチレンフィルム基材に、次式:
CF2=CF(SO3R1)(R1はアルキル基で−CH3,−C2H5又は−C3H7)のモノマーから選ばれた1種類以上のモノマーと、(A)モノマー群:
a.炭素数4以下で、重合性二重結合を有する炭化水素系モノマー;
b.CH2=CR2(COOR3)若しくはCF2=CR2(COOR3)の化合物で、R2は−CH3,−Fであり、R3は−H,−CH3,−C2H5,−C3 H7であるアクリル系モノマー;又は
c.炭素数4以下で、共重合性二重結合を有するフッ化炭素系モノマー
から選ばれた1種類以上のモノマーを放射線照射によって共グラフト重合させ、該共グラフト鎖中のエステル基を酸性又はアルカリ性液中で加水分解してスルホン酸基[−SO3H]とした含フッ素系高分子イオン交換膜の製造方法。 - 架橋構造を有するポリテトラフルオロエチレンフィルム基材に、請求項1乃至請求項3のいずれかのモノマーから選らばれた2種類以上のモノマーと、(A)モノマー群:
a.炭素数4以下で、重合性二重結合を有する炭化水素系モノマー;
b.CH2=CR2(COOR3)若しくはCF2=CR2(COOR3)の化合物で、R2は−CH3,−Fであり、R3は−H,−CH3,−C2H5,−C3 H7であるアクリル系モノマー;又は
c.炭素数4以下で、共重合性二重結合を有するフッ化炭素系モノマー
から選ばれた1種類以上のモノマーを電離放射線照射によって共グラフト重合させ、該共グラフト鎖中のハロゲン基[−X]をスルホン酸塩[−SO3M] (Mはアルカリ金属でNa、K)とし、引き続き、得られた共グラフト鎖中のスルホン酸塩基をスルホン酸基[−SO3H]とするか、又は、該共グラフト鎖中のエステル基を酸性又はアルカリ性液中で加水分解してスルホン酸基[−SO3H]とした含フッ素系高分子イオン交換膜の製造方法。 - 架橋構造を有するポリテトラフルオロエチレンフィルム基材が、架橋構造を有するテトラフルオロエチレン−六フッ化プロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、ポリフッ化ビニリデン、又はエチレン−テトラフルオロエチレン共重合体フィルム基材から選ばれた1つのフィルム基材である、請求項1乃至請求項8のいずれかに記載の含フッ素系高分子イオン交換膜の製造方法。
- グラフト率が10〜150%、イオン交換容量が0.3〜3.0meq/gであることを特徴とする、請求項1乃至請求項9のいずれかに記載の含フッ素系高分子イオン交換膜の製造方法。
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