JP2006007444A - 積層体及びその製造方法、並びに装身具 - Google Patents

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Abstract

【課題】 基材表面の変色を抑制して優れた装飾機能を有するとともに、遠赤外線に基づく健康増進や治療・治癒効果を奏し得る積層体を提供すること。
【解決手段】 積層体10は、銀合金からなる基材2と、該基材2上に形成された1又は2以上の層とを備える。銀合金は、銀と、パラジウム及びイットリウムからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素とを含有する。上記層の最外層4にゲルマニウム微粒子及びゲルマニウム合金微粒子からなる群より選ばれる少なくとも1種のゲルマニウム含有微粒子14が分散されたシリカ薄膜12からなる層を備える。
【選択図】 図1

Description

本発明は、積層体及びその製造方法、並びに装身具に関する。
装飾機能と健康増進あるいは治療・治癒機能を兼ね備えた装身具が知られている。この装身具は、ゲルマニウム−インジウム合金と銀との合金からなり、ゲルマニウム−インジウム合金がp型の半導体の性質を示すことに基づいて遠赤外線を放射し上記効果を奏するとされている(例えば、特許文献1参照。)。
特許3025245号公報
しかしながら、銀製の基材からなる装身具を長時間にわたって身体に接触させて装用した場合、基材表面が水分や塩分等を含む汗に晒されるため、かかる基材の表面は腐食や変色(黒色化)を生じやすく装飾機能が低下する。特に、硫黄等の元素を含む薬剤を投薬中の人が銀製の基材からなる装身具を装用すると、基材表面の変色が顕著になる。
このような変色を防止するために、装身具の基材表面に被覆層を形成して基材表面の変色を防止する方法も考えられるが、かかる装身具を長期間にわたって使用すると被覆層の剥離や亀裂等を生ずる場合があり、これが原因で基材表面が変色し装飾機能が損なわれることがある。
本発明の目的は、基材表面の変色を抑制して優れた装飾機能を有するとともに、遠赤外線に基づく健康増進や治療・治癒効果を奏し得る積層体及びその製造方法を提供することにある。本発明の目的はまた、かかる積層体を備える装身具を提供することにある。
本発明者は、特定の金属を含む銀合金からなる基材と、ゲルマニウム含有微粒子が分散されたシリカ薄膜からなる最外層とを備える積層体とすることにより、上記目的が達成されることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の積層体は、銀合金からなる基材と、該基材上に形成された1又は2以上の層とを備える積層体であって、上記銀合金は、銀と、パラジウム及びイットリウムからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素とを含有する銀合金であり、上記層の最外層にゲルマニウム微粒子及びゲルマニウム合金微粒子からなる群より選ばれる少なくとも1種のゲルマニウム含有微粒子が分散されたシリカ薄膜からなる層を備えることを特徴とする。
本発明の積層体によれば、基材表面の変色を抑制することができる。その結果、本発明の積層体は、銀が有する輝きと光沢に基づいて優れた装飾機能を発現することが可能になる。このような効果が得られる要因は必ずしも明らかではないが、本発明者は以下の通り推察する。すなわち、本発明の積層体の基材は、銀と、パラジウム及び/又はイットリウム(以下、「パラジウム等」という場合がある)とを含有する銀合金により構成されている。パラジウム等は基材の表面に析出しやすい性質を有しており、パラジウム等が基材表面に析出して大気と接触すると、パラジウム等は酸化される。そして、このようなパラジウム等の酸化がシリカ薄膜を形成する際に起こると、パラジウム等とシリカとが化学結合(例えば、共有結合)を形成する。このようにして、基材とシリカ薄膜とが化学的に強固に結合するために、シリカ薄膜の剥離等が防止されて基材表面の変色を抑制することができると、本発明者らは推察している。
また、本発明の積層体の最外層には、ゲルマニウム含有微粒子が分散されたシリカ薄膜が形成されているため、ゲルマニウム含有微粒子から遠赤外線が放射され健康増進や治療・治癒効果(例えば、皮膚温度の上昇、肩凝りの防止)を奏することができる。さらにまた、シリカ薄膜は、高い透明性を有しているため積層体の外観を損ねることがない。またさらに、シリカ薄膜は高い硬度と密着性を有するため、積層体は優れた耐磨耗性等を有することができる。さらに、シリカ薄膜は熱膨張係数が比較的小さいために、上述した銀合金がパラジウムを含有すると硬度の高い積層体を得ることができる。
ここで、ゲルマニウム含有微粒子が遠赤外線を放射して上記効果を発現し得る要因は必ずしも明らかではないが、本発明者らは以下のように推察している。ゲルマニウムは、バンドギャップエネルギーが0.67eVの間接遷移型の半導体である。半導体ゲルマニウムのホール(正孔)には、重いホール(H)と軽いホール(L)の二種類がある。p型のゲルマニウム微結晶においては、室温においてこれらの2つのバンドがエネルギー的にも波数的にも非常に接近している。そして、フェルミレベルは価電子帯付近にあり、ホールは室温において25meV(kT、k=1.38×10−34、T=300K)のエネルギーを有している。このため、重いホール(H)は、室温において波長100ミクロン帯の遠赤外線に相当する2.5meVの準位に容易に励起される。したがって、重いホール(H)はそのバンドから軽いホール(L)バンドに熱的に容易に励起され、重いホール(H)は遠赤外線を放出して元の重いホール(H)バンドに戻る。このようにして、p型のゲルマニウム微結晶が室温において波長100ミクロン帯の遠赤外線を放射することにより、人体に対して熱作用がもたらされ上記効果が奏されると考えられる。
また、ゲルマニウム合金微粒子としては、III族元素の不純物を含むゲルマニウム合金やゲルマニウム−シリコン合金の微粒子が好適に使用される。III族元素の不純物を含むゲルマニウム合金の微粒子が上記効果を奏し得るのは、III族元素がアクセプターとして機能するためゲルマニウム合金がp型の半導体になることに起因するものと考えられる。
また、ゲルマニウム−シリコン合金の微粒子が上記効果を奏し得る要因について、本発明者らは以下のように推察している。ゲルマニウムとシリコンとは同族元素であり、結晶構造が同一で互いに類似した性質を有する。ゲルマニウム−シリコン合金を形成するためにゲルマニウムとシリコンとを加熱溶融させると、固溶したシリコン原子がゲルマニウムの結晶構造を変えることなく格子点を占有する。これにより、置換型の連続固溶体を形成し得る。そして、かかるゲルマニウム−シリコン合金を微粉末化して微粒子にすると、かかる微粒子中にp型のゲルマニウム微結晶が含まれる。したがって、かかるゲルマニウム−シリコン合金も遠赤外線の放射が可能となり健康増進あるいは治療・治癒効果が発現できると考えられる。
また、上述した銀合金は、ゲルマニウムを更に含有していてもよい。このようにゲルマニウムを更に含有すると、耐硫化性等の耐蝕性に優れるようになるために基材表面の変色を一層抑制することができる。
また、上述した元素の含有量は、銀の全質量を基準として0.01〜3質量%であることが好ましい。このようにすることにより、銀合金の色調や光沢を向上させて装飾機能を増強することができる。
また、上述したゲルマニウムの含有量は、銀の全質量を基準として0.01〜4質量%であると有用である。
ゲルマニウムの含有量を上記範囲内とすることにより、基材の変色の抑制効果が高められ、優れた装飾機能を発現することができる。特に、ゲルマニウムの含有量が1質量%以上であれば、プラチナに似た充分な輝きと光沢が得られる。ゲルマニウムが0.01未満では、基材の変色の抑制が不充分となる場合があり、一方、4質量%を超えるとゲルマニウムの分散性が不充分となる場合がある。
また、上述したゲルマニウム含有微粒子は、加圧下でゲルマニウム及び/又はゲルマニウム合金を微粉末化したものであることが好ましい。
かかる微粉子は微小な粒子であるために、積層体の外観(色調や光沢)を損なうことがない。また、かかる微粒子は、遠赤外線を容易に放射して健康増進効果や治療・治癒効果を発現可能である。かかる微粒子が遠赤外線を放射するメカニズムは必ずしも明らかではないが、本発明者らは以下のように推察している。上述したゲルマニウム−シリコン合金やゲルマニウムを、例えば1,000Kgf/cm(9.8×10Pa)以上の加圧下で粉砕すると結晶の対称性が崩れ、微粉末化されたゲルマニウム−シリコン合金及びゲルマニウムのエネルギーギャップは、本来有するエネルギーギャップよりも小さくなる。このため、かかる微粒子に室温(300K)程度の熱が与えられると、エネルギーギャップが小さいことに起因して、ゲルマニウム−シリコン合金及びゲルマニウムは励起されやすくなる。その結果、ゲルマニウム−シリコン合金及びゲルマニウムの微粒子は遠赤外線を放出して人体に対して熱作用をもたらし、健康増進あるいは治療・治癒機能を発現することができると考えられる。
また、本発明の積層体は、基材と最外層との間に配置されたロジウム金属層を更に備えていてもよい。
かかる積層体においては、ロジウム金属層を備えるために、基材の変色をより一層抑制することができる。このように基材の変色が抑制されるのは、銀とロジウムとの間で熱膨張係数や格子密度の差が比較的小さいことに起因すると考えられる。また、ロジウム金属層は、銀色の美しい光沢を有している。したがって、ロジウム金属層を備える積層体は、高い装飾機能を有することが可能である。さらに、ロジウム金属層は高い硬度を有するため、シリカ薄膜の硬度の向上に寄与する。
また、本発明は、(1)ゲルマニウム微粒子及びゲルマニウム合金微粒子からなる群より選ばれる少なくとも1種のゲルマニウム含有微粒子を含有するシリカ前駆体を、銀と、パラジウム及びイットリウムからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素とを含有する銀合金からなる基材上に塗布する工程と、上記基材上に塗布された前記シリカ前駆体をシリカに変化させて、前記基材上にシリカ薄膜からなる最外層を形成する薄膜形成工程と、を備えることを特徴とする積層体の製造方法、並びに(2)銀と、パラジウム及びイットリウムからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素とを含有する銀合金からなる基材上にロジウム金属層を形成する工程と、ゲルマニウム微粒子及びゲルマニウム合金微粒子からなる群より選ばれる少なくとも1種のゲルマニウム含有微粒子を含有するシリカ前駆体を前記ロジウム金属層上に塗布する工程と、上記ロジウム金属層上に塗布された上記シリカ前駆体をシリカに変化させて、上記ロジウム金属層上にシリカ薄膜からなる最外層を形成する薄膜形成工程と、を備えることを特徴とする積層体の製造方法を提供する。また、上記銀合金は、ゲルマニウムを更に含有していてもよい。
かかる製造方法においては、基材として特定の合金を使用するために、変色が抑制された積層体を容易に製造することができる。また、ゲルマニウム含有微粒子が分散されたシリカ薄膜を最外層に形成する薄膜形成工程を備えるために、遠赤外線に基づく健康増進あるいは治療・治癒機能を発現可能な積層体を容易に製造することができる。
また、上記ゲルマニウム含有微粒子は、加圧下でゲルマニウム及び/又はゲルマニウム合金を微粉末化したものであることが好ましく、シリカ前駆体は、ポリシラザンであると有用である。シリカ前駆体としてポリシラザンを使用すると、アモルファスガラスのシリカ薄膜の形成が容易になる。
さらに、上記薄膜形成工程において、ポリシラザンを加熱することなくシリカに変化させ、ゲルマニウム−シリカ複合体薄膜を形成させてもよい。このように室温でシリカ薄膜を形成することで、基材の光沢の消失や変色等を防止することができる。
本発明は、上述した製造方法により得ることのできる積層体を提供する。かかる積層体は、上記製造方法により得られるものであるために、基材の変色を抑制して優れた装飾機能を発現できるとともに、遠赤外線に基づく健康増進や治療・治癒効果を奏することが可能になる。
本発明は、上述した本発明の積層体を備えることを特徴とする装身具を提供する。本発明の装身具は、基材表面の変色が抑制でき、しかも遠赤外線の放射が可能であることから、装飾機能と健康増進あるいは治療・治癒機能を兼ね備えることができる。ここで、装身具としては、指輪、ネックレス、ペンダント、ブレスレット、アンクレット、イヤリング、ブローチ等の宝飾品が例示できる。
本発明によれば、基材表面の変色を抑制して優れた装飾機能を有するとともに、遠赤外線に基づく健康増進や治療・治癒効果を奏し得る積層体及びその製造方法を提供することができる。また、かかる積層体を備える装身具を提供することが可能になる。
以下、本発明に係る積層体の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、図示の便宜上、図面の寸法比率は説明のものと必ずしも一致しない。
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る積層体を示す断面図である。本実施形態に係る積層体10は、基材2と、最外層4とから構成されている。最外層4は、基材2の表面上に形成されている。最外層4はシリカ薄膜12からなり、このシリカ薄膜12中にゲルマニウム含有微粒子14が分散されている。
この積層体10の基材2は、貴金属の一種である銀を主成分とし、パラジウム及び/又はイットリウムを含有する銀合金からなる。これにより、基材2の変色が抑制可能になり装飾機能を向上させることができる。また、銀合金がパラジウムを含有することにより、基材2の硬度を高めることができる。このような観点から、パラジウム及び/又はイットリウムの合計含有量は、銀の全質量基準で0.01〜3質量%であることが好ましく、より好ましくは0.1〜1.0質量%である。
また、この銀合金は、更にゲルマニウムを含有することができる。このように銀合金がゲルマニウムを更に含有するにより、耐硫化性等の耐蝕性に優れるようになる。基材2の変色を充分に抑制するためには、ゲルマニウムの含有量が、銀の全質量基準で0.01〜4質量%であることが好ましく、より好ましくは0.1〜1.0質量%である。
ゲルマニウム含有微粒子14としては、ゲルマニウム及び/又はゲルマニウム合金を1,000Kgf/cm(9.8×10Pa)以上の加圧下で粉砕して得られたものが好適である。かかる加圧下において粉砕して得られたゲルマニウム及びゲルマニウム合金は結晶の対称性が崩れ、これらのエネルギーギャップは本来のエネルギーギャップよりも小さくなる。このため、ゲルマニウム含有微粒子14は、室温(300K)程度の熱により容易に励起されて遠赤外線を放射することができる。その結果、皮膚温度の上昇や肩凝りの軽減等の健康増進効果や治療・治癒効果が得られる。
ゲルマニウム合金としては、ゲルマニウム−インジウム合金、ゲルマニウム−ガリウム合金、ゲルマニウム−シリコン合金等が挙げられる。インジウムやガリウムはIII族元素であるため、ゲルマニウムに添加されるとアクセプターとして機能する。したがって、かかるゲルマニウム合金はp型の半導体となる。ゲルマニウムの遠赤外線効果は、n型又は真性の半導体のときに比べてp型のときに著しく発揮されるので、ゲルマニウム合金を使用することにより遠赤外線の放射が顕著になる。遠赤外線効果を充分に得るために、ゲルマニウム100質量部に対するインジウム又はガリウムの含有量は20質量部未満であることが好ましく、より好ましくは13質量部未満である。一方、インジウム又はガリウムの含有量の下限は0.1質量部であることが好ましく、より好ましくは1質量部である。
また、ゲルマニウム−シリコン合金を構成するゲルマニウムはシリコンと同族元素であり、結晶構造が同一で互いに類似した性質を有する。このため、ゲルマニウムとシリコンとを加熱溶融させてゲルマニウム−シリコン合金を形成させると、固溶したシリコン原子がゲルマニウムの結晶構造を変えることなく格子点を占有する。これにより、置換型の連続固溶体が形成されると考えられる。よって、ゲルマニウム−シリコン合金を高圧下で微粉末化することによりp型の半導体になる。したがって、ゲルマニウム−シリコン合金も遠赤外線の放射が可能になり健康増進効果や治療・治癒効果が発揮される。かかる固溶体形成の観点から、ゲルマニウム−シリコン合金に含まれるシリコンの含有量は、ゲルマニウム−シリコン合金の全質量基準として0.1〜50質量%であることが好ましく、より好ましくは1〜50質量%である。
シリカ薄膜12中のゲルマニウム含有微粒子14の含有量は、ゲルマニウムが微結晶を形成し得る量であることが好ましい。すなわち、ゲルマニウム含有微粒子14の含有量は、シリカ薄膜12の全質量を基準として、その下限が0.001質量%であることが好ましく、0.01質量%であることがより好ましく、0.1質量%であることが更に好ましく、1質量%であることが特に好ましい。一方、上限は70質量%であることが好ましく、50質量%であることがより好ましく、30質量%であることが更に好ましい。なお、積層体10を装身具、特に指輪やネックレス等の宝飾品として使用する場合には、1〜5質量%であることが好ましい。
また、ゲルマニウム含有微粒子14の平均粒径は、その下限が0.01μmであることが好ましく、0.1μmであることがより好ましい。一方上限は100μmであることが好ましく、50μmであることがより好ましく、30μmであることが更に好ましい。なお、ゲルマニウム含有微粒子14はシリカ薄膜12中で二次粒子を形成する場合があるが、上記平均粒径は一次粒子の平均粒径を意味する。また、ゲルマニウム含有微粒子14はシリカ薄膜12中で二次粒子を形成せずに、一次粒子として分散していることが好ましい。
シリカ薄膜12は、高い透明性を有しているため積層体の外観を損ねることがない。また、シリカ薄膜12は、高い硬度と密着性とを有することから耐磨耗性等に優れる。
また、シリカ薄膜12の膜厚は、充分な膜強度を得る観点から、ゲルマニウム含有微粒子14の平均粒径以上の膜厚を有していることが好ましい。好適な膜厚は、0.01〜100μmであることが好ましく、より好ましくは0.1〜50μm、更に好ましくは0.1〜30μmである。
本実施形態の積層体10は、基材2として上述した特定の組成からなる銀合金を使用することから基材2の変色を抑制することが可能になる。したがって、積層体10は優れた装飾機能を有することができる。また、最外層4を構成するシリカ薄膜12にはゲルマニウム含有微粒子14が分散されていることから、積層体10は遠赤外線に基づいて肩凝りの軽減等の健康増進あるいは治療・治癒効果を発揮することができる。
次に、本実施形態の積層体10の製造方法について説明する。本実施形態の積層体10は、ゲルマニウム含有微粒子14を含むシリカ前駆体を、基材2上に塗布する工程と、基材2上に塗布されたシリカ前駆体をシリカに変化させて、基材2上にシリカ薄膜12からなる最外層4を形成する薄膜形成工程と、を備える製造方法により製造することができる。
シリカ前駆体としては、テトラメトキシシランやテトラエトキシシラン等のアルコキシシラン、ポリシラザン等が挙げられる。ポリシラザンは、比較的低い温度でシリカを形成できることから好適に使用される。
ゲルマニウム含有微粒子14としては、ゲルマニウム又はゲルマニウム合金を1,000Kgf/cm(9.8×10Pa)以上の加圧下で粉砕して得られたものが好適に使用される。ゲルマニウム含有微粒子14の平均粒径は、上述の通りである。
最外層4を構成するシリカ薄膜12の形成は、例えば以下のようにして行うことができる。まず、ゲルマニウム含有微粒子14が添加されたシリカ前駆体を、スピンコート、ロールコート、スプレー塗布等の公知の塗布方法を用いて基材2上に塗布する。なお、ゲルマニウム含有微粒子14の含有量は、上述の通りである。次いで、必要により溶剤等の揮発成分を除去して、シリカ前駆体の反応条件に合わせた条件(例えば150℃以上、好ましくは150〜200℃の加熱下で2〜3時間)に塗布物を晒すことにより、ゲルマニウム含有微粒子14が分散されたシリカ薄膜12を形成することができる。この場合、シリカ薄膜12の膜厚が、ゲルマニウム含有微粒子14の平均粒径以上になるように上記シリカ前駆体を塗布することが好ましい。このようにして、かかるシリカ薄膜12が形成される際に、基材2に含まれるパラジウム及び/又はイットリウムとシリカとの間で化学結合を形成することが可能になる。
また、薄膜形成工程においてポリシラザンを使用すると、ポリシラザンを加熱することなくシリカに変化させることができる。この場合、低温硬化用の触媒を併用すると、ポリシラザンの加水分解縮合が促進されてシリカに速やかに変化できるため、シリカ薄膜12の形成が容易になる。
積層体10は、基材2の変色が抑制されているために優れた装飾機能を有することができる。したがって、積層体10は、装飾用途として好適である。また、装身具としては、指輪、ネックレス、ペンダント、ブレスレット、アンクレット、イヤリング、ブローチ等が例示できる。本実施形態の装身具は、銀合金を装身具の形状に成形する工程を上述の積層体10の製造方法に組み入れて製造することができる。例えば、銀合金をネックレス等の形状に成形した基材2を用いて、この基材2の全面又は一部に最外層4を形成して装身具を製造することができる。また、上述の製造方法により積層体10を作製した後、この積層体10を所望の形状に打ち抜いて装身具を製造してもよい。さらに、積層体10を基材に埋め込んで装身具としてもよい。
(第2実施形態)
図2は、第2実施形態に係る積層体を示す断面図である。本実施形態に係る積層体20は、図1に示した第1実施形態に係る積層体10において、基材2と最外層4との間に、ロジウム金属層6が更に配置された構造を有している。
すなわち、積層体20は、基材2と、ロジウム金属層6と、最外層4とから構成されている。なお、基材2及び最外層4の構成は、上述の第1実施形態において説明した通りである。
ロジウム金属層6は、基材2を構成する銀合金の主成分である銀と比べて熱膨張係数や格子密度の差が比較的小さいことから、基材2中で転位が起こり難い。このため、基材2においてクラックが生じ難いので、基材2の変色を抑制することができる。加えて、ロジウム金属層6は高い硬度を有するため、積層体20の硬度を高めることができる。
ロジウム金属層6の厚さは、10〜1000nmであることが好ましく、200〜1000nmであることがより好ましい。ロジウム金属層6の膜厚を上記範囲とすることにより、基材2を構成する銀合金に含まれる不純物の析出を充分に防止でき、基材表面の変色の抑制が可能になる。また、ロジウムは化学的に安定であるため、皮膚に接触したとしても金属アレルギーを生ずることがなく安全である。
本実施形態の積層体20は、基材2として特定の組成からなる銀合金を使用し、また、銀と熱膨張係数と格子定数の差が比較的小さいロジウム金属層6を基材2上に備えていることから、クラックの発生が抑制可能になり、その結果、基材2の変色を抑制することができる。さらに、ロジウム金属層6は、銀色の美しい光沢を有している。したがって、積層体10は優れた装飾機能を有することができる。また、最外層4を構成するシリカ薄膜12にはゲルマニウム含有微粒子14が分散されていることから、積層体10は、遠赤外線に基づいて肩凝りの軽減等の健康増進あるいは治療・治癒効果を発揮できる。
次に、本実施形態に係る積層体20の製造方法について説明する。本実施形態の積層体20は、基材2上にロジウム金属層6を形成する工程と、ゲルマニウム含有微粒子14を含むシリカ前駆体をロジウム金属層6上に塗布する工程と、ロジウム金属層6上に塗布されたシリカ前駆体をシリカに変化させて、ロジウム金属層6上にシリカ薄膜12からなる最外層4を形成する薄膜形成工程と、を備える製造方法により製造することができる。
ロジウム金属層6の形成は、例えばメッキにより行うことができる。密着性や外観に優れ、厚さの調節が容易であることから、電気メッキが好適に使用される。この場合において、ロジウム金属層6の厚さが10〜1000nmになるまで電気メッキを行う。ロジウムメッキは、銀色の美しい光沢を有するメッキであるため装飾機能を高めることができる。また、ロジウムメッキは硬度が高いため、シリカ薄膜の硬度の向上に好適である。なお、ロジウム金属層6上に最外層4を形成する薄膜形成工程は、上述した第1実施形態における薄膜形成工程と同様の方法により行うことができる。
本実施形態における積層体20も、装身具として好適に使用できる。装身具を製造するにあたり、ネックレス、ブレスレット、イヤリング等の形状に成形した基材2を用いて、この基材2の全面又は一部にロジウム金属層6及び最外層4を形成して装身具を作製してもよい。また、上記製造方法により積層体20を作製した後、この積層体20を所望の形状に打ち抜いて装身具としてもよい。さらに、積層体20を基材に埋め込んで装身具としてもよい。
以上、本発明をその実施形態に基づいて詳細に説明した。しかし、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。
例えば、上記第1実施形態の積層体10は、基材2の主面の一方に最外層4が形成された構成を有する。この代わりに、図3に示すように、基材2の主面の一方だけでなく他方にも最外層4が積層された積層体30としてもよい。また、図4に示すように、基材2の主面の一方だけでなく他方にもロジウム金属層6及び最外層4が順次積層された積層体40としてもよい。
本発明の第1実施形態に係わる積層体の断面図である。 本発明の第2実施形態に係わる積層体の断面図である。 本発明の他の実施形態に係わる積層体の断面図である。 本発明の他の実施形態に係わる積層体の断面図である。
符号の説明
2…基材、4…最外層、10…積層体、12…シリカ薄膜、14…ゲルマニウム含有微粒子。

Claims (14)

  1. 銀合金からなる基材と、該基材上に形成された1又は2以上の層とを備える積層体であって、
    前記銀合金は、銀と、パラジウム及びイットリウムからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素とを含有する銀合金であり、
    前記層の最外層にゲルマニウム微粒子及びゲルマニウム合金微粒子からなる群より選ばれる少なくとも1種のゲルマニウム含有微粒子が分散されたシリカ薄膜からなる層を備える、
    ことを特徴とする積層体。
  2. 前記銀合金がゲルマニウムを更に含有することを特徴とする請求項1記載の積層体。
  3. 前記元素の含有量が前記銀の全質量を基準として0.01〜3質量%であることを特徴とする請求項1又は2記載の積層体。
  4. 前記ゲルマニウムの含有量が前記銀の全質量を基準として0.01〜4質量%であることを特徴とする請求項2又は3記載の積層体。
  5. 前記ゲルマニウム含有微粒子が加圧下でゲルマニウム及び/又はゲルマニウム合金を微粉末化したものであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の積層体。
  6. 前記基材と前記最外層との間に配置されたロジウム金属層を更に備えることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の積層体。
  7. ゲルマニウム微粒子及びゲルマニウム合金微粒子からなる群より選ばれる少なくとも1種のゲルマニウム含有微粒子を含有するシリカ前駆体を、銀と、パラジウム及びイットリウムからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素とを含有する銀合金からなる基材上に塗布する工程と、
    前記基材上に塗布された前記シリカ前駆体をシリカに変化させて、前記基材上にシリカ薄膜からなる最外層を形成する薄膜形成工程と、
    を備えることを特徴とする積層体の製造方法。
  8. 銀と、パラジウム及びイットリウムからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素とを含有する銀合金からなる基材上にロジウム金属層を形成する工程と、
    ゲルマニウム微粒子及びゲルマニウム合金微粒子からなる群より選ばれる少なくとも1種のゲルマニウム含有微粒子を含有するシリカ前駆体を前記ロジウム金属層上に塗布する工程と、
    前記ロジウム金属層上に塗布された前記シリカ前駆体をシリカに変化させて、前記ロジウム金属層上にシリカ薄膜からなる最外層を形成する薄膜形成工程と、
    を備えることを特徴とする積層体の製造方法。
  9. 前記銀合金がゲルマニウムを更に含有することを特徴とする請求項7又は8記載の積層体の製造方法。
  10. 前記ゲルマニウム含有微粒子は、加圧下でゲルマニウム及び/又はゲルマニウム合金を微粉末化したものであることを特徴とする請求項7〜9のいずれか一項に記載の積層体の製造方法。
  11. 前記シリカ前駆体は、ポリシラザンであることを特徴とする請求項7〜10のいずれか一項に記載の積層体の製造方法。
  12. 前記薄膜形成工程において、前記ポリシラザンを加熱することなくシリカに変化させ、ゲルマニウム−シリカ複合体薄膜を形成させることを特徴とする請求項11記載の製造方法。
  13. 請求項7〜12のいずれか一項に記載の製造方法により得ることのできる積層体。
  14. 請求項1〜6、13のいずれか一項に記載の積層体を備えることを特徴とする装身具。
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