以下、本発明を実施するための形態を図面を参照しながら説明する。図1は本発明の実施形態に係る装身具1の概略平面図である。この装身具1は、複数の珠2、2、・・・を数珠繋ぎにして形成したリング形状のものである。すなわち、各々の珠2には紐(図示せず)を通す貫通孔(図示せず)が設けられ、全ての珠2、2、・・・の貫通孔を通った紐は、端が結ばれてリングを成している。
珠2は、高密度で整った結晶構造の炭素焼成体である(全体が一体化している)。この炭素焼成体は、以下のようにして製造することができる。すなわち、黒鉛、又は竹炭などの炭化物の炭素粉にフェノール系接着剤、ピッチ又はタールなどのバインダを5重量%程度加えて固め、所定の塊(例えば方形もの)に加圧成形する。そして、酸素が欠乏した状態で加熱し、2000〜3000℃程度で焼成する。この状態で、原料の炭素粉同士は結合し結晶化(黒鉛化)する。なお、フェノール成分、ピッチ又はタールは昇温途中の約1200℃程度で揮発している。その後、加熱を止め、珠2の形状に加工する。この炭素焼成体は、バインダが揮発しているので、ほぼ100%(99%以上)が炭素材となっている。
珠2は炭素材であるので、極めて軽量であり、人体を形成する有機物の構成物質と同じであるため人体への安全性が高い。その上、結晶構造の炭素焼成体は、結晶構造であるために、炭素材でありながら摩耗又は破損し難い。珠2は、隣接する珠2と接触し擦れ合う状態で使用され、また、落下等で不意に何かに衝突することもあるが、それらに対して十分な物理的強度を有している。また、珠2はほぼ100%が炭素材であるので、外部の熱や光などの形で吸収したエネルギにより多量の遠赤外線を放射し、装身具1を装着した者の皮下組織、血管などに作用して血流を改善し、もって健康増進に寄与する。また、炭素材は脳のα波を増加させる効果があることが本願発明者により確認されており、それによっても健康増進効果が期待できる。
下記表1には、ネックレスとして装身具1を装着し、首の温度とネックレスの温度をサーモグラフィで測定した実験結果を示している。ネックレスを装着後、首は徐々に温度が上昇し、一方、ネックレスは首の温度よりも1℃程度高い温度で上昇している。これは、首の部分の血流がネックレスにより改善されることで温度が上昇し、その上昇を受けてネックレスの温度が上昇したと考えられる。また、ネックレスの温度が上昇すると放射する遠赤外線の量も多くなるため、相乗効果が生じていると考えられる。
珠2の表面は、細かな摩耗や欠損を防止するために、水性アクリル等でコーティングするのが望ましい。珠2は黒色であり、そのままでも十分に装飾性を有するが、コーティングにより光沢の有無、着色などが可能である。また、DLC(ダイヤモンドライクカーボン)薄膜でコーティングする方式は、プラズマによる炭素イオンを注入して形成したDLC薄膜と炭素焼成体の密着性が良く、かつ、DLC薄膜が極めて硬質であるため、細かな摩耗や欠損を防止する点で非常に望ましい。
なお、珠2の形状は例えば球形、円板形、碁石形又は紡錘形であるが、限定はされない。珠2の大きさや装身具1に使用される数は、嗜好又は使用形態(ブレスレット、ネックレス、アンクレット、数珠、時計バンドなど)に応じて任意に決められる。例えば、珠2の大きさは6mm、10mmなどである。また、大きさの異なる珠2、2、・・・で装身具1を形成してもよい。
珠2の炭素焼成体は、ポーラス状とすることも可能である。ポーラス状の炭素焼成体は、炭化物自体ほどではないが、多くの空隙を有する(多孔質である)。具体的には、原料の炭素粉にバインダを加えて固めるときに、繊維状又は粒子の集合状にすることでポーラス状とすることができる。
ポーラス状の炭素焼成体は、汗自体や汗の臭い等を吸着(脱臭作用)することができ、装身具1の装着を快適なものとする。なお、ポーラス状の炭素焼成体は、ポーラス状でないものよりも若干物理的強度が低い。しかし、珠2として有すべき前述の物理的強度は十分に有している。
ポーラス状の炭素焼成体は、銀を含有する(例えば約1重量%)ことが望ましい。人間の汗の臭いは、主に、雑菌が汗を分解することにより生じることが知られている。銀は、その抗菌作用により雑菌を抑えて吸着した汗から臭いが生じるのを防止することができる。また、炭素焼成体の表面の銀が皮膚の雑菌に対して直接抗菌作用を及ぼす効果もある。なお、銀は、溶液に溶解又は分散させ、含浸させることにより炭素焼成体に含ませることができる。
また、ポーラス状の炭素焼成体は、フタロシアニンを含有する(例えば約1重量%)のが望ましい。フタロシアニンは、臭いの成分の酸化反応を触媒することで、消臭作用を発揮する。炭素焼成体は、フタロシアニンを含有することで、空隙に吸着した臭いの成分を別の物質に変えることができるので、脱臭作用の飽和を防ぎつつ、それに加えて消臭作用も奏することができる。このフタロシアニンは、常温でもよく反応し、サイクル反応を行うので寿命が長い。これにより、長い期間、脱臭機能を維持することができる。なお、フタロシアニンは、例えば金属フタロシアニンポリカルボン酸(具体的には、テトラカルボン酸コバルトフタロシアニン、テトラカルボン酸鉄フタロシアニン、オクタカルボン酸コバルトフタロシアニン、又はオクタカルボン酸鉄フタロシアニン等)などの化合物として存在する。また、フタロシアニンの化合物は、溶液に溶解又は分散させ、含浸させることにより炭素焼成体に含ませることができる。
なお、装身具1を形成する珠2、2、・・・のいくつかをポーラス状の炭素焼成体とし、残りをポーラス状でない炭素焼成体とすることも可能である。また、装身具1を形成する珠2、2、・・・全てが炭素焼成体であることが望ましいが、幾つかを他の素材(例えばプラチナ)とすることも可能である。
また、装身具1を形成する珠2、2、・・・のいくつか又は全てに突起を設けることができる。この突起は、結晶構造の炭素焼成体として一体に形成されているので破損し難い。図2、図3はその2つの例である珠2A、2Bを示すものであって、それぞれの(a)は拡大概略平面図、(b)は拡大概略側面図である。珠2A又は2Bは、突起による刺激を与えたい人体の部分に当接するように装身具1に組み込まれる。
珠2Aは球形のものであり、貫通孔3Aを有し、それを中心軸とした円周部分に複数の突起4A、4A、・・・を有している。珠2Aは、貫通孔3Aを通った紐の周りをどのように回転しても突起4A、4A、・・・のいずれかが人体の皮膚に接触し、皮下組織に刺激を与えて血流を更に改善することができる。また、人体の皮膚との接触面積が小さいので、夏場においては汗が溜まりにくく、装着による不快感の可能性を低減することができる。珠2Aは、紡錘形その他回転体の形状のものにも適宜変形して適用可能である。
珠2Bは平面視円形の円板形であり、側面を貫いた貫通孔3Bを有し、底面の一方に突起4Bを有している。珠2Bは、一方の突起4Bの有る底面を人体側にしておくと、突起4Bが人体の皮膚に接触し、皮下組織に刺激を与えて血流を更に改善することができる。また、人体の皮膚との接触面積が小さいので、夏場においては汗が溜まりにくく、装着による不快感の可能性を低減することができる。また、突起4Bによる刺激が欲しくないときは、他方の突起4Bの無い底面を人体側にすることができる。珠2Bは、碁石形その他略平板の形状のものにも適宜変形して適用可能である。
以上、本発明の実施形態に係る装身具について説明したが、本発明は、実施形態に記載したものに限られることなく、特許請求の範囲に記載した事項の範囲内でのさまざまな設計変更が可能である。例えば、図4に示すように、複数の珠を四角板の形状とし、炭素焼成体の珠2Cを中央に列設し、その列を挟んで他の素材(例えばステンレス)の珠2C’、2C’を両側に列設し、各々の貫通孔3Cにビス(図示せず)を通して複数の珠2C、2C、・・・及び珠2C’、2C’、・・・を結合することにより、装身具である時計バンドを構成することもできる。