JP2006001872A - α−グルコシダーゼ阻害剤及びそれを用いた食品 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】栗皮抽出物を含有することを特徴とするα−グルコシダーゼ阻害剤及びそれを含有する食品により達成する。
【選択図】なし
Description
上記食後過血糖とインスリン抵抗性、肥満とは、相関性が高く、体脂肪としての蓄積が大きい肥満は、美容上好ましくないばかりでなく、動脈硬化等の様々な疾病を引き起こす。最近、過食、運動不足、ストレス等による肥満が増加しているが、反面、特に女性は外見上からもスリムな引き締まった体を切望する傾向にある。また、皮下脂肪等の蓄積は、健康上も好ましくなく、皮下脂肪等の減少、もしくは蓄積の防止が重要な問題となっている。
まず、糖質の吸収抑制効果を有する桑葉を焙煎した桑葉茶に、緑茶などを混合して、桑葉茶の飲みにくさを改良したものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。また、生桑葉に含まれる1−デオキシノジリマイシン(α−グルコシダーゼ阻害活性)と、フラボノイドとの組み合わせによって血糖抑制効果を得ようとするお茶が知られている(例えば、特許文献2参照。)。また、α−アミラーゼ阻害作用のある柿葉、バナバ葉、トチュウ葉などからの抽出物を有効成分とする抗肥満剤が知られている。この方法によれば、たんぱく質の吸収阻害をすることなく、肥満の治療、予防ができる(例えば、特許文献3参照。)。更には、不発酵茶粉砕物に、グアバなどの粉砕物を組み合わせて、微量栄養素を補いつつ、肥満防止ができるということが知られている(例えば、特許文献4参照。)。また、生桑葉の抽出物とカワラケツメイ抽出物とを組み合わせて使用することにより、体重抑制の効果を得ることが知られている(例えば、特許文献5参照。)。
そこで、特許文献1のように、桑葉を焙煎することによって特有のにおいや苦味を軽減する方法も行われているが、桑葉を焙煎すると、血糖抑制効果が減少してしまうという欠点がある。
また、上記特許文献1、2、4及び5に用いられる桑葉やグアバ等は、有効量を添加するには高価であるという問題点を有する。
重合度の低いプロアントシアニジンと、ソウハクヒ(クワ科植物の根皮)の抽出物を含有する食品組成物もしくは医薬品組成物によって、糖尿病による合併症予防または治療し得ることが知られている(例えば、特許文献6参照。)。
しかしながら、上記特許文献6は、血糖値を直接的に下げるものではないため、血糖上昇抑制の十分な効果は期待できない。
しかしながら、リコペンは脂溶性のため、お茶等の水系飲料に含有すると分離することから、飲料であれば乳化系飲料に限定される。食事由来の血糖上昇を抑制するためには、食事と共に喫飲する形態が最も効果的であるが、乳化系飲料の場合、食事と共に摂取するには、喫飲自体ができなかったり、長続きしなかったり等の困難が伴う。
しかしながら、特許文献8の呈味改善製剤は、抗酸化剤としては用いることができるものの、血糖上昇抑制剤として用いるには、デンプン加水分解物が血糖上昇因子となり、不適当である。
また、α−グルコシダーゼ阻害剤は、食品に含有させてもよい。
また、食品の形態等を選ばないため、食事と共に摂取可能である。また、食品だけでなく、医薬品や一般工業品にも応用することが可能であり、汎用性に富んでいる。
また、栗皮は、栗菓子等の栗製品製造の際に大量廃棄されるものであり、安価で安定した原料供給が可能で、栗皮の有効利用技術として期待される。
本発明のα−グルコシダーゼ阻害剤は、栗皮抽出物を含有する。
栗皮の焼成条件は、例えば、剥き栗用生栗を熱風ロースト等により250〜400℃、5〜10分程度が挙げられるが、必ずしもこの条件に限定されるものではない。
ましくは、タンニンが抽出されていることが、α−グルコシダーゼ阻害活性の点で好適である。
加水分解型タンニンは、一般に分子内のポリフェノール部分としてgalloyl基、hexahydroxydiphenoyl基及びその酸化体等があり、これらが分子内の糖又は環状ポリアルコールとエステル結合した構造を持つ。
一方、縮合型タンニンは、カテキン等のフラバン類が互いに分子間でC4−C8位またはC4−C6位等でC−C結合により結ばれて、2量体以上の重合体を形成したものであり、モノマーのフラボノイド類とは分類上異なる。縮合型タンニンの中でも、C−C結合の開裂によりアントシアニジンを生成するものを、プロアントシアニジンと呼ぶ。
本発明に係る栗皮抽出物には、上述のように、好ましくはタンニンが抽出されていることが望ましいが、該タンニンの中でも、より好ましくは縮合型タンニン、更に好ましくはプロアントシアニジンが抽出されていることが、α−グルコシダーゼ阻害活性の点で好適である。
また、上記栗皮抽出物中に上記タンニンが抽出されている場合、その含有量は特に限定されるものではなく、適宜設定すればよいが、好ましくは栗皮抽出物中50重量%以上であることが、α−グルコシダーゼ阻害活性の点で好適である。なお、縮合型タンニン、プロアントシアニジンのそれぞれの含有量も、適宜設定すればよい。
好適には、凍結乾燥した粉体状もしくは顆粒状がα−グルコシダーゼ阻害活性の点で好ましいが、その他には、例えば、焼成した栗皮由来のタンニンを抽出した抽出物にデキストリン等をバインダーとして少量用い、粉体状もしくは顆粒状のα−グルコシダーゼ阻害剤としてもよい。
すなわち、まず、栗皮を準備する。このとき、栗皮を細かく粉砕すると、効率的に抽出物が抽出できる点で好適である。なお、焼成された栗皮を用いる場合は、焼成処理と粉砕処理とをどちらを先に行ってもよいが、焼成処理を施してから粉砕する方が効率性の点で好適である。また、栗皮を水で洗う、水に浸漬してろ別する等の処理を施して予め親水性画分を除去するようにしてもよい。
抽出媒体としては、水、親水性溶媒、多価アルコール等が挙げられ、単独で用いてもよく、もしくは複数組み合わせて混合物とした水溶液、分散液であってもよい。
上記親水性溶媒としては、例えば、エタノール、メタノール、イソプロパノール等が挙げられる。また、上記多価アルコールとしては、例えば、グリセリン、キシリトール、マルチトール、グルコース、キシロース、ガラクトース、マルトース、蔗糖、ポリグリセリン等が挙げられる。これらは単独または複数組合せて用いればよい。
この中でも、好ましくは親水性媒体、更に好ましくはエタノールを用いることが、α−グルコシダーゼ阻害活性に優れ、食品等の応用範囲の広いα−グルコシダーゼ阻害剤を得る点で好適である。
エタノールを用いる場合、好ましくは20〜80%濃度のエタノールを用いることが、α−グルコシダーゼ阻害活性により優れた抽出物が得られる点で更に好適である。
抽出方法は、還流操作、常温浸漬等が挙げられる。この中でも、好ましくは還流操作により抽出することが、α−グルコシダーゼ阻害活性に優れた抽出物が得られる点で好適である。
このとき、上記両者を接触させ抽出させる際の抽出媒体の温度を50℃以上に設定すると、α−グルコシダーゼ阻害活性に更に優れた抽出物が得られる点で好適である。
本発明の食品は、上述したα−グルコシダーゼ阻害剤を含有する。
なお、本発明の食品への上記α−グルコシダーゼ阻害剤の添加時期は、各食品の特性、目的に応じ、製造工程の段階で適宜選択して添加させればよい。
すなわち、まず、上述したようにα−グルコシダーゼ阻害剤を調製しておく。一方で、グラニュー糖、水飴等のキャンディ原料を煮詰め混合し、冷却しておく。そして、上記キ
ャンディ原料混合物に、上記α−グルコシダーゼ阻害剤及び必要に応じて副原料を添加混合し、更に冷却した後、適宜成形すれば、本発明のキャンディが得られる。
《α−グルコシダーゼ阻害剤の調製》
まず、下記の試料1〜6を調製した。
中国華北省産栗の栗を熱風ローストで300℃7分焼成した後栗皮を剥き、栗皮(鬼皮、渋皮)をコーヒーミルを用い粉砕した。粉砕した栗皮に水/エタノール混合液(50容量%エタノール液)を注ぎ、湯せんにて70℃4時間加熱した。その後、ろ過によりろ液と残渣に分けた。ろ液を濃縮後、凍結乾燥を施し、栗皮抽出物粉末(試料1)を得た。
なお、このようにして得られた試料1の総タンニン含有量は、試料1全体重量中47重量%であった。また、プロアントシアニジン含有量は、試料1全体重量中44重量%(バニリン塩酸法によって算出)であった。
上記総タンニン含有量は、バニリン塩酸法、Wilsonらの方法((1990)J.Agric.Food Chem38、1678−1683)、Inoueらの方法((1988)ANALYTICAL BIOCHEMISTRY 169、363−369)の合算により算出した。
試料1と同様の方法にて、まずろ液を濃縮した。カラムに合成吸着剤(三菱化学(株)製、HP−20)を充填し、濃縮したろ液を吸着させた。合成吸着剤を蒸留水で洗って親水性画分を洗い出した後、合成吸着剤から20容量%エタノールで疎水性成分含有物を溶離させた。溶離画分を濃縮後、凍結乾燥を施し、栗皮抽出物粉末(試料2)を得た。
なお、このようにして得られた試料2の総タンニン含有量は、試料2全体重量中58重量%(試料1と同様に測定)であった。また、プロアントシアニジン含有量は、試料1全体重量中55重量%(試料1と同様に測定)であった。
試料2の工程において20容量%エタノールで合成吸着剤から試料2を溶離させた後、40容量%エタノールで同様に溶離させた。溶離画分を濃縮後、凍結乾燥を施し、栗皮抽出物粉末(試料3)を得た。
なお、このようにして得られた試料3の総タンニン含有量は、試料3全体重量中66重量%(試料1と同様に測定)であった。また、プロアントシアニジン含有量は、試料3全体重量中63重量%(試料1と同様に測定)であった。
試料1と同様の方法にて得た栗皮の粉砕物を蒸留水に浸し、溶出する成分をろ別した。ろ別後の残渣に水/エタノール混合溶液(50容量%エタノール液)を注ぎ、湯せんにて加熱した。その後、ろ過によりろ別したろ液を、試料1と同様の方法にて、凍結乾燥を施して栗皮抽出物粉末(試料4)を得た。
なお、このようにして得られた試料4の総タンニン含有量は、試料4全体重量中54重量%(試料1と同様に測定)であった。また、プロアントシアニジン含有量は、試料4全体重量中51重量%(試料1と同様に測定)であった。
焼成した栗皮の替わりに生の栗皮(中国華北省産)を用いる他は、試料1と同様の方法にて、栗皮抽出物粉末(試料5)を得た。
焼成した栗皮(中国華北省産)の替わりに生の日本栗の栗皮を用いる他は、試料1と同様の方法にて、栗皮抽出物粉末(試料6)を得た。
上記で精製した試料1〜6について、下記の方法でα−グルコシダーゼ阻害率(マルターゼー阻害率、スクラーゼ阻害率)を測定した。
粗酵素としてラット腸管アセトン粉末を、基質としてスクロースを用い、各濃度の試料溶液が、スクロースの分解によるグルコースの生成をどの程度阻害するかを測定した。
即ちラット腸管アセトン粉末(シグマアルドリッチジャパン(株))に9倍量の56mMマレイン酸緩衝液(pH6.0)を加え、氷中にてガラスホモジナイザーで均質化した。その後遠心分離し、上清を粗酵素液とした。
2%スクロース溶液0.6mlに各濃度の上記試料溶液を0.6ml加え、37℃で5分間保温の後、上記粗酵素液の2倍希釈液を0.6ml加え、37℃で120分間反応させた。
煮沸水浴中で10分間加熱し、反応を停止させた後遠心分離し、上清を得た。上清中のグルコース量はグルコースC2(ツー)テストワコー(和光純薬工業(株))に
て定量した。
粗酵素としてラット腸管アセトン粉末を、基質としてマルトースを用い、各濃度の試料溶液が、マルトースの分解によるグルコースの生成をどの程度阻害するかを測定した。
2%マルトース溶液0.6mlに各濃度の上記試料溶液を0.6ml加え、37℃で5分間保温の後、スクラーゼ阻害率測定で調製した粗酵素液の20倍希釈液を0.6ml加え、37℃で120分間反応させた。
煮沸水浴中で10分間加熱し、反応を停止させた後遠心分離し、上清を得た。上清中のグルコース量はグルコースC2(ツー)テストワコー(和光純薬工業(株))に
て定量した。
また、表2及び図2の結果から、試料1〜6は、ほぼ同様の高いマルターゼ阻害率を示すことがわかる。特に、試料3及び試料4は、低濃度でも高い阻害率を示し、特に好適であることが分かる。
また、産地に関係なく、栗皮であれば高い効果が得られることが分かる。
また、試料1と試料5の比較から、α−グルコシダーゼ阻害率のみの視点でみると、試料5の生栗皮の方が優れているが、焼成した場合でも高い阻害活性が得られ、例えば中国甘栗のように、栗皮も含めて栗全体を焼成してから栗皮が廃棄される焼成栗皮の再資源活用に有効であることが分かる。
その結果を図3に示す。
《飲料の調製》
実施例2として、常法に従い、PET入り麦茶を製造した。これに、実施例1で得られた試料4の栗皮抽出物を0.05重量%添加した。この濃度は、市販のPET入りポリフェノール含有茶類のポリフェノール濃度と略同等の濃度である。
また、コントロールとして、栗皮抽出物を添加しないものを調製した。
Claims (6)
- 栗皮抽出物を含有することを特徴とするα−グルコシダーゼ阻害剤。
- 栗皮が焼成した栗皮である請求項1記載のα−グルコシダーゼ阻害剤。
- 栗皮抽出物が親水性溶媒により抽出された抽出物である請求項1又は2記載のα−グルコシダーゼ阻害剤。
- 栗皮抽出物がタンニンを含有する請求項1乃至3の何れか一項に記載のα−グルコシダーゼ阻害剤。
- 栗皮抽出物がプロアントシアニジンを含有する請求項1乃至4の何れか一項に記載のα−グルコシダーゼ阻害剤。
- 請求項1乃至5の何れか一項に記載のα−グルコシダーゼ阻害剤を含有する食品。
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