JP2005518817A - ヒストン・デアセチラーゼ・インヒビタ、ラムダファージベータ蛋白、またはヒドロキシウレアを含む組成物を使用してオリゴヌクレオチド媒介性核酸配列改変を高める方法、組成物およびキット - Google Patents

ヒストン・デアセチラーゼ・インヒビタ、ラムダファージベータ蛋白、またはヒドロキシウレアを含む組成物を使用してオリゴヌクレオチド媒介性核酸配列改変を高める方法、組成物およびキット Download PDF

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Abstract

オリゴヌクレオチド媒介性核酸配列を改変するための改良された方法、組成物およびキットが示される。オリゴヌクレオチド媒介性核酸配列改変効率を高める方法は、細胞性修復蛋白の存在のもとで、標的核酸を配列改変ターゲティングオリゴヌクレオチドと組み合わせ、前記組み合わせたものにラムダベータ蛋白を追加的に加えるか、または最初に前記細胞性修復蛋白を有する細胞をHDACインヒビターまたはヒドロキシウレアと接触させる工程を含む。標的核酸と配列改変オリゴヌクレオチド類とはex vivo(生体外)またはin vivo(生体内)で組合わせることができる。

Description

関連出願の相互参照
本出願は2002年3月7日出願の米国仮特許出願第60/363,341;2002年3月7日出願の米国仮特許出願第60/363,053号;2002年3月7日出願の米国仮特許出願第60/363,054号および2002年10月7日出願の米国仮特許出願第60/416,983号からの優先権を主張する。これらの開示は参考としてその全体を本明細書に援用する。
発明分野
本発明は遺伝情報のオリゴヌクレオチド関連性修復または改変、およびこのような改変の効率を高めるための方法、組成物およびキットに関する。
背景技術
DNAの標的配列改変に使用するための多数の異なるタイプのオリゴヌクレオチド(合理的に短いポリヌクレオチ類)が記載されている;例えば(i)二本鎖、二重ヘアピン コンフォメーションに折り畳まれた内部二重キメラRNA−DNAオリゴヌクレオチド類、(ii)修復ドメインに繋がるトリプレックス形成ドメインを含む二官能価オリゴヌクレオチド類、および(iii)内部非重複DNA修復ドメインを有し、ヘアピンもトリプレックス形成ドメインも欠ける化学的に修飾された一本鎖オリゴヌクレオチド類など。これら種々のオリゴヌクレオチドは、単一塩基対の標的化改変を起こし、並びに細菌、真菌、植物および動物などの種々の宿主生物からの細胞および非細胞抽出物においてフレームシフト変化をもたらすことが知られている。
増殖期、発育段階、細胞周期の位置などの要因の影響、および細胞または無細胞抽出物におけるオリゴヌクレオチド媒介性核酸配列改変に与える特定の細胞性蛋白の関与は十分には理解されていない。幾つかの細胞性経路および遺伝子群が、照射または化学突然変異(蛋白類のRAD52エピスタシス群、蛋白のミスマッチ修復群および蛋白のヌクレオチド切除修復群など)に起因するDNA損傷のin vivo修復の仲介に関係していることは公知であるとはいえ、そして相同組換えおよびゲノム一体性維持におけるこれら蛋白の役割は広く研究されているとはいえ(ヘイヤー(Heyer)、Experimentia 50巻(3号)、223−233ページ(1994);タッカー(Thacker)、トレンド・オブ・ゲネティックス(Trend of Genetics)15巻(5号)、166−168ページ(1999);ペイク(Paques)&ハーバー(Haber)、Microbiol.and Molec.Biol.Rev. 63巻(2号)、349−404ページ(1999);およびトンプソン(Thompson)&シルド(Schild)、Mutation Res. 477巻、131−153ページ(2001))、オリゴヌクレオチドdirected核酸配列改変におけるこれら蛋白および関連蛋白の特殊な機能は十分には理解されていない。
ヒストン デアセチラーゼ(HDAC)のインヒビター類は培養腫瘍細胞において、成長停止、分化および/またはアポトーシスを誘発する。マークス(Marks)ら、J.Natl.Canc.Inst. 92巻(15号)、1210−1216ページ(2000)。例えば、ストレプトマイセス属の抗生物質であるトリコスタチンA(TSA)による処理は部分精製HDACの酵素活性を阻止し、種々の細胞型においてアセチル化ヒストンの蓄積を起こし、非常に低濃度で、G1およびG2相の正常ラット線維芽細胞において、フレンド細胞分化の誘発および細胞周期の特異的阻害を起こし得る。ヨシダら、J.Biol.Chem. 165巻、17174−17179(1990)。
HDACインヒビターは遺伝子治療薬に影響を与えることも示唆されている。WO/00/23567は、幹細胞集団、特に造血幹細胞集団を有効量のHDACインヒビター、特にトリコスタチンA、トラポキシンまたはクラマイドシンにさらすことを含む、幹細胞自己再生(self−renewal)促進法を開示している。一実施形態において、レシピエントDNAの起源に相同であるかまたは非相同である少なくも一つの導入遺伝子(transgene)を、レトロウィルス媒介性トランスファーによって、HDACインヒビター処理細胞内に挿入する。また別の実施形態において、ポリヌクレオチドと、HDACインヒビター処理とを用いて幹細胞を遺伝的に変化させる。
WO00/51424は、遺伝子改変動物をつくるために、核ドナーとして使用する培養非胚性幹細胞における相同組換え法を開示している。この方法により、染色体の挿入遺伝子座のフランキング領域に1.8〜12kbの相同性を含む5’および3’領域を用いて、例えばマーカー遺伝子および導入遺伝子などの遺伝子を異なる遺伝子座に挿入した。ヒストンデアセチル化を阻止する作用物質、またはそれ以外に標的遺伝子座の転写を刺激する因子はこの相同組換え過程を高めることが示唆されている。
WO00/24917は、アデノ随伴ウィルス(AAV)に基づくベクターなどのパルボウィルスベクターを使用し、予備選択された部位における相同ペアリングにより、脊椎動物の細胞性DNAを修飾することを開示している。この方法のベクター類(その全ては少なくも2.7kb長である)は標的遺伝子座と実質的に同一のDNA配列、および少なくも1個のパルボウィルス逆末端反復(ITR)配列または同等物の全部または一部を含む。標的細胞を処理するために開示された作用物質のなかには、ヒストンデアセチラーゼインヒビター、例えば酪酸ナトリウムおよびトリコスタチンAなどがある。
しかしHDACインヒビターがオリゴヌクレオチド媒介性核酸配列改変の効率を高めることは示唆されていないし、開示されてもいない。
ラムダ溶菌サイクル中の大腸菌(E.Coli bacteria)におけるバクテリオファージラムダによる組換えは、2つの遺伝子を含むいわゆる“レッド(Red)”組換え経路によって仲介される。Redαはエキソヌクレアーゼ(exo)をコードする;このエキソヌクレアーゼは二本鎖DNAの破壊された末端部に結合してそれら鎖の一つを5’から3’方向に分解し、3’一本鎖オーバーハングを残す。Redβは一本鎖DNA結合蛋白(bet)をコードする;この蛋白(bet)は細菌性RecA蛋白と一緒になって、露出した3’末端に相補的な配列を含む部位で二重DNAを溶解し、一本鎖オーバーハングのストランド・インバージョンとアニーリングとを促進して相補的二本鎖にする。レッド組換えは、細菌性RecBCDエキソヌクレアーゼ(露出末端を有する二本鎖DNAを分解する酵素)を阻害する“Gam”と呼ばれるラムダ蛋白によって容易になる。
種々の参考文献の記載によると、大腸菌におけるノンλファージ由来の線状二本鎖DNAの相同組換えを仲介しまたは容易にするためにRed組換え系が使用される。マーフィー(K.C.Murphy)、“Escherichia coliにおける遺伝子置換を促進するためにバクテリオファージλ組換え機能の使用(Use of bacteriophage λ recombination function to puromote gene replacement in Escherichia coli)”J.Bacteriol.、180巻(8号):2063−2071ページ(1998年、4月);ユー(Yu)ら、“エシェリキア・コリにおける染色体工学のための効率的組換えシステム(An efficient recombination system for chromosome engineering in Escherichia coli)”Proc.Natl.Acad.Sci.USA 97巻(11号):5978−5983ページ(2000);エリス(Ellis)ら、“一本鎖オリゴヌクレオチドを用いる染色体DNAの高効率突然変異、修復およびエンジニアリング(High efficiency mutagenesis, repair,and engineering of chromosomal DNA using single−stranded oligonucleotides)”Proc.Natl.Acad.Sci.USA、98巻(12号):6742−6746ページ(2001)。
WO02/14495は抑制可能(depressible)プロモータの制御下で、β蛋白をコードするDNAを有する細胞中でDNA分子をクローン化し、真核生物遺伝子を改変する方法を開示している。誘発されたβ蛋白は細胞中の核酸類(この核酸類は染色体内核酸でも染色体外核酸でもよい)間の相同組換えを促進する。この特許公報は一本鎖DNA分子を使用し、相同組換えを受け得る細胞DNAおよびβ蛋白に挿入することによって相同組換えを誘発する方法も開示する。この出願はさらに、効率的相同組換えを促進する細菌性細胞を開示しており、その細菌は欠損λファージからの一つ以上の遺伝子を含む。しかしこの公報は、本発明を説明するために使用した実験の少なくも一つが機能しなかったと述べている。
まとめて言うと、参考文献および国際特許公報は、ラムダRed遺伝子産物および特にベータ蛋白を細菌に使用して、二本鎖および一本鎖オリゴヌクレオチドを用いる相同組換えによってDNAを効率的に改変し得ることを証明している。しかし、前記参考文献は、DNA相同組換え以外のメカニズムによって一本または二本鎖オリゴヌクレオチドを効率的に改変し得ることを証明も示唆もしていないし、ラムダファージ蛋白を用いて非細菌性細胞における核酸配列改変効率を何らかのメカニズムによって増加させ得ることは示唆していない。
ヒドロキシウレア(HU)はリボヌクレオチド還元酵素のM2サブユニットを阻害し、dNTPプールを欠失させ、DNA複製を阻害し(ゾウ(Zhou)ら、Cancer Res. 55巻:1328−1333ページ(1995))、この結果、細胞を細胞周期のG1/S境界で停止させることは知られている。HUがDNA複製を阻害する能力をもつことは、抗レトロウィルス剤として、および抗腫瘍剤としてのHUの使用に通ずる。ハンフト(Hanft)ら、Blood 95巻:3589−3593ページ(2000);アルビサー(Arbiser)ら、Endocrinology 128巻:972−978ページ(1991);タムラら、J.Investig.Med. 45巻:160−167ページ(1997);リスチーウィツ(Lisziewicz)、米国特許第6,130,089号。HUの、G1/Sチェックポイントにおける細胞停止能力を利用して、遺伝子操作前に細胞培養物を同期化する。ハドラツキー(Hadlaczky)ら、WO97/40183。HUは胎児ヘモグロビンの発現を刺激することが判明し、鎌状赤血球症の治療に使用されている。スタインベルグ(Steinberg)&ロジャース(Rodgers)、メディスン(Medicine)(バルチモア)80巻:328−344ページ(2001)。
HUは、造血幹細胞へのレトロウィルス媒介性遺伝子トランスファーの効率を高めるために使用される。レトロウィルス インテグレーションは、活発にサイクリングする細胞において非常に効率的である。このレトロウィルスの形質導入効率は、標的細胞の調製に使用する増殖培地にHUが存在と高まる。ウチダら、米国特許第5,928,638号などを参照されたい。HUの効果は、静止したG0相の細胞をより活発なG1/S/G2およびM相にスイッチし、活発にサイクリングする細胞に富む集団を与える能力によるものである。
HUはアデノ随伴ウィルス(AAV)ベクターと共に用いられることがある。アレクサンダー(Alexander)ら、米国特許第5,834,182号。レトロウィルスのように、AAVベクターは標的細胞の染色体に安定的に組み込まれることによって作用する。タル(Tal,J.)J.Biomed.Sci. 7巻:279−291ページ(2000)。レトロウィルス形質導入の適用時と同様に、AAV形質導入は、標的細胞をHUで予備処理した際により効率的であることが報告されている。
HUは、培養細胞を先ず最初に相同組換えによって標的化し、改変した核をその後トランスファーする、という遺伝子導入アプローチにおける核トランスファー効率を高めるために使用される。HUを使用してドナー核の分離前に細胞類を同期化し、核トランスファー操作の効率を高める。コルマン(Colman)ら、WO00/51424。
しかしHUがオリゴヌクレオチド媒介性核酸配列改変の効率を高めるために有用であることはこれまで示唆も開示もされていない。
当業者には、オリゴヌクレオチド媒介性核酸配列改変の効率、特に相同組換え以外によって起きる核酸配列改変の効率を高める方法、組成物およびキットが必要である。特に、当業者には真核細胞、例えば酵母および哺乳動物細胞、特にヒト細胞などにおけるオリゴヌクレオチド媒介性核酸配列改変効率を高めるために使用できる方法、組成物およびキットが必要である
発明の概要
本発明は第一の局面において、オリゴヌクレオチド媒介性標的核酸配列改変の改良法を提供することによって、当業者のこれらのおよびその他の要求を解決する。オリゴヌクレオチド媒介性核酸配列改変効率を高める方法は、細胞性修復蛋白の存在のもとで、標的核酸を配列改変ターゲティングオリゴヌクレオチドと組み合わせ、前記組み合わせたものにラムダベータ蛋白を追加的に加えるか、または最初に前記細胞性修復蛋白を有する細胞をHDACインヒビターまたはヒドロキシウレアと接触させる工程を含む。
標的核酸と配列改変オリゴヌクレオチド類とはex vivo(生体外)またはin vivo(生体内)で組合わせることができる。
幾つかのex vivo実施形態において、細胞性修復蛋白の一つ以上が精製蛋白であり、その際精製蛋白とは、非修復蛋白に対して、その蛋白が、それが由来する細胞中に天然に見いだされるよりも高濃度であることを意味する。このような精製された細胞修復蛋白類は別々に精製しても、まとめて精製してもよい。その他のex vivo実施形態においては、細胞性修復蛋白は無細胞蛋白抽出物中に存在する。
その他の実施形態において、細胞性修復蛋白は、ex vivoで培養された完全無傷細胞内か、または生体内の完全無傷細胞内に存在する。
細胞性修復蛋白は原核または真核細胞に由来する;例えば大腸菌細胞、Saccaromyces cerevisiaeのような酵母細胞、Ustilago maydis、またはCandida albicans、または動物細胞、例えばマウス、ハムスター、ラット、およびサル細胞そしてヒト細胞も含む哺乳動物細胞類など。ヒト細胞は非制限的に、例えば肝細胞、肺細胞、結腸細胞、子宮頸部細胞、腎細胞、上皮細胞、癌細胞、幹細胞、造血幹細胞、造血系前駆細胞、および胚性幹細胞からなる群から選択できる。
実施形態の一系列において、配列改変オリゴヌクレオチドは、化学的に修飾された、非ヘアピン状の、内部に重複のないオリゴヌクレオチドである。
オリゴヌクレオチドは例えば、そのオリゴヌクレオチド配列と標的核酸第一ストランド上のその相補体との間の一つ以上のミスマッチを除いて、核酸標的の第一ストランドの配列に完全に相補的な配列であり、少なくも一つの末端修飾を有する。特に有用な実施形態において、オリゴヌクレオチドは、少なくも8個の隣接デオキシリボヌクレオチドの内部非重複ドメインを有し、一つ以上のミスマッチは専らオリゴヌクレオチドDNAドメインおよびオリゴヌクレオチドの5’および3’末端から少なくも8ヌクレオチドに位置する。
末端修飾が少なくも一つの末端ロックド(locked)核酸(LNA)、少なくも一つの末端2’−O−Me塩基類似体、および少なくも1つ、2つ、3つまたはそれ以上の末端ホスホロチオエート結合からなる群から選択され、オリゴヌクレオチドは17−121ヌクレオチド長さであり、74ヌクレオチド以上の長さにもなることがあるのが都合がよい。
標的は二本鎖DNAであり、例えば染色体中のゲノムDNAなど、ゲノムDNAである。染色体は天然または合成染色体でよい。その他の実施形態において、DNA標的はエピソーム性である。
本発明の方法の幾つかの実施形態において、標的核酸は二本鎖ゲノムDNAの非転写型ストランドである。他方、標的核酸は転写ストランドである。
第二の局面において、本発明はオリゴヌクレオチド媒介性標的核酸配列改変のための組成物を提供する。
前記組成物は、細胞性修復蛋白の存在下で実質的に相補的な標的核酸と組み合う際に、そこに標的配列改変を起こすことができる配列改変オリゴヌクレオチドと;
(i)細胞性修復蛋白、HDAインヒビタまたはヒドロキシウレアとあらかじめ接触させた細胞から誘導される細胞性蛋白類、または(ii)ラムダベータ蛋白のどちらか、
とを含む。
上記の方法において、前記組成物の細胞性修復蛋白は精製されて無細胞蛋白抽出物中に存在するかまたは完全無傷細胞内に存在する。いずれの細胞も培養物中または完全無傷動物内に存在する。
その他の実施形態において、前記組成物は追加的にまたは代替的に、トリコスタチンA、細胞性修復蛋白、またはヒドロキシウレアを含むことができる。
もう一つの局面において、本発明はキットを提供する。
キットはオリゴヌクレオチド、特に化学的に修飾された内部非重複のノンヘアピン オリゴヌクレオチドなどの配列改変オリゴヌクレオチド、およびトリコスタチンA、ラムダベータ蛋白またはヒドロキシウレアの一つ以上を別々にパッケージングして含む。
キットはオリゴヌクレオチド、特に化学的に修飾された内部非重複のノンヘアピン オリゴヌクレオチドなどの配列改変オリゴヌクレオチド、および細胞性修復蛋白を含み、この細胞性蛋白はHDACインヒビタまたはヒドロキシウレアとあらかじめ接触させた細胞から誘導され、分離してパッケージされる。このようなキットはさらにラムダベータ蛋白も含むことができる。
キット類はRAD52エピスタシス群、ミスマッチ修復群、またはヌクレオチド除去修復群からの少なくも1つの蛋白を含み、追加的にトリコスタチンA、ラムダベータ蛋白、またはヒドロキシウレアを、任意に配列改変活性を有するオリゴヌクレオチドと共に含んでもよい。
1つ以上の固定核酸(LNA)残基を有する配列改変オリゴヌクレオチドの作成に特に適したまた別の実施形態において、本発明のキットは子ウシ胸腺末端デオキシヌクレオチジル・トランスフェラーゼなどの鋳型−非依存性一本鎖ポリメラーゼ;5’トリホスフェートを有するLNAモノマー類;およびトリコスタチンA、ラムダベータ蛋白またはヒドロキシウレアを含むことができる。その他の実施形態において、キットは水溶性カルボジイミド組成物;イミダゾール組成物;求核基を有するLNAモノマー類;およびトリコスタチンA、ラムダベータ蛋白、またはヒドロキシウレアを含むことができる。
本発明のその他の局面および実施形態を次のナンバーの項目にまとめる:
1.オリゴヌクレオチド媒介性標的核酸配列を改変する方法であって、
標的核酸を細胞性修復蛋白の存在下で配列改変標的オリゴヌクレオチドと組み合わせ;ラムダベータ蛋白を追加的に前記組み合わせに加えるか、または、先ず始めに、前記細胞性修復蛋白を含む細胞をHDACインヒビタまたはヒドロキシウレアと接触させる
前記方法。
2.前記細胞性修復蛋白が精製されている第1項記載の方法。
3.前記細胞性修復蛋白が無細胞蛋白抽出物中に存在する第1項記載の方法。
4.前記細胞性修復蛋白が完全無傷細胞内に存在する第1項記載の方法。
5.前記細胞がex vivoで培養される第4項記載の方法
6.前記細胞が生体内にある第4項記載の方法。
7.前記細胞性修復蛋白が原核細胞および真核細胞からなる群から選択される細胞のものである第1項記載の方法。
8.前記細胞が原核細胞である第7項記載の方法。
9.前記原核細胞が細菌細胞である第8項記載の方法。
10.前記細菌細胞が大腸菌細胞である第9項記載の方法。
11.前記細胞が真核細胞である第7項記載の方法。
12.前記真核細胞が酵母細胞、植物細胞、哺乳動物細胞またはヒト細胞である第11項記載の方法。
13.前記真核細胞が酵母細胞である第12項記載の方法。
14.前記酵母がSaccharomyces cerevisiae、Ustilago maydis、またはCandida albicansである第13項記載の方法。
15.前記真核細胞が植物細胞である第12項記載の方法。
16.前記真核細胞がヒト細胞である第12項記載の方法。
17.前記ヒト細胞が肝細胞、肺細胞、結腸細胞、子宮頸部細胞、腎細胞、上皮細胞、癌細胞、幹細胞、造血幹細胞、造血系前駆細胞、および胚性幹細胞からなる群から選択される第16項記載の方法。
18.前記真核細胞が哺乳動物細胞である第12項記載の方法。
19.前記哺乳動物細胞がマウス、ハムスター、ラットおよびサルからなる群から選択される第18項記載の方法。
20.前記オリゴヌクレオチドが、前記オリゴヌクレオチドの配列と標的核酸第一ストランド上のその相補体との間にある一つ以上のミスマッチを除いて、前記核酸標的の第一ストランドの配列に完全に相補的な配列であり、その際前記オリゴヌクレオチドが少なくも1つの末端修飾を有する第1項ないし第19項のいずれかの項に記載の方法。
21.前記少なくも1つの末端修飾が、少なくも1つの末端固定核酸(LNA)、少なくも1つの末端2’−O−Me塩基類似体、および少なくも1つの末端ホスホロチオエート結合からなる群から選択される第20項記載の方法。
22.前記オリゴヌクレオチドが17−121ヌクレオチド長さを有する一本鎖オリゴヌクレオチドで、少なくも8つの隣接デオキシリボヌクレオチドの内部非重複のドメインを有し、前記一つ以上のミスマッチが専ら前記オリゴヌクレオチドDNAドメインおよび前記オリゴヌクレオチドの5’および3’末端から少なくも8ヌクレオチドに位置する第21項記載の方法。
23.前記オリゴヌクレオチドが少なくも一つの末端固定核酸(LNA)を有する第21項記載の方法。
24.前記オリゴヌクレオチドが少なくも25ヌクレオチド長さである第1項記載の方法。
25.前記オリゴヌクレオチドが74以下のヌクレオチド長さである第1項記載の方法。
26.前記オリゴヌクレオチドが121以下のヌクレオチド長さである第1項記載の方法。
27.前記標的核酸がDNAである第1項記載の方法。
28.前記DNAが二本鎖DNAである第27項記載の方法。
29.前記二本鎖DNAがゲノムDNAである第28項記載の方法。
30.前記ゲノムDNAが染色体内にある第29項記載の方法。
31.前記染色体が人工染色体である第30項記載の方法。
32.前記ゲノムDNAがエピソーム性である第29項記載の方法。
33.前記標的核酸が二本鎖ゲノムDNAの非転写ストランドである第1項記載の方法。
34.オリゴヌクレオチド媒介性標的核酸配列改変を高めるための組成物であって: オリゴヌクレオチドにおいて、細胞性修復蛋白の存在下で実質的に相補的な標的核酸と組み合わせた際に、標的配列改変を起こすことができる前記オリゴヌクレオチドと;
細胞性修復蛋白において、HDACインヒビタまたはヒドロキシウレアまたはラムダベータ蛋白とあらかじめ接触させた細胞から誘導される前記細胞性蛋白
とを含んでなる組成物。
35.前記細胞性修復蛋白が精製されている第34項記載の組成物。
36.前記細胞性修復蛋白が無細胞蛋白抽出物中に存在する第34項記載の組成物。
37.前記細胞性修復蛋白が完全無傷細胞内に存在する第34項記載の組成物。
38.前記細胞が原核細胞および真核細胞からなる群から選択される第34項ないし第37項のいずれかの項に記載の組成物。
39.前記細胞が原核細胞である第38項記載の組成物。
40.前記原核細胞が細菌細胞である第39項記載の組成物。
41.前記細菌細胞が大腸菌細胞である第40項記載の組成物。
42.前記細胞が真核細胞である第38項記載の組成物。
43.前記真核細胞が酵母細胞、植物細胞、ヒト細胞または哺乳動物細胞である第42項記載の組成物。
44.前記真核細胞が酵母細胞である第43項記載の組成物。
45.前記酵母がSaccharomyces cerevisiae、Ustilago maydis、またはCandida albicansである第44項記載の組成物。
46.前記真核細胞が植物細胞である第43項記載の組成物。
47.前記真核細胞がヒト細胞である第43項記載の組成物。
48.前記ヒト細胞が肝細胞、肺細胞、結腸細胞、子宮頸部細胞、腎細胞、上皮細胞、癌細胞、幹細胞、造血幹細胞、造血系前駆細胞および胚性幹細胞からなる群から選択される第47項記載の組成物。
49.前記真核細胞が哺乳動物細胞である第43項記載の組成物。
50.前記哺乳動物がマウス、ハムスター、ラットおよびサルからなる群から選択される第49号記載の組成物。
51.前記オリゴヌクレオチドが少なくも1つの末端修飾を有する第34項ないし第50項のいずれかの項に記載の組成物。
52.前記少なくも1つの末端修飾が少なくも1つの末端固定核酸(LNA)、少なくも1つの末端2’−O−Me塩基類似体、および少なくも1つの末端ホスホロチオエート結合からなる群から選択される第51項記載の組成物。
53.前記オリゴヌクレオチドが少なくも1つの末端固定核酸(LNA)を有する第52項記載の組成物。
54.前記オリゴヌクレオチドが17−121ヌクレオチド長さの一本鎖オリゴヌクレオチドであり、少なくも8つの隣接デオキシリボヌクレオチドの内部非重複ドメインを有する第34項ないし第53項記載の組成物。
55.前記オリゴヌクレオチドが少なくも25ヌクレオチド長さである第34項ないし第54項記載の組成物。
56.前記オリゴヌクレオチドが121以下のヌクレオチド長さである第34項ないし第55項記載の組成物。
57.前記オリゴヌクレオチドが74以下のヌクレオチド長さである第34項ないし第55項記載の組成物。
58.さらにトリコスタチンA、蛋白抽出物またはヒドロキシウレアを含む第34項ないし第57項記載の組成物。
59.オリゴヌクレオチドと;
トリコスタチンA、ラムダベータ蛋白またはヒドロキシウレア、
を含むキット。
60.オリゴヌクレオチドと;
細胞性修復蛋白であって、HDACインヒビタまたはヒドロキシウレアとあらかじめ接触させた細胞から誘導される前記細胞性修復蛋白、
とを含むキット。
61.オリゴヌクレオチドと;
細胞性修復蛋白と;
ラムダベータ蛋白、
とを含むキット。
62.RAD52エピスタシス群、ミスマッチ修復群、またはヌクレオチド除去修復群からの少なくも1つの蛋白と;
トリコスタチンA、ラムダベータ蛋白、またはヒドロキシウレア、
とを含むキット。
63.さらに核酸配列改変活性を有するオリゴヌクレオチドを含む第62項記載のキット。
64.鋳型−非依存性一本鎖ポリメラーゼと;
5’−トリホスフェートを有するLNAモノマー類と;
トリコスタチンA、ラムダベータ蛋白、またはヒドロキシウレア、
とを含むキット。
65.前記ポリメラーゼが子ウシ胸腺末端デオキシヌクレオチジル トランスフェラーゼである第64項記載のキット。
66.水溶性カルボジイミド組成物と;
イミダゾール組成物と;
求核基を有するLNAモノマー類と;
トリコスタチンA、ラムダベータ蛋白またはヒドロキシウレア、
とを含むキット。
発明の詳細な説明
本発明はオリゴヌクレオチド媒介性核酸配列改変の効率を高めるための方法、組成物、およびキットを提供する。
この方法は細菌、真菌、植物または、哺乳動物などの動物に、HDACインヒビタ、ベータ蛋白を含む組成物、またはヒドロキシウレアのような1種類または複数種類の作用物質を加え、それと同時に、またはその後しばらく経ってから、前記処理した細胞または組織に核酸配列改変活性を有するオリゴヌクレオチドを与える諸工程を含む。
相同組換えおよびウィルス媒介性トランスファーを容易にするためにHDACインヒビタが使用されているとはいえ、そしてラムダベータ蛋白が大腸菌細胞において核酸(この核酸は染色体内核酸でも染色体外核酸でもよい)間の相同組換えを容易にすることが示されたとはいえ、そして本明細書に記載の発明の前にすでにHUを使用してウィルス形質導入および核トランスファーによる遺伝子標的効果が高められているとはいえ、これらの作用物質を使用してオリゴヌクレオチド媒介性核酸配列改変効率を高めることができるかどうかは未知であり、予測することができなかった。
オリゴヌクレオチド媒介性核酸配列改変は相同組換えを仲介するものとは異なる細胞性蛋白によって仲介される。オリゴヌクレオチド媒介性遺伝子改変のために使用されるオリゴヌクレオチド類には、相同組換えに必要な、標的に相補的な配列の、長いストレッチが欠けているのが一般的である。そしてオリゴヌクレオチド媒介性核酸配列改変はウィルス蛋白の仲介を含まない。
オリゴヌクレオチド媒介性配列改変によって生ずる遺伝子産物は、相同組換えまたはウィルス媒介性形質導入から生ずる産物とは異なる。
標的細胞の相同組換え機構を利用して必要な二本鎖の破壊および再結合を起こす相同組換えは、標的細胞の染色体DNAの大きいストレッチを、エピソーム性DNA上に供給された導入遺伝子からの配列で置換させる。この標的挿入部位にフランクする配列に合うように設計された前記導入遺伝子の3’および5’領域上のフランキング配列は、通常は長く、例えば約1.5ないし15kbである。
レトロウィルスおよびアデノ随伴ウィルスの形質導入は標的細胞の組換えウィルスベクターによる感染を含み、ウィルスを宿主染色体に組み込むために、ウィルスによってコーディングされる蛋白に頼ることが多い。ロビン(Robbin)&ギビザニ(Ghivizzani)、Pharmacol.Ther. 80巻:35−47ページ(1998)。その上、そのようなウィルス形質導入後の標的細胞の染色体は、ウィルスベクター配列を含む組換えウィルスの全体または実質的に一部分の挿入を含む。ウィルス組込みは、組み込まれたウィルスのタンデムまたはマルチコピーで増加する。組込みは、宿主染色体のランダムスポット、または既知の所定のウィルス組込み部位に起こる。挿入部位および挿入数の変動により、導入遺伝子の発現は多種多様になる。染色体に挿入されたウィルスくずは、発現されたウィルス蛋白に対して不都合な免疫反応を起こす可能性があり、それらの改変部位に応じて悪性腫瘍性変化を起こすこともある。
これに対して、オリゴヌクレオチド媒介性核酸配列改変は種々の試薬を使用し、相同組換えおよびウィルス形質導入に使用したものとは異なる結果をもたらす。オリゴヌクレオチド媒介性核酸配列改変は、外来遺伝子またはウィルスベクターに比べて相対的に短いオリゴヌクレオチドの使用を含み、標的細胞内の遺伝子を修飾する。宿主染色体DNA配列は、標的遺伝子内の正確に定まった場所のたった一つの塩基か少数の塩基で改変される。ウィルス配列またはエピソームくずは宿主染色体に導入されず、ウィルスによってコードされる蛋白は必要ない。このため、相同組換えによる遺伝子ターゲティングには必要となるような、遺伝子全体(または少なくも遺伝子の長い部分)を含むエピソーム性ベクターを導入する必要がない。
オリゴヌクレオチド媒介性遺伝子改変は相同組換えおよびウィルス形質導入とは機構的にも異なる。オリゴヌクレオチド媒介性遺伝子改変は細胞性DNAミスマッチ修復メカニズムに依存する。このメカニズムは分離された遺伝子および遺伝子生成物と関係する相同組換えおよびウィルス形質導入とは異なる細胞経路である。ランゾフ(Lanzov)、分子遺伝学および代謝(Molecular Genetics and Metabolism)、68巻:276−282ページ(1999)。例えば、相同組換えはRAD52遺伝子産物を必要とするが(クズミノフ(Kuzminov)、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 98巻(15号):8461−8468ページ(2001))、オリゴヌクレオチド媒介性遺伝子改変はRAD52が存在しない場合の方がより効率的である。
ラムダベータ蛋白を使用してラムダファージの天然宿主以外の細胞におけるオリゴヌクレオチド媒介性核酸配列改変効率を高めることができるかどうかは詳しくは知られていないし、推測もできない。
驚いたことに、本発明者らはここで、オリゴヌクレオチド媒介性配列改変と、相同組換えおよびウィルス形質導入との間にメカニズムの差があるにもかかわらず、細胞をHDACインヒビタトリコスタチンAまたはヒドロキシウレアで前処理または同時処理すると、オリゴヌクレオチド媒介性配列改変の効率が高まることを発見した。さらに、オリゴヌクレオチド媒介性配列の改変と、相同組換えとの間にメカニズムの差があるにもかかわらず、また大腸菌と、真核細胞との間にあるような、蛋白および細胞内媒体の差があるにもかかわらず、ラムダ ベータ蛋白が全ての被検細胞においてオリゴヌクレオチド媒介性配列改変の効率を驚くべく高めることも発見した。
よって、本発明はオリゴヌクレオチド媒介性核酸配列改変の効率を高めるための方法、組成物およびキットを提供する。この方法は細菌、真菌、植物または動物からの細胞および組織をHDACインヒビタまたはヒドロキシウレアで処理し、その後処理ずみ細胞または組織に核酸配列改変活性を有するオリゴヌクレオチドを加えること、または、細菌、真菌、植物または動物からの細胞または組織をラムダベータ蛋白と核酸配列改変活性を有するオリゴヌクレオチドとで同時に処理することを含む。
本発明の方法、組成物およびキットは、核酸配列改変活性を有するあらゆるオリゴヌクレオチドで使用できる。このようなオリゴヌクレオチドは全て、核酸配列改変に導くように設計された非相補的塩基類を除いて、配列が核酸標的の一部の配列に完全に相補的である少なくも一部分を含む。このため、本発明の方法に使用されるオリゴヌクレオチドは標的遺伝子の配列とは異なる少なくも1つの塩基対を有するか、または標的遺伝子のDNA配列の相補体とは異なる少なくも一つの塩基対を有する。
例えば、本発明の方法、組成物、およびキットは、クルバー(Culver)らの、Nat.Biotechnol. 1999年10月、17巻(10号):989−93ページに記載のように、トリプレックス形成ドメインおよび修復ドメイン両方を有する二官能価オリゴヌクレオチド類でも、米国特許第6,303,376号、第5,962,426号、および第5,776,744号に記載されるようなその他のタイプの配列改変トリプレクシング オリゴヌクレオチド類でも使用できる。これらの開示は参考としてその全体が本明細書中に援用される。クノアート(Knauert)ら、Hum Mol Genet. 2001年10月1日;10巻(20号):2243−51ページも参照されたい。この開示は参考としてその全体が本明細書中に援用される。
トリプレクシング オリゴヌクレオチド類は、ワトソン−クリック塩基対の法則よりもフーグシュタイン(Hoogstein)または逆フーグシュタイン塩基対の法則を利用してDNAに結合するから、オリゴヌクレオチド媒介性配列改変のために使用するトリプレクシングオリゴヌクレオチドは、一般的には、改変が所望される標的に対して、オリゴヌクレオチドの一端または両端の8ヌクレオチド以内に、むしろ7、6、5、4、3、2または1以内に、一つ以上のワトソン−クリックミスマッチを含む。
本発明の方法、組成物、およびキットは、特に米国特許第5,945,339号、第5,888,983号、第5,871,984号、第5,795,972号、第5,780,296号、第5,760,012号、第5,756,325号、第5,731,181号および第5,565,350号に記載されているように、キメラRNA−DNA二重ヘアピンオリゴヌクレオチド類でも使用できる。上記の開示は参考としてそのまま本明細書に組み込まれる。イェ(Ye)ら、Mol Med Today 1998年10月;4巻(10号):431−7ページおよびリチャードソン(Richardson)ら、Curr.Opin Mol Ther. 2001年8月;3巻(4号):327−37ページも再調査のために参照されたい。
配列改変キメラ オリゴヌクレオチド内の内部配列の相補性は、一本鎖オリゴヌクレオチドの折り畳みを起こし、その結果2つのヘアピンを含む内部自己重複化型が形成される。標的に対するミスマッチは重複領域にある。配列改変キメラオリゴヌクレオチドはデオキシリボースおよびリボース含有塩基を両方含み、したがってDNAおよびRNA両方の領域を含む;上記オリゴヌクレオチドの上記リボヌクレオチドの2’−ヒドロキシルはメチル化されてもよい。
非天然ヌクレオ塩基類がこのようなキメラオリゴヌクレオチド内に存在することがある(また、以下により詳細に記載される一本鎖、化学的に修飾された、内部非重複オリゴヌクレオチドにも存在する)。これに関連して、用語“ヌクレオ塩基”は天然発生性ヌクレオ塩基並びに非天然発生性ヌクレオ塩基を網羅する。これまで“非天然的に発生する”と考えられていた種々のヌクレオ塩基がその後自然界に見いだされたのは明らかである。こうして“ヌクレオ塩基”は公知のプリンおよびピリミジン複素環だけでなく、複素環式類似体およびそれらの互変異性体も含む。ヌクレオ塩基類の典型的例はアデニン、グアニン、チミン、シトシン、ウラシル、プリン、キサンチン、ジアミノプリン、8−オキソ−N−メチルアデニン、7−デアザキサンチン、7−デアザグアニン、N,N−エタノシトシン、N,N−エタノ−2,6−ジアミノプリン、5−メチルシトシン、5−(C−C)−アルキミルシトシン、5−フルオロウラシル、5−ブロモウラシル、シュードイソシトシン、2−ヒドロキシ−S−メチル−4−トリアゾロピリジン、イソシトシン、イソグアニン、イノシンおよび米国特許第5,432,272号に記載されている“非天然発生性”ヌクレオ塩基類である。用語“ヌクレオ塩基”はこれらの例およびその類似体および互変異性体の各々を網羅するものとする。
本発明の方法、組成物およびキットを使用して、化学的改変、一本鎖、内部非重複化オリゴヌクレオチド類を用いてオリゴヌクレオチド媒介性核酸配列改変の頻度および効率を高めることもできる。これについては特に米国特許第6,271,360号;国際特許出願第WO01/73002、WO01/92512、およびWO02/10364;ピアス(Pierce)ら、Gene Ther. 10巻(1号):24−33ページ(2003);パレク−オルメド(Parekh−Olmedo)ら、Chem Biol. 9巻(10号):1073−84ページ(2002);リウ(Liu)ら、Nucleic Acids Res. 30巻(13号):2742−50ページ(2002):およびガンパー(Gamper)ら、Nucleic Acids Res. 28巻(21号):4332−9ページ(2000)に記載されており、これらの開示は参考としてその全体が本明細書中に援用される。
特に有用な一本鎖、化学的に修飾されたオリゴヌクレオチドは、17−121ヌクレオチド長さを有し、内部非重複デオキシリボヌクレオチド“改変”ドメインを有するものである。このドメインは必ずというわけではないが、一般的に少なくも8ヌクレオチド長さである。このヌクレオチドの配列と、その標的とのミスマッチはこの内部非重複DNAドメイン内に位置し、必ずではないが、一般的に、オリゴヌクレオチドの5’および3’末端から少なくも8個のヌクレオチドである。デオキシリボヌクレオチド改変ドメインの配列と、標的核酸第一ストランド上のその相補体との間の1つ以上のミスマッチを除けば、上記オリゴヌクレオチドの配列は核酸標的の第一ストランドの配列に完全に相補的である。さらに、上記オリゴヌクレオチドは、少なくも1つの末端固定核酸(LNA)、少なくも1つの末端2’−O−Me塩基類似体および少なくも1つの末端ホスホロチオエート結合からなる群から選択される少なくも1つの末端修飾を有する。前記少なくも1つの修飾の少なくも1つは、上記オリゴヌクレオチドの末端部に位置するのが一般的である。このような修飾の複数、例えば2、3、4またはそれ以上のホスホロチオエート結合が一端または両端に存在する。
2’−O−メチル残基がリボ核酸であるとはいえ、上記本鎖の化学的に修飾されたオリゴヌクレオチド類は、標的に対するミスマッチが内部非重複DNAドメイン内に位置することによって、上記“キメラ”オリゴヌクレオチドとは異なる。さらに、一本鎖キメラ修飾オリゴヌクレオチドには、上記の配列改変キメラオリゴヌクレオチドに見いだされるヘアピン構造がない(すなわちそれらは“ノンヘアピン”分子である)。
一本鎖の、化学的に修飾されたオリゴヌクレオチドによる配列改変の頻度を高めまたは増やすために本発明の方法、組成物およびキットを使用する際に含まれる特に有用な化学的修飾は、固定核酸(LNA)として公知の合成分子群からの1つ以上のモノマーが含まれることである。LNAは、二環式または三環式ヌクレオチドおよびヌクレオチド類似体および、このような類似体を含むオリゴヌクレオチド類である。LNAsおよび関連類似体の塩基構造および機能的特徴はWO99/14226、WO00/56748、WO00/66604、WO98/39352、米国特許第6043060号および米国特許第6268490号など種々の出版物および特許に開示されている。これらは全て参考としてそのまま本明細書に組み込まれる。
一般的LNA構造は下記の式によって記載される:
Figure 2005518817
上記式中、Xは−O−、−S−、−N(RN)−、−C(R6*)−、−O−C(R7*)−、−C(R6*)−O−、−S−C(R7*)−、−C(R6*)−S−、−N(RN)−C(R7*)−、−C(R6*)−N(RN*)−および−C(R6*)−C(R7*)−から選択される;Bは水素、ヒドロキシ、任意に置換されたC1−4アルコキシ、任意に置換されたC1−4−アルキル、任意に置換されたC1−4−アシロキシ、およびヌクレオ塩基類から選択される;Pは隣接モノマーへのヌクレオシド間結合、または5’−末端基、例えばヌクレオシド間結合または任意に置換基Rを含む5’末端基などである;置換基R、R2*、RおよびR3*の一つは、隣接モノマーへのヌクレオシド間結合をあらわす基P、または3’−末端基である;R1*、R4*、R、R5*、R、R6*、R、R7*、RN*の置換基から選択されるノン−ジェミナル置換基の1対または2対、およびPとあらわされていないR、R2*、R、およびR3*の1つは、それぞれ下記の置換基の1つ以上からなる共有結合部分である:−C(R)−、−C(R)=C(R)−、−C(R)=N−、−O−、−Si(R)−、−S−、−SO−、−N(R)−および>C=Z、ここでZは−O−、−S−および−N(R)−から選択され、RおよびRは各々独立的に水素、任意に置換されたC1−12−アルキル、任意に置換されたC2−12−アルケニル、任意に置換されたC2−12−アルキニル、ヒドロキシ、C1−12−アルコキシ、C2−12−アルケニルオキシ、カルボキシ、C1−12−アルコキシカルボニル、C1−12−アルキルカルボニル、ホルミル、アリール、アリールオキシカルボニル、アリールオキシ、アリールカルボニル、ヘテロアリール、ヘテロアリールオキシカルボニル、ヘテロアリールオキシ、ヘテロアリールカルボニル、アミノ、モノ−およびジ−(C1−6アルキル)アミノ、カルバモイル、モノ−およびジ−(C1−6アルキル)アミノカルボニル、アミノ−C1−6−アルキルアミノカルボニル、モノ−およびジ−(C1−6−アルキル)アミノ−C1−6−アルキルアミノカルボニル、C1−6−アルキルカルボニルアミノ、カルバミド、C1−6−アルカノイルオキシ、スルホノ、C1−6−アルキルスルホニルオキシ、ニトロ、アチド、スルファニル、C1−6アルキルチオ、およびハロゲン類から選択される。ここでアリールおよびヘテロアリールは任意に置換され、2個のジェミナル置換基RおよびRは一緒になって任意に置換されたメチレン(=CH2)をあらわすことができ、Ra、Rbから選択される2個のノン−ジェミナルまたはジェミナル置換基、および、存在はするがP、P*または1つまたは複数の共有結合部分には含まれない任意の置換基R1*、R、R2*、R、R3*、R4*、R、R5*、RおよびR6*、R、およびR7*は、前に定義した同じ種類の置換基から選択される関連架橋結合部分を形成できる;それによってノン−ジェミナル置換基の1対または複数対が、(i)そのノン−ジェミナル置換基が結合している原子および(ii)任意の介在原子と一緒になって、単環式または二環式構造体を形成する;そして存在するがP、P、または1つまたは複数の共有架橋結合部分には含まれない置換基R1*、R、R2*、R、R4*、R、R5*、RおよびR6*、R、およびR7*の各々は、水素、任意に置換されたC1−12−アルキル、任意に置換されたC2−12−アルケニル、任意に置換されたC2−12−アルキニル、ヒドロキシ、C1−12−アルコキシ、C2−12−アルケニルオキシ、カルボキシ、C1−12−アルコキシカルボニル、C1−12−アルキルカルボニル、ホルミル、アリール、アリールオキシカルボニル、アリールオキシ、アリールカルボニル、ヘテロアリール、ヘテロアリールオキシカルボニル、ヘテロアリールオキシ、ヘテロアリールカルボニル、アミノ、モノ−およびジ(C1−6アルキル)アミノ、カルバモイル、モノ−およびジ(C1−6−アルキル)アミノカルボニル、アミノ−C1−6−アルキルアミノカルボニル、モノ−およびジ(C1−6−アルキル)アミノ−C1−6−アルキルアミノカルボニル、C1−6アルキルカルボニルアミノ、カルバミド、C1−6アルカノイルオキシ、スルホノ、C1−6アルキルスルホニルオキシ、ニトロ、アチド、スルファニル、C1−6アルキルチオ、およびハロゲン類から独立的に選択される、この際アリールおよびヘテロアリールは任意に置換されていてもよく、その際2個のジェミナル置換基が一緒に、オキソ、チオキソ、イミノ、または任意に置換されたメチレンをあらわし、または一緒に、−O−、−S−、および−(NR)から選択される1つ以上の置換基によって任意に阻止されおよび/または打ち切られる1−5炭素原子のアルキレン鎖からなるスピロ架橋結合部分を形成してもよい。ここでRは水素およびC1−4−アルキルから選択され、2つの隣接(ノン−ジェミナル)置換基は、二重結合を生ずる付加的結合を示す;そしてRN*は、存在はするが共有架橋結合部分には含まれない場合、水素およびC1−4−アルキル;これらの塩基性塩およびその酸付加塩から選択される。
上の一般式およびこれに関連する定義から明らかなように、置換基および可能な共有架橋結合部分の性質によって、オリゴマーには1個または数個の不斉炭素原子が存在する。本発明に使用するオリゴマーは個々のモノマー断片並びにそれらの混合物(ラセミ混合物を含む)の任意のおよび全ての異性体の存在から生ずる立体異性体をすべて含むものとする。Bがα−構造である一般式の変形体も本発明の範囲内に含まれる。
これらの定義および公知のヌクレオシド(天然発生性および非天然性)およびヌクレオシド類似体(公知の二−および三環式類似体を含む)を考慮する際に、オリゴマーは一つ以上のLNAs(それらは置換基の選択に関しても共有架橋部分に関しても、互いに同一でも異なっていてもよい)および一つ以上のヌクレオシドおよび/またはヌクレオシド類似体を含むことは明らかである。これに関連して、“オリゴヌクレオチド”はヌクレオシド間結合によって結合したヌクレオシドの連続鎖を意味するが、オリゴマー(オリゴヌクレオチド)の1つ以上のヌクレオチド単位(モノマー)中のヌクレオ塩基は上に定義したように置換基Bで修飾され得る。オリゴヌクレオチドは、そのオリゴヌクレオチドの3’ヒドロキシ末端に少なくも1つのLNA類似体を含むのが好ましい。
上記のように、オリゴマーの単量体ヌクレオシドおよびヌクレオシド類似体はヌクレオシド間結合によってその他のモノマー類と結合する。これに関連して、用語“ヌクレオシド間結合”とは、−CH−、−O−、−S−、−NRH−、>C=O、>=NR、>C=S、−Si(R”)−、−SO−、−S(O)−、−P(O)−、PO(BH)−、−P(O,S)−、−P(S)−、−PO(R”)−、−PO(OCH3)−、および−PO(NHR)−から選択される2ないし4、好ましくは3個の置換基からなる結合を意味する、ここでRは、水素、C1−4アルキルから選択され、R”はC1−6アルキルおよびフェニルから選択される。ある場合には、ヌクレオシド間結合はキラルである。本発明に使用するオリゴマー類は個々のヌクレオシド間結合の任意のまたは全ての異性体の存在から生ずる全ての立体異性体並びにそれらの混合物(ラセミ混合物を含む)を含むものとする。
WO99/14226および米国特許第6,268,490号に開示される一連の有用な実施形態において、LNAは、下記の式に示されるようにリボースの2’−酸素を4’炭素と結合させるメチレン架橋を含む:
Figure 2005518817
上記式中、Bはヌクレオ塩基であり、XおよびYはヌクレオシド間結合である。理論によって束縛されるものではないが、これらの類似体の共有架橋部分は、リボース環の3’−末端コンフォメーションをロックすることによってそのリボース環の構造的柔軟性を減らし、それによって燐酸主鎖の局所的構造を強化すると考えられる。
この構造のその他の有用な実施形態において、2’−酸素位置は下記の構造に示すように窒素または硫黄で置換される:
Figure 2005518817
上記式中、Bはヌクレオ塩基であり、XおよびYはヌクレオシド間結合である。
WO99/14226に開示された基礎的LNA構造のその他の有用な実施形態において、共有架橋部分は1つ以上の炭素原子を含むことができ、下記の構造によりリボース環内のその他の位置を繋げることができる:
Figure 2005518817
上記式中、Bはヌクレオ塩基であり、XおよびYはヌクレオシド間結合である。
或いは、本発明の方法、組成物およびキットにおける配列改変に使用するオリゴヌクレオチド類はWO00/56748に開示されるようなキシロ−LNA構造を有する少なくも1つのヌクレオシドを含み、下記の一般式を有するオリゴマー類などである:
Figure 2005518817
上記式中、ヌクレオシド間結合はPおよびPであらわされ、その他の基はWO00/56748に開示される置換基である。この類似体の特殊の例は下記の構造的枠組と共にWO00/50748に開示されている:
Figure 2005518817
上記式中、Bはヌクレオ塩基であり、XおよびYはヌクレオシド間結合である。リボース環の2’および5’炭素間の結合を含むヌクレオシド類似体もWO00/56748に開示され、本発明の範囲内と考えられる:
Figure 2005518817
上記式中、Bはヌクレオ塩基であり、XおよびYはヌクレオシド間結合である。
本発明のその他の実施形態はWO00/66604に開示されるL−リボ−LNA構造を有する少なくも1つのヌクレオシドを含むオリゴマーを含み、次の一般式を有する:
Figure 2005518817
上記式中、ヌクレオシド間結合はPおよびPによってあらわされ、その他の基はWO00/66604に開示される置換基でよい。この類似体の特殊な例は下記の構造的枠組と共にWO00/66604に開示されている:
Figure 2005518817
上記式中、Bはヌクレオ塩基でありXおよびYはヌクレオシド間結合である。
本発明の範囲内と考えられるその他の実施形態は、米国特許第6,043,060号に開示されるヌクレオシド類似体を含むオリゴヌクレオチドを含む。これらの類似体は次の一般式のモノマー単位によってあらわされる:
Figure 2005518817
上記式中、Bはピリミジンまたはプリン核酸塩基、またはその誘導体であり、1オリゴマー内で複数のB置換基が同一でも互いに異なっていてもよい。
本発明の実施において有用なヌクレオシドおよびヌクレオシド類似体、およびこれらを含むオリゴマー類の合成は、WO99/14226、WO00/56748、WO00/66604、WO98/39352、米国特許第6,043,060号、および米国特許第6,268,490号に開示されているように行うことができる。上記類似体の幾つかおよび合成用一式は市販されている(プロリゴ(Proligo)、ブルダー、CO、USA)。
第一の局面において、本発明はオリゴヌクレオチド媒介性核酸配列改変の改良法を提供する。その方法において、配列改変は、標的核酸を細胞性修復蛋白の存在下で配列改変ターゲティング・オリゴヌクレオチドと組み合わせることによって行われる。改良点は、上記組み合わせにラムダベータ蛋白を追加的に加えるか、または先ず最初に細胞性修復蛋白を有する細胞をHDACインヒビタまたはヒドロキシウレアと接触させることを含む。こうしてこの方法は標的核酸を細胞性修復蛋白の存在下で配列改変ターゲティング・オリゴヌクレオチドと組み合わせ、この組み合わせに追加的にラムダベータ蛋白を加えるかまたは最初に細胞性蛋白類を有する細胞をHDACインヒビタまたはヒドロキシウレアと接触させることを含む。
配列改変オリゴヌクレオチドおよび標的と、選択的に富化した細胞、培養細胞または無細胞抽出物中に存在する細胞性修復蛋白とをex vivoで合一する。或いはその代わりに配列改変オリゴヌクレオチドと標的とをin vivoで合一してもよい。この場合は細胞性修復蛋白は、体内に存在する細胞内に存在する。
本発明の方法、組成物、およびキットを使用して、標的配列中の1、2または3個のヌクレオチドの決失、挿入または置換などを含むあらゆる種類の改変に導くオリゴヌクレオチドによって仲介される改変を高めることができる。これらの改変されたヌクレオチドは互いに隣接していても隣接していなくてもよい。さらに1、2、または3つのマルチ配列改変に導くオリゴヌクレオチドによる核酸配列改変も、本発明のキットおよび方法を使用して高めることができる。このような多発突然変異の各々は、標的配列の1、2または3個のヌクレオチドの例えば決失、挿入または置換を含むことができる。これらの変化したヌクレオチド類は互いに隣接しても隣接しなくともよい。複数の配列標的の核酸配列改変が高まる場合、単一のオリゴヌクレオチドによって、または1、2または3個の別々のオリゴヌクレオチドによって多重改変が起こり得る。多重改変は単一のオリゴヌクレオチドによって起こるのが有益であり、多重改変は1ないし10ヌクレオチドにおいて相互に起きる。
本発明の方法、組成物およびキットを使用して、二本鎖標的核酸のいずれかの鎖を標的にするオリゴヌクレオチドによって導かれる核酸配列改変の効率を高めることができる。特に有用な実施形態において、これらの方法を用いて、標的配列の非転写ストランドを標的にするオリゴヌクレオチドの効率を高めることができる。また別の有用な実施形態において、これらの方法を使用して標的配列の非転写ストランドを標的とするオリゴヌクレオチドの効率を高めることができる。
本発明の方法、組成物およびキットを使用して、核−および細胞小器官染色体、および人工染色体DNA、例えば酵母人工染色体(YAC)、細菌人工染色体(BAC)、植物人工染色体(PlAC)、バイナリー細菌人工染色体(BiBACS)、およびヒト人工染色体(HAC)などを含むゲノムDNAを標的にするオリゴヌクレオチドによって指示される核酸配列改変の効率を高めることができる。本発明の方法、組成物およびキットを使用して、その他の種類の標的、例えばプラスミド、コスミド、ファージミド、および組み込まれていないウィルスなどの分離されたエピソーム性標的のオリゴヌクレオチド媒介性配列改変の効率を高めることができる。
本発明の方法、組成物およびキットを使用して、エキソン、イントロン、プロモータ、エンハンサまたは3’−または5’−未翻訳領域などを含む遺伝子の任意の部分を標的にしたオリゴヌクレオチド媒介性標的配列改変の効率を高めることができる。さらに、本発明の方法、組成物、およびキットを使用して、遺伝子内または遺伝子間のオリゴヌクレオチド媒介性標的配列改変の効率を高めることができる。
本発明の方法、組成物、およびキットを使用して、広範囲にわたる細胞型における、または原核生物種および真核生物種を含む種々様々の種に由来する細胞型から誘導される蛋白抽出物内の、オリゴヌクレオチド媒介性核酸配列改変効率を高めることができる。
例えば、本発明の方法、組成物およびキットを使用して、下等真核生物から取り出される細胞内、例えば酵母細胞などの真菌細胞内で、またはSaccharomyces cerevisiae、Schizosaccharomyces pombe、methanolicaのようなPichia種、Ustilago maydisおよびCandida albicansなどのCandida種;昆虫細胞またはその抽出物、例えばDrosophila melanogasterおよびAnopheles種からの細胞(または抽出物)など;およびCaenorhabditis elegansなどの線形動物類を含むこの種の細胞からの抽出物内における核酸配列改変効率を高めることができる。
本発明の方法、組成物およびキットを使用して、植物など、より高等な真核生物からの細胞、例えばChlamidomonas reinhardtil、Physcomitrella patensおよびArabidopsis thalianaなどの実験モデル植物から取り出される細胞(またはその抽出物)、その他にカリフラワー(Brassica oleracea)、アーチチョーク(Cynara scolymus)などの農作物、りんご(Muls、e.g.domesticus)、マンゴ(Mangifera、e.g.indica)、バナナ(Musa、e.g.acuminata)、ベリー類(干しぶどうなど、Ribes、e.g.rubrum)、キーウイ(Actinidia、e.g.chinensis)、ぶどう類(Vitis、e.g.vinifera)、ピーマン(Capsicum、e.g.annuum)、チェリー(スィートチェリーなど、Prunus、e.g.avium)、キューリ(Cucumis、e.g.sativus)、メロン(Cucumis、e.g.melo)、ナッツ(クルミなど、Juglans、e.g.regia;ピーナッツ、Arachis hypogeae)、オレンジ(Citrus、e.g.maxima)、ピーチ(Prunus、e.g.persica)、ナシ(Pyra、e.g.communis)、プラム(Prunus、e.g.domestica)、ストロベリー(Fragaria、e.g.moschata またはvesca)、トマト(Lycopersicon、e.g.esculentum)などの果物;アルファルファ(Medicago、e.g.sative またはtruncatula)、キャベツ(e.g.Brassica oleracea)、キクヂシャ(Cichoreum、e.g.ばendevia)、ニラネギ(Allium、e.g.porrum)、レタス(Lactuca、e.g.sativa)、ホウレンソウ(Spinacia、e.g.oleraceae)、タバコ(Nicotiana、e.g.tabacum)などの葉類およびフォーレージ;クズウコン(Maranta、e.g.arundinacea)、ビート(Beta、e.g.vulgaris)、ニンジン(Daucus、e.g.carota)、タピオカ(Manihot、e.g.esculenta)、サツマイモ(lpomoea batatas)などの根類、; ビーンズ(Phaseolus、e.g.vulgaris)、ピー(Pisum、e.g.sativum)、大豆(Glycine、e.g.max)、ササゲ(Vigna unguiculata)、モスビーン(Vigna aconitifolia)、小麦(Triticum、e.g.aestivum)、モロコシ属(Sorghum e.g.bicolor)、大麦(Hordeum、e.g.vulgare)、コーン(Zea、e.g.mays)、米(Oryza、e.g.sativa)、菜種(Brassica napus)、キビ(Panicum sp.)、ヒマワリ(Helianthus annuus)、エンバク(Avena sativa)、ヒヨコマメ(Cicer、e.g.arietinum)などの種子油を含む種子類;コールラビ(Brassica、e.g.oleraceae)、ポテト(Solanum、e.g.tuberosum)などの塊茎類;フラックス(Linum e.g.usitatissimum)、コットン(Gossypium e.g.hirsutum)、パイン(Pinus sp.)、オーク(Quercus sp.)、ユーカリ(Eucalyptus sp.)などの繊維および木材植物;芝生(Lolium,e.g.rigidum)、ペチュニア(Petunia,e.g.xhybrida)、ヒアシンス(Hyacintyus orientalis)、カーネーション(Dianthus e.g.caryophyllus)、デルフィニューム(Delphynium,e.g.ajacis)、ジュズダマ(Coix lacryma−jobi)、キンギョソウ(Antirrhinum majus)、ポピー(Papaver,e.g.nudicaule)、ライラック(Syringa、e.g.vulgaris)、アジサイ(HYdragea e.g.macrophylla)、バラ(ガリカス、アルバス、ダマスクス、ダマスク・ ペルペツアルス、センチホリアス、キナス、ティーズおよびハイブリッド・ティーズを含む)およびオマメンタル・ゴールデンロッズ(omamental goldenrods)(e.g.Solidago spp.)などの観賞植物類から取り出される細胞(またはその抽出物)における核酸配列改変効率を高めることができる。一般に、分離された植物細胞は本発明の組成物によって、および/または本発明の方法によって処理され、その後それらを使用して当業者に公知の方法によって植物全体を再生することができる。
本発明の方法、組成物、およびキットを使用して、動物、例えばヒナドリ、ガチョウ、アヒル、七面鳥、キジ、ダチョウ、およびハトなどの家畜および野生鳥;ウマ、ウシ、ヒツジ、ブタ、ヤギ、ヤギュウなどの哺乳動物;サケ、テラピア、ナマズ、マスおよびバスなどの魚類;マウス、ラット、モルモットおよびウサギなどのモデル実験動物類;イヌやネコのような家庭用ペット;および人間;から取り出される細胞(またはその抽出物)の核酸配列改変効率を高めることができる。
本発明の方法、組成物、およびキットを使用して種々様々の組織および細胞型、例えば肝臓、肺、結腸、子宮頸部、腎臓および上皮、胚細胞、各系統多能性幹−または前駆細胞、例えばCD34造血幹細胞(CD34CD38細胞)および胚性幹細胞(ES細胞)などから取り出した細胞(またはその抽出物)の核酸配列改変効率を高めることができる。
現在、ある司法管轄区域ではヒト幹細胞の培養および/または遺伝的増幅が禁止されている。このため、本発明の方法、組成物およびキットを使用してヒトES細胞(またはその抽出物)内の核酸配列改変効率を高めることができるとはいえ、本発明はある場合にはヒト胚性幹細胞を除く全ての細胞型で実施される。このような禁止は現在、ネズミ胚性幹細胞またはその他の動物からの幹細胞の培養および/または遺伝的増幅には該当せず、そのため本発明は人間以外の種、例えばマウス、ラット、ウシ、ヒツジ、ヤギ、サル、チンパンジー、および家畜などからの胚性幹細胞における配列改変効率を高めるために無制限に使用できる。
本発明の方法、組成物およびキットの各々を本発明のその他の方法、組成物およびキットの1つ以上と組み合わせて使用し、配列改変効率をさらに高めることができる。
その上、本発明の方法、組成物およびキットはオリゴヌクレオチド媒介性核酸配列改変効率を高めるためのその他の方法と同時に使用することができる。
例えば、本発明の方法、組成物およびキットを使用して、RAD52エピスタシス群、ミスマッチ修復群またはヌクレオチド除去修復群からの少なくも1つの蛋白の濃度または活性の増加または減少によって核酸配列改変効率が変化した細胞内に、配列改変を導入することができる。これらの群のメンバーとしては:RAD52エピスタシス群においてはRAD50、RAD51、RAD52、RAD54、RAD55、RAD57、RAD59、MRE11およびXRS1;ミスマッチ修復群においてはMSH2、MSH3、MSH6およびPMS1;ヌクレオチド除去修復群においてはRAD1、RAD2、RAD10、RAD23およびEX01がある。名称“RAD52エピスタシス群”は、酵母(Saccharomyces cerevisiae)の名称に由来するが、細菌、植物、動物およびその他の菌類を含むその他の生物からのホモログ(homologs)、オルソログ(orthologs)、およびパラログ(paralogs)が本発明の方法に使用できることは当然である。
特に、本発明の方法、組成物およびキットを使用して、RAD1、RAD51、RAD52、RAD57およびPMS1のホモログ、オルソログまたはパラログからなる群から選択される少なくも一つの蛋白の濃度または活性が低下している細胞に、配列改変を導入することができる。WO02/10364として公開された国際特許出願PCT/US01/23770および同一所有者の同時係属米国特許出願第10/351,662号(2003年1月24日出願)などを参照されたい。これらの開示は参考としてその全体が本明細書中に援用される。
或いは、または追加的に、本発明の方法、組成物およびキットを使用して、正常な対立遺伝子性RAD10、RAD51、RAD52、RAD54、RAD55、MRE11、PMS1またはXRS2蛋白の少なくも1つのレベル上昇に基づく、またはこれら蛋白の1つの活性上昇に基づいて核酸配列改変効率が変化した細胞(またはそれらの抽出物)に配列改変を導入することができる。2002年9月27日に出願された同一所有者の同時係属出願米国特許出願第10/260,375号を参照されたい。この開示は参考としてその全体が本明細書中に援用される。
本発明の方法、組成物およびキットは、オリゴヌクレオチド標的核酸配列改変を高める諸方法と共に使用してオリゴヌクレオチドによって指示される標的核酸配列改変中のスクリーニングに必要な核酸分子の数を減らすこともできる。
本明細書中で以下の実施例に詳細に記載され、説明されるように、このような方法は少なくも第一および第二のオリゴヌクレオチドの使用を含む:これらオリゴヌクレオチドの各々は少なくも第一および第二核酸標的それぞれを改変に導くことができる。少なくも第二オリゴヌクレオチドは、その後に選択される選択可能の表現型を生成する改変を指示する。第一オリゴヌクレオチドは選択可能の表現型を生成する改変を指示するとはいえ、第一オリゴヌクレオチドは、スクリーニング、例えば対応する核酸配列を決定するとかまたは改変事象によって作られる選択不可能の表現型を分析試験するなどによって確認しなければならない改変を指示するのが一般的である。
二重ターゲティング・アプローチは、スクリーニングに必要な核酸分子数を、選択可能の表現型をもたらすオリゴヌクレオチド標的核酸配列改変のためにこれまでは選択されなかった、組成物中のスクリーニングすべき数に比較して少なくも約2分の1に減らす。その減少は少なくも約2分の1、3分の1、4分の1、5分の1、6分の1、7分の1、8分の1、9分の1、10分の1、12分の1、15分の1、20分の1、30分の1および50分の1またはそれ以上の減少にもなる。
第二のオリゴヌクレオチドによる配列改変は当業者に公知の選択可能の表現型を与えることができる。その選択は、一部には選択される宿主細胞に依存し、またはその選択がin vitroで起きるかin vivoで起きるかによる。例示的な選択可能表現型は、例えば抗生物質またはその他の化学的耐性、栄養源の使用可能性、蛍光蛋白の発現、エピトープの存在、またはアポトーシス信号に対する耐性などを含む。
また別の変法において、本発明の方法、組成物およびキットを上記のように、RAD52エピスタシス群、ミスマッチ修復群、またはヌクレオチド除去修復群中の少なくも1つの精製蛋白の投与をさらに含んでなる二重ターゲティング法に使用することができる。ある実施形態において、この方法は、2つの明確な蛋白が操作される細胞に、上記2つのオリゴヌクレオチドを与えることを含む−例えば、1つの染色体遺伝子のノックアウト、および第二の遺伝子産物の補体化(complementation)または補充によって、第二蛋白のレベルを高めまたは変化させる。このような実施形態において、標的細胞は染色体RAD52遺伝子にノックアウト突然変異を有し、その細胞は、構成的プロモータなどのプロモータの制御下で途中に発現するRAD51遺伝子産物で補体化されるか補充される。
また別の実施形態において、本発明の方法、組成物およびキットは、変化した核酸配列改変効率をあらわす成長サイクル、発育状態または細胞周期ポジションの特定相にある細胞(またはその抽出物)と組み合わせて使用される。核酸配列改変に特に好ましい発育の特定相を容易に決定するには、例えば成長過程全体にわたって成長周期中の複数時点で細胞をサンプリングし、本明細書に記載の分析試験(assay)を使用してこれら細胞における配列改変をモニターする。核酸配列改変に特に好ましい成長周期相は、例えば誘導期、初期対数期、対数期、後期対数期、対数期と定常期との移行期、初期定常期および後期定常期などである。言い換えれば、これらは細胞サイクルのS期、M期、G1期またはG2期またはこれらフェーズ間の移行点でもある。特に発達するフェーズは、例えばホルモン処理またはその他の処理によって分化が誘発された細胞、または特定組織から分離した分化細胞において同様に分析できる。
本発明の方法に使用されるオリゴヌクレオチド類(オリゴヌクレオチド含有組成物を含む)を当業者に公知の技術によって細胞または組織に導入することができる。このような技術には、例えばエレクトロポレーション、リポソーム トランスファー、裸の核酸導入法、パーティクル・ボンバードメント、燐酸カルシウム沈殿法などがある。一実施形態において、トランスフェクションはリポソーム性トランスファー化合物、例えばDOTAP(N−1−(2,3−ジオレオイルオキシ)プロピル−N,N,N−トリメチルアンモニウム メチルスルフェート、ベーリンガー・マンハイム社)またはリポフェクチン(LIPOFECTIN)(登録商標)のような同等物などで行われる。もう一つの実施形態において、トランスフェクション技術はカチオン性脂質を使用する。好ましい一実施形態において、トランスフェクションはリポフェクタミン(Lipofectamine)(登録商標)2000(インヴィトロゲン(Invitrogen))を用いて行われる。本発明の方法は広範囲の濃度のオリゴヌクレオチドで使用できる。例えば10nM/10細胞で良い結果が得られる。105細胞あたりDOTAP3μg中約500ngのオリゴヌクレオチドの割合を使用することができる。トランスフェクトされた細胞は例えば無血清培地、ヒト血清アルブミンまたはヒト血清を補充した培地など、種々の培地に培養できる。
トリコスタチンAのようなHDACインヒビタまたはHUどちらかを含む本発明の方法、組成物およびキットでは、HDACインヒビタまたはHUを含まない場合の同法に比較して核酸配列改変効率がそれぞれ2倍高まるのが普通である。核酸配列改変効率の増加は、約3、4、5、6、7、8、9、10、12、15、20、30、および50倍またはそれ以上にもなることがある。ベータ蛋白を含む本発明の方法、組成物およびキットはDNA配列の改変効率を、ベータ蛋白に欠ける同法に比較して少なくも2倍高めるのが一般的であり、その効率を5倍、10倍、15倍、20倍、25倍、30倍、40倍、50倍、60倍、70倍、80倍、90倍、100倍、250倍、500倍、1000倍またはそれ以上に高めることもできる;ある実施形態において、ベータ蛋白を含む本発明の方法、組成物およびキットは、ベータ蛋白に欠ける同じ方法に比較して効率を、2倍未満、例えば1.9倍、1.5倍または10%、20%、30%、40%だけ高める。
HDACインヒビタまたはHUを使用する本発明の方法の実施形態において、細胞を先ず始めにHDACインヒビタまたはヒドロキシウレアと接触させ、その後オリゴヌクレオチドを細胞性修復蛋白の存在下で標的と一緒にする。或いは、上記オリゴヌクレオチドと上記標的とを組み合わせると同時にHDACインヒビタまたはヒドロキシウレアを上記細胞に接触させてもよい。また別の実施形態において、オリゴヌクレオチドを標的と組み合わせた後でHDACインヒビタまたはヒドロキシウレアと上記細胞とを接触させてもよい。
HDACインヒビタはトリコスタチンAでよい。しかし、その他のHDACインヒビタもこれらの目的に適することは当業者には当然である。例えば、参考としてそのまま本明細書に組み込まれる米国特許出願第2002/0143052号は、亜鉛結合部分の存在によってHDACインヒビタ活性を有する化合物を開示している。本発明の目的に適するHDACインヒビタのその他の例は、酪酸、MS−27−275、スベロイルアニリド ヒドロキサミン酸(SAHA)、オキサムフラン、トラポキシンA、デプデシン、FR901228(デプシペプチドとしても公知である)、アピシジン、m−カルボキシ−ケイヒ酸ビスヒドロキサミン酸(CBHA)、スベリン ビスヒドロキサミン酸(SBHA)およびピロキサミドなどである。マークス(Marks)ら、J.Natl.Canc.Ins. 92巻(15号)、1210−1216ページ(2000)を参照されたい。この開示は参考としてその全体が本明細書中に援用される。適切なHDACインヒビタの別の例は、WO00/23567に開示されるクラミドシン、HC−トキシン、Cyl−2、WF−3161、およびラディシコルである。この開示は参考としてその全体が本明細書中に援用される。
HDACインヒビタまたはHUを細胞または細胞抽出物に与える際、投与量および投与時機は細胞型を含む種々の要因に依存する。
TSAの場合、投与量は10nM、100nM、1μM、10μg、100μM、1mM、10mMまたはそれ以上でもよいし、1mM、100μM、10μM、1μM、100nM、10nM、1nM、またはそれ以下でもよい。HUの場合、投与量は100nM、1μM、10μM、100μM、1mM、10mM、100mM、1Mまたはそれ以上でもよいし、100mM、10mM、1mM、100μM、10μM、1μM、100nM、10nMまたはそれ以下でもよい。
HUの場合、処理は100mM、75mM、50mM、40mM、20mM、10mM、2mM、1mM、100μM、10μM、1μM、100nM、10nMまたはそれ以下で行うことができる。投与量は酵母細胞では約4mMないし100mMが好ましく、哺乳動物細胞では約0.05mMないし3mMが好ましい。投与量は少なくも0.05mM、0.10mM、0.15mM、0.20mM、0.25mM、0.30mM、0.35mM、0.40mM、0.50mMまたはそれ以上でよく、少なくも0.55mM、0.60mM、0.65mM、0.70mM、0.75mM、0.80mM、0.85mM、0.90mM、0.95mM、または1mM、1.1mM、1.2mM、1.3mM、1.4mM、1.4mM、1.5mM、1.6mM、1.7mM、1.8mM、1.9mM、2.0mM、2.5mM、3mMまたはそれ以上を含む。哺乳動物細胞の場合の用量は一般的には約3.0mM未満であり、2.5mM、2.0mM、1.5mM、1.0mM未満、0.90mM、0.85mM、0.80mM、0.75mM、0.70mM、0.65mM、0.60mM、0.55mM、0.50mM、0.45mM、0.40mM未満、そして約0.35mMまたは0.30mM未満でもよい。
配列改変オリゴヌクレオチドと一緒にする前の種々の時点に細胞をHDACインヒビタまたはHUの存在下で増殖させることができ、細胞抽出物はHDACインヒビタまたはHUで処理することができる。増殖または処理は1時間、2時間、3時間、4時間、6時間、8時間、12時間、20時間または、より長く28日、14日、7日などでもよいし、より短かく、12時間、8時間、6時間、4時間、3時間、2時間、1時間またはそれより短くてもよい。或いは、HDACインヒビタまたはHUおよび配列改変オリゴヌクレオチドによる細胞または細胞抽出物の処理が同時に起きてもよいし、オリゴヌクレオチド添加後にHDACインヒビタまたはHUをそれぞれ加えてもよい。
さらに、配列改変オリゴヌクレオチド処理の前の種々の時点に、HDACインヒビタまたはHUが存在しない条件下で細胞を増殖させることによって、それら細胞をHDACインヒビタまたはHU処理から回復させることができる。回復は10分、20分、40分、60分、90分、2時間、4時間またはそれ以上長くてもよいし、90分、60分、40分、20分、10分またはそれより短くてもよい。細胞はそれらを配列改変オリゴヌクレオチドで処理した後に回復させてもよい。この回復期間は1時間、2時間、4時間、6時間、8時間、12時間またはそれ以上でもよく、または8時間、6時間、4時間、2時間、1時間またはそれより短い時間でもよい。HDACインヒビタまたはHUはこの回復期間中、細胞培地に存在していても、存在していなくともよい。
HDACインヒビタおよびHUの細胞または細胞抽出物への最適用量および時機および投与期間は日常的実験によって決定できる。
例えば、TSAのようなHDACインヒビタによる処理の最適用量および時期は以下の実施例6に記載のアッセイ系を使用して決定できる。培養細胞(酵母細胞など)は、配列改変オリゴヌクレオチドのエレクトロポレーション前の種々の時間、種々濃度のHDACインヒビタで処理される。種々の時間回復させた後、それら細胞を培養し、配列改変効率を試験する。修正の最高効率をもたらすパラメーター類を選択する。この方法を必要に応じてその後繰り返し、前処理の用量、時間、回復期間(もしあれば)の長さなどをさらに最適化する。
HUについて同様なアプローチを、以下の実施例8に示すアッセイ系を使用して決定することができる。
このようなアッセイ、またはその明らかな変法を実施して選択したあらゆる細胞型のための条件を最適化することができる。
ベータ蛋白を使用する本発明の第一の局面の実施形態において、配列改変オリゴヌクレオチドと標的核酸との組み合わせにラムダベータ蛋白を加える。ここに用いる用語“ベータ蛋白”はバクテリオファージラムダのあらゆる菌株からのRed組換え系のbet遺伝子から発現する蛋白を言う。この用語は付加的に、相同組換え、遺伝子修復メカニズム、またはオリゴヌクレオチド媒介性核酸配列改変によってDNA配列を改変する効率をなお高めることができる、天然の完全遺伝子産物から誘導されるベータ蛋白の改変体も包含する。ベータ蛋白のこのような改変体は、非制限的に、ベータ蛋白とその他の蛋白類またはペプチド類との融合物;ベータ蛋白の断片類;一次アミノ酸配列に変化を含むベータ蛋白を含む。当業者には明らかなように、遺伝暗号の縮退により、多くの異なる遺伝子配列がベータ蛋白をコードすることができる。例えば、当業者の知識によると、ベータ蛋白をコードする一つ以上の合成遺伝子を作ることができる。しかしその合成遺伝子は、その遺伝子が発現される細胞に都合のよい、天然ベータ遺伝子に見いだされるコドンとは異なるコドンを含む。
本発明の方法の実施形態によると、ベータ蛋白は、改変が望まれる標的DNA配列を含む細胞中に導入され、やはり細胞中に存在する標的核酸配列改変オリゴヌクレオチドによる標的遺伝子修復効率を高める。理論によって束縛されるものではないが、ベータ蛋白は、相同組換えメカニズムにではなく、標的遺伝子修復メカニズムに関与することによって、このような細胞中の標的DNA配列を改変する効率を高めると考えられる。本発明の方法によって所望通りに改変されたDNA配列は、細胞の天然染色体内に、または染色体外の要素内の残遺物(非制限的に、DNA断片、プラスミド、ファージミド、ウィルスゲノム、原核細胞ゲノム、細菌人工染色体、酵母人工染色体、またはヒト人工染色体など)に含まれ得る。
ベータ蛋白はDNAのオリゴヌクレオチド媒介性標的配列改変効率を、ベータ蛋白欠乏時の同じ方法に比較して、2倍、5倍、10倍、15倍、20倍、25倍、30倍、40倍、50倍、60倍、70倍、80倍、90倍、100倍、250倍、500倍、1000倍以上も高めることができ、またはたった500倍、250倍、100倍、90倍、80倍、70倍、60倍、50倍、40倍、30倍、25倍、20倍、15倍、10倍、5倍、2倍、1.5倍それ以下にもできる。
次に記すような種々の細胞型において標的核酸配列改変オリゴヌクレオチドを使用するDNA配列の改変効率を高めるためにベータ蛋白を使用することができる:すなわち非制限的に、細菌細胞のような原核細胞;並びに酵母およびその他の真菌細胞を含む真核細胞;双子葉植物細胞および単子葉植物細胞を含む植物細胞;および昆虫細胞などの無脊椎動物細胞を含む動物細胞;ヒトおよび非ヒト哺乳動物を含む哺乳動物細胞などの脊椎動物細胞、等々。
ベータ蛋白が遺伝子修復メカニズムによるDNA配列改変効率を高めるように前記ベータ蛋白を細胞内に導入する、当業者に公知の種々の方法が提供されている。ベータ蛋白は蛋白として直接細胞内に導入することができ、または細胞の転写および翻訳メカニズムによって働く際には、ベータ蛋白をコードするベータ蛋白発現構成物を細胞内に導入するという様態で間接的に導入することもできる。このような構成物は予備転写されたmRNAの形であるか、または転写され得るDNA発現ベクターの形である。
ベータ蛋白を細胞内に導入するための蛋白固有の技術には、非制限的に、アクティブ・モティフ(Activ Motif)社(カールスバッド、CA)から提供されるシャリオット(Chariot)(登録商標)蛋白トランスフェクション試薬;ベータ蛋白とペネトラチン1(Drosophila Antennapedia蛋白の断片)との間の化学結合;ベータ蛋白と、HIV−1 TAT蛋白または単純ヘルペスウィルス−1蛋白VP22との蛋白融合などがある。
その他の方法が、ベータ蛋白およびベータ蛋白をコードする核酸を細胞内に導入するために使用できる。このような方法は、非制限的に、マイクロインジェクション;エレクトロポレーション;リポフェクチン、リポフェクタミンのような帯電脂肪親和性分子などの化学的試薬を用いるトランスフェクション;バイオリスティック・トランスフェクション;燐酸カルシウム共沈殿法;およびカチオン性リポソームを含むリポソーム類と細胞の細胞膜との融合、などを含む。
さらに別の方法は、細胞に感染できるウィルスベクターの使用を含む、ベータ蛋白をコードする核酸の細胞内への導入に適する。
ベータ蛋白の発現のためにベクターを使用しなければならない場合、当業者に公知の技術を使用して、ベクター蛋白コーディング配列を当業者が選択した適切なベクターにクローン化するのが一般的である。ベータ蛋白ベクターを含む細胞類は宿主細胞として公知である。宿主細胞はベータ蛋白を生産し、その後ベータ蛋白は当業者に公知の方法を使用して精製される、或いは、ある宿主細胞は、オリゴヌクレオチド媒介性配列改変効率を高める目的でその細胞中でベータ蛋白を発現させるという細胞であってもよい。
理論によって束縛されるものではないが、細胞内に直接的または間接的に導入されるベータ蛋白の量を種々変えると、DNA配列改変効率を調節できる程度の影響があらわれると考えられる。ベータ蛋白を細胞に直接導入する場合、ベータ蛋白の量を変えることによって用量を調節できる。宿主細胞に含まれるベクターから生成するベータ蛋白の量も、当業者に公知の方法によって変えることができる。このような方法には、各ベクター分子に存在するベクター蛋白コーディング配列の数を変えること;各細胞に含まれるベクター分子の平均数を変えること;そのベクターに存在する転写および翻訳調節要素の強度を変えること;ベクターから生成するmRNAの安定性を変えること;1つ以上の誘導可能の転写調節要素を介してベータ蛋白発現を誘発することができる環境変数の強度または程度を変えることなどが含まれる。細胞内に直接または間接に導入されるベータ蛋白の量を調節するその他の方法は当業者の知識の範囲内である。
1細胞あたり導入されるベータ蛋白の平均量は1×10−19グラム、1×10−18グラム、1×10−17グラム、1×10−16グラム、1×10−15グラム、1×10−14グラム、1×10−13グラム、1×10−12グラム、1×10−11グラム、1×10−10グラム、1×10−9グラム、1×10−8グラムから1×10−7グラム以上まで変動し得る。1細胞に導入されるベータ蛋白の平均量は1×10−6グラム、1×10−7グラム、1×10−8グラム、1×10−9グラム、1×10−10グラム、1×10−11グラム、1×10−12グラム、1×10−13グラム、1×10−14グラム、1×10−15グラム、1×10−16グラム、1×10−17グラムから、1×10−18グラム以下にまで変動し得る。
これらのベクターは、特に、宿主細胞中のベータ蛋白コーディング配列を増殖させるために(クローニングベクター)、ベータ蛋白コーディング配列を、異種生物から誘導された宿主細胞間を行き来させるために(シャトルベクター)、ベータ蛋白コーディング配列を宿主細胞染色体に挿入するために(挿入ベクター)、ベータ蛋白を単独でまたは非相同ポリペプチドとの融合体としてin vitroまたは宿主細胞内で発現させるために使用できる。
ベクターは今や当業者には公知であり、特にジョーンズ(Jones)ら(編集)、ベクター:クローニング・アプリケーション:必須技術(必須技術シリーズ)(Vectors:Cloning applications:Essential Techniques(Essential Techniques Series))、ジョ ン ウィリー&ソン社、1998(ISBN:047196266X);ジョーンズら(編集)、ベクター:発現系:必須技術(必須技術シリーズ)(Vectors:Expression Systems:Essential Techniques(Essential Techniques Series))、ジョン ウィリー&ソン社、1998(ISBN:0471962678);ガセサ(Gacesa)ら、ベクター:必須データ(Vectors:Essential Data)、ジョンウィリー&ソンズ社、1995(ISBN:0471948411);シド−アレグ(Cid−Arregui)(編集)、ウィルスベクター:基礎科学および遺伝子治療(Virus Vectors:Basic Science and Gene Therapy)、イートン・パブリッシング社、2000(ISBN:188129935X);サムブルック(Sambrook)ら、分子クローニング:実験室マニュアル(Molecular Cloning:A Laboratory Manual)(3版)、コールドスプリングハーバー・ラボラトリー・プレス、2001(ISBN:0879695773);アウスユーベル(Ausubel)ら(編集)、分子生物学におけるショートプログラム:分子生物学における最新プロトコルによる方法概論(Short Protocols in Molecular Biology:A Compendium of Methods from Current Protocols in Molecular Biology)(4版)、ジョンウィリー&ソンズ、1999(ISBN:0473132938X)に記載されている、これらの開示は参考としてその全体が本明細書中に援用される。さらに、膨大な種類のベクターが市販されている。現存のベクター類の使用およびその変形は当業者には公知であるから、基礎的特徴だけをここに記載する。
一般的にはベクター類はウィルス、プラスミド、原核または真核生物の染色体要素、またはそれらの組み合わせから誘導され、少なくも1つの複製起点、一般的には複数の密に凝集した単一切断制限部位を有するポリリンカーの形をした少なくとも1つの非相同核酸挿入部位、および少なくとも1つの選択マーカーを含む;ただしある組込みベクターには、宿主において染色体を改変するようにはたらく開始点がなく、あるベクターには選択マーカーがない。本発明のベクター類はさらに、そのベクターの少なくも1個所に挿入された少なくも1つのベータ蛋白コーディング配列を含む。
存在する場合、複製起点および選択マーカーは所望宿主細胞または宿主細胞類に基づいて選ばれる;宿主細胞自体は所望の用途に基づいて選択される。
原核細胞、一般的には大腸菌の場合、ベクターの複製は大腸菌感染ファージ、例えばファージラムダ、M13、T7、T3およびP1など、の複製法で予測される、または自動的に複製するエピソーム類、特にColE1プラスミドおよびその後の誘導体類、例えばpBR322およびpUCシリーズプラスミド等の複製起点で予測される。大腸菌を宿主として使用する場合、選択マーカーもグラム陰性菌における選択性で選ばれる:例えば典型的マーカーはアンピシリン、テトラサイクリン、クロラムフェニコール、カナマイシン、ストレプトマイシン、ゼオシンなどの抗生物質に耐性を与える。栄養素要求マーカーも使用できる。
酵母細胞、一般的にはS.cerevisiaeの場合、酵母に使用する本発明のベクターは必ずというわけではないが、一般的に酵母に使用するのに適した複製起点と、酵母中で機能する選択マーカーを含む。
組込み型YIpベクターは自動的には複製せず、一般的には単一コピーで低頻度で酵母ゲノムに合体し、宿主細胞染色体の一部として複製する;これらのベクターは細菌細胞中におけるベクターの増殖に適した複製起点を少なくも1つは有するのが普通であるとはいえ、これらのベクターには酵母中で機能する複製起点が欠けている。これに対してYEpベクターは酵母の2ミクロンのプラスミド起点(2μm ori)が存在するため、エピソームによって自律的に複製する。YCp酵母動原体プラスミドベクターは動原体配列、CEN、および自律的に複製する配列、ARS、を含む自律的に複製するベクターである;ARS配列は酵母染色体の天然の複製起点に対応すると考えられる。YACsはYLpと呼ばれる酵母線状プラスミドを基礎にしており、このプラスミドはテロマー(TEL)としてin vivoで機能する相同または非相同DNA配列を含み、酵母ARS(複製起点)およびCEN(動原体)セグメントも含む。
酵母ベクターの選択マーカーは種々の栄養素要求マーカーを含む;その最も一般的なものは(Saccharomyces cerevisiae中の)URA3、HIS3、LEU2、TRP1およびLYS2であり、これらはura3−52、his3−D1、leu2−D1、trp1−D1およびlys2−201など、特異的栄養素要求性変異を補完する。URA3およびLYS2酵母遺伝子はさらに固有のインヒビタ、5−フルオローオロチン酸(FOA)およびα−アミノアジピン酸(αAA)それぞれに基づく負の選択を可能にする。上記インヒビタはそれぞれ、原栄養体株の増殖は阻止するが、ura3およびlys2突然変異体を増殖させる。その他の選択マーカーは例えばゼオシンに対する耐性を与える。
宿主細胞がSpodoptera frugiperda由来のものである場合−例えばSf9およびSf21細胞系、およびexpresSF(登録商標)細胞(プロテイン・サイエンシス社、メリデン、CT、USA)−、ベクター複製法はバキュロウィルス生活サイクルに基づくのが普通である。一般的にバキュロウィルス・トランスファーベクターは野生型AcMNPVポリヘドリン遺伝子をベータ蛋白コーディング配列で置換するために使用される。野生型ゲノム中のポリヘドリン遺伝子にフランクする配列は上記トランスファーベクターの発現カセットの5’および3’末端にある。AcMNPV DNAとの同時トランスフェクション後、相同組換え事象がこれらの配列間で起き、ベータ蛋白コーディング配列およびポリヘドリンまたはp10プロモータを担持する組換えウィルスが生成する。選択はlac融合活性のビジュアル・スクリーニングに基づいて行うことができる。
哺乳動物細胞の場合、自律的染色体外複製のためのベクター類は一般的にはSV40オリジンなどのウィルス・オリジン(大きいT−抗原を発現する細胞系、例えばCOS1およびCOS7細胞などにおける複製用)、パピローマウィルス・オリジン、または長期エピソーム複製のためのEBVオリジン(EBV EBNA−1遺伝子産物を構成的に発現する例えば293−EBNAなどに使用するため)を含む。組込みのためのベクター、したがって哺乳動物染色体の一部として複製するためのベクターは、(必須ではないが)哺乳動物細胞内で機能する複製起点、例えばSV40オリジンなどを含むことができる。アデノウィルス、アデノ随伴ウィルス、ワクシニアウィルス、および種々の哺乳動物レトロウィルスなどのウィルスに基づくベクター類は一般的にウィルス複製戦略によって複製する。
哺乳動物細胞に使用するための選択マーカー類には、ネオマイシン(G418)、ブラスチジン、ハイグロマイシンおよびゼオシンに対する耐性が含まれ、HAT培地を使用するプリンサルベージ経路に基づく選択が含まれる。
植物細胞の場合、ベクターのレプリコンは、一般的には植物ウィルス(例えばカリフラワーモザイクウィルス、CaMV;タバコモザイクウィルス、TMV)および植物に適するように選択された選択マーカーから誘導される。
本発明はさらに、ベータ蛋白コーディング配列を含むベクターとして使用するための人工的染色体−BACs、BiBACs、YACs、PACs、およびHACs−を提供する。
BAC系は十分特徴づけられた大腸菌F−因子(宿主細胞のスーパーコイル・サーキュラーフォームに存在する低コピープラスミド)を基礎とする。F−因子は個々のヒトDNAクローンのメンテナンスを安定化し、クローン化DNAの操作を容易にする。シズヤら、Keio J.Med. 50巻(1号):26−30ページ(2001);シズヤら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、89巻(18号):8794−7ページ(1992)を参照されたい。
YACは、in vivoでテロマー(TEL)として機能する相同または非相同DNA配列並びに酵母ARS(複製起点)およびCEN(セントロマー)セグメントを含むYLpと呼ばれる酵母線状プラスミドを基礎としている。
HACはヒト人工染色体である。クロイワら、Nature Biotecnol. 18巻(10号):1086−90ページ(2000);ヘニング(Henning)ら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、96巻(2号):592−7ページ(1999);ハリントン(Harrington)ら、Nature Genet. 15巻(4号):345−55ページ(1997)。一変法において、アルファサテライトDNAの長い合成アレーをテロマーDNAおよびゲノムDNAと組み合わせ、選択せずに細胞分裂的および細胞発生的に安定な線状ミクロ染色体を生成する。
PACはP1誘導性人工染色体である。ステンバーグ(Stemberg)、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、87巻(1号):103−7ページ(1990);ステンバーグら、New Biol. 2巻(2号):151−62ページ(1990);ピアース(Pierce)ら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、89巻(6号):2056−60ページ(1992)。
本発明のベクター類は挿入された非相同核酸からのRNAのin vitro転写を可能とする要素も含むことが多い。このようなベクター類は核酸挿入物にフランクするT7、T3またはSP6に由来するようなファージプロモータを含むのが一般的である。2種類のそのようなプロモータが挿入核酸にフランクし、センスおよびアンチセンス鎖両方のin vitro生成を分離することがよくある。
本発明の発現ベクター−すなわちベータ蛋白コーディング配列の発現を推進するベクター類−はそのコーディング配列に操作可能に結合する種々のその他の遺伝要素、すなわち一般的にはプロモータおよびエンハンサ要素など、転写を促進する遺伝要素、転写ターミネータおよび/またはポリアデニレーション信号などの、RNAプロセッシングを容易にする遺伝要素、そしてリボソーム性コンセンサス配列などの翻訳を容易にする遺伝要素などを含むことがよくある。
例えば、原核細胞、典型的には大腸菌、において本発明の蛋白を発現するベクターはプロモータを含む;ファージラムダpLプロモータなどのファージプロモータ、trcプロモータ(trpおよびlacプロモータから誘導されるハイブリッド)、バクテリオファージT7プロモータ(大腸菌細胞内で操作され、T7ポリメラーゼを発現する)、またはaraBADオペロンが含まれることが多い。そのような原核細胞発現ベクターはさらにaspAターミネータなどの転写ターミネータ、およびコンセンサス・リボソーム結合部位、翻訳終止コドンなど翻訳を容易にする要素も含むことが多い。ショマー(Schomer)ら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、83巻:8506−8510ページ(1986)。
また別の実施例において、酵母細胞、典型的にはS.CEREVISIAEにおいて本発明の蛋白を発現するベクター類は、CYC1プロモータ、GAL1プロモータ、ADHプロモータまたはGPDプロモータなどの酵母プロモータを含み、一般的には、転写終結を容易にする要素類、例えばCYC1又はADH1遺伝子からの転写終結シグナルなどを含む。
また別の例において、哺乳動物細胞においてベータ蛋白コーディング配列を発現するベクター類は、哺乳動物細胞中で活性を有するプロモータを含む。そのようなプロモータは哺乳動物のウィルスに由来することが多く、例えばヒトサイトメガロウィルス(CMV)の即時初期遺伝子(immediate early gene)からのエンハンサ−プロモータ配列、ラウス肉腫ウィルス末端反復配列(RSVLTR)からのエンハンサ−プロモータ、およびSV40からのエンハンサ−プロモータなどである。発現は、後期SV40ポリアデニレーション部位およびポリアデニレーション信号などのポリアデニレーション部位およびウシ成長ホルモン(BGH)遺伝子からの転写終結配列、およびリボソーム結合部位の挿入によって高まることが多い。さらに、ベクター類は、ウサギβ−グロビン遺伝子のイントロンIIなどのイントロン、およびSV40スプライス要素を含むことができる。
ベクター−駆動蛋白発現は構成的または誘導性でよい。
誘発性ベクターには天然誘発性プロモータ類、例えばlacオペロンによって調節されるtrcプロモータ、およびトリプトファンによって調節されるpLプロモータ、デキサメサゾンによって誘発されるMMTV−LTRプロモータなどがあり、または隣接プロモータに誘導性コントロールを与える合成プロモータ類および/または付加的要素を含むことができる。誘導性合成プロモータの例はハイブリッドPlac/ara−1プロモータおよびPLtetO−1プロモータである。PLtetO−1プロモータはファージラムダのPLプロモータからの高い発現レベルを利用するが、ラムダリプレッサー部位をTn10テトラサイクリン耐性オペロンのオペロン2の2つのコピーで置換されると、このプロモータはTetリプレッサー蛋白によって強く抑制され、テトラサイクリン(Tc)および、アンヒドロテトラサイクリンなどのTc誘導体に反応して誘発されるようになる。
誘導性要素のその他の例として、グルココルチコイド反応要素(GRE)およびエストロゲン反応要素(ERE)などのホルモン反応要素は、対応スルホルモンレセプタを有する細胞に発現させるためにベクターを使用する際には、ホルモン誘発性を与えることができる。発現のバックグラウンドレベルを低下させるために、昆虫ホルモンであるエクジソンに反応する要素を代わりに使用して、エクジソンレセプタを同時発現させる。
発現したベータ蛋白が、精製および/または可視化を容易にする小蛋白タグと融合するように、発現ベクターを設計することができる。
例えば、ベータ蛋白をポリヒスチジンタグと共に発現させることができる;ポリヒスチジンタグは、NiNTA樹脂(キアゲン(Qiagen)(登録商標)社、バレンシア、CA、USA)またはTALON(登録商標)樹脂(コバルト固定アフィニティークロマトグラフィー培地、クロンテク・ラボ(Clontech Labs)、パロアルト、CA、USA)を使用する固定金属アフィニティークロマトグラフィーによる融合蛋白の精製を容易にする。また別の例として、ベータ融合蛋白は、キチン結合タグおよび自己切採インテインを含むことができ、、融合タグの自己除去を伴うキチン−ベースの精製が可能である(IMPACT(登録商標)システム、ニューイングランド・バイオラボ(New England Biolabs)社、ビバリー、MA、USA)。或いは、ベータ融合蛋白はカルモジュリン結合ペプチド・タグを含み、カルモジュリン・アフィニティー樹脂(ストラタジーン(Stratagene)、ラジョラ、CA、USA)による精製を可能とし、またはビオチンカルボキシラーゼ担体蛋白の固有の切採可能断片を含み、アビジン樹脂およびその後のタグ除去によるin vivoビオチニル化蛋白の精製を可能にする(プロメガ、マジソン、WI、USA)。また別の有用な例として、ベータ蛋白をグルタチオン−S−トランスフェラーゼとの融合体として発現させることができる。グルタチオンとの結合の親和性および特異性により、グルタチオン・アフィニティー樹脂、例えばグルタチオン−スーパーフロー(Glutathion−Superflow)樹脂(クロンテク・ラボラトリーズ、パロアルト、CA、USA)などを用い、その後遊離グルタチオンにより溶出するという方法による精製が可能である。
その他のタグには、例えば抗−Xpress抗体(インビトロゲン(Invitrogen)、カールスバッド、CA、USA)によって検出できるエックスプレス(Xpress)(登録商標)エピトープ、抗−mycタグ抗体によって検出できるmycタグ、抗−V5抗体(インビトロゲン、カールスバッド、CA、USA)によって検出できるV5エピトープ、抗−FLAG(登録商標)抗体(ストラタジーン、ラジョラ、CA、USA)によって検出できるFLAG(登録商標)エピトープなどがある。
発現したベータ蛋白の分泌のために、ベクターは、リーダーペプチドなどの分泌シグナルをコードする適切な配列を含むことができる。例えば、pSecTag2ベクター(インビトロゲン、カールスバッド、CA、USA)は、マウスlgカッパ鎖のV−J2−C領域からの分泌シグナルを担い、種々の哺乳動物細胞系からのベータ蛋白を効率的に分泌させる5.2kbの哺乳動物発現ベクターである。
本発明のベータ蛋白、ベータ蛋白融合体、およびベータ蛋白断片類の長期間の高収率組換え生産のためには、安定的発現が特に有用である。
安定的発現は、選択マーカーを有するベクターを宿主細胞ゲノムに組み込み、その後インテグラントを選択することによって容易に実現する。
広範囲の哺乳動物組織型および細胞系において異種蛋白を高水準で安定的に発現するために、例えばpUB6/V5−His A、B、およびCベクター(インビトロゲン、カールスバッド、CA、USA)が設計されている。pUB6/V5−HisはヒトユビキチンC遺伝子からのプロモータ/エンハンサ配列を使用し、組換え蛋白の発現を促進する:293、CHO、およびNIH3T3細胞における発現レベルはCMVおよびヒトEF−1aプロモータからのレベルに匹敵する。bsd遺伝子は、強力な抗生物質ブラスチシジンを確実にトランスフェクトした哺乳動物細胞を速やかに選択することができる。
一般にはモロニーマウス白血病ウィルスから誘導される複製インコンピテント・レトロウィルスベクターは、組込まれたプロウィルスを有する安定なトランスフェクタントを作るために特に有用であることが示された。レトロウィルスの高効率的形質導入機構は、種々のパッケージング細胞系(例えばRetroPack(登録商標)PT67、EcoPack2(登録商標)−293、AmphoPack(登録商標)−293、GP2−293細胞系(全てクロンテク・ラボラトリーズ、パロアルト、CA、USAから入手できる))が入手できることと相俟って、広範囲の宿主を高い効率で感染させることができる;感染多重度を種々変えることによって、組み込まれたプロウィルスのコピー数は容易に調節される。レトロウィルスベクターは、ネオマイシン、ハイグロマイシン、およびプロマイシン耐性など種々の選択マーカーを与えられ、安定なインテグラントを容易に選択できる。
本発明はさらに、細胞内にエピソームとして存在するか、または宿主細胞染色体中に全部または一部組み込まれて存在する本発明のベータ発現ベクターを含む宿主細胞も含む。
その他の考察において(その幾つかは上に記載した)、ある宿主細胞株は、発現したベータ蛋白を所望の様態で操作できるという理由から選ばれる。ポリペプチドのそのような翻訳後修飾は、非制限的に、アセチル化、カルボキシル化、グリコシル化、ホスフォリル化、脂質化、およびアシル化を含み、本発明の一局面は、このような翻訳後修飾を有するベータ蛋白を提供することである。
上に述べたように、宿主細胞は原核細胞または真核細胞でよい。適切な宿主細胞の代表的例は、非制限的に、大腸菌、Caulobacter crecentus、Streptomyces種、およびSalmonella typhimuriumなどの細菌細胞;Saccharomyces cerevisiae、Scizosaccaromyces pombe、Pichia pastoris、Pichia methanolicaなどの酵母細胞; Spodoptera frugiperdaからの細胞などの昆虫細胞系−例えばSf9およびSf21細胞系、およびエクスプレスSF(登録商標)(プロテイン・サイエンシス社、メリデン、CT、USA)−ドロソフィラS2細胞、およびトリコプルシア ni ハイ・ファイブ(Trichoplusia ni High Five)(登録商標)細胞(インビトロゲン、カールスバッド、CA、USA);および哺乳動物細胞などである。典型的哺乳動物細胞には、COS1およびCOS7細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、NIH3T3細胞、293細胞、HEPG2細胞、HeLa細胞、L細胞、ネズミES細胞系(例:129/SV、C57/BL6、DBA−1、129/SVJ株からのもの)、K562、ジュルカット(Julkat)細胞、およびBW5147などがある。その他の哺乳動物細胞系が公知であり、米国培養コレクション(ATCC)(マナサス、VA、USA)およびコリエル・セル・レポジトリース(Coriell Cell Repositories)のナショナル・インスティチュート・オブ・ジェネラル・メディカル・サイエンシス(NIGMS)ヒューマン・ジェネティック・セル・レポジトリース(Human Cell Repository)(カムデン、NJ、USA)から容易に入手できる。
本発明のベクター類および核酸類を宿主細胞に導入する方法は当業者には公知である;方法の選択は主として導入される特異的ベクターおよび選択した宿主細胞によって決まる。
例えば、ファージλベクターは一般的にはパッケージング抽出物(例えばギガパック(登録商標)、ストラタジーン、ラジョラ、CA、USA)を使用してパッケージされ、パッケージされたウィルスが大腸菌感染に用いられる。プラスミドベクターは一般的には化学的コンピテントまたはエレクトロコンピテント細菌細胞に導入される。
大腸菌は例えばCaCl、またはMg2+、Mn2+、Ca2+、RbまたはKの溶液、ジメチルスルホキシド、ジチオスレイトール、およびヘキササミンコバルト(III)(ハナハン(Hanahan)、J.Mol.Biol. 166巻(4号:557−80ページ(1983))などで処理することによって化学的にコンピテントにすることができ、ベクターは熱ショックによって導入できる。種々様々の化学的コンピテント株が市場からも入手できる(例えばエピキュリアン・コリ(登録商標)XL10−ゴールド(登録商標)ウルトラコンピテント細胞(ストラタジーン、ラジョラ、CA、USA);DH5αコンピテント細胞(クロンテク・ラボラトリーズ、パロアルト、CA、USA);TOP10化学的コンピテント大腸菌キット(インビトロゲン、カールスバッド、CA、USA)など)。
細菌細胞は種々の予備的パルス処理によってエレクトロコンピテントにすることができる−すなわち、エレクトロポレーションによって外来DNAを取り上げる能力をもたせる;ベクター類はエレクトロポレーションによって挿入され、その後選択培地中で成長させる。プロトコルの広範囲のシリーズが“エレクトロプロトコル・オンライン:遺伝子トランスファーのためのプロトコル集”(Electropurotocols Online:Collection of Protocols for Gene Transfer)”にオンラインで提供されている(バイオラッド社、リッチモンド、CA、USA)(バイオラッド・ウェブサイトにあり)。
ベクター類はスフェロプラスト処理、リチウム塩処理、エレクトロポレーション、またはプロトプラスト融合法によって酵母細胞に導入することができる。
スフェロプラストは加水分解酵素−一般にはグルスラーゼ(Glusulase)と呼ばれるカタツムリ腸の抽出物、またはアルスロバクター・ルテウス(Arthrobacter luteus)からの酵素であるチモリアーゼ−(Zymolyase)を作用させ、1Mソルビットなどの浸透圧安定剤の存在下で細胞壁の部分を除去することによって作られる。DNAをスフェロプラトに添加し、その混合物をポリエチレングリコール(PEG)およびCa2+の溶液で共沈殿させる。その後、細胞を溶融寒天と混合したソルビット溶液に再懸濁し、それからソルビットを含む選択プレートの表面に層状にする。リチウム媒介性形質転換のために、酵母細胞を酢酸リチウムで処理する。これは細胞壁を明らかに浸透性にする。DNAを加え、細胞をPEGで共沈殿させる。細胞を短い熱処理にさらし、PEGおよび酢酸リチウムを洗浄によって除去し、その後通常の選択培地を含むプレート上に広げる。特別に作られた一本鎖担持DNAとある種の有機溶媒との使用によって形質転換の頻度は増加する。シーストル(Schiestl)ら、Curr.Genet. 16巻(5−6号):339−46ページ(1989)。エレクトロポレーションのために、新たに増殖した酵母培養菌を普通に洗い、ソルビットなどの浸透保護剤に懸濁し、DNAと混合し、その細胞懸濁液にエレクトロポレーション機器でパルスを与える。その後細胞を選択培地を含むプレートの表面に広げる。ベッカー(Becker)ら、Method Enzymol. 194巻:182−7ページ(1991)。エレクトロポレーションによる形質転換効率は、PEG、一本鎖担持DNAおよび後期対数期の成長期にある細胞を使用することによって100倍以上になり得る。YACsなどのより大きい構成物はプロトプラスト融合法によって導入することができる。
哺乳動物および昆虫の細胞はパッケージド ウィルスベクターによって直接感染することも、化学的または電気的手段でトランスフェクトさせることもできる。
化学的トランスフェクションのためには、DNAはCaPO4と共沈殿させるか、またはリポソーム性および非リポソーム性脂質ベースの作用物質を使用して導入することができる。市販のキットがCaPO4トランスフェクションのために提供され(カルフォス(登録商標)哺乳動物トランスフェクションキット、クロンテク・ラボラトリーズ、パロアルト、CA、USA)、脂質媒介性トランスフェクションは市販の試薬、例えばリポフェクタミン(登録商標)2000、リポフェクタミン試薬、セルフェクチン(登録商標)試薬、およびリポフェクチン(登録商標)試薬(インビトロゲン、カールスバッド、CA、USA)DOTAPリポソーマルトランスフェクション試薬、FuGENE(登録商標)6、X−tremeGENE Q2、DODPER(ロッシュ・モレキュラー・ビオケミカルス、インディアナポリス、IN、USA)、エフェクテン(Effectene)(登録商標)、ポリフェクト(Polyfect)(登録商標)、スーパーフェクト(Superfect)(登録商標)(キアゲン社、バレンシア、CA、USA)を使用して実施できる。哺乳動物細胞をエレクトロポレートするためのプロトコルは“エレクトロプロトコル オンライン:遺伝子トランスファーのためのプロトコル集”にオンラインで見いだすことができる(バイオラッド(BioRad)・ウェブサイトにあり)。
ノートン(Norton)ら(編集)の、遺伝子トランスファー法:生活細胞および生体へのDNA導入(Gene Trabsfer Method:Introducting DNA into Living Cell and Organisms)、バイオテクニクス・ブックス(BioTechnics Books)、イートン・パブリッシング社(2000)(ISBN1−881299−34−1)も参照されたい。これは参考としてその全体が本明細書中に援用される。
その他のトランスフェクション法には、パーティクル・ボンバードメントがある。例えばチェング(Cheng)ら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、90巻(10号):4455−9ページ(1993);ヤング(Yang)ら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、87巻(24号):9568−72ページ(1990)を参照されたい。
ベータ蛋白は当業者に公知の種々の技術によって作ることができる。例としては、非制限的に、適切な遺伝子構成物からのin vitro翻訳、並びにin vivo宿主細胞発現系、例えば細菌細胞(例えば大腸菌)、酵母細胞(例えばS.cerevisiaeなど)、昆虫細胞(例えばSf9など)または哺乳動物細胞(例えばHeLa、COS、CV1、L929、NIH3T3、CHO)などからの生産がある;この際上記細菌、酵母、昆虫または哺乳動物細胞は適切なベータ蛋白発現ベクターを含む。一般的には上記発現系から生産されたベータ蛋白は当業者に公知の方法を使用して精製される。
本発明のベータ蛋白および配列改変オリゴヌクレオチド類は、当業者の必要に応じて、一緒にまたは別々に細胞内に導入することができる。例えば、ベータ蛋白およびベクター類を当業者が決めた比率で一緒に混合し、それからトランスフェクション試薬で、またはエレクトロポレーション法などによって、細胞内に同時に導入することができる。本発明の方法のその他の実施形態においては、ベータ蛋白が最初に細胞内に導入され、その後当業者が決めたある間隔をおいて、配列改変オリゴヌクレオチドが導入される。或いは、配列改変オリゴヌクレオチドをベータ蛋白の前に導入してもよい。ベータ蛋白が、細胞内に存在する誘導性ベータ蛋白遺伝子発現構成物からの発現によって細胞内に導入される場合は、そのベータ蛋白の発現はオリゴヌクレオチドの導入前または導入後に誘発される。一般的に、ベータ蛋白の発現は配列改変オリゴヌクレオチドの導入前に誘発される。
ある遺伝子からベータ蛋白を発現することが望まれる場合、その遺伝子はエピソーム性要素として細胞内に存在していてもよいし、細胞染色体に組み込まれていてもよい。いずれの場合も、ベータ蛋白を発現する遺伝子の1コピーまたは複数コピーが存在し得る。本発明の目的に適したベータ蛋白発現構成物を構成する技術は当業者には公知であり、エピソーム性構成物を成長する細胞内に保存する技術、および細胞染色体内に組み込む構成物を作成する技術などである。構成物は構成性または誘発性プロモータ、並びにベータ蛋白のmRNAへの転写を刺激するエンハンサ要素を含むことが多い。プロモータおよびエンハンサ要素は、構成物を配置しようとしている細胞として、同じ有機体から誘導されても異なる有機体から誘導されてもよい。別の方法として、構成物には転写調節要素がなくてもよい。この場合にはその構成物は当業者に公知の知識によって、ベータ蛋白遺伝子の転写を刺激する天然の細胞転写調節要素の近くに挿入されることが多い。エピソーム性構成物は付加的に複製起点を含み、細胞が分裂した際にその構成物の複製が可能になることが多い。染色体に挿入しようとするエピソーム性構成物および構成物類は、その他に1つ以上の選択マーカーを含み、その構成物を含む細胞が当業者の知識によって特定の増殖特性に関して選択されるようにする。発現構成物はその他に、リボソーム翻訳の効率を高める翻訳調節領域(コザク(Kozak)配列など)を含み、ベータ蛋白mRNAを安定化する。真核細胞に発現するために、ベータ蛋白遺伝子は核ローカリゼーション信号を含み、上記蛋白が核内に能動的に運び込まれるようにする。
以下に記載の実施例はさらに、所望の標的核酸配列改変、例えばここに記載する挿入、欠失または置換変化などを含む所望の標的核酸改変を導入するオリゴヌクレオチド並びに複数の核酸配列改変を導入するオリゴヌクレオチドの核酸配列改変効率を高めるために使用するベータ蛋白の濃度を最適化する組成物、アッセイ系、および方法を明らかにする。当業者はあらゆる標的の修復を分析試験するためのこれらの系の一つを容易に変更して、この出願の教示を用いて所望核酸配列改変の導入のためのベータ蛋白の濃度を最適化することができる。
第二の局面において、本発明はオリゴヌクレオチド媒介性核酸配列改変の効率を高める組成物を提供する。
一実施形態において、この組成物は少なくも1つの配列改変オリゴヌクレオチド−例えばキメラオリゴヌクレオチド、二官能価オリゴヌクレオチド、または一本鎖、化学的修飾されたオリゴヌクレオチドなど−およびトリコスタチンなどのHDACインヒビタを含む。また別の実施形態において、この組成物は少なくも1つの配列改変オリゴヌクレオチドおよびベータ蛋白を含む。
本発明の組成物はex vivoまたはin vivo使用、例えば培養基中のバッチ処理細胞のために、培養基中の細胞へのマイクロインジェクションのために、または人間または動物への静脈内投与のために使用するのに適する医薬組成物として処方される。一般的に、動物に細胞内投与または静脈内投与するための組成物は無菌等張性緩衝水溶液である。必要ならば、組成物は可溶化剤およびリグノカインのような局所麻酔薬を含み、注射部位の痛みを緩和してもよい。概ね、これらの成分は個別に、または混合して、乾燥凍結粉末または無水コンセントレートなどの単位投与型にして供給される。組成物は活性薬剤の量を活性単位で記したアンプルまたは小袋などの密封容器に入れて保存される。組成物を注射によって投与する場合は、この組成物を滅菌医薬品グレードの“注射用水”または生理食塩液を含む注入びんに分配する。本発明の医薬組成物は配列改変オリゴヌクレオチド、HDACインヒビタ、ベータ蛋白、またはHUの任意の1種類以上、および薬物学的に容認されるこれらの塩類、および薬物学的に容認される成分、賦形薬、担体、アジュバントまたはビヒクルを含む。
in vivo使用に適する本発明の医薬組成物は、好ましくは注射可能の組成物の形で対象に投与される。その組成物は好ましくは非経口的に、すなわち静脈内、動脈内、髄腔内、組織内、または腔内に投与される。本発明の医薬組成物はヒトを含む哺乳動物に、その他の診断薬または治療薬と同様の方法で投与することができる。投与すべき量および投与法は年齢、体重、性別、対象の状態および遺伝因子などの種々の要因に依存し、最終的には医療関係者が上記の種々の用量の実験的測定値にしたがって決定する。概して、修復効果および治療効果のために必要な用量は約0.001ないし50,000μg/kg、より好ましくは1ないし250μg/kg宿主細胞またはボディマス、最も好ましくは30ないし60マイクロモル範囲内の濃度である。
HDACインヒビタまたはHUを動物に投与する場合、投与すべき用量および投与法は年齢、体重、性別、その動物の状態、遺伝因子などの種々の要因に依存し、最終的には獣医がここに記載の種々の用量の実験的測定値にしたがって決定する。概して、修復効果および治療効果のために必要な用量は約0.001ないし1000mg/kg体質量の範囲、より好ましくは10ないし200mg/kgの範囲、そして最も好ましくは50ないし100mg/kgである。HDACインヒビタをin vitro投与する場合、用量はナノモルないしマイクロモル濃度であり、約100−200μMであることが多い。
また別の実施形態において、本発明の組成物(そして別の局面では本発明のキット)は細胞抽出物または無細胞抽出物と、HDACインヒビタ、ベータ蛋白またはHUを含む。
本発明の組成物(またはキット)に使用される完全無傷細胞、または細胞修復蛋白を含む細胞抽出物の形の細胞は、細菌、真菌、植物および動物、例えばヒトまたはその他の哺乳動物を含む任意の生物からの細胞を含む。本発明のキットに使用する細胞は、例えばヒト肝臓、肺、結腸、子宮頸部、腎臓、上皮の培養細胞、COS−1およびCOS−7細胞(アフリカグリーンモンキー)、CHO−K1細胞(チャイニーズハムスター卵巣)、H1299細胞(ヒト上皮癌、非小細胞性肺癌)、C127(不死ネズミ乳上皮細胞)、MEF(マウス胚線維芽細胞)、HEC−1−A(ヒト子宮癌)、HCT15(ヒト結腸癌)、HCT116(ヒト結腸癌腫)、LoVo(ヒト結腸腺癌)、およびHeLa(ヒト子宮頸部癌)癌細胞並びにPC12細胞(ラット褐色細胞腫)および哺乳動物ES細胞(ヒト胚性幹細胞を含む)を含む。
本発明の組成物およびキットに使用する細胞−完全無傷細胞または、細胞修復蛋白を含む抽出物としての細胞−は哺乳動物胚性幹(ES)細胞も含むことができる。特定の管轄区域における現行の禁止事項をふまえて、この組成物は非ヒト哺乳動物ES細胞などの非ヒトES細胞は含むことができる。その他の管轄領域では組成物はヒトES細胞を含むことができる。例えば、組成物は米国フェデラル・ファンディング規準に適合するヒト幹細胞系を含むことができる。ナショナル・インスティチュート・オブ・ヘルスは現在下記施設によって保管されているものを含む既存の幹細胞系(http://escr.nih.gov)のリストを作成中である:ブレサゲン(BresaGen)社、アテンス、ジョージア(4ライン);シテラ(CyThera)社、サンジエゴ、カリホルニア(9ライン);カロリンスカ(Karolinska)社、ストックホルム、スウェーデン(5ライン);モナシュ(Monash)大学、メルボルン、オーストラリア(6ライン);ナショナル・センター・フォア・バイオロジカル・サイエンシス、バンガロー、インド(3ライン);リライアンス・ライフ・サイエンシス(Reliance Life Sciences)、マムバイ、インド(7ライン)、テクニオン−イスラエル・インスティチュート・オブ・テクノロジー(Technion−Israel Institute of Technology)、ハイファ、イスラエル(4ライン);カリフォルニア大学、サンフランシスコ、カリフォルニア(2ライン);ゴテボルグ(Goteborg)大学、ゴテボルグ、スウェーデン(19ライン);ウィスコンシン・アルムニ・リサーチ・ファウンデーション(Wisconsin Almuni Research Foundation)、マジソン、ウィスコンシン(5ライン)。
その他の実施形態において、本発明の組成物およびキットに使用するための細胞は酵母またはその他の真菌細胞、または例えばトウモロコシ、米、小麦、大麦、大豆、綿、およびジャガイモなどの植物からの細胞でよい。その他の例示的植物は本明細書の他の箇所に記載されるものを含む。
さらにまた別の実施形態において、本発明は標的配列を改変するためのキットを提供する。
一実施形態において、キットは少なくも1つの配列改変オリゴヌクレオチド−キメラオリゴヌクレオチド、二官能価オリゴヌクレオチドまたは一本鎖、キメラ改変オリゴヌクレオチドなど−およびトリコスタチンAなどのHDACインヒビタ、HUおよびベータ蛋白からなる群から選択される一つ以上の別々にパッケージされた試薬を含む。キットは任意に、使用説明書を含む。
一実施形態において、キットはベータ蛋白をコードする核酸を含む。その核酸はベータ蛋白発現ベクターのようなDNAまたはRNAでよい。発現ベクターは細胞内のエピソームとして存在するものでも、細胞の一染色体または複数の染色体に組み込まれたものでもよい。発現ベクターは誘発性プロモータによって、またはその代わりに構成性活性プロモータによって調節できる。
また別の実施形態において、本発明によるキットは配列改変オリゴヌクレオチドと、ベータ蛋白発現ベクターを含む宿主細胞とを含む。
さらに有益なことに、本発明のキットは配列改変オリゴヌクレオチドを細胞内に導入する手段;ベータ蛋白をコードする核酸を細胞に導入するための手段;ベータ蛋白発現構成物を細胞に導入するための手段;配列改変オリゴヌクレオチドおよびベータ蛋白を導入することが所望される細胞;および/または当業者が本発明の方法の様態を理解するのに十分な説明書を含む。追加的キット構成成分が当業者の知識および必要性によって提供できる。
実施形態のその他のシリーズにおいて、本発明のキットは追加的に、LNAをオリゴヌクレオチド(本発明の遺伝子修復法に適切に使用できるオリゴヌクレオチド)の5’および3’末端のどちらかまたは両方に付けるための試薬類を含む。
これらキットは末端を修飾するためのオリゴヌクレオチドを含む。そのような実施形態においては、オリゴヌクレオチドの配列は一般的に、所望されることが多い核酸配列改変を起こすように選択される。しかし、より一般的にはこれらキットはそのようなオリゴヌクレオチドを含まない。これら後者の実施形態において、ユーザーが、ユーザー所望の核酸配列改変を起こすように設計された配列を含むオリゴヌクレオチドを用意する。実施形態のこの両系列において、キットは任意に、末端修飾反応をコントロールするのに役立つ、および/または任意にその後の核酸配列改変プロセスをコントロールするのに役立つオリゴヌクレオチドを一つ以上含むことができる。
本発明の末端修飾キットは、少なくも1つのモノマーLNA、より一般的には2つ、3つまたはそれ以上のモノマーLNAが、オリゴヌクレオチドの3’末端またはオリゴヌクレオチドの5’末端のどちらかまたは両方に十分付くだけの試薬類を含む。
一般的にはこれらの試薬類には、別々にパッケージされた組成物として、A、G、T、およびCの各々に個別的に相補的なヌクレオ塩基類を有するLNAモノマー類が含まれ、ユーザーが、標的に対して非相補的な塩基を導入することなく、一端または両端にオリゴヌクレオチドを延ばすことができ、生成したオリゴヌクレオチドが、遺伝子修復プロセスによる修飾が望まれる部位を除く全ての部位で標的核酸に確実に相補的であるようにする。5’および3’末端両方の修飾を可能にするキットにおいて、5’末端修飾のためのLNAモノマーは、3’末端修飾のためのモノマーとは化学構造が異なっていてもよい;このような場合、5’および3’末端修飾のためのそれぞれのモノマーは一般には互いに別々にパッケ−ジされる。
3’末端を修飾できるキットの実施形態は、子ウシ胸腺末端デオキシヌクレオチジルトランスフェラーゼのような鋳型非依存性一本鎖ポリメラーゼ、および5’−トリホスフェート類を有するLNAモノマー類を含むのが一般的である。子ウシ胸腺末端デオキシヌクレオチジルトランスフェラーゼは、3’末端における一本鎖DNAへのヌクレオシドトリホスフェート類の非特異的鋳型非依存性重合を触媒する。サムブルック(Sambrook J.)、およびラッセル(Russel,D.W.)(2001)、分子クローニング:実験室マニュアル、3版、コールドスプリングハーバー・ラボラトリー・プレス、コールドスプリングハーバー、NY、9.60−9.61ぺージ。2’,3’−ジデオキシヌクレオシド トリホスフェート類をこの重合反応に使用する場合は単一のヌクレオチドがオリゴヌクレオチドの3’末端に付加する。このためこのキットは、その後の重合を可能にするLNAモノマー類を排除し、またはそれらに追加して、このようなジデオキシLNAモノマーを含むことが有用である。
これらの実施形態のキットは任意に、反応緩衝液および上記酵素反応を実施するための使用説明書を含むことができる。任意に、キットは、停止緩衝組成物などの上記反応を打ち切る手段、および反応体を取り出してオリゴヌクレオチドを作り、その後さらに修飾するか、または本発明の核酸配列改変法に使用する手段、例えばサイズ選択性スピンカラムなどを含むことができる。
5’修飾は、5’ホスフェートがあるオリゴヌクレオチド上で容易に行われる。例えば、5’修飾のためのキットはバクテリオファージT4ポリヌクレオチドキナーゼのようなキナーゼとアデノシン三燐酸とを有用に含み、5’ヒドロキシル基をあらわすオリゴヌクレオチドを燐酸化することができる。サムブルックおよびラッセル(2001)分子クローニング:実験室マニュアル、3版、コールドスプリングハーバー・ラボラトリー・プレス、コールドスプリングハーバー、NY、9.66−9.69ぺージ。
このような試薬類は分子生物学の研究室には一般的に見られ、オリゴヌクレオチドは、すでに5’ホスフェートを所有する業者または中央施設から注文できるため、他の実施形態においては本発明のキットはキナーゼおよびATPは含まない。
5’燐酸化オリゴヌクレオチドはその後イミダゾールの存在下で水溶性カルボジイミドを使用して活性化され、5’−ホスフォルイミダゾリドを形成する。チュー(Chu)ら(1983)Nucleic Acids.Res. 11巻(18号)6513−6529ページ。このためキットは一般的には2つに分かれた組成物として、1−エチル−3,3−ジメチルアミノプロピルカルボジイミドのような水溶性カルボジイミドと、反応時に5’−燐酸化オリゴヌクレオチドと結合するためのイミダゾールとを含む。
5’−ホスフォルイミダゾリドオリゴヌクレオチドはその後さらに、アミンのような求核性基を有するLNAモノマーと反応し、オリゴヌクレオチドの5’末端をLNAモノマーで伸長することができる。5’修飾のためにこの化学を利用するキットはさらにアミノ−LNAモノマーのような求核性LNAモノマーを含むのが一般的である。
別のアプローチにおいて、末端未修飾のオリゴヌクレオチドは、活性化されて5’ヒドロキシル基と反応するLNAによって5’末端が直接修飾される。このような実施形態では、活性化LNAモノマー類がキットに含まれる。
このような活性化型のLNAモノマーの一例はLNAホスフォルアミダイトである。LNAホスフォルアミダイトは、全てのヌクレオ塩基が“保護”されているオリゴヌクレオチドの5’末端と反応することができる。このようなオリゴヌクレオチドは標準固相合成法を使用して、ヌクレオ塩基を脱保護することなくそのオリゴヌクレオチドを合成支持体から分離するという様態で得られる。このようなオリゴヌクレオチドは業者または中央施設からそのように容易に注文できる。
オリゴヌクレオチドと、ホスフォルアミダイトのように活性化されたLNAモノマーとの反応後、伸長したオリゴヌクレオチドは、本発明の遺伝子修復法に使用する前に酸化され、脱保護される。
本発明のこの局面のキットのさらに別の実施形態において、不都合な副反応を回避し、付加的化学作用の利用を可能にするための保護基を有するLNAモノマーが提供される。これらの目的に適する保護基は当業者には公知である。例えばオリゴヌクレオチドおよび類似体のためのプロトコル:合成および特性(Oligonucleotides and Analogs:Synthesis and Properties)20巻(アグラワル(Agrawal)ら)、ヒューマン・プレス、1993;トトワ(Totowa)ら(1993)Tetrahedron 49巻、6123ページ;ボーケイジ(Beaucage)およびライア(Lyer)(1992)Tetrahedron 48巻、2223;およびウールマン(Uhlmann)およびペイマン(Peyman)(1990)、Chem.Rev. 90巻、543ページを参照されたい。LNA修飾オリゴヌクレオチドをさらに修飾する前に、またはLNA修飾オリゴヌクレオチドを遺伝子修復に使用する前に、これらの保護基を除去することも必要な付加的工程である。このような除去を起こすための試薬はこのようなキットに含まれてもよいし、ユーザーが提供してもよい。
実施形態のさらに別のシリーズにおいて、本発明のキットはさらに細胞または無細胞抽出物、HDACインヒビタ、ベータ蛋白、およびHUからなる群から選択される1つ以上の試薬、および任意に、配列改変オリゴヌクレオチドおよび/または使用説明書を含む。
本発明のキットのための細胞または無細胞抽出物は、任意の生物から誘導でき、同じ生物または異なる生物からの蛋白またはプレパレーションを直接補充することもできる。そのような蛋白は例えばRAD52エピスタシス群、ミスマッチ修復群、またはヌクレオチド除去修復群からのものでよい。特に有用な実施形態において、上記細胞または無細胞抽出物は真核細胞または組織、特に酵母細胞であり、またはこれらに由来するものである。別の実施形態において、キットは細胞または無細胞抽出物からパッケージされた、RAD52エピスタシス群、ミスマッチ修復群、またはヌクレオチド除去修復群からの少なくも1つの蛋白と、HDACインヒビタ、ベータ蛋白、またはHUを含む。
さらに別の局面において、本発明は、オリゴヌクレオチド媒介性配列改変の効率を高める追加的化学化合物を確認するアッセイ法を提供する。このようなアッセイ法は、核酸配列改変をもたらすことが判明している系においてサンプルを化学化合物および配列改変オリゴヌクレオチドと接触させ、その化学化合物が存在しない場合に比べて核酸配列改変の量がより少ないか、より多いか、または同じかを測定することを含む。抗生物質耐性(例えばテトラサイクリン、カナマイシンまたはハイグロマイシン耐性など)、GFP、およびFlAsH(登録商標)系(本明細書およびWO01/73002として公開された国際特許出願に開示されている)を含む多くの適切なアッセイ系が当業者には明らかである。
本発明の方法、組成物およびキットを使用して、非ヒト細胞のゲノム配列を改変することができる。その後このゲノム配列から非ヒト細胞および全ての非ヒト動物または植物が再生される。本発明のその他の局面は、これによって生成した非ヒト動物および植物である。
以下に示す非制限的例は、核酸配列改変効率を高め、1つ以上の所望標的核酸配列改変を導き出すオリゴヌクレオチドによる核酸配列改変の効率を高めるために必要な濃度を選択および最適化する方法、組成物およびキットをさらに詳しく明らかにする。当業者はここに示す教示を利用して、任意の所望標的の修正を分析試験するためにこれらの系の1つを容易に変更し、所望核酸配列改変の導入条件を最適化することができる。
実施例1:DNA修復遺伝子はin vitroにおける直接核酸配列改変能力に影響を与える

この実施例において、化学的に修飾された、ノンヘアピンの、内部が重複しない一本鎖オリゴヌクレオチドまたはキメラ二重ヘアピンのオリゴヌクレオチドを使用して、高いまたは低いDNA修復遺伝子発現を有する細胞から得た無細胞抽出物におけるエピソーム性標的配列の核酸配列改変を測定する。これらの標的配列は、例えばカナマイシン耐性遺伝子(pKanm4021)、テトラサイクリン耐性遺伝子、そしてハイグロマイシン耐性遺伝子とeGFPとの融合をコードする。各場合に、上記標的遺伝子は、コーディング領域における少なくも1つの点突然変異により、非機能性(non−functional)である。
核酸配列改変実験のための無細胞抽出物の調製および使用。例えば酵母細胞を2LのYPD培地中で30℃で対数期(OD600=0.5−0.8)にまで成長させる。それから培養物を5000×gで遠心分離し、ペレットを10%スクロース、50mMトリス、1mM EDTA溶菌溶液に再懸濁し、それらをドライアイス上で凍結させる。融解後、KCl、スペルミジンおよびリチカーゼを加え、それぞれの最終濃度を0.25mM、5mMおよび0.1mg/mlとする。その懸濁液を氷上で60分間インキュベートし、PMSFおよびトリトンX100を、それぞれ最終濃度0.1mMおよび0.1%になるように加え、氷上でインキュベートを20分間続ける。溶解物を3000×gで10分間遠心分離して大きいくずを除去する。それから上澄液を取り、30000×gで15分間遠心分離することによって澄明にする。澄明な抽出液にグリセロールを濃度10%(v/v)になるまで加え、一部づつ−80℃で凍結する。その抽出液の蛋白濃度をブラッドフォードアッセイによって測定する。
核酸配列改変活性を測定するために、野生型酵母株、またはRAD52エピスタシス群、ミスマッチ修復群、またはヌクレオチド除去修復群からの遺伝子に突然変異を有する酵母株のいずれかから得た無細胞抽出物10−30μg蛋白を含む反応混合物50μlを使用する;約1.5μgキメラ二重ヘアピンのオリゴヌクレオチド(KanGG、図1参照)または0.55μg一本鎖分子(KanGGと同じ改変に導く、それぞれ各末端に3または6ホスホロチオエート結合を有する3S/25Gまたは6S/25G、25マーオリゴヌクレオチド);および約1μgのプラスミドDNA(図1参照)を、20mMトリスpH7.4、15mM MgCl、0.4mM DTT、および1.0mM ATPを含む反応緩衝液中に含む反応混合物50μlを使用する。無細胞抽出物を加え、30℃で45分間インキュベートすることによって反応を開始する。それらのチューブを氷上に置いて反応を停止し、その後直ちに2回のフェノール/クロロホルム(1:1)抽出によってそれらを蛋白除去する。その後サンプルをエタノール沈殿し、15,000r.p.m.で4℃で30分間遠心して核酸をペレット化する;ペレットを70%エタノールで洗う;核酸を50μlのHOに再懸濁し;それを−20℃で保存する。
無細胞抽出物における核酸配列改変に与えるオリゴヌクレオチドの影響を次のように測定する。20mMトリスpH7.6;15mM MgCl;1mM DTT;0.2mMスペルミジン;2.5mM ATP;0.1mM各CTP、GTP、UTP;0.01mM各dATP、dCTP、dGTP、およびdTTP;0.1mM NAD;および10μg/ml BSAを含む反応混合物100μl中、約1μgのプラスミドpK4021および種々の量のオリゴヌクレオチドを使用する。無細胞抽出物10−80μgを加えることによって反応を開始し、その反応物を30℃で30分間インキュベートする。氷上で反応を停止し、2回のフェノール抽出および1回のクロロホルム抽出でプラスミドDNAを分離し、その後ドライアイス上で1時間エタノール沈殿を行い、4℃で30分間遠心分離する。ペレットを70%エタノールで洗い、50μlHOに再懸濁し、−20℃で保存する。
核酸配列改変の定量。セル−ポレーター(Cell−Porator)装置(ライフ・テクノロジーズ)を用い、400V、300μF、4kΩの設定で再懸濁液からのプラスミド5μl(〜100ng)を20μlのDH10B細胞にエレクトロポレートする。エレクトロポレーション後、細胞を、1または2ml SOCを含む14mlのファルコン(Falcon)スナップ−キャップ・チューブに移し、37℃で1時間振とうする。最終的カナマイシン耐性コロニー数を増やすために、カナマイシン(50μg/ml)を加えるか、または3mlSOCを10μg/mlカナマイシンと共に加えることによって改変配列を有するプラスミドを増幅し、細胞懸濁液を2または3時間以上37℃で振とうする。その後未希釈培養物100μl部分を、50μg/mlカナマイシンを含むLB寒天プレート上に、そして10希釈の100μl部分を、100μg/mlアンピシリンを含むLB寒天プレート上に直接培養する。或いは、まず最初に細胞を3750×gで遠心分離し、そのペレットを500μlSOC中に再懸濁する。再懸濁液(未希釈)200μlをカナマイシン(50μg/ml)寒天プレートに加え、10希釈液200μlをアンピシリン(100μg/ml)プレートに加える。一晩37℃でインキュベーション後、アクカウント(AccuCount)(登録商標)1000(ビオロジックス(BioLogics))を使用して細菌コロニーを数える。核酸配列改変効率は、希釈を補正したカナマイシン耐性コロニー対アンピシリン耐性コロニーの比として測定される。
或いは、次の操作法を使用する。再懸濁した反応混合物(総量50μl)の5μlを、セル−ポレーター装置(ライフ・テクノロジーズ)を使用して、20μl部分のエレクトロコンピテントDH10B細菌中で形質転換する。その混合物を1ml SOC中で37℃で1時間回復させ、その時間中に50μg/mlカナマイシンか12μg/mlテトラサイクリン(それぞれカナマイシンまたはテトラサイクリンプラスミドのための)を加え、さらに3時間インキュベートする。プレートする前に、細菌をペレット化し、200μlのSOCに再懸濁する。100μl部分をカナマイシンまたはテトラサイクリン寒天プレート上で培養し、培養物の10−4希釈物100μlをアンピシリン100μg/mlを含む寒天プレート上で培養する。アクカウント(登録商標)1000プレートリーダー(ビオロジックス)を用いてコロニー数を数える。
両方の培養法共、2回ずつまたは3回ずつ培養するのが普通である。各プレートは200−500アンピシリン耐性コロニーまたは0−500テトラサイクリンまたはカナマイシン耐性コロニーを含む。耐性コロニーを選択し、プラスミドを分離し、ABIキャピラリーシーケンサー(PEビオシステムズ)でABIプリズム キットを用いてDNA配列決定を行う。
酵母からの無細胞抽出物における核酸配列改変。カナマイシンプラスミド・アッセイ系を使用して酵母LSY678株からの無細胞抽出物を試験する。表1に示すように、反応は全ての反応成分に依存することが認められる。反応物中のオリゴヌクレオチド量または抽出物量の増加は相対的に修正効率を高めるのが一般的である。その後RAD52エピスタシス群、ミスマッチ修復群またはヌクレオチド除去修復群からの少なくも1つの蛋白が欠けている酵母株における核酸配列改変効率を分析する。msh2突然変異酵母株(LSY814)から生成した抽出物が、MSH2pに欠ける哺乳動物細胞に見られる下部遺伝子(lower gene)修復に類似した、修復活性の顕著な低下を示すことが判明した(表2)。rad57またはrad59突然変異株からの無細胞抽出物は、これらの遺伝子の機能性コピーを有する株に比較して、核酸配列改変活性をほとんど変化させず、rad23またはrad54突然変異株からの無細胞抽出物は核酸配列改変活性を若干増加させることが判明した。特に、△rad52(LSY386)株は約5倍ないし約25倍高い修復頻度を示すことが認められる。全てのサンプルにおいて、アンピシリン耐性コロニーは1プレートあたり500−600の範囲で、カナマイシンコロニーは10ないし300の範囲である。
遺伝子修復は修復蛋白の量に依存する。RAD52に欠ける抽出物の活性をより詳細に検討する。第一に、pKm4021の修復は3種類の成分:プラスミド、オリゴヌクレオチド、および抽出物、全ての添加に依存することが認められる(表3)。その修復は用量依存的であり、2種類の抽出物が混合している場合、反応物中に存在するLSY386(△rad52)抽出物の量に比例することも認められる(表3)。これらの抽出物中にRAD52が存在することはウエスターンブロット法によって確認される。RAD52欠損rad52突然変異株を、LSY678の代わりにrad23突然変異株(YELO37C)と混合する際、無細胞抽出物における修復に同様な効果が認められる。
最後に、RAD52を発現するプラスミドを含むLSY386またはLSY678からの無細胞抽出物の核酸配列改変効率を分析する。RAD52の発現は、LSY386またはLSY678から作られた抽出物中の核酸配列改変活性レベルを低下させることが認められる。LSY386では、修復レベルは野生型レベル近くにまで低下し、LSY678では修復レベルは野生型の4分の1に低下する(表3)。これらの株でウエスターンブロット分析を行った。これらの株ではRAD52蛋白発現レベルはほぼ等しい。これらの結果は、RAD52遺伝子の発現がオリゴヌクレオチド標的核酸配列改変を抑制することを示す。3つのコロニーからの標的プラスミドのDNA配列も分析し、抽出物が△rad51または△rad23に由来するサンプルにおいてさえ、標的塩基に精密な変化が起きることが認められる。したがって、突然変異および核酸配列改変頻度の差にもかかわらず標的特異性は保持される。
Figure 2005518817
種々の濃度のキメラオリゴヌクレオチドを、プラスミドpKm4021およびSaccharomyces cerevisiae(LSY678)からの無細胞抽出物の指示量と共に30℃で45分間インキュベートする。プラスミドを分離し、精製し、大腸菌(DH10B)にエレクトロポレートし、自動プレートリーダーを使用して耐性コロニーを定量する。相対的頻度は、カナマイシン耐性コロニー割るアンピシリン耐性コロニー(カナマイシン耐性コロニー/アンピシリン耐性コロニー)(×10−5)として示される。オリゴヌクレオチドKanCGは、ミスマッチがないことと、KanCGが突然変異を修正しないことを除けば、KanCGと同じ配列を有する。各データ点は5回の独立的実験の平均値として示される。
Figure 2005518817
1μgプラスミドpKm4021および1μgオリゴヌクレオチドKanCGを含む反応混合物(20μl)を指示された酵母株からの無細胞抽出物10μgと混合する。30℃で45分間インキュベーション後、プラスミドDNAを分離し、大腸菌(DH10B)にエレクトロポレートする。50μg/mlカナマイシンを含む寒天プレート上のカナマイシン耐性コロニーを数える。二重の反応混合物からのプラスミドも大腸菌(DH10B)にエレクトロポレートし、アンピシリン含有プレート上で培養する。Kanコロニー数割るAmpコロニー数によって相対的活性を決定する。これらの数値は5回の反応の平均をあらわす。
Figure 2005518817
反応混合物およびコロニーのプロセッシングは下記を除いて表1の説明と同様である。次のような突然変異を含む酵母株からの無細胞抽出物を使用する:LSY678(野生型)、LSY386(△rad52)、およびYELO37C(△rad23)。抽出物10μgまたは指示量を使用する。LSY386・p52として確認される反応物は、RAD52蛋白を発現するプラスミドを含む△rad52株(LSY386)からの無細胞抽出物を含む。LSY678・p52として確認される反応物はRAD52蛋白を発現するプラスミドを含む野生型株(LSY678)からの無細胞抽出物を含む。

実施例2:DNA修復遺伝子はin vivo核酸配列改変能力に影響を与える

この実施例において、本発明者らは化学的に修飾された、内部非重複の一本鎖オリゴヌクレオチドまたは二重ヘアピンのキメラオリゴヌクレオチド類を使用し、DNA修復遺伝子発現が高められたまたは低められた細胞中の標的核酸配列の核酸配列改変を測定する。これらの標的核酸配列は、例えばハイグロマイシン耐性遺伝子とeGFP(これはコーディング領域における少なくも一つの点突然変異により、非機能性である)との融合をコードする。標的配列はエピソーム性でも染色体性でもよい(例えば核、ミトコンドリアまたはプラスチドを含む)。エピソーム標的の核酸配列改変は、一般に染色体標的の核酸配列改変よりもわずかにより効率的である(2倍未満)。オリゴヌクレオチド類の修飾および標的ベクター類の構成は、2001年3月27日出願のクミエク(Kumiec)らの“修飾一本鎖オリゴヌクレオチドによる標的染色体ゲノムの改変(Targeted Chromosomal Genomic Alterations with Modified Single Stranded Oligonucleotides)”と題する同時係属国際特許出願WO01/73002に開示されている。この開示は参考としてその全体が本明細書中に援用される。
In vivoアッセイ系。エピソーム標的の核酸配列改変をモニターするために、プラスミドpAURHYG(rep)eGFP(これはハイグロマイシン耐性遺伝子中に点突然変異を含む)、pAURHYG(ins)eGFP(これはハイグロマイシン耐性遺伝子に単一塩基挿入を含む)、およびpAURHYG(△)eGFP(単一塩基欠失を有する)(図2に示される)を用いる酵母系を使用する。本発明者らはpAURHYG(wt)eGFPと呼ばれるハイグロマイシン−eGFP融合遺伝子の機能性コピーも対照として使用する。これらのプラスミドはひとまとめにしてpAURHYG(x)eGFPと表す。これらのプラスミドはアウレオバシジンA(aureobasidinA)耐性遺伝子も含む。pAURHYG(rep)eGFPにおいて、ハイグロマイシンBコーディング配列のコドン46の位置137のGがCに変換され、そのためハイグロマイシン耐性遺伝子コーディング領域の早期停止コドンが除去される場合にハイグロマイシン耐性遺伝子機能およびeGFP蛋白からの緑色蛍光が回復する。pAURHYG(ins)eGFPにおいて、ハイグロマイシンBコーディング配列のコドン46の位置136および137のヌクレオチド間に挿入されたAが欠失し、位置137のTがCに置換され、それによってフレームシフト突然変異が修正され、ハイグロマイシン−eGFP融合遺伝子のリーディング−フレームが回復するとき、ハイグロマイシン耐性遺伝子機能およびeGFP蛋白からの緑色蛍光が回復する。pAURHYG(△)eGFPにおいて、単一ヌクレオチド欠失部位にCが挿入される際にはハイグロマイシン耐性遺伝子機能およびeGFPからの緑色蛍光が回復する。
ハイグロマイシン−Bコーディング配列のヌクレオチド137に次に示すような点突然変異を含む3種類の酵母発現構成物pAURHYG(rep)eGFP、pAURHYG(△)eGFP、pAURHYG(ins)eGFPのセットを合成する:(rep)はT137→G置換を示し、(△)はG137の欠失を示し、(ins)はヌクレオチド136および137間へのAの挿入を示す。本発明者らはpHyg(x)eGFPからの制限消化およびpAUR123(パンベラ(PanVera)(登録商標)、CA)への結合によって、それぞれの発現カセットを切り取るという様態でこのプラスミドセットを構成する。10μgのpAUR123ベクターDNA並びに10μgの各pHyg(x)eGFP構成物をKponIおよびSalI(NEB)で消化する。DNA断片の各々をゲル精製し、酵素的結合のために準備する。T4DNAリガーゼ(ロッシュ)を使用して各突然変異挿入物をpAUR123ベクターに3:1のモル比で結合させる。クローン類を制限消化によってスクリーニングし、サンガー(Sanger)ジデオキシチェイン終結配列決定によって確認し、キアゲン(登録商標)マキシプレプ(maxiprep)キットを使用してプラスミドDNAを精製する。
染色体標的の核酸配列改変をモニターするためには、CYC1のような染色体遺伝子をモニターするための酵母系を使用するか、またはpAUR101−HYG(x)eGFPと呼ばれるもののような組込み型プラスミドを使用するのが一般的である。これらのプラスミドは酵母中では複製しない。これらのプラスミドは、pAURHYG(x)eGFPエピソームプラスミド系(図2に示される)に用いられるHYG(x)eGFP融合蛋白、およびアウレオバシジンA耐性遺伝子を含む。したがって、pAURHYG(x)eGFPのように、これらの構成物は全てのタイプの核酸配列改変、すなわち置換、挿入および欠失をモニターするためにも使用できる。この構成物の他に、本発明者らは例えばCYC1を含む固有の酵母遺伝子の核酸配列改変をモニターする。
図8に図式で示したように、pAUR101−HYG(x)eGFPプラスミドを構成する。つまり、10μgのpAUR101(パンベラ(登録商標)社)をSalIおよびKpnlで消化し、特異的BclI制限部位を含むリンカーを結合する。その後精製したプラスミド(“pAUR101−リンカー”)10μgをBclIで消化し、pAUR123からの1kb BamHI断片に結合させる。pAUR123からのBamHI断片はマルチプル−クローニング部位並びにADH1プロモータおよびターミネータ領域を含む。本発明者らはその後10μgのこのプラスミド(“pAUR101−プロモータ”)をSalIおよびKpnlで消化し、HYG(x)eGFP融合蛋白を含む、pAURHYG(x)eGFPからの1.8kb SalI/Kpnl断片に結合させる。生成したプラスミドはpAUR101−HYG(x)eGFPである。全てのDNA断片は制限酵素消化後にゲル精製し、酵素的結合のために準備する。全ての結合はT4DNAリガーゼ(ロッシュ)を使用して行われる。クローン類を制限消化によってスクリーニングし、サンガーのジデオキシチェイン終結配列決定によって確認する。
本発明者らはこれらプラスミドを野生型酵母細胞、並びに種々の遺伝子、例えばRAD52エピスタシス群、ミスマッチ修復群、およびヌクレオチド除去修復群などの遺伝子に突然変異を有する酵母株のゲノムに組み込む。10μgのプラスミドをSauI消化によって線状にし、その線状プラスミドを酵母細胞にエレクトロポレートすることによって、これらのプラスミドを酵母ゲノム内に組み込む。プラスミドは野生型AUR−C(アウレオバシジンA)遺伝子座における相同組換えによって組み込まれる。その後アウレオバシジンA上で選択し、上記プラスミドが組み込まれたクローンを確認する。このプラスミドが組み込まれたことをPCR分析およびサザーンブロット法によって確認する。単一並びに複数のプラスミドコピーが組み込まれた酵母株が得られる。
本発明者らはRD52エピスタシス群、ミスマッチ修復群、およびヌクレオチド除去修復群からの遺伝子を発現する一組の酵母発現プラスミドも合成する。TPL1遺伝子からのプロモータを有するプラスミドpYN132を使用する。これは下流がクローン化された遺伝子を高水準に構成的に発現させる(アルバー(Alber)ら、J.Mol.Appl.Genet. 1巻:419−34ページ(1982))。10μgのpYN132DNA並びにDNA修復蛋白の一つを含むPCR産物10μgをNdeIおよびXhoI(NEB)で消化することによって発現プラスミドを構成する。各DNA断片をゲル精製し、結合の準備をする。T4DNAリガーゼ(ロッシュ)を使用してPCR産物をpYN132ベクターに3:1のモル比で結合する。制限消化によってクローン類をスクリーニングし、サンガーのジデオキシチェイン終結配列決定によってクローンを確認し、キアゲン(登録商標)マキシプレプ−キットを使用してプラスミドDNAを精製する。
本発明者らは修飾オリゴヌクレオチド(図3に示される)について、野生型、突然変異体および付加的遺伝子(類)を発現する細胞など、種々の宿主細胞環境における核酸配列改変を促進する能力を分析試験するためにこの系を利用する。これらのオリゴヌクレオチドはpAURHYG(rep)eGFPにおける突然変異並びにpAURHYG(ins)eGFPまたはpAURHYG(△)eGFPにおける突然変異の修正に導く。これらのオリゴヌクレオチドのなかで第一のオリゴヌクレオチド、HygE3T/74、は核酸配列改変に導く配列を中心位置に有する74塩基のオリゴヌクレオチドである。第二のオリゴヌクレオチド(HygE3T/74NTと呼ばれる)はHygE3T/74の相補体である。第三のオリゴヌクレオチド(Kan70Tと呼ばれる)は標的配列に相補的でない非特異的、対照オリゴヌクレオチドである。或いは、配列は確認されているが、標的に対するミスマッチがないオリゴヌクレオチド、または完全にホスホロチオエート修飾されたオリゴヌクレオチド、または完全に2−O−メチル化された修飾オリゴヌクレオチドまたは完全にLNA修飾されたオリゴヌクレオチドを対照として使用できる。本発明者らはキメラRNA−DNA二重ヘアピン オリゴヌクレオチドでもこの系を使用する。
オリゴヌクレオチド合成および細胞類。本発明者らは使用できるホスフォルアミダイトを使用し、調節される孔を有するガラス支持体上でオリゴヌクレオチドを合成し、精製する。脱保護し、固体支持体から脱離した後、各オリゴヌクレオチドを例えばガンパー(Gamper)ら、Biochem. 39巻:5808−5816ページ(2000)に記載された方法などを使用してゲル精製する。オリゴヌクレオチドの濃度を分光光度法によって測定する(一本鎖またはヘアピンオリゴマーのA260単位あたり、それぞれ33または40μg/ml)。アッセイに使用されるプラスミドは、酵母(Saccharomyces cerevisiae)株LSY678(野生型)中でアウレオバシジン選択下で低コピー数に安定的に維持される。上記株LSY678は任意に付加的遺伝子突然変異を含んでいてもよいし、付加的蛋白(類)を発現するように改変(engineered)してもよい。
プラスミド類およびオリゴヌクレオチド類を酵母細胞に次に記すようにエレクトロポレーションによって導入し、エレクトロコンピテント酵母細胞を作る:単一コロニーをYPD培地10mlに接種し、300rpm、300℃で一晩振とうして培養菌を増殖させる。その後、一晩培養した培養物に新鮮YPD培地30mlを加え、OD600が0.5ないし1.0になるまで(3−5時間)30℃で振とうし続ける。3000rpm、4℃で5分間遠心分離し、細胞を25ml氷冷蒸留水中で2回再懸濁させることによって細胞を洗浄する。その後3000rpm、4℃で5分間遠心分離し、1mlの氷冷1Mソルビトールに再懸濁し、最後にそれら細胞を5000rpm、4℃で5000遠心分離し、細胞を120μl1Mソルビトールに再懸濁する。エレクトロコンピテント細胞をプラスミドまたはオリゴヌクレオチドで形質転換するために、特に記載がない限り、細胞40μlを核酸5μgと混合し、氷上で5分間インキュベートする。その後0.2cmエレクトロポレーションキュベットに混合物を移し、1.5kV、25μF、200Ωにセットされたバイオラッド・ジーン・パルサー装置で1回5秒のパルスでエレクトロポレートする。その後直ちに、1Mソルビトールを補充した1mlYPDに細胞を懸濁させ、その培養液を300rpmの振とう下で30℃で6時間インキュベートする。この培養液200μlを、300μg/mlハイグロマイシンを含む選択プレート上に広げ、この培養液の10希釈液200μlを、500ng/mlアウレオバシジンaおよび/またはハイグロマイシンを含む選択プレート上に広げ、30℃で3日間インキュベートして個々の酵母コロニーを増殖させる。プレート上のコロニー数を数え、10アウレオバシジンA耐性コロニーあたりのハイグロマイシン耐性コロニー数を決定することによって核酸配列改変効率を計算する。
野生型Saccharomyces cerevisiaeの種々の突然変異を修復する核酸配列改変。図3に示すオリゴヌクレオチド類について、3種類全てのプラスミドをin vivoで改変する能力を野生型酵母株LSY678を用いて試験する。これらの標的プラスミドは点突然変異(pAURHYG(rep)eGFP)、欠失突然変異(pAURHYG(△)eGFP)または挿入突然変異(pAURHYG(ins)eGFP)を含む。標的DNAの対側ストランドを標的にするオリゴヌクレオチドを試験し、ストランド特異的効果を確認し、またそのオリゴヌクレオチドをある範囲の濃度で試験し、遺伝子修復のための最適濃度を決定する。
表4(この実施例の終わりに示される)に示すように、どちらの鎖も標的にするオリゴヌクレオチドは、3種類全ての突然変異の修正を指向することが認められる。データは、pAURHYG(rep)eGFPにおける点突然変異はpAURHYG(ins)eGFPの挿入突然変異より効率的に修正され、pAURHYG(ins)eGFPの挿入突然変異それ自体はpAURHYG(△)eGFPの欠失突然変異より効率的に修正されることを示す。さらに、3種類全てのアッセイプラスミドにおいて、この系における核酸配列改変に最適なオリゴヌクレオチド濃度は5μgであることが認められる。しかしこれらオリゴヌクレオチドが広い濃度範囲にわたって修復をおこし得ることは注目される。最後に、標的DNA、HygE3T/74NT、のセンスストランドに相補的な配列を有するオリゴヌクレオチドは3種類全ての標的突然変異を、相補的オリゴヌクレオチド、HygE3T/74より効率的に修復する。HygE3T/74の使用に比較してHygE3T/74NTを使用する場合の修復効率の倍数差(fold difference)を表4の最後のカラムに示す。
組込み型pAUR101−HYG(x)eGFPプラスミドを含む株において、図3に示すオリゴヌクレオチド類が3種類の標的突然変異全てを改変する能力も試験する。本発明者らは、DNA二本鎖標的のどちらの鎖も標的にするオリゴヌクレオチドの複数の濃度を試験する。pAUR101−HYG(rep)eGFPプラスミドに置換突然変異を有するこれらのタイプの実験の結果は表14に示され、最適オリゴヌクレオチド濃度の決定の仕方に関するデータを含む。どちらのストランドも標的にするオリゴヌクレオチド類が、組込み型pAUR101−HYG(rep)eGFPプラスミドにおける点突然変異の修正に向かうこと、およびこの染色体標的に関する核酸配列改変のための最適オリゴヌクレオチド濃度が7.5μgであることが認められる。しかしここでも、オリゴヌクレオチドは広い濃度範囲にわたって修復を起こし得ることが認められる。標的DNAのセンスストランドに相補的な配列を有するオリゴヌクレオチド、HygE3T/74NTは、全ての試験濃度で、相補的オリゴヌクレオチド、HygE3T/74NTより効率的に染色体標的突然変異を修復することが認められる。HygE3T/74の使用に比較した、HygE3T/74NTを使用した場合の修正効率の倍差を表14の最後のカラムに示す。
RAD52エピスタシス群の遺伝子(類)に突然変異(類)を有する株における核酸配列改変。RAD52エピスタシス群の遺伝子に追加的突然変異(類)を有する酵母株を使用した際に、図3に示すオリゴヌクレオチド類がin vivoで核酸配列を改変する能力を試験する。これらの実験には、RAD52エピスタシス群の遺伝子の一つ以上に突然変異を有し、標的プラスミドpAURHYG(rep)eGFP、pAURHYG(ins)eGFPまたはpAURHYG(△)eGFPを含むLSY678(野生型)の誘導体を使用する。これらの細胞に5μgのHygE3T/74をエレクトロポレートし、ハイグロマイシンおよびアウレオバシジンA上にプレートして核酸配列改変効率を得る。プラスミドpAURHYG(rep)eGFP、pAURHYG(ins)eGFPまたはpAURHYG(△)eGFPに関するこれらの実験結果を表5、表6および表7にそれぞれ示す。RAD52エピスタシス群の遺伝子(類)における突然変異(類)を有する酵母株における、染色体標的に対する核酸配列改変効率もモニターする。
これらのデータは、RAD51、RAD52、RAD54、RAD55、RAD59、RAD50、MRE11またはXRS2に突然変異を有する酵母株において核酸配列改変効率は低下するかまたは変化しないことを示す。これらの実験で、RAD57に突然変異がるか、rad51/52に二重突然変異がある株に本発明者らが観察した核酸配列改変効率は、標的プラスミドとしてpAURHYG(ins)eGFPまたはpAURHYG(△)eGFPを使用する際には低下するが、驚いたことに、標的としてpAURHYG(rep)eGFPを使用する際にはこれらの株においては核酸配列改変効率の増加が認められる。標的としてpAURHYG(rep)eGFPを使用する際の核酸配列改変は、RAD54またはRAD55に突然変異を有する酵母株では低下することが認められる。プラスミドpAURHYG(wt)eGFPを含むLSY678酵母細胞で対照実験も行う。この株では、オリゴヌクレオチド類を付加しない場合でさえ、数え切れないほど多くのハイグロマイシン耐性コロニーがあることが認められる。本発明者らはRADエピスタシス群の単一遺伝子両方に突然変異を有する酵母株並びに二つ以上の遺伝子に突然変異がある酵母株を試験する。本発明者らはこれらの酵母株の、pAURHYG(x)eGFP突然変異の全てを修正する能力を試験する。
ミスマッチ修復遺伝子(類)に突然変異(類)を有する株における核酸配列改変。プラスミドpAURHYG(x)eGFPを含むミスマッチ修復遺伝子(類)に追加的突然変異(類)を有する酵母株を使用して、図3に示すオリゴヌクレオチドがin vivoで核酸配列を改変する能力を試験する。これらの細胞にHygE3T/74の5μgをエレクトロポレートし、ハイグロマイシンおよびアウレオバシジンA上にプレートし、核酸配列改変効率を得る。例えば、プラスミドpAURHYG(rep)eGFP、pAURHYG(ins)eGFPおよびpAURHYG(△)eGFPの場合のこれらの実験結果は表5、表6および表7にそれぞれ示される。RAD52エピスタシス群の遺伝子(類)に突然変異(類)を有する酵母株における、染色体標的に対する核酸配列改変効率もモニターする。
これらのデータは、MSH2、MSH3またはMSH6に突然変異を有する株では核酸配列改変は低い効率で起こり、PMS1に突然変異を有する株では高い効率で起きることを示す。標的としてプラスミドpAURHYG(rep)eGFP、pAURHYG(ins)eGFPまたはpAURHYG(△)eGFPのいずれかを使用する実験においても、相対的効率は異なるとはいえ、同じ一般的効果が認められる。プラスミドpAURHYG(wt)eGFPを含むLSY678酵母細胞を用いる対照実験においては、オリゴヌクレオチドの付加がない場合でさえ、数え切れないほど多くのハイグロマイシン耐性コロニーがあることが判明した。両方の単一ミスマッチ修復遺伝子に突然変異を有する酵母株、並びに2つ以上の遺伝子に突然変異を有する酵母株を試験する。これらの酵母株の、pAURHYG(x)eGFP突然変異の全てを修正する能力を試験する。
ヌクレオチド除去修復遺伝子(類)に突然変異(類)を有する株にお核酸配列改変。プラスミドpAURHYG(x)eGFPを含むヌクレオチド除去修復遺伝子(類)に追加的突然変異(類)がある酵母株を用いて、図3に示すオリゴヌクレオチド類のin vivo核酸配列改変能力を試験する。これらの細胞に5μgのHygE3T/74をエレクトロポレートし、ハイグロマイシンおよびアウレオバシジンA上にプレートして核酸配列改変効率を試験する。例えば、プラスミドpAURHYG(rep)eGFP、pAURHYG(ins)eGFPおよびpAURHYG(△)eGFPに関するこれらの実験結果を表5、表6および表7にそれぞれに示す。本発明者らはRAD52エピスタシス群の遺伝子に突然変異(類)を有する酵母株における染色体標的に対する核酸配列改変効率もモニターする。
これらのデータは、RAD10、RAD20またはRAD23に突然変異を有する株において、核酸配列改変が低効率で起きることを示す。これらの実験でRAD1に突然変異を有する株に認められた核酸配列改変効率は、標的プラスミドとしてpAURHYG(ins)eGFPまたはpAURHYG(△)eGFPのどちらかを使用した場合には低下するが、標的としてpAURHYG(rep)eGFPを使用した場合には増加する。標的としてpAURHYG(rep)eGFPまたはpAURHYG(ins)eGFPを用いた場合、EXO01に突然変異を有する酵母株における核酸配列改変は減少することが認められる。本発明者らはプラスミドpAURHYG(wt)eGFPを含むLSY678酵母細胞を用いる対照実験も行った;それは数え切れないほど多くのハイグロマイシン耐性コロニーを与える。本発明者らは両方の単一ヌクレオチド除去修復遺伝子に突然変異を有する酵母株並びに2つ以上の遺伝子に突然変異を有する酵母株を試験する。本発明者らはこれらの酵母株の、pAURHYG(x)eGFP突然変異の全てを修正する能力を試験する。
プラスミドからのDNA修復遺伝子(類)を発現する酵母株における核酸配列改変。RAD52エピスタシス群の遺伝子、ミスマッチ修復遺伝子およびヌクレオチド除去修復遺伝子などの、DNA修復遺伝子の発現の増加が、核酸配列改変効率に与える影響を試験する。これらの遺伝子の発現効果を、個々に、並びに2つ以上のグループとして試験する。DNA修復遺伝子の発現に導く誘発性プロモータを有するプラスミド、例えば図6に記載されるプラスミドを用いる。或いは、DNA修復遺伝子の発現に導く構成性プロモータを有するプラスミド、例えば図1、2、および4に記載されるプラスミドを使用する。
RAD52エピスタシス群、ミスマッチ修復群またはヌクレオチド除去修復群の遺伝子(類)の追加的コピーを有する酵母株を使用して、図3に示すオリゴヌクレオチド類の、in vivo核酸配列改変能力を試験する。これらの実験において、本発明者らはRAD52エピスタシス群、ミスマッチ修復群またはヌクレオチド除去修復群からの遺伝子のクローン化コピーを含むプラスミドpYN132またはpYN132の誘導体を含む、LSY678野生型の誘導体類を使用する。これらの株はさらに、プラスミドpAURHYG(rep)eGFP、pAURHYG(ins)eGFPおよびpAURHYG(del)eGFPの1つを、核酸配列改変をモニターするレポータとして含む。或いはこれらの株は、組込み型プラスミドpAUR101−HYG(x)eGFPの1つ以上のコピーを、核酸配列改変をモニターするためのレポータとして含む。これらの株におけるクローン化DNA修復遺伝子の発現をノザーンブロットおよび/またはウエスターンブロット法により確認する。
本発明者らはRAD10、RAD51、RAD52、RAD54、RAD55、MRE11、PMS1、REC2またはXRS2を発現するプラスミドをLSY678(野生型)に導入し、一本鎖オリゴヌクレオチド ベクター、Hyg3S/74NTの、pAURHYG(ins)eGFPプラスミドにおける核酸配列改変を指示する能力をモニターする。表9および表12に示すように、これらの実験から得られた結果は、RAD10、RAD51、RAD52、RAD54、MRE11、PMS1、またはXRS2遺伝子のうちの任意の1つの遺伝子の追加的発現も、核酸配列改変効率を1.2倍(RAD10)から7.5倍(RAD51)の範囲で増加させることを示す。これらのデータは、特定のDNA修復蛋白の追加的コピーが核酸配列改変効率を高めることを明らかに示している。本発明者らはまた、複数の蛋白を発現するプラスミドをLSY678(野生型)に導入し、表10に示すような核酸配列改変効率をモニターする。また、RAD52エピスタシス群、ミスマッチ修復群またはヌクレオチド除去修復群からのその他の遺伝子も、核酸配列改変効率の上昇に関して試験する。
RAD52エピスタシス群、ミスマッチ修復群またはヌクレオチド除去修復群における突然変異(類)をさらに含む酵母株を用いて上記のように核酸配列改変効率を試験する。例えば、RAD10、RAD51、RAD52、RAD54、RAD55、MRE11、PMS1、REC2またはXRS2を発現するpYN132誘導性プラスミド類を、RAD51、RAD52、MRE11またはPMS1に突然変異を有するLSY678株に導入する。その後、一本鎖オリゴヌクレオチドベクターHyg3S/74NTの、pAURHYG(x)eGFPプラスミドにおける核酸配列改変に向ける能力をモニターする。表11、表13および表15に示すように、本発明者らはRAD51、RAD52、MRE11またはPMS1含有pYN132に突然変異を有する株が、表9に示されるようにpYN132を含む野生型に比較して低い修正効率を示すことが認められる。これらのデータは、表6に示される突然変異株からの結果と一致する。一般に、これらの酵母株にRAD10、RAD51、RAD52、RAD54、MRE11、またはPMS1を発現させると、空のpYN132ベクターを有する突然変異体に比較して核酸配列改変効率が高まることが認められる。これらのデータは、これらの遺伝子の追加的発現が上記突然変異体において、野生型の場合と同様に、核酸配列改変効率の上昇を起こすことを示している。あるプラスミドからのRAD51を発現するRAD52突然変異体は非常に高い修正効率を与えることが認められる。本発明者らの考察では、あるプラスミドからRAD51を発現するPMS1突然変異体は、全ての被検株の最高修正効率を与える。突然変異酵母株における複数蛋白の発現効果も試験し、核酸配列改変効率をモニターする。
RAD52エピスタシス群、ミスマッチ修復群、またはヌクレオチド除去修復群の遺伝子(類)の追加的コピーを有する酵母株において染色体標的に与える核酸配列改変効率もモニターする。例えば、RAD51、RAD52、RAD54、RAD51+RAD54、RAD51+RAD52、MRE11、XRS2またはMRE11+XRS2を発現するpYN132誘導性プラスミドを、pAUR101−HYG(x)eGFPプラスミドの組込み型コピーに導入する。組込み型pAUR101−HYG(rep)eGFPを有する株を使用した実験から得られる結果を表16に示す。これらの結果はエピソーム性標的実験で認められた結果と一致する。
本発明者らはさらに、RAD52エピスタシス群、ミスマッチ修復群またはヌクレオチド除去修復群に突然変異(類)を含む酵母株を使用して上記のように染色体標的配列に対する核酸配列改変効率を測定する。例えば、RAD51、RAD52、RAD54、MRE11、PMS1、REC2、またはXRS2を発現するpYN132誘導プラスミド(類)を、pAUR101−HYG(x)eGFPの組込み型コピーを有し、RAD51、RAD52、MRE11、およびPMS1遺伝子の一つ以上に突然変異(類)を有するLSY678株に導入する。その後、一本鎖オリゴヌクレオチドベクター、Hyg3S/74NT、の、組込み型pAUR101−HYG(x)eGFPプラスミドにおける核酸配列改変に導く能力をモニターする。
本発明者らは、例えばその他の菌類、動物、植物および細菌などを含むその他の生物からのDNA修復遺伝子の異種発現の効果も試験する。
本発明者らはその他のオリゴヌクレオチド類を使用して、RAD52エピスタシス群、ミスマッチ修復群および/またはヌクレオチド除去修復群の遺伝子(類)の発現または活性が変化している酵母株に含まれるpAURHYG(x)eGFPプラスミドの複数の突然変異を修正する、個々のオリゴヌクレオチド類の能力も分析する。これらには例えば、3ヌクレオチド離れた2つの塩基対を改変するもので、配列5’−CTCGTGCTTTCAGCTTCGATGTAGGAGGGCGTGGGTACGTCCTGCGGGTAAATAGCTGCGCCGATGGTTTCTAC−3’(配列番号:17)を有する74マー;15ヌクレオチド離れた2つの塩基対を改変する、配列5’−CTCGTGCTTTCAGCTTCGATGTAGGAGGGCGTGGATACGTCCTGCGGGTAAACAGCTGCGCCGAGGTTTCTAC−3’(配列番号:18)を有する74マー;
および27ヌクレオチド離れた2塩基対を改変する、配列5’−CTCGTGCTTTCAGCTTCGATGTAGGAGGGCGTGGATACGTCCTGCGGGTAAATAGCTGCGCCGACGGTTTCTAC(配列番号:19)を有する74マーがある。これらオリゴヌクレオチド中の、標的配列の改変に導くヌクレオチドには下線を引き、太字で記載する。これらのオリゴヌクレオチドはこれまでに記載したオリゴヌクレオチドと同じ方法で修飾される。
プラスミドpAURNeo(x)FIAsHTM(図4)を含み、RAD52エピスタシス群、ミスマッチ修復群および/またはヌクレオチド除去修復群の遺伝子(類)の変化した発現または活性を有する酵母株を使用して、図1に示されるオリゴヌクレオチドの、in vivo核酸配列改変効率も試験する。このプラスミドは、ネオマイシン−ホスフォトランスフェラーゼ(カナマイシン耐性)遺伝子とFIAsHTMリガンドのためのレセプタをコードする伸長リーディングフレームとを含む合成発現カセットを、pAUR123シャトルベクターに挿入することによって構成される(パンベラ(登録商標)社、マジソン、WI)。本発明者らはpKm4021と同じ突然変異を有する構成物を作る。生成した構成物はS.CEREVISIAE中で低コピー数で複製し、アウレオバシジンA耐性を与え、ADH1プロモータからのNeo(x)FIAsHTM融合産物を構成的に発現する。小さいリガンドを結合させて蛍光複合体を形成できる固有のペプチド配列をコードするこの遺伝子のリーデイングフレームを伸長することによって、停止コドンの修正による発現の回復が共焦点顕微鏡によって実時間で検出できる。短縮されたNeo(−)FIAsHTM産物を修正し、Neo(+)FIAsHTM融合産物が生成すると、翻訳された融合蛋白はリガンド(FIAsHTM−EDT2)に結合し、細胞上に緑色蛍光を与える。FIAsHTMペプチドに融合する標的遺伝子を使用したその他の構成物をこのモデル系を使用して作り、付加的核酸配列改変事象を試験することができる。
酵母細胞中のNeo(+)FIAsHTM融合産物の存在を検知するために、FIAsHTMリガンドを、1Mソルビトールおよび20μMジスパーゼ3を含むYPDに混ぜ合わせることによって、ローディング緩衝液を作る。リガンド分子を、1μMFIAsHTM−EDT2および10μM 1,2−エタンジチオール(EDT)のYPD(シグマ社)に混入する。それから細胞100μlを、HBS、1mM ピルビン酸ナトリウム、10μM EDT、1Mソルビトールおよび20μMジスパーゼ3を含む等容量の洗浄緩衝液と混合する。適切な発光フィルタ(FIAsHTM−EDT2結合では505−550nmバンドパス)を備えたオムニクローム Ar−Krレーザーの488/568nm励起線を使用するツァイス・アキシオバート(Zeiss Axiovert)100mのツァイスLSM510レーザー操作顕微鏡で細胞を画像化する。同時に、488nm励起を用いて全ての蛍光画像でレーザー走査伝達画像または微分干渉コントラスト画像を得る。本発明者らはサンプルをラボテクIIチャンバード#1.5カバーグラス システム(Lab−tekII chambered #1.5 Coverglass system)(Nalge Nunc International,IL)に担持させ、それらをツァイス63x C−アポクロメト(C−Apochromet)浸水レンズ(NA1.2)を使用して画像化する。陽性および陰性対照を含む全てのサンプルは所定の実験セットで同一条件(レーザーパワー、ピンホール、PMTギャップ オフセットなど)のもとで組み込まれる。
本発明者らはFIAsH−EDT2モデル系を使用して、酵母株LSY678に存在するネオマイシン−ホスフォトランスフェラーゼ遺伝子(Neo)の突然変異の修正を観察する。核酸配列改変に導くKanGGまたはその他のオリゴヌクレオチドを、pAURNeo(−)FIAsHTMプラスミドの安定コピーを含むLSY386およびLSY678にエレクトロポレートする。テキサス・レッド(Texas Red)結合オリゴヌクレオチドを用いてオリゴヌクレオチドの取り込みを測定し、生存細胞の80%以上がオリゴヌクレオチドを受け入れるように、エレクトロポレーション条件を最適化する。KanGG、または核酸配列改変に導くその他のオリゴヌクレオチドがない場合は、LSY678(図5A)およびLSY386(図5B)両方にFIAsHTM−EDT2を添加後、共焦点顕微鏡によって低レベルのオートフルオレッセンスだけが認められる。しかし、KanGGを細胞に導入すると、LSY678およびLSY378にはそれぞれ図5Cおよび図5Dに見られるように、多くの修正された細胞が認められる。RDA52欠乏LSY378(図5D)には、LSY678株(図5C)に比較して、緑色蛍光を示す細胞数の顕著な増加が見られる。この結果は、RAD52遺伝子機能が欠乏している株における高度の遺伝子修復をあらわすものである。pAURNeo(−)FIAsHTMの修正も、酵母細胞におけるG418選択に対する耐性を与える。そのため、本発明者らは緑色蛍光あらわす典型的サンプルをG418を含む寒天プレート上で増殖させた。その後これら細胞中のプラスミドのDNA配列を決定する。配列分析の結果、G418選択後に分離されたプラスミドにおいて設計したように、標的塩基がGからCに変わっていることが判明した。RAD52エピスタシス群、ミスマッチ修復群およびヌクレオチド除去修復群においてその他の蛋白の発現または活性レベルが変化した酵母株で同様な実験を行う。
酵母突然変異体において、センスストランドを標的にするオリゴヌクレオチドは核酸配列をより効率的に改変する。一本鎖オリゴヌクレオチド類が、DNA修復遺伝子の発現の増加、または減少を示すLSY678突然変異株に存在するpAURHYG(ins)eGFP、pAURHYG(rep)eGFPまたはpAURHYG(△)eGFPの標的配列の2つのストランドの各々を標的化する能力を比較する。例えば、RAD1およびRAD10に突然変異を有する酵母株で行った実験結果が表8に示される。この実験のデータは、標的配列のセンスストランド(すなわちmRNAと同一である標的配列のストランド)に相補的な配列を有するオリゴヌクレオチド、HygE3T/74NTが、RNA合成のための鋳型として役立つストランドに相補的な配列を有するオリゴヌクレオチド、HygE3T/74、に比べて約10倍も効率的に遺伝子を容易に修正することを示す。しかし、DNA修復遺伝子に突然変異を有する酵母株に認められる効率の低下にもかかわらず、なおそれらオリゴヌクレオチド類は標的配列のいずれのストランドも明らかに標的にすることができる。さらに標的遺伝子の転写の役割を、図6に記載したような誘発性プロモータを有するプラスミドを使用して研究する。
その他の細胞におけるDNA修復遺伝子の影響。上記の酵母アッセイ系におけるDNA修復遺伝子の効果の試験に加えて、その他の細胞、例えばその他の菌類、動物、植物および細菌細胞などにおけるDNA修復遺伝子の発現または活性を改変する効果も試験する。正常なDNA修復遺伝子を有するその他の細胞並びにDNA修復遺伝子の改変されたレベルまたは活性を有する細胞、例えば相同遺伝子に突然変異を有するヒトおよび細菌細胞または相同遺伝子の追加的コピーを発現するヒトおよび細菌細胞などを使用する。例えば、本発明者らは、天然または非相同性(異種)DNA修復遺伝子のどちらかを発現するベクターで一過性にまたは安定的に形質転換される細胞を使用する。これらの細胞における核酸配列改変をモニターするために、本発明者らはリポータ遺伝子アッセイ系、例えばカナマイシン耐性、ハイグロマイシン耐性またはGFP発現などを用いる。或いは、あるオリゴヌクレオチドの、標的細胞のゲノムに存在する標的の核酸配列改変を指示する能力を分析する。例えば、β−グロビン遺伝子の鎌状赤血球T(βS)突然変異の、正常A(βA)対立遺伝子への変換、またはその逆をモニターする。
Figure 2005518817
*4実験から得られたヒグロマイシンプレート上の平均コロニー数
括弧内の数字はアウレオバシジン耐性コロニー1個あたりのヒグロマイシン耐性コロニー数をあらわす。
Figure 2005518817
*各株は指示された突然変異以外は野性型である。これらの実験に使われた突然変異は概ねノックアウト突然変異である。
Figure 2005518817
*各株は指示された突然変異以外は野生型である。これらの実験に使われた突然変異は概してノックアウト突然変異である。
Figure 2005518817
Figure 2005518817
*括弧内の数字は、蛋白をコードするDNA二本鎖の非転写ストランドを標的とする効率が他の一つのストランドを標的とす効率に比較して何倍増加するかを示す。
**各株は指示された突然変異体以外は野生型である。これらの実験に使われた突然変異は概ねノックアウト突然変異である。
Figure 2005518817
*全ての株が修正標的としてpAURHYG(ins)eGFPも含む。全ての酵母株は全てのDNA修復蛋白に関して野生型であり、示されているように、DNA修復蛋白を発現するプラスミドを含む。
Figure 2005518817
*全ての株は修正標的としてpAURHYG(ins)eGFPも含む。全ての酵母株は全てのDNA修復蛋白に関しては野生型であり、示されているようにDNA修復蛋白を発現するプラスミドを含む。
Figure 2005518817
*全ての株は修正標的としてpAURHYG(ins)eGFPも含む。全ての酵母株は、指示されたDNA修復蛋白における単一突然変異以外は野生型であり、示されたように野生型DNA修復蛋白を発現するプラスミドを含む。これらの実験に使われた突然変異は概ねノックアウト突然変異である。
Figure 2005518817
*全ての株は修正標的としてpAURHYG(ins)eGFPも含む。全ての酵母株は全てのDNA修復蛋白では野生型であり、示されたようにDNA修復蛋白を発現するプラスミドを含む。
Figure 2005518817
*全ての株は修正標的としてpAURHYG(ins)eGFPも含む。全ての酵母株は指示されたDNA修復蛋白における単一突然変異以外は野生型であり、示されたように野生型DNA修復蛋白を発現するプラスミドを含む。これらの実験に使われた突然変異は概ねノックアウト突然変異である。
Figure 2005518817
*3実験から得られたハイグロマイシンプレート上の平均コロニー数が示される。括弧内の数字はアウレオバシジン耐性コロニーの数(/105)を示す。
Figure 2005518817
*全ての株は修正標的としてpAURHYG(rep)eGFPも含む。全ての酵母株は指示されたDNA修復蛋白における単一突然変異以外は野生型であり、指示されたように野生型DNA修復蛋白を発現するプラスミドを含む。これらの実験に使われた突然変異は概ねノックアウト突然変異である。
Figure 2005518817
*全ての株は修正標的としてpAUR101−HYG(rep)eGFPを含む。全ての酵母株は組込み型プラスミド以外は野生型であり、示されたように野生型DNA修復蛋白を発現するプラスミドを含む。

実施例3:培養細胞の操作

単核細胞を正常ドナーのヒト臍帯血、骨髄または末梢血から、フィコル・ペイク・プラス(Ficoll Paque Plus)(アマーシャム・ビオサイエンシス(Amersham Biosciences)、ピスカタウエイ、NJ)密度遠心分離法を使用して分離する。CD34細胞を単核細胞から、前駆体またはマルチソート・キット(Multisort Kits)(ミルテニー・バイオテク(Milteny Biotec)、アーバーン、CA)のどちらかを使用して免疫磁気的に精製する。LinCD38細胞は、製造者のプロトコルによって、ステムセプ・システム(StemSep system)でネガティブ選択を使用して単核細胞から精製する。マイクロインジェクションに使用する細胞は新しく分離するか冷凍保存し、マイクロインジェクションの前の2ないし5日間ステム培地(S Medium)中で培養する。S培地は、フェノールレッドを含まないイスコヴス(Iscoves)の改良ダルベッコ培地(IMDM)を、100μg/mlグルタミン/ペニシリン/ストレプトマイシン、50mg/mlウシ血清アルブミン、50μg/mlウシ膵臓インスリン、1mg/mlヒトトランスフェリンおよびIMDM;ステム・セル・テクノロジー(Stem Cell Technologies)、40μg/ml低密度リポ蛋白(LDL;シグマ社、セントルイス、MO)、50mM HEPEs緩衝液および50μM2−メルカプトエタノール、20ng/mlの各トロンボポイエチン、fit3−リガンド、幹細胞因子、およびヒトIL−6(ペプロ・テク(Pepro Tech)社、ロッキーヒル、NJ)と共に含む。マイクロインジェクション後、細胞を脱離し、48ウェルプレートのウェルにまとめて移し、培養する。
35mm皿を、燐酸緩衝食塩液中50μg/mlフィブロネクチン(FN)断片CH−296(レトロネクチン;タカラ バイオメディカルス(TaKaRa Biomedicals)、パンベラ(登録商標)、マジソン、WI)で4℃で一晩コーティングし、グルタミン/ペニシリン/ストレプトマイシンを含むIMDMで洗う。300ないし2000細胞をクローニングリングに加え、マイクロインジェクションの前に45分間、37℃でプレートに付着させる。インキュベーション後、クローニングリングを取り、S培地2mlを各皿に加え、マイクロインジェクションを行う。インジェクション針を引き抜く;0.22μないし0.3μの範囲のチップ外径を使用する。37℃にセットされた温度調節ステージを備えた顕微鏡で細胞を可視化し、電子的に連動したエッペンドルフ・ミクロマニピュレータおよびトランスジェクタを使用して注入する。うまく注入された細胞は完全無傷で生きており、注入後プレートに付着したままである。蛍光標識をつけた分子によって、細胞に運搬されたオリゴヌクレオチドの量が決定できる。
LinCD38細胞からin vitroで赤血球を生成するために、マリク(Malik)の方法を使用できる(マリクら、Blood、91巻:2664−71ページ(1998))。細胞をME培地で4日間培養し、その後E培地で3週間培養する。赤血球生成は、グリコフォリンA発現、並びに培養細胞にヘモグロビンの存在を示す赤色の発生によって明らかになる。注入された細胞は、それらの増殖能力および骨髄系および赤血球系子孫の生成能力を保有する。CD34細胞はβ−グロビン遺伝子における正常A(β)を鎌状赤血球T(β)に突然変異で変えることができ、またはここに記載の本発明のオリゴヌクレオチドのいずれかを使用して改変され、正常遺伝子を変異体遺伝子に修正または改変することができる。或いは、幹細胞を遺伝病突然変異を有するヒトの血液から分離することができ、本発明のオリゴヌクレオチドを使用してこれら細胞内の欠陥を修正し、または細胞内のゲノムを改変することができる。
或いは培養細胞の非幹細胞集団を、当業者に公知の方法、例えばポリカチオン、カチオン性脂質、リポソーム、ポリエチレンイミン(PEI)、エレクトロポレーション、バイオリスティック、燐酸カルシウム沈殿または当業者に公知のその他の方法を使用して操作することができる。

実施例4:血液疾患の治療

本発明のキットおよび方法は、例えば標的細胞が幹細胞である場合、治療的アプローチに使用できる。これらのアプローチは種々の多能性幹細胞、例えば本明細書の他の箇所に記載されているナショナル・インスティチュート・オブ・ヘルスのリスト中のいずれかの幹細胞系、胚性幹細胞、および造血幹細胞などと共に使用できる。これらの細胞型のいずれかを使うこのようなアプローチが特に有益なのは、標的細胞がex vivoで操作でき、突然変異の修正、および所望の改変を有するクローンの選択が可能になるからである。これらの細胞はその後患者に再導入され、遺伝子的に修正された幹細胞からの子孫の再増殖が全体的にまたは一部起きる。造血幹細胞の場合、治療効果を得るためには宿主血液新生の完全な根絶は必要ないとは、患者の骨髄を除去した後に前記細胞を再導入する。(ブラウ(Blau)、Baillies Clin.Haematol、11巻、275−257ページ(1998)などを参照)。鎌状赤血球性貧血、タラセミア症候群、免疫学的疾患および凝血疾患などの血液疾患の多くは、本発明の組成物および方法を使用して造血幹細胞の染色体DNAの突然変異を修正し、これら細胞を患者に移植するという様態で治療することができる。
幹細胞に対する大部分の治療的アプローチは、ウィルスベクター、例えばレトロウィルスベクター、アデノウイルス(Ad)の部分またはアデノ随伴ウィルス(AAV)などを使用して特殊の蛋白の一部または完全部分をコードする核酸配列を運び込む。その蛋白が細胞に発現され、所望の表現型があらわれる。米国特許第5,700,470号などを参照されたい。真核生物の生体におけるこのような導入遺伝子ベクターの使用は、ある遺伝子(宿主にとって異種でもよい)の一つ以上の外来コピーを通常はランダムな方法で、上記生体のゲノムの一つ以上の組み込み部位にある頻度で付加する。本来そのゲノムに存在する遺伝子(それは正常な対立変種、突然変異、欠損、および/または機能的遺伝子でよい)は宿主のゲノムに保有される。これとは異なり、ここに記載される本発明の方法は、標的DNAの、後遺症のない(legacy−free)、精確な核酸配列改変をもたらし、ウィルスベクター遺伝子治療では起こえい得る免疫反応が起きない。
鎌状赤血球性疾患の治療。本発明のキットおよび方法を用いる幹細胞の突然変異の修正のモデルとして、本発明者らは、それらが血液、骨髄、臍帯血またはその他のヒト造血幹細胞のソースから得たヒト細胞のヘモグロビン鎌状赤血球突然変異を修正する能力を試験する。或いは、培養細胞またはマウスモデルにおけるヘモグロビン鎌状赤血球突然変異修正能力を試験する。鎌状赤血球対立遺伝子を含むヒトグロビンを専ら発現する多数のトランスジェニックマウス株が開発されている。専らヒト鎌状ヘモグロビンを発現するマウスは、抗鎌状赤血球治療を試験するのに十分信頼できる顕著な鎌状赤血球形病変を示す。ブルイン(Blouin)ら、Blood、94巻:1451−1459ページ(1999)およびファブリ(Fabry)ら、Blood、97巻:410−418ページ(2001)などを参照されたい。さらに、造血幹細胞の精製法および培養法は当業者には公知である。スパングルド(Spangrude)ら、Science、214巻:58−62ページ(1988)および米国特許第6,261,841号を参照されたい。
本発明者らはマウスの造血幹細胞を精製し、鎌状赤血球対立遺伝子を修正し、マウスに再挿入し、鎌状赤血球表現型をモニターする。
エイズの治療。HIV−1の標的細胞への侵入は、細胞表面CD4並びに付加的宿主細胞補因子を必要とすることは公知である。HIV−1の主要な向マクロファージ株(Macrophage−tropic strains)のエンベロープ糖蛋白を介する侵入のための主な補因子はCC−CKR5である。米国特許第6,057,102号などを参照されたい。CKR5の発現を完全に抑制するCKR5レセプタ突然変異に関してホモ接合である個体は、HIV感染に抵抗する。CKR5突然変異に関してヘテロ接合である個体は、HIV感染により強く抵抗し、CKR5突然変異に関してホモ接合である個体はヘテロ接合の個体よりより強く抵抗する。
ヒトCKR−5遺伝子の配列は公知であり、CKR−5の突然変異に起因する明らかに不都合な効果はない。よってHIV−1に感染した個体は、造血幹細胞を除去し、CKR−5に突然変異を導入することによって治療できる。

実施例5:ヒト血液細胞をHDACインヒビタで処理すると核酸配列改変効率は高まる

単核細胞を正常ドナーのヒト臍帯血から、フィコル ペイク プラス(アマーシャム・ビオサイエンシス)密度遠心分離法を使用して分離する。CD34細胞は単核細胞から、前駆体またはマルチソート・キット(ミルテニー・バイオテク、アーバーン、CA)を使用して免疫磁気的に精製される。LinCD38細胞は単核細胞から、製造者のプロトコル(ステム・セル・テクノロジー社、バンクーバー、CA)によって、ステムセプ・システムを使用するネガティブ選択により精製する。マイクロインジェクションまたはエレクトロポレーションまたはリロポソーム・トランスフェクションに本発明のオリゴヌクレオチドと共に使用する細胞は、新しく分離するか冷凍保存し、治療前の2ないし5日間ステム培地(S培地)中で培養する。S培地は、フェノールレッドを含まないイスコヴスの改良ダルベッコ培地(IMDM)を100μg/mlグルタミン/ペニシリン/ストレプトマイシン、50μg/mlウシ膵臓インスリン、1mg/mlヒトトランスフェリン、およびIMDM、40μg/ml低密度リポ蛋白(LDL;シグマ社、セントルイス、MO)、50mM HEPEs緩衝液および50μM 2−メルカプトエタノール、20ng/mlの各トロンボポイエチン、fit3−リガンド、キットリガンドと共に含み、50mg/mlウシ胎児血清アルブミン、幹細胞因子およびヒトIL−6(ペプロ・テク社、ロッキーヒル、NJ)を含むことができる。無血清培地の一ソースはクォリティ・バイオテクノロジカル社(ガイサーバーク、マリーランド)からのQBS60である。細胞は、本発明のオリゴヌクレオチドによる処理前に、170μMトリコスタチンAを含む培地に16時間培養される。処理後、細胞を脱離し、48ウェルプレートのウェルにまとめて移し、培養する。
マイクロインジェクションのためには、35mm皿を、燐酸緩衝食塩液中50μg/mlフィブロネクチン(FN)断片CH−296(レトロネクチン;タカラ バイオメディカルス)、パンベラ(登録商標)、マジソン、WI)で、4℃で一晩コーティングし、グルタミン/ペニシリン/ストレプトマイシンを含むIMDMで洗う。300ないし2000の細胞をクローニングリングに加え、マイクロインジェクションの前に45分間、37℃でプレートに付着させる。インキュベーション後、クローニングリングを取り、S培地2mlを各皿に加え、マイクロインジェクションを行う。インジェクション針を引き抜く;0.22μないし0.3μの範囲のチップ外径を使用する。37℃にセットされた温度調節ステージを備えた顕微鏡で細胞を可視化し、電子的に連動したエッペンドルフ・ミクロマニピュレータおよびトランスジェクタを使用して注入する。うまく注入された細胞は完全無傷で、生きており、注入後プレートに付着したままである。蛍光標識をつけた分子によって、細胞に運搬されたオリゴヌクレオチドの量を決定することができる。
エレクトロポレーションのために、TPO(50ng/ml)、キットリガンドおよびFLT3リガンド(100ng/ml)を含む無血清培地250μl中約2−4×10の細胞(同じサイトカイン類の存在下で72時間培養したもの)に、スクエア・ウェーブ装置(Square Wave apparatus)などのエレクトロポレーション装置において、VTXによってエレクトロポレートする。細胞には、1パルスに約25−30μgのオリゴヌクレオチドが220mVおよび960μFでエレクトロポレートされる。エレクトロポレーション後、細胞を、10%FCSおよびTPO(50ng/ml)、キット・リガンドおよびFLT3リガンド(100ng/ml)を含むイスコヴス培地で2.5×10細胞/mlに希釈し、フローサイトメトリーによって分析する。処置後約12時間、細胞を回復させ、死んだ細胞を除去する。細胞はその後培地に保持される。核酸配列改変の頻度は、細胞サンプルで、種々の時間に、細胞DNAのPCRサンプルの配列決定によって決められ、核酸配列改変効率が決定できる。造血幹細胞の核酸改変はエレクトロポレーション後少なくも4週間は保持された細胞集団における核酸配列改変によって示される。成熟細胞は時が経つと死に、分化可能の未成熟細胞の集団が残ると考えられる。
LinCD38細胞からin vitro赤血球を生成するために、マリク(N|Malik)、1998、の方法を使用する。細胞をME培地に4日間培養し、その後3週間E培地に培養する。赤血球生成はグリコフォリンA発現並びに培養細胞にヘモグロビンの存在を示す赤色の存在によって明らかになる。注入された細胞はそれらの増殖能力、および骨髄性および赤血球性子孫を生成する能力を保持できる。CD34細胞はβ−グロビン遺伝子内の正常A(β)を鎌状赤血球T(β)に突然変異で変えることができ、或いは本発明のオリゴヌクレオチドのいずれかによって改変され、正常遺伝子を突然変異体遺伝子に修正または改変し得る。或いは、幹細胞を遺伝病突然変異をを有するヒトの血液から分離し、本発明のオリゴヌクレオチドを使用してこれら細胞内の欠陥を修正し、ゲノムを変えることができる。
或いは、培養細胞の非−幹細胞集団を当業者に公知の方法、例えばポリカチオン、カチオン性脂質、リポソーム、ポリエチレンイミン(PEI)、エレクトロポレーション、バイオリスティックス、燐酸カルシウム沈殿、または当業者に公知のその他の方法などを使用して操作することができる。

実施例6:トリコスタチンA処理は、酵母細胞における核酸配列改変に導く能力に影響を与える。

この実施例において、トリコスタチンAを使用して、修飾主鎖を有する一本鎖オリゴヌクレオチドを使用する系においてオリゴヌクレオチド媒介性核酸配列改変効率を高める。pAURHYG(x)eGFP(図2)のようなエピソーム性標的または同じ標的の組み込み型コピーを使用してこれらの実験を行い、染色体遺伝子改変をモニターする。これらのアッセイ系は実施例2に記載されている。
実施例2に記載のように、エピソーム性プラスミドおよび組み込み型プラスミド共、アウレオバシジンA耐性遺伝子を含む。例えばpAURHYG(rep)GFPにおいて、ハイグロマイシン耐性遺伝子機能およびeGFP蛋白からの緑色蛍光は、ハイグロマイシンBコーディング配列のコドン46の位置137のGがCに変換され、ハイグロマイシン耐性遺伝子コーディング領域の早期停止コドンが除去されたときに復活する。
本発明者らはこの系を用いてトリコスタチンAのようなHDACインヒビタを含むおよび含まない、種々の条件下で、3オリゴヌクレオチド(図3に示される)の、修正を促進する能力を分析する。オリゴヌクレオチドHyg74T(HygE3T/74T)は改変のための標的塩基を中心に有する74塩基オリゴヌクレオチドである。Hyg74NT(HygE3T/74NT)と呼ばれる第二のオリゴヌクレオチドは、Hyg74Tの相補体である。Hyg10と呼ばれる第三のオリゴヌクレオチドは改変のための標的塩基を中心の位置に有する24塩基オリゴヌクレオチドである。オリゴヌクレオチド類の配列は図3に示される。Hyg74TおよびHyg74NTは各末端に3個のホスホロチオエートを有する一本鎖DNAオリゴヌクレオチドである。Hyg10は各端に1個のLNAを有する。標的配列に非相補的な、非特異的対照オリゴヌクレオチドを対照として使用できる。或いは、同一配列を有するが標的に対するミスマッチのないオリゴヌクレオチド、または完全にチオエート修飾されたオリゴヌクレオチド、または完全に2’−O−メチル化修飾されたオリゴヌクレオチドを対照として使用してもよい。
オリゴヌクレオチド合成および細胞類。実施例2に記載のように、一本鎖オリゴヌクレオチド(記載された修飾を有するものを含む)を合成および精製する。アッセイのために使用するプラスミドは酵母(サッカロミセス・セレビシア)株LSY678MATに、アウレオバシジン選択下で低コピー数に安定的に維持される。プラスミドおよびオリゴヌクレオチドは酵母細胞に、次のようにエレクトロポレーションによって導入される:エレクトロコンピテント細胞を作るために、YPD培地10ml上で単一コロニーから培養し、培養物を一晩300rpmで30℃で振とうしながら増殖させる。それから上記一晩培養物に、50μg/mLトリコスタチンAを含む、または含まない新鮮なYPD培地30mlを加え、OD600が約0.5になるまで(4時間)30℃で振とうし続ける。その後細胞を4℃、3000rpmで5分間遠心分離によって洗浄し、それら細胞を25ml氷冷蒸留水中で2回再懸濁させる。その後4℃、3000rpmで5分間遠心分離し、1ml氷冷1Mソルビトールに再懸濁し、最後に細胞を4℃、5000rpmで5分間遠心分離し、細胞を120ml1Mソルビトールに再懸濁する。
エレクトロコンピテント細胞をプラスミドまたはオリゴヌクレオチドで形質転換するためには、特別に記載がない限り細胞40μlを5μgの核酸と混合し、氷上で5分間インキュベートする。その後混合物を0.2cmエレクトロポレーションキュベットに移し、BIO−RADジーン・プラスター装置で、1.5kV、25μF、200Ωで5秒のパルスでエレクトロポレートする。それから直ちに1Mソルビトールを補充した、50μg/mLトリコスタチン、例えばトリコスタチンAなど、を含む、または含まない1mlYPDに細胞を再懸濁し、培養物を30℃で300rpmで振とうしながら6時間培養する。この培養物を300μg/mLハイグロマイシンを含む選択プレート上に広げ、この培養物の10希釈物の200μlを、アウレオバシジンAを含む選択プレート上に広げ、30℃で3日間インキュベートし、個々の酵母コロニーを増殖させる。その後プレート上のコロニーを計数し、10アウレオバシジンA耐性コロニーあたりのハイグロマイシン耐性コロニー数を決定することによって遺伝子変換効率を計算する。本発明者らはこのアッセイ系を用いて他のHDACインヒビタも試験する。
トリコスタチンAはオリゴヌクレオチド媒介性遺伝子改変効率を高める。本発明者らは50μg/mLトリコスタチンAで前処理した細胞におけるオリゴヌクレオチド媒介性遺伝子改変効率を、前処理をしなかった細胞におけるオリゴヌクレオチド媒介性遺伝子改変効率と比較する。表17などを参照されたい。これらの実験は、エレクトロポレーション前4時間、50μg/mlトリコスタチンA中で細胞を増殖させると遺伝子改変効率が数倍まで高まり、回復期間中の50μg/mlトリコスタチンAによる細胞処理も遺伝子改変効率を3倍以上高めることを示している。
Figure 2005518817
Hyg10によるターゲティングと、トリコスタチンA処理の時間および温度との関係。50μg/mLトリコスタチンAで処理した細胞において、回復期間中の時間、および遠心分離工程の温度がオリゴヌクレオチド媒介性遺伝子改変効率に与える影響を比較する。表18などを参照されたい。酵母細胞の一晩培養物を50μg/mLトリコスタチンAを含むまたは含まないYPD200mL中に希釈し、OD600が約0.5になるまで(4時間)30℃で振とうしながら増殖させる。その細胞を4℃か室温で、3000rpmで5分間遠心分離し、その細胞をあらかじめ温めた新鮮YPD培地100mlsに再懸濁する。それら細胞を20または40分間増殖させ、調製し、Hyg10オリゴヌクレオチド1.62μgで上記のようにエレクトロポレートする。細胞を回復させ、上記のようにプレートし、10細胞あたりの変換を測定する。
Figure 2005518817
実施例7:λファージβ蛋白は酵母における標的配列改変効率を高める

Saccharomyces cerevisiaeにおいて修飾された一本鎖遺伝子修復ターゲティングベクターによる遺伝子修正効率に与えるベータ蛋白発現の効果を研究する。
遺伝子修復、および遺伝子修復効率に対するベータ蛋白の影響を研究するために酵母中のCYC1遺伝子を選ぶ。2倍体の酵母株YMH51はCYC1の野生型コピーを含み、2倍体酵母株YMH52、YMH53、YMH54、およびYMH55はCYC1遺伝子の突然変異体を半接合状態で含む。これらの株は酵母株MATα cyc1−706::CYH2cyc7−67ura3−52leu2−3 112cyh2に由来する。YMH51において、CYC1のコドン22は野生型TGC(Cys)配列である;YMH52において、コドン22はCGC(Arg)である;YMH53において、コドン22はAGC(Ser)である;YMH54において、コドン22はGGC(Gly)である;そしてYMH55において、コドン22はTCC(Ser)である。各場合に、突然変異遺伝子の遺伝子産物は本来の配列の位置22にシステイン残基の代わりに異なるアミノ酸を有する。この突然変異と関係する表現型は、グリセロールを唯一の蛋白源として増殖することができない。CYC1遺伝子突然変異を逆転して(例えば配列改変オリゴヌクレオチドにより仲介される方法など)野生型配列にすると、その酵母はグリセロールだけで増殖できるようになる。
Cyc1/70T(70T)およびCyc1/70NT(70NT)はこれらの実験に用いられる修飾一本鎖遺伝子修復ターゲティングベクターである。70Tベクターは突然変異CYC1遺伝子の転写ストランドに相補的であり、したがってこれを標的とし、他方70NTベクターは非転写ストランドに相補的であり、したがってこれを標的とする。ターゲティングベクターは、例えばターゲティングベクターと突然変異CYC1遺伝子配列との間に単一塩基ミスマッチが存在するというような、野生型配列を含む。70Tベクターも70NTベクターもそれらの5’および3’末端の各々に3ホスホロチオエート結合を含む(下表19に記号“”によって示される)。Hyg3S/74T(74T)と呼ばれるベクターは陰性対照として役立ち、CYC1遺伝子のいずれのストランドの配列にも相補的でない。これらのベクターの配列は表19に明らかにされる。これらのオリゴヌクレオチドベクターの全てはこの領域では標準的な技術、または本明細書の別の箇所で述べられるような技術によって合成され、精製される。
Figure 2005518817
CYC1遺伝子に突然変異を有する酵母株、例えばYMH52、YMH53、YMH54およびYMH55、およびYMH51 2倍体野生型株などに、各CYC1オリゴヌクレオチド5μgを当業者に公知の方法によってエレクトロポレートする。核酸配列改変のための選択は、酵母細胞1mgを希釈せずにYPDプレート上に広げることによって行われる(1%酵母抽出物、2%ペプトン、3%グリセロール、2%寒天)。選択をしない増殖は、別の、1×10−4に希釈した酵母細胞0.1mlを、炭素源としてグリセロールよりもむしろデキストロースを含むYPDプレート上に広げることによって分析する。YPGプレートは30℃で7日間インキュベートし、YPDプレートは30℃で3日間インキュベートする。選択された酵母(YPG上で増殖)および非選択酵母(YPD上で増殖)のコロニー数をアキュカウント(登録商標)(バイオロジックス社)を使用して測定する。修正効率(C.E.)は、YPGコロニー数をYPDコロニー数で割ることによって計算される;この数値を、形質転換頻度および生存率の変数に関して標準化する。YPGプレート上で選択されたYMH52、YMH53、YMH54またはYMH55酵母に野生型CYC1遺伝子配列が存在することは、コドン22を含むCYC1遺伝子のエキソンのPCR増幅およびその後の遺伝子産物の配列決定によって確認される。選択されたコロニーをYPGプレートからランダムに拾い上げ、蒸留水50μl中に希釈する。酵母細胞溶液1マイクロリットルを、1xPCR増幅緩衝液、300μM dNTP、OJW−24プライマー、ORB−27プライマー、およびTaqポリメラーゼを含むPCR反応混合液に加える。ハンプシー(Hampsy)の、“イソ−1−チトクロームcの必須システインを選択することによってSaccharomyces cerevisiae中の6塩基対置換の各々を検出するためのテスター系(A tester system for detecting each of the six base−pair substitution in Saccharomyces cerevisiae by selecting for an essential cysteine in iso−1−cytochrome c)”Genetics 128巻:59−67ページ(1991)などに、OJW−24プライマーおよびORB−27プライマーの配列が見いだされる。サンプルを92℃で4分間予備加熱し、その後92℃10秒間、52℃30秒、60℃1分間の35サイクルを行い、68℃8分間の1回の最終伸長工程を行った後、24℃でインキュベーションを行う。PCR産物は1%アガロースゲルを通すゲル電気泳動法によって分析し、422塩基対CYC1エキソンバンドの存在を確認する。PCR産物の配列はABI373シーケンサーを使用する自動配列決定によって確認される。
これらの種類の実験から得られた結果を下の表20に示す。野生型株YMH51はYPG上でよく増殖する。なぜならば野生型CYC1遺伝子はグリセロールを代謝できるからである。それに対して、半接合突然変異CYC1遺伝子を含む突然変異株は、CYC1遺伝子を標的としない陰性対照74Tベクターをエレクトロポレートされた場合はYPGプレート上で増殖できない。オリゴヌクレオチド、70Tまたは70NTどちらかを有する突然変異株のエレクトロポレーションはCYC1遺伝子の突然変異を逆転させて野生型配列にする。このことは、処理細胞がYPGプレート上で増殖してコロニーを作ることができることによって証明される。遺伝子修復頻度は、CYC1遺伝子に結合し、CYC1の非鋳型ストランドである70NTの方が、70Tより遥かに高い。
Figure 2005518817
ベータ蛋白およびRAD52エピスタシス群、ミスマッチ修復群、またはヌクレオチド除去修復群のその他蛋白の発現を、酵母におけるCYC1遺伝子の遺伝子修復効率に与えるそれらの影響について試験する。本明細書の別の箇所に記載したように、RAD52エピスタシス群、ミスマッチ修復群またはヌクレオチド除去修復群の遺伝子を過剰発現するベクターを作る。酵母ベータ発現ベクターを次のように作る。ベータ蛋白のコーディング配列をその遺伝子を含むプラスミドからPCRによって増幅し、その後PCR産物をHindIIIおよびXhoI制限酵素で消化し、酵母発現ベクターpYN132(これは構成的活性酵母プロモータTPIを含む)に結合する。結合反応物のサンプルを用いてDH10B細胞を形質転換し、その後形質転換した細胞を選択し、当業者に公知の標準的方法を用いて、pYNTβと呼ばれる発現構成物の存在に関して陽性コロニーを分析する。YMH51、YMH52、YMH53、YMH54およびYMH55細胞を、5μgのpYNTβ構成物またはRAD52エピスタシス群、ミスマッチ修復群またはヌクレオチド除去修復群からの遺伝子を過剰発現するプラスミドまたはpYN132(陰性対照として)と共にエレクトロポレートする。その後形質転換した細胞を、SC URA3−プレート(ウラシルに欠け、全アミノ酸を補充した最小培地)上3日間の増殖によって選択する。これらのプラスミドを含むこれら酵母株を5μgの70NTオリゴヌクレオチドと共にエレクトロポレートし、遺伝子修復活性を、上記のようにYPGおよびYPDプレート上のコロニー増殖を試験することによって評価する。
YMH55を使用したこのような実験の結果は下の表21に示される。YMH55酵母はグリセロールの存在下で増殖し、遺伝子修復が行われたことを証明する。ただし、空のpYN132ベクター(陰性対照)を含む酵母の増殖はpYN132を含まないYMH55に比較して非常に減少した(多分グリセロール中の二重選択およびウラシル欠損増殖培地に帰せられる効果と考えられる)。しかし驚くことに、二重選択の阻止的効果にもかかわらず、YMH55におけるベータ蛋白の発現、またはRAD52エピスタシス群、ミスマッチ修復群、またはヌクレオチド除去修復群の発現は、表21に示すように、70NTオリゴヌクレオチドによる突然変異CYC1遺伝子の標的遺伝子修復の頻度を実質的に増加させる。
Figure 2005518817
CYC1遺伝子修復に与えるベータ蛋白発現の効果を試験するその他の実験において、105トランスフォーマントあたりの修正効率は0.326で、遺伝子修復効率の5ないし18倍の増加に相当する。
複数の蛋白を過剰発現するYMH53に関するこの種の実験の結果を表22に示す。YMH53酵母はグリセロールの存在下で増殖し、遺伝子修復が起きたことを示唆する。YMH53株におけるMRE11およびXRS2蛋白両方の発現、またはRAD52およびRAD54蛋白両方の発現は、70Tおよび70NTオリゴヌクレオチド両方による、突然変異CYC1遺伝子の標的遺伝子修復の頻度を実質的に高める。
Figure 2005518817
実施例8:ヒドロキシウレアは酵母細胞における標的配列改変を高める

この実施例において、HUを使用して、修飾主鎖を有する一本鎖オリゴヌクレオチドを使用する系における遺伝子修復効率を高め、実施例2に記載のようにプラスミドpAURHYG(wt)eGFPを対照としてプラスミドpAURHYG(rep)eGFPを使用する遺伝子修復を測定する。この系を使用して、種々の条件下における3種類のオリゴヌクレオチド(図3に示す)の、修正促進能力を分析する。オリゴヌクレオチドHygE3T/74およびHygE3T/74NT、および対照オリゴヌクレオチドは実施例2に記載されている。Hyg10と呼ばれる第三のオリゴヌクレオチドは、改変を標的とする塩基を中心にもつ、配列5’−ACC CGC AGG ACG TAT CCA CGC CCT 3’を有する24塩基オリゴヌクレオチドである。Hyg10オリゴヌクレオチドは各末端にLNA修飾を有する。オリゴヌクレオチドは実施例2に記載のように合成される。
アッセイに使用するプラスミドは酵母(Saccharomyces cerevisiae)株LSY678MATにアウレオバシジン選択のもとで低コピー数で安定的に保持される。プラスミドおよびオリゴヌクレオチドは下記のようにエレクトロポレーションによって酵母細胞内に導入される:エレクトロコンピテント酵母細胞をつくるために、YPD培地10mlに単一コロニーを接種し、培養物を30℃、300rpmで振とうしながら一晩増殖させる。その後HU20mlを含む、または含まない新鮮YPD培地30mlを上記一晩培養物に加え、OD600が約0.5になるまで(4時間)30℃で振とうし続ける。その後4℃、3000rpmで5分間遠心し、細胞を新鮮YPD培地に再懸濁することによって細胞を洗浄する。再懸濁後10、20、40、60および90分に培養物40mlをとる。エレクトロコンピテント細胞をプラスミドまたはオリゴヌクレオチドで形質転換するために、特に記載がない限り細胞40μlを核酸5μgと混合し、氷上で5分間インキュベートする。エレクトロポレーションおよび改変(“変換”)効率測定を実施例2に記載のように行う。
ヒドロキシウレアはオリゴヌクレオチド媒介性核酸配列改変効率を高める。本発明者らは20mM HUで前処理した細胞におけるオリゴヌクレオチド媒介性核酸配列改変の効率を、前処理なしの細胞におけるオリゴヌクレオチド媒介性核酸配列改変の効率と比較する。表23に示すこれらの実験は、エレクトロポレーション前4時間、20mM HU中で細胞を増殖させると、核酸配列改変の効率は少なくも25−40倍増加することを示唆する。表23に示されるように、HU後の増殖時間が90分間であるときに、核酸改変効率の最大効率が認められるとはいえ、HUは10、20、40、および60分の処理でも核酸配列改変効率を高める。表23は、被検オリゴヌクレオチドがセンス(非転写)ストランド(HygE3T74NT;配列番号9)を標的にしようと転写ストランド(HygE3T/74T;配列番号8)を標的にしようと、そしてそれらオリゴヌクレオチドが74塩基長さ(HygE3T/74NT)であろうと24塩基長さ(Hyg10;配列番号20)であろうと、全ての被検オリゴヌクレオチドでHU前処理が核酸配列改変効率を高めることを示す。
Figure 2005518817
記載のように酵母培養物を20mM HUの存在下、または不在下で4時間増殖させる。細胞を洗い、新鮮YPD培地に再懸濁し、指示されたOD600になるまで、10、20、40、60、90分間増殖させ、その後5μgのオリゴヌクレオチドHygE3T/74NTまたはHygE3T/74または1.62μgのHyg10でエレクトロポレーションを行う。その後細胞を、ハイグロマイシンまたはアウレオバシジンAを含む選択培地にプレートする。遺伝子修正効率は“修正効率”として報告され、それは10アウレオバシジンA耐性コロニーあたりのハイグロマイシン耐性コロニー数を示す。

実施例9:二重ターゲティング実験におけるHUおよびTSAの使用

二重ターゲティング実験において少なくも2種類の、関連性のないオリゴヌクレオチドを同時に使用することによって、標的改変の効率を高め、コストを減らすことができる。このアプローチにおいて、第一オリゴヌクレオチドによる改変は、選択される選択可能表現型を与える。第二オリゴヌクレオチドによって導かれる改変が、この選択集団内からスクリーニングされる。2002年10月7日に出願された同一所有者の同時係属米国特許出願第60/416,983号“オリゴヌクレオチド標的核酸配列改変におけるスクリーニングを減らす方法および組成物(Method And Compositions For Reducing Screening In Oligonucleotid−Directed Nucleic Acid Sequence Alteration)”などを参照されたい。これは参考として本明細書にそのまま組み込まれる。選択性圧力(selective pressure)によって確認される集団は、非選択部位に編集された塩基を担う細胞に富むから、このアプローチは、修飾一本鎖オリゴヌクレオチドを使用してすぐれた単一ヌクレオチド多型性をほとんど全ての遺伝子の所望部位に速やかにかつ効率的に導入するための方法(遺伝子編集と呼ばれる)として有用である。
二重ターゲティング戦略は図9Aに図示される。LSY678lntHyg(rep)β株(表24)は、240kbのヒトβ−グロビンYACおよび、単一塩基突然変異によって不活性化された染色体ハイグロマイシン耐性遺伝子と機能性アウレオバシジン耐性遺伝子とを含むカセットを含む。リウら、Nucleic Acids Res. 31巻:2742−2750ページ(2002);パレクーオルメド(Parekh−Olmedo)ら、Chem.Biol. 9巻:1073−1084ページ(2002);およびリウら、Mol.Cell Biol. 22巻:3852−3863ページ(2002)を参照されたい。図9Bは染色体ハイグロマイシン突然変異体遺伝子の編集に導くために使用されるオリゴヌクレオチドを示す。HygE3S/74NT(配列番号9)は、非転写ストランドに特異的に結合し、3個の末端ホスホロチオエート結合を含む74マー(74量体)である。ld.TAG停止コドンを含む、突然変異体の標的配列も示される。図9Cは、β−グロビンYACの構造を示し、編集を標的とするヌクレオチド類が明記されている。別々の実験において、2つの非選択的変化が、異なるオリゴヌクレオチド、βThal1(配列番号27)およびβThal2(配列番号28)によって導かれる。YACはヒト染色体11からの約230kbゲノムDNAを含む(陰をつけた領域によって示される)。陰をつけない(unshaded)領域はYACのどちらかの末端にある酵母配列を示す(実物大でない)。ユー(Yu)ら、Proc.Natl.Acad.Sci. 97巻:5978−5983ページ(2000)。β−グロビン配列の一部(開始コドンで始まる)が示される。βThal1はGからAへの変化を導き、βThal2はTからCへの変化を導く。核酸配列改変活性を有するオリゴヌクレオチド類の配列が示され、βグロビン遺伝子座のヒト転写に対して、非転写ストランドに結合するように設計される。両変化共、ヒトにβ−サラセミア症を起こすことがわかっている単一塩基置換を起こす。
編集実験のために、YAC含有LSY678lntHyg(rep)β細胞(表24)をHUの存在下で増殖させ、選択可能および選択不可能オリゴヌクレオチドと共にエレクトロポレートし、TSAの存在下で回復させる(図9A)。ヒトβ−グロビン遺伝子は酵母においては転写的に不活性であると考えられるから、HUおよびTSAが標的アクセスを高めるために特に重要である。二重ターゲティング実験の結果を図10Aに示す。オリゴヌクレオチドHygE3S/74NTを使用する際にハイグロマイシン耐性コロニーが認められる。ハイグロマイシン−耐性コロニー 対 アウレオバシジン耐性コロニーの比が修正効率(C.E.)とされる。HUおよびTSAの存在はハイグロマイシン突然変異のC.E.の増加、ここでは約4ないし6倍、につながる。この実験において、ハイグロマイシン耐性コロニーは3000のアウレオバシジン耐性コロニーあたり大体1個であることが判明する。ハイグロマイシン耐性コロニーをその後YACβ−グロビン遺伝子における第二部位の編集について分析する。βThal1オリゴヌクレオチドはエキソン1のTGGコドン16のGをAで置換し、停止コドンTGAを与える(図9C)。図10BはABI SNaPショット(真ん中のパネル)、およびこの実験から得られる修正コロニーにおけるβグロビン遺伝子のある領域の直接DNA配列(下のパネル)を示す:両パネルにおいて、GからAへの変化が明らかである。ハイグロマイシン突然変異において修正されるこれらコロニーのなかで、325中1個がYACβ−グロビン配列の第二変化も含む。したがって修正されたハイグロマイシン耐性遺伝子を有する細胞の約10%が編集β−グロビン遺伝子も含む。
上の種々の実験に示されるように、RAD51の過剰発現は一貫して染色体遺伝子編集の頻度を高める。よって本発明者らは酵母RAD51遺伝子を含む発現プラスミドをLSY678lntHyg(rep)β細胞に導入する(表24)。図11はこの株における二重ターゲティングの結果を示す。期待通り、RAD51の発現はオリゴヌクレオチドHygE3S/74NTのハイグロマイシンC.E.をたかめる(図10と比較)。これらの編集実験では、YAC含有LSY678lntHyg(rep)β細胞(表24)をHUの存在下で増殖させ、選択可能および選択不可能オリゴヌクレオチドと共にエレクトロポレートし、TSAの存在下で回復させる(図9A)。ここでもまた、第二オリゴヌクレオチド、βThal2の添加は修正効率を800アウレオバシジン耐性コロニーあたり大体1ハイグロマイシン耐性コロニーにまで、さらに高める。
βThal2オリゴヌクレオチドはエキソン1のイニシエータATGコドンのTのCによる置換を導き、非イニシエータコドンACGを与えるように設計される(図9)。図11BはABI SNaPショット(真ん中のパネル)および修正ずみHygコロニーからのβ−グロビン遺伝子の直接DNA配列を示す;TからCへの変化が両分析パネルにおいて明らかである。重要なことは、ハイグロマイシン突然変異において修正されたコロニーのなかで、70中1がYACβ−グロビン配列に第二の単一塩基変化も含むことである。したがって、二重ターゲティングアプローチはここでも成功である;修正されたハイグロマイシンを担う細胞の約10%が編集β−グロビン遺伝子も含む。さらに、高濃度のRAD51の存在下において遺伝子編集がより高レベルで起き、HU、TSAおよびRAD51過剰発現の存在が全体的プロセスに共力効果をあらわすことを示唆する。
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株。これらの研究に使用される酵母株を表24に挙げる。LSY678lntHyg(rep)株の詳細はリウら、Mol.Cell Biol. 22巻:3852−3863ページ(2002)に発表されている。
YAC操作。β−グロビンYACはグリンク(Grinke)らのゲノミックス(Genomics)15巻:659−667ページ(1993)に記載されるように、標準的パルスド−フィールド ゲルから分離する。つまり、βS−YAC株(AB1380バックグラウンド、チャングら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 95巻:14886−14890ページ(1998)を参照)から濃縮染色体DNAを調製し、1%低溶融アガロース・パルスド−フィールド・ゲル上で200V、14℃、20−50s、33時間溶解する。YACを分離し、改良アガロース緩衝液(10mM Bis Tris−HCl pH6.5、1mM EDTA、100mM NaCl)で平衡化し、β−アガロース(ニュー・イングランド・ビオラボ(New England Biolabs)で処理し、最終容量〜200μlまで濃縮する。精製YAC30μlを、スフェロプラスト形質転換およびトリプトファン欠損 寒天/ソルビトール プレートによる選択によって、コンピテントLSY678lntHyg(rep)細胞に導入する。トランスフォーマントを再画線培養し、パルスド−フィールド・ゲル電気泳動法、PCR、およびヒトβ−グロビン遺伝子の断片の配列分析によって確認する。
pYNARad51エピソーム発現プラスミドは、pYNA51のTRP1遺伝子(リウら、Nucleic Acids Res. 31巻、2742−2750ページ(2002)を参照)をADE2遺伝子に置換することによって構成される。pYNARad51はエレクトロポレーションおよびアデニン欠損寒天プレート上の選択によって、LSY678lntHyg(rep)βに導入される。
オリゴヌクレオチド類。Hyg3S/74NT(配列番号9)、βThal1(配列番号27)、およびβThal12(配列番号28)は、IDTから、HPLC精製によって整列させる。Hyg3S/74NTは74merであり、βThal1およびβThal2は両方共71merである;これら3種類のオリゴヌクレオチドは全て5’および3’末端に3つのホスホロチオエート結合を有する(図9)。
二重ターゲティング。二重ターゲティングプロトコルは図9Aに概略示される。
LSY678lntHyg(rep)β細胞を10mlYPD培地に30℃で一晩増殖させる。培養物を40mlYPD培地に0D600が0.15−0.20になるまで希釈し、1倍加時間増殖させOD600を0.3〜0.4にする。100mM HUを培養物に加え、細胞を1倍加時間増殖させてOD600を0.6〜0.8にする。細胞を採集し、25μlの1M DTTを含む1mlのYPDに再懸濁し、さらに20分間30℃で増殖させる。細胞を25ml冷dH0で2回洗い、25ml冷1Mソルビトールで1回洗う。細胞をしずかに1M冷1Mソルビトールに再懸濁し、ミクロ遠心分離器で5000repで5分間回転し、1Mソルビトール 120μlに再懸濁する。バイオラッド・ジーン・パルサー装置(リッチモンド、CA)を使用し、2mmギャップキュベット中で、細胞40マイクロリットルに各オリゴヌクレオチド30μgを、1.5kV、25μF、200Ω、1パルス、5s/パルスド長さでエレクトロポレートする。その細胞を直ちに0.8μg/mlアウレオバシジンAおよび50μg/mlTSAを含む3mlYPDに再懸濁し、30℃で一晩回復させる。細胞をスピンダウンし、1ml新鮮YPDに再懸濁する。希釈液を、ハイグロマイシン(300μg/ml)かアウレオバシジンA(0.5μg/ml)かどちらかを含むYPDプレート上に培養する。C.E.はアウレオバシジン耐性コロニー1個あたりのハイグロマイシン耐性コロニー数に基づいて決定される。
個々のコロニーをハイグロマイシン寒天プレートから拾い上げ、150μlYPDを含む96ウェルプレート(コーニング)に入れ、振とうしながら30℃で一晩増殖させる。ヒトβ−グロビン座に特異的な345bpPCR産物を、プライマーPCO2(5’−TCCTAAGCCAGTGCCAGAAG−3’(配列番号29))およびPCO5(5’−CTATTGGTCTCCTTAAACCTG−3’(配列番号30))を使用して各ウェルの各々から増幅し、βThal1またはβThal2変換をスクリーニングする。PCR反応は、8pmolsの各プライマーおよび2.5μl酵母細胞培養液を、等分する前のPCR反応ミックスに加えることによって行われる(マーシュ/アブジーン(Marsh/Abgene))。PCR反応はアニーリング温度45.8℃で、35サイクルで1分の伸長時間を用いる。PCR反応物はキアクィック(QiaQuick)PCR96−ウェル精製キット(キアゲン社)を使用して精製され、容量80μlに溶出される。精製PCR産物の1マイクロリットルをABISNaPショット反応のための鋳型として使用する。βThal1変換をスクリーニングするために使用するSNaPshotプライマーの配列は:5’−CCCCCCCCCCCCCCCCCAAGTCTGCCGTTACTGCCCTGTG−3’(配列番号31)である。βThal2変換をスクリーニングするために使用するSNaPshotプライマーの配列は:5’−TTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTCCACAGGAGTCAGGTGCACC−3’(配列番号32)である。SNaPショット反応はメーカーによって指示されるように、ABIプリズムSNaPショット・マルチプレックス・キットを使用して行われ、ABI3100遺伝子分析器(Genetic Analyzer)で分析される。
配列分析。SNaPショット反応物から得られる任意の潜在的変換クローンは配列分析によって確認される。PCR産物の両ストランド共、プリズムPCO2およびPCO5を用い、メーカーによって指示されるようにABIプリズムキットを使用するサンガー・ジデオキシ配列決定法によって、自動ABI3100遺伝子分析器で配列決定される。
多数の実施形態および特徴を記載したが、本発明の精神または添付のパラグラフの範囲を逸脱することなく、記載の実施形態および特徴の改良および変更が行われ得ることは当業者には理解できる。本明細書中に記載の全ての刊行物および特許は参考として本明細書にその全体が援用される。
本発明の上記のまたはその他の目的および利点は下記の詳細な説明を添付の図面と共に考慮することによって明らかになる。それらの図では全体を通じて同様な文字は同様な部分を指す。
プラスミドpKm4021における点突然変異の修正のための遺伝子読み出し系。プラスミド中のpKsm4021突然変異体カナマイシン遺伝子は、オリゴヌクレオチドによる修正の標的である。突然変異体GはそのオリゴヌクレオチドによってCに変換される。修正されたプラスミドは、エレクトロポレーション後、大腸菌(DH10B)にカナマイシン耐性を与え、遺伝的読み出しおよびコロニー計数が可能となる。キメラ、RNA−DNA二重ヘアピン オリゴヌクレオチド KanCGの配列が示される(配列番号1)。 ハイグロマイシン−eGFP標的プラスミド。プラスミドpAURHG(x)eGFPの図。プラスミドpAURHG(rep)eGFPはハイグロマイシンBコーディング配列(cds)のコドン46のヌクレオチド137にGを挿入する塩基置換突然変異を含む。プラスミドpAURHG(ins)eGFPは、構成的ADH1プロモータから転写されるハイグロマイシンBコーディング配列(cds)のコドン46のヌクレオチド136と137との間の単一塩基挿入突然変異を含む。プロモータpAURHG(△)eGFPはハイグロマイシンBコーディング配列(cds)のコドン46の単一ヌクレオチドを除去する欠失突然変異を含む。正常対立遺伝子、標的(既存突然変異)、および所望の改変が3プラスミドの各々について示される。 ハイグロマイシン耐性遺伝子の修正のためのオリゴヌクレオチド。ハイグロマイシン耐性の修正を分析試験(assey)する実験に使用するオリゴヌクレオチドの配列を示す。DNA残基は大文字で示され、RNA残基は小文字で示され、ホスホロチオエート主鎖を有するヌクレオチドは大文字であらわして下線を引いた。図3において、HygE3T/25の配列は配列番号7に対応し、HygE3T/74T(HygE3T/74およびHyg3S/74Tとしても知られている)は配列番号8に対応し、HygE3T/74NT(HygE3T/74αおよびHygE3S74NTとしても知られている)の配列は配列番号9に対応し、HygGC/Revの配列は配列番号10に対応し、Kan70Tの配列は配列番号11に対応し、Hyg10の配列は配列番号20に対応する。 pAURNeo(−)FLAsH(登録商標)プラスミド。この図は、プラスミド構造、標的配列、オリゴヌクレオチド類、および蛍光によって核酸配列改変事象を検知するための塩基を示す。Neo/Kan標的突然変異体およびその相補体の配列は配列番号12および配列番号13に対応し、変換した配列およびその相補体は配列番号14および配列番号15に対応し、FLAsH(登録商標)ペプチド配列は配列番号16に対応する。 FLAsH(登録商標)系の蛍光顕微鏡検査。この図は、DNA/RNAキメラオリゴヌクレオチド kanGGrvによるトランスフェクションの前と後の酵母株の共焦点顕微鏡検査を示す。変換された酵母細胞は明るい緑色蛍光によって示される。(A)上左:野生型、非標的。上右:△rad52、非標的。(C)下左:野生型、標的。(D)下右:△rad52、標的。 pYESHyg(x)eGFPプラスミド。このプラスミドは、プロモータが誘発性GAL1プロモータであることを除けば、図7に示されるpAURHyg(x)eGFP構成物と同様の構成物である。このプロモータはガラクトースで誘発され、ラフィノースの存在下では漏出し、デキスロースの存在下では抑制される。 pYN132プラスミド。この図は、TPL1からの構成的プロモータを含むプラスミド構造を示す。これは下流でクローン化されるcDNAの発現に導く。 pAUR101−HYG(x)eGFPプラスミドの構成。図8Aおよび8BはpAUR101−HYG(x)eGFP組み込み型プラスミドのための構成図式である。 pAUR101−HYG(x)eGFPプラスミドの構成。図8Aおよび8BはpAUR101−HYG(x)eGFP組み込み型プラスミドのための構成図式である。 二重ターゲティングプロトコル。(A)二重ターゲティングのための一般的戦略の図式図。(B)ハイグロマイシン耐性遺伝子およびその突然変異の配列。野生型(“wt”)(配列番号23)、突然変異体(配列番号24)、および変換された配列(配列番号25)を、その変換(配列番号9)を生起するために使用する配列改変オリゴヌクレオチド(“Hyg3S/74NT”)と共に示す。(C)ヒトβ−グロビン遺伝子座、改変されるβグロビン遺伝子のセグメント(配列番号26)および非選択性改変を生起するために使用するオリゴヌクレオチド類:“βThal1”(配列番号27)および“βThal2”(配列番号28)を含むYACの図式。 二重ターゲティングの結果。(A)二重ターゲティングプロトコルを使用したハイグロマイシン突然変異の遺伝子編集(gene editing)効率。これらの実験では、YAC含有LSY678lntHyg(rep)β細胞を、選択性および非選択性オリゴヌクレオチドと共にエレクトロポレートされたHUの存在下で増殖させ、TSAの存在下で回復させる。(B)変換前(配列番号29)および変換後(配列番号30)の改変セグメントの配列を含む、βThal1オリゴヌクレオチドによって指示されるヒトβグロビン遺伝子の遺伝子編集。 二重ターゲティングおよびRad51。(A)二重ターゲティングプロトコルと酵母Rad51の過剰発現とを組み合わせて使用する、ハイグロマイシン突然変異の遺伝子編集の効率。これらの実験では、YAC含有LSY678lntHyg(rep)β細胞をHUの存在のもとで増殖させ、選択および非選択オリゴヌクレオチドと共にエレクトロポレートし、TSAの存在のもとで回復させる。(B)変換前(配列番号31)および変換後(配列番号32)の改変セグメントを含む、βThal12オリゴヌクレオチドが標的とするヒトβグロビン遺伝子の遺伝子編集。
【配列表】
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Claims (66)

  1. オリゴヌクレオチド媒介性標的核酸配列改変法であって、
    標的核酸を細胞修復蛋白の存在のもとで配列改変ターゲティング・オリゴヌクレオチドと組み合わせる工程;および
    ラムダベータ蛋白を追加的に前記組み合わせに加えるか、または前記細胞修復蛋白を含む細胞とHDACインヒビタまたはヒドロキシウレアとをまず接触させる工程、
    を含む方法。
  2. 前記細胞修復蛋白が精製されている請求項1記載の方法。
  3. 前記細胞修復蛋白が無細胞蛋白抽出物中に存在する請求項1記載の方法。
  4. 前記細胞修復蛋白が完全無傷細胞内に存在する請求項1記載の方法。
  5. 前記細胞が生体外(ex vivo)で培養される請求項4記載の方法。
  6. 前記細胞が生きている生物内に存在する請求項4記載の方法。
  7. 前記細胞修復蛋白が原核細胞および真核細胞からなる群から選択される細胞である請求項1記載の方法。
  8. 前記細胞が原核細胞である請求項7記載の方法。
  9. 前記原核細胞が細菌細胞である請求項8記載の方法。
  10. 前記細菌細胞が大腸菌細胞である請求項9記載の方法。
  11. 前記細胞が真核細胞である請求項7記載の方法。
  12. 前記真核細胞が酵母細胞、植物細胞、哺乳動物細胞またはヒト細胞である請求項11記載の方法。
  13. 前記真核細胞が酵母細胞である請求項12記載の方法。
  14. 前記酵母がSaccharomyces cerevisiae、Ustilago maydis、またはCandida albicansである請求項13記載の方法。
  15. 前記真核細胞が植物細胞である請求項12記載の方法。
  16. 前記真核細胞がヒト細胞である請求項12記載の方法。
  17. 前記ヒト細胞が肝細胞、肺細胞、結腸細胞、子宮頸部細胞、腎細胞、上皮細胞、癌細胞、幹細胞、造血幹細胞、造血系前駆細胞、および胚性幹細胞からなる群から選択される請求項16記載の方法。
  18. 前記真核細胞が哺乳動物細胞である請求項12記載の方法。
  19. 前記哺乳動物がマウス、ハムスター、ラットおよびサルからなる群から選択される請求項18記載の方法。
  20. 前記オリゴヌクレオチドの配列が、前記オリゴヌクレオチドの配列と標的核酸第一ストランド上のその相補体との間の1つ以上のミスマッチを除いて、前記核酸標的の第一ストランドの配列に完全に相補的であり、前記オリゴヌクレオチドが少なくも1つの末端修飾を有する請求項1ないし19のいずれかの項に記載の方法。
  21. 前記少なくも1つの末端修飾が、少なくも1つの固定核酸(LNA)、少なくも1つの末端2’−O−Me塩基類似体、および少なくも1つの末端ホスホロチオエート結合からなる群より選択される請求項20記載の方法。
  22. 前記オリゴヌクレオチドが17−121ヌクレオチド長の一本鎖オリゴヌクレオチドであり、少なくも8個の隣接デオキシリボヌクレオチドの内部非重複ドメインを有し、前記1つ以上のミスマッチが専ら前記オリゴヌクレオチドDNAドメインおよび、前記オリゴヌクレオチドの5’および3’末端からの少なくも8個のヌクレオチドに位置する請求項21記載の方法。
  23. 前記オリゴヌクレオチドが少なくも1つの末端固定核酸(LNA)を有する請求項21記載の方法。
  24. 前記オリゴヌクレオチドが少なくも25ヌクレオチド長である請求項1記載の方法。
  25. 前記オリゴヌクレオチドが74以下のヌクレオチド長である請求項1記載の方法。
  26. 前記オリゴヌクレオチドが121以下のヌクレオチド長である請求項1記載の方法。
  27. 前記標的核酸がDNAである請求項1記載の方法。
  28. 前記DNAが二本鎖DNAである請求項27記載の方法。
  29. 前記二本鎖DNAがゲノムDNAである請求項28記載の方法。
  30. 前記ゲノムDNAが染色体にある請求項29記載の方法。
  31. 前記染色体が人工染色体である請求項30記載の方法。
  32. 前記ゲノムDNAがエピソームである請求項29記載の方法。
  33. 前記標的核酸が二本鎖ゲノムDNAの非転写ストランドである請求項1記載の方法。
  34. オリゴヌクレオチド媒介性標的核酸配列の改変を高めるための組成物であって:
    細胞性修復蛋白の存在のもとで実質的に相補的な標的核酸と組み合わせると、標的配列の改変を起こすことができるオリゴヌクレオチドと:
    HDACインヒビタまたはヒドロキシウレアと予備接触させた細胞から誘導される細胞性修復蛋白、またはラムダベータ蛋白のいずれか、
    を含んでなる前記組成物。
  35. 前記細胞性修復蛋白が精製されている請求項34記載の組成物。
  36. 前記細胞性修復蛋白が無細胞蛋白抽出物中に存在する請求項34記載の組成物。
  37. 前記細胞性修復蛋白が無傷細胞内に存在する請求項34記載の組成物。
  38. 前記細胞が原核細胞および真核細胞からなる群から選択される請求項34ないし請求項37のいずれかの項に記載の組成物。
  39. 前記細胞が原核細胞である請求項38記載の組成物。
  40. 前記原核細胞が細菌細胞である請求項39記載の組成物。
  41. 前記細菌細胞が大腸菌細胞である請求項40記載の組成物。
  42. 前記細胞が真核細胞である請求項38記載の組成物。
  43. 前記真核細胞が酵母細胞、植物細胞、ヒト細胞または哺乳動物細胞である請求項42記載の組成物。
  44. 前記真核細胞が酵母細胞である請求項43記載の組成物。
  45. 前記酵母がSaccharomyces cerevisiae、Ustilago maydis、またはCandida albicansである請求項44記載の組成物。
  46. 前記真核細胞が植物細胞である請求項43記載の組成物。
  47. 前記真核細胞がヒト細胞である請求項43記載の組成物。
  48. 前記ヒト細胞が肝細胞、肺細胞、結腸細胞、子宮頸部細胞、腎細胞、上皮細胞、癌細胞、幹細胞、造血幹細胞、造血系前駆細胞、および胚性幹細胞からなる群から選択される請求項47記載の組成物。
  49. 前記真核細胞が哺乳動物細胞である請求項43記載の組成物。
  50. 前記哺乳動物がマウス、ハムスター、ラットおよびサルからなる群から選択される請求項49記載の組成物。
  51. 前記オリゴヌクレオチドが少なくも1つの末端修飾を有する請求項34ないし請求項50のいずれかの項に記載の組成物。
  52. 前記少なくも1つの末端修飾が、少なくも1つの末端固定核酸(LNA)、少なくも1つの末端2’−O−Me塩基類似体、および少なくも1つの末端ホスホロチオエート結合からなる群から選択される請求項51記載の組成物。
  53. 前記オリゴヌクレオチドが少なくも1つの固定核酸(LNA)を有する請求項52記載の組成物。
  54. 前記オリゴヌクレオチドが17−121ヌクレオチド長の一本鎖オリゴヌクレオチドであり、少なくも8個の隣接デオキシリボヌクレオチドの内部非重複ドメインを有する請求項34ないし請求項53のいずれかの項に記載の組成物。
  55. 前記オリゴヌクレオチドが少なくも25ヌクレオチド長である請求項34ないし請求項54のいずれかの項に記載の組成物。
  56. 前記オリゴヌクレオチドが121以下のヌクレオチド長である請求項34ないし請求項55のいずれかの項に記載の組成物。
  57. 前記オリゴヌクレオチドが74以下のヌクレオチド長である請求項34ないし請求項56のいずれかの項に記載の組成物。
  58. さらにトリコスタチンA、蛋白抽出物、またはヒドロキシウレアを含む請求項34ないし請求項57のいずれかの項に記載の組成物。
  59. オリゴヌクレオチドと;
    トリコスタチンA、ラムダベータ蛋白またはヒドロキシウレアと
    を含むキット。
  60. オリゴヌクレオチドと;
    細胞性修復蛋白であって、HDACインヒビタまたはヒドロキシウレアと予備接触させた細胞から誘導される前記細胞蛋白と
    を含むキット。
  61. オリゴヌクレオチドと;
    細胞性修復蛋白と;
    ラムダベータ蛋白と
    を含むキット。
  62. RAD52エピスタシス群、ミスマッチ修復群またはヌクレオチド除去修復群からの少なくも1つの蛋白と;
    トリコスタチンA、ラムダベータ蛋白、またはヒドロキシウレア
    を含むキット。
  63. さらに、核酸配列改変活性を有するオリゴヌクレオチドを含む請求項62記載のキット。
  64. 鋳型非依存性一本鎖ポリメラーゼと;
    5’−トリホスフェート類を有するLNAモノマー類と;
    トリコスタチンA、ラムダベータ蛋白またはヒドロキシウレアと
    を含むキット。
  65. 前記ポリメラーゼが子ウシ胸腺末端デオキシヌクレオチジルトランスフェラーゼである請求項64記載のキット。
  66. 水溶性カルボジイミド組成物と;
    イミダゾール組成物と;
    求核基を有するLNAモノマー類と;
    トリコスタチンA、ラムダベータ蛋白、またはヒドロキシウレアと
    を含むキット。
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