JP7048114B2 - 細胞壁を有する真核細胞における膜タンパク質の指向性進化 - Google Patents

細胞壁を有する真核細胞における膜タンパク質の指向性進化 Download PDF

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Description

発明の詳細な説明
説明
真核生物の膜貫通型受容体に関する構造的及び詳細な生化学的調査は、発現、精製および結晶化の方策の技術的進歩にも拘らず、依然として阻まれている。重大な難点は、十分な量で所望の受容体を産生する能力の欠如、およびそれらの生得の不安定性である。
指向性進化によって大腸菌におけるGPCRの機能的発現レベルを向上させる方法は、当該技術分野において既知である(Sarkarら(2008)、PNAS105:14808-14813;DodevskiおよびPlueckthun(2011)、J Mol Biol 408:599-615)。いくつかのGPCRの高発現変異体が、この方法を用いて単離されている。しかしながら大腸菌は、翻訳後修飾を実施できず、真核生物の膜タンパク質の分泌質制御および転位機構が欠けており、膜組成が異なっているため、大腸菌における真核生物膜貫通型受容体の進化は、進化の成功に必要な閾値を超えて原核生物系において生得的に発現する受容体に限定され、それゆえ真核生物のプロセシングまたは膜組成のために厳密に必要なものを有していない。
したがって、真核生物宿主において膜貫通型受容体の機能的発現を増加させる高速で効率的かつ堅牢な方法の確立が必要とされる。原理上、理想的な真核生物宿主は、進化した高発現変異体を産生させるために使用される細胞であろう。しかし、これらの哺乳動物細胞または昆虫細胞は、いかなる類の指向性進化手法にも必須となる、ライブラリーを用いて形質転換するということが容易でない。酵母Saccharomyces cerevisiaeなどの「より下等な」真核生物の使用は、ライブラリーを必要とするその他の手順において一般的である。しかし、酵母細胞は細胞壁を含んでおり、そのことは、原形質膜中に位置する発現受容体への投与リガンドの接近を制限することによって機能性試験アッセイを制限する。可溶性タンパク質の場合、この問題に対する一般的な解決策は、細胞壁の外側に提示される融合タンパク質として対象タンパク質を発現させる、酵母ディスプレイなどの方法の使用である。しかしこの手法は、原形質膜中、したがって細胞壁の下に位置しなければならないものであるとともに、細胞壁に付着した融合タンパク質として発現されることができないものである、不溶性の膜貫通型受容体の機能的高発現変異体の選択には適していない。
本発明の根底にある課題は、膜貫通型受容体の研究および薬物設計を促進および加速する新規な効率的方法を、特に細胞壁を含む真核細胞において最適な機能的発現をもたらす膜貫通型タンパク質変異体を同定することによって提供することである。この課題は、独立請求項の主題によって解決される。
用語および定義
本明細書との関連において、アルカリ性pHという用語は、化学の技術分野で知られているその意味で用いられ、それは、水溶液の塩基度の尺度を指す。7より大きいpHはアルカリ性または塩基性の溶液を指し示し、7未満のpHは酸性溶液を指し示す。
本明細書との関連において、還元剤という用語は、化学および生化学の技術分野で知られているその意味で用いられ、それは、酸化還元反応において電子を別の化学物質に供与する元素または化合物を指す。このプロセスにおいて還元剤は酸化される。
本明細書との関連において、蛍光細胞選別または蛍光活性化細胞選別(FACS)という用語は、細胞生物学の技術分野で知られているそれらの意味で用いられ、それらは、細
胞を流体の流れの中に浮遊させて検出装置を通過させる細胞選別方法を指す。通過する各細胞は、通過する細胞の固有蛍光シグナルの強度に応じて異なる区画に導かれ得る。
本明細書との関連において、ランダム突然変異誘発という用語は、細胞生物学および分子生物学の技術分野で知られているその意味で用いられ、それは、DNA突然変異をランダムに導入して突然変異体の遺伝子およびタンパク質を生じさせる方法を指す。その後、多数のこれらの突然変異遺伝子をライブラリーに蓄積することができる。ランダム突然変異誘発方法の非限定的な例は、エラープローンPCR、UV照射および化学的突然変異原である。
本明細書との関連において、ライブラリーという用語は、細胞生物学および分子生物学の技術分野で知られているその意味で用いられ、それは、核酸断片の収集物を指す。1つの特定のタイプのライブラリーは、ランダム突然変異誘発によって生成されるランダム突然変異体ライブラリーである。別の例は、特定の操作をしたDNA断片を含む、設計(すなわち合成)ライブラリーであろう。
本明細書との関連において、発現レベルという用語は、細胞生物学および分子生物学の技術分野で知られているその意味で用いられ、それは、DNA断片およびそれに由来するmRNAのそれぞれの転写および/または翻訳のレベルを指す。特定の実施形態において、突然変異遺伝子の発現が対照遺伝子または野生型遺伝子よりも高い場合に、発現レベルが高いとみなされる。特定の実施形態において、対照または野生型の遺伝子の発現よりも少なくとも2倍高くなって、突然変異遺伝子の発現が高いとみなされる。
本発明の第1の態様によれば、発現された核酸配列のライブラリーから配列を選択する方法であって、当該配列がその発現レベルに応じて選択される、方法が提供される。方法は、以下のステップを含む。
a)細胞壁を含む複数の真核細胞、特に複数の酵母細胞を提供し、各真核細胞がライブラリーの核酸配列メンバーを含んでいる。核酸配列メンバーは、細胞内で作動可能なプロモーター配列の制御下で、細胞壁を含む複数の真核細胞内の標的膜タンパク質として発現される、細胞への導入遺伝子である。
b)透過化ステップにおいて、細胞壁を含む複数の真核細胞の細胞壁を透過化して、複数の透過化生細胞を生成する。
c)標識ステップにおいて、複数の透過化生細胞を、標的膜タンパク質に特異的に結合できるリガンドと接触させる。リガンドは、検出可能標識を含み、複数の標識生細胞を生成する。
d)洗浄ステップにおいて、複数の標識生細胞を洗浄し、それにより、標的膜タンパク質に特異的に結合しなかったあらゆるリガンドおよび検出可能標識を、実質的に全てではないにしてもほとんど除去する。
e)選択ステップにおいて、複数の標識生細胞の各々について検出可能標識の存在を検出し、複数の標識生細胞に存在する検出可能標識に応じて複数の標識生細胞のサブセットを選択する。換言すれば、あらゆる標識すなわち特定閾値を上回る標識量を示す細胞を選択して、生細胞の選択物(selection of viable cells)を生成する。
f)単離ステップにおいて、細胞の選択物から発現された核酸配列を単離する。
換言すれば、本発明の第1の態様による方法は、細胞壁を含む真核細胞における膜貫通型受容体のライブラリーの発現を可能にし、かつ、これらの受容体の機能的発現の選択を可能にする。これは、構造的に安定な生細胞をなおも維持するような仕方で細胞壁を透過化することによって可能になり、それはスフェロプラストの作製のような、細胞壁を透過化する他の方法とは異なっている。本発明の透過化手順は、膜貫通型受容体に対する大き
なリガンドの結合さえも可能にする。結合リガンドの量による細胞の選択は、非機能性受容体(例えば、細胞内膜に存在する受容体)も含むであろう全受容体量によってではなく原形質膜上の機能性受容体の量に応じて細胞を選択することを可能にする。
特定の実施形態において、方法は、以下のステップをさらに含む:
i.選択ステップe)の後に、増殖ステップにおいて生細胞の選択物を増殖させて、生細胞の増殖選択物を生成する。生細胞の増殖選択物をステップb)~e)にこの順で供し、さらに、
ii.ステップi.を少なくとも1、2、3、4、5、6または7回実施し、続いて最後に単離ステップf)を実施する。
特定の実施形態において、選択ステップは多数の選択手順を含む。最初の選択の後、細胞の選択物を、これらの細胞に存在する検出可能標識に応じたこれらの細胞のサブセットの選択のために、再び使用する。細胞の選択は、少なくとも1、2、3、4または5回繰り返す。
特定の実施形態において、発現された核酸配列のライブラリーは、増幅配列に突然変異を導入するプロセスによって標的膜タンパク質をコードする核酸配列を増幅することにより得られる。
特定の実施形態において、方法は、以下のステップをさらに含む:
i.単離ステップf)で得た発現された核酸を、細胞壁を含む複数の真核細胞に導入して発現させ、
ii.細胞壁を含む複数の真核細胞を、本発明の第1の態様によるステップb)~f)にこの順で供し、
iii.ステップi.およびii.を少なくとも1、2、3、4、5、6または7回実施する。
特定の実施形態において、本発明の方法によって得た発現された核酸配列は、コードされた標的膜タンパク質の高い発現レベルおよび/または高い熱力学的安定性によって特徴付けられる。
選択ステップe)における本発明の全ての態様による特定の実施形態において、生細胞の選択物は、最も蛍光性である細胞の上位0.1~5%を含む。
特定の実施形態において、方法は、以下のステップをさらに含む:
i.単離ステップf)で得た発現された核酸を、増幅配列に突然変異を導入するプロセスによって増幅させて、第2ライブラリーの核酸配列を生成する。
ii.この第2ライブラリーの核酸配列を、細胞壁を含む複数の真核細胞へ導入する。
iii.第2ライブラリーの核酸配列メンバーを今や含んでいる、細胞壁を含む複数の真核細胞を、本発明の第1の態様による方法のステップb)~f)にこの順で供する。
特定の実施形態において、細胞壁を含む真核細胞は酵母細胞である。
特定の実施形態において、標的膜タンパク質はGタンパク質共役受容体(GPCR)である。
特定の実施形態において、透過化ステップは、細胞壁を含む複数の真核細胞を酵素処理および/または化学処理に曝露するステップを含む。
特定の実施形態において、透過化ステップにおける酵素処理は、細胞壁を含む複数の真核細胞を、細胞壁を透過化する酵素または酵素混合物に曝露するステップを含む。そのような酵素の非限定的な例は、グルカナーゼ、プロテアーゼ、マンナーゼおよび/またはスルファターゼである。そのような酵素混合物の非限定的な例は、ザイモリアーゼ、リチカーゼおよび/またはグルスラーゼである。
特定の実施形態において、透過化ステップにおける化学処理は、リチウムイオン、還元剤および/またはキレート剤を含むアルカリ性pHの緩衝液に、細胞壁を含む複数の真核細胞を曝露するステップを含む。
特定の実施形態において、透過化ステップで使用する緩衝液に含まれる緩衝剤の非限定的な例は、
-ビシン(2-(ビス(2-ヒドロキシエチル)アミノ)酢酸)または
-HEPES(2-[4-(2-ヒドロキシエチル)ピペラジン-1-イル]エタンスルホン酸)または
-MOPS(3-モルホリノプロパン-1-スルホン酸)または
-PIPES(1,4-ピペラジンジエタンスルホン酸)または
-TAPS(3-[[1,3-ジヒドロキシ-2-(ヒドロキシメチル)プロパン-2-イル]アミノ]プロパン-1-スルホン酸)または
-TAPSO(3-[[1,3-ジヒドロキシ-2-(ヒドロキシメチル)プロパン-2-イル]アミノ]-2-ヒドロキシプロパン-1-スルホン酸)または
-TES(2-[[1,3-ジヒドロキシ-2-(ヒドロキシメチル)プロパン-2-イル]アミノ]エタンスルホン酸)または
-トリシン(N-(2-ヒドロキシ-1,1-ビス(ヒドロキシメチル)エチル)グリシン)または
-トリス(2-アミノ-2-ヒドロキシメチル-プロパン-1,3-ジオール)である。
特定の実施形態において、透過化ステップの緩衝液に使用するキレート剤は、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)である。
特定の実施形態において、検出可能標識は蛍光色素であり、選択ステップは蛍光細胞選別によって達成される。
特定の実施形態において、還元剤の非限定的な例は:
-ジチオスレイトール(DTT)、ジチオエリスリトール(DTE)、メルカプトエタノールもしくは還元型グルタチオンなどの、チオール含有化合物、または
-トリス-カルボキシエチル-ホスフィン(TCEP)などのホスフィン含有化合物である。
特定の実施形態において、透過化ステップは以下のステップを含む:
a)pH9の50mMのTris-HCl、1mMのEDTA、および100mMの酢酸リチウムを含むTELi緩衝液中で酵母細胞を培養し、
b)50mMのDTTをさらに含むTELi緩衝液中で酵母細胞を30分間20℃で培養し、
c)酵母細胞を4℃のTELi緩衝液中で少なくとも1回洗浄する。
特定の実施形態において、TELi緩衝液は、pH9の50mMのTris-HCl、1mMのEDTA、および100mMの酢酸リチウムを含む。
特定の実施形態において、透過化ステップで使用する緩衝液は:
i.リチウムイオン、
ii.アルカリ性pH、
iii.還元剤、および/または
iv.キレート剤を含む。
特定の実施形態において、標識ステップは、リガンドを含む4℃のTELi緩衝液に酵母細胞を曝露するステップを含む。
特定の実施形態において、発現される核酸配列のライブラリーのための核酸配列は、好ましくはエラープローンPCRによるランダム突然変異誘発によって生成される。
特定の実施形態において、発現された核酸配列のライブラリーは、設計(合成)ライブラリーである。
特定の実施形態において、発現された核酸配列のライブラリーは、配列同一性が互いに少なくとも60%である相同配列を含む。
特定の実施形態において、細胞壁を含む真核細胞は、酵母細胞、特に、Saccharomyces cerevisiae、Pichia pastoris、Kluyveromyces lactis、Candida boidinii、またはHansenula polymorphaである。
特定の実施形態において、細胞壁を含む真核細胞は、天然の細胞壁を含まない、突然変異酵母株または遺伝子操作酵母株である。
特定の実施形態において、細胞壁を含む真核細胞は、Saccharomyces cerevisiae、特にS.cerevisiae株BY4741である。
特定の実施形態において、標的膜タンパク質に特異的に結合できるリガンドは、作動薬、拮抗薬またはアロステリック調節薬である。
特定の実施形態において、標的膜タンパク質に特異的に結合できるリガンドは、少なくとも3、4、5、6、8、10、14、18または25個のアミノ酸からなるオリゴペプチドである。
その他の実施形態において、受容体に特異的に結合できるリガンドは、抗体、抗体断片または別の結合タンパク質、例えば、非限定的に挙げられる例であるDARPins、アフィボディ、アンチカリン、ナノボディ、アフィリン、フィブロネクチンに由来する足場およびその他の足場からの、足場タンパク質である。
本発明のこの第1の態様に代わる方法によれば、発現された核酸配列のライブラリーから配列を選択する方法であって、配列がその発現レベルに応じて選択される、方法が提供される。方法は、以下のステップを含む。
a)細胞壁を含む複数の真核細胞、特に複数の酵母細胞を提供し、各真核細胞がライブラリーの核酸配列メンバーを含んでいる。核酸配列メンバーは、細胞内で作動可能なプロモーター配列の制御下で、細胞壁を含む複数の真核細胞内の標的膜タンパク質として発現される、細胞への導入遺伝子である。
b)標識ステップにおいて、細胞壁を含む複数の真核細胞を、標的膜タンパク質に特異的に結合できるリガンドと接触させる。リガンドは、検出可能標識を含み、複数の標識
細胞を生成する。
c)洗浄ステップにおいて、複数の標識細胞を洗浄し、それにより、標的膜タンパク質に特異的に結合しなかった大部分の、またはあらゆるリガンドおよび検出可能標識を除去する。
d)選択ステップにおいて、複数の標識細胞の各々について上記検出可能標識の存在を検出し、複数の標識細胞に存在する検出可能標識に応じて複数の標識細胞のサブセットを選択する。換言すれば、あらゆる標識すなわち特定閾値を上回る標識量を示す細胞を選択して、生細胞の選択物を生成する。
e)単離ステップにおいて、細胞の選択物から発現された核酸配列を単離する。
換言すれば、本発明の第1の態様のこの代替態様による方法は、細胞壁を含む真核細胞における膜貫通型受容体のライブラリーの発現を可能にし、かつ、これらの受容体の機能的発現の選択を可能にする。結合リガンドの量による細胞の選択は、非機能性受容体(例えば、細胞内膜に存在する受容体)も含むであろう全受容体量によってではなく原形質膜上の機能性受容体の量に応じて細胞を選択することを可能にする。本発明の第1の態様のこの代替態様は、小さなリガンドの使用に好都合であり得る。
本発明の第2の態様によれば、機能性膜タンパク質を高レベルで発現する能力を有する適応酵母細胞(adapted yeast cell)を選択する方法が提供される。方法は、以下のステップを含む:
a.複数の酵母細胞を提供し、酵母細胞の各々が、発現された核酸配列のライブラリーの核酸配列メンバーを含んでいる。核酸配列メンバーは、複数の酵母細胞において標的膜タンパク質として発現されている。
b.透過化ステップにおいて、複数の酵母細胞の細胞壁を透過化する。これは、複数の透過化生細胞を生成する。
c.標識ステップにおいて、複数の透過化生細胞を、標的膜タンパク質に結合できるリガンドと接触させる。リガンドは、検出可能標識を含み、それにより、複数の標識生細胞を生成する。
d.洗浄ステップにおいて、複数の標識生細胞を洗浄する。
e.選択ステップにおいて、複数の標識生細胞に存在する検出可能標識に応じて複数の標識生細胞のサブセットを選択して、生細胞の選択物を生成する。換言すれば、あらゆる標識すなわち特定閾値を上回る標識量を示す細胞を選択して、生細胞の選択物を生成する。
f.増殖ステップにおいて、生細胞の選択物を増殖させて、生細胞の増殖選択物を生成する。
g.生細胞の増殖選択物をステップb.~f.に少なくとも1、2、3、4、5、6または7回供する。
h.生細胞の増殖選択物をステップb.~e.に供する。
i.複数の標識生細胞に存在する検出可能標識に応じて生細胞の選択物のサブセットを選択する。これは、機能性膜タンパク質を高レベルで発現する能力を有する適応酵母細胞を生細胞の増殖選択物から生成する。
分離可能な単一の特徴、例えば、細胞株または、透過化緩衝液、選別方法もしくはライブラリータイプなどについての選択肢が本明細書において「実施形態」として示されている場合にはいつでも、そのような選択肢を自由に組み合わせて、本明細書に開示される発明の別個の実施形態を形成してもよいことを理解されたい。
以下の実施例および図面によって本発明をさらに例示するが、そこからさらなる実施形態および利点を引き出すことができる。これらの実施例は、本発明を例示することを意図したものであり、その範囲を限定することを意図していない。
図1は、酵母におけるGPCRの指向性進化のためのワークフローを示す。第1ステップとして、DNAライブラリーを作出するために野生型GPCR遺伝子をエラープローンPCRによってランダム化する。その後、DNAライブラリーを、線状化した酵母発現ベクターと組み合わせ、その混合物を酵母の形質転換に使用する。インサートDNAおよびベクター主鎖を相同組換えによって生体内で組み立てる。得られた酵母ライブラリーを培養し、発現を誘導する。発現後、細胞を透過化し、原形質膜中の機能性GPCRに専ら結合する蛍光リガンドと共に培養する。続いて、未結合リガンドを洗浄によって除去し、細胞をFACSによる選択に供する。高い蛍光性を示してそれに対応して高い機能レベルでGPCRを発現する細胞の選択は、所望の高発現GPCR変異体の単離を可能にする。FACSの間、酵母細胞は、後の増殖のために直接に増殖培地の中へと選別される。最も良く発現されるGPCRを抱えた細胞の強力な濃縮をもたらすために、FACSによる選択を反復的に実施する。必要に応じて、選択された細胞からプラスミドDNAを個々の変異体の分析のために単離することができ、またはもう1回進化させるためにランダム突然変異誘発によってさらなる多様性を導入することができる。 図2の(A)、(C)、(E)は、NTR1、NK1RおよびKOR1変異体のリガンド結合FCデータの度数分布図を示す。野生型GPCR(左パネル)、第2回目の進化の後に得られたライブラリープール(中央パネル)、および大腸菌に基づく系において進化した変異体(右パネル)についての、酵母における機能的発現。対応するGPCR変異体を発現している酵母細胞における受容体と蛍光性リガンドとの結合によって、全シグナルを得た(黒色の曲線)。非特異的結合は、過剰の非標識リガンドの存在下で測定した(灰色、色付)。野生型GPCRについては、表面における機能的発現レベルが低いために特異的シグナルが検出されない。選択されたライブラリープールは、発現細胞における高い特異的シグナル(1細胞あたりの表面の機能性受容体)を示すと同時に、表面に機能性受容体を少しも発現していない少ない割合の細胞を示す(二重ピークの全シグナルに留意されたい)。大腸菌に基づく系において前もって進化させた変異体(NTR1-D03、NK1R-E11)は、特異的シグナルを示すものの、酵母ライブラリープールの場合に得られたレベルには達していない。その上、より著しく高い割合の細胞において、表面における機能性GPCRの発現が検出されない。例えば、NTR1-D03の発現の場合、測定された全細胞のうち約50%のみが特異的シグナルを示す。(B)、(D)、(F)NTR1、NK1RおよびKOR1変異体についての1細胞あたりの平均した機能性受容体の総数(average total functional receptors)のRLBAによる測定。発現レベルは[H]放射性リガンドで定量した。非特異的シグナルは、過剰の非標識リガンドと共に[H]放射性リガンドの存在下で測定し、全シグナルから差し引いた。野生型のNTR1およびKOR1は低い発現レベルを示し、その一方で、NK1Rでは機能的発現が全く検出されない。NTR1-D03は1細胞あたりの受容体を中程度に示すが、他方、NK1R-E11では発現レベルが低い。選択されたライブラリープールは、1細胞あたりの受容体が100,000~150,000である機能的産生レベルを示し、野生型GPCR、および大腸菌において進化した変異体と比較してそれぞれ、25~50倍および5~20倍の増加を示す。エラーバーは、3回の代表的な発現実験からの標準偏差を示す。 図3は、未適応酵母株(non-adapted yeast cell)において選択されたNTR1変異体(NTR1-Y01~NTR1-Y07)の機能的発現を示す。(A)全シグナル(黒色曲線)および非特異的シグナル(灰色、色付)に関するリガンド結合FCデータの度数分布図を示す。選択された全ての変異体は、野生型NTR1に比べて機能的表面発現の増加を示す(図2A参照)。ライブラリープールNTR1 2.5と比較して、個々の変異体は、表面に機能性受容体を発現していない亜集団の増加と、活性受容体の表面発現のある細胞のより低い特異的シグナル(1細胞あたりの受容体)とを表している(図2A)。(B)1細胞あたりの平均した機能性受容体の総数のRLBAによる測定。全ての変異体は、野生型NTR1に比べて機能的発現の増加を示すが、NTR1 2.5プールについて観察された発現レベルには達していない(図2B参照)。非特異的シグナルは全シグナルから差し引いた。エラーバーは、3回の代表的な発現実験からの標準偏差を示す。 図4は、未適応酵母株および適応酵母株において発現されたHAタグ付きNTR1変異体の定量的ウェスタンブロット分析を示す。発現後に、各試料について等しい細胞数で全細胞溶解物のタンパク質抽出を実施した。ローディング対照として、アクチンを使用した。予想される分子サイズ(44kDa)を少し下回って流れる単量体GPCRに対応する主バンドと、GPCR二量体を表す可能性が最も高く、用いた条件下で分解しなかった、より高い分子量のバンドとを有するGPCRをそれらのHAタグによって検出した。定量化(棒線図)のために、定義した全てのバンドの強度を考量し、野生型NTR1について得られたGPCRおよびアクチンの強度に対してシグナルを規格化した。未適応株では、野生型NTR1(レーン1)から、進化した変異体(レーン2)へと、産生する全GPCRが2倍に増加する。適応株(レーン3)でもNTR1-Y06の全受容体レベルが未適応株(レーン2)に比べてわずかに増加するが、産生する全受容体の相対的増加は、機能性受容体の増加よりもはるかに低い(図13B参照)。陰性対照(レーン4)には、HAタグなしでNTR1-Y06を発現している細胞を使用した。 図5は、未適応酵母株および適応酵母株において発現された、mChとのC末端融合を有するNTR1変異体についての蛍光共焦点顕微鏡研究を示す。蛍光リガンドの結合(上段)によって得られたかまたはmCh(中段)から得られた蛍光強度、および明視野顕微鏡オーバーレイ(下段)を示す。野生型NTR1(第1列)の発現の場合、細胞表面にリガンド結合シグナルがある細胞は検出されず、その一方で、いくつかの細胞は、主に細胞内部に位置する明確なmChシグナルを示し、したがって、細胞内に保持された受容体を反映している。その上、非発現の亜集団を表して、いかなる蛍光シグナルも欠如した細胞が多く検出されている。対照的に、未適応細胞におけるNTR1-Y06(第2列)の発現は、リガンド結合による細胞表面の機能性受容体の視覚化を可能にしている。これらの細胞はmChの強いシグナルも示しているが、未だ大部分が細胞内部に局在している。未適応株におけるNTR1-Y06の発現は、野生型NTR1と同様に、非発現細胞を引き起こし、リガンド結合のシグナルもmChのシグナルも表さない。適応株におけるNTR1-Y06(第3列)の発現では、より著しく少ない非発現細胞が検出され、発現細胞は、細胞内部にmChがほとんど検出されず、表面にリガンド結合とmChとの両方の強いシグナルを示している。陰性対照(第4列)では、mCh融合を有さないNTR1-Y06を発現している細胞を、過剰の非標識ニューロテンシンの中で蛍光標識ニューロテンシンと共に培養した。代表的な写真を示す。 図6は、C末端mCh融合を有するNTR1変異体を発現している未適応株および適応株のFC分析およびRLBA分析を示す。(A)NTR1(左パネル)およびNTR1-Y06(中央パネル)を発現している未適応株ならびにNTR1-Y06(右パネル)を発現している適応株の、FCデータを示す。リガンド結合実験(上段)の度数分布図では、全シグナル(黒色曲線)および非特異的シグナル(灰色、色付)を示して活性受容体変異体の表面発現を比較している。NTR1は表面に活性受容体をほとんど示さず、他方、NTR1-Y06の場合には未適応株および適応株において表面発現が著しく増加する(特異的シグナルがより高い蛍光強度に向かってシフトする)。さらに、適応株は、mCh融合を有するNTR1-Y06を発現している未適応株と比較して、活性受容体の表面発現を示さない細胞の割合の実質的な減少をもたらす。mCh発現の度数分布図(中段)では、産生された全受容体が定量される。黒色の曲線はmChシグナルを示し、他方、蛍光リガンドと共に培養した、mCh融合のないNTR1-Y06を発現している細胞の自家蛍光は、バックグラウンド(灰色、色付)を表す。未適応株におけるNTR1およびNTR1-Y06の発現は、mChシグナルプロファイルが非常に似通っている。リガンド結合FC実験におけるNTR1の発現では、表面の活性受容体はほとんど検出されないため、強いmChシグナルは、大部分のNTR1が細胞内に保持されているはずであることを意味する。受容体を全く発現していない細胞の亜集団はあらゆる変異体について見受けられる(二重ピークに留意されたい)が、この非発現の割合は適応株において著しく減少している。相関分析(下段)では、mCh蛍光強度(全産生受容体)がリガンド結合蛍光強度(表面の機能性受容体)と比較される。野生型NTR1の発現の場合、表面の機能性受容体は、全産生受容体とよく相関していない。この相関は、未適応株において発現されたNTR1-Y06でより良好であり、NTR1-Y06が適応株において発現される場合、表面の機能性受容体は、全産生受容体とよく相関している。(B)1細胞あたりの平均した機能性受容体の総数のRLBAによる測定。未適応株では、野生型受容体から、進化した変異体へと、mCh融合を有する受容体の機能的発現レベルが3倍に増加する。適応株は、未適応株におけるNTR1-Y06の発現と比較して、平均した機能的発現の総数(average total functional expression)を6倍さらに増加させる。非特異的シグナルは全シグナルから差し引いた。エラーバーは、3回の代表的な発現実験からの標準偏差を示す。 図7は、Sf9昆虫細胞において進化したGPCRの機能的発現レベル、およびNK1R変異体のシグナル伝達活性を示す。(A)、(B)、(C)NTR1、NK1RおよびKOR1変異体についての1細胞あたりの平均した機能性受容体の総数のRLBAによる測定。野生型GPCRに比べて、進化した全ての変異体は、1細胞あたりの平均受容体のレベルの著しい増加を示す。NTR1-Y06は、野生型NTR1に比べて5倍の増加を示し、NK1R-Y09は、NK1RおよびNK1R-ΔCに比べてそれぞれ4倍および2倍の増加を示し、KOR1-Y05の場合には野生型KOR1に比べて最も強い増加(27倍)が検出される。各GPCRについて、2つの独立した発現実験を実施した(別々の棒グラフ)。非特異的シグナルは全シグナルから差し引いた。エラーバーは、3回の実施からの標準偏差を示す。(D)NK1R変異体のシグナル伝達活性の[35S]-GTPγS結合による測定。等量の活性GPCRと再構成Gタンパク質とを、P物質の存在下(灰色)および非存在下(黒色)でアッセイした。作動薬による刺激のない状態では全ての変異体が低い基礎活性を示す。作動薬を添加すると、シグナル伝達が[35S]-GTPγS結合によって検出される。NK1RおよびNK1R-ΔCは同一のシグナル伝達活性を有し、NK1R-Y09のシグナル伝達は依然として野生型受容体に類似したままである。各GPCR変異体に対して、2つの独立した発現実験による2つの独立したシグナル伝達アッセイを実施した(別々の棒グラフ)。エラーバーは、3回の実施からの標準偏差を示す。 図8は、各GPCRの進化の間に最も高度に濃縮されたクローンの概要を示す。各クローンの突然変異が表示されており、突然変異データの上には対応する野生型アミノ酸が示されている。突然変異の位置は、構造領域、Ballesteros-Weinstein付番(3)および連続的アミノ酸付番によって表示されている。(A)NTR1変異体。(B)NK1R変異体。(C)KOR1変異体。(D)突然変異を抱えた様々な領域を描写するGPCRトポロジーの図解。 図9は、未適応酵母株において選択されたNK1RおよびKOR1変異体の機能的発現を示す。(A)、(B)それぞれNK1RおよびKOR1変異体についての、示される全シグナル(黒色曲線)および非特異的シグナル(灰色、色付)に関するリガンド結合FCデータの度数分布図。非特異的シグナルは、過剰の非標識リガンドの存在下で得た。全ての変異体は、対応する野生型GPCR(NK1RおよびKOR1、図2C、E参照)と比較して機能的発現の増加を示す。ほとんどの変異体の発現細胞の特異的シグナルは、対応するライブラリープール(NK1R2.5およびKOR1 2.5、図2C、E参照)と比較して類似しているかまたはわずかに低いが、個々の変異体には、表面に機能性受容体を少しも発現していない細胞がより高い割合で認められる。(C)、(D)1細胞あたりの平均した機能性受容体の総数のRLBAによる測定。全ての変異体は、対応する野生型GPCRと比較して機能的発現の増加を示すが、ほとんどの変異体では、対応するライブラリープールの場合と比較してRLBAによって測定された1細胞あたりの受容体の平均数が低い(図2D、F参照)。非特異的シグナルは全シグナルから差し引いた。エラーバーは、3回の代表的な発現実験からの標準偏差を示す。 図10は、NTR1 2.5プールから直接単離された酵母株と、FACSによる表現型選択によって後に適応させた新規形質転換株とにおけるNTR1-Y06の機能的発現レベルを示す。(A)、(B)全シグナル(黒色曲線)および非特異的シグナル(灰色、色付)に関するリガンド結合FCデータの度数分布図を示す。非特異的シグナルは、過剰の非標識リガンドの存在下で得た。単離株は、NTR1-Y06を発現している未適応の再形質転換株(図3A参照)とは対照的に、NTR1 2.5ライブラリープール(図2A参照)に類似した発現プロファイルを示す。新規形質転換株を使用して5回のFACSによる表現型選択の後に得られた、(B)に示されている後の適応株では、高い表面発現レベルが再構成される。(C)1細胞あたりの平均した機能性受容体の総数のRLBAによる測定。NTR1-Y06を発現している再形質転換株(図3B参照)と比較して、単離株における機能性NTR1-Y06の高発現、および適応株におけるこの表現型の再構成が検出される。非特異的シグナルは全シグナルから差し引いた。エラーバーは、3回の代表的な発現実験からの標準偏差を示す。 図11は、宿主適応のための表現型選択中での個々の選別後におけるNTR1-Y06の発現プロファイルを示す。全シグナル(黒色曲線)および非特異的シグナル(灰色、色付)に関するリガンド結合FCデータの度数分布図を示す。非特異的シグナルは、過剰の非標識リガンドの存在下で得た。NTR1-Y06発現の最も高い細胞を選別する(最も蛍光性である細胞の上位1%に制限する)表現型選択の過程で、表面に機能性受容体を少しも発現していない細胞の母集団は徐々に減少する。それと同時に、発現細胞の特異的シグナルは選択中により高いレベルにシフトし、これらの細胞の表面における1細胞あたりの機能性受容体の増加が指し示される。適応を誘導するには2つの選別が必要であることに留意されたい。発現プロファイルは最初の2つの選別の後に著しく変化しないが、選別3の後、活性NTR1-Y06の表面発現を伴わない亜集団の明らかな減少と、発現亜集団内での特異的シグナルのシフトとが認められる。この傾向は、選別4の後の発現プロファイルで見受けられるように、その後の選別において継続される。 図12は、未適応株、適応株、およびS.cerevisiaeにおける非発現条件下で前もって培養した適応株における、NTR1-Y06の機能的発現を示す。(A)全シグナル(黒色曲線)および非特異的シグナル(灰色、色付)に関するリガンド結合FCデータの度数分布図を示す。非特異的シグナルは、過剰の非標識リガンドの存在下で得た。NTR1-Y06を発現している新規形質転換株の適応は、発現細胞亜集団のより高い特異的シグナル(1細胞あたりの受容体)と、活性受容体の表面発現を少しも示していない亜集団の減少とをもたらす。適応株を非発現条件下で反復的に培養する場合、発現亜集団における特異的シグナル(1細胞あたりの受容体)の落ち込み、および活性NTR1-Y06の表面発現を伴わない細胞の割合の増加によって表されて、平均発現レベルが再び減少する。(B)1細胞あたりの平均した機能性受容体の総数のRLBAによる測定。RLBAからの結果は、1細胞あたりの平均受容体数が、未適応株から適応株へと著しく増加し、それが今度は、発現誘導前に適応株を非発現条件下で反復的に培養した場合に再び約30%落ち込む、ということを示している。未適応株の本来のより低い発現レベルへの完全な復帰(complete reversion)の欠如は、非誘導条件下においてさえ高発現の表現型を部分的に保持するのに十分である、漏出的発現の結果である可能性がある。非特異的シグナルは全シグナルから差し引いた。エラーバーは、3回の代表的な発現実験からの標準偏差を示す。 図13は、S.cerevisiaeの未適応株および適応株におけるNK1R-Y09およびKOR1-Y05の機能的発現を示す。(A)、(C)全シグナル(赤色曲線)および非特異的シグナル(緑色、色付)に関するリガンド結合FCデータの度数分布図を示す。非特異的シグナルは、過剰の非標識リガンドの存在下で得た。適応株における発現細胞の特異的発現シグナル(1細胞あたりの受容体)は、未適応株に比べてわずかに増加し、その一方で、活性受容体の表面発現を伴わない亜集団の著しい減少が認められる。(B)、(D)1細胞あたりの平均した機能性受容体の総数のRLBAによる測定。FCデータに示されている、活性受容体の表面発現を示さない細胞の割合の適応株における減少は、RLBAで測定される平均した機能的発現の増加をもたらす。非特異的シグナルは全シグナルから差し引いた。エラーバーは、3回の代表的な発現実験からの標準偏差を示す。 図14は、S.cerevisiaeの未適応株および適応株におけるHAタグ付きNTR1-Y06の機能的発現を示す。(A)全シグナル(黒色曲線)および非特異的シグナル(灰色、色付)に関するリガンド結合FCデータの度数分布図を示す。非特異的シグナルは、過剰の非標識リガンドの存在下で得た。C末端HAタグを有するNTR1-Y06を発現している株の適応は、活性受容体の表面発現を示さない細胞の割合の減少と、表面発現のある細胞の表面における1細胞あたりの活性受容体の増加とをもたらす(特異的シグナルがより高い蛍光強度に向かってシフトする)。(B)1細胞あたりの平均した機能性受容体の総数のRLBAによる測定。未適応株では、野生型受容体から、進化した変異体へと、機能的発現レベルが4倍に増加する。適応株は、未適応株におけるHAタグ付きNTR1-Y06の発現と比較して、平均した機能的発現の総数を10倍さらに増加させる。非特異的シグナルは全シグナルから差し引いた。エラーバーは、3回の代表的な発現実験からの標準偏差を示す。 図15は、NK1R-Y09の精製を示す。(A)IMACの後の精製受容体のSECプロファイル。2つのピークが得られ、そのうちピーク1は、定義された、より高いNK1R-Y09のオリゴマー状態に対応している可能性が最も高く、その一方でピーク2はモノマー受容体画分を表す。(B)還元条件下でのSDS-PAGEによる精製NK1R-Y09の分析。等量の全タンパク質を各レーンに装填した。IMAC(レーン1)の後、純粋なNK1R-Y09(38.5kDa)が得られるとともに、より高い分子量の別のタンパク質の弱いバンドが検出される。そのようなバンドは、NK1R-Y09のオリゴマーを表している可能性が最も高く、それは、用いた条件下では分解しない。ピーク1(レーン2)の画分では、単量体NK1R-Y09の強いバンドに次いで、より高い分子量のバンドも検出され、その一方で、ピーク2(レーン3)の画分では、単量体NK1R-Y09が唯一の種である。NK1R-Y09は、酵母の選択によって得られたときに、昆虫細胞におけるさらなる遺伝子操作および発現が行われなかったことに留意されたい。結晶化試験を実施することを目的とした精製には、さらなる遺伝子操作、例えば、潜在的なグリコシル化部位の除去、N末端切断、ループ欠失および/または、融合タンパク質(例えば、T4リゾチームまたは熱安定化アポシトクロムb562RIL(Chunら(2012)、Structure 20:967-976))の導入が必要であろう。そのような手段は、異種性の低減、配座柔軟性の制限、および安定性の向上によって受容体の精製をさらに改善する可能性がある(Maeda&Schertler(2013)、Curr Opin Struct Biol 23:381-392)。
実施例1: 酵母における指向性進化による高発現機能性GPCRの生成
Gタンパク質共役受容体(GPCR)は、ヒトゲノム中に約800種の様々なメンバーを有して細胞表面受容体の最大のスーパーファミリーを構成している。真核細胞生命体においてGPCRは、多様なリガンドに応答するとともにヘテロ三量体Gタンパク質を介してGタンパク質非依存的な様式でシグナルを変換して、高度に多目的なシグナル伝達媒介物へと進化した。GPCRの極めて重要な役割は、異常なGPCRシグナル伝達に関連する非常に多くのヒト疾患、例えば肥満、糖尿病、心血管疾患、骨粗鬆症、免疫学的障害、神経変性疾患および癌に反映される。結果としてGPCRは、製薬産業にとって大いに重要性を有する薬剤標的を意味する。市販されている薬物の約30~50%が、GPCRまたはGPCR関連のメカニズムに作用するものであり、それらの多くは最も売れている薬物である。
GPCRの構造的および詳細な生化学的調査における主要な難問は、所望の受容体を十
分な量で産生することの困難さ、ならびにそれらの生得の不安定性および柔軟性である。バキュロウイルス/昆虫細胞発現系の使用、または脂質キュービック相(LCP)での内在性膜タンパク質の結晶化の確立のような、発現および結晶化の方策の進歩は、X線結晶解析による三次元受容体構造を決定する上での突破口につながる。利用可能な構造データセットはGPCR機能のメカニズムについての原子レベルでの洞察を科学界に提供し、また合理的な構造に基づく薬物設計を可能にし始めるかもしれないが、その一方で、受容体の動態および配座変化についての詳細な理解が未だにいくぶん不完全なままであることは明らかである。
さらに、現在までにタンパク質構造データバンク(PDB、http://www.pdb.org)に寄託された26の独特のGPCR構造は、未だに全ての受容体のうちのごくわずかな割合(<4%)を表し、GPCRの構造調査にとっての障害が根強く残っていることを反映している。例えば、これまでに決定された全てのGPCR構造(情報元:PDB;天然組織から抽出したタンパク質から得られた構造を除く)の約85%については、組換え受容体を産生するために昆虫細胞を使用するのに成功したが、この発現系は包括的な解決策を提供しない。GPCRスーパーファミリーのいくつかのメンバーは昆虫細胞においてさえ低収量で発現され、真核細胞においてもこれらの受容体の生合成および膜挿入に関する根本的な問題が示唆される。この問題は発現条件の単純な最適化によって解決することができない、というのも特に、個々のGPCRにとっての最適条件に一貫性が見受けられないからである。したがって、GPCR研究を促進および加速するためには新規な手法が必要である。
近年、本発明者らは、指向性進化によって大腸菌におけるGPCRの機能的発現レベルを向上させる方法を開発した(Sarkarら(2008)、Proc Natl Acad Sci 米国 105:14808-14813;DodevskiおよびPlueckthun(2011)、J Mol Biol 408 :599-615)。野生型GPCRのランダム突然変異誘発に続く蛍光活性化細胞選別(FACS)による選択によって、4種の異なるGPCR、すなわちニューロテンシン受容体1(NTR1)、NK-1受容体(NK1R、別名タキキニン受容体1またはP物質受容体)ならびにアルファ-1Aおよびアルファ-1Bアドレナリン受容体のランダム化ライブラリーから高発現変異体を単離することが可能となった。得られた第1世代の変異体は、NTR1の継続的研究において、広範な選択(Schlinkmannら(2012)、Proc Natl Acad Sci 米国 109:9810-9815)および網羅的な組換え(Schlinkmannら(2012)、J Mol Biol 422:414-428)による第2世代の突然変異体の作出のための基礎を築いた。これらの研究で作出された合成ライブラリーを、短鎖界面活性剤中での安定性の向上したNTR1変異体をCHESSと呼ばれる相補的指向性進化手法によって生成させるためにも使用した(ScottおよびPlueckthun(2013)、J Mol Biol 425:662-677;Scottら(2014)、Biochim Biophys Acta 1838:2817-2824)。究極的には、これらの取り組みは、大腸菌で産生された材料から作動薬結合NTR1の3つの異なる変異体の構造をもたらし(Egloffら(2014)、Proc Natl Acad Sci 米国 111:E655-62)、膜タンパク質工学における指向性進化の力を際立たせた。
大腸菌における進化で得られた好結果、および真核生物発現宿主について証明された有効性により、特に真核生物発現系における高い機能性GPCR発現に向けてこの手法をさらに開発することが求められた。本発明者らは、真核生物において特異的配列適応とそれによる改善した機能的産生とを獲得するためには真核生物系において直接、GPCRの進化を実施することが好適かもしれないという仮説を立てた。さらに、真核生物宿主に比べて大腸菌は、翻訳後修飾を行うことができず、真核生物膜タンパク質の分泌質制御および
転位機構が欠けており、膜組成が異なっている。したがって、大腸菌におけるGPCRの指向性進化は、進化の成功に必要な閾値を超えて原核生物系において生得的に発現する受容体に限定され、それゆえ真核生物のプロセシングまたは膜組成のために厳密に必要なものを有していない。
ここで、本発明者らは、酵母Saccharomyces cerevisiaeにおける指向性進化によって真核生物宿主においてGPCRの機能的発現を増加させる、高速で効率的かつ堅牢な方法の確立を開示する。この方法は、実証されるとおり、3種の異なるGPCRに関して概して適用可能であり、たった2回の進化によって、酵母および昆虫細胞のいずれにおいても高い機能的発現を示す受容体変異体を生成する。その上、誘導される宿主適応によって、酵母における機能的発現レベルを再現性よくさらに増加させることができる。
酵母における3種の異なるGPCRの指向性進化は、S.cerevisiaeにおいて高い機能的発現をもたらす
この方法の一般的手法を図1に示す。まず、野生型GPCR遺伝子をエラープローンPCRによってランダム化し、結果として得られるDNAライブラリーを酵母の形質転換に使用する。インサートDNAおよび酵母発現ベクター主鎖を、設計された相同組換え部位を介して生体内で組み立てる。次に、得られた酵母ライブラリーにおける発現を誘導し、続いて細胞を、酵母細胞壁の透過化のために最適化された緩衝液で処理する。透過化は、原形質膜中の機能的に発現された受容体に対する投与蛍光リガンドの接近、したがって結合を可能にするために必要である。飽和濃度の蛍光リガンドと共に培養した後、未結合リガンドを洗浄によって除去し、細胞をFACSによる選択に供する。表面に変異体を機能性受容体分子最大数で発現している酵母細胞は、それに対応して最も高い蛍光を呈する。これらの細胞は、最も蛍光性であるの酵母細胞の上位0.5~1%に制限してそれらを後の増殖のために直接に増殖培地の中へと選別することによって、単離される。所望の表現型を有するGPCR変異体を発現している細胞の強力な濃縮を達成するために、発現、蛍光リガンドとの培養、およびFACSの反復的なサイクルを数回実施する。プラスミドDNAは、分析または、さらなるランダム突然変異誘発によるさらなる多様性の導入のために、FACS後に選択された細胞から単離することができ、それによって次の回の進化が開始される。
本発明者らは、3つの異なるGPCR:(i)ラットNTR1、(ii)ヒトNK1Rおよび(iii)ヒトカッパ型オピオイド受容体(KOR1)を並行して進化させることを目指した。NTR1は、大腸菌に基づく系において容易に進化させることができることがいくつかの研究で示されており、それゆえに陽性対照と見なした。NK1Rも同様に、大腸菌においてより高く発現させることに向けて好結果に指向性進化に供されている(DodevskiおよびPlueckthun(2011)、J Mol Biol 408:599-615)。しかしながら、相対的な改善が強力であるにも拘らず、原核生物における野生型NK1Rの発現レベルが非常に低いために、進化した受容体変異体は、大腸菌において進化した他の受容体に比べて依然として中程度の絶対レベルでしか発現しなかった(Sarkarら(2008)、Proc Natl Acad Sci 米国 105:14808-14813;DodevskiおよびPlueckthun(2011)、J Mol Biol 408:599-615)。しかも、これらの進化したNK1R変異体の発現レベルはS.cerevisiaeにおいても低く(下記参照)、機能的産生のさらなる改善が可能かもしれないことを示唆していたが、それは将来、この受容体の研究に恩恵をもたらし得る。KOR1に関しては、この受容体を進化させる試みはこれまで行われておらず、それは、異種発現に関して挑戦に値する例の代表である。
上に概説した手順に続いて、3つの受容体の各々に対してたった2回の進化―各回は、
エラープローンPCRによる1回のランダム化とその後のFACSによる5回の選択とから構成される―を行うだけで、機能的発現レベルを強く向上させるのに十分であった。図2は、大腸菌に基づく系において前もって進化させた野生型GPCRであるNTR1変異体およびNK1R変異体(それぞれNTR1-D03およびNK1R-E11)、ならびに第2回目の進化の後に得られたライブラリープールすなわちNTR1 2.5、NK1R2.5、およびKOR1 2.5(ライブラリー命名法:GPCR a.bは、aが全ランダム化の回数であり、bが全FACS選択の回数である)の、S.cerevisiaeにおける機能的発現レベルの比較を示す。機能的発現レベルは、フローサイトメトリー(FC)または放射性リガンド結合アッセイ(RLBA)のいずれかによって測定した。FCリガンド結合実験は、インタクトな個々の細胞の表面の原形質膜中の機能性受容体を専ら測定するものであり、他方、RLBAは、溶解した細胞の集団全体に亘って平均した機能性受容体の合計量を考量するものであり、それゆえ細胞内膜中の機能性GPCRも検出するものである、ということに留意されたい。野生型GPCRについては、FC実験において特異的シグナルは得られず、したがって表面の原形質膜中の活性受容体は検出されない(図2A、C、E)。対照的に、NTR1およびKOR1についてのRLBAでは、機能性受容体の低い発現レベルが測定され、少量の活性受容体が存在しているがしかし細胞内膜中に保持されている可能性が最も高いということが指し示される(図2B、F)。NK1Rについては、以前に報告されたこと(Butzら(2003)、Biotechnol Bioeng 84:292-304)と一致して、用いたいずれかの方法では機能性受容体が検出されなかった(図2C、D)。
注目すべきことに、FCおよびRLBA分析によって示されたことであるが、選択されたライブラリーの発現レベルは、野生型受容体よりもはるかに高いだけでなく、対応する大腸菌において進化した変異体(NTR1-D03、NK1R-E11)よりも高い。選択された酵母ライブラリーについては、1細胞あたりの全機能性受容体が100,000~150,000であることがRLBAで測定され、対応する野生型GPCRおよび大腸菌進化変異体と比べてそれぞれ25~50倍および5~20倍の増加を表している(図2B、D、F)。FCデータは、大腸菌からの進化変異体および選択された酵母ライブラリーのいずれについても明確な特異的シグナルを示すことによって、表面にある活性受容体を裏付けている(図2A、C、E)。しかし、選択された酵母ライブラリーの特異的シグナルは、大腸菌進化変異体に比べてより高い蛍光強度に向かってシフトしており、表面にある活性受容体の増加を反映している。さらに、選択された酵母ライブラリーでは、表面に機能性受容体を少しも発現していない細胞の亜集団がより著しく小さく検出される。
そのような2つの亜集団への分割は、酵母の単一クローンとライブラリーとの両方において試験した全てのGPCRの発現に際してFC実験において再現性よく認められた。したがってこの作用は、かなりの割合の細胞において表面での機能的発現が欠如するものであるS.cerevisiaeにおけるGPCR発現に固有の特徴であるようである。例えば、大腸菌進化変異体のFCデータで示されているが、NTR1-D03の活性な表面発現は全細胞の約50%において得られ、低発現変異体NKR1-E11の場合はごく少数の細胞が活性な表面発現を示す(図2A、C)。なぜ単一のクローンから増殖させた集団のうちのいくつかの細胞が表面に機能性受容体を少しも産生しないのかは不明なままであるが、全ての培養は専ら選択最小培地で行われるため、これらの細胞での発現ベクターの喪失は除外できる。
濃縮された受容体変異体の酵母における発現レベルの改善は、選択と同時に起こる宿主適応によってさらに向上する。
濃縮されたクローンを同定すべく、DNA配列決定のために第1回目(段階1.5のライブラリー)および第2回目(段階2.5のライブラリー)の進化の後にプラスミドDNAをライブラリープールから単離した。選択されたクローンについて各クローンの様々な
突然変異を描写する概要を図8に示す。興味深いことに、NTR1およびKOR1の場合には完全長の変異体のみが選択されたが、選択されたNK1R変異体は全て、推定ヘリックス8およびパルミトイル化部位の後にある狭い7アミノ酸の範囲内の位置に終止コドンを含んでおり、その結果C末端が短くなった。このことは、完全長C末端に対して対抗的な選択が強くなされ、切断がこの受容体の発現の著しい増加をもたらす、ということを指し示している。酵母では機能性の野生型NK1Rが検出されないため、本発明者らは代わりに、最も顕著に選択されるC末端切断と野生型配列とを組み合わせて、NK1R-ΔCと呼ぶ基準変異体を構築した。これによって本発明者らは、選択された突然変異の基準を得、またC末端切断がNK1Rの機能的発現の改善にどれだけ寄与するかを定量することも可能になった。
再形質転換の後に個々のクローンを分析し、濃縮された全ての受容体変異体が酵母において実際に、対応する野生型受容体よりも著しく良好に発現されることを明らかにした(図3および図9)。これは、この真核生物宿主における生合成への適応がより良好である変異体が実際に得られたことを指し示す。
選択されたGPCRライブラリーでは、表面に機能性受容体を少しも発現していない細胞がごくわずかな割合で検出されたが(図2A、C、E)、個々の変異体を新鮮な宿主細胞内で再形質転換した場合にはより大きな亜集団でそのような細胞が認められた(図3Aおよび図9A、B)。さらに、再形質転換後に活性な表面発現を有する細胞では、特定のFCシグナルがより低い蛍光強度に向かってシフトすることによって指し示されるように、個々のNTR1変異体の1細胞あたりの受容体レベルがより低く検出された(図3A)。FCにおけるこれらの組み合わせ作用の観察結果と一致して、個々のNTR1変異体を発現している再形質転換株(図3B)では、選択されたGPCRライブラリー(図2B)に比べてより著しく低い平均RLBA読取り値が得られた。
発明者らは、選択の過程で、選択されたライブラリーにおける膜タンパク質発現のレベルのさらなる増加につながる発現宿主の適応が起こった、という仮説を立てた。この仮説を試験するために、NTR1-Y06と名付けられた強く選択された変異体を発現している酵母クローンを、NTR1 2.5ライブラリープールから直接単離した。予想通り、単離株は、NTR1 2.5ライブラリープールと同様の発現プロファイルでNTR1-Y06を高い機能レベルで発現する(図10A、C)。NTR1-Y06を発現している再形質転換株と単離株との両方から単離された全プラスミドDNAの配列決定から、差異がないことが明らかになった。それゆえ本発明者らは、FACSによる反復的な発現と最も良く発現するクローンの選別との実際上の手順が、GPCR産生の向上に向けた酵母の適応を誘導した、と結論付けた。この仮説を試験するために、NTR1-Y06を発現している再形質転換された単一クローンについて、最も蛍光性である細胞の上位1.0%に制限することによってNTR1-Y06発現の最も高い細胞を単離する、後のFACSによる5回の(配列のランダム化を伴わない)模擬選択を実施した。実際、この表現型選択の過程で、株は、活性な表面発現のない細胞の漸減と、表面発現を伴う亜集団における1細胞あたりの機能性受容体の増加とによって、より高いNTR1-Y06の発現に適応した(図11)。最終的に、適応後にNTR1-Y06は、選択されたNTR1 2.5プールにおいて得られた発現レベルと同じ高さの全機能レベルで発現され、1細胞あたりの平均した機能性受容体数が約160,000であり、同様の発現プロファイルを有する(図10B、C)。しかし、非発現条件下での適応株の反復的培養により、発現レベルが30%落ち込むことによって適応作用が部分的に復帰することが認められた(図12)。
表現型適応は選択の主要な特徴でさえあったかもしれないのか否かを試験するために、本発明者らは、野生型NTR1を発現している株を適応させることも試みた。しかし、FACSの後、選別された細胞はもはや増殖せず、反復的選択が妨げられた。この観察結果
は、改善された特性を受容体に付与するものである突然変異の選択が宿主適応の厳しい必須条件であり、配列変化が実は重要な進化事象である、ということを明白に示す。野生型NTR1を発現している細胞において適応を誘導するのに失敗したことは、毒性のある野生型GPCRの発現とそれに続く選択とが組み合わさって一緒に細胞の生存を制限するストレスの多い作用によって説明され得る。
それゆえ、反復的選別によって誘導される適応は、本質的に細胞にとって毒性の低いものである進化したGPCR変異体に限定されるように思われる。実際、NK1R-Y09およびKOR1-Y05をそれぞれ発現している株である進化したNK1R変異体およびKOR1変異体の適応もまた同様に可能であった。どちらの変異体も選択中に強く濃縮され、NK1R-Y09またはKOR1-Y05を発現している新規形質転換細胞は、対応するライブラリープールよりも低い発現レベルを示した。各変異体について、NTR1-Y06を発現している株を適応させるために用いた手順と同一のFACSによる5回の表現型選択を実施した。どちらの変異体についても、選択の過程で徐々に生じる、より高い発現レベルに向けた宿主適応が認められた(図13)。NK1R-Y09およびKOR1-Y05についての宿主適応作用はNTR1-Y06の場合よりも顕著ではないものの、これらの結果は、適応が受容体に特異的なものではなく、進化した受容体が発現されるならば再現性よく誘導できる、ということを示唆している。
適応株において、機能性受容体の割合は増加するが、産生される全受容体の量がより著しく高くなりはしない。
宿主適応はNTR1-Y06の発現において最も顕著であったため、この変異体を使用して当該作用をさらに研究した。リガンド結合FC分析およびRLBAは活性受容体の検出を可能にするものの、リガンド結合活性を問わずこれらの方法はいずれも、産生された全受容体の定量化を可能としない。したがって、様々な株で産生された全受容体タンパク質をイムノブロッティングによって検出するために、受容体のC末端にヘマグルチニン(HA)タグを有するNTR1およびNTR1-Y06の発現構築を作出した。
FACSを用いる5回の表現型選択によって、HAタグ付きNTR1-Y06を発現している株をより高い発現に向かって適応させた(図14A)。続いて、発現後に同数の酵母細胞を使用して、野生型NTR1およびNTR1-Y06を発現している様々な株(後者は未適応株および適応株)の全受容体産生を、全細胞溶解物からの定量的ウェスタンブロットにおいてHAタグ検出によって測定した(図4)。
未適応株では、全受容体の量が、野生型NTR1から、進化した変異体へと、2倍に増加する(図4)。機能的発現は、4倍に増加することがRLBAデータによって認められた(図14B)。これは、機能性受容体と産生された全受容体との比率が、野生型受容体から進化した受容体へとごくわずかに増加することを指し示す。
しかし、RLBAデータに基づいて適応株を未適応株と比較すると、NTR1-Y06の機能的発現には10倍の増加があるものの(図14B)、全受容体産生の増加は2倍未満である(図4)。産生された全受容体の量がほんのわずかだけ増加することから、適応株では機能性受容体の割合が著しく増加していると推定できる。
適応は、活性受容体の表面発現を増加させ、細胞内に保持されたGPCRを専ら発現している細胞の数を減少させ、非発現細胞の亜集団を減少させる。
未適応株および適応株においてNTR1変異体の細胞局在化および機能性を評価することによって宿主適応作用をさらに説明するために、C末端mCherry(mCh)融合を有するNTR1およびNTR1-Y06構築物を共焦点顕微鏡研究およびFC実験に使用した:全受容体はmChによって定量化されるが、原形質膜中で細胞表面に位置してい
る機能性受容体のみが蛍光リガンド結合からのシグナルを示すことになる。
HAタグ付き変異体と同じく、mCh融合を有するNTR1-Y06を発現している株をまず表現型選択によって適応させた。次に、NTR1およびNTR1-Y06を発現している未適応株ならびにNTR1-Y06を発現している適応株を蛍光リガンドに曝露して、共焦点蛍光顕微鏡検査によって共局在研究を実施した(図5)。
リガンド結合FC実験(図6A)で分かるように、原形質膜中の機能性野生型NTR1のレベルは非常に低く、結果として顕微鏡検査ではリガンド結合シグナルは検出されない(図5)。対照的に、mChの明確なシグナルは、いくつかの細胞において得られるが、専ら細胞内部に位置しており、それゆえ、細胞内に保持されたNTR1-mCh融合受容体を発現している細胞を反映している。野生型NTR1について得られた低いRLBA読取り値(図6B)によれば、細胞内受容体の大部分は不活性であるはずである。さらに、その他多くの細胞は、非発現亜集団を表して、mChシグナルを全く有さず検出される(図5)。注目すべきことに、これらの亜集団の両方である、細胞内に保持された受容体を専ら発現している細胞、および非発現細胞は、FCによるリガンド結合実験で区別できない。そのため、FCリガンド結合データにおいてこれらの2つの亜集団は共に、表面発現を少しも示していない細胞の画分を構成する。
未適応株において発現された、進化したNTR1-Y06は、表面における検出可能なリガンド結合と、mChシグナルとを示す(図5)。しかし、原形質膜におけるmChのシグナルは依然としていくぶん弱く、細胞内部で検出される強いmChシグナルがあり、野生型NTR1に類似して相当量の受容体が細胞内膜に保持されていることを指し示している。さらに、リガンド結合についてもmChについても何らシグナルを有さない非発現細胞も同様に頻繁に検出される。したがって、進化した受容体の場合でも、FCリガンド結合実験で検出された表面発現のない細胞の亜集団は、2種類の細胞:受容体発現を少しも有さない細胞と、発現された受容体が原形質膜に転移していない細胞とを含む。
適応株において発現されたNTR1-Y06については状況が異なり、リガンド結合およびmChの強いシグナルが原形質膜において検出される(図5)。未だいくらかのシグナルが細胞内部に見られるものの、mChは主として表面に局在している。しかも、著しく少ない非発現細胞が認められる。
リガンド結合シグナルをmChシグナルと比較するFC実験によるさらなる調査(図6A)によって、共焦点顕微鏡研究で得られた結果が裏付けられた:発現亜集団におけるmChのシグナルは全ての変異体において検出されるが、野生型NTR1についてはmCh蛍光強度がリガンド結合シグナル強度とよく相関していない。これは、大部分の野生型受容体が細胞表面に転移していないという事実を反映している。自家蛍光タンパク質(例えばGFPまたはmCh)と融合させた野生型GPCRの蛍光強度が、機能性受容体レベルと弱く相関するに過ぎないという知見は、以前に説明されてきた。興味深いことに、この相関は、未適応株におけるNTR1-Y06発現においてより良好であり、適応株において発現されるNTR1-Y06の場合には、産生される全受容体と機能性受容体とがよく相関している。この場合、受容体発現を専ら細胞内に有している細胞の減少を反映して、大部分の受容体が細胞表面へと輸送されている。興味深いことに、未適応株と比較して適応株では、mChシグナルを少しも示さない亜集団(非発現細胞)もまた減少し、適応株における機能性GPCRの産生レベルの全体的な増加にいっそうつながる。
要約すると、GPCR発現のためのS.cerevisiaeの宿主適応は、産生される受容体の総量を増加させることなく活性受容体の表面発現を増加させ、そのことは、産生される活性受容体のパーセンテージがより高いことと等価である。大部分の細胞が機能
的表面発現を少しも示さない未適応細胞とは対照的に、適応細胞は細胞内に保持された受容体をほんの少ししか示さない。かなりの部分の細胞内受容体が不活性であるため、宿主適応は活性受容体の全体的な増加につながる。さらに、適応株では未適応株に比べて、受容体をまったく発現していない細胞の亜集団も減少し、より高い平均機能的産生レベルにいっそう寄与する。
3つ全てのGPCRの進化した変異体は、Spodoptera frugiperda(Sf9)昆虫細胞において高い機能的発現レベルを示す。
究極的には本発明者の目的は、酵母だけでなく昆虫細胞においても機能的GPCR発現を増加させることであった。したがって、進化したGPCRであるNTR1-Y06、NK1R-Y09およびKOR1-Y05の機能的発現レベルをSf9昆虫細胞において測定し、対応する野生型受容体と比較した。全てのGPCRについて、同一の標準発現条件(非最適化)を用いた。実際、進化した変異体の機能的発現の著しい増加が認められた。野生型NTR1に比べてNTR1-Y06では機能的発現が5倍増加し(図7A)、NK1R-Y09では野生型に対して4倍の増加が測定され(図7B)、KOR1-Y05―注目すべきことにこの研究で研究した発現に関して最も挑戦的な例である―では27倍の機能的発現の増加が検出される(図7C)。測定される1細胞あたりの平均した機能性受容体レベル(1細胞あたり4.1x10~5.5x10受容体)は高く、Sf9昆虫細胞において発現させた場合での大腸菌に基づく指向性進化系において発生させた第1世代さらには第2世代のNTR1突然変異体の発現レベル(Schlinkmannら(2012)、J Mol Biol 422:414-428)を上回る。
本発明者らの試験した3種のGPCR突然変異体の全てについて得られる高い発現レベルをもってすれば、構造調査のための十分な材料を産生するのにリットル規模の発現培養物で十分である。これを試験するために、昆虫細胞発現培養物からのNK1R-Y09の精製を実施し、4~6mg/Lの純粋なタンパク質が再現性よく生じた。図15は、サイズ排除(SEC)およびSDS-PAGEによる精製NK1R-Y09の分析を示す。
非常に高い精製収率を考慮するとNK1R-Y09は構造調査のための興味深く有望な候補を表す。それゆえ、NK1R-Y09の機能性を[35S]-GTPγS結合に基づくシグナル伝達アッセイによって特性評価した(図7D)。NK1R-Y09は、刺激なし(基底活性)および作動薬刺激時での[35S]-GTPγS結合に関していずれも野生型NK1RおよびC末端切断変異体NK1R-ΔCに類似した活性を示し、本発明者らの手法の可能性をいっそう強調している。
概要
機能的な形での組換えGPCRの産生は、未だに要求が厳しく困難でコスト集約的な作業であり続けている。近年決定されたGPCR三次元構造のほとんどが、真核生物発現宿主において産生された受容体から得られ、大腸菌におけるGPCRの発現増加のためのタンパク質工学的方法の成功によって促進された、ということを考慮して本発明者らは、指向性進化手法をS.cerevisiaeに導入して真核生物における機能的GPCR産生を特異的に改善することを目指した。
急速な増殖、費用対効果の高い培養、および遺伝子操作の簡単さによって特徴付けられる酵母S.cerevisiaeは、いくつかの付加的理由から、タンパク質工学および指向性進化のための理想的な真核宿主である:第1に、多様な用途において酵母表面ディスプレイは非常に強力な技術となってきた。第2に、今日では酵母を使用して多様性の高いライブラリーが簡単に得られる。第3に、酵母細胞には機能性GPCRの産生に必要な細胞機構が備わっている、というのもS.cerevisiaeは、高等真核生物に類似したシグナル伝達経路を有する2つの異なるGPCRを内在的に発現するからである。第
4に、酵母は既に、様々ないくつかのGPCRの異種発現のために広範に使用されてきた。そして第5に、新規リガンドによって活性化される、デザイナードラッグによって独占的に活性化されるデザイナー受容体(DREADD)を生成させることを目指して、異種GPCRを酵母内因性シグナル伝達経路と結合させる広く用いられているGPCRアッセイに基づき、かつてGPCRに対して指向性進化手法が成功裏に用いられた(Armbrusterら(2007)、Proc Natl Acad Sci 米国 104:5163-5168)。
これまで、酵母におけるGPCRの機能的産生収率は概して低くあり続けてきた(Sarramegnaら(2003)、Cell Mol Life Sci 60:1529-1546)。S.cerevisiaeにおけるGPCR発現を増加させる方策には、発現条件の最適化、分子シャペロンの共発現、高発現宿主クローンのスクリーニング、遺伝子操作GPCR変異体のスクリーニング、または宿主遺伝子操作が含まれた。本明細書において、本発明者らは、3つの異なるGPCRを進化させることによって機能性GPCR発現レベルの増加したGPCR変異体を直接得るための、本発明の一般的適用可能性を開示する。意外なことに、著しく増加した発現レベルを得るためにはたった2回の進化―2回のランダム化とその各々に続くFACSによる選択という意味で―が必要であり、それゆえ、3つ全てのGPCRを短時間で効率的に進化させることが可能であった。大腸菌に基づく系では、大抵は4回の進化が必要であった。さらに本発明者らは、酵母宿主細胞をGPCR産生の増加に適応させることができる、ということを開示する。これは、選択系に本来備わっている特徴であり、改良された受容体変異体の選択と同時に起こる。指向性進化が配列変化を実際もたらしたこと、そしてその改良された発現表現型が昆虫細胞に導入できるものであったこと、さらに宿主適応が、選択中に酵母において起こる付加的要因に過ぎないことは、繰り返し述べるべき重要なことである。さらに本発明者らは、野生型GPCRを発現している細胞において宿主適応を誘導する試みが失敗したことから、進化した受容体の発現は宿主適応を誘導するための必須条件であるということを見出した。酵母の宿主適応は、FACSによる反復的な表現型選択によって再現性よく誘導することができる。これには通常4~5回の選別が必要であり、その作用は選択中に徐々に増加する。
適応株は、表面発現された活性受容体の著しい増加を示して、はるかに高い割合の機能性受容体が原形質膜中にもたらされるとともに、産生される全受容体がわずかに増加する。対照的に、未適応株では、特に野生型受容体の発現の場合に、大量の受容体が細胞内区画に留まり、そのうちのかなりの量が不活性なミスフォールドタンパク質を表す。適応細胞の発現培養物における全体としてより高い平均した機能的産生の収率は、細胞内に保持された不活性受容体を発現している細胞の亜集団の減少と、非発現亜集団の減少とによって説明することができる。
本発明者らは、産生宿主としてS.cerevisiaeに限定されることを望まなかったため、得られたGPCR変異体が他の真核生物宿主において同様に高い発現を可能にするか否かを調査した。実際、酵母において進化させたGPCR変異体の機能的発現は、昆虫細胞においても増加した。注目すべきことに、酵母において生成させた変異体に比べて、大腸菌に基づく系において進化させた変異体は、昆虫細胞のような真核生物宿主へ移された場合に機能的発現の改善をより少なく示す(Schlinkmannら(2012)、J Mol Biol 422:414-428)。新規な酵母進化変異体を使用して得られたSf9細胞における高い発現レベルは、標準条件下でのリットル規模での発現培養物を使用する結晶学的調査に十分である。より具体的には、NK1R変異体NK1R-Y09の精製は、極めて大量の純粋なタンパク質をもたらした。さらに、NK1R-Y09は、野生型NK1Rと同様のシグナル伝達活性を示して、開示の方法が、天然に意図された機能を実施できる生物学的に活性な変異体を生じさせることができることを示した
が、その結果としてこれらの変異体を使用して当該機能を好都合に研究することができる。
要約すれば、本明細書において開示されるS.cerevisiaeにおけるGPCRの指向性進化のための方法により、真核生物発現宿主における機能的発現の高いGPCR変異体を短時間で効率的に生成させることができる。進化宿主としてS.cerevisiaeを使用することにより、酵母細胞および昆虫細胞のいずれにおいても機能的発現レベルの高いGPCR変異体が生じ、後者の系では最大で27倍のレベルとなった。このように、突然変異は導入可能なものであり、選択された変異体は、大腸菌において進化を実施した場合よりも、酵母細胞および昆虫細胞においてより大きな発現増加を示した。
受容体突然変異体の有益な作用の昆虫細胞への導入可能性は、生成した突然変異体を大規模産生するための発現宿主としてSf9細胞をさらに推し進める。それでもなお、誘導される宿主適応と合わさって高い発現レベルが今やS.cerevisiaeにおいてGPCR進化の結果として得られる、という事実は、酵母の大規模産生宿主としての可能性を暗示する。実用的観点から、適応株において産生された全受容体に対する機能性受容体の比率が向上するという事実は、非機能性タンパク質と機能性タンパク質とを区別することができないIMACのような精製方策にとって大きな利点である。これは、例えばNTR1の精製のために確立された切断可能リガンドカラム(Egloffら(2014)、Protein Expr Purif、近刊)のようなリガンド親和性カラムが利用できない受容体の精製にとって、特別に興味深い。
S.cerevisiaeの多様性は、本発明者らの手法を受けることのできるGPCRの品目数を増やし、以前に確立された大腸菌における系では不十分であるGPCRの進化を可能にする。例えば、真核生物においてさえ非常に低い機能的発現レベルを示すKOR1のようなGPCRの場合、大腸菌における発現レベルは進化の成功に必要な閾値を下回る可能性がある。さらに、原核生物も天然酵母もコレステロール―いくつかのGPCRの活性はそれに依存している―を産生しないが、コレステロール産生S.cerevisiae株が遺伝子操作されてきた。原則的に、開示の方法はそのような、またはその他の任意の遺伝子操作酵母株に対して簡単に導入できるはずである。
酵母株、ベクター、培養および発現。
全ての実験において、EUROSCARFから入手したS.cerevisiae株BY4741(MATa his3Δ1 leu2Δ0 met15Δ0 ura3Δ0)を使用した。標準的な発現は、p415 GAL1由来のpMS03hetを使用して実施した。様々な酵母発現ベクターのさらなる詳細については以下を参照されたい。pMS03hetベクターを使用して形質転換したBY4741を、SDD-Leu培地(6.9g/Lの酵母用アミノ酸不含ニトロゲンベース(Formedium)、690mg/Lのロイシン不含完全補給混合物(Formedium)、20g/Lのグルコース、35mMのクエン酸三ナトリウム、35mMのクエン酸)の中で30℃で培養した。発現のために、SDD-Leu培地中で30℃で増殖させた対数増殖期の酵母細胞を遠心分離し、続いてSDG-Leu培地(SDD-Leuと同一であるがグルコースの代わりに20g/Lのガラクトースを含む)の中に再び懸濁させた。SDG-Leu中への再懸濁後、初期OD600を常に1.0に選択し、発現を20℃で24時間実施した。
酵母発現ベクター
pMS03hetを得るために、α接合因子プレプロ配列をpPICZαA(Life
Technologies)からp415 GAL1の多重クローニング部位(XhoI/SpeI)にクローニングした。pMS03hetには、高効率での形質転換、すなわちα接合因子プレプロ配列を初発とした遺伝子のインフレームクローニングのために、
効率的なベクター線状化を可能にするNheI/BamHI制限部位が含まれている。C末端HAタグまたはmCherryへの融合を有するGPCRの発現のために、ベクターpMS03het_HAまたはpMS03het_mChをそれぞれ使用した。pMS03het_HAおよびpMS03het_mChを得るために、HAタグまたはmCherryをコードする配列をBamHIによってpMS03hetにクローニングした。
酵母ライブラリー構築および形質転換。
ラットNTR1(アミノ酸1~42のN末端が切断されている)の野生型遺伝子は、Reinhard Grisshammer(アメリカ国立衛生研究所)から寄贈されたものである。ヒトNK1RおよびヒトKOR1の野生型cDNAは、Missouri S&T cDNA Resource Centerから入手した。全ての野生型GPCR遺伝子をpMS03het(NheI/BamHI)にクローニングした。DNAライブラリーの構築は、GeneMorph IIランダム突然変異誘発キット(Agilent Technologies)を製造元のプロトコルに従って使用してエラープローンPCRによる第1回目の進化を行った後に野生型遺伝子または単離DNAを増幅することによって実施した。DNAライブラリーによるBY4741の形質転換は、GenePulser Xcellエレクトロポレーター(Bio-Rad)での矩形波電気穿孔によって実施した。平均して5x10~1x10種の多様性を有するライブラリーが得られた。ライブラリー構築および高効率形質変換のさらなる詳細については、以下を参照されたい。
DNAライブラリー構築および高効率形質転換
第1回目の進化の後の野生型GPCRまたは単離バージョンのDNAライブラリーを、一方が20サイクルのエラープローンPCR(epPCR)でありもう一方が25サイクルのepPCRである2回のepPCRを実施することによって生成させ、得られた産物をその後にプールした。epPCRのために使用したプライマーは、(NheI/BamHIによって消化された)線状化pMS03hetに相同的な部位を、遺伝子の各末端に導入した。
順方向プライマー:
5’-CTAAAGAAGAAGGGGTATCTCTCGAGAAACGTGAGGCGGAAGCGGCTAGC-3’;
逆方向プライマー:
5’-ATTACATGACTCGACTCGATGCCGACGAGAGCGGCCGCCTATTAGGATCC-3’。
形質転換のための十分なDNA材料を得るために、得られたepPCR産物を、同一のプライマーを使用する標準的なPCRによってさらに増幅させた。
矩形波電気穿孔による高効率形質転換は、先に公開された方法(Van DeventerおよびWittrup(2014)、Methods Mol Biol 1131:151-181)を少し改造して似たように実施した。酵母細胞を60mLのYPD中で30℃でOD600=1.8~2.0まで増殖させた。この細胞密度に達してすぐに50mLの培養物を遠心分離し、培地を吸引し、細胞を25mLの調整溶液(100mMの酢酸リチウム、10mMのDTT)中で30℃で15分間処理した。続いて、細胞をペレット化し、冷やした25mLのddHO中で洗浄し、再度ペレット化し、冷やしたddHO中に再び懸濁させて総量500μLにした。それ以降は細胞を常に4℃に保った。1回の形質転換のために、250μLの酵母細胞を4μgの線状化pMS03hetおよび12μgのPCR産物と混合し、その形質転換混合物を2mmの電気穿孔キュベットに移した。矩形波電気穿孔は、電圧500Vおよびパルス長15msで1パルスで実施した
。電気穿孔の後、細胞を30℃で1時間、振盪なしで5mLのYPD中で回復させた。最後に、回収した細胞をペレット化し、30℃で20~24時間の選択的増殖のために500mLのSDD-Leuに移し、-80℃でグリセロールストックに保存した。高多様性ライブラリーを得るために、1ライブラリーあたり常に2つの形質転換を実施した。
酵母細胞の透過化および蛍光リガンドの結合。
発現後、培養物を遠心分離し、培地を吸引し、室温で細胞をTELi緩衝液(pH9.0(4℃で)の50mMのTris-HCl、1mMのEDTA、100mMの酢酸リチウム)の中に再び懸濁させた。次に細胞を、50mMのDTTで補給されたTELi緩衝液中で20℃で30分間培養し、続いて、冷やしたTELi緩衝液中で2回洗浄した。それ以降は細胞を常に4℃に保った。蛍光リガンド結合のために、透過化細胞をHiLyte Fluor 488(AnaSpec)で標識したリガンド(NTR1変異体:25nMの蛍光ニューロテンシン(8-13);NK1R変異体:20nMの蛍光P物質;KOR1変異体:10nMの蛍光ダイノルフィンA(1-11))と共にTELi緩衝液中で4℃で2時間、光に曝露することなく培養した。培養後、測定前に細胞をTELi緩衝液中で1回洗浄した。非特異的結合は、1000倍過剰の非標識リガンド(NTR1変異体:25μMのニューロテンシン(8-13)(AnaSpec);NK1R変異体:20μMのP物質(AnaSpec);KOR1変異体:10μMのダイノルフィンA(1-11)(GenScript))の存在下で測定した。蛍光リガンドのさらなる詳細については、以下を参照されたい。
蛍光リガンド
全ての蛍光リガンドをHiLyte Fluor 488(Anaspec)で標識した。ニューロテンシン(8-13)(KKPYIL)をN末端アミノ基に共有結合的に標識した。P物質(RPKPQQFFGLM)をリジン-3のアミノ基に共有結合的に標識した。ダイノルフィンA(1-11)(YGGFLRRIRPK)をリジン-11のアミノ基に共有結合的に標識した。
フローサイトメトリーおよびFACS。
測定のために、リガンド結合によって蛍光標識した細胞をTELi緩衝液中で保持した。フローサイトメトリーは、BD FACSCanto IIサイトメーター(BD Biosciences)またはBD LSRFortessa細胞分析装置(BD Biosciences)で実施し、FACSは、BD FACSAria III選別装置(BD Biosciences)で実施した。分析測定のために、常に50,000イベントを記録した。FACSでは、最も蛍光性である0.5~1.0%の細胞3x10~5x10個が、その後の30℃で24時間の培養のためにSDD-Leu-培地中へ選別された。全ての試料について、比較分析を可能にするために同一の取得設定を用いた。データはFlowJo vX.0.7を用いて解析した。
放射性リガンド結合アッセイ。
全酵母細胞に対するRLBAを以下のとおりに実施した:まず、(OD600=1.0が10細胞/mLに相当すると仮定して)1x10個の細胞を、発現後に採集し、最初にddHO中、その後にSPH1緩衝液(1Mのソルビトール、25mMのEDTA、50mMのDTT、pH8.0)中、最後に1Mのソルビトール中で、連続的に洗浄することによって処理した。次に、細胞をSPH2緩衝液(1Mのソルビトール、1mMのEDTA、10mMのクエン酸三ナトリウム、pH5.8)中に再び懸濁させ、6U/mLのZymolyase 20T(AMS Biotechnology)の添加によって細胞壁消化を実施し、その後に30℃で30分間培養した。それ以降は細胞を4℃に保った。続いて細胞を、[H]標識リガンド(NTR1変異体:20nMの[3,11-チロシル-3,5-H(N)]-ニューロテンシン(Perkin Elmer);N
K1R変異体:15nMの[ロイシル-3,4,5-H(N)]-P物質(Perkin Elmer);KOR1変異体:15nMの[15,16-H]-ジプレノルフィン(Perkin Elmer))を含有するpH7.4(4℃で)の50mMのTris-HCl中で2時間、4℃で培養した。非特異的結合は、1000倍過剰の非標識リガンド(NTR1変異体:20μMのニューロテンシン(8-13)(AnaSpec);NK1R変異体:15μMのP物質(AnaSpec);KOR1変異体:15μMのジプレノルフィン(Tocris Bioscience))の存在下で測定した。培養後に細胞を、真空マニホールドの備わったMultiScreenフィルタープレート(Merck Millipore)で濾過し、冷やしたpH7.4(4℃で)の50mMのTris-HClでフィルターを4回洗浄し、Isoplate-96シンチレーションプレート(Perkin Elmer)へ移し、65℃で2時間乾燥させ、Optiphase Supermixシンチレーションカクテル(Perkin Elmer)を添加した。RLBA測定は、1450 MicroBeta Plus液体シンチレーションカウンター(Wallac)で実施した。
全Sf9細胞に対するRLBAは、先に記載したとおりに行った(Schlinkmannら(2012)、J Mol Biol 422:414-428;Egloffら(2014)、Proc Natl Acad Sci 米国 111:E655-62)。全細胞を、15nMの[H]標識リガンドを含有する結合用緩衝液(pH7.4(4℃で)の50mMのTris-HCl、1mMのEDTA、0.1%(w/v)のBSAおよび40μg/mLのバシトラシン)中で培養した。非特異的結合は、15μMの非標識リガンドの存在下で測定した。酵母細胞についてのRLBAの場合と同じリガンドを使用した。
定量的ウェスタンブロット。
発現後、各試料について(OD600=1.0が10細胞/mLに相当すると仮定して)4x10個の細胞を遠心分離し、全細胞タンパク質を、先に公開されたプロトコル(Zhangら(2011)、Yeast 28:795-798)に従って抽出した。タンパク質検出は、ウサギ抗HA一次抗体(Sigma-Aldrich、H6908)およびマウス抗アクチン一次抗体(Abcam、ab8224)、ならびにAlexa Fluor680と結合したヤギ抗ウサギ二次抗体(Life Technologies、A-21076)およびIRDye800と結合したロバ抗マウス二次抗体(Rockland Immunochemicals、610-732-124)を使用して実施した。画像取得はOdysseyシステム(LI-COR Biosciences)で実施し、定量はImage Studio Liteバージョン3.1.4(LI-COR Biosciences)を使用して実施した。さらなる詳細については以下を参照されたい。
酵母の全細胞タンパク質抽出、SDS-PAGEおよびウェスタンブロット
全細胞タンパク質抽出のために、発現後の試料を遠心分離し、培地を吸引し、ペレット化させた細胞を氷上での5分間の培養のために2Mの酢酸リチウム500μL中に再び懸濁させた。次に、細胞をペレット化し、上清を除去し、0.4MのNaOH100μLを添加し、試料を氷上で5分間培養した。培養後、試料を遠心分離し、上清を除去し、細胞ペレットを200μLの還元用NuPAGE LDS試料用緩衝液(Life Technologies)中に再び懸濁させた。試料を20℃で15分間培養し、遠心分離し、5μLの各試料をNuPAGE MES SDSランニング用緩衝液(Life Technologies)中でNuPAGE Novex 4-12%Bis-Trisタンパク質ゲル(Life Technologies)に流した。ウェットブロッティングをImmobilon-FLメンブレン(Merck Millipore)上に行った。メンブレンのブロッキングは、PBS中の1xのカゼインブロッキング用緩衝液(Si
gma-Aldrich)中で20分間、室温で実施した。抗体結合は、PBST(PBS、0.05%(v/v)Tween-20)中の1xのカゼインブロッキング用緩衝液中で1時間、室温で実施し、PBSTを全てのメンブレン洗浄ステップのために使用した。ウサギ抗HA一次抗体は1:5,000に希釈して使用し、マウス抗アクチン一次抗体は1:1,000に希釈して使用し、二次抗体(Alexa Fluor 680と結合したヤギ抗ウサギ、およびIRDye800と結合したロバ抗マウス)はどちらも1:10,000に希釈して使用した。
共焦点蛍光顕微鏡検査。
酵母細胞を透過化し、蛍光ニューロテンシンの結合を上記のとおりに実施した。洗浄後、細胞をNunc Lab-Tek IIカバーグラスチャンバー(Thermo Scientific)に移し、共焦点顕微鏡検査をLeica TCS SP5顕微鏡(Leica Microsystems)で実施した。全ての試料について、倍率を630倍とし、比較分析を可能にするために同一の取得設定を用いた。
Spodoptera frugiperda(Sf9)ベクターおよび発現。
野生型および進化した受容体構築物を、酵母発現ベクターpMS03hetからのPCRによって増幅させ、SLICによって、改変されたMultiBac pFLベクターにクローニングした。pFL_mFLAG_His10_TEV_SLICと名付けられたベクターは、N末端メリチンシグナル配列に続いてFLAGタグ、デカヒスチジンタグ、TEVプロテアーゼ切断部位およびSLICクローニング部位を有する発現カセットを含んでいる。大腸菌DH10 EMBacY細胞を、様々な受容体遺伝子を含むpFLベクターで形質転換し、結果として得られたバキュロウイルスゲノムを単離した。組換えバキュロウイルスおよびバキュロウイルス感染昆虫細胞ストック(BIIC)の生成の詳細については以下を参照されたい。発現は、Sf-900 II SFM培地(Life Technologies)中で、100倍希釈のBIICストックを使用して密度3x10細胞/mLでSf9細胞を感染させ、27℃で4日間の培養することにより、実施した。発現後、遠心分離によって細胞を採集し、冷やしたPBSで洗浄し、使用するときまで-80℃で保存した。
組換えバキュロウイルスおよびバキュロウイルス感染昆虫細胞ストック(BIIC)の生成。
組換えバキュロウイルスは、8μLのCellfectin II試薬(Life Technologies)を使用して2mLのSf-900II SFM培地(Life
Technologies)中で8×10個のSf9細胞を遺伝子導入することによって生成させた。加湿インキュベーターで27℃で4時間培養した後、遺伝子導入培地を除去し、2mLの新鮮なSf-900II SFMと交換した。V0ウイルスストックを、27℃で5日間の後に採集し、V1高力価ウイルスストック(1mLあたり10~10個のウイルス粒子)を生成させるために使用した。その後、V1ウイルスストックを使用してBIICを生成させた。簡潔に述べると、密度10細胞/mLのSf9細胞を感染多重度(MOI)5で感染させ、懸濁液中で24時間培養し、採集し、ペニシリン-ストレプトマイシン(Life Technologies)と10%(v/v)のDMSOとを含有するSf-900II SFM中で一定分量ごとに-80℃で凍結させた。
35S]-GTPγS結合アッセイ。
35S]-GTPγS結合アッセイに使用する膜は、先に記載(Egloffら(2014)、Proc Natl Acad Sci 米国 111:E655-62)したとおりに単離した。簡潔に述べると、細胞を浸透圧衝撃の後にせん断力によって破壊した。非特異的な[35S]-GTPγS結合を軽減するために、膜を尿素含有緩衝液中で洗浄した。単離した膜を一定分量ごとに凍結させて-80℃で保存した。尿素洗浄済の膜
上の受容体レベルを、上記の放射性リガンド結合アッセイによって測定した。
35S]-GTPγS結合アッセイを、先に記載(Egloffら(2014)、Proc Natl Acad Sci 米国 111:E655-62)したとおりに実施した。簡潔に述べると、アッセイ用緩衝液(pH7.4(4℃で)の50mMのTris-HCl、1mMのEDTA、100mMのNaCl、1mMのDTT、3mMのMgSO、0.3%(w/v)のBSA、2μMのGDP、4nMの[35S]-GTPγS(Perkin Elmer))中、1nMの、尿素洗浄済の膜中のGPCRと、100nMのGタンパク質(Gαiβγ、(Rasmussenら(2011)、Nature 477:549-555)に従って精製)を、25℃で20分間、200μMのP物質(AnaSpec)の存在下または非存在下で保温した。緩衝液、GPCRおよびGタンパク質のみから生じるバックグラウンド計数を考慮し、差し引いた。したがって、与えられた計数は、作動薬の存在下および非存在下でのGタンパク質に対するGPCR誘導[35S]-GTPγS結合を表す。
NK1R変異体NK1R-Y09の精製
全てのステップは4℃で行った。凍結したSf9細胞を解凍し、低張緩衝液(pH7.4の10mMのHEPES、20mMのKCl、10mMのMgCl、cOmplete ULTRA EDTA不含錠(Roche)、1μMのP物質)中で1時間膨潤させた。その後、細胞膜を、ホモジナイゼーション(Dounceホモジナイザー)によって破壊し、130,000rcfで遠心分離によって採集した。単離した膜を、ホモジナイゼーション(Dounceホモジナイザー)と低張緩衝液中での遠心分離との反復によって広範に2回洗浄し、その後にこの手順を、高張緩衝液(pH7.4の10mMのHEPES、1MのNaCl、20mMのKCl、10mMのMgCl、cOmplete ULTRA EDTA不含錠、1μMのP物質)を使用して3回繰り返した。精製した膜を溶解用緩衝液(pH7.4の30mMのHEPES、150mMのNaCl、10mMのMgCl、cOmplete ULTRA EDTA不含錠、1μMのP物質、2mg/mLのヨードアセトアミド(Sigma))中に再び懸濁させ、45分間撹拌した。その後、1.5%(w/v)のn-ドデシル-β-D-マルトピラノシド(DDM、Anatrace)および0.3%(w/v)のヘミこはく酸コレステリル(CHS、Sigma)に膜を溶かした。3時間の撹拌後、溶けなかった材料を遠心分離(130,000rcf、40分間、4℃)によって除去した。上清を、終濃度で800mMのNaClおよび25mMのイミダゾールを含有するように調節し、その後、1.5mLのTALON
Superflow樹脂(Clontech)と共に一晩保温した。タンパク質結合樹脂を重力流カラム内に移し、その後、各々10カラムボリューム(CV)の、洗浄1緩衝液(pH7.4の25mMのHEPES、800mMのNaCl、10mMのMgCl、25mMのイミダゾール、10%(v/v)のグリセロール、0.5μMのP物質、0.3%/0.06%のDDM/CHS)と、洗浄2緩衝液(pH7.4の25mMのHEPES、400mMのNaCl、10mMのMgCl、40mMのイミダゾール、10%(v/v)のグリセロール、0.5μMのP物質、0.2%/0.04%のDDM/CHS、10mMのATP)と、洗浄3緩衝液(pH7.4の25mMのHEPES、200mMのNaCl、40mMのイミダゾール、10%(v/v)のグリセロール、0.5μMのP物質、0.2%/0.04%のDDM/CHS)とで洗浄した。NK1R-Y09を4CVの溶出用緩衝液(pH7.4の25mMのHEPES、200mMのNaCl、300mMのイミダゾール、10%(v/v)のグリセロール、0.5μMのP物質、0.2%/0.04%のDDM/CHS)中で溶出させた。精製した受容体を、分子量カットオフ100kDaのVivaspin遠心濃縮器(Sartorius Stedim Biotech)で0.5mLまで濃縮した。SEC緩衝液(pH7.4の20mMのHEPES、150mMのNaCl、0.05%/0.01%のDDM/CHS、0.1μMのP物質)で平衡化したSuperdex S200 Increase 10/
300 GLカラム(GE Healthcare)を備えたAekta Pure FPLCシステム(GE Healthcare)でサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)を実施した。
実施例2:酵母におけるGPCRの指向性進化
大腸菌における発現レベルの向上に向けたGPCRの指向性進化は、以前に確立されている(Sarkarら(2008)、Proc Natl Acad Sci 米国 105:14808-14813;DodevskiおよびPlueckthun(2011)、J Mol Biol 408:599-615)。本発明は、酵母Saccharomyces cerevisiaeにおける指向性進化のための類似の方法を開示する。S.cerevisiaeにおいていくつかのGPCRをこの方法で進化させており、酵母および昆虫細胞における高い機能的発現につながり、大腸菌に基づく系において進化させた変異体から得られ発現レベルを凌駕した。通常は、高度に発現された変異体を得るのにたった2回の進化を必要とした。
興味深いことに、使用した酵母菌株を、GPCR産生の増加に向けて適応させることもできる。これは、蛍光活性化細胞選別(FACS)による反復的な選別による進化の間に自動的に誘導され、選択の過程で徐々に生じる。したがって、選択されたライブラリーについて得られる発現レベルは、宿主適応と合わさったGPCR進化の結果である。個々のGPCR変異体を新規形質転換酵母細胞において発現させる場合、平均発現レベルは選択されたライブラリーの場合よりも低くなる、というのも、これらの細胞は適応していないからである。しかしながら、反復的なFACS選択を単に行うことにより、いかなる進化した変異体に対しても適応を誘導することができる。
GPCR発現構築物
異なるいくつかのGPCR発現構築物が入手可能である。全てのベクターはp415 GAL1に由来するものである。ベクターは、S.cerevisiaeにおいて、ロイシンに対して栄養要求性である株の選択的増殖のための機能性LEU2遺伝子を提供しながら低コピープラスミドとして維持され、また、形質転換後に酵母から簡単に再単離されることができる。それらは、シャトルベクターであるために、大腸菌において高コピーベクターとして増えることができ、それに対応して全てのクローニングステップが行われる。
各ベクターは、GPCR遺伝子の挿入のためにクローニング部位に先行するα接合因子プレプロ配列をコードする。クローニングは、NheIおよびBamHI制限部位を介して行われて、対象遺伝子のインフレーム挿入を可能にする。発現は、誘導性GAL1プロモーターの制御下にある。様々なベクターはクローニング部位の後の配列が異なっている。進化のために使用する標準ベクターpMS03hetは、クローニング部位の後にタグまたはタンパク質を少しもコードしておらず、そのためpMS03hetではいかなる融合も有さないGPCRが産生される。他のベクターは、C末端切断可能なデカヒスチジンタグ(pMS03het_3CHis10)、HAタグ(pMS03het HA)、mCherryへの融合(pMS03het_mCh)、またはAviTag(商標)(pMS03het_Avi)を含んだ構築物をコードする。
リガンド結合のための酵母細胞の透過化
この節では、リガンド結合実験のための酵母細胞の透過化について説明する。TELi緩衝液およびDTTによる調節によって細胞壁が透過化され、細胞膜中のGPCRへのリガンドの拡散が可能になる。この透過化方法の利点は、細胞が生きたまま保たれ、かつスフェロプラストほど脆弱ではない点である。したがって、この手順は、分析のためのフローサイトメトリーおよびFACS、ならびにリガンド結合を検出するその他のいかなる用
途(例えば、共焦点蛍光顕微鏡検査、RLBA)にも使用することができる。
プロトコル:
・発現後に細胞を遠心分離(5,000rcf、10分間、室温)によって採集し、上清を吸引する。
・細胞を室温で1mLのTELi緩衝液中に再び懸濁させ、遠心分離し(4,000rcf、3分間、室温)、上清を吸引する。
・細胞を室温で900μLのTELi緩衝液中に再び懸濁させ、新しく調製されフィルター滅菌された(100mMの酢酸リチウム溶液中に溶かした)0.5MのDTTを100μL添加する。これにより、50mMのDTTの終濃度が得られる。
・細胞をサーモミキサー内で700rpmで振盪しながら20℃で30分間培養する。
・細胞を遠心分離し(4,000rcf、3分間、4℃)、上清を吸引する。
・これより細胞は常に氷上に保たれなければならない。
・冷やした1mLのTELi緩衝液中に細胞を再び懸濁させ、遠心分離(4,000rcf、3分間、4℃)し、上清を吸引する。
・冷やしたTELi緩衝液中に細胞を再び懸濁させる(体積は実験上の必要性に応じて選択する)。
フローサイトメトリーによるGPCR発現の測定
細胞表面における機能的GPCR発現の検出は、原則的に、フローサイトメトリーで測定する蛍光リガンド結合によって実施することができる。蛍光リガンドと共に培養すると、原形質膜中に位置する機能的に発現されたGPCRのみがリガンドに結合することになる。未結合リガンドを洗浄によって除去した後、蛍光強度を測定することによってリガンド結合を検出する。ところが酵母細胞壁は、保護障壁として働いて、ペプチドリガンドのようなより大きな分子を通過させない。そのため、蛍光リガンドと共に培養する前に酵母細胞を透過化させる必要がある。機能的発現レベルの分析的定量化に次いで、蛍光リガンド結合をFACSによる選択のためにも用いる。高発現表現型を有する変異体を発現している細胞は、対応してより高い蛍光強度を呈することになる。最も蛍光性である細胞を選別することにより、高度に発現しているGPCR変異体を単離することができる。
蛍光リガンドと共に培養することによって全シグナルの測定が可能になるが、非特異的シグナルを決定することも同様に重要である。これは、競合結合実験において蛍光リガンドを過剰の非標識リガンドと共に保温することによって行うことができる。そのような測定において得られた非特異的シグナルはバックグラウンドを表す。通常、酵母におけるGPCR発現は、細胞の2つの亜集団をもたらす。一部の細胞は活性GPCRの表面発現を示すが、他方で、活性な表面発現が認められない亜集団も認められる。典型的には、この非発現細胞の割合は適応株において減少する。
FACSによる選択のワークフロー
選択のワークフローの概要を図1に示す。GPCRの指向性進化のために、選択はライブラリーの生成から始める。GPCR遺伝子に対するエラープローンPCR(epPCR)を用いるランダム突然変異誘発によって、新規なDNAライブラリーが作出される。DNAライブラリーは、高効率形質転換に適したインサートを生成する特別なプライマーを使用するPCR(ampPCR)によって増幅されなければならない。ひとたび酵母ライブラリーが所望の効率で形質転換によって作出されれば、FACSによる選択を実施することができる。典型的にはFACSを5回実施する。ひとたびFACSによる選択が完了すれば、選択されたクローンのDNAが単離される。このステップでは、選択されたクローンを分析することができる。所望により、選択されたクローンからepPCRおよびその後のFACSによる選択によって新しいライブラリーを作出することによって、別の指
向性進化を実施することができる。事前のGPCRの指向性進化では、高度に増加した発現レベルを得るために2回の進化―2回のランダム化とその各々に続くFACSによる5回の選択という意味で―が必要であった。
進化したGPCR変異体を発現している株の適応のためのワークフローはほぼ同一である。唯一の違いは、ライブラリーを作製する必要がないことである。株の適応は、FACSによる5回の選択に供せられる選択されたGPCR変異体を発現している単一のクローンから始める。選択後、適応株のグリセロールストックを調製することができる。

Claims (7)

  1. 発現された核酸配列のライブラリーから配列を選択する方法であり、前記配列はその発現レベルに応じて選択される、方法であって、
    a)細胞壁を含む複数の真核細胞を提供するステップであって、前記真核細胞の各々は前記ライブラリーの核酸配列メンバーを含んでおり、前記核酸配列メンバーは、前記複数の真核細胞において原形質膜中におけるGタンパク質共役受容体(GPCR)として発現されている、ステップと、
    b)透過化ステップにおいて、前記複数の真核細胞の前記細胞壁を透過化して、複数の透過化生細胞を生成するステップであって、前記透過化ステップは前記複数の真核細胞を化学処理に暴露することを含む、ステップと、
    c)標識ステップにおいて、前記複数の透過化生細胞を、前記GPCRに結合できるリガンドと接触させ、複数の標識細胞を生成するステップであって、前記リガンドは検出可能標識を含む、ステップと、
    d)洗浄ステップにおいて、前記複数の標識細胞を洗浄するステップと、
    e)選択ステップにおいて、前記複数の標識細胞に存在する検出可能標識に応じて前記複数の標識細胞のサブセットを選択して、細胞の選択物を生成するステップと、
    f)単離ステップにおいて、発現された核酸配列を細胞の前記選択物から単離するステップと、
    を含み、
    前記発現された核酸配列は、1細胞あたり少なくとも100000の全機能性GPCRに対応する前記GPCRの高い発現レベルによって特徴付けられ、
    前記化学処理は、リチウムイオン、還元剤および/またはキレート剤を含むアルカリ性pHの緩衝液に前記複数の真核細胞を曝露することを含み
    前記検出可能標識は蛍光色素であり、前記選択ステップは蛍光細胞の選別によって達成される、方法。
  2. i.前記選択ステップe)の後に、生細胞の前記選択物を増殖させて、生細胞の増殖選択物を生成し、生細胞の前記増殖選択物を前記ステップb)~e)に供するステップを更に含み
    前記ステップi.は、少なくとも1、2、3、4、5、6または7回実施し、続いて最後に前記単離ステップf)を実施する、請求項1に記載の方法。
  3. i.前記単離ステップf)で得た前記発現された核酸を、細胞壁を含む複数の真核細胞に導入して発現させ、
    ii.細胞壁を含む前記複数の真核細胞を、請求項1に記載の前記ステップb)~f)に供し、
    iii.ステップi.およびii.を少なくとも1、2、3、4、5、6または7回実施する、請求項1に記載の方法。
  4. 前記単離ステップf)で得た前記発現された核酸を、増幅配列に突然変異を導入するプロセスによって増幅させて、核酸配列の第2ライブラリーを生成し、
    i.核酸配列の前記第2ライブラリーを、細胞壁を含む前記複数の真核細胞へ導入し、
    ii.細胞壁を含む前記複数の真核細胞を、請求項1~3に記載の方法に供する、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
  5. 前記発現された核酸配列のライブラリーは、増幅配列に突然変異を導入するプロセスによって前記GPCRをコードする核酸配列を増幅することにより得られる、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
  6. 前記複数の真核細胞は複数の酵母細胞である、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
  7. 機能性Gタンパク質共役受容体(GPCR)を高レベルで発現する能力を有する適応酵母細胞を選択する方法であって、
    a.複数の酵母細胞を提供するステップであって、前記酵母細胞の各々は、発現された核酸配列のライブラリーの核酸配列メンバーを含んでおり、前記核酸配列メンバーは、前記複数の酵母細胞において原形質膜中におけるGPCRとして発現されている、ステップと、
    b.透過化ステップにおいて、前記複数の酵母細胞の細胞壁を透過化して、複数の透過化生細胞を生成するステップであって、前記透過化ステップは前記複数の酵母細胞を化学処理に暴露することを含む、ステップと、
    c.標識ステップにおいて、前記複数の透過化生細胞を、前記GPCRに結合できるリガンドと接触させ、複数の標識細胞を生成するステップであって、前記リガンドは検出可能標識を含む、ステップと、
    d.洗浄ステップにおいて、前記複数の標識細胞を洗浄するステップと、
    e.選択ステップにおいて、前記複数の標識細胞に存在する検出可能標識に応じて前記複数の標識細胞のサブセットを選択して、細胞の選択物を生成するステップと、
    f.胞の前記選択物を増殖させて、細胞の増殖選択物を生成するステップと、
    g.生細胞の前記増殖選択物をステップb.~f.に少なくとも1、2、3、4、5、6または7回供し、
    h.細胞の前記増殖選択物をステップb.~e.に供し、
    i.前記複数の標識細胞に存在する検出可能標識に応じて細胞の前記増殖選択物のサブセットを選択して、機能性GPCR、1細胞あたり少なくとも100000の全機能性GPCRに対応する高レベルで発現する能力を有する前記適応酵母細胞を細胞の前記増殖選択物から生成する、ステップを含み、
    前記化学処理は、リチウムイオン、還元剤および/またはキレート剤を含むアルカリ性pHの緩衝液に前記複数の酵母細胞を曝露することを含み、
    前記検出可能標識は蛍光色素であり、前記選択ステップは蛍光細胞の選別によって達成される、方法。
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