JP2007535935A - オリゴヌクレオチド指向性の核酸配列の変更効率を増大させるための方法およびキット - Google Patents

オリゴヌクレオチド指向性の核酸配列の変更効率を増大させるための方法およびキット Download PDF

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Abstract

細胞のある集団において標的DNA分子中の特定の遺伝子座における、効率の増大した、オリゴヌクレオチド指向性(ODSA)の遺伝子変更を果たすための方法、キットおよび細胞株が示される。1つの実施形態では、本発明は、標的細胞の集団内の細胞の細胞周期を調節することによってODSAの効率を増大させるための方法を提供する。別の実施形態では、本発明は、標的細胞の集団内でDNA修復経路を誘導することによってODSAの効率を増大するための方法を提供する。

Description

(関連出願の相互参照)
本出願は、2004年5月4日に出願された米国特許仮出願第60/568,339号;2004年5月27日に出願された米国特許仮出願第60/575,569号;2004年12月8日に出願された米国特許仮出願第60/634,584号の利益を要求する。これらの内容は、参考として本明細書中に援用される。
(連邦政府より支援された関連研究)
本出願に記載される研究は、契約番号R01CA89325の下で、National Institute of Health(NIH)により支援された。
(発明の分野)
本発明は、核酸配列のオリゴヌクレオチド指向性の核酸配列の変更に関する。
(発明の背景)
単離されたDNA分子ならびに細菌、植物、真菌およびヒトを含む動物のインタクトな細胞に存在するDNAの両方における特定のヌクレオチドを変更するための多数の方法が開発されている。
1つのアプローチでは、ゲノム配列を、二重フラグメントを用いる相同組み換えによる変更のために標的する。この二重のフラグメントは大型で、数百の塩基対を有する。例えば、非特許文献1を参照のこと。
別のアプローチでは、オリゴヌクレオチドを用いて標的された遺伝的変更を達成する。初期の実験では、オリゴヌクレオチド指向性の配列変更は代表的には、高い組み換え性活性を有することが公知である真核生物のなかでも酵母において達成された(非特許文献2および非特許文献3が、一連の実験はヒト細胞で試みられた(非特許文献4)。
さらに近年では、高等な真核生物の細胞において遺伝物質の標的された変更を可能にする多数の異なるタイプのポリヌクレオチドおよびオリゴヌクレオチドが記載されており、これには(i)三重鎖形成オリゴヌクレオチド;(ii)特に配列変更を指向するヌクレオチドを含む領域において内部で二重鎖であるキメラRNA−DNAオリゴヌクレオチド;および(iii)内部が二重鎖でないDNAドメインおよび修飾された末端を有する末端修飾された一本鎖オリゴヌクレオチドが挙げられる。配列変更三重鎖オリゴヌクレオチドは、例えば、特許文献1、特許文献2、および特許文献3に記載される。
三重鎖形成オリゴヌクレオチドは、DNA二重鎖およびオリゴヌクレオチドの主な溝の間のフーグスティーン(Hoogsteen)相互作用を通じてDNAらせん二重鎖に結合する構造ドメインを要する。この結合ドメインは代表的には、ポリプリン区域またはポリピリミジン区域を標的としなければならない。これらの配列要件は、標的された配列変更のための三重鎖形成オリゴヌクレオチドの有用性を制限し、このようなポリプリン区域またはポリピリミジン区域に接近して位置されるように標的配列が改変される必要がある。三重鎖形成オリゴヌクレオチドはまた、オリゴヌクレオチド/標的塩基組成物からのフーグスティーン相互作用が不十分である場合、オリゴヌクレオチドの三重鎖形成ドメインとDNA二重らせんとの間の相互作用を安定化させるために、ソラレンのようなさらなるDNA反応性部分がオリゴヌクレオチドに共有結合されることを必要とし得る。例えば、特許文献4を参照のこと。しかし、このようなDNA反応性部分は、無差別に変異原性であり得る。
配列変更三重鎖オリゴヌクレオチドを用いたさらに近年の研究では、三重鎖形成ドメインは、標的された変更を達成するドメインに連結または結合され(非特許文献5)標的配列とポリプリン/ポリピリミジンストレッチとの間で可能な距離をいくから弛緩させる。
内部で二重鎖にされたヘアピンおよび二重ヘアピン含有キメラRNA−DNAオリゴヌクレオチドは、とりわけ、特許文献5;特許文献6;特許文献7;特許文献8;特許文献9;特許文献10;特許文献11;特許文献12および特許文献13に記載されている。このようなキメラRNA−DNAオリゴヌクレオチドは報告によれば、一塩基対の標的された変更を指向し得、そして細菌、真菌、植物および動物を含む種々の宿主生物体由来の細胞および無細胞抽出物において、フレームシフト変更を誘導し得る。このオリゴヌクレオチドは報告によれば、ほとんどの任意の標的配列上で作動し得る。
しかし、このようなキメラ分子は、リボヌクレオチドおよびデオキシリボヌクレオチドの両方についての要件、そして代表的には、オリゴヌクレオチドが二重ヘアピン構成を採用する要件をも含む、有意な構造的要件を有する。しかし、このような二重ヘアピンが必要でない場合でさえ、重大な構造的制約は残る。
配列変更を指向する修飾された末端および内部が非二重鎖のDNAドメインを有する一本鎖オリゴヌクレオチドは、特許文献14;特許文献15;特許文献16;特許文献17;および特許文献18、ならびに特許文献19および特許文献20(これらの開示はその全体が参考として本明細書に援用される)のような公開された同時係属の国際特許出願に記載される。「遺伝子変更(gene alteration)」とは、反応を指向する改変された一本鎖オリゴヌクレオチドを用いて染色体の状況内で、一塩基変異が変更されるプロセスである。オリゴヌクレオチドが作用する機構は、十分理解されていないが、この経路はDNA対合工程およびDNA修復段階を含む可能性が高い。非特許文献6を参照のこと。
これらの一本鎖オリゴヌクレオチドは、キメラオリゴヌクレオチドよりも有する構造的な要件が少なく、そして細菌、真菌、植物および動物を含む種々の宿主生物体由来の細胞および無細胞抽出物において、エピソーム標的および染色体標的において、ヘアピン含有内部二重鎖キメラオリゴヌクレオチドを用いて観察されたものをしばしば超える変更効率で、配列変更(フレームシフト変異の導入を含む)を指向し得る。
オリゴヌクレオチド指向性核酸配列変更の有用性(例えば、クローニングされたDNAを操作する手段、増強された形質を有する農産物を生成する手段、研究室の使用のための細胞モデルを生成する手段、または所望の区域(trait)を有する動物モデルもしくは動物を作製する手段としての有用性)は、その頻度によって影響される。効率が増大することで、所望の変更を有する細胞を見つける前にスクリーニングしなければならない標的細胞の数を減らすことによって、所望の配列変更を有する細胞を得るのに必要な労力および費用が減らせる。エキソビボまたはインビボの治療方法として、オリゴヌクレオチド指向核酸配列変更の有用性はまた、その効率を増大することによって増強される。なぜなら、標的細胞の最小閾値は任意の所定の遺伝子疾患に臨床上関連する治療上の利点を与えるために変更されなければならない可能性が高いためである。
米国特許第6,303,376号明細書 米国特許第5,962,426号明細書 米国特許第5,776,744号明細書 米国特許第5,422,251号明細書 米国特許第6,573,046号明細書 米国特許第5,888,983号明細書 米国特許第5,871,984号明細書 米国特許第5,795,972号明細書 米国特許第5,760,012号明細書 米国特許第5,780,296号明細書 米国特許第5,756,325号明細書 米国特許第5,731,181号明細書 米国特許第5,565,350号明細書 国際公開第03/027265号パンフレット 国際公開第02/10364号パンフレット 国際公開第01/92512号パンフレット 国際公開第01/87914号パンフレット 国際公開第01/73002号パンフレット 米国特許第6,479,292号明細書 米国特許第6,271,360号明細書 Kunzelmannら、Gene Ther.(1996)3:859〜867 Moerschellら、Proc.Natl.Acad.Sci.(USA)(1988)85:524 Yamamotoら、Yeast 8:935(1992)) Campbellら、The New Biologist(1989)1:223〜227。 Culverら、Nat.Biotechnology(1999)17:989〜93 BrachmanおよびKmiec,Curr.Opin.Mol.Ther.(2002)4:171〜76
従って、遺伝物質の標的化変更の効率を増大する方法の必要性が存在する。
(発明の要旨)
本発明は、オリゴヌクレオチド指向性核酸配列変更(oligonucleotide−directed nucleic acid sequence alteration)(ODSA)の効率を増大する方法およびキットを提供する。
1つの実施形態では、本発明は、標的細胞の集団内の細胞の細胞周期を調節することによってODSAの効率を増大させるための方法を提供する。
別の実施形態では、本発明は、標的細胞の集団内でDNA修復経路を誘導することによってODSAの効率を増大するための方法を提供する。
さらに別の実施形態では、本発明は、標的細胞の集団内でDNA損傷を誘導することによってODSAの効率を増大するための方法を提供する。
さらなる実施形態では、本発明は、標的細胞の集団内で相同組み換え経路を誘導することによってODSAの効率を増大するための方法を提供する。
別の実施形態では、本発明は、ヒドロキシウレア(HU)を用いて標的細胞の集団を処置することによって、ODSAの効率を増大するための方法を提供する。
別の実施形態では、本発明は、エトポシド(VP16)を用いて標的細胞の集団を処置することによって、ODSAの効率を増大するための方法を提供する。
別の実施形態では、本発明は、チミジンを用いて標的細胞の集団を処置することによって、ODSAの効率を増大するための方法を提供する。
別の実施形態では、本発明は、メチルメタンスルホネート(MMS)を用いて標的細胞の集団を処置することによって、ODSAの効率を増大するための方法を提供する。
別の実施形態では、本発明は、バルプロ酸(VPA)を用いて標的細胞の集団を処置することによって、ODSAの効率を増大するための方法を提供する。
別の実施形態では、本発明は、カンプトテシン(CPT)を用いて標的細胞の集団を処置することによって、ODSAの効率を増大するための方法を提供する。
別の実施形態では、本発明は、ジデオキシシチジン(ddC)を用いて標的細胞の集団を処置することによって、ODSAの効率を増大するための方法を提供する。
別の実施形態では、本発明は、カフェインを用いて標的細胞の集団を処置することによって、ODSAの効率を増大するための方法を提供する。
別の実施形態では、本発明は、チミジン、HU、VP16、VPA、MMS、カンプトテシン、ddCおよびカフェインからなる群より選択される1つの因子を用いて標的細胞の集団を処置することによって、ODSAの効率を増大するための方法を提供する。
さらに別の実施形態では、本発明は、チミジン、HU、VP16、VPA、MMS、カンプトテシン、ddCおよびカフェインからなる群より選択される複数の因子を用いて標的細胞の集団を処置することによって、ODSAの効率を増大するための方法を提供する。
別の態様では、本発明は、上述の方法を行うためのキットを提供する。
さらに別の態様では、本発明は、上述の方法を行うのにおける使用のため、および/または上述のキットに包含するための細胞株を提供する。
(好ましい実施形態の詳細な説明)
DNAオリゴヌクレオチドは、原核生物細胞および真核生物細胞のゲノムへ一塩基変換を導入するために用いられ得る。その開示が全体として参照によって本明細書に援用されるLiuら、Nat.Rev.Genet.(2003)4:679〜689を参照のこと。本発明者らの結果によって、DNA複製のプロセスが停止されるかもしくは延長されるか、または二本鎖切断(double−strand breaks)(DSB)が誘導される条件下で増殖される細胞は、より高頻度のオリゴヌクレオチド指向性の配列変更を支持することが示される。本明細書において用いる場合、「オリゴヌクレオチド指向性配列変更(oligonucleotide−directed sequence alteration)(ODSA)」は、「オリゴヌクレオチド媒介性配列変更(oligonucleotide−mediated sequence alteration」と同義である。オリゴヌクレオチド指向性配列変更の頻度は、S期にある細胞においてより高く、細胞がS期を通過する割合を減らすことは、おそらく、二重鎖切断の蓄積および相同組み換え経路の活性化に起因して、標的化された遺伝子変更の頻度の増大をもたらす。
本発明者らの結果はまた、オリゴヌクレオチド指向性配列変更の頻度が、遺伝子修復および遺伝子編集を促進する酵素活性が誘導される細胞ではより高いということを示す。このような酵素活性またはDNA修復経路としては、限定はしないが、相同組み換え、ミスマッチ修復、RAD51およびRAD52媒介組み換え、λβタンパク質の発現および非相同末端結合が挙げられる。
このようなDNA修復経路を誘導するための機構としては、DNAを損傷させること、細胞周期の間に細胞を失速させること、およびS期を通じた細胞の進行を遅らせることが挙げられる。DNA損傷を誘導するための手段としては、制限酵素での消化、イオン化照射に対する曝露、または遺伝毒性物質に対する細胞の曝露(下にさらに詳細に考察する)が挙げられる。S期で細胞を引き止めるか、またはそうでなければゲノムあたりの複製フォークの数を増大させるための手段としては、HU、カンプトテシンまたは他の因子での細胞の処置が挙げられる。
全体として、本発明者らの結果により、ODSAの効率は、細胞周期における標的細胞の位置およびDNA損傷応答経路の活性化によって影響され得ることが示される。例えば、本発明者らは、S期を通じて移行する、活発に複製している哺乳動物細胞は配列変更に対してより従順であること、そして配列変更の効率がDNA損傷に対する応答において相同組み換え経路の活性化によって再現可能に増強されるということを観察した。本発明者らはまた、標的遺伝子の複製および/または転写状態が変更の効率に影響し得るということを観察した。
本発明の方法、キットおよび細胞株は、以前の手順よりも効率的でありかつ再現可能であるオリゴヌクレオチド指向性遺伝子変更のための手順を提供するために、これらの観察を利用する。このような高度に効率的な遺伝子変更は、エキソビボまたはインビボの遺伝子治療のような多くの目的のための方法に特に有用なオリゴヌクレオチド指向性遺伝子変更を行うのに必須である。
本発明の方法は、細菌、植物、真菌および動物細胞がオリゴヌクレオチド指向性の配列変更によって変更される効率を増大し得る。関連の態様では、本発明は、本発明の方法の実施を達成または促進するためのキット;オリゴヌクレオチド指向性配列変更の効率を決定するための哺乳動物細胞株;および関連のビジネス方法を提供する。
(標的されたゲノムDNA)
標的されたゲノムDNAは、正常な、細胞の染色体DNAであっても;細胞小器官のDNA、例えば、ミトコンドリアもしくはプラスミドのDNAであっても;または種々の形態で細胞に存在する染色体外DNAであってもよく、これには、例えば、哺乳動物人工染色体(MAC)、P−1ベクター由来のPAC、酵母人工染色体(YAC)、細菌人工染色体(BAC)、植物人工染色体(PLAC)、BiBACS、ならびにエピソームDNAが挙げられ、これには植物もしくは組み換えベクターのような外来の供給源由来のエピソームDNAが挙げられる。ヒトDNAを含むこれらの人工染色体構築物の多くは、例えば、Whitehead Instituteを含む種々の供給源から得ることが可能であり、そして例えば、Cohenら、Nature 336:698〜701(1993)およびChumakovら、Nature 377:175〜297(1995)に記載される。
標的された核酸部位は、転写的にサイレントであるかまたは転写的に活性であるDNAの一部であり得る。標的された部位は、例えば、エキソン、イントロン、プロモーター、エンハンサーまたは3’−もしくは5’−非翻訳領域を含む遺伝子の任意の部分であってもよく、そして遺伝子間領域にあってもよい。
(配列変更オリゴヌクレオチド)
ある実施形態では、配列変更オリゴヌクレオチドは、標的配列の転写された鎖の変更を指向するように設計される;他の実施形態では、この配列変更オリゴヌクレオチドは、非転写鎖の変更を指向するように設計される。
遺伝子変更のレベルはまた、配列変更オリゴヌクレオチド内のミスマッチ塩基対(すなわち、標的遺伝子座)の位置によって影響され得る。最高の遺伝子変更効率は、標的遺伝子座が補正のオリゴヌクレオチドの中心付近である場合に得られ、これは標的遺伝子座がオリゴの3’末端付近に位置する場合の効率における約2分の1の減少から、最大で、この標的遺伝子座がオリゴの5’末端付近に位置する場合の17分の1への減少である。
変更効率はまた、オリゴヌクレオチドを変更する配列が標的遺伝子の転写鎖または非転写鎖にハイブリダイズするように設計されるか否かに依存して変化し得、そしてある場合には、非転写鎖に対するハイブリダイゼーションは、より高い変更効率を生じる。さらに、COS1細胞におけるエピソームに対する、複製のSV40起点に対する変異eGFP遺伝子の方向が変わる実験によって、上述の転写鎖バイアスが確認され、そしてさらにDNA複製におけるラギング鎖が配列変更のさらに効率的な標的であることが示されている。これらの2つの効果は本明細書においては、「転写バイアス(transcription bias」および「複製バイアス(replication bias)」と呼ばれるが、これは、他の細胞で、または他の遺伝子座では同じでないかもしれない。この鎖バイアスの結果によって、標的遺伝子座で両方の鎖に指向されるオリゴヌクレオチドは、最高の可能な変更効率を与えるオリゴヌクレオチドが決定されることを保証するように試験されるべきであることが示唆される。
配列変更オリゴヌクレオチドは、(i)三重鎖形成オリゴヌクレオチド;(ii)特に、配列変更を指向するヌクレオチドを含む領域で内部が二重鎖になっている、キメラRNA−DNAオリゴヌクレオチド;および(iii)内部が二重鎖でないDNAドメインおよび修飾された末端を有する末端修飾された一本鎖オリゴヌクレオチドを包含する、当該分野で公知の任意のタイプの配列変更オリゴヌクレオチドから選択され得る。例えば、その開示がその全体が参照によって本明細書に援用される、Liuら、J.Mol.Med.(2002)80:620〜28:Nakamuraら、Gene Therapy(2004年2月12日)1〜9;Bertoniら、Hum.Mol.Genet.(2003)12(10):1087〜99;Alexeevら、Gene Therapy(2002)9:1667〜75;Pierceら、Gene Therapy(2003)10:24〜33;Suzukiら、Int’l.J.Mol.Med.(2003)12:109〜14;Krenら、DNA Repair(2003)2:531〜46;Goukassianら、FASEB J.(2002年3月26日)を参照のこと。
本発明によって、細胞内の核酸標的部位で所望の配列変更を達成する機能を行う方法では、このような変更を達成するための工程としては、限定はしないが、三重らせん形成オリゴヌクレオチド、内部で二重鎖であるキメラRNA−DNAオリゴヌクレオチド、または内部が二重鎖でないDNAドメインおよび修飾された末端を有する末端修飾された一本鎖オリゴヌクレオチドを用いて細胞を処置する工程が挙げられる。
本発明の方法、組成物およびキットにおいて有用な配列変更三重鎖形成オリゴヌクレオチドは、例えば、その開示がその内容全体として参照によって本明細書に援用される、米国特許第6,303,376号、同第5,962,426号、および同第5,776,744号に記載される。本発明の方法、組成物およびキットにおいて有用である、標的された変更を果たすドメインに対して結合されるかまたは連結された三重鎖形成ドメインを有する二機能性のオリゴヌクレオチドは、その開示がその内容全体として参照によって本明細書に援用される、Culverら、Nat.Biotechnology(1999)17:989〜93に記載される。
本発明の方法、組成物およびキットにおいて有用である、内部が二重鎖であるヘアピンおよび二重ヘアピン含有キメラRNA−DNAオリゴヌクレオチドは、その開示がその内容全体として参照によって本明細書に援用される、とりわけ、米国特許第6,573,046号;同第5,888,983号;同第5,871,984号;同第5,795,972号;同第5,780,296号;同第5,760,012号;同第5,756,325号;同第5,731,181号および同第5,565,350号に記載される。
ある実施形態では、配列変更オリゴヌクレオチドは、修飾された末端および配列変更を指向する内部が二重鎖でないDNAドメインを有する一本鎖オリゴヌクレオチドである。このようなオリゴヌクレオチドは、その開示がその全体として参照によって本明細書に援用される、WO03/027265;WO02/10364;WO01/92512;WO01/87914;およびWO01/73002、ならびに米国特許第6,479,292号および同第6,271,360号のような公開された同時係属の国際特許出願にさらに記載される。
「配列変更オリゴヌクレオチド(sequence−altering oligonucleotide)」とは、該当の遺伝子座で所望の配列(例えば、変更されるべき塩基に対してミスマッチ)を有し、かつその遺伝子座の両側(上流および下流)に標的DNA分子に対して相補性の配列を有するように設計される。本明細書において用いる場合、「配列変更(sequence−alteration)」とは、所望の変更の任意の特定の表現型効果を意味するのではないものとする。同様に、「遺伝子変更(gene alteration)」という句は、任意の特定の得られた表現型を意味するのではないものとする。「遺伝子修復(gene repair)」という句は、本明細書において「遺伝子変更(gene alteration)」と同義に用いられる。配列変更オリゴヌクレオチドおよび遺伝子変更事象とは、機能を修復する、機能を破壊する、遺伝子発現を上方制御もしくは下方制御する、または変更された表現型を生じようと生じまいと任意の他の変更を果たすものを包含する、任意の所望の遺伝子変更の導入を包含し得る。遺伝子修復という句は、本明細書において用いる場合、限定はしないが、遺伝子の機能損失を修復するという意味で「修復する(repair)」ことには限定されず、代わりに一般には任意の所望の遺伝子変更をいう。このような変更としては、遺伝子の活性を増大もしくは減少いずれかをし得るか、または得られたタンパク質もしくは遺伝子活性が不変のままである、ナンセンス、フレームシフト、ミスセンスまたは他の変異の導入が挙げられる。「補正(correction)」という用語および「遺伝子補正(gene correction)」という句は、本明細書において用いる場合、限定するものではないが、変異体遺伝子が、失われた機能を修復するように変更されている場合、変異緑色蛍光タンパク質に対する活性を修復するかまたは遺伝子疾患を処置するためのアッセイと同様に、単純化のために用いられ得る。
配列変更オリゴヌクレオチドは、標的配列における1、2、3またはそれ以上のヌクレオチドの例えば、欠失、挿入または置換を含む、任意の種類の変更を指向し得る。これらの変更されたヌクレオチドは、お互いに対して隣接してもよく、または隣接してなくてもよい。多数の変更が、単独のオリゴヌクレオチドによって、または1、2、3もしくはそれ以上の別個のオリゴヌクレオチドによって標的部位に指向され得る。ある実施形態では、多数の変更が、単独のオリゴヌクレオチドによって指向される。ある実施形態では、この多数の変更は、お互いの1〜10ヌクレオチド内である。
例えば、本発明の方法およびキットは、特定のアミノ酸コドンの改変により「ノックアウト(knock out)」変異を生成して終止コドンを生成するために用いられ得る(例えば、グルタミンを特定するCAAコドンは、特定の部位でTAAに改変され得る;リジンを特定するAAGコドンは、特定の部位でTAGコドンに改変され得る;そしてアルギニンについてのCGAコドンは、特定の部位でTGAコドンに改変され得る)。このような塩基対変化は、リーディングフレームを終わらせ、終止コドンの部位で短縮される短縮タンパク質を生じ、この短縮されたタンパク質は、欠損があってもよく、または機能が変更されてもよい。あるいはフレームシフトの追加または欠失は、リーディングフレームを中断して誤った(garbled)下流タンパク質を生じるように特定の配列で指向されてもよい。このような終止変異またはフレームシフト変異を導入して、植物または動物の細胞のいずれかにおいてタンパク質をノックアウトするという効果を決定することができる。
本明細書において開示されるオリゴヌクレオチド指向性遺伝子変更方法およびキットは、多くの遺伝子疾患において治療変化を果たすように十分適応される。Human Gene Mutation Database(<http://archive.uwcm.ac.uk/uwcm/mg/hgmd0.html>)によれば、公知の疾患発生遺伝子変異の大部分は、「微小損傷(micro−lesion)」、すなわちミスセンス、ナンセンス、スプライシング、調節性および小さい欠失、挿入および挿入欠失(indel)として分類され得る。<http://archive.uwcm.ac.uk/uwcm/mg/docs/hahaha.html>。
代表的な遺伝子修復実施形態では、配列変更オリゴヌクレオチドは、17〜121ヌクレオチド長であり、そして少なくとも8連続するデオキシリボヌクレオチドの内部で二重でないドメイン(すなわち、非ヘアピンドメイン)を有する。このオリゴヌクレオチドは、それぞれの核酸標的の第一鎖の配列に対して配列中で、ただし1つ以上のミスマッチについて、内部で二重鎖でないデオキシリボヌクレオチドドメインと標的核酸の第一の鎖に対するその相補体との間のオリゴヌクレオチドの配列として、完全に相補的である。各々のミスマッチは、各々のオリゴヌクレオチドの5’末端および3’末端から少なくとも8ヌクレオチドに位置する。このオリゴヌクレオチドは、少なくとも1つの末端修飾を有する。
ある実施形態では、この少なくとも1つの末端修飾は、2’−O−メチル残基のような2’−O−アルキル;ホスホロチオエートヌクレオシド間結合;およびロックされた核酸(locked nucleic acid)(LNA)残基;からなる群より選択され得る。LNAおよび関連のアナログのこの塩基構造および機能的な特徴は、その開示がその全体として本明細書において参照として援用される、WO99/14226、WO00/56748、WO00/66604、WO98/39352、ならびに米国特許第6,043,060号および同第6,268,490号を含む、種々の刊行物および特許に開示されている。ある実施形態では、末端修飾は、複数の隣接するホスホロチオエートヌクレオシド間結合、例えば、オリゴヌクレオチドの3’末端の3つのホスホロチオエート結合を含む。
ある実施形態では、修飾された末端および配列変更を指向する内部が二重鎖でないDNAドメインを有する複数の一本鎖オリゴヌクレオチドを、配列変更を果たすために用いてもよい。このような複数のオリゴヌクレオチドの使用は、その開示がその内容全体として本明細書において参照によって援用される、2003年7月18日出願の同時係属の米国特許出願第10/623,107号(「Targeted Nucleic Acid Sequence Alteration Using Plural Oligonucleotides」)に記載される。
本発明の方法、組成物およびキットにおいて用いられるオリゴヌクレオチドは、当業者に公知の任意の技術によって細胞または組織に導入され得る。このような技術としては、例えば:エレクトロポレーション;トランスフェクション;例えば、リポソーム、水性コア脂質ビヒクル、脂質ナノスフェアまたはポリカチオンを用いるキャリア媒介性送達;裸の核酸挿入;微粒子銃およびリン酸カルシウム沈殿が挙げられる。
ある実施形態では、オリゴヌクレオチドは、例えば、BTX ECM(登録商標)830 Square Waveエレクトロポレーターを用いるエレクトロポレーションを用いて導入される。エレクトロポレーションは、各々が13msecの長さの2つの250Vのパルスを用いて、1秒のパルス間隔で、4mmのギャップキュベットで行われてもよい。他の実施形態では、エレクトロポレーションは、1、2、3または10のパルスを用いて、170、250、300、600または2000Vで、各々のパルスを10、30、70または99msec継続して行う。エレクトロポレーションはまた、2mmのギャップのキュベット中で1、2、3または10のパルスを用いて、225、300、480または500Vで、各々のパルスを22、99または1000msec継続して行ってもよい。当業者は、エレクトロポレーションの特定の設定は実験間で異なってもよく、そして本発明の実施形態の重要ではない態様であるということを認識する。
他の実施形態では、トランスフェクションは、リポソーム移入化合物、例えば、DOTAP(N−1−(2,3−ジオレオイルオキシ)プロピル−N,N,N−トリメチルアンモニウムメチルサルフェート、Boehringer−Mannheim)または等価物、例えば、LIPOFECTIN(登録商標)を用いて行う。他の実施形態では、このトランスフェクション技術は、カチオン性脂質を用いる。ある実施形態では、トランスフェクションは、LipofectamineTM2000(Invitrogen Corporation,Carlsbad,CA)を用いて行う。なおさらなる実施形態では、トランスフェクションは、FuGENETM6(FG)(Roche Diagnostics Corp.,Indianapolis,Indiana,USA)を用いて行う。
(選択性表現型)
本発明の方法およびキットのある実施形態では、配列変更オリゴヌクレオチドは、選択性表現型を生じる変更を指向する。他の実施形態では、他の実施形態では、配列変更オリゴヌクレオチドは、スクリーニングによって、例えば、対応する核酸配列を決定することによって、または変更事象によって生成される非選択性表現型をアッセイすることによって同定されるべき変更を、指向する。
本発明のある実施形態では、第二のオリゴヌクレオチドを追加して、第二の核酸標的部位で配列変更を果たし、この第二の配列変更は好都合にも、標的細胞に対して選択マーカー表現型を付与し、これによって第一の核酸標的部位で所望の配列変更を保有する細胞の特定が容易になる。このような実施形態は、2003年10月7日出願の同時係属の米国特許出願第10/681,074号(「Methods and Compositions for Reducing Screening in Oligonucleotide−Directed Nucleic Acid Sequence Alteration」)にさらに考察され、その開示は、その全体が参照によって本明細書に援用される。
選択性表現型に関与する実施形態では、選り抜きの選択表現型は、選り抜きの宿主細胞に、そしてその選択がインビトロで達成されるかインビボで達成されるかに依存する。当該分野で周知のとおり、例示的な選択表現型としては、例えば、抗生物質または他の化学物質に対する耐性、栄養源を用いる能力、蛍光タンパク質の発現、エピトープの存在、またはアポトーシスシグナルに対する耐性が挙げられる。
この選り抜きの選択性表現型は、所望の配列変更を有する細胞の優先的な増殖に基づいて選択され得る。このような選択性の表現型の例としては、例えば、アポトーシスシグナルまたは抗生物質のような細胞を殺傷するかその増殖を阻害する化合物の存在下で増殖する能力、配列変更の前に必要な栄養物の非存在下で増殖する能力、または配列変更の前には不可能である特定の資源を利用する能力が挙げられる。
この選択性表現型はまた、機械的に選択されてもよい。機械的に選択され得る表現型の例としては、例えば、蛍光タンパク質または特定のエピトープの発現が挙げられる。機械的な選択は、例えば、蛍光活性化細胞分取器(FACS)(蛍光タンパク質の場合直接、またはエピトープについては標識された抗体を用いる)、カラムクロマトグラフィーを含むか、または例えば、Miltenyi Biotec(Auburn,California,USA)によって作製された常磁性ビーズを用いる、当業者に公知の任意の手段によるものであってもよい。選択はまた、インタクトな細胞は要しない。例えば、核酸分子中の一塩基多型(SNP)は、その開示がその全体として参照によって本明細書に援用される、WO03/027640に記載されるような方法をインビトロで用いて検出および単離され得る。このような場合、配列変更オリゴヌクレオチドは、選択された分子における変化を果たす。
本発明による標的細胞における選択性表現型の有無を検出する機能を行う方法では、選択のための工程としては、限定はしないが、抗生物質または他の化合物に対する耐性、栄養源を用いる能力、蛍光タンパク質の発現、エピトープの存在、アポトーシスシグナルに対する耐性、アポトーシスシグナルまたは抗生物質のような代表的には細胞を殺傷するかまたはその増殖を阻害する化合物の存在下で増殖する能力、配列変更の前に必要な栄養物の非存在下で増殖する能力、配列変更の前には不可能である特定の資源を利用する能力、ならびに蛍光タンパク質または特定のエピトープの発現、について選択を行うことが挙げられる。
(DLD−1−1哺乳動物細胞試験系)
緑色蛍光タンパク質(eGFP)をコードする遺伝子の変異バージョンを担持する哺乳動物細胞株DLD−1−1を、実施例1に記載のとおり構築する。このDLD−1−1細胞株は、他に特定しない限り本明細書に記載される実験における実験モデル系として用いられる。親のDLD−1細胞株に導入される変異eGFP遺伝子を担持するこの遺伝子カセットは野性型配列とともに、図1Aに示される。この遺伝子の875位置での変異は、緑色蛍光タンパク質を不活性化する未成熟終止コドン(Y291X)を生じる。図1Bは、配列変更オリゴヌクレオチド(EGFP3S/72NT)および非特異的なコントロールオリゴヌクレオチド(Hyg3S/74NT)を示しており、これらが本明細書で記載される実験で用いられる(他に示す場合を除く)。
オリゴヌクレオチド指向性配列変更のための一般的プロトコールは、図2に模式的に示される。さらなる詳細は、実施例1および他の実施例に示される。本発明の多くの実施形態は、図2に列挙される工程に加えた工程を含んでおり、これには、配列変更の有効性を増大するためのエレクトロポレーションの前後の処置工程が挙げられる。いくつかの実施形態は、列挙された工程から逸脱するか、またはそれらの1つ以上を省略する。
DLD−1−1実験試験系の有用性は、図3に図示されており、ここでは蛍光活性化細胞分取(FACS)データを、実施例1にさらに詳細に考察したとおり、50,000個の未処置の細胞と比較して、10μgのEGFP3S/72NTで処置した50,000個の細胞におけるeGFP遺伝子の補正について示している。下部右側の四分円における細胞の画分は、補正されたeGFP遺伝子を有する、生細胞に相当し、これは、EGFP3S/72NTで処置した場合、0.01%から1%を超えて増大する。
オリゴヌクレオチド指向性配列変更を測定するための別のモデルシステムは、酵母Saccharomyces cerevisiae株LSY678(MATa leu2−3、112trpl−1 ura3−1 his3−1、15ade2−1 can1−100)で開発されている。この株は、ハイグロマイシン遺伝子のコード領域における塩基対137で単独の点変異を含む組み込まれたHYGeGFP融合遺伝子標的を有し、これによって抗生物質に対する耐性を付与することができなくなる。オリゴヌクレオチド指向性配列変更は、変異を修復して、ハイグロマイシン耐性を回復させ得る。例えば、1つの実施形態では、LSY678細胞は、補正性のオリゴヌクレオチドを用いて、α因子と同調されて解放されるかまたはエレクトロポレーションの前にα因子と同調されて、ヒドロキシウレア(HU)に解放される。α因子およびHUの組み合わせは、いずれの因子でも処置されてないが、オリゴヌクレオチド処置のみを、G1/S境界からの解放後に特定の時点で行う場合の細胞と比較して、補正効率を25倍に増大した。米国特許出願公開第20030207451号も参照のこと。
(細胞周期調節)
オリゴヌクレオチド指向性遺伝子変更の技術では、時に著名に高レベルのヌクレオチド変化が得られるが、哺乳動物細胞における遺伝子修復の頻度は高度に可変性であった。観察された変動は、平均して種々の段階の細胞周期にある標的細胞の集団の使用に、少なくとも部分的には起因し得る。本発明の方法の多くの実施形態は、細胞集団を用い、ここでは細胞周期の段階が調節されて配列変更の効率が増大される。
本発明のある実施形態では、配列変更に供されるべき細胞は、変更誘導性オリゴヌクレオチドでの処置の前に同調される。同調は、本明細書において用いる場合、細胞周期の任意の所定の段階における細胞の画分を増大するような細胞の集団の処置をいう。細胞の代表的な非同期性集団は、細胞周期の種々の段階、例えば、S期、M期、G1期およびG2期における細胞の混合物からなる。同調は、細胞周期の所定のポイントで細胞を停止させる処置、この停止因子または条件を取り除くこと、次いで必要に応じて、前に停止した細胞を細胞周期を通じて、細胞周期の事前に決定されたポイントに達するまで前進させることによって達成され得る。一旦細胞が細胞周期の所望の部分に進行されれば、次にそれらは配列変更オリゴヌクレオチドで処置されて、高度に効率的なオリゴヌクレオチド指向性配列変更が得られる。
一連の実施形態では、本発明は、S期における細胞について標的細胞の集団を富化することによって、オリゴヌクレオチド指向性配列変更の頻度を増大するための方法を提供する。オリゴヌクレオチド指向性遺伝子変更の最高の頻度は、S期の細胞で得られる。この方法は、細胞の非同調性の集団を同調させる他の工程と、細胞の集団を同調させてS期に進行させる工程と、この富化された集団にオリゴヌクレオチド指向性配列変更を行う工程とを包含する。
細胞を同調させる種々の手段は、本発明の方法において用いられ得る。ミモシンおよびシクロピロックスオラミンのようなDNA複製インヒビターは、DNA複製の開始を阻害することによって細胞周期において細胞を停止させることが公知である。他の化合物、例えば、アフィジコリンは、DNA複製の伸長を阻害することによって細胞周期において細胞を停止させる。本発明のいくつかの実施形態では、細胞は、ミモシンでの処置の前に、血清を欠く培地(それらは、「血清枯渇される(serum starved)」)中で増殖される。細胞周期に対する、そして配列変更の効率に対するミモシン処置の効果は図4に図示する。実施例2は、配列変更に対するミモシンの効果を評価するために用いた実験プロトコールを記載する。この結果によって、最高の補正効率は、S期の細胞について最も高度に富化される細胞の集団中で観察され、ここで細胞の86%がS期である集団については2.49%という最適補正効率であることが示される。
寒冷ショックのような条件がまた、細胞の集団を同調するために用いられ得る。
細胞はまた、二重チミジンブロック(DTB)を用いて同調されてもよい。例えば、その開示がその全体として参照によって本明細書に援用される、Lundinら、J.Mol.Biol.(2003)328:521〜535を参照のこと。細胞周期に対するDTBの効果、および遺伝子変更の効率は、図9Aおよび図9Bに図示される。実施例4は、遺伝子変更に対する二重チミジンブロックの効果を評価するために用いた実験プロトコールを記載する。図9Aは、DTBがS期におけるDLD−1−1細胞の割合を半分から1.5%に低下させることを示しており、この時点で、細胞のほぼ完全に同調された集団は増殖停止から解放されて、細胞周期に再度入ることが可能になる。増殖の24時間後、細胞を補正性のオリゴヌクレオチドの存在下でエレクトロポレーションする。図9Bにおける「コントロール(control)」のデータは、DTBによる同期化が補正効率を増大することを示す。
HUは、複製フォークの動きをブロックまたは遅延させることによって、S期の増殖している細胞を同期させるために用いられ得る。HUおよびVP16はまた、細胞がDNA損傷および代謝ストレスに応答するため、培養物中の哺乳動物細胞における複製フォークの失速を生じる。遺伝子変更を増強させるためのHUおよびVP16の使用は、DNA損傷剤を考察しているセクションにおいて以下でさらに詳細に考察する。
本発明による標的細胞の集団内の細胞の細胞周期を調節する機能を行う方法では、このような調節を果たすための工程としては、限定はしないが:HU、ミモシン、VP16、シクロピロックスオラミンまたはアフィジコリンを用いて細胞を処置する工程;細胞を二重チミジンブロックに供する工程;細胞を血清枯渇させる工程;または細胞を寒冷ショックさせる工程が挙げられる。当業者は、標的細胞の細胞周期を可逆的に破壊する任意の適切な方法は、本発明による細胞周期同期化を果たすために有用であり得ることを理解する。
本明細書において用いる場合、調節とは、細胞周期の所定の部分に対して標的細胞の集団の同期化を容易にするために標的細胞のある集団において細胞周期の正常な進行を変更する工程をいう。
DLD−1−1細胞におけるオリゴヌクレオチド指向性染色体配列変更を果たすための技術は、実施例1に、そしてその開示がその全体として参照によって本明細書に援用される、2004年11月10日出願の同時係属の米国特許出願第10/986,418号(「Mammalian Cell Lines for Detecting,Monitoring,and Optimizing Oligonucleotide−Mediated Chromosomal Sequence Alteration」)にさらに考察される。
細胞周期同期化、DNA損傷およびDNA修復によってオリゴヌクレオチド指向性遺伝子変更で観察された増強は、機構的に関連し得、例えば、それらは、複製フォークで起こる遺伝子編集の程度を増大することによって全て作用し得る。しかし、この機構にかかわらず、本発明の方法は、遺伝子変更の効率を劇的に増大する。
配列変更の効率を増大するために細胞周期を調節する方法は、効率を増大するために、必要に応じて、本明細書に開示される他の方法を含む他の方法と組み合わされてもよい。
(DNA損傷因子およびDNA修復誘導)
例えば、二重鎖破壊(double−stranded breaks)(DSB)を誘導することによってDNAを損傷させる因子は、遺伝子変更の効率を増大するために用いられ得る。これらのDNA損傷剤は、配列変更の効率の増強を得るために、単独で用いられてもよいし、または前に記載した細胞同期化方法と組み合わせて用いられてもよい。細胞周期調節方法およびDNA損傷剤は、累積的、または相加的に、または配列変更の頻度を向上するように相乗的な方式でさえ作用し得る。
細胞の集団を同調させるのにおいて細胞周期停止剤としてのそれらの使用に加えて、いくつかのDNA複製インヒビター(例えば、HU)はまた、標的DNAにおいて二重鎖破壊を誘導することによって、ならびに/または細胞内のDNA修復および組み換え経路の活性を誘導することによって、オリゴヌクレオチド指向性遺伝子修復の効率を直接増強し得る。
VP16(エトポシドおよび4’−デメチルエピポドフィロトキシンー9−(4,6−O−エチリデン−β−D−グルコピラノシド)とも呼ばれる)は、抗癌薬であって、トポイソメラーゼIIの遊離活性の特異的な阻害を通じてDNA二重鎖破壊を誘導もする。VP16誘導性の破壊が優先的に複製フォークで起こるか、またはランダムな部位で起こるかは明確でないが、両方の処置(HUおよびVP16)は、HR経路を誘導することが示されており、DNA損傷の結果として、HRの頻度が増大する。DNA損傷を誘導する以外に、HUおよびVP16はまた、細胞がDNA損傷および代謝ストレスに応答するため、培養物中の哺乳動物細胞において複製フォークの失速を生じる。VP16のような化学療法剤は、それらが患者の処置のためにFDAによる使用のために承認されており、従って患者への処置された細胞の再導入の前にそれらを徹底的に取り除く必要なしに、インビボの遺伝子修復に用いられてもよいし、またはエキソビボの治療に用いられてもよいという利点を有する。
HUおよびVP16を用いた処置は、DLD−1−1細胞のDNAにおいてDSBを誘導する。図5は、図示のとおり、未処置である細胞(「C」)から得るか、または種々の濃度のHUもしくはVP16で処置した細胞から得た、DNAのパルス・フィールドゲルを示す。DSBの結果である、低分子量のDNAのわずかなスメアーは、HUおよびVP16で処置したレーンにおける高いMWバンドの下に出現したが、コントロールには生じない。
図6は、実施例3に記載されるように行ったODSA実験の結果を示す。DLD−1−1細胞を、エレクトロポレーションの前に24時間種々の濃度のHUまたはVP16に曝して、洗浄し、そして補正性のオリゴヌクレオチド(EGFP3S/72NT)の存在下でエレクトロポレーションした。HUおよびVP16の両方とも用量依存性の方式で補正効率を増大する。図6はまた、細胞の生存をこれらの毒性因子での処置の関数として示しており、これは、最高の用量でさえ、細胞のほぼ80%以上が生存したままであることを示す。図7は、HUおよびVP16でのDLD−1−1細胞の前処置の時間経過を示しており、これは補正効率がHUについてはほぼ35時間で、そしてVP16については12〜24時間でプラトーに達することを示す。
両方とも複製インヒビターとして、従って細胞周期調節剤としての、そしてDNA損傷剤としてのHUおよびVP16の二重効果に起因して、図6および図7に示される補正効率の増強が、少なくとも一部は、細胞周期を調節するHUおよびVP16の能力に起因するか否かを決定することが目的である。図8は、HUまたはVP16での処置の関数として細胞周期におけるDLD−1−1細胞の分布の分析を示す。細胞をFACS分析の前に、何もなし、1mMのHUまたは3μmのVP16を用いて24時間処置する。未処置の培養物における細胞の半分がS期であるが、VP−16処置した細胞の56%、そしてHU処置した細胞の77%がS期である。この結果によって、補正効率に対するHUの効果は、少なくとも一部は細胞周期に対するその効果に起因し得ることが示唆される。
HUおよびVP16のようなDNA損傷剤はまた、細胞同調方法と組み合わせて用いて、さらに大きい補正効率を得ることもできる。例えば、オリゴヌクレオチド指向性の配列変更は、例えばDTBによって最初に同調され、次いでHUで処置される細胞中で増強される。図9Bは、実施例4にさらに詳細に考察されるとおり、DTBによる細胞同調、ならびにHU、VP16およびチミジンのようなDNA損傷剤での処置の併用効果を図示する。図9Aは、DTB手順が、上記で考察したとおり、HUおよびVP16処置の前にDLD−1−1細胞を効率的に同調したことを示す。HUおよびチミジンの場合、同調された細胞を用いる場合、非同調性の培養物に比較して補正効率の劇的な増大がある。補正効率はHUについて10%に達し、これは非同調性細胞で得た補正効率の3倍を上回り、そしてチミジンについては7.5%であり、これは非同調性細胞で得た効率の7倍を上回る。対照的に、VP16は、非同調性細胞において最高の効率を生じるが、同調された細胞を用いる場合には、効率は増大しない。
図9Bで示された結果によって、HU処置は、少なくとも一部は、細胞周期に対する効果以外のいくつかの機構によって、例えば、標的DNAにおける二重鎖破壊の数を増大させること、および/または細胞内のDNA修復/組み換え経路を誘導することによって作用しているということが示唆される。この機構にもかかわらず、同期させた細胞のHUを用いる処置は、遺伝子修復の効率を劇的に増大する。
HUは、100mM、75mM、50mM、40mM、20mM、10mM、2mM、1mM、100μM、10μM、1μM、100nM、10nMまたはそれ以下を含む濃度で用いられ得る。この用量は好ましくは、酵母細胞について約4〜100mM、そして哺乳動物細胞について約0.05mM〜3mMである。この用量は、少なくとも0.55mM、0.60mM、0.65mM、0.70mM、0.75mM、0.80mM、0.85mM、0.90mM、0.95mM、またはさらに1mM、1.1mM、1.2mM、1.3mM、1.4mM、1.4mM、1.5mM、1.6mM、1.7mM、1.8mM、1.9mM、2.0mM、2.5mM、3mMもしくはそれ以上を含む少なくとも0.05mM、0.10mM、0.15mM、0.20mM、0.25mM、0.30mM、0.35mM、0.40mM、0.50mMもしくはそれ以上であってもよい。代表的には、哺乳動物細胞についての用量は、約3.0mM未満であり、そして2.5mM、2.0mM、1.5mM、1.0mM未満であってもよく、さらに0.90、0.85、0.80、0.75、0.70、0.65、0.60、0.55、0.50、0.45、0.40未満であってさえ、そして約0.35または0.30mM未満であってさえよい。最適の投薬およびタイミングは、その開示がその全体として参照によって本明細書に援用されるWO03/075856に示されるアッセイシステムを用いて慣用的な実験によって決定され得る。
ある実施形態では、DNA損傷は、アルキル化剤(例えば、メチルメタンスルホネート(MMS))、代謝拮抗剤(例えば、HU)、DNAを有する付加物を形成する化合物(例えば、ベンゾピレン、アセチルアミノフルオレン)、トポイソメラーゼIIインヒビター(例えば、VP16、VM−26、ドキソルビシン、3’−ヒドロキシダウノルビシン、クロロキン、アジ化ナトリウム、A−74932、クリナフロキサシン、メノガリル、AMSA)またはDSB−誘導剤(例えば、ブレオマイシン)を用いて誘導される。本発明の他の実施形態では、DNA損傷剤は、例えば、シスプラチン、亜ヒ酸ナトリウム、制限エンドヌクレアーゼ、バナジウム酸ナトリウム、臭化エチジウム(EtBr)、クロロキン、VP26および重金属イオン、例えば、カドミウムおよび亜鉛を用いる。本明細書に列挙される薬剤の範疇は、必ずしも相互に排他的ではなく、すなわち、本発明の方法において有用な化合物については前述の範疇の2つ以上におさまることが可能である(例えば、単一の薬剤がトポイソメラーゼIIインヒビターおよびDNA損傷剤として分類されてもよい)ことに注意のこと。
本発明のさらに他の実施形態では、DNA損傷は物理的な手段、例えば、紫外線または他の電離放射線への曝露によって達成される。紫外線への曝露は、4−ニトロキノリン−N−オキシド(4NQO)に対する曝露によって模倣され得る。DNA損傷を誘導する機能を達成する手段としては、ここに列挙される全ての処置および因子、ならびにそれらの等価物が挙げられる。当業者は、任意の適切なDNA損傷剤または処置が本明細書に列挙されるものの代わりに用いられ得、そして本発明の範囲内にやはりおさまり得るということを認識する。
図10は、実施例5にさらに詳細に記載されるような、0.75μMのブレオマイシンおよび0.2μMのMMSを用いたDLD−1−1細胞の処置によって生じたDNA損傷を示すパルス・フィールドゲルを示す。ブレオマイシンおよびMMSのレーンにおける下部のバンド、ならびにこれは「処置なし(no treatment)」のコントロールでは示されていない、MMSレーンにおける下部のスメアーは、これらの因子によって誘導されるDSBの結果であるDNAフラグメントに相当する。このデータによって、これらの薬剤が、用いた実験条件下でDLD−1−1細胞においてDNAを損傷することが確認される。
図11Aは、MMS−処理されたDLD−1−1細胞上で行われた遺伝子補正実験の結果を示しており、これによって、MMSの前処置は補正効率を2倍より大きくすることが示される。図11Bは、図11Aで図示された実験の複製を示しており、また細胞を、4mMカフェインを用い、0.2μMのMMSを有無において処置する実験を包含する。両方のカフェイン実験とも、補正性のオリゴヌクレオチド以外の処置なしのコントロール実験よりも低い補正効率が得られた。
図12は、ワートマニン(WM)を用いた細胞の前処置の効果を試験する実験の結果を示す。DLD−1−1細胞は、示した濃度でWMを用い、30nMのCPTの有無によって、補正性のオリゴヌクレオチドの存在下でのエレクトロポレーションの前に24時間処置する。
図13Aは、DLD−1−1システムにおいて、ジデオキシシチジン(ddC)を用いる細胞の前処理の補正効率に対する効果を試験するための実験の結果を示す。ddCは、500〜750μMで用いた場合、補正効率を2倍より大きく増大する。
図13Bは、カフェインを用いて、エレクトロポレーションの前(「前(prior)」)、またはエレクトロポレーションの後(「回復(recovery)」のいずれかで、ddC処置の有無によって、DLD−1−1細胞を処置する実験の結果を示す。この結果によって、カフェインがMMSと組み合わせて用いられる場合に観察されるとおり(図11B)、カフェインは、前処置として用いられる場合、補正効率を低下させるが、これは、回復相で用いられる場合に補正効率を劇的に増大することが示される。図13Dによって、カフェインの効果がより長く改善し、試験した最長時間(48時間)まで回復相に含まれることが示される。図13Cによって、1mMのバニリンは、それが添加される時点にかかわらず、そしてddC処置と組み合わされるか否かにかかわらず、補正効率に影響を有さないことが実証される。
図14Aおよび図14Bは、3μM CPTを用いた1時間の細胞の処置、その後の種々の時間(0〜10時間)の解放の結果を示す。例えば、「1H+10」データポイントとは、1時間CPTで処置され、次いでBrdU標識またはエレクトロポレーションの前に新鮮なCPT培地中で10時間インキュベートされた細胞を指す。「0」時と記されたデータポイントは、CPTで処置されていない細胞である。
図14Aは、DLD−1−1細胞であって、処置していないか、または3μMのカンプトテシン(CPT)で1時間処置し、この時点でCPTが洗い流され新鮮なCPTなしの培地が添加されている、DLD−1−1細胞のBrdU取り込み(コントロールのパーセントとして)を示している。次いで、BrdU標識の前に細胞を種々の時間インキュベートして、BrdU取り込みをCPT後インキュベーション時間の関数としてプロットする。図14Bは、処置したDLD−1−1細胞をBrdU標識ではなく補正性のオリゴヌクレオチドの存在下でエレクトロポレーションする以外は、図14Aのものと同じ方法で処置したDLD−1−1細胞についての補正効率(コントロールに対する)を示す。
図14Cは、30〜100nMで用いた場合、CPTでのDLD−1−1細胞の前処理が補正効率を3倍にすることを示す。
図14Dは、一連のODSA実験における補正効率(割合として)を、CPT単独で、または他の因子と組み合わせた処置および関連のコントロールの処置の関数として示す。DLD−1−1細胞は、示したとおり、同時にまたは連続して、示された因子で1時間処置される。次いで、この処置した細胞を、補正性のオリゴヌクレオチドの存在下でエレクトロポレーションして、補正効率を決定する。左から右で、細胞は未処置であるか、または4mMのカフェイン、30nMのCPT、または4mMカフェインおよび30nMのCPTの混合物で処置される。「CPT、24時間、解放(CPT 24h release)」とは、30nM CPTで処置され、続いて洗浄工程およびエレクトロポレーションの前のさらに1時間の新鮮培地中でのインキュベーションを受ける細胞を指す。次のデータポイントは、同様であるが、第二の1時間のインキュベーションには4mMのカフェインを含む。データは、1mMのバニリンおよび1mMのバニリンと30nMのCPTとの混合物での処置について示す。
(高度に効率的なオリゴヌクレオチド指向性遺伝子変更の利点)
本発明の実施形態は、植物およびヒトを含む動物において遺伝子治療を行うのに有用であり得る。エキソビボ遺伝子治療は、生物体からの細胞の取り出し、インビトロの遺伝子治療および処置された細胞の宿主生物体(または、ある実施形態では、異なる宿主生物体)への置き換えを含む。例えば、多くのヒト疾患は、末梢血のサンプルからこのような細胞を取り出すこと、遺伝子変更を達成すること、および処置された細胞を患者の血流に再導入することにより、造血幹細胞の染色体において変化を達成することによって処置され得る。本発明のODSA方法は、遺伝子変更の効率を増大するための細胞周期調節に関与しており、これらの単離された造血幹細胞における遺伝子修復を達成するために用いられ得る。ある実施形態では、エキソビボ遺伝子治療を受けている細胞は、損傷からそれらを保護するように設計された方法、例えば、その開示がその全体として参照によって本明細書に援用される米国特許出願公開第2003/0134789A1号に記載の方法を用いて処置される。
本発明の方法およびキットは、核酸配列の標的化変更を指向する任意のオリゴヌクレオチドで用いられ得る。例えば、オリゴヌクレオチドは、例えば、ADA、p53、βグロビン、RB、BRCA1、BRCA2、CFTR、CDKN2A、APC、第V因子、第VIII因子、第IX因子、ヘモグロビンα1、ヘモグロビンα2、MLH1、MSH2、MSH6、ApoE、LDLレセプター、UGT1、APP、PSEN1およびPSEN2を含む多くのヒト遺伝子における配列を変更するように設計され得る。さらなる遺伝子を下に列挙する。
本発明の方法およびキットは代表的には、オリゴヌクレオチド指向性核酸配列変更を用いて、本発明の方法によって以前に処置されていない標的細胞の集団を用いて得られた効率に対して少なくとも約2倍まで、遺伝子変更の効率を増大する。遺伝子変更のこの効率の増大は、少なくとも約2、3、4、5、6、7、8、9、10、12、15、20、30および50倍以上であり得る。
本発明の方法およびキットはまた、オリゴヌクレオチド指向性核酸配列変更を用いて、少なくとも約0.2、0.4、0.6、0.8、1、1.2、1.2、1.4、1.6、1.8、2、2.2、2.4、2.6、2.8、3、3.3、3.7、4、4.5、5、5.5、6、6.5、7、7.5、8、8.5、9、9.5、10、11、12、13、14、15、17パーセント以上の補正効率まで、遺伝子変更の効率を増大し得る。
ある実施形態では、変換の効率は、変換事象を受けている回復された基質の標的分子の割合として規定される。あるいは、標的遺伝子物質(例えば、細胞における染色体外エレメント)の性質に依存して、効率は、特定の表現型を示す染色体外エレメントを含む細胞またはクローンの割合として示され得る。配列変更オリゴヌクレオチドが、選択性の表現型を生じる変更を指向する実施形態では、変換の効率は、選択性の表現型についてアッセイされる標的細胞(またはそのクローン)の総数の画分として、選択性の表現型を示す標的細胞(またはそのクローン)の割合として表され得る。あるいは、変更によって付与される表現型が非選択性である実施形態では、標的遺伝物質の代表的なサンプルは、所望の変化を獲得している割合を決定するために、例えば、配列決定、対立遺伝子特異的なPCRまたは匹敵する技術によって分析され得る。
(匹敵する細胞タイプ)
変更は通常、ヒトの細胞、例えば、肝臓、肺、結腸、頸部、腎臓および上皮細胞を含む哺乳動物細胞において本発明の方法によって行われ得る。
本発明の方法による所望の配列変更のために有効に標的され得る培養された哺乳動物細胞としては、HT1080細胞(ヒト上皮線維肉腫)、COS−1およびCOS−7細胞(アフリカミドリザル)、CHO−K1細胞(チャイニーズハムスター卵巣)、H1299細胞(ヒト上皮癌腫、非小細胞肺癌)、C127I(不死のマウス乳腺上皮細胞)、MEF(マウス胚性線維芽細胞)、HEC−1−A(ヒト子宮癌腫)、HCT15(ヒト結腸癌)、HCT116(ヒト結腸癌)、LoVo(ヒト結腸腺癌)およびHeLa(ヒト子宮頸癌)の癌細胞、ならびにPC12細胞(ラットのクロム親和細胞腫)が挙げられる。
その開示がその全体として参照によって本明細書に援用される、WO03/027264として発行された同時係属の国際特許出願および米国特許出願第10/260,638号に記載されるように、培養された哺乳動物細胞における変更を有効に行って、類似遺伝子型の細胞コレクションを作製してもよい。このような類似遺伝子型のコレクションにおいて有効に標的された遺伝子としては、薬物耐性(薬物感度と等価)または薬物代謝に影響する遺伝子座が挙げられ、これには、以下が挙げられる:CYP1A2、CYP2C17、CYP2D6、CYP2E、CYP3A4、CYP4A11、CYP1B1、CYP1A1、CYP2A6、CYP2A13、CYP2B6、CYP2C8、CYP2C9、CYP11A、CYP2C19、CYP2F1、CYP2J2、CYP3A5、CYP3A7、CYP4B1、CYP4F2、CYP4F3、CYP6D1、CYP6F1、CYP7A1、CYP8,CYP11A、CYP11B1、CYP11B2、CYP17、CYP19、CYP21A2、CYP24、CYP27A1、CYP51、ABCB1、ABCB4、ABCC1、ABCC2、ABCC3、ABCC4、ABCC5、ABCC6、MRP7、ABCC8、ABCC9、ABCC10、ABCC11、ABCC12、EPHX1、EPHX2、LTA4H、TRAG3、GUSB、TMPT、BCRP,HERG、hKCNE2、UDPグルクロノシルトランスフェラーゼ(UGT)、スルホトランスフェラーゼ、スルファターゼ、グルタチオンSトランスフェラーゼ(GST)−α、グルタチオンS−トランスフェラーゼ−μ、グルタチオンS−トランスフェラーゼ−π、ACEおよびKCHN2。
他の実施形態では、標的された変更が本発明の方法に従ってその中で有効に発効され得る細胞としては、前駆細胞および幹細胞−両方とも(胚性)(ES)幹細胞および非ES細胞、例えば、造血前駆細胞または幹細胞が挙げられ、これにはCD34CD38造血前駆体および幹細胞および筋由来幹細胞が挙げられる。
標的された配列変更がヒトの非ES細胞、例えば、造血前駆細胞または幹細胞、例えば、CD34CD38造血幹細胞で行われる本発明の方法の特定のエキソビボ実施形態では、配列変更された細胞が、エキソビボの遺伝子治療のためにヒト被験体に再導入され得る。
ES細胞は、哺乳動物ES細胞、非ヒト哺乳動物ES細胞またはヒトES細胞のいずれであってもよく;ヒトES細胞は、例えば、本発明の方法、組成物およびキットが用いられるべき管轄における使用について承認された細胞株由来であってもよい。例えば、米国における使用のためには、国の法律も政府の法律も破らない任意のヒト肝細胞株、例えば、米国の連邦政府補助金基準を満たす細胞株などが用いられ得る;国立衛生研究所(National Institutes of Health)は、これらの既存の幹細胞株のリスト(http://escr.nih.gov)を保持しており、これは、以下によって保持されるリストを含む:BresaGen,Inc.,Athens,Georgia(2つの利用可能な株);ES Cell International,Melbourne,Australia(6つの利用可能な株);MizMedi Hospital−Seoul National University,Seoul,Korea(1つの利用可能な株);Technion−Israel Institute of Technology,Haifa,Israel(2つの利用可能な株);University of California,San Francisco,California(1つの利用可能な株);Wisconsin Alumni Research Foundation,Madison,Wisconsin(5つの利用可能な株)。
本発明の方法のいくつかのエキソビボの実施形態では、標的された配列変更が、ヒトES細胞で行われ、これはその後に用いられて、法的に可能であれば、組織を生成するか、または許されれば、生きた胚を生成する。
(非ヒト哺乳動物細胞)
標的された配列変更が非ヒト細胞、例えば、非ヒト哺乳動物ES細胞または植物細胞で行われる本発明の方法の特定のエキソビボ実施形態では、配列変更された細胞を用いて、インタクトな生物体を生成し得、その後にこれを増殖させ得る。
例えば、本発明の方法は、所望の形質の発現を増強、および/または所望されない形質の発現を減少するために、最初に遺伝子操作された細胞を作製することによって、家畜−例えば、ウシ、バイソン、ウマ、ヤギ、ヒツジ、ブタ、ニワトリ、ガチョウ、アヒル、シチメンチョウ、キジ、ダチョウおよびハトを含む遺伝子操作された動物を作製するために用いられ得る。他の実施形態では、本発明の方法は、マウス、ラット、モルモットを含むげっ歯類;ウサギのようなウサギ目の動物;サル;類人猿;イヌ;およびネコのような実験動物として有用な遺伝子操作された動物を作製するために用いられ得る。遺伝子操作された細胞を含むトランスジェニック動物を生成するための方法は、当該分野で公知であり、そして例えば、その開示がその全体として参照によって本明細書に援用されるWO00/51424「Genetic Modification of Somatic Cells and Uses Thereof」に開示されている。
本発明のさらなる態様は、それによって生成される非ヒト動物である。
(植物細胞)
さらに他の実施形態では、標的された変更がその中で行われている細胞は、植物細胞である。
公知の核酸配列変更により植物中で得られ得る所望の表現型としては、例えば、除草剤耐性;雄性不稔または雌性不稔;塩、干ばつ、鉛、凍結および他のストレス耐性;変更されたアミノ酸含量;デンプンの変更されたレベルまたは組成;油分の変更されたレベルまたは組成;ならびにセリアック病を有する個体において自己免疫応答を引き起こすことが公知であるグルテン中のエピトープの排除が挙げられる。
用いられるべき細胞が引き出され得る特に有用な植物としては、作物、例えば、カリフラワー(Brassica oleracea)、アーティチョーク(チョウセンアザミ)(Cynara scolymus)、果物、例えば、リンゴ(Malus、例えば、domesticus)、マンゴー(Mangifera、例えば、indica)、バナナ(Musa、例えば、acuminata)、ベリー(例えば、干しブドウ、Ribes、例えば、rubrum)、キーウィ(Actinidia、例えば、chinensis)、ブドウ(Vitis,例えば、vinifera)、ピーマン(Capsicum、例えば、annuum)、サクランボ(例えば、セイヨウミザクラ、Prunus、例えば、avium)、キュウリ(Cucumis、例えば、sativus)、メロン(Cucumis、例えば、melo)、ナッツ(例えば、クルミ、Juglans、例えば、regia;ピーナッツ、Arachis hypogeae)、オレンジ(Citrus、例えば、maxima)、ピーチ(Prunus、例えば、persica)、洋ナシ(Pyra、例えば、communis)、プラム(Prunus、例えば、domestica)、イチゴ(Fragaria、例えば、moschata またはvesca)、トマト(Lycopersicon、例えば、esculentum);葉および飼料、例えば、アルファルファ(Medicago、例えば、sativaまたはtruncatula)、キャベツ(例えば、Brassica oleracea)、エンダイブ(Cichoreum、例えば、endivia)、リーク(西洋ニラネギ)(Allium、例えば、porrum)、レタス(Lactuca、例えば、sativa)、ホウレンソウ(Spinacia、例えば、oleraceae)、タバコ(Nicotiana、例えば、tabacum);根、例えば、クズウコンの根(Maranta、例えば、arundinacea)、ビート(Beta、例えば、vulgaris)、ニンジン(Daucus、例えば、carota)、キャッサバ(Manihot、例えば、esculenta)、カブ(Brassica、例えば、rapa)、ダイコン(Raphanus、例えば、sativus)、ヤムイモ(Dioscorea、例えば、esculenta)、サツマイモ(Ipomoea batatas);脂肪種子を含む種子、例えば、マメ(Phaseolus、例えば、vulgaris)、エンドウマメ(Pisum、例えば、sativum)、ダイズ(Glycine、例えば、max)、ササゲ(Vigna unguiculata)、モスビーン(Vigna aconitifolia)、コムギ(Triticum、例えば、aestivum)、ソルガム(Sorghum、例えば、bicolor)、オオムギ(Hordeum、例えば、vulgare)、トウモロコシ(Zea、例えば、mays)、コメ(Oryza、例えば、sativa)、アブラナ(Brassica napus)、雑穀(Panicum種)、ヒマワリ(Helianthus annuus)、カラスムギ(Avena sativa)、ヒヨコマメ(Cicer、例えば、arietinum);塊茎、例えば、コールラビ(Brassica、例えば、oleraceae)、ジャガイモ(Solanum、例えば、tuberosum)など;線維および木材の植物、例えば、アマ(Linum、例えば、usitatissimum)、綿(Gossypium、例えば、hirsutum)、マツ(Pinus種)、オーク(Quercus種)、ユーカリプタス(Eucalyptus種)、など、および観葉植物、例えば、芝草(Lolium、例えば、rigidum)、ペチュニア(Petunia、例えば、x hybrida)、ヒヤシンス(Hyacinthus orientalis)、カーネーション(Dianthus、例えば、caryophyllus)、ヒエンソウ(Delphinium、例えば、ajacis)、ジュズ玉(Job’s tears)(Coix lacryma−jobi)、スナップドラゴン(snapdragon)(Antirrhinum majus)、ケシ(Papaver、例えば、nudicaule)、ライラック(Syringa、例えば、vulgaris)、アジサイ(Hydrangea、例えば、macrophylla)、バラ(Gallicas、Albas、Damasks、Damask Perpetuals、Centifolias、Chinas、TeasおよびHybrid Teasを含む)および観賞用アキノキリンソウ(ornamental goldenrods)(例えば、Solidago種)に加えて、例えば、Chlamydomonas reinhardtii、Physcomitrella patensおよびArabidopsis thalianaのような例えば、実験モデル植物が挙げられる。
一般には、オリゴヌクレオチドは、本発明の方法に従って、単離された植物細胞またはプロトプラストに投与され、そして得られた細胞は、当該分野で公知の任意の方法に従って、植物全体を再生するために用いられる。
標的された変更がその中で本発明の方法に従って発効されている細胞は、初代の単離された細胞、選択的に富化された細胞、培養された細胞または組織移植片であってもよい。
(インビボ/エキソビボの遺伝子治療のための候補遺伝子)
本発明によるインビボの遺伝子修復は、種々のヒト疾患に関連する遺伝子を変更するために用いられ得る。あるいは、エキソビボ方法を用いて、インビトロで生物体(例えば、患者)から取り出されている細胞において遺伝子を変更してもよく、それによってそれらの細胞を患者に引き続いて導入(または再導入)してもよい。特定の遺伝子の種々の公知の変異が、疾患を生じることが公知であり、従って変異を修復するためにオリゴヌクレオチドを設計することは比較的直接的である。ヒト疾患を生じることが公知の遺伝子としては、限定はしないが、p53、BRCA1、BRCA2、CDKN2A、APC、RB、MLH1、MSH2、MSH6、AD1、AD2、AD3、AD4および第V凝固因子の遺伝子が挙げられる。このような実施形態はさらに、その開示がその全体として参照によって本明細書に援用される、2003年10月7日出願の同時係属の米国特許出願第10/681,074号(「Methods and Compositions for Reducing Screening in Oligonucleotide−Directed Nucleic Acid Sequence Alteration」)に考察されている。
本発明の方法による処置に適合し得る他の疾患(およびそれらの対応する遺伝子)としては、α−地中海貧血(Alpha−Thalassemia)(α−グロビンHBA1、HBA2)、鎌状赤血球病(βグロビン(HBB))、β地中海貧血(B−グロビン(HBB))、血友病A(FVIII)、血友病B(クリスマス病)(FIX)、フォン・ヴィレブランド病(VWF)、マクロード症候群(MLS)(XK)、遺伝性球状赤血球症(ANK1、SBTB、SLC4A1)、楕円赤血球症/変形赤血球症(SPTA1、EBP41)、RBC ピルビン酸キナーゼ欠損症(PK−LR)、G−6−P デヒドロゲナーゼ欠損症(G6PDH)、ハンチントン舞踏病(HD(HTT)、JPH3)、アルツハイマー病(APP1、APOE、PSEN1、PSEN2、PLCD1)、筋萎縮性側索硬化症(SOD1)、レット症候群(MECP2)、脆弱性X(FMR1)、脊髄性筋萎縮症(SMA)(SMN1、SMN2)、ゴーシェ(グルコセレブロシダーゼ)、ポンペ病(a−1,4−グルコシダーゼまたは酸マルターゼ欠損症(GAA))、ファブリー病(α−GalA(GLA))、クラッベ病(ガラクトシルセラミダーゼ遺伝子(GALC))、テイ・サックス病(ヘキソサミダーゼA(HEXA))、サンドホフ病(ヘキソサミダーゼB(HEXB))、ニーマン・ピック病(スフィンゴミエリナーゼAおよびB(NPC1、NPC2))、ムコリピドーシスII(I−細胞病)(a−L−イズロン酸スルファターゼ(GNPTA))、ムコリピドーシスIII(m13c)、ムコリピドーシスIV(MCOLN1)、MPS−I、ハーラー(Hurler)(a−1−L−イズロニダーゼ(IUAD))、MPS−Iシャイエ病(a−1−L−イズロニダーゼ(IUAD))、MPS II、ハンター病(IDURONATE 2−SULFATASE(IDS)、MPSIIIA、サンフィリポ症候群A(SGSH)、MPSIIIB、サンフィリポ症候群B(α−N−アセチルグルコサミニダーゼ欠損症(NAGLU))、アルドステロン欠損症(CYP11B2)、バルデー・ビードル症候群(BBS1)、バイラー症候群(ATP8B1)、先天性ネフローゼ症候群(NPHS1)、グルタル酸尿症、I型(GCDH)、糖原病、6型(PYGL)、ヒルシュスプルング病(EDNRB)、メープルシロップ尿症(BCKDHA、BCKDHB、DBT)、中位鎖アシルCoAデヒドロゲナーゼ欠損症(ACADM)、メバロン酸キナーゼ欠損症(MVK)、2−ケトグルタル酸尿症を有する小頭症(SLC25A19)、プロピオン酸尿症(PCCA,PCCB)、3−B−ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ欠損症(HSD3B2)、3−メチルクロトニルグリシン尿症(MCCC2)、ホモシスチン尿症(MTHFR)、シスチン尿症(SL3A1、SLC7A9)、シスチン症(シスチノシン(CTNS))、多発性嚢胞腎、優性遺伝子(PKD1、PKD2)、多発性嚢胞腎、劣性遺伝子(PKHD1)、ウォルマン症候群(スフィンゴリピドース酸リパーゼ)、ファーバー病(Ceramidase(ASAH))、オースティン病(多発性スルファターゼ(ARSA))、MPS VII(GUSB)、カナバン病(ASPA)、フェニルケトン尿症(PAH)、クリーグラー・ナジャーI型(UDPGT)、クリーグラー・ナジャーII型(UGT1A1)、ギルバート症候群(UGT1A1)、レッシュ・ナイハン症候群(HPRT)、オルニチントランスカルバミラーゼ欠損症(OTC)、遺伝性ヘモクロマトーシス(HFE,TFR)、チロシン血症1型(HT1)(FAH、MOD2)、チロシン血症、3型(HPD)、ポルフィリン症(FC)、糖尿病(GCK)、抗トリプシンα1欠損症(AAT)、ADA欠損症(ADA)、SCID(DNA−PK、RAG1、RAG2)、XLAAD(Foxp3)、XSCID(IL2RG)、慢性肉芽腫症(CYBA、CYBB、NCF1、NCF2)、ネマリン桿状体筋障害(TNNT1)、家族性周期性発熱(TRAPS)(TNFRSF1A)、デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)、嚢胞性線維症(CFTR)、表皮水疱症(Col7A1、Coll7A−1、LAMA3、LAMB3、LAMB4、LAMC2)、回転状萎縮(Gyrate atrophy)(OAT)、マルファン症候群(FBN1)、アルポート症候群(COL4A3、COL4A4、Col4A5)、軟骨毛髪形成不全症(RMRP)、エリス・ファンクレフェルト病(EVC)、マキュージック・カウフマン(McKusick−Kauffman)症候群(MKKS)、骨形成不全症(CollA2)、高コレステロール血症(LDLR)、家族性高コレステロール血症(BAAT,TJP2)、高脂質血症(APOE)、血栓症(AT)、脊髄性筋萎縮症(SMN1,SMN2)、およびシトステロール血症(ABCG8、ABCG5)が挙げられる。クリーグラー・ナジャーおよびCAII欠損症のような疾患はまた、本発明の方法を用いる遺伝子治療の候補である。本発明の方法の標的として適応可能な遺伝子はまた、その開示がその全体として参照によって本明細書に援用されるLiuら、Nat.Rev.Genetics(2003)4(9):679〜89およびAndersonら、J.Mol.Med(2002)80:770〜781に開示される。
特定のヒト疾患はエキソビボの遺伝子治療に特に適合可能であり、エキソビボの遺伝子治療は1つのバリエーションでは、患者から単離され、そして処置後にその患者に引き続いて再導入される細胞で行う遺伝子治療に関与する。エキソビボの遺伝子治療の候補疾患としては、限定はしないが、神経変性疾患、骨再生障害、糖尿病、アルツハイマー病、パーキンソン病、家族性高コレステロール血症、遺伝性高ビリルビン血症、変形性関節炎(OA)、接合型表皮水疱症(JEB)、転移性腎細胞癌(RCC)、前立腺癌およびリソソーム貯蔵障害、例えば、ファブリー病、ゴーシェ病、ポンペ病、およびニーマン・ピック病が挙げられる。遺伝子治療は、抽出された血液または骨髄で行われてもよく、これを患者に再導入することで患者の副作用のリスクは大きく低下し得る。エキソビボの遺伝子治療のための見込みのある標的である細胞タイプとしては、骨髄幹細胞、肝細胞、血管平滑筋細胞および腫瘍浸潤性リンパ球(ガン処置のため)が挙げられる。
本発明の方法は、このようなエキソビボの方法によく適している。なぜなら、それらの方法は遺伝子治療後に持続しない因子を用いる患者の細胞または組織の処置の処置を包含するためである。この方法はまた、なんらかの臨床効果を有するには少なすぎる細胞で変更を達成する先行技術の方法とは反対に、処置された細胞が患者に再導入される場合、治療効果を生じ得るレベルまでODSAの効率を増大させる。
(ファブリー病)
ファブリー病は、GLA遺伝子によってコードされるリソソームαガラクトシダーゼAの欠損によって生じるX染色体連鎖劣性型のリソソーム貯蔵障害である。BradyおよびSchiffman,JAMA(2001)285(2):169。12kb長のGLA遺伝子のいくつかの対立遺伝子改変体が疾患の表現型に関連する。GLAにおける有害突然変異についてのホモ接合性の患者は、進行性の腎、心血管および脳血管の機能不全および早期死亡を伴う、重篤な疼痛性の神経障害を被り得る。同上。
ファブリー病(および本明細書において考察される他のヒト疾患)およびそれらの関連の遺伝子変異に対するさらなる情報は、<http://www.ncbi.nlm.nih.gov/entrez>でEntrez Pubmedウェブサイトを介してアクセス可能なOnline Mendelian Inheritance in Man(OMIM)データベースを通じて入手可能である。ファブリー病のMIMコードはMIM+301500である。
実施例8は、試験系においてGLA機能を修復するためにこのような変異GLA対立遺伝子の1つを修復する本発明の方法の1つの使用を図示しており、その結果は図15A〜図15Eに示される。オリゴヌクレオチドは、実施例8に考察されるように、エレクトロポレーションではなく、トランスフェクションによってファブリー細胞に導入される。本明細書に呈示される前の実験のほとんどと異なり、ファブリー実験は、トランスフェクション前ではなく「回復期間(recovery period)」の間に、トランスフェクションの後のいくつかの因子での処理を包含する。
図15Aは、実施例8に詳細に示される実験に相当し、これはオリゴヌクレオチド49T/ggが変更GLAにおいて試験したオリゴヌクレオチドのうち最も有効であること、および最適の用量が10μgであることを実証する。49NT/pmのオリゴヌクレオチドは、GLAにおける変異を補正する能力を有さないコントロールオリゴヌクレオチドである。変異ファブリー遺伝子を補正するさらなる実験では、他に示さない限り10μgの49T/ggを用いる。
図15Bは、補正効率に対するいくつかの因子の効果のデータを種々の濃度で示す。最も劇的な結果は、0.3mM HUを用いて得られた3.36%の補正であり、これは49T/ggのオリゴヌクレオチドでの処理を包含するコントロール実験を6倍上回り、未処理のコントロールよりも25倍上回る。図15BのFGは、実施例8にさらに詳細に考察されるトランスフェクション増強因子を指す。10nM CPTのような他の処理は補正効率をやや改善する。図15Cは、図15BにおいてHUを用いて得た結果が、単に一過性でなく持続性であることを示す。なぜなら図15CにおけるGLA活性は、トランスフェクションの7日後に測定しているためである。
図15Dは、GLA活性に対するいくつかの因子の種々の濃度での、そしていくつかのオリゴの効果のデータを示す。GLA活性における劇的な増大は、細胞を回復期において2〜5μMのVPAで処理する時に観察される。このような処理は、GLA活性を、それ以外は同じであるがVPAなしで処理した細胞と比較して8倍より大きく、そして未処理の細胞での活性より25倍より大きく増大する。CPT(7.5nM)も、GLA活性を2倍より大きくする。
図15Eは、トランスフェクションの前にDTBによって同調されたファブリー細胞で得られた結果を示す。GLA活性は、1mMのHUで処理した同調された細胞について5倍に、そして500μMのddCで処理した同調された細胞について約2倍に増大される。
(遺伝子変更効率を増強するための他の方法との組み合わせ性)
本発明の方法およびキットは、当該分野で公知の核酸配列のオリゴヌクレオチド指向性変更の効率を増強する1つ以上の他の方法と組み合わせられ得る。このような方法は、例えば、その開示がその全体として参考によって本明細書中に援用される、WO02/10364(「Methods for Enhancing Targeted Gene Alteration Using Oligonucleotides」);WO03/027265(「Composition and Methods for Enhancing Oligonucleotide−Directed Sequence Alteration」);およびWO03/075856(「Methods,Compositions,and Kits for Enhancing Oligonucleotide−Mediated Nucleic Acid Sequence Alteration Using Compositions Comprising a Histone Deacetylase Inhibitor,Lambda Phage Beta Protein,or Hydroxyurea」)として公開された同時係属の国際特許出願、ならびに同時係属の2003年10月7日出願の米国特許出願第10/681,074号(「Methods and Compositions for Reducing Screening in Oligonucleotide−Directed Nucleic Acid Sequence Alteration」)および2004年6月4日出願の同第10/861,178号(「Reengineering Rad51 for High Efficiency Targeted Nucleotide Exchange」)に記載される。
1つの例示的な実施形態では、遺伝子変更効率を増強するさらなる方法は、オリゴヌクレオチド添加の前、間または後のヒストンデアセチラーゼ(HDAC)インヒビター、例えば、トリコスタチンA(TSA)の添加である。しかし、当業者は、他のHDACインヒビターがこれらの目的に適切であり得ることを理解する。例えば、その開示がその全体として参考によって本明細書中に援用される、米国特許出願第2002/0143052号は亜鉛結合部分の存在に起因してHDACインヒビター活性を有する化合物を開示している。本発明の目的に適切なHDACインヒビターの他の例としては、酪酸、MS−27−275、ヒドロキサム酸スベロイラニリド(suberoylanilide hydroxamic acid)(SAHA)、オキサムフラチン(oxamflatin)、トラポキシンA、デプデシン(depudecin)、FR901228(デプシペプチドとしても公知)、アピシジン(apicidin)、m−カルボキシ−桂皮酸ビシドロキサム酸(m−carboxy−cinnnamic acid bishydroxamic acid)(CBHA)、スベリンビシドロキサム酸(suberic bishydroxamic acid)(SBHA)、バルプロ酸(VPA)およびピロキサミドが挙げられる。その開示がその全体として参考によって本明細書に援用される、Marksら、J.Natl.Canc.Inst.92(15):1210〜1216(2000)を参考のこと。適切なHDACインヒビターのさらに他の例は、その開示がその全体として参考によって本明細書に援用されるWO00/23567に開示されるように、クラミドシン(chlamydocin)、HC−トキシン、Cyl−2、WF−3161およびラジシコール(radicicol)である。
細胞または細胞抽出物に対してHDACインヒビターを投与する場合、投与されるべき投与量および投与のタイミングは、細胞タイプを含む、種々の要因に依存する。TSAの場合、この投薬量は、10nM、100nM、1μM、10μM、100μM、1mM、10mMもしくはそれ以上であってもよいし、または1mM、100μM、10μM、1μM、100nM、10nM、1nM程度の小ささ、もしくはそれ以下であってもよい。HUの場合、投与量は、100nM、1μM、10μM、100μM、1mM、10mM、100mM、1Mもしくはそれ以上であってもよいし、または100mM、10mM、1mM、100μM、10μM、1μM、100nM、10nM程度の小ささ、もしくはそれ以下であってもよい。
細胞は、HDACインヒビターの存在下で増殖されてもよく、そして細胞抽出物は、配列変更オリゴヌクレオチドとの組み合わせの前に種々の時間HDACインヒビターで処理されてもよい。増殖または処理は、1時間、2時間、3時間、4時間、6時間、8時間、12時間、20時間、またはそれ以上であってもよく、これには最大で28日、14日、7日の長さ、もしくはそれ以下、または12時間、8時間、6時間、4時間、3時間、2時間、1時間程度の短さもしくはそれ以下を含む。あるいは、HDACインヒビターおよび配列変更オリゴヌクレオチドでの細胞または細胞抽出物の処理は、同時に生じてもよく、またはHDACインヒビターは、オリゴヌクレオチド添加後に添加されてもよい。
細胞はさらに、配列変更オリゴヌクレオチドでの処理の前に種々の時間のHDACインヒビターの非存在下での増殖によって、HDACインヒビターでの処理から回復され得る。回復は、10分、20分、40分、60分、90分、2時間、4時間程度の長さもしくはそれ以上、または90分、60分、40分、20分、10分程度の短さもしくはそれ以下であってもよい。細胞はまた、配列変更オリゴヌクレオチドでの処理の後に回復させられてもよい。この回復期間は、1時間、2時間、4時間、6時間、8時間、12時間程度の長さ、またはそれ以上であってもよく、または8時間、6時間、4時間、2時間、1時間程度の短さもしくはそれ以下であってもよい。HDACインヒビターは、回復期間の間に細胞培地に存在しても、しなくてもよい。
細胞または細胞抽出物に対するHDACインヒビターの投与の最適の投与量ならびに時点および期間は、慣用的な実験によって決定され得る。例えば、TSAのようなHDACインヒビターでの処理の最適用量およびタイミングは、WO03/075856に記載されるアッセイシステムを用いて決定され得る。
本発明のいくつかの実施形態は、原核生物細胞または真核生物細胞における相同組み換えまたはDNA複製に関与する酵素を細胞に供給する工程を包含する。原核生物におけるDNA複製に関与するタンパク質としては、λファージアニーリングタンパク質レッドβが挙げられ、そして真核生物におけるこのようなタンパク質としては、Rad52上位群のメンバーが挙げられる。他の実施形態としては、このような酵素のレベルを変更する因子での細胞の処理が挙げられる。さらに他の実施形態では、細胞は、相同組み換え経路を誘導するDNA損傷剤で処理する。
本発明のさらなる実施形態は、本明細書に記載されるとおり、配列変更オリゴヌクレオチドの供給に加えて、遺伝子編集および修復を改善するように設計されたベクターを細胞に供給する工程を意図する。これらのベクターは本明細書を通じて、「遺伝子修復ベクター(Gene Repair Vector)」と呼ばれるものとする。遺伝子修復ベクターのいくつかの例としては、限定はしないが、PCRフラグメント、一本鎖DNAを生成し、これが次に遺伝子編集を指向するウイルス、遺伝子編集を促進する分子を生成する二本鎖DNAフラグメント、遺伝子編集を促進するように設計されるプラスミド分子、および遺伝子修復を促進するようにタンパク質を阻害するために用いられるRNAiもしくはsiRNAが挙げられる。この遺伝子修復ベクターは、当該分野で公知の任意の方法によって外因的に細胞に追加されてもよい。このような遺伝子修復ベクターの使用のいくつかの例は、その開示がその全体として参考によって本明細書に援用される以下の引用文献に見出すことができる:Kayら、Viral Vectors for Gene Therapy:The Art of Turning Infectious Agents into Vehicles of Therapeutics,Nature Publishing Group(2001);Colosimoら、Targeted Correction of a Defective Selectable Marker Gene in Human Epithelial Cells by Small DNA Fragments,Molecular Therapy,第3巻、第2号(2001年2月);Majumdarら、Gene Targeting by Triple Helix−Forming Oigonucleotides,Ann.N.Y.Acad.Sci.,1002:141〜153(2003);Majumdarら、Cell Cycle Modulation of Gene Targeting by a Triple Helix−Forming Oligonucleotide;The Journal of Biological Chemistry,第278巻、第13号、頁11072011077(2003年3月);H.D.NickersonおよびW.H.Colledge,A Comparison of Gene Repair Strategies in Cell Culture Using a lacZ Reporter System,Gene Therapy,10,1584〜1591(2003);P.A.Olsenら、Branched Oligonucleotides Induce in vivo Gene Conversion of a Mutated EGFP Reporter,Gene Therapy,10,1830〜1840(2003);H.Nakai.ら、Pathways of Removal of Free DNA Vector Ends in Normal and DNA−PKcs Deficient SCID Mouse Hepatocytes Transduced with rAAV Vectors,Human Gene Therapy,第14巻、第9号、871〜881(2003年6月)。
(キット/検索ツール)
本発明のさらなる実施形態は、細胞、無細胞抽出液、または細胞修復タンパク質、OGDA(またはその等価物)の効率を増大するとして本明細書に開示される因子から選択された少なくとも1つの因子、ならびに核酸標的部位で所望の配列変更を果たし得る少なくとも1つの配列変更オリゴヌクレオチドを含む組成物およびキットである。ある実施形態では、この組成物またはキットは、配列変更が選択性の表現型を付与する、少なくとも1つのオリゴヌクレオチドの核酸標的配列を含む核酸分子を含む。
本発明の組成物またはキットのための細胞、無細胞抽出物または細胞修復タンパク質は、任意の生物体由来であってもよい。本発明の組成物およびキットは、細胞、無細胞抽出物、または細胞修復タンパク質の任意の組み合わせを含んでもよく、そしてこの細胞、無細胞抽出物、または細胞修復タンパク質は、同じ生物体由来であっても、異なる生物体由来であってもよい。用いられ得る細胞修復タンパク質としては、例えば、RAD52上位群、ミスマッチ修復群、またはヌクレオチド切り取り修復群由来のタンパク質が挙げられる。ある実施形態では、細胞、無細胞抽出物、または細胞修復タンパク質は、真核生物細胞もしくは組織であるか、またはそれに由来する。ある実施形態では、真核生物細胞は真菌細胞、例えば、酵母細胞である。他の実施形態では、この細胞は植物細胞、例えば、トウモロコシ、コメ、コムギ、オオムギ、ダイズ、綿、ジャガイモまたはトマトの細胞である。他の例示的な植物細胞としては、本明細書のいずれかに記載される細胞が挙げられる。ある実施形態では、このキットは、OGDA(またはその等価物)の効率を増大すると本明細書に記載される因子から選択される少なくとも1つの因子を含む。ある実施形態では、このようなキットはまた、使用の説明書を含む。
本発明の他の実施形態は、核酸分子であってその核酸配列が本発明の方法に従って、または本発明の組成物もしくはキットを用いて変更されている核酸分子を含むキットに関する。ある実施形態では、本発明は、核酸分子であってその核酸配列が本発明の方法に従って、または本発明の組成物もしくはキットを用いて変更されている核酸分子を含む細胞を含むキットに関する。ある実施形態では、この核酸分子は、以下:哺乳動物人工染色体(MAC)、P−1ベクター由来のPAC、酵母人工染色体(YAC)、細菌人工染色体(BAC)、植物人工染色体(PLAC)、プラスミド、ウイルスまたは他の組み換えベクターからなる群より選択される。
(薬学的組成物)
精製されたオリゴヌクレオチド組成物は、培養物中の細胞を浸すために、培養物中の細胞への微量注入のために、そしてヒトまたは動物への静脈内投与のために適した薬学的組成物として慣用的な手順に従って処方され得る。代表的には、細胞投与のため、またはヒトを含む動物への静脈内投与のための組成物は、無菌の等張性の水性緩衝液中の溶液である。必要に応じて、この組成物はまた、可溶化剤および注射部位の疼痛を和らげるための局所麻酔薬、例えば、リグノカインを含んでもよい。一般には、この成分は、別々にまたは単位剤形に一緒に混合されて、例えば、乾燥した、凍結乾燥の粉末または水なしの濃縮物として供給される。この組成物は、活性因子の量を活性単位で示している、アンプルまたは小袋(sachette)などの密封してシールされた容器に保管されてもよい。この組成物が注入によって投与される場合、この組成物は、滅菌の薬学的等級の「注射用水」または生理食塩水を含む注入ボトルで分注されてもよい。この組成物が注射によって投与されるべき場合、滅菌注射用水または生理食塩水のアンプルが提供されてもよく、その結果この成分は投与の前に混合され得る。
本発明の薬学的組成物は、本発明の方法において用いられるオリゴヌクレオチド、およびその薬学的に受容可能な塩を、薬学的に受容可能な成分、賦形剤、キャリア、アジュバントまたはビヒクルとともに含む。
本発明のオリゴヌクレオチドは好ましくは、注射用組成物の形態で被験体に投与される。この組成物は好ましくは、非経口的に、すなわち、静脈内に、動脈内に、クモ膜下腔内に、間質内にまたは腔内に投与される。本発明の薬学的組成物は、他の診断または治療因子と同様の方式でヒトを含む哺乳動物に投与され得る。投与されるべき用量、および投与の形態は、年齢、体重、性別、被験体の状態および遺伝的要因を含む種々の要因に依存し、そして最終的には、本明細書において記載されるような種々の投与量の実験的決定に引き続いて医療従事者によって決定される。一般には、標的された核酸配列変更および治療有効性に必要な投与量は、約0.001〜50,000μg/kg、例えば、宿主の細胞または体重あたり1〜250μg/kg、または30〜60μMの濃度におよぶ。
細胞投与のためには、核への直接注入、微粒子銃照射(biolistic bombardment)、エレクトロポレーション、リポソーム転移およびリン酸カルシウム沈殿が用いられ得る。酵母では、酢酸リチウムまたはスフェロプラスト形質転換も用いられてもよい。1方法では、投与は、リポソーム転移化合物、例えば、DOTAP(Boehringer−Mannheim)、LipofectamineTM2000(InvitrogenTM)またはリポフェクチンのような等価物で行われる。例えば、用いられるオリゴヌクレオチド対の量は、100,000個の細胞あたり3μgのDOTAPに約500ナノグラムであるか、または1,000,000個の細胞あたり1μLのLipofectamineTM2000とともに約1μgである。エレクトロポレーションに関しては、本明細書に記載の方法に従って適切な配列という観点から遺伝子変更の効率を改善するために増大され得る、適切な用量の範囲は、エレクトロポレーションされるべき百万個の細胞あたり20ナノグラム〜30μgというオリゴヌクレオチドである。
矛盾しない場合、本発明の方法に従うODSAを増強する因子は、遺伝子変更の効率を増大するために、精製されたオリゴヌクレオチドの薬学的組成物に組み込まれてもよいし、またはその組成物とともに配合されてもよい。
本発明をよりよく理解し得るために、以下の実施例を示す。これらの実施例は、例示のみの目的であって、いかなる方法でも本発明の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。
(実施例1)
(哺乳動物細胞株における遺伝子変更を定量するためのDLD−1−1システム)
細胞株および培養条件:DLD−1細胞は、ATCC(American Type Cell Culture,Manassas,VA)から入手した。DLD−1を組み込んだクローン1(DLD−1−1)は、2004年11月10日出願の同時係属の米国特許出願第10/986,418号(「Mammalian Cell Lines for Detecting,Monitoring,and Optimizing Oligonucleotide−Mediated Chromosomal Sequence Alteration」)に記載のとおりeGFP遺伝子に単一点突然変異(TAG)を含むベクターpEGFP−N3の組み込みによって得られる。細胞は、2mMのグルタミン、4.5g/Lのグルコース、10mMのHEPES、1mMのピルビン酸ナトリウムを含み、そして10%のFBSを補充されたRPMI 1640培地で増殖する。細胞は、5%CO、37℃で、そして200μg/mLのG418(Gibco,Invitrogen Co.,Carlsbad,CA)中での選択下で維持する。
eGFP遺伝子補正:10%FBSを補充された完全培地中で増殖した細胞をトリプシン処理して、遠心分離によって回収する。細胞ペレットは、無血清培地中で1×10細胞/100μLの密度に再懸濁して、4mmのギャップのキュベット(Fisher Scientific,Pittsburgh,PA)に移す。次いでこのオリゴヌクレオチドを、4μMの濃度で添加して、細胞を、BTX ECM830装置(BTX,Holliston,MA)を用いてエレクトロポレーションする(LV,250V,13msec,2パルス、1秒間隔)。次いで細胞を、10%FBSを補充された新鮮培地を含む60mmのディッシュに移して、FACS分析のための回収の前に37℃で48時間インキュベートする。
フローサイトメトリー分析:補正された細胞のeGFP蛍光を、Becton Dickinson FACSCaliburTMフローサイトメトリー(Becton Dickinson,Rutherford,NJ)によって測定する。細胞をエレクトロポレーションの48時間後に回収して、FACS緩衝液(0.5%のBSA、2mMのEDTA、2μg/mLのヨウ化プロピジウムを含有するPBS)中に再懸濁する。さらに詳細には、このプログラムは、適切な細胞サイズに設定され(前方散乱対側方散乱)そして、単独細胞の集団が分析のためにゲートされる。負のコントロール(マイナスPI、マイナスGFP)を用いて、バックグラウンド蛍光は、FL1(GFP)およびFL2(PI)の電圧を調節することによりドットブロットの10デケイドに細胞を配置することによって設定した。次いでこの組成物を、PIを含まないGFPコントロールサンプルを用い、FL1パラメーターに向かうシグナルを生じる補償を増大するマルチ蛍光実験について設定する。最終的に、最終のコントロール、PIおよびGFPなしを用いて、FL2パラメーターに向かうシグナルをもたらす補償を増大する。50,000個の細胞の各々のサンプルを分析して、GFP陽性でかつPI陰性であるそれらの細胞を、補正された細胞としてスコア付けする。
次いで、全体の集団における変換された細胞の割合をCellQuestTM(Becton Dickinson)およびGFP/PIプログラムによって算出する。補正効率は、各々の実験において分析した細胞の数(通常、50,000個の細胞)でeGFP陽性細胞の数を割ることによって決定する。各々のクローンを3回試験して、補正効率の標準偏差を決定し、この標準偏差はMicrosoft Excelを用いて算出する。エレクトロポレーションの2日後、および8日後に得た細胞の共焦点画像に基づいたコントロール実験によって、同時係属の米国特許出願第10/986,418号(上記を参考のこと)に考察されるとおり、遺伝子変更は遺伝性であることが示される。
図3は、未処理であるか、または補正性のオリゴヌクレオチドEGFP3S/72NTで処理したDLD−1−1のついてのフローサイトメトリー分析からのヒストグラム(ドットプロット)を示しており、ここでY軸上はヨウ化プロピジウム蛍光であり、そしてX軸上はeGFP蛍光である。このドットプロットは、下記のとおり4つの四分円に分けられる。LR(下方右側の四分円):eGFP発現を有する生きた細胞の数;LL(下方左側の四分円):eGFP発現なしの生きた細胞の数;UR(上方右側の四分円):eGFP発現を有する死んだ細胞の数;UL(上部左側の四分円):eGFP発現なしの死んだ細胞の数。フローサイトメトリーは、蛍光発光のために細胞を個々にクエリーし得、そしてまた群の統計学を提供し得、従って、共焦点顕微鏡検査を用いる初期のアッセイに対して整合性に優れている。さらに、FACSによって検出可能であるeGFPのレベルはしばしば、共焦点可視化では検出できない。
細胞周期分析のために、1×10個の細胞を、薬物での処理の24時間前に、そして処理の24時間後にプレートして、細胞をトリプシン処理して、300μlの冷PBSに再懸濁し、700μlの冷エタノールを添加することによって固定する。次いで、細胞を、500g/mlのRNaseAおよび2.50g/mlのヨウ化プロピジウムを含有する1mlのPBSに再懸濁して、DNA含量について分析する。活発に複製しているフォークをプロセシングする細胞の数は、製造業者の示唆に従ってBrdU染色(In Situ Cell Proliferation Kit,FLUOS,Roche Diagnostics,Indianapolis,IN)によって決定する。
パルス・フィールドゲル電気泳動:HUまたはVP16での処理の24時間前に、1×10個の細胞を組織培養フラスコにプレートして、その後にHUまたはVP16を用いるDNA損傷の誘導を24時間行う。細胞はトリプシン処理によって遊離して、アガロース挿入物中に溶解する。アガロース挿入物を、0.5M EDTA−1%N−ラウロシルサルコシン−プロテイナーゼK(1mg/ml)中において、50℃で48時間インキュベートし、次いで1%アガロースゲル(Pulse−Field Certified Agarose,Bio−Rad,Hercules,CA)上への負荷の前にTE緩衝液中で4回洗浄し、パルス・フィールドゲル電気泳動によるDNA分離を、24時間行う(Bio−Rad,120°フィールドアングル、60〜240秒、切り替え時間4V/cm)。このゲルは臭化エチジウムで引き続き染色し、AlphaImagerTM2200(Alpha Innotech Corp.,San Leandro,CA)を用いて分析する。
結果:標的として変異eGFP遺伝子を用いて遺伝子修復活性をアッセイする。野性型遺伝子は、発色団領域においてアミノ酸67で変異しており、その結果緑色蛍光は、発現されるときに観察される。この変異によって、もともとチロシン残基をコードする部位(TAC)に終止コドン(TAG)が生じる。このeGFP遺伝子は、DLD−1−1として公知のクローン細胞株(クローン−1)を生成するpEGFP−N3ベクターを用いてDLD−1細胞へ組み込まれる(Huら、提出)。これらの細胞は、2〜4個のコピーの変異eGFP遺伝子を含むが、機能的なeGFPは生じない(下記を参考のこと)。
実験ストラテジーは、エレクトロポレーションによるDLD−1−クローン1細胞へのオリゴヌクレオチドの導入、それに続くその48時間後の補正されたeGFP遺伝子の表現型読み取りを包含する。補正性のオリゴヌクレオチド(EGFP3S/72NT)は、変異eGFPの非転写鎖に相補的であるが、コドン67の第3塩基における単独のミスマッチを生じるように設計された、72塩基長(72−マー)である(図1Aを参考のこと)。これは、FACSによって検出され得るeGFPの表現型発現を可能にするTAG→TACコドンの変換を指向する。図1Bは標的遺伝子の配列をまとめており、72−マーおよび非特異的な74−マーをコントロールとして用いる。オリゴヌクレオチドのエレクトロポレーションのタイミングに対する、ヒドロキシウレアまたはVP16のような特定の因子の添加の時間は下に記載する(図2を参考のこと)。
図3は、eGFPシステムの有用性および有効性を示す。クローン1細胞を、EGFP3S/72NTまたはHyg3S/74NTのいずれかでエレクトロポレーションして、遺伝子補正のレベルを、FACS分析によって48時間後に測定する。EGFP3S/72NTで処理した細胞の約1.2%がeGFP発現について陽性とスコアされるが、任意の所定の実験における補正の頻度は、0.8%〜1.4%まで変化することが観察される。細胞の集団を非特異的なオリゴヌクレオチドHyg3S/74NTを用いるか、または完全に相補性のオリゴヌクレオチドで処理する場合、コントロール(下方右側の四分円)では緑の蛍光は観察されない(データ示さず)。図1Bで呈示されるとおり、Hyg3S/74NTは、変異eGFP標的部位に対する直接の配列相補性は有さない。
(実施例2)
(配列変更効率を増大する細胞周期の調節)
早期S期で細胞を停止させるミモシン、および血清枯渇を用いてDLD−1−1細胞の集団を同調させることによって、ODSAの効率に対する細胞周期の効果を評価する。細胞を、100mmのディシュあたり0.8×10個の密度で播種し、20時間結合させ、次いで0.2%ウシ胎仔血清(FBS)を含有するRMPI−1640培地中で培養する。これらの細胞を48時間増殖させ、その後に0.1mMのミモシン(Sigma,St.Louis,Missouri,USA)で20時間処理する。細胞をPBSを用いて2回洗浄し、10%のFBSを補充した新鮮な培地に種々の時点で遊離させて、その後にエレクトロポレーションする。細胞をPBSで1回リンスし、トリプシン処理して、遠心分離によって回収して、10μg/mlのヨウ化プロピジウム、0.03%のTriton−100および1mg/mlのRNaseを含有するPBSに再懸濁する。細胞を室温で1時間インキュベートして、その後にFACSCaliburTMフローサイトメトリーによってDNA含量の測定を行った。細胞周期の種々の段階での細胞の割合は、ModFitLMTMソフトウェア(Verity Software House,Inc.,Topsham,Maine,USA)によって決定する。
オリゴヌクレオチド指向性配列変更:得られた同調された細胞の集団および非同調性のコントロールを、10%FBSを補充した完全培地中で増殖させ、トリプシン処理して、1500rpmで5分間の遠心分離によって回収する。細胞ペレットを、新鮮な無血清培地中で、2×10細胞/100μlの密度で再懸濁する。全体的な細胞懸濁液を、20μgのEGFP/72NTと混合して、4mmのギャップのキュベット(Fisher Scientific,Pittsburgh,Pennsylvania,USA)に移し、その後に、期間中に各々13msの2つの250Vのパルスであって、パルス間1秒、単極のエレクトロポレーションを行う。
フローサイトメトリー分析:補正されたeGFP遺伝子を有する細胞を、フローサイトメトリーによって検出可能な蛍光を示す。細胞をPBSで1回洗浄し、トリプシン処理によって収集し、遠心分離して、1mlのFACS緩衝液(0.5%BSA,2mM EDTA、pH8.0、2μg/mlのヨウ化プロピジウム)に再懸濁する。細胞を、室温で30分間インキュベートする。変換された細胞の割合を、Becton Dickinson FACSCaliburTMフローサイトメーター(Becton Dickinson,Rutherford,New Jersey,USA)を用いて測定する。変換された細胞の頻度は、CellQuestTMおよびGFP/PIプログラムによって算出する。
図4は、エレクトロポレーションの時間でもある、細胞周期における細胞中の細胞の分布を停止からの解放後の時間の関数として示すヒストグラムを示す。各々のパネルは、観察される細胞の数を、その細胞からのヨウ化プロピジウム蛍光の強度の関数としてプロットする。遺伝子補正は、その48時間後に測定する。結果の数値的なまとめは、図4の表に示す。補正効率(C.E.)は、S期における細胞の割合が35%(非同調性細胞)から86%(増殖停止からの解放後8時間)に2.5倍に増大するにつれて、0.92%から2.29%に2.5倍に増大する。これらの結果は、S期の細胞の割合と遺伝子修復の効率との間の強い相関を表す。
(実施例3)
(HU,VP16またはチミジンで処理した哺乳動物細胞株における遺伝子修復)
DLD−1−1細胞は、細胞が以下のようにHU、VP16またはチミジンのいずれかで前処理されることを除いて、実施例1にまとめられた遺伝子修復プロトコールに供される。
ヒドロキシウレア、VP16またはチミジンを用いたDLD−1−1細胞培養物の処理:細胞は、ヒドロキシウレア(HU)(0、0.3、1、2、5mM)またはエトポシド(VP16)(0、0.5、1、3、10μM)の添加の前に0.8×10個の細胞の密度で24時間播種する。500mMのHU(Acros Organics,Morris Plains,NJ)ストック溶液は、蒸留水中で調製し、そしてVP16(Sigma,St.Louis,MO)の50mMのストック溶液を、DMSO(100%)中で調製する。ヒドロキシウレアおよびVP16を、示した濃度で細胞に添加し、処理の時間は、それぞれ0〜45時間および0〜24時間に変える。他に示さない限り、細胞をHUまたはVP16で24時間処理する。
次いで、細胞を、実施例2に記載されるように、補正性のオリゴヌクレオチドEGFP3S/72NTの存在下でエレクトロポレーションして、FACSによって分析して、遺伝子修復を受けている細胞の割合を反映する、eGFP蛍光を示す割合を決定する。
HUおよびVP16によって生じるDNA損傷:本発明者らの実験で用いられるHUおよびVP16の濃度範囲は、ほとんどの場合二本鎖DNA破壊であるDNA損傷を誘導するために前に報告されている。しかし、これらの結論は、DLD−1株ではなく、他の細胞株で行われる実験から導かれた。従って、本発明者らは、パルス・フィールドゲル電気泳動(PFGE)によって、DLD−1細胞における二本鎖破壊の形成および/または蓄積をモニターして、HUおよび/またはVP16の添加から生じるDNA損傷の程度を評価する。非同調性に増殖しているDLD−1細胞の培養物を種々の濃度のHUまたはVP16とともに24時間インキュベートし、次いでDNA破壊をPFGEによって評価する。図5に示されるように、損傷されたDNAの量の進行性の増大は、HUまたはVP16の濃度の関数として観察される。重要なことに、二本鎖破壊は、遺伝子修復の頻度を刺激することが偶然に一致して示されているHUおよびVP16の濃度で見出される。
HUおよびVP16の存在下において増大した補正効率:図6によって、1mM HUで処理されたDLD−1−1細胞は、未処理細胞におけるわずか約1%の頻度と比較して、2.2%の頻度で遺伝子修復を受けることが示される。DNA損傷が増大した遺伝子修復効率の原因であるという仮説と一致して、HUは、1mMで二本鎖破壊を誘導することが公知である。図6はまた、3μM VP16で処理されたDLD−1−1細胞が6%を超える頻度で遺伝子修復を受けることを示す。図6および7における星印は、(ゼロ)コントロールからの統計学的に有意な相違を示すポイントを示す:星1つ(*)=p値<0.05であるが、星2つ(**)=p値<0.01である。
図6の下側パネルに例示されるとおり、ヨウ化プロピジウムで染色されたDLD−1−1細胞集団でのFACSの結果によって、エレクトロポレーションの前に細胞をHUまたはVP16で処理する場合、生存度は適度に低下されることが示される。
最適のHU処理時間を評価する実験では、細胞を24時間増殖させ、次いで1mMのHUを用いて15時間、24時間、30時間、35時間、40時間または45時間処理した。図7に示されるとおり、遺伝子修復効率は、HU処理が30〜35時間まで増大するにつれて増大し、次いでプラトーに達する。3μM VP16での同様の実験によって、補正の効率は、ほぼ12時間でプラトーになり始めることが示される。
HUおよびVP16による細胞周期調節:細胞周期を調節するいかなる他の試み(例えば、実施例4にさらに考察されるようなミモシン処理またはDTB)もない場合、細胞周期を通じた、処理されたDLD−1−1細胞の分布に対するHUおよびVP16の効果を、以下に決定する。DLD−1−1細胞を1mM HU、3μM VP16で処理するか、または24時間未処理のままとする。次いで得られた細胞をFACSによって分析するか、またはS期の細胞の割合を、BrdU取り込みによって決定する。図8は、実験の両方のセットの結果を示す。FACSの結果によって、HU処理は、S期の細胞に相当する、最も左側のピークへの細胞の実質的なシフトを生じること、およびVP16処理はさらに穏やかなシフトを生じることが示される。BrdUデータによってまた、HUがS期における細胞の割合を49%から77%に増大すること、そしてVP16がその割合を56%に増大することが示される。
(実施例4)
(HU、VP16またはチミジンで処理された哺乳動物細胞株における遺伝子修復に対する細胞周期の効果)
1セットの実験では、DLD−1−1細胞をエレクトロポレーションの前に二重チミジンブロック(DTB)プロトコールを用いて細胞周期に同調すること以外は、この細胞を、実施例3にまとめられた遺伝子修復プロトコールに供する。
二重チミジンブロック:二重チミジンブロックによって細胞をG1またはG1/Sの境界で同調する。任意の因子(HUなど)の添加の24時間前、細胞を100mmのディッシュあたり0.5×10細胞の密度でプレートし、続いて2mMのチミジン(Sigma)中で16時間インキュベートして、洗浄し、新鮮培地中に10時間遊離させ、次いで2mMのチミジン中でさらに15時間インキュベートする。
ヒドロキシウレア、VP16またはチミジンでのDLD−1−1細胞培養物の処理:第二のチミジンブロックを洗い流すことによって二重チミジンブロックからDLD−1−1細胞を遊離させた後、この細胞を、1mMのHU、3μMのVP16または10mMのチミジンの存在下でさらに24時間インキュベートする。次いでFACSを用いて各々の集団から50,000個の細胞を分析して、実施例1に記載のとおり、機能的なeGFPを発現する細胞の割合を決定する。
図9Bは、補正効率を、細胞の同期(二重チミジンブロックされた)および非同期集団の両方について処理の関数として示す。細胞のコントロール集団を、いずれの他の因子も非存在下でEGFP3S/72NTとともにエレクトロポレーションして、非同調性細胞において約1.5%、または同調性細胞において約2.5%の補正効率を得る。HUは、非同調性細胞の補正効率を1.5%からほぼ3%に増大し、そしてこれは、同調された培養物において遺伝子補正をさらに有意に刺激し、頻度を約2.5%〜9%より大きくまで増大する。対照的に、同調化では、VP−16処理細胞の補正効率を増大しない。チミジンは、非同調性細胞では補正効率を増強しないが、細胞の同調性集団において7%を超えて効率を増大する。
(実施例5)
(遺伝子修復に対するMMSおよびブレオマイシンの効果)
オリゴヌクレオチド指向性遺伝子変更に対するMMSおよびブレオマイシンの効果を以下のように決定する。DLD−1−1細胞を1プレートあたり2×10細胞で100mmディッシュに播種し、直ちに0.2μMのMMSまたは0.75μMのブレオマイシンで処理する。次いで約50%コンフルエントになるまで、この細胞を24時間増殖させて、PBSで2回洗浄する。実施例1に記載のように、細胞の各々の集団の一部を、パルスフィールド電気泳動によるDNA分析のために取り出す。次いで、補正性のオリゴEGFP/72NT(10μg)を添加して、細胞を実施例3のようにエレクトロポレーションする。次いで細胞を分析して、実施例3に記載されるように補正されたeGFP遺伝子を有する細胞の割合を決定する。
図10は、ブレオマイシンおよびMMS標的細胞由来のDNAを有するレーンにおける下側のバンドを示しており、これは二本鎖破壊から生じるDNAフラグメントに相当し、これによってこのアッセイの条件下でのDLD−1−1細胞に対してMMSおよびブレオマイシンがDNA損傷を発揮することが示される。図11Aは、遺伝子補正がグラフおよび表の形態の両方で生じることを示す。MMS処理は、非MMS処理コントロールに比較して補正効率を2倍にし、オリゴ処理した細胞よりもかなり大きい。細胞死は、このアッセイの条件下のMMS処理によっては増大されない。
4mMのカフェインをMMSの代わりにまたはMMSに加えて用いること以外は、上記で報告したMMS実験と同様にさらなる実験を行う。この結果によって、カフェインを単独で用いた場合、遺伝子修復の効率を増大することについて無効であり、そしてそうでなければMMSによって生じる増強を完全に抑制し得ることが示される。
(実施例6)
(遺伝子修復に対するddCおよびカフェインの効果)
遺伝子変更効率に対するジデオキシシチジン(ddC)およびカフェインの効果を、DLD−1−1細胞を用いる標準的な遺伝子変更手順の間に種々の時点でddCおよびカフェインを添加することによって試験し、そしてその結果を比較する。カフェインは、プレインキュベーションの24時間の間に含まれてエレクトロポレーションの前に洗い去られるか、またはカフェインはエレクトロポレーションの後にのみ添加される。ddCが添加される場合、ddCはプレインキュベーションの24時間の間にのみ添加される。
哺乳動物DLD−1−1細胞(実施例1にさらに記載される)を、RPMI+中で維持して、このとき、細胞をエレクトロポレーションする場合、またはその後24時間はG418が存在しないこと以外は、細胞の各連続継代ではG418を200μg/mlまで添加する。RPMI+は、10%のウシ胎仔血清(FBS)、2mMのL−グルタミン、1mMのピルビン酸ナトリウム、10mMのHEPESおよび0.45%のD(+)グルコースを補充されたRPMI培地1640を含む。細胞を1または2つの100mMディッシュ中で約90%コンフルエンシーになるまで増殖させる。次いで細胞をトリプシン処理して、カウントして、1〜2×10個の細胞を新しい100mMディッシュ(各々のサンプルについて1)にプレートする。平行した実験では、ddCは、0、100、250、500または750μMのいずれかの最終濃度まで培地に添加して、その細胞を24時間インキュベートする。平行の実験では、この24時間のインキュベーションの間、カフェイン(4mM)を750μMのddC処理した細胞に添加する。トリプシン処理によって細胞をプレートから収集し、スピンダウンして、1mLあたり2×10個の細胞の濃度までRPMI 1640(血清なし)に再懸濁する。
次いでBTX ECM830方形波エレクトロポレーションデバイスを用いてエレクトロポレーションを行う。eGFP遺伝子における変異を補正するためのオリゴヌクレオチドを、上記で考察したとおり、エレクトロポレーションの前に細胞に添加する。エレクトロポレーションは、100μlの容積中に2×10個の細胞を用いて、4mmのギャップのキュベットで行う。この細胞を、各々13msec続く、2つの250Vパルスに曝す。エレクトロポレーション後、500μlのRPMI+をキュベットに添加して、その内容全体を、2.5mLの予め温めた培地を含む60mMディッシュに移す。
カフェインで事前に処理していない細胞については、エレクトロポレーションの直後(「回復期(recovery phase)」)に60mMのディッシュ中に4mMの最終濃度まで培地にカフェインを添加する。カフェインで事前処理した細胞については、回復期の間にカフェインの添加はしない。回復の24時間後、その培地を交換して、カフェイン(最終濃度4mM)をこの培養物に添加して戻す。回復の48時間後、サンプルをFACSによって読む:eGFP蛍光は、遺伝子変更(補正)を反映しており、そしてヨウ化プロピジウム(PI)染色は、細胞生存度を反映する。
実験のさらなる平行セットをカフェインについての記載どおり、ただし4mMのカフェインの代わりにバニリンを最終濃度1mMまで添加して行う。別の平行セットの実験は、回復期にカフェインが存在する時間の長さを変えて行う。
図13Aは、カフェインの非存在下におけるddCの用量曲線を示す。約2倍〜3倍という補正効率における最大増大が500μMのddCで観察される。
図13Bによって、カフェインがエレクトロポレーションの前に添加される場合、オリゴヌクレオチド指向性遺伝子補正を阻害すること、ただしカフェインは回復期(すなわち、エレクトロポレーション後の期間)に添加される場合、補正を刺激することが示される。カフェインによる遺伝子補正の阻害は、前処理の間にddCと組み合わせた場合増強される。図13Cに図示されるとおり、これらの効果のいずれも、1mMのバニリンをカフェインの代わりに用いる場合はみられない。
図13Dは、回復期におけるカフェインでの細胞の処理が長いほど、試験される時間の範囲(すなわち、カフェイン処理なし、12時間、24時間または48時間)にわたる補正効率の増強が大きくなることを示す。図13Dにおける全ての実験は、ddCの前処理なしである最も左側のデータバーを除いて、プレインキュベーションの24時間において500μM ddCを含む。
(実施例7)
(ddC、カフェイン、AraC、アフィジコリンおよびp53の遺伝子修復に対する効果)
(ジデオキシシチジンの添加は補正頻度を刺激する)
複製フォークを失速させることが、標的された遺伝子修復の頻度を増大するか否かを決定するために、オリゴヌクレオチドをエレクトロポレーションする24時間前に細胞培養培地にddCを添加する。実際のところ、ジデオキシシチジンの添加は、オリゴヌクレオチド媒介性の遺伝子修復に用量依存性の増大を生じる(図16)。修復を刺激するための最も有効な濃度は、細胞毒性をもたらす、より高レベルで500μM〜750μMであることが見出されている(データ示さず)。500μMおよび750μMのレベルは、コントロールから統計学的に有意な相違を有することが見出される(図16)。
(ジデオキシシチジンはS期の延長を生じるが、ジデオキシイノシンは生じない)
オリゴヌクレオチド添加の時点での、未処理の細胞の細胞周期分析およびBrdU取り込み分析によって、細胞の35%がS期であり、そして47%がDNA塩基を活発に取り込んでいる(活発なフォーク)ことが明らかになる(図17Aおよび図17B)。500μMのddCでの処理は、S期の細胞の数を70%まで増大することが示され、このことはddCが予想どおり細胞がS期に費やす時間を延長することを示している(図17A)。さらに、複製フォーク失速が生じているという証拠は、BrdU取り込み実験によって得られるデータから明らかである(図17B)。ddCの添加(500μMまで)によって、複製フォークの一時的な失速の特徴であるBrdU取り込みの量の増大(71.8%)がもたらされる。
比較の目的のために、本発明者らは、ジデオキシイノシン(ddI)を添加するが、このddIとは、DNAへ取り込まれる前に、最初に細胞によってその活性型2’,3’−ジデオキシアデノシン5’トリホスフェート(ddATP)に代謝されなければならないddCのような連鎖停止剤である。細胞周期分析およびBrdU取り込みによって測定される場合、ddIは、S期にある細胞数の増大も示さず、活発に複製しているフォークの数の増大をもたらすこともない(図17A、図17B)。実際は、ddIで処理した細胞は、細胞周期またはBrdU取り込みアッセイにおいて、非処理細胞との相違を示さず、このことは、ddIが複製プロセスに検出可能な影響をほとんど有さないことを示唆している。
対照的に、1−β−D−アラビノフラニシルシトシン(AraC)は、その三リン酸型に変換された後に、伸長しているDNA鎖に極めて効率的に組み込まれることが公知である。AraCは、フォークが通過できない付加物であるトポイソメラーゼI切断複合体をDNA上に作製することによって、複製フォーク進行を停止する。
AraCで処理した細胞の細胞周期分析によって、S期の細胞数はAraCでの処理の24時間後に、未処理細胞における35%から26%まで低下することが明らかになる。この減少はそれ自体では十分ではないようである(図17A);しかし、細胞集団に対するAraCの効果がBrdU取り込みによってアッセイされる場合、活発にDNA塩基を取り込んでいる細胞の数は実質的にゼロであるとみられる(図17B)。従って、AraCは、通常、複製およびS期に対するさらに一過性の効果を有するddCの作用と対照的に、伸長をブロックして、フォークの動きの再スタートを妨げることが示される。
(ジデオキシイノシンもAra−Cも遺伝子修復活性を刺激しない)
ジデオキシイノシン(ddI)の種々の用量をDLD−1細胞に添加する場合、遺伝子補正における有意な増大は観察されない(図18A)。250μMのddIレベルでは、遺伝子修復における統計学的に有意でない増大が観察され、このことは、少数の複製フォークが失速されているかもしれないことを示唆する。しかし、事実であれば、この数は、細胞周期分析によってまたはBrdU取り込みアッセイによって検出されるのに十分に高くはないように思われる。
ddIは、その活性型2’,3’−ジデオキシアデノシン5’−三リン酸塩への細胞内代謝を要することが公知である;これが効率的に生じない場合、DNAへの取り込みは生じ得ない。結果として、複製フォークは、失速も減速もしない。理論によって束縛されることは意図しないが、ddI支持体の刺激性の活性の欠失によって、ddCは伸長している鎖へ組み込まれることによって、遺伝子修復に対して直接でかつある程度特異的な効果を有し得るという概念が支持される。
同様に、AraCは、広範な濃度を通じて(5μM〜250μM)補正レベルの増強をもたらさない(図18B)。20μMおよび250μMでの細胞周期分析によって、S期の細胞におけるわずか9%の減少が明らかになるが、BrdU取り込みのレベルは、DNA合成が停止されていることを示す(図17A、図17B)。これらの条件下では、細胞周期は効率的に停止されて、細胞は薬物が洗い流されるまでDNA合成を開始しないようである。いずれの場合にも、複製フォークはエレクトロポレーションの時点ではもはや活性ではない。従って、AraCは複製フォークの失速には極めて効果的であるが、補正の増強には効果的でなく、このことは遺伝子修復活性には、オリゴヌクレオチド添加の時点で活発に複製しているテンプレートとともにS期の細胞を要するということを意味する。
(遺伝子修復活性は、複製のAraCブロックからの遊離の際に刺激される)
上記のとおり、AraCで処理された細胞で観察される刺激の欠失は、S期を通過する細胞の数の減少または活発に複製しているフォークの非存在によって説明され得る。事実ならば、細胞がAraCブロックから解放されて、複製フォークがオリゴヌクレオチドのエレクトロポレーションの前に再スタートすることを可能にされる場合に、遺伝子修復頻度の上昇が出現すると本発明者らは予想し得る。本発明者らは、AraCを用いて細胞を24時間処理すること、次いで特定の時間で薬物を洗い流すことによってそれらを解放させることによってこの予測を試験する。本発明者らは、エレクトロポレーションの時点でのBrdU取り込みのレベルを測定し、そして48時間後の補正の頻度を評価する。
図18Cおよび図18Dに示されるとおり、BrdU取り込みにおけるわずかな上昇が解放後2時間内に観察され、このことは活発に複製しているフォークの再生を示す。同時に、本発明者らは、遺伝子修復活性における上昇を観察し、これは次に解放後8時間で最大レベルに達する。この取り込みレベルおよび遺伝子修復レベルは、広範な時点にわたって相関しているようである。従って、S期の細胞の数の増大および活発に複製しているフォークの数の増大は、DLD−1細胞における遺伝子修復のレベルを増大すると考えられる。
DNA複製の別のインヒビターであるアフィジコリンを用いる場合、同じ結果が観察される(データ示さず)。
本実施例から遠いこのように用いられる実験プロトコールは、eGFPの変異の修復および最大発現を可能にするために、エレクトロポレーション後48時間の回復期間を含む。これによって、AraCによってブロックされ、そして解放直後(図18Cおよび図18Dにおけるゼロ時点)にエレクトロポレーションされた細胞が依然として遺伝子修復を受けられる(補正は48時間の回復期間の間に生じる)理由が説明され得る。
本発明者らは、複製が48時間の回復期間にブロックされる場合に補正が消失するか否か疑問に思った。
この疑問に取り組むために、エレクトロポレーション後、AraCを種々の時間、培養物中に添加する。図18Eにおける表でわかるように、AraCをエレクトロポレーション後任意の期間、培養物に添加する場合、補正レベルは実質的に低下する。S期の細胞数および活発にBrdUを取り込んでいる細胞の数は、遺伝子修復活性の低下と相関するため、本発明者らは、遺伝子修復に対して最も従順な細胞は、活発な複製の期間の間にオリゴヌクレオチドを含む細胞であることを示唆する。エレクトロポレーション後のAraCの2時間〜48時間の補正レベルに相違はないため、このデータは、エレクトロポレーションの直後の時間の間に活発な複製が最も重要であることを示唆する。
従って、遺伝子修復活性の最大レベルについては、活性な複製の期間の間にオリゴが存在すべきであると思われる。補正の最高レベルは、より多くの細胞が同時にS期に入るか、または細胞がS期でさらに長時間費やす場合に得られる。
本発明者らは、種々の機構によってDNA合成をブロックする複製伸長の別のインヒビターを用いてこの実験を繰り返す。アフィジコリン(6μM)をこの反応物に、エレクトロポレーションの2、6および24時間後に添加して、遺伝子修復の頻度を48時間後に測定する(図18E)。AraCでの結果と一致して、この反応の回復段階/エレクトロポレーション後段階におけるアフィジコリンの存在は、低レベルの補正を生じる。
(野性型p53は、ddCによって刺激された遺伝子補正レベルをブロックするが、変異体p53は頻度を増強する)
腫瘍サプレッサーp53は多数の遺伝子をトランス活性化し、細胞周期チェックポイントを調節し、そしてアポトーシスのトリガー−スイッチとして機能し得る。近年では、相同組み換えに対するp53の抑制的な役割は、そのトランス活性化機能と独立して、同定されている。p53は、失速されたフォークに補充されて、複製プロセスにおける妨害に応答しているHR活性のレベルの上昇を抑制または邪魔する。興味深いことに、MEF細胞におけるオリゴヌクレオチド指向性修復のインビトロ研究によって、p53−/−の株はそのp53+/+対応物よりも高い補正レベルを示したことが示された。これらの結果によって、野性型p53の抑制活性は、おそらく複製フォークに対する結合というその調節性機能を通じて遺伝子修復反応に伸展し得る。
p53遺伝子のDNA結合ドメインは、p53タンパク質が相同組み換えを抑制する能力を失うように変異され得る;Rad51媒介性の鎖交換を阻害することおよび失速された複製フォークの分枝点移動を逆にすることはもはや不可能である。2〜3の変異体p53タンパク質、例えば、p53(175H)およびp53(273P)は、HRの抑制を排除するだけでなく、自然な、放射線誘導性のそして複製阻害誘導性のHRを実際に刺激もする。詳細には、p53(175H)は、G1チェックポイントコントロールの消失を示し、そしてp53(273P)変異は、p53Rad51相互作用に影響する。
失速された複製フォークは、遺伝子修復活性の刺激因子であると思われ、従って、本発明者らは、この効果が野性型のp53の作用によってブロックされるはずであると予想し得る。
遺伝子修復反応に対するp53およびその関連の変異体の効果を試験するために、本発明者らは、DLD−1細胞において野性型p53またはDNA結合ドメイン変異体[p53(175H、p53(273P)]の1つのいずれかを一時的に発現する。
p53構築物のタンパク質発現は、発現構築物のトランスフェクション後に、モノクローナルp53抗体であるPab1801を用いてウエスタンブロット分析によって確認する。各々のp53構築物は、CMVプロモーターによって駆動され、ほぼ同じレベルだが内因性のレベルを超えるp53タンパク質を発現する(図19A)。
野性型の発現構築物がddCで前処理された細胞に導入される場合、遺伝子補正のレベルの低下が観察される(図19B)。変異体p53(273P)の過剰発現は、補正のわずかな増大を示し、p53(175H)の発現は、補正のレベルの増強を示す(図19B)。DLD−1細胞は、1コピーの野性型p53対立遺伝子および1コピーの変異体p53遺伝子(残基Ser241Phe)を含むため、外因性の供給源由来の野性型p53の発現は、基礎的なレベルの野性型p53タンパク質をまだ有していない細胞株が有する補正の強力な阻害を有する可能性が高い。
これにもかかわらず、補正の統計学的に有意な減少が既に観察されている。さらに、変異体p53の発現は、内因性の野性型p53のレベルの効果を克服し得、そしてそのドミナントナガティブな(優性阻害)効果を通じて遺伝子修復活性を増強し得る。
まとめると、これらのデータによって、野性型p53は、一時的に失速された複製フォークの存在下において遺伝子修復の活性を下方制御することが示唆される。
(カフェインは遺伝子修復活性のジデオキシシトシン誘導性刺激を阻害する)
ddCが遺伝子修復の刺激因子として作用する機構は、後期S期を含むS期、およびHR経路がその最高レベルの活性を示す段階である早期G2期の延長に関与するようである。HRタンパク質の発現は、失速された複製フォークにおけるDNA損傷またはDNA合成の間に天然に生じる傷害に応答して上昇する。しかし、非相同性末端結合(NHEJ)はまた、変更されたDNA合成プロセスに応答してある役割を果たし得、そしてその活性はHRの活性を上回ることが公知である。
従って、遺伝子修復事象を支配する最も優勢な経路を同定するために、本発明者らは、NHEJまたはHRのインヒビターに対して、各々の経路を個々にブロックすることが公知である用量で細胞を曝露する。
カフェイン、キサンチン誘導体および放射線増感剤は、ATMによるp53 ser−15リン酸化反応を阻害し、60〜90%の間でHRのレベルを減少するが、NHEJにはほとんど効果を有さない。逆に、バニリンは、NHEJ経路における本質的な酵素であるDNA−PKの活性をブロックする。図20に示されるように、ddC単独で処理された細胞での補正レベルは、本発明者らの初期のデータと一致して、2.9%のレベルに達した。バニリンをこの培地に添加する場合、遺伝子修復の頻度は統計学的に変化しない;しかし、カフェインを混合物に添加する場合、補正は実質的に低下する(0.6%)。まとめると、これらの結果によって、オリゴヌクレオチドによって指向される遺伝子修復事象は、相同組み換え経路の活性により大きく依存するということが示される。
(考察)
理論によって束縛されることは意図しないが、カフェインおよびバニリンを用いる研究によって、相同組み換えは遺伝子修復プロセスに関与するという概念が支持される。カフェインはATMキナーゼ活性およびp53ser−15の下流のリン酸化を阻害し、これによって細胞のHR活性の60〜90%を阻害する。カフェインを細胞培養培地に添加することによるカフェインでの細胞の前処理は、基本的な修復レベルの減少をもたらすだけでなく、ddC処理によって生じる遺伝子修復の刺激をブロックもする(図20)。DNA−PKの活性を阻害するバニリンでの前処理を通じたNHEJのブロックは、遺伝子修復活性を阻害せず、このことは、HRが遺伝子修復応答経路を支配することを示唆している。
この解釈は、p53過剰発現実験から得られたデータと一致する。相同組み換えは、三本鎖組み換え中間体、特に1つ以上のミスマッチを含むものと高い親和性を有することが公知である、野性型p53の過剰発現によって阻害されると考えられる。同時に、この構造は、遺伝子修復経路における反応中間体であると考えられる。p53はまた、失速した複製フォークに結合し、それらを安定化して、組み換え誘導性の複製再スタートに対抗するプロセスであるフォークの逆行を促進する。内因性に添加されたプラスミドからのp53の過剰発現は、遺伝子修復活性の減少をもたらす。理論によって束縛されることは意図しないが、本発明者らは、修復活性における減少は一過性に失速された複製フォークに対する相同組み換え応答の阻害に関与すると考えている。
細胞周期分析およびBrdU取り込み実験の結果によって証明されるように、細胞培養物におけるddCの存在は複製プロセスの減速を生じる。事実上、ddCでの処理はS期からG2への細胞の進行を遅らせ、そしてS期への細胞の進行を実際に阻害する。これらの条件下では、活発な複製を示す細胞の数は、エレクトロポレーションおよびオリゴヌクレオチドの導入の時点で増大する。
この解釈は、AraC処理によって得られるデータとよく一致している;AraCは、DNA合成をブロックし、G1/S境界で、またはS期の初期での蓄積を生じる。この場合、より少ない細胞がS期であり、活発に複製しているフォークは含まないと思われる細胞である。解放の際、もともとG1/S境界で凍結された「同調した(synchronized)」細胞集団は、オリゴヌクレオチドエレクトロポレーションの時点でまたはその直前のいずれかで均一にS期に入る。従って、ddCおよびAraCの両方は現実に、エレクトロポレーションの時点でS期における同じ増強された集団をもたらすが、それらは種々の方法によってこれを達成する。
さらに、AraC実験からの結果によって、活発に複製しているDNAフォークを保有する細胞が、遺伝子修復に対して実はさらに影響を受け易いか、または遺伝子修復の増強されたレベルの影響を受け易いということが示唆される。これらの結果は、複製インヒビターであるアフィジコリンを用いることによって確認される。
細胞をその分裂周期に移動させることによって治療標的に対する遺伝子修復の頻度を増大することが可能である。
(実施例8)
(ファブリー疾患変異のオリゴヌクレオチド指向性遺伝子変更)
ファブリー病を罹患するヒト患者由来のヒト線維芽細胞株である、細胞株DMN−1は、国立衛生研究所(National Institutes of Health(NIH))から入手される。これらの細胞を用いて、本発明の方法を用いるα−ガラクトシダーゼA(GLA)の変異対立遺伝子の補正の効率を測定する。本明細書において用いられるファブリー細胞株において特定の疾患を生じる変異は、遺伝子におけるG→Cの変異によって生じるA143Pである。Brantonら、Medicine(Baltimore)(2002)81(2):122〜38を参考のこと。
GLAの変異ファブリー病対立遺伝子を補正する際の本発明の方法の効率を評価するために合成されたオリゴヌクレオチドは、表1に示す。オリゴは、左から右に5’→3’で示される。星印は、ホスホロチオエート結合に相当する。
Figure 2007535935
49T/pmと命名された第一のオリゴヌクレオチド(配列番号1)は、全ての位置において遺伝子の転写された鎖に相補性の配列を含むコントロールのオリゴヌクレオチドであり、変異の遺伝子座の上流および下流の両方に伸びている。オリゴヌクレオチド51NT/pmは、別のコントロールオリゴヌクレオチドであって、非転写鎖に完全に相補性の配列を含む。
49NT/ccと命名された第三のオリゴヌクレオチド(配列番号3)は、変異の遺伝子座以外の全ての位置において遺伝子の非転写鎖に相補性の配列を含み、この変異の遺伝子座の上流および下流の両方に伸びている。この実験で用いられるGLA変異のためには、シトシン(C)残基は、転写された鎖における変異の遺伝子座に存在する。49NT/ccは、変異の遺伝子座で野性型C残基を有し、ゲノムDNAにアニーリングされた場合、C−C塩基ミスマッチ(C−G塩基対ではない)を生じる。
49T/ggと命名された第四のオリゴヌクレオチド(配列番号4)は、変異の遺伝子座以外の全ての位置において遺伝子の転写鎖に相補性の配列を含み、この変異の遺伝子座の上流および下流の両方に伸びている。この実験で用いられるGLA変異のためには、グアニン(G)残基は、転写されない鎖における変異の遺伝子座に存在する。49NT/ggは、変異の遺伝子座で野性型G残基を有し、ゲノムDNAにアニーリングされた場合、G−C塩基ミスマッチ(G−C塩基対ではない)を生じる。
前述のオリゴヌクレオチド配列は、例示的であり、そして当業者は、他の配列を含むオリゴヌクレオチドがまた、GLA遺伝子における変異を保有する細胞でODSAを果たすために用いられ得るということを認識する。GLAのためのmRNA配列は、その開示がその全体として参考によって本明細書に援用される、アクセッション番号NM_000169として利用可能であり、そしてヒト遺伝子配列は、アクセッション番号U78027として利用可能である。このような配列は<http://www.ncbi.nlm.nih.gov/entrez>でアクセス可能な、Entrez PubMedのような公的な配列データベースから容易に入手可能である。
上記で呈示される49T/ggおよび49NT/ccオリゴヌクレオチドに関して、そしてヒトGLAの公知配列に照らして、GLAのA143P変異の遺伝子修復を果たし得る他のオリゴを作製するには、さらなる塩基を5’末端、3’末端、またはその両方に追加してもよく、塩基を3’末端、5’末端またはその両方から欠失させてもよい。1つの実施形態では、GLA遺伝子を修復するために用いられるオリゴヌクレオチドは、120ntを含み、そしてオリゴヌクレオチドの中心に近い関連の変異体の遺伝子座を有する。1つの実施形態では、補正性のオリゴヌクレオチドの配列は、
Figure 2007535935
(配列番号5)であり、ここで太字の塩基は、本実施例で用いられる特定の細胞株における変異塩基である。別の実施形態では、GLA遺伝子を修復するために用いられるオリゴヌクレオチドは、17ntを含み、そしてこのオリゴヌクレオチドの中心に近い関連の変異体の遺伝子座を有する。1つの実施形態では、補正性のオリゴヌクレオチドの配列は、
Figure 2007535935
(配列番号6)である。
他の長さのオリゴヌクレオチドを用いてもよく、そして変異の遺伝子座は、本明細書に列挙される特定の実施例におけるようにオリゴヌクレオチドの中心付近である必要はない。本発明の補正性のオリゴヌクレオチドは、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118、119、120またはそれ以上の塩基長であってもよい。補正性のオリゴヌクレオチドは、ホスホロチオエート結合、2’−O−メチルアナログまたはLNA、またはこれらの改変の任意の組み合わせを含んでもよい。
当業者は、本実施例に列挙されるオリゴヌクレオチドの作製から類推して、ファブリー疾患を生じる他の変異は同様に、適切なオリゴヌクレオチドを用いて修復され得ることを認識する。関連の変異の上流および下流の遺伝子の配列は、配列データベースを用いて得られ、それらの位置で相補性であるが、変異の遺伝子座でミスマッチしているオリゴヌクレオチドが設計され、その位置では補正性のオリゴヌクレオチドは、その位置で野性型塩基の相補体を含み、すなわちこの補正性のオリゴヌクレオチドは標的DNAにおける変異鎖に対合した野性型の反対鎖の短いストレッチを提供する。このオリゴヌクレオチドは、17〜120nt長の任意の長さであってもよい。
49T/ccおよび49NT/ggオリゴヌクレオチドの両方とも、GLA変異を潜在的に補正し得る配列を提供するが、49T/pmおよび51NT/pmオリゴヌクレオチドはこのような配列を提供せず、コントロールとして働く。4つの全てのオリゴヌクレオチドを用いて、細胞がエレクトロポレーションされるのではなく、オリゴヌクレオチドでトランスフェクトされることを除いて、実施例1に記載されるとおりODSAを実質的に果たす。オリゴを、1反応あたり5μg、10μgまたは30μgで添加する。ODSAを行った後、その開示がその全体として参考によって本明細書に援用される、Medinら、Proc.Natl.Acad.Sci.(USA)(1996)93:7917〜22に記載されるとおり、細胞を培養して、Bradyの方法に従ってGLA活性についてアッセイする。処理培養物対未処理培養物における活性を比較することによって遺伝子補正の指標としてGLA活性を用いる。補正効率は、処理細胞の数における変異の遺伝子座の配列決定によって、引き続いて確認される。
前の実施例と同様に、補正性のオリゴヌクレオチドでのトランスフェクションの前に、HU、VP16またはCPTを用いて標的細胞を処理する。しかし、実施例1に記載されるDLD−1−1細胞でのeGFPの補正に関与する実験とは異なり、本実施例中の実験における特定の因子(VPA、カフェイン、TSA)は、トランスフェクションの前には添加されないが、代わりに回復期間の間に、トランスフェクション後にのみ添加される。
標的細胞へのオリゴヌクレオチドの導入の手段はまた、前の実施例とは異なり、エレクトロポレーションではなく、トランスフェクション増強因子FuGENETM6(FG)(Roche Diagnostics Corp.,Indianapolis,Indiana,USA)の存在下でのトランスフェクションが用いられている。各々のトランスフェクション反応は、FGが関連の図面における各々のデータポイントについてはっきり示されていない事実にもかかわらず、他に示さない限り、100μlの標的細胞および12μlのFGを含む。その他は、DLD−1−1実験およびファブリー実験において用いられる手順は同様である。
図15Aは、オリゴヌクレオチド用量に対する、タンパク質濃度あたりの単位としてGLA活性を示す。この図は、三連で行われた実験の結果を反映する。コントロールのオリゴである49T/pmは、最低のレベルのGLA活性を与え、これは、変異GLA対立遺伝子のみを保有する細胞におけるGLA活性の基礎レベルを示す。最高のGLA活性は、コントロールと比較した場合4倍を超えるまで活性を改善する、49T/ggでの処理後に得られる。49NT/ccは、49T/ggよりもODSAを果たすのに有効性が低いが、それにもかかわらずいくつかの用量では3倍を超えて活性を改善した。これらの結果は、ODSAにおける鎖のバイアスを示す他の実験と一致するが、最も補正の影響を受け易い鎖は変化し得る。最適の補正は、10μgのオリゴで得られ、30μgで有意に低下する。
図15Aに関して記載されている同じ実験を、本発明の実施形態が遺伝子変更(本実施例では、補正)効率を増大し得るか否かを評価する種々の因子および処理の存在下で反復する。図15Bは、1つのこのような一連の実験の結果を示しており、これは左から右に考察される。バーは、種々の実験において観察される補正効率を示す。他に示さない限り、全ての実験は、細胞を処理するために用いられる任意の他の因子に加えて10μgの49T/ggを含む。
処理を受けない細胞、またはFGでのみ処理される細胞は、低いみかけの補正効率を示す。コントロールオリゴヌクレオチド51NT/pmで処理された細胞は0.27%の補正を示すが、49T/ggで処理した細胞は、その補正効率を二倍にすることが示される。
49T/ggとともに0.3mMのHUで処理される細胞は、3.36%の効率で補正され、ここで高濃度のHUほど低い効率の補正を生じる。1〜50μMにおよぶ濃度範囲のVP16の添加は、補正性のオリゴヌクレオチドの有無に関わらず、補正効率にほとんど影響を有さない。カンプトテシン(CPT)は10nMでは、補正効率を0.82%まで増大するが、2〜50mMの濃度範囲におよぶチミジンでの処理は、補正性のオリゴヌクレオチドの有無にかかわらず、補正効率にほとんど影響を有さない。DNA修復経路を刺激することが公知のp7マー(pAGT ATG A、ここで「p」は5’リン酸塩である)での処理は、補正効率を0.62%まで穏やかに改善する。
図15Cによって、図15Bに示されるHUで増強された遺伝子補正は一過性の減少ではないということを確認するようにデザインされた一連の実験の結果が示される。細胞を、図に例示されるように処理し、次いでGLA活性をアッセイする前に7日間増殖させる。図15Bに例示されるように、補正性のオリゴ49T/ggでの処理は、GLA活性をコントロールオリゴ49T/pmでの処理の2倍にし、ここで図15Cにおけるデータは、これが一過性ではない効果であることを示す。0.3mMおよび1mMのHUの両方で処理された細胞は、未処理の細胞と比較して、GLA活性におけるほぼ3倍の持続性(7日後)の増大を示す。1mMのHUで処理した場合、補正性のオリゴ49T/ggは、コントロールオリゴ49T/pmと同じく2倍を超えてGLA活性を増強し、このことはこの結果が配列特異的であることを示す。
さらなる一連の実験の結果を図15Dに示しており、ここではこのデータは、GLA活性として、単位タンパク質濃度あたり1時間あたりに生成されたGLAアッセイの産物のナノモル(nM)濃度として示される(図DおよびEにおけるデータと同様に)。変異の遺伝子座の周囲のGLAの転写された鎖に好ましくは相補性である、10μgのコントロールオリゴヌクレオチド49T/pmの添加は、処理なしの細胞に比較してGLA活性を感知できるほど増強しない。対照的に、49T/ggでの処理は、GLA活性を2倍より大きくする。GLA活性は回復期、すなわち、49T/ggでのトランスフェクション後の期間の間に5μMのVPAの添加によって、未処理の細胞よりも20倍を超えて、98.71へ劇的に増強される。GLA活性はまた、回復の間に7.5nMのCPTの添加によって26.84まで、非処理コントロールよりもほぼ6倍高くまで増強される。VPAおよびCPTの両方とも非線形性の用量応答曲線を示し、ここで各々の因子の試験した最高濃度は、最低のGLA活性を与える。
ファブリー細胞に対する実験のさらなるセットでは、その結果を図15Eに示しており、細胞は、オリゴヌクレオチドおよび他の因子での処理の前に二重チミジンブロックプロトコールを用いて細胞周期が同調される。これらの条件下では、補正性のオリゴヌクレオチド49T/ggでのトランスフェクションの前に1mMのHUを用いる処理は、未処理の細胞に比較してGLA活性を5倍に増大する。他の実験において観察されるように、HU用量応答は非線形である。回復期間の間の4mMのカフェインの添加は、0.3mMのHUで処理した細胞においてGLA活性にわずかな影響を有する。エレクトロポレーションの前の500μMのddCでの処理は、未処理の細胞に比較してDLA活性を二倍にするが、回復期間の間の4mMのカフェインまたは100ng/mlのトリコスタチンA(TSA)でのさらなる処理は、500μMのddCがGLA活性を増強する能力を廃する。
(実施例9)
(ポンペ病変異のオリゴヌクレオチド指向性遺伝子変更)
グリコーゲン貯蔵疾患IIとしても公知のポンペ病(MIM232300)は、常染色体劣性リソソーム蓄積症である。酸αグルコシダーゼ(GAA)をコードする遺伝子中の変異は、ポンペ病に関連する。イスラエルでの研究によって、100例の患者中約1例がGAAの疾患発生変異形態のキャリアであること、およびポンペ病を持って生まれた個体の予想数が40,000に対して1であることが示される。Bashanら、Israel J.Med.Sci.(1988)24:224〜27。GAAのmRNA配列は、その開示がその全体として参考によって本明細書に援用される、アクセッション番号NM_000152およびNM_199118として利用可能である。GAAにおける変異を修復するためのオリゴヌクレオチドは、実施例8における補正性のオリゴヌクレオチドとの類似性によって設計される。ODSAは、実施例8においてと同様にポンペ病を生じる変異GAA改変体を保有する細胞で行って、変異体遺伝子を修復する。
(実施例10)
(ゴーシェ病変異のオリゴヌクレオチド指向性遺伝子変更)
ゴーシェ病(MIM230800)は、グルコセレブロシダーゼをコードする遺伝子における変異によって生じる。ゴーシェ病は、一般では100,000人に約1人に罹患し、アシュケナージ系ユダヤ人では450例に1例の頻度である。グルコセレブロシダーゼ(GBA)をコードする遺伝子における変異は、ゴーシェ病に関連する。GBAのmRNA配列は、アクセッション番号NM_000157として利用可能であり、そしてヒト遺伝子配列は、その開示がその全体として参考によって本明細書に援用される、アクセッション番号AF023268およびJ03059として利用可能である。GBAにおける変異を修復するためのオリゴヌクレオチドは、実施例8における補正性のオリゴヌクレオチドとの類似性によって設計される。ODSAは、実施例8においてと同様にゴーシェ病を生じる変異GBA改変体を保有する細胞で行って、変異体遺伝子を修復する。
(実施例11)
(ヒト血球中の効率的なエキソビボ遺伝子修復)
アッセイシステム。オリゴヌクレオチド指向性配列変更(遺伝子修復)は、標的としてヘモグロビンのβサブユニットをコードする染色体遺伝子を用いてヒト血球における遺伝物質で行われる。緑色蛍光タンパク質(GFP)遺伝子の変異体コピーを含む2つのオリゴヌクレオチドおよびプラスミドを、細胞に同時導入する。第二のオリゴヌクレオチドを設計して、蛍光を生じる変異GFPを修復する変更を指向する。野性型のタンパク質を鎌状の対立遺伝子に変換するように第一のオリゴヌクレオチドを設計する。本発明者らは、遺伝子へ鎌状変異を導入するように設計された単独のヌクレオチド位置を除く全ての位置で、野性型対立遺伝子に対して配列中で対応する第一のオリゴヌクレオチドを用いる。従って、これらのオリゴヌクレオチドは、単一の塩基を除いて、実施例6に記載され、かつ表7に示されるオリゴヌクレオチドと同一である。例えば、本発明者らは、
Figure 2007535935
から選択される第一のオリゴヌクレオチドを用いる。野性型対立遺伝子に対してミスマッチするオリゴヌクレオチド中の塩基は小文字で示す。オリゴヌクレオチドは、各々の末端上の3つのホスホロチオエート結合で(星印で示される)、または各々の末端での単一のLNA塩基で合成される(太字)。
細胞の調製および処理。細胞を解凍して、以下のとおりエレクトロポレーションする。10%のFCS(StemCell Technologies)を含有するQBSF−60培地(Quality Bio)を37℃まで温める。凍結されたG−CSF移動末梢血CD−34細胞のバイアル(Bio Whittaker)を37℃の水浴中で急速解凍し、そのチューブの外側を70%エタノールで拭いて、約2mL(約1×10個の細胞)の細胞懸濁液を15mlまたは50mlの円錐のチューブに無菌的に移す。そのバイアルを1mlの培地でリンスし、次いでこれを細胞に滴下し、2〜3滴ごとにこのチューブを穏やかに回旋する。容積が約5mlになるまで培地をゆっくりと滴下して加え、やはり2〜3滴ごとにこの円錐のチューブを穏やかに回旋し、次いで1〜2mlの培地滴下を添加することによって、このチューブを満たすまで容積をゆっくりと増やし、各添加後に回旋する。この細胞懸濁液を室温で15分間、200×g(1500rpm)で遠心分離する。ピペットを用いて、ほとんどの洗浄液を第二のチューブに移し、細胞ペレットを乱さないように2〜3mlを残す。このペレットを残りの培地に再懸濁して、15mlの円錐チューブに移す。もとのチューブを5mlの培地でリンスして、その洗浄液を細胞に滴下して加え、各々の添加後には穏やかに回旋する。この細胞を200×gで15分間、再遠心分離する。
洗浄液の2mlを除く全てをピペットして除き、その細胞を残りの培地中で穏やかに再懸濁してカウントする。この細胞を37℃でかつ5%COで1時間、静止させ、次いで再カウントする。サイトカインflt−3、SCFおよびTPOを100ng/mlの最終濃度で含むFCSなしの5mlのQBSF−60培地(Stem Cell Technologies)を添加して、細胞を200×g(1500rpmで15分間)再ペレット化し、そしてできるだけ多くの液体容積を、ペレットを乱すことなく穏やかに取り出す。細胞を1mlあたり約5×10〜1×10個の細胞で再懸濁して、6ウェルの組織培養処理されたディッシュに移す。細胞をサイトカイン(QBSF−60培地、FCSなし、サイトカインflt−3、SCFおよびTPOを100ng/mlの最終濃度で含む)を用いて3日間刺激して、トリパンブルー排除染色を用いて細胞カウントを行う。この細胞を200×g(1500rpm)で15分間遠心分離する。過剰な容積をピペットによって除去して、その細胞を同じ培地に2×10細胞/mlで再懸濁する。
オリゴヌクレオチドおよびGFPプラスミドを、以下のような方形波条件下で細胞にエレクトロポレーションする。細胞懸濁液(250μl)、5μgのGFPプラスミド、および30μgの各々のオリゴヌクレオチドを、2mmのギャップのキュベットに添加して、220Vで1つの19msecパルスの間エレクトロポレーションする。次いで、Iscove’s Medium(InvitrogenTM)、10%FCS(StemCell Technologies)(750μl)、サイトカイン flt−3、SCF、TPO(100ng/mlの最終濃度で)、グルタミンおよびペニシリン/ストレプトマイシンを添加する。
あるいは、250μlの細胞懸濁液、flt−3、SCFおよびTPOを補充した250μlのQBSF−60培地、ならびに30μgのオリゴヌクレオチドを4mmのギャップキュベットに添加して、1秒のパルス間隔で220Vの5つの19msecパルスについてエレクトロポレーションする。次いで、Iscove’s Medium(InvitrogenTM)(500μl)、10%FCS(StemCell Technologies)およびサイトカイン flt−3、SCFおよびTPO(100ng/mlの最終濃度)を添加する。
修復された機能的なGFPタンパク質を保有する細胞を、FACSを用いて選択する。選択された細胞におけるヘモグロビン標的の配列は、2つのオリゴヌクレオチド:
Figure 2007535935
を用いてPCR増幅およびSNapShotTMデバイスでの分析によって決定する。
多数の実施形態および特徴が本明細書に記載されるが、この記載された実施形態および特徴の改変および変化が、本発明の精神または添付の特許請求の範囲から逸脱することなくなされ得るということが当業者によって理解される。特に言及しない限り、本発明の方法のどの工程も、いかなる特定の順序の物質の添加も、工程の実行の順序も必要としない。本明細書に言及される全ての特許、特許刊行物および他の公開された引用文献は、あたかも個々にかつ詳細に本明細書に参考によって援用されたかのように、その全体が参考によって本明細書に援用される。
特許請求の範囲における要素は、これが「〜のための方法、手段(means for)」、「〜のための工程、ステップ(step for)」または「〜のための工程(複数)、ステップ(複数)(steps for)」という句を明確に含む場合、および明確に含む場合に限り、米国特許法第112条第6段落を発動するものとする。「〜のための工程、ステップ」または「〜のための工程(複数)、ステップ(複数)」という句は、特許請求の範囲の要素に含まれようと、または序文に含まれようと、米国特許法第112条第6段落を行使するものではない。
(配列表)
99689−00032US(3KBのサイズを有するPatentIn Document)および99689−00032US.ST25(3KBのサイズを有するテキスト文書)と題されたファイルを含む2005年5月3日付けの添付されたコンパクトディスクに含まれる構成要素は、その全体が参考として本明細書に援用される。
本発明の上記および他の目的および利点は、同様の記号が全体を通じて同様の部分を指している、かつ以下のとりである添付の図面とあわせて考慮して、添付の詳細な説明を考慮すれば明白になる。
図1Aは、2004年11月10日出願の同時係属の米国特許出願第10/986,418号(「Mammallian Cell Lines for Detecting,Monitoring,and Optimizing Oligonucleotide−Mediated Chromosomal Sequence Alteration」)(その開示がその全体として参照によって本明細書に援用される)に記載されるような、緑色蛍光タンパク質をコードする変異遺伝子(EGFP−N3(変異体))を含む統合的カセットの構造、ならびにDLD−1−1と命名されるDLD−1由来哺乳動物細胞株を作製するために用いられる、野性型対応配列(EGFP−N3(野性型))を示す。 図1Bは、変異体および野性型のeGFP対立遺伝子の配列の関連のセグメント、ならびにeGFP変異(EGFP3S/72NT)および非特異的なコントロールオリゴヌクレオチド(Hyg3S/74NT)を補正するために用いられる一本鎖オリゴヌクレオチドの配列を示す。星印は、ホスホロチオエート結合を示す。 図2は、本発明による、操作されたDLD−1−1細胞における配列変更(「遺伝子変更」)のためのプロトコールを示す。 図3は、未処置の細胞に比較してEGFP3S/72NTで処置したDLD−1−1細胞において高レベルのGFPを発現する細胞の割合の増大を示す蛍光活性化細胞分取(fluorescence activated cell sorting(FACS))のデータを示す。 図4は、血清枯渇およびミモシンでの処置によって影響されるような、細胞周期停止からの解放後、種々の時間での、DNA含量の関数としてのDLD−1−1培養物の集団における細胞の数を示すFACSデータを示す。図4はまた、細胞の上述の集団がEGFP3S/72NTで処置される場合の、管状の形態での、細胞周期における細胞の分布、および平均「補正効率(correction efficiency)」(「C.E.」)を示す。非同調細胞とは、細胞周期停止に対して供されないが、それ以外は同等に処置される細胞である。 図5は、0.3、1または5mMのHUまたは0.5、1または3μMのVP16で処置されているDLD−1−1細胞由来のDNAのパルス・フィールドゲルを示す。「C」は、HUにもVP16にも曝されなかった細胞由来のコントロールサンプル、そして「M」は、サイズマーカーのレーンである(特に、745、785、815および1120+1100Kbp)。 図6は、補正効率を、処置された細胞数の割合として、そして細胞生存度を、DLD−1−1細胞を処置するために用いたHUおよびVP16の用量の関数として示す。補正効率は、「パーセントとして(as a percentage)」示され、本明細書では、これは他に示されない限り、処置後に補正された表現型を示す全ての処置された細胞の割合をいう。 図7は、ODSA実験におけるHUおよびVP16を用いたDLD−1−1細胞の処置についての時間経過を示す。 図8は、処置なし、1mMのHUでの24時間の処置、または3μMのVP16を用いた24時間の処置後の細胞周期におけるDLD−1−1細胞の分布を示すFACSデータを示す。表は、FACSデータに基づくS期の細胞の割合、および細胞の各々の集団についてのBrdU取り込み実験の結果に相当する。 図9Aは、二重チミジンブロック手順を用いる、同調していないかまたは同調したDLD−1−1細胞の集団についての細胞周期の各段階における細胞の画分を示すFACSデータであって、各々のプロットの下にはS期の細胞の割合を示している。 図9Bは、同調した(暗いバー)および同期していない(明るいバー)DLD−1−1培養物で行った、ODSA実験での補正効率を、1mMのHU、3μMのVP16または10mMのチミジンでの処置の関数として示す。コントロールの細胞は、列挙した因子のいずれでも処置せず、ただしそれ以外は同等に処置した。 図10は、未処置の細胞由来のDNAと比較した、0.75μMのブレオマイシンまたは0.2μMのMMSを用いたDLD−1−1の処置によって生じたDNA損傷を図示するパルス・フィールドゲルを示す。 図11Aは、10μg EGFP3S/72NTを用いて、0.2μM MMSの有無で処置した集団における、そして未処置の集団におけるGFPを発現するDLD−1−1細胞の割合である。このデータはまた、細胞死データとともに、プロットの下の表に示される。 図11Bは、10μg EGFP3S/72NTで処置した、そして:なしで;0.2μM MMSで;0.2μMのMMS+4mMカフェインで;4mMのカフェインで処置した集団における、GFPを発現するDLD−1−1細胞の割合を示す。このデータはまた、細胞死データとともに、プロットの下の表に示される。ここで、または本明細書の他の図面において、「uM」は「μM」(マイクロモル濃度)と同義語として用いる。 図12は、一連のODSA実験における補正効率(割合として)を、ウォルトマニン(WM)の用量を単独で、または30nM CPTと組み合わせての関数として示す。 図13Aは、一連のODSA実験において補正効率(割合として)を、ddCの用量の関数として示す。 図13Bは、エレクトロポレーションの前(「前(prior)」)または後(「回復(recovery)」のいずれかで添加した、500μM ddCを用いる、4mMカフェインなしで、または4mMのカフェインありでの処置の関数として、一連のODSA実験における補正効率(割合として)を示す。 図13Cは、エレクトロポレーションの前(「前(prior)」)または後(「回復(recovery)」のいずれかで添加した、500μM ddCを用いる、1mMのバニリンなしで、または1mMのバニリンありでの処置の関数として、一連のODSA実験における補正効率(割合として)を示す。 図13Dは、12時間、24時間または48時間のエレクトロポレーションの後に添加した、500μM ddCを用いる、カフェインなしで、または4mMのカフェインありでの処置の関数として、一連のODSA実験における補正効率(割合として)の時間経過を示す。 図14Aは、DLD−1−1細胞についてのBrdU取り込み(コントロールの割合として)を、3μM CPTでの処置後の時間の関数として示す。 図14Bは、3μM CPTでの処置後の時間の関数としてDLD−1−1細胞についてのDLD−1−1細胞についての補正効率を(コントロールに対して)示す。 図14Cは、CPTの割合の関数として一連のODSA実験における補正効率を(割合として)示す。 図14Dは、CPT単独で、または他の因子および関連のコントロールと組み合わせての処置の関数として、一連のODSA実験における補正効率(割合として)を示す。 図15Aは、ファブリー(Fabry)細胞におけるGLA活性を、ファブリー細胞でのODSA実験において用いたオリゴヌクレオチドの配列、および用いた各々のオリゴの量の関数として示す。 図15Bは、HU、VP16、CPT、チミジン(thy)、p7およびその種々の組み合わせ、割合および用量で用いた処置の関数として、一連のODSA実験におけるファブリー細胞での補正効率を(割合として)示す。 図15Cは、示したとおり、エレクトロポレーションの7日後のファブリー細胞におけるGLA活性をHUでの処置、およびその用量の関数として示しており、ここでオリゴヌクレオチドは、49T/pmまたは49T/ggのいずれか、またはオリゴヌクレオチドなしである。 図15Dは、示したとおり、ファブリー細胞におけるGLA活性を、VPA、CPT、p7およびその種々の組み合わせ、順列および用量での処置の関数として示しており、ここでオリゴヌクレオチドは、49T/pmまたは49T/ggのいずれか、またはオリゴヌクレオチドなしである。 図15Eは、示したとおり、同調したファブリー細胞におけるGLA活性を、HU(0.3、1または3mM)、500μM ddC、4mMカフェインまたは100ng/mLのトリコスタチンA(TSA)の組み合わせでの処置の関数として示す。 図16は、オリゴヌクレオチドでのエレクトロポレーションの前の24時間、種々の用量の2’3’−ジデオキシシチジン(ddC)に曝したDLD−1細胞における遺伝子修復のddC刺激についての用量応答曲線を、eGFP遺伝子の補正の関数として蛍光細胞のパーセントによって48時間後に決定した補正効率パーセント(percentage correction efficiency(C.E.(%))を用いて示す;結果は、4つの実験にまたがる平均である。(*)によって区分けした処置は、処置なしのコントロールに対して0.05未満のp値で統計学的に有意である。 図17Aは、種々の示した(24時間)反応条件下で細胞周期のプロフィールを示す。 図17Bは、種々の示した(24時間)反応条件下でBrdU取り込みのプロフィールを示す。 図18Aは、補正効率に対するddIの統計学的に有意な効果を示す。 図18Bは、補正効率に対するAraCの統計学的に有意な効果を示す。 図18Cは、AraCからの解放後、種々の時点でのそれぞれ、BrdU取り込みおよび補正効率に対する効果を示す。 図18Dも、AraCからの解放後、種々の時点でのそれぞれ、BrdU取り込みおよび補正効率に対する効果を示す。 図18Eは、AraCまたはAphidicolin処置のいずれかからの解放後、種々の時点での補正効率を表にしており、一緒に、生存率、蛍光細胞の総カウント、および補正頻度(correction frequency)(C.E.)を示している。 図19Aは、p53が、ddCによって刺激された遺伝子修復活性をブロックするかまたは抑制することを実証しており、ここで図19Aによって、発現構築物の導入24時間後に調製した細胞抽出物のウエスタンブロット分析によってp53の発現が確認される。 図19Bは、示されたp53またはコントロールの構築物の存在における補正効率を示す。星印は、コントロール(空の発現構築物)からの統計学的に有意な相違を示す(0.05未満のp値)。 図20は、カフェインがddCによって誘導された補正をノックダウンするがバニリンはノックダウンしないことを、標準偏差を提示して、3つの実験の平均をグラフにして示している。コントロールとの統計学的に有意な相違(p値が0.05未満)を示すサンプルを示している。

Claims (27)

  1. 細胞のある集団において標的DNA分子中の特定の遺伝子座における、オリゴヌクレオチド指向性の遺伝子変更の効率を増大させるための方法であって、該方法は:
    遺伝子修復または遺伝子編集を促進する細胞酵素活性を誘導する少なくとも1つの因子を用いて細胞の該集団を処置する工程と;
    配列変更オリゴヌクレオチドを用いて細胞の該集団を処置する工程と;
    を包含する、方法。
  2. 前記因子がヒドロキシウレア、チミジン、ミモシン、エトポシド、メチルメタンスルフェート、カプトテシン、ジデオキシシチジンおよびバルプロ酸からなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
  3. 前記遺伝子修復または遺伝子編集を促進する細胞酵素活性を誘導するいくつかの因子をさらに含む、請求項1に記載の方法。
  4. 前記因子がヒドロキシウレア、チミジン、ミモシン、エトポシド、メチルメタンスルフェート、カプトテシン、ジデオキシシチジン、バルプロ酸およびそれらの組み合わせからなる群より選択される1つ以上の因子を含む、請求項3に記載の方法。
  5. 前記配列変更オリゴヌクレオチドが、前記標的DNA分子に対して、前記特定の遺伝子座において非相補性であることによって、該標的DNA分子の1つの鎖に対していくつかのヌクレオチド位置で相補性である、請求項1に記載の方法。
  6. 前記遺伝子編集または遺伝子修復を改善するように設計されたベクターを用いて細胞の集団を処置する工程をさらに包含する、請求項1に記載の方法。
  7. 前記細胞の集団を、細胞周期の特定の段階で細胞について該細胞の集団を富化する少なくとも1つの因子を用いて処置する工程をさらに包含する、請求項1に記載の方法。
  8. 前記細胞周期の特定の段階がS期である、請求項7に記載の方法。
  9. 前記標的DNAの複製速度を低下させる少なくとも1つの因子を用いて細胞の集団を処置する工程をさらに包含する、請求項1に記載の方法。
  10. 前記細胞の集団においてDNA損傷を誘導する工程をさらに包含する、請求項1に記載の方法。
  11. 細胞のある集団において標的DNA分子中の特定の遺伝子座における、オリゴヌクレオチド指向性の遺伝子変更の効率を増大させる方法であって、該方法は:
    細胞の該集団を、細胞周期の特定の段階で細胞について該細胞の集団を富化する少なくとも1つの因子を用いて処置する工程と;
    配列変更オリゴヌクレオチドを用いて細胞の集団を処置する工程と;
    を包含する、方法。
  12. 細胞周期の前記特定の段階がS期である、請求項11に記載の方法。
  13. 前記因子がヒドロキシウレア、チミジン、ミモシン、エトポシド、メチルメタンスルフェート、カプトテシン、ジデオキシシチジンおよびバルプロ酸からなる群より選択される、請求項11に記載の方法。
  14. 細胞周期の特定の段階において細胞について前記細胞の集団を富化するいくつかの因子をさらに含む、請求項11に記載の方法。
  15. 細胞周期の前記特定の期がS期である、請求項14に記載の方法。
  16. 前記因子がヒドロキシウレア、チミジン、ミモシン、エトポシド、メチルメタンスルフェート、カプトテシン、ジデオキシシチジン、バルプロ酸およびそれらの組み合わせからなる群より選択される1つ以上の因子を含む、請求項14に記載の方法。
  17. 前記配列変更オリゴヌクレオチドが、前記標的DNA分子に対して、前記特定の遺伝子座において非相補性であることによって、該標的DNA分子の1つの鎖に対していくつかのヌクレオチド位置で相補性である、請求項11に記載の方法。
  18. 遺伝子編集または遺伝子修復を改善するように設計されたベクターを用いて細胞の集団を処置する工程をさらに包含する、請求項11に記載の方法。
  19. 標的DNAの複製速度を低下させる少なくとも1つの因子を用いて細胞の集団を処置する工程をさらに包含する、請求項11に記載の方法。
  20. 細胞の集団においてDNA損傷を誘導する工程をさらに包含する、請求項11に記載の方法。
  21. 細胞のある集団において標的DNA分子中の特定の遺伝子座における、オリゴヌクレオチド指向性の遺伝子変更の効率を増大させるための方法であって、該方法は:
    標的DNAの複製速度を低下させる少なくとも1つの因子を用いて細胞の該集団を処置する工程と;
    配列変更オリゴヌクレオチドを用いて細胞の該集団を処置する工程と;
    を包含する、方法。
  22. 前記因子がヒドロキシウレア、チミジン、ミモシン、エトポシド、メチルメタンスルフェート、カプトテシン、ジデオキシシチジンおよびバルプロ酸からなる群より選択される、請求項21に記載の方法。
  23. 標的DNA分子の複製速度を低下させる複数の因子をさらに含む、請求項21に記載の方法。
  24. 前記因子がヒドロキシウレア、チミジン、ミモシン、エトポシド、メチルメタンスルフェート、カプトテシン、ジデオキシシチジン、バルプロ酸およびそれらの組み合わせからなる群より選択される1つ以上の因子を含む、請求項23に記載の方法。
  25. 前記配列変更オリゴヌクレオチドが、前記標的DNA分子に対して、前記特定の遺伝子座において非相補性であることによって、該標的DNA分子の1つの鎖に対していくつかのヌクレオチド位置で相補性である、請求項21に記載の方法。
  26. 遺伝子編集または遺伝子修復を改善するように設計されたベクターを用いて細胞の集団を処置する工程をさらに包含する、請求項21に記載の方法。
  27. 前記細胞の集団においてDNA損傷を誘導する工程をさらに包含する、請求項21に記載の方法。
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