JP2005510628A - 加工熱処理された、特に鉛蓄電池中の集電体およびコネクタ用の、鉛および鉛合金 - Google Patents

加工熱処理された、特に鉛蓄電池中の集電体およびコネクタ用の、鉛および鉛合金 Download PDF

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Abstract

ミクロ組織の少なくとも一部において特定粒界の比率を上昇させた、例えば、鉛蓄電池または電解採取の陽極用のストラップおよびつまみのように再結晶鉛および鉛合金正極集電体およびコネクタであって、(i)冷間若しくは熱間圧延または冷間若しくは熱間押出しまたは(ii)鉛または鉛合金の変形する工程、およびその鉛または鉛合金を焼鈍する工程からなる処理によって供される。加工および焼鈍の1サイクル、またはそのような複数サイクルのいずれによっても供することができる。変形量、再結晶時間および温度、並びにそのような工程群の反復回数は、ミクロ組織中の特定粒界数の実質的な増加が確実になるように、電池稼動期間における集電体およびコネクタのクリープ、粒界腐食および粒界割れに対する耐性が改善されるように選択されて、結果として、電池寿命を延長し、また電池の寸法および重量を減少させる機会が得られる。

Description

本発明は、展伸させて再結晶させることで、クリープ、粒界割れおよび腐食に対する耐性を向上させた鉛および鉛合金に関するものである。より詳しくは、電池信頼性を向上させ、稼動寿命を伸ばし、そしてエネルギー密度を増大させるために、再結晶処理を通じてミクロ組織中に新たな粒界を形成させて、腐食および成長に対する耐性を改善させた鉛蓄電池用鉛および鉛合金の正極集電体およびコネクタに関するものである。
鉛基正極集電体格子、管状スパイン(tubular spines)、箔およびコネクタ(ストラップ(straps)、つまみ(lugs)、極柱)における粒界劣化(すなわち、クリープ変形、割れ、および腐食)は、鉛蓄電池の初期故障の主要原因である。粒界腐食は、Pb集電体およびその構成部材がPbO2に変化する際に発生する。粒界腐食は自動車用蓄電池の寿命を制限し、産業用蓄電池の寿命に影響を及ぼす。
クリープ変形は、主として粒界滑りによって生じ、正極集電体の寸法を増加させる。いわゆる「成長」は、電極表面とPbO2ペースト間の接触が消失し、隣接する電極間で短絡する原因になる。正極集電体の成長は粒界「割れ」の一因にもなる。
昨今の自動車ではボンネット下の温度が上昇するため、鉛蓄電池における正極集電体の成長は、自動車用蓄電池の主な故障要因である。これらの粒界劣化が進行する結果、そして動作寿命およびサイクル寿命に対して充分な性能を維持するために、正極集電体の最小寸法にはかなりの重量許容量が必要となり、その分だけ電池の全体寸法および重量を増加させている。
鉛正極格子における初期の改良は、Sb、Sn、As、Caおよびその他の元素を用いて鉛を合金化することによってなされた。これらの取組みは、例えばMyersの米国特許第4,753,688号、Deanの第1,675,644号、およびTilmanの第3,888,703号に開示があるように、全てアンチモン含有鉛合金に関するものであるが、析出または時効硬化によって合金を強化したものである。析出および時効硬化による方法においては、周囲温度すなわち操作温度では鉛中に固溶せずに、且つその金属中に第2相を形成する合金化元素が存在しなければならない。一般に、硬化は、鉛合金に歪み加工した後、第2相を固溶させるほどに固溶限温度(solvus temperature)より高い温度で熱処理し、そして鉛中に合金化元素が過飽和固溶体を形成するようにその金属を焼入れすることで得られる。一定時間経過後、合金化元素は固溶体から、好ましくは小さい析出物の形態で、析出してその金属中に第2相を形成する。これらの第2相析出物はその金属中の転位運動を妨げ、粒界滑りを阻害して、その結果材料を強化させて硬化させる。熱処理後の焼入れは、析出物寸法を小さく保つために必要であり、そして強化および成長に対する耐性に有効である。熱処理前の変形は、一般には冷間または熱間加工によってなされるが、第2相が析出するための核生成サイトとして作用し、そして結果として析出物をより均一に分布させる転位を、その金属の結晶構造中に形成させる。
鉛および鉛合金の融点は比較的低いため、結果として析出硬化は一般には室温で発生することに留意する必要がある。上記に列挙した特許に例示されるように、従来技術で教示される方法は、主に目標強度を得るために必要な時間を、室温での数日間から昇温させた炉温での数分間へと短縮することを指向したものである。
鉛蓄電池分野では、溶融合金を鋳造後に冷間加工によって展伸された鉛合金は、単に最終形状に鋳造されただけの鉛および鉛合金に比べて、成長に対する耐性が高くなるということも一般的に知られている。この性能改善は、「ミクロ組織」の微細化に因るものとされ、例えばWirtzの米国特許第5,611,128号および第5,604,058号では、鋳造格子の素材から、ニア・ネット・シェイプの電池用電極に冷間圧延する過程に関する記載がある。室温ではより長期間の時効が必要となるのに対して、このような展伸鉛合金では、析出処理で均一な析出物の分布が得られるという利点もある。これについては、「展伸」電極を用いた性能改善は、例えばCa、Sr、Sb、Baなどの、周囲温度では固溶せずに且つ時効によって析出物を形成するという、合金成分を含む鉛合金でのみ見られることに留意する必要がある。また、析出処理と展伸の両方を行った電極が、粒界腐食に関して何らかの目立った改善を呈するとは示されていない。
析出硬化処理では、周囲温度すなわち昇温された温度での時効による析出物の分布の均一性を向上させるために、合金成分を適切に選択し、予変形を与える必要があるが、粒界滑り(すなわち、粒界に対する「析出物によるピン止め」)に因る格子成長の最小化に関して明らかに有利な影響を与える。本発明者らは、粒界滑りを妨げるためだけでなく、粒界腐食および割れ感受性を最小化するために、材料中の粒界の構造を直接変更することが、好ましいことを見出した。析出を主とした処理と異なり、本発明におけるこのような新たな方法は、純鉛および析出物形成元素を含有しない鉛合金にも適用可能である。これは、より安価な合金の有利な使用への道を開くものである。
ある特殊な粒界が、界面構造の「対応格子」モデル(KronbergおよびWilson、Trans.Met.Soc.AIME,185,501(1949))に基づき、ΣがΔθ内で、Σ≦29且つΔθ≦15°Σ-1/2(Brandon、Acta Metal.,14、1479(1966))を満たす場合、例えば腐食、割れ、および粒界滑り(後者はクリープ変形の主たる因子である)などの粒界劣化の進行に対して高い耐性を有することが、様々な研究によって示されている。しかし、これらの研究は、高密度の特殊粒界がどのようにして得られるのかについて、その指針を提供しておらず、また特記されるように、例えば結晶粒方位解析法のような方法によって多結晶材料中の特定粒界の密度を決定できるようになったのは、最近のことである。また、固相に対する処理に際して新たな粒界を創出させる唯一の手段は、変形に続く適切な熱処理で材料の再結晶に影響を与えることだけであって、鉛蓄電池の正極集電体の処理に関するこのような新たな方法は、それ故、本発明の基礎をなすものである。
Palumboは米国特許第5,702,543号(1997年)および第5,817,193号(1998)において、市販のFeおよびNi基オーステナイトステンレス合金中のそのような特定粒界数を約20〜30%から60%を超える水準にまで増加させる加工熱処理を、そしてこのような増加が結果として、例えば粒界腐食および粒界腐食割れなどの粒界劣化の進行に対して耐性が著しく改善されることを記載している。しかしながら、これらの特許に記載され且つクレームされている処理は特定のオーステナイトステンレス鋼およびニッケル基合金にのみ関するものであり、他の金属に関するものではない。これら合金が対象とする用途および使用時にそれらが曝される環境は、鉛蓄電池の過酷な酸性環境とは全く異なる。
Lehockeyは米国特許第6,086,691号(2000年)において、鉛合金薄板を圧下率30%から80%で冷間変形し、その材料を180℃から300℃の温度範囲で15から30分の焼鈍をし、次のサイクルとしてその変形/焼鈍処理を繰り返すことによって、市販の電解採取による鉛合金電極材料中のそのような特定粒界数を50%を越える水準にまで増加させる加工熱処理を開示している。
Raoは国際公開第00/60677号(2000年)において、合金ストリップを鋳造した後、その合金の固溶限温度と包晶温度の間の温度で合金ストリップを「熱間圧延」し、熱間圧延されたストリップを焼入れし、そして、例えば、好適な電池用格子を加工するための伸張処理のように、その合金ストリップに対して穿孔する前に、機械的特性および高温腐食特性を向上させるべく、好ましくは200oF(93℃)から500oF(260℃)で加熱時効させることによって、Pb−Ca−Sn−Ag格子を製造する方法を記載している。
Palumboは国際公開第01/26171号(2001年)において、ミクロ組織中の特定粒界の比率を、好ましくは少なくとも50%にまで、増加させた鉛蓄電池用の再結晶した鉛および鉛合金の正極電極について、また、そのミクロ組織は鉛合金を加工または歪み加工し、続いて鉛または鉛合金を焼鈍する工程からなる方法によって得られることを記載している。加工および焼鈍が1サイクルによっても得られるが、そのような工程を多数回繰り返すことで、ミクロ組織中の特定粒界数を実質的に増加させ、また電池稼動期間における電極のクリープ、粒界腐食そして粒界割れに対する耐性を改善させ、そしてその結果、電池寿命を延ばし且つ電池の寸法と重量を低減する機会を得ることができる。
ピーニングは、ショットが制御された状態で高速度で表面に当るように向けられており、一連のショットの衝撃によって金属部品の外面層に圧縮応力を生じさせる非伝統的な変形方法である。ピーニングは試験体表面を清浄にし、疲労強度を上昇させ、そして応力腐食割れの原因となる引張応力を除去する。山田は米国特許第5,816,088号(1998年)において、高速ショットピーニングを使用した鋼製ワークの表面処理方法について記載している。Mannavaは米国特許第5,932,120号(1999年)において、低エネルギーレーザーを使用したレーザ衝撃ピーニング装置について記載している。
米国特許第4,753,688号公報 米国特許第1,675,644号公報 米国特許第3,888,703号公報 米国特許第5,611,128号公報 米国特許第5,604,058号公報 米国特許第5,702,543号公報 米国特許第5,817,193号公報 米国特許第6,086,691号公報 国際公開第00/60677号パンフレット 国際公開第01/26171号パンフレット 米国特許第5,816,088号公報 米国特許第5,932,120号公報 米国特許第5,462,109号公報 KronbergおよびWilson、Trans.Met.Soc.AIME,185,501(1949年) Brandon、Acta Metal.,14巻、1479頁(1966年) Palumbo、Scripta Metallurgica et Materialia、25巻、1775頁、(1991年) Lehockey、微視的観察および微視的分析の議事録1996(G.W.Baileyら編)サンフランシスコ出版社、346頁、(1996年)
(発明の目的)
本発明の目的は、重力鋳造または連続鋳造を利用して、鉛、並びにAg、Al、As、Ba、Bi、Ca、Cd、Cu、Li、Mg、Na、Se、Sb、Sn、Sr、およびZnからなる群より選択される少なくとも1種の元素と合金化した鉛をビレットに鋳造し、続いて押出しおよび/または圧延し、望ましくはそのストリップを例えば伸張または打抜きによって適宜穿孔した集電体の製造方法を提供することにある。最終形状として、集電体はブックモールド格子、管状格子、箔またはシート、穿孔(すなわち、好適には打抜きまたは伸張された)ストリップ、連続鋳造格子、または鋳造に続いて最終形状に圧延された連続鋳造格子にすることができる。
本発明の目的は、新たな加工熱処理を「簡便な」連続製造工程中で行うことにより、液式、ゲル式または制御弁式鉛蓄電池用集電体の製造方法を提供することにある。
本発明の目的は、「簡便な」連続製造工程終了後に、最終形状または最終に近い形状にある集電体の外表面の少なくとも一部に、新たな加工熱処理を行うことにより、液式、ゲル式または制御弁式鉛蓄電池用集電体の製造方法を提供することにある。
本発明の目的は、ビレットを連続的に鋳造し、その後、所望の厚さに圧延し、状況に応じて好適に反復式伸張、回転式伸張または打抜きを用いて穿孔する「Properzi式」工程(イタリア国ミラノ市Contiouus S.p.A.社)によって製造された集電体の処理方法を提供することにある。
本発明の目的は、格子状構造を連続的に鋳造し、その後、所望の寸法に圧延する「Con Roll式」工程(アメリカ合衆国ミシガン州ポートヒューロン市Wirtz Manufacturing Inc.社)を用いて、格子素材を連続鋳造によって製造された集電体を一括処理する方法を提供することにある。
本発明の目的は、Vinczeが米国特許第5,462,109号において、この明細の内容は参考のために引用されるが、記載された「Cominco式」ドラム連続鋳造(カナダ国ブリティッシュコロンビア州バンクーバー市Teck−Cominco Ltd社)によって、そして状況に応じて所望の厚さにストリップを好適に圧延し、また状況に応じて続いて好適に穿孔することによって製造された集電体についての処理方法を提供することにある。
本発明の目的は、ビレットを鋳造し、所望の厚さにまでストリップへと押出し、続いて状況に応じて圧延し、状況に応じてストリップを穿孔することによって製造された集電体の処理方法を提供することにある。
本発明の更なる目的は、圧延、押出し、鍛造などを含む簡便な変形工程による一般的な場合のように、実質的な寸法変更をせずに仕上げ部品を処理できる工程を提供することにある。この特徴により、例えば、部品の実質的な変形を伴わない「Con Roll式」格子はもとより、ブックモールド鋳造の鉛蓄電池格子、管状格子、PbおよびPb合金ストラップ並びに極柱のような仕上げ部品を処理することができる。
本発明の更なる目的は、電気化学式電池に利用される非消耗電極、集電体、およびその他金属製品の耐食性を実質的に向上させ、そして表面部分を増大させると同時に、表面集合組織を改善させて、結果として活物質およびペーストの密着性を含む表面被覆の密着性を実質的に向上させる熱処理を状況に応じてその後引続き行う、ピーニング処理を提供することにある。
本発明の更なる目的は、「ブックモールド」格子または「管状」格子の重力鋳造を含む処理、および表面部分を増加させてペースト密着性を改善させるための「Con Roll式」処理(アメリカ合衆国ミシガン州ポートヒューロン市Wirtz Manufacturing Inc.社)を用いたあらゆる商業的工程によって製造された集電体の外側表面の少なくとも一部を処理する方法を提供することにある。
本発明の更なる目的は、電気化学式電池用の金属部品に対して、部品全体としての均一な物理的および化学的特性を必ずしも与えることなく、その表面および表層付近の腐食特性を改善する工程を提供することにある。このことは、化学的腐食が電気化学式電池では、一般に腐食性電解質に曝されている、部品表面または表面付近で主に発生するので、その分野における通常の知識を有する者にとっては自明である。
本発明のもう1つの目的は、鉛または鉛合金の耐クリープ性並びに、粒界腐食および粒界割れに対する耐性の少なくとも1つを向上させるために、鉛若しくは鉛合金集電体またはその前工程品(precursor)に対して特定粒界の比率を増加させる処理となる加工熱処理を提供することであって、その加工熱処理は、鉛または鉛合金に対して、固溶限温度以下の温度で鉛合金を好適に変形させ、特定粒界の密度を実質的に増加させるために引続きその鉛合金を再結晶させるに十分有効な時間と温度で焼鈍することを含む処理サイクルを少なくとも1回行ったものからなる。
(発明の原理)
冶金分野における通常の知識を有する者には知られているが、変形は、再結晶しておらず、変形した結晶粒の組織をもたらすこととなる、転位が残留するほど十分に低い温度での物体への機械的変形を含む。本発明は、固溶限温度以下の温度で、好ましくは固溶限温度と約40℃の間で、少なくとも物体の表層またはその物体全体を変形させることに依るものであり、その後焼鈍処理へと続く。好適な変形処理として、圧延、押出し、打抜き、伸張、繰返し曲げまたはピーニングからなる。
これらの変形処理のいずれもが材料の加工に用いることができる。Lehockeyの米国特許にあるように、これまでは、その変形は室温またはより低温で冷間加工する必要があると報告されていた。今回、好適な再結晶処理と組合せた場合、より高温で変形を行ったとしても改善されることを見出した。例えば、圧延機にあるストリップまたは押出しチャンバーの温度によって決まる変形処理の温度は、25℃と250℃の間であり、より好ましくは、35℃と200℃の間、更に好ましくは40℃から150℃まで、更により好ましくは60℃から125℃までである。変形の最高温度は、処理される合金の固溶限温度以下である必要がある。
ビレットまたは厚ストリップの一般的な範囲は0.030インチ(0.76mm)から1インチ(25.4mm)までである。圧延工程は、例えば、イタリア国ミラノ市Contiouus S.p.A.社が供給する設備を使用するように、従来知られたあらゆる方法によって行ってもよい。ストリップ厚は一般に0.002インチ(0.05mm)から0.125インチ(3.2mm)までの範囲である、特定の電池用途に調整すればよい。小さい、例えば、円筒形薄膜型電池では、本発明によれば厚さが約0.002インチ(0.05mm)から0.010インチ(0.25mm)までの範囲で処理された箔に使用することができ;自動車用12から42Vまでの電池では、一般には0.010インチ(0.25mm)から0.045インチ(1.14mm)までの範囲のストリップ厚が使用され;そして産業用電池ではストリップ厚は0.150インチ(3.8mm)に至ってもよい。重要な機械的な加工が変形処理においてストリップに導入されることは、圧延前後のストリップ厚の比較から明らかである。
再結晶工程に先立って行われる変形処理は、およそ室温(15℃から25℃まで)から材料の固溶限温度までの温度範囲で行う。より一般的には、変形処理は30℃と125℃の間で、更に一般的には40℃と95℃の間で行う。圧下率は、例えば、ビレットを所望のストリップ厚へと変形するのに好適な値を選択すればよく、変形温度は、その後の再結晶熱処理において特定粒界が創出される最適状態に調整すればよい。
特許請求の範囲を含む本明細書において、鉛に言及するときは、純鉛または鉛合金のいずれかを意味し;変形に言及するときは、鉛または鉛合金が室温と固溶限温度の間で行われる例えば、圧延、押出し、打抜き、伸張、曲げおよびピーニングなどのあらゆる変形操作を意味し;鉛合金は1種またはそれ以上の鉛と合金化する元素を含んだ鉛を意味する。
好ましくは、鉛合金の変形工程および鉛合金を再結晶させる焼鈍工程は、複数回繰返すことである。再結晶工程間の過剰な歪みは本工程では悪影響を及ぼすことがある。しかしながら、本発明者らは、他の金属と異なり、鉛合金のうち、少なくとも数種の合金では変形または歪み加工および焼鈍の1回の工程で、特定粒界の密度が改善されることを見出した。
鉛合金は、Ag、Al、As、Ba、Bi、Ca、Cd、Cu、Fe、Li、Mg、Na、Se、Sb、Sn、Sr、およびZnからなる群より選択される少なくとも1種の合金化元素からなるが、2種またはそれ以上の合金化元素を含んでもよい。(複数種の)合金化元素は鉛中に固溶する必要はない。実質的な合金となっている場合、鉛合金は、好ましくは各変形工程において約1%〜99%の肉厚減少または歪みが導入され、そして、鉛合金はその後、焼鈍工程において、通常は約100°から325℃(これは鉛または鉛合金の融点より低い温度である)までの温度範囲で、1秒から360分(好ましくは5秒から360分)間、再結晶された後、引続いて室温まで空冷または焼入れされる。再結晶および特定粒界の形成に必要な正確な変形および焼鈍温度並びに時間は、合金化添加物とその添加比率によって変化する。
好ましくは、処理された鉛および鉛合金中の特定粒界比率は全粒界中の少なくとも50%である。しかしながら、特定粒界が少なくとも20%、30%または40%に達すれば既に腐食性能を改善することを見出した。
本発明の別の局面では、鉛または鉛合金は、例えば、正極格子または箔および電池接続子(cell interconnects)のように、鉛蓄電池の構成部材へと引続き加工されていく。まず最初に、本発明の処理は、鉛または鉛合金に対して行うものであって、またこの処理は鉛物品の少なくとも一部分に対して行うことが好ましい。均一性の程度は、鉛合金に対する例えば、スタンピング成形、押出し、圧延、伸張、鍛造、ピーニングなどの変形方法およびに構成部材の形状に依存し得る。
本発明に関する加工熱処理は析出または時効硬化が必要となる従来技術の方法とは異なる。それ故に、従来技術である析出処理と違って、ここで述べる処理は、従来技術で必要とされる析出物形成元素を含まない純鉛および鉛合金に適用できる。鉛合金が、析出硬化の1つまたは複数の変形工程において、析出することとなる合金化材料を含むか否かに関らず、本発明で述べる処理によって、鉛または鉛合金の耐食性が向上する。本発明の処理は鉛または鉛合金材料の硬化が開始しなくとも、特定粒界の含有量を増加させる。従来技術の処理では、様々な物理的性質を改善させるために合金の硬度上昇を本質的に指向しているので、硬化させないことは従来技術の処理がなされた合金とは完全に異なる。
本発明は、鉛蓄電池の酸性環境下のクリープ変形(成長)並びに粒界腐食および割れに対するより優れた耐性を供するために、その電池中の正極集電体およびコネクタに適用される鉛および鉛合金の処理に関するものである。
まず図1の如く、従来の鉛蓄電池は、全体が10で示されているが、筐体12、内部区画14、電極16、母線(busbar)18および電解液20からなる。区画14は電解液20を収納する役割を果たす。電極16および母線18は従来から、鋳造または展伸鉛合金より形成されている。例えば改善された強度、耐クリープ性、および改善された気泡発生特性を与えるため、適切な合金化元素が必要となるので、純鉛ではなく鉛合金が従来から用いられている。従来の鉛蓄電池ではその信頼性に関して実績があるが、寿命およびエネルギー密度は限られている。寿命が限られるのは、継続的な充電−放電サイクルに起因する電極のクリープ(成長)、腐食および割れのためである。
商業的に生産される鉛蓄電池の構成部材は一般に、まず鋳造された鉛または鉛合金から形成される。鋳塊またはストリップをシートに圧延し、そして引続いて格子を形成するために鉛合金シートにスリットおよび歪み加工をする際に、変形もまた頻繁に用いられるが、ミクロ組織の再結晶を完了させる処理は、従来の鉛蓄電池の構成部材では使用されていなかった。鋳造ままのまたは展伸された鉛基鉛蓄電池構成部材中の、特定粒界または対応格子(CSL)の粒界の比率は、常に20%未満であり、通常14%から17%の範囲にある。従来からある鋳造したままで展伸された鉛基正極集電体は、粒界腐食、割れおよびクリープ変形(成長)に対して敏感である。
本発明によれば、電池における鉛合金正極集電体の構成部材は、冶金学的ミクロ組織において20%、30%、40%または50%以上という高比率の特定粒界を有している。特定粒界は結晶学的には、特定対応格子の方位と異なるものがΣ≦29を満たす、次の式(1)の範囲内として定義できる。
Δθ≦15°Σ-1/2 (1)
(D.G. Brandon: Acta. Metallurgica. 第14巻,1479頁,1966年)
特許請求の範囲を含む本明細書において、「特定粒界」という用語は、Σ≦29且つ式(1)を満たす粒界と定義する。
本発明の方法は、鉛基正極集電体構成部材に対して、特定粒界の密度を向上させるための処理を包含する。より詳しくは、これは、例えば析出硬化のように従来の強化機構に依拠することなく、また材料の引張強度または硬度を実質的に変化させることなく、達成されるものである。この処理は粒界制御(GBE)と呼ばれる。特定粒界の密度が20%を、好ましくは50%を超える鉛基正極集電体は、クリープ変形および粒界腐食に対する耐性が際立って改善されることが見出されている。結果として、粒界制御された鉛基正極集電体の構成部材を有する鉛蓄電池は、寿命が改善される。更に、クリープおよび粒界腐食による劣化に対抗する材料の許容範囲が縮小する結果、電極の厚みを低減でき、そして電池のエネルギー密度を増大させることができる。
Palumboらは「耐粒界応力腐食性のための粒界設計および粒界制御」を、Scripta Metallurgica et Materialia、25巻、1775頁、(1991年)において、そしてLehockeyらは「粒界性格分布と粒界腐食の関係」を、微視的観察および微視的分析の議事録1996(G.W.Baileyら編)サンフランシスコ出版社(1996年)、346頁において、それぞれ粒界腐食と割れに対する一般モデルを提案している。これらの論文の内容を本明細書において参考のために示す。しかしながら、これらの論文は単に理論的なモデルを提案しただけであり、鉛への適用性については一切示唆がなく、更に詳しく言えば、他の公知技術と同様に、如何にして特定粒界の密度を増大するかについて何らの方向性も含まれていない。本発明者らは、鉛蓄電池における特定粒界の出現率が、割れ(および電気的連続性の喪失)並びに腐食(最小壁厚の喪失)に対する感受性を支配することに基づき、これらのモデルがより軽量で且つよりコンパクトな鉛蓄電池の設計に用いられることができ、また電池のサイクル寿命全体に直接関連することを示すことができることを見出した。
バルク粒界割れ感受性に対する粒度および「特定」粒界(すなわちΣ≦29)の出現率の効果を定量化する際、電極の表面に発生し、電極の内部へと粒界に伝播する割れは、割れが継続するための利用可能な粒界経路の両方が、(1)割れに対する固有抵抗(例えば、低ΣCSLの特定粒界)または(2)印加した応力の軸に対して好ましくない方位のいずれか一方によって通じなくなったときに、三重点で停止すると考えられる。割れを停止する確率(P)は、
P = fsp 2 + 2[fosp(1−fsp)] (2)
によって表され、ここで、foは印加された応力の軸に対して好ましくない方位となっている材料における界面の割合であり(foは粒形に強く依存し、従来の等軸材料ではその値が1/3となる点に留意しなければならない)、そしてfspは割れに対して固有抵抗となる特定界面の割合である。割れ開始表面から長さL以内で割れが停止する確率χは、
(1−χ) = (1−P)2L/d (3)
によって表され、ここで、dは平均粒度である。割れ停止確率は次の3つの基本手法によって上げることができる。
(1)固有抵抗を有する粒界の出現率(fsp)を上昇させること、
(2)粒度(d)を下げること、および
(3)粒形(fo)を変化させること。
「粒子脱落」に起因した断面厚さ全体的な喪失で、粒界腐食は完全な状態の鉛酸正極電極を劣化させることがある。ある粒子が母相から脱落するには、その境界となる粒界全体が腐食によって完全に劣化される必要がある。「特定」粒界が腐食の影響を受けず、且つ材料が六角柱状の粒子からなると仮定すれば、任意の接点でのそのような粒子脱落を停止する確率は、
(1−P) = (1−fsp3(1−fsp 3) (4)
によって表すことができる。
式(4)で導かれる確率(P)は式(3)に適用でき、ここで、粒界割れと同様に、粒度(d)を下げて特定粒界の出現率(fsp)を上昇させることにより、粒界腐食による部分損失に対する耐性を著しく向上するであろうことが示される。鉛蓄電池の動作寿命は、粒界腐食または粒界割れのいずれかの機構によって、最小電極寸法(Dcrit)での肉厚方向に貫通する確率に反比例すると考えることができる。式2、3、および4から、並びに粒界劣化は最小寸法の境界となる2つの表面から同時に伝播する(すなわちDcrit=2L)として、所定のサイクル寿命(C)を得るのに必要な最小電極断面厚さに対するミクロ組織(すなわち粒度および粒界性格分布)の効果を決定する次の式(5)を導くことができる。
Figure 2005510628
この式において、xは統計的確実性であり、Pは、粒界割れ過程および粒界腐食過程について、それぞれ式(3)または式(4)から得られた劣化過程が停止する確率である。Kは、従来の鉛蓄電池の典型的な性能から推定することができる定数である。例えば、典型的なSLI電池に対する厳格な実験室試験において、約1mmの最小断面、50μmの平均粒度d、および約15%の特定粒界(fsp)からなるミクロ組織を有する格子では、約200回の充電−放電サイクル寿命Cが観察される。統計的確実性(x)が99%と仮定すると、これらの条件により、粒界割れ過程および粒界腐食過程に対して、Kの値は、それぞれ408サイクルおよび48サイクルとなる。
従来の粒度が50μmである材料に対して特定粒界の含有量を式(5)から計算し、同含有量の増加による鉛蓄電池性能の改善推定値を図2にまとめている。この図に示す通り、特定粒界数fspの増加により、劣化過程を支配する粒界割れおよび粒界腐食の両方においてサイクル寿命の著しい改善が期待できる。従来のSLI正極集電体寸法が1mmの場合、特定粒界数が一般的な観測値(すなわち15%)から50%へと増加する結果、サイクル寿命の約4倍の改善が期待できる。更に、図2に示す通り、この性能改善は、SLI電池の現在の性能を維持したまま、最小寸法では0.2mmとなっている格子を使用することができる。正極格子厚さのこのような低減は、鉛蓄電池の寸法および重量を著しく削減させる(1mmの正極格子は電池総重量の25%を占める)か、またはその分だけエネルギー密度を増加させると期待することができる。
粒界の結晶学的構造を変化させる方法で、金属中の特定粒界の割合を増加させることにより、粒界制御は、金属の割れの伝播および歪み変形(クリープ)に対する耐性を向上させる。これは、析出または時効硬化のように、粒内の微視的構成成分の組成、寸法および分布を変化させることを指向しており、鉛蓄電池に改良された部材を提供しようとするこれまでの取組みと対照的である。変形および再結晶処理を注意して制御することで、特定粒界の割合を有利に増加させることができる。
本発明の方法は、鉛または鉛合金の変形およびその後の再結晶処理のパラメータを注意して選択することにより、特定粒界の割合を増加させることができるという発見に基づいている。所望の特定粒界の密度に達するまで、ある特定の工程を繰返してもよい。変形は、引抜き、スタンピング成形、圧延、プレス、押出し、伸張、鍛造、曲げまたはその他の任意の物理的な変形の形態を採ることができる。本発明者らは、鉛および数種の鉛合金においては、ただ1回の変形および再結晶工程で40%から50%を超える特定粒界の密度または割合に達することができることを、しかも、変形および再結晶工程を追加することにより、全体として平均粒度がより小さく、より均一な製品が得られることを見出した。粒度が小さいと、特定粒界の総量は増加し、その結果、耐割れ性が改善される。
さらに、上述した通りまた式(5)から予測されるように、粒度を小さくすることは、本発明において改善効果を示すのに必要な特定粒界の割合の水準を有利に低減させる。最小粒度には物理的な制約があるけれども、本発明に係る改善された特性を得るには、総じて特定の割合が50%以上となる必要がある。驚くべきことに、fsp>20、>30および>40%の場合にも、腐食性能に対して目立った改善があることを見出した。
再結晶温度、各工程の変形の総量、そのような変形がなされる温度、再結晶温度での鉛または鉛合金の合計保持時間、用いられる鉛または鉛合金の組成、およびその結果として得られた鉛または鉛合金中の特定粒界の割合の間には、ある関係があることが見出された。
鉛が再結晶する温度が、本発明では極めて重要となる。一般に、再結晶は0.5Tmを超えた温度の金属で起こり、Tmは、ケルビン温度での溶融する絶対温度である。純鉛では、室温がおよそ0.5Tmとなる。本発明では、特定粒界の割合が最大になるように再結晶が起こる温度を選択しなければならない。しかしながら、温度が高過ぎては、過度の粒成長が起こるので、よくない。更に、早過ぎる回復を避けるために、また、ある種の合金では長過ぎる加熱による第2相の析出を避ける(それによって合金が過度に硬化し、新たな結晶粒および粒界の核生成を妨げることになるのを防ぐ)ために、比較的短時間で所望の再結晶温度に達するようにしなければならない。
鉛合金の組成のわずかな変更が、鉛中の特定粒界の密度の最適化に必要な再結晶温度および時間に影響を与えることがあるので、所与の鉛組成における特定粒界の割合を最大化する変形量、焼鈍温度および時間、並びに処理サイクルの回数を、試行とその分析を通して決定しなければならない。
市販の純鉛では、工程毎に1%から70%の範囲で導入する変形または歪み、および150℃から280℃の温度範囲で、5秒から360分の焼鈍時間で行う再結晶からなるサイクルを1回以上行うことで、特定粒界の密度が50%を超えるものを得ることができる。
他の鉛合金では、本発明者らは、これらはPb−X−Y合金として分類できることを見出した。ここで、元素Xは強い析出形成元素からなり、元素Yは弱いかまたは非析出形成元素からなる。元素Xは周期表のI族およびII族の元素からなり、電池の合金化成分として一般的で可能性があるものとして、Li、Na、K、Rb、Cs、Fr、Be、Mg、Ca、Sr、BaおよびSbを含む。元素Yは、他の一般的な鉛合金化成分であり、Ag、Sn、Cu、Zn、AsおよびBiを含む。
合金元素のある組合せでは、単独で存在する時よりも結果として析出物をより強化するものがある。Snにおいては、Caが存在すると、CaSn3というとても強化に有効な析出物を形成する。殆どの場合、Snを十分添加し、結果として過剰となっているのは、電気化学的理由に因る。
元素Xの累積濃度が0.05重量%未満で、元素Yの累積濃度が0.5から5重量%の範囲である鉛合金(以下クラスI合金と称する)に対して、10%と40%の間の変形または歪み加工をし、200℃と280℃との間の温度において10秒から10分の範囲の時間で再結晶させ、続いて周囲温度まで空冷するサイクル1回によって、特定粒界の含有量が50%を超えるものからなるミクロ組織が得られる。
元素Xの累積濃度が0.05重量%以上で、元素Yの累積濃度が0.5から5重量%の範囲である鉛合金(以下クラスII合金と称する)に対して、40%と80%の間の変形または歪み加工をし、200°と280℃との間の温度において10秒から10分の範囲の時間で再結晶させ、続いて周囲温度まで空冷するサイクル2回以上によって、特定粒界の含有量が50%を超えるものからなるミクロ組織が得られる。
処理時間は材料に依るが、一般的には1秒から3日の範囲であり、より一般的には5秒から12時間、好ましくは10秒から3時間である。
全ての場合において、具体的な再結晶温度および時間は、再結晶が完了するように最適化したものにしなければならない。例えば塩浴および流動床炉で得られるような急速な加熱速度を得ることができる場合には、焼鈍時間を著しく短縮することができる。
以下の実施例に基づいて本発明の方法を説明する。
鋳造ままの市販の純鉛ストリップに対して、1サイクルが1つの変形工程と1つの再結晶工程からなる処理を6回付した。変形は室温にて圧延機で行い、1工程での圧下率を20%までとした。各再結晶処理は160℃で15分間行った。
粒界制御された材料およびその比較材の各試料を分析して、特定粒界の比率を決定した。その結果をこの記載の最後にある表1にまとめた。表1からわかるように、純鉛においては、鋳造ままの材料中の特定粒界の密度は16.5%であった。粒界制御された材料中の特定粒界の密度は64.7%であった。本処理方法は、明らかに特定粒界の数を劇的に増加させている。鋳造材とGBE処理材のミクロ組織を図4に示す。
鉛蓄電池中の正極集電体の成長に直接関連する、試料の歪み変形に対する耐性を測定するために、ASTM E139クリープ標準試験を行った。各試料に対して室温にて数時間に亘って4.8MPaの歪みを付与した。そしてミリメートル単位のその変形量を時間の関数としてプロットした。その結果を図3にまとめる。鋳造まま材の歪み変形速度を算出した結果、年当り1150%であった。比較用に、粒界制御された材料の歪み変形速度は年当り35%に過ぎないことを見出した。本発明の実施形態によって処理された粒界制御された材料は、歪み変形に対する耐性が大幅に向上することを示した。市販の純鉛は析出形成元素を全く含まないため、この結果はTilmanおよびMyersの研究に概説されている析出効果に帰することはできず、本発明の新規性をより一層強調するものであることに留意しなければならない。
Figure 2005510628
前述のクラスIIタイプである一連の市販の鉛合金を、ストリップ形状で従来の鋳造状
態となっているものとして得た。これらのストリップを引続き本発明で記載する方法を用いて処理した。具体的な合金および処理条件を以下にまとめる。
Pb−0.073重量%Ca−0.07重量%Sn合金(クラスII)に対して、1サ
イクルが室温にて圧下率40%に達する冷間圧延、270℃にて10分間の大気焼鈍およびその後の空冷からなる処理を3回付した。特定粒界の含有率が改善されたミクロ組織を図5にまとめる(図5ではPbCaSnと記す)。特定粒界の含有率は鋳造ままから開始した材料における11%から、本記載の方法によって処理された材料における51%へと増加した。
Pb−0.065重量%Ca−0.07重量%Sn 0.03重量%Ag合金(クラスII)に対して、1サイクルが室温にて圧下率40%に達する冷間圧延、250℃にて
10分間の大気焼鈍およびその後の空冷からなる処理を2回付した。特定粒界の含有率が改善されたミクロ組織を図5にまとめる(図5ではPbCaSnAgで示す)。特定粒界の含有率は鋳造ままから開始した材料における12%から、本記載の方法によって処理された材料における70%へと増加した。
Pb−0.073重量%Ca−1.4重量%Sn合金(クラスII)に対して、1サイ
クルが室温にて圧下率40%に達する冷間圧延、250℃にて10分間の大気焼鈍およびその後の空冷からなる処理を2回付した。特定粒界の含有率が改善されたミクロ組織を図5にまとめる(図5ではPbCa「高」Snで示す)。特定粒界の含有率は鋳造ままから開始した材料における17%から、本記載の方法によって処理された材料における70%へと増加した。
ストリップ材から0.59mm厚の格子に成形して、上述の鋳造まま状態およびGBE処理された状態の両方におけるこれら合金の性能を、当分野における標準試験により評価した。70℃の比重1.27の硫酸溶液中で、静電分極させて、20日間200mVの過電圧下で分極する腐食試験を行った。腐食による質量損失を確定させるため、溶液に曝す前と後に、格子電極の重量をミリグラム単位まで近似して計測した。個々の電池に組み込んだペーストを付着させた格子を用いて、サイクル試験を行った。格子重量はペーストを付着させる前に、ミリグラム単位まで近似して確定させた。70℃の比重1.27の硫酸溶液中で、正極格子に対して0.8Vと1.4Vの間で1日当り2サイクルの割合で35日間繰返した。試験完了後、格子から残留ペーストを除去し、再度重量をミリグラム単位に近似して計測した。また、試験前後で格子の部分を走査しデジタル処理することにより、格子の成長に対する感受性を確定させた。
従来の鋳造対照材と比較できるように、処理されたクラスII合金(GBE)の性能を
図6Aおよび6Bにまとめている。すべての場合において、本発明に従って処理された合金は、鋳造対照材と比較して、腐食および成長速度が著しく低減していることを示した。
クラスI合金の代表としてPb−0.03重量%Ca−0.7重量%Sn0.06重量%Ag合金を、市販の回転ドラム式ネットシェイプ鋳造(rotary net shape casting)工程を用いて製造した。続いて0.86〜0.89mm厚の鋳造ストリップに対して、1サイクルが約20%の冷間引張歪み加工(室温にて)、250℃の空気対流炉にて5分間の熱処理、およびその後の周囲温度までの冷却からなる処理を1回付した。歪みは、室温にて格子伸張工程のみにより導入し、工具金型の形状寸法(すなわち伸張されたメッシュの菱形高さ(diamond height))によって制御した。比較用として、展伸しただけでその後の再結晶熱処理を行っていないストリップを製造した。この場合においては1.72mm厚の鋳造ストリップを50%まで冷間圧延し、同様にメッシュ状に伸張した。鋳造まま材、展伸材、およびGBE処理を1回付した材料おのおのに存在する特定粒界の割合は、それぞれ16.0%、15.4%、および64.4%であった。
これらの材料の相対的な腐食および成長性能を、実施例2に記載したサイクル試験において、75℃より高い温度で20日間行い、評価した。その結果を図7Aおよび7Bにまとめるが、本発明に従って処理された材料は、特に展伸された材料に比して腐食感受性を著しく低減することを示している。成長に関しては、GBE材は鋳造比較材および展伸比較材のどちらに対しても著しく優れている。
本発明に従って鉛合金を再結晶させるべく、種々の鉛合金に対して変形および焼鈍のサイクルからなる処理を付した。各試料は室温にて圧下率25%まで変形させて、その後255℃にて5分間の熱処理によって焼鈍させた。圧下変形および焼鈍後に、上述の各鉛合金に対して硬度試験を行った。島津製HMV2000型微小硬度計にて25g荷重を使用して、各試験合金ごとにそれぞれ2箇所において最少6回硬度測定を行った。各金属の硬度は鋳造まま状態のもの(すなわち、変形および焼鈍のサイクルを付していないもの)に対しても同様に測定した。GBE処理前の鋳造まま材試料のfsp値は、全ての場合において10から15%の間であった。各鉛合金の硬度試験結果を表2に示す。全ての合金において、圧下変形および熱焼鈍のサイクルを付したものは、その鋳造ままのものよりも硬度が低い結果となった。
Figure 2005510628
時効硬化合金(Pb−2.0Sb−0.15As)を鋳造し(鋳造後のビッカース硬さは、DPH=11)、本発明の冷間加工/焼鈍サイクル、すなわち、1サイクルが室温にて20%の冷間圧延による工程と、それに続く180℃にて5分間の熱処理からなる処理を3回付した。fspは10%(鋳造まま)から59%(その後試料に対してGBE処理を付した)へと増加した。比較として、1組の試料群に対してMeyers(米国特許第4,753,688号)に従った処理、より詳しくは、25%の冷間圧延を連続して9回行い(途中に焼鈍を行わない)、続いて230℃にて1分間の最終熱処理を行ったもの、を付した。
時効硬化性鉛合金の硬度は、それぞれの処理の完了直後および室温での各時効時間において測定された。50グラム荷重を使用したことを除き、上の実施例4に記載したものと同一の硬度測定方法で行った。硬度値を表3に記す。Meyers処理では、処理したままの硬度(VHN:12)は、鋳造まま材(VHN:11)の硬度よりも高く、GBE処理材(VHN:8)の硬度よりも著しく高いことが明瞭に示されている。また、24時間時効後の硬度がVHN:21に増加していることから、短期硬化性が著しく上昇することが示されている。比較として、GBE材は同期間では初期値からの増加がないことが示されている。10日間(240時間)に亘る時効でMeyers処理材は27VHNへと増加することが示されている。GBE処理材では、240時間後であっても、鋳造ままの硬度ほど高くはない硬度となっていることに留意しなければならない。
Figure 2005510628
種々の鉛合金に対して本発明のGBE処理を付した。Pb−1.8Sb−1.05Sn−0.17As合金では、その処理は、一連のサイクルが室温での50%肉厚圧下とそれに続く220℃にて3分間の熱処理からなるものを2回行うものであった。Pb−0.08Ca−0.3Sn合金では、その処理は、室温での30%肉厚圧下とそれに続く300℃にて10分間の熱処理を行い、引続いて一連のサイクルが室温での40%肉厚圧下とそれに続く290℃にて10分間の熱処理からなるものを3回行うものであった。Pb−0.04Ca−0.65Sn−0.03Ag合金では、その処理は、室温での60%肉厚圧下とそれに続く250℃にて3分間の熱処理を行うものであった。Pb−0.07Ca−1.4Sn合金では、その処理は、一連のサイクルが室温での50%肉厚圧下とそれに続く270℃にて10分間の熱処理からなるものを3回行うものであった。
各金属の最終的な硬度は4週間時効硬化した後に測定された。硬度値は上記の測定方法で、荷重50グラムの下で得られた。各合金のGBE処理前の硬度(すなわち、鋳造まま硬度)もまた、GBE処理後の硬度測定に用いた方法と同じ方法で測定された。各合金に対して本発明に従った処理をしたものおよび鋳造ままのものから得られた硬度値を、またGBE処理試料についてはfsp値と粒度を表4に示す。鋳造まま試料のfsp値は10から15%までの範囲にある。GBE処理材が有する硬度は永遠に鋳造まま比較材の硬度以下であることを実証することで、GBE処理材が時効硬化することで到達する最高硬度は鋳造まま硬度ほど高くないことを表4は明確に示す。
Figure 2005510628
Pb−0.06Ca−1.2Sn合金を鋳造し、表5に示す種々の温度にて圧延変形を用いた処理に付した。データから明らかなように、20、40および80℃にてストリップを加工し、続いて焼鈍処理したものは全ての場合において、試料のfsp値は60%を越えた値にまで上昇し、鋳造まままたは室温にて圧延した試料よりも低い値にまで最大引張強度(UTS)が低下した。
Figure 2005510628
Pb−0.06Ca−1.2Sn合金を表6に示すように熱間変形およびそれに続く焼鈍があるものとないものからなる処理に付した。Pb合金を圧延または押出しによって熱間変形した場合のfsp値は、後に続く焼鈍工程がないときにおいてさえ40%を越えた値にまで上昇した。
Figure 2005510628
ストリップを50℃から200℃までの温度範囲またはPb合金の固溶限温度以下の温度にて押出した場合も、同様な結果に至った。
0.065%Ca、1.2%スズを含み、残部が市販の純鉛である、10cm幅に圧延された鉛合金ストリップから長さ30cmの断片を切り出した。一組の試料をショットピーニングし、残り(比較材)は未処理のままとした。密着性(表7)を測定するためにASTM D1876−95剥離試験を行った。試料を25mm幅に切断し、アセトンを入れた超音波浴中で洗浄し、そして予めクランプ止めしていた端より4から5cmの箇所を角度90°に曲げた。活物質を含有するペーストへの適用をシミュレートするため、エポキシのフィルム(Hysol EPK608 epoxy)を用いた。2つの試料をそのエポキシで接着し、その後適当にキュアした(24時間)。試料は、インストロン4201型万能試験機を用いて試験した。その結果を表7に記す。ピーニングした表面では接着強度の均一性が改善されたこと、およびこれら試験片では凝集破壊が観測されたことを、180度剥離試験(T−peel test)は実証した。平滑な(比較材)表面の試験片は接着不良を示した。
Figure 2005510628
ショットピーニングした表面が密着性を実質的に(50%を上回る)改善したことを本試験は明確に示している。
一組のPb−Ca−Sn合金ブックモールド鋳造格子の表面を室温にて10秒間ピーニングし、続いて熱処理(275℃、10分間)した。格子の断面を入念に分析することで、浸透深さが達する部分はピーニングした表面下350ミクロンにまで延びたこと、およびバルク材では粒径が約260ミクロンのままであるのに対して、表層付近の粒径が10ミクロンであったことが明らかになった。未処理試料のfspおよびピーニングして焼鈍した処理をした材料の表面下350ミクロンを越えた部分のfspが15%のままであるのに対して、その表層では40%であった(表8)。
sp
Figure 2005510628
2種のPb−Ca−Sn合金をシートに鋳造した。従来技術で処理されたままのセットおよび本発明に従って処理したセットに対して、亜鉛電解採取の操業における典型的な環境下で腐食試験を行った。室温にて80psiで28ミルの鋼球でピーニングを行った。3分以内に基材当り3パス行い、ピーニングした試料を引続いて250℃にて10分間焼鈍した。GBE処理を促進する析出物が存在するように改質するために、300℃にて30分の浸漬を含む予備処理を用いた。次表に試料の特徴および腐食性能を記す。
試験試料を典型的な亜鉛電解採取の電解液(60℃にて160g/l硫酸、60g/l Zn2+)に浸漬し、そして鋼陰極に対して40mA/cm2にてその試験試料を陽極酸化させることことで腐食試験を行った。結果を表9および表10に示す。
Figure 2005510628
Figure 2005510628
本発明をより良く理解するために、また本発明が如何にして効果を現すかをより明確に示すために、一例として以下の図面を示す。
図1は、従来の鉛蓄電池の断面図である。 図2は、臨界電極寸法に対するサイクル寿命の変化を示すグラフである。 図3は、鋳造ままの純鉛のクリープ速度と、本発明の方法に従って処理された純鉛のクリープ速度との比較を示すグラフである。 図4は、(a)鋳造まま、および(b)本発明の方法に従って処理された純鉛における特定粒界の分布図である。 図5は、一連の鉛合金組成に対して本発明の方法を用いた場合の、特定粒界含有量の増加をまとめた棒グラフである。 図6Aおよび6Bは、一連の鉛合金組成に対して本発明の方法を用いた場合の、腐食性の改善と電極の成長をまとめた棒グラフである。 図7Aおよび7Bは、Pb−0.03Ca−0.7Sn−0.06Ag合金の鋳造まま状態、展伸した状態および展伸し再結晶した状態(後者は本発明の方法を用いた場合である)における腐食および電極の成長の各値を相対的にまとめた棒グラフである。
本発明は、展伸させて再結晶させることで、クリープ、粒界割れおよび腐食に対する耐性を向上させた鉛および鉛合金に関するものである。より詳しくは、電池信頼性を向上させ、稼動寿命を伸ばし、そしてエネルギー密度を増大させるために、再結晶処理を通じてミクロ組織中に新たな粒界を形成させて、腐食および成長に対する耐性を改善させた鉛蓄電池用鉛および鉛合金の正極集電体およびコネクタに関するものである。
鉛基正極集電体格子、管状スパイン(tubular spines)、箔およびコネクタ(ストラップ(straps)、つまみ(lugs)、極柱)における粒界劣化(すなわち、クリープ変形、割れ、および腐食)は、鉛蓄電池の初期故障の主要原因である。粒界腐食は、Pb集電体およびその構成部材がPbO2に変化する際に発生する。粒界腐食は自動車用蓄電池の寿命を制限し、産業用蓄電池の寿命に影響を及ぼす。
クリープ変形は、主として粒界滑りによって生じ、正極集電体の寸法を増加させる。いわゆる「成長」は、電極表面とPbO2ペースト間の接触が消失し、隣接する電極間で短絡する原因になる。正極集電体の成長は粒界「割れ」の一因にもなる。
昨今の自動車ではボンネット下の温度が上昇するため、鉛蓄電池における正極集電体の成長は、自動車用蓄電池の主な故障要因である。これらの粒界劣化が進行する結果、そして動作寿命およびサイクル寿命に対して充分な性能を維持するために、正極集電体の最小寸法にはかなりの重量許容量が必要となり、その分だけ電池の全体寸法および重量を増加させている。
鉛正極格子における初期の改良は、Sb、Sn、As、Caおよびその他の元素を用いて鉛を合金化することによってなされた。これらの取組みは、例えばMyersの米国特許第4,753,688号、Deanの第1,675,644号、およびTilmanの第3,888,703号に開示があるように、全てアンチモン含有鉛合金に関するものであるが、析出または時効硬化によって合金を強化したものである。析出および時効硬化による方法においては、周囲温度すなわち操作温度では鉛中に固溶せずに、且つその金属中に第2相を形成する合金化元素が存在しなければならない。一般に、硬化は、鉛合金に歪み加工した後、第2相を固溶させるほどに固溶限温度(solvus temperature)より高い温度で熱処理し、そして鉛中に合金化元素が過飽和固溶体を形成するようにその金属を焼入れすることで得られる。一定時間経過後、合金化元素は固溶体から、好ましくは小さい析出物の形態で、析出してその金属中に第2相を形成する。これらの第2相析出物はその金属中の転位運動を妨げ、粒界滑りを阻害して、その結果材料を強化させて硬化させる。熱処理後の焼入れは、析出物寸法を小さく保つために必要であり、そして強化および成長に対する耐性に有効である。熱処理前の変形は、一般には冷間または熱間加工によってなされるが、第2相が析出するための核生成サイトとして作用し、そして結果として析出物をより均一に分布させる転位を、その金属の結晶構造中に形成させる。
鉛および鉛合金の融点は比較的低いため、結果として析出硬化は一般には室温で発生することに留意する必要がある。上記に列挙した特許に例示されるように、従来技術で教示される方法は、主に目標強度を得るために必要な時間を、室温での数日間から昇温させた炉温での数分間へと短縮することを指向したものである。
鉛蓄電池分野では、溶融合金を鋳造後に冷間加工によって展伸された鉛合金は、単に最終形状に鋳造されただけの鉛および鉛合金に比べて、成長に対する耐性が高くなるということも一般的に知られている。この性能改善は、「ミクロ組織」の微細化に因るものとされ、例えばWirtzの米国特許第5,611,128号および第5,604,058号では、鋳造格子の素材から、ニア・ネット・シェイプの電池用電極に冷間圧延する過程に関する記載がある。室温ではより長期間の時効が必要となるのに対して、このような展伸鉛合金では、析出処理で均一な析出物の分布が得られるという利点もある。これについては、「展伸」電極を用いた性能改善は、例えばCa、Sr、Sb、Baなどの、周囲温度では固溶せずに且つ時効によって析出物を形成するという、合金成分を含む鉛合金でのみ見られることに留意する必要がある。また、析出処理と展伸の両方を行った電極が、粒界腐食に関して何らかの目立った改善を呈するとは示されていない。
析出硬化処理では、周囲温度すなわち昇温された温度での時効による析出物の分布の均一性を向上させるために、合金成分を適切に選択し、予変形を与える必要があるが、粒界滑り(すなわち、粒界に対する「析出物によるピン止め」)に因る格子成長の最小化に関して明らかに有利な影響を与える。本発明者らは、粒界滑りを妨げるためだけでなく、粒界腐食および割れ感受性を最小化するために、材料中の粒界の構造を直接変更することが、好ましいことを見出した。析出を主とした処理と異なり、本発明におけるこのような新たな方法は、純鉛および析出物形成元素を含有しない鉛合金にも適用可能である。これは、より安価な合金の有利な使用への道を開くものである。
ある特殊な粒界が、界面構造の「対応格子」モデル(KronbergおよびWilson、Trans.Met.Soc.AIME,185,501(1949))に基づき、ΣがΔθ内で、Σ≦29且つΔθ≦15°Σ-1/2(Brandon、Acta Metal.,14、1479(1966))を満たす場合、例えば腐食、割れ、および粒界滑り(後者はクリープ変形の主たる因子である)などの粒界劣化の進行に対して高い耐性を有することが、様々な研究によって示されている。しかし、これらの研究は、高密度の特殊粒界がどのようにして得られるのかについて、その指針を提供しておらず、また特記されるように、例えば結晶粒方位解析法のような方法によって多結晶材料中の特定粒界の密度を決定できるようになったのは、最近のことである。また、固相に対する処理に際して新たな粒界を創出させる唯一の手段は、変形に続く適切な熱処理で材料の再結晶に影響を与えることだけであって、鉛蓄電池の正極集電体の処理に関するこのような新たな方法は、それ故、本発明の基礎をなすものである。
Palumboは米国特許第5,702,543号(1997年)および第5,817,193号(1998)において、市販のFeおよびNi基オーステナイトステンレス合金中のそのような特定粒界数を約20〜30%から60%を超える水準にまで増加させる加工熱処理を、そしてこのような増加が結果として、例えば粒界腐食および粒界腐食割れなどの粒界劣化の進行に対して耐性が著しく改善されることを記載している。しかしながら、これらの特許に記載され且つクレームされている処理は特定のオーステナイトステンレス鋼およびニッケル基合金にのみ関するものであり、他の金属に関するものではない。これら合金が対象とする用途および使用時にそれらが曝される環境は、鉛蓄電池の過酷な酸性環境とは全く異なる。
Lehockeyは米国特許第6,086,691号(2000年)において、鉛合金薄板を圧下率30%から80%で冷間変形し、その材料を180℃から300℃の温度範囲で15から30分の焼鈍をし、次のサイクルとしてその変形/焼鈍処理を繰り返すことによって、市販の電解採取による鉛合金電極材料中のそのような特定粒界数を50%を越える水準にまで増加させる加工熱処理を開示している。
Raoは国際公開第00/60677号(2000年)において、合金ストリップを鋳造した後、その合金の固溶限温度と包晶温度の間の温度で合金ストリップを「熱間圧延」し、熱間圧延されたストリップを焼入れし、そして、例えば、好適な電池用格子を加工するための伸張処理のように、その合金ストリップに対して穿孔する前に、機械的特性および高温腐食特性を向上させるべく、好ましくは200oF(93℃)から500oF(260℃)で加熱時効させることによって、Pb−Ca−Sn−Ag格子を製造する方法を記載している。
Palumboは国際公開第01/26171号(2001年)において、ミクロ組織中の特定粒界の比率を、好ましくは少なくとも50%にまで、増加させた鉛蓄電池用の再結晶した鉛および鉛合金の正極電極について、また、そのミクロ組織は鉛合金を加工または歪み加工し、続いて鉛または鉛合金を焼鈍する工程からなる方法によって得られることを記載している。加工および焼鈍が1サイクルによっても得られるが、そのような工程を多数回繰り返すことで、ミクロ組織中の特定粒界数を実質的に増加させ、また電池稼動期間における電極のクリープ、粒界腐食そして粒界割れに対する耐性を改善させ、そしてその結果、電池寿命を延ばし且つ電池の寸法と重量を低減する機会を得ることができる。
ピーニングは、ショットが制御された状態で高速度で表面に当るように向けられており、一連のショットの衝撃によって金属部品の外面層に圧縮応力を生じさせる非伝統的な変形方法である。ピーニングは試験体表面を清浄にし、疲労強度を上昇させ、そして応力腐食割れの原因となる引張応力を除去する。山田は米国特許第5,816,088号(1998年)において、高速ショットピーニングを使用した鋼製ワークの表面処理方法について記載している。Mannavaは米国特許第5,932,120号(1999年)において、低エネルギーレーザーを使用したレーザ衝撃ピーニング装置について記載している。
米国特許第4,753,688号公報 米国特許第1,675,644号公報 米国特許第3,888,703号公報 米国特許第5,611,128号公報 米国特許第5,604,058号公報 米国特許第5,702,543号公報 米国特許第5,817,193号公報 米国特許第6,086,691号公報 国際公開第00/60677号パンフレット 国際公開第01/26171号パンフレット 米国特許第5,816,088号公報 米国特許第5,932,120号公報 米国特許第5,462,109号公報 KronbergおよびWilson、Trans.Met.Soc.AIME,185,501(1949年) Brandon、Acta Metal.,14巻、1479頁(1966年) Palumbo、Scripta Metallurgica et Materialia、25巻、1775頁、(1991年) Lehockey、微視的観察および微視的分析の議事録1996(G.W.Baileyら編)サンフランシスコ出版社、346頁、(1996年)
(発明の目的)
本発明の目的は、重力鋳造または連続鋳造を利用して、鉛、並びにAg、Al、As、Ba、Bi、Ca、Cd、Cu、Fe、Li、Mg、Na、Se、Sb、Sn、Sr、およびZnからなる群より選択される少なくとも1種の元素と合金化した鉛をビレットに鋳造し、続いて押出しおよび/または圧延し、望ましくはそのストリップを例えば伸張または打抜きによって適宜穿孔した集電体の製造方法を提供することにある。最終形状として、集電体はブックモールド格子、管状格子、箔またはシート、穿孔(すなわち、好適には打抜きまたは伸張された)ストリップ、連続鋳造格子、または鋳造に続いて最終形状に圧延された連続鋳造格子にすることができる。
本発明の目的は、新たな加工熱処理を「簡便な」連続製造工程中で行うことにより、液式、ゲル式または制御弁式鉛蓄電池用集電体の製造方法を提供することにある。
本発明の目的は、「簡便な」連続製造工程終了後に、最終形状または最終に近い形状にある集電体の外表面の少なくとも一部に、新たな加工熱処理を行うことにより、液式、ゲル式または制御弁式鉛蓄電池用集電体の製造方法を提供することにある。
本発明の目的は、ビレットを連続的に鋳造し、その後、所望の厚さに圧延し、状況に応じて好適に反復式伸張、回転式伸張または打抜きを用いて穿孔する「Properzi式」工程(イタリア国ミラノ市Contiouus S.p.A.社)によって製造された集電体の処理方法を提供することにある。
本発明の目的は、格子状構造を連続的に鋳造し、その後、所望の寸法に圧延する「Con Roll式」工程(アメリカ合衆国ミシガン州ポートヒューロン市Wirtz Manufacturing Inc.社)を用いて、格子素材を連続鋳造によって製造された集電体を一括処理する方法を提供することにある。
本発明の目的は、Vinczeが米国特許第5,462,109号において、この明細の内容は参考のために引用されるが、記載された「Cominco式」ドラム連続鋳造(カナダ国ブリティッシュコロンビア州バンクーバー市Teck−Cominco Ltd社)によって、そして状況に応じて所望の厚さにストリップを好適に圧延し、また状況に応じて続いて好適に穿孔することによって製造された集電体についての処理方法を提供することにある。
本発明の目的は、ビレットを鋳造し、所望の厚さにまでストリップへと押出し、続いて状況に応じて圧延し、状況に応じてストリップを穿孔することによって製造された集電体の処理方法を提供することにある。
本発明の更なる目的は、圧延、押出し、鍛造などを含む簡便な変形工程による一般的な場合のように、実質的な寸法変更をせずに仕上げ部品を処理できる工程を提供することにある。この特徴により、例えば、部品の実質的な変形を伴わない「Con Roll式」格子はもとより、ブックモールド鋳造の鉛蓄電池格子、管状格子、PbおよびPb合金ストラップ並びに極柱のような仕上げ部品を処理することができる。
本発明の更なる目的は、電気化学式電池に利用される非消耗電極、集電体、およびその他金属製品の耐食性を実質的に向上させ、そして表面部分を増大させると同時に、表面集合組織を改善させて、結果として活物質およびペーストの密着性を含む表面被覆の密着性を実質的に向上させる熱処理を状況に応じてその後引続き行う、ピーニング処理を提供することにある。
本発明の更なる目的は、「ブックモールド」格子または「管状」格子の重力鋳造を含む処理、および表面部分を増加させてペースト密着性を改善させるための「Con Roll式」処理(アメリカ合衆国ミシガン州ポートヒューロン市Wirtz Manufacturing Inc.社)を用いたあらゆる商業的工程によって製造された集電体の外側表面の少なくとも一部を処理する方法を提供することにある。
本発明の更なる目的は、電気化学式電池用の金属部品に対して、部品全体としての均一な物理的および化学的特性を必ずしも与えることなく、その表面および表層付近の腐食特性を改善する工程を提供することにある。このことは、化学的腐食が電気化学式電池では、一般に腐食性電解質に曝されている、部品表面または表面付近で主に発生するので、その分野における通常の知識を有する者にとっては自明である。
本発明のもう1つの目的は、鉛または鉛合金の耐クリープ性並びに、粒界腐食および粒界割れに対する耐性の少なくとも1つを向上させるために、鉛若しくは鉛合金集電体またはその前工程品(precursor)に対して特定粒界の比率を増加させる処理となる加工熱処理を提供することであって、その加工熱処理は、鉛または鉛合金に対して、固溶限温度以下の温度で鉛合金を好適に変形させ、特定粒界の密度を実質的に増加させるために引続きその鉛合金を再結晶させるに十分有効な時間と温度で焼鈍することを含む処理サイクルを少なくとも1回行ったものからなる。
(発明の原理)
冶金分野における通常の知識を有する者には知られているが、変形は、再結晶しておらず、変形した結晶粒の組織をもたらすこととなる、転位が残留するほど十分に低い温度での物体への機械的変形を含む。本発明は、固溶限温度以下の温度で、好ましくは固溶限温度と約40℃の間で、少なくとも物体の表層またはその物体全体を変形させることに依るものであり、その後焼鈍処理へと続く。好適な変形処理として、圧延、押出し、打抜き、伸張、繰返し曲げまたはピーニングからなる。
これらの変形処理のいずれもが材料の加工に用いることができる。Lehockeyの米国特許にあるように、これまでは、その変形は室温またはより低温で冷間加工する必要があると報告されていた。今回、好適な再結晶処理と組合せた場合、より高温で変形を行ったとしても改善されることを見出した。例えば、圧延機にあるストリップまたは押出しチャンバーの温度によって決まる変形処理の温度は、25℃と250℃の間であり、より好ましくは、35℃と200℃の間、更に好ましくは40℃から150℃まで、更により好ましくは60℃から125℃までである。変形の最高温度は、処理される合金の固溶限温度以下である必要がある。
ビレットまたは厚ストリップの一般的な範囲は0.030インチ(0.76mm)から1インチ(25.4mm)までである。圧延工程は、例えば、イタリア国ミラノ市Contiouus S.p.A.社が供給する設備を使用するように、従来知られたあらゆる方法によって行ってもよい。ストリップ厚は一般に0.002インチ(0.05mm)から0.125インチ(3.2mm)までの範囲である、特定の電池用途に調整すればよい。小さい、例えば、円筒形薄膜型電池では、本発明によれば厚さが約0.002インチ(0.05mm)から0.010インチ(0.25mm)までの範囲で処理された箔に使用することができ;自動車用12から42Vまでの電池では、一般には0.010インチ(0.25mm)から0.045インチ(1.14mm)までの範囲のストリップ厚が使用され;そして産業用電池ではストリップ厚は0.150インチ(3.8mm)に至ってもよい。重要な機械的な加工が変形処理においてストリップに導入されることは、圧延前後のストリップ厚の比較から明らかである。
再結晶工程に先立って行われる変形処理は、およそ室温(15℃から25℃まで)から材料の固溶限温度までの温度範囲で行う。より一般的には、変形処理は30℃と125℃の間で、更に一般的には40℃と95℃の間で行う。圧下率は、例えば、ビレットを所望のストリップ厚へと変形するのに好適な値を選択すればよく、変形温度は、その後の再結晶熱処理において特定粒界が創出される最適状態に調整すればよい。
特許請求の範囲を含む本明細書において、鉛に言及するときは、純鉛または鉛合金のいずれかを意味し;変形に言及するときは、鉛または鉛合金が室温と固溶限温度の間で行われる例えば、圧延、押出し、打抜き、伸張、曲げおよびピーニングなどのあらゆる変形操作を意味し;鉛合金は1種またはそれ以上の鉛と合金化する元素を含んだ鉛を意味する。
好ましくは、鉛合金の変形工程および鉛合金を再結晶させる焼鈍工程は、複数回繰返すことである。再結晶工程間の過剰な歪みは本工程では悪影響を及ぼすことがある。しかしながら、本発明者らは、他の金属と異なり、鉛合金のうち、少なくとも数種の合金では変形または歪み加工および焼鈍の1回の工程で、特定粒界の密度が改善されることを見出した。
鉛合金は、Ag、Al、As、Ba、Bi、Ca、Cd、Cu、Fe、Li、Mg、Na、Se、Sb、Sn、Sr、およびZnからなる群より選択される少なくとも1種の合金化元素からなるが、2種またはそれ以上の合金化元素を含んでもよい。(複数種の)合金化元素は鉛中に固溶する必要はない。実質的な合金となっている場合、鉛合金は、好ましくは各変形工程において約1%〜99%の肉厚減少または歪みが導入され、そして、鉛合金はその後、焼鈍工程において、通常は約100°から325℃(これは鉛または鉛合金の融点より低い温度である)までの温度範囲で、1秒から360分(好ましくは5秒から360分)間、再結晶された後、引続いて室温まで空冷または焼入れされる。再結晶および特定粒界の形成に必要な正確な変形および焼鈍温度並びに時間は、合金化添加物とその添加比率によって変化する。
好ましくは、処理された鉛および鉛合金中の特定粒界比率は全粒界中の少なくとも50%である。しかしながら、特定粒界が少なくとも20%、30%または40%に達すれば既に腐食性能を改善することを見出した。
本発明の別の局面では、鉛または鉛合金は、例えば、正極格子または箔および電池接続子(cell interconnects)のように、鉛蓄電池の構成部材へと引続き加工されていく。まず最初に、本発明の処理は、鉛または鉛合金に対して行うものであって、またこの処理は鉛物品の少なくとも一部分に対して行うことが好ましい。均一性の程度は、鉛合金に対する例えば、スタンピング成形、押出し、圧延、伸張、鍛造、ピーニングなどの変形方法およびに構成部材の形状に依存し得る。
本発明に関する加工熱処理は析出または時効硬化が必要となる従来技術の方法とは異なる。それ故に、従来技術である析出処理と違って、ここで述べる処理は、従来技術で必要とされる析出物形成元素を含まない純鉛および鉛合金に適用できる。鉛合金が、析出硬化の1つまたは複数の変形工程において、析出することとなる合金化材料を含むか否かに関らず、本発明で述べる処理によって、鉛または鉛合金の耐食性が向上する。本発明の処理は鉛または鉛合金材料の硬化が開始しなくとも、特定粒界の含有量を増加させる。従来技術の処理では、様々な物理的性質を改善させるために合金の硬度上昇を本質的に指向しているので、硬化させないことは従来技術の処理がなされた合金とは完全に異なる。
本発明は、鉛蓄電池の酸性環境下のクリープ変形(成長)並びに粒界腐食および割れに対するより優れた耐性を供するために、その電池中の正極集電体およびコネクタに適用される鉛および鉛合金の処理に関するものである。
まず図1の如く、従来の鉛蓄電池は、全体が10で示されているが、筐体12、内部区画14、電極16、母線(busbar)18および電解液20からなる。区画14は電解液20を収納する役割を果たす。電極16および母線18は従来から、鋳造または展伸鉛合金より形成されている。例えば改善された強度、耐クリープ性、および改善された気泡発生特性を与えるため、適切な合金化元素が必要となるので、純鉛ではなく鉛合金が従来から用いられている。従来の鉛蓄電池ではその信頼性に関して実績があるが、寿命およびエネルギー密度は限られている。寿命が限られるのは、継続的な充電−放電サイクルに起因する電極のクリープ(成長)、腐食および割れのためである。
商業的に生産される鉛蓄電池の構成部材は一般に、まず鋳造された鉛または鉛合金から形成される。鋳塊またはストリップをシートに圧延し、そして引続いて格子を形成するために鉛合金シートにスリットおよび歪み加工をする際に、変形もまた頻繁に用いられるが、ミクロ組織の再結晶を完了させる処理は、従来の鉛蓄電池の構成部材では使用されていなかった。鋳造ままのまたは展伸された鉛基鉛蓄電池構成部材中の、特定粒界または対応格子(CSL)の粒界の比率は、常に20%未満であり、通常14%から17%の範囲にある。従来からある鋳造したままで展伸された鉛基正極集電体は、粒界腐食、割れおよびクリープ変形(成長)に対して敏感である。
本発明によれば、電池における鉛合金正極集電体の構成部材は、冶金学的ミクロ組織において20%、30%、40%または50%以上という高比率の特定粒界を有している。特定粒界は結晶学的には、特定対応格子の方位と異なるものがΣ≦29を満たす、次の式(1)の範囲内として定義できる。
Δθ≦15°Σ-1/2 (1)
(D.G. Brandon: Acta. Metallurgica. 第14巻,1479頁,1966年)
特許請求の範囲を含む本明細書において、「特定粒界」という用語は、Σ≦29且つ式(1)を満たす粒界と定義する。
本発明の方法は、鉛基正極集電体構成部材に対して、特定粒界の密度を向上させるための処理を包含する。より詳しくは、これは、例えば析出硬化のように従来の強化機構に依拠することなく、また材料の引張強度または硬度を実質的に変化させることなく、達成されるものである。この処理は粒界制御(GBE)と呼ばれる。特定粒界の密度が20%を、好ましくは50%を超える鉛基正極集電体は、クリープ変形および粒界腐食に対する耐性が際立って改善されることが見出されている。結果として、粒界制御された鉛基正極集電体の構成部材を有する鉛蓄電池は、寿命が改善される。更に、クリープおよび粒界腐食による劣化に対抗する材料の許容範囲が縮小する結果、電極の厚みを低減でき、そして電池のエネルギー密度を増大させることができる。
Palumboらは「耐粒界応力腐食性のための粒界設計および粒界制御」を、Scripta Metallurgica et Materialia、25巻、1775頁、(1991年)において、そしてLehockeyらは「粒界性格分布と粒界腐食の関係」を、微視的観察および微視的分析の議事録1996(G.W.Baileyら編)サンフランシスコ出版社(1996年)、346頁において、それぞれ粒界腐食と割れに対する一般モデルを提案している。これらの論文の内容を本明細書において参考のために示す。しかしながら、これらの論文は単に理論的なモデルを提案しただけであり、鉛への適用性については一切示唆がなく、更に詳しく言えば、他の公知技術と同様に、如何にして特定粒界の密度を増大するかについて何らの方向性も含まれていない。本発明者らは、鉛蓄電池における特定粒界の出現率が、割れ(および電気的連続性の喪失)並びに腐食(最小壁厚の喪失)に対する感受性を支配することに基づき、これらのモデルがより軽量で且つよりコンパクトな鉛蓄電池の設計に用いられることができ、また電池のサイクル寿命全体に直接関連することを示すことができることを見出した。
バルク粒界割れ感受性に対する粒度および「特定」粒界(すなわちΣ≦29)の出現率の効果を定量化する際、電極の表面に発生し、電極の内部へと粒界に伝播する割れは、割れが継続するための利用可能な粒界経路の両方が、(1)割れに対する固有抵抗(例えば、低ΣCSLの特定粒界)または(2)印加した応力の軸に対して好ましくない方位のいずれか一方によって通じなくなったときに、三重点で停止すると考えられる。割れを停止する確率(P)は、
P = fsp 2 + 2[fosp(1−fsp)] (2)
によって表され、ここで、foは印加された応力の軸に対して好ましくない方位となっている材料における界面の割合であり(foは粒形に強く依存し、従来の等軸材料ではその値が1/3となる点に留意しなければならない)、そしてfspは割れに対して固有抵抗となる特定界面の割合である。割れ開始表面から長さL以内で割れが停止する確率χは、
(1−χ) = (1−P)2L/d (3)
によって表され、ここで、dは平均粒度である。割れ停止確率は次の3つの基本手法によって上げることができる。
(1)固有抵抗を有する粒界の出現率(fsp)を上昇させること、
(2)粒度(d)を下げること、および
(3)粒形(fo)を変化させること。
「粒子脱落」に起因した断面厚さ全体的な喪失で、粒界腐食は完全な状態の鉛酸正極電極を劣化させることがある。ある粒子が母相から脱落するには、その境界となる粒界全体が腐食によって完全に劣化される必要がある。「特定」粒界が腐食の影響を受けず、且つ材料が六角柱状の粒子からなると仮定すれば、任意の接点でのそのような粒子脱落を停止する確率は、
(1−P) = (1−fsp3(1−fsp 3) (4)
によって表すことができる。
式(4)で導かれる確率(P)は式(3)に適用でき、ここで、粒界割れと同様に、粒度(d)を下げて特定粒界の出現率(fsp)を上昇させることにより、粒界腐食による部分損失に対する耐性を著しく向上するであろうことが示される。鉛蓄電池の動作寿命は、粒界腐食または粒界割れのいずれかの機構によって、最小電極寸法(Dcrit)での肉厚方向に貫通する確率に反比例すると考えることができる。式2、3、および4から、並びに粒界劣化は最小寸法の境界となる2つの表面から同時に伝播する(すなわちDcrit=2L)として、所定のサイクル寿命(C)を得るのに必要な最小電極断面厚さに対するミクロ組織(すなわち粒度および粒界性格分布)の効果を決定する次の式(5)を導くことができる。
Figure 2005510628
この式において、xは統計的確実性であり、Pは、粒界割れ過程および粒界腐食過程について、それぞれ式(3)または式(4)から得られた劣化過程が停止する確率である。Kは、従来の鉛蓄電池の典型的な性能から推定することができる定数である。例えば、典型的なSLI電池に対する厳格な実験室試験において、約1mmの最小断面、50μmの平均粒度d、および約15%の特定粒界(fsp)からなるミクロ組織を有する格子では、約200回の充電−放電サイクル寿命Cが観察される。統計的確実性(x)が99%と仮定すると、これらの条件により、粒界割れ過程および粒界腐食過程に対して、Kの値は、それぞれ408サイクルおよび48サイクルとなる。
従来の粒度が50μmである材料に対して特定粒界の含有量を式(5)から計算し、同含有量の増加による鉛蓄電池性能の改善推定値を図2にまとめている。この図に示す通り、特定粒界数fspの増加により、劣化過程を支配する粒界割れおよび粒界腐食の両方においてサイクル寿命の著しい改善が期待できる。従来のSLI正極集電体寸法が1mmの場合、特定粒界数が一般的な観測値(すなわち15%)から50%へと増加する結果、サイクル寿命の約4倍の改善が期待できる。更に、図2に示す通り、この性能改善は、SLI電池の現在の性能を維持したまま、最小寸法では0.2mmとなっている格子を使用することができる。正極格子厚さのこのような低減は、鉛蓄電池の寸法および重量を著しく削減させる(1mmの正極格子は電池総重量の25%を占める)か、またはその分だけエネルギー密度を増加させると期待することができる。
粒界の結晶学的構造を変化させる方法で、金属中の特定粒界の割合を増加させることにより、粒界制御は、金属の割れの伝播および歪み変形(クリープ)に対する耐性を向上させる。これは、析出または時効硬化のように、粒内の微視的構成成分の組成、寸法および分布を変化させることを指向しており、鉛蓄電池に改良された部材を提供しようとするこれまでの取組みと対照的である。変形および再結晶処理を注意して制御することで、特定粒界の割合を有利に増加させることができる。
本発明の方法は、鉛または鉛合金の変形およびその後の再結晶処理のパラメータを注意して選択することにより、特定粒界の割合を増加させることができるという発見に基づいている。所望の特定粒界の密度に達するまで、ある特定の工程を繰返してもよい。変形は、引抜き、スタンピング成形、圧延、プレス、押出し、伸張、鍛造、曲げまたはその他の任意の物理的な変形の形態を採ることができる。本発明者らは、鉛および数種の鉛合金においては、ただ1回の変形および再結晶工程で40%から50%を超える特定粒界の密度または割合に達することができることを、しかも、変形および再結晶工程を追加することにより、全体として平均粒度がより小さく、より均一な製品が得られることを見出した。粒度が小さいと、特定粒界の総量は増加し、その結果、耐割れ性が改善される。
さらに、上述した通りまた式(5)から予測されるように、粒度を小さくすることは、本発明において改善効果を示すのに必要な特定粒界の割合の水準を有利に低減させる。最小粒度には物理的な制約があるけれども、本発明に係る改善された特性を得るには、総じて特定の割合が50%以上となる必要がある。驚くべきことに、fsp>20、>30および>40%の場合にも、腐食性能に対して目立った改善があることを見出した。
再結晶温度、各工程の変形の総量、そのような変形がなされる温度、再結晶温度での鉛または鉛合金の合計保持時間、用いられる鉛または鉛合金の組成、およびその結果として得られた鉛または鉛合金中の特定粒界の割合の間には、ある関係があることが見出された。
鉛が再結晶する温度が、本発明では極めて重要となる。一般に、再結晶は0.5Tmを超えた温度の金属で起こり、Tmは、ケルビン温度での溶融する絶対温度である。純鉛では、室温がおよそ0.5Tmとなる。本発明では、特定粒界の割合が最大になるように再結晶が起こる温度を選択しなければならない。しかしながら、温度が高過ぎては、過度の粒成長が起こるので、よくない。更に、早過ぎる回復を避けるために、また、ある種の合金では長過ぎる加熱による第2相の析出を避ける(それによって合金が過度に硬化し、新たな結晶粒および粒界の核生成を妨げることになるのを防ぐ)ために、比較的短時間で所望の再結晶温度に達するようにしなければならない。
鉛合金の組成のわずかな変更が、鉛中の特定粒界の密度の最適化に必要な再結晶温度および時間に影響を与えることがあるので、所与の鉛組成における特定粒界の割合を最大化する変形量、焼鈍温度および時間、並びに処理サイクルの回数を、試行とその分析を通して決定しなければならない。
市販の純鉛では、工程毎に1%から70%の範囲で導入する変形または歪み、および150℃から280℃の温度範囲で、5秒から360分の焼鈍時間で行う再結晶からなるサイクルを1回以上行うことで、特定粒界の密度が50%を超えるものを得ることができる。
他の鉛合金では、本発明者らは、これらはPb−X−Y合金として分類できることを見出した。ここで、元素Xは強い析出形成元素からなり、元素Yは弱いかまたは非析出形成元素からなる。元素Xは周期表のI族およびII族の元素からなり、電池の合金化成分として一般的で可能性があるものとして、Li、Na、K、Rb、Cs、Fr、Be、Mg、Ca、Sr、BaおよびSbを含む。元素Yは、他の一般的な鉛合金化成分であり、Ag、Sn、Cu、Zn、AsおよびBiを含む。
合金元素のある組合せでは、単独で存在する時よりも結果として析出物をより強化するものがある。Snにおいては、Caが存在すると、CaSn3というとても強化に有効な析出物を形成する。殆どの場合、Snを十分添加し、結果として過剰となっているのは、電気化学的理由に因る。
元素Xの累積濃度が0.05重量%未満で、元素Yの累積濃度が0.5から5重量%の範囲である鉛合金(以下クラスI合金と称する)に対して、10%と40%の間の変形または歪み加工をし、200℃と280℃との間の温度において10秒から10分の範囲の時間で再結晶させ、続いて周囲温度まで空冷するサイクル1回によって、特定粒界の含有量が50%を超えるものからなるミクロ組織が得られる。
元素Xの累積濃度が0.05重量%以上で、元素Yの累積濃度が0.5から5重量%の範囲である鉛合金(以下クラスII合金と称する)に対して、40%と80%の間の変形または歪み加工をし、200°と280℃との間の温度において10秒から10分の範囲の時間で再結晶させ、続いて周囲温度まで空冷するサイクル2回以上によって、特定粒界の含有量が50%を超えるものからなるミクロ組織が得られる。
処理時間は材料に依るが、一般的には1から3日の範囲であり、より一般的には5秒から12時間、好ましくは10秒から3時間である。
全ての場合において、具体的な再結晶温度および時間は、再結晶が完了するように最適化したものにしなければならない。例えば塩浴および流動床炉で得られるような急速な加熱速度を得ることができる場合には、焼鈍時間を著しく短縮することができる。
以下の実施例に基づいて本発明の方法を説明する。
鋳造ままの市販の純鉛ストリップに対して、1サイクルが1つの変形工程と1つの再結晶工程からなる処理を6回付した。変形は室温にて圧延機で行い、1工程での圧下率を20%までとした。各再結晶処理は160℃で15分間行った。
粒界制御された材料およびその比較材の各試料を分析して、特定粒界の比率を決定した。その結果をこの記載の最後にある表1にまとめた。表1からわかるように、純鉛においては、鋳造ままの材料中の特定粒界の密度は16.5%であった。粒界制御された材料中の特定粒界の密度は64.7%であった。本処理方法は、明らかに特定粒界の数を劇的に増加させている。鋳造材とGBE処理材のミクロ組織を図4に示す。
鉛蓄電池中の正極集電体の成長に直接関連する、試料の歪み変形に対する耐性を測定するために、ASTM E139クリープ標準試験を行った。各試料に対して室温にて数時間に亘って4.8MPaの応力を付与した。そしてミリメートル単位のその変形量を時間の関数としてプロットした。その結果を図3にまとめる。鋳造まま材の歪み変形速度を算出した結果、年当り1150%であった。比較用に、粒界制御された材料の歪み変形速度は年当り35%に過ぎないことを見出した。本発明の実施形態によって処理された粒界制御された材料は、歪み変形に対する耐性が大幅に向上することを示した。市販の純鉛は析出形成元素を全く含まないため、この結果はTilmanおよびMyersの研究に概説されている析出効果に帰することはできず、本発明の新規性をより一層強調するものであることに留意しなければならない。
Figure 2005510628
前述のクラスIIタイプである一連の市販の鉛合金を、ストリップ形状で従来の鋳造状態となっているものとして得た。これらのストリップを引続き本発明で記載する方法を用いて処理した。具体的な合金および処理条件を以下にまとめる。
Pb−0.073重量%Ca−0.7重量%Sn合金(クラスII)に対して、1サイクルが室温にて圧下率40%に達する冷間圧延、270℃にて10分間の大気焼鈍およびその後の空冷からなる処理を3回付した。特定粒界の含有率が改善されたミクロ組織を図5にまとめる(図5ではPbCaSnと記す)。特定粒界の含有率は鋳造ままから開始した材料における11%から、本記載の方法によって処理された材料における51%へと増加した。
Pb−0.065重量%Ca−0.7重量%Sn 0.03重量%Ag合金(クラスII)に対して、1サイクルが室温にて圧下率40%に達する冷間圧延、250℃にて10分間の大気焼鈍およびその後の空冷からなる処理を2回付した。特定粒界の含有率が改善されたミクロ組織を図5にまとめる(図5ではPbCaSnAgで示す)。特定粒界の含有率は鋳造ままから開始した材料における12%から、本記載の方法によって処理された材料における70%へと増加した。
Pb−0.073重量%Ca−1.4重量%Sn合金(クラスII)に対して、1サイクルが室温にて圧下率40%に達する冷間圧延、250℃にて10分間の大気焼鈍およびその後の空冷からなる処理を2回付した。特定粒界の含有率が改善されたミクロ組織を図5にまとめる(図5ではPbCa「高」Snで示す)。特定粒界の含有率は鋳造ままから開始した材料における17%から、本記載の方法によって処理された材料における70%へと増加した。
ストリップ材から0.59mm厚の格子に成形して、上述の鋳造まま状態およびGBE処理された状態の両方におけるこれら合金の性能を、当分野における標準試験により評価した。70℃の比重1.27の硫酸溶液中で、静電分極させて、20日間200mVの過電圧下で分極する腐食試験を行った。腐食による質量損失を確定させるため、溶液に曝す前と後に、格子電極の重量をミリグラム単位まで近似して計測した。個々の電池に組み込んだペーストを付着させた格子を用いて、サイクル試験を行った。格子重量はペーストを付着させる前に、ミリグラム単位まで近似して確定させた。70℃の比重1.27の硫酸溶液中で、正極格子に対して0.8Vと1.4Vの間で1日当り2サイクルの割合で35日間繰返した。試験完了後、格子から残留ペーストを除去し、再度重量をミリグラム単位に近似して計測した。また、試験前後で格子の部分を走査しデジタル処理することにより、格子の成長に対する感受性を確定させた。
従来の鋳造対照材と比較できるように、処理されたクラスII合金(GBE)の性能を図6Aおよび6Bにまとめている。すべての場合において、本発明に従って処理された合金は、鋳造対照材と比較して、腐食および成長速度が著しく低減していることを示した。
クラスI合金の代表としてPb−0.03重量%Ca−0.7重量%Sn0.06重量%Ag合金を、市販の回転ドラム式ネットシェイプ鋳造(rotary net shape casting)工程を用いて製造した。続いて0.86〜0.89mm厚の鋳造ストリップに対して、1サイクルが約20%の冷間引張歪み加工(室温にて)、250℃の空気対流炉にて5分間の熱処理、およびその後の周囲温度までの冷却からなる処理を1回付した。歪みは、室温にて格子伸張工程のみにより導入し、工具金型の形状寸法(すなわち伸張されたメッシュの菱形高さ(diamond height))によって制御した。比較用として、展伸しただけでその後の再結晶熱処理を行っていないストリップを製造した。この場合においては1.72mm厚の鋳造ストリップを50%まで冷間圧延し、同様にメッシュ状に伸張した。鋳造まま材、展伸材、およびGBE処理を1回付した材料おのおのに存在する特定粒界の割合は、それぞれ16.0%、15.4%、および64.4%であった。
これらの材料の相対的な腐食および成長性能を、実施例2に記載したサイクル試験において、75℃より高い温度で20日間行い、評価した。その結果を図7Aおよび7Bにまとめるが、本発明に従って処理された材料は、特に展伸された材料に比して腐食感受性を著しく低減することを示している。成長に関しては、GBE材は鋳造比較材および展伸比較材のどちらに対しても著しく優れている。
本発明に従って鉛合金を再結晶させるべく、種々の鉛合金に対して1以上の変形および焼鈍のサイクルからなる処理を付した。各々のサイクルにおいて試料は室温にて圧下率25%まで変形させて、その後255℃にて5分間の熱処理によって焼鈍させた。最終圧下変形および焼鈍後に、上述の各鉛合金に対して硬度試験を行った。島津製HMV2000型微小硬度計にて25g荷重を使用して、各試験合金ごとにそれぞれ2箇所において最少6回硬度測定を行った。各金属の硬度は鋳造まま状態のもの(すなわち、変形および焼鈍のサイクルを付していないもの)に対しても同様に測定した。GBE処理前の鋳造まま材試料のfsp値は、全ての場合において10から15%の間であった。各鉛合金の硬度試験結果を表2に示す。全ての合金において、圧下変形および熱焼鈍のサイクルを付したものは、その鋳造ままのものよりも硬度が低い結果となった。
Figure 2005510628
時効硬化合金(Pb−2.0Sb−0.15As)を鋳造し(鋳造後のビッカース硬さは、DPH=11)、本発明の冷間加工/焼鈍サイクル、すなわち、1サイクルが室温にて20%の冷間圧延による工程と、それに続く180℃にて5分間の熱処理からなる処理を3回付した。fspは10%(鋳造まま)から59%(その後試料に対してGBE処理を付した)へと増加した。比較として、1組の試料群に対してMeyers(米国特許第4,753,688号)に従った処理、より詳しくは、25%の冷間圧延を連続して9回行い(途中に焼鈍を行わない)、続いて230℃にて1分間の最終熱処理を行ったもの、を付した。
時効硬化性鉛合金の硬度は、それぞれの処理の完了直後および室温での各時効時間において測定された。50グラム荷重を使用したことを除き、上の実施例4に記載したものと同一の硬度測定方法で行った。硬度値を表3に記す。Meyers処理では、処理したままの硬度(VHN:12)は、鋳造まま材(VHN:11)の硬度よりも高く、GBE処理材(VHN:8)の硬度よりも著しく高いことが明瞭に示されている。また、24時間時効後の硬度がVHN:21に増加していることから、短期硬化性が著しく上昇することが示されている。比較として、GBE材は同期間では初期値からの増加がないことが示されている。10日間(240時間)に亘る時効でMeyers処理材は27VHNへと増加することが示されている。GBE処理材では、240時間後であっても、鋳造ままの硬度ほど高くはない硬度となっていることに留意しなければならない。
Figure 2005510628
種々の鉛合金に対して本発明のGBE処理を付した。Pb−1.8Sb−1.05Sn−0.17As合金では、その処理は、一連のサイクルが室温での50%肉厚圧下とそれに続く220℃にて3分間の熱処理からなるものを2回行うものであった。Pb−0.08Ca−0.3Sn合金では、その処理は、室温での30%肉厚圧下とそれに続く300℃にて10分間の熱処理を行い、引続いて一連のサイクルが室温での40%肉厚圧下とそれに続く290℃にて10分間の熱処理からなるものを3回行うものであった。Pb−0.04Ca−0.65Sn−0.03Ag合金では、その処理は、室温での60%肉厚圧下とそれに続く250℃にて3分間の熱処理を行うものであった。Pb−0.07Ca−1.4Sn合金では、その処理は、一連のサイクルが室温での50%肉厚圧下とそれに続く270℃にて10分間の熱処理からなるものを3回行うものであった。
各金属の最終的な硬度は4週間時効硬化した後に測定された。硬度値は上記の測定方法で、荷重50グラムの下で得られた。各合金のGBE処理前の硬度(すなわち、鋳造まま硬度)もまた、GBE処理後の硬度測定に用いた方法と同じ方法で測定された。各合金に対して本発明に従った処理をしたものおよび鋳造ままのものから得られた硬度値を、またGBE処理試料についてはfsp値と粒度を表4に示す。鋳造まま試料のfsp値は10から15%までの範囲にある。GBE処理材が有する硬度は永遠に鋳造まま比較材の硬度以下であることを実証することで、GBE処理材が時効硬化することで到達する最高硬度は鋳造まま硬度ほど高くないことを表4は明確に示す。
Figure 2005510628
Pb−0.06Ca−1.2Sn合金を鋳造し、表5に示す種々の温度にて圧延変形を用いた処理に付した。データから明らかなように、20、40および80℃にてストリップを加工し、続いて焼鈍処理したものは全ての場合において、試料のfsp値は60%を越えた値にまで上昇し、鋳造まままたは室温にて圧延した試料よりも低い値にまで最大引張強度(UTS)が低下した。
Figure 2005510628
Pb−0.06Ca−1.2Sn合金を表6に示すように熱間変形およびそれに続く焼鈍があるものとないものからなる処理に付した。Pb合金を圧延または押出しによって熱間変形した場合のfsp値は、後に続く焼鈍工程がないときにおいてさえ40%を越えた値にまで上昇した。
Figure 2005510628
ストリップを50℃から200℃までの温度範囲またはPb合金の固溶限温度以下の温度にて押出した場合も、同様な結果に至った。
0.065%Ca、1.2%スズを含み、残部が市販の純鉛である、10cm幅に圧延された鉛合金ストリップから長さ30cmの断片を切り出した。一組の試料をショットピーニングし、残り(比較材)は未処理のままとした。密着性(表7)を測定するためにASTM D1876−95剥離試験を行った。試料を25mm幅に切断し、アセトンを入れた超音波浴中で洗浄し、そして予めクランプ止めしていた端より4から5cmの箇所を角度90°に曲げた。活物質を含有するペーストへの適用をシミュレートするため、エポキシのフィルム(Hysol EPK608 epoxy)を用いた。2つの試料をそのエポキシで接着し、その後適当にキュアした(24時間)。試料は、インストロン4201型万能試験機を用いて試験した。その結果を表7に記す。ピーニングした表面では接着強度の均一性が改善されたこと、およびこれら試験片では凝集破壊が観測されたことを、180度剥離試験(T−peel test)は実証した。平滑な(比較材)表面の試験片は接着不良を示した。
Figure 2005510628
ショットピーニングした表面が密着性を実質的に(50%を上回る)改善したことを本試験は明確に示している。
一組のPb−Ca−Sn合金ブックモールド鋳造格子の表面を室温にて10秒間ピーニングし、続いて熱処理(275℃、10分間)した。格子の断面を入念に分析することで、浸透深さが達する部分はピーニングした表面下350ミクロンにまで延びたこと、およびバルク材では粒径が約260ミクロンのままであるのに対して、表層付近の粒径が10ミクロンであったことが明らかになった。未処理試料のfspおよびピーニングして焼鈍した処理をした材料の表面下350ミクロンを越えた部分のfspが15%のままであるのに対して、その表層のf sp 40%であった(表8)
Figure 2005510628
2種のPb−Ca−Sn合金をシートに鋳造した。従来技術で処理されたままのセットおよび本発明に従って処理したセットに対して、亜鉛電解採取の操業における典型的な環境下で腐食試験を行った。室温にて80psiで28ミルの鋼球でピーニングを行った。3分以内に基材当り3パス行い、ピーニングした試料を引続いて250℃にて10分間焼鈍した。GBE処理を促進する析出物が存在するように改質するために、300℃にて30分の浸漬を含む予備処理を用いた。次9および10に試料の特徴および腐食性能を記す。
試験試料を典型的な亜鉛電解採取の電解液(60℃にて160g/l硫酸、60g/l Zn2+)に浸漬し、そして鋼陰極に対して40mA/cm2にてその試験試料を陽極酸化させることで腐食試験を行った。結果を表9および表10に示す。
Figure 2005510628
Figure 2005510628
本発明をより良く理解するために、また本発明が如何にして効果を現すかをより明確に示すために、一例として以下の図面を示す。
図1は、従来の鉛蓄電池の断面図である。 図2は、臨界電極寸法に対するサイクル寿命の変化を示すグラフである。 図3は、鋳造ままの純鉛のクリープ速度と、本発明の方法に従って処理された純鉛のクリープ速度との比較を示すグラフである。 図4は、(a)鋳造まま、および(b)本発明の方法に従って処理された純鉛における特定粒界の分布図である。 図5は、一連の鉛合金組成に対して本発明の方法を用いた場合の、特定粒界含有量の増加をまとめた棒グラフである。 図6Aおよび6Bは、一連の鉛合金組成に対して本発明の方法を用いた場合の、腐食性の改善と電極の成長をまとめた棒グラフである。 図7Aおよび7Bは、Pb−0.03Ca−0.7Sn−0.06Ag合金の鋳造まま状態、展伸した状態および展伸し再結晶した状態(後者は本発明の方法を用いた場合である)における腐食および電極の成長の各値を相対的にまとめた棒グラフである。
本発明は、展伸させて再結晶させることで、クリープ、粒界割れおよび腐食に対する耐性を向上させた鉛および鉛合金に関するものである。より詳しくは、電池信頼性を向上させ、稼動寿命を伸ばし、そしてエネルギー密度を増大させるために、再結晶処理を通じてミクロ組織中に新たな粒界を形成させて、腐食および成長に対する耐性を改善させた鉛蓄電池用鉛および鉛合金の正極集電体およびコネクタに関するものである。
鉛基正極集電体格子、管状スパイン(tubular spines)、箔およびコネクタ(ストラップ(straps)、つまみ(lugs)、極柱)における粒界劣化(すなわち、クリープ変形、割れ、および腐食)は、鉛蓄電池の初期故障の主要原因である。粒界腐食は、Pb集電体およびその構成部材がPbO2に変化する際に発生する。粒界腐食は自動車用蓄電池の寿命を制限し、産業用蓄電池の寿命に影響を及ぼす。
クリープ変形は、主として粒界滑りによって生じ、正極集電体の寸法を増加させる。いわゆる「成長」は、電極表面とPbO2ペースト間の接触が消失し、隣接する電極間で短絡する原因になる。正極集電体の成長は粒界「割れ」の一因にもなる。
昨今の自動車ではボンネット下の温度が上昇するため、鉛蓄電池における正極集電体の成長は、自動車用蓄電池の主な故障要因である。これらの粒界劣化が進行する結果、そして動作寿命およびサイクル寿命に対して充分な性能を維持するために、正極集電体の最小寸法にはかなりの重量許容量が必要となり、その分だけ電池の全体寸法および重量を増加させている。
鉛正極格子における初期の改良は、Sb、Sn、As、Caおよびその他の元素を用いて鉛を合金化することによってなされた。これらの取組みは、例えばMyersの米国特許第4,753,688号、Deanの第1,675,644号、およびTilmanの第3,888,703号に開示があるように、全てアンチモン含有鉛合金に関するものであるが、析出または時効硬化によって合金を強化したものである。析出および時効硬化による方法においては、周囲温度すなわち操作温度では鉛中に固溶せずに、且つその金属中に第2相を形成する合金化元素が存在しなければならない。一般に、硬化は、鉛合金に歪み加工した後、第2相を固溶させるほどに固溶限温度(solvus temperature)より高い温度で熱処理し、そして鉛中に合金化元素が過飽和固溶体を形成するようにその金属を焼入れすることで得られる。一定時間経過後、合金化元素は固溶体から、好ましくは小さい析出物の形態で、析出してその金属中に第2相を形成する。これらの第2相析出物はその金属中の転位運動を妨げ、粒界滑りを阻害して、その結果材料を強化させて硬化させる。熱処理後の焼入れは、析出物寸法を小さく保つために必要であり、そして強化および成長に対する耐性に有効である。熱処理前の変形は、一般には冷間または熱間加工によってなされるが、第2相が析出するための核生成サイトとして作用し、そして結果として析出物をより均一に分布させる転位を、その金属の結晶構造中に形成させる。
鉛および鉛合金の融点は比較的低いため、結果として析出硬化は一般には室温で発生することに留意する必要がある。上記に列挙した特許に例示されるように、従来技術で教示される方法は、主に目標強度を得るために必要な時間を、室温での数日間から昇温させた炉温での数分間へと短縮することを指向したものである。
鉛蓄電池分野では、溶融合金を鋳造後に冷間加工によって展伸された鉛合金は、単に最終形状に鋳造されただけの鉛および鉛合金に比べて、成長に対する耐性が高くなるということも一般的に知られている。この性能改善は、「ミクロ組織」の微細化に因るものとされ、例えばWirtzの米国特許第5,611,128号および第5,604,058号では、鋳造格子の素材から、ニア・ネット・シェイプの電池用電極に冷間圧延する過程に関する記載がある。室温ではより長期間の時効が必要となるのに対して、このような展伸鉛合金では、析出処理で均一な析出物の分布が得られるという利点もある。これについては、「展伸」電極を用いた性能改善は、例えばCa、Sr、Sb、Baなどの、周囲温度では固溶せずに且つ時効によって析出物を形成するという、合金成分を含む鉛合金でのみ見られることに留意する必要がある。また、析出処理と展伸の両方を行った電極が、粒界腐食に関して何らかの目立った改善を呈するとは示されていない。
析出硬化処理では、周囲温度すなわち昇温された温度での時効による析出物の分布の均一性を向上させるために、合金成分を適切に選択し、予変形を与える必要があるが、粒界滑り(すなわち、粒界に対する「析出物によるピン止め」)に因る格子成長の最小化に関して明らかに有利な影響を与える。本発明者らは、粒界滑りを妨げるためだけでなく、粒界腐食および割れ感受性を最小化するために、材料中の粒界の構造を直接変更することが、好ましいことを見出した。析出を主とした処理と異なり、本発明におけるこのような新たな方法は、純鉛および析出物形成元素を含有しない鉛合金にも適用可能である。これは、より安価な合金の有利な使用への道を開くものである。
ある特殊な粒界が、界面構造の「対応格子」モデル(KronbergおよびWilson、Trans.Met.Soc.AIME,185,501(1949))に基づき、ΣがΔθ内で、Σ≦29且つΔθ≦15°Σ-1/2(Brandon、Acta Metal.,14、1479(1966))を満たす場合、例えば腐食、割れ、および粒界滑り(後者はクリープ変形の主たる因子である)などの粒界劣化の進行に対して高い耐性を有することが、様々な研究によって示されている。しかし、これらの研究は、高密度の特殊粒界がどのようにして得られるのかについて、その指針を提供しておらず、また特記されるように、例えば結晶粒方位解析法のような方法によって多結晶材料中の特定粒界の密度を決定できるようになったのは、最近のことである。また、固相に対する処理に際して新たな粒界を創出させる唯一の手段は、変形に続く適切な熱処理で材料の再結晶に影響を与えることだけであって、鉛蓄電池の正極集電体の処理に関するこのような新たな方法は、それ故、本発明の基礎をなすものである。
Palumboは米国特許第5,702,543号(1997年)および第5,817,193号(1998)において、市販のFeおよびNi基オーステナイトステンレス合金中のそのような特定粒界数を約20〜30%から60%を超える水準にまで増加させる加工熱処理を、そしてこのような増加が結果として、例えば粒界腐食および粒界腐食割れなどの粒界劣化の進行に対して耐性が著しく改善されることを記載している。しかしながら、これらの特許に記載され且つクレームされている処理は特定のオーステナイトステンレス鋼およびニッケル基合金にのみ関するものであり、他の金属に関するものではない。これら合金が対象とする用途および使用時にそれらが曝される環境は、鉛蓄電池の過酷な酸性環境とは全く異なる。
Lehockeyは米国特許第6,086,691号(2000年)において、鉛合金薄板を圧下率30%から80%で冷間変形し、その材料を180℃から300℃の温度範囲で15から30分の焼鈍をし、次のサイクルとしてその変形/焼鈍処理を繰り返すことによって、市販の電解採取による鉛合金電極材料中のそのような特定粒界数を50%を越える水準にまで増加させる加工熱処理を開示している。
Raoは国際公開第00/60677号(2000年)において、合金ストリップを鋳造した後、その合金の固溶限温度と包晶温度の間の温度で合金ストリップを「熱間圧延」し、熱間圧延されたストリップを焼入れし、そして、例えば、好適な電池用格子を加工するための伸張処理のように、その合金ストリップに対して穿孔する前に、機械的特性および高温腐食特性を向上させるべく、好ましくは200oF(93℃)から500oF(260℃)で加熱時効させることによって、Pb−Ca−Sn−Ag格子を製造する方法を記載している。
Palumboは国際公開第01/26171号(2001年)において、ミクロ組織中の特定粒界の比率を、好ましくは少なくとも50%にまで、増加させた鉛蓄電池用の再結晶した鉛および鉛合金の正極電極について、また、そのミクロ組織は鉛合金を加工または歪み加工し、続いて鉛または鉛合金を焼鈍する工程からなる方法によって得られることを記載している。加工および焼鈍が1サイクルによっても得られるが、そのような工程を多数回繰り返すことで、ミクロ組織中の特定粒界数を実質的に増加させ、また電池稼動期間における電極のクリープ、粒界腐食そして粒界割れに対する耐性を改善させ、そしてその結果、電池寿命を延ばし且つ電池の寸法と重量を低減する機会を得ることができる。
ピーニングは、ショットが制御された状態で高速度で表面に当るように向けられており、一連のショットの衝撃によって金属部品の外面層に圧縮応力を生じさせる非伝統的な変形方法である。ピーニングは試験体表面を清浄にし、疲労強度を上昇させ、そして応力腐食割れの原因となる引張応力を除去する。山田は米国特許第5,816,088号(1998年)において、高速ショットピーニングを使用した鋼製ワークの表面処理方法について記載している。Mannavaは米国特許第5,932,120号(1999年)において、低エネルギーレーザーを使用したレーザ衝撃ピーニング装置について記載している。
米国特許第4,753,688号公報 米国特許第1,675,644号公報 米国特許第3,888,703号公報 米国特許第5,611,128号公報 米国特許第5,604,058号公報 米国特許第5,702,543号公報 米国特許第5,817,193号公報 米国特許第6,086,691号公報 国際公開第00/60677号パンフレット 国際公開第01/26171号パンフレット 米国特許第5,816,088号公報 米国特許第5,932,120号公報 米国特許第5,462,109号公報 KronbergおよびWilson、Trans.Met.Soc.AIME,185,501(1949年) Brandon、Acta Metal.,14巻、1479頁(1966年) Palumbo、Scripta Metallurgica et Materialia、25巻、1775頁、(1991年) Lehockey、微視的観察および微視的分析の議事録1996(G.W.Baileyら編)サンフランシスコ出版社、346頁、(1996年)
(発明の目的)
本発明の目的は、重力鋳造または連続鋳造を利用して、鉛、並びにAg、Al、As、Ba、Bi、Ca、Cd、Cu、Fe、Li、Mg、Na、Se、Sb、Sn、Sr、およびZnからなる群より選択される少なくとも1種の元素と合金化した鉛をビレットに鋳造し、続いて押出しおよび/または圧延し、望ましくはそのストリップを例えば伸張または打抜きによって適宜穿孔した集電体の製造方法を提供することにある。最終形状として、集電体はブックモールド格子、管状格子、箔またはシート、穿孔(すなわち、好適には打抜きまたは伸張された)ストリップ、連続鋳造格子、または鋳造に続いて最終形状に圧延された連続鋳造格子にすることができる。
本発明の目的は、新たな加工熱処理を「簡便な」連続製造工程中で行うことにより、液式、ゲル式または制御弁式鉛蓄電池用集電体の製造方法を提供することにある。
本発明の目的は、「簡便な」連続製造工程終了後に、最終形状または最終に近い形状にある集電体の外表面の少なくとも一部に、新たな加工熱処理を行うことにより、液式、ゲル式または制御弁式鉛蓄電池用集電体の製造方法を提供することにある。
本発明の目的は、ビレットを連続的に鋳造し、その後、所望の厚さに圧延し、状況に応じて好適に反復式伸張、回転式伸張または打抜きを用いて穿孔する「Properzi式」工程(イタリア国ミラノ市Contiouus S.p.A.社)によって製造された集電体の処理方法を提供することにある。
本発明の目的は、格子状構造を連続的に鋳造し、その後、所望の寸法に圧延する「Con Roll式」工程(アメリカ合衆国ミシガン州ポートヒューロン市Wirtz Manufacturing Inc.社)を用いて、格子素材を連続鋳造によって製造された集電体を一括処理する方法を提供することにある。
本発明の目的は、Vinczeが米国特許第5,462,109号において、この明細の内容は参考のために引用されるが、記載された「Cominco式」ドラム連続鋳造(カナダ国ブリティッシュコロンビア州バンクーバー市Teck−Cominco Ltd社)によって、そして状況に応じて所望の厚さにストリップを好適に圧延し、また状況に応じて続いて好適に穿孔することによって製造された集電体についての処理方法を提供することにある。
本発明の目的は、ビレットを鋳造し、所望の厚さにまでストリップへと押出し、続いて状況に応じて圧延し、状況に応じてストリップを穿孔することによって製造された集電体の処理方法を提供することにある。
本発明の更なる目的は、圧延、押出し、鍛造などを含む簡便な変形工程による一般的な場合のように、実質的な寸法変更をせずに仕上げ部品を処理できる工程を提供することにある。この特徴により、例えば、部品の実質的な変形を伴わない「Con Roll式」格子はもとより、ブックモールド鋳造の鉛蓄電池格子、管状格子、PbおよびPb合金ストラップ並びに極柱のような仕上げ部品を処理することができる。
本発明の更なる目的は、電気化学式電池に利用される非消耗電極、集電体、およびその他金属製品の耐食性を実質的に向上させ、そして表面部分を増大させると同時に、表面集合組織を改善させて、結果として活物質およびペーストの密着性を含む表面被覆の密着性を実質的に向上させる熱処理を状況に応じてその後引続き行う、ピーニング処理を提供することにある。
本発明の更なる目的は、「ブックモールド」格子または「管状」格子の重力鋳造を含む処理、および表面部分を増加させてペースト密着性を改善させるための「Con Roll式」処理(アメリカ合衆国ミシガン州ポートヒューロン市Wirtz Manufacturing Inc.社)を用いたあらゆる商業的工程によって製造された集電体の外側表面の少なくとも一部を処理する方法を提供することにある。
本発明の更なる目的は、電気化学式電池用の金属部品に対して、部品全体としての均一な物理的および化学的特性を必ずしも与えることなく、その表面および表層付近の腐食特性を改善する工程を提供することにある。このことは、化学的腐食が電気化学式電池では、一般に腐食性電解質に曝されている、部品表面または表面付近で主に発生するので、その分野における通常の知識を有する者にとっては自明である。
本発明のもう1つの目的は、鉛または鉛合金の耐クリープ性並びに、粒界腐食および粒界割れに対する耐性の少なくとも1つを向上させるために、鉛若しくは鉛合金集電体またはその前工程品(precursor)に対して特定粒界の比率を増加させる処理となる加工熱処理を提供することであって、その加工熱処理は、鉛または鉛合金に対して、固溶限温度以下の温度で鉛合金を好適に変形させ、特定粒界の密度を実質的に増加させるために引続きその鉛合金を再結晶させるに十分有効な時間と温度で焼鈍することを含む処理サイクルを少なくとも1回行ったものからなる。
(発明の原理)
冶金分野における通常の知識を有する者には知られているが、変形は、再結晶しておらず、変形した結晶粒の組織をもたらすこととなる、転位が残留するほど十分に低い温度での物体への機械的変形を含む。本発明は、固溶限温度以下の温度で、好ましくは固溶限温度と約40℃の間で、少なくとも物体の表層またはその物体全体を変形させることに依るものであり、その後焼鈍処理へと続く。好適な変形処理として、圧延、押出し、打抜き、伸張、繰返し曲げまたはピーニングからなる。
これらの変形処理のいずれもが材料の加工に用いることができる。Lehockeyの米国特許にあるように、これまでは、その変形は室温またはより低温で冷間加工する必要があると報告されていた。今回、好適な再結晶処理と組合せた場合、より高温で変形を行ったとしても改善されることを見出した。例えば、圧延機にあるストリップまたは押出しチャンバーの温度によって決まる変形処理の温度は、25℃と250℃の間であり、より好ましくは、35℃と200℃の間、更に好ましくは40℃から150℃まで、更により好ましくは60℃から125℃までである。変形の最高温度は、処理される合金の固溶限温度以下である必要がある。
ビレットまたは厚ストリップの一般的な範囲は0.030インチ(0.76mm)から1インチ(25.4mm)までである。圧延工程は、例えば、イタリア国ミラノ市Contiouus S.p.A.社が供給する設備を使用するように、従来知られたあらゆる方法によって行ってもよい。ストリップ厚は一般に0.002インチ(0.05mm)から0.125インチ(3.2mm)までの範囲である、特定の電池用途に調整すればよい。小さい、例えば、円筒形薄膜型電池では、本発明によれば厚さが約0.002インチ(0.05mm)から0.010インチ(0.25mm)までの範囲で処理された箔に使用することができ;自動車用12から42Vまでの電池では、一般には0.010インチ(0.25mm)から0.045インチ(1.14mm)までの範囲のストリップ厚が使用され;そして産業用電池ではストリップ厚は0.150インチ(3.8mm)に至ってもよい。重要な機械的な加工が変形処理においてストリップに導入されることは、圧延前後のストリップ厚の比較から明らかである。
再結晶工程に先立って行われる変形処理は、およそ室温(15℃から25℃まで)から材料の固溶限温度までの温度範囲で行う。より一般的には、変形処理は30℃と125℃の間で、更に一般的には40℃と95℃の間で行う。圧下率は、例えば、ビレットを所望のストリップ厚へと変形するのに好適な値を選択すればよく、変形温度は、その後の再結晶熱処理において特定粒界が創出される最適状態に調整すればよい。
特許請求の範囲を含む本明細書において、鉛に言及するときは、純鉛または鉛合金のいずれかを意味し;変形に言及するときは、鉛または鉛合金が室温と固溶限温度の間で行われる例えば、圧延、押出し、打抜き、伸張、曲げおよびピーニングなどのあらゆる変形操作を意味し;鉛合金は1種またはそれ以上の鉛と合金化する元素を含んだ鉛を意味する。
好ましくは、鉛合金の変形工程および鉛合金を再結晶させる焼鈍工程は、複数回繰返すことである。再結晶工程間の過剰な歪みは本工程では悪影響を及ぼすことがある。しかしながら、本発明者らは、他の金属と異なり、鉛合金のうち、少なくとも数種の合金では変形または歪み加工および焼鈍の1回の工程で、特定粒界の密度が改善されることを見出した。
鉛合金は、Ag、Al、As、Ba、Bi、Ca、Cd、Cu、Fe、Li、Mg、Na、Se、Sb、Sn、Sr、およびZnからなる群より選択される少なくとも1種の合金化元素からなるが、2種またはそれ以上の合金化元素を含んでもよい。(複数種の)合金化元素は鉛中に固溶する必要はない。実質的な合金となっている場合、鉛合金は、好ましくは各変形工程において約1%〜99%の肉厚減少または歪みが導入され、そして、鉛合金はその後、焼鈍工程において、通常は約100から325℃(これは鉛または鉛合金の融点より低い温度である)までの温度範囲で、1秒から360分(好ましくは5秒から360分)間、再結晶された後、引続いて室温まで空冷または焼入れされる。再結晶および特定粒界の形成に必要な正確な変形および焼鈍温度並びに時間は、合金化添加物とその添加比率によって変化する。
好ましくは、処理された鉛および鉛合金中の特定粒界比率は全粒界中の少なくとも50%である。しかしながら、特定粒界が少なくとも20%、30%または40%に達すれば既に腐食性能を改善することを見出した。
本発明の別の局面では、鉛または鉛合金は、例えば、正極格子または箔および電池接続子(cell interconnects)のように、鉛蓄電池の構成部材へと引続き加工されていく。まず最初に、本発明の処理は、鉛または鉛合金に対して行うものであって、またこの処理は鉛物品の少なくとも一部分に対して行うことが好ましい。均一性の程度は、鉛合金に対する例えば、スタンピング成形、押出し、圧延、伸張、鍛造、ピーニングなどの変形方法および構成部材の形状に依存し得る。
本発明に関する加工熱処理は析出または時効硬化が必要となる従来技術の方法とは異なる。それ故に、従来技術である析出処理と違って、ここで述べる処理は、従来技術で必要とされる析出物形成元素を含まない純鉛および鉛合金に適用できる。鉛合金が、析出硬化の1つまたは複数の変形工程において、析出することとなる合金化材料を含むか否かに関らず、本発明で述べる処理によって、鉛または鉛合金の耐食性が向上する。本発明の処理は鉛または鉛合金材料の硬化が開始しなくとも、特定粒界の含有量を増加させる。従来技術の処理では、様々な物理的性質を改善させるために合金の硬度上昇を本質的に指向しているので、硬化させないことは従来技術の処理がなされた合金とは完全に異なる。
本発明は、鉛蓄電池の酸性環境下のクリープ変形(成長)並びに粒界腐食および割れに対するより優れた耐性を供するために、その電池中の正極集電体およびコネクタに適用される鉛および鉛合金の処理に関するものである。
まず図1の如く、従来の鉛蓄電池は、全体が10で示されているが、筐体12、内部区画14、電極16、母線(busbar)18および電解液20からなる。区画14は電解液20を収納する役割を果たす。電極16および母線18は従来から、鋳造または展伸鉛合金より形成されている。例えば改善された強度、耐クリープ性、および改善された気泡発生特性を与えるため、適切な合金化元素が必要となるので、純鉛ではなく鉛合金が従来から用いられている。従来の鉛蓄電池ではその信頼性に関して実績があるが、寿命およびエネルギー密度は限られている。寿命が限られるのは、継続的な充電−放電サイクルに起因する電極のクリープ(成長)、腐食および割れのためである。
商業的に生産される鉛蓄電池の構成部材は一般に、まず鋳造された鉛または鉛合金から形成される。鋳塊またはストリップをシートに圧延し、そして引続いて格子を形成するために鉛合金シートにスリットおよび歪み加工をする際に、変形もまた頻繁に用いられるが、ミクロ組織の再結晶を完了させる処理は、従来の鉛蓄電池の構成部材では使用されていなかった。鋳造ままのまたは展伸された鉛基鉛蓄電池構成部材中の、特定粒界または対応格子(CSL)の粒界の比率は、常に20%未満であり、通常14%から17%の範囲にある。従来からある鋳造したままで展伸された鉛基正極集電体は、粒界腐食、割れおよびクリープ変形(成長)に対して敏感である。
本発明によれば、電池における鉛合金正極集電体の構成部材は、冶金学的ミクロ組織において20%、30%、40%または50%以上という高比率の特定粒界を有している。特定粒界は結晶学的には、特定対応格子の方位と異なるものがΣ≦29を満たす、次の式(1)の範囲内として定義できる。
Δθ≦15°Σ-1/2 (1)
(D.G. Brandon: Acta. Metallurgica. 第14巻,1479頁,1966年)
特許請求の範囲を含む本明細書において、「特定粒界」という用語は、Σ≦29且つ式(1)を満たす粒界と定義する。
本発明の方法は、鉛基正極集電体構成部材に対して、特定粒界の密度を向上させるための処理を包含する。より詳しくは、これは、例えば析出硬化のように従来の強化機構に依拠することなく、また材料の引張強度または硬度を実質的に変化させることなく、達成されるものである。この処理は粒界制御(GBE)と呼ばれる。特定粒界の密度が20%を、好ましくは50%を超える鉛基正極集電体は、クリープ変形および粒界腐食に対する耐性が際立って改善されることが見出されている。結果として、粒界制御された鉛基正極集電体の構成部材を有する鉛蓄電池は、寿命が改善される。更に、クリープおよび粒界腐食による劣化に対抗する材料の許容範囲が縮小する結果、電極の厚みを低減でき、そして電池のエネルギー密度を増大させることができる。
Palumboらは「耐粒界応力腐食性のための粒界設計および粒界制御」を、Scripta Metallurgica et Materialia、25巻、1775頁、(1991年)において、そしてLehockeyらは「粒界性格分布と粒界腐食の関係」を、微視的観察および微視的分析の議事録1996(G.W.Baileyら編)サンフランシスコ出版社(1996年)、346頁において、それぞれ粒界腐食と割れに対する一般モデルを提案している。これらの論文の内容を本明細書において参考のために示す。しかしながら、これらの論文は単に理論的なモデルを提案しただけであり、鉛への適用性については一切示唆がなく、更に詳しく言えば、他の公知技術と同様に、如何にして特定粒界の密度を増大するかについて何らの方向性も含まれていない。本発明者らは、鉛蓄電池における特定粒界の出現率が、割れ(および電気的連続性の喪失)並びに腐食(最小壁厚の喪失)に対する感受性を支配することに基づき、これらのモデルがより軽量で且つよりコンパクトな鉛蓄電池の設計に用いられることができ、また電池のサイクル寿命全体に直接関連することを示すことができることを見出した。
バルク粒界割れ感受性に対する粒度および「特定」粒界(すなわちΣ≦29)の出現率の効果を定量化する際、電極の表面に発生し、電極の内部へと粒界に伝播する割れは、割れが継続するための利用可能な粒界経路の両方が、(1)割れに対する固有抵抗(例えば、低ΣCSLの特定粒界)または(2)印加した応力の軸に対して好ましくない方位のいずれか一方によって通じなくなったときに、三重点で停止すると考えられる。割れを停止する確率(P)は、
P = fsp 2 + 2[fosp(1−fsp)] (2)
によって表され、ここで、foは印加された応力の軸に対して好ましくない方位となっている材料における界面の割合であり(foは粒形に強く依存し、従来の等軸材料ではその値が1/3となる点に留意しなければならない)、そしてfspは割れに対して固有抵抗となる特定界面の割合である。割れ開始表面から長さL以内で割れが停止する確率χは、
(1−χ) = (1−P)2L/d (3)
によって表され、ここで、dは平均粒度である。割れ停止確率は次の3つの基本手法によって上げることができる。
(1)固有抵抗を有する粒界の出現率(fsp)を上昇させること、
(2)粒度(d)を下げること、および
(3)粒形(fo)を変化させること。
「粒子脱落」に起因した断面厚さ全体的な喪失で、粒界腐食は完全な状態の鉛酸正極電極を劣化させることがある。ある粒子が母相から脱落するには、その境界となる粒界全体が腐食によって完全に劣化される必要がある。「特定」粒界が腐食の影響を受けず、且つ材料が六角柱状の粒子からなると仮定すれば、任意の接点でのそのような粒子脱落を停止する確率は、
(1−P) = (1−fsp3(1−fsp 3) (4)
によって表すことができる。
式(4)で導かれる確率(P)は式(3)に適用でき、ここで、粒界割れと同様に、粒度(d)を下げて特定粒界の出現率(fsp)を上昇させることにより、粒界腐食による部分損失に対する耐性を著しく向上するであろうことが示される。鉛蓄電池の動作寿命は、粒界腐食または粒界割れのいずれかの機構によって、最小電極寸法(Dcrit)での肉厚方向に貫通する確率に反比例すると考えることができる。式2、3、および4から、並びに粒界劣化は最小寸法の境界となる2つの表面から同時に伝播する(すなわちDcrit=2L)として、所定のサイクル寿命(C)を得るのに必要な最小電極断面厚さに対するミクロ組織(すなわち粒度および粒界性格分布)の効果を決定する次の式(5)を導くことができる。
Figure 2005510628
この式において、xは統計的確実性であり、Pは、粒界割れ過程および粒界腐食過程について、それぞれ式(3)または式(4)から得られた劣化過程が停止する確率である。Kは、従来の鉛蓄電池の典型的な性能から推定することができる定数である。例えば、典型的なSLI電池に対する厳格な実験室試験において、約1mmの最小断面、50μmの平均粒度d、および約15%の特定粒界(fsp)からなるミクロ組織を有する格子では、約200回の充電−放電サイクル寿命Cが観察される。統計的確実性(x)が99%と仮定すると、これらの条件により、粒界割れ過程および粒界腐食過程に対して、Kの値は、それぞれ408サイクルおよび48サイクルとなる。
従来の粒度が50μmである材料に対して特定粒界の含有量を式(5)から計算し、同含有量の増加による鉛蓄電池性能の改善推定値を図2にまとめている。この図に示す通り、特定粒界数fspの増加により、劣化過程を支配する粒界割れおよび粒界腐食の両方においてサイクル寿命の著しい改善が期待できる。従来のSLI正極集電体寸法が1mmの場合、特定粒界数が一般的な観測値(すなわち15%)から50%へと増加する結果、サイクル寿命の約4倍の改善が期待できる。更に、図2に示す通り、この性能改善は、SLI電池の現在の性能を維持したまま、最小寸法では0.2mmとなっている格子を使用することができる。正極格子厚さのこのような低減は、鉛蓄電池の寸法および重量を著しく削減させる(1mmの正極格子は電池総重量の25%を占める)か、またはその分だけエネルギー密度を増加させると期待することができる。
粒界の結晶学的構造を変化させる方法で、金属中の特定粒界の割合を増加させることにより、粒界制御は、金属の割れの伝播および歪み変形(クリープ)に対する耐性を向上させる。これは、析出または時効硬化のように、粒内の微視的構成成分の組成、寸法および分布を変化させることを指向しており、鉛蓄電池に改良された部材を提供しようとするこれまでの取組みと対照的である。変形および再結晶処理を注意して制御することで、特定粒界の割合を有利に増加させることができる。
本発明の方法は、鉛または鉛合金の変形およびその後の再結晶処理のパラメータを注意して選択することにより、特定粒界の割合を増加させることができるという発見に基づいている。所望の特定粒界の密度に達するまで、ある特定の工程を繰返してもよい。変形は、引抜き、スタンピング成形、圧延、プレス、押出し、伸張、鍛造、曲げまたはその他の任意の物理的な変形の形態を採ることができる。本発明者らは、鉛および数種の鉛合金においては、ただ1回の変形および再結晶工程で40%から50%を超える特定粒界の密度または割合に達することができることを、しかも、変形および再結晶工程を追加することにより、全体として平均粒度がより小さく、より均一な製品が得られることを見出した。粒度が小さいと、特定粒界の総量は増加し、その結果、耐割れ性が改善される。
さらに、上述した通りまた式(5)から予測されるように、粒度を小さくすることは、本発明において改善効果を示すのに必要な特定粒界の割合の水準を有利に低減させる。最小粒度には物理的な制約があるけれども、本発明に係る改善された特性を得るには、総じて特定の割合が50%以上となる必要がある。驚くべきことに、fsp>20、>30および>40%の場合にも、腐食性能に対して目立った改善があることを見出した。
再結晶温度、各工程の変形の総量、そのような変形がなされる温度、再結晶温度での鉛または鉛合金の合計保持時間、用いられる鉛または鉛合金の組成、およびその結果として得られた鉛または鉛合金中の特定粒界の割合の間には、ある関係があることが見出された。
鉛が再結晶する温度が、本発明では極めて重要となる。一般に、再結晶は0.5Tmを超えた温度の金属で起こり、Tmは、ケルビン温度での溶融する絶対温度である。純鉛では、室温がおよそ0.5Tmとなる。本発明では、特定粒界の割合が最大になるように再結晶が起こる温度を選択しなければならない。しかしながら、温度が高過ぎては、過度の粒成長が起こるので、よくない。更に、早過ぎる回復を避けるために、また、ある種の合金では長過ぎる加熱による第2相の析出を避ける(それによって合金が過度に硬化し、新たな結晶粒および粒界の核生成を妨げることになるのを防ぐ)ために、比較的短時間で所望の再結晶温度に達するようにしなければならない。
鉛合金の組成のわずかな変更が、鉛中の特定粒界の密度の最適化に必要な再結晶温度および時間に影響を与えることがあるので、所与の鉛組成における特定粒界の割合を最大化する変形量、焼鈍温度および時間、並びに処理サイクルの回数を、試行とその分析を通して決定しなければならない。
市販の純鉛では、工程毎に1%から70%の範囲で導入する変形または歪み、および150℃から280℃の温度範囲で、5秒から360分の焼鈍時間で行う再結晶からなるサイクルを1回以上行うことで、特定粒界の密度が50%を超えるものを得ることができる。
他の鉛合金では、本発明者らは、これらはPb−X−Y合金として分類できることを見出した。ここで、元素Xは強い析出形成元素からなり、元素Yは弱いかまたは非析出形成元素からなる。元素Xは周期表のI族およびII族の元素からなり、電池の合金化成分として一般的で可能性があるものとして、Li、Na、K、Rb、Cs、Fr、Be、Mg、Ca、Sr、BaおよびSbを含む。元素Yは、他の一般的な鉛合金化成分であり、Ag、Sn、Cu、Zn、AsおよびBiを含む。
合金元素のある組合せでは、単独で存在する時よりも結果として析出物をより強化するものがある。Snにおいては、Caが存在すると、CaSn3というとても強化に有効な析出物を形成する。殆どの場合、Snを十分添加し、結果として過剰となっているのは、電気化学的理由に因る。
元素Xの累積濃度が0.05重量%未満で、元素Yの累積濃度が0.5から5重量%の範囲である鉛合金(以下クラスI合金と称する)に対して、10%と40%の間の変形または歪み加工をし、200℃と280℃との間の温度において10秒から10分の範囲の時間で再結晶させ、続いて周囲温度まで空冷するサイクル1回によって、特定粒界の含有量が50%を超えるものからなるミクロ組織が得られる。
元素Xの累積濃度が0.05重量%以上で、元素Yの累積濃度が0.5から5重量%の範囲である鉛合金(以下クラスII合金と称する)に対して、40%と80%の間の変形または歪み加工をし、200と280℃との間の温度において10秒から10分の範囲の時間で再結晶させ、続いて周囲温度まで空冷するサイクル2回以上によって、特定粒界の含有量が50%を超えるものからなるミクロ組織が得られる。
処理時間は材料に依るが、一般的には1秒から3日の範囲であり、より一般的には5秒から12時間、好ましくは10秒から3時間である。
全ての場合において、具体的な再結晶温度および時間は、再結晶が完了するように最適化したものにしなければならない。例えば塩浴および流動床炉で得られるような急速な加熱速度を得ることができる場合には、焼鈍時間を著しく短縮することができる。
以下の実施例に基づいて本発明の方法を説明する。
鋳造ままの市販の純鉛ストリップに対して、1サイクルが1つの変形工程と1つの再結晶工程からなる処理を6回付した。変形は室温にて圧延機で行い、1工程での圧下率を20%までとした。各再結晶処理は160℃で15分間行った。
粒界制御された材料およびその比較材の各試料を分析して、特定粒界の比率を決定した。その結果をこの記載の最後にある表1にまとめた。表1からわかるように、純鉛においては、鋳造ままの材料中の特定粒界の密度は16.5%であった。粒界制御された材料中の特定粒界の密度は64.7%であった。本処理方法は、明らかに特定粒界の数を劇的に増加させている。鋳造材とGBE処理材のミクロ組織を図4に示す。
鉛蓄電池中の正極集電体の成長に直接関連する、試料の歪み変形に対する耐性を測定するために、ASTM E139クリープ標準試験を行った。各試料に対して室温にて数時間に亘って4.8MPaの応力を付与した。そしてミリメートル単位のその変形量を時間の関数としてプロットした。その結果を図3にまとめる。鋳造まま材の歪み変形速度を算出した結果、年当り1150%であった。比較用に、粒界制御された材料の歪み変形速度は年当り35%に過ぎないことを見出した。本発明の実施形態によって処理された粒界制御された材料は、歪み変形に対する耐性が大幅に向上することを示した。市販の純鉛は析出形成元素を全く含まないため、この結果はTilmanおよびMyersの研究に概説されている析出効果に帰することはできず、本発明の新規性をより一層強調するものであることに留意しなければならない。
Figure 2005510628
前述のクラスIIタイプである一連の市販の鉛合金を、ストリップ形状で従来の鋳造状態となっているものとして得た。これらのストリップを引続き本発明で記載する方法を用いて処理した。具体的な合金および処理条件を以下にまとめる。
Pb−0.073重量%Ca−0.7重量%Sn合金(クラスII)に対して、1サイクルが室温にて圧下率40%に達する冷間圧延、270℃にて10分間の大気焼鈍およびその後の空冷からなる処理を3回付した。特定粒界の含有率が改善されたミクロ組織を図5にまとめる(図5ではPbCaSnと記す)。特定粒界の含有率は鋳造ままから開始した材料における11%から、本記載の方法によって処理された材料における51%へと増加した。
Pb−0.065重量%Ca−0.7重量%Sn0.03重量%Ag合金(クラスII)に対して、1サイクルが室温にて圧下率40%に達する冷間圧延、250℃にて10分間の大気焼鈍およびその後の空冷からなる処理を2回付した。特定粒界の含有率が改善されたミクロ組織を図5にまとめる(図5ではPbCaSnAgで示す)。特定粒界の含有率は鋳造ままから開始した材料における12%から、本記載の方法によって処理された材料における70%へと増加した。
Pb−0.073重量%Ca−1.4重量%Sn合金(クラスII)に対して、1サイクルが室温にて圧下率40%に達する冷間圧延、250℃にて10分間の大気焼鈍およびその後の空冷からなる処理を2回付した。特定粒界の含有率が改善されたミクロ組織を図5にまとめる(図5ではPbCa「高」Snで示す)。特定粒界の含有率は鋳造ままから開始した材料における17%から、本記載の方法によって処理された材料における70%へと増加した。
ストリップ材から0.59mm厚の格子に成形して、上述の鋳造まま状態およびGBE処理された状態の両方におけるこれら合金の性能を、当分野における標準試験により評価した。70℃の比重1.27の硫酸溶液中で、静電分極させて、20日間200mVの過電圧下で分極する腐食試験を行った。腐食による質量損失を確定させるため、溶液に曝す前と後に、格子電極の重量をミリグラム単位まで近似して計測した。個々の電池に組み込んだペーストを付着させた格子を用いて、サイクル試験を行った。格子重量はペーストを付着させる前に、ミリグラム単位まで近似して確定させた。70℃の比重1.27の硫酸溶液中で、正極格子に対して0.8Vと1.4Vの間で1日当り2サイクルの割合で35日間繰返した。試験完了後、格子から残留ペーストを除去し、再度重量をミリグラム単位に近似して計測した。また、試験前後で格子の部分を走査しデジタル処理することにより、格子の成長に対する感受性を確定させた。
従来の鋳造対照材と比較できるように、処理されたクラスII合金(GBE)の性能を図6Aおよび6Bにまとめている。すべての場合において、本発明に従って処理された合金は、鋳造対照材と比較して、腐食および成長速度が著しく低減していることを示した。
クラスI合金の代表としてPb−0.03重量%Ca−0.7重量%Sn0.06重量%Ag合金を、市販の回転ドラム式ネットシェイプ鋳造(rotary net shape casting)工程を用いて製造した。続いて0.86〜0.89mm厚の鋳造ストリップに対して、1サイクルが約20%の冷間引張歪み加工(室温にて)、250℃の空気対流炉にて5分間の熱処理、およびその後の周囲温度までの冷却からなる処理を1回付した。歪みは、室温にて格子伸張工程のみにより導入し、工具金型の形状寸法(すなわち伸張されたメッシュの菱形高さ(diamond height))によって制御した。比較用として、展伸しただけでその後の再結晶熱処理を行っていないストリップを製造した。この場合においては1.72mm厚の鋳造ストリップを50%まで冷間圧延し、同様にメッシュ状に伸張した。鋳造まま材、展伸材、およびGBE処理を1回付した材料おのおのに存在する特定粒界の割合は、それぞれ16.0%、15.4%、および64.4%であった。
これらの材料の相対的な腐食および成長性能を、実施例2に記載したサイクル試験において、75℃より高い温度で20日間行い、評価した。その結果を図7Aおよび7Bにまとめるが、本発明に従って処理された材料は、特に展伸された材料に比して腐食感受性を著しく低減することを示している。成長に関しては、GBE材は鋳造比較材および展伸比較材のどちらに対しても著しく優れている。
本発明に従って鉛合金を再結晶させるべく、種々の鉛合金に対して1以上の変形および焼鈍のサイクルからなる処理を付した。各々のサイクルにおいて試料は室温にて圧下率25%まで変形させて、その後255℃にて5分間の熱処理によって焼鈍させた。最終圧下変形および焼鈍後に、上述の各鉛合金に対して硬度試験を行った。島津製HMV2000型微小硬度計にて25g荷重を使用して、各試験合金ごとにそれぞれ2箇所において最少6回硬度測定を行った。各金属の硬度は鋳造まま状態のもの(すなわち、変形および焼鈍のサイクルを付していないもの)に対しても同様に測定した。GBE処理前の鋳造まま材試料のfsp値は、全ての場合において10から15%の間であった。各鉛合金の硬度試験結果を表2に示す。全ての合金において、圧下変形および熱焼鈍のサイクルを付したものは、その鋳造ままのものよりも硬度が低い結果となった。
Figure 2005510628
時効硬化合金(Pb−2.0Sb−0.15As)を鋳造し(鋳造後のビッカース硬さは、DPH=11)、本発明の冷間加工/焼鈍サイクル、すなわち、1サイクルが室温にて20%の冷間圧延による工程と、それに続く180℃にて5分間の熱処理からなる処理を3回付した。fspは10%(鋳造まま)から59%(その後試料に対してGBE処理を付した)へと増加した。比較として、1組の試料群に対してMeyers(米国特許第4,753,688号)に従った処理、より詳しくは、25%の冷間圧延を連続して9回行い(途中に焼鈍を行わない)、続いて230℃にて1分間の最終熱処理を行ったもの、を付した。
時効硬化性鉛合金の硬度は、それぞれの処理の完了直後および室温での各時効時間において測定された。50グラム荷重を使用したことを除き、上の実施例4に記載したものと同一の硬度測定方法で行った。硬度値を表3に記す。Meyers処理では、処理したままの硬度(VHN:12)は、鋳造まま材(VHN:11)の硬度よりも高く、GBE処理材(VHN:8)の硬度よりも著しく高いことが明瞭に示されている。また、24時間時効後の硬度がVHN:21に増加していることから、短期硬化性が著しく上昇することが示されている。比較として、GBE材は同期間では初期値からの増加がないことが示されている。10日間(240時間)に亘る時効でMeyers処理材は27VHNへと増加することが示されている。GBE処理材では、240時間後であっても、鋳造ままの硬度ほど高くはない硬度となっていることに留意しなければならない。
Figure 2005510628
種々の鉛合金に対して本発明のGBE処理を付した。Pb−1.8Sb−1.05Sn−0.17As合金では、その処理は、一連のサイクルが室温での50%肉厚圧下とそれに続く220℃にて3分間の熱処理からなるものを2回行うものであった。Pb−0.08Ca−0.3Sn合金では、その処理は、室温での30%肉厚圧下とそれに続く300℃にて10分間の熱処理を行い、引続いて一連のサイクルが室温での40%肉厚圧下とそれに続く290℃にて10分間の熱処理からなるものを3回行うものであった。Pb−0.04Ca−0.65Sn−0.03Ag合金では、その処理は、室温での60%肉厚圧下とそれに続く250℃にて3分間の熱処理を行うものであった。Pb−0.07Ca−1.4Sn合金では、その処理は、一連のサイクルが室温での50%肉厚圧下とそれに続く270℃にて10分間の熱処理からなるものを3回行うものであった。
各金属の最終的な硬度は4週間時効硬化した後に測定された。硬度値は上記の測定方法で、荷重50グラムの下で得られた。各合金のGBE処理前の硬度(すなわち、鋳造まま硬度)もまた、GBE処理後の硬度測定に用いた方法と同じ方法で測定された。各合金に対して本発明に従った処理をしたものおよび鋳造ままのものから得られた硬度値を、またGBE処理試料についてはfsp値と粒度を表4に示す。鋳造まま試料のfsp値は10から15%までの範囲にある。GBE処理材が有する硬度は永遠に鋳造まま比較材の硬度以下であることを実証することで、GBE処理材が時効硬化することで到達する最高硬度は鋳造まま硬度ほど高くないことを表4は明確に示す。
Figure 2005510628
Pb−0.06Ca−1.2Sn合金を鋳造し、表5に示す種々の温度にて圧延変形を用いた処理に付した。データから明らかなように、20、40および80℃にてストリップを加工し、続いて焼鈍処理したものは全ての場合において、試料のfsp値は60%を越えた値にまで上昇し、鋳造まままたは室温にて圧延した試料よりも低い値にまで最大引張強度(UTS)が低下した。
Figure 2005510628
Pb−0.06Ca−1.2Sn合金を表6に示すように熱間変形およびそれに続く焼鈍があるものとないものからなる処理に付した。Pb合金を圧延または押出しによって熱間変形した場合のfsp値は、後に続く焼鈍工程がないときにおいてさえ40%を越えた値にまで上昇した。
Figure 2005510628
ストリップを50℃から200℃までの温度範囲またはPb合金の固溶限温度以下の温度にて押出した場合も、同様な結果に至った。
0.065%Ca、1.2%スズを含み、残部が市販の純鉛である、10cm幅に圧延された鉛合金ストリップから長さ30cmの断片を切り出した。一組の試料をショットピーニングし、残り(比較材)は未処理のままとした。密着性(表7)を測定するためにASTM D1876−95剥離試験を行った。試料を25mm幅に切断し、アセトンを入れた超音波浴中で洗浄し、そして予めクランプ止めしていた端より4から5cmの箇所を角度90°に曲げた。活物質を含有するペーストへの適用をシミュレートするため、エポキシのフィルム(Hysol EPK608 epoxy)を用いた。2つの試料をそのエポキシで接着し、その後適当にキュアした(24時間)。試料は、インストロン4201型万能試験機を用いて試験した。その結果を表7に記す。ピーニングした表面では接着強度の均一性が改善されたこと、およびこれら試験片では凝集破壊が観測されたことを、180度剥離試験(T−peel test)は実証した。平滑な(比較材)表面の試験片は接着不良を示した。
Figure 2005510628
ショットピーニングした表面が密着性を実質的に(50%を上回る)改善したことを本試験は明確に示している。
一組のPb−Ca−Sn合金ブックモールド鋳造格子の表面を室温にて10秒間ピーニングし、続いて熱処理(275℃、10分間)した。格子の断面を入念に分析することで、浸透深さが達する部分はピーニングした表面下350ミクロンにまで延びたこと、およびバルク材では粒径が約260ミクロンのままであるのに対して、表層付近の粒径が10ミクロンであったことが明らかになった。未処理試料のfspおよびピーニングして焼鈍した処理をした材料の表面下350ミクロンを越えた部分のfspが15%のままであるのに対して、その表層のfspは40%であった(表8)。
Figure 2005510628
2種のPb−Ca−Sn合金をシートに鋳造した。従来技術で処理されたままのセットおよび本発明に従って処理したセットに対して、亜鉛電解採取の操業における典型的な環境下で腐食試験を行った。室温にて80psiで28ミルの鋼球でピーニングを行った。3分以内に基材当り3パス行い、ピーニングした試料を引続いて250℃にて10分間焼鈍した。GBE処理を促進する析出物が存在するように改質するために、300℃にて30分の浸漬を含む予備処理を用いた。次の表9および10に試料の特徴および腐食性能を記す。
試験試料を典型的な亜鉛電解採取の電解液(60℃にて160g/l硫酸、60g/l Zn2+)に浸漬し、そして鋼陰極に対して40mA/cm2にてその試験試料を陽極酸化させることで腐食試験を行った。結果を表9および表10に示す。
Figure 2005510628
Figure 2005510628
本発明をより良く理解するために、また本発明が如何にして効果を現すかをより明確に示すために、一例として以下の図面を示す。
図1は、従来の鉛蓄電池の断面図である。 図2は、臨界電極寸法に対するサイクル寿命の変化を示すグラフである。 図3は、鋳造ままの純鉛のクリープ速度と、本発明の方法に従って処理された純鉛のクリープ速度との比較を示すグラフである。 図4は、(a)鋳造まま、および(b)本発明の方法に従って処理された純鉛における特定粒界の分布図である。 図5は、一連の鉛合金組成に対して本発明の方法を用いた場合の、特定粒界含有量の増加をまとめた棒グラフである。 図6Aおよび6Bは、一連の鉛合金組成に対して本発明の方法を用いた場合の、腐食性の改善と電極の成長をまとめた棒グラフである。 図7Aおよび7Bは、Pb−0.03Ca−0.7Sn−0.06Ag合金の鋳造まま状態、展伸した状態および展伸し再結晶した状態(後者は本発明の方法を用いた場合である)における腐食および電極の成長の各値を相対的にまとめた棒グラフである。

Claims (13)

  1. 鉛または鉛合金の全粒界の少なくとも20%である特定粒界の比率を生ずるのに、鉛または鉛合金の塊を再結晶させることにより形成された、再結晶鉛または鉛合金であって、
    前記再結晶は、前記鉛または鉛合金の塊を、
    a)室温より高く且つ前記鉛または鉛合金の固溶限温度以下の温度にて前記塊を保持しつつ、少なくとも前記鉛または鉛合金の塊の一部を変形する工程、および所望により前記塊を焼入れする工程、
    b)150℃と前記鉛または鉛合金の融点の間の温度にて、前記鉛または鉛合金の再結晶が生ずるに十分な時間、前記鉛または鉛合金の塊を焼鈍する工程、並びに
    c)所望により工程a)およびb)を繰返す工程
    の一連の工程を有する少なくとも1サイクルの処理に付すことによって行われるものであって、
    前記鉛合金は、Ag、Al、As、Ba、Bi、Ca、Cd、Cu、Fe、Li、Mg、Na、Se、Sb、Sn、Sr、およびZnからなる群より選択される少なくとも1種の元素との合金である、
    再結晶鉛または鉛合金。
  2. 前記少なくとも1サイクルの処理を付した前記鉛または鉛合金の塊が、前記鉛または鉛合金を鋳造または押出しにより固体のストリップの形態で得られる、請求項1に記載する再結晶鉛または鉛合金。
  3. 前記変形が前記固体のストリップを圧延、伸張、打抜き、曲げまたはピーニングすることにより行われる、請求項2に記載する再結晶鉛または鉛合金。
  4. 鉛蓄電池用正極集電体の形態をしている、請求項3に記載する再結晶鉛または鉛合金。
  5. 前記固体のストリップが前記正極集電体の所望の厚さ以上の厚さである、請求項4に記載する再結晶鉛または鉛合金。
  6. 前記鉛または鉛合金の全粒界の少なくとも50%である特定粒界の比率を生ずるのに、前記鉛または鉛合金の塊を再結晶させることにより形成された、請求項1に記載する再結晶鉛または鉛合金。
  7. 前記変形が15℃から前記鉛または鉛合金の固溶限温度以下の温度範囲において行われる、請求項1に記載する再結晶鉛または鉛合金。
  8. 前記温度範囲が40℃〜95℃である、請求項7に記載する再結晶鉛または鉛合金。
  9. 前記ストリップが圧延、曲げまたはピーニングによって変形される、請求項3に記載する再結晶鉛または鉛合金。
  10. 前記ストリップがピーニングによって変形される、請求項9に記載する再結晶鉛または鉛合金。
  11. 前記ストリップは穿孔されたものである、請求項3に記載する再結晶鉛または鉛合金。
  12. 鉛または鉛合金の全粒界の少なくとも40%である特定粒界の比率を生ずるのに、鉛または鉛合金の鋳造ビレットを再結晶させることにより形成された、再結晶鉛または鉛合金であって、
    前記再結晶は、前記ビレットを、
    a)室温より高く且つ前記鉛または鉛合金の固溶限温度以下の温度においてストリップを保持しつつ、前記ビレットを所望の厚さのストリップに押出しする工程、および所望により該ストリップを焼入れする工程、
    b)室温より高く且つ前記鉛または鉛合金の固溶限温度以下の温度において該ストリップを保持しつつ、圧延、伸張、打抜き、曲げまたはピーニングによって所望の厚さまで該ストリップを所望により変形する工程、および所望により該ストリップを焼入れする工程、
    c)150℃と前記合金の融点の間の温度にて、前記鉛または鉛合金の再結晶が生ずるに十分な時間、該鉛または鉛合金ストリップを焼鈍する工程
    の一連の工程を有する少なくとも1サイクルの処理に付すことによって行われるものであって、
    前記鉛合金は、Ag、Sn、Cu、Zn、As、Bi、Li、Na、Al、Mg、Ca、Sr、Ba、Cd、Fe、Se、およびSbからなる群より選択される少なくとも1種の元素との合金である、
    再結晶鉛または鉛合金。
  13. 鉛または鉛合金の全粒界の少なくとも20%である特定粒界の比率を生ずるのに、鉛または鉛合金を再結晶する工程からなる鉛または鉛合金の粒界劣化を低減する方法であって、
    前記再結晶は、前記鉛または鉛合金を、
    a)室温より高く且つ前記鉛または鉛合金の固溶限温度以下の温度にて前記鉛または鉛合金の塊を保持しつつ、少なくとも前記塊の一部を変形する工程、および所望により前記塊を焼入れする工程、
    b)150℃と前記合金の融点の間の温度にて、前記鉛または鉛合金の再結晶が生ずるに十分な時間、前記鉛または鉛合金の塊を焼鈍する工程、
    c)所望により工程a)およびb)を繰返す工程
    の一連の工程を有する少なくとも1サイクルの処理に付すことによって行われるものであって、
    前記合金は、Ag、Al、As、Ba、Bi、Ca、Cd、Cu、Fe、Li、Mg、Na、Se、Sb、Sn、Sr、およびZnからなる群より選択される少なくとも1種の元素との合金である、
    粒界劣化を低減する方法。
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