JP2024044548A - アルミニウム合金圧延材及びその製造方法並びにアルミニウム合金導電体 - Google Patents

アルミニウム合金圧延材及びその製造方法並びにアルミニウム合金導電体 Download PDF

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Abstract

【課題】、高い導電性、良好な熱伝導性並びに高い強度を有するアルミニウム合金圧延材及びその製造方法、並びにアルミニウム合金導電体を提供する。【解決手段】化学組成が、Si:0.20~0.68質量%、Mg:0.35~0.74質量%、Fe:0.05~0.45質量%、Cu:0.005~0.12質量%、Mn:0.002~0.04質量%、Cr:0.002~0.04質量%、Zn:0.002~0.08質量%、Ti:0.002~0.04質量%、Ni:0.002~0.04質量%、V:0.0008~0.04質量%、B:0.0005~0.04質量%、Zr:0.0008~0.04質量%を含有し、残部がAlと不可避不純物からなり、Si含有量:CsiとMg含有量:CMgが0.8≦CMg/Csi≦1.7であり、室温での引張強さσB-RTが220MPa以上で、150℃における引張強さσB-150との関係がσB-150/σB-RT≧0.70とする。【選択図】なし

Description

この発明は、アルミニウム合金圧延材、特に導電性、熱伝導性並びに強度に優れたアルミニウム合金圧延材及びその製造方法、並びにアルミニウム合金導電体に関する。
電気自動車やハイブリッド車、プラグインハイブリッド車などに搭載するバッテリは、高い出力電圧を得るために複数のバッテリセルを互いの正・負極間を直列接続して組電池とする構成が多く用いられており、これらのバッテリセルの端子同士を接続するための導電部材として例えばバスバーと呼ばれる部材がよく知られている。
また、このような接続部材は他にも駆動モーターを制御するインバータ回路やプラグインハイブリッド車に搭載されている家庭用電源等の外部の交流電源を用いてバッテリを充電する車載充電器(オンボードチャージャ)等の大電力を取り扱う回路内にも用いられている。
従来、このような導電部材の基材には、銅が使用されてきた。しかしながら近年、車体の軽量化のニーズから断面積を広くとる等の設計変更により銅より軽量化を図れる純アルミニウム合金又は導電性の高いアルミニウム合金への置き換えの検討が進んでいる。
これらの用途のアルミニウム合金には導電性が高いことはもちろん、通電による発熱を拡散し温度上昇を抑えるための優れた熱伝導性並びに走行中の振動による変形に耐えうる高い(静的)強度や疲労強度が求められる。また、外部環境変化やエンジンルーム付近など低温から高温までの過酷な温度環境下でも電気的・機械的特性を劣化させないことも必要な要件となっている。
更に、アルミニウム合金には、絶縁性の酸化膜や水和膜が生じやすく、これらの被膜による経時的な接触抵抗の増加を防ぐという課題もある。
これらの課題に対し、A1100、A1050、A1070等の純アルミニウム合金は導電性・熱伝導性に優れるが、強度が低く適さない。また高強度材として用いられるA5052等のAl-Mg合金(5000系合金)は、純アルミニウム系合金よりも熱伝導性及び導電性が著しく劣る。
そこで、熱伝導性及び導電性が良く時効硬化により強度向上を図ることができる、Al-Mg―Si系合金(6000系合金)を用いる方法が検討されている。
例えば、特許文献1には、Mgを0.1~0.34質量%、Siを0.2~0.8質量%、Cuを0.22~1.0質量%含有し、残部がAl及び不可避不純物からなり、Si/Mg含有量比が1.3以上である合金を、半連続鋳造で厚さ250mm以上の鋳塊とし、400~540℃の温度で予備加熱を経て熱間圧延、50~85%の圧下率で冷間圧延を施した後、140~280℃の温度で焼鈍をすることを特徴とするAl-Mg―Si系合金圧延板の製造方法が開示されている。
特許文献2には、Si:0.2~1.5質量%、Mg:0.2~1.5質量%、Fe:0.3質量%以下を含有し、更に、Mn:0.02~0.15質量%、Cr:0.02~0.15%の1種又は2種を含有するとともに、残部がAl及び不可避不純物からなり、該不可避不純物中のTiを0.2%以下に規制し、若しくはこれに更にCu:0.01~1質量%か希土類元素:0.01~0.2質量%の1種又は2種を含有する組成を有するアルミニウム合金版を連続鋳造圧延により作製し、その後冷間圧延し、次いで500~570℃の溶体化処理を行い、続いて冷間圧延率5~40%で冷間圧延を行い、冷間圧延後150~190℃未満に加熱する時効処理を行うことを特徴とする熱伝導性、強度及び曲げ加工性に優れたアルミニウム合金板の製造方法が記載されている。
特許文献3には、Si:0.2~1.5質量%、Mg:0.2~1.5質量%、Cr:0.02~0.1質量%、Fe:0.3質量%以下を含有し、残部がAl及び不可避不純物からなり、該不可避不純物中のTiが0.015質量%以下に規制され、かつ導電率が50%IACS以上、熱伝導率が200W/m・K以上であることを特徴とする熱伝導性と成形性に優れたアルミニウム合金板が開示されている。
特許文献4には、Si:1.1~1.5質量%、Mg:0.3~0.6質量%、Cu:0.6~0.8質量%を含有し、不純物としてFe:0.35質量%以下に規制し、残部がAl及び不可避不純物よりなり、かつ導電率が55%IACS以上、引張強さを215N/mm以上であることを特徴とする、熱伝導性と強度と曲げ加工性に優れたアルミニウム合金圧延板が開示されている。
特許文献5には、Si:0.20~0.65質量%、Mg:0.35~0.7質量%、Fe:0.05~0.35質量%、Cu:0.01~0.15質量%、Ni:0.02~0.20質量%、Cr:0.05質量%以下、Mn:0.05質量%以下、Zn:0.10質量%以下、Ti:0.10質量%以下、B:0.05質量%以下を含み、残部がAlと不可避不純物からなり、かつ導電率が56%IACS以上、引張強さを250MPa以上であることを特徴とする、熱伝導性と強度と曲げ加工性に優れたアルミニウム合金圧延板が開示されている。
なお、Al-Mg―Si系合金においては、導電率と熱伝導率が良好な相関性を示し、高い導電率を示すアルミニウム合金板は良好な熱伝導性を有するため通電による発熱を拡散させ、温度上昇を抑えることができる。
特開2012-62517号公報 特開2007-9262号公報 特開2005-8926号公報 特開2008-248297号公報 特開2021-85040号公報
しかしながら、特許文献1では、導電率を上げるために特にMgの固溶量を下げることを主眼としている。そのためSi/Mg含有量比が1.3以上とMgの含有量そのものを抑えており、引張強さは主にSiを多く含有させることとCuの添加により確保されたもので、強度より導電率を優先させた合金となっており、実施例の発明例に記載の引張強さも213MPa以下と低く、強度面では十分とは言えない。
特許文献2では、Mn、Crの添加により成形性を向上させ、比較的高い強度が得られているものの導電率の目標下限は48%IACSと極めて低く、実施例に記載の導電率も54%IACS未満となっている。
特許文献3では、実施例の記載例では導電率が50%IACS以上で引張強度、耐力と曲げ加工性に優れた材料が得られているが、疲労強度や高温での引張強度が考慮されておらず、検討もされていない。
特許文献4、特許文献5においても、導電率が高く、強度と曲げ加工性に優れた材料が提案されているが、疲労強度や高温での引張強度が考慮されておらず、実使用環境下での経時劣化に対する検討が不十分である。
本発明は、上述した技術背景に鑑み、高い導電率と良好な熱伝導性及び高い強度を有するとともに実使用環境下での経時劣化の少ないアルミニウム合金圧延材及びその製造方法並びにアルミニウム合金導電体を提供することを目的とする。
上記課題を解決すべく、本願発明者は鋭意研究の結果、アルミニウム圧延材の組成と製造工程を検討することで高い導電率と良好な熱伝導性と高い強度を有するアルミニウム合金圧延材が得られることを見出した。すなわち本願発明は以下に関する。
(1)化学組成が、Si:0.20~0.68質量%、Mg:0.35~0.74質量%、Fe:0.05~0.45質量%、Cu:0.005~0.12質量%、Mn:0.002~0.04質量%、Cr:0.002~0.04質量%、Zn:0.002~0.08質量%、Ti:0.002~0.04質量%、Ni:0.002~0.04質量%、V:0.0008~0.04質量%、B:0.0005~0.04質量%、Zr:0.0008~0.04質量%を含有し、残部がAlと不可避不純物からなり、Si含有量:CsiとMg含有量:CMgとの間で0.8≦CMg/Csi≦1.7なる関係を有すると共に、室温における引張強さσB-RTが220MPa以上であり、150℃における引張強さσB-150との間で、σB-150/σB-RT≧0.70なる関係式を満たすことを特徴とする導電性並びに強度に優れたアルミニウム合金圧延材。
(2)Si:0.36~0.56質量%、Mg:0.42~0.68質量%、Fe:0.12~0.38質量%、Cu:0.01~0.08質量%、Mn:0.004~0.018質量%、Cr:0.004~0.018質量%、Zn:0.004~0.028質量%、Ti:0.004~0.018質量%、Ni:0.004~0.018質量%、V:0.001~0.018質量%、B:0.001~0.028質量%、Zr:0.001~0.028質量%を含有し、かつσB-RTが250MPa以上で、σB-150/σB-RT≧0.80なる関係式を満たすことを特徴とする前項1に記載の導電性並びに強度に優れたアルミニウム合金圧延材。
(3)不可避不純物中のGaが0.04%質量%以下、Caが0.01質量%以下、Pbが0.01質量%以下、Biが0.01質量%以下、Snが0.01質量%以下、Inが0.004質量%以下、Sbが0.01質量%以下にそれぞれ規制されていることを特徴とする前項1に記載の導電性並びに強度に優れたアルミニウム合金圧延材。
(4)不可避不純物中のGaが0.04%質量%以下、Caが0.01質量%以下、Pbが0.01質量%以下、Biが0.01質量%以下、Snが0.01質量%以下、Inが0.004質量%以下、Sbが0.01質量%以下にそれぞれ規制されていることを特徴とする前項2に記載の導電性並びに強度に優れたアルミニウム合金圧延材。
(5)前項1ないし前項4の何れか1項に記載のアルミニウム合金圧延材の化学組成を有するアルミニウム合金鋳塊に後続して実施される面削の前又は後に480℃以上570℃以下の温度で1時間以上20時間以下の時間にて均質化処理し、そのまま冷却後あるいは冷却することなく、460℃以上540℃以下の温度で30分以上10時間以下の保持後に熱間圧延を開始し、複数の圧下パスにより圧下率93%以上99.8%以下の熱間圧延を実施した後、60%以上95%以下の冷間圧延を施す工程を含むことを特徴とする導電性並びに強度に優れたアルミニウム合金圧延材の製造方法。
(6)冷間圧延を施す工程の開始から終了のいずれかのパスの間に少なくとも1回、230℃以上290℃以下、5分以上4時間以下の熱処理工程とそれに続く10%以上60%以下の冷間圧延工程を含むことを特徴とする前項5に記載の導電性並びに強度に優れたアルミニウム合金圧延材の製造方法。
(7)冷間圧延終了後に120℃以上180℃以下、1時間以上10時間以下で熱処理する工程を含むことを特徴とする前項5に記載の導電性並びに強度に優れたアルミニウム合金圧延材の製造方法。
(8)冷間圧延終了後に120℃以上180℃以下、1時間以上10時間以下で熱処理する工程を含むことを特徴とする前項6に記載の導電性並びに強度に優れたアルミニウム合金圧延材の製造方法。
(9)前項1ないし前項4の何れか1項に記載のアルミニウム合金圧延材が用いられ、電気的な接点部において前記アルミニウム合金圧延材に厚さ0.2~5μmのNiめっき層か、厚さ0.2~5μmのNi-Pめっき層か、厚さ0.3~5μmのNi-Bめっき層のいずれかのめっき層が形成されていることを特徴とする導電性並びに強度に優れたアルミニウム合金導電体。
(10)前記めっき層の上層に厚さ0.4~4μmのSnめっき層が形成されていることを特徴とする前項9に記載の導電性並びに強度に優れたアルミニウム合金導電体。
前項(1)に記載の発明によれば、化学組成が、Si:0.20~0.68質量%、Mg:0.35~0.74質量%、Fe:0.05~0.45質量%、Cu:0.005~0.12質量%、Mn:0.002~0.04質量%、Cr:0.002~0.04質量%、Zn:0.002~0.08質量%、Ti:0.002~0.04質量%、Ni:0.002~0.04質量%、V:0.0008~0.04質量%、B:0.0005~0.04質量%、Zr:0.0008~0.04質量%を含有し、残部がAlと不可避不純物からなり、Si含有量:CsiとMg含有量:CMgとの間で0.8≦CMg/Csi≦1.7なる関係を有すると共に、室温における引張強さσB-RTが220MPa以上であり、150℃における引張強さσB-150との間で、σB-150/σB-RT≧0.70なる関係式を満たすことで高い導電率、高い引張強さ、高い疲労強度を有するとともに、高温環境下での強度低下が少ないアルミニウム合金圧延材となしうる。
前項(2)に記載の発明によれば、Si:0.36~0.56質量%、Mg:0.42~0.68質量%、Fe:0.12~0.38質量%、Cu:0.01~0.08質量%、Mn:0.004~0.018質量%、Cr:0.004~0.018質量%、Zn:0.004~0.028質量%、Ti:0.004~0.018質量%、Ni:0.004~0.018質量%、V:0.001~0.018質量%、B:0.001~0.028質量%、Zr:0.001~0.028質量%を含有し、かつσB-RTが250MPa以上で、σB-150/σB-RT≧0.80なる関係式を満たすことで、更に高い導電率、高い引張強さ、高い疲労強度を有するとともに、高温環境下での強度低下が少ないアルミニウム合金圧延材となしうる。
前項(3)に記載の発明によれば、不可避不純物中のGaが0.04%質量%以下、Caが0.01質量%以下、Pbが0.01質量%以下、Biが0.01質量%以下、Snが0.01質量%以下、Inが0.004質量%以下、Sbが0.01質量%以下にそれぞれ規制されているから、高い導電率、高い引張強さ、高い疲労強度を有するとともに、高温環境下での強度低下が少ないアルミニウム合金圧延材となしうる。
前項(4)に記載の発明によれば、不可避不純物中のGaが0.04%質量%以下、Caが0.01質量%以下、Pbが0.01質量%以下、Biが0.01質量%以下、Snが0.01質量%以下、Inが0.004質量%以、Sbが0.01質量%以下下にそれぞれ規制されているから、高い導電率、高い引張強さ、高い疲労強度を有するとともに、高温環境下での強度低下が少ないアルミニウム合金圧延材となしうる。
前項(5)に記載の発明によれば、高い導電率、高い引張強さ、高い疲労強度を有するとともに、高温環境下での強度低下が少ないアルミニウム合金圧延材を製造できる。
前項(6)に記載の発明によれば、更に高い導電率、高い引張強さ、高い疲労強度を有するとともに、高温環境下での強度低下が少ないアルミニウム合金圧延材を製造できる。
前項(7)に記載の発明によれば、更に高い導電率、高い引張強さ、高い疲労強度を有するとともに、高温環境下での強度低下が少ないアルミニウム合金圧延材を製造できる。
前項(8)に記載の発明によれば、更に高い導電率、高い引張強さ、高い疲労強度を有するとともに、高温環境下での強度低下が少ないアルミニウム合金圧延材を製造できる。
前項(9)に記載の発明によれば、高い導電率、高い引張強さ、高い疲労強度を有するとともに、高温環境下での強度低下が少なく、接触抵抗の低い導電部材となしうる。
前項(10)に記載の発明によれば、高い導電率、高い引張強さ、高い疲労強度を有するとともに、高温環境下での強度低下が少なく、更に接触抵抗の低い導電部材となしうる。
本願発明者は、熱間圧延、冷間圧延を順次実施するAl-Mg―Si系のアルミニウム合金圧延材の製造方法において、熱間圧延前に溶体化処理温度まで加熱した後に圧延を開始し、熱間圧延上がりの合金材の表面温度を所定の温度以下とするとともに、熱間圧延終了後であって、冷間圧延を施す工程の開始から終了のいずれかのパスの間において溶体化処理を施すことなく時効硬化と延性回復を兼ねた熱処理を実施することにより、高い導電率を有しつつ高い強度を有し、かつ高温環境下での強度低下が少ないアルミニウム合金圧延材が得られることを見出し本願の発明に至った。
[アルミニウム合金圧延材の化学組成]
アルミニウム合金圧延材の組成において、各元素の添加目的及び含有量の限定理由は下記の通りである。
(Mg、Si含有量)
Mg及びSiは本願の合金の強度、成形性、導電率などの特性を確保するために必要な元素であり、それぞれの含有量はSi:0.20~0.68質量%、Mg:0.35~0.74質量%とする。Si含有量が0.20質量%未満あるいはMg含有量が0.35質量%未満では十分な強度を得ることができない。一方、Si含有量が0.68質量%、Mg含有量が0.74質量%を超えると、固溶するMgとSiの影響により必要な導電率を得ることができない。また、Si含有量は更に0.36~0.56質量%が好ましく、特に0.40~0.52質量%が一層好ましい。Mg含有量は更に0.42~0.68質量%が好ましく、特に0.44~0.62質量%が一層好ましい。
(Mg/Si比)
また、一般にAl-Mg―Si系合金におけるMgとSiは、MgSiなる微細な析出物を形成することで強度向上に寄与すると共にアルミニウム母相中の固溶量を減少させ、導電率を向上させることがよく知られている。そのため、MgSiを形成させるためのバランス組成、すなわちMg含有量(質量%):CMg、Si含有量(質量%):CSiとしたときの、CMg/CSi=1.73が有効組成であると言われてきたため、そのような報告例も多い。
しかしながら本願発明者は、更に上記の電気的並びに機械的特性をバランスよく確保し、かつ最適化させるためには、このMg/Si比のバランス組成よりSi量の多い過剰Si側にすることが重要なファクターであることを見出した。このMg/Si比は、0.8≦CMg/CSi≦1.7とする。更に0.9≦CMg/CSi≦1.5が好ましい。
(Fe含有量)
Feは結晶粒の微細化効果が期待でき強度向上に有効な成分であるが、多量に含有すると耐食性が低下する。0.45質量%を超えると耐食性への阻害要因となる。一方で、0.05質量%未満では強度向上が期待できない上に、原材料として用いるアルミ地金のベース純度が上がり高価となる。従ってFe含有量の範囲は0.05~0.45質量%とする。更に0.12質量%以上0.38質量%以下であることが好ましく、特に0.18~0.35質量%が一層好ましい。
(Cu含有量)
Cuは強度向上に必要な成分であるが、多量に含有すると耐食性が低下する。0.12質量%を超えると導電率の確保が難しい。一方で、0.005質量%未満では強度の確保が難しい。従ってCu含有量の範囲は0.005~0.12質量%とする。更に0.01~0.08質量%が好ましく、特に0.018~0.06質量%が一層好ましい。
(Mn、Cr、Ni、Zn含有量)
MnとCrは強度向上、Niは強度向上と析出促進、Znは析出促進の効果が期待できる元素であるが、一方で含有量が多くなると、MnとCrは導電性を低下させ、Niは導電率低下と高温環境下における析出促進による強度低下が起こりやすくなり、Znは合金材の耐食性を低下させる。従って、Mn、Cr及びNiの含有量は0.002~0.04質量%とする。更に0.004~0.018質量%が好ましく、特に0.008~0.015質量%が一層好ましい。Znの含有量は0.002~0.08質量%とし、更に0.004~0.028質量%以下が好ましく、特に0.008~0.022質量%が一層好ましい。
(Zr、V含有量)
Zr及びVは、少量では合金をスラブに鋳造する際に結晶粒を微細化する効果があり、また室温付近でのAlへの固溶量が少ないため、導電率の低下を抑えながら強度向上が期待できる元素であるが、固溶状態では微量でも導電率を大きく低下させるため、工程条件の影響を受けやすい。従ってZrの含有量は0.0008~0.04質量%とする。更に0.001~0.028質量%が好ましく、特に0.002~0.02質量%が一層好ましい。また、Vの含有量は0.0008~0.04質量%とする。更に0.001~0.018質量%以下が好ましく、特に0.002~0.01質量%が一層好ましい。
(Ti、B含有量)
Ti及びBは、合金をスラブに鋳造する際に結晶粒を微細化するとともに凝固割れを防止する効果がある。前記効果はTi又はBの少なくとも1種の添加により得られ、両方を添加してもよい。しかしながら、多量に含有すると、サイズの大きい晶出物が多く生成するため、材料の圧延性や部材としての曲げ加工性に代表される機械的特性に悪影響を及ぼす。Tiの含有量は0.002~0.04質量%とする。更に0.004質量%以上0.018質量%以下が好ましく、特に0.005~0.015質量%が一層好ましい。また、B含有量は0.0005~0.04質量%とする。更に0.001~0.028質量%が好ましく、0.005~0.02質量%が一層好ましい。
(Ga、Ca含有量)
Ga、Caは粒界に偏析しやすく、含有量が多くなると延性や疲労強度を低下させるため少ないことが好ましい。不可避不純物としてのGa含有量は0.04質量%以下とする。更に0.03%以下が好ましく、特に0.02%以下が一層好ましい。また、不可避不純物としてのCa含有量は0.01質量%以下とする。更に0.008質量%以下が好ましく、特に0.006%以下が一層好ましい。
(In含有量)
Inは耐食性を著しく低下させるため少ないことが好ましい。不可避不純物としてのIn含有量は0.004質量%以下とする。更に0.003質量%以下が好ましく、特に0.002質量%以下が一層好ましい。
(その他不純物元素)
上記以外のその他の不可避不純物元素としては、Pb、Bi、Sn、Sb等が挙げられるが、これらに限定されるものではなく、これらその他の不可避不純物元素は個々の元素の含有量として0.01質量%以下とする。更に0.008質量%以下が好ましく、特に0.005質量%以下が一層好ましい。
次に、本願規定のアルミニウム合金圧延材を得るための処理工程について記述する。
常法にて溶解成分調整し、アルミニウム合金鋳塊を得る。得られた合金鋳塊に熱間圧延前加熱より前の工程として均質化処理を施すことが好ましい。
前記均質化処理はアルミニウム合金鋳塊中に晶出物及びMg、Siを固溶させ均一な組織とするために実施するが、温度が高すぎると共晶融解が生じるため、480℃以上570℃以下で行うことが好ましく、特に500℃以上550℃以下で行うことが好ましい。時間は1時間以上20時間以下で行うことが好ましく、特に2時間以上18時間以下で行うことが好ましい。
アルミニウム合金鋳塊に均質化処理を行った後、一旦冷却した後、あるいは冷却することなく引き続いて熱間圧延前加熱を行う。熱間圧延前加熱の好ましい温度範囲は460℃以上540℃以下である。時間は0.5時間以上10時間以下が好ましい。更に好ましい範囲は、温度480℃以上520℃以下、時間1時間以上8時間以下である。なお、前記均質化処理及び熱間圧延前加熱双方の好ましい温度範囲にて均質化処理と熱間圧延前加熱を兼ねて同じ温度で加熱しても良い。
鋳造後熱間圧延前加熱前に鋳塊の表面近傍の不純物層を除去する為に鋳塊に面削を施すことが好ましい。面削は鋳造後均質化処理前であっても良いし、均質化処理後熱間圧延前加熱前であってもよい。
熱間圧延前加熱後のアルミニウム合金鋳塊に熱間圧延を施す。熱間圧延は粗熱間圧延と仕上げ熱間圧延からなり、粗熱間圧延機を用い複数のパスからなる粗熱間圧延を行った後、粗熱間圧延機とは異なる仕上げ熱間圧延機を用いて仕上げ熱間圧延を行う。なお、本願において、粗熱間圧延機での最終パスを熱間圧延の最終パスとする場合は、仕上げ熱間圧延を省略することができる。この熱間圧延の総圧下率は93%以上99.8%以下が好ましい。更に好ましい範囲は95%以上99.5%以下である。
粗熱間圧延では、溶体化処理に準じてMg及びSiが固溶された状態を保持した後、粗熱間圧延のパスによるアルミニウム合金圧延材の冷却、若しくは粗熱間圧延のパス後とパス後の冷却による温度降下により焼き入れの効果を得ることができる。
上記粗熱間圧延のパス間の冷却は、アルミニウム合金圧延材を圧延しながら圧延後の部位に対し順次実施してもよいし、アルミニウム合金圧延材全体を圧延した後実施してもよい。冷却の方法は限定されないが、水冷であっても空冷であってもよいし、クーラントを利用してもよい。
本願において、粗熱間圧延の最終パス後に仕上げ圧延を行わない場合は、熱間圧延の最終パス直後のアルミニウム合金圧延材の表面温度を熱延上り温度とし、粗熱間圧延の最終パス後に仕上げ圧延を行う場合は、仕上げ圧延後のアルミニウム合金圧延材の表面温度を熱延上り温度とする。
上記熱延上り温度は280℃以下とすることが好ましい。熱延上り温度を280℃以下とすることにより有効な焼き入れ効果が得られ、その後の熱処理時により時効硬化するとともに導電率が向上する。熱延上り温度が高すぎると、焼き入れの効果が不足し、熱間圧延終了後冷間圧延終了前に熱処理を実施しても強度の向上が不十分となる。熱延上り温度は250℃以下が更に好ましく、特に220℃以下が好ましい。
なお、後工程の冷間圧延をコイルで実施するために熱間圧延後にコイル巻き取りを実施する際、巻き取り後の自然冷却速度が極めて遅くなる場合がある。その時、高温で長時間保持されると粗大な析出物が発生し過時効となるため、後述する熱処理による時効硬化が見込めなくなる。
従って、コイル状に巻き取る場合で仕上げ熱間圧延を行わない場合は、粗熱間圧延最終パス上りのアルミニウム合金板の表面温度は180℃以下が好ましい。粗熱間圧延の後仕上げ熱間圧延を行う場合は、仕上げ熱間圧延後のアルミニウム合金板の表面温度は180℃以下であることが好ましい。
熱間圧延終了後、所定の厚さのアルミニウム合金圧延材を得るまで、複数パスにより冷間圧延を実施する。熱間圧延終了後から中間熱処理前までの冷間圧延の圧下率は60%以上95%以下とするが良い。60%未満では、冷間加工度が不足し、最終圧延材に必要な引張強さを得ることが出来ない。また、95%を超えると最終圧延材に必要な伸びを確保することが出来ない。
冷間圧延を施す工程の開始から終了のいずれかのパスの間においてアルミニウム合金圧延材に中間熱処理を施すことで、時効硬化させるとともに導電率を向上させることができる。本願においてアルミニウム合金圧延材への中間熱処理は時効硬化及び導電率向上の効果を得るために230℃以上290℃以下の温度で実施することが好ましい。更に240℃以上280℃以下が更に好ましく、特に250℃以上270℃以下が一層好ましい。
前記熱間圧延終了後、冷間圧延を施す工程の開始から終了のいずれかのパスの間において実施するアルミニウム合金圧延材の中間熱処理の時間は、5分以上4時間以下の熱処理を実施することが好ましい。更に20分以上3時間以下が好ましく、特に0.5時間以上2時間以下が一層好ましい。
前記中間熱処理後の冷間圧延により所定の厚さのアルミニウム合金圧延材とする。冷間圧延を実施することにより一般に加工硬化にて強度は向上する。この中間熱処理後の冷間圧延時の圧下率は、10%以上60%以下が好ましい。圧下率が10%未満では最終圧延材に必要な強度を得ることが出来ない。また、60%を超えると最終圧延材に必要な曲げ加工性を確保することが出来ない。更に20%以上55%以下が好ましく、特に30%以上50%以下が一層好ましい。
冷間圧延終了後に熱処理を実施すると冷間加工歪の回復と時効析出が同時に起こるため、強度向上は期待できないが、延性が向上し、曲げ加工性等の成形性を向上させることができる。この最終熱処理の好ましい温度範囲は120℃以上180℃以下である。時間は1時間以上10時間以下が好ましい。更に好ましい範囲は、温度130℃以上160℃以下、時間は2時間以上6時間以下である。
冷間圧延後のアルミニウム合金圧延材に必要に応じて洗浄を実施しても良い。
なお、本願のアルミニウム合金圧延材の製造はコイルで行ってもよく、単板で行ってもよい。また、冷間圧延後の任意の工程でアルミニウム合金圧延材を切断し切断後の工程を単板で行ってもよいし、用途に応じスリットして条にしても良い。
上記の製造方法によれば、高い導電率を得つつ、曲げ加工性等の成形性を確保しながら強度を向上させることができ、優れたアルミニウム合金圧延材が得られる。
本願のアルミニウム合金圧延材の室温における引張強さσB-RTは220MPa以上と規定する。更に250MPa以上が好ましく、特に270MPa以上が一層好ましい。また、前記室温での引張強さσB-RTと150℃における引張強さσB-150のとの間で、σB-150/σB-RT≧0.70なる関係式を満たすことを規定する。更にσB-150/σB-RT≧0.80が好ましく、特にσB-150/σB-RT≧0.85が一層好ましい。本願規定の室温と150℃における引張強さを満足することにより優れた熱伝導性と機械的特性を兼ね備えたアルミニウム合金圧延材となる。
また、本願のアルミニウム合金材は更に、その表面にNiめっき層、Ni-Pめっき層又はNi-Bめっき層の何れかのめっき層を形成することで接続部の接触抵抗を著しく低減させることができ、また経時劣化も抑えられる。本発明において、Niめっき層の厚さを0.2~5μmに、Ni-Pめっき層の厚さを0.2~5μmに、Ni-Bめっき層の厚さを0.3~5μmにそれぞれ規定するのは、前記下限値未満ではめっきによる前記効果が十分に得られず、5μmを超えるとコストアップとなるとともに接触抵抗が高くなり不利となるためである。更にめっき層の厚さは0.5~4μm が好ましく、特に1~3μmが一層好ましい。
電気的なNiめっきを施す場合のめっき浴には、ワット浴やスルファミン酸浴等の酸性のNiめっき液を用いるが、通電方法については個々の部材をぶら下げるラック法以外にバレルめっき法や長尺帯状のフープ材やコイル材に連続してめっきする方法を用いる事もできる。
Ni-Pめっき層並びにNi-Bめっき層についてはその組成によって表面硬度が変化するが、これもめっき特性として重要なファクターとなる。硬さが低いと、導電体をボルト締結等で電気的に接続する際などに表面に傷がつき、欠陥となりやすくなる。また、硬さが高すぎると、曲げ成形時やボルト締結時に割れが発生しやすくなる。この硬さは、主に合金元素の濃度によって制御することができる。Ni-PめっきのP濃度は2~12質量%、Ni-BめっきのB濃度は0.3~3質量%が好ましい。
Niめっき層、Ni-Pめっき層又は Ni-Bめっき層の各めっき層は、高温高湿潤環境下では酸化物や水和物を生じる場合があり、その結果、接触抵抗が増大してしまう場合がある。そのため、高温高湿潤環境下で用いられる場合においては各めっき層の上にSnめっき層を付与する構成が用いられる。この場合は、Niめっき、Ni-Pめっき又は Ni-Bめっきは下地として用いられるため、めっき厚は前記範囲を逸脱しない範囲で薄くても良い。Snめっき層の厚さは、0.4~4μmと規定する。更に0.5~3.5μm が好ましく、特に1~3μmが一層好ましい。
上記の各めっき層の表面にSnめっき層を形成するための処理方法には、硫酸第一スズを含む硫酸浴を用いた電気めっき等や、Sn塩に塩化スズ、還元剤に三塩化チタンを用いるような無電解法等が挙げられる。
Niめっき、Ni-Pめっき、Ni-Bめっき、Snめっきは前述の通り、接続部の接触抵抗の低減やその経時劣化の抑止効果によって用いられるが、上述した表面硬度以外にも特性に違いがあるためそれぞれ使い分けることができる。例えばNiめっきには表面硬度はやや低いものの伸びに優れる特徴があるため、めっき後に成形される用途に有利となる。また、Ni-Pのうち特にP濃度が高いものは非磁性であると言う特徴を有するため、磁化の影響を避けたい用途に適している。またNi-Bめっきは表面硬度が非常に高い点と、はんだ付け性が比較的良好であることに特徴があるが、その反面分コスト高となる。Snめっきについては良好なはんだ付け性と前述した高温高湿潤環境下での経時劣化による接触抵抗の増大が少ないという特徴を付与することができる。また、はんだ付けをする用途には最適である。これらの点を考慮してめっき方法を選定することが望ましい。
以下に、本発明を実施例により説明する。なお、本発明は、ここに記述する実施例に発明の範囲を限定するものではなく、本発明の趣旨に適合しうる範囲で適宜変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術範囲に含まれる。
[実施例1]
まず、表1に示す12種類の化学組成のアルミニウム合金スラブに面削を施した。次に、面削後の合金スラブに対し加熱炉中で表2に記載の均質化処理を実施した後、同じ炉中で温度を変化させ表2に記載の熱間圧延前加熱を実施した。熱間圧延前加熱後のスラブを加熱炉中から取り出し、粗熱間圧延を実施した。
粗熱間圧延の後、引き続き仕上げ熱間圧延を実施し、表2に記載の熱延上り温度、板厚の熱間圧延板を得た。仕上げ熱間圧延後の合金板に表2記載の熱処理、冷間圧延を施し、所定の板厚のアルミニウム合金板を得た。表1の合金スラブと表2の工程の組み合わせは表3の通りとした。
Figure 2024044548000001
Figure 2024044548000002
得られた合金板の室温での引張強さ、伸び、150℃における引張強さ、伸び、室温での疲労強度、導電率、曲げ加工性を以下の方法により評価した。
[室温での引張強さ、伸び]
引張強さ(σB-RT)及び伸び(δRT)は、JISZ2241金属材料引張試験方法に定めるJIS5号試験片を用い、圧延方向に対し平行方向に採取した試料について室温でJISZ2241に準拠して実施した。σB-RTは220MPa以上、δRTは8%以上を合格とした。
[150℃における引張強さ、伸び]
150℃における引張強さ(σB-150)及び伸び(δ150)は、JISZ2241金属材料引張試験方法に定めるJIS5号試験片を用い、圧延方向に対し平行方向に採取した試料について試験片を恒温槽にて150±10℃で30分保持後に引張試験を実施した。σB-150は170MPa以上、δ150は9%以上を合格とした。
[疲労強度]
疲労強度は、JISZ2275金属平板の平面曲げ疲れ試験方法に定める1号試験片を用い、負荷を与える最も幅の狭い部分bを20mmとして圧延方向に対し平行方向に採取した試料について室温にてJISZ2275に準拠して実施し、S-N線図を作成した。なお、疲労強度は10回まで試験して破壊しなかった数値としている。疲労強度は70MPa以上を合格とした。
[導電率]
導電率は、国際的に採択された焼鈍標準軟銅(体積抵抗率1.7241×10-2μΩm)の導電率を100%IACSとしたときの相対値(%IACS)として求めた。導電率は56%IACS以上を合格とした。
[曲げ加工性]
曲げ加工性は、JISZ2248金属材料曲げ試験方法の板厚が0.4mm以上の場合に準拠して曲げ角度を90°、合金板の板厚の2倍を曲げ内側半径として、「6.3 Vブロック法による曲げ試験」を実施し、割れが発生しなかったものを○、割れはないがシワが発生したものを△、割れが発生したものを×として評価した。
引張強さ、150℃引張強さ、疲労強度、導電率、及び曲げ加工性の評価結果を表3に示す。表3より、本願規定の化学組成、引張強さ、150℃引張強さ、及び導電率を満足する実施例記載のアルミニウム合金圧延材が確認できた。
Figure 2024044548000003
[実施例2]
まず、表1に示す化学組成のアルミニウム合金スラブに面削を施した。次に、面削後の合金スラブに対し加熱炉中で表2に記載の均質化処理を実施した後、同じ炉中で温度を変化させ、表2に記載の熱間圧延前加熱を実施した。熱間圧延前加熱後のスラブを加熱炉中から取り出し、粗熱間圧延を実施した。
次に、アルカリエッチング及びデスマットは、以下のように行った。すなわち、アルミニウム合金板を5%NaOH水溶液中に60秒間浸漬し、その後流水にて水洗を実施し、引き続き、室温に保持した30%硝酸水溶液に60秒間浸漬し、更に流水にて水洗を実施した。
下地処理は、市販のジンケート液を純水で500ml/Lの濃度に希釈し、室温に保持し、上記アルミニウム圧延材を60秒間浸漬した。その後、水道水で30秒間の流水洗浄した後、材を、60%硝酸を純水で100ml/Lの濃度に希釈し、室温に保持した亜鉛剥離液に30秒間浸漬して亜鉛層を剥離した。更に水洗した後、上述のジンケート処理液に30秒間浸漬して、アルミニウム圧延材上に亜鉛置換層を形成し、これを水洗することで下地処理を実施した。
Niめっき、Ni-Pめっき、Ni-Bめっき、Snめっきのそれぞれの浴組成を表4に示す。Niめっきは表4a)に示す硫酸ニッケル、塩化ニッケル、ホウ酸を主成分とするワット浴を用い、浴温50℃、4A/dmのカソード電流密度で実施した。Ni-Pめっきは、表4b)に示すニッケル塩に硫酸ニッケル、還元剤に次亜リン酸ナトリウムを含むめっき浴を用い、浴温90℃にて浸漬のみを実施した。Ni-Bめっきは、表4c)に示すニッケル塩として硫酸ニッケル、還元剤としてジメチルアミンボラン(以下、DMAB)を含むめっき浴を用い、浴温65℃にて浸漬のみを実施した。Snめっきは表4d)に示すスズ塩に塩化スズを用いためっき浴を用い、浴温60℃にて浸漬のみを実施した。なお、それぞれめっき層の厚みが所定の厚さとなるように処理時間を設定した。表1の合金スラブと表2の工程ならびに表4のめっき浴組成との組み合わせは表5の通りとした。なお、表5におけるNo.10~12については、表4b)に示すめっき浴を用いてNi-Pめっきを行った後、表4d)に示すめっき浴を用いてSnめっきを行い、Ni-Pめっき層の上層にSnめっき層を形成した。
Figure 2024044548000004
得られた導電体の接触抵抗、めっき厚さ、めっき密着性、耐食性を以下の方法により評価した。
[接触抵抗]
接触抵抗をJCBA T323表面接触電気抵抗の測定方法に準拠し、四端子法によって実施した。上記方法によりめっきを施し、150℃で30分保持後に室温まで冷却した平板状試験片を水平に保持し、鉛直方向から接触子を接触させ、水平方向には摺動させずに保持した状態で、鉛直方向から接触荷重を印加した。この際、1Nの荷重を印加した。接触抵抗測定における開放電圧は20mV、通電電流は10mAとした。めっきを施した場合の接触抵抗は50mΩを合格とした。
[めっき厚さ]
試料のめっき厚さはめっきしたアルミニウム基材の圧延方向に直角な断面を切り出し、クロスセクションポリッシャ(以下、CP)を用いて断面加工した面をFE-SEMにて観察しめっき厚さを計測した。なお、n数は5点とし平均値を求めた。
[めっき密着性]
めっき密着性は、上記の曲げ加工性と同じ治具を用い、JISZ2248金属材料曲げ試験方法の板厚が0.4mm以上の場合に準拠して曲げ角度を90°、合金板の板厚の2倍を曲げ内側半径として、「6.3 Vブロック法による曲げ試験」を実施した試験片の曲げ加工を施した辺にテープを押し当ててテープ剥離を行い、剥がれが発生しなかったものを○、剥がれが発生したものを×として評価した。なお、使用するテープは、JISZ1522で規定されたセロハン粘着テープに準拠したものを用いた。
[耐食性]
耐食性は、JISZ2371塩水噴霧試験方法に規定される中性塩水噴霧試験に準拠して実施した。試験片は150×70×板厚のサイズにて長手方向が圧延方向になるように切り出し、切断面をエポキシ系樹脂で保護したものを用い、35℃、5%NaCl中で6時間放置後に取り出し、流水にて洗浄後にエタノールに浸漬し、その後乾燥したものについて目視にて観察した。変化が認められなかったものを○、変色が認められたものを△、腐食生成物が認められたものを×として評価し、○と△とを合格レベルとした。
接触抵抗、めっき厚さ、めっき密着性、耐食性の評価結果を表5に示す。表5より、本願規定の化学組成、接触抵抗、めっき厚さ、めっき密着性および耐食性を満足する実施例記載のアルミニウム合金圧延材が確認できた。
Figure 2024044548000005
本発明に係るアルミニウム合金圧延材においては、高い導電率と優れた機械的特性を有し、車載用途を中心とした導電部材材料として用いることができて有用である。

Claims (10)

  1. 化学組成が、Si:0.20~0.68質量%、Mg:0.35~0.74質量%、Fe:0.05~0.45質量%、Cu:0.005~0.12質量%、Mn:0.002~0.04質量%、Cr:0.002~0.04質量%、Zn:0.002~0.08質量%、Ti:0.002~0.04質量%、Ni:0.002~0.04質量%、V:0.0008~0.04質量%、B:0.0005~0.04質量%、Zr:0.0008~0.04質量%を含有し、残部がAlと不可避不純物からなり、Si含有量:CsiとMg含有量:CMgとの間で0.8≦CMg/Csi≦1.7なる関係を有すると共に、室温における引張強さσB-RTが220MPa以上であり、150℃における引張強さσB-150との間で、σB-150/σB-RT≧0.70なる関係式を満たすことを特徴とする導電性並びに強度に優れたアルミニウム合金圧延材。
  2. Si:0.36~0.56質量%、Mg:0.42~0.68質量%、Fe:0.12~0.38質量%、Cu:0.01~0.08質量%、Mn:0.004~0.018質量%、Cr:0.004~0.018質量%、Zn:0.004~0.028質量%、Ti:0.004~0.018質量%、Ni:0.004~0.018質量%、V:0.001~0.018質量%、B:0.001~0.028質量%、Zr:0.001~0.028質量%を含有し、かつσB-RTが250MPa以上で、σB-150/σB-RT≧0.80なる関係式を満たすことを特徴とする請求項1に記載の導電性並びに強度に優れたアルミニウム合金圧延材。
  3. 不可避不純物中のGaが0.04%質量%以下、Caが0.01質量%以下、Pbが0.01質量%以下、Biが0.01質量%以下、Snが0.01質量%以下、Inが0.004質量%以下、Sbが0.01質量%以下にそれぞれ規制されていることを特徴とする請求項1に記載の導電性並びに強度に優れたアルミニウム合金圧延材。
  4. 不可避不純物中のGaが0.04%質量%以下、Caが0.01質量%以下、Pbが0.01質量%以下、Biが0.01質量%以下、Snが0.01質量%以下、Inが0.004質量%以下、Sbが0.01質量%以下にそれぞれ規制されていることを特徴とする請求項2に記載の導電性並びに強度に優れたアルミニウム合金圧延材。
  5. 請求項1ないし請求項4の何れか1項に記載のアルミニウム合金圧延材の化学組成を有するアルミニウム合金鋳塊に後続して実施される面削の前又は後に480℃以上570℃以下の温度で1時間以上20時間以下の時間にて均質化処理し、そのまま冷却後あるいは冷却することなく、460℃以上540℃以下の温度で30分以上10時間以下の保持後に熱間圧延を開始し、複数の圧下パスにより圧下率93%以上99.8%以下の熱間圧延を実施した後、60%以上95%以下の冷間圧延を施す工程を含むことを特徴とする導電性並びに強度に優れたアルミニウム合金圧延材の製造方法。
  6. 冷間圧延を施す工程の開始から終了のいずれかのパスの間に少なくとも1回、230℃以上290℃以下、5分以上4時間以下の熱処理工程とそれに続く10%以上60%以下の冷間圧延工程を含むことを特徴とする請求項5に記載の導電性並びに強度に優れたアルミニウム合金圧延材の製造方法。
  7. 冷間圧延終了後に120℃以上180℃以下、1時間以上10時間以下で熱処理する工程を含むことを特徴とする請求項5に記載の導電性並びに強度に優れたアルミニウム合金圧延材の製造方法。
  8. 冷間圧延終了後に120℃以上180℃以下、1時間以上10時間以下で熱処理する工程を含むことを特徴とする請求項6に記載の導電性並びに強度に優れたアルミニウム合金圧延材の製造方法。
  9. 請求項1ないし請求項4の何れか1項に記載のアルミニウム合金圧延材が用いられ、電気的な接点部において前記アルミニウム合金圧延材に厚さ0.2~5μmのNiめっき層か、厚さ0.2~5μmのNi-Pめっき層か、厚さ0.3~5μmのNi-Bめっき層のいずれかのめっき層が形成されていることを特徴とする導電性並びに強度に優れたアルミニウム合金導電体。
  10. 前記めっき層の上層に厚さ0.4~4μmのSnめっき層が形成されていることを特徴とする請求項9に記載の導電性並びに強度に優れたアルミニウム合金導電体。
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