JP2005503557A - 質量標識体 - Google Patents
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Abstract
Description
【0001】
本発明は、所定の分子、特にペプチド及びタンパク質などの生体分子の標識に有用な化合物に関する。具体的には、本発明は、質量分析法による検出のための分析対象物質の標識、並びに、質量分析法による質量標識分析対象物質を分析する関連方法に関する。
【背景技術】
【0002】
所定分子の各種標識法は、放射性原子、蛍光染料、発光試薬、電子捕捉試薬、光吸収染料を含めて、当該分野で周知である。これらの標識系は、それぞれ、特定の用途には適しているが、他の用途には適さないという特徴を持っている。安全性の点から、非放射性標識系への関心が高まり、特に遺伝子分析のための蛍光標識法が商業的に広く開発されるに到っている。蛍光標識法によれば、比較的少数の分子の同時標識が可能で、典型的には、4個おそらくは8個までの標識体を同時に使用できる。しかし、検出装置が高価であり、生じたシグナルの分析が困難であるため、蛍光検出法で同時に使用できる標識体数は制限される。
【0003】
ごく最近、質量分析法の分野で、標識体の検出法が開発されている。その標識体は、所定の結合分子に開裂可能に付着される。分子生物学での多くの用途では、分析に先行して当該分子の分離を実施できることが必要である。これらは、一般に、液相分離である。最近の質量分析法では、液相分離用インターフェースが多数開発された。これらによって、質量分析法はこの種の用途への検出方式として特に有効となっている。最近まで、分析対象イオン及びそれらの断片イオンのいずれかを直接検出するには、液体クロマトグラフィー質量分析法が使用されていたが、核酸分析などの多くの用途には、間接標識から分析対象物質の構造を決定することができる。これは、特に質量分析法の使用に対して有利である。その理由は、DNAのような複雑な生物分子は複雑な質量スペクトルを持つので、検出感度が比較的低くなるからである。間接検出の意味は、結合標識体分子を使用して元の分析対象物質の同定ができることであって、その場合にその標識体は検出感度が高く及び質量スペクトルが単純になるようにデザインされる。質量スペクトルが単純であることは、複数の標識体を使用して複数の分析対象物質を同時に分析できることを意味する。
【0004】
特許文献1に記述されている核酸プローブ系列は、開裂可能な標識体に共有結合で付着し、その標識体は質量分析法で検出可能であり、共有結合で結合した核酸プローブの配列を同定する。この出願の標識プローブは、構造Nu-L-Mを有し、式中、NuはLに共有結合した核酸、Lは質量標識体Mに共有結合した開裂可能リンカーである。この出願で好ましい開裂可能リンカーは、質量分析計のイオン源内で開裂する。好ましい質量標識体は、置換ポリアリールエーテルである。これらの出願は、質量分析法によって質量標識体を分析する具体的な方法として、多様なイオン化法と四重極型質量分析計、TOF分析計及び磁場型装置による分析を開示している。
【0005】
特許文献2は、質量タグ分子に開裂可能に結合したリガンド及び、具体的には、核酸を開示している。開裂可能リンカーは光開裂可能であるのが好ましい。この出願は、質量分析法による質量標識体を分析する具体的な方法として、マトリックス支援レーザー脱着イオン化(MALDI)飛行時間型(TOF)質量分析法を開示している。
【0006】
特許文献3は、放出可能非揮発性質量標識体分子を開示している。好ましい実施態様では、これらの標識体は、ポリマー、典型的には、反応性基及びリガンドのいずれか、即ちプローブ、に付着させて開裂できる生物ポリマーを含む。開裂可能リンカーは、明らかに化学的及び酵素的のいずれかに開裂できるのが好ましい。この出願は、質量分析法によって質量標識体を分析する具体的な方法として、MALDI TOF質量分析法を開示している。
【0007】
特許文献4、特許文献5及び特許文献6は、リガンド及び具体的には質量タグ分子に結合して開裂できる核酸を開示している。これらの出願は、質量分析法によって質量標識体を分析する具体的な方法として、多様なイオン化法と四重極型質量分析計、TOF分析計及び磁場型装置による分析を開示している。
【0008】
これらの先行技術の出願は、いずれも、質量標識体の分析で用いるタンデム及び連続質量分析のいずれかの使用には言及していない。
【0009】
非特許文献1は、タンパク発現の分析を可能にするタンパク質からのペプチド捕捉用同位体コード化アフィニティータグの使用を開示している。この論文で、著者は、内部にシステインを有する捕捉ペプチド用の、チオール反応性のビオチンリンカーの使用を記述している。ある材料からのタンパク試料をビオチンリンカーと反応させ、エンドペプチダーゼで開裂する。次に、その後の質量分析法による分析のために、ビオチン化したシステイン含有ペプチドをアビジン処理ビーズ上で単離することができる。1番目の試料をビオチンリンカーで標識し、2番目の試料を重水素化型ビオチンリンカーで標識することで、2個の試料を定量比較できる。その後、試料中の各ペプチドは、質量スペクトルのピーク対として現われる。各タグに相当する質量スペクトル中のピークの総和が、タグに結合したペプチドの相対発現レベルを表す。
【0010】
【特許文献1】
国際出願番号PCT/GB98/00127明細書
【特許文献2】
国際出願番号PCT/GB94/01675明細書
【特許文献3】
国際出願番号PCT/US97/22639明細書
【特許文献4】
国際出願番号PCT/US97/01070明細書
【特許文献5】
国際出願番号PCT/US97/01046明細書
【特許文献6】
国際出願番号PCT/US9701304明細書
【非特許文献1】
ギギ(Gygi)ら. Nature Biotechnology 17: 994-999、「同位体コードアフィニティータグを使った複合タンパク混合物の定量分析」1999
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
この同位体コード化法には、多くの限界がある。第1は、タンパク質中のチオールの存在に左右される点であり−多くのタンパク質は、チオールを持たないが、一方、数個持つものもある。この方法の変法では、アミンなどの他の側鎖と反応するように、リンカーを設計できる。しかし、多くのタンパク質は、1個以上のリジン残基を含有するので、一般に、この方法で、タンパク質1個当たり複数のペプチドが単離されることになる。これは、質量分析法による分析の際の試料の複雑さを十分に減少させることにならない可能性がある。試料に含まれるペプチド種が多すぎると、イオン抑制を受ける可能性がある。このイオン抑制では、普通、それほど複雑でない試料の質量スペクトルに現われる他種に優先して特定種がイオン化する。一般に、側鎖によるタンパク質の捕捉では、得られるタンパク質1個当たりのペプチドが多すぎたり、あるいは数種のタンパク質を共に取りのがすことになる。
【0012】
この方法の第2の限界は、異なる試料からのタンパク質の発現レベルを比較する際に使用する方法に関する。異なるアフィニティータグの同位体変種による各試料の標識は、各試料の各ペプチドの質量スペクトルに別のピークを生じる。これは、2個の試料を合わせて分析する場合、スペクトルに2倍のピークが現われることを意味する。同様に、これは、これらの試料を合わせて分析する場合、試料1個のみよりも3倍複雑になることを意味する。この方法に限界があることは明らかである。その理由は、ピークの数が増加し続けると、質量スペクトル上で、2個の異なるペプチドのピークが重なる可能性が高まることになる。
【0013】
上記論文の著者が報告している次の限界は、タグが引き起こす可動性の変化である。重水素化ビオチンタグで標識したペプチドは、重水素化されていないタグで標識した同じペプチドより少し後れて溶出すると著者は報告している。
【0014】
分析対象物質材料に対して作成した質量スペクトルは、混入物に対する感度が非常に高い。基本的に、イオン化可能であれば質量分析計に導入されたどんな材料も質量スペクトルに現われる。これは、多くの分析にとって、質量分析計に導入する前に分析対象物質を入念に精製することが必要であることを意味する。質量標識体を使った分析対象物質の間接分析用高処理システムでは、不必要な試料調製段階を避けることが望ましい。即ち、混入材料の背景にある標識体を検出でき、検出ピークが事実上確実に標識体に相当していることが望ましい。質量分析法に基づく検出系で達成できるシグナル対ノイズ比が改善され、あるいは、スペクトル中の質量ピークが質量標識体の存在により惹起したことを確認できる方法及び組成のいずれかが先行技術では開示されていない。
【0015】
液体クロマトグラフィー及び電気泳動分離のいずれか後の分析対象物質の検出では、使用する標識体の分離過程への妨害が最少であるのが望ましい。前記標識体系列を使用する場合、結合した分析対象物質への当該系列の各標識体の作用は、あらゆる他の標識体と同一であるのが望ましい。これは、質量に基づいて質量分析計中で解像可能な標識体系列を生成しなければならない質量マーキングの意図とある程度矛盾する。上記の先行技術では、好ましくは質量標識体を4ダルトン毎に解像し、別の標識体のピークによるある標識体からの同位体ピークへの妨害を防ぐべきである、と開示されている。これは、250個の異なる質量標識体の生成には、約1000ダルトン及び、おそらくはそれ以上の範囲を網羅する標識体が必要であることを意味する。その理由は、正確に4ダルトンで分離される大型標識体系列を生成するのは簡単ではないからである。この範囲の質量は、ほぼ確実に、質量分析法による検出に先行する分離過程に対して別異の作用を呈する質量標識体を生じることになる。質量分析計がイオンを検出できる質量範囲が増加するにつれ、装置コストが増加するという点で、それは、装置の設計にも重要である。
【0016】
従って、本発明の目的は、上記先行技術に伴う問題を解決すること、また、混入物を含む背景から検出でき、質量標識体としての実体を確認できる質量標識体を提供することである。さらに本発明の目的は、当該質量標識体が分離過程をほぼ妨害しないように圧縮した質量範囲で解像でき、限定範囲の質量対電荷比でイオンを検出する質量分析計中で容易に検出できる標識体系列を提供することである。
【0017】
また、本発明の目的は、本発明の標識体を利用する生体分子分析法を提供し、前記アッセイ、特にペプチド分析用に処理量、シグナル対ノイズ比及び感度を最大化することである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
第1の態様で、本発明は、アミノ酸を含む質量マーカー部と、少なくとも1個のアミド結合を有し開裂可能なリンカーと、アミノ酸を含む質量正規化部とを有してなる質量標識体を2以上含み、該質量標識体の全体質量が同一及び非同一のいずれかであり、前記質量マーカー部の質量が同一及び非同一のいずれかであり、質量が共通である質量マーカー部を有する質量標識体のグループにおいて各質量標識体が該グループ内の他の全ての質量標識体とは異なる全体質量を有しており、全体の質量が共通である質量標識体のグループにおいて各質量標識体の質量マーカー部が該グループ内の他の全ての質量標識体における質量マーカー部とは異なる質量を有しており、各質量標識体は質量分析法における分析において互いに識別可能である質量標識体セットを提供する。
【0019】
本文中で使用する質量マーカー部という用語は、質量分析法で検出できる部分を指すことを意図しているが、本文で使用する質量正規化部という用語は、必ずしも質量分析法で検出できないが、存在することによって、確実に質量標識体が望みの全体質量を有する部分を指すことを意図している。セットが多数の標識体を含む場合、セット中の標識体数は特に制限されない。しかし、セットが2個以上、3個以上、4個以上及び5個以上のいずれかの標識体を含むのが好ましい。
【0020】
本発明は、質量標識体系列も提供しており、その系列は上述の通り質量標識体の2セット以上から成り、その場合、いずれかのセット中の各質量標識体の全体質量は、当該系列の全ての他の各セット中の各質量標識体の全体質量と異なる。質量マーカー部と質量正規化部は、共に、少なくとも1個のアミノ酸を含む。しかし、両部分は、必要なら、さらに多くのアミノ酸基及びアリールエーテル基などの基の少なくともいずれかをさらに含んでよい。従って、両部分は、修飾アミノ酸であることができ、あるいは、ペプチドであることができる。系列中の異なるセットの質量は、必要に応じて、一方及び両方いずれかの部分に更にアミノ酸基を付加することによって識別できる。
【0021】
本発明がさらに提供するのは分析方法で、この方法は、質量分析法で分析対象物質に独自の質量標識体及び混合質量標識体のいずれかを同定することによる分析対象物質の検出を含み、その場合、当該質量標識体は、上記に規定した質量標識体セット及び系列いずれかからの質量標識体である。
【0022】
本発明のいくつかの実施態様では、質量タグは、分析対象物質分子に質量タグの付着を容易にする反応性官能基を含んでよい。この実施態様の当該タグは、以下の形であるのが好ましい:
【0023】
アミノ酸1−アミド結合−アミノ酸2−反応性官能基
【0024】
この場合、本発明の好ましい実施態様では、タグ系列は、すべてが化学的に同一であるのが好ましく、質量正規化及び質量マーカー両部分(例、上述のアミノ酸1とアミノ酸2)の質量は、同位体置換で変化する。
【0025】
本発明のさらに好ましい実施態様では、タグは、増感基を含むことができる。当該タグは、以下の形であるのが好ましい:
【0026】
増感基−アミノ酸1−アミド結合−アミノ酸2−反応性官能基
【0027】
この実施例では、増感基は、通常、質量マーカー部に付着させる。その理由は、質量分析計中でこの部分の検出感度を高めることが目的だからである。反応性官能基が存在し、増感基とは別の部分に付着しているのが分かる。しかし、タグは、このようにして制限する必要がなく、ある場合には、反応性官能基のない増感基を含む。他の実施態様では、増感基を反応性官能基と同一の部分に付着できる。
【0028】
本発明のいくつかの実施態様では、質量タグはアフィニティー捕捉試薬を含む。好ましくは、アフィニティー捕捉リガンドはビオチンである。アフィニティー捕捉リガンドによって、例えばアビジン処理した固相上で標識分析対象物質を捕らえて未標識分析対象物質から標識分析対象物質を分離できる。
【0029】
さらなる態様では、本発明は、生体分子及び生体分子混合物のいずれかの分析方法を提供する。この方法は以下の段階を含むのが好ましい:
1. 本発明に従って生体分子及び生体分子混合物のいずれかを質量マーカーと反応させる;
2. 標識生体分子を電気泳動及びクロマトグラフィーのいずれかで任意に分離する;
3. 標識生体分子をイオン化する;
4. 質量分析器中の好ましい標識生体分子イオンの質量対電荷比に相当する予定質量対電荷比のイオンを選択する;
5. これらの選択イオンの解離を衝突によって誘発する;
6. 衝突生成物を検出し、質量標識体を表す衝突生成物イオンを同定する。
【0030】
質量タグがアフィニティータグを含むこの実施態様では、アフィニティータグ化生体分子は、対応リガンドで捕捉し、標識生物分子を未標識生物分子から分離させることができる。この段階は、上記の任意の第2段階に先行して行うのが好ましい。
【0031】
いくつかの実施態様では、予め決定した質量対電荷比のイオンを選択する段階を連続装置の第1質量分析器で実施する。次に、選択したイオンは、個別の衝突セルに通し、そこで、本発明の第1態様の第4段階に従って、当該イオンを気体及び固体表面のいずれかと衝突させる。その後、衝突生成物を連続装置の次の質量分析器に通し、本発明の第1態様の第5段階に従って、衝突生成物を検出する。典型的な連続装置には、3連四重極質量分析計、タンデム磁場型装置及び四重極飛行時間質量分析計がある。
【0032】
他の実施態様では、予め決定した質量対電荷比イオンを選択する段階、選択したイオンを気体と衝突させる段階及び衝突生成物を検出する段階は、質量分析計の同一ゾーンで実施する。これは、例えばイオントラップ質量分析計及びフーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴質量分析計で実施できる。
【0033】
別の態様では、本発明は、以下の形の質量標識分子セット及び系列のいずれかを提供する:
【0034】
分析対象物質−リンカー−標識体
【0035】
この場合、標識体は本発明に従ったセット及び系列のいずれかからの質量マーカーであり、リンカーは下述の通りのリンカーであり、分析対象物質は、生体分子などのいずれかの所定の分析対象物質であることができる。この実施態様のある好ましい態様は、セット及び系列中のいずれかの分析対象物質(1個、1個以上及びすべての分析対象物質のいずれか)が既知質量もしくは予定したクロマトグラフィー上の性質を持つ標準分析対象物質である場合である。この標準品を本発明方法において使用すれば、例えばクロマトグラフィー分離段階の結果を分析する場合に、未知分析対象物質との比較ができる。
【0036】
本発明は、ペプチド合成機で容易に生成できる質量マーカーについて記述している。実際、本発明で使用する化合物は、ペプチド及び修飾ペプチドを含む。ペプチド合成によって化学的な多様性が得られ、選択した性質を持つ広範囲なマーカーが自動的に生成可能である。
【0037】
質量分析計に関連した「MS/MS」の用語は、イオンを選択し、選択したイオンを衝突誘発解離(CID)に供し、フラグメントイオンをそれ以後の分析に供することができる質量分析計を指す。
【0038】
「連続装置」の用語は、MS/MSが可能な質量分析計を指し、その場合、質量分析器を連続で組み立て、MS/MS過程の各段階を連結した質量分析器で一つずつ実施する。典型的な連続装置には、3連四重極質量分析計、タンデム磁場型装置及び四重極飛行時間質量分析計がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
ここで、添付した図面を参照しながら、実施例によって本発明をさらに詳細に説明する。
【0040】
図1は、リジンから誘導した質量タグ3種類のセットを示す。
【0041】
図2は、アラニンから誘導した質量タグ5種類のセットを示す。
【0042】
図3は、アラニン及びチロシンから誘導した質量タグ5種類のセットを示す。
【0043】
図4は、フッ素化型フェニルグリシンから誘導した質量タグ4種類のセットを示す。
【0044】
図5は、フッ素化型フェニルグリシン及びフェニルアラニンから誘導した質量タグ4種類のセットを示す。
【0045】
図6aは、炭水化物標識用のヒドラジド官能基でメチオニンから誘導したアフィニティーリガンド質量タグ2種類のセットを示す。
【0046】
図6bは、炭水化物標識用のボロン酸官能基でメチオニンから誘導したアフィニティーリガンド質量タグ2種類のセットを示す。
【0047】
図7は、デヒドロアラニン及びメチルデヒドロアラニン残基標識用のチオール官能基でメチオニンから誘導したアフィニティーリガンド質量タグ2種類のセットを示す。
【0048】
図8は、遊離チオール標識用のマレイミド官能基でメチオニンから誘導したアフィニティーリガンド質量タグ2種類のセットを示す。
【0049】
図9aは、FMOC保護、重水素置換メチオニン残基の調製用の合成経路を示し、 図9bは、増感剤として作用できる反応性リンカーの調製用の合成経路を示す。
【0050】
図10は、本発明の特徴を証明するために合成した各種同位体型メチオニンから誘導した1対のペプチド例を示す。
【0051】
図11は、図10に示すペプチド2個の混合物の電子スプレー質量スペクトルを示す。
【0052】
図12は、図10に示すペプチド2個それぞれの開裂の電子スプレースペクトルを示す。
【0053】
図13は、図12及び図14に示すスペクトルの原因となり得る想定上の開裂メカニズムを示す。
【0054】
図14は、図10に示すペプチド2個の70:30混合物の開裂の電子スプレースペクトルを示す。
【0055】
図15は、ペプチドA及びB混合物(図10)の一連のESI-MS/MS分析で認められた当該ペプチドA及びBの実測比に対する当該ペプチドA及びBの予想比を示すグラフを示す。
【0056】
図16a〜16cは、開裂メカニズム案を示す。
【0057】
図17a〜17dは、開裂可能アミド結合での開裂増強を発揮するタグを示す。
【0058】
図18a及び18bは、2種類のTMTマーカーの構造を示す。
【0059】
図19a及び19bは、衝突エネルギー40V(図19a)及び70V(図19b)での第一世代TMTで標識したペプチドの典型的CIDスペクトルを示す。
【0060】
図20a、20b及び20cは、第一及び第二世代TMTで標識したペプチド2 (表7参照)の3価荷電イオンのMS及びMS/MSスペクトルを示す。
【0061】
図21は、第二世代TMTで標識したペプチド(表7のペプチド2)の典型的CIDスペクトルを示す。
【0062】
図22は、TMTタグ化ペプチドが標識ペプチドのCIDスペクトル中のタグ断片の出現に影響しないことを示す。
【0063】
図23は、第一及び第二世代両タグに関する予想及び実測組成比のペプチド混合物を示す。
【0064】
図24は、表7の各ペプチドに関する各ペプチド対、ペプチドA及びBの同時溶出を示す。
【0065】
図25は、TMTペプチド対3A/3Bの動的範囲試験を示す。当該ペプチド対は、40:60の比率で存在し、100 fmol〜100 pmolの範囲の希釈濃度で分析した。
【0066】
図26a、26b及び26cは、第二世代TMTを保持したペプチド対3A及び3B(それぞれ比率40:60で、合計500 fmol)をウシ血清アルブミン(2 pmol)のトリプシン消化物と混合したスパイク実験の結果を示す。
【0067】
図1〜5は、本発明のタグの多数の重要な特徴を示す。図1〜5全図のタグは、「反応性官能基」に結合されていることが明らかである。この反応性官能基は、例えばN-ヒドロキシコハク酸イミドエステルへのリンカーであることができ、また、他の可能性が多数あり、その一部を下段で論じる。図1、2及び4は、同一アミノ酸の異なる質量の修飾型を配合して一連のジペプチドとすることで多数のタグを生成できることを立証している。図3及び5は、各種アミノ酸を配合してヘテロ二量体とすることによって生成できるタグセットを示す。図1〜3は、すべて、同一の総質量を有し、化学的に同一のタグを示す。これらのタグは、分子中の同位体の分布が異なっているが、すべて、同一の総質量を有するが、化学的に同一でない図4及び5では、これらのタグは、当該タグ中のフッ素化置換基の分布が異なる。
【0068】
ここで、図1をさらに詳細に論じる。図1は、3個のリジンホモ二量体を示す。当該リジンは、ε-アミノ基が塩化メチルスルフォニルで封鎖されている。スルフォンアミド結合は、従来のアミド結合よりも開裂抵抗が強いので、修飾リジン残基対間の従来の骨格アミド結合を開裂するのに十分なエネルギーでは、衝突誘発解離により質量分析計内で当該タグを開裂しても、防護基が失われない。防護基を使用すれば、質量分析計内でタグをイオン化する過程でのε-アミノ基のプロトン化が抑制される。防護リジンは、質量タグ合成に先行して調製できる。ε-アミノ基は、例えば銅イオンの存在下、塩化メチルスルフォニルでアミノ酸をカップリングすることで選択的に修飾できる。α位のアミン及び酸官能基は、各種2価陽イオンとキレートを形成し、α-アミノ基を非反応性化できる。ジペプチドのα-アミノ基をグアニジノ基に転換することによって、質量分析計内イオン化中に、タグのこの位置でのプロトン化が促進され、また第2アラニン残基とタンパク質中の固有アラニン残基からの開裂生成物の質量が識別される。α位のグアニジン化は、ペプチドの脱保護と樹脂からの開裂の前に従来のペプチド合成の最終段階として実施できる(Z. Tian及びR.W.Roeske, Int.J.Peptide Protein Res. 37: 425-429, 「固相上でのペプチド側鎖のグアニジン化」, 1991)。3個の異なるタグの調製には、異なる重水素置換型リジンを使用するのがよい。3個のタグそれぞれの総質量は、同一であるが、各タグのN-末端リジンは、他の2個と少なくとも4ダルトンの差がある。この質量差は、通常各タグの開裂部分の固有同位体ピークが他のタグの開裂部分の同位体ピークと質量スペクトル中で重ならないようにするのに十分な量である。
【0069】
ここで、図2をさらに詳細に論じる。図2は、5個のアラニンホモ二量体を示す。5個の異なるタグの調製には、異なる同位体置換型アラニンを使用するのがよい。5個のタグそれぞれの総質量は同一だが、各タグのN-末端アラニンは他の4個とは少なくとも4ダルトンの差がある。ジペプチドタグのα-アミノ基をメチル化し、第2アラニン残基とタンパク質の固有アラニン残基の開裂生成物からのこのアミノ酸の開裂生成物を識別し、質量分析計内イオン化中、タグのこの位置のプロトン化を促進している。
【0070】
ここで、図3をさらに詳細に論じる。図3は、5個のアラニン及びチロシンヘテロ二量体を示す。5個の異なるタグの調製には、異なる同位体置換型アラニン及びチロシンを使用するのがよい。5個のタグそれぞれの総質量は同一だが、各タグのN-末端アラニンは他の4個とは少なくとも1ダルトンの差がある。ジペプチドタグのα-アミノ基をメチル化し、第2アラニン残基とタンパク質の固有アラニン残基の開裂生成物からのこのアミノ酸の開裂生成物を識別し、質量分析計内イオン化の最中、タグのこの位置のプロトン化を促進している。
【0071】
ここで、図4をさらに詳細に論じる。図4は、4個のフェニルグリシン二量体を示す。4個の異なるタグの調製には、異なるフッ素置換型フェニルグリシンを使用するのがよい。4個のタグそれぞれの総質量は同一だが、各タグのN-末端フェニルグリシンは、他の3個のタグとは、少なくともフッ素1個分の質量差がある。ジペプチドタグのα-アミノ基をメチル化し、第2フェニルグリシン残基の開裂生成物からこのアミノ酸の開裂生成物を識別し、質量分析計内イオン化の最中、タグのこの位置のプロトン化を促進している。
【0072】
ここで、図5をさらに詳細に論じる。図5は、フェニルグリシンとフェニルアラニンの二量体4個を示す。4個の異なるタグの調製には、異なるフッ素置換型フェニルグリシン及びフェニルアラニンを使用するのがよい。4個のタグそれぞれの総質量は同一だが、各タグのN-末端フェニルグリシンは、他の3個のタグとは、少なくともフッ素1個分の質量差がある。ジペプチドタグのα-アミノ基をメチル化したが、これは、アミノ基を副反応から保護し、プロトン化を高めるだけの働きをする。その理由として、非メチル化開裂生成物がタグペプチドの第2アミノ酸残基と異なるはずであるので、第1アミノ酸を識別する必要がないからである。α-アミノ基を修飾することによって、必要なら、メチル化及びグアニジン化のいずれかによる質量分析計内でのイオン化中、タグのこの位置のプロトン化を促進できるはずである。
【0073】
ここで、本発明をさらに詳細に説明する。ある好ましい実施態様では、本発明は、上記の通りの質量標識体セットを提供する。その場合、当該セット中の各標識体は、共通質量を持つ質量マーカー部を有し、当該セット中の各標識体は、独自の全体質量を有する。
【0074】
別のさらに好ましい実施態様では、セット中の各標識体は、共通の全体質量を有し、当該セット中の各標識体は、独自の質量マーカー部を有する。
【0075】
標識体セットは、上述の2件の好ましい実施態様に限定する必要がなく、例えば、上述のように、全標識体が質量分析法で識別可能であるとするなら、両タイプの標識体を含むことができる。
【0076】
第2のタイプの標識体セットにおいて、当該セット中の各質量マーカー部は、共通の基本構造を持ち、当該セット中の各質量正規化部は共通の基本構造を持ち、当該セット中各質量標識体は1個以上の質量アジャスター部を持ち、その質量アジャスター部が質量マーカー部及び質量正規化部の基本構造内部の少なくともいずれかに付着する及び位置するいずれかが好ましい。この実施態様では、当該セットの全質量マーカー部は、異なる質量アジャスター部数を含み、当該セット中の全質量標識体は、同数の質量アジャスター部を有する。
【0077】
この説明の全体を通して、共通基本構造があることは、2個以上の部分が、実質的に同一の構造骨格、主鎖及び中核のいずれかを有することを意味する。この骨格及びこの主鎖のいずれかは、例えば1個以上のアミノ酸をふくんでよい。好ましくは、骨格は、アミド結合で結合する多数のアミノ酸を含む。しかし、アリールエーテル単位などの他の単位も存在することができる。骨格及び主鎖のいずれかは共通基本構造を変えることなく、それからぶらさがった置換基、あるいは、その中に原子置換体及び同位体置換体のいずれかを含むことができる。
【0078】
典型的には、上記の第2のタイプの質量標識体セットは、次式の質量標識体を含む:
【0079】
M(A)y−L−X(A)z
式中、Mは、質量正規化部を表し、Xは、質量マーカー部を表し、Aは、質量アジャスター部を表し、Lは、アミド結合を含む開裂可能リンカーを表し、y及びzは、0以上の整数を表し、y+zは、1以上の整数を表す。好ましくは、Mは開裂抵抗基、Lは別の分子及び別の原子のいずれかとの衝突時の開裂に感受性を示すリンカー、Xは好ましくは予めイオン化された開裂抵抗基である。MとXの質量の合計は、セットの全標識体について同一である。MとXは同一の基本構造及び中核構造のいずれかを有し、この構造は、質量アジャスター部で修飾されているのが好ましい。質量アジャスター部は、M及びXの質量の合計がセット中の全質量標識体について同一であることを確実なものとするが、各Xが異なる(独自の)質量を持つことを確実なものとする。
【0080】
本発明は、質量標識体の多数のセット系列も含む。本発明の質量標識体系列は、本発明に従って当該系列が多数の質量標識体セットを含有する場合、特に制限がない。当該系列は、2セット以上、3セット以上、4セット以上及び5セット以上のいずれかの質量標識体を含むのが好ましい。当該系列の各質量標識体は次式のいずれかを有するのが好ましい:
【0081】
(S)x−M(A)y−L−X(A)z
【0082】
M(A)y−(S)x−L−X(A)z
式中、Sは、質量連続修飾基を表し、Mは、質量正規化部を表し、Xは、質量マーカー部を表し、Aは、質量アジャスター部を表し、Lは、アミド結合を含む開裂可能リンカーを表し、xは、0以上の整数を表し、y及びzは、0以上の整数を表し、並びに、y+zは、1以上の整数を表す。質量連続修飾基は、当該セットの質量を互いに分別する。この基は、どのようなタイプの基でもよいが、アミノ酸及びアリールエーテル基いずれかであるのが好ましい。セットは、それらの部分中に含有するアミノ酸の数が他のタグとは異なるので、別のセットとは質量において分別される。
[リンカー基]
【0083】
上記及び下記の考察ではリンカー基に言及するが、これは、所定の分子を本発明の質量標識化合物に結合するのに使用される。多様なリンカーが当分野で公知であり、本発明の質量標識体とそれらが共有結合した分析対象物質の間に導入される。これらのリンカーの一部は、開裂可能であるのがよい。オリゴ、ポリ-エチレングリコール、それらの誘導体のいずれかをリンカーとして使用でき、例えば、Maskos, U. & Southern, E.M. Nucleic Acids Research 20: 1679-1684, 1992に開示されているものなどがある。コハク酸系リンカーも汎用されているが、これらは、オリゴヌクレオチドの標識に関与する用途にはそれほど好ましくない。その理由は、当該リンカーが一般に塩基に不安定であるため、多数のオリゴヌクレオチド合成で使用されている塩基介在脱保護段階には不適合だからである。
【0084】
プロパルギルアルコールは、2官能リンカーで、オリゴヌクレオチド合成条件下で安定な結合を生じ、オリゴヌクレオチドへの用途に関連した本発明での使用に好ましいリンカーである。同様に、6-アミノヘキサノールは、適当に官能基を付与した分子を結合するのに有用な2官能試薬で、これも好ましいリンカーである。
【0085】
光開裂可能リンカーなどの多様な既知の開裂可能リンカー基を本発明の化合物と併用できる。オルソニトロベンジル基は、光開裂可能リンカーとして公知であり、特に、2-ニトロベンジルエステルや2-ニトロベンジルアミンは、ベンジルアミン結合で開裂する。開裂可能リンカーの論評については、Lloyd-Williamsら、 Tetrahedron 49, 11065-11133, 1993を参照されたい。これは、様々な光開裂可能及び化学的開裂可能リンカーについて言及している。
【0086】
WO 00/02895は、開裂可能リンカーとしてビニルスルフォン化合物を開示しているが、これは、本発明での使用、特にポリペプチド、ペプチド及びアミノ酸の標識に関する用途にも適用可能である。この出願の内容を参考のために編入する。
【0087】
WO 00/2895は、気相中で塩基により開裂可能なリンカーとしてシリコン化合物の使用を開示している。これらのリンカーも本発明での使用、特にオリゴヌクレオチドの標識に関連した用途に適用可能である。この出願の内容を参考のために編入する。
【0088】
前記のように、本発明の質量標識体は、反応性官能基Reを含み、それらを分析対象物質に付着させるのに役立てることができる。本発明の好ましい実施態様では、Reは、反応性官能基であるか、または質量標識体を分析対象物質分子、例えば、この限りではないが、ヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチド、アミノ酸、ペプチド及びポリペプチドのいずれかの中の適当な官能基に共有結合で反応させることができる基である。Reは、開裂可能であっても開裂可能でなくてもよいリンカーを経て質量標識体に付着されてよい。本発明の質量標識体に様々な反応性官能基を導入してよい。
【0089】
以下の表1では、求核官能基と反応できる反応性官能基のいくつかを挙げる。求核官能基は、生体分子中に認められ、2個の物質間に共有結合を生成する。合成オリゴヌクレオチドに関する用途については、しばしば、1級アミン及びチオールいずれかを当該分子末端に導入することによって、標識が可能になる。下記の官能基はいずれも本発明化合物に導入することにより、質量マーカーを所定分子に付着させることができる。望むならば、反応性官能基を使えば、別の反応性官能基を持つ別のリンカー基を導入できる。表1は、完全網羅することを意図しておらず、本発明は列挙した官能基のみの使用に限定されない。
【表1】
【0090】
ここで留意して欲しいのは、本発明の質量マーカーによるオリゴヌクレオチドの標識に関する用途において、上記の反応性官能基の一部及びそれらの得られる結合基のいずれかは、オリゴヌクレオチド合成機に導入する前に保護しなければならないことである。好ましくは、非保護エステル、チオエーテルとチオエステル、アミンとアミド結合は、通常、オリゴヌクレオチド合成機中で安定でないので、避けるべきである。多様な保護基が当分野公知であり、それらを使用すれば結合を望ましくない副反応から保護することができる。
【0091】
以下の考察では、「荷電官能基」と可溶化基に言及する。これらの基は、本発明の質量マーカー内など、質量標識体に導入すると、イオン化及び溶解性を促進する。マーカーの選択は、それを使用する必要があるのは陽イオン検出か、または、陰イオン検出かによって左右される。下記の表2には、陽イオン化あるいは陰イオン化を促進するために、質量マーカーに導入されうる官能基のいくつかをあげている。その表は完全に網羅することを意図しておらず、本発明は、列挙した官能基のみの使用に限定されない。
【表2】
【0092】
WO 00/02893は、質量マーカーのイオン化を改善することを目的とした金属-イオン結合部分、例えばクラウン‐エーテル及びポルフィリンいずれか、の使用を開示している。これらの部分も、本発明の質量マーカーの使用に適用できる。
【0093】
当該マーカーの開裂部位が、衝突誘発解離(CID)により容易に開裂される結合の導入によって制御されるように、本発明の質量マーカーの部分は、開裂抵抗性であるのが好ましい。アリールエーテルが、本発明で使用できる開裂抵抗化合物クラスの1例である。これらの化合物は、化学的に不活性で、熱に安定である。WO 99/32501は、質量分析法でのポリ‐エーテルの使用を非常に詳細に開示しており、この出願の内容を参考のために編入する。
【0094】
過去に、アリールエーテル合成の一般的方法は、約200℃、銅粉末の存在下でのフェノールとのアリールブロマイドのウルマンカップリングに基づいた(代表的参考文献:H.Stetter, G.Duve, Chemische Berichte 87 (1954) 1699)。さらに温和なアリールエーテル合成法は、異なる金属触媒を使って開発されているが、反応温度は、依然、100〜120℃である(M.Iyoda, M.Sakaitani,H.Otsuka, M.Oda, Tetrahedron Letters 26 (1985) 477)。これは、ポリ‐エーテル質量標識体生成の好ましい経路である。以下の実施例に示すFT77の合成を参照されたい。最近発表された方法は、これまでの方法よりもはるかに温和な条件下で実施するので、ポリ‐エーテル質量標識体の生成に最も好ましい経路である(D.E.Evans, J.L.Katz, T.R.West, Tetrahedron Lett. 39 (1998) 2937)。
【0095】
本発明は、2個以上のプローブセットであって、当該セットの各プローブは異なり、上記に規定した質量標識体セット及び系列のいずれかからの独自の質量標識体及び独自の質量標識体のいずれかの組合せに付着するプローブセットも提供する。
【0096】
さらに、提供するのは、プローブ2セット以上を含む系列で、この場合、いずれのセットの各プローブも、上記に規定した質量標識体セットからの独自の質量標識体及び独自の質量標識体の組合せいずれかに付着し、いずれのセットのプローブも、上記に規定した質量標識体系列からの独自の質量標識体セットの質量標識体に付着する。
【0097】
ある実施態様では、各プローブは、質量標識体の独自の組合せに付着するのが好ましく、各組合せは質量標識体セット中の各質量標識体の有無及びプローブに付着する各質量標識体の量の少なくともいずれかで識別される。これは、本発明の「混合形態」と称する。理由は、当該プローブを質量標識体の混合物に付着させることができるからである。
【0098】
上記の態様では、プローブの性質は限定しない。しかし、各プローブが生体分子を含むのが好ましい。どんな生体分子も使用できるが、生体分子をDNA、RNA、核酸塩基、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、アミノ酸から選択するのが好ましい。
【0099】
ある好ましい実施態様では、本発明は、ヌクレオチド、オリゴヌクレオチド及びポリヌクレオチドなど、以下の形態の質量標識体分析対象物質セット及び系列を提供する:
【0100】
分析対象物質‐リンカー‐標識体
【0101】
この場合、リンカーは、上記に規定したリンカーであり、標識体は、上記のセット及び系列のどれかからの質量標識体である。
【0102】
上記態様の場合、分析対象物質の性質は、特に制限がない。しかし、好ましくは、各分析対象物質が生体分子を含む。どんな生体分子でも使用できるが、生体分子は、DNA、RNA、オリゴヌクレオチド、核酸塩基、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、アミノ酸から選択するのが好ましい。
【0103】
ある実施態様では、各分析対象物質は、質量標識体の独自の組合せに付着するのが好ましく、各組み合わは質量標識体セット中の各質量標識体の有無及びプローブに付着する各質量標識体の量の少なくともいずれかで識別される。上述のように、これは、本発明の「混合形態」と称する。理由は、プローブを質量標識体の混合物に付着させることができるからである。
【0104】
上述のように、本発明は、分析方法であって、その方法が質量分析法で分析対象物質に特異な質量標識体及び質量標識体の組合せのいずれかを同定することによって分析対象物質を検出することを含み、その場合、当該標識体は、上記に規定した質量標識体セット及び系列のいずれかからの質量標識体であることを特徴とする分析方法を提供する。当該方法にとって分析対象物質を同定する上で本発明の質量標識体の使用が有利である場合、当該方法のタイプは特に制限がない。例えば、本方法は、核酸の配列決定法、あるいは、ある試料中のタンパク量を検出することによって1個以上の遺伝子の発現をプロファイルする方法でもよい。本方法は、これを使用すれば多数の分析対象物質を同時に容易に分析できるので、特に有利である。しかし、本方法は、単一の分析対象物質を個別に分析するのにも有利である。それは、本質量標識体を使用することによって、従来のスペクトルよりも鮮明な質量スペクトルが得られ、本方法が正確かつ高感度になるからである。
【0105】
さらに好ましい実施態様では、本発明は、以下の段階から成る方法を提供する:
(a)1個以上の分析対象物質をプローブセット及びプローブ系列のいずれかに接触させる。ただし当該セット及び系列のいずれか中の各プローブは少なくとも1個の分析対象物質に特異的であり、その場合、当該プローブは上記に規定の通りである。
(b)分析対象物質を、その分析対象物質に特異的なプローブを検出することにより同定する。
【0106】
この実施態様の場合、質量標識体は、質量分析法によって当該質量標識体を検出する前にプローブから開裂させるのが好ましい。
【0107】
この特定実施態様の方法の性質は、特に制限されない。しかし、当該方法は、1個以上の核酸をハイブリダイゼーションプローブセットに接触させることを含むのが好ましい。ハイブリダイゼーションプローブセットは、四量体256個までのセットを含み、当該セット中の各プローブが核酸塩基の異なる組合せであるのが典型的である。この方法は、標的核酸の存在の同定に適しており、あるいは別に、核酸鋳型1個以上のプライマーエクステンション配列決定の段階的方法に使用することができる。
【0108】
本発明の質量標識体は、主として、同時に多数の標識体を識別できるため、2次元分析の方法での使用に特に適している。そのため、当該標識体は、2次元ゲル電気泳動法及び2次元質量分析法いずれかにおいて使用することができる。
[ペプチド合成]
【0109】
本発明の多数のペプチド質量タグ例の合成は、従来のペプチド合成法と市販の試薬を使って可能である。市販されていない修飾アミノ酸もさらなるペプチド質量タグの合成に使用される。
【0110】
現代のペプチド合成は、固相支持体上、自動合成装置で実施するのが典型的であり、この装置は、ペプチド合成の各段階に必要な全試薬を固相支持体に送り、使用済み試薬と未反応の過剰な試薬をサイクルの各段階の終了時に除去する。しかし、固相ペプチド合成は、特に、特殊試薬を最初に検査する時には、手操作で実施される。実質的に、ペプチド合成は、N-保護アミノ酸の固相への付加に関する。普通、ペプチドは、支持体に付着させたペプチドのC−末端カルボキシル基で合成し、そのペプチドの配列を、C-末端アミノ酸からN-末端アミノ酸までの構成とする。C-末端アミノ酸を開裂可能な結合によって支持体にカップリングする。各アミノ酸のN-保護αアミノ基を脱保護することによって、固相支持体上で成長するペプチドに次のアミノ酸カルボキシル基がカップリングすることができる。ほとんどの目的上、ペプチド合成は、2つの異なる合成手順の一方によって実施され、両手順は、N-保護基の除去に必要な条件によって識別される。tert-ブチロカルボニル(t-BOC)基は、温和な酸性条件、例えばジクロロメタン中トリフロロ酢酸、によって開裂するが、フルオレニルメトキシカルボニル(FMOC)基は、温和な塩基性条件、例えばジメチルフォルムアミド中20%ピペリジン、によって開裂する。アミノ酸の反応性側鎖も、アミド結合形成サイクル中、保護を必要とする。これらの側鎖には、リジンのεアミノ基、アルギニンのグアニジノ側鎖、システインのチオール官能基、セリン、スレオニン及びチロシンのヒドロキシル基、トリプトファンのインドール環、ヒスチジンのイミダゾール環がある。側鎖保護基は、α-アミノ保護基の除去に使用する脱保護条件に抵抗性がなければならないので、側鎖保護に使用する保護基の選択は、α-アミノ保護基の開裂条件によって決定される。第1保護基が、第2保護基の脱保護に使用する条件下で脱保護に抵抗性があり、第1保護基の脱保護条件が第2保護基の脱保護を引き起こさない場合、第1保護基は、第2保護基に「直交」であると言う。
【0111】
FMOC合成に適合する側鎖保護基の例を表3に示す。
【表3】
【0112】
FMOC保護に直交な他の側鎖保護基は、当業者に公知であり、本発明で適用できる(例えば、Fields G.B. & Nobel R.L., Int.J.Pept Protein Res 35(3): 161-214, 「9-フルオレニルメトキシカルボニルアミノ酸を利用した固相ペプチド合成」1990参照)。
【0113】
t-BOC合成に適合する反応性側鎖官能基の保護基を以下の表4に示す。
【表4】
【0114】
やはり、実務当業者はt-BOCαアミノ保護に直交な反応性側鎖と共に使用する他の保護基を知っている。様々な固相支持体及び樹脂が、FMOC及びt-BOCのいずれかの手順を使ったペプチド合成用に市販されている(固相支持体の論評については、Meldal M., Methods Enzymol 289: 83-104, 「固相支持体の性状」1997参照)。
[質量修飾アミノ酸]
【0115】
質量マーカー部と質量正規化部には、様々なアミノ酸が使用できる。例えば本発明の第1及び第4実施態様においてアミノ酸1及びアミノ酸2とマークした位置には、質量正規化部では中性アミノ酸が好ましく、質量マーカー部では荷電アミノ酸が好ましい(これによってイオン化が容易になり感度が上がるので)。多数の市販同位体質量修飾アミノ酸を以下の表5に示す。このリストからの1個、2個、3個及び4個以上のいずれかのアミノ酸の組合せはどれでも本発明による各部分に好ましい。
【表5】
【0116】
上記のアミノ酸の多くに対して、D-、L-の両型を入手でき(例えばISOTEC Inc., Miamisburg, Ohio)、そのどちらも、本発明のタグの調製に使用できる。D及びL型の混合物も利用できるが、本発明のタグをクロマトグラフィーでの分離に使用しなければならない場合には、それほど好ましくもない。一部では、FMOC及びt-BOC保護誘導体のいずれかも利用できる。水素を重水素に置換、並びに、12C及び13N同位体を13C及び15N同位体に置換したことを基礎とする質量修飾アミノ酸塩基も入手可能であり、本発明のタグの合成に適用できる。通例はペプチド中に認められない各種アミノ酸も、本発明で使用でき、例えば、重水素型アミノ酪酸が市販されている。本発明の目的上、安全性の理由から非放射性の安定な同位体が好ましいが、安定な同位体に限定する必要はない。
【0117】
多数のアミノ酸のフッ素化誘導体も利用できる。市販されているフッ素化アミノ酸の一部を以下の表6に示す。
【表6】
【0118】
上記のフッ素化アミノ酸の大半に対して、試薬は、D型とL型の混合物が利用できる。一般に、アミノ酸のフッ素化体は、同位体置換体ほど好ましくない。一定範囲の同一質量の質量タグを生成する場合にはフッ素化化合物を使用できるが、各タグは化学的には異なっており、このことは、その質量分析計内の挙動が同位体置換タグ以上に変動することを意味する。さらに、当該タグをクロマトグラフィーによる分離で使用する場合、クロマトグラフィー上の性状は同一でなくなる。
[反応性官能基]
【0119】
本発明の一部の態様では、すでに説明したように、本発明の質量タグは、反応性官能基を含む。最も簡単な実施態様では、これは、本発明のタグペプチドC-末端の活性化によって導入したN-ヒドロキシコハク酸イミドエステルでであってよい。従来のペプチド合成であれば、この活性化段階は、ペプチド質量タグをその合成に使用する固相支持体から開裂した後に行わなければならない。N-ヒドロキシコハク酸イミド活性化ペプチド質量タグは、ヒドラジンと反応して、ヒドラジド反応性官能基を生じることもでき、これを使って、例えば、過ヨウ素酸酸化糖部分を標識できる。ある用途では、アミノ基及びチオールのいずれかを反応性官能基として使用でき、これらは、タグペプチドのアミノ酸2の後にリジン及びシステインのいずれかを付加して導入できる。リジンを使用すれば、カップリング試薬としてのカルボジイミドによりタグを遊離カルボキシル官能基にカップリングすることができる。リジンは、本発明のタグペプチドへの他の反応性官能基を導入するための出発点としても使用できる。リジンεアミノ基を無水マレイン酸と反応させてチオール反応性マレイミド官能基を導入できる。システインチオール基を様々なアルケニルスルフォン化合物の合成の出発点として使用することができ、これら化合物はチオール及びアミンと反応する有用なタンパク標識試薬となる。アミノヘキサン酸などの化合物を使用すれば、質量修飾アミノ酸と反応性官能基の間のスペーサーが得られる。
[アフィニティー捕捉リガンド]
【0120】
本発明の第1態様の何件かの実施態様では、質量マーカーは、アフィニティー捕捉リガンドを含む。アフィニティー捕捉リガンドは、著しく特異的な結合相手を持つリガンドである。これらの結合相手によって、リガンドのタグを付けた分子を結合相手が選択的に捕捉することができる。好ましくは、固相支持体に結合相手を導入するので、アフィニティーリガンドタグ分子は、当該固相支持体上に選択的に捕捉される。好ましいアフィニティー捕捉リガンドはビオチンであり、当分野に公知の標準的な方法により本発明のペプチド質量タグに導入することができる。特に、アミノ酸2の後にリジン残基を取り込むことができ、それによって、アミン反応性ビオチンをペプチド質量タグに結合することができる(例えば、Geahlm R.L.ら, Anal Biochem 202(1): 68-67「カルボキシ末端ビオチニル化ぺプチドの一般的調製法」1992; Sawutz D.G.ら, Peptide 12(5): 1019-1012, 「ブラディキニンのビオチニル化類似体の合成及び分子特性分析」1991; Natarajan S.ら, Int J Protein Res 40(6): 567-567, 「部位特異的ビオチニル化。エンドセリン-1類似体及びPTH-類似体の新規アプローチとその応用」1992)。イムノビオチンも応用できる。ビオチンに対して、様々なアビジンカウンターリガンドが利用でき、これには、単量体及び四量体アビジン及びストレプトアビジンがあり、すべて、多数の固相支持体上で利用できる。
【0121】
他のアフィニティー捕捉リガンドには、ジゴキシゲニン、フルオレセイン、ニトロフェニル成分及び多数のペプチドエピトープ、例えばc-mycエピトープがあり、それらに対しては、カウンターリガンドとしての選択的モノクロナール抗体が存在する。ヘキサヒスチジンなど、容易にNi2 +を結合する金属イオン結合リガンドも適用できる。例えば、イミノニ酢酸キレート化Ni2 +イオンが得られるクロマトグラフィー樹脂が市販されている。これらの固定化ニッケルカラムは、オリゴマーヒスチジンを含むペプチド質量タグの捕捉に使用できる。さらなる代替法として、アフィニティー捕捉官能基は適切に導入した固相支持体と選択的に反応する。例えば、ボロン酸は、隣接シス-ジオール及び化学的に類似したリガンド、例えばサリチルヒドロキサム酸と選択的に反応することが知られている。サリチルヒドロキサム酸を導入した固相支持体上にタンパクを捕捉するために、ボロン酸を含む試薬が開発されている(Stolowitz M.L.ら, Bioconjug Chem 12(2): 229-239, 「フェニルボロン酸-サリチルヒドロキサム酸生体共役体1. タンパク固定用新規ボロン酸複合体」2001; Wiley J.P.ら, Bioconjug Chem 12(2): 240-250, 「フェニルボロン酸-サリチルヒドロキサム酸生物共役体2. アフィニティークロマトグラフィーのためのタンパクリガンドの多価固定化」, Prolinx, Inc, Washington State, USA)。フェニルボロン酸官能基を本発明ペプチド質量タグに結合すれば、選択的化学反応によって捕捉可能な捕捉試薬を作成することは比較的簡単であろうと予想される。この種の化学を使用しても、隣接シス-ジオール-含有糖を有する生体分子には直接適合しないと思われるが、この種の糖は、ボロン酸を導入したペプチド質量タグ試薬との反応に先行してフェニルボロン酸及び関連試薬のいずれかで封鎖できるはずである。
[質量スペクトル増感基及び質量識別]
【0122】
本発明の第1及び第4の態様の好ましい実施態様において、ペプチド質量タグは、増感基を含む。図1〜5は、感度改善法としてのメチル化とグアニジン化の使用を示す。さらに、第2アミノ酸が第1アミノ酸と同一である場合、これらの増感基によって、N-末端アミノ酸の開裂生成物を、ペプチドタグ中の第2アミノ酸及びタンパク質中の天然アミノ酸残基の開裂生成物から識別することができる。本発明のタグを使ってペプチドとタンパク質を標識する場合、当該増感基はまた、ペプチド質量タグのN-末端アミノ酸の開裂生成物を天然アミノ酸の開裂生成物と区別できる。グアニジノ基と3級アミノ基は、共に、エレクトロスプレー質量分析法に有用な増感基である。
【0123】
各種のペプチド誘導法も開発されている。これらには、陽イオン質量分析法用の4級アンモニウム誘導体、4級フォスフォニウム誘導体及びピリジル誘導体がある。ハロゲン化化合物、特にハロゲン化芳香族化合物は、周知のエレクトロフォアであり、即ち、それらは、非常に容易に熱電子を拾い上げる。フッ素化芳香族化合物(Bian N.ら, Rapid Commun Mass Spectrom 11(16): 1781-1784, 「多重エレクトロフォア-標識アルブミンのレーザー脱着及び質量分析法による検出」1997)を基礎にした様々な導入試薬が電子捕捉検出のために開発されているが、この電子捕捉検出は高感度のイオン化及び検出のプロセスであるので、これは陰イオン質量分析法で使用できる(Abdel-Baky S. & Giese R.W., Anal Chem 63(24): 2986-2989, 「ゼプトモルレベルのガスクロマトグラフィー/電子捕捉陰イオン質量分析法」1991)。フッ素化芳香族基も、増感基として使用できる。芳香族スルフォン酸も、陰イオン質量分析法の感度改善に使用されている。
【0124】
増感基の各タイプは別々の利点を有しており、それらは、使用するイオン化法や使用する質量分析法に依存する。感度を増強するメカニズムは、基のタイプ毎に異なってもよい。ある導入法は塩基性を高め、その結果プロトン化と電荷の局在化を促進し、また他の導入法はタグ化ペプチドの表面活性を増加させ、その結果マトリックス支援レーザー脱着イオン化(MALDI)や高速中性粒子衝突(FAB)のような表面脱着技術の感度を上昇する。陰イオン質量分析法の方がしばしば感度は高い。それは、背景ノイズが少ないからである。衝突誘発による解離を使用する場合、電荷導入によって、導入ペプチドの開裂生成物が変化する可能性がある。特に、ある導入技術は開裂パターンを簡素化するので非常に有利である。どのような増感基を選択するかは、採用する質量分析法技術によって決定される(論評については、Rothら, Mass Spectrometry Reviews 17: 255-274, 「質量分析法による分析のためのペプチドの電荷導入」1998参照)。本発明の目的のために、すべての既知導入技術を本発明のペプチド質量タグに使用できる。公開されているプロトコールは、本発明のペプチド質量タグに導入するために、改変せずに固相ペプチド合成後に利用することができ、あるいは、望むならば容易に改変し、固相合成中に使用することもできる。
[質量分析法によるペプチドの分析]
【0125】
質量分析計の基本的特徴は、次の通りである:
【0126】
導入系->イオン源->質量分析計->イオン検出器->データ捕捉系
【0127】
ペプチドを分析する目的上、好ましい導入系、イオン源及び質量分析計がある。
[導入系]
【0128】
本発明の第2態様において、クロマトグラフィー及び電気泳動のいずれかによる分離を実行することによって試料の複雑さを軽減してから質量分析法による分析を行うのが好ましい。各種の質量分析法の技術は分離技術、特に毛細管ゾーン電気泳動及び高速液体クロマトグラフィー(HPLC)と両立する。ただし、分離が必要な場合にイオン化源の選択はある程度限定される。理由は、MALDI及びFAB等のイオン化技術は固体表面から物質を削除するのでクロマトグラフィー分離には比較的適さないからである。ほとんどの目的上、これらの技術の一つによりクロマトグラフィー分離と質量スペクトル分析とを一線に連結することは非常にコストがかかった。動的FAB及びスプレーを基礎とするイオン化技術、例えば電子スプレー、熱スプレー、APCIは全てインラインでのクロマトグラフィー分離と両立する。そのような液体クロマトグラフィー質量分析法を実施する装置は市販品として入手可能である。
[イオン化技術]
【0129】
質量分析法の生物学への応用には、いわゆる「ソフト」イオン化技術を利用することが多い。それらの技術によりタンパク質及び核酸等の大型分子を本質的に原型のままイオン化することができる。液相技術を使用すれば大型の生物分子を緩和なpHの溶液状態でかつ低濃度で質量分析計に導入することができる。電子スプレーイオン化質量分析法(ESI−MS)、高速中性粒子衝突イオン化法(FAB)、マトリックス支援レーザー脱着イオン化質量分析法(MALDI−MS)、大気圧化学的イオン化質量分析法(APCI−MS)等の多数の技術が本発明と共に使用するのに適している。ただしこれらに限定されない。
[電子スプレーイオン化]
【0130】
電子スプレーでイオン化するには、検体分子の希釈溶液を分析器中に「噴霧する」、すなわち微細なスプレー状態で注入することが必要である。例えば、溶液を荷電針の先端から乾燥窒素の気流及び静電界に噴霧する。イオン化のメカニズムは十分に解明されていないが、次のように考えられている。窒素気流中に溶媒が気化する。小滴になると共に検体分子が濃縮される。大部分の生体分子には正味の電荷があるとすると、溶解した分子の静電的な反撥力が増大する。気化を続けるに従いその反撥力は最終的には滴の表面張力より大きくなるので、その滴は更に小さな滴に崩壊する。このプロセスは時々「クーロン破裂」と言われる。静電界が加わると滴の表面張力は更に打破されて噴霧過程は支援される。更に小さな滴からの気化が続き、溶媒だけの蒸気相に生体分子が基本的に存在するまで滴は破裂を繰り返す。この技術は質量標識を使用する場合には特に重要である。すなわちこの技術では、イオン化の過程でイオンに賦課されるエネルギー量が比較的に小さく、かつ群の中でのエネルギー分布の範囲が他の技術に比較すると狭い傾向にある。電極を適切に配置してセットアップした電界を使用するとイオン化チャンバからイオンが加速されて出てくる。電界の極性を変えて負及び正のいずれかのイオンを抽出してもよい。電極間の電位差により、正及び負のいずれかのイオンが質量分析器に到達するかどうかが決まり、またイオンが質量分析計に入る際の運動エネルギーも決まる。このことは質量分析計でのイオンの開裂を考察する際に重要である。イオン群に賦課されるエネルギーが多いほど、検体分子が供給源に存在する浴ガスとの衝突を介して開裂が起こる可能性が大きくなる。電界を調節してイオン化チャンバからイオンを加速すれば、イオンの開裂を制御することができる。これは、標識した生体分子からタグを除去する手段としてイオンの開裂を利用する必要がある場合には有利である。電子スプレーイオン化は、液体クロマトグラフィーとのインライン、すなわち液体クロマトグラフィー質量分析法(LC-MS)において使用することができるので、特に有利である。
[マトリックス支援レーザー脱着イオン化(MALDI)]
【0131】
MALDIでは、生体分子の溶液を大過剰モルの光励起「マトリックス」に埋設する必要がある。適切な振動数ノレーザー光を当てると、マトリックスが励起し、次に閉じ込めた生物分子と一緒にマトリックスが迅速に気化する。酸性マトリックスから生物分子にプロトンが移動して生物分子のプロトン形が生じ、これは陽イオン質量分析法、特にフライト時間(TOF)質量分析法により探知することができる。陰イオン質量分析法もMALDI TOFにより可能である。この技術ではかなりの量の翻訳エネルギーがイオンに賦課されるが、過剰の開裂を誘導する傾向はない。しかし、電圧を上げると再びこの技術で開裂を制御することができる。この技術はペプチドの質量指紋を決定するのに有利である。理由は、この技術は質量範囲が大きいこと、スペクトルにおいて単一荷電イオンが優勢であること、そして多重ペプチドを同時に分析可能であることである。
[高速中性粒子衝突イオン化法]
【0132】
高速中性粒子衝突イオン化法(FAB)では、比較的に揮発しにくい分子を気化しイオン化する技術が多数記述されている。これらの技術では、試料と高エネルギー光線のキセノン原子及びセシウムイオンのいずれかとの衝突により試料が表面から脱着する。簡単なマトリックス、通常は非揮発性物質、例えばm−ニトロベンジルアルコール(NBA)及びグリセロールのいずれかで試料を表面上にコートする。FABの技術も液相導入システムと両立する。毛細管電気泳動導入システム及び高圧液体クロマトグラフィーシステムのいずれかから溶出する液体が半溶ガラスを通過し、本質的にその半溶ガラスの表面を検体溶液がコートし、それを原子衝突によりその半溶ガラスの表面からイオン化する。
[質量分析器]
【0133】
本発明で衝突誘導解離によりペプチドを開裂し、タンパク質上のタグを同定する。各種質量分析器を使用して、ペプチドを開裂し、断片の質量を決定する。
[ペプチドのMS/MS及びMSn分析]
【0134】
タンデムの質量分析計によって、質量対電荷の比を予め決めてあるイオンが衝突誘導解離(CID)によって選択され開裂される。次に開裂断片を探知することにより、選択されたイオンに関する構造情報が得られる。タンデム質量分析計でCIDによりペプチドを分析すると、特徴的な開裂パターンが観察され、このパターンによってペプチドの配列を決定することができる。一般に天然ペプチドはペプチド骨格のアミド結合の位置で無作為に開裂し、そのペプチドに特徴的なイオンシリーズが得られる。イオンの電荷がイオンのN末端断片に保持される場合には、n番目のペプチド結合での開裂に対するCID断片シリーズはan、bn、cn、等と表示される。同様に、電荷がイオンのC末端断片に保持される場合には断片シリーズはxn、yn、zn、等と表示される。
【0135】
トリプシンとトロンビンは、タンデム質量分析法にとって好ましい開裂剤である。理由は、これらは分子の両末端に塩基性基、すなわちN末端にαアミノ基、C末端にリジン及びアルギニン側鎖のいずれかを持ったペプチドを産生するからである。これは二重荷電イオンの形成に有利であり、このイオンでは荷電中心が分子の反対末端にある。CIDをすると、これら二重荷電イオンからC末端イオンシリーズ及びN末端イオンシリーズが産生する。これを手がかりにしてペプチドの配列を決定する。一般的に言うと、所与のペプチドのCIDスペクトルには可能なイオンシリーズの唯1個および2個のいずれかが観察される。四重極装置に特徴的な低エネルギー衝突ではbシリーズのN末端断片及びyシリーズのC末端断片のいずれかが優勢である。二重荷電イオンを分析する場合には両方のシリーズがしばしば探知される。一般に、yシリーズイオンはbシリーズより優勢である。
【0136】
一般に、ペプチドは、アミド主鎖のプロトン化とそれに続く分子内求核攻撃からの5員オキサゾロン構造の形成とプロトン化アミド結合の開裂に関するメカニズムによって開裂する(Schlosser A.とLehmannW.D.J. J. Mass Spectrom. 35: 1382-1390, 「ペプチドの単分子反応における5員環形成: 低エネルギー衝突誘発による解離」2000)。図16aは、この種の開裂が起こるメカニズム案を示す。このメカニズムは、求核攻撃を実施するには、プロトン化アミドのN-末端側のプロトン化アミドに隣接するアミド結合からのカルボニル基を必要とする。荷電オキサゾロニウムイオンはb-シリーズイオンを生じるが、N-末端断片からC-末端断片へのプロトン転移は、図16aに示すように、y-シリーズイオンを生じる。N-末端を保護せず、一般に、あるペプチド中のN-末端と第2アミノ酸の間のアミドに対してb-シリーズイオンが認められない場合、カルボニル基が適切に位置するためのこの必要事項は、N-末端アミノ酸に隣接するアミド結合での開裂の原因とならない。しかし、アセチル化N-末端を持つペプチドは、このメカニズムの構造的必要条件を満たさず、このメカニズムによる第1アミノ酸直後アミド結合で開裂が起こる可能性がある。図16cに示すように、チオアセチル化N-末端を持つペプチドは、オキサゾロンメカニズムによって、特に容易に開裂することになる。それは、イオウ原子が、同じ位置では、酸素原子よりも求核性が強いからである。ペプチドのアミド骨格の開裂は、骨格のメチル化によって調節することもできる。ペプチド中のアミド窒素をメチル化すると、メチル化アミドの隣りのアミド結合C-末端の開裂が促進され、b-イオンの形成も有利になる。開裂が増強される原因の一部は、メチル基の電子供与効果によってメチル化アミドのカルボニル基が求核性を増大したためと推測され、他方b-イオンの形成が増強されるのは、図16bに示すように、生じたオキサゾロニウムイオンがプロトンをC-末端断片に運搬できない結果であると思われる。本発明に関連して言えば、タグジペプチドN-末端のチオアセチル化を利用すれば、隣りのアミド結合の位置で当該タグペプチドの開裂を増強することができる。同様に、N-末端アセチル及びチオアセチル基のいずれかの窒素原子のメチル化も、隣接アミド結合の開裂を増強する。図17aと図17bは、マークしたアミド結合でのこれらの開裂増強法を利用したタグ対を示す。
【0137】
ポリペプチド及びペプチドのいずれかのアミド骨格の開裂し易さは、当該ペプチドの側鎖官能基によってもかなり調節される。従って、ペプチドの配列は、それが最も容易に開裂するか否かを決定する。一般に、ペプチド配列中でアミド結合が容易に開裂することを予知するのは困難である。これは、本発明のペプチド質量タグの設計にとって重大な結果をもたらす。しかし、望みのアミド結合で開裂するペプチド質量タグを設計できるとする観察が何件か得られた。例えば、プロリンは、そのN-末端アミド結合での開裂を促進することが知られている(Schwartz B.L., Bursey M.M., Biol. Mass Spectrom. 21: 92, 1997)。それは、C-末端アミドでの開裂が、エネルギー的に好ましくない、歪んだ二環式オキサゾロン構造を生じるからである。アスパラギン酸も、そのN-末端アミド結合での開裂を促進する。しかし、Asp-Pro結合は、低エネルギーCID分析で特に不安定であり(Wysocki V.H.ら, J Mass Spectrom 35(12): 1399-1406, 「移動及び局在プロトン: ペプチド解離を理解する枠組み」2000)、この状況で、アスパラギン酸は、C-末端側のアミド結合の開裂を促進すると思われる。従って、プロリン及びasp-pro結合も本発明のタグペプチドに使用すれば、ペプチド内の限定された位置での開裂が促進される。図17c及び17dは、これらの方法を活用してマークを付したアミド結合での開裂を増強するタグ対を表す。図17cは、アラニン-プロリン-アラニンの配列を持つトリペプチドタグ対を表す。プロリン結合は、そのN-末端アミドでの開裂を促進する。これは、当該トリペプチドのN-末端にチオアセチル保護基が存在すると増強され、N-末端窒素をメチル化すると開裂の可能性は一層増強される。これらタグの質量は同じであるが、第1タグでは当該トリペプチドの第3位に重同位体を持つアラニン残基があり、一方、第2タグでは当該トリペプチドの第1位に重同位体を持つアラニン残基がある。図17dは、アスパラギン酸-プロリン-アラニンの配列を持つトリペプチドタグ対を表す。プロリン結合は、N-末端アミドでの開裂を促進する。これはアスパラギン酸残基が存在することにより増強される。当該トリペプチドのN-末端をメチル化すると、ここでの局在的プロトン化が促進される。これらタグの質量は同じであるが、第1タグでは、当該トリペプチドの第3位に重同位体を持つアラニン残基があり、一方、第2タグでは、当該トリペプチドの第1位に重同位体を持つアスパラギン酸残基がある。
【0138】
タンデム質量分析計の代表的な結合構造は四重極の三連式であり、四重でもある極衝突チャンバで分離された2個の四重極質量分析器を含有している。この衝突四重極は二つの質量分析器四重極の間のイオンガイドとして機能する。ガスが衝突四重極に導入され、第一の質量分析器からのイオン気流と衝突することができる。第一の質量分析器によりイオンはその質量/電荷の比を基礎にして選択され、通過する衝突セルで開裂する。断片イオンは第三の四重極で分離され、検出される。実際、開裂はタンデム分析計以外の結合構造で起こる。イオントラップ質量分析計は、開裂の程度は、イオンを加速する電界を変えることによって、あるいは衝突セルのガスを変えることによって制御してよい。例えばヘリウムをネオンに置換することができる。断片イオンを第三の四重極で分離し探知する。タンデム質量分析法以外の結合構造で誘導開裂を実行してもよい。ガスがトラップに導入される過程で、イオン捕捉質量分析計により開裂は促進される。すなわち、トラップで捕捉されたイオンは加速されて衝突することができる。イオントラップには通常は浴ガス、例えばヘリウムが含有されているが、例えばネオンを追加すると開裂が促進される。同様に、フォトン誘導開裂を捕捉されたイオンに適用することができる。他の好ましい結合構造は四重極/直交飛行時間式タンデム装置であり、これでは高走査速度の四重極と高感度のレフレクトロンTOF質量分析器とを結合して開裂産生物を同定する。
【0139】
従来の「セクター」方式装置はタンデム質量分析法で普通に使用する結合構造である。セクター質量分析器は二つの別々の「セクター」を包含しており、電気セクターがイオン光線に焦点を合わせると供給源が電界を使用して同一の運動エネルギーを持つイオン流の中に放置される。磁気セクターはイオンをその質量に基づいて分離し探知器でスペクトルが形成される。タンデム質量分析法には、この種の二つのセクターからなる質量分析器を使用することができ、その分析器では電気セクターが第一質量分析器に、磁気セクターが第二質量分析器に、二つのセクター間に置かれる衝突セルを提供する。衝突セルで分離された二つの完全セクターからなる質量分析器は質量標識したペプチドの分析にも使用することができる。
[イオン捕捉器]
【0140】
イオン捕捉質量分析計は四重極質量分析計に関係する。一般にイオン捕捉器には3個の電極からなる構造をしており、すなわち各端に「キャップ」電極があり、それらによって空洞が形成されている円筒状電極である。円筒状電極には交流高周波電位を与え、キャップ電極にはDC及びAC電位のいずれかでバイアスを架ける。空洞に注入されたイオンは円筒状電極の振動電界により捕捉器内の安定な軌道に拘束される。しかし、与えられた振幅の振動電位に対してある種のイオンは不安定な軌道をとり、捕捉器から放出される。振動高周波電位を変化することによって、捕捉器に注入したイオン試料をそれらの質量/電荷比に応じて捕捉器から連続的に放出させることができる。次に放出されたイオンを探知することによって質量スペクトルが得られる。
【0141】
一般にイオン捕捉器は、イオン捕捉器の空洞に存在する少量の「浴ガス」、例えばヘリウムで操作される。これにより装置の解像度と感度の両方が増加する。その理由は、捕捉器に入ったイオンは本質的には浴ガスとの衝突を経て浴ガスの環境温度にまで冷却されるからである。衝突すると、試料を捕捉器に導入した時のイオン化は増加するが、それと共にイオン軌道の振幅と速度は落着しイオン軌道は捕捉器の中央近傍に保持される。このことは、振動電位を変更することにより軌道が不安定になったイオンは落着している回流イオンに比べると急速にエネルギーを獲得し、緊密な束となって捕捉器から飛び出し、その結果、ピークが狭く大きくなる。
【0142】
イオン捕捉器は、タンデム質量分析計の結合構造を模倣することができ、実際に多重質量分析計の結合構造を模倣することにより、捕捉イオンの複雑な分析が可能になっている。試料由来の単一の種は捕捉器に保持できる、すなわちその他の種は全て捕捉器から放出させることができ、保持した種は、注意しながら第一振動周波の上に第二振動周波を超負荷することにより励起することができる。次に励起されたイオンは浴ガスと衝突し、十分に励起されると開裂する。次にその断片を更に分析することができる。更なる分析をする断片イオンは、他のイオンを捕捉器から排出することによって保持し、その断片を励起して開裂させることができる。十分な試料が存在する限りこのプロセスを反復することにより、更なる分析が可能になる。留意すべきこととして、これらの機器は一般に誘導開裂後の断片イオンを高い存在割合で保持する。これらの機器及びFTICR質量分析計(後記)は、線形質量分析計に存在する空間的に解決されタンデム質量分析法というもむしろ一時的に解決されたタンデム質量分析法の形態を代表するものである。
[フーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴質量分析法(FTICR MS)]
【0143】
FTICR質量分析計には、イオン試料が空洞内に保持されるという点でイオン捕捉器と類似の特徴があるが、FTICR MSではイオンは交差電磁界により高真空チャンバに補足される。電界は箱の二つの側面を形成する一対の平板電極によって形成される。この箱は磁石の磁界に含まれる。この磁石は、電界を形成しかつ捕捉平板と呼ばれる二枚の平板に連結しており、捕捉平板の間にあってかつ架けた磁界に直交する円形軌道に注入イオンを拘束する。箱の他の対立側を形成する二枚の「送信板」に高周波パルスを架けるとイオンはより大きな軌道の中に励起される。イオンの円形運動によりそれに対応する電界が、「受信板」を含む箱の残りの二つの対立側に発生する。励起パルスによりイオンはより大きな軌道に励起されるが、衝突を経てイオンの固有運動が失われるに従いこの軌道は崩壊する。受信板が探知した対応シグナルはフーリエ変換解析により質量スペクトルに変換する。
【0144】
誘起開裂実験のために、これらの機器は、イオン捕捉器と類似の方法、すなわち問題の単一種を除く全てのイオンが捕捉器から排出可能となるという方法で動作することができる。衝突ガスを捕捉器に導入して開裂を誘起することができる。その後に断片イオンを分析することができる。一般に開裂産生物と浴ガスとが結合すると、「受信板」が探知したシグナルのFT分析によって分析する場合に解像性が貧しくなる。しかし、断片イオンを空洞から放出させ、例えば四重極のあるタンデム構成の中で分析することができる。
[標識ペプチドのクロマトグラフィー及び電気泳動いずれかによる分離]
【0145】
本発明の第2態様における任意の第2段階では、標識生体分子をクロマトグラフィー分離に架けてから質量分析法による分析を行う。この分離には高速液体クロマトグラフィー(HPLC)が好ましく、これを質量分析計に直接連結すれば、ペプチドをクロマトグラフィーカラムから溶出しながらペプチドをインライン分析することができる。HPLCによって多様な分析技術を実施できるが、質量分析前のペプチド分離には、逆相クロマトグラフィーが一般的である。毛細管ゾーン電気泳動は別の分離法であり、質量分析計に直接連結することにより溶出試料の自動分析ができる。各種分画技術を適用して質量分析前の生体分子混合物の複雑さを軽減してよい。
[本発明の応用]
[ペプチド及びポリペプチドの標識及びLC-MS-MSによる分析]
【0146】
本発明第二態様の好ましい実施例では、タグを使用してペプチド混合物を液体クロマトグラフィータンデム質量分析法(LC-MS-MS)により分析する。第二態様による本発明質量標識体の使用をペプチド分析に関して説明する。ペプチド質量タグ、例えば図1及び2のものをペプチドの標識に使用してもよい。これら化合物上の反応性官能基がN-ヒドロキシコハク酸イミドエステルである場合には、このタグは遊離アミノ基、例えばαアミノ基及びリジンのεアミノ基と反応する。
【0147】
タグを付けると標識されたペプチドの質量はタグの質量だけシフトする。このペプチドの質量は由来タンパク質を同定するのには十分と推測される。この場合にはタグだけが検出される必要があり、これは三連四重極でモニターする選定した反応により可能であって、以下に詳細に説明する。概述すると、問題のペプチドの質量に対応する質量対荷電比を持ったイオンが通過するように三連四重極の第一四重極を設定し、マーカーの質量に合うように調節する。次に第二四重極でこの選択したイオンに衝突誘導解離(CID)を与える。ペプチド分析で使用する種類の条件下でイオンはその分子のアミド結合の位置で開裂する。図1及び2のマーカーのアミド結合は、開裂するとタグのN末端部分を放出する。タグの質量はすべて同一であるが、末端部分は異なる。その理由は、アミド結合のどちら側に置換基があったかにより異なるからである。かくしてマーカーを相互に識別することができる。特定質量のイオンに関連したマーカー断片が存在することから、そのイオンはペプチドであり、かつ別々のサンプルに由来するタグのピークの相対的な高さからそれらサンプル中に存在する当該ペプチドの相対的な量に関する情報が得られることが確認される。サンプル中に同一の末端質量を有する末端ペプチドが多数あるか、及びペプチドが判っていないかのいずれかの理由により、質量がペプチドを同定するのに不十分である場合には、全CIDスペクトルを分析して配列情報を求めてもよい。ペプチド断片ピークを利用すれば、ペプチドを同定し、他方質量タグピークからそのペプチドの相対的な量に関する情報が得られる。
【0148】
タンデム質量分析法によるタンパク質、特にペプチド混合物の分析は、スペクトルの「ノイズ」が入るので厄介である。ペプチドを生物学的サンプルから分離した場合には時折緩衝剤、変性剤及び洗浄剤が混入し、質量スペクトル中にこれら全てのピークが導入される。その結果、ペプチドピーク以外の混入ピークがスペクトルに存在し、ペプチドに対応するピークを同定することが、特にタンパク質のサンプル量が小さいために分離が困難な場合には、主たる課題となってしまう。したがって、各種の方法を駆使してどのピークがペプチドに対応するかを決定してから詳細なCID分析を実行することになる。三連四重極をベースとする機器によれば「前躯体イオンによるスキャンニング」が可能である(Wilm M.ら、 Anal Chem 68(3):527-33, “未分離ペプチド混合物の親イオン走査.” (1996))。三連四重極を「単一反応モニタリング」方式で操作すれば、第一四重極が全質量範囲を走査し、第二四重極においてゲートに入れられた各イオンにCIDを加える。特定の断片イオンを唯1個だけ、すなわちペプチドに由来する特徴的なイオン、例えばインモニウムイオンを検出するように第三四重極を設定する。この技法を使用すればリン酸基の存在も検出することができる。三連四重極/飛行時間質量分析計を使用する別の方法では、二重荷電イオンを走査し、そのためにCIDを加えると質量対荷電比が親イオンよりも高い娘イオンが産生するイオンを同定する。二重荷電イオンを同定する別の方法では、適当な強度比を持ち、0.5ダルトンだけ離れている、ということは同一のイオンながら分子中に存在する13Cの比率だけが異なるピークの組合せを探す。
【0149】
本発明質量標識体でペプチドを標識することにより新しい形式の前躯体イオンスキャンニングが着想され、すなわち標識したペプチドにCIDを加えた後に本発明質量標識体に対応する断片の存在によってペプチドピークを同定してもよい。特に、各サンプルから本発明方法により単離したペプチドは2以上のタグで標識してよい。全サンプルに使用する「前躯体イオンスキャンニング」用タグ及びあるサンプルに特異的なタグの等モル混合物を使用して各サンプルのペプチドを標識してもよい。こうすればサンプルが異なる毎にペプチドレベルが変動しても前躯体イオンスキャンニングでペプチドピークの同定に不都合な結果が出ることはない。
【0150】
ペプチドイオンを同定し選択したらそれにCIDを加える。CIDスペクトルは時折極めて複雑となり、CIDスペクトルのどのピークが有意なペプチド断片のシリーズに対応するかを決定することが、質量分析法でペプチド配列を決定する際に別の問題になる。Shevchenko ら、 Rapid Commun. Mass Spec. 11 : 1015-1024 (1997)には別の方法が記載されており、それでは1:1 16O/18O水中で分析サンプルをトリプシンで処理している。その加水分解反応の結果、二つのペプチド集団が生じ、第一の集団の末端カルボキシルには16Oが、第二の集団の末端カルボキシルには18Oが含有される。サンプル中の各ペプチドには強度の等しい二重ピークがペプチド毎に存在し、その二重ピークは2ダルトン離れている。このピークはペプチド本来の同位体のピークと少し重なるが、CIDスペクトルにおいてこれをダブレットとして自動的にスキャンニングすることができる。ダブレット間の質量差を決定することによって、二つの断片が異にするアミノ酸を同定することができる。この方法はN末端ペプチドを単離すれば本発明方法に応用することができる。
[タンパク質発現のプロファイリング]
【0151】
癌組織の変化を理解するには、例えば、その組織での分子的変化を全て理解し、理想的にはその変化を正常組織に関連付けることが必要である。分子的変化を全て決定するには、遺伝子発現の変化、タンパク質発現及び最終的には代謝の変化を測定できなければならない。異なる組織サンプル間の多数の遺伝子の発現をメッセンジャーRNA(mRNA)のレベルで同時に比較することは、マイクロアレイの技法を使えば可能である(例えばIyer V.R.ら、Science 283(5398):83-87, “ヒト繊維芽細胞の血清に対する応答の際の転写プログラム.” 1999参照)。しかしmRNAレベルは組織中のタンパク質レベルに直接関連しない。組織についてタンパク質発現のプロファイルを決定するには二次元ゲル電気泳動法が広く使用されている。残念ながら、この技法は極めて手間がかかり、2以上のサンプルを2-Dゲル上で同時に比較することは再現性に難点があるので困難である。前記のごとく、本発明方法を使えばペプチド分析は効果的に可能である。
本発明タグをLC-MS-MSで使用すれば、サンプルが異なっても同一のペプチドは同定することができる。更に、サンプルが異なっても同一ペプチドの相対的な量を決定することができる。多数のサンプル中のペプチドの同一性及び量を迅速かつ感度よく測定できるので、発現をプロファイルすることができる。したがって、本発明の目的は、ペプチドの選択的単離及び標識を基礎にして、複雑なタンパク質サンプルを比較分析する改良方法を提供することである。以下に、タンパク質発現を包括的に分析する二つの開示されているアプローチについて説明し、タンパク質の特別な状態、例えばリン酸化及び炭水化物修飾化を分析するための各種方法も記述する。
[タンパク質発現の包括的なプロファイリングのための末端ペプチドの単離]
【0152】
N末端及びC末端いずれかのペプチドの単離は、タンパク質サンプルの包括的な発現プロファイルを決定する方法として説明してきた。末端ペプチドの単離により、1個のタンパク質あたり少なくとも1及び唯1個のペプチドが確実に単離され、その結果、複雑な分析サンプルにおける成分が最初のサンプルより確実に少なくなる。大きなポリペプチドを小さなペプチドに減少すれば、サンプルは質量分析法による分析が行ない易くなる。ポリペプチド末端からペプチドを単離する方法はPCT/GB98/00201及び PCT/GB99/03258に説明されている。
[システイン含有ペプチドの単離]
【0153】
前記のごとく、Gygiら、(Nature Biotechnology 17: 994 - 999 1999)には、タンパク質からペプチドを捕捉するための「同位体をコードされたアフィニティータグ」が開示されており、タンパク質発現の解明が可能である。本発明者らの報告によれば、少なくとも1個のシステイン残基を有するタンパク質は酵母にかなりの比率(>90%)で存在する(平均するとタンパク質1個あたりシステイン残基は〜5である)。タンパク質サンプル中のジスルフィッド結合を還元し、遊離チオールをヨードアセタミジルビオチンで防護すると、システイン残基がすべて標識される。次に標識タンパク質を例えばトリプシンで消化し、システイン標識ペプチドをアビジンビーズで単離してもよい。次にこれら捕捉したペプチドを液体クロマトグラフィータンデム質量分析法(LC-MS/MS)で分析すれば、タンパク質サンプルの発現プロファイルを決定することができる。システイン残基を別の同位体で修飾したビオチンタグで標識することにより二つのタンパク質サンプルを比較することができる。この方法は、末端ペプチドの単離を基礎とする方法に比較すると多少重複したところがある。理由は、平均するとタンパク質1個あたり2以上のペプチドを単離するのでタンパク質種よりもペプチド種の方がサンプル中に多くなるからである。Gyriらの使用したタグの性質ではこの複雑さの増加はいっそう悪化する。
【0154】
前記のごとく、Gygiらのアフィニティータグにはいくつかの欠点がある。各サンプルを別々の同位体変異体アフィニティータグで標識する結果、各サンプルの各ペプチド毎に質量スペクトルピークが別になる。これは、二つのサンプルを一緒に分析した場合にスペクトル中のピークの数が2倍になることを意味する。同様に三つのサンプルを一緒に分析すればスペクトルの複雑さは一つのサンプルだけよりも3倍になる。タグが原因で移動度が変化するのも更なる制約であって、これは上記論文の筆者が報告している。その筆者の報告によれば、重水素化ビオチンタグで標識したペプチドは重水素化してないタグで標識した同一のペプチドに少し遅れて溶出する。このことは、Gygiらの方法で多数のサンプルを比較分析することは困難であることを意味する。理由は、2以上のサンプルを分析しても質量スペクトルが複雑になり、クロマトグラフィー段階が複雑になるからである。
【0155】
システイン残基を標識してタンパク質サンプルを分析するにあたり、図8に示す形態のタグを使用する改良方法が着想される。この図にはメチオニンから誘導した一対の改良アフィニティータグが図示されている。別々の同位体で置換した形態のメチオニンを使用すれば二つの異なるタグが作成される。二つのタグのそれぞれの全質量は同一であるが、各タグのN末端メチオニンは相互に3ダルトンだけ異なる。ジペプチドのαアミノ基は、グアニジン化することによって、このアミノ酸の断片産物を第二のメチオニン残基及びタンパク質中のもともとのメチオニン残基の断片産物と差別化され、質量分析計でイオン化する間にタグのこの位置でプロトン化が促進される。更にこれらのタグにはチオール反応性マレイミド官能基がある。
【0156】
本発明第二態様の実施例で、システイン残基のあるポリペプチドを含有するタンパク質サンプルの分析用プロトコールには、以下の段階が含まれる:
1. 少なくとも1のタンパク質サンプルのシステイン残基を全てマレイミドアフィニティーリガンド質量タグと還元及び反応させる;
2. ポリペプチドを配列特異的なエンドプロテアーゼで開裂する;
3. タグを付したペプチドをアビジン誘導した固相担体上に捕捉する;及び
4. タグを付し捕捉したペプチドをLC-MS-MSで分析する。
【0157】
配列特異的エンドプロテアーゼでのタンパク質サンプルの消化は、アフィニティーリガンド質量タグと反応させる前でも後でもよい。
[炭水化物修飾タンパク質の単離]
【0158】
炭水化物はタンパク質の翻訳後修飾体としてしばしば存在する。この種のタンパク質の単離のために各種のアフィニティークロマトグラフィーが知られている(概説のために、Gerard C., Methods Enzymol. 182, 529-539「糖タンパク質の精製」1990参照)。炭水化物に対する各種天然タンパク質受容体が知られている。受容体のこのクラスの構成員はレクチンとして知られており、特定の炭水化物官能基に対して高度の選択性がある。特定のレクチンを導入したアフィニティーカラムを使用すれば、特定の炭水化物で修飾されたタンパク質を単離することができる。他方、各種の異なるレクチンを含有するアフィニティーカラムを使用すれば、各種の異なる炭水化物で修飾されたタンパク質群を単離することができる。本発明第二態様の実施例で、炭水化物修飾タンパク質を含有するタンパク質サンプルの分析用プロトコールには、以下の段階が含まれる:
1. 配列特異的開裂試薬、例えばトリプシン及びLys-Cのいずれかでサンプルを処理する;
2. レクチン及びボロン酸誘導体のいずれかを含有するアフィニティーカラムにタンパク質サンプルを通過させ、炭水化物修飾タンパク質のみを単離する;
3. 捕捉した炭水化物修飾タンパク質を配列特異的開裂により生じた遊離アミノ酸の位置で本発明ペプチド質量タグにより標識する;
4. タグを付したペプチドをLC-MS-MSにより分析する。
【0159】
N-ヒドロキシコハク酸イミド活性化タグを使用して遊離αアミノ基を標識できた。Lys-Cを使用する場合には、各炭水化物修飾ペプチドの遊離εアミノ基及び遊離αアミノ基の両方にタグを付けることができる。
【0160】
隣接−ジオール基、すなわち隣接する炭素上に存在するヒドロキシル基を有する炭水化物は多数ある。1,2−シスジオール立体配位に隣接ジオールを含有するジオール含有炭水化物はボロン酸誘導体と反応して環状エステルを形成する。この反応は塩基性pHでは優勢であるが、酸性pHでは容易に逆転する。
シス−ジオール含有炭水化物を有するタンパク質を親和捕捉するリガンドとして、樹脂に固定化されたフェニルボロン酸誘導体が使用されている。本発明第四態様の実施例では、図6bに示すように、フェニルボロン酸に結合したビオチンを含有するアフィニティーリガンドペプチド質量タグのセットを合成することができた。これらのボロン酸タグを使用することにより、隣接−ジオール基を含有し炭水化物修飾のあるペプチド及びタンパク質のいずれかを含有する二つの別々のサンプルを標識することができた。本発明第二態様の他の実施例で、炭水化物修飾ポリペプチドを含有するタンパク質サンプルの分析用プロトコールには、以下の段階が含まれる:
1. 少なくとも1のタンパク質サンプルを塩基性pHでボロン酸アフィニティーリガンド質量タグと反応させる;
2. ポリペプチドを配列特異的なエンドプロテアーゼで開裂する;
3. タグを付したペプチドをアビジン誘導した固相担体上に捕捉する;及び
4. タグを付し捕捉したペプチドをLC-MS-MSで分析する。
【0161】
配列特異的エンドプロテアーゼでのタンパク質サンプルの消化は、アフィニティーリガンド質量タグと反応させる前でも後でもよい。
【0162】
隣接−ジオールはまた、例えばシアール酸において、過ヨード酸塩で酸化的に開裂するとカルボニル基に変換することができる。末端にガラクトース及びガラクトサミンのいずれかを有する糖をガラクトース酸化酵素で酵素的に酸化することによっても、これらの糖のヒドロキシル基をカルボニル基に変換することができる。複合炭水化物も炭水化物開裂酵素、例えばノイラミダーゼで処理すると、この酵素により特定の糖修飾体は除去し、酸化可能な糖は後に残すことができる。これらのカルボニル基にタグを付ければ、上記の修飾をしたタンパク質を探知及び単離のいずれかが可能である。ビオシチンヒドラジッド(Pierce & Warriner Ltd., Chester,UK)のようなヒドラジッド試薬は、カルボニル含有炭水化物種中のカルボニル基と反応する(E.A.Bayerら Anal.Biochem.170, 271-281「ビオシチンヒドラジッド−アビジンビオチン技法を利用する糖複合体中のシアール酸、ガラクトース及び他の糖のための選択的標識」1988)。あるいはまた、カルボニル基にアミン修飾ビオチン、例えばBiocytin及びEZ−Link(商標)PEO−Biotin(Pierce & Warriner Ltd., Chester,UK)のタグを還元的アルキル化(Means G.E., Methods Enzymol 47, 469-478「アミノ基の還元的アルキル化」1977;Rayment L., Methods Enzymol 276: 171-179「リジン残基を還元的アルキル化してタンパク質の結晶特性を変更」1997)を利用して付けることができる。したがって、隣接−ジオール含有炭水化物修飾体を有する複合体混合物中タンパク質をビオチニル化することができる。ビオチニル化した、したがって炭水化物を修飾したタンパク質はアビジン化固相担体を使用して単離することができる。
【0163】
過ヨウ素酸塩で酸化した炭水化物修飾ペプチドの分析のために図6aに示すごとく本発明ペプチド質量タグのセットを合成することができる。図6aにはメチオニンから誘導した二つのタグのセットが示されている。別々の同位体で置換した形態のメチオニンを使用すれば二つの異なるタグが作成される。二つのタグの各々の全質量は同一であるが、各タグのN末端メチオニンは相互に3ダルトンだけ異なる。ジペプチドタグのαアミノ基は、グアニジン化することによって、このアミノ酸の断片産物を第二のメチオニン残基及びタンパク質中のもともとのメチオニン残基の断片産物と差別化され、質量分析計でイオン化する間にタグのこの位置でプロトン化が促進される。本発明第二態様の他の実施例には、以下の段階が含まれる:
1. ポリペプチドサンプルを過ヨウ素酸塩で処理し、糖タンパク質上の隣接シス−ジオールのある炭水化物にカルボニル官能基を獲得させる;
2. 図6aに示すように、このカルボニル官能基に、ビオチンに結合したヒドラジド活性化ペプチド質量タグを標識する;
3. タンパク質サンプルを配列特異的エンドプロテアーゼで消化する;
4. タグを付したペプチドをアビジン誘導固相担体上に捕捉する;及び
5. このビオチニル化ペプチドをLC-MS-MSにより分析する。
【0164】
配列特異的エンドプロテアーゼでのタンパク質サンプルの消化は、アフィニティーリガンド質量タグと反応させる前でも後でもよい。
[フォスフォペプチドの単離]
【0165】
リン酸化は翻訳後における普遍的な可逆修飾であり、個々のタンパク質の状態変化に介在する遷移シグナルとして広く使用されるので、ほとんど全ての生物のシグナル経路の大半に出現する。これは重要な研究領域であり、リン酸化動力学の解析を可能にするツールは細胞の刺激応答、例えば細胞の薬物応答を完全に理解するのに必須である。
【0166】
リン酸セリン及びリン酸スレオニン含有ペプチドの分析技術はよく知られている。それらの方法のあるクラスはリン酸塩のベータ除去のための公知反応を基礎にしている。その反応の結果、リン酸セリン及びリン酸スレオニンからデヒドロアラニン及びメチルデヒドロアラニンが形成され、それらは共にミカエル受容体でありチオールと反応する。これを利用してアフィニティークロマトグラフィー用の疎水基を導入している(例えば、Holmes C.F., FEBS Lett. 215(1),21-24「リン酸セリン含有ペプチドの選択的単離の新方法」1987参照)。またジチオールのリンカーも使用されており、これによりリン酸セリン及びリン酸スレオニン含有ペプチドにフルオレッセイン及びビオチンを導入している(Fadden P, Haystead TA, Anal. Biochem. 225(1), 81-8,「ペプチド及びタンパク質上のリン酸セリンを定量的及び選択的に発蛍光団標識する:毛細管電気泳動及びレーザー誘導蛍光によってアットモルの水準で特徴化」1995;Yoshida O. Nature Biotech 19, 379-382「リン酸プロテオームをプローブ化するツールとしてのリン酸化タンパク質の濃縮分析」2001)。セリン及びスレオニンの位置でリン酸化したタンパク質をアフィニティー濃縮するYoshidaらの方法を、図8に示すマレイミドタグを使用して改良し、多数のサンプルの比較ができた。これはリン酸カスケードの動力学解析に特に有用となる。
【0167】
図7に示す形態のタグペプチドによれば、β-除去リン酸スレオニン及びリン酸セリン残基をジチオールリンカーなしで直接標識することができる。図7のタグテトラペプチドはメチオニンから誘導する。別々の同位体で置換した形態のメチオニンを使用すれば二つの異なるタグが作成される。二つのタグの各々の全質量は同一であるが、各タグのN末端メチオニンは相互に3ダルトンだけ異なる。ジペプチドタグのαアミノ基は、グアニジン化することによって、このアミノ酸の断片産物を第二のメチオニン残基及びタンパク質中のもともとのメチオニン残基の断片産物と差別化され、質量分析計でイオン化する間にタグのこの位置でプロトン化が促進される。タグペプチドをN末端でグアニジン化すると、感度が上昇し、N末端残基をC末端残基から区別することができる。システイン残基によって提供される遊離チオールはデヒドロアラニン及びメチルデヒドロアラニンを求核的に攻撃することができる。β除去を基礎とする標識方法の改良されたプロトコールは既知である。この改良された方法にはバリウム触媒作用が含まれる(Byford M.F., Biochem J. 280: 261-261, 「ペプチドのマイクロシーケンシングの過程でフォスフォセリン残基を検出するためにBa2+ イオンの触媒作用によりフォスフォセリン残基を迅速かつ選択的に修飾」 1991)。この触媒作用により反応は20倍速くなり、副反応は検出不能なレベルにまで減少する。図7のタグペプチドは、バリウムの触媒作用を利用してリン酸塩をβ除去して得られるデヒドロアラニン及びメチルデヒドロアラニンのいずれかに容易に結合する。したがって、本発明第二態様の別の実施例では、セリン及びスレオニンの位置でリン酸化したペプチドを以下の段階を含む方法で分析してもよい:
1. ポリペプチドサンプルを水酸化バリウムで処理してリン酸セリン及びリン酸スレオニンからリン酸基をβ除去する;
2. 得られたデヒドロアラニン及びメチルデヒドロアラニンのいずれかの官能基を、図7に示す、ビオチンに結合したチオール活性化ペプチド質量タグで標識する;
3. タンパク質サンプルを配列特異的エンドプロテアーゼで消化する;
4. タグを付したペプチドをアビジン誘導固相担体上に捕捉する;及び
5. このビオチニル化ペプチドをLC-MS-MSにより分析する。
【0168】
配列特異的エンドプロテアーゼでのタンパク質サンプルの消化は、アフィニティーリガンド質量タグと反応させる前でも後でもよい。
【0169】
各種広汎のタンパク質に存在するリン酸チロシン残基に結合する抗体を産生することについて報告している研究グループは多い(例えば、A.R.Frackeltonら Method Enzymol.201, 79-92「抗リン酸チロシンモノクロナール抗体及びリン酸チロシン含有タンパク質のアフィニティー精製への利用」1991及びMethod Enzymol 同号中の他の論文参照)。このことは、翻訳後にチロシンがリン酸化修飾を受けたタンパク質のかなり多数のものは、これら抗体をアフィニティーカラムのリガンドとして使用するアフィニティークロマトグラフィーによって単離されることを意味する。
【0170】
これらのリン酸チロシンに結合する抗体を本発明において使用すれば、リン酸チロシン残基を含有するタンパク質から末端ペプチドを単離することができる。複合体混合物中のチロシンリン酸化タンパク質は、抗リン酸チロシン抗体アフィニティーカラムを使用して単離することができる。本発明第二態様の他の実施例で、チロシンの位置でリン酸化されたタンパク質を含有するタンパク質サンプルの分析用プロトコールには、以下の段階が含まれる:
1. 配列特異的開裂試薬、例えばトリプシン及びLys-Cのいずれかでサンプルを処理する;
2. 抗リン酸チロシン抗体を含有するアフィニティーカラムにタンパク質サンプルを通過させ、リン酸チロシン修飾ペプチドのみを単離する;
3. 捕捉したフォスフォペプチドを配列特異的開裂により生じた遊離アミノ酸の位置で本発明ペプチド質量タグにより標識する;
4. タグを付したペプチドをLC-MS-MSにより分析する。
【0171】
N-ヒドロキシコハク酸イミド活性化タグを使用して遊離αアミノ基を標識できた。
【0172】
固定化金属イオンアフィニティークロマトグラフィー(IMAC)はリン酸タンパク質及びリン酸ペプチドを単離する別の技術を代表する。リン酸塩は三価金属イオンを含有する樹脂、特にガリウム(III)イオンに付着する(Posewitch, M.C.,Tempst, P., Anal. Chem., 71:2883-2892「リン酸ペプチドの固定化ガリウム(III)アフィニティークロマトグラフィー」1999)。この技術は有利である。理由は、セリン/スレオニンリン酸化及びチロシンリン酸化したペプチド及びタンパク質を同時に単離することができるからである。
【0173】
したがって、IMACはリン酸化タンパク質試料の分析に本発明においても使用することができる。本発明第二態様の別の実施例では、リン酸化タンパク質を含有タンパク質サンプルの分析用プロトコールには以下の段階が含まれる。
1. 配列特異的開裂試薬、例えばトリプシン及びLys-Cのいずれかでサンプルを処理する;
2. タンパク質サンプルを固定化金属イオン含有アフィニティーカラムに通し、リン酸化ペプチドのみを単離する;
3. 捕捉したフォスフォペプチドを配列特異的開裂により生じた遊離アミノ酸の位置で本発明ペプチド質量タグにより標識する;
4. タグを付したペプチドをLC-MS-MSにより分析する。
【0174】
N-ヒドロキシコハク酸イミド活性化タグを使用して遊離αアミノ基を標識できた。
【0175】
本発明第二態様の別の実施例で、リン酸化タンパク質サンプルを分析するにあたり、リン酸化タンパク質を単離し、次にリン酸タンパク質のN末端及びC末端のいずれかを分析してもよい。末端ペプチドを単離する技法は多数の特許出願に開示されており、例えばWO98/32876、 WO 00/20870 及びEP 01304975.4である。リン酸化タンパク質を含有タンパク質サンプルの分析用プロトコールには以下の段階が含まれる:
1. タンパク質サンプルを固定化金属イオン含有アフィニティーカラムに通し、リン酸化ペプチドのみを単離する;
2. 捕捉したリン酸化タンパク質からC末端及びN末端ペプチドの少なくともいずれかを単離する;
3. 捕捉した末端ペプチドを本発明ペプチド質量タグにより標識する;
4. タグを付したペプチドをLC-MS-MSにより分析する。
【実施例】
【0176】
[実施例1]
X-Metd3-Met-Gly-OH(A)及びX-Met-Metd3-Gly-OH(B)の合成
一対のペプチドを通常の自動合成法で合成し、本発明の特徴を明らかにした(共に市販品として入手可能なRapp Polymere, Germany のFmoc-Gly-Trt-PS 樹脂から出発した)。二つのペプチドA及びBを図10に示し、Met-Met-Gly(D3)ペプチドと呼ぶことにする。
【0177】
重水素メチオニン(Metd3)は、ISOTEC Inc, Miamisburg, Ohio, USAから入手可能である。しかし、ペプチド合成機で使用するFmoc試薬は未保護重水素メチオニンから手技で合成する必要があった。
N-(9-フルオレニルメトキシカルボニル)-L-メチオニン-メチル-d3 (Fmoc-Metd3)の合成
【0178】
Fmoc-Metd3 (図9に示す)の合成を二段階で実施した。
1. 9-フルオレニルメチル-ペンタフルオルフェニルカルボネネートの合成
【0179】
トリエチルアミン8.4mL(60mモル)を100mL乾燥エーテル中のペンタフルオロフェノール11g(60mモル)及びクロロ蟻酸(9-フルオレニルメチル)エステル15.5g(60mモル)の混合物に0℃で加えた。2時間反応後、冷水20mLを溶液に注入した。有機層を水で2回洗浄し、乾燥した。溶媒を留去後、生成物をヘプタンから結晶化した。収量16.4g(67%)
N-(9-フルオレニルメトキシカルボニル)-L-メチオニン-メチル-d3の合成
【0180】
L-メチオニン-メチル-d3(Metd3)2.2g(14.5mモル)をアセトン50mLに懸濁した。重炭酸ナトリウム2.5g(29mモル)、水60mL、次に9-フルオレニルメチル-ペンタフルオルフェニルカルボネネート5.7g(14mモル)を撹拌下の懸濁液に加えた。48時間反応後、透明溶液のpHをpH3に変え、有機層を酢酸エチルで抽出した。抽出した有機層を乾燥後、酢酸エチルを留去し、ヘプタンを加えて生成物を沈殿させた。この操作(酢酸エチルで希釈し、ヘキサンで沈殿)を2回繰り返し、純粋生産物Fmoc-Metd3を得た。(収量5.0g(92%)、Fp:126〜128℃、[a]D 20=−30℃、c=1、DMF)
【0181】
図10に示す二つのペプチドを作成するペプチド合成機の反応順序を以下に示す。
ペプチド配列(A)
・ Fmoc-Gly-Trt-Ps樹脂50mgをジメチルフォルムアミド(DMF)2ml中に5分間膨潤;
・ 標準的なプロトコールに従いDMF中ピペリジンでFmoc基を除去;
・ 1-ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)49mg(0.32mモル)をDMF800μlに溶解;
・ Fmoc-Met120mg(0.32mモル)を上記HOBt溶液に添加;この溶液を樹脂に加えて3分間インキュベートした;
・ 次にジイソプロピルカルボジイミド(DIC)50μl(0.32mモル)を添加;結合時間(0.4M活性化アミノ酸);
・ 標準的なプロトコールに従いDMF中ピペリジンでFmoc基を除去;
・ HOBt49mg(0.32mモル)をDMF800μlに溶解;
・ Fmoc-Metd3120mg(0.32mモル)に添加;この溶液を樹脂に加えて3分間インキュベートした;
・ 次にDIC50μl(0.32mモル)を添加;結合時間(0.4M活性化アミノ酸);
・ 標準的なプロトコールに従いDMF中ピペリジンでFmoc基を除去;
・ 「Boc2X-OSu」150mg(0.32mモル)をDMF800μlに溶解し、この溶液を樹脂に添加した;
・ 次にジイソプロピルエチルアミン(DIPEA) 53μlを樹脂に添加し、放置して結合を3時間進行させた(0.4M活性化種);
・ 樹脂を洗浄後、2.5%H2O、Et3SiH及びチオアニソールをそれぞれ含有するTFA1mlで所望の物質を樹脂から1時間以内に開裂させた;
・ ろ過後、水30mlをTFA溶液に添加し、凍結乾燥により溶媒を除去。
【0182】
ペプチド配列(A)の白色粉末が得られた。
ペプチド配列(B)
・ 樹脂50mgをDMF2ml中に5分間膨潤;
・ 標準的なプロトコールに従いDMF中ピペリジンでFmoc基を除去;
・ HOBt49mg(0.32mモル)をDMF800μlに溶解;
・ Fmoc-Metd3120mg(0.32mモル)に添加;この溶液を樹脂に加えて3分間インキュベートした;
・ DIC50μl(0.32mモル)を添加;結合時間(0.4M活性化アミノ酸);
・ 標準的なプロトコールに従いDMF中ピペリジンでFmoc基を除去;
・ HOBt49mg(0.32mモル)をDMF800μlに溶解;
・ Fmoc-Met120mg(0.32mモル)に添加;この溶液を樹脂に加えて3分間インキュベートした;
・ DIC50μl(0.32mモル)を添加;結合時間(0.4M活性化アミノ酸);
・ 標準的なプロトコールに従いDMF中ピペリジンでFmoc基を除去;
・ 「Boc2X-OSu」150mg(0.32mモル)をDMF800μlに溶解し、この溶液を樹脂に添加した;
・ DIPEA53μlを添加し、結合を3時間進行させた(0.4M活性化種);
・ 樹脂を洗浄後、2.5%H2O、Et3SiH及びチオアニソールをそれぞれ含有するTFA1mlで所望の物質を樹脂から1時間以内に開裂させた;
・ ろ過後、水30mlをTFA溶液に添加し、凍結乾燥により溶媒を除去。
ペプチド配列(B)の淡黄色粉末が得られた。
HPLC
【0183】
開裂後にペプチド毎に約80%純度の生産物が得られた。次に生産物をHPLCで精製した。
MS
【0184】
ペプチドA及びBの同定を質量分析法で確認した。MALDI及びESIのいずれにおいても両生産物の主ピークとして質量対荷電比496が観察されたが、これは両ペプチドの計算質量に一致する。ESI質量分析法によるペプチドA及びBの混合物の分析に由来する質量スペクトルを図11に示す。二つの質量スペクトルはほぼ厳密に重なっており、予想通りである。
MS/MS
【0185】
図13は、図10に示すモデルペプチドA及びBの衝突誘導解離による生産物に対する開裂反応についての提案メカニズムを示す。図12は、Finnigan MATのLCQイオン捕捉質量分析計により生成した一対のESI MS/MSスペクトルを示す。
ESI MS/MSスペクトルにはペプチドA及びBの開裂生産物が示されている。所望のb2断片イオン(図10参照)の強度は両物質共に高い(Aはアンモニア消失後に273、Bはアンモニア消失後に270)。
図14は、ペプチドA及びBの混合物の分析に由来する開裂生産物のESI MS/MSスペクトルを示す。A及びBは70:30の比率で混合物中に存在した。この比率は、m/zがペプチドAについては273、Bについては270におけるb2断片イオンピークの強度において見ることができる。このスペクトルから、数対のサンプルを比較すれば、タグによってタグが結合したペプチドの比率が明らかにされることが判る。図15は、ペプチドA及びBでの一連のESI MS/MS実験に対する線形回帰曲線を示す。グラフには、混合物中のA対Bの比率を混合物のESI MS/MS分析に由来するb2断片イオンの観察強度に対してプロットしているのが解る。グラフから、予想比率と観察比率の間に良好な対応があるのが判る。
[実施例2]
6-[ビス(tert-ブチル-オキシカルボニル)グアニジノ]-ヘキサン酸N-ヒドロキシコハク酸イミドエステル
【0186】
図9bに示すグアニジノ活性エステルリンカーの合成を以下の3段階で実施した。
1. アミノイミノメタンスルフォン酸の合成
【0187】
無水酢酸50mL及び濃硫酸2滴を30%過酸化水素水溶液45g(397mモル)に氷冷下で加えた。30分後に、この溶液に無水酢酸100mL(1157mモル)を10~12℃で再度加えた。反応混合液を一夜撹拌し、その時点で室温に到達させた。メタノール150mLを加えた後に、メタノール500mL中にチオウレア10g(131mモル)の溶液を反応液中に15~20℃でゆっくりと滴下した。反応液を室温で48時間撹拌した。ろ過後、溶液を60mLに濃縮した。得られた生産物をろ過し、エタノールで洗浄し、酢酸(約1L)から再結晶して精製した。収量6.0g(37%)
2. 6-グアニジノヘキサン酸の合成
【0188】
6-アミノヘキサン酸6.5g(50mモル)及び炭酸ナトリウム6.9g(50mモル)を水50mLに溶解した。この溶液にアミノイミノメタンスルフォン酸6.2g(50mモル) を攪拌しながら加えた。20時間後に、生産物をろ過し、酢酸、メタノール及び次にエーテルで洗浄した。収量6.6g(76%)
3. 6-[ビス(tert-ブチル-オキシカルボニル)グアニジノ]-ヘキサン酸N-ヒドロキシコハク酸イミドエステルの合成
【0189】
6-グアニジノヘキサン酸9.5g(55mモル)及びN,O-ビストリメチルシリルアセタミド55g(270mモル)をジクロロメタン100mL中で撹拌し、加熱還流して透明な溶液を得た(反応液を約10時間放置した)。この溶液にジ-tert-ブチルピロカルボネート46g(210mモル)を室温で加え、反応混合液を室温で18時間(一夜)撹拌後に3時間加熱還流した。次に溶液を室温にまで冷却し、10%クエン酸溶液及び塩化ナトリウム溶液で洗浄した。溶媒を留去後にピロカルボネートを真空下80~90℃で蒸留した。得られた粘性液体(30g)をN-ヒドロキシコハク酸イミド8.6g(75mモル)でジクロロメタン100mL中に溶解した。この反応混合液にジクロロヘキシルカルボジイミド(DCC)15.5g(75mモル)を室温撹拌しながら分割して加えた。17時間後に尿素をろ過して除去した。溶液を10%クエン酸溶液で洗浄し、溶媒を除去後、生産物をクロマトグラフィーにより精製した(シリカゲル、溶媒:ジクロロメタン/酢酸エチル)。次に生産物をジイソプロピルエーテルから結晶化した。収量6.0g(19%)、Rf:0.77(ジクロロメタン/酢酸エチル:3/1)、Fp:108~109℃
[実施例3]
実験プロトコール
【0190】
二対のTMT試薬を図18a及び18bに示す。これらの試薬は本発明タグであり、それらには、感応基([1]、[2]、[3])であるグアニジノ官能基に結合している1個の「タグ」アミノ酸、1個の「質量正規化」アミノ酸、及び二番目のタグ対では開裂促進基、すなわちこの場合([4])にはプロリンが包含されている。これらのタグは、衝突誘起解離(CID)によって分析する際にタグ断片が放出され、その結果特定の質量対荷電比のイオンが発生するようにデザインされている。現在認容されるモデルとしてCIDの間にペプチドが開裂するためには、ペプチド骨格がプロトン化し、プロトン化したアミドのカルボニル部分をそのペプチド鎖の次のN末端カルボニル残基が求核攻撃し、比較的に安定なオキサゾロンが形成され、その結果アミド結合が開裂するに至る必要がある([5])。感応エンハンサーはN末端メチオニン残基にアミド結合で連結しているが、このアミドでの開裂は行われない。理由は、この位置で環化を可能にし、かつ二つのメチオニン残基の間でのみ開裂が行われるように開裂を可能にする正確な位置にアミノ酸が存在しないからである。このことは、N末端メチオニンはグアニジノ感応基の質量によって第二のメチオニンと識別されることを意味する。したがって、各対のタグによって、一対のペプチドはMS/MS分析で識別可能である。個々のタグは、反応性官能基を持つこともできる。図では反応性官能基Rは特定されていないが、N-ヒドロキシコハク酸イミドエステルが可能であり、アミノ基を特定的に標識することができる。この反応性官能基を簡単に変えることによって別の生物学的求核基を標識することができるのは明らかである。更に、タグのデザインを変更することによってアフィニティーリガンド、例えばビオチンを適用させることができる。更に、3個以上のタグを作成すれば、更なるサンプルの比較あるいは標識標準の導入が可能になるのは明らかである。
【0191】
以下の実施例で表7にリストしたペプチドの合成は、あたかもそれらペプチドがαアミノ基上で上記タグにより完全に標識されていたようになっている、すなわちタグは合成の間に「予め編入されており」、タグの性能テストを標識化反応とは別個に行っている。したがって以下の実施例で図18a及び18bに示す「R」基はタグが付着したペプチド配列である。タグの付いたペプチドはESI-MS/MS及びLC-ESI-MS/MSで分析した。
【0192】
図18a及び18bにはTMTマーカーの二つのバージョンの構造が示されている。これらのタグは基本形であり、これら試薬を自動合成する際に個々の合成成分に対応する別々の官能成分を含有している。各タグには感応基と質量識別性基が含有されており、それらは一体となって「タグ断片」を構成し、これが実際には検知される。タグ断片は質量正規化基に結合しており、これによってタグ対の各タグが共有する全質量と原子組成は確実に同一になる。第一世代と第二世代のタグの区別は、第二世代のタグには更に開裂促進基プロリンが存在することである。これらのタグには更に反応性官能基(R)が含有されており、これによってタグは任意のペプチドに結合可能であるが、この実験ではRは多数のペプチド配列の一つになっている。マーカーから発生し、図18cに提案として示すタグ断片は、骨格プロトン化に依存する開裂メカニズムに関する現在の理論を基礎にしている([5])。
TMT標識ペプチドの合成
【0193】
図7に示すペプチドは従来の自動Fmoc合成技法を利用して合成した(共に市販品として入手可能なRapp Polymere, Germanyの Fmoc-Gly-Trt-PS樹脂から出発)。重水素メチオニン(Metd3)は、ISOTEC Inc, Miamisburg, Ohio, USAから入手可能である。ペプチド合成機で使用するFmoc- Metd3試薬は未保護重水素メチオニンから前述のごとく手技で合成した。グアニジノ「感応」促進基は前記のごとくN-ヒドロキシコハク酸イミドエステル(NHS-エステル)として合成し、自動ペプチド合成中に定法により合成ペプチドの未保護αアミノ基に添加した。
【表7】
【0194】
表7:存在度比率実験を上にリストしたペプチドで行った。上のリストの最初の三つのペプチド配列でHPLC実験を行った。第一及び第二いずれかのTMTをペプチド配列のN末端の位置に予め編入して合成ペプチド対を作成した。各タグについて主イオン種の配列、モノ同位体分子質量、及び質量対荷電比をリストしてある。
TMT標識ペプチドのMS/MS分析
【0195】
液体クロマトグラフィー質量分析法により分析を行なうに当たり、FinniganサーベイヤーHPLC システム(カラム: 50 x 2.1mm、5μm HyPURITY(商標) Elite C18)付のFinnigan LCQ Deca、及び LEAP Technologies のCap-LC HPLC システムのいずれか (カラム:内径75μm のDionex 製PepMap C18 HPLC カラムを使用、樹脂は粒径3μmでポア径 100A)付のMicromass Ltd, Manchester, UK 製QTOF 2を使用した。
【0196】
イオン存在度比率は、流出ペプチド対の多数のスペクトルを総計し平均を求め、次にタグ断片ごとにピーク強度の比率を求めて決定した。
[実施例3a]
第一及び第二世代TMTタグの比較
【0197】
開裂促進基を有するようにデザインしたタグの利点を示すために二つの異なるTMTデザインを検討した。これらのタグの相違は、第二世代タグにプロリンが包含される点である(図18a及び18b)。プロリンはアミド結合をそのN末端側で開裂するのを促進することが判っている([4])。
【0198】
マイクロマスQTOF2機器で第一世代TMTを開裂する最初の実験から、TMT断片の強度はペプチドのアミノ酸配列に大きく左右され、衝突エネルギーが低い場合にはタグ断片はタグを付けたペプチドの存在度を反映していないことが判った。図1cに示すごとく、予想したタグ断片のm/zは287及び290のいずれかであるが、第一世代タグでは観察した二番目のイオン対の質量対荷電比は270及び273のいずれかである。これらの断片は予想した断片からアンモニアが失われて生じたものと考えられる。第一世代タグで標識したペプチドの代表的なCIDスペクトルの例を図19に示す。衝突エネルギーが低い場合には、これら二つの断片クラスの強度はタグを付けたペプチドの配列に応じて変動するが、CIDエネルギーが高い場合には270/273断片が専ら観察された。このように衝突エネルギーが高い場合には270/273タグ断片によってペプチド対の存在度が正確に反映された。FinniganのLCQイオン捕捉質量分析計を使用した追加実験でも、第一世代TMTユニットについての開裂パターンはQTOFと同一であった。LCQ実験でもQTOF実験でもアンモニア消失が起こるのが観察された。これらの機器はCIDを実施する方法が相違している(LCQでは親イオンのみを選択的に活性化し開裂するのに対してQTOFでは全てのイオンを連続的に開裂する)。 アンモニアの消失は両機器ともに行われることから、アンモニアの消失は親ペプチドイオンから直接に行われるのであって、引き続いて起こる予想断片イオンの衝突の結果ではなく、これはこのタグ構造の本来の特徴であることが示唆される。両機器ともに衝突エネルギーが高くなる程270/273断片の出現が有利になる。このことから、このタグから一貫した結果を得るためには分析を行う衝突エネルギーは高くなければならないことが判った。
【0199】
CIDの選択性はLCQの方が大きいが、残念ながらこの機器はTMTでの使用に制限がある。その理由はこの型の機器では前躯体が大きい程CIDによる小さな開裂生産物の検出ができないからである。しかし、QTOF機器では、衝突エネルギーを高くする程、連鎖開裂が問題になる。QTOFでは、b及びyいずれかのイオン断片のシリーズから配列情報が得られるので、これらが更に開裂すると得られる種が更に小さくなり、その結果ペプチド由来の配列情報が得られなくなる。タグ断片を確実に放出させ、正確な定量結果を得るためにエネルギーの高いCIDを必要とする結果として、第一世代のTMTを信頼して使用できるのは、QTOFにおいてペプチドを同定せずに定量する目的の場合だけである。このことは他の連続MS/MS機器にも当てはまる。
【0200】
図19a及び19bは、第一世代TMTで標識したペプチドの代表的なCIDスペクトルで、衝突エネルギーが40V(図19a)及び70V(図19b)の場合を示す。19aでは、270/273及び287/290領域の両方に40Vで弱いピークが見られるが、これらはタグ付きペプチドの存在度を正確に表現していない。この加速電位であっても配列特異的なyシリーズイオンを若干観察することができる。19bでは、衝突エネルギー70Vでの第一世代TMTに対して、タグ断片に対応したピークがm/z270及び273に明瞭に見られる。この衝突エネルギーでは、これらピークの強度は各ペプチドの相対的な存在度を正確に表現している(図19bのタグ領域をズームするための挿入図を参照)が、配列データを決定することはできない。
【0201】
これらの結果から第二世代のTMTの開発に到達するが、このTMTユニットには開裂を促進するためにプロリン残基がある。第二世代タグにおけるプロリンの効果を定量するために、第一及び第二世代タグで標識したペプチドの50:50混合物をMS/MSにより分析した。得られた二つのペプチドの配列は、グアニジノカプロイル-Met(D3)-Met-GLGEHNIDVLEGNEQFINAAK及びグアニジノカプロイル- Met(D3)-Pro-Met-GLGEHNIDVLEGNEQFINAAKであり、それぞれ第一及び第二世代タグに対してほぼ897及び929の質量対荷電比の位置に [M+3H]3 +に対応するイオンを示した。両前駆体に対し衝突条件を同一にするために最初にこれらペプチドを混合し、次に4重極を897及び929いずれか周辺のm/zを有するイオンを交互に選択するように設定されたQTOF機器で分析した。各選択イオンは増加衝突エネルギーCIDを加えられた。
【0202】
衝突エネルギーが20V以下では開裂はTMTのいずれの型でも全く観察されなかった。衝突エネルギーが30V~35Vでは、第二世代タグの付いたペプチドでは予想したTMT断片イオンをCIDスペクトルのm/zが290の位置に見ることができるのに対し、第一世代タグの付いたペプチドではm/z が290の位置に弱いピークが見られるものの、m/zが273の断片イオンを同じエネルギーでのスペクトルに見ることができない、図20参照。第一世代TMTを含有するペプチドのタグ断片は、使用する衝突エネルギーを70Vにするまで観察されない(データは示してない)。第一世代TMTで標識するペプチドが小さい程、低いエネルギーでタグ断片が生じたが、ペプチドが大きくなる程、それからタグ断片を放出させるためには高い衝突エネルギーが必要であった。ペプチドの大きさがタグ断片の放出に必要なエネルギーに依存する程度は、第二世代TMTの方が遥かに小さかった。プロリン含有TMTで標識したペプチド及びプロリンのないTMTで標識したペプチドに由来するCIDスペクトルを比較すると、プロリンアミノ酸を開裂エンハンサーとして導入すれば、極めて高い衝突エネルギーに頼らなくても予想するTMTタグ断片が得られる開裂になることが明らかに判る。このようにエネルギーが低い程、プロリン含有TMTからのTMT断片イオンの存在度比率が同様にタグ付きペプチドの濃度比率を正確に反映する。更に、このようにエネルギーが低い程、b及びyシリーズによるペプチドの同定も行うことができる。
【0203】
図20a、20b及び20cは、第一及び第二世代TMTで標識したペプチド2(表7参照)の三連荷電イオンに対するMS及びMS/MSスペクトルを示す。これらのペプチドをQTOFII機器で分析した。図20aは、ペプチド混合物のMSモードでのTOFスペクトルを示す。CIDのために、m/z が897及び929のいずれかの周辺にあるイオンを別々に選択するように1番目の四重極を設定した。グアニジノカプロイル- Met(D3)-Met-GLGEHNIDVLEGNEQFINAAKに対する35VでのCIDスペクトルは図20bに示してあり、またグアニジノカプロイル- Met(D3)-Pro-Met-GLGEHNIDVLEGNEQFINAAKの35VでのCIDスペクトルは図20cに示してある。図20bにおいてm/zが273の位置での予想されるタグ断片の存在は第一世代TMTでは検出されないが、図20cにおいて290の位置での予想されるタグ断片が第二世代の35Vで明瞭に観察される。
【0204】
第二世代TMTの改良された対応は、これらタグで標識したペプチドの代表的なCIDスペクトルを示す図21に見ることができる。存在度比率を表すタグ断片は予想されるm/z値が287及び290である位置に容易に見られる。更に、bシリーズ及びyシリーズの両方によってペプチドの配列が決定可能であることが理解できる。CIDを40Vという比較的に低い衝突エネルギーで行った。40Vでの第二世代TMTに対する287及び290のm/z位置でのピークは各ペプチドの相対的な存在度を表している(質量スペクトルの関連領域をズームした挿入図を参照)。
【0205】
図22から、TMTをタグしたペプチドの荷電状態は、タグ断片が標識ペプチドのCIDスペクトルに出現することに影響を及ぼさないことが判る。この実施例では、第一世代TMTで標識したペプチドを示しているが、同じ結果は第二世代タグでも見出される。これは有利なことでる。その理由は、スペクトルを走査する際に各ペプチドの荷電状態を補正するために走査用ソフトウエアを複雑に調節しなくてもよいということを意味するからである。同位体をタグする他の方法、例えばICATでは、タグ付き各イオン対の間の質量差は荷電状態によって変動し、二重荷電のイオンでの質量差は一重荷電のイオンでの質量差の半分になり、三連荷電のイオンでの質量差は同じく三分の一になる。したがって、通常の同位体標識法を使用しているペプチド対を走査するソフトウエア、例えばICATではこういった種類の問題を補正する必要があり、そのために質量差が変異する可能性を容認したり、あるいは或るクラスのイオンを無視したりするが、これによってペプチド対の同定を誤る恐れが増大し、あるいは有用な情報を提供する筈の潜在的なイオン対が見失われる。
【0206】
図22には、CIDを行った表7のペプチド4について、その[M+4H]4 +(下方スペクトル)及び[M+5H]5 +(上方スペクトル)種のスペクトル比較が示されている。上のペプチドには第一世代TMTが含有されている。4+イオンのm/zは969.3であり、5+イオンのm/zは775.6である。タグ断片イオンは両スペクトル共に予想した質量対荷電比273に出現していることから、タグ断片に局在している荷電は唯1個であることが示唆される。
【0207】
図23は、表7にリストした4個のペプチドのESI-MS/MS分析からの予想比と観測比のデータを示す。第一世代及び第二世代のTMTを両方編入したペプチドを分析した。TMT2について290及び287の位置でピークを正規化した後に、タグ断片イオンピークのd3(A)及びd0(B)の位置でピークの最大値を分析して存在度比率を決定した。QTOFで測定を行った。図23の挿入表は、流出TMT標識ペプチドのMS/MS分析から得たbイオン断片の予想比と観察比を示す。混合物中のペプチドの存在度比率は両世代のTMTによって正確に表示されており、またペプチド比率をテストした全範囲に渉ってタグは直線的な対応を示すことが見られる。
[実施例3b]
TMTタグはLC-MSにおいて同じクロマトグラフ対応を呈することの証明
【0208】
4対の合成ペプチドの混合物を、第二世代TMTユニットを各ペプチドのN末端に予め編入して合成した。ペプチド対を全て一緒に分析した。作成した各ペプチド対の比率は異なる。配列、モノ同位体の理論質量、二重荷電イオンの質量を表7に示す。ペプチド群をC-18逆相HPLCカラムに負荷し、分離した。この実験の目的は、別々のTMTタグを持つペプチド対が他になんらかの相違なく、正確に共溶出することを証明することである。ペプチド対の予想した比率はペプチド対ごとに全溶出時間に渉って一定であることが見出され、したがってこの実験の別の目的は、配列決定と同時にペプチド対の定量を行うことができること、及びペプチドが完全に溶出するのを待たずに他のペプチドを走査することができることを示すことであった。ICATを用いる方法での性格な定量化及び、従来の同位体標識を用いる他のペプチド分析技術にはペプチド対の完全な溶出が必要である。これにより、これらの手法の処理量は大きく制限される。
【0209】
図24は、各ペプチド対、表7の各ペプチドに対するペプチドA及びBの共溶出を示し、それはC-18逆相HPLCのトレースに明瞭に見える。各ペプチドに対し、m/zが287及び290でのイオン流を各TMTに由来するタグ断片に対応して記録してある。各ペプチドの下端トレースは全イオン流である。三つのペプチドの溶出プロファイルであって、タグ断片由来b2イオンの各質量対荷電比でモニターしたものを示す。ペプチド対は単一の画分として溶出しているのが明瞭に見られる。MS/MSモードでタグ断片イオンをモニターするとケース毎に実質的に同じ結果が得られる。ペプチド対毎に観察比は予想比に妥当な程度で一致した。
【0210】
タグを付したペプチドは正確に共溶出するので、ペプチド対の比率は溶出プロファイルを通じて一定であり、このことは、溶出イオンにより各ペプチド対の相対存在度を決定するには、全イオン流を総和する必要がないことを意味する。
[実施例3c]
TMT技法の感度及び粗度の分析
【0211】
TMT技法によって通常の同位体標識を越える効果的な改善が得られるためには、他の同位体標識法と比較してTMT技法の感度が少なくとも同等でなければならず、また動的範囲が広範囲に類似でなければならない。更にタグの特性が分析サンプルの予想される動的範囲全体に渉って一定でなければならない。つまりは、これらのタグは質量分析計のノイズを克服することができることを証明しなければならない。システムの動的範囲をテストし、またTMTタグの特性が全動的領域に渉って一定であることを示すために、一つのタグ付き合成ペプチド(ペプチド3A及び3B)の濃度をある範囲で変化させた場合にペプチド比が変わるか否かを検討した。ペプチド3A及び3Bを40:60の比率で混合し、濃度を100ピコモルから100フェムトモルまで連続的に希釈した場合に、図25からわかるようにこの比率は確実に一定に保持され、予想された比率からの偏差は殆どのケースで5%以内であった。こうした結果を他の結果(示してない)と合わせると、ペプチドを検出するMS/MSモードの本来の感度がタグペプチドによって低下しないこと、すなわちTMT標識ペプチドのCIDによる分析感度はタグのないペプチドのMS/MSと本質的に同一であることが判る。小さいペプチドの分析でLCQとQTOFを比較した結果に基づくと本来の感度は機器に特異的なものと思われる(TMTで標識した大きなペプチドに由来するタグ断片はLCQ上には検出することができない。その理由はこの型の機器でCIDを行うには本来的な制約があるからである)。タグ付きペプチドの配列を決定可能にする感度が、これまでテストしたペプチドのいずれにおいても有意に変動したとは思われない。ペプチド比になにか意味のある差があればそれはテストした全濃度範囲に渉って検出することができる(図25)。
【0212】
図26a、26b及び26cは、スパイク実験の結果であり、第二世代TMTを含有するペプチド対3A及び3B(それぞれ比率40:60、全濃度500フェムトモル)をウシ血清アルブミンのトリプシン消化液(2ピコモル)と混合した。図26aはMSモードでの分析に由来する基底ピークのクロマトグラムを示す。MSモードで分析された最初の5個の最も強度の大きいイオンはMS/MSモードの30Vで自動的に開裂された。TMTペプチド対を探査したところ、基底ピークのクロマトグラムの上に存在していた。次にTMT断片の質量対荷電比(287及び290)でのd0及びd3の強度を比較し、それによってTMT断片の比を質量[M+3H]3 +のMS/MSスペクトルから計算した (タグ断片のズームは図9bに示してあり、また全スペクトルは図9cに示してある)。
【0213】
別の実験では、混入ペプチドが存在する背景で標識ペプチドを検出できるか否かを検討した。第二世代TMTを含有するペプチド対3A及び3Bをウシ血清アルブミンのトリプシン消化液20倍過剰と混合した。次にペプチド混合液をLC-QTOF機器で分析した。各流出走査物に由来する5個の最も強度の大きいイオンをCIDに通し、ペプチドを同定した。予想したペプチドが検出され、またタグ断片に対応するスペクトル範囲を分析し、検出したペプチドの存在度比率を決定した。CID(衝突エネルギー30V)による分析から図26cに示すスペクトルが得られた。断片イオンの質量対荷電比290(d3TMTユニット)及び287(d0TMTユニット)でのピーク強度を比較し、それによってペプチド3A及び3Bの比率がそれぞれ39.3%対60.7%であることを見出した。予想される比率は3Aの40%に対し3Bの60%であるから、ペプチド比の検出誤差は1.7%である。
MS/MSスペクトルは低い衝突エネルギーを使用して得られるので品質がよく、したがってデータベース調査をすればこのスペクトルによってペプチド配列を明瞭に同定することができる。この実験から、トリプシン消化ペプチドが複雑に混合していても第二世代TMTタグで標識したペプチド対の分析は妨害されないこと、またTMTはサンプル中のノイズを克服するのに役立つことが明瞭に判る。更に、なにかの抑制問題があるようには思われない、すなわちペプチドの存在濃度が低く、他のペプチドの存在濃度が高い場合でも該ペプチドの比率を決定することができる。
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【図面の簡単な説明】
【0214】
【図1】図1は、リジンから誘導した質量タグ3種類のセットを示す図である。
【図2】図2は、アラニンから誘導した質量タグ5種類のセットを示す図である。
【図3】図3は、アラニン及びチロシンから誘導した質量タグ5種類のセットを示す図である。
【図4】図4は、フッ素化型フェニルグリシンから誘導した質量タグ4種類のセットを示す図である。
【図5】図5は、フッ素化型フェニルグリシン及びフェニルアラニンから誘導した質量タグ4種類のセットを示す図である。
【図6a】図6aは、炭水化物標識用のヒドラジド官能基でメチオニンから誘導したアフィニティーリガンド質量タグ2種類のセットを示す図である。
【図6b】図6bは、炭水化物標識用のボロン酸官能基でメチオニンから誘導したアフィニティーリガンド質量タグ2種類のセットを示す図である。
【図7】図7は、デヒドロアラニン及びメチルデヒドロアラニン残基標識用のチオール官能基でメチオニンから誘導したアフィニティーリガンド質量タグ2種類のセットを示す図である。
【図8】図8は、遊離チオール標識用のマレイミド官能基でメチオニンから誘導したアフィニティーリガンド質量タグ2種類のセットを示す図である。
【図9a】図9aは、FMOC保護、重水素置換メチオニン残基の調製用の合成経路を示す図である。
【図9b】図9bは、増感剤として作用できる反応性リンカーの調製用の合成経路を示す図である。
【図10】図10は、本発明の特徴を証明するために合成した各種同位体型メチオニンから誘導した1対のペプチド例を示す図である。
【図11】図11は、図10に示すペプチド2個の混合物の電気スプレー質量スペクトルを示す図である。
【図12】図12は、図10に示すペプチド2個それぞれの開裂の電子スプレースペクトルを示す図である。
【図13】図13は、図12及び図14に示すスペクトルの原因となり得る仮定上の開裂メカニズムを示す図である。
【図14】図14は、図10に示すペプチド2個の70:30混合物の開裂の電子スプレースペクトルを示す図である。
【図15】図15は、ペプチドA及びB混合物(図10)の一連のESI-MS/MS分析で認められた当該ペプチドA及びBの実測比に対する当該ペプチドA及びBの予想比を示すグラフを示す図である。
【図16a】図16aは、開裂メカニズム案を示す図である。
【図16b】図16bは、開裂メカニズム案を示す図である。
【図16c】図16cは、開裂メカニズム案を示す図である。
【図17a】図17aは、開裂可能アミド結合での開裂増強を発揮するタグを示す図である。
【図17b】図17bは、開裂可能アミド結合での開裂増強を発揮するタグを示す図である。
【図17c】図17cは、開裂可能アミド結合での開裂増強を発揮するタグを示す図である。
【図17d】図17dは、開裂可能アミド結合での開裂増強を発揮するタグを示す図である。
【図18a】図18aは、2種類のTMTマーカーの構造を示す図である。
【図18b】図18bは、2種類のTMTマーカーの構造を示す図である。
【図18c】図18cは、図18bに示すTMTマーカーの開裂断片として生じるイオンの構造を示す図である。
【図19a】図19aは、衝突エネルギー40Vでの第一世代TMTで標識したペプチドの典型的CIDスペクトルを示す図である。
【図19b】図19bは、衝突エネルギー70Vでの第一世代TMTで標識したペプチドの典型的CIDスペクトルを示す図である。
【図20a】図20aは、第一及び第二世代TMTで標識したペプチド2 (表7参照)の3価荷電イオンのMS及びMS/MSスペクトルを示す図である。
【図20b】図20bは、第一及び第二世代TMTで標識したペプチド2 (表7参照)の3価荷電イオンのMS及びMS/MSスペクトルを示す図である。
【図20c】図20cは、第一及び第二世代TMTで標識したペプチド2 (表7参照)の3価荷電イオンのMS及びMS/MSスペクトルを示す図である。
【図21】図21は、第二世代TMTで標識したペプチド(表7のペプチド2)の典型的CIDスペクトルを示す図である。
【図22】図22は、TMTタグ化ペプチドが標識ペプチドのCIDスペクトル中のタグ断片の出現に影響しないことを示す図である。
【図23】図23は、第一及び第二世代両タグに関する予想及び実測組成比のペプチド混合物を示す図である。
【図24】図24は、表7の各ペプチドに関する各ペプチド対、ペプチドA及びBの同時溶出を示す図である。
【図25】図25は、TMTペプチド対3A/3Bの動的範囲試験を示す。当該ペプチド対は、40:60の比率で存在し、100 fmolから100 pmolの範囲の希釈濃度で分析した図である。
【図26a】図26aは、第二世代TMTを保持したペプチド対3A及び3B(それぞれ比率40:60で、合計500 fmol)をウシ血清アルブミン(2 pmol)のトリプシン消化物と混合したスパイク実験の結果を示す図である。
【図26b】図26bは、第二世代TMTを保持したペプチド対3A及び3B(それぞれ比率40:60で、合計500 fmol)をウシ血清アルブミン(2 pmol)のトリプシン消化物と混合したスパイク実験の結果を示す図である。
【図26c】図26cは、第二世代TMTを保持したペプチド対3A及び3B(それぞれ比率40:60で、合計500 fmol)をウシ血清アルブミン(2 pmol)のトリプシン消化物と混合したスパイク実験の結果を示す図である。
Claims (42)
- アミノ酸を含む質量マーカー部と、少なくとも1個のアミド結合を有し開裂可能なリンカーと、アミノ酸を含む質量正規化部とを有してなる質量標識体を2以上含み、該質量標識体の全体質量が同一及び非同一のいずれかであり、前記質量マーカー部の質量が同一及び非同一のいずれかであり、質量が共通である質量マーカー部を有する質量標識体のグループにおいて各質量標識体が該グループ内の他の全ての質量標識体とは異なる全体質量を有しており、全体の質量が共通である質量標識体のグループにおいて各質量標識体の質量マーカー部が該グループ内の他の全ての質量標識体における質量マーカー部とは異なる質量を有しており、各質量標識体は質量分析法における分析において互いに識別可能である質量標識体セット。
- 各質量標識体における質量マーカー部の質量が互いに同じであり、各標識体における全体質量が互いに異なる請求項1に記載の質量標識体セット。
- 各質量標識体における質量マーカー部が互いに異なり、各質量標識体における全体質量が互いに同じである請求項1から2のいずれかに記載の質量標識体セット。
- 各質量マーカー部が互いに共通の構造を有し、またセット中の各質量正規化部が互いに共通の構造を有し、各質量標識体が、更に質量アジャスター部を有し、該質量アジャスター部が、前記質量マーカー部及び前記質量正規化部の少なくともいずれかに隣接して、並びに、前記質量マーカー部及び前記各質量正規化部の少なくともいずれか内に、いずれかに存在する請求項3に記載の質量標識体セット。
- 各質量標識体が次の構造を有する請求項4に記載の質量標識体セット。
M(A)y-L-X(A)z
式中、Mは、アミノ酸を含む質量正規化部を表し、Xは、アミノ酸を含む質量マーカー部を表し、Aは、質量アジャスター部を表し、Lは、アミド結合を含む開裂可能リンカーを表し、y及びzは、0以上の整数を表し、y+zは、1以上の整数を表す。 - 質量アジャスター部が、
(a)質量マーカー部及び質量正規化部の少なくともいずれかに存在する同位体置換基、並びに、
(b)質量マーカー部及び質量正規化部の少なくともいずれかに隣接する、置換原子及び置換基のいずれか
から選択される請求項4から5のいずれかに記載の質量標識体セット。 - 質量アジャスター部が、ハロゲン原子置換体、メチル基置換体、2H同位体置換体及び13C同位体置換体から選択される請求項6に記載の質量標識体セット。
- 質量アジャスター部が、フッ素原子置換体である請求項7に記載の質量標識体セット。
- リンカーが衝突誘発解離によって開裂可能であり、該リンカーの一端に質量マーカー部が結合し他端に質量正規化部が結合する請求項1から8のいずれかに記載の質量標識体セット。
- リンカーが、プロリン及びアスパラギン酸の少なくともいずれかを含む請求項1から9のいずれかに記載の質量標識体セット。
- 質量マーカー部及び質量正規化部の少なくともいずれかが、開裂抵抗基を含む請求項1から10のいずれかに記載の質量標識体セット。
- 質量マーカー部が、感受性増強基を含む請求項1から11のいずれかに記載の質量標識体セット。
- 質量マーカー部及び質量正規化部のいずれかが、反応性官能基を含む請求項1から12のいずれかに記載の質量標識体セット。
- 各質量標識体が、アフィニティー捕捉リガンドを含む請求項1から13のいずれかに記載の質量標識体セット。
- 異なる2以上の分析対象物質を含み、該2以上の分析対象物質に、請求項1から14のいずれかに記載の質量標識体セット中の質量標識体であって互いに異なるものがそれぞれ付着してなることを特徴とする分析対象物質セット。
- 分析対象物質の質量及びクロマトグラフィー特性のいずれかが既知である請求項15に記載の分析対象物質セット。
- 異なる2以上のプローブを含み、該2以上のプローブに、請求項1から14のいずれかに記載の質量標識体セット中の質量標識体であって互いに異なるものがそれぞれ付着してなることを特徴とするプローブセット。
- 各分析対象物質及びプローブのいずれかが、質量標識体の独自な組合せに付着しており、各組合せが質量標識体セット中の各質量標識体の有無及びプローブに付着させた各質量標識体の量の少なくともいずれかによって識別される請求項15から17のいずれかに記載の分析対象物質セット及びプローブセット。
- 各分析対象物質及びプローブのいずれかが、生体分子を含む請求項15から18のいずれかに記載の分析対象物質セット及びプローブセット。
- 生体分子が、DNA、RNA、オリゴヌクレオチド、核酸塩基及びタンパク質、並びにアミノ酸の少なくとも一種から選択される請求項19に記載の分析対象物質セット及びプローブセット。
- 分析対象物質と関連付け得る質量標識体及び質量標識体の組合せのいずれかを質量分析法で同定することによって分析対象物質を検出することを含む分析方法であって、該質量標識体が、請求項1から14のいずれかに規定した質量標識体セットにおける質量標識体であることを特徴とする分析方法。
- 使用する質量標識体が、アフィニティー捕捉リガンドを含む標識体であり、該アフィニティー捕捉リガンドをカウンターリガンドで捕捉することにより、標識分析対象物質を未標識分析対象物質から分離する請求項21に記載の分析方法。
- 2以上の分析対象物質を、質量分析法でそれらの質量標識体及び質量標識体の組合せのいずれかを同時に同定することによって検出する請求項21から22のいずれかに記載の分析方法。
- 各分析対象物質を質量標識体セット及び系列のいずれかからの独自の組合せによって同定し、各組合せを該セット及び系列いずれか中の各質量標識体の有無及び各質量標識体の量の少なくともいずれかによって識別する請求項21から23のいずれかに記載の分析方法。
- 2以上の分析対象物質を同定する方法であって、該分析対象物質を、質量分析法でその質量標識体を検出する前にその質量に応じて分離する請求項21から24のいずれかに記載の分析方法。
- 同定する分析対象物質を、使用する分離法において質量及び性状のいずれかが既知の1以上の標準分析対象物質と混合し、分析対象物質の特徴分析を容易にする請求項25に記載の分析方法。
- 標準分析対象物質が、請求項16で規定したとおりである請求項26に記載の分析方法。
- クロマトグラフィー法及び電気泳動法のいずれかによって分離を実施する請求項25から27のいずれかに記載の分析方法。
- 質量標識体の検出に使用する質量分析計が、1以上の質量分析器からなり、該質量分析器が特定の質量及び質量範囲のイオンのいずれかを検出のために通過させる、並びに、イオンを解離させる、少なくともいずれかを可能にする請求項21から28のいずれかに記載の分析方法。
- 1以上の既知質量標識体に特異的な特定の質量及び質量範囲のいずれかのイオンを質量分析器によって選択し、選択したイオンを解離させ、解離生成物を検出し、選択した質量標識体を示唆するイオンパターンを同定する請求項29に記載の分析方法。
- 質量分析計が、3連四重極質量分析器からなる請求項29から30のいずれかに記載の分析方法。
- 第1質量分析器を使って、特定の質量及び質量範囲のいずれかのイオンを選択し、第2質量分析器を使って選択したイオンを解離させ、第3質量分析器を使って、得られたイオンを検出する請求項31に記載の分析方法。
- 方法が以下の段階からなる請求項21から32のいずれかに記載の分析方法。
(a)1以上の分析対象物質を、プローブセットと接触させ、その場合、該プローブは請求項17から20のいずれかで規定した通りであり、
(b)分析対象物質を、該分析対象物質に関連付け可能なプローブを検出することにより同定する。 - 質量標識体を質量分析法で検出する前に、該質量標識体をプローブから開裂させる請求項33に記載の分析方法。
- 1以上の核酸をハイブリダイゼーションプローブセットと接触させる請求項33から34のいずれかに記載の分析方法。
- 分析方法における、請求項1から14のいずれかに規定した質量標識体セットに由来する質量標識体の使用。
- 2次元電気泳動分析法における請求項36に記載の質量標識体の使用。
- 2次元質量分析法における請求項36に記載の質量標識体の使用。
- 1以上の核酸の配列決定法における請求項36から38のいずれかに記載の質量標識体の使用。
- 遺伝子発現プロファイリング法における請求項36から38のいずれかに記載の質量標識体の使用。
- タンパク発現プロファイリング法における請求項36から38のいずれかに記載の質量標識体の使用。
- 核酸分類法における請求項36から38のいずれかに記載の質量標識体の使用。
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