JP2010509569A - タンパク質ラベリングにおけるアリールボロン酸の使用 - Google Patents

タンパク質ラベリングにおけるアリールボロン酸の使用 Download PDF

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Abstract

本発明は、アリールボロン酸タグ付け試剤によるポリペプチド中のヒスチジンのタグ付けに関する。本発明は、一つのタンパク質サンプル又はタンパク質サンプルのプールからヒスチジン含有ペプチドを単離して同定することによってサンプル中のタンパク質を同定するための方法及び装置をさらに説明する。本発明は、コンピュータで切断されたタンパク質からのヒスチジン含有ペプチドのデータベース及びタンパク質の同定におけるそれらの使用をさらに説明する。質量のみで同定できない場合は、ペプチドの質量以外の少なくとも一つ以上の物理化学的特性が考慮される。

Description

本発明は、切断されたタンパク質の混合物からのペプチドの選択的な単離を可能にする、質量分析を用いたタンパク質サンプルの同時分析のための方法に関する。本発明はさらに、ペプチドを精製するための技術及び質量分析データのデータ解析に関する。
プロテオーム方法(proteomic method)による複合タンパク質サンプル(組織サンプルや、血清又は尿のような体液)の分析のために、サンプルは、一般にペプチドへと切断され、ペプチドは、質量分析によって分離されて分析される。そのような「ショットガン」アプローチにおいて克服されなければならない最大の問題は、切断されたペプチドの混合物の複雑性の低減である。現在使用されている質量分析測定器による分析に適した断片を用意するためにタンパク質分解酵素によってタンパク質を消化することによって(これらの装置の最適な解析範囲は2000 - 4000m/zのオーダーである)、分析されるべき分子の数は、元のサンプルと比べて劇的に増加する。混合物中の異なるペプチドが切断に応じて同じペアレントタンパク質に由来するので、これらのペプチドの全ての分析は、場合によっては冗長である可能性がある。一方、同じタンパク質に対応するいくつかのペプチドの分析は、ペアレントタンパク質の同定における更なる確認として用いられることができる。
しかしながら、いくつかの分析では、タンパク質に由来する全てのペプチドが分析される必要はない。サンプル中の特定のタンパク質の存在を同定するためには、多くの場合、一つ又は数個のペプチドで十分である。切断後のペプチドの数を低減するために、アミノ酸の異なる官能基が、選択的に特定のペプチドを単離する又はラベル付けするために用いられている。この目的のために適切であると記載された官能基は、システインのチオール基、アスパラギン酸、グルタミン酸及びカルボキシ末端のカルボキシル基、リシン及びペプチド自体のアミノ末端のアミン基である。
システインは、選択的なペプチドの単離又はラベリングのためにプロテオミクスにおいて官能基として、しばしば用いられる。それは、全てのタンパク質の約85%に存在し、平均するとポリペプチドの中で約2〜3%の頻度で見出される。したがって、タンパク質サンプルのシステイン含有ペプチドだけの分析が、タンパク質プール全体の適切な見本とみなされた。さらに、システインのチオール基は任意の他のアミノ酸には存在せず、特異的なタグ付け又はラベリングを可能にする。しかしながら一つの欠点は、タンパク質内のシステイン残基がしばしば、タンパク質の三次構造又は四次構造の一因となり多くの場合ペアで存在するジスルフィド架橋を形成することである。したがって、ペプチドにラベル付けするためのシステインの使用は、同じタンパク質からの少なくとも2つのペプチドにしばしばラベル付けして、冗長な情報を生成する。さらに、システイン残基は、タンパク質の構造に関与するタンパク質の領域中にしばしば位置する。そのような領域は、異なる機能を有するタンパク質の間で、しばしば保存される。したがって、そのシステイン含有ペプチドに基づくタンパク質の明確な同定は難しい場合がある。システインの更なる欠点は、タンパク質中のシステインの発生頻度は比較的高いが、その分布が幾分一様でないことである。数多くのシステインリッチなタンパク質が存在するが、全てのタンパク質がシステインを含むというわけではない(例えばリボソームタンパク質)。したがって、いくつかのタンパク質は、システインに誘導されるタグ付け又はラベリングによって見落とされ、一方、他のタンパク質は過剰に示される。最後に、サンプルの処置の間、システイン残基は酸化する場合がある。そのような酸化されたアミノ酸は、チオール特異的タグ付け又はラベリングのためにもはや用いられることができない。
ヒスチジンのイミダゾール基(タンパク質中の他の固有の官能基)は、金属に対するその固有の親和性に基づいて親和性クロマトグラフィのために広く用いられているが、タンパク質修飾のためのターゲットとしては滅多に用いられない。
ヒスチジンでラベル付けされた生体分子は、一般的に6つのヒスチジン残基の末端を含み、固定化金属イオン親和性クロマトグラフィ(Immobilised Metal ion Affinity Chromatography: IMAC)によって精製される。正しい構成で複数のヒスチジン、システイン又はトリプトファンを含む人工的に追加された又は天然に存在する配列を有するタンパク質は、共有結合性のキレート化された金属イオンを含むカラムマトリクスに結合されることができる。最も一般には、Niキレートクロマトグラフィが、親和性クロマトグラフィにおけるマトリクスとして、タンパク質のN末端又はC末端に一つ以上のHis6タグを有する融合タンパク質として表現された組み換えタンパク質を精製するために用いられる。一般的に、ニッケルイオンは、ニトリロトリ酢酸基を介してカラムマトリクスに取り付けられて、水と交換でタグ付けされたタンパク質中のヒスチジン残基と相互作用する。溶出は、増加するイミダゾール濃度の勾配を用いて、又は段階的な手法で引き起こされる。Ni2+は別として、他の金属イオン(例えばCu2+、Zn2+、Co2+、Fe3+、Hg2+)がIMACのために重要である。
トリプシン分解物からのヒスチジン含有ペプチドの選別のためのIMACの使用は、Mirzaei & Regnier (2005) J. Chrom. B 817, 23-34において概説される。イミダゾール基を介して抗体に診断シェルを結合させるためのアリールボロン酸の使用はWO2006064451に記載され、Collman et al. (2001) J. Org. Chem. 66, 1528-1531に記載される銅触媒による反応に基づく(図1参照)。ボロン酸は、pH8.0以上で糖質のシスジオール基に共有結合する試剤として、医療分野において知られている。ボロン酸で修飾されたペプチドの使用は、セリンプロテアーゼの阻害に対して記載される。
本発明は、ヒスチジン含有ペプチドに共有結合でタグ付けして、オプションとしてヒスチジン含有ペプチドにラベル付けして、そして、液体クロマトグラフィのような分離技術によって複合タンパク質混合物からそれらを後続の分析に適用する前にヒスチジン含有ペプチドを選択的に単離し、その後、スペクトル質量分析を行うツール及び方法を提供する。本発明の方法及びツールによって提供される一つの利点は、タンパク質サンプルのタンパク質分解切断の後のヒスチジン含有ペプチドの単離によって、各々のタンパク質は限られた数のペプチドによって表され、分析されるべきサンプルの複雑性を大幅に低減するが、元のタンパク質サンプルのタンパク含有量に関する重要な情報を失わないことである。
本発明の方法及びツールの他の利点は、プロテオームの全てのタンパク質のヒスチジン含有ペプチドが、ゲノム配列が決定された生体(例えばヒト及びマウスやラットのような複数のモデル生体)に対して知られている(又は導き出されることができる)ことである。これらのペプチドの正確な分子量は予測されることができ、MSにおいて信号を生成するペプチドの同定及びオプションとしてペアレントタンパク質の同定をサポートするのに用いられることができる。
本発明の特定の及び好適な態様は、添付の独立及び従属請求項において述べられる。従属請求項からの特徴は、適切に、単に請求項において明示的に述べられるようにのみでなく、独立請求項の特徴及び他の従属請求項の特徴と組み合わせられることができる。
本発明の第1の態様は、ヒスチジン含有タンパク質又はペプチドに親和性タグを共有結合する方法に関する。この方法は、銅触媒の存在下で、一般的な構造(I)(Aは親和性タグ、Bはホウ素、Lはオプションのリンカー)を有する化合物であるタグ付け試剤にタンパク質又はペプチドを接触させるステップを含む。
Figure 2010509569
この方法の一つの実施の形態によれば、一般的な構造(I)を有する化合物は、芳香環において、ハロゲン、アルコキシ基又はアルキル基によってさらに置換される。
本発明の方法の特定の実施の形態において、親和性タグAはビオチンである。
この方法の特定の実施の形態によれば、タグ付け試剤は、化学式(II)を有する分子である化合物である。
Figure 2010509569
この方法の他の特定の実施の形態によれば、タグ付け試剤は、化学式(III)を有する化合物である。
Figure 2010509569
本発明の方法のさらに特定の実施の形態によれば、一般的な化学式(I)を持つタグ付け試剤、より詳しくは(II)又は(III)に対応する一般的な構造化学式を持つタグ付け試剤は、さらにラベルを有する。特定の実施の形態によれば、タグ付け試剤に存在するラベルは、一つ以上の重元素同位体から成る。
本発明の更なる態様は、タンパク質サンプル又はプールされたタンパク質サンプルの混合物からヒスチジン含有ペプチドを単離するための方法に関し、当該方法は、(a) 切断試剤によってタンパク質サンプル中の無処置タンパク質(intact protein)をペプチドへと切断するステップ、(b) ペプチド中に存在するヒスチジンとのアリールボロンタグ付け試剤の反応を可能にするために、銅触媒の存在下で、一般的な構造化学式(I)(Aは親和性タグ、Bはホウ素、Lはオプションのリンカー)を持つアリールボロンタグ付け試剤とタンパク質サンプルを接触させるステップ、
Figure 2010509569
(c) タグを付けられたペプチドを親和性タグを介してアフィニティーマトリックスに結合するステップ、及び(d) 単離されたヒスチジン含有ペプチドを得るために、アフィニティーマトリックスから結合されたタグ付けされたペプチドを除去するステップを有する。
本発明のこの態様による方法の特定の実施の形態によれば、ステップ(b)はステップ(a)の前に実行され、アリールボロンタグ付け試剤はサンプル中の切断されていないタンパク質に接触し、タンパク質中に存在するヒスチジンのタグ付けをもたらす。
本発明の更なる態様は、異なるサンプル中のヒスチジンを含む一つ以上のタンパク質の存在を同時に分析する方法を提供し、当該方法は、
a) 切断試剤によってサンプル中の無処置タンパク質をペプチドへと切断するオプションとしてのステップ、
b) 銅触媒の存在下で、アリールボロン酸ラベリング試剤のセットのうちの1つにサンプルの各々を接触させるステップであって、アリールボロン酸ラベリング試剤が、一般的な構造化学式(I)(Aは親和性タグ、Bはホウ素、Lはオプションのリンカー)を持ち、
Figure 2010509569
このセットのアリールボロン試剤の各々がさらに、ラベリング試剤の各々の構造が基本的に同じであるように同位体ラベル又は等重ラベルであるラベルを有するステップ、
c) ポリペプチド又はペプチドサンプル混合物を得るために、それぞれのサンプルをプールするステップ、
d) 親和性タグによってラベル付きポリペプチド又はペプチドをポリペプチド又はペプチドサンプル混合物から選択的に単離するステップ、及び
e) ラベル付けされたポリペプチドの各々の存在を決定するために、質量分析によって、単離されたラベル付きポリペプチド又はペプチドを分析するステップを有する。それによって、ラベル付けされたポリペプチドの存在は、サンプル中の対応するタンパク質の存在を表わす。
さらに、本発明の更なる態様は、タンパク質サンプル中のタンパク質の存在を同定する方法を提供し、当該方法は、
a) 銅触媒の存在下で、一般的な構造(I)(Aは親和性タグ、Bはホウ素、Lはオプションのリンカー)を有するタグ付け試剤にタンパク質を接触させることによって、タンパク質サンプル中のタンパク質のヒスチジンのアミン機能を修飾するステップ、
Figure 2010509569
b) 切断試剤によってタンパク質サンプル中のタンパク質をペプチドへ切断するステップ、
c) 親和性タグを介して、ヒスチジン含有ペプチドをこれらのペプチドから単離するステップ、
d) 精製されたヒスチジン含有ペプチドを得るために、一つ以上のペプチド精製ステップによって単離されたヒスチジン含有ペプチドを精製するステップ、
e) 精製されたヒスチジン含有ペプチドの、質量以外の少なくとも1つの物理化学的特性を決定又は計算するステップ、
f) MSで単離及び精製されたヒスチジン含有ペプチドの質量を決定するステップ、並びに、
g) 各々の単離及び精製されたヒスチジン含有ペプチドに対して、精製されたヒスチジン含有ペプチドの対応するペアレントタンパク質を同定するために、質量及び前記少なくとも1つの他の物理化学的特性を、切断試剤によって生成される全てのヒスチジン含有ペプチドの質量及び一つ以上の物理化学的特性を含むデータベースと比較し、それによって、タンパク質サンプル中のペアレントタンパク質の存在を同定するステップ、を有する。
この方法の一つの実施の形態によると、ステップ(g)は、単離及び精製されたヒスチジン含有ペプチドの各々に対して、単離及び精製されたヒスチジン含有ペプチドの質量に対応する質量を有するデータベース中の一つ以上のヒスチジン含有ペプチドを特定し、一つの単離及び精製されたヒスチジン含有ペプチドに対して複数のペプチドが特定される場合、単離及び精製されたヒスチジン含有ペプチドの少なくとも一つの他の物理化学的パラメータを、データベースにおいて特定された複数のペプチドの物理化学的パラメータと比較する。
この方法の他の実施の形態によれば、タンパク質サンプルは、一つの化学種に由来し、データベースは、切断試剤によって生成されるその化学種の全てのヒスチジン含有ペプチドの質量及び少なくとも1つの他の物理化学的特性を含む。
一実施例によれば、上記の方法は、二つ以上のサンプル中のタンパク質の同時同定のために用いられ、当該方法は、
-ステップ(a)において、区別ラベル成分を含むタグ付け試剤のセットのうちの1つによって各々のサンプルの修飾を実行するステップ、
-ステップ(d)の前に二つ以上のサンプルをプールする追加のステップ、
-ステップ(f)の前に、ペプチドが由来するサンプルを特定するためにラベルの性質を特定するステップを有する。
上記の方法の特定の実施の形態によれば、少なくとも1つの物理化学的特性は、一つ以上のペプチド精製ステップの間に決定される。
より詳しくは、本発明は、少なくとも1つの物理化学的特性が、pI、逆相クロマトグラフィの間の滞留時間、並びに、280nm及び214nmにおけるUV吸収の比から成るグループから選択される上述の方法の実施の形態を提供する。
本発明のまた更なる態様は、タンパク質又はペプチド中のヒスチジンにタグを付けるためのタグ付け試剤を提供し、その化合物は、一般的な構造(I)を持つ。
Figure 2010509569
Aは、ビオチン又はビオチン派生分子、マルトース、レクチン、ハプテン特異的抗体に結合しているハプテン及びグルタチオンから成るグループから選択される親和性タグであり、Bはホウ素であり、Lはオプションのリンカーである。
タグ付け試剤の特定の実施の形態において、構造(I)の芳香環は、ハロゲン、アルコキシ基又はアルキル基によってさらに置換される。
他の実施例において、化合物上の親和性タグAはビオチンである。
特定の実施の形態において、本発明のタグ付け試剤は、化学式(II)の構造を持つ。
Figure 2010509569
他の特定の実施の形態において、本発明のタグ付け試剤は、化学式(III)の構造を持つ。
Figure 2010509569
本発明のタグ付け試剤の特定の実施の形態は、ラベリング成分を、より詳しくは、一つ以上の重同位元素から成るラベリング成分をさらに有する。より詳しくは、タグ付け試剤は、化学式(I)の一般的な構造を持ち、親和性タグとアリールボロン基との間のリンカー(L)中の一つ以上の炭素原子及び/又は一つ以上の水素原子は、それぞれ13C又は重水素によって置換される。さらに特定の実施の形態において、本発明のタグ付け試剤は、化学式(III)の一般的な構造を持ち、ビオチン基とアリールボロン基との間のリンカー中の一つ以上の炭素原子及び/又は一つ以上の水素原子は、それぞれ13C又は重水素によって置換される。
さらに、本発明の更なる態様は、ポリペプチドの質量スペクトロメトリ分析のための一セットのラベリング試剤に関し、このセット中の全てのラベリング試剤は、記載されるような同一の化学構造(I)を持ち、このセット中の各々のラベリング試剤は、固有の同位体ラベル成分を持つ。
本発明の一セットのラベリング試剤の一実施例において、このセットの個々のラベリング試剤は化学式(III)に従う構造を持ち、ビオチン基とアリールボロン基との間のリンカー中の一つ以上の炭素原子及び/又は一つ以上の水素原子は、それぞれ13C又は重水素によって置換される。
Figure 2010509569
本発明の更なる態様は、タグ付け試剤の使用、並びに、タンパク質のタグ付け及び(区別)ラベリングのための組み合わせられた上述のタグ付け試剤及びラベリング試剤の使用に関する。
本発明の更なる態様は、切断試剤によってin silicoで切断された生物体のタンパク質のヒスチジン含有ペプチドのデータベースを提供し、各々のペプチドは、タンパク質識別子、そのアミノ酸組成及びその質量によって特徴付けられ、その質量は、無修飾ペプチドの質量又は修飾即ちラベリング後のペプチドの質量である。
本発明で提供されるデータベースの一つの実施の形態において、異なる配列及び同じ質量を有するデータベース中のペプチドは、その質量以外の少なくとも1つの物理化学的なペプチドのパラメータによってさらに特徴付けられる。
他の一実施例において、本発明のデータベースは、トリプシンである切断試剤によってin silicoで切断される生物体のタンパク質のヒスチジン含有ペプチドのデータベースである。
本発明の更に別の態様は、タンパク質の同定のための上述のようなデータベースの使用に関する。
本発明の更に別の態様は、タンパク質サンプルの多重ラベリング及び分析のための装置(100)に関し、当該装置は、サンプルの少なくとも1つのソース(101)、タグ付け及びラベリングユニット(103)と本発明のアリールボロン試剤のための対応するタグ付け/ラベリング試剤ソース(104)、タンパク質切断ユニット(105)、親和性分離ユニット(106)、分離ユニット(107)、質量分析ユニット(109)並びにin silicoで切断されたヒスチジン含有ペプチドの注釈付データベース(112)に接続されたデータ分析ユニット(110)を有する。
一実施例において、本装置はさらに、試料調製ユニット(102)及び/又は分離ユニット(107)において精製されたペプチドの一つ以上の物理化学的特性を決定する分析ユニット(108)を有する。
本発明の上記の及び他の特性、特徴及び利点は、本発明の原理を一例として図示する添付の図面に関連して考慮される以下の詳細な説明から明らかになる。この説明は、本発明の範囲を制限することなく、単に例として与えられる。以下で示される参照図は、添付の図面を指す。
前掲のCollman et al.による銅触媒の存在下でのイミダゾールとのアリールボロン酸の反応を示す図。 本発明の特定の実施の形態による、実施例2において例証されるようなポリペプチド中に存在するヒスチジンとのアリールボロンタグ付け試剤の銅触媒反応を示す図。 本発明の特定の実施の形態による、タンパク質溶液からのヒスチジン含有ペプチドの選択的な単離のための方法を説明する図。(1): タンパク質変性; (2): N末端(a)、内部(b)及びC末端(c)ペプチドへのタンパク質分解切断; (3): ヒスチジン反応性タグ付け試剤との反応; (4)捕捉試剤(黒い矢印)を有する固体支持体への親和性タグ(グレーの矢印)を介したタグ付けされたペプチドの結合。 本発明の特定の実施の形態による同位体ラベル成分を含むヒスチジン反応性ラベリング試剤を用いた複数のサンプルの同時分析を説明する図。 本発明の特定の実施の形態による、4つのタンパク質サンプルの多重分析のための装置(100)を示す図。当該装置は、少なくとも4つのサンプルソース(101)、サンプル調製ユニット(102)、ラベリング試剤ソース(104)を有するラベリングユニット(103)、タンパク質切断ユニット(105)、親和性精製ユニット(106)(例えばアビジン親和性クロマトグラフィシステム)、2つの連続的に結合する分離システム(1107)と(2107)を含む分離ユニット(107)、質量分析ユニット(109)、並びに、読出しシステム(112)に結合する制御・分析回路及びデータ分析ユニット(111)を含む。ユニット(108)はユニット(107)で精製されるペプチドの物理化学的特性を決定するための分析ユニットであり、ユニット(110)はヒスチジン含有ペプチドの注釈付データベースを含む(点線は、実験的及びin silicoデータの取得を示す)。 実施例1に例証されるようなm-アミノフェニルボロン酸とのNHS官能基化ビオチンの反応に基づく本発明の特定の実施の形態によるタグ付け試剤の合成を示す図。 本発明の特定の実施の形態による、実施例1に記載される合成における反応物及び反応混合物のIRスペクトルを示す図。 本発明の特定の実施の形態による、m-アミノフェニルボロン酸へのビオチンのEDC媒介結合を示す図。 図8Aに示されるような一般化された反応の詳細な反応スキームを示す図(ビオチン基は黒い丸によって置換されている)。 本発明の特定の実施の形態による、実施例2で例証されるようなヒスチジン含有ペプチドとのタグ付け試剤の銅触媒反応を示す図。
本発明は、特定の実施の形態及び特定の図に関して説明されるが、本発明はそれらには限定されず、請求の範囲のみによって限定される。請求の範囲中の任意の参照符号は、その範囲を制限するものとして解釈されてはならない。記載される図面は、単なる概略であって、非限定的である。図面において、説明を目的として、いくつかの要素のサイズは誇張されており、スケール通りに描かれていない場合がある。本明細書及び請求の範囲において「有する」「含む」との語が用いられる場合、それは他の要素又はステップを除外しない。単数形の名詞が用いられる場合、特に別途述べられない限り、その名詞が指すものが複数存在する場合を含む。
さらに、明細書及び請求の範囲中の「第1」「第2」「第3」などの用語は、同様の要素を区別するために用いられ、必ずしも逐次的又は時間的な順序を述べるためではない。そのように用いられる用語は適切な状況の下で相互に交換可能であり、本願明細書に記載される本発明の実施の形態は、本願明細書に記載又は図示されるものとは異なる順序での動作が可能であることが理解されるべきである。
以下の用語又は定義は、単に本発明の理解を補助するために提供される。これらの定義は、当業者によって理解されるよりも狭い範囲を持つものと解釈されてはならない。
本明細書で用いられる用語「ポリペプチド」又は「タンパク質」は、ペプチド結合を介して接続される複数の天然又は修飾されたアミノ酸を指す。ポリペプチドの長さは、2個から数千個のアミノ酸まで変化することができる(したがってこの用語はさらにオリゴペプチドと一般に呼ばれるものを含む)。生体内翻訳後修飾(例えばグリコシル化、リン酸化など)によって修飾される一つ以上のアミノ酸を含んでいる及び/又はタンパク質修飾作用剤(例えばアルキル化剤)によって生体外で修飾された一つ以上のアミノ酸を含んでいるポリペプチドが、この範囲に含まれる。
「ポリペプチドフラグメント」又は「ペプチド」という本明細書で用いられる用語は、タンパク質又はポリペプチドの切断の後に得られるアミノ酸配列を指すために用いられる。ポリペプチドフラグメント又はペプチドは、サイズ又は性質において制限されない。
ペプチドを指す場合の用語「内部」、「アミノ末端」及び「C末端(carboxyterminal)」は、本願明細書において、タンパク質又はポリペプチド中のペプチドの対応する位置を指すために用いられる。例えば、タンパク質NH2-X1-K-X2-R-X3-K-X4-COOHのトリプシン切断において(ここで、X1、X2、X3及びX4は、リシン(K)又はアルギニン(R)を伴わない普通の長さのペプチド配列である)、アミノ末端ペプチドはNH2-X1-K-COOHであり、内部ペプチドはNH2-X2-R-COOH及びNH2-X3-K-COOHであり、そしてC末端ペプチドは、NH2-X4-COOHである。
「タンパク質切断」という本明細書で用いられる用語は、ポリペプチド中の2つのアミノ酸間のペプチド結合の加水分解に関する。これは、化学的加水分解と酵素加水分解の両方を含む。したがって、「切断試剤」という本明細書で用いられる用語は、ポリペプチド又はペプチド中の2つのアミノ酸間のペプチド結合を加水分解することが可能な化合物を指す。
「ペアレントタンパク質」という用語は、切断されたペプチドの元となる未切断タンパク質を指す。
本明細書で用いられる用語「断片化」は、例えばタンデム型質量分析(MS)即ちMS/MS分析における衝突誘発解離(CID)によって得られるような、一つ以上の化学結合の切断及び分子の一つ以上の部分のその後の放出を指す。特定の実施の形態において、結合はペプチド結合であるが、それに制限されない。
「タンパク質/ペプチド反応性基(PRG)」という本明細書で用いられる用語は、化合物(例えばラベリング試剤)上の化学官能基であって、タンパク質又はペプチドのアミノ酸上の官能基と反応してそのような化合物のアミノ酸への結合(非共有結合又は共有結合)をもたらすことが可能である化学官能基を指す。本発明は、アミノ酸ヒスチジンの官能基と反応するタンパク質/ペプチド反応性基として、後述する構造によるアリールボロン酸分子を提供する。
「タグ」又は「親和性タグ」という本明細書で用いられる用語は、ペプチド又はポリペプチドに共有結合的に連結されることができ、他の化学構造との特異的相互作用に基づいて、それが結合されるペプチド又はポリペプチドを混合物から単離するために用いられることができる化学構造を指す。したがって、「タグ付け試剤」という本明細書で用いられる用語は、タンパク質又はペプチドとの反応前は、未結合のタグを含み、そのタグのタンパク質又はペプチドへの共有結合のためのタンパク質/ペプチド反応性基を含む。本発明のタグ付け試剤では、タンパク質/ペプチド反応性基(PRG)は、ヒスチジンと反応するアリールボロン酸である。
本明細書で用いられる用語「ラベル」は、ペプチド又はポリペプチドに共有結合された又は共有結合されることができる化学構造であり、その特有の特性に基づいて、質量分析において又は光学的方法によって検出されることができる化学構造を指す。一般に、「ラベル」という用語は、ポリペプチド又はペプチド上に存在する分子を指すために用いられ、「ラベリング試剤」という用語は、ラベル成分及びタンパク質/ペプチド反応性基の組み合わせを指すために用いられる。ラベル成分(すなわちラベルを生成するラベリング試剤の一部)は、ラベリング試剤のタンパク質/ペプチド反応性基に組み込まれることができ、又は、タンパク質反応性基内の、若しくはタンパク質反応性基に結合された、別個の化学構造であることができる。本発明によるタグ付け試剤がラベル成分を含む場合、この試剤がラベリング試剤として用いられることができ、ラベリング試剤と呼ばれる。
本発明の「質量」という用語は、質量電荷比(m/z)を指す。略記号m/zは、イオンの質量数をその電荷数で割ることによって形成される無次元量を示すために用いられる。「モノアイソトピック質量」は、最も豊富な同位体だけを含んでいるイオンの質量を指す。「平均質量」は、元素ごとの原子量を使用して計算される所与の実験に基づく式の粒子又は分子の質量を指す。
「同位体ラベル」及び「同位体ラベリング試剤」という本明細書で用いられる用語は、同じ化学式を持っているが、一つ以上の原子の存在する同位体の数及び/又は種類が互いに異なっており、MS上での質量の差をもたらす一セットのラベル及びラベリング試剤を指す。それで、異なる同位体ラベルによってラベル付けされる同一のペプチドは、質量の差に基づいてMS上でこのように区別されることができる。等重ラベル(下記参照)は原則として同位体ラベルの特定の種類を構成する一方、本発明に関連して、用語「同位体ラベル」は、等重でないラベルを指すのに用いられるが、断片化を伴わずにそれらの分子量に基づいてこのように区別されることができる。
「等重ラベル」及び「等重ラベリング試剤」という本明細書で用いられる用語は、同じ構造及び同じ質量を持つ一セットのラベルを指し、そのラベルは、断片化の際に、そのセットの全ての等重ラベルに対して同じ構造を有する特定のフラグメントを放出し、そのフラグメントは、等重ラベル中の同位体の差異分布に起因して、そのセット中の個々の等重ラベル間で質量が異なる。等重ラベルは一般的に、比較的小さなフラグメントであるレポーター基(RG)及びバランス基(BG)を含む。一セットの等重ラベルの「合成質量」は、そのセットの等重ラベルのレポーター基及びバランス基の合計質量を指す。
「官能基」という本明細書で用いられる用語は、化学化合物への結合(一般に共有結合)に用いられることができるアミノ酸上の化学官能基を指す。官能基は、アミノ酸の側鎖や、ポリペプチド若しくはペプチドのアミノ末端又はカルボキシ末端に存在することができる。この用語は、ペプチド若しくはポリペプチドに自然に存在する官能基と、例えばタンパク質改質剤を用いた化学反応を介して導入される官能基との両方の官能基を包含する。
本発明の一態様は、ヒスチジンのイミダゾール官能基と反応するタンパク質反応性基を含み、親和性タグを含む化合物であるタグ付け試剤に関する。より詳しくは、ヒスチジンと反応するPRGは、置換又は非置換アリールボロン酸である。
本発明の試剤は置換アリールボロン酸と一般に呼ばれ、一般的な構造(I)を持つ。
Figure 2010509569
Aは親和性タグ、Bはホウ素、そしてLはオプションのリンカーである。
ベンゼン上のA-(L)-基は、B(OH)2に関してオルト、メタ又はパラ位であることができる。
本発明の試剤の特定の実施の形態において、ベンゼン基の残りの位置は、アルキル(例えばメチル、エチル、プロピル)、ハロゲン(例えばF)、アルコキシ(例えばメトキシ)、又は、カルボキシル基、アミノ基若しくはチオールのような官能基から成るグループからそれぞれに選択される一つ以上の置換基によって置換される。
本発明の試剤の調製は、タンパク質ラベリング試剤の調製のための有機化学において一般に既知の方法によって実行される。一般的にこれは、共有結合をもたらすために、追加の官能基(例えばアミノ基)を含むアリールボロン酸(又はアルキルアリールボロン酸)を、アリールボロン酸上の官能基と反応することが可能な官能基を運ぶ親和性タグ又はリンカーと反応させることによって保証される。複数の化合物の調製は、実施例セクションで説明される。本発明のタグ付け試剤は、タンパク質又はペプチドへの親和性タグ(A)の結合を保証し、そのタグは、タグが結合されたタンパク質又はペプチドの選択的な単離のために用いられることができる。
本発明の化合物及び方法において親和性タグの性質は重要ではない。確立されている親和性タグの典型的な例は、d-ビオチン(又はビオチンから派生した分子)、マルトース及び他の糖質/糖質結合、ハプテン特異抗体に結合するハプテン、並びにグルタチオンを含む。本発明に関連して有用な親和性タグの更なる実施の形態は、以下で詳細に述べられる。
親和性タグは大きい場合があり、PRGと親和性タグとの間のリンカーLの存在を必要とする場合がある。リンカーLは、この目的(すなわち干渉を回避するために親和性タグをタンパク質反応性基から遠ざけるため)だけのために用いられる分子構造であることができ、又は同時に、(下記に詳述されるように)ラベル成分の全て若しくは一部を含むことができる。さらに又はあるいは、リンカーは、(下記に詳述されるように)親和性タグと化合物の残りの部分との間に切断可能な結合を提供することができる。
本発明の特定の実施の形態は、上述されたように、更にラベル成分を含むタグ付け試剤を提供する。より具体的には、2つ以上のタグ付け試剤のセットが提供され、そのセットの各々のタグ付け試剤は、質量分析におけるタンパク質又はペプチドの区別ラベリングのための一セットのラベル成分のうちの一つを含む。この実施例によれば、本発明のタグ付け試剤は、ラベリング試剤と呼ばれる。
一つの実施の形態によれば、本発明のラベリング試剤は、ラベル成分として、光学的方法によって検出可能な基(例えば、可視光若しくはUV光を吸収する基、又は蛍光性若しくはリン光性の基)を含む。
しかしながら特定の実施の形態によれば、本発明のラベリング試剤は、同位体ラベル成分(すなわち一セットの同位体ラベル成分に属しているラベル成分)であるラベル成分を含む。したがって、そのような同位体ラベリング試剤の使用は、プールされたペプチド混合物内で区別してラベル付けされたペプチドの同定を可能にする。
一実施例によれば、本発明の同位体ラベリング試剤中の同位体ラベル成分は同一の分子構造を有し、各々のラベル成分において、同じ化学式を有するが、質量の差に基づいて同位元素的に区別可能である2つ以上の化合物を生成するために、一つ以上の原子は安定した同位体によって置換される。例えば、同位体ラベル成分中の任意の一つ以上の水素、窒素、酸素又は硫黄原子はそれぞれ、それらの同位元素的に安定した同位体2H、13C、15N、17O、18O又は34Sによって置換されることができる。例えば、水素が重水素によって置換され、又は炭素12Cが13Cによって置換される。一つ以上の上記の同位体を使用することにより、2, 3, 4, 5, 6, 7, 8又はさらに多数の同位体ラベル成分が生成されることができ、各々は同じ構造を持つがMrが異なる。上記のように、これらのラベル成分のMrの差は、異なるサンプル中の同一のポリペプチドへの各々のラベリング試剤の結合の際に、それから生成されるポリペプチド又はペプチドの、結果として生じるMrに反映される。
一つ以上の同位体の特異な導入による同位体ラベル成分として機能することができる基の例は、エーテル、ポリエーテル、エーテルジアミン、ポリエーテルジアミン、ジアミン、アミド、ポリアミド、ポリチオエーテル、二硫化物、シリルエーテル、アルキル若しくはアルケニル鎖(ストレート鎖、分岐鎖、若しくは環状である部分を有する)、アリール、ジアリール又はアルキル-アリール基を含むが、これらに限定されるものではない。特定の実施の形態において、本発明のラベリング試剤の同位体成分に存在するアリール基は、一つ以上のヘテロ原子(例えばN、O又はS原子)を含む。
特定の実施の形態によれば、ラベリング試剤の同位体ラベル成分は、(MS)n分析の間、ペプチドのような断片化を受けない。イオン化を促進するために、同位体ラベル成分は、より詳しくはその中の同位体基は、酸性又は塩基性基(例えばCOOH、SO3H)、一級、二級又は三級アミノ基、窒素複素環、エーテル又はこれらの基の組み合わせのような基又は部分を含むことができる。特定の実施の形態において、同位体ラベル成分は、永久電荷を持つ基(例えば、ホスホニウム基、第四アンモニウム基、スルホニウム基、キレート化金属イオン、tetralky若しくはtetrarylホウ酸塩又は安定したカルバニオン)を含む。
本発明のラベリング試剤の同位体ラベル成分は、分子の分離した部分であることができ、又はタンパク質反応性基に組み込まれることができ、又はタンパク質反応性基に結合されることができる。後者の実施の形態によれば、同位体ラベル成分の同位体は、アリールボロン酸の芳香族基中に、この芳香環上の置換基中に、又は、存在する場合には、アリールボロン酸と親和性タグを接続するリンカー(L)中に組み込まれることができる。
本発明のこの実施例による同位体ラベリング試剤の調製は、US 6,852,544の実施例に開示される同位体ラベリング試剤の調製と同様であり、タンパク質反応性基は、アリールボロン酸である。
他の実施の形態によれば、本発明のラベリング試剤は、ラベル成分として、等重ラベル成分を含む。同位体ラベル成分含有試剤と同様に、等重ラベリング試剤の使用は、プールされたペプチド混合物中の区別してラベル付けされたペプチドの同定を可能にする。
本発明に関連して使用するための等重ラベリング成分は、従来技術において記載されている。上で詳細に述べられたように、等重ラベル成分は、比較的小さなフラグメントであるレポーター基(RG)及びバランス基(BG)を有し、レポーター基とバランス基との合成質量は、セット内の全ての等重ラベル成分で同一であるが、RGの質量は、セット内の各々の等重ラベル成分で異なり、同一のペプチドを区別して同定するために用いられる。
等重ラベルが存在する実施の形態では、親和性タグは、衝突誘起解離(CID)後のレポーター基の放出に干渉しない位置に一般的に配置される。
本発明のラベリング試剤の等重ラベリング成分は、別々の構造であることができる。あるいは、リポータ及びバランス基は、一般的にリンカーの一部又はリンカーの置換基である。特定の実施の形態において、芳香環及びその上の置換基は、同位体を組み込んで、バランス基としての機能をはたすために用いられる。非常に特別な実施の形態において、親和性タグとヒスチジン反応性基を接続している構造(それはリンカーとみなされることができる)は、等重ラベリング成分として機能し、そのリンカーのメイン構造はバランス基であり、レポーター基はリンカーの側鎖に存在する。他の非常に特別な実施の形態において、バランス基及びレポーター基の両方は、リンカーの専用の領域における同位体の特定の分布によってリンカーの一部であり、そのようなレポーター基の放出のために、CIDによって切断しやすいレポーター基に隣接した結合を提供する。
本発明のこの態様による等重ラベリング試剤の調製は、一実施例において、WO2004070352の例に開示される等重ラベリング試剤の調製に対応し、タンパク質反応性基は、(アルキル)アリールボロン酸である。
上記のように、本発明のタグ付け及びラベリング試剤中の親和性タグの存在は、タグ付けされた及びオプションとしてラベル付けされたペプチド又はポリペプチドが、共有結合又は非共有結合のいずれかで、捕捉試剤(CR)へ高い親和性を伴って選択的に結合することを可能にする。一般的に、捕捉試剤に対する親和性タグの結合は強く、捕捉試剤に特異的に結合していないペプチド又はポリペプチドの除去を保証する任意の様々な溶液又はそのような溶液の組み合わせによって激しく及び/又は何度洗浄しても耐える。一般的に、親和性タグは、MS分析の間にペプチドのような断片化を受けない。
上記のように、そしてより詳しくは本発明の方法のために、親和性タグの性質は、それが、親和性タグに結合されるペプチド又はポリペプチドに影響を及ぼさずに、捕捉試剤(CR)への選択的な結合及びオプションとしてそれからの除去を可能にする限り、重要でない。
したがって、親和性タグ(A)と捕捉試剤(CR)とのペアの非限定的な例は、以下を含む。
- アビジン/ストレプトアビジン(例えばストレプトアビジン-アガロース、オリゴマ-アビジン-アガロース又はモノマー-アビジン-アガロース)と結合する、d-ビオチン又は構造的に修飾されたビオチンベースの試剤(d-イミノビオチンを含む)。
- マルトース結合タンパク質に結合するマルトース。又は、他の糖類/糖類結合タンパク質ペア。あるいは更に一般的には、親和性タグの上述の基準に従う任意のリガンド/リガンド結合タンパク質ペア。
- 対応する抗ハプテン抗体(例えば抗ジニトロフェニル-IgG)に結合するハプテン(例えばジニトロフェニル基)。
- グルタチオン-S-転移酵素に結合するグルタチオン。
本発明の特定の実施の形態において、ラベル付けされたペプチド又はポリペプチドの親和性精製は、MSによる分析の前に実行される。したがって、結合されたペプチド又はポリペプチドが更なる分析のために必要とされるとき、捕捉試剤からの除去又はペプチドからの親和性タグの分離が必要とされる。これは、種々の態様で保証されることができる。
特定の実施の形態において、親和性タグは、酸に不安定な結合、チオールに不安定な結合、塩基に不安定な結合、過ヨウ素酸塩に不安定な結合又はヒドロキシルアミンに不安定な結合のような(但しそれらに限られない)、切断可能結合によってラベリング試剤に接続している。
さらに特定の実施の形態において、親和性タグとラベリング試剤との間の結合はさらに、化学的反応、熱的反応又は光化学的反応によって切断可能である。適切な光切断可能な基は、1-(2-ニトロフェニル)-エチルである。熱に不安定な結合は、例えば、加熱に応じて分離する二本鎖の核酸、ペプチド核酸を有する核酸の二本鎖、又は二本鎖ペプチド核酸ストランドである。切断可能基はさらに、ジスルフィド結合を持つ基、酸又は塩基に不安定な基、過ヨウ素酸塩に不安定な又はヒドロキシルアミンに不安定な基を含み、とりわけ、ジアリールメチル又はトリメチルアリールメチル基、シリルエーテル、カルバミン酸塩、oxyester、thiester、thionoester並びにαフッ化アミド及びエステルを含む。酵素で切断可能な基は、例えば、タンパク質分解酵素感受性アミド又はエステル、β-ラクタマーゼ感受性βラクタム類似体、及び、ヌクレアーゼ切断可能又はグリコシダーゼ切断可能結合である。
この実施例によれば、親和性タグは、適切な試剤によるラベル付けされたタンパク質又はペプチドの処理によって除去されることができる。親和性タグの除去はさらに、他の理由で、例えばMSでのペプチドの分析における干渉を回避するために望ましい場合がある。一般的に、親和性タグは、ラベル付けされたペプチド又はポリペプチドの親和性単離の後で切除される。
あるいは、親和性タグは、非切断可能結合によって、タンパク質/ペプチド反応性基に結合された本発明のタグ付け及びラベリング試剤中に存在することができる。親和性精製されたペプチドが取り戻されることができることを保証するために、親和性タグが取り外せない場合、いくつかの態様で捕捉試剤(CR)から解離することができる親和性タグが用いられる。特定の実施の形態において、ビオチン及びビオチンベースの親和性タグが用いられる。特に興味深いのは、d-イミノビオチンのような構造的に修飾されたビオチンであり、それは、10-20%の有機溶媒を含む希酸のようなESI-MS分析に適合した溶媒条件の下で、アビジン又はストレプトアビジンカラムから溶出する。d-イミノビオチン標識化合物は、pH 4を下回る溶媒中に溶出することが確かめられた。
さらに又はあるいは、置換リガンド(dL)が、親和性タグ(A)(及びそれに結合されるペプチド又はタンパク質)を捕捉試剤(CR)から外すために用いられる。DLによって溶出する場合、少なくともこのDLの一部が、関係するペプチドを含む溶出液中に存在する。特定の実施の形態において、本発明の方法は、MS分析の間にペプチドのような断片化を受けない分子であり、サンプル中での存在がタグを付けられたペプチド、基質又は反応生成物複合体のイオン化を著しく抑制しないDLの使用を含むことができる。特に、置換リガンドは、それ自身が質量分析の間に最小限にイオン化され、DLクラスタで構成されるイオンの形成が最小限であるように、選択されることができる。
適切な置換リガンド(dL)の性質は、使用されるA及びCRの性質に依存する。一般にDLは、合理的なタイムスケールで、最大でその追加から一週間以内、好ましくは数分又は最大でも一時間以内に、AをCRから外すように選択される。DLのCRに対する親和性は、Aを含む標識化合物のCRに対する親和性に匹敵するか、又はそれよりも強くなければならない。さらにDLは、親和性タグAを含む標識化合物のCRからの溶出において用いられる溶媒に可溶でなければならない。特定の実施の形態において、DLは、遊離親和性タグAや、Aの派生又は構造修飾に対応する。したがって、置換リガンドの例は、d-ビオチン又はd-ビオチン派生物を含む。
上で参照されるように、本発明のいくつかの実施の形態において、タグ付け又はラベリング試剤は、親和性タグとヒスチジン反応性基(アリールボロン酸)との間のリンカーを含む。このリンカーは、(アルキル)アリールボロン酸と親和性タグとの間の反応の残りであることができる。リンカーはさらに、試剤をペプチドに結合する際の親和性タグの干渉を防止するために、(大きい)親和性タグをタンパク質反応性基から物理的に離すために用いることができる。上記のように、本発明のラベリング試剤において、リンカーは、光学ラベル成分のための又は等重ラベル成分のレポーター基のための足場として、同位体又は官能基をオプションとして組み込むことができる。上記のように、非常に特別な実施の形態において、リンカーはバランス基として作用し、そしてレポーター基はリンカーの側鎖に存在する。他の非常に特別な実施の形態において、バランス基及びレポーター基の両方は、リンカーの専用の領域における同位体の特定の分布によってリンカーの一部であり、そのようなレポーター基の放出のために、CIDによって切断しやすいレポーター基に隣接した結合を提供する。
本発明の特定の実施の形態において、タグ付け又はラベリング試剤に存在する親和性タグはビオチンである。さらに特定の実施の形態において、アリールボロン酸はフェニルボロン酸である。非常に特別な実施の形態において、本発明の化合物は、式(II)を有する分子である。
Figure 2010509569
この一般的な構造はさらに、ラベル成分として、一つ以上の「重い」同位体を含む。
さらに特別な実施の形態において、本発明のラベリング試剤は、式(III)を有する分子である。
Figure 2010509569
オプションとして、ビオチン基とアリールボロン基との間のリンカー中の一つ以上の炭素原子及び/又は一つ以上の水素原子は、それぞれ13C又は重水素によって置換される。
上述のタグ付け及びラベリング試剤は、ヒスチジン含有ペプチドの選択的な単離を可能にすることによって、タンパク質サンプルの複雑性を低減するために用いられることができる。
タグ付け及び/又はラベリング試剤が、典型的な数のペプチドの選択的な単離を保証するために、試剤は、理想的には、サンプル中のプロテオームの最大の範囲を得るようにサンプル中のほぼすべてのタンパク質を標的とする。同時に、各々の個々のタンパク質を考慮する場合、分析の複雑性を低減するように、試剤と反応するタンパク質中の官能基の数は理想的には少ない(サンプル中のこのタンパク質から分析されるペプチドの数は1つのみ又は限られた数である)。
本発明のツール及び方法では、ヒスチジンが、タグ付け及び/又はラベリングのための官能基として用いられる。ヒスチジンラベリングは、最大の範囲(サンプル中のすべてのタンパク質にラベル付けすること)と、最小限の複雑性(サンプル中のすべてのタンパク質に、一度だけ又は限られた回数、ラベル付けすること)との間の許容できる妥協を提供する。ヒスチジンは、ポリペプチド配列中で2-3%の頻度(30-50個のアミノ酸ごとに一つ)で存在する。さらに、ヒスチジンのラベリングは、リシン及びアミノ末端の両方に存在するアミン基のラベリングや、アスパラギン酸、グルタミン酸及びカルボキシ末端に存在するカルボキシル基のラベリングの場合に見られるようにタンパク質の他の部分を変更することはない。
したがって、本発明の試剤の使用は、ポリペプチド中のヒスチジンのイミダゾールへのアリールボロン酸タグ付け又はラベリング試剤の共有結合を伴う(図2を参照。図はヘキサヒスチジンを含むペプチドを示すが、アリールボロン基との反応によるタグ付けのための本発明によれば、複数のヒスチジンの存在は必要とされない)。
銅触媒(例えば[Cu(OH)TMEDA]2Cl2)の存在下での4.6〜9.0のpH値の水性条件におけるイミダゾールとのアリールボロン酸の反応は、Collman et al. (2001), J. Org. Chem. 66, 1528-1531に開示され、そして概略的に図1に示される。しかしながら、本発明のアプリケーションからみて、この反応は、グリコシル化ポリペプチドとのタグ付け又はラベリング試剤の反応を回避するために、8以下のpH値で一般的に実行される。本発明の方法において、アリールボロンタグ付け又はラベリング試剤のタンパク質サンプルとの接触は、一般的に水性条件で実行されるが、この反応はまた、有機溶媒の存在下で、又はCollman et al. (2001) J. Org. Chem. 66, 7892-7897に開示されるように、完全にCH2Cl2のような有機溶媒中で実行されることができる。
したがって、本発明の更なる態様は、ヒスチジン含有ペプチドの共有結合タグ付けのために、上に記載される式(I)に対応する一般的な構造を持つタグ付け試剤の使用に関する。
より具体的には、本発明は、ヒスチジンを含むタンパク質に親和性タグを共有結合的に取り付けるための方法を提供し、当該方法は、銅触媒の存在下で、一般的な構造(I)(Aは親和性タグ、Lはオプションのリンカー)を持つ化合物にタンパク質を接触させるステップを有する。
Figure 2010509569
本発明の特定の実施の形態は、ヒスチジン含有ペプチドをタンパク質サンプルから単離するための方法を提供し、当該方法は、切断試剤によってタンパク質サンプル中の無処置タンパク質をペプチドへと切断するステップ、及び、ペプチド中に存在するヒスチジンとのアリールボロンタグ付け試剤の反応を可能にするために、銅触媒の存在下で、上記の一般的な構造式(I)を持つアリールボロンタグ付け試剤にタンパク質サンプルを接触させるステップを有する。それから、タグ付けされたペプチドは、親和性タグを介してアフィニティーマトリックスに結合され、そして結合されたタグ付きペプチドは、単離したペプチドを得るために、アフィニティーマトリックスから取り外される。本発明の方法の特定の実施の形態は、本願明細書において記載される特定のタグ付け試剤の使用に関し、そして必要に応じて、親和性タグの性質、並びに、上述のようにそれがタグ付け試剤内及び切断可能接続によってペプチド上に接続されているか否かに応じて適切な方法を用いた、アフィニティー法に結合されたペプチドの除去に関する。
本発明のさらに他の態様は、異なるタンパク質サンプルの同時質量分析における本発明のラベリング試剤の使用に関する。サンプルの同時分析は、分析法における技術上のばらつきを回避する。
したがって、本発明のこの態様の方法及びツールは、比較分析が必要とされる2つ以上のサンプルのうちの一つ又はそのセットの分析において特に重要である。そのようなサンプルのセットは、異なる時点で採取された患者からのサンプル、疾患の異なる臨床的バージョンのサンプル、異なる患者のサンプルなどである(但しそれらに限られない)。したがって本発明は、鑑別診断のための、そしてさらに生化学的又は生理学的分析における多重分析のための、疾患進行のマーカーを特定するための方法及びツールを提供する。
本発明のこの態様によれば、2つ以上のサンプルが、MSによる同時分析を可能にするために、本発明のラベリング試剤を使用してラベル付けされる方法及びアッセイが提供される。
本発明のこの態様による方法は、ラベリングステップを有し、各々のサンプルは、銅触媒の存在下で、ラベル成分を含む上述の一般的な構造(I)を有する化合物にタンパク質を接触させることによって、ラベリング試剤(のセット)のうちの1つによってヒスチジン上でラベル付けされる。本発明の方法において用いられるラベリング試剤のセットは、同じ又は基本的に同じ化学的構造を持つ。より詳しくは、それらは、ラベル成分として、同位体又は等重ラベル成分を含む。
本発明のこの態様による方法において、各々のサンプル中のタンパク質の区別したラベリングをもたらす本発明のラベリング試剤を用いたラベリングステップに加えて、それぞれのサンプルはプールされる。異なるサンプルのプーリングによって、ポリペプチドサンプル混合物が得られる。これは、分析において異なるサンプルの直接の比較を可能にする。
ラベリングに続くステップにおいて、ラベル付けされたペプチドは、単離され、分析される。最も一般には、サンプルは、ペプチドの単離の前にプールされる。しかしながら、サンプルのプーリングが一つ以上の精製又は単離ステップの後に実行されることも構想される。
以下で詳細に述べられるように、個々のサンプル又はプールされたサンプル混合物は一般的に、MSでの個々のペプチドの分析を可能にするために、ペプチド分離ステップを受ける。したがって、本方法が、本発明による同位体又は等重ラベリング試剤によって2つ以上のサンプルにラベル付けするステップを含む場合、ペプチド上に存在するラベルが、異なってラベル付けされる同一のペプチドの間で(多次元)クロマトグラフィ技術における特性に重要な差を生じさせないように、ペプチド上の結果として生じる等重又は同位体ラベルの化学的構造は、一セットのラベリング試剤内の全ての試剤に対して、同じ又は基本的に同じである。したがって、区別してラベル付けされる同じアミノ酸配列を有するペプチドは、これらの分離方法において同じ挙動を示す。区別してラベル付けされたサンプルがプールされた場合、区別してラベル付けされた同一のペプチドは一緒に分離される。
本発明の方法及びツールは、タンパク質サンプルの分析に関する。「サンプル」という本明細書において用いられる用語は、本発明の方法を実行する前に任意の処理ステップを必ず含む又は含まないことを意図しない。サンプルは、粗い未処理のサンプル、抽出されたタンパク画分、精製されたタンパク画分などであることができる。一つの実施の形態によれば、タンパク質サンプルは、豊富タンパク質の免疫除去によって、予め処理されている。
本発明のタグ付け又はラベリング試剤及び方法による分析に適しているタンパク質サンプルは、ウィルス、原核生物、細菌、真核生物、真菌、酵母、植物性、無脊椎動物、脊椎動物、哺乳類及びヒトを起源とするサンプルを含む。サンプルの調製は、調査される生物体、組織又は器官に応じて異なるが、標準的な方法が通常は利用可能であり、エキスパートによって知られている。哺乳類及びヒトのタンパク質サンプルに関して、それは、培養細胞、レーザで微小解剖した細胞、身体組織、体液又は関係する他の重要なサンプルの単離を含む。サンプル中のタンパク質分画に関して、細胞溶解が、細胞分画及びタンパク質精製における第1のステップである。物理的方法、酵素による方法及び界面活性剤ベースの方法を含む多くの技術が、細胞の破壊のために利用可能である。歴史的には、物理的溶解(均質化、浸透圧溶解、超音波細胞破壊)が、細胞破壊のための選択された方法であったが、それは、しばしば高価でわずらわしい設備を必要とし、時には(例えばきつい均質化乳棒と比較してゆるい)装置のばらつきのために繰り返すのが難しいプロトコルを必要とする。近年では、(例えばPoppers Reagens(Pierce Chemicals)を用いる)界面活性剤に基づく溶解が、使いやすさ、低コスト及び効率的なプロトコルによって、非常に普及した。
哺乳類の細胞は、原形質薄膜(細胞含有物を細胞外の環境から分離する障壁を形成するタンパク質脂質二重層)を持つ。原形質膜を構成する脂質は両親媒性であり、閉じた二分子シートを形成するように自発的に会合する親水性及び疎水性部分を持つ。膜タンパク質は脂質二重層中に埋め込まれて、疎水性コアにまたがる一つ以上の領域によってあるべき場所に保持される。加えて、周辺タンパク質は、必須膜タンパク質との又は極性の脂質頭部基との相互作用によって、二重層の内側又は外側の面を結合する。脂質及びタンパク質含有量の性質は、細胞の種類によって変化する。明確に、細胞の破壊のために選択される技術は、物理的であっても界面活性剤に基づくものであっても、調査されている細胞又は組織の起源及びそれらの外層を破壊する際の本来の容易性又は困難を考慮に入れなければならない。加えて、本方法は、処理される材料の量及び意図されたダウンストリームアプリケーションに適合しなければならない。
特定の実施の形態において、タンパク質抽出は、また、異なる区画に由来する細胞タンパク質(例えば細胞外のタンパク質、膜タンパク質、サイトゾルタンパク質、核タンパク質、糸粒体のタンパク質)の事前画分を含む。他の事前画分方法は、物理的特性(例えば等電位点、電荷及び分子重量)に関してタンパク質を分離する。
特定の実施の形態によれば、サンプルは、試剤又はタンパク質分解酵素への最適化されたアクセスのためにタンパク質を変性するために、適切な作用剤(例えば、塩化グアニジウム、尿素、酸(例えば0.1 % trifluoric酸)、塩基(例えば50%ピリジン)及びイオン又は非イオン性界面活性剤)を用いて、タグ付け/ラベリング又は切断の前に前処理される。システイン残基は、ジチオトレイトール(DTT)、2-メルカプトエタノール及び2-メルカプトエチルアミン、並びに、ホスフィン及びそれらの派生物(例えば、トリス(カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)又はトリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン塩酸塩)のような還元剤によって還元される。
特定の実施の形態において、本発明の方法は、本発明のタグ付け又はラベリング方法の前に、(ヒスチジン以外の)アミノ酸の一つ以上の官能基がタンパク質修飾作用剤によって不可逆的に又は可逆的に修正される一つ以上のステップを含むことができる。例は、システインのチオール基を修飾するステップ、シリル化作用剤によってセリン及びスレオニンの水酸基を修飾するステップ、リシンのアミン基をアセチル化するステップ、アスパラギン酸及びグルタミン酸のカルボキシル基を修飾するステップである。そのような修飾の特定の例は、以下で詳細に述べられる。
チオール反応性基は、システインの側鎖と反応する。チオール反応性基は、エポキシド、α-ハロアシル基、ニトリル、スルホン化アルキル又はアリールチオール、ハロゲン化アルキル、アリールアミド及びマレイミドを含む。特定の例は、ヨードアセトアミド又はその派生物である。
アミノ反応性基は、リシンの側鎖のイプシロンアミン基と反応し、又はポリペプチドのN末端においてアミンと反応する。アミノ反応性基は、タンパク質中のアミノ基にタグ付けしスルホニルハロゲン化物、イソシアン酸塩、isothiocyanantesや、テトラフルオロフェニルエステル、ペンタフルオロフェニルエステル、N-hydroxysuccinimidylエステル、N-hydroxysulfosuccinimidylエステル、2-ニトロフェニルエステル、4-ニトロフェニルエステル、2,4-ジニトロフェニルエステル及び2,4-ジハロフェニルエステル、酸ハロゲン化物及び酸性無水物及び混合無水物を含む活性エステルを含む。更に、アミノ反応性基は、NaBH4又はNaCNBH3の有無によらず、アルデヒド又はケトンを含む。
カルボン酸反応性基は、アスパラギン酸及びグルタミン酸の側鎖と反応し、又はポリペプチドのC末端と反応する。カルボン酸反応性基は、ジシクロヘキシルカルボジイミド若しくは2,3,5,6-テトラフルオロフェニルトリフルオロ酢酸のようなカップリング剤の存在下で、並びに、4-ジメチルアミノピリジン及びCu(II)フェナントロリンを含む遷移金属ジアミン複合体のようなカップリング触媒の有無によらず、アミン又はアルコールを含む。
エステル反応性基は、例えば、ホモセリンラクトンと反応するアミンを含む。メチオニンは、CNBr切断においてホモセリンラクトンに変換される。
リン酸塩反応性基は、リン酸化アミノ酸(例えばphosphoSer、PhosphoThr及びPhosphoTyr)と反応する。リン酸塩反応性基は、キレート化された金属を含み、金属は、例えばFe(III)又はGa(III)であり、例えばニトリロ三酢酸又はイミノ二酢酸へとキレート化される。これらの作用剤は、リン酸化アミノ酸(例えばホスホセリン、ホスホスレオニン及びホスホチロシン)と反応する。
アルデヒド又はケトン反応性基は、アミン+NaBH4若しくはNaCNBH3、又は、アルデヒド若しくはケトンを生成するために炭水化物を過ヨウ素酸塩で最初に処理した後のこれらの反応物を含む。
ヒドロキシル反応性基は、セリン及びスレオニンと反応する。ヒドロキシル反応性基は、トリチルハロゲン化物又はシリルハロゲン化物反応性部分を含み、それらは置換されるか又は置換されない。
特定の実施の形態によれば、本発明のタグ付け及びラベリング方法は、切断ステップを含み、それによって、一つ以上のタンパク質サンプルのタンパク質は、ペプチドへと処理される。この切断ステップは、タグ付け/ラベリングステップの前又はその後に行われることができる。この切断ステップは一般に、全長のタンパク質より小さなペプチドの分析を可能にするために実行される。タンパク質よりもペプチドのほうが、高スループットシステム(例えばLC)で分離し、MS/MSでペプチドから配列データを翻訳することが容易である。
ペプチドを切断することは、種々の切断作用剤によって達成されることができる。タンパク質切断のための適切な化学物質は、臭化シアン(CNBr)、BNPSスカトール(2-(2'-ニトロフェニルスルホニル)-3-メチル-3-Bromoindolenine)、蟻酸、ヒドロキシルアミン、ヨード安息香酸、NTCB+Ni(2-ニトロ-5チオシアノベンゾイド酸)を含む。適切なタンパク質分解酵素は、Asp-Nエンドペプチダーゼ、カスパーゼ1, 2, 3, 4, 5, 6, 7, 8, 9又は10、キモトリプシン、クロストリパイン、エレテロキナーゼ、要因Xa、グルタミルエンドペプチダーゼ、グランザイムB、LysCリジルエンドペプチダーゼ、パパイン、ペプシン、プロリンエンドペプチダーゼ、プロテイナーゼK、ブドウ球菌性ペプチダーゼI、サーモリシン、トロンビン、トリプシンを含む。
タンパク質サンプルの種類に応じて、化学切断及び酵素切断の組み合わせが実行され、又は二重酵素消化が実行される。
特定の実施の形態によれば、タンパク質の切断は、最高の特異性(リシン及びアルギニン)及び効率を有する酵素であるトリプシンを使用して実行される。脊椎動物では、リシンは、7.4%の頻度でタンパク質中に存在し、アルギニンは4.2%の頻度で存在する。そしてトリプシン消化は、平均長さがアミノ酸9個であるペプチドをもたらす。あるいは、リシンがトリプシンに対する基質としてもはや作用しないように変更されている場合、平均長さがアミノ酸25個であるペプチドが、トリプシン切断によって形成される。そのようなペプチドは、クロマトグラフィ技術及びMS技術に非常に適している。
したがって、本発明の特定の実施の形態は、タグ付けされた/ラベル付けされたタンパク質がトリプシンによって消化される切断ステップの前に、タグ付け/ラベリングステップを含む方法を提供する。より詳細な実施の形態によれば、消化の前に、ラベル付けされたタンパク質は、トリプシン消化が実行される前にリシンの側鎖を修飾するためにアセチル化剤で処理される。修飾されたリシンは、トリプシンに対する基質として認識されない。しかしながら、修飾されていないシステイン残基は、ホモアルギニンを形成するための例えば酢酸無水塩のようなアセチル化剤と反応した場合、トリプシンの基質になることを考慮すべきである。したがって、これらの方法のさらに特定の実施の形態は、システイン残基がリシンの修飾の前に修飾されるステップを含む。さらに、アセチル化剤によるポリペプチドの処理の結果として、ポリペプチドのアミノ末端もアセチル化されることが注意されなければならない。ペプチドのアミノ末端が、(例えば二重ラベリングを伴う方法(以下参照)における)更なるラベリングステップに対して検討される場合、これは重要である場合がある。
本発明の方法において、タグ付け/ラベリングステップでタグ付け/ラベル付けされるがタンパク質切断サイトを持たない、タンパク質サンプル中に存在するヒスチジン含有タンパク質は、それ自体、他のペプチドのように残りの分析において処理される。したがって、ヒスチジンを含まないタンパク質又はペプチドは、本発明の方法の親和性精製ステップにおいてサンプルから除去されて、分析において考慮されない。
本願明細書において記載されるタグ付け及びラベリング試剤を利用するタグ付け及び/又はラベリング方法は、一般的に、MSを用いたタンパク質サンプルの分析に関して有用である。MSを用いたタンパク質サンプルの分析は一般的に、実際のMSの前に、一つ以上のペプチド分離技術による個々のペプチドの精製を必要とする。したがって、分析されるタンパク質サンプルが複合体である場合、本発明の方法は一般的に、一つ以上のペプチド分離ステップを含み、一つのサンプル又はプールされたサンプル混合物は、タグ付けされた/ラベル付けされたポリペプチド又はペプチドをポリペプチドサンプル混合物から選択的に単離するために、一つ以上のペプチド分離技術を受ける。(ラベル付けされた又はタグ付けされたペプチドの単離に関連して)複合のタンパク質又はペプチドサンプルの二つ以上の複数の画分への分離を可能にする適切な分離技術は、当業者に知られており、等電点電気泳動、SDS PAGE、二次元ゲル電気泳動、サイズ排除クロマトグラフィ、イオン交換クロマトグラフィ、逆相HPLC、親和性クロマトグラフィなどを含む(但しそれらに限られない)。
サンプルがより大きなペプチド(例えばMr 3000から100.000の間)から成る場合、2次元GEが用いられることができる。例えばタンパク質分解消化から得られたペプチドサンプルに対して、2次元LCアプローチは分離により適しており、また自動化及びスループットが著しく向上する。液体クロマトグラフィによってタンパク質/ペプチド消化物を分離するいくつかの技術(逆相-(RP)-HPLC及び2次元液体クロマトグラフィ)が記載された。また、キャピラリー電気泳動法(CE)は、ペプチドの分離に適している方法である。
2D-LCは一般的に、逆相カラムに直結されて一連のサイクルで動作するイオン交換カラム(通常、強陽イオン交換(SCX))を使用する。各々のサイクルにおいて、ペプチドをそれらのイオン電荷に従って逆相システム中に溶出するために、塩濃度はイオン交換カラム中で増加する。ここで、ペプチドは、例えばCH3CNの勾配によって、疎水性に基づいて分離される。
多くのパラメータが、分解能及びその後LC-MSによって表示されることができるタンパク質の数に影響する。通常、1次元分離技術(SCX)と2次元RP-HPLC分離アプローチとの間の「直結」構成が、サンプル画分のために準備される。イオン交換クロマトグラフィは、塩濃度の増加又は塩の勾配による階段的溶出法によって実行されることができる。一般的に、SCXは、SCXクロマトグラフィの間の疎水性相互作用を最小限にするために、例えば最大30%のアセトニトリルの存在下で実行される。例えばC18カラムでの逆相クロマトグラフィの前に、アセトニトリルのような有機溶媒は除去され、又は例えば蒸発によって強力に低減される。
本発明のタグ付け及びラベリング方法は、以下の例示的なスキームによって以下で説明される。
本発明の方法の一つの実施の形態は図3で示され、二硫化物を含むリンカーを介して接続されるビオチン親和性タグを有するボロン酸タグ付け試剤を用いたタンパク質サンプルのタグ付けが、例として挙げられている。
第1のステップにおいて、細胞溶解物中のタンパク質は変性され、そしてシステインはヨードアセトアミドによるカルボキシメチル化によって修飾される。次のステップにおいて、タンパク質は、トリプシンによってペプチドへと切断される。その後で、ヒスチジンを有するペプチドは、ヒスチジン反応性タグ付け試剤によってラベル付けされる。タグ付けされたペプチドは、ヒスチジンにタグ付けされたペプチドがそこに結合する捕捉試剤としてアビジンを有するマトリクスに結合される。非結合ペプチドの除去の後、ペプチドは、結合された親和性タグからペプチドを切断する還元剤(例えばジチオトレイトール)によってアフィニティーマトリックスから除去される。溶出されたペプチドは、引き続いて一次元又は二次元のクロマトグラフィによって分離されて、MSによって分析される。
本発明の方法の更なる実施の形態が図4に示される。図4によって示されるラベリングスキームは、本明細書において記載されるようにヒスチジン反応性基であるタンパク質反応性基(PRG)を含む、本発明によるラベリング試剤を用いた4つのタンパク質サンプルのラベリングを伴う。
前処理ステップにおいて、サンプルは変性されて還元され、そして引き続いて、全てのシステインはカルボキシメチル化によって修飾され、全てのリシンのアミンが修飾される。ラベリングスキームのそれぞれのステップは以下を含む。
4つのタンパク質サンプルは、本発明の実施の形態による一セットのラベリング試剤のうちの1つによって、各々ラベル付けされる。各々のラベリング試剤は異なる同位体ラベル成分を持ち、ラベリング試剤は、ジスルフィド基を含むリンカーを介してPRGに接続しているビオチン親和性タグを有する。
ラベリングの後、全てのサンプルは、個々のサンプルの処置に起因するバリエーションを減少させる一つの反応混合物として、プールされて処理される。
そのように得られた、ヒスチジンにラベル付けされてプールされたサンプル混合物はトリプシンによって消化される。
更なる分析のためのペプチドの数を低減するために、ラベル付けされたペプチドは、ペプチド上にラベリング試剤によって導入されたビオチン親和性タグを介して単離される。これは、(ストレプト)アビジン親和性技術を使用して実行される。親和性タグは、還元条件の中でそれらを培養することによって、ラベル付けされたペプチドから除去される。
親和性ステップの後、単離されたペプチドの各々は、修飾されたヒスチジンを含み、同位体ラベルを運ぶ。結果的に、すべてのペプチドはMSによる分析において有益である。本方法はさらに以下のステップを含む。
プールされたペプチドは、例えば液体クロマトグラフィによって分離される。ここで、同一であるが異なるサンプルに由来し、したがって異なってラベル付けされたペプチドは、本質的に同じように振舞う。異なるサンプルに由来する同一のペプチド上に存在する異なる同位体ラベルにもかかわらず、各々のラベルセット中の異なるラベルが同じ化学式又は基本的に同じ化学式を持つので、これはそれらの溶出に影響を及ぼさない。
各々の分離されたペプチド画分は、MSによって分析され、それは、異なる質量によって、「より軽い」又は「より重い」同位体ラベル成分の存在に対応する4つの信号を生成するはずである。
上で示される本発明の方法の特定の実施の形態は、4つの異なる同位体ラベルによる一セットのラベリング試剤を使用する。異なる同位体のより多くの組み合わせが可能であるラベリング試剤のセットが用いられる場合、より多くのサンプルが同時に分析されることができる。あるいは、等重ラベリング試剤が利用されることができる。
上記の例示的なラベリングプロトコルは、例えばそれぞれのサンプルにおける個々のタンパク質の発現レベルの差を決定することに適している。特定のアプリケーションに応じて、異なる他のプロトコルが想定される。
本発明の方法は、例えば疾患に関連するバイオマーカの検出に有用である。疾患のサンプルを比較する(例えば疾患vs.対照標準)場合、サンプルによっては、多数のタンパク質が存在し、したがって多数のペプチドがMS及びMS/MSによって分析されなければならない。この量は、数百、又は千以上である場合がある。しかしながらそれらの多くにとって、その存在及び相対的な量は、異なるサンプルにおいて同じである。但し、異なるサンプル中の存在及び相対的な量における有意な差が、疾患の状況に関連がある限られた数のペプチドに対して観測される場合がある。
これらのサンプルから得られるヒスチジン含有ペプチドの分析は、配列分析によって、又は後述するように、データベースとの比較によって、ペプチドが由来するタンパク質を決定することを可能にする。同じタンパク質からの異なるペプチドに対して、同一の発現レベルが検出されることが観察される場合、この分析はさらに信頼性が高い。
いうまでもなく、本発明のラベリング方法は、プロテオミクス、タンパク質発現プロファイリング、バイオマーカ発見及びターゲット発見に適用可能である。
本発明の方法のいくつかの実施の形態によって得られるような高多重化は、一つの実験で複数の異なる状況を分析することを可能にする。本方法は特に、異なる疾患状態から得られるサンプルの発現プロファイルを検査するために有用である。分析されるサンプルは、健康な人物、良性疾患をもつ人物、(軽度の又は侵攻性の)悪性疾患をもつ人物のうちの一つ以上、治療に反応する又は反応しない人物、体の異なる部分に現れる疾患を持つ人物、治療前、治療中及び治療後の人物、異なる治療方法を受けている人物、あるいは一つ以上の疾患の症状を持つ健康な人物に由来する。本発明に関連して考慮される疾患は、細菌又はウィルス感染、免疫学的疾患、心血管性疾患及び癌を含む。
上記の実施の形態は、本発明によって提供されるタグ付け及びラベリング試剤並びに例示的なその使用方法の最も直接的なアプリケーションを示す。本発明のタグ付け及びラベリング試剤は、例えば、ヒスチジンと異なるペプチドの官能基、より詳しくは、切断の後のペプチドのN末端若しくはC末端のアミノ基又はカルボキシル基を通したラベリングを保証する他のラベリング試剤と組み合わせて、より複雑なアプリケーションに用いられることもできる。したがって本発明はさらに、タンパク質サンプルのペプチドが、本発明のタグ付け試剤を用いてタグ付けされて、タグ付けステップの前又はその後に行われることができるラベリングステップにおいて、試剤と反応する方法を想定する。本発明のヒスチジン特異的ラベリング試剤は、また、二重ラベリング方法に適しており、第1のラベリングは、本発明のラベリング試剤によってヒスチジンに実行され、そして第2のラベリングは、タンパク質又はペプチド中の他の官能基に実行される。一つの実施の形態によれば、先ずサンプル中のタンパク質がヒスチジンにラベル付けされて、その後、タンパク質は切断される。切断されたペプチドは、それからN末端又はC末端(すなわち、全ての切断されたペプチドに存在する官能基)のいずれかにラベル付けされる。ヒスチジン含有ペプチドの単離は、第2のラベリングステップの前か後に実行されることができる。他の実施の形態によれば、サンプル中のタンパク質は、まず切断されて、その後N末端又はC末端がラベル付けされる。その後、これらのラベル付けされたペプチドは、本発明のラベリング試剤によって、ヒスチジンにさらにラベル付けされる。そして、二重にラベル付けされたペプチドは、親和性精製によって単離される。
上で記載される二重ラベリング方法において、第2のラベリング試剤の性質は、使用される本発明によるラベリング試剤の性質に依存する(逆もまた同様)。一般的に、等重試剤及び同位体試剤の組み合わせが用いられ、本発明のヒスチジン反応性ラベリング試剤は、同位体ラベル又は等重ラベル成分を含むことができる。非常に特定の実施の形態において、一つのラベリングは、等重ラベルを含むヒスチジン反応性ラベリング試剤によって実行され、もう一方のラベリングは、切断されたペプチドのC末端における1つ又は2つの18O同位体のタンパク質分解酵素(例えばトリプシン)媒介組込みによって実行される。タンパク質分解酵素媒介18Oラベリングは、Heller et al. (2003) J. Am. Soc. Mass Spectrom. 14(7), 704-718 及び Schnolzer et al. (1996) Electrophoresis 17, 945-953に記載されるように実行される。
本発明の更なる態様は、タグ付け試剤に対して上で説明されたヒスチジン含有ペプチドの選択的なタグ付け及び単離、タグ付けされたヒスチジン含有ペプチドの質量の決定、並びに、ヒスチジン含有ペプチドのデータベースとの比較に基づいた単離されたヒスチジン含有ペプチドの同定に基づいて、サンプル中のタンパク質を同定するための方法を提供する。より具体的には、本発明の同定方法は、サンプルのタンパク質をペプチドへと切断すること、本発明のアリールボロン酸タグ付け試剤を用いてヒスチジン含有ペプチドに選択的にタグ付けした後、それを選択的に単離してさらに精製すること、単離したHis含有ペプチドの質量を決定すること、並びに、単離したHis含有ペプチドのこの質量及びオプションとして一つ以上の他の生理化学的な特性をHis含有ペプチドのデータベースと比較することを含む。したがって、本発明のこの態様は、混合物から精製されたヒスチジン含有ペプチドの質量をMSによって決定して、特定された質量を質量のデータベースと比較することによってペプチドを特定することに関する。本発明の方法は、MS/MSでの新規の配列決定を必要とすることなく、高精度で、ヒスチジン含有ペプチド(したがって、それらの対応するペアレントタンパク質)の同定を可能にする。
提案された手法の利点は、全てのタンパク質のヒスチジン含有ペプチドが、ゲノムが配列決定された生体(例えばヒト、マウス及びラットや、ショウジョウバエ、線虫及び酵母のような下等生物)で知られていることである。これらのペプチドの正確な分子量は、予測されることができ、測定されたマススペクトル信号の基礎となっているペプチドの同定をサポートするために用いられることができる。これは特に、およそ>500,000程度の分解能及び<1ppmの質量精度を達成することができるFT-ICRのような現在利用可能な高性能質量分析技術に対して確かである。
さらに、予想されるヒスチジン含有ペプチドの性質がゲノム配列のin silico分析から知られているので、合成ペプチドのライブラリが生成されることができ、調製プロセスの間の各々のペプチドの正確な特性(例えば、異なるクロマトグラフィの材料上の滞留時間、ESI/MALDI-TOFにおける挙動)が決定されることができ、複合タンパク質混合物から同定されたペプチドと比較されることができる。これは、正確なタンパク質同定の信頼性を著しく改善する。
したがって一般的に、このデータベースは、特定の生物体のプロテオームを切断するときに特定の切断試剤によって生成される全てのヒスチジン含有ペプチドの質量を含むデータベースである。より具体的には、そのようなデータベースは、ペプチド識別子によって特定されるこれらのペプチドの質量を含み、ペプチドが由来する一つ以上のペアレントタンパク質に関する情報を含む。データベースとの単離したペプチドの質量の比較は、ペアレントタンパク質の同定を可能にする。
ペプチド中のヒスチジンとのアリールボロン酸の反応により、少なくともベンジル基がペプチドに取り付けられる。この基は、UV光を吸収して、修飾されるヒスチジンごとにペプチドの質量を少なくとも78増やす。それゆえ、この重量変化(及び潜在的に他の特性)は、MS分析で、したがってデータベースとの比較で、考慮されなければならない。親和性タグが除去されない場合、又は追加のラベリング成分が追加される場合、単離及び精製されたタグ付きペプチドの質量は、さらに増加する場合がある。オプションとして、データベース中に提供される質量は、その中に存在する各々のヒスチジンに対するタグ又はラベルを持つ又は持たないベンジル基の存在のために修正されることができる。
本発明によれば、サンプルの中のタンパク質の同定は、オプションとして、ヒスチジン含有ペプチドの一つ以上の他の生理化学的な特性を考慮することを含む。オプションとして、単離されたペプチドの質量が、データベース中の複数のペプチドに対応する場合、確実な同定を可能にするために、その一つ以上の生理化学的な特性は比較において考慮されることができる。
一般的に、本発明のこの態様によってサンプル中のタンパク質の存在を同定する方法は、タンパク質サンプル中の全てのヒスチジンに選択的にタグを付けるために、銅触媒の存在下で、本明細書に記載される一般的な構造(I)を有するタグ付け試剤にタンパク質を接触させることによって、タンパク質サンプル中のヒスチジン含有タンパク質を修飾するステップを含む。本方法はさらに、切断試剤によってタンパク質サンプル中のタンパク質をペプチドへと切断するステップ、及びこれらの生成されたペプチドからヒスチジンを含むペプチドを、親和性タグを介して単離するステップを含む。更なるステップにおいて、精製されたヒスチジン含有ペプチドを得るために、単離されたヒスチジン含有ペプチドは、一つ以上のペプチド精製ステップによって精製される。さらに、又はこれらのペプチド精製ステップの間に、精製されたヒスチジン含有ペプチドの、質量以外の少なくとも1つの物理化学的特性が決定される。あるいは、この少なくとも1つの追加の物理化学的特性は、ペプチド精製ステップの間に得られる情報に基づいて計算されることができる。次のステップにおいて、単離及び精製されたヒスチジン含有ペプチドの質量は、MSで決定される。最後に、各々の単離及び精製されたヒスチジン含有ペプチドに対して、質量及び少なくとも1つの他の物理化学的特性が、上述のように全てのヒスチジン含有ペプチドの質量及び一つ以上の物理化学的特性を含むデータベースと比較される。
データベースを用いたペプチドの正確な同定を保証するために、切断試剤によるサンプルの理論上の切断パターンは、可能な限り密接に実験的状況に対応しなければならない。例えば、メチオニンをC末端で切断するためにCNBrを使用すると、結果としてトリプトファンのC末端切断をもたらす場合もあることを考慮することが必要な場合がある。C末端で優先して芳香族アミノ酸を切断するキモトリプシンは、さらに、培養時間及びサンプル中の酵素濃度により、C末端で他の疎水性アミノ酸を切断する。
また、データベースを用いたペプチドの確かな同定を可能にするために(すなわち、データベースが異なるペアレントタンパク質に由来する最大限の数の異なるペプチド及び最小限の数の同一のペプチドを含むために)、生成されるペプチドの平均サイズが重要である。ペプチドが短いほど、異なるタンパク質からのペプチドが同じ質量及び同じ配列を持ち、精製及び分析方法において同じように振舞う可能性が高い。したがって、サンプルの性質及び複雑度に応じて、あまり一般的には存在しない切断サイトに関する酵素が好ましい場合がある。
オプションとして、本発明の同定方法は、サンプル(内部標準)の分析の間又は試運転中の対照ペプチドの分析を含む。
この実施例において、合成ヒスチジン含有ペプチドの一つ以上のライブラリが生成され、調製プロセスの間の各々のペプチドの正確な特性(例えば、異なるクロマトグラフィ材料上の滞留時間、ESI/MALDI-TOFにおける挙動)が決定される。生成されたペプチドがタンパク質サンプルから生成された特定のペプチドと同一である場合、合成ペプチドに対して生成された情報は、天然ペプチドに対して得られたデータと比較するために用いられることができる。これは、正確な同定の信頼性を著しく改善することが期待される。
上でタグ付け及びラベリング方法に関連して説明されるように、本発明の同定方法の特定の実施の形態は、その高度な特異性及び効率を考慮して、トリプシンを用いた切断ステップを含む。あるいは、Lys及びArgの両方における切断があまりに短いペプチドに結びつく場合、エンドプロテイナーゼArg-C(アルギニン特異性)、エンドプロテイナーゼLys-C(リシン特異性)、黄色ブドウ球菌V8タンパク質分解酵素(Asp/Glu特異性)のような、他の酵素が用いられることができる。あるいは上述のように、リシンの側鎖は、アルギニン残基(及びオプションとして、ホモアルギニンにアセチル化されてトリプシンの基質になる無修飾システイン(上記参照))に対するトリプシン切断を制限するために、アセチル化によって修飾される。
本発明の同定方法は、ペプチドの物理化学的特性に関するデータをペプチドのデータベースのデータと比較することに基づく同定ステップを含む。
したがって、本発明の方法の一つ以上の分離ステップにおいて得られる各々のペプチド画分に対して、分離方法における(例えばクロマトグラフィの間の)ペプチドの挙動に関するデータが、収集され、記憶される。そのようなデータは例えば、精製が実行されたpH、ペプチドが逆相カラムから溶出する有機溶媒の割合、ペプチドがイオン交換マトリクスから溶出する所与のpHにおける塩濃度、ペプチドが所与のpHにおいて特定の樹脂に結合するか(又は結合しないか)などを含む。
さらに又はあるいは、本発明の方法におけるペプチド分離及び精製ステップから直接得られない更なるデータが、各々のペプチドに対して収集されることができる。したがって、各々のペプチドに対して、単離されたペプチドの一部は、精製の間に決定されない特性を決定するための分析を実行するために保存されることができる。そのような分析は、例えば溶解度や、水/有機溶媒系における分配係数の決定、特定のアミノ酸側基(例えば-OH、-SH、-NH2)の検出などを含む。
本発明の同定方法の更なるステップにおいて、上述のように単離されたヒスチジン含有ペプチド画分は、質量分析によって分析される。
なお、本発明の同定方法は、一つのサンプルの中のタンパク質の同定のために又はプールされたサンプル混合物の中のタンパク質の同定のために用いられることができる。後者の場合、サンプル中のヒスチジン含有タンパク質のタグ付けに加えて、サンプルは、精製されたタグ付きペプチドの起源の同定を可能にするために、区別してラベル付けされる。特定の実施の形態によれば、区別ラベリングは、ヒスチジン含有ペプチドを同時にタグ付けとラベリングすることを可能にする本発明のラベリング試剤を用いて保証される。したがって、2つ以上のサンプルがプールされたサンプル混合物として同時に分析される場合、ペプチド画分は、潜在的に、区別してラベル付けされた同一のヒスチジン含有ペプチドを含む。
同定用のin silicoデータベースとの比較を可能にするMSスペクトルにおけるヒスチジン含有ペプチドの質量の正確な決定は、高分解能マススペクトロメータの高い質量精度で達成される。スペクトロメトリによる質量測定は、気相への検体のイオン化によって実行される。イオン化された分子の質量電荷比(m/z)が決定され、そして個々のm/z値の各々に対するイオンの数がカウントされる。そして、MSスペクトラムの各々の特徴は、2つの値、m/z及び検出されるイオンの数の測度によって定められる。
上記のように、本発明の同定方法の更なるステップにおいて、ヒスチジン含有ペプチドの実験的に決定された質量は、データベース中のin silicoで生成されたペプチドの質量と比較される。
ペプチドの質量は、そのアミノ酸組成と関連づけられる。しかしながら、質量だけに基づいて明確にペプチドを特定することは必ずしも可能ではない。例えば、質量だけでは、アミノ酸組成が同じで異なる配列を持つペプチド同士(A1-A2-A3-A4-A5に対してA5-A1-A2-A3-A4)を区別することができない。さらに、特定の質量が、異なる配列を持つ一セットのペプチドに対応する場合がある。例えば、長い側鎖を伴うアミノ酸を持つ短いペプチドが、短い側鎖を伴うアミノ酸を持つ長いペプチドと同じ質量を持つ場合がある。
本発明で説明されるヒスチジン含有ペプチドのタグ付け及び単離を用いることによって、タンパク質サンプルから生成されるペプチドの数は、サンプルの酵素消化によって生成されるペプチドの総数と比べて著しく低減される。したがって、同定に用いられるin silicoトリプシンペプチドデータベースはさらに、ヒスチジン含有ペプチドだけを含むことを必要とする(いわゆるヒスチジン含有ペプチドデータベース)。
既存のタンパク質及び配列データベースは、任意の生物体のプロテオームに対応するヒスチジン含有ペプチドデータベースを生成するための基礎として用いられることができる。生体の絶えず増大するリストに対して、完全なゲノム及びそこから導き出されるプロテオームが知られている(www.ncbi.nlm.nih.gov/genomes)。したがって、in silicoヒスチジン含有ペプチドデータベースが生成されることができ、タンパク質切断及びペプチド単離がシミュレートされる。切断試剤の能力に基づいて、データベースは、切断が不完全であるペプチドを含むことができる。
本発明のこの態様に関連して適切なヒスチジン含有ペプチドデータベースにおいて、各々のエントリは、ペアレントタンパク質の名前及び対応するヒスチジン含有ペプチドの質量を含む。天然の翻訳後修飾(例えばセリン、スレオニン及びチロシン上のリン酸化)、サンプルの処理(例えばアスパラギン及びグルタミンの脱アミド)、又はタンパク質の修飾/ラベリング及びヒスチジン含有ペプチドの単離の間に導入される修飾によって引き起こされる質量差、特に、少なくともアリールボロン酸によるラベリングに起因するベンゼン環による質量の増加を計算するために、各々のエントリに対してアミノ酸組成も重要である。
しかし、実験用のヒスチジン含有ペプチドの質量は、対応するヒスチジン含有ペプチドデータベース中の異なるペプチドに対応する可能性がある。したがって、タンパク質の予想される性質に関する情報がほとんど存在しないサンプルのような特定のサンプルに対して、そのようなデータベースは、ヒスチジン含有ペプチドのペアレントタンパク質をそのペプチドの質量だけに基づいて特定するためには十分に有益ではない。したがって、本発明の同定方法の特定の実施の形態は、m/z比のみに基づくのではなく、一つ以上の追加の特性(例えば長さ(アミノ酸の数)、アミノ酸配列、重量、疎水性、等電位点など)を考慮することによるヒスチジン含有ペプチドの対応するペアレントタンパク質の同定を提供する。
本発明の特定の実施の形態によれば、ヒスチジン含有ペプチドのデータベースは特定の切断試剤のプロテオーム、及びサンプルの起源に対応する所与の化学種のこれに対応する。そのようなペプチドデータベースはさらに、注釈付スプライス変異を含む。本発明の方法において用いられるin silicoペプチドデータベースは、アミノ酸の長さ、アミノ酸配列、分子量、疎水性、等電位点などのようなヒスチジン含有ペプチドの計算された特性を含む。
生体内ソースに由来するタンパク質は、しばしば、例えばアセチル基、ホルミル基又はピログルタミン酸残基(それらの全ては質量スペクトラムにおいて決定されるm/zに影響する)によって翻訳後修飾されていることが考慮されるべきである。したがって、本発明の一実施例において、合成ヒスチジン含有ペプチドは、コンピュータで計算されたペプチド特性を検証するための参照標準として用いられる。
合成ペプチドライブラリからの情報は、質量スペクトロメトリーペプチドピークの性質の同定を容易にするために用いられ、それによってオプションとして初めからの配列決定を不要にする。同定は、in silicoペプチドライブラリ中に記憶される利用可能な情報と比較されるHPLC滞留時間、等電位点及び質量スペックm/z値のような測定された特性に基づく。
ヒスチジン含有ペプチドのm/zデータと組み合わせて、本発明の方法によるデータベースとの比較により、ペアレントタンパク質の更なる明確な同定をオプションとして可能にするいろいろな種類の物理化学的データが考慮される。
想定されるデータの一つの種類は、配列情報から予測されるデータ、並びに/又は、ペプチド精製ステップ及びMSの間に測定されることができるデータ(例えば、等電位点、異なるpH値での総電荷、RP HPLCでの仮定的な滞留時間、214及び280nmでのUV吸収、所与のpH及び塩濃度においてイオン交換カラムから溶出する傾向、疎水性、親水性)である。
疎水性は、例えばBull及びBreeseのアルゴリズム((1974) Arch. Biochem. Biophys. 161, 665-670)によって計算されることができる。等電位点は、例えばwww.expasy.ch/ tools/pi_tool.htmlに基づいて計算されることができる。逆相カラム上での滞留時間は、例えばKrohkin et al. (2004) Mol. Cell. Proteomics 3, 908-919の方法によって予測される。
さらに又はあるいは、本発明の同定方法に関連して用いられるデータベースは、追加の実験において取得され、ペプチド精製には直接由来しないデータを含む(例えば、溶解度に関するデータ、水/有機溶媒二相系上での分離、タンパク質反応性基(OH、NH2、SH)の検出の分析、電離電圧、双極子モーメント、水素結合能力及び気相中のイオン移動度。但しこれらに限られない)。
したがって、「注釈付き」ヒスチジン含有ペプチドデータベース(すなわち同定目的に用いられることができる追加の物理化学的特性を含むデータベース)との比較に基づく同定を提供する本発明の方法は、増加した精度で対応するペアレントタンパク質の同定を可能にする。
オプションとして、追加として、又は、上で説明された追加の物理化学的パラメータの代わりに、本発明に関連して用いられるヒスチジン含有ペプチドデータベースは、ペアレントタンパク質を特定することをさらに補助する、ペアレントタンパク質の発現パターンに関する情報などを更に含む。ペアレントタンパク質が、タンパク質内で偶然ヒスチジンを含む唯一の配列であるように保全されたペプチド配列を除いてアミノ酸配列において異なる場合、注釈付ヒスチジン含有ペプチドデータベース中のこれらのペプチドの対応するエントリは、同一の質量及び同一の物理化学的特性を有するヒスチジン含有ペプチドを示す。生体の発現の間のペアレントタンパク質の考えられる特異な発現、即ち組織特異的発現に関する詳細を有するこれらのエントリの更なる注記は、それでもやはり、正しいペアレントタンパク質を単離されたヒスチジン含有ペプチドに割り当てることを可能にする。実際に、タンパク質サンプルの起源に応じて、それぞれの可能性があるペアレントタンパク質から、その発現がサンプルの発現と合致する一つを選択することが可能である。
本発明の同定方法において、各々のペプチドに対して、質量が決定されて、注釈付ヒスチジン含有ペプチドデータベースと比較される。したがって、単離されたペプチドの測定された質量に対応する計算された質量を持つデータベースエントリが選択される。MS装置及びサンプルの種類に応じて、比較は、モノアイソトピック質量で又は平均質量で行われる。
モノアイソトピック質量が用いられる場合、一般的に、0.1質量単位の測定誤差が、データベースからエントリを選択するために含まれる。平均質量が用いられる場合、一般的に1 Daの測定誤差が、データベースからエントリを選択するために含まれる。測定された質量がデータベース中の一つのエントリだけと一致する場合、ペアレントタンパク質は直ちに特定される。
特定の実施の形態によれば、測定された質量がデータベース中の複数のエントリに対応する場合、全てのこれらのエントリはサブセットとして選択される。更なる同定は、データベース中のエントリのこのサブセットに対する物理化学的パラメータとの単離されたペプチドの物理化学的パラメータの比較に基づいて実行される。一般的に、ペプチド精製ステップから直接導き出されることができる物理化学的パラメータが、最初に考慮される。特定の実施の形態によれば、少なくとも3つの物理化学的特性が考慮され、同定は「最良適合(best fit)」分析に基づいて実行される。一つの追加のパラメータだけが考慮される場合、そのパラメータは主に、同じ質量を有するヒスチジン含有データベース中のペプチドのサブセット内でのそのパラメータの識別力によって選択される。例えば、実験的に決定されたペプチドの質量に対応する質量を有するヒスチジン含有ペプチドデータベース中の異なるペプチドが、異なる量の芳香族アミノ酸を持つ場合、214及び280nmにおけるUV吸収が選別基準として用いられることができる。しかしながら、本発明のアリールボロン酸タグ付け又はラベリング試剤を用いることにより、芳香環が各々のヒスチジン含有ペプチド中に組み込まれることに留意すべきである。他の例において、同じm/z比を有するデータベース中の3つのペプチドのセットで、これらがすべて同じ総電荷を持つが、電荷の分布が異なる(例えば、一つのペプチドが荷電アミノ酸を持たず、もう一つが一つのArg及び一つのAspを持ち、そしてもう一つが2つのArg及び2つのAspを持つ)場合、イオン交換での挙動が、単離されたペプチドをデータベースのサブセット中の一つの特定のペプチドに関連づけるための基準として用いられることができる。
本発明の更なる態様は、単一タンパク質サンプルの分析又は異なるサンプル中のタンパク質の同時同定及び/若しくは定量化のためのツール並びに装置を提供する。上で詳細に述べられたように、本発明の方法の特定の実施の形態は、単離されたラベル付きポリペプチド又はペプチドの相対的な発生頻度の質量分析による分析及びその後のペプチドの同定を含む。
したがって、本発明の方法を実行するための装置は、一つ以上の質量分析機器を含む。
スペクトロメトリによる質量測定は、検体の気相へのイオン化によって実行される。典型的な質量分析機器は、3つのコンポーネント、関係する分子からイオンを生成するためのイオン源、イオン化された分子の質量電荷比(m/z)を決定する質量分析器、及び個々のm/z値の各々のイオンの数を記録してカウントする検出器から成る。MSスペクトラムにおける各々の特徴は、2つの値、m/z及び機器の検出器に到達したイオンの数に関する測度によって定められる。
スペクトロメータでの質量分析のためのタンパク質又はペプチドのイオン化は、通常、エレクトロスプレーイオン化(ESI)又はマトリクス支援レーザ脱離/イオン化(MALDI)によって実行される。
ESIプロセスの間、検体は溶液から直接イオン化され、したがってESIはしばしば、液体クロマトグラフィ分離ツール(例えば逆相HPLC)に直接結合される。MALDIは、このプロセスをより効率的にするためにレーザエネルギーを吸収するニッケイ酸のような小さな有機分子と混合された乾燥試料をレーザパルスを介して蒸発させる。
質量分析器は、質量スペクトロメータの重要なコンポーネントであり、重要なパラメータは、感度、分解能及び質量精度である。プロテオミクスに現在用いられている5つの基本的な質量分析器がある。これらは、イオントラップ、飛行時間(TOF)、四重極、Orbitrap及びフーリエ変換イオンサイクロトロン(FTICR-MS)分析器を含む。タンデムMS即ちMS/MSは、時間で(イオントラップ)、並びに(例えばLTQ-FTICR、LTQ-Orbitrap、Q-TOF、TOF-TOF、トリプルクワッド及びハイブリッドトリプル四重極/線形イオントラップ(QTRAP)のような全てのハイブリッド機器により)位置で、実行されることができる。
本発明のタグ付け方法を用いたタンパク質サンプルの分析は、オプションとして、MS/MSによる生成されたペプチドの更なる同定を含む。あるいは、データベースとの比較に基づく本発明の同定方法は、MS/MS分析を回避するために用いられることができる。
本発明の方法が同位元素的にラベル付けされたペプチドのプールされた混合物の分析を含む場合、単離されたラベル付きペプチドの混合物から単離されたそのような1つのラベル付けされたペプチドに対して質量スペクトロメータで生成されるスペクトラムは、ペプチドが区別してラベル付けされる際に用いられた異なる同位体ラベル成分間の固有の質量差を有する一セットのピークを含む(このポリペプチドが存在するタンパク質がサンプルのうちの1つにおいて全く表現されない場合、ピークの数はより少ない)。あるいは、区別ラベリングにおいて用いられるラベル成分が等重である場合、単一のピークがMSで生成される。このピークにMS/MSにおけるCIDを受けさせることによって、同一の質量を有する対応するペプチドは、対応する異なってラベル付けされたペプチドの存在の同定のために、等重ラベル成分のレポーター基を放出するようにさらに断片化される。ポリペプチドのMr、アミノ酸組成又はアミノ酸配列に基づいて、個々のペプチドの身元が決定される。
本発明の方法の実行に適した装置は、オプションとして、電気泳動機器、クロマトグラフィ機器(例えば、毛細管電気泳動(CE)機器、逆相(RP)-HPLC機器及び/又は二次元液体クロマトグラフィ機器など(但しそれらに限られない))のような一つ以上の適切な分離機器を含む又はそれに接続される。
上で詳細に述べられたように、本発明の方法はオプションとして、上記のサンプル調製方法の一つ以上を含む前処理ステップにおいて実行されることができるサンプルの前処理を含む。したがって、本発明の方法に適した装置はオプションとして、サンプル調製に適した一つ以上の装置(例えば、超音波処理装置、クロマトグラフィシステム(親和性、ゲル濾過)、限外濾過ユニット、遠心分離機、緩衝液、酵素、界面活性剤などの供給システムを備える温度制御反応バイアル)を含むサンプル調製ユニットを有する。
本発明のこの態様の特定の実施の形態は、タンパク質サンプルの単一又は多重分析のための装置(100)に関し、当該装置は、一つ以上のサンプルソース(101)、対応するタグ付け/ラベリングソース(104)を備えるタグ付け/ラベリングユニット(103)、タンパク質切断ユニット(105)、親和性分離ユニット(106)、ペプチド分離ユニット(107)、質量スペクトロメータユニット(109)、並びに制御回路及びデータ分析ユニット(110)を有する。特定の実施の形態において、分離ユニット(107)は、2つの連続的に連結された分離システム(1107)及び(2107)を含み、第1の分離システム(1107)は、例えば2次元ゲル電気泳動システム又は陽イオン交換クロマトグラフィシステム及び分離システムであり、そして第2の分離システム(2107)は、一般的にHPLC逆相システムである。質量スペクトロメータ素子(109)は、同位体種を分離するMS又はMS/MSスペクトロメータである。新規のMS/MSを用いることは、新規のペプチド配列決定及び用いられる等重ラベルのレポーター基の差異に基づく検出を可能にする。MS/MS分析は、2つの基本的に相異する機器を用いて実行されることができる。第1の種類の機器、イオントラップにおいて、MS/MS分析は、MSが実行される場合と同じイオントラップで実行されるが、MS/MSは時間で実行される(トラップが満たされ、関係するイオンを除いて全てのイオンが排出され、CIDが実行されて、断片イオンがスキャンされる。ペプチドを断片化するための他の適切な方法は、CAD(衝突活性化分離)、ETD(電子移動分離)、ECD(電子捕獲分離)、IRMPD(赤外線多光子解離)及びBIRD(黒体赤外線照射性分離)を含む)。
第2の種類の機器、ハイブリッド機器(トリプルクワッド、q-tof、ltq-ftms、ltq-orbitrap)は、適当な位置でMS/MSを分離する。例えば、ペアレント選別は第1の質量分析器で実行され、そして断片は第2の質量分析器でスキャンされる。
本装置はさらに、例えばサンプル溶解及び免疫除去が行われるサンプル調製ユニット(102)、又は対応する修飾試剤ソースを備えた更なるタンパク質/ペプチド修飾ユニットのような、複数のオプションの素子を有することができる。質量スペクトロメータユニット及び分離ユニットとして本発明の装置に組み込むのに適したユニットは上述される。
本装置は、精製されたペプチドの一つ以上の物理化学的特性が決定される分析ユニット(108)をさらに有することができる。ペプチドの実験に基づく質量及び精製の間に取得され、オプションとして分析ユニットで取得されるその物理化学的特性に関するデータは、C末端ペプチドの注釈付きデータベース(112)と比較される(図5で点線によって示される)。
いうまでもなく、本発明のタグ付け及びラベリング試剤及び方法は、プロテオミクス、タンパク質発現プロファイリング、バイオマーカ発見及びターゲット発見に適用可能である。
本発明を実施するシステム及び方法の他のアレンジメントは、当業者にとって明らかである。
好ましい実施の形態、特定の構造及び構成が、材料と共に、本発明による装置について本明細書において議論されたが、この発明の範囲及び精神から逸脱することなく、形態及び詳細における様々な変更又は修正が行われることができることが理解されるべきである。
ボロン酸修飾ビオチンの合成
a: sNHS-biotin + m-APBA
500μlの10mM sNHS-ビオチン(sulfo-N-hydroxysuccinimido-biotin)溶液、25μlの10mM m-APBA(m-aminohenylboronic acid)溶液、60μlの10xPBS原液及び60μlの水が、室温で2時間混合される。
反応スキームは、図6に示される。図7は、反応体sulfo-NHS-biotin(上部)及びm-aminophenylboronic acid(中央)、並びに、反応生成物(すなわち式(II)を有する化合物)を含む撹拌後の非精製反応混合物(下部)のIRスペクトルを示す。下部スペクトラムは、ビオチンとm-aminophenylboronic酸との間に形成されるアミド結合に起因している可能性がある(図7において矢印によって示される)約1685cm-1での更なる振動を示す。
b:ビオチン+m-APBAのEDC媒介カップリング
EDC媒介カップリングを介して実行されるm-APBAとのビオチンの反応は、製造者(Pierce Chemical, IL, USA)の指示に従って実行される。反応スキームは図8に示される。
ボロン酸修飾ビオチンへのヒスチジンオリゴペプチドのカップリング
実施例1で取得される10mM溶液ボロン酸修飾ビオチンの500μlが、250μlのFITC-Ahx-His6(イソチオシアン酸フルオレセイン-6-アミノヘキサカルボンサン-ヘキサヒスチジン)10mM溶液、25μlの10mM溶液[Cu(OH)TMEDA]2Cl2、90μlの10x PBS原液及び35μlの水と混合される。混合物は、酸素雰囲気で一晩撹拌される。
反応スキームは、図9に示される。図はヘキサヒスチジンを含むペプチドを示すが、アリールボロン基との反応によるタグ付けのための本発明によれば、複数のヒスチジンの存在は必要とされない。

Claims (32)

  1. ヒスチジンを有するタンパク質に親和性タグを共有結合させる方法であって、前記タンパク質を、銅触媒の存在下で、一般的な構造(I)(Aは親和性タグ、Bはボロン及びLはオプションのリンカー)を持つ化合物に接触させるステップを有する方法。
    Figure 2010509569
  2. 前記化合物が、芳香環においてハロゲン、アルコキシ基又はアルキル基によってさらに置換されている、請求項1に記載の方法。
  3. 前記親和性タグAがビオチンである請求項1に記載の方法。
  4. 前記化合物が、式(II)を持つ分子に対応する、請求項1に記載の方法。
    Figure 2010509569
  5. 前記化合物がさらにラベルを有する請求項1に記載の方法。
  6. 前記ラベルが一つ以上の重原子同位体からなる請求項5に記載の方法。
  7. 前記化合物が、式(III)を持つ分子に対応する請求項1に記載の方法。
    Figure 2010509569
  8. タンパク質サンプル又はプールされたタンパク質サンプルの混合物からヒスチジン含有ペプチドを単離する方法であって、
    a) 切断試剤によって、タンパク質サンプル中の無処置タンパク質をペプチドへと切断するステップ、
    b) 前記ペプチド中に存在するヒスチジンとのアリールボロンタグ付け試剤の反応を可能にするために、銅触媒の存在下で、一般的な構造式(I)(Aは親和性タグ、Bはボロン及びLはオプションのリンカー)を持つアリールボロンタグ付け試剤にタンパク質サンプルを接触させるステップ、
    Figure 2010509569
    c) タグ付けされたペプチドを、前記親和性タグを介してアフィニティーマトリックスに結合させるステップ、並びに
    d) 単離されたヒスチジン含有ペプチドを得るために、前記アフィニティーマトリックスから、結合された前記タグ付けされたペプチドを除去するステップ、
    を有する方法。
  9. ステップb)がステップa)の前に実行され、前記アリールボロンタグ付け試剤が、サンプル中の未切断のタンパク質に接触され、タンパク質中に存在するヒスチジンのタグ付けをもたらす、請求項8に記載の方法。
  10. 異なるサンプル中のヒスチジンを含む一つ以上のタンパク質の発現確率を同時に分析する方法であって、
    a) オプションとして、切断試剤によってサンプル中の無処置のタンパク質をペプチドへと切断するステップ、
    b) 銅触媒の存在下で、アリールボロン酸ラベリング試剤のセットのうちの一つに各々のサンプルを 接触させるステップであって、ボロン酸ラベリング試剤が、一般的な構造式(I)(Aは親和性タグ、Bはボロン及びLはオプションのリンカー)を持ち、ラベリング試剤の各々の構造が本質的に同じであるように同位体ラベル又は等重ラベルであるラベルをさらに有するステップ、
    Figure 2010509569
    c) ポリペプチド又はペプチドサンプル混合物を得るために、それぞれのサンプルをプールするステップ、
    d) 前記親和性タグを介して、ポリペプチド又はペプチドサンプル混合物から、ラベル付けされたポリペプチド又はペプチドを選択的に単離するステップ、
    e) 質量分析によって、単離された前記ラベル付けされたポリペプチド又はペプチドの発現確率を分析するステップ、
    を有する方法。
  11. タンパク質サンプル中のタンパク質の存在を同定する方法であって、
    a) 銅触媒の存在下で、一般的な構造(I)(Aは親和性タグ、Bはボロン及びLはオプションのリンカー)を持つタグ付け試剤にタンパク質を接触させることによって、タンパク質サンプル中のタンパク質のヒスチジンを修飾するステップ、
    Figure 2010509569
    b) 切断試剤によって前記タンパク質サンプル中の前記タンパク質をペプチドへと切断するステップ、
    c) 前記親和性タグを介して、ヒスチジン含有ペプチドを前記ペプチドから単離するステップ、
    d) 精製されたヒスチジン含有ペプチドを得るために、一つ以上のペプチド精製ステップによって、単離された前記ヒスチジン含有ペプチドを精製するステップ、
    e) 精製されたヒスチジン含有ペプチドの、質量以外の少なくとも一つの物理化学的特性を決定又は計算するステップ、
    f) 単離されて精製されたヒスチジン含有ペプチドの質量をMSで決定するステップ、並びに
    g) 精製されたヒスチジン含有ペプチドの対応するペアレントタンパク質を同定し、それによってタンパク質サンプル中のペアレントタンパク質の存在を同定するために、各々の単離されて精製されたヒスチジン含有ペプチドに対して、質量及び少なくとも一つの他の物理化学的特性を、前記切断試剤によって生成される全てのヒスチジン含有ペプチドの質量及び一つ以上の物理化学的特性を含むデータベースと比較するステップ、
    を有する方法。
  12. ステップ(g)が、前記単離されて精製されたヒスチジン含有ペプチドの各々に対して、当該単離されて精製されたヒスチジン含有ペプチドの質量に対応する質量を持つ前記データベース中の一つ以上のヒスチジン含有ペプチドを特定するステップを含み、一つの単離されて精製されたヒスチジン含有ペプチドに対して複数のペプチドが特定される場合、その単離されて精製されたヒスチジン含有ペプチドの少なくとも一つの他の物理化学的パラメータを、前記データベース中で特定された前記複数のペプチドのパラメータと比較する、請求項11に記載の方法。
  13. 前記タンパク質サンプルが一つの種に由来し、前記データベースが、前記切断試剤によって生成されるその種の全てのヒスチジン含有ペプチドの質量及び少なくとも一つの他の物理化学的特性を含む、請求項12に記載の方法。
  14. 前記タンパク質が2つ以上のサンプル中で同時に同定され、
    ステップ(a)において、区別ラベル成分を含むタグ付け試剤のセットのうちの一つによって、各々のサンプルの修飾を実行するステップ、
    ステップ(d)の前に前記2つ以上のサンプルをプールする追加のステップ、
    ステップ(f)の前に、前記ペプチドの起源であるサンプルを特定するために、前記ラベルの性質を特定するステップ、
    を有する請求項11に記載の方法。
  15. 前記少なくとも一つの物理化学的特性が、前記一つ以上のペプチド精製ステップの間に決定される、請求項11に記載の方法。
  16. 前記少なくとも一つの物理化学的特性が、pI、逆相クロマトグラフィの間の滞留時間並びに280及び214nmにおけるUV吸収の比からなるグループから選択される、請求項11に記載の方法。
  17. タンパク質又はペプチド中のヒスチジンにタグ付けするための化合物であって、一般的な構造(I)を持ち、Aは、ビオチン又はビオチン派生分子、マルトース、レクチン、ハプテン特異抗体に結合したハプテン及びグルタチオンからなるグループから選択される親和性タグ、Bはボロン、Lはオプションのリンカーである化合物。
    Figure 2010509569
  18. 芳香環がさらに、ハロゲン、アルコキシ基又はアルキル基によって置換されている、請求項17に記載の化合物。
  19. 前記親和性タグAがビオチンである請求項17に記載の化合物。
  20. 式(II)を持つ請求項17に記載の化合物。
    Figure 2010509569
  21. ラベリング成分をさらに有する請求項17に記載の化合物。
  22. 前記ラベリング成分が一つ以上の重同位体からなる請求項21に記載の化合物。
  23. 式(III)を持ち、ビオチン基とアリールボロン基との間のリンカー中の一つ以上の炭素原子及び/又は一つ以上の水素原子が、それぞれ13C又は重水素によって置換されている、請求項22に記載の化合物。
    Figure 2010509569
  24. ポリペプチドの質量スペクトロメトリ分析のためのラベリング試剤のセットであって、当該セット中の全てのラベリング試剤が、請求項17に記載の構造と同一の化学構造を持ち、セット中の各々のラベリング試剤が、固有の同位体ラベル成分を持つセット。
  25. 試剤のセットであって、当該セットの個々のラベリング試剤が式(III)の構造を持ち、ビオチン基とアリールボロン基との間のリンカー中の一つ以上の炭素原子及び/又は一つ以上の水素原子が、それぞれ13C又は重水素によって置換されているセット。
    Figure 2010509569
  26. タンパク質のラベリングのための請求項17の化合物又は請求項24のラベリング試剤のセットの使用。
  27. 切断試剤によってin silicoで切断された生体のタンパク質のヒスチジン含有ペプチドのデータベースであって、各々のペプチドが、タンパク質識別子、そのアミノ酸組成、その質量によって特徴付けられ、前記質量が、未修飾のペプチドの質量又は修飾若しくはラベリング後のペプチドの質量である、データベース。
  28. 異なる配列及び同じ質量を持つペプチドは、当該ペプチドのその質量以外の少なくとも一つの物理化学的パラメータによってさらに特徴付けられる、請求項27に記載のデータベース。
  29. 前記切断試剤がトリプシンである、請求項27に記載のデータベース。
  30. タンパク質の同定のための請求項27に記載のデータベースの使用。
  31. タンパク質サンプルの多重ラベリング及び分析のための装置であって、
    少なくとも一つのサンプルソース、ラベリングユニット及び対応するアリールボロンラベリング試剤のソース、タンパク質切断ユニット、親和性分離ユニット、分離ユニット、質量分析ユニット、並びに、in silicoで切断されたヒスチジン含有ペプチドの注釈付データベースに接続されるデータ分析ユニット、を有する装置。
  32. サンプル調製ユニット、及び/又は、前記分離ユニットにおいて精製されるペプチドの物理化学的特性を決定するための分析ユニットをさらに有する、請求項31に記載の装置。
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