JP2005354762A - 車両の旋回制御装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】ヨーモーメントやタイヤ横力によって転舵角が変化した場合にも、運転者が操舵角を修正することなく意図したとおりに旋回することを可能にする。
【解決手段】左右の駆動輪13、14に駆動力差を発生させる手段3、4を有する車両において、車速を検出する車速検出手段22〜24と、運転者が操作するステアリング5の操舵角を検出するステアリング操舵角検出手段25と、車速検出手段22〜24とステアリング操舵角検出手段25の検出値に基づいて目標ヨーモーメントを決定するヨーモーメント決定手段8と、目標ヨーモーメントに基づいて左右の駆動輪13、14の駆動力差を演算する左右駆動力差演算手段8と、左右の駆動輪13、14の駆動力差に起因する転舵角変化によるヨーモーメント変化量を推定するヨーモーメント変化量推定手段8と、前記ヨーモーメント変化量に基づいて前記左右駆動力差を補正する左右駆動力差補正手段8と、を備える。
【選択図】 図1

Description

本発明は、車両の駆動力制御に関し、特に、旋回時の左右の駆動輪の駆動力差の制御に関する。
車両の旋回性能の向上や旋回時の挙動の安定化を図る技術として、運転者のステアリング操舵角に応じてヨーモーメントの目標値を設定し、この目標値を実現するためにCu動力制御や制動力制御によって各車輪間に駆動力差や制動力差をつける技術が知られている。
しかし、制動力制御は応答性が高く、制御時に自動的に制動力が働き減速するので安全性向上を図ることができるという効果があるものの、この減速が運転者に違和感を与えるという不具合がある。
また、駆動力制御は制御時に殆ど減速しないので運転者に違和感を与えないという効果があるものの、一般に湿式多板クラッチを用いて駆動力配分を行うので応答性に劣り、また、駆動力配分機構の大きさが重量や寸法の面で制限されるので、目標値として大きなヨーモーメントが設定された場合には、それを発生することが難しいという不具合がある。
特許文献1には、各車輪間に駆動力差をつける機構と、制動力差をつける機構とを備え、車速とステアリング操舵角から目標ヨーレートを設定し、ヨーレート検出手段によって検出したヨーレートと前記目標ヨーレートとの偏差を算出して、この偏差に基づいて制動力と駆動力とを統合的に制御することによって、それぞれの利点を発揮させる技術が開示されている。
特開平09−86378号公報
ところで、制駆動力やタイヤ横力等の力が加わると、サスペンションのブッシュ等が変形して車輪が転舵する、いわゆるコンプライアンスステアと呼ばれる現象が起きる。そして、このコンプライアンスステアの発生により、タイヤ横力は変化する。
左右輪に駆動力差がない状態、すなわち左右輪が等しい制駆動力を出力する場合には、左右輪がそれぞれ反対方向に転舵し、転舵によるタイヤ横力変化を互いに打ち消しあうように車両のサスペンションは設計されている。しかし、左右輪で制駆動力差が発生する場合には、転舵によるタイヤ横力変化を打ち消しあうことができず、転舵角の変化に起因するヨーモーメントが発生し、車両重心回りのモーメントが変化してしまう。
しかしながら、特許文献1に記載の制御装置は、転舵角の変化に応じて制駆動力の補正を行う構成にはなっていないので、転舵角が変化した場合には目標値として設定したヨーモーメントを正確に実現することができなくなり、運転者が操舵角を修正しなければならないという問題があった。
そこで、本発明では、転舵角が変化した場合にも、運転者が操舵角を修正することなく目標値として設定したヨーモーメントを正確に実現し、運転者の操作性を向上することを目的とする。
本発明の車両の旋回装置は、左右の駆動輪に駆動力差を発生させる手段を有する車両において、車速を検出する車速検出手段と、運転者が操作するステアリングの操舵角を検出するステアリング操舵角検出手段と、前記車速検出手段とステアリング操舵角検出手段の検出値に基づいて目標ヨーモーメントを決定するヨーモーメント決定手段と、前記目標ヨーモーメントに基づいて左右の駆動輪の駆動力差(左右輪駆動力差)を演算する左右輪駆動力差演算手段と、前記左右輪駆動力差に起因して発生する転舵角変化によるヨーモーメント変化量を推定するヨーモーメント変化量推定手段と、前記ヨーモーメント変化量に基づいて前記左右輪駆動力差を補正する左右輪駆動力差補正手段とを備える。
本発明によれば、車両の旋回中等に、例えばサスペンションのブッシュの変形等により転舵角変化が生じた場合でも、この転舵角変化分のヨーモーメント変化量に基づいて左右輪駆動力差を補正するので、運転者がステアリング操舵角を修正することなく目標値として設定したヨーモーメントを正確に実現することが可能となり、運転者の操作性を向上することができる。
以下本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は本実施形態の機械的構成を示すブロック図であり、太線は機械力の伝達経路を示し、点線は電力の経路を示し、一点鎖線は制御系統を示す。
11〜14は一般にサスペンションと呼ばれる緩衝装置を介して車体に連結されている車輪(回転半径R)であり、41〜44は車輪11〜14の舵角を検出する舵角センサ、22〜24は車輪11〜14の回転速度を検出する車速検出手段としての回転速度センサである。
5はステアリング、25はステアリング5の操舵角を検出するステアリング角センサである。
9は車両の動力源であるバッテリ、3および4はバッテリ9から供給される電力により左後輪13および右後輪14をそれぞれ独立に駆動するモータ、33および34はモータ3、4で発電された交流電流を直流電流に変換してバッテリ9に充電する、あるいはバッテリ9が放電した直流電流を交流電流に変換してモータ3、4に供給するインバータである。
なお、バッテリ9はニッケル水素電池あるいはリチウムイオン電池であり、モータ3、4は三相同期電動機や三相誘導電動機等の力行運転および回生運転が可能な交流機である。
また、モータ3、4と左後輪13、右後輪14とは減速比1で連結されている。
8はCPU、ROM、RAM、インターフェイス回路およびインバータ回路等で構成されるヨーモーメント決定手段、左右駆動力差演算手段、ヨーモーメント変化量推定手段、左右輪駆動力差補正手段としてのコントローラであり、舵角センサ41〜44、回転速度センサ22〜24、アクセルペダル6の踏み込み量を検出するアクセルストロークセンサ26、ブレーキペダル7の踏み込み量を検出するブレーキストロークセンサ27、車両の重心位置に取り付けられ車両の横方向の加速度を検出する加速度センサ100、車両のヨーレートを検出するヨーレートセンサ101等からの信号に基づいてモータ3、4のトルク配分の制御等を実行する。
上記のような構成により、運転者のステアリング操舵の通りに旋回できるよう、左右の駆動輪13、14の駆動力を独立して制御する。
次に駆動力制御について本実施形態の制御ルーチンを表す図2を参照して具体的に説明する。
コントローラ8は、運転者のステアリング操舵量、車両速度等から算出した目標ヨーモーメントtMを実現するよう左右の駆動輪13、14のトルク配分を制御し、旋回中にヨーモーメントによる転舵が生じた場合には、各車輪の転舵量に応じて前記トルク配分を補正することによって運転者がステアリング操舵量を修正せずに旋回できるよう制御する。
以下、各ステップに従って説明する。
ステップS10では、回転速度センサ22〜24によって各車輪11〜14の回転速度ω1〜ω4(rad/s)をそれぞれ検出し、これに各車輪11〜14の半径Rを乗じて速度V1〜V4(m/s)を得る。
また、舵角センサ41〜44によって各車輪11〜14の転舵角δ(rad)をそれぞれ検出し、アクセルストロークセンサ26およびブレーキストロークセンサ27によりアクセルペダル6とブレーキペダル7の踏込み量AP、BPをそれぞれ検出し、ステアリング角センサ25によりステアリング5の回転角θ(rad)を、加速度センサ100により車両の横方向加速度Yg(rad/s)を、ヨーレートセンサ101によりヨーレートγ(rad/sec)をそれぞれ検出する。
なお、速度V1〜V4は車両前進方向を正とし、横方向加速度Ygは車両が左旋回時に車両重心位置から旋回方向に向う方向を正とし、転舵角δ1〜δ4とヨーレートγは車両を鉛直上方から見たときに反時計回りを正とする。また、転舵角δ1〜δ4は各車輪11〜14と車体の前後方向が一致した状態をゼロとする。
ステップS20では、車速V(m/s)を式(1)のとおり非駆動輪11、12の速度とする。
V=V1=V2 ・・・(1)
また、車両の前後方向加速度Xg(m/s2)を式(2)により求める。式(2)中のtsはコントローラ8が実行する図2のフローチャートの演算周期(s)であり、V0は後述するステップS80で設定される1周期前の車速Vである(演算開始時には初期値ゼロが設定されている)。なお、車速Vは車両前進方向を正とし、横方向加速度Xgは車両が前方に加速する方向を正とする。
Xg=(V−V0)÷ts ・・・(2)
ステップS30では、車両に対する運転者の要求制駆動力tTを式(3)により求める。
式(3)中の要求駆動力tTaはアクセルペダル6の踏込み量APおよび車速Vに対応した要求駆動力を図3に示す要求駆動トルクマップに基づいて設定したものである。
図3のマップはコントローラ8のROMに予め記録しておいたものであり、アクセルペダル踏込み量APが大きくなるほど要求駆動力tTaも大きくなっている。
式(3)中の要求制動力tTbはブレーキペダル7の踏込み量BPに対応した要求制動力を図4に示す要求制動力マップに基づいて設定したものである。図4のマップも図3と同様にコントローラ8のROMに予め記録しておいたものであり、ブレーキペダル踏込み量BPが大きくなるほど要求制動力tTbも大きくなっている。
なお、要求駆動力tTa、要求制動力tTbともに、車両を前方に加速させる方向を正とする。
tT=tTa+tTb ・・・(3)
ステップS40では、ステアリング5の回転角θと車両速度Vから車両のヨーモーメントMの目標値(目標ヨーモーメント)tMを図5に示す目標旋回量マップから算出する(ヨーモーメント決定手段)。目標旋回量マップはコントローラ8のROMに予め記録しておいたものであり、目標ヨーモーメントtMを回転角θごとに車速Vに割り付けたものである。目標ヨーモーメントtMは車両を鉛直上方からみたときに反時計回りを正とする。
また、目標ヨーモーメントtMは、車両が現在のステアリング5の回転角θと車速Vにおいて出力可能な値に設定される。
ステップS50では、後輪13、14の転舵角δ3、δ4が変化しないと仮定したときに、目標ヨーモーメントtMを実現する左右の駆動輪13、14の駆動力差ΔToを式(4)により算出する(左右輪駆動力差演算手段)。なお、式(4)中のtrは後輪13、14のトレッド(中心間距離)を表す。
ΔTo=tM÷(tr÷2) ・・・(4)
また、後輪13、14の転舵角δ3、δ4が変化しないと仮定したときに、目標ヨーモーメントtM、目標制駆動力tTを実現するためのモータ3、4の駆動トルクTm3o、Tm4oを式(5)、(6)により算出する。
Tm3o=tT÷2−ΔTo÷2 ・・・(5)
Tm4o=tT÷2+ΔTo÷2 ・・・(6)
ステップS60では、ΔToを駆動輪である左後輪13、右後輪14が出力したときの転舵角変化に起因する車両重心回りのヨーモーメントの変化量ΔM(Nm)を推定する(ヨーモーメント変化量推定手段)。
なお、目標ヨーモーメントtMと同様にヨーモーメント変化量ΔMも車両を鉛直上方から見たときに反時計回りを正とする。
ヨーモーメント変化量ΔMの推定方法としては、例えば図6に示すようなヨーモーメント補正量マップを検索することによって設定する。
このヨーモーメント補正量マップは駆動力差ΔToに対応するヨーモーメント変化量ΔMを予めコントローラ8のROMに記憶しておいたものであり、左右の後輪13、14に駆動力差ΔToを与えて、これにより生じる左右の後輪13、14の転舵角変化に起因するタイヤ横力の合計の変化量ΔFyrを実験或いはシミュレーション上で求め、このタイヤ横力合計変化量ΔFyrに、車両を鉛直上方から見た場合の車両重心位置から後輪回転軸までの距離Wbを乗じることによって求まるヨーモーメント変化量ΔMを縦軸に、駆動力差ΔToを横軸にとったものである。
ステップS70では、ステップS30で決定した目標ヨーモーメントtMと、ステップS60で決定したヨーモーメント変化量ΔMに基づき、目標ヨーモーメントtMを実現する駆動力差ΔTを式(9)により求め(左右輪駆動力差補正手段)、また目標ヨーモーメントtMおよび目標制駆動力tTを実現するたモータ3、4の駆動トルクTm3、Tm4を式(8)、(9)により求める。
ΔT=(tM−ΔM)÷(tr÷2) ・・・(7)
Tm3=tT÷2−ΔT÷2 ・・・(8)
Tm4=tT÷2+ΔT÷2 ・・・(9)
ステップS80では、Tm3、Tm4をモータ3、4が出力するように制御を行い、現在のVでVoを更新する。
以上により本実施形態では、車速およびステアリング操舵角から目標ヨーモーメントを設定し、このヨーモーメントを実現するための左右駆動輪の駆動力差を求める際に、左右駆動輪の駆動力差に起因する転舵角変化分のヨーモーメント発生量を推定し、このヨーモーメント発生量に基づいて左右駆動輪の駆動力差を補正するので、左右駆動輪の駆動力差に起因する転舵角変化分のヨーモーメントの変動を補正することができ、運転者の操作性を向上することができる。
次に第2実施形態について説明する。
本実施形態の機械的構成および制御ルーチンは、基本的には第1実施形態と同様であり、ヨーモーメント変化量推定手段としてのステップS60および左右輪駆動力差補正手段としてのS70に相当するステップが異なる。
ステップS60に相当するステップでは、転舵角検出手段としての舵角センサ42〜44により検出した後輪13、14の転舵角δ3、δ4から転舵角−タイヤ横力変化マップに基づいて後輪13、14のタイヤ横力Fy3、Fy4の変化量ΔFy3、ΔFy4(N)をそれぞれ求め、式(10)からヨーモーメント変化量ΔMを求める。なお、Fy3、Fy4は横方向加速度Ygと同じ方向を正とする。
ΔM=−(Fy3+Fy4)×Wb ・・・(10)
ここで、転舵角−タイヤ横力変化マップは、図7に示すように横軸に転舵角δ、縦軸にタイヤ横力変化ΔFyをとったもので、片方の後輪の転舵角δに応じて発生するタイヤ横力を予め実験等により求めてコントローラ8に記憶しておいたものである。なお、図7の転舵角−タイヤ横力変化マップにおいて、転舵角δとタイヤ横力変化ΔFyとは比例関係になっている。
ステップS70に相当するステップでは、後輪13、14のスリップ率λ3、λ4からスリップ率−左右駆動輪駆動力差補正量減少マップに基づいてスリップ率に応じた左右駆動力差補正量減少ξ(0<ξ<1)を設定して、式(7)のΔMをΔM×ξとしてΔTを補正する。
ここで、スリップ率−左右駆動力差補正量減少マップは、片方の後輪がスリップ角および輪荷重が一定の状態で、スリップ率がゼロのときのタイヤ横力Fy0にたいする各スリップ率におけるタイヤ横力Fyとの比ξ=Fy÷Fy0を、予め実験あるいはシミュレーションによって求めてコントローラ8のROMに記憶しておいたもので、例えば図10示すように、スリップ率λを横軸にとって設定され、スリップ率λがゼロのときにξ=1となり、スリップ率λの絶対値が大きくなるにつれてξが小さくなっている。
なお、スリップ率λ3およびλ4は式(11)〜(14)に基づいて算出される(スリップ率検出手段)。
V>V3のとき、λ3=(V−V3)÷V ・・・(11)
V≦V3のとき、λ3=(V−V3)÷V3 ・・・(12)
V>V3のとき、λ4=(V−V4)÷V ・・・(13)
V≦V3のとき、λ4=(V−V4)÷V4 ・・・(14)
上記のように、各輪の転舵角に基づいてヨーモーメント発生量を推定する構成となっている。これにより、左右の駆動輪13、14の駆動力差に起因する各輪の転舵角変化を直接検出することができるので、路面の凹凸や傾斜等といった転舵角変化に対する外乱が入力された場合にもヨーモーメントの発生量を補正することができる。
また、各輪のスリップ率を検出、あるいは推定する手段を備え、スリップ率λの絶対値が大きくなるにつれて左右の駆動輪13、14の駆動力差の補正量の絶対値を小さくする構成となっている。
これは、スリップ率λの絶対値が大きくなるにつれて転舵角変化に対するタイヤ横力の変化が小さくなる、すなわち左右の駆動輪13、14の駆動力差に起因する転舵角変化分のヨーモーメント発生量が少なくなることから、左右の駆動輪13、14の駆動量差の補正量も小さくする必要があるためである。
これにより、各輪のスリップ率λが変化しても左右の駆動輪13、14の駆動力差に起因する転舵角変化分のヨーモーメントの変動を補正できる。
以上により本実施形態では、第1実施形態と同様の効果に加え、さらに、各輪の転舵角に基づいてヨーモーメント発生量を推定する構成とし、左右の駆動輪13、14の駆動力差に起因する各輪の転舵角変化を直接検出できるようにしたので、路面の凹凸や傾斜等といった転舵角変化に対する外乱が入力された場合にもヨーモーメントの発生量を補正することができ、また、スリップ率λの絶対値が大きくなるにつれて左右の駆動輪13、14の駆動力差の補正量の絶対値を小さくする構成としたので、各輪のスリップ率λが変化しても左右の駆動輪13、14の駆動力差に起因する転舵角変化分のヨーモーメント発生量を適切に補正することができる。
このようにヨーモーメント発生量を適切に補正することにより、運転者の操作性を向上することができる。
第3実施形態について説明する。
本実施形態の機械的構成および制御ルーチンは、基本的には第1実施形態と同様であり、ヨーモーメント変化量推定手段としてのステップS60および左右輪駆動力差補正手段としてのS70に相当するステップが異なる。
ステップS60に相当するステップでは、制駆動力検出手段としてのコントローラ8で読込んだモータ3、4の駆動トルクTm3o、Tm4oおよび要求制駆動力tTから制駆動力−転舵角マップに基づいて後輪13、14の転舵角変化量Δδ3、Δδ4を求め、これらから転舵角−タイヤ横力変化マップに基づいてタイヤ横力変化ΔFy3、ΔFy4を求め、式(10)を用いてΔMを求める。
ここで、制駆動力−転舵角マップは、後輪13、14にそれぞれ制駆動力Tmが加わったときの転舵角δ3、δ4を予め実験あるいはシミュレーションによって求め、コントローラ8のROMに記憶しておいたもので、例えば図8のように左後輪13、右後輪14ともに制駆動力がゼロの場合には転舵角δはゼロであり、左後輪13は制動力が大きくなるにつれて正の方向への転舵角が大きく、駆動力が大きくなるに連れて負の方向の転舵角が大きく、右後輪14は制動力が大きくなるにつれて負の方向への転舵角が大きく、駆動力が大きくなるに連れて正の方向の転舵角が大きくなる。
また、転舵角変化量Δδ3、Δδ4から転舵角−タイヤ横力変化マップを用いてΔFy3、Fy4を求める場合には、図7においてδ=Δδ3のときのタイヤ横力変化ΔFyをΔFy3、同様にδ=Δδ4のときをΔFy4として求める。
これにより、図8のように制駆動力による舵角変化が一定でない場合にもヨーモーメントの変化量ΔMを求めることができる。
ステップS70に相当するステップでは、後輪13、14の輪荷重W3、W4(N)を推定し、その差の絶対値ΔW=|W3−W4|から、輪荷重差−左右輪駆動力差補正量減少係数マップに基づいて輪荷重差に応じた左右輪駆動力差補正量減少係数ε(0<ε<1)を設定して、式(7)のヨーモーメント変化量ΔMをΔM×εとして左右輪駆動力差ΔTを補正する。
ここで、輪荷重差−左右輪駆動力差補正量減少係数マップについて説明する。
まず、後輪13、14のいずれか一方がスリップ角およびスリップ率が一定の状態で発生するタイヤ横力Fyと輪荷重Wとの関係を実験あるいはシミュレーションによって求め、図11に示すようなマップを作成する。なお、図11中のWrsは車両が静止している状態における後輪13、14のいずれか片方の輪荷重である。
次に図11のマップにおいて、常にW3+W4=2×Wrsの関係を維持した状態で輪荷重差ΔWをゼロから大きくしていき、各輪荷重差ΔWにおける後輪横力の合計Fy3+Fy4の絶対値Fyr(ΔW)=|Fy3+Fy4|を求める。
その上で図12に示すように横軸にΔW、縦軸にε=Fyr(ΔW)÷Fyr(0)をとったマップが輪荷重差−左右輪駆動力差補正量減少係数マップとなる。
通常のタイヤではタイヤ横力Fyと輪荷重Wとの関係は図11に示すように上に凸の曲線となるので、図12のマップは輪荷重の差ΔWがゼロのときが最大値となる。
なお、輪荷重W3、W4はステップS10、S20で検出あるいは推定したパラメータに基づいて算出する(輪荷重検出手段)。具体的な算出方法については、例えば特開2001−211378号公報の段落0105〜0107等に記載されているので、説明を省略する。
以上により本実施形態では、第1実施形態と同様の効果に加え、さらに各輪の制駆動力の大きさに基づいてヨーモーメント発生量を推定する構成としたので、制駆動力の大きさに応じて転舵角変化率が変化する車輪懸架装置においてもヨーモーメントの発生量を補正することができる。
また、各輪の輪荷重を検出あるいは推定し、左右の駆動輪の輪荷重差が大きくなるに連れて左右駆動力差の補正量の絶対値を小さくする構成としたので、内外輪に輪荷重差が発生する旋回中でも、左右輪駆動力差に起因する転舵角変化分のヨーモーメント変動を補正できる。
このようにヨーモーメント発生量を適切に補正することにより、運転者の操作性を向上することができる。
なお、左右の駆動輪の輪荷重差が大きくなるにつれて左右駆動力差の補正量の絶対値を小さくする構成としたのは、左右輪の輪荷重差が大きくなるにつれて、転舵角変化に対するタイヤ横力変化が小さくなる、すなわち左右輪駆動力差の補正量に起因する転舵角変化分のヨーモーメント発生量が少なくなるということに基づく。
第4実施形態について説明する。
本実施形態の機械的構成および制御ルーチンは、基本的には第1実施形態と同様であり、ヨーモーメント変化量推定手段としてのステップS60および左右輪駆動力差補正手段としてのS70に相当するステップが異なる。
ステップS60に相当するステップでは、第1〜第3の実施形態の説明で記載した各方法によってヨーモーメント変化量ΔMを求め、これらの中から信頼性の高い値をとる構成とする。
信頼性の高い値の判断方法としては、例えば、センサノイズと推定される高周波成分が少ないヨーモーメント変化量ΔMを選択する、車両が取り得るはずのないヨーモーメント変化量ΔMはカットする、等が挙げられる。
ステップS70に相当するステップでは、後輪13、14のスリップ角β3とβ4を推定し(スリップ角検出手段)、スリップ角−左右駆動輪差補正量減少係数マップに基づいてスリップ角に応じた後輪13、14の左右駆動力差補正量減少係数η3およびη4を設定し、ΔTをΔT÷2×η3+ΔT÷2×η4のように補正する。
ここで、スリップ角−左右駆動輪差補正量減少係数マップについて説明する。
まず、後輪13、14のいずれか一方が発生するタイヤ横力Fyをスリップ角βを横軸にとった図13(a)と、図13(a)におけるタイヤ横力Fyの傾きζを実験あるいはシミュレーションにより図13(b)のように求めておく。
そして、βがゼロのときのタイヤ横力ζをζ0として、各βにおけるζをζ0で除したη=ζ÷ζ0を縦軸にとった図13(c)がスリップ角−左右駆動力差補正量減少係数マップである。
なお、ステップS10、S20で検出あるいは算出したパラメータからスリップ角βを算出する方法については、例えば特開平10−329689号公報段落0033等に記載されているので、説明を省略する。
以上により本実施形態では、第1〜第3の実施形態の説明で記載した各方法によってヨーモーメント変化量ΔMを求め、これらの中から信頼性の高い値をとる構成とするので、左右の駆動輪13、14の駆動力をより精度良く求めることができる。
各輪のスリップ角βを推定し、スリップ角βの絶対値が大きくなるにつれて左右の駆動輪13、14の駆動力差の補正量の絶対値を小さくする構成としたので、各輪のスリップ角βが変化しても左右の駆動輪13、14の駆動力差ΔMに起因する転舵角変化分のヨーモーメントを補正できる。
このようにヨーモーメント発生量を適切に補正することにより、運転者の操作性を向上することができる。
第5実施形態について説明する。
本実施形態の機械的構成および制御ルーチンは、基本的には第1実施形態と同様であり、ヨーモーメント変化量推定手段としてのステップS60および左右輪駆動力差補正手段としてのS70に相当するステップが異なる。
ステップS60に相当するステップでは、推定した後輪13、14のタイヤ横力Fy3、Fy4からタイヤ横力−転舵角マップに基づいてタイヤ横力に起因する後輪13、14の転舵角変化Δδ3、Δδ4を求め、この転舵角変化Δδ3、Δδ4から転舵角−タイヤ横力変化マップに基づいて後輪13、14のタイヤ横力の変化量ΔFy3、Fy4を求め、これらから式(15)によりタイヤ横力Fyに起因するヨーモーメント変化量ΔMpを求め、これを上記の実施形態の説明に記載した方法で求めたヨーモーメント変化量ΔMに加えた値、すなわちΔM+ΔMpをヨーモーメント変化量ΔMとする。
ΔMp=−(ΔFy3+ΔFy4)×Wb ・・・(15)
上記のタイヤ横力−転舵角マップは、後輪13、14にそれぞれタイヤ横力Fyが加わったときの転舵角dδを予め実験あるいはシミュレーションによって求め、コントローラ8のROMに記憶しておいたもので、例えば図9のように設定する。
なお、ステップS10、S20で検出あるいは推定したパラメータを基にタイヤ横力Fy3、Fy4を推定する方法(タイヤ横力検出手段)については、例えば特開2002−211378号公報の段落0125等に記載されているので説明を省略する。
上記のようにヨーモーメント変化量ΔMをΔM+ΔMpとすることによって、タイヤ横力に起因して発生する転舵角変化によるヨーモーメント変化ΔMについても求めることができる。
ステップS70に相当するステップでは、車両に車両重心回りのヨーモーメントMを検出あるいは推定してコントローラ8に送信する手段を設け、目標ヨーモーメントtMと字際のヨーモーメントMとの誤差dM=tM−Mを小さくするように、左右駆動輪13、14の駆動力差ΔTをΔT→ΔT+Kfb×dMと補正する。ただし、Kfbはフィードバックゲインであり、Kfb>0、かつΔTをΔT+Kfb×dMと補正することによってヨーモーメントMが発散または振動的とならないように設定する。
これによりサスペンションのブッシュの経年変化やタイヤ磨耗等によって生じる誤差dMを補償することができる。
なお、ヨーモーメントMを推定する手段として、ステップS10で検出したヨーレートγを微分し手車両の旋回加速度Ar(rad/s2)を求め、この旋回加速度Arに車両重心回りの慣性モーメントI(kg・m2)を乗じて求める方法等がある。ここで、Iは車両がヨー方向に回転するときの車両重心回りの慣性モーメントである。
以上により本実施形態では、第1実施形態と同様の効果に加え、さらに、各輪のタイヤ横力Fyを検出或いは推定し、タイヤ横力Fyの変化に起因する転舵角変化分のヨーモーメント発生量を推定する構成としたので、タイヤ横力に起因する転舵角変化分のヨーモーメント発生量を補正できる。
このようにヨーモーメント発生量を適切に補正することにより、運転者の操作性を向上することができる。
第6実施形態について説明する。
本実施形態の機械的構成および制御ルーチンは、基本的には第1実施形態と同様であり、左右輪駆動力差補正手段としてのS70に相当するステップが異なる。
ステップS70に相当するステップでは、モータ3、4の制駆動トルクTm3、Tm4を、式(8)、(9)に替えて図14に示すブロック図に従って算出する。
図14の200は下式(16)で表される伝達関数f(s)を有する補償器(位相進み補償器)であり、201は制駆動トルク演算部である。
f(s)=(1+τ2×s)÷(1+τ1×s) ・・・(16)
ただし、τ1、τ2は、左右の後輪13、14の駆動力差ΔTに対する車両重心回りのヨーモーメントMの伝達関数F(s)の位相交点周波数φに対して1/τ2<φ<1/τ1となると共に、運転者の操作性が向上、例えば左右の駆動輪13、14の駆動力差に対する転舵角変化分のヨーモーメントの応答性が運転者にとって好適になるように、実験あるいはシミュレーションによって調整し、設定する。
なお、F(s)も実験あるいはシミュレーション等により求める。
上記のような構成により、式(7)により算出した駆動力差ΔTを、補償器200で左右の駆動輪13、14の駆動力差ΔTを進み補償してΔTfとし、このΔTfと要求制駆動力tTとを用いて、演算部201で下式(17)、(18)により駆動トルクTm3、Tm4を求める。
Tm3=tT÷2−ΔTf÷2 ・・・(17)
Tm4=tT÷2+ΔTf÷2 ・・・(18)
これにより、左右の駆動輪13、14の駆動力差ΔTに対するヨーモーメントの応答を運転者にとって好適に設定することができ、操作性が向上する。
以上により本実施形態では、第1次視形態と同様の効果に加え、さらに、左右の駆動輪13、14の駆動力差ΔTを左右の駆動輪13、14の駆動力差に対する転舵角変化分のヨーモーメント発生遅れに基づいて進み補償するので、左右の駆動輪13、14の駆動力差ΔTに対するヨーモーメントの応答を運転者にとって好適に設定することができ、操作性が向上する。
なお、上述した第1〜第5実施形態では、後輪13、14を駆動する車両を用いて説明したが、前輪をエンジンあるいはエンジンとモータの両方で駆動するハイブリッド車両や、前輪も左右独立で駆動する4輪独立駆動車や、各輪の操舵角を自由に制御できる車両、前輪のみを左右独立に制駆動できる車両や、車両をエンジンのみで駆動し左右駆動力の配分機構を備えた車両等にも適用可能である。
また、本発明は上記の実施の形態に限定されるわけではなく、特許請求の範囲に記載の技術的思想の範囲内で様々な変更を成し得ることは言うまでもない。
本発明は、旋回時に駆動輪の制動力、駆動力の配分を可変に制御する車両に適用可能である。
第1実施形態の機械的システムの構成を表す図である。 第1実施形態の制御ルーチンを表す図である。 要求駆動トルクマップである。 要求制動力マップである。 目標旋回量マップである。 ヨーモーメント補正量マップである。 転舵角−タイヤ横力変化マップである。 制駆動力−転舵角マップである。 タイヤ横力−転舵角マップである。 スリップ率−左右駆動力差補正量減少マップである。 タイヤ横力Fyと輪荷重Wとの関係を表すマップである。 輪荷重差−左右輪駆動力差補正量減少係数マップである。 (a)はタイヤ横力Fyとスリップ角βの関係を表す図であり、(b)は(a)におけるタイヤ横力Fyの傾きζを表す図であり、(c)はスリップ角−左右駆動力差補正量減少係数マップである。 制駆動トルク算出方法を表すブロック図である。
符号の説明
3、4 モータ
5 ステアリング
6 アクセルペダル
7 ブレーキペダル
8 コントローラ
9 バッテリ
11 左前輪
12 右前輪
13 左後輪
14 右後輪
22〜24 速度センサ
25 ステアリング角センサ
26 アクセルペダルストロークセンサ
27 ブレーキペダルストロークセンサ
33、34 インバータ
41〜44 舵角センサ
100 加速度センサ
101 ヨーレートセンサ

Claims (8)

  1. 左右の駆動輪に駆動力差を発生させる手段を有する車両において、
    車速を検出する車速検出手段と、
    運転者が操作するステアリングの操舵角を検出するステアリング操舵角検出手段と、
    前記車速検出手段とステアリング操舵角検出手段の検出値に基づいて目標ヨーモーメントを決定するヨーモーメント決定手段と、
    前記目標ヨーモーメントに基づいて左右の駆動輪の駆動力差(左右輪駆動力差)を演算する左右輪駆動力差演算手段と、
    前記左右輪駆動力差に起因して発生する転舵角変化によるヨーモーメント変化量を推定するヨーモーメント変化量推定手段と、
    前記ヨーモーメント変化量に基づいて前記左右輪駆動力差を補正する左右輪駆動力差補正手段と、を備えることを特徴とする車両の旋回制御装置。
  2. 各車輪のスリップ率を検出するスリップ率検出手段をさらに備え、
    前記左右輪駆動力差補正手段は、前記スリップ率の絶対値が大きくなるにつれて前記左右輪駆動力差の補正量の絶対値を小さくする請求項1に記載の車両の旋回制御装置。
  3. 各車輪の輪荷重を検出する輪荷重検出手段をさらに備え、
    前記左右輪駆動力差補正手段は、前記輪荷重検出手段によって検出された左右の駆動輪の輪荷重の差が大きくなるにつれて、左右輪駆動力差の補正量の絶対値を小さくする請求項1または2に記載の車両の旋回制御装置。
  4. 各車輪のスリップ角を検出するスリップ角検出手段をさらに備え、
    前記左右輪駆動力差補正手段は、前記スリップ角の絶対値が大きくなるにつれて左右輪駆動力差の補正量の絶対値を小さくする請求項1〜3のいずれか一つに記載の車両の旋回制御装置。
  5. 各車輪の転舵角を検出する転舵角検出手段をさらに備え、
    前記ヨーモーメント変化量推定手段は、前記転舵角検出手段の出力に基づいて、転舵角の変化に起因するヨーモーメント発生量を推定する請求項1〜4のいずれか一つに記載の車両の旋回制御装置。
  6. 各車輪の制駆動力を検出する制駆動力検出手段をさらに備え、
    前記ヨーモーメント変化量推定手段は、前記制駆動力検出手段の出力に基づいて、左右輪駆動力差に起因するヨーモーメント発生量を推定する請求項1〜6のいずれか一つに記載の車両の旋回制御装置。
  7. 各車輪のタイヤ横力を検出するタイヤ横力検出手段をさらに備え、
    前記ヨーモーメント変化量推定手段は、前記タイヤ横力検出手段の出力に基づいて、タイヤ横力に起因する転舵角変化分のヨーモーメント変化量を推定する請求項1〜6のいずれか一つに記載の車両の旋回制御装置。
  8. 前記左右輪駆動力差補正手段は、左右輪駆動力差に起因して発生する転舵角変化分のヨーモーメントの発生遅れ時間に基づいて、左右輪駆動力差を進み補償する請求項1〜7のいずれか一つに記載の車両の旋回制御装置。
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