JP2005353496A - 燃料電池用セルモジュール及びその製造方法、並びに燃料電池 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 中空形状の電解質膜と、当該電解質膜の中空内面及び外面に設けられた一対の電極を有し、前記中空内面又は外面のうち少なくとも一方の電極は、前記電解質膜に配向されるとともに電極触媒金属を担持したナノチューブを有することを特徴とする、燃料電池用セルモジュールとする。
【選択図】 図3
Description
固体高分子電解質型燃料電池では、水素を燃料とした場合、アノードでは(1)式の反応が進行する。
H2 → 2H+ + 2e− …(1)
(1)式で生じる電子は、外部回路を経由し、外部の負荷で仕事をした後、カソードに到達する。そして、(1)式で生じたプロトンは、水と水和した状態で、固体高分子電解質膜内をアノード側からカソード側に、電気浸透により移動する。
2H+ + (1/2)O2 + 2e− → H2O …(2)
カソードで生成した水は、主としてガス拡散層を通り、外部へと排出される。
このように、燃料電池では、水以外の排出物がなく、クリーンな発電装置である。
固体高分子電解質型燃料電池の出力密度向上のために、固体高分子電解質膜としては非常に膜厚の薄いプロトン伝導性高分子膜が用いられている。この膜厚はすでに100μm以下のものが主流であり、さらなる出力密度向上のためにさらに薄い電解質膜を用いたとしても、単セルの厚みを現在のものより劇的に薄くすることはできない。同様に、触媒層、ガス拡散層及びセパレータ等についてもそれぞれ薄膜化が進んでいるが、それらすべての部材の薄膜化によっても、単位体積当たりの出力密度の向上には限界がある。従って、小型化の要求に対しても、今後充分に応えられなくなることが予想される。
また、前記セパレータには、通常、腐食性に優れたシート状のカーボン材料を用いる。このカーボン材料自体も高価であるが、さらに、平面状の膜・電極接合体の面全体にほぼ均一に燃料ガス及び酸化剤ガスを行き渡らせるために、前記セパレータの面上には、通常、ガス流路となる溝を微細加工するので、その加工によって、セパレータは非常に高価になってしまい、燃料電池の製造原価を押し上げていた。
以上の問題の他にも、平型の単セルには、前記ガス流路から燃料ガス及び酸化剤ガスが漏れ出さないように幾層にもスタックされた単セルの周縁を確実にシールすることが技術的に難しいこと、平面状の膜・電極接合体のたわみや変形に起因して発電効率が低下してしまうことがあることなど、多くの問題がある。
通常このような中空形状のセルモジュールを有する燃料電池では、平型で使用されるセパレータに相当する部材は使用する必要がない。そして、その内面と外面とにそれぞれ異なった種類のガスを供給して発電するので、特別にガス流路を形成する必要もない。従って、その製造においては、コストの低減が見込まれる。さらに、セルモジュールが3次元形状であるので、平型の単セルに比べて体積に対する比表面積が大きくとれ、体積当たりの発電出力密度の向上が見込める。
また、アノード側の三相界面での電極反応で発生した電子は、集電部材を通り、カソード側の三相界面に到達し、そこでの電極反応に使われるので、セルモジュールと集電部材との間の導通が良好であることが不可欠である。
セルから導通を取る方法としては、平型の単セルからなるスタックでは、単セル同士を積み重ね、比較的強い圧力を印加して押し合わせる方法が一般的である。そして、その印加される圧力により、前記膜・電極接合体とガス拡散層及びセパレータ間が密着し、効果的に導通されている。
上記特許文献1では、集電部材としてTi線を用い、それをPt担持電極に取り付けることが開示されている。特許文献2に開示されている円柱状の電気化学素子では、その端部同士を導電性接続パターンで電気的に接続していることが開示されている。また、特許文献3に開示されているチューブ状の燃料電池では、触媒層に接続された外部端子が集電部材である。特許文献4では、触媒層にリード線を用いて集電電極を接続することが開示されている。そして、特許文献5では、線状の負極端子、正極端子をそれぞれ取り付けることが開示されている。
また、中空形状のセルモジュールは、平型と違い、電極と集電部材の接触性を高めるための面圧を付与しにくい形状及び構造を有するため、導通が不十分となりやすい。
特に特許文献1〜5に記載されているように集電部材として線材を用いる場合には、電極と集電部材の間の接触面積が小さいため、面圧不足により、導通が不十分となる傾向がさらに大きい。
また、本発明の第2の目的は、前記セルモジュールと前記集電部材とが互いに配置される時の圧力の印加量が少ない又はほとんどない場合でも、それらの間の電気的接続が充分になされるような構造を有するセルモジュール及びその製造方法、並びにそのセルモジュールを有する燃料電池を提供することを目的とする。
このように燃料電池用セルモジュールにおいて、固体電解質膜に配向させたナノ柱状体上に電極触媒金属を担持させるので、電極触媒金属を高密度担持させることが可能である。また、燃料電池での電極反応は、電極触媒とプロトン伝導性物質とが接しさらに反応ガスが供給される部分、即ち三相界面にて起こるが、このセルモジュールでは、電極触媒金属を担持したナノ柱状体を、固体電解質膜に配向して電極を構成するようにしたので、発電に際し供給される反応ガスは、三相界面付近まで容易に到達し、均一に拡散される。従って、担持された電極触媒金属を電極反応に有効に利用することができる。
特に、前記ナノ柱状体の長さが200μm以上であるようにすること、及び/又は、前記ナノ柱状体が前記電解質膜の膜面に略垂直に配向されているようにすることで、よりガス供給が良好に行われるようになり、担持された電極触媒金属を電極反応に有効に利用することができ、且つ、セルモジュールと集電部材との電気的接続をより良好にすることができる。
前記電極触媒金属が白金又は白金と他の金属とからなる合金であることが、電極反応活性が高いという観点から好ましい。
前記ナノ柱状体の表面にプロトン伝導性物質を有する場合には、三相界面が多く形成され、担持された電極触媒金属を電極反応に有効に利用することができる。
前記プロトン伝導性物質の上に撥水化材をさらに有する場合には、電極反応で生成する生成水が三相界面から効率的に排除され、三相界面が形成される部位を多く保つことができる。
前記電極触媒金属の粒子径が前記ナノ柱状体の外径以下である場合には、単位体積当たりの反応に有効な触媒表面を多くすることとなるので好ましい。
前記プロトン伝導性物質の厚みを1〜70μmとすることにより、三相界面を多く形成することができ、担持された電極触媒金属を電極反応に有効に利用することができる。
本発明に係る燃料電池用セルモジュールを備えた燃料電池は、高い発電出力を示す。
この製造方法においては、前記転写工程において、ナノ柱状体を電解質膜の膜面に略垂直に配向することが好ましい。
また、前記転写工程の後に、前記電解質膜のナノ柱状体が配向された膜面に集電部材を対向させ、前記電解質膜と一端で接合するナノ柱状体の他端と前記集電部材の当接部を導電性接着剤を用いて接着する接着工程をさらに有する製造方法では、集電部材との電気的接続がより良好なセルモジュールを製造できる。
さらに、前記電極触媒金属は、湿式法又は乾式法のいずれかによりナノ柱状体に担持させることができる。
そして、本発明に係る燃料電池用セルモジュールの製造方法においては、前記電極触媒担持工程と前記転写工程との間に、ナノチューブ生成触媒担持体に担持されたナノ柱状体にさらにプロトン伝導性物質を付与する付与工程を有し、前記転写工程においてプロトン伝導性物質が付与されたナノ柱状体を転写するようにすること、及びその付与工程に、前記プロトン伝導性物質の上にさらに撥水化材を付与し、前記転写工程において撥水化材が付与されたナノ柱状体を転写できるようにすることで、前記プロトン伝導性物質及び前記撥水化材を付与することができる。
前記付与工程は、含浸法により付与を行うことが、操作が簡単であるので好ましい。
さらに、前記付与工程は、ナノ柱状体にプロトン伝導性物質前駆体を付与し、付与後に前記プロトン伝導性物質前駆体を重合させてプロトン伝導性物質が付与されるようにすることが好ましい。
また、本発明のセルモジュールでは、触媒を担持したナノ柱状体が前記固体電解質膜に一端が接合されて配向されている。そして、その他端が集電部材と効果的に接触するので、電極と集電部材及び固体電解質膜の間の電荷の受け渡しがスムーズになる。従って、集電部材とセルモジュールとの間に外部からの面圧を付加しにくい中空形状の固体電解質膜を有するセルモジュールであっても、集電部材との電気的接続を良好にできる。従って、本発明の中空形状の固体電解質膜を有するセルモジュールは高い発電効率を示し、そのセルモジュールを集合させて形成した燃料電池は、発電効率に優れた燃料電池となる。
本発明のセルモジュール及び燃料電池の第1実施形態を図1〜図4を参照して説明する。本実施形態は、その内面及び外面に、白金(Pt;電極触媒金属)を担持するカーボンナノチューブ(以下、CNTともいう)が配向された状態で接合された、チューブ状のフッ素系イオン交換樹脂(高分子電解質)膜の中空内面側及び外面側に、集電部材であるスプリングワイヤをそれぞれ配置して構成したものである。カーボンナノチューブはナノ柱状体の一種である。
フッ素系イオン交換樹脂膜11は、プロトン伝導性の向上の点からは薄い方が好ましいが、あまりに薄すぎるとガスを隔離する機能が低下し、非プロトン水素の透過量が増大してしまう。しかしながら、従来の平型の燃料電池用単セルを積層した燃料電池と比べると、本発明に係る中空形状のセルモジュールを多数集めることにより作製された燃料電池では発電に有効な電極面積が大きくとれるので、やや厚みのある膜を用いた場合でも充分な出力を示す。かかる観点から、フッ素系イオン交換樹脂膜11の厚みは、10〜100μmであり、より好ましくは50〜60μmであり、さらに好ましくは50〜55μmである。
また、上記の外径と膜厚の好ましい範囲から、内径の好ましい範囲は0.01〜10mmであり、より好ましくは0.1〜1mmであり、さらに好ましくは0.1〜0.5mmである。
上記フッ素系イオン交換樹脂膜を形成する重合体の重量平均分子量は、耐久性の観点から、5000以上であることが好ましい。
さらに、本発明において、上記範囲内の平均孔径の微細孔を有する固体電解質膜を用いる場合には、ナノチューブがその微細な孔にちょうどはまり込んで固定されるので、ナノチューブが配向状態を保ったまま接合されやすくなるという効果もある。
また、カソード側集電部材22を製造する時に、そのコイルの内径を、チューブ状のフッ素系イオン交換膜11の外径よりも、わずかに小さくしておくことが好ましい。わずかに小さいカソード側集電部材22を、前記アノード側集電部材21を取り付けたフッ素系イオン交換膜11の外側に取り付けることで、圧力がわずかに印加された状態でカソード13と接触することになるので、カソード側集電部材22が中空部内に固定され、かつ、カソード側集電部材22とカソード13との電気的な接続状態が良好になる。
カーボンナノチューブ31は、200μm以上の長さとするのが望ましい。該長さが200μm未満になるとフッ素系イオン交換樹脂膜11と集電部材21,22との間隔が狭くなりすぎるため、反応ガス成分の供給、拡散量が低下して発電効率が低下することがある。
カーボンナノチューブ31の各々には、その外壁面に電池反応を担う電極触媒金属32として平均粒径2nmの白金(Pt)が担持されている。直線状のカーボンナノチューブ31を担体とすることで、表面積が広く確保されて電極触媒金属32が高密度担持されると共に、発電中に水が過剰に発生する条件下でも、ガスの三相界面への供給、拡散性が得られ、大きな電圧低下(濃度過電圧)が生じないようになっている。
本実施形態の電極触媒金属32はPtであるが、本発明に係るセルモジュール10は中空形状であり、従来の平型の単セルに比べて比表面積が大きいので、Ptより活性の低い触媒を用いても対体積比での出力密度の大きい燃料電池を形成することができる。従って、触媒材料としては、アノード(燃料極)、カソード(空気極)において水素の酸化反応及び酸素の還元反応に触媒作用を有するものであれば良く、白金、ルテニウム、イリジウム、ロジウム、パラジウム、オスニウム、タングステン、鉛、鉄、クロム、コバルト、ニッケル、マンガン、バナジウム、モリブデン、ガリウム、アルミニウム等の金属、又はそれらの合金から選択することができる。好ましくは、Pt、及びPtと例えばRuなど他の金属とからなる合金である。
なお、カーボンナノチューブ31の表面へのPt(電極触媒金属)の担持は、例えば、塩化白金酸や白金硝酸溶液等の白金薬液のアルコール等の溶剤希釈液などを用いて行うことができ、その詳細については後述する。
撥水化材としては、フッ素系樹脂の少なくとも一種を適宜選択して用いるのが好適であるが、特に限定されるものではない。上記のポリテトラフルオロエチレン以外に、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン、パーフルオロアルコキシアルカン、エチレン−テトラフルオロエチレンポリマー等も効果的な化合物として挙げることができる。また、複数種を併用してもよい。
以上のように構成されたセルモジュール10は、導電性接着剤35を用いて集電部材21,22と接合されることが好ましい。導電性接着剤としてはAgペーストなどが好適である。
まず、必要に応じて、基体洗浄工程を行う。基体洗浄工程では、カーボンナノチューブを生成させるために使用する基体(基板等)の表面を洗浄する。例えば、基体である基板を真空にした電気炉中で加熱処理することにより洗浄を行うことができる。
次に、CNT生成触媒担持工程を行い、基体にCNT生成触媒金属を担持してカーボンナノチューブの生成に用いるCNT生成触媒担持体を作製する。具体的な方法については特に制限はなく、例えば、所望の基体の上に蒸着などによりFe等の所望のCNT生成触媒金属を均一に微粒化して担持させることでCNT生成触媒担持体とすることができる。
CNT生成触媒金属としては、Fe以外にPd、Co、Ni、W、Mo、Mn又はこれらの合金などが挙げられる。基体としては、Al、Ni、ステンレス、Si、SiC、ゼオライト、活性炭(C)等が挙げられる。CNT生成触媒担持体用の基体は任意形状のものが使用できる。中空形状の固体電解質膜の中空部内に電極触媒層(アノード又はカソード)を設ける場合には、CNT生成触媒担持体のための基体としては、該中空部の径より小さい外径の棒状体が好ましい。また、中空形状の固体電解質の外面に電極触媒層(カソード又はアノード)を設ける場合には、CNT生成触媒担持体のための基体としては、シート又は板状体が好ましい。
本発明では、基体の上に蒸着によりFeからなるCNT生成触媒金属を所望の厚み(4nm)となるように均一に担持させてCNT生成触媒担持体を作製する。
CNT生成触媒担持体の表面における原料ガスの流速を、2mm/sec以上とすることによって、200μm以上のカーボンナノチューブを効率よく生成させることができる。
原料ガスには、炭化水素系ガスやアルコール系ガス(CH系ガス)、水素ガス(H系ガス)が含まれる。具体的には、炭化水素系ガス及びアルコール系ガスから選択される少なくとも一種、あるいは炭化水素系ガス及びアルコール系ガスから選択される少なくとも一種と水素系ガスから選択される少なくとも一種の両方を(場合によりガス化して)用いることができる。前記炭化水素系ガスの炭化水素成分としては、炭素数1〜6の炭化水素(例えばメタン、エタン、アセチレン、ベンゼン等)が好適に挙げられ、前記アルコール系ガスとしては、例えばメタノール、エタノール等が好適に挙げられる。CH系あるいはH系の原料が液相もしくは固相状態である場合には、予め気相にして供給することができる。また、CH系ガスとH系ガスとの混合系の場合、その混合比(CH系:H系)は、1:1〜1:20(分圧比あるいは流量比)が好ましい。
セルモジュール10は、チューブ状のフッ素系イオン交換樹脂膜11を用意し、CNT生成触媒担持体に生成したカーボンナノチューブ31にPt(電極触媒金属)を担持する電極触媒担持工程と、Ptが担持されたカーボンナノチューブ31をフッ素系イオン交換樹脂膜11に転写する転写工程とを、行うことによって作製される。また、カーボンナノチューブ31の上にプロトン伝導性物質を設け、さらにその上に撥水化材を設ける付与工程は、必要に応じて、前記電極触媒担持工程と転写工程との間、又は、前記転写工程の後に行うことができる。
また付与工程を設けるときには、上記のようにナフィオン層33を形成すると共に、更に形成されたナフィオン層33上にポリテトラフルオロエチレン(PTFE;撥水化材)溶液を付与してPTFE層34が更に設けられることが好ましい。この場合には、その後の転写工程において、Ptが担持され且つナフィオン層33及びPTFE層34が設けられたカーボンナノチューブ31が転写される。
付与工程でのナフィオン層33及びPTFE層34の形成は、ナフィオン溶液(プロトン伝導性物質の溶液)及びPTFE溶液(撥水化材の溶液)を用い、塗布法、浸漬法などの公知の方法により行うことができる。特に、精細なカーボンナノチューブの一本一本の表面に均一に付与できる点で特に浸漬法が好ましい。
本工程での加熱及び加圧処理は、例えばホットプレス法など、加圧可能な一対の熱板等を用いて行うことができる。ここでの加熱温度は110〜130℃程度が、加圧は1〜2MPa程度が、フッ素系イオン交換樹脂膜11との接合性の観点から好ましい。
フッ素系イオン電解質膜11の外面に対しては、シート状基体上にカーボンナノチューブを形成し、そのシートのカーボンナノチューブ面を内側にして前記フッ素系イオン交換樹脂膜11を圧力を加えながら巻き込み、必要に応じて加熱して転写する。
導電性接着剤35は、取り付ける前に予めセルモジュール10のアノード12上(内面側)及びカソード13上(外面側)又はアノード側集電部材21及びカソード側集電部材22に塗布する。この塗布は公知の方法で行える。
そして、前記チューブ状のフッ素系イオン交換膜11の内径よりも、そのコイルの外径をわずかに大きく作製したスプリングワイヤ状のアノード側集電部材21を、コイルの巻き方向に絞ることで、そのコイルの見かけの外径を小さくしながらフッ素系イオン交換膜11の中空部内に挿入する。次にコイルを絞っていた力を開放することで、前記セルモジュール10の内面側に圧力がわずかに印加された状態で固定できる。こうすることによって、アノード側集電部材21とアノード12を電気的に接続する。
本実施形態のセルモジュール10によれば、固体電解質膜11に配向させたカーボンナノチューブ31上に電極触媒金属32を担持させるので、電極触媒金属32が電極面積比で高密度担持され、且つ、発電に際し供給される反応ガスは、カーボンナノチューブ31上に形成された三相界面付近まで容易に到達し、均一に拡散される。従って、担持された電極触媒金属32を電極反応に有効に利用することができる。
ナノチューブは、微視的には固体電解質膜と集電部材間にほぼ垂直に多数乱立している。しかも、このナノチューブ表面は良好な水の伝達路として作用しうる。ナノチューブ上で集電部材の近傍にある電極触媒は、ナノチューブ表面からイオンを供給され気相から反応ガスを供給されることで電極反応を行い、発生した電荷は集電部材へとホッピング等の機構で移動する。つまり、ナノチューブにより、集電部材の近傍に反応場が形成されることで、生じた電荷がホッピング等によりすぐに集電部材に移動できるので、セルモジュールと集電部材との電気的接続が良好になっていると考えられる。
本発明のセルモジュールの第2の実施形態を図5及び図6を参照して説明する。本実施形態は、第1実施形態のセルモジュールにおいて、その中空内面側(アノード側)及び外面側(カソード側)に更に拡散層を設け、CNT電極(アノード及びカソード)を触媒層と拡散層とで構成するようにしたものである。なお、発電のための燃料は、第1実施形態で使用した燃料を用いることができ、第1実施形態と同様の構成要素には同一の参照符号を付してその詳細な説明を省略する。
本実施形態では、図5に示すように、セルモジュール70はチューブ状のフッ素系イオン交換樹脂膜11と、その中空内面側にカーボンナノチューブ31を配向させてなるアノード触媒層72と、外面側にカーボンナノチューブ31を配向させてなるカソード触媒層73と、アノード触媒層72に対向してチューブ状のフッ素系イオン交換樹脂膜11の内面側に設けられたアノード拡散層74と、カソード触媒層73に対向してチューブ状のフッ素系イオン交換樹脂膜11の外面側に設けられたカソード拡散層75で構成されている。
これら拡散層74,75は構造部材としても働くので、セルモジュール70が頑丈になり耐久性が向上する。
このように、本実施形態のセルモジュール70の場合、構造部材でもあるアノード拡散層74をまずチューブ状に作製することで、その後の全ての工程を、その拡散層チューブ74の外面側から行ってセルモジュール70を作製することができるので、セルモジュール70を容易に作製することができる。
また、第2実施形態のセルモジュール70によれば、図6に示すように、導電性材料からなる拡散層74,75を触媒層72,73上に設けることで、電極触媒金属による電極反応で生成した電荷が拡散層74,75に容易に到達でき、さらにはその導電性の拡散層74,75から集電部材21,22へと効率よく電荷が移動できる。従って、本実施形態のセルモジュール70は、集電部材21,22と良好に電気的に接続されている。
図7は本発明に係るセルモジュールの第1変形例であって、第2実施形態の外面側の拡散層を省いて構成したものである。
図8は本発明に係るセルモジュールの第2変形例であって、第2実施形態の中空内面側の拡散層を省いて構成したものである。この場合、外面側の拡散層95をまずチューブ状に作製し、その中空内面側に各層を設けることができる。
11…フッ素系イオン交換樹脂膜(固体電解質膜)
12…CNT電極(アノード)
13…CNT電極(カソード)
21…スプリングワイヤ(アノード側集電部材)
22…スプリングワイヤ(カソード側集電部材)
31…カーボンナノチューブ
32…電極触媒金属
33…ナフィオン層(プロトン伝導性物質層)
34…PTFE層(撥水層)
35…導電性接着剤
40…微細孔
51…導線
52…導線
60…燃料電池
61…セルモジュール集合体
70…セルモジュール
72…触媒層
73…触媒層
74…アノード拡散層
75…カソード拡散層
76…アノード
77…カソード
80…セルモジュール
82…触媒層
83…触媒層(カソード)
84…アノード拡散層
86…アノード
90…セルモジュール
92…触媒層(アノード)
93…触媒層
95…カソード拡散層
97…カソード
Claims (20)
- 中空形状の電解質膜と、当該電解質膜の中空内面及び外面に設けられた一対の電極を有し、
前記中空内面又は外面のうち少なくとも一方の電極は、前記電解質膜に配向されるとともに電極触媒金属を担持したナノ柱状体を有することを特徴とする、燃料電池用セルモジュール。 - 前記ナノ柱状体を有する電極に対向する集電部材をさらに有するセルモジュールであって、当該電極の集電部材と接触する領域に、前記ナノ柱状体の少なくとも一部が設けられている、請求項1に記載の燃料電池用セルモジュール。
- 前記ナノ柱状体の長さが200μm以上である、請求項1又は2に記載の燃料電池用セルモジュール。
- 前記ナノ柱状体が前記電解質膜の膜面に略垂直に配向されている、請求項1乃至3のいずれかに記載の燃料電池用セルモジュール。
- 前記中空形状の電解質膜が平均孔径5〜100nmの孔を有している、請求項1乃至4のいずれかに記載の燃料電池用セルモジュール。
- 前記電極触媒金属が白金又は白金と他の金属とからなる合金である、請求項1乃至5のいずれかに記載の燃料電池用セルモジュール。
- 前記ナノ柱状体の表面にプロトン伝導性物質を有する、請求項1乃至6のいずれかに記載の燃料電池用セルモジュール。
- 前記プロトン伝導性物質の上に撥水化材をさらに有する、請求項7に記載の燃料電池用セルモジュール。
- 前記電極触媒金属の粒子径が前記ナノ柱状体の外径以下である、請求項1乃至8のいずれかに記載の燃料電池用セルモジュール。
- 前記プロトン伝導性物質の厚みが1〜70μmである、請求項7乃至9のいずれかに記載の燃料電池用セルモジュール。
- 請求項1乃至10のいずれかに記載の燃料電池用セルモジュールを備えた燃料電池。
- ナノチューブ生成触媒担持体に生成されたナノ柱状体に電極触媒金属を担持する電極触媒担持工程と、
電極触媒金属が担持された前記ナノ柱状体を中空形状の電解質膜の中空内面又は外面の少なくとも一方に転写し、前記ナノ柱状体の一端を前記電解質膜の膜面に接合して配向する転写工程とを有することを特徴とする、燃料電池用セルモジュールの製造方法。 - 前記転写工程において、ナノ柱状体を電解質膜の膜面に略垂直に配向する、請求項12に記載の燃料電池用セルモジュールの製造方法。
- 前記転写工程の後に、前記電解質膜のナノ柱状体が配向された膜面に集電部材を対向させ、前記電解質膜と一端で接合するナノ柱状体の他端と前記集電部材の当接部を導電性接着剤を用いて接着する接着工程をさらに有する、請求項12又は13に記載の燃料電池用セルモジュールの製造方法。
- 前記ナノ柱状体は、ナノチューブ生成触媒担持体の表面における原料ガスの流速を2mm/sec以上として生成されたナノチューブである、請求項12乃至14のいずれかに記載の燃料電池用セルモジュールの製造方法。
- 前記電極触媒金属は、湿式法又は乾式法のいずれかによりナノ柱状体に担持された、請求項12乃至15のいずれかに記載の燃料電池用セルモジュールの製造方法。
- 前記電極触媒担持工程と前記転写工程との間に、ナノチューブ生成触媒担持体に担持されたナノ柱状体にさらにプロトン伝導性物質を付与する付与工程を有し、前記転写工程においてプロトン伝導性物質が付与されたナノ柱状体を転写するようにした、請求項12乃至16のいずれかに記載の燃料電池用セルモジュールの製造方法。
- 前記付与工程は、前記プロトン伝導性物質の上にさらに撥水化材を付与し、前記転写工程において撥水化材が付与されたナノ柱状体を転写できるようにした、請求項17に記載の燃料電池用セルモジュールの製造方法。
- 前記付与工程は、含浸法により付与を行う、請求項17又は18に記載の燃料電池用セルモジュールの製造方法。
- 前記付与工程は、ナノ柱状体にプロトン伝導性物質前駆体を付与し、付与後に前記プロトン伝導性物質前駆体を重合させてプロトン伝導性物質が付与されるようにした、請求項17乃至19のいずれかに記載の燃料電池用セルモジュールの製造方法。
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