JP2005336662A - 紡機における残糸除去方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】紡出中に渡り糸が何らかの原因で切れても、作業者あるいは残糸除去装置による作業を行わなくてもスピンドル基部に残糸が蓄積するのを防止する。
【解決手段】尻糸切断部材23がブレード22aに昇降可能に装備されている。尻糸切断部材23がボビンBに嵌挿された状態でボビン把持装置35aに把持されたボビンBと共にスピンドル4との嵌合位置から所定高さまで上昇された状態でスピンドル4と相対回転可能に設けられている。玉揚げ停止時にリングレール8を尻糸切断部材23の把持部以下の位置に糸Yを巻いた状態で停止させる。その状態で玉揚げ装置による玉揚げ動作を開始し、ボビン把持装置35aにより管糸38が把持されて尻糸切断部材23がボビンBと共に前記所定高さになるまで上昇された状態で玉揚げ装置を一時停止させる。その状態、即ち把持部が開いた状態でスピンドル4を回転させる。
【選択図】 図1

Description

本発明は、リング精紡機、リング撚糸機等の紡機における残糸除去方法に関する。詳しくは、トラベラから管糸に連なる糸をスピンドル側の把持部と協働で把持する把持部と、ボビンが嵌挿されるボビン嵌挿部とを備えた糸把持部材がスピンドルに設けられた紡機における残糸除去方法に関する。
トラベラを介して糸の巻き取りを行うリング精紡機、リング撚糸機等の紡機においては、満管時に管替作業を自動的に行うため、管替後の再起動時に糸を空のボビンに自動的に巻き取ることができるように、ローラパートに連なる糸がトラベラに通ったままスピンドルに接続していることが要求される。この要求を満たすため、従来、スピンドル基部に尻糸切断部と、その下方に尻糸巻部を設け、満管後、リングレールを急降下させて傾斜巻を行った後、尻糸巻部に糸を巻付け、満管糸の引き抜き時に尻糸巻部から満管糸に連なる糸(尻糸)を尻糸切断部で切断していた。なお、ローラパートとはリング精紡機ではドラフト装置を意味し、リング撚糸機では糸を供給する複数組のローラ部を意味する。
ところが、この切断方法では、尻糸巻部に巻き付けられた尻糸が玉揚げ後に残糸として尻糸巻部に残り、玉揚げを繰り返すたびに残糸の量が増加し、残糸処理を頻繁に行う必要がある。また、尻糸の巻付け長さが長いため、残糸を除去し難いという問題がある。
前記の問題を解消するため、トラベラから管糸に連なる糸を切断する作用を行うとともに、切断された後のトラベラに連なる糸をスピンドル側の把持部と協働で把持する把持部と、ボビンが嵌挿されるボビン嵌挿部とを備えた糸把持部材がスピンドルに設けられた紡機が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1に記載された紡機においては、スピンドル基部から上方に延びるブレードに対して昇降可能に設けた特別な尻糸切断部材を使用した尻糸切断方法が行われている。本願明細書の図10(b)に示すように、尻糸切断部材51はボビンBが嵌挿されるボビン嵌挿部51aと、ボビン嵌挿部51aより下側に設けられたカッタ部51bとを備えている。
そして、玉揚げ停止時に、トラベラを経て管糸に連なる糸が尻糸切断部材と前記スピンドル基部との当接部以下の位置を通る状態でリングレールを停止させ、前記当接部より少し下の位置に約1巻以下に糸が巻かれた状態でスピンドルを停止させる。その状態から、本願明細書の図10(a)に示すように、玉揚げ装置52により管糸53が抜き上げられ、抜き上げ途中まで尻糸切断部材51が管糸53と共に上昇され、管糸53からリングレール55のトラベラ56に連なる糸Yが尻糸切断部材51とスピンドル基部54との間に導かれる。
その後、尻糸切断部材51の上昇が規制手段によって規制され、本願明細書の図10(b)に示すように、管糸53から離脱した尻糸切断部材51がスピンドル基部54と当接する位置まで下降する。そして、管糸53からリングレール55のトラベラ56に連なる糸Yが尻糸切断部材51とスピンドル基部54との間に把持され、さらに管糸53が上昇することによりカッタ部51bで糸Yが切断される。そして、管糸53が抜かれた後のスピンドルにボビンBが嵌挿された後、機台が再起動されて、ボビンBに糸Yが自動的に巻き取られる。従って、尻糸切断部材51とスピンドル基部54との間に把持された糸は、新たにスピンドルに嵌挿されたボビンBに巻き取られた糸に繋がった状態となり、次回の玉揚げ時に満ボビン(満管糸)と共に上昇してスピンドル基部54から自動的に除去される。
特開2002−173837号公報(明細書の段落[0021]〜[0028]、図1〜図3)
特許文献1に記載の方法では、尻糸切断部材51とスピンドル基部54との間に把持された糸は、次回の玉揚げ時に満ボビン(満管糸)と共に上昇してスピンドル基部54から除去される。しかし、機台の再起動後、満管時までに、前記尻糸切断部材51とスピンドル基部54との間に把持されるとともにボビンBに繋がる糸(渡り糸)が何らかの原因で切れる場合がある。渡り糸が切れると、スピンドル基部54に残った糸が次の玉揚げ時に除去されずに残る。これが繰り返されると支障を来たすため、作業者あるいは残糸除去装置による作業が必要になる。
本発明は前記従来の問題点に鑑みてなされたものであって、その目的は紡出中に渡り糸が何らかの原因で切れても、作業者あるいは残糸除去装置による作業を行わなくてもスピンドル基部に残糸が蓄積するのを防止することができる紡機における残糸除去方法を提供することにある。
前記の目的を達成するため、請求項1に記載の発明は、玉揚げ装置による管糸の抜き上げ動作により、トラベラから管糸に連なる糸を切断する作用を行うとともに、切断された後のトラベラに連なる糸をスピンドル側の把持部と協働で把持する把持部と、ボビンが嵌挿されるボビン嵌挿部とを備え、かつスピンドルとの嵌合位置から所定高さまで上昇された状態でスピンドルと相対回転可能な糸把持部材がスピンドルに設けられた紡機における残糸除去方法である。そして、玉揚げ装置により管糸を把持して前記糸把持部材をボビンと共にスピンドルに対して相対回転可能な所定高さになるまで上昇させ、前記両把持部が開いた状態でスピンドルを回転させる。
この発明では、玉揚げ装置により管糸が把持されてスピンドルから抜き上げられる途中で、トラベラから管糸に至る糸が切断されるとともに、切断された後もトラベラに繋がる糸の糸端が糸把持部材とスピンドル基部との間に把持される。そして、空のボビンが新たにスピンドルに嵌挿された後、機台再起動により糸の巻き取りが再開され、次の玉揚げの際、前回の玉揚げ時に糸把持部材とスピンドル基部との間に把持された糸端が管糸に繋がった状態で除去される。前記把持された糸端と、空のボビンに巻き取られた糸との間の渡り糸が切れた場合は、糸把持部材とスピンドル基部との間に把持された糸端は管糸を抜き上げても除去されずにスピンドル基部に残る。しかし、この発明では、玉揚げ作業の途中の、前記糸把持部材がボビンと共に所定高さになるまで上昇され、前記両把持部が開いた状態でスピンドルが回転される。従って、把持部に残っていた糸は遠心力で把持部から排出される。その結果、紡出中に渡り糸が何らかの原因で切れても、作業者あるいは残糸除去装置による作業を行わなくてもスピンドル基部に残糸が蓄積するのを防止することができる。
請求項2に記載の発明は、玉揚げ装置による管糸の抜き上げ動作により、トラベラから管糸に連なる糸を切断する作用を行うとともに、切断された後のトラベラに連なる糸をスピンドル側の把持部と協働で把持する把持部と、ボビンが嵌挿されるボビン嵌挿部とを備え、かつスピンドルとの嵌合位置から所定高さまで上昇された状態でスピンドルと相対回転可能な糸把持部材がスピンドルに設けられた紡機における残糸除去方法である。そして、玉揚げ装置による玉揚げ後、スピンドルに空のボビンを挿入した後、機台の起動を行って空のボビンに糸を所定量巻き付けた後、機台を停止させ、玉揚げ装置によりボビンを把持して前記糸把持部材をボビンと共にスピンドルに対して相対回転可能な所定高さになるまで上昇させ、前記両把持部が開いた状態でスピンドルを回転させる。その後、前記糸把持部材及びボビンを巻き取り位置に復帰させて玉揚げ装置によるボビンの把持を解除した後、機台の運転を再開する。
この発明では、玉揚げ装置による管糸の抜き上げ動作により、トラベラから管糸に連なる糸が切断され、切断された後のトラベラに連なる糸の糸端が糸把持部材とスピンドル基部との間に把持される。そして、玉揚げ後、機台再起動により空のボビンに糸が所定量(例えば数チェイス分)巻き取られた後、機台が停止される。その状態で玉揚げ装置により、ボビンが把持されて糸把持部材がボビンと共に前記所定高さになるまで上昇され、前記両把持部が開いた状態でスピンドルが回転される。その後、前記糸把持部材及びボビンが巻き取り位置に復帰されて玉揚げ装置によるボビンの把持が解除された状態で機台の運転が再開される。
前記両把持部が開いた状態でスピンドルが回転される時期は、玉揚げ後、機台再起動により新たな巻き取りが開始されてから僅かな巻き取りがなされた時期であり、機台再起動からその間までに渡り糸が切断される可能性は非常に低い。従って、ボビンBと共に糸把持部材が上昇される際に、前回の玉揚げ時に糸把持部材とスピンドル基部との間に把持された糸端の一部がボビンに繋がった状態でスピンドル側の把持部から離脱する。その状態でスピンドルが回転されるため、スピンドル側の把持部に付着している糸端はスピンドルの回転により離脱し易くなる。そして、機台の運転再開によりボビンが回転された初期に、ボビンに繋がる糸端が飛散する。また、渡り糸が切れた場合は、把持部に残っていた糸が遠心力で把持部から排出される。その結果、この発明では、玉揚げ時の途中に糸把持部材の把持部が開いた状態でスピンドルを回転させて把持部に残っていた糸を排出する請求項1の発明に比較して糸の排出をより確実に行うことができる。
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の発明において、前記両把持部が開いた状態でスピンドルが回転される時間は5秒以下である。この発明では、前記スピンドルの回転時間が短いため、その間、精紡機のドラフトパートあるいは撚糸機のローラパートが同時に作動しても支障がない。従って、前記スピンドルの回転時にドラフトパートあるいはローラパートが作動しないように、スピンドル駆動系とドラフトパートあるいはローラパート駆動系とを切り離す構成が不要となり、紡機の構成及び制御が簡単になる。
請求項4に記載の発明は、請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の発明において、前記糸把持部材及びスピンドルの少なくとも一方に、前記糸把持部材及びスピンドルの相対回転時の抵抗を抑制する滑り軸受が設けられている。従って、この発明では、糸把持部材が所定の上昇位置に保持された状態でスピンドルが回転される際、滑り軸受が存在しない場合に比較して回転抵抗が小さくなり、耐久性が向上する。
本発明によれば、紡出中に渡り糸が何らかの原因で切れても、作業者あるいは残糸除去装置による作業を行わなくてもスピンドル基部に残糸が蓄積するのを防止することができる。
(第1の実施形態)
以下、本発明をリング精紡機に具体化した第1の実施形態を図1〜図6に従って説明する。図1(a)〜(c)及び図2(a),(b)は玉揚げ時の作用を説明する概略側面図、図3はリング精紡機の概略構成図である。図4(a)はスピンドルの一部破断模式側面図、(b)は尻糸切断部材の取付け状態を示す断面図、図5は尻糸切断部材及びスピンドル基部の概略斜視図である。図6は精紡機と玉揚げ装置の関係を示す概略図である。
リング精紡機は、リフティング駆動系が、ドラフトパート及びスピンドル駆動系とは独立に駆動制御されるように構成されている。図3に示すように、ドラフトパートを構成するフロントローラ1の回転軸2は、主モータMにより回転駆動されるドライビングシャフト3との間に配設された歯車列(図示せず)を介して回転駆動されるようになっている。スピンドル4はドライビングシャフト3に固定されたチンプーリ5との間に巻き掛けられたスピンドルテープ(図示せず)を介して回転駆動されるようになっている。フロントローラ1及びスピンドル4の回転数比は紡出条件(撚数)に対応して設定されている。主モータMにはインバータ6を介して駆動される可変速モータが使用されている。回転軸2に一体回転可能に固定された歯車2aの近傍にはフロントローラ1の回転に対応してパルス信号を出力するセンサS1が配設されている。即ち、リフティング駆動系は、ドラフトパート及びスピンドル駆動系とは独立に駆動制御される。
リフティング装置はラインシャフト7を介してリングレール8及びラペットアングル9を昇降動させるようになっている。ラペットアングル9にはスネルワイヤ10aを備えたラペット10(図1に図示)が取付けられており、フロントローラ1から送り出される糸Yがリング8a上を摺動するトラベラ11にスネルワイヤ10aを経て導かれるようになっている。
リフティング装置は、特開平7−300728号公報に開示された装置と基本的に同じ構成であり、機台フレーム(図示せず)に対して上下方向に移動可能に支承されたポーカピラー13が、ラインシャフト7の回転に伴い、ポーカピラー13の上端に固定されたリングレール8と共に昇降される。ラペットアングル9も同様な昇降機構でリングレール8と同期して昇降可能となっている。ラインシャフト7はサーボモータ15の駆動軸に歯車列(図示せず)を介して連結され、回転速度及び回転方向が自由に変更可能となっている。サーボモータ15は制御装置16によりサーボドライバ17を介して駆動制御される。サーボモータ15にはロータリエンコーダ18が装備されている。
図4(a)に示すように、スピンドル4はスピンドルレール19に固定されたボルスタ20に軸受21を介して回転可能に支持されている。スピンドル4はブレード部22と、ブレード部22の下側中心部に固着されたスピンドル軸4aとを備え、スピンドル軸4aがボルスタ20に回転可能に支持されている。ブレード部22はスピンドル基部22bを除いた部分がアルミニウム又はアルミニウム合金製で、樹脂製のスピンドル基部22bがブレード22aの下部に嵌合固定されている。スピンドル軸4aはブレード部22にインサート成形されている。
スピンドル基部22bより上方に延びるブレード22aには、糸把持部材としての尻糸切断部材23が昇降可能に設けられている。図4(b)に示すように、尻糸切断部材23はボビンBが嵌挿されるボビン嵌挿部24と、ボビン嵌挿部24より下側に設けられたカッタ部25とを備えている。カッタ部25は円環状の刃体25aを別体とし、刃体25aを固定する複数の係止凸部25bを備えている。この実施の形態では刃体25aの先端の径がボビンBの下端の外径より大きく形成されている。
ボビン嵌挿部24は円筒状に形成されるとともに、内側にコイルばね26を収容する凹部24aが形成されている。尻糸切断部材23は常には下端部がスピンドル基部22bと当接してスピンドル基部22bとの間で尻糸を把持可能に構成されている。
ブレード22aにはカラー27が固定されている。カラー27は、尻糸切断部材23がスピンドル基部22bに当接した状態において、その下部がボビン嵌挿部24の上端と対向する位置に固定されている。カラー27の外径は凹部24aの内径より若干小さく形成され、尻糸切断部材23はカラー27に沿って摺動する。ボビン嵌挿部24はその外径が上側ほど小さくなるように形成されている。コイルばね26は、下端が凹部24aの下端に当接し、上端がカラー27の下端に当接する状態で凹部24a内に収容されている。
図4(b)及び図5に示すように、尻糸切断部材23の下端部及び該下端部に対向するスピンドル基部22bの上端部には、互いに係合可能な複数の凸部28a,28b及び凹部29a,29bが径方向に延びるように設けられている。従って、尻糸切断部材23の下端部及びスピンドル基部22bの上端部は、互いに噛合する複数の歯を備えた構成となっている。凸部28a及び凹部29aが尻糸切断部材23の把持部を構成し、凸部28b及び凹部29bがスピンドル側の把持部を構成する。
尻糸切断部材23の下端部はスピンドル4を回転中心とし、頂点が前記下端部外周を含みスピンドル4と直交する面より上方に位置する仮想円錐の斜面の一部を構成するように形成されている。スピンドル基部22bの上端部もスピンドル4を回転中心とし、頂点が前記下端部外周を含みスピンドル4と直交する面より上方に位置する仮想円錐の斜面の一部を構成するように形成されている。
スピンドル基部22bの各凸部28bのブレード22a側の端面30はスピンドル4を回転中心とした下向きの仮想円錐の斜面を構成する曲面となるように形成されている。尻糸切断部材23の各凹部29aのブレード22a側には、端面30と当接可能で、スピンドル4を回転中心とした仮想円錐の斜面を構成する曲面31aを有する壁31が形成されている。端面30及び壁31が尻糸切断部材23のスピンドル基部22bに対する同心を確保する調心手段を構成する。なお、図5に示すように、スピンドル基部22bのブレード22aに嵌合する内周面には回り止め部22cが形成されている。
図4(b)に示すように、ボビン嵌挿部24の下部外周面には環状の溝32が形成され、溝32内には一部が溝32の外に突出する状態でゴムリング33が収容されている。ゴムリング33はボビン嵌挿部24とボビンBとの嵌合力を高めるための嵌合力増強手段を構成する。
図6(a),(b)に示すように、リング精紡機には公知の全錘一斉式の玉揚げ装置(管替装置)34が装備されている。玉揚げ装置34はボビン把持装置35aを備えたドフィングバー35を装備し、スピンドルレール19の下方に配置された搬送装置36のぺッグ36a上の空ボビンEと、スピンドル4上の管糸38とを交換する。玉揚げ作業時には、図6(a)に示すように、ドフィングバー35に装備されたボビン把持装置35aが、矢印で示す線に沿って移動し、ぺッグ36a上から抜き上げた空ボビンEを中間ぺッグ37に挿入する。次にボビン把持装置35aは、スピンドル4上の管糸38の上方と対応する位置へ移動し、管糸38を把持した後、図6(b)に矢印で示す線に沿って移動し、スピンドル4上の管糸38を抜き上げた後、搬送装置36のぺッグ36a上に挿入する。次に再び図6(a)に矢印で示す線に沿って移動し、中間ぺッグ37上の空ボビンEをスピンドル4に挿入した後、図6(b)に矢印で示す線に沿って移動してぺッグ36aの上方の待機位置に復帰する。
図3に示すように、制御装置16は、CPU(中央処理装置)39、プログラムメモリ40、作業用メモリ41及び入力装置42を備えている。CPU39はプログラムメモリ40に記憶された所定のプログラムデータに基づいて動作し、図示しないインタフェース及び駆動回路を介して主モータM及びサーボモータ15を制御する。また、制御装置16は玉揚げ装置34の制御も行う。
プログラムメモリ40は読出し専用メモリ(ROM)よりなり、前記プログラムデータと、その実行に必要な各種データとが記憶されている。プログラムデータとしては巻き取り運転中の主モータM及びサーボモータ15の制御プログラム、玉揚げ停止後の玉揚げ作業(管替え作業)時の玉揚げ装置の制御プログラム及び主モータMの制御プログラムがある。各種データとしては紡出糸番手及び紡出運転時のスピンドル回転数等の紡出条件と、満管までのリングレール8のチェイス回数との対応データがある。また、プログラムメモリ40には、玉揚げ作業時の途中で、スピンドル4を一時的に所定時間駆動するプログラムが記憶されている。
作業用メモリ41は読出し及び書替え可能なメモリ(RAM)よりなり、入力装置42により入力されたデータやCPU39における演算処理結果等を一時記憶する。作業用メモリ41はバックアップ電源(図示せず)を備えている。
入力装置42は紡出糸番手、紡出運転時のスピンドル回転数、紡出長、リフト長、チェイス長等の紡出条件データの入力に使用される。
CPU39はインタフェースを介してセンサS1及びロータリエンコーダ18と接続されている。CPU39はセンサS1からの出力信号に基づいて紡出量を演算する。CPU39はロータリエンコーダ18の出力信号に基づいてリングレール8の移動方向及び位置を認識し、その値に基づいてリングレール8が紡出条件に対応した所定の昇降運動を行うようにサーボモータ15を制御する。また、CPU39は、玉揚げ装置34からの信号に基づいて、玉揚げ作業がどの段階にあるかを認識する。
制御装置16は、玉揚げ作業時に、管糸38を一気にスピンドル4から抜き上げるのではなく、尻糸切断部材23がボビンBに嵌合された状態でスピンドル4と相対回転可能になる所定高さに達した時点で一時停止されるように、玉揚げ装置34を制御する。前記所定の高さは、コイルばね26の作用により尻糸切断部材23がボビンBから離脱しない高さである。この高さでは、尻糸切断部材23がスピンドル基部22bから離れた状態、即ちスピンドル基部22bと尻糸切断部材23の把持部が開いた状態となる。制御装置16は、この状態で、スピンドル4を所定時間回転させる。所定時間とは、スピンドル基部22bに付着している糸を遠心力でスピンドル基部22bから離脱させるに必要な時間であり、予め試験により求めて設定される。所定時間は5秒以下であり、通常は1〜2秒である。
次に前記のように構成された装置の作用を説明する。紡機機台の運転に先立って、まず、紡出糸番手、紡出運転時のスピンドル回転数、紡出長、リフト長、チェイス長等の紡出条件データが入力装置42により入力される。ボビンBはその下部が尻糸切断部材23のボビン嵌挿部24に嵌挿され、上部が係止部材に係合された状態でスピンドル4に一体回転可能に装着される。
制御装置16は入力装置42により入力されて作業用メモリ41に記憶された紡出条件に従って、サーボモータ15を主モータMと同期して駆動制御する。サーボモータ15が駆動されると歯車列を介してラインシャフト7が回転され、リングレール8及びラペットアングル9等が上昇又は下降される。また、フロントローラ1から送出された糸Yはスネルワイヤ10a及びトラベラ11を経てボビンBに巻き取られる。
紡出が継続されて満管停止時期になると、トップバンチ巻が形成された後、図1(a)に示すように、リングレール8が急降下されて、スピンドル4に装着されている管糸(満ボビン)38に傾斜巻(胴巻)38aが行われる。その後、リングレール8は、トラベラ11を経て管糸38に連なる糸Yが尻糸切断部材23とスピンドル基部22bとの当接部以下の位置、即ち把持部以下の位置を通る状態で停止する。そして、尻糸切断部材23とスピンドル基部22bとの当接部より少し下側の位置に約1巻の糸が巻かれた状態となるようにブレーキが掛けられてスピンドル4が停止されて図1(a)に示す状態となる。
次に図1(b)に示すように、ラペット10が玉揚げに支障とならない退避位置に配置された後、玉揚げ装置34により管糸(満ボビン)38が抜き上げられる。抜き上げ途中まで尻糸切断部材23が管糸38と共に上昇され、尻糸切断部材23とスピンドル基部22bとの間に管糸38からトラベラ11に連なる糸Yが導かれる。スピンドル基部22bに巻かれた状態の糸Yは、管糸38と共に尻糸切断部材23が上昇すると、ブレード22aの外面に沿って移動する。尻糸切断部材23が所定高さに達した時点で玉揚げ装置34が停止される。この状態では尻糸切断部材23はボビンBに嵌合された状態に保持されるとともに、尻糸切断部材23の上昇に伴い尻糸切断部材23の内周面とブレード22a外周面との間隙が拡大し、かつ、複数の凸部28a,28b及び凹部29a,29bの噛合いが解除されることにより、スピンドル4に対して相対回転可能な状態にある。
次に主モータMが駆動されてスピンドル4が回転される。主モータMは、所定時間駆動される。従来技術で述べたように、前回の玉揚げ時に切断されてスピンドル基部22bと尻糸切断部材23との間に把持された糸Yは、今回玉揚げされる管糸38に繋がった状態で、管糸38と共に上昇してスピンドル基部22bから離脱して自動的に除去される。しかし、尻糸切断部材23とスピンドル基部22bとの間に把持されるとともにボビンBに繋がる糸(渡り糸、図示せず)が、満管時までに何らかの原因で切れる場合がある。渡り糸が切れると、スピンドル基部22bに残った糸は、管糸38が上昇してもスピンドル基部22bから離脱せずに、即ち除去されずに残る。この実施の形態では、尻糸切断部材23がスピンドル基部22bから離れた状態、即ちスピンドル基部22b及び尻糸切断部材23の把持部が開いた状態で、スピンドル4と共にスピンドル基部22bが回転される。そして、スピンドル基部22bに残っている残糸はその際の遠心力により、スピンドル基部22bから離脱する。
スピンドル4が停止した後、玉揚げ装置34の玉揚げ作業が再開される。図1(c)に示すように、管糸38と共に尻糸切断部材23がさらに上昇中に、コイルばね26の付勢力が尻糸切断部材23とボビンBとの間の嵌合保持力を上回ることにより尻糸切断部材23が管糸38から離脱する。そして、図2(a)に示すように、尻糸切断部材23がスピンドル基部22bと当接する位置まで下降し、管糸38からトラベラ11に連なる糸Yが尻糸切断部材23とスピンドル基部22bとの間に把持される。その後、さらに管糸38が玉揚げ装置34により上昇移動され、糸Yがカッタ部25に対して90度に近い大きな角度で当接する状態となり、糸Yがカッタ部25で確実に切断される。さらに、玉揚げ装置34の作動が継続され、管糸38が玉揚げされて図2(b)に示す状態となる。その後、空のボビンがスピンドル4に挿入される。
トラベラ11に連なる糸Yの端部は次の玉揚げまで、尻糸切断部材23とスピンドル基部22bとの間、即ち凸部28a,28bと凹部29a,29bとの間に把持される。そして、尻糸切断部材23とスピンドル基部22bとの間に把持された尻糸は、渡り糸が次回の玉揚げ作業時までに切断されなければ、次回の玉揚げの際に管糸38に連なってスピンドル4から離脱する。
この実施の形態では以下の効果を有する。
(1)玉揚げ停止時にリングレール8を尻糸切断部材23の把持部以下の位置に糸Yを巻いた状態で停止させ、その状態で玉揚げ装置34による玉揚げ動作を開始する。玉揚げ作業の途中の、尻糸切断部材23がボビンBと共に所定高さになるまで上昇され、把持部が開いた状態でスピンドル4が回転される。そして、把持部に残っていた(スピンドル基部22bに付着していた)糸は、遠心力で把持部から排出される。従って、紡出中に渡り糸が何らかの原因で切れても、作業者あるいは残糸除去装置による作業を行わなくてもスピンドル基部22bに残糸が蓄積するのを防止することができる。
(2)スピンドル基部22b及び尻糸切断部材23の把持部が開いた状態でスピンドル4が回転される時間は5秒以下であるため、その間、ドラフト装置(ドラフトパート)が同時に作動しても支障がない。従って、スピンドル4の回転時にドラフト装置が作動しないようにスピンドル駆動系とドラフトパート駆動系とを切り離す構成が不要であり、紡機の構成及び制御が簡単になる。
(3)糸Yは、尻糸切断部材23の下端部及び該下端部に対向するスピンドル基部22bの上端部に径方向に延びるように設けられた複数の凸部28a,28b及び凹部29a,29bにより屈曲された状態で把持される。従って、尻糸切断部材23をスピンドル基部22b側に押圧する力が玉揚げ装置34の動作に支障を与えない程小さくても、糸Yを確実に把持できる。
(4)尻糸切断部材23の下端部となる凸部28aの下面及び凹部29aの底面は、それぞれスピンドル4を回転中心とし、頂点が前記下端部外周を含みスピンドル4と直交する面より上方に位置する仮想円錐の斜面の一部を構成するように形成されている。従って、スピンドル4に1巻以内で巻き付いた状態の糸Yに、把持部から糸Yを引き抜く方向の力が作用した場合、糸Yには半径方向かつ外側へ向かう力が作用する。その際、把持部となる凸部28aの下面や凹部29aの底面が下方へ傾斜している場合は、糸Yの把持が水平面で行われる場合に比較して、凸部28a及び凹部29aのエッジにおいて糸Yに加わる抵抗が大きくなり、糸が引き出され難くなる。その結果、糸Yの把持に必要な尻糸切断部材23の押圧力を把持部が水平の場合に比較して小さくできる。
(5)尻糸切断部材23がコイルばね26により常にスピンドル基部22b側に付勢されているため、尻糸切断部材23が軽くてもトラベラ11に連なる糸Yを確実に把持できる。また、ボビン嵌挿部24がボビンBから離脱した際、尻糸切断部材23がコイルばね26により下方へ付勢されるため、尻糸切断部材23の落下途中で糸Yが切断されても、尻糸切断部材23が素早くスピンドル基部22bと当接する位置に達して糸Yを把持できる。
(第2の実施形態)
次に第2の実施形態を図7(a),(b)に従って説明する。この実施形態では、玉揚げ時に切断されてスピンドル基部22bと尻糸切断部材23との間に把持された糸端を、
尻糸切断部材23がボビンBと共に所定高さまで上昇されて、把持部が開いた状態でスピンドル4を回転させることにより除去する点は前記第1の実施形態と同じである。しかし、除去する時期が前記第1の実施形態と大きく異なっている。この実施形態では、玉揚げ作業完了後、新たにボビンBがスピンドル4に嵌挿され、機台再起動により新たにボビンBに糸Yが数チェイス巻かれた状態で前記除去作業が行われる。精紡機及び玉揚げ装置34の機械的構成は、第1の実施形態と同じであり、玉揚げ装置34の制御及び精紡機の運転制御の方法が第1の実施形態と異なる。前記実施形態と同一部分に関しては同一符号を付して詳しい説明を省略し、異なる部分について説明する。
この実施形態では、玉揚げ装置34による玉揚げ作業は、前記第1の実施形態と異なり、玉揚げ途中で一時中断されることなく、従来と同様に行われる。そして、玉揚げ装置34による玉揚げ作業完了後、機台が再起動されて空のボビンBに糸Yが数チェイス分巻き付けられた後、機台の運転が一時停止される。このとき、図7(a)に示すように、リング8aの下端がスピンドル基部22bの上端より高い位置で停止されるように制御される。
その後、玉揚げ装置34が作動され、図7(b)に示すように、ボビン把持装置35aによりボビンBが把持されて尻糸切断部材23と共に所定高さになるまで上昇される。この状態では尻糸切断部材23はボビンBに嵌合された状態に保持されるとともに、スピンドル4に対して相対回転可能な状態にある。次に主モータMが駆動されてスピンドル4が所定時間回転される。所定時間とは、スピンドル基部22bに残っている糸を遠心力でスピンドル基部22bから離脱させるに必要な時間であり、予め試験により求めて設定される。所定時間は5秒以下であり、通常は1〜2秒である。その後、玉揚げ装置34が作動されて尻糸切断部材23及びボビンBが巻き取り位置に復帰され、ボビン把持装置35aによるボビンBの把持が解除される。そして、玉揚げ装置34が機台の運転に支障とならない状態になった後、機台の運転が再開される。
スピンドル基部22b及び尻糸切断部材23の把持部が開いた状態でスピンドル4が回転される時期は、玉揚げ後、機台再起動により新たな巻き取りが開始されてから僅かな巻き取りがなされた時期であり、機台再起動からその間までに渡り糸Ya(図7(a)にのみ図示)が切断される可能性は非常に低い。従って、ボビンBと共に尻糸切断部材23が上昇される際に、前回の玉揚げ時に尻糸切断部材23とスピンドル基部22bとの間に把持された糸端の一部がボビンBに繋がった状態でスピンドル4側の把持部から離脱する。その状態でスピンドル4が回転されるため、スピンドル基部22bの把持部(凸部凸部及び凹部28b,29b)に残っている糸端はスピンドル4の回転により把持部から離脱する。そして、機台の運転再開によりボビンBが回転された初期に、ボビンBに繋がる糸端が飛散する。また、渡り糸が切れた場合も、スピンドル4側の把持部に付着されていた糸Yは、遠心力で把持部から排出される。
この実施形態においては、前記第1の実施形態の(2)〜(5)と同様な効果が得られる他に、次の効果が得られる。
(6)渡り糸が切れる確率の低い時期に尻糸切断部材23が所定高さに上昇されるため、糸端の一部がボビンBに繋がった状態でスピンドル4側の把持部から離脱する。従って、玉揚げ時の途中に尻糸切断部材23の把持部が開いた状態でスピンドル4を回転させてスピンドル4側の把持部に残っていた糸を排出する第1の実施形態に比較して糸Yの排出をより確実に行うことができる。
(7)糸除去作業を行う際、リングレール8はリング8aの下端がスピンドル基部22bの上端より高い位置で停止される。従って、スピンドル4の回転により、ボビンBに繋がっている糸Yが遠心力で排出される際に、リング8aが干渉しない。また、機台再起動時にリングレール8の位置を変更せずに、そのままの状態で機台再起動を行うことができる。
実施の形態は前記に限定されるものではなく、例えば、次のように具体化してもよい。
○ 尻糸切断部材23及びスピンドル基部22bの両把持部が開いた状態でスピンドル4が回転される時間は5秒以下に限らず、5秒より長くてもよい。しかし、スピンドル駆動系とドラフトパート駆動系とが同期して駆動される構成では、スピンドル4の回転時間が長くなると、ドラフトパートから送出される糸の長さが長くなるため好ましくない。
〇 玉揚げ作業時に、スピンドル4が所定時間回転される時期は、尻糸切断部材23が所定高さに達して、玉揚げ装置34が一時停止された後に限らない。例えば、尻糸切断部材23がスピンドル基部22bから離れて、尻糸切断部材23がボビンBに嵌合された状態でスピンドル4と相対回転可能になった状態で、まだ上昇途中でスピンドル4を回転させてもよい。しかし、玉揚げ装置34が一時停止された後に、スピンドル4を回転させる方が制御タイミングなどの点から好ましい。
〇 第2の実施形態において、機台再起動後、糸除去作業を行うための機台停止時におけるリングレール8の停止位置は、リング8aの下端がスピンドル基部22bの上端より高い位置となる位置に限らない。例えば、スピンドル基部22bの上端がリング8aの内面と対応する位置としたり、リング8aの上端がスピンドル基部22bの下端より低い位置となる位置としてもよい。
〇 玉揚げ装置34による管糸38の玉揚げ途中に、尻糸切断部材23が所定の高さまで上昇されたことの確認は、ドフィングバー35の位置から確認する代わりに、他の方法で確認してもよい。例えば、管糸38を把持して抜き上げを開始した時点からの経過時間で確認したり、各スピンドル4毎あるいは代表のスピンドル4にボビンBの位置を検出するセンサを設けてもよい。
○ スピンドル基部22b及び尻糸切断部材23の両者を金属製としてもよい。
○ スピンドル基部22bを金属製とする場合、スピンドル基部22bはブレード部22と別体ではなく一体成形してもよい。
〇 尻糸切断部材23及びスピンドル基部22bの把持部は凸部28a,28b及び凹部29a,29bとの組合せに限らない。両把持部が平面同士であってもよい。両把持部が平面同士の場合、各把持部をスピンドル4の中心を中心軸とするとともに頂点が上側になる円錐の斜面で構成してもよい。
○ カッタ部25として刃体25aを別体とした構成に限らず、例えば図8に示すように、尻糸切断部材23はボビン嵌挿部24の下端に円板状の刃部24bを一体に形成した構成でもよい。
○ カッタ部25の外径をボビンBの底部外径より小さくしてもよい。この場合、玉揚げ時に管糸38からトラベラ11に連なる糸Yが、尻糸切断部材23とスピンドル基部22bとの間に把持される前に切断される虞がない。
○ 尻糸切断部材23は必ずしも刃体25aにより糸Yを切断する構成に限らず、管糸38がスピンドル4から抜き上げられる際に、糸Yに当接するエッジ部を備え、糸Yが引き千切られるのを補助する構成としてもよい。
○ ボビン嵌挿部24において嵌挿されたボビンBから玉揚げ途中で尻糸切断部材23を離脱させる構成は、ばね(例えば、コイルばね26)の付勢力を利用する構成に限らない。例えば、図9に示すように、ブレード22aの所定位置に止め輪27aやピン等のストッパを固定する。この構成では、尻糸切断部材23がボビンBと共に上昇する際、ストッパと係合することにより、その上昇が規制されて尻糸切断部材23がボビンBから離脱する。この場合、尻糸切断部材23がボビンBから離脱する高さが、ばねの付勢力を利用する構成より正確になる。
○ 尻糸切断部材23がスピンドル基部22bと当接する状態において、尻糸切断部材23をスピンドル基部22b側に付勢する付勢手段として、ばねに代えて磁石(マグネット)を利用してもよい。例えばスピンドル基部22bの上面に磁石を埋設し、尻糸切断部材23の底部下面に磁性材(例えば鉄)を固定する。スピンドル基部22b及び尻糸切断部材23の両側に磁石を設けたり、尻糸切断部材23側に磁石、スピンドル基部22b側に磁性材を設けてもよい。また、前記付勢手段をなくしてもよい。
○ 凸部28a,28bの先端面及び凹部29a,29bの底面は外側に向かって下降傾斜する形状に限らず、水平であってもよい。しかし、把持した糸Yを引き抜く力が作用した場合、下降傾斜する形状の方が糸の引き抜きに対する抵抗が大きくなり、糸が引き出され難くなる。
○ 糸把持部材(尻糸切断部材23)及びスピンドル4の少なくとも一方に、糸把持部材及びスピンドル4の相対回転時の抵抗を抑制する滑り軸受を設けてもよい。滑り軸受としては含油燒結金属製のスリーブやメタル軸受がある。例えば、カラー27に代えて滑り軸受をブレード22aに固定する。また、図9に示すように、尻糸切断部材23の内側に滑り軸受43を設けてもよい。
○ スピンドル4の駆動方式は、スピンドル4をチンプーリ5に巻き掛けられるスピンドルテープで駆動する構成に代えて、タンゼンシャルベルトによる駆動する構成としてもよい。また、各錘毎にモータを設ける、所謂単錘駆動方式であってもよい。
〇 リング精紡機に限らずリング撚糸機に適用してもよい。
前記実施の形態から把握できる発明(技術的思想)について、以下に記載する。
(1)請求項2に記載の発明において、前記機台の停止時にリングレールはリングの下端が前記スピンドル側の把持部上端より高い位置となる位置停止される。
(2)請求項1〜請求項4及び前記技術的思想(1)のいずれか一項に記載の発明において、前記両把持部が開いた状態でスピンドルを回転させる時期は、前記玉揚げ装置によるボビンの上昇が停止した後である。
(3)請求項1〜請求項4及び前記技術的思想(1),(2)のいずれか一項に記載の発明において、前記糸把持部材は、その下端部がスピンドルを中心軸とし、かつ下方に向かって拡がる円錐の斜面を構成するように形成され、前記下端部に対向する前記スピンドル基部の上端部も同様な円錐の斜面を構成するように形成されている。
(a)〜(c)は第1の実施形態における玉揚げ時の作用を説明する概略側面図。 (a),(b)は同じく概略側面図。 リング精紡機の概略構成図。 (a)はスピンドルの一部破断模式側面図、(b)は尻糸切断部材の取付け状態を示す断面図。 尻糸切断部材及びスピンドル基部の概略斜視図。 (a),(b)は精紡機と玉揚げ装置の関係を示す概略図。 (a),(b)は第2の実施形態における作用を説明する概略側面図。 別の実施形態における尻糸切断部材とスピンドルを示す部分断面図。 別の実施形態における尻糸切断部材とスピンドルを示す部分断面図。 (a),(b)は従来技術を示す概略側面図。
符号の説明
B…ボビン、Y…糸、4…スピンドル、8…リングレール、11…トラベラ、23…糸把持部材としての尻糸切断部材、24…ボビン嵌挿部、28a,28b…把持部としての凸部、29a,29b…把持部としての凹部、34…玉揚げ装置、38…管糸、43…滑り軸受。

Claims (4)

  1. 玉揚げ装置による管糸の抜き上げ動作により、トラベラから管糸に連なる糸を切断する作用を行うとともに、切断された後のトラベラに連なる糸をスピンドル側の把持部と協働で把持する把持部と、ボビンが嵌挿されるボビン嵌挿部とを備え、かつスピンドルとの嵌合位置から所定高さまで上昇された状態でスピンドルと相対回転可能な糸把持部材がスピンドルに設けられた紡機において、
    玉揚げ装置により管糸を把持して前記糸把持部材をボビンと共にスピンドルに対して相対回転可能な所定高さになるまで上昇させ、前記両把持部が開いた状態でスピンドルを回転させる紡機における残糸除去方法。
  2. 玉揚げ装置による管糸の抜き上げ動作により、トラベラから管糸に連なる糸を切断する作用を行うとともに、切断された後のトラベラに連なる糸をスピンドル側の把持部と協働で把持する把持部と、ボビンが嵌挿されるボビン嵌挿部とを備え、かつスピンドルとの嵌合位置から所定高さまで上昇された状態でスピンドルと相対回転可能な糸把持部材がスピンドルに設けられた紡機において、
    玉揚げ装置による玉揚げ後、スピンドルに空のボビンを挿入した後、機台の起動を行って空のボビンに糸を所定量巻き付けた後、機台を停止させ、玉揚げ装置によりボビンを把持して前記糸把持部材をボビンと共にスピンドルに対して相対回転可能な所定高さになるまで上昇させ、前記両把持部が開いた状態でスピンドルを回転させた後、前記糸把持部材及びボビンを巻き取り位置に復帰させて玉揚げ装置によるボビンの把持を解除した後、機台の運転を再開する紡機における残糸除去方法。
  3. 前記両把持部が開いた状態でスピンドルが回転される時間は5秒以下である請求項1又は請求項2に記載の紡機における残糸除去方法。
  4. 前記糸把持部材及びスピンドルの少なくとも一方に、前記糸把持部材及びスピンドルの相対回転時の抵抗を抑制する滑り軸受が設けられている請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の紡機における残糸除去方法。
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