JP2005330610A - ポリ乳酸捲縮糸及びその製造方法並びにカーペット - Google Patents
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Abstract
【課題】 捲縮付与工程での糸切れ発生を効果的に防止できると共に捲縮付与装置内への糸の供給をスムーズになし得てポリ乳酸捲縮糸を製造効率良く製造できる製造方法を提供する。
【解決手段】 ポリ乳酸を紡糸して紡糸糸を得る紡糸工程と、前記紡糸糸を延伸し該糸の緊張状態を保持した状態で熱セットする延伸工程と、前記延伸された糸に捲縮を付与する捲縮工程とを包含することを特徴とする製造方法でポリ乳酸捲縮糸を製造する。延伸ローラ3より下流側に配置されたテンション付与装置4によって糸の緊張状態を保持するようにするのが好ましい。
【選択図】 図1
【解決手段】 ポリ乳酸を紡糸して紡糸糸を得る紡糸工程と、前記紡糸糸を延伸し該糸の緊張状態を保持した状態で熱セットする延伸工程と、前記延伸された糸に捲縮を付与する捲縮工程とを包含することを特徴とする製造方法でポリ乳酸捲縮糸を製造する。延伸ローラ3より下流側に配置されたテンション付与装置4によって糸の緊張状態を保持するようにするのが好ましい。
【選択図】 図1
Description
この発明は、例えば、カーペットの構成糸として好適に用いられる十分な強度を備えたポリ乳酸捲縮糸及び該ポリ乳酸捲縮糸を生産性良く製造する方法に関する。
ポリ乳酸は、トウモロコシ等の澱粉から得られる乳酸を原料とする生分解性樹脂であり、微生物等により水と二酸化炭素に分解されることから、自然の物質循環サイクルに適合していて地球環境にやさしい素材として注目されている。
近年、このような生分解性樹脂であるポリ乳酸からなる繊維、捲縮糸等を用いて繊維製品を構成することが種々提案されている(特許文献1〜3参照)。このようなポリ乳酸糸は、一般に、ポリ乳酸を溶融紡糸し、油剤を付与してワインダーに巻き取った後、延伸ローラで延伸熱処理し、捲縮付与装置で捲縮を付与してから冷却し巻き取ることによって製造される(特許文献1参照)。
特開2002−105752号公報(請求項1〜3、段落0021〜0034)
特開2003−293232号公報(請求項1〜5、段落0048)
特開平11−293517号公報
しかしながら、上記特許文献1に記載の製造方法では、延伸ロール上で周回させた糸に弛みが生じてしまって、次の加熱流体捲縮付与装置内に糸をスムーズに投入できないトラブルが生じやすく、このために製造効率が非常に悪いという問題があった。また、延伸された糸に強力がなく加熱流体捲縮付与装置に投入した際に糸切れを多発して安定状態に製造することができないという問題もあった。
この発明は、かかる技術的背景に鑑みてなされたものであって、捲縮付与工程での糸切れ発生を効果的に防止できると共に捲縮付与装置内への糸の供給をスムーズになし得てポリ乳酸捲縮糸を製造効率良く製造できる製造方法及び該方法で製造されたポリ乳酸捲縮糸並びに該糸を用いたカーペットを提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提供する。
[1]ポリ乳酸を紡糸して紡糸糸を得る紡糸工程と、前記紡糸糸を延伸ローラにより延伸し該糸の緊張状態を保持した状態で熱セットする延伸工程と、前記延伸された糸に捲縮を付与する捲縮工程とを包含することを特徴とするポリ乳酸捲縮糸の製造方法。
[2]ポリ乳酸を紡糸して紡糸糸を得る紡糸工程と、前記紡糸糸を100〜160℃に設定された延伸ローラにより3〜6倍に延伸し該糸の緊張状態を保持した状態で熱セットする延伸工程と、前記延伸された糸に捲縮を付与する捲縮工程とを包含することを特徴とするポリ乳酸捲縮糸の製造方法。
[3]ポリ乳酸を紡糸して紡糸糸を得る紡糸工程と、前記紡糸糸を100〜160℃に設定された延伸ローラにより3〜6倍に延伸しつつ該糸の緊張状態を保持した状態で前記100〜160℃に設定された延伸ローラにより熱セットを行う延伸工程と、前記延伸された糸に捲縮を付与する捲縮工程とを包含することを特徴とするポリ乳酸捲縮糸の製造方法。
[4]ポリ乳酸を紡糸口金から押出してフィラメントを得、該フィラメントを冷風で冷却した後、フィラメントを油剤で被覆することによって紡糸糸を得る紡糸工程と、前記紡糸糸を延伸ローラにより延伸し該糸の緊張状態を保持した状態で熱セットする延伸工程と、前記延伸された糸に捲縮を付与する捲縮工程と、前記捲縮糸を該糸のガラス転移温度よりも低い温度まで冷却する工程とを包含することを特徴とするポリ乳酸捲縮糸の製造方法。
[5]ポリ乳酸を紡糸口金から押出してフィラメントを得、該フィラメントを冷風で冷却した後、フィラメントを油剤で被覆することによって紡糸糸を得る紡糸工程と、前記紡糸糸を100〜160℃に設定された延伸ローラにより3〜6倍に延伸し該糸の緊張状態を保持した状態で熱セットする延伸工程と、前記延伸された糸に捲縮を付与する捲縮工程と、前記捲縮糸を該糸のガラス転移温度よりも低い温度まで冷却する工程とを包含することを特徴とするポリ乳酸捲縮糸の製造方法。
[6]ポリ乳酸を紡糸口金から押出してフィラメントを得、該フィラメントを冷風で冷却した後、フィラメントを油剤で被覆することによって紡糸糸を得る紡糸工程と、前記紡糸糸を100〜160℃に設定された延伸ローラにより3〜6倍に延伸しつつ該糸の緊張状態を保持した状態で前記100〜160℃に設定された延伸ローラにより熱セットを行う延伸工程と、前記延伸された糸に捲縮を付与する捲縮工程と、前記捲縮糸を該糸のガラス転移温度よりも低い温度まで冷却する工程とを包含することを特徴とするポリ乳酸捲縮糸の製造方法。
[7]前記延伸ローラより下流側に配置されたテンション付与装置によって前記糸の緊張状態を保持する前項3または6に記載のポリ乳酸捲縮糸の製造方法。
[8]前記紡糸糸に0.01〜0.3cN/dTの張力を付与して前記糸の緊張状態を保持する前項1〜7のいずれか1項に記載のポリ乳酸捲縮糸の製造方法。
[9]前記紡糸工程と前記延伸工程の間で、前記延伸ローラより上流側に配置された設定温度が100℃を超えて150℃以下の予熱ローラを用いて前記紡糸糸の予熱を行う前項1〜8のいずれか1項に記載のポリ乳酸捲縮糸の製造方法。
[10]前記捲縮工程において、延伸された糸に加熱流体捲縮付与装置を用いて110〜160℃の加熱流体を接触させることによって糸に捲縮を付与する前項1〜9のいずれか1項に記載のポリ乳酸捲縮糸の製造方法。
[11]前記紡糸糸の断面形状が異形度1.5以下の略円形状である前項1〜10のいずれか1項に記載のポリ乳酸捲縮糸の製造方法。
[12]前記紡糸糸が丸断面糸である前項1〜10のいずれか1項に記載のポリ乳酸捲縮糸の製造方法。
[13]前記紡糸工程において、ポリ乳酸100質量部に対して顔料が0.1〜1.0質量部混合された原着ポリ乳酸を紡糸して紡糸糸を得る前項1〜12のいずれか1項に記載のポリ乳酸捲縮糸の製造方法。
[14]前項1〜13のいずれか1項に記載の製造方法で製造されたポリ乳酸捲縮糸。
[15]カーペット用として用いられる前項14に記載のポリ乳酸捲縮糸。
[16]前項14に記載のポリ乳酸捲縮糸を構成繊維の少なくとも一部に用いて構成されたカーペット。
[1]〜[6]の発明では、紡糸糸を延伸し該糸の緊張状態を保持した状態で熱セットするから、延伸ローラ上で弛みなく糸を周回させることができ、これにより捲縮付与装置内への糸の供給をスムーズに行い得てポリ乳酸捲縮糸を製造効率良く製造することができる。また得られたポリ乳酸捲縮糸は十分な強度を備えたものとなるから、捲縮付与工程での糸切れ発生を効果的に防止できると共に、この捲縮糸を用いてカーペット等の製品を構成した際に耐久性の良いものを提供することができる。
また、[2][3][5][6]の発明では、紡糸糸を100〜160℃の温度で3〜6倍に延伸するから、糸の強度を一層向上させることができる。
また、[4][5][6]の発明では、ポリ乳酸を紡糸口金から押出してフィラメントを得、該フィラメントを冷風で冷却した後、フィラメントを油剤で被覆することによって紡糸糸を得るから、生産効率良く紡糸糸を製造できると共に、油剤の被覆により糸に平滑性や帯電防止性を付与することができる。更に、捲縮糸を該糸のガラス転移温度よりも低い温度まで冷却するので、十分な捲縮が付与されたポリ乳酸嵩高捲縮糸を製造することができる。
[7]の発明では、延伸ローラより下流側に配置されたテンション付与装置によって糸の緊張状態を保持するので、延伸ローラ上で周回させる糸に弛みが生じることを確実に防止することができて、製造効率を一層向上させることができる。
[8]の発明では、紡糸糸に0.01〜0.3cN/dTの張力を付与して糸の緊張状態を保持するので、延伸ローラ上で周回させる糸に弛みが生じることをより確実に防止することができる。
[9]の発明では、100℃を超えて150℃以下の予熱ローラを用いて紡糸糸の予熱を行うので、この後の延伸を十分に行うことができる。
[10]の発明では、単糸を融着させることなく十分な捲縮を付与することができる。
[11]の発明では、糸の断面形状が異形度1.5以下の略円形状であるから、得られた捲縮糸は摩擦等があっても摩耗し難いものとなり、摩擦に強い糸を製造できる。
[12]の発明では、丸断面糸であるから、より一層摩擦に強い糸を製造することができる。
[13]の発明では、紡糸原料として原着ポリ乳酸を用いているから、後工程として加熱処理のある染色工程を設けなくて済み、これにより加熱処理による悪影響(機械的強度の低下等)を回避することができる利点がある。即ち、優れた強度を備えた捲縮糸を製造できる。
[14]の発明では、十分な強度を備えたポリ乳酸捲縮糸が提供される。
[15]の発明では、十分な強度を備えたカーペット用ポリ乳酸捲縮糸が提供される。
[16]の発明では、生分解性機能を有した地球環境に優しいカーペットが提供され得る。
以下、この発明に係るポリ乳酸捲縮糸の製造方法について説明する。
まず、ポリ乳酸を紡糸して紡糸糸を得る(紡糸工程)。図1に示すように、押出機(12)内でポリ乳酸を溶融混練した後、押出機(12)の先端に取り付けられた紡糸口金(13)の1ないし複数のノズルからポリ乳酸を押出してフィラメントを形成する。
前記ポリ乳酸としては、ポリ乳酸に顔料が混合されてなる原着ポリ乳酸を用いるのが好ましい。例えば、図1に示すように、ポリ乳酸投入口(10)からポリ乳酸を投入すると共に顔料投入口(11)から顔料を投入して押出機(12)内で溶融混練した後、紡糸口金(13)から押出して紡糸して紡糸糸を得る。混合量は、ポリ乳酸100質量部に対して顔料0.1〜1.0質量部とするのが好ましい。0.1質量部未満では顔料ムラに起因する色斑が発生し易くなるので好ましくない。また1.0質量部を超えるとフィルター詰まりによる口金パックの交換頻度が増加するし、糸切れの増加に繋がるので好ましくない。前記押出機(12)における溶融混練温度は210〜230℃に設定するのが好ましい。なお、原料として乾燥したポリ乳酸を用いる場合には1軸押出機を用いるのが好ましく、一方原料として乾燥が不十分なポリ乳酸を用いる場合には2軸押出機を用いるのが好ましい。
前記ポリ乳酸としては、乳酸モノマーを重合して得られるポリマーが好適に用いられるが、この他に、この発明の効果を阻害しない範囲であれば、他の成分を共重合したもの又は他のポリマーをブレンドしたものを用いても良い。なお、乳酸にはL体とD体の光学異性体が存在するが、L体の含有比率が95質量%以上であるポリ乳酸を用いるのが好ましい。
次に、前記紡糸口金(13)から押出されたフィラメントを冷風装置(14)からの冷風によって冷却する(図1参照)。しかる後、前記フィラメントに油剤付与装置(15)でもって油剤を付与した後、糸を集束して紡糸糸を得る。このような油剤を付与することによって糸に平滑性や帯電防止性等を付与することができる。
前記紡糸糸の断面形状は、異形度1.5以下の略円形状とするのが好ましい。このような断面形状にすることによって摩擦等があっても摩耗し難いものとなる、即ち摩擦に強い糸が得られる。中でも、前記紡糸糸は丸断面糸であるのが特に好ましい。なお、前記異形度とは、単糸断面の外接円直径(B)と内接円直径(A)の比B/Aである(図2参照)。
次いで、前記紡糸糸を予熱ローラ(2)に導き、この予熱ローラ(2)で紡糸糸の予熱を行う。この時、予熱ローラ(2)の温度を100℃を超えて150℃以下の範囲の温度に設定するのが好ましい。100℃以下では延伸が困難で延伸倍率を上げにくく低強度になるので好ましくないし、150℃を超えると単糸の融着が発生しやすくなるので好ましくない。中でも、前記予熱ローラ(2)の温度は130〜150℃に設定するのが特に好ましい。130℃以上に設定すれば5倍以上の延伸が十分に可能になる。
しかる後、前記紡糸糸を予熱ローラ(2)から延伸ローラ(3)に導き、この過程で紡糸糸を延伸する。この時、延伸ローラ(3)の温度を100〜160℃に設定して3〜6倍に延伸するのが好ましい。100℃未満では延伸が困難で延伸倍率を上げにくく低強度になるので好ましくないし、160℃を超えると単糸の融着が発生しやすくなるので好ましくない。延伸倍率が3倍未満では十分な強度が得られなくなるので好ましくないし、一方延伸倍率が6倍を超えると毛羽が顕著に発生するので好ましくない。
なお、前記延伸工程では、前記延伸ローラ(3)に導かれた糸は、該延伸ローラ(3)より下流側に配置されたテンション付与装置(4)によって緊張状態に保持されており、この緊張状態で前記延伸ローラ(3)により糸の熱セットも行われる。このように糸を延伸ローラ(3)上で緊張状態に保持することによって、糸の弛みの発生を防止しながら延伸ローラ(3)上で熱処理を行うことができるので、延伸ローラ(3)上に周回させた糸に弛みが生じることがなく、捲縮付与装置(5)内への糸の供給をスムーズに行わせることができる。この時、前記テンション付与装置(4)によって糸に0.01〜0.3cN/dT(デシテックス)の張力を付与して糸の緊張状態を保持するのが好ましい。本実施形態では、前記テンション付与装置(4)として引き取りローラが用いられている。なお、前記テンション付与装置(4)として引き取りローラを用いる場合において、引き取りローラの引き取り速度は、延伸ローラ(3)の引き取り速度の1倍を超えて1.03倍以下の範囲に設定するのが好ましい。
次に、前記熱セットが行われた延伸糸を捲縮付与装置(5)に導き、該捲縮付与装置(5)によって糸に捲縮を与え嵩高性を付与する(捲縮工程)。中でも、加熱流体捲縮付与装置(5)を用いて110〜160℃の加熱流体を接触させることによって糸に捲縮を付与せしめるのが好ましい。110℃未満では十分な捲縮を付与できないので好ましくない。一方160℃を超えると単糸を融着させることがあるので好ましくない。加熱流体としては、例えば加熱された圧縮空気等を例示できる。
更に、前記捲縮が付与された糸を冷却ドラム(21)で冷却した後、ワインダー(22)に巻き取る。この冷却により、前記捲縮糸を該糸のガラス転移温度(Tg)よりも低い温度まで冷却するのが望ましい。これにより、時間が経過しても捲縮が緩まない十分な捲縮が付与されたポリ乳酸嵩高捲縮糸を製造することができる。
上記のようにして得られたポリ乳酸捲縮糸は、十分な強度を有しているから、例えばカーペットの構成糸として好適に用いられる。例えば前記ポリ乳酸捲縮糸をパイル糸に用いて構成されたカーペットは、使用時にはパイルが糸切れすることなく耐久性に優れると共に、使用後廃棄された場合には少なくともパイル部が微生物等により水と二酸化炭素に分解されるので地球環境保全に貢献することができる。
次に、この発明の具体的実施例について説明する。
<実施例1>
図1に示す構成からなる製造装置(1)を用いてポリ乳酸捲縮糸を製造した。即ち、まずポリ乳酸投入口(10)からポリ乳酸チップ(重量平均分子量160000、融点170℃、ガラス転移温度57℃、相対粘度3、L乳酸98質量%とD乳酸2質量%からなる乳酸モノマーの重合体)100質量部を投入する一方、顔料投入口(11)から顔料0.5質量部を投入して2軸押出機(12)内で220℃で溶融混練した後、押出機(12)の先端に取り付けられた紡糸口金(13)の複数の円形断面のノズルから紡糸ビーム温度215℃で押出して紡糸した。なお、溶融混練時には、押出機のベント口より真空引きすることによって系中に含まれる水分、オリゴマー等を除去した。
図1に示す構成からなる製造装置(1)を用いてポリ乳酸捲縮糸を製造した。即ち、まずポリ乳酸投入口(10)からポリ乳酸チップ(重量平均分子量160000、融点170℃、ガラス転移温度57℃、相対粘度3、L乳酸98質量%とD乳酸2質量%からなる乳酸モノマーの重合体)100質量部を投入する一方、顔料投入口(11)から顔料0.5質量部を投入して2軸押出機(12)内で220℃で溶融混練した後、押出機(12)の先端に取り付けられた紡糸口金(13)の複数の円形断面のノズルから紡糸ビーム温度215℃で押出して紡糸した。なお、溶融混練時には、押出機のベント口より真空引きすることによって系中に含まれる水分、オリゴマー等を除去した。
次に、紡糸された糸条を冷風装置(14)からの冷風(20℃70%RH)によって冷却・固化した後、糸条に油剤付与装置(15)でもって油剤を付与し、糸を集束し、次いで770m/分の速度でローラで引き取り、引取り速度790m/分・温度130℃に設定された予熱ローラ(2)で糸の予熱を行った。
しかる後、前記紡糸糸を引取り速度3000m/分・温度135℃に設定された延伸ローラ(3)に導くことによって紡糸糸を3.8倍に延伸した。この時、延伸ローラ(3)に導かれた糸は、該延伸ローラ(3)より下流側に配置された引取り速度3030m/分・温度135℃の引き取りローラ(テンション付与装置)(4)によって緊張状態(張力0.15cN/dT)に保持されており、この緊張状態で前記延伸ローラ(3)により糸の熱セットを行った。
次に、熱セットが行われた延伸糸に、加熱流体捲縮付与装置(5)を用いて130℃の加熱空気を接触させて糸に捲縮を付与した後、この捲縮糸を冷却ドラム(21)で30℃まで冷却し、2450m/分の速度でワインダー(22)に巻き取って、ポリ乳酸捲縮糸を得た。
<実施例2>
実施例1と同様の条件で紡糸して紡糸糸を得た。次に、紡糸された糸条を冷風装置(14)からの冷風(20℃70%RH)によって冷却・固化した後、糸条に油剤付与装置(15)でもって油剤を付与し、糸を集束し、次いで580m/分の速度で引取りローラで引き取り、引取り速度600m/分・温度140℃に設定された予熱ロール(2)で糸の予熱を行った。
実施例1と同様の条件で紡糸して紡糸糸を得た。次に、紡糸された糸条を冷風装置(14)からの冷風(20℃70%RH)によって冷却・固化した後、糸条に油剤付与装置(15)でもって油剤を付与し、糸を集束し、次いで580m/分の速度で引取りローラで引き取り、引取り速度600m/分・温度140℃に設定された予熱ロール(2)で糸の予熱を行った。
しかる後、前記紡糸糸を引取り速度3000m/分・温度145℃に設定された延伸ローラ(3)に導くことによって紡糸糸を5.0倍に延伸した。この時、延伸ローラ(3)に導かれた糸は、該延伸ローラ(3)より下流側に配置された引取り速度3030m/分・温度150℃の引き取りローラ(テンション付与装置)(4)によって緊張状態(張力0.15cN/dT)に保持されており、この緊張状態で前記延伸ローラ(3)により糸の熱セットを行った。
次に、熱セットが行われた延伸糸に、加熱流体捲縮付与装置(5)を用いて130℃の加熱空気を接触させて糸に捲縮を付与した後、この捲縮糸を冷却ドラム(21)で30℃まで冷却し、2450m/分の速度でワインダー(22)に巻き取って、ポリ乳酸捲縮糸を得た。
<実施例3>
紡糸口金として、Y字型断面のノズルを備えたものを用いた以外は、実施例1と同様にして、異形度2.2のポリ乳酸捲縮糸を得た。
紡糸口金として、Y字型断面のノズルを備えたものを用いた以外は、実施例1と同様にして、異形度2.2のポリ乳酸捲縮糸を得た。
<比較例1>
図1に示す構成の製造装置から引き取りローラ(テンション付与装置)(4)を取り除いた構成の装置を用いてポリ乳酸捲縮糸の製造を試みた。即ち、実施例1と同様の条件で紡糸して紡糸糸を得た後、この紡糸された糸条を冷風装置(14)からの冷風(20℃70%RH)によって冷却・固化した後、糸条に油剤付与装置(15)でもって油剤を付与し、糸を集束し、次いで990m/分の速度でローラで引き取り、引取り速度1000m/分・温度130℃に設定された予熱ロール(2)で糸の予熱を行った。
図1に示す構成の製造装置から引き取りローラ(テンション付与装置)(4)を取り除いた構成の装置を用いてポリ乳酸捲縮糸の製造を試みた。即ち、実施例1と同様の条件で紡糸して紡糸糸を得た後、この紡糸された糸条を冷風装置(14)からの冷風(20℃70%RH)によって冷却・固化した後、糸条に油剤付与装置(15)でもって油剤を付与し、糸を集束し、次いで990m/分の速度でローラで引き取り、引取り速度1000m/分・温度130℃に設定された予熱ロール(2)で糸の予熱を行った。
しかる後、前記紡糸糸を引取り速度2200m/分・温度135℃に設定された延伸ローラ(3)に導くことによって紡糸糸を2.2倍に延伸すると共に熱セットを行ったが、延伸ローラ(3)上で糸が弛んでしまい良好状態に糸を周回させることができなかった。このために、次の加熱流体捲縮付与装置内に糸をスムーズに投入することができなかった。
<比較例2>
延伸ローラ(3)を80℃に設定した以外は、実施例1と同様にして行ったが、この場合延伸倍率を2.2倍以上に上げることはできなかった。次に、熱セットが行われた延伸糸に、加熱流体捲縮付与装置を用いて130℃の加熱空気を接触させて糸に捲縮を付与した後、この捲縮糸を冷却ドラムで30℃まで冷却し、1830m/分の速度でワインダーに巻き取って、ポリ乳酸捲縮糸を得た。
延伸ローラ(3)を80℃に設定した以外は、実施例1と同様にして行ったが、この場合延伸倍率を2.2倍以上に上げることはできなかった。次に、熱セットが行われた延伸糸に、加熱流体捲縮付与装置を用いて130℃の加熱空気を接触させて糸に捲縮を付与した後、この捲縮糸を冷却ドラムで30℃まで冷却し、1830m/分の速度でワインダーに巻き取って、ポリ乳酸捲縮糸を得た。
<比較例3>
予熱ローラ(2)を155℃に設定し、かつ引き取りローラ(テンション付与装置)(4)の引取り速度を3100m/分に設定することによって糸の張力を0.5cN/dTに設定した以外は、実施例2と同様にしてポリ乳酸捲縮糸を得た。
予熱ローラ(2)を155℃に設定し、かつ引き取りローラ(テンション付与装置)(4)の引取り速度を3100m/分に設定することによって糸の張力を0.5cN/dTに設定した以外は、実施例2と同様にしてポリ乳酸捲縮糸を得た。
上記のようにして得られた各ポリ乳酸捲縮糸の物性評価値を表1に示す。
<引張強度測定法>
JIS L1090に準拠して糸の引張強度を測定した。
JIS L1090に準拠して糸の引張強度を測定した。
<伸度測定法>
JIS L1090に準拠して糸の伸度を測定した。
JIS L1090に準拠して糸の伸度を測定した。
<熱水収縮率測定法>
JIS L1090に準拠して糸の熱水収縮率を測定した。
JIS L1090に準拠して糸の熱水収縮率を測定した。
表1から明らかなように、この発明の製造方法で製造された実施例1〜3のポリ乳酸捲縮糸は、十分な強度を備えていたし、熱水収縮率も小さかった。また、この発明の製造方法によれば、延伸ローラ上で弛みなく糸を周回させることができた。また、糸の異形度が1.5以下に設定された実施例1、2の捲縮糸は、毛羽の発生が殆どなかった。
これに対し、比較例1では、延伸ローラ上で周回させた糸に顕著な弛みが生じていた。また、比較例2の捲縮糸は、引張強度が弱く単糸の融着も見られて品位が低かったし、また熱水収縮率が非常に大きいので後加工工程で寸法安定性を確保できないことが懸念される。また、比較例3の捲縮糸は、引張強度が弱い上に、毛羽の発生が顕著であった。
1…製造装置
2…予熱ローラ
3…延伸ローラ
4…テンション付与装置
5…捲縮付与装置
2…予熱ローラ
3…延伸ローラ
4…テンション付与装置
5…捲縮付与装置
Claims (16)
- ポリ乳酸を紡糸して紡糸糸を得る紡糸工程と、
前記紡糸糸を延伸ローラにより延伸し該糸の緊張状態を保持した状態で熱セットする延伸工程と、
前記延伸された糸に捲縮を付与する捲縮工程とを包含することを特徴とするポリ乳酸捲縮糸の製造方法。 - ポリ乳酸を紡糸して紡糸糸を得る紡糸工程と、
前記紡糸糸を100〜160℃に設定された延伸ローラにより3〜6倍に延伸し該糸の緊張状態を保持した状態で熱セットする延伸工程と、
前記延伸された糸に捲縮を付与する捲縮工程とを包含することを特徴とするポリ乳酸捲縮糸の製造方法。 - ポリ乳酸を紡糸して紡糸糸を得る紡糸工程と、
前記紡糸糸を100〜160℃に設定された延伸ローラにより3〜6倍に延伸しつつ該糸の緊張状態を保持した状態で前記100〜160℃に設定された延伸ローラにより熱セットを行う延伸工程と、
前記延伸された糸に捲縮を付与する捲縮工程とを包含することを特徴とするポリ乳酸捲縮糸の製造方法。 - ポリ乳酸を紡糸口金から押出してフィラメントを得、該フィラメントを冷風で冷却した後、フィラメントを油剤で被覆することによって紡糸糸を得る紡糸工程と、
前記紡糸糸を延伸ローラにより延伸し該糸の緊張状態を保持した状態で熱セットする延伸工程と、
前記延伸された糸に捲縮を付与する捲縮工程と、
前記捲縮糸を該糸のガラス転移温度よりも低い温度まで冷却する工程とを包含することを特徴とするポリ乳酸捲縮糸の製造方法。 - ポリ乳酸を紡糸口金から押出してフィラメントを得、該フィラメントを冷風で冷却した後、フィラメントを油剤で被覆することによって紡糸糸を得る紡糸工程と、
前記紡糸糸を100〜160℃に設定された延伸ローラにより3〜6倍に延伸し該糸の緊張状態を保持した状態で熱セットする延伸工程と、
前記延伸された糸に捲縮を付与する捲縮工程と、
前記捲縮糸を該糸のガラス転移温度よりも低い温度まで冷却する工程とを包含することを特徴とするポリ乳酸捲縮糸の製造方法。 - ポリ乳酸を紡糸口金から押出してフィラメントを得、該フィラメントを冷風で冷却した後、フィラメントを油剤で被覆することによって紡糸糸を得る紡糸工程と、
前記紡糸糸を100〜160℃に設定された延伸ローラにより3〜6倍に延伸しつつ該糸の緊張状態を保持した状態で前記100〜160℃に設定された延伸ローラにより熱セットを行う延伸工程と、
前記延伸された糸に捲縮を付与する捲縮工程と、
前記捲縮糸を該糸のガラス転移温度よりも低い温度まで冷却する工程とを包含することを特徴とするポリ乳酸捲縮糸の製造方法。 - 前記延伸ローラより下流側に配置されたテンション付与装置によって前記糸の緊張状態を保持する請求項3または6に記載のポリ乳酸捲縮糸の製造方法。
- 前記紡糸糸に0.01〜0.3cN/dTの張力を付与して前記糸の緊張状態を保持する請求項1〜7のいずれか1項に記載のポリ乳酸捲縮糸の製造方法。
- 前記紡糸工程と前記延伸工程の間で、前記延伸ローラより上流側に配置された設定温度が100℃を超えて150℃以下の予熱ローラを用いて前記紡糸糸の予熱を行う請求項1〜8のいずれか1項に記載のポリ乳酸捲縮糸の製造方法。
- 前記捲縮工程において、延伸された糸に加熱流体捲縮付与装置を用いて110〜160℃の加熱流体を接触させることによって糸に捲縮を付与する請求項1〜9のいずれか1項に記載のポリ乳酸捲縮糸の製造方法。
- 前記紡糸糸の断面形状が異形度1.5以下の略円形状である請求項1〜10のいずれか1項に記載のポリ乳酸捲縮糸の製造方法。
- 前記紡糸糸が丸断面糸である請求項1〜10のいずれか1項に記載のポリ乳酸捲縮糸の製造方法。
- 前記紡糸工程において、ポリ乳酸100質量部に対して顔料が0.1〜1.0質量部混合された原着ポリ乳酸を紡糸して紡糸糸を得る請求項1〜12のいずれか1項に記載のポリ乳酸捲縮糸の製造方法。
- 請求項1〜13のいずれか1項に記載の製造方法で製造されたポリ乳酸捲縮糸。
- カーペット用として用いられる請求項14に記載のポリ乳酸捲縮糸。
- 請求項14に記載のポリ乳酸捲縮糸を構成繊維の少なくとも一部に用いて構成されたカーペット。
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