JP2006336117A - ポリエステル中空糸の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】20%以上の中空率を有するポリエステルマルチフィラメントを安定して製造する方法を提供する。
【解決手段】ポリエステルを溶融紡糸して、中空率20%以上で単糸数20以上のポリエステル中空糸を溶融紡糸により製造するに際し、複数のスリットからなる吐出孔を有する紡糸口金を用い、吐出線速度5〜12cm/secの範囲で溶融ポリマーを吐出し、紡糸ドラフト比400〜1000の範囲で紡糸引取りを行うに際し、該紡糸口金のポリマー吐出面より0〜40mmの範囲における雰囲気温度がポリエステルのガラス転移温度より75〜160℃高い温度で均一に保たれた恒温領域を有する。
【選択図】なし
【解決手段】ポリエステルを溶融紡糸して、中空率20%以上で単糸数20以上のポリエステル中空糸を溶融紡糸により製造するに際し、複数のスリットからなる吐出孔を有する紡糸口金を用い、吐出線速度5〜12cm/secの範囲で溶融ポリマーを吐出し、紡糸ドラフト比400〜1000の範囲で紡糸引取りを行うに際し、該紡糸口金のポリマー吐出面より0〜40mmの範囲における雰囲気温度がポリエステルのガラス転移温度より75〜160℃高い温度で均一に保たれた恒温領域を有する。
【選択図】なし
Description
本発明は、ポリエステル中空糸を安定に製造する方法に関するものである。
近年、繊維の中心部に中空を有する合成繊維は、保温性、嵩高性、軽量性などにおいて優れた性能を有するため、幅広い用途に使用されている。また、上記繊維の中空率を大きくすることによって、保温性、嵩高性、軽量性といった性能を向上させるために、より高い中空率を有する高中空繊維が強く要望されている。そして、この要望に対応するために、高中空率を有する高中空糸を紡糸するために、非常に狭い円弧状スリットが穿設された吐出孔を有する紡糸口金が慣用されている。そして、このような円弧状スリット孔としては、例えば特許文献1(特開昭49−41625号公報)や、特許文献2(実開昭62−175078号公報)などに提案されているよう、に円弧状スリット孔の両端部に、突出流路、丸形状突出流路、丸形状流路を設けたものが公知である。
確かに、これらの中空糸用紡糸口金を用いれば、均一な中空断面を有する中空糸を得ることができる。しかしながら、近年、後工程での使用において延伸糸、混繊糸、仮撚加工糸として非常に幅広く用いることが可能な未延伸中間配向糸を製造するには、紡糸ドラフト比が高くなる、いわゆる高速製糸が必要であり、かかる領域においては紡糸ドラフト比が高くなること伴い繊維の配向結晶性が極めて増大し、後工程での製品において染着バラツキ、糸長方向の糸斑が顕著となり使用できないといった問題を抱えている。この際、紡糸ドラフト比だけを適正化するため、低速での紡糸速度にて製糸しようとすると、ポリマー吐出量が落ちることに伴いポリマー吐出線速度が低くなり、安定したポリマーの吐出が困難となる。とりわけ、中空率が20%を超える高中空糸用口金においては、中空割れが多発するとともに、しかも断糸も誘発するため、安定した紡糸を継続することすら困難となる。
特開昭49−41625号公報
実開昭62−175078号公報
本発明の目的は、以上の従来技術を背景になされたもので、その目的は、中空率20%以上で単糸数20以上のポリエステル中空糸を、吐出線速度5〜12cm/secの範囲で溶融ポリマーを吐出し、紡糸ドラフト比400〜1,000の範囲の高速領域で紡糸引取りを行い、染着バラツキ、糸長方向の糸斑がない未延伸中間配向糸を中空割れ、断糸なく安定して製造する方法を提供することにある。
ここに、上記課題を解決するための本発明のポリエステル中空糸の製造方法として、「ポリエステルを溶融紡糸して、中空率20%以上で単糸数20以上のポリエステル中空糸を溶融紡糸により製造するに際し、複数のスリットからなる吐出孔を有する紡糸口金を用い、吐出線速度5〜12cm/secの範囲で溶融ポリマーを吐出し、紡糸ドラフト比400〜1,000の範囲で紡糸引取りを行うに際し、該紡糸口金のポリマー吐出面より0〜40mmの範囲における雰囲気温度がポリエステルのガラス転移温度より75〜160℃高い温度で均一に保たれた恒温領域を有することを特徴とするポリエステル中空糸の製造方法」が提供される。
その際、本発明の溶融紡糸装置としては、「ポリエステル中空糸からなる糸条を紡出するための紡糸口金、該紡出糸条を徐冷するための恒温領域、および、該紡出糸条を横切る冷却風によって該紡出糸条を冷却する冷却装置をこの順に設け、その際、該恒温領域に該紡出糸条が走行する走行空間に筒状のスペーサーを非接触に設けた溶融紡糸装置を用いる」ことが恒温領域の雰囲気温度を均一に保つことができるため好ましい。
その際、本発明の溶融紡糸装置としては、「ポリエステル中空糸からなる糸条を紡出するための紡糸口金、該紡出糸条を徐冷するための恒温領域、および、該紡出糸条を横切る冷却風によって該紡出糸条を冷却する冷却装置をこの順に設け、その際、該恒温領域に該紡出糸条が走行する走行空間に筒状のスペーサーを非接触に設けた溶融紡糸装置を用いる」ことが恒温領域の雰囲気温度を均一に保つことができるため好ましい。
本発明によれば、20%以上の中空率を有するポリエステルマルチフィラメントを安定して製造することができる。
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
本発明でいうポリエステルとは、繰り返し単位としてエチレンテレフタレートが85モル%以上、好ましくは95モル%以上を占めるポリエステルである。テレフタル酸成分および/またはエチレングリコール成分以外の成分を少量(通常は、テレフタル酸成分に対して15モル%以下)共重合したものであってもよい。これらのポリエステルには、公知の添加剤、例えば、顔料、染料、艶消し剤、防汚剤、蛍光増白剤、難燃剤、安定剤、紫外線吸収剤、滑剤などを含んでもよい。
本発明でいうポリエステルとは、繰り返し単位としてエチレンテレフタレートが85モル%以上、好ましくは95モル%以上を占めるポリエステルである。テレフタル酸成分および/またはエチレングリコール成分以外の成分を少量(通常は、テレフタル酸成分に対して15モル%以下)共重合したものであってもよい。これらのポリエステルには、公知の添加剤、例えば、顔料、染料、艶消し剤、防汚剤、蛍光増白剤、難燃剤、安定剤、紫外線吸収剤、滑剤などを含んでもよい。
本発明に用いるポリエステルの固有粘度(35℃のオルソ−クロロフェノール溶液を溶媒として使用し測定)は、通常、衣料用布帛素材として使用されるポリエステルと同じ程度の固有粘度0.45〜0.70dL/gのもので良いが、中空率20%以上である中空糸の溶融紡糸には、固有粘度0.55〜0.67dL/gの範囲のものを用いるのが望ましい。
ペレット状となした上記のポリエステルを常法で乾燥し、スクリュウ押出機を備えた通常の溶融紡糸設備で溶融し、該ポリエステルの融点(Tm)よりも30〜60℃高い温度に加熱し、紡糸パック内にて濾過して、ポリエステル糸の中空率が20%以上となるように設計された、例えば、図1(a)に示すような形状の複数のスリットを有する吐出孔が20〜50個穿設した紡糸口金から吐出する。ポリエステル糸の中空率は、例えば、図1(a)に示す吐出孔の場合は円弧状スリットのスリット巾および円周配置直径(PCD)(図1の(a)の1)を変更することによって、任意に調整することができる。本発明においては、図1(a)の吐出孔の場合は円弧状スリットのスリット巾を0.10mm以下、円周配置直径(PCD)を0.60mm以上とすれば、中空率を20%以上とすることができる。しかし、中空率を60%以上とする場合は、複数のスリットから吐出される溶融ポリマー間での貼り合わせが難しく、中空形成が困難となる。中空率は、好ましくは25〜40%である。なお、円弧状のスリットのほか、中空形成性能のある吐出孔であれば、例えば図1(b)に示すような矩形スリットを配置した吐出孔であってもよい。
濾過する際の濾過層内の滞留時間は、上記ポリエステル溶融物が冷却固化された後の固有粘度(ηf)が0.55〜0.65dL/g、より好ましくは0.60〜0.63dL/gとなるようにするのが望ましい。
本発明においては、複数のスリットからなる吐出孔からのポリマー吐出線速度を5〜12cm/sec、好ましくは8〜10cm/secの範囲で吐出することが大切である。吐出線速度は、ポリマー吐出量に応じて、吐出スリットの総開口面積を変えることによって、任意に設定することができる。吐出線速度が5cm/sec未満の場合は、紡糸時間の経過とともにスリット周辺に異物の成長が認められ、例えば図2に見られるような中空破れが発生するようになる。さらに時間が経過すると、紡糸断糸が発生し、紡糸巻き取りが困難となる。紡糸時間の経過とともに成長するスリット周辺の異物成長を抑え、中空破れが発生するようにするため、吐出スリットの総開口面積を変えると、該吐出スリット部での背圧バランスに異常が生じ、ポリマーの安定な吐出自体が困難となる。一方、吐出線速度が12cm/secを超える場合は、複数のスリットから吐出される溶融ポリマー間での貼り合わせが難しく、中空形成が困難となる。
次いで、吐出されたポリマー流(紡出糸条)は、上記紡糸口金のポリマー吐出面より0〜40mmの範囲における雰囲気温度がポリエステルのガラス転移温度より75〜160℃高い温度で均一に保たれた恒温領域を通過した後、該紡出糸条を横切る冷却風(温度は約25℃が好ましい)で冷却され、メタリングノズル式の給油集束装置などのガイドで油剤が付与されつつ、フィラメント束として集束され、紡糸ドラフト比400〜1,000の範囲で紡糸引取りを行う。
また、本発明においては、紡糸ドラフト比を400〜1,000、好ましくは450〜700の範囲で紡糸引取りを行うが大切である。紡糸ドラフト比が400未満の場合は、紡糸引取り速度が低くなり、本発明の目的とする高配向な未延伸ポリエステル中空糸を得ることは出来ない。また、ポリマーの吐出量が極端に少なくなり、紡糸口金から安定したポリマーの吐出が困難になる。さらには、生産性が極めて低くなるため現実的ではない。一方、紡糸ドラフト比が1,000を超える場合は、高配向な未延伸ポリエステル中空糸となるが、複数のスリットから吐出される溶融ポリマー間での貼り合わせが難しく、中空形成が困難となる。また、紡糸断糸が極めて高くなり、安定した生産が困難となる。
本発明においては、吐出線速度5〜12cm/secの範囲で溶融ポリマーを吐出し、紡糸ドラフト比400〜1,000の範囲で紡糸引取りを行うに際し、該紡糸口金のポリマー吐出面より0〜40mmの範囲における雰囲気温度がポリエステルのガラス転移温度より75〜160℃、好ましくは110〜150℃高い温度で均一に保たれた恒温領域を有することが大切であり、この恒温領域を設けることが、本発明の最大の特徴である。
恒温領域が40mmを超える場合は、吐出ポリマーが徐冷となり、20%以上の中空率を得ることが困難となるばかりか、複数のスリットから吐出される溶融ポリマー間での貼り合わせが難しくなる。また、複数のスリットから吐出される溶融ポリマー間での貼り合わせが難しくなることにより、紡糸断糸が多発し、安定した生産が困難となる。さらには、徐冷領域が長くなることにより繊維の細化が遅くなり、糸長方向の糸斑が顕著となり、得られた高配向未延伸ポリエステル中空糸を用いた延伸糸、混繊糸、仮撚加工糸の染着バラツキが大くなり、それらを用いて得られる織編物はムラムラな織編物となる。
また、恒温領域の雰囲気温度がガラス転移温度より75℃未満の場合、配向結晶促進となり、見かけの紡糸ドラフトが高くなるのと同じ繊維構造を示す。つまり、複数のスリットから吐出される溶融ポリマー間での貼り合わせが難しく、中空形成が困難となる。また、複数のスリットから吐出される溶融ポリマー間での貼り合わせが難しくなることにより、紡糸断糸が多発し、安定した生産が困難となる。さらには、染着バラツキが大きくなり、得られた高配向未延伸ポリエステル中空糸を用いた延伸糸、混繊糸、仮撚加工糸の染着バラツキが大くなり、それらを用いて得られる織編物はムラムラな織編物となる。一方、恒温領域の雰囲気温度がガラス転移温度より160℃を超える場合は、吐出ポリマーが徐冷となり、20%以上の中空率を得ることが困難となるばかりか、複数のスリットから吐出される溶融ポリマー間での貼り合わせが難しくなる。また、複数のスリットから吐出される溶融ポリマー間での貼り合わせが難しくなることにより、紡糸断糸が多発したり、紡糸時間の経過とともにスリット周辺に異物の成長が認められ、中空破れが発生するようになり、時間が経過すると、紡糸断糸が多発し、紡糸巻き取りが困難となる。加えて、徐冷領域が長くなることにより繊維の細化が遅くなり、糸長方向の糸斑が顕著となり、得られた高配向未延伸ポリエステル中空糸を用いた延伸糸、混繊糸、仮撚加工糸の染着バラツキが大くなり、それらを用いて得られる織編物はムラムラな織編物となる。さらに、恒温領域の雰囲気温度がガラス転移温度より160℃を超える温度とするためには、外部よりヒーターなどの熱源により加熱する必要が生じるため、設備費用も嵩み、生産設備として現実的でない。
上記恒温領域は、紡出糸条が走行する走行空間に筒状のスペーサーを非接触に設けた溶融紡糸装置を用いることで、該恒温領域を容易に設けることができる。
かくして、20%以上の中空率を有するポリエステルマルチフィラメントを安定して製造することができる。
かくして、20%以上の中空率を有するポリエステルマルチフィラメントを安定して製造することができる。
以下、実施例により、本発明を更に具体的に説明する。なお、実施例における各項目は次の方法で測定した。
(1)固有粘度
オルソクロロフェノールを溶媒として使用し35℃で測定した。
(2)中空率(%)および中空率のばらつき
紡糸巻き取りしたポリエステルマルチフィラメントの断面写真(560倍)をとり、図2に見られるような中空破れが認められる断面を除き、各単糸断面の中空部面積(A)および断面を囲む面積(B)を測定し、下記式で計算し、全測定値の平均値を中空率(%)とした。
中空率(%)=A/B×100
また、測定値の変動率〔(標準偏差/平均値)×100〕を中空率のばらつきとした。
オルソクロロフェノールを溶媒として使用し35℃で測定した。
(2)中空率(%)および中空率のばらつき
紡糸巻き取りしたポリエステルマルチフィラメントの断面写真(560倍)をとり、図2に見られるような中空破れが認められる断面を除き、各単糸断面の中空部面積(A)および断面を囲む面積(B)を測定し、下記式で計算し、全測定値の平均値を中空率(%)とした。
中空率(%)=A/B×100
また、測定値の変動率〔(標準偏差/平均値)×100〕を中空率のばらつきとした。
(3)中空破れ発生率(%)
上記(2)で得た断面写真で、中空破れのある単糸断面を数え、全単糸断面に占める割合(%)を中空破れ発生率とした。
上記(2)で得た断面写真で、中空破れのある単糸断面を数え、全単糸断面に占める割合(%)を中空破れ発生率とした。
(4)紡糸断糸率(%)
人為的あるいは機械的要因に起因する断糸を除き、規定重量のパッケージ完巻き終了毎に発生した断糸回数を記録し、下記式で紡糸断糸率を計算した。
紡糸断糸率(%)=断糸回数/紡糸稼動錘数×100
人為的あるいは機械的要因に起因する断糸を除き、規定重量のパッケージ完巻き終了毎に発生した断糸回数を記録し、下記式で紡糸断糸率を計算した。
紡糸断糸率(%)=断糸回数/紡糸稼動錘数×100
実施例1〜5、比較例1〜5
固有粘度が0.64dL/gで酸化チタンを0.3重量%含有したポリエチレンテレフタレートを140℃で5時間乾燥した後、スクリュー式押出機を装備した溶融紡糸設備にて溶融し、294℃に保たれたスピンブロックに導入し、冷却固化されたポリエチレンテレフタレートの固有粘度(ηf)が0.62dL/gとなるような滞留時間とし、紡糸パックで濾過し、図1(a)に示す形状で、各々表1に示すスリット巾、円周配置直径(PCD)およびスリット総開口面積を有する吐出孔を24孔穿設した紡糸口金を装着した図3に示す溶融紡糸巻き取り設備を用い、吐出量25g/分で吐出した。この時の吐出線速度は各々表1の如くであった。次いで、吐出されたポリマー流を、紡糸口金面からの距離、雰囲気温度が各々表1に示すような距離、温度を有す恒温領域を通過させ、紡出糸条を横切る25℃の冷却風によって冷却し、紡糸口金面から600mmの位置(集束長)に設置されたメタリングノズル式給油ガイドで油剤を付与しつつ、フィラメント束として集束し、1対のゴデットローラーを介して3000m/分の速度で引き取り、10kgのポリエステルマルチフィラメントパッケージとして巻き取った(繊度84dtex、フィラメント数24)。この時のドラフト比を表1に示す。
なお、図3の溶融紡糸巻き取り設備において、符号2は紡糸口金、符号3は恒温領域部材、符号4はクロスフロー式紡糸筒、符号5は給油ガイド(集束位置)、符号6は第1ゴデットローラー、符号7は第2ゴデットローラー、符号8はポリエステル中空糸パッケージである。
固有粘度が0.64dL/gで酸化チタンを0.3重量%含有したポリエチレンテレフタレートを140℃で5時間乾燥した後、スクリュー式押出機を装備した溶融紡糸設備にて溶融し、294℃に保たれたスピンブロックに導入し、冷却固化されたポリエチレンテレフタレートの固有粘度(ηf)が0.62dL/gとなるような滞留時間とし、紡糸パックで濾過し、図1(a)に示す形状で、各々表1に示すスリット巾、円周配置直径(PCD)およびスリット総開口面積を有する吐出孔を24孔穿設した紡糸口金を装着した図3に示す溶融紡糸巻き取り設備を用い、吐出量25g/分で吐出した。この時の吐出線速度は各々表1の如くであった。次いで、吐出されたポリマー流を、紡糸口金面からの距離、雰囲気温度が各々表1に示すような距離、温度を有す恒温領域を通過させ、紡出糸条を横切る25℃の冷却風によって冷却し、紡糸口金面から600mmの位置(集束長)に設置されたメタリングノズル式給油ガイドで油剤を付与しつつ、フィラメント束として集束し、1対のゴデットローラーを介して3000m/分の速度で引き取り、10kgのポリエステルマルチフィラメントパッケージとして巻き取った(繊度84dtex、フィラメント数24)。この時のドラフト比を表1に示す。
なお、図3の溶融紡糸巻き取り設備において、符号2は紡糸口金、符号3は恒温領域部材、符号4はクロスフロー式紡糸筒、符号5は給油ガイド(集束位置)、符号6は第1ゴデットローラー、符号7は第2ゴデットローラー、符号8はポリエステル中空糸パッケージである。
表1から、吐出線独度が4cm/sec未満、ドラフト比が1,000を超える比較例1においては、紡糸口金からの安定したポリマーの吐出ができなかった。また、吐出線速度が12cm/secを超え、ドラフト比が400未満の比較例2においては、複数のスリットから吐出される溶融ポリマー間での貼り合わせ不良が多く、紡糸開始時点から中空破れ率が極めて高く紡糸継続は困難であった。
上記操作を紡糸錘48錘について4日間連続して実施し、中空破れ率および紡糸断糸率を観察した。表1から明らかなように、吐出線速度が5〜12cm/sec、ドラフト比が400〜1,000の範囲、恒温領域の距離が0〜40mmで雰囲気温度がポリエステルのガラス転移温度より75〜160℃高い範囲である実施例1〜5においては、4日間に亘り、安定して高い中空率のポリエステルマルチフィラメントを製造することができた。一方、吐出線速度が5〜12cm/sec、ドラフト比が400〜1,000の範囲であっても、恒温領域の距離が40mmを超える比較例3においては、複数のスリットから吐出される溶融ポリマー間での貼り合わせ不良が多く、紡糸開始時点から中空破れ率が極めて高かった。また、中空率の単糸間ばらつきが大きく、実用に耐える品位のポリエステル中空糸は得られなかった。さらに、温領域の雰囲気温度がポリエステルのガラス転移温度より75℃未満の比較例4においては、スリットから吐出される溶融ポリマー間での貼り合わせ不良が多く、紡糸開始時点から中空破れ率が極めて高かった。逆に、温領域の雰囲気温度がポリエステルのガラス転移温度より160℃を超え高い比較例5においては、紡糸時間の経過とともにスリット周辺に異物の成長が認められ、中空破れ率が増大し、紡糸2日目には、紡糸断糸が多発し、以降の紡糸巻き取りが困難となり運転を中止した。
本発明によれば、20%以上の中空率を有するポリエステルマルチフィラメントを安定して製造することができ、得られるポリエステル中空糸は、延伸糸、混繊糸、仮撚加工糸として用いることが可能な未延伸中間配向糸である。上記繊維の延伸糸、混繊糸、仮撚加工糸は、婦人コート、紳士パンツなどの用途に有用である。
1 : 円周配置直径(PCD)
2 : 紡糸口金
3 : 恒温領域部材
4 : クロスフロー式紡糸筒
5 : 給油ガイド(集束位置)
6 : 第1ゴデットローラー
7 : 第2ゴデットローラー
8 : ポリエステル中空糸パッケージ
2 : 紡糸口金
3 : 恒温領域部材
4 : クロスフロー式紡糸筒
5 : 給油ガイド(集束位置)
6 : 第1ゴデットローラー
7 : 第2ゴデットローラー
8 : ポリエステル中空糸パッケージ
Claims (2)
- ポリエステルを溶融紡糸して、中空率20%以上で単糸数20以上のポリエステル中空糸を溶融紡糸により製造するに際し、複数のスリットからなる吐出孔を有する紡糸口金を用い、吐出線速度5〜12cm/secの範囲で溶融ポリマーを吐出し、紡糸ドラフト比400〜1,000の範囲で紡糸引取りを行うに際し、該紡糸口金のポリマー吐出面より0〜40mmの範囲における雰囲気温度がポリエステルのガラス転移温度より75〜160℃高い温度で均一に保たれた恒温領域を有することを特徴とするポリエステル中空糸の製造方法。
- ポリエステル中空糸からなる糸条を紡出するための紡糸口金、該紡出糸条を徐冷するための恒温領域、および、該紡出糸条を横切る冷却風によって該紡出糸条を冷却する冷却装置をこの順に設け、その際、該恒温領域に該紡出糸条が走行する走行空間に筒状のスペーサーを非接触に設けた溶融紡糸装置を用いる請求項1記載のポリエステル中空糸の製造方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2005158680A JP2006336117A (ja) | 2005-05-31 | 2005-05-31 | ポリエステル中空糸の製造方法 |
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---|---|
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Country | Link |
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Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
KR100845096B1 (ko) | 2007-06-08 | 2008-07-09 | 도레이새한 주식회사 | 폴리에스터 중공 분섬사의 제조방법 및 이 방법에 의해생산된 연신사 |
WO2022137740A1 (ja) * | 2020-12-24 | 2022-06-30 | 株式会社カネカ | 人工毛髪用ポリエステル系中空繊維、その製造方法及びそれを含む頭飾製品 |
-
2005
- 2005-05-31 JP JP2005158680A patent/JP2006336117A/ja not_active Withdrawn
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WO2022137740A1 (ja) * | 2020-12-24 | 2022-06-30 | 株式会社カネカ | 人工毛髪用ポリエステル系中空繊維、その製造方法及びそれを含む頭飾製品 |
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