JP2005319912A - 乗員保護装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】 乗員に加わるエネルギーの吸収効率が低下してしまうことを防止することができる乗員保護装置を提供する。
【解決手段】 乗員保護装置1は、車両の衝突時において、座席前方に位置する車内構成物に乗員が衝突するときに、乗員に加わる二次衝突エネルギーを吸収するものである。この乗員保護装置1は、まず、車両衝突を予測し、シートベルト21を引き込む。このとき、巻き取りセンサは、シートベルト21の引き込み量を検出し、その情報をECU12に送信する。そして、ECU12は、シートベルト21の引き込み量から、乗員上体の姿勢を検出し、この姿勢変化に応じて乗員に加わる二次衝突エネルギーの吸収量を調整する。これにより、乗員がどのような角度で二次衝突するかを考慮したうえで、二次衝突する角度に応じた吸収量を設定できることとなる。
【選択図】 図1

Description

本発明は、乗員保護装置に関する。
従来、衝突直前における運転者の衝突回避動作を可能とし、衝突した際には乗員を強固に拘束する乗員保護装置が知られている。この装置は、シートに着座した乗員に装着されるシートベルトを備え、第1指令手段が乗物の衝突を予測し、第2指令手段が乗物の衝突を判断する構成となっている。そして、第1指令手段は衝突予測時に作動信号を出力し、これを受けた第1のプリテンショナ機構は、シートベルトを初期位置から巻き取って第1の張力F1を発生させる。これにより、衝突回避の操作が可能な程度に乗員を拘束する構成となっている。また、第2指令手段は衝突判断時に作動信号を出力し、これを受けた第2のプリテンショナ機構は、第1の張力F1の状態にあるシートベルトを巻き取って第2の張力F2を発生させる。これにより、強固に乗員を拘束する構成となっている(特許文献1参照)。
また、衝突後に運転者に加わる慣性力によって運転者がステアリングなどに二次衝突する際の二次衝突エネルギーを緩和する乗員保護装置が知られている。この装置は、二次衝突エネルギーを吸収する衝突エネルギー吸収手段と、距離検出手段と、速度検出手段と、エネルギー吸収量調整手段と、衝突予測手段と、駆動制御手段とを備えている。そして、この装置は、距離検出手段が自車両の前方に存在する物体までの距離を検出し、速度検出手段が自車両の走行速度を検出する。次いで、衝突予測手段が距離検出手段と速度検出手段との検出結果から自車両と物体との衝突を予測し、衝突が予測されたときには駆動制御手段が衝突前に予めエネルギー吸収量調整手段を駆動制御する。このエネルギー吸収量調整手段は、衝突エネルギー吸収手段によるエネルギー吸収量を変化させるものである。このため、衝突エネルギー吸収手段は、エネルギー吸収量調整手段によって適切な二次衝突エネルギーの吸収量が設定され、この吸収量で運転者を最適に保護することとなる(特許文献2参照)。
なお、特許文献2に記載の乗員保護装置は、ステアリングの回転軸として機能するステアリングシャフトを有しており、衝突エネルギー吸収手段は、ステアリングシャフトに設けられ、該シャフトの延在方向に二次衝突エネルギーを吸収する構成となっている。
特開平6−286581号公報 特開2002−114157号公報
特許文献2に記載の従来装置では、ステアリングシャフトの延在方向に二次衝突エネルギーを吸収する構成となっている。このため、エネルギー吸収量調整手段により設定される二次衝突エネルギー吸収量は、乗員頭部がステアリングシャフトの延在方向と同角度で接触した場合を想定したものである。
しかし、特許文献1に記載の従来装置は、衝突予測時に第1プリテンショナ機構がシートベルトを巻き取る構成であることから、衝突予測時に乗員の上体が車両後方側に引き起こされることとなる。このため、乗員頭部がステアリングシャフトの延在方向と同角度で接触しない可能性がある。すなわち、特許文献1に記載の従来装置に、特許文献2に記載のようなステアリングコラプスシステムを導入したとしても、二次衝突前における乗員の姿勢変化によっては、正確な二次衝突エネルギー吸収量にて乗員を保護できるとはいえない可能性があった。そして、結果として、ステアリングコラプスシステムを導入した装置は、乗員の頭部に加わるエネルギーの吸収効率が低下する可能性を否定できなかった。
また、特許文献2に記載の従来装置は、衝突前に適切なエネルギー吸収量を設定するものであるが、衝突前における乗員の姿勢変化を検出するものではない。このため、乗員頭部とステアリング等との接触角度の変化を何ら検出できず、たとえ適切なエネルギー吸収量を設定したとしても、ステアリングシャフトの延在方向と乗員頭部の衝突角度とが一致しないときには、エネルギー吸収が適切とされない可能性がある。故に、特許文献2に記載の従来装置にあっても乗員の頭部に加わるエネルギーの吸収効率が低下する可能性があった。
本発明に係る乗員保護装置は、車両の衝突時において、座席前方に位置する車内構成物に乗員が衝突するときに、乗員に加わる二次衝突エネルギーを吸収するものである。この乗員保護装置は、自車両の前方に存在する物体までの距離を検出する距離検出手段と、自車両の走行速度を検出する速度検出手段とを備えている。そして、乗員保護装置は、衝突予測手段により、距離検出手段と速度検出手段との検出結果から自車両と前記物体との衝突を予測する構成となっている。さらに、乗員保護装置は、乗員上体の姿勢を検出する姿勢検出手段と、乗員に加わる二次衝突エネルギーの吸収量を調整するエネルギー吸収量調整手段とを具備している。ここで、エネルギー吸収量調整手段は、衝突予測手段により衝突が予測された場合に、姿勢検出手段により検出された姿勢に応じて、乗員に加わる二次衝突エネルギーの吸収量を調整する構成となっている。さらには、乗員保護装置はエネルギー吸収手段を備え、エネルギー吸収手段は、エネルギー吸収量調整手段により調整された吸収量で二次衝突エネルギーを吸収する構成となっている。
本発明によれば、自車両と物体との衝突を予測し、衝突が予測された場合には、乗員上体の姿勢変化を検出することとしている。このように、乗員上体の姿勢変化を検出することで、乗員がどのような角度で前方の車内構成物に二次衝突するかを判断できることとなる。そして、本発明では、検出した乗員上体の姿勢変化に応じて、乗員に加わる二次衝突エネルギーの吸収量を変化させることとしている。このため、乗員がどのような角度で二次衝突するかを考慮したうえで、二次衝突する角度に応じた吸収量を設定できることとなる。従って、乗員に加わるエネルギーの吸収効率が低下してしまうことを防止することができる。
以下、本発明の好適な実施形態を図面に基づいて説明する。なお、各図において、同一又は同様の要素には同一の符号を付して説明を省略するものとする。
図1は、第1実施形態に係る乗員保護装置を車両に設置したときの様子を示す構成図である。まず、乗員保護装置1を説明するに先立って、車室内の構成を説明する。車室内において、シート前方位置にはステアリング22が設置されている。ステアリング22の中央部にはステアリングパッド23が設けられている。ステアリングパッド23の内部には、車両衝突時に展開するエアバッグや、エアバッグ展開用のインフレータ24等が収納されている。
また、ステアリング22は、ステアリングコラム28に接続されている。ステアリングコラム28は、チルトブラケット26及びロアブラケット27を介して、車体側メンバ25に取り付けられている。このステアリングコラム28は、回動自在とされたアッパステアリングシャフト29を含み、アッパステアリングシャフト29は、上記のステアリング22に接続されている。
さらに、ステアリングコラム28は、アッパステアリングシャフト29の反対側に、ロアステアリングシャフト31等が設けられている。このロアステアリングシャフト31は、ユニバーサルジョイント30を介してステアリングコラム28に連結されている。このような接続関係にあるため、乗員がステアリング22を回転操作すると、アッパステアリングシャフト29及びロアステアリングシャフト31を介して、その回転力が図示しないステアリングギヤに伝達されることとなる。また、ステアリングギヤ内には、回転入力を直線運動に変換するラックアンドピニオン機構等が内蔵され、タイロッド等を介して車輪の舵角が変動して操舵が行われることとなる。
なお、上記のステアリングギヤには、ラックアンドピニオン式の他、ボールスクリュー式やウォームローラ式など、他の形式のものであってもよい。また、図1に示すように、ステアリングコラム28は、コラムカバー32に覆われており、コラムカバー32には、チルトレバー33が設けられている。
また、運転席側のシート34はフロア35に取り付けられている。また、シート34は、フロア35に固定されたシートレール36に沿って前後に移動すると共に、乗員の乗車姿勢に対応してシートバック37の角度等が調整可能となっている。
次に、乗員保護装置1を説明する。同図に示す乗員保護装置1は、車両の衝突時において、座席前方に位置する車内構成物に乗員が衝突するときに、乗員に加わる二次衝突エネルギーを吸収するものである。より好適に乗員保護装置1は、衝撃吸収式ステアリングコラムを備え、車両衝突時に運転者がステアリングホイールに二次衝突する際のエネルギーを吸収するものである。
この乗員保護装置1は、距離検出部(距離検出手段)10、速度検出部(速度検出手段)11、ECU(衝突予測手段、姿勢変化検出手段、エネルギー吸収量調整手段)12、及びエネルギー吸収部(エネルギー吸収手段)13を備えている。
距離検出部10は、自車両の前方に存在する物体までの距離を検出するものである。この距離検出部10は、図示しないフロントグリル内等に設置され、レーダ式あるいは赤外線式の距離センサにて構成されている。また、距離検出部10は、レーダや赤外線により、車両前方の物体(先行車両や障害物等)と自車両との距離を常時計測して、その検出信号をECU12に伝達する構成となっている。
速度検出部11は、自車両の走行速度を検出するものである。この速度検出部11は、ダッシュパネルとインスツルメントパネルとの間に設置され、検出信号をECU12に伝達する構成となっている。
ECU12は、速度検出部11と同様に、ダッシュパネルとインスツルメントパネルとの間に設置されている。また、ECU12は、衝突予測機能と、姿勢変化検出機能と、エネルギー吸収量調整機能とを有している。具体的に、ECU12の衝突予測機能は、距離検出部10と速度検出部11との検出結果から、自車両と車両前方の物体との衝突を予測する機能である。また、ECU12は、乗員保護装置1の全体を制御するものであり、衝突予測機能により車両衝突を予測すると乗員保護動作を行うべく、各部に指令をするものである。
ECU12の姿勢変化検出機能は、乗員上体の姿勢変化を検出する機能である。具体的に、ECU12は、車両衝突から二次衝突までの間に、乗員上体が車両前後方向にどのように変化したかを検出する構成となっている。
また、ECU12のエネルギー吸収量調整機能は、衝突予測機能により衝突が予測されたときに、姿勢変化検出機能により検出した姿勢変化に応じて、乗員に加わる二次衝突エネルギーの吸収量を調整する機能である。
エネルギー吸収部13は、ECU12により調整された吸収量で二次衝突エネルギーを吸収するものである。このエネルギー吸収部13は、上記ステアリングコラム28、具体的にはステアリングシャフト部に設けられ、乗員頭部がステアリング22に二次衝突した際に加わる衝撃を吸収する構成となっている。より詳しくは、エネルギー吸収部13は、ステアリングシャフトの延在方向に加わる衝撃を吸収する構造となっている。
さらに、上記乗員保護装置1は、ECU12の衝突予測機能により衝突が予測された場合に、シートベルト21を引き込むシートベルトプリテンショナ(引き込み手段)14を備えている。また、シートベルトプリテンショナ14は、事前引き込み機構(事前引き込み手段)と、事後引き込み機構(事後引き込み手段)とからなっている。
事前引き込み機構は、ECU12からの作動信号を元に作動する構成となっており、電動巻き取り式のモータを内蔵している。また、電動巻き取り式のモータ近傍には、シートベルト21の引き込み及び繰り出し量を出力する引き込み量センサが内蔵されている。引き込み量センサは、一般的に使用されているロータリーエンコーダ等を利用する事が可能である他、シートベルト21の引き込み及び繰り出し時にシートベルトウエビング表面の移動量を検出する画像センサやフォトセンサ等を利用することも可能である。
これに対し、事後引き込み機構は、内蔵したガスジェネレータにより発生されるガスで作動し、モータよりも強い張力でシートベルト21を引き込む構成となっている。このため、事後引き込み機構は、事前引き込み機構よりも、瞬時に且つ強固に乗員を拘束できる構成となっている。
図2は、図1に示したステアリングコラム28の拡大図である。同図に示すように、ステアリングコラム28は、鋼管製のアウタコラム41及びインナコラム43を有している。また、ステアリングコラム28は、アウタコラム41に溶接接合されたディスタンスブラケット45有し、アウタコラム41とインナコラム43との中間部にエネルギー吸収部13を備えている。
また、ステアリングコラム28は、チルトブラケット26を介して、車体側メンバ25に取り付けられている。この取付は、アルミ合金等を素材とするカプセル50により為されている。カプセル50は、樹脂インジェクションによりチルトブラケット26に所定の締結力をもって固定されている。
また、ステアリングコラム28には、ロアブラケット27とインナコラム43との間にラバーブッシュ51が介装されている。このラバーブッシュ51は、チルト時におけるステアリングコラム7の揺動を吸収するものとして機能するようになっている。
図3は、図2に示したエネルギー吸収部13の詳細断面図である。なお、図3は、図2の符号A部分の拡大図であって、エネルギー吸収部13を説明しやすいように、不要な要素を除き、且つ断面として示している。
同図に示すように、エネルギー吸収部13は、二次衝突エネルギーを吸収するための粘性の液体、具体的には磁性粘性流体64を有している。そして、エネルギー吸収部13は、磁性粘性流体64により二次衝突の衝撃を吸収する構成となっている。
詳細に説明すると、エネルギー吸収部13は、内部に磁性粘性流体64が封入されたシリンダ61と、シリンダ61の内部空間を少なくとも2空間に隔てる板材62と、二次衝突エネルギーを板材62まで伝達するピストン63とを備えている。なお、上記シリンダ61はインナコラム43のステアリング側の先端に設けられており、ピストン63はアウタコラム41のステアリング反対側先端に設けられている。また、上記板材62はピストン63の長手方向にシリンダ61の内部を移動する構成となっている。
さらに、エネルギー吸収部13は、バイパス管65を備え、板材62により隔てられた空間をバイパス管65により接続する構造となっている。さらに、バイパス管65には、コイル66が巻かれており、このコイル66はECU12により電流制御されるようになっている。
ここで、磁性粘性流体64は、磁場が加わることによって見かけの粘度が変化する特性を有している。このため、ECU12は、コイル66に流す電流の値を制御することで、磁性粘性流体64の粘度を調整できることとなる。すなわち、ECU12は、エネルギー吸収量調整機能によって、コイル66の通電量を制御して、磁性粘性流体64の見かけの粘度を変化させることができるようになっている。
また、ピストン63を介して伝わる二次衝突エネルギーは、板材62に到達し、最終的には磁性粘性流体64に伝わることとなる。このため、二次衝突エネルギーが加わって板材62を移動させた場合、磁性粘性流体64の粘性が低いときには、磁性粘性流体64がバイパス管65を通じて各空間を移動し易くなっている。つまり、エネルギー吸収部13は二次衝突エネルギーの吸収量が小さくなる。
一方、磁性粘性流体64の粘性が高いときには、磁性粘性流体64がバイパス管65を通じて各空間を移動するものの、その移動量は粘性が低いときに比べて少なくなる。つまり、エネルギー吸収部13は二次衝突エネルギーの吸収量が高くなる。
図4は、図3に示したA−A’断面図である。同図に示すように、シリンダ61の内側面はセレーション加工が施されている。また、ピストン63の先端に接続される板材62には、シリンダ61内側面に設けられたセレーションと噛み合うような突起部が形成されている。この様な構成とする事で、乗員がステアリング22を回転操作すると、セレーションを経由してアウタコラム41の回転をインナコラム43に伝達することが可能となり、車輪の転舵を可能とするようになっている。
次に、乗員保護装置1の動作の概略を説明する。乗員保護装置1は、まず、車両の電源の投入、又はエンジンの作動を契機として、起動する。そして、ECU12は、距離検出部10の検出信号と速度検出部11の検出信号とを入力する。次いで、ECU12は、これら検出信号に基づき、所定の制御インターバルで衝突予測を繰り返し行う。ここで、ECU12は、先行車両が急制動を行って自車両との距離が短時間で減少したり、自車両の進路に障害物が現れたりした場合などには、先行車両や障害物との距離の減少率と自車両の走行速度とから、所定の演算式を用いて衝突を予測することとなる。
次に、ECU12は、衝突を予測した場合、距離検出部10の検出信号と速度検出部11の検出信号とから、衝突までの時間的余裕を推定する。そして、ECU12は、推定時間が所定の閾値を超える場合、電動巻取り式のモータによりシートベルト21の引き込みを行う。
また、引き込み量センサは、シートベルト21の引き込み量を検出し、検出した引き込み量の信号をECU12に送信する。そして、モータは、自己が発生するトルクとシートベルト21の張力とがつりあった時点で引き込み動作を中止する。なお、モータは、動作を中止したとしても、シートベルト21の張力を維持する程度には作動を継続する。
このように、モータにより、すなわち事前引き込み機構によりシートベルト21が引き込まれると、乗員上体が引き起こされることがある。そして、図5に示すように乗員上体が姿勢変化する。図5は、事前引き込み機構の作動前及び作動後の乗員の様子を示す説明図である。
同図に示すように、事前引き込み機構の作動前において、乗員上体は初期状態にある。通常、衝撃吸収式ステアリングコラムにあっては、乗員上体が初期状態にあるときに二次衝突エネルギーを効率良く吸収できるようになっている。すなわち、二次衝突時における乗員頭部の移動方向と、ステアリングシャフトの延在方向(以下ステアリングコラプス軸方向という)とが略平行となっているときに、二次衝突エネルギーを効率良く吸収できるようになっている。
一方、事前引き込み機構が作動すると、乗員上体は車両後方側に引き起こされる。すなわち、シートベルト21の引き込みにより、乗員肩部がシートバック37に押し付けられ、乗員の脊椎及び頚椎が腰を中心として後方へ回転する。この場合、二次衝突時における乗員頭部の移動方向と、ステアリングコラプス軸方向とがずれることとなり、二次衝突エネルギーの吸収効率が低下することとなる。
その後、実際に車両衝突が発生した場合、ECU12は、加速度センサ等により構成される衝突センサ(図示せず)からの信号を入力し、内蔵したガスジェネレータによりガスを発生させて、シートベルト21を瞬時に引き込む。また、ECU12は、略同時にステアリングパッド内部のエアバッグを展開させる。
さらに、ECU12は、衝突の発生時に、事前引き込み機構により引き込んだシートベルト21の引き込み量を判定する。そして、ECU12は、引き込み量の大きさに応じて、コイル66への電流供給量を調整する。
図6は、事前引き込み機構の作動前において衝突が発生したときに生じる力の様子を示す説明図である。車両衝突時における乗員頭部の移動方向は、通常、乗員の頸椎と直交する方向となる。このため、乗員が初期状態にある場合には、二次衝突時における乗員頭部の移動方向と、ステアリングコラプス軸方向とが略平行となる傾向にある。
図7は、事前引き込み機構の作動後において衝突が発生したときに生じる力の様子を示す説明図である。事前引き込み機構が作動すると、乗員上体が引き起こされる。このため、二次衝突時における乗員頭部の移動方向と、ステアリングコラプス軸方向とが略平行でなくなる。これにより、頭部の移動方向がステアリングコラプス軸方向に対して角度をもつことになり、ステアリングコラプス軸方向へ分配される力の大きさが小さくなる。
故に、乗員保護装置1は、エネルギー吸収部13の吸収量を低下させることが必要となってくる。ここで、エネルギー吸収部13の吸収量は、二次衝突エネルギーと近い値とすることが望ましい。吸収量が大きい場合、すなわち磁性粘性流体64の見かけの粘度が高い場合、大きな二次衝突エネルギーを吸収することができるが、その一方で小さな二次衝突エネルギーに対しては、実質的に吸収作用を奏しない可能性があるためである。このため、乗員保護装置1は、ステアリングコラプス軸方向へ分配される力の大きさが小さくなると、吸収量、すなわちコラプス荷重を低下させて、最適なエネルギー吸収状態を得ることが必要となる。従って、ECU12は、エネルギー吸収部13のコイル66に流す電流値を低下させて、磁性粘性流体64の見かけの粘度を低くすることとなる。
これにより、乗員保護装置1は、乗員上体の姿勢変化に応じて、乗員に加わる二次衝突エネルギーの吸収量を適切に変化させることとなる。すなわち、乗員保護装置1は、乗員がどのような角度で二次衝突するかを考慮したうえで、二次衝突する角度に応じた吸収量を設定できることとなり、エネルギーの吸収効率が低下してしまうことを防止することができる。
次に、第1実施形態に係る乗員保護装置1の詳細動作を説明する。図8は、第1実施形態に係る乗員保護装置1の詳細動作を示すフローチャートである。同図に示すように、まず、ECU12は、距離検出部10及び速度検出部11による検出結果から、自車両と前方物体との衝突を予測する(ST10)。ここで、衝突が予測されなかった場合(ST10:NO)、ECU12は、衝突が予測されるまで、この処理を繰り返すこととなる。
一方、衝突が予測された場合(ST10:YES)、ECU12は、事前引き込み機構を作動させ、シートベルト21を引き込む(ST11)。その後、引き込みセンサは、シートベルト21の引き込み量を計測し、ECU12へ引き込み量の信号を送信する(ST12)。
次いで、ECU12は、衝突が発生したか否かを判断する(ST13)。ここで、衝突が発生していないと判断した場合(ST13:NO)、ECU12は、衝突が発生したと判断するまで、この処理を繰り返すこととなる。一方、衝突が発生したと判断した場合(ST13:YES)、ECU12は、事後引き込み機構を作動させ、シートベルト21を引き込む(ST14)。また、このとき、ECU12は、事前引き込み機構によって引き込まれたシートベルト21の量を判断する。これにより、ECU12は、乗員の姿勢変化を検出する。
具体的に姿勢変化は以下のように検出される。まず、ECU12は、事前引き込み機構によるシートベルト21の引き込み量が規定値未満であるか否かを判断する。ここで、規定値未満である場合、ECU12は、シートベルト21の引き込みにより乗員上体の姿勢変化がなかったと検出する。すなわち、シートベルトの引き込み量が少ない場合、例えば乗員着衣の厚み分など、シートベルト21の遊びを引き込むに過ぎず、乗員の身体を引き起こすには至らない。このため、ECU12は、引き込み量が規定値未満である場合、乗員上体の姿勢変化がなかったと検出する。
また、ECU12は、引き込み量が規定値未満でないと判断した場合、引き込み量が規定値以上特定値未満である否かを判断する。ここで、規定値以上特定値未満である場合、ECU12は、シートベルト21の引き込みにより乗員上体が後傾に変化したと検出する。すなわち、シートベルト21をやや多めに引き込んだ場合、例えば、シートベルト21の遊び分以上が巻き取られることとなり、乗員の状態を引き起こすこととなる。このため、ECU12は、引き込み量が規定値以上特定値未満である場合、乗員上体がやや後傾になったと検出する。
さらに、ECU12は、引き込み量が規定値以上特定値未満でないと判断した場合、引き込み量が特定値以上であると判断する。そして、ECU12は、シートベルト21の引き込みにより乗員上体が完全後傾に変化したと検出する。すなわち、シートベルト21を多めに引き込んだ場合、乗員の上体はシートバック37に一層密着するように引き起こされることとなる。このため、ECU12は、引き込み量が特定値以上である場合には、乗員上体が完全後傾になったと検出する。
その後、ECU12は、コイル66に流す電流の値を決定する(ST15)。図9は、ECU12により決定される電流値を示すグラフである。図9に示すように、ECU12は、乗員上体の姿勢変化、すなわちシートベルト21の引き込み量に応じて、コイル66に供給する電流値を決定している。
まず、シートベルト21の引き込み量が規定値未満である場合(図9の領域Aに該当する場合)、ECU12はコイル66に供給する電流値をI1と決定する。また、シートベルト21の引き込み量が規定値以上特定値未満である場合(図9の領域Bに該当する場合)、ECU12は、コイル66に供給する電流値を、引き込み量が大きさに応じて、電流値をI2からI1までの値に決定する。さらに、シートベルト21の引き込み量が特定値以上である場合(図9の領域Cに該当する場合)、ECU12はコイル66に供給する電流値をI2に決定する。
その後、ECU12は、決定した電流値に従って電流をコイル66に通電する。これにより、各領域A〜Cに応じて、以下のコラプス荷重が得られることとなる。図10は、コラプス荷重とステアリングコラプス量との相関を示すグラフである。なお、ステアリングコラプス量とは、図3のエネルギー吸収部13でいえば、板材62の移動ストロークを示すものである。
同図に示すように、シートベルト21の引き込み量が規定値未満である領域Aの場合、コラプス荷重は初期状態であるN1となっている。すなわち、シートベルト21の引き込み量が少ない場合、事前引き込み機構は乗員の身体を引き起こしていない。このため、ECU12は、二次衝突エネルギーの吸収量を調整するにあたり、シートベルト21の引き込み量に基づいた吸収量の増減を行わないこととしている。これは、図5〜図7を参照して示したように、乗員上体が引き起こされることがなければ、頭部の移動方向とステアリングコラプス軸方向とが略平行となっているためである。つまり、吸収量は初期状態とすることで最適となり、吸収量の増減を行わないことで、乗員に加わるエネルギーの吸収効率が低下してしまうことを防止できるからである。
また、シートベルト21の引き込み量が規定値以上特定値である領域Bの場合、コラプス荷重は例えばN2となる。すなわち、シートベルト21がやや多めに引き込まれた場合、事前引き込み機構は乗員の身体を引き起こすこととなる。このため、ECU12は、シートベルト21の引き込み量が大きくなるに従って、二次衝突エネルギーの吸収量を低下させる。これは、図5〜図7を参照して示したように、乗員上体の引き起こされる度合いが大きくなれば、それに応じて頭部の移動方向とステアリングコラプス軸方向とに角度差が大きくなるためである。つまり、角度差が大きくなるほど、頭部の慣性力は、ステアリングコラプス軸方向へ伝達しにくくなるためである。よって、引き起こされた度合いに応じて吸収量を低下させていくことで、乗員に加わるエネルギーの吸収効率が低下してしまうことを防止できることとなる。
また、乗員上体が後傾となると、乗員胸部については、ステアリング22までの距離が長くなり、シートベルト21によるエネルギー吸収量が増加することとなる。このため、ステアリングコラプス軸の方向に伝わる衝撃は一層小さくなる。よって、引き込み量に応じて、二次衝突エネルギーの吸収量を低下させることで、適切に乗員を保護できることとなる。
さらに、シートベルト21の引き込み量が特定値以上である領域Cの場合、コラプス荷重は最下限値N3となる。ここで、乗員の上体が完全後傾となった場合、二次衝突エネルギーの吸収量を最下限値N3という一定の値とせず、引き込み量に応じて低下させていくべきと推測される。しかし、吸収量を極端に低くしてしまうと、構造上の問題から、乗員頭部に加わる二次衝突の衝撃が大きくなってしまう可能性がある。例えば、吸収量を極端に低くした場合、図3の板材62がシリンダ61の端部(インナコラム側の端部)にまで到達してしまう場合がある。すなわち、底付きが発生してしまう。そして、底付きが発生すると、底付き発生時に瞬間的に高い荷重が乗員頭部や胸部に加わる可能性がある。このため、引き込み量が特定値以上となると、底付きが発生しない程度に荷重を最下限値N3とすることで、適切に乗員を保護できることとなり、乗員に加わるエネルギーの吸収効率が低下してしまうことを防止できることとなる。
再度、図8を参照する。以上のようにして電流値を決定した後、ECU12はコイル66に電流を印可する(ST16)。このとき、ECU12からの電流によって、バイパス管65の周囲には磁場が発生し、その強弱によって磁性粘性流体64は見かけの粘度が変化する。これにより、適切な吸収量が設定されることとなる。
そして、上記吸収量の設定の間又は設定後に、ステアリングパッド23の内部のエアバッグは展開して乗員頭部を受け止められる。次いで、エアバッグはその内圧を低下させながらエネルギーを吸収し、且つ乗員保護装置1もエネルギー吸収作動を行う(ST17)。
この際、ステアリング22を介して伝達された乗員の慣性力により板材62は押し込まれる。そして、シリンダ61に充填されている磁性粘性流体64がバイパス管65を通じて移動をする。ここで、ステップST16において磁性粘性流体64の見かけの粘度が適切とされていることから、バイパス管65を通じて移動する磁性粘性流体64の量は適切となり、好適に二次衝突エネルギーを吸収することとなる。従って、乗員に加わるエネルギーの吸収効率の低下を防止することとなる。
このようにして、自車両の前方に存在する物体までの距離と、自車両の走行速度とから、自車両と物体との衝突を予測し、衝突が予測された場合に、乗員上体の姿勢変化を検出している。このため、乗員がどのような角度で前方の車内構成物に二次衝突するかを判断できることとなる。特に、衝撃吸収式ステアリングコラムを有した乗員保護装置1にあっては、ステアリング22と乗員の頭部との接触角度を判断できることとなる。
そして、本実施形態では、検出した乗員上体の姿勢変化に応じて、乗員に加わる二次衝突エネルギーの吸収量を変化させる。すなわち、乗員がどのような角度で二次衝突するかを考慮したうえで、二次衝突する角度に応じた吸収量を設定できることとなる。特に、衝撃吸収式ステアリングコラムを有した乗員保護装置1にあっては、乗員の頭部がステアリングに接触する角度と、ステアリングシャフトの軸方向との角度差などを判断できることとなり、この角度差に応じた吸収量を設定できることとなる。
従って、乗員に加わるエネルギーの吸収効率が低下してしまうことを防止することができる。
また、衝突予測時にシートベルト21を引き込むシートベルトプリテンショナ14を有し、このシートベルトプリテンショナ14によるシートベルト21の引き込み量に応じて姿勢変化を検出している。ここで、シートベルト21の引き込み量が小さい場合、乗員上体は殆どシート側に引き起こされることはない。一方、シートベルト21の引き込み量が大きい場合、乗員上体はシート側に引き起こされる。このように、シートベルト21の引き込み量に応じて、乗員上体がどの程度車両後方側に引き起こされたか判断でき、正確な姿勢変化を検出することができる。
また、シートベルトプリテンショナ14は、衝突の事前及び事後においてそれぞれシートベルトを引き込む事前引き込み機構と事後引き込み機構とを有している。そして、ECU12は、事前引き込み機構によるシートベルト21の引き込み量に応じて、乗員上体の姿勢変化を検出している。このため、事前引き込み機構によるシートベルト21の引き込み量に応じて、二次衝突前の正確な姿勢変化を検出することができる。さらに、衝突した際には、事後引き込み機構によりさらにシートベルト21を引き込むので、乗員を確実に拘束することができる。
また、シートベルト21の引き込み量が規定値未満である場合、シートベルト21の引き込みにより乗員上体の姿勢変化がなかったと検出している。通常、シートベルト21の引き込み量が少ない場合、例えば乗員着衣の厚み分など、シートベルト21の遊びを巻き取るに過ぎず、乗員の身体を引き起こすには至らない。このため、引き込み量が規定値未満である場合には、乗員上体の姿勢変化がなかったと検出できることとなる。
そして、乗員上体の姿勢変化がなかったと検出した場合、二次衝突エネルギーの吸収量を調整するにあたり、シートベルト21の引き込み量に基づいた吸収量の増減を行わないこととしている。すなわち、乗員上体の姿勢に変化がないことから、吸収量を当初予定しておいたままの状態とすることで適切に乗員を保護できることとなる。このため、引き込み量に基づいた吸収量の増減を行わないこととし、乗員に加わるエネルギーの吸収効率が低下してしまうことを確実に防止することができる。
また、シートベルト21の引き込み量が規定値以上特定値未満である場合、シートベルト21の引き込みにより乗員上体が後傾に変化したと検出している。通常、シートベルト21をやや多めに引き込んだ場合、シートベルト21の遊び分以上が巻き取られることとなり、乗員の状態を引き起こすこととなる。このため、引き込み量が規定値以上特定値未満である場合には、乗員上体がやや後傾になったと検出できることとなる。
そして、乗員上体がやや後傾になったと検出した場合、シートベルト21の引き込み量が大きくなるに従って、二次衝突エネルギーの吸収量を低下させている。すなわち、乗員上体が引き起こされることから、引き起こされた度合いに応じて吸収量を低下させていくことで、適切に乗員を保護できることとなる。
例えば、衝撃吸収式ステアリングコラムを有した乗員保護装置1にあっては、乗員上体が引き起こされると、ステアリングコラプス軸方向と頭部の接触角度との差が大きくなってくる。このため、頭部がステアリングに接触する衝撃のうち、ステアリングコラプス軸方向に伝わる衝撃は、小さくなってくる。故に、これにあわせて二次衝突エネルギーの吸収量を低下させることで、適切に乗員を保護できることとなる。
また、乗員上体、特に乗員の胸部については、上体が後傾となることで、ステアリング22までの距離が長くなり、シートベルト21によるエネルギー吸収量が増加することとなる。このため、ステアリングコラプス軸方向に伝わる衝撃は一層小さくなる。よって、引き込み量に応じて、二次衝突エネルギーの吸収量を低下させることで、適切に乗員を保護できることとなる。
従って、乗員に加わるエネルギーの吸収効率が低下してしまうことを確実に防止することができる。
また、シートベルト21の引き込み量が特定値以上である場合、シートベルト21の引き込みにより乗員上体が完全後傾に変化したと検出している。ここで、シートベルト21を多めに引き込んだ場合、乗員の上体はシートバック37に一層密着するように引き起こされることとなる。このため、引き込み量が特定値以上である場合には、乗員上体が完全後傾になったと検出できることとなる。
そして、乗員上体が完全後傾になったと検出した場合、シートベルト21の引き込み量によらず、最下限値N3とすることとしている。ここで、乗員の上体が完全後傾となったとしても、引き込み量に応じて二次衝突エネルギーの吸収量を低下させていくべきと推測される。しかし、吸収量を極端に低くしてしまうと、構造上の問題から、乗員頭部に加わる二次衝突の衝撃が大きくなってしまう可能性がある。
具体的には、吸収量を極端に低くした場合、板材62がシリンダ61の端部(インナコラム側の端部)にまで到達して、底付きが発生してしまう。そして、底付きが発生すると、底付き発生時に瞬間的に極めて高い荷重が発生するため、乗員頭部や胸部に加わる衝撃が大きくなる可能性がある。このため、引き込み量が特定値以上となると、底付きが発生しない程度の荷重とすることで、適切に乗員を保護できることとなる。
従って、吸収量を最下限値とすることで、適切に乗員を保護できることとなり、乗員に加わるエネルギーの吸収効率が低下してしまうことを確実に防止することができる。
また、液体の見かけの粘度を変化させることで、二次衝突エネルギーの吸収量を調整している。このため、様々な乗員の状態(体格等を含む)にあわせて粘度を変化させることで、適切な二次衝突エネルギーの吸収量を得ることができる。
また、液体は、磁性粘性流体64であって、コイル66に流す電流の値を制御して、磁性粘性流体64に磁場を印加することで、二次衝突エネルギーの吸収量を調整している。ここで、磁性粘性流体64は、磁場が加わることによって粘度が変化する特性を有している。このため、コイル66に流す電流の値を制御することで、磁性粘性流体64の粘度を容易且つ適切に調整できることとなる。従って、容易に適切な二次衝突エネルギーの吸収量を得ることができる。
次に、本発明の第2実施形態を説明する。第2実施形態に係る乗員保護装置2は、第1実施形態のものと同様であるが、構成及び処理内容が第1実施形態のものと一部異なっている。
図11は、第2実施形態に係る乗員保護装置2を車両に設置したときの様子を示す構成図である。同図に示す乗員保護装置2は、新たに角度検出部(シート角度検出手段)15を備えている。
角度検出部15は、シートバック37の角度を検出するものであって、シートリクライナ部に設けられている。また、角度検出部15は、ECU12に接続されており、検出した角度の情報をECU12に送信する構成となっている。なお、角度検出部15としては例えば回転ポテンシオメータ等が用いられるが、特にこれに限られるものではない。
このような乗員保護装置2にあっては、角度検出部15がシートバック37の角度を検出し、ECU12に角度信号を送信する。次いで、ECU12は角度信号を入力する。そして、ECU12のエネルギー吸収量調整機能は、姿勢変化から求めた二次衝突エネルギーの吸収量を、角度検出部15により検出されたシート角度に基づいて補正する。
すなわち、シート角度が小さい場合、乗員はやや前屈みの姿勢にあるといえる。一方、シート角度が大きい場合、乗員は後傾していることいえる。このように、シート角度に応じて乗員の初期姿勢が異なる。このため、例えば姿勢変化が無かったとしても、ステアリングコラプス軸と乗員頭部の移動方向とが平行とならない可能性がある。よって、第2実施形態では、シートベルト21の引き込み量だけでなく、乗員初期姿勢を反映するシート角度の情報から、二次衝突エネルギーの吸収量を補正することで、適切に乗員を保護することとしている。
図12は、シートバック37が標準角度である場合において、衝突が発生したときに生じる力の様子を示す説明図である。例えば、乗員が通常の姿勢で着座していたとする。この場合、シート角度が標準値の範囲内であれば、同図に示すように、シート角度は二次衝突エネルギーの吸収量にあまり影響を与えない。すなわち、引き込み量が規定値以上特定値未満である場合、頭部の移動方向は、ステアリングコラプス軸方向に対して、図7に示した場合と同程度に角度を有した状態となる。
これに対し、シートバック37が標準角度よりも大きい場合、シート角度は二次衝突エネルギーの吸収量に影響を与える。図13は、シートバック37が標準角度を超える場合において、衝突が発生したときに生じる力の様子を示す説明図である。図13に示すように、シートバック37の角度が大きいと、乗員の初期姿勢がもともと後傾状態となっている。このため、頭部の移動方向とステアリングコラプス軸方向との角度差は大きくなる。よって、ECU12は、吸収量を一層低下させるべく、コイル66に流す電流の値を低下させる。
次に、第2実施形態に係る乗員保護装置2の詳細動作を説明する。図14は、第2実施形態に係る乗員保護装置2の詳細動作を示すフローチャートである。なお、同図に示すステップST20〜ST24,ST27,ST28については、図8に示したステップST10〜ST14,ST16,ST17と同様であるため、説明を省略する。
まず、事後引き込み機構の作動の後(ST24の後)、角度検出部15はシートバック37の角度を検出する(ST25)。そして、角度検出部15はシート角度の情報をECU12に送信する。次いで、ECU12は、コイル66に流す電流の値を決定する(ST26)。図15は、ECU12により決定される電流値を示すグラフである。図15に示すように、ECU12は、シートベルト21の引き込み量から決定された電流値を、シートバック37の角度により補正している。
まず、ECU12は、事前引き込み機構によるシートベルト21の引き込み量が規定値未満であるか否か以下を判断する。ここで、規定値未満である場合(図15の領域Aに該当する場合)、ECU12は、コイル66に供給する電流値をI1と決定する。次に、ECU12は、角度検出部15により検出されたシートバック37の角度が標準値の範囲内であるか否かを判断する。そして、シートバック37の角度が標準値の範囲内である場合、ECU12のエネルギー吸収量調整機能は、シートバック37が標準角度であると判断し、シート角度に基づいた吸収量の補正を行わないこととする。すなわち、ECU12は、コイル66に供給する電流値をI1のままとする。
一方、シートバック37の角度が標準値を超える場合、ECU12は、シートバック37が後傾であると判断する。そして、ECU12は、エネルギー吸収量調整機能により、シート角度が大きくなるに従って電流値を低下方向に補正する。すなわち、図15に示すように、ECU12は、電流値をI1よりも低いI3やI4などに補正する。なお、電流値は、底付きを考慮してI4未満には補正されないようになっている。
また、ECU12は、引き込み量が規定値未満でないと判断した場合、引き込み量が規定値以上特定値未満である否か以下を判断する。そして、規定値以上特定値未満である場合(図15の領域Bに該当する場合)、ECU12は、領域Aの場合と同様にして、吸収量の補正を行うこととなる。
さらに、ECU12は、引き込み量が特定値以上であると判断した場合(図15の領域Cに該当する場合)、ECU12は、シートバック37の角度により、電流値を補正しないこととする。すなわち、ECU12は吸収量を補正しない。これは、吸収量を極端に低くして、底付きが発生してしまうことを防止するためである。すなわち、第1実施形態と同様にECU12は、電流値をI2と決定する。
このように電流値を決定した後、ECU12は決定した電流値に従って電流をコイル66に通電する。これにより、シートバック37の角度に応じた適切な二次衝突エネルギーの吸収量を設定できることとなる。図16は、コラプス荷重とステアリングコラプス量との相関を示すグラフである。なお、図16では、図15に示した領域Aの場合を例にしている。
具体的にコラプス荷重は以下のようになる。すなわち、シート角度が標準値の範囲内である場合、第1実施形態と同様に、コラプス荷重はN1となる。しかし、シート角度が標準値を超えると、その超えた度合いに応じて電流値が低くされる。従って、コラプス荷重はN1よりも小さいN4やN5などとなる。
このようにシートバック37の角度に応じて二次衝突エネルギーの吸収量が低下側に補正されることとなる。その後、図14に示したステップST27,ST28の処理が実行されて処理は終了する。
このようにして、第2実施形態に係る乗員保護装置2によれば、第1実施形態と同様に、乗員に加わるエネルギーの吸収効率が低下してしまうことを防止することができ、正確な姿勢変化を検出することができる。
また、乗員を確実に拘束することができ、乗員に加わるエネルギーの吸収効率が低下してしまうことを確実に防止することができる。さらに、適切な二次衝突エネルギーの吸収量を得ることができ、容易に適切な二次衝突エネルギーの吸収量を得ることができる。
また、第2実施形態によれば、シートバック37の角度を検出する角度検出部15を有し、角度検出部15により検出されたシート角度に応じて二次衝突エネルギーの吸収量を補正している。ここで、シート角度が小さい場合、乗員はやや前屈みの姿勢にあるといえる。一方、シート角度が大きい場合、乗員は後傾していることいえる。このように、シート角度に応じて、乗員上体の初期状態が異なっており、姿勢変化だけでは、初期状態の相違により吸収量を適切とできない可能性がある。そこで、初期状態を反映するシート角度の情報から、二次衝突エネルギーの吸収量を補正することで、乗車姿勢に応じて適切に乗員を保護することができる。
また、シートバック37の角度が標準値の範囲内である場合、シート34が標準角度であると判断し、シート角度に基づいた吸収量の補正を行わないこととしている。この場合、シートバック37の角度は、小さくも大きくもないことから、乗員はやや前屈みでも、後傾でもないといえる。すなわち、吸収量の変更を行う必要がない状態となっている。このため、シート角度による補正を行わず、姿勢変化に基づくものとすることで、乗員に加わるエネルギーの吸収効率が低下してしまうことを確実に防止することができる。
また、シートバック37の角度が標準値を超える場合、シートバック37が後傾であると判断し、シート角度が大きくなるに従って、二次衝突エネルギーの吸収量を低下側に補正している。この場合、シートバック37が後傾していることから、乗員は後傾となっているといえる。このため、姿勢変化の他に、もともと乗員が後傾していることを考慮して吸収量を補正することとなり、好適な乗員保護をすることができる。
例えば、上記したように、衝撃吸収式ステアリングコラムを有した乗員保護装置にあっては、乗員上体が仰け反って着座しているとすると、二次衝突時にステアリングコラプス軸と頭部の移動方向との角度差が大きくなる。このため、ステアリングコラプス軸の方向に伝わる衝撃は小さくなるが、吸収量を低下側に補正することで、適切に乗員を保護できることとなる。
従って、乗員に加わるエネルギーの吸収効率が低下してしまうことを確実に防止することができる。
次に、本発明の第3実施形態を説明する。第3実施形態に係る乗員保護装置3は、第1実施形態のものと同様であるが、構成及び処理内容が第1実施形態のものと一部異なっている。
図17は、第3実施形態に係る乗員保護装置3を車両に設置したときの様子を示す構成図である。同図に示す乗員保護装置3は、新たにスライド位置検出部(シートスライド位置検出手段)16を備えている。
スライド位置検出部16は、シート位置を検出するものであって、シートスライド部に設けられている。また、スライド位置検出部16は、ECU12に接続されており、検出したシート位置の情報をECU12に送信する構成となっている。なお、スライド位置検出部16としては例えばポテンシオメータ等が用いられるが、特にこれに限られるものではない。
このような乗員保護装置3にあっては、スライド位置検出部16がシート位置を検出し、ECU12にシート位置信号を送信する。次いで、ECU12はシート位置信号を入力する。そして、ECU12は、エネルギー吸収量調整機能により、姿勢変化から求めた二次衝突エネルギーの吸収量を、スライド位置検出部16により検出されたシート位置に基づいて補正する。
すなわち、シート位置が前側である場合、乗員は二次衝突の際に接触する車内構成物(即ちステアリング)に近い位置にあるといえる。一方、シート位置が後側にある場合、乗員は車内構成物に遠い位置にあるといえる。ここで、二次衝突のエネルギーは、シート位置が後側にあるほど、シートベルト21により小さくされる傾向にある。すなわち、シート位置が後側であるほど、シートベルト21により乗員身体の慣性力が減じられて、二次衝突のエネルギーは小さくされることとなる。このため、第3実施形態では、シート位置の情報から、二次衝突エネルギーの吸収量を補正することで、適切に乗員を保護することとしている。
次に、第3実施形態に係る乗員保護装置2の詳細動作を説明する。図18は、第3実施形態に係る乗員保護装置3の詳細動作を示すフローチャートである。なお、同図に示すステップST30〜ST34,ST37,ST38については、図8に示したステップST10〜ST14,ST16,ST17と同様であるため、説明を省略する。
まず、事後引き込み機構の作動の後(ST34の後)、スライド位置検出部16はシート位置を検出する(ST35)。そして、スライド位置検出部16はシート位置の情報をECU12に送信する。次いで、ECU12は、コイル66に流す電流の値を決定する(ST36)。図19は、ECU12により決定される電流値を示すグラフである。図19に示すように、ECU12は、シートベルト21の引き込み量から決定された電流値を、シート位置により補正している。
まず、ECU12は、事前引き込み機構によるシートベルト21の引き込み量が規定値未満であるか否か以下を判断する。ここで、規定値未満である場合(図19の領域Aに該当する場合)、ECU12は、コイル66に供給する電流値をI1と決定する。次に、ECU12は、スライド位置検出部16により検出されたシート位置が標準位置よりも前側にあるか否かを判断する。そして、シート位置が標準位置よりも前側にある場合、ECU12のエネルギー吸収量調整機能は、乗員上体が前側に位置していると判断し、二次衝突エネルギーの吸収量を増加側に補正する。すなわち、シート位置が前側にあることから、シートベルト21の吸収率は低くなるといえる。このため、ECU12は、姿勢変化の他に、シートベルト21の吸収率を考慮して、吸収量を増加側に補正することとし、コイル66に供給する電流値をI1よりも高いI5などとする。
一方、シート位置が標準位置よりも後側にある場合、ECU12は、乗員上体が後側に位置していると判断し、エネルギー吸収量調整機能により二次衝突エネルギーの吸収量を低下側に補正する。すなわち、シート位置が後側にあることから、シートベルト21の吸収率は高くなるといえる。このため、ECU12は、吸収量を低下側に補正することとし、コイル66に供給する電流値をI1よりも低いI6などとする。なお、電流値は、底付きを考慮してI6未満には補正されないようになっている。
また、ECU12は、引き込み量が規定値未満でないと判断した場合、引き込み量が規定値以上特定値未満である否か以下を判断する。そして、規定値以上特定値未満である場合(図19の領域Bに該当する場合)、ECU12は、領域Aの場合と同様にして、吸収量の補正を行うこととなる。
さらに、ECU12は、引き込み量が特定値以上であると判断した場合(図19の領域Cに該当する場合)、ECU12は、シート位置により、電流値を補正しない。すなわち、ECU12は吸収量を補正しない。これは、吸収量を極端に低くして、底付きが発生してしまうことを防止するためである。すなわち、第1実施形態と同様にECU12は、電流値をI2と決定する。
このように電流値を決定した後、ECU12は決定した電流値に従って電流をコイル66に通電する。これにより、シート位置に応じた適切な二次衝突エネルギーの吸収量を設定できることとなる。図20は、コラプス荷重とステアリングコラプス量との相関を示すグラフである。なお、図20では、図19に示した領域Aの場合を例にしている。
具体的にコラプス荷重は以下のようになる。すなわち、シート位置が標準位置である場合、第1実施形態と同様に、コラプス荷重はN1となる。しかし、シート位置が標準位置よりも前側となると、そのときのシート位置に応じて電流値が高くされる。従って、コラプス荷重はN1よりも高いN6などになる。さらに、シート位置が標準位置よりも後側となると、そのときのシート位置に応じて電流値が低くされる。従って、コラプス荷重はN1よりも高いN7などになる。
このようにシート位置に応じて二次衝突エネルギーの吸収量が低下側又は増加側に補正されることとなる。そして、図18に示したステップST37,ST38の処理が実行されて、二次衝突エネルギーの吸収効率の低下が防止されることとなる。
このようにして、第3実施形態に係る乗員保護装置3によれば、第1実施形態と同様に、乗員に加わるエネルギーの吸収効率が低下してしまうことを防止することができ、正確な姿勢変化を検出することができる。
また、乗員を確実に拘束することができ、乗員に加わるエネルギーの吸収効率が低下してしまうことを確実に防止することができる。さらに、適切な二次衝突エネルギーの吸収量を得ることができ、容易に適切な二次衝突エネルギーの吸収量を得ることができる。
また、第3実施形態によれば、シート位置を検出するスライド位置検出部16を有し、スライド位置検出部16により検出されたシート位置に応じて二次衝突エネルギーの吸収量を補正している。ここで、シート位置が前側である場合、乗員は二次衝突の際に接触する車内構成物に近い位置にあるといえる。一方、シート位置が後側にある場合、乗員は車内構成物に遠い位置にあるといえる。そして、シート位置が後側にあるほど、乗員頭部の慣性エネルギーは、シートベルト21によって多く吸収される傾向にある。このように、シート位置に応じて、シートベルト21によるエネルギーの吸収率が異なっており、姿勢変化だけでは、二次衝突エネルギーの吸収量を適切とできない可能性がある。従って、シートベルト21の吸収率を反映したシート位置の情報から、二次衝突エネルギーの吸収量を補正することで、適切に乗員を保護することができる。
また、シート位置が標準位置よりも前側にある場合、乗員上体が前側に位置していると判断し、二次衝突エネルギーの吸収量を増加側に補正することとしている。この場合、シート位置が前側にあることから、シートベルト21の吸収率は低くなるといえる。このため、姿勢変化の他に、シートベルト21の吸収率を考慮して、吸収量を増加側に補正することで、乗員に加わるエネルギーの吸収効率が低下してしまうことを確実に防止することができる。
また、シート位置が標準位置よりも後側にある場合、乗員上体が後側に位置していると判断し、二次衝突エネルギーの吸収量を低下側に補正することとしている。この場合、シート位置が後側にあることから、シートベルト21の吸収率は高くなるといえる。このため、姿勢変化の他に、シートベルト21の吸収率を考慮して、吸収量を低下側に補正することで、乗員に加わるエネルギーの吸収効率が低下してしまうことを確実に防止することができる。
以上、実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に限られるものではなく、各実施形態を組み合わせてもよい。また、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、変更を加えてもよい。
例えば、上記実施形態では、衝撃吸収式ステアリングコラムを例に説明したが、特にこれに限られるものではなく、二次衝突エネルギーを吸収する装置であればよい。また、運転者を保護する場合を例に説明したが、運転者以外の車両乗員を保護するものであってもよい。さらに、エネルギー吸収部13として、液体を封入したシリンダ61を例に説明したが、これに限らず、ボール式のエネルギー吸収部であってもよい。
第1実施形態に係る乗員保護装置を車両に設置したときの様子を示す構成図である。 図1に示したステアリングコラムの拡大図である。 図2に示したエネルギー吸収部の詳細断面図である。 図3に示したA−A’断面図である。 事前引き込み機構の作動前及び作動後の乗員の様子を示す説明図である。 事前引き込み機構の作動前において衝突が発生したときに生じる力の様子を示す説明図である。 事前引き込み機構の作動後において衝突が発生したときに生じる力の様子を示す説明図である。 第1実施形態に係る乗員保護装置の詳細動作を示すフローチャートである。 ECUにより決定される電流値を示すグラフである。 コラプス荷重とステアリングコラプス量との相関を示すグラフである。 第2実施形態に係る乗員保護装置を車両に設置したときの様子を示す構成図である。 シートバックが標準角度である場合において、衝突が発生したときに生じる力の様子を示す説明図である。 シートバックが標準角度を超える場合において、衝突が発生したときに生じる力の様子を示す説明図である。 第2実施形態に係る乗員保護装置の詳細動作を示すフローチャートである。 ECUにより決定される電流値を示すグラフである。 コラプス荷重とステアリングコラプス量との相関を示すグラフである。 第3実施形態に係る乗員保護装置を車両に設置したときの様子を示す構成図である。 第3実施形態に係る乗員保護装置の詳細動作を示すフローチャートである。 ECUにより決定される電流値を示すグラフである。 コラプス荷重とステアリングコラプス量との相関を示すグラフである。
符号の説明
1〜3…乗員保護装置
10…距離検出部(距離検出手段)
11…速度検出部(速度検出部)
12…ECU(衝突予測手段、姿勢変化検出手段、エネルギー吸収量調整手段)
13…エネルギー吸収部(エネルギー吸収手段)
14…シートベルトプリテンショナ(引き込み手段)
15…角度検出部(シート角度検出手段)
16…スライド位置検出部(シートスライド位置検出手段)
21…シートベルト
34…シート
37…シートバック
64…磁性粘性流体(液体)
66…コイル

Claims (15)

  1. 車両の衝突時において、座席前方に位置する車内構成物に乗員が衝突するときに、乗員に加わる二次衝突エネルギーを吸収する乗員保護装置であって、
    自車両の前方に存在する物体までの距離を検出する距離検出手段と、
    自車両の走行速度を検出する速度検出手段と、
    前記距離検出手段と前記速度検出手段との検出結果から自車両と前記物体との衝突を予測する衝突予測手段と、
    乗員上体の姿勢変化を検出する姿勢変化検出手段と、
    前記衝突予測手段により衝突が予測されたときに、前記姿勢変化検出手段により検出された姿勢変化に応じて、乗員に加わる二次衝突エネルギーの吸収量を調整するエネルギー吸収量調整手段と、
    前記エネルギー吸収量調整手段により調整された吸収量で二次衝突エネルギーを吸収するエネルギー吸収手段と、
    を備えたことを特徴とする乗員保護装置。
  2. 前記衝突予測手段により衝突が予測された場合に、シートベルトを引き込む引き込み手段を更に備え、
    前記姿勢変化検出手段は、前記引き込み手段によるシートベルトの引き込み量に応じて、乗員上体の姿勢変化を検出する
    ことを特徴とする請求項1に記載の乗員保護装置。
  3. 前記引き込み手段は、衝突発生前にシートベルトを引き込む事前引き込み手段と、衝突後にシートベルトを引き込む事後引き込み手段と、を有し、
    前記事前引き込み手段は、前記衝突予測手段により衝突が予測された場合、衝突発生前にシートベルトを引き込み、
    前記姿勢変化検出手段は、前記事前引き込み手段によるシートベルトの引き込み量に応じて、乗員上体の姿勢変化を検出する
    ことを特徴とする請求項2に記載の乗員保護装置。
  4. 前記姿勢変化検出手段は、前記引き込み手段によるシートベルトの引き込み量が規定値未満である場合、シートベルトの引き込みにより乗員上体の姿勢変化がなかったと検出し、
    前記エネルギー吸収量調整手段は、前記姿勢変化検出手段により乗員上体の姿勢変化がなかったと検出された場合、二次衝突エネルギーの吸収量を調整するにあたり、シートベルトの引き込み量に基づいた吸収量の増減を行わない
    ことを特徴とする請求項2又は請求項3のいずれかに記載の乗員保護装置。
  5. 前記姿勢変化検出手段は、前記引き込み手段によるシートベルトの引き込み量が規定値以上特定値未満である場合、シートベルトの引き込みにより乗員上体が後傾に変化したと検出し、
    前記エネルギー吸収量調整手段は、前記姿勢変化検出手段により乗員上体が後傾となったと検出された場合、シートベルトの引き込み量が大きくなるに従って、二次衝突エネルギーの吸収量を低下させる
    ことを特徴とする請求項2又は請求項3のいずれかに記載の乗員保護装置。
  6. 前記姿勢変化検出手段は、前記引き込み手段によるシートベルトの引き込み量が特定値以上である場合、シートベルトの引き込みにより乗員上体が完全後傾に変化したと検出し、
    前記エネルギー吸収量調整手段は、前記姿勢変化検出手段により乗員上体が完全後傾に変化したと検出された場合、シートベルトの引き込み量によらず、二次衝突エネルギーの吸収量を最下限値とする
    ことを特徴とする請求項2又は請求項3のいずれかに記載の乗員保護装置。
  7. シートバックの角度を検出するシート角度検出手段を更に備え、
    前記エネルギー吸収量調整手段は、前記姿勢変化検出手段により検出された姿勢変化によって調整した二次衝突エネルギーの吸収量を、前記シート角度検出手段により検出されたシート角度に基づいて、補正する
    ことを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の乗員保護装置。
  8. 前記エネルギー吸収量調整手段は、前記シート角度検出手段により検出されたシート角度が標準値の範囲内である場合、シートバックが標準角度であると判断し、シート角度に基づいた吸収量の補正を行わない
    ことを特徴とする請求項7に記載の乗員保護装置。
  9. 前記エネルギー吸収量調整手段は、前記シート角度検出手段により検出されたシート角度が標準値を超える場合、シートバックが後傾であると判断し、シート角度が大きくなるに従って、二次衝突エネルギーの吸収量を低下側に補正する
    ことを特徴とする請求項7に記載の乗員保護装置。
  10. シート位置を検出するシートスライド位置検出手段を更に備え、
    前記エネルギー吸収量調整手段は、前記姿勢変化検出手段により検出された姿勢変化によって調整した二次衝突エネルギーの吸収量を、前記シートスライド位置検出手段により検出されたシート位置に基づいて、補正する
    ことを特徴とする請求項1〜請求項9のいずれか1項に記載の乗員保護装置。
  11. 前記エネルギー吸収量調整手段は、前記シートスライド位置検出手段により検出されたシート位置が標準位置よりも前方にある場合、乗員上体が前側に位置していると判断し、二次衝突エネルギーの吸収量を増加側に補正する
    ことを特徴とする請求項10に記載の乗員保護装置。
  12. 前記エネルギー吸収量調整手段は、前記シートスライド位置検出手段により検出されたシート位置が標準位置よりも後方にある場合、乗員上体が後側に位置していると判断し、二次衝突エネルギーの吸収量を低下側に補正する
    ことを特徴とする請求項10に記載の乗員保護装置。
  13. 前記エネルギー吸収手段は、二次衝突エネルギーを吸収するための粘性の液体を有し、
    前記エネルギー吸収量調整手段は、前記液体の見かけの粘度を変化させることで、二次衝突エネルギーの吸収量を調整する
    ことを特徴とする請求項1〜請求項12のいずれか1項に記載の乗員保護装置。
  14. 前記液体は、磁性粘性流体であって、
    前記エネルギー吸収量調整手段は、前記磁性粘性流体に磁場を印加するためのコイルを有し、このコイルに流す電流の値を制御することで、二次衝突エネルギーの吸収量を調整する
    ことを特徴とする請求項13に記載の乗員保護装置。
  15. 車両の衝突時において、座席前方に位置する車内構成物に乗員が衝突するときに、乗員に加わる二次衝突エネルギーを吸収する乗員保護装置であって、
    自車両の前方に存在する物体までの距離と、自車両の走行速度とから、自車両と前記物体との衝突を予測し、衝突が予測された場合には、乗員上体の姿勢変化を検出し、検出した姿勢変化に応じて乗員に加わる二次衝突エネルギーの吸収量を変化させる
    ことを特徴とする乗員保護装置。
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