以下、本発明の実施形態について説明する。
図1は、本発明の一実施形態が適用されたプリンタの主要部を示す概略構成図である。
図1に示すように、プリンタ1は、本体筐体10の内部に、感光体110と、帯電器120と、露光器130と、現像器140Y,140M,140C,140Kと、クリーニング装置150と、中間転写ベルト210と、一次転写器220と、二次転写器230と、ベルトクリーニング装置240と、定着器250と、用紙トレー260とが配備されて構成されている。感光体110の表面は、熱や磨耗に対する強度が高いシロキサン系の樹脂で形成されており、この感光体110は、本発明における像担持体の一例に相当する。また、帯電器120は、本発明における帯電器の一例に相当し、同様に、現像器140Y,140M,140C,140Kは、本発明における現像器の一例に相当し、一次転写器220および二次転写器230は、本発明における転写器の一例に相当する。
尚、このプリンタ1は、フルカラーの印刷が可能となっており、現像器140Y,140M,140C,140Kの末尾に付された符号Y、M、C、およびKは、それぞれイエロー、マゼンタ、シアン、および黒のトナー像を形成するための現像器であることを示している。
このプリンタ1の画像形成における基本動作について説明する。
まず、画像を形成するための準備として、ベルトクリーニング装置240と二次定着器230が中間転写ベルト210から離れた所定の位置に退避される。また、感光体110が矢印A方向に回転され、感光体110の表面に、接触式の帯電器120によって所定の電荷が付与される。
続いて、画像がイエロー、マゼンタ、シアン、および黒に色分解された色分解画像を表す画像データが露光器130に与えられ、画像形成プロセスが開始される。まずは、イエローのトナー像が形成される。
露光器130により、感光体110表面にイエローの色分解画像に相当する露光光が照射されて静電的な潜像(静電潜像)が形成される。その静電潜像は、現像器140Yによって循環供給される現像剤に含まれたイエローのトナーで、現像器140Yと感光体110との間の現像位置に印加された現像電圧によって現像されて、感光体110上にイエローのトナー像が形成される。そのトナー像は一次転写器220により中間転写ベルト160に転写される。イエローのトナー像が中間転写ベルト210上に転写されると、クリーニング装置150によって、感光体110に残存する残留トナーが掻き取られて除去される。このクリーニング装置150については後で詳しく説明する。
また、中間転写ベルト210は、駆動ロール211によって矢印B方向に循環移動されており、中間転写ベルト210上に転写されたイエローのトナー像が一次転写器220の位置に戻ってくるタイミングに合わせて、次の色であるマゼンタのトナー像が一次転写器220に到達するように、マゼンタのトナー像形成が行われる。こうして形成されたマゼンタのトナー像は、一次転写器220において中間転写ベルト210上のイエローのトナー像の上に重ねて転写される。
続いて、クリーニング装置150によって感光体110上の残留トナーが除去され、シアンおよび黒のトナー像形成が上記と同様のタイミングで行われ、一次転写器220おいて中間転写ベルト210のイエローおよびマゼンタのトナー像の上に順次に重ねて転写される。
こうして、中間転写ベルト210上に多色トナー像が転写されると、ベルトクリーニング装置240と二次定着器230が中間転写ベルト210に接する位置に移動され、給紙トレー260内に収容された記録用紙300が搬送ロール261によって二次定着器230に向けて搬送される。中間転写ベルト210上に転写された多色トナー像は、二次定着器230により記録用紙300上に二次転写される。二次転写後の中間転写ベルト210上に残存する残留トナーは、ベルトクリーニング装置240で掻き取られる。
記録用紙300上に転写された多色トナー像は、記録用紙300とともに定着器250に向けて搬送され、定着器250により記録用紙300上に定着される。以上のような一連の処理によってカラー画像が形成される。
ここで、プリンタ1における本発明の一実施形態としての特徴は、図1に示すクリーニング装置150にある。以下では、このクリーニング装置150について説明する。
図2は、図1に示す感光体とクリーニング装置の一部を示す図である。尚、以下では、クリーニング装置150を構成する各種要素において、感光体110に対向する側の面を表面、感光体110から遠い側の面を裏面と称する。
図2に示すクリーニング装置150は、感光体110に当接して、残留トナー141を掻き取るブレード部151と、図1の本体筐体10から繋がる筐体部分11に取り付けられ、ブレード部151を支持する支持部152とを備えている。本体筐体10および筐体部分11は、本発明にいう本体筐体の一例にあたる。
ブレード部151は、本発明におけるブレードの一例に相当するものであり、感光体110の表面層110aと当接位置110bにおいて当接して、残留トナー141を掻き取るクリーニング層151aと、クリーニング層151aの裏面を覆って、クリーニング層151aで生じる振動を吸収する吸収層151bとで構成される2層構造を有している。このような2層構造を有するブレード部151を適用することによって、クリーニング層151aで発生する振動が吸収層151bで効率よく吸収され、ブレード部151で生じる異音(ブレード鳴き)を抑えることができる。
また、ブレード部115は、クリーニング層151aの厚さW1よりも、吸収層151bの厚さW2の方が厚くなっている。このような構成を有することにより、ブレード部151の、感光体110の回転方向(矢印A方向)への追随性を向上させることができ、効率よくクリーニングを行うことができる。
また、感光体110の表面層110aは、上述したように、磨耗しにくいシロキサン系樹脂で構成されている。このため、その表面層110aをクリーニングするブレード部115(特には、クリーニング層151a)は、JIS−A硬度で80度以上の硬度を有している。このようなブレード部115を適用することによって、ブレード部115自体の磨耗や欠けを防ぐことができる。
また、ブレード部151は10%以上かつ30%以下の反発弾性力を有し、感光体110と当接する際の当接角θ1が8°以下である。このようなブレード部151を適用することによって、感光体110とブレード部151との間で生じる摩擦力を抑え、ブレード鳴きをさらに軽減させることができる。
ところで、ブレード部151は、感光体110の表面層110aの強度に合わせて、高硬度なウレタン材料等で構成されている。一般的に、硬度が高い物体は永久変形しやすいため、ブレード部151が筐体部分11に直接取り付けられたクリーニング装置でクリーニングを行うと、長期間使用しているうちにブレード部151にへたりが生じ、残留トナーがクリーニング層151aをすり抜けてしまって、クリーニング精度が低下してしまう。このような不具合を解消するため、クリーニング装置150には、ブレード部151が筐体部分11とを間接的に結ぶ支持部152が備えられている。
図2に示す支持部152は、ブレード部151の保持層151bの裏面全体を覆う先端部分152aと、筐体部分11に取り付けられた後端部分152cと、ブレード部151および筐体部分11と接触していないむき出しの中央部分152bとで構成されている。また、この支持部152は、振動を吸収するとともに、変形してもすぐに元の形状に戻る特性を有する弾性部材で形成されている。支持部152の先端部分152aは、本発明における補助部材の一例に相当し、中央部分152bと後端部分152cとを合わせたものは、本発明における支持部の一例にあたるとともに、本発明にいう弾性部材の一例に相当する。
支持部152の先端部分152aは、ブレード部151の保持層151bを覆うことによって、ブレード部151の変形を元に戻す役割を担う。ブレード部151は、感光体110上の残留トナー141を掻き取る際に変形するが、先端部分152aの弾性によってすぐに元の形状に戻されるため、永久的なへたりが防止される。
また、支持部152の中央部分152bは、ブレード部151が感光体110に当接することによる応力を受け、ブレード部151や後端部分152cにかかる力を調整する。このような中央部分152bを設けることによって、ブレード部151が感光体110に一定の押圧力で押し付けられ、安定したクリーニングを行うことができる。
以上のように、本実施形態のクリーニング装置150を適用することによって、強度が高い像担持体に合わせてブレードの硬度を上げた場合であっても、ブレードの永久変形が防止され、長期に渡って精度良くクリーニングを行うことができる。さらに、このようなクリーニング装置150を備えたプリンタ1を用いることによって、長期に渡って高画質な画像を形成することができる。
ここで、本発明におけるブレードは、感光体が最表層に、電荷輸送能を有する構造単位をもち、かつ架橋構造を有する樹脂を含有する表面層から構成されている保護層を備えたことを特徴とし、保護層が、架橋構造を有する樹脂としてメチロール基を有するフェノール誘導体及び/またはシロキサン系樹脂で構成し、水酸基、カルボキシル基、アルコキシシリル基、エポキシ基、チオール基及びアミノ基から選択される少なくとも1種を有する電荷輸送材料とを含有する画担持体に当節するものであることが望ましく、長期にわたり良好な電気特性と感光体の磨耗・傷による画質劣化が保たれる。
また、像担持体の強度を向上させるのに伴い、本発明にいうブレードは、JIS−A硬度が80度以上の物質で構成されたものであることが好ましい。高い硬度を有するブレードを用いることによって、ブレード自体の磨耗を防ぎ、精度よくクリーニングを行うことができる。図2のクリーニング装置150は、最表層に、電荷輸送能を有する構造単位をもち、かつ架橋構造を有する樹脂を含有する表面層から構成されている保護層を備えた感光体110を、JIS−A硬度が80度以上のウレタン材料で構成されたブレード部151でクリーニングするため、磨耗による劣化を防止するとともに、精度よくクリーニングを行うことができる。
また、本発明におけるブレードは、像担持体に当接する第1層部と、補助部材によって覆われる、第1層部の硬度よりも低い硬度を有する第2層部とで構成されたものであることが好ましい。図2のクリーニング装置150においては、ブレード部151のクリーニング層151aが、本発明にいう第1層部一例にあたり、吸収層151bが、本発明にいう第2層部の一例に相当する。このような2層構造を有することによって、第1層部で発生する振動を第2層部で吸収し、ブレード鳴きを抑えることができる。
また、本発明にいうブレードは、第1層部の厚さよりも第2層部の厚さの方が厚いものであることが好ましい。この第1層部の厚さは、ブレード全体の厚さの1/4程度であることがさらに好ましい。このような構成を有することによって、ブレードの追随性を向上させ、効率よくクリーニングを行うことができる。
また、本発明における支持部が、弾性部材のみからなるものであることが好適である。補助部材でブレードのたわみの恒久化を抑制し、弾性部材でブレードなどにかかる力を調整することによって、ブレードが像担持体に一定の押圧力で押し付けられ、安定したクリーニングを行うことができる。
また、補助部材を構成する物質は弾性部材に限らず、高硬度な物質を用いてもよい。図2のクリーニング装置150においては、本発明にいう補助部材の一例にあたる先端部分152aを中央部分152b等と同じ弾性部材で構成し、その弾性部材の弾性によってブレード部151の変形を戻してたわみの恒久化を抑えているが、ブレードを高硬度な物質で構成された補助部材で固定して、ブレードの変形自体を抑えるものであってもよい。しかし、ブレード部151のたわみの恒久化を避ける為に、補助部材は弾性部材で構成されることが好ましい。
また、本発明におけるブレードが、像担持体に当接する当接位置から像担持体の回転の下流側へ延びる、像担持体表面に対して8°以下の当接角で当接する、23℃での反発弾性率が10%以上かつ30%以下とすることで、像担持体とブレードとの間で生じる摩擦力を抑え、ブレード鳴きをさらに軽減させることができる。
このように、本発明のクリーニング装置によると、長期に渡って精度よくクリーニングを行うことができる。また、本発明の画像形成装置によると、クリーニング装置によって、像担持体上の残留トナーが長期に渡って精度よくクリーニングされるため、長期に渡って高画質な画像を形成することができる。
以上で、本発明における第1実施形態の説明を終了し、本発明の第2実施形態の説明を行う。尚、重複を避けるため、以下では、第1実施形態との相違点に注目し、同じ要素については同じ符号を付して説明を省略する。
図3は、本実施形態における感光体とクリーニング装置の一部を示す図である。
本実施形態のクリーニング装置150´には、第1実施形態のクリーニング装置150と同様のブレード部151と、ブレード部151を支持する支持部153と、筐体部分11と支持部153とを結ぶ弾性部154とが備えられており、支持部153は、ブレード部151の裏面を覆う先端部分153aと、筐体部分11に回動自在に取り付けられた後端部分153cと、後端部分152cから分岐し、弾性部154に取り付けられた分岐部分153bとで構成されている。
ここで、例えば、支持部153に分岐部分153bおよび弾性部154が設けられていない場合、ブレード部151が感光体110を押圧する力が大きくなりすぎてしまって、クリーニング層151aの磨耗を進めてしまったり、ブレード部151の押圧力が小さすぎて、十分にクリーニングを行うことができない恐れがある。分岐部分153bに取り付けられた弾性部154は、第1実施形態の中央部分152bと同様に、ブレード部151が感光体110に当接することによる応力を受けて、ブレード部151や後端部分153cにかかる力を調整する。したがって、後端部分153cに過度な力かかって、筐体部分11との繋ぎの部分が破断してしまうなどという不具合を防ぎ、一定の安定した押圧力でクリーニングを行うことができる。
また、本実施形態のクリーニング装置150´においては、ブレード部151と感光体110との当接角θ2は、4°以上かつ15°以下であることが好ましい。このようなブレード部151を適用することによって、ブレード鳴きを効率よく抑えることができる。
このように、本実施形態のクリーニング装置150´を用いることによっても、ブレード部151のへたりなどを防止して、長期に渡って精度良くクリーニングを行うことができる。
ここで、本発明における支持部は、本体筐体に回動自在につながるとともに補助部材に固定的につながる第1の腕と、第1の腕から分岐した第2の腕と、第2の腕と前記本体筐体との間に介在して第1の腕の回動を抑制する弾性部材とを有するものであることが好ましい。図3の支持部153では、先端部分153aは、本発明における補助部材の一例にあたり、後端部分153cは、本発明にいう第1の腕の一例にあたり、分岐部分153bは、本発明にいう第2の腕の一例に相当する。また、弾性部154は、本発明における弾性部材の一例に相当する。第2の腕を支持する弾性部材がブレードの応力を受けて、ブレードや第1の腕にかかる力を調整することによって、第1の腕をに過度な力かかってしまうなどという不具合を防ぎ、一定の安定した押圧力でクリーニングを行うことができる。
また、本発明におけるブレードが、像担持体に当接する当接位置から像担持体の回転の下流側へ延びる、像担持体表面に対して4°以上かつ15°以下の当接角で当接するものであることが好ましい。このような構成を有することによって、像担持体とブレードとの間の摩擦を抑え、ブレード鳴きを軽減することができる。
このように、第1の腕と第2の腕とに分岐された支持部を備えたクリーニング装置を用いることによっても、長期に渡って精度良くクリーニングを行うことができる。
以上で、本発明の実施形態の説明を終了する。
ここで、上記では、像担持体に当接する第1層と、補助部材によって覆われる第2層とで構成された2層構造のブレードの例について説明したが、本発明にいうブレードは、第1層のみで構成されたものであってもよく、3層以上で構成されたものであってもよい。
続いて、本発明の実施例について説明する。
以下では、図2に示す第1実施形態に相応した実施例と、図3に示す第2実施形態に相応した実施例とに分けて説明する。
まずは、第1実施形態に相応した実施例について説明する。
本発明の感光体について説明する。
図2に示す感光体110は、導電性支持体としては、例えば、アルミニウム、銅、亜鉛、ステンレス、クロム、ニッケル、モリブデン、バナジウム、インジウム、金、白金等の金属又は合金を用いた金属板、金属ドラム、金属ベルト、あるいは導電性ポリマー、酸化インジウム等の導電性化合物やアルミニウム、パラジウム、金等の金属又は合金を塗布、蒸着、あるいはラミネートした紙、プラスチックフィルム、ベルト等が挙げられる。感光ドラムがレーザープリンターに使用される場合には、レーザーの発振波長としては350nmから850nmのものが好ましく、短波長のものほど解像度に優れるため好ましい。さらに、本発明の感光体を用いることでブレードクリーナーや転写ベルトとの摩擦係数が低減できるため、感光体の回転がスムーズになり、バンディングなどの画質欠陥を防止できる。さらにまた、感光体などの駆動モーターにかかる負荷が低減でき、低消費電力化することにも効果がある。また、レーザー光を照射する際に生じる干渉縞を防止するために、支持体表面は、中心線平均粗さRaで0.04μm〜0.5μmに粗面化することが好ましい。粗面化の方法としては、研磨剤を水に懸濁させて支持体に吹き付けることによって行う湿式ホーニング、あるいは、回転する砥石に支持体を圧接し、連続的に研削加工を行うセンタレス研削、陽極酸化などが好ましい。(DUC,ECLの記述も加える)Raが0.04μmより小さいと、鏡面に近くなるので干渉防止効果が得られなくなり、Raが0.5μmより大きいと、本発明による被膜を形成しても画質が粗くなって不適である。非干渉光を光源に用いる場合には、干渉縞防止の粗面化は特に必要なく、基材の表面の凹凸による欠陥の発生が防げるため、より長寿命化に適する。
陽極酸化処理はアルミニウムを陽極とし電解質溶液中で陽極酸化することによりアルミニウム表面に酸化膜を形成するものである。電解質溶液としては硫酸溶液、シュウ酸溶液等が挙げられる。しかし、そのままの多孔質陽極酸化膜は化学的に活性であり、汚染され易く、環境による抵抗変動も大きい。そこで、陽極酸化膜の微細孔を加圧水蒸気または沸騰水中(ニッケル等の金属塩を加えてもよい)で水和反応による体積膨張でふさぎ、より安定な水和酸化物に変える封孔処理を行う。
陽極酸化膜の膜厚については0.3〜15μmが好ましい。0.3μmより薄い場合は注入に対するバリア性が乏しく効果が十分でない。また、15μmより厚い場合は繰り返し使用による残留電位の上昇を招く。
リン酸、クロム酸及びフッ酸からなる酸性処理液による処理は以下の様に実施される。酸性処理液におけるリン酸、クロム酸およびフッ酸の配合割合は、リン酸が、10〜11重量%の範囲、クロム酸が3〜5重量%の範囲、フッ酸が0.5〜2重量%の範囲であって、これらの酸全体の濃度は、13.5〜18重量%の範囲が好ましい。処理温度は、42〜48℃であるが、処理温度を高く保つことにより、一層速く、かつ厚い被膜を形成することができる。被膜の膜厚については0.3〜15μmが好ましい。0.3μmより薄い場合は注入に対するバリア性が乏しく効果が十分でない。また、15μmより厚い場合は繰り返し使用による残留電位の上昇を招く。
ベーマイト処理は、90〜100℃の純水中に5〜60分間浸漬するか、90〜120℃の加熱水蒸気に5〜60分間接触させることにより行うことができる。被膜の膜厚については0.1〜5μmが好ましい。これをさらにアジピン酸、硼酸、硼酸塩、燐酸塩、フタル酸塩、マレイン酸塩、安息香酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩などの皮膜溶解性の低い電解質溶液を用いて陽極酸化処理してもよい。
また、所望により基材と感光層の間に中間層を形成することもできる。用いられる材料としてはジルコニウムキレート化合物、ジルコニウムアルコキシド化合物、ジルコニウムカップリング剤などの有機ジルコニウム化合物、チタンキレート化合物、チタンアルコキシド化合物、チタネートカップリング剤などの有機チタン化合物、アルミニウムキレート化合物、アルミニウムカップリング剤などの有機アルミニウム化合物のほか、アンチモンアルコキシド化合物、ゲルマニウムアルコキシド化合物、インジウムアルコキシド化合物、インジウムキレート化合物、マンガンアルコキシド化合物、マンガンキレート化合物、スズアルコキシド化合物、スズキレート化合物、アルミニウムシリコンアルコキシド化合物、アルミニウムチタンアルコキシド化合物、アルミニウムジルコニウムアルコキシド化合物、などの有機金属化合物、とくに有機ジルコニウム化合物、有機チタニル化合物、有機アルミニウム化合物は残留電位が低く良好な電子写真特性を示すため、好ましく使用される。また、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス2メトキシエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、γ−2−アミノエチルアミノプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプロプロピルトリメトキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、β−3,4−エポキシシクロヘキシルトリメトキシシラン等のシランカップリング剤を含有させて使用することができる。さらに、従来より下引き層に用いられるポリビニルアルコール、ポリビニルメチルエーテル、ポリ−N−ビニルイミダゾール、ポリエチレノキシド、エチルセルロース、メチルセルロース、エチレン−アクリル酸共重合体、ポリアミド、ポリイミド、カゼイン、ゼラチン、ポリエチレン、ポリエステル、フェノール樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、エポキシ樹脂、ポリビニルピロリドン、ポリビニルピリジン、ポリウレタン、ポリグルタミン酸、ポリアクリル酸等の公知の結着樹脂を用いることもできる。これらの混合割合は、必要に応じて適宜設定することができる。また、下引き層中には電子輸送性顔料を混合/分散して使用することもできる。電子輸送性顔料としては、特開昭47−30330号公報に記載のペリレン顔料、ビスベンズイミダゾールペリレン顔料、多環キノン顔料、インジゴ顔料、キナクリドン顔料等の有機顔料、また、シアノ基、ニトロ基、ニトロソ基、ハロゲン原子等の電子吸引性の置換基を有するビスアゾ顔料やフタロシアニン顔料等の有機顔料、酸化亜鉛、酸化チタン等の無機顔料が上げられる。これらの顔料の中ではペリレン顔料、ビスベンズイミダゾールペリレン顔料と多環キノン顔料、酸化亜鉛、酸化チタンが、電子移動性が高いので好ましく使用される。また、これらの顔料の表面は、分散性、電荷輸送性を制御する目的で上記カップリング剤や、バインダーなどで表面処理しても良い。電子輸送性顔料は多すぎると下引き層の強度が低下し、塗膜欠陥を生じるため95重量%以下、好ましくは90重量%以下で使用される。混合/分散方法は、ボールミル、ロールミル、サンドミル、アトライター、超音波等をもちいる常法が適用される。混合/分散は有機溶剤中で行われるが、有機溶剤としては、有期金属化合物や樹脂を溶解し、また、電子輸送性顔料を混合/分散したときにゲル化や凝集を起こさないものであれば如何なるものでも使用できる。例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、n−ブタノール、ベンジルアルコール、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、酢酸n−ブチル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、メチレンクロライド、クロロホルム、クロルベンゼン、トルエン等の通常の有機溶剤を単独あるいは2種以上混合して用いることができる。下引き層の厚みは一般的には、0.1〜30μm、好ましくは0.2〜25μmが適当である。また、下引き層を設けるときに用いる塗布方法としては、ブレードコーティング法、マイヤーバーコーティング法、スプレーコーティング法、浸漬コーティング法、ビードコーティング法、エアーナイフコーティング法、カーテンコーティング法等の通常の方法を用いることができる。塗布したものを乾燥させて下引き層を得るが、通常、乾燥は溶剤を蒸発させ、製膜可能な温度で行われる。特に、酸性溶液処理、ベーマイト処理を行った基材は、基材の欠陥隠蔽力が不十分となり易いため、中間層を形成することが好ましい。
次に電荷発生層について説明する。
電荷発生材料は、ビスアゾ、トリスアゾなどのアゾ顔料、ジブロモアントアントロンなどの縮環芳香族顔料、ペリレン顔料、ピロロピロール顔料、フラトシアニンフタロシアニン顔料等の有機顔料や、三方晶セレン、酸化亜鉛などの無機顔料など既知のもの全て使用することができるが、特に380nm〜500nmの露光波長を用いる場合には無機顔料が好ましく、とくに700nm〜800nmの露光波長を用いる場合には、金属及び無金属フタロシアニン顔料が好ましい。その中でも、特開平5−263007号公報及び、特開平5−279591号公報に開示されたヒドロキシガリウムフタロシアニン、特開平5−98181号公報に開示されたクロロガリウムフタロシアニン、特開平5−140472号公報及び、特開平5−140473号公報に開示されたジクロロスズフタロシアニン、特開平4−189873号公報及び、特開平5−43813号公報に開示されたチタニルフタロシアニンが特に好ましい。
結着樹脂としては、広範な絶縁性樹脂から選択することができる、また、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリビニルアントラセン、ポリビニルピレン、ポリシランなどの有機光導電性ポリマーから選択することもできる。好ましい結着樹脂としては、ポリビニルブチラール樹脂、ポリアリレート樹脂(ビスフェノールAとフタル酸の重縮合体等)、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、フェノキシ樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、ポリビニルピリジン樹脂、セルロース樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、カゼイン、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルピロリドン樹脂等の絶縁性樹脂をあげることができるが、これらに限定されるものではない。これらの結着樹脂は単独あるいは2種以上混合して用いることができる。
電荷発生材料と結着樹脂の配合比は(重量比)は10:1〜1:10の範囲が好ましい。またこれらを分散させる方法としてはボールミル分散法、アトライター分散法、サンドミル分散法等の通常の方法を用いることができるが、この際、分散によって該の結晶型が変化しない条件が必要とされる。ちなみに本発明で実施した前記の分散法のいずれについても分散前と結晶型が変化していないことが確認されている。さらにこの分散の際、粒子を0.5μm以下、好ましくは0.3μm以下、さらに好ましくは0.15μm以下の粒子サイズにすることが有効である。またこれらの分散に用いる溶剤としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、n−ブタノール、ベンジルアルコール、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、酢酸n−ブチル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、メチレンクロライド、クロロホルム、クロルベンゼン、トルエン等の通常の有機溶剤を単独あるいは2種以上混合して用いることができる。また、本発明で用いる電荷発生層の厚みは一般的には、0.1〜5μm、好ましくは0.2〜2.0μmが適当である。また、電荷発生層を設けるときに用いる塗布方法としては、ブレードコーティング法、マイヤーバーコーティング法、スプレーコーティング法、浸漬コーティング法、ビードコーティング法、エアーナイフコーティング法、カーテンコーティング法等の通常の方法を用いることができる。
次いで、電荷輸送層について説明する。
電荷輸送層としては、公知の技術によって形成されたものを使用できる。それらの電荷輸送層は、電荷輸送材料と結着樹脂を含有して形成されるか、あるいは高分子電荷輸送材を含有して形成される。
電荷輸送材料としては、p−ベンゾキノン、クロラニル、ブロマニル、アントラキノン等のキノン系化合物、テトラシアノキノジメタン系化合物、2,4,7−トリニトロフルオレノン等のフルオレノン化合物、キサントン系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノビニル系化合物、エチレン系化合物等の電子輸送性化合物、トリアリールアミン系化合物、ベンジジン系化合物、アリールアルカン系化合物、アリール置換エチレン系化合物、スチルベン系化合物、アントラセン系化合物、ヒドラゾン系化合物などの正孔輸送性化合物があげられる。これらの電荷輸送材料は単独または2種以上混合して用いることができるが、これらに限定されるものではない。また、これらの電荷輸送材料は単独あるいは2種以上混合して用いることができるが、モビリティーの観点から、以下の構造のものが好ましい。
(式中、R14は、水素原子またはメチル基を示す。また、nは1又は2を意味する。Ar6及びAr7は置換又は未置換のアリール基あるいは、−C(R18)=C(R19)(R20)、―CH=CH―CH=C(Ar)2を表わし、置換基としてはハロゲン原子、炭素数が1〜5の範囲のアルキル基、炭素数が1〜5の範囲のアルコキシ基、又は炭素数が1〜3の範囲のアルキル基で置換された置換アミノ基を示す。)
(式中、R15、R15’は同一でも異なってもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5のアルコキシ基、を表わす。R16、R16’、R17、R17’は同一でも異なってもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5のアルコキシ基、炭素数1〜2のアルキル基で置換されたアミノ基、置換又は未置換のアリール基、あるいは、−C(R18)=C(R19)(R20)、―CH=CH―CH=C(Ar)2を表わし、R18、R19、R20は水素原子、置換又は未置換のアルキル基、置換又は未置換のアリール基を表す。mおよびnは0〜2の整数である。)
(式中、R21は水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5のアルコキシ基、置換又は未置換のアリール基、または、―CH=CH―CH=C(Ar)2を表す。Arは、置換又は未置換のアリール基を表す。R22、R23は同一でも異なってもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5のアルコキシ基、炭素数1〜2のアルキル基で置換されたアミノ基、置換又は未置換のアリール基を表す。)
さらに電荷輸送層に用いる結着樹脂は、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体、塩化ビニリデン−アクリロニトリル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸共重合体、シリコン樹脂、シリコン−アルキッド樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、スチレン−アルキッド樹脂や、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリシラン、特開平8−176293号公報や特開平8−208820号公報に示されているポリエステル系高分子電荷輸送材など高分子電荷輸送材を用いることもできる。これらの結着樹脂は単独あるいは2種以上混合して用いることができる。電荷輸送材料と結着樹脂との配合比(重量比)は10:1〜1:5が好ましい。
また、高分子電荷輸送材を単独で用いることもできる。高分子電荷輸送材としては、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリシランなどの電荷輸送性を有する公知のものを用いることができる。特に、特開平8−176293号公報や特開平8−208820号公報に示されているポリエステル系高分子電荷輸送材は、高い電荷輸送性を有しており、とくに好ましいものである。高分子電荷輸送材はそれだけでも電荷輸送層として使用可能であるが、上記結着樹脂と混合して成膜してもよい。
本発明で用いる電荷輸送層の厚みは一般的には、5〜50μm、好ましくは10〜30μmが適当である。塗布方法としては、ブレードコーティング法、マイヤーバーコーティング法、スプレーコーティング法、浸漬コーティング法、ビードコーティング法、エアーナイフコーティング法、カーテンコーティング法等の通常の方法を用いることができる。さらに電荷輸送層を設けるときに用いる溶剤としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロルベンゼン等の芳香族炭化水素類、アセトン、2−ブタノン等のケトン類、塩化メチレン、クロロホルム、塩化エチレン等のハロンゲン化脂肪族炭化水素類、テトラヒドロフラン、エチルエーテル等の環状もしくは直鎖状のエーテル類等の通常の有機溶剤を単独あるいは2種以上混合して用いることができる。また、複写機中で発生するオゾンや酸化性ガス、あるいは光、熱による感光体の劣化を防止する目的で、感光層中に酸化防止剤、光安定剤、熱安定剤等の添加剤を添加することができる。例えば、酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール、ヒンダードアミン、パラフェニレンジアミン、アリールアルカン、ハイドロキノン、スピロクロマン、スピロインダノンおよびそれらの誘導体、有機硫黄化合物、有機燐化合物等があげられる。光安定剤の例としては、ベンゾフェノン、ベンゾトリアゾール、ジチオカルバメート、テトラメチルピペリジン等の誘導体があげられる。また、感度の向上、残留電位の低減、繰り返し使用時の疲労低減等を目的として、少なくとも1種の電子受容性物質を含有させることができる。本発明の感光体に使用可能な電子受容物質としては、例えば、無水コハク酸、無水マレイン酸、ジブロム無水マレイン酸、無水フタル酸、テトラブロム無水フタル酸、テトラシアノエチレン、テトラシアノキノジメタン、o−ジニトロベンゼン、m−ジニトロベンゼン、クロラニル、ジニトロアントラキノン、トリニトロフルオレノン、ピクリン酸、o−ニトロ安息香酸、p−ニトロ安息香酸、フタル酸等や、後述する一般式(I)で示される化合物をあげることができる。これら
のうち、フルオレノン系、キノン系やCl,CN,NO2等の電子吸引性置換基を有するベンゼン誘導体が特に好ましい。
また本発明の感光体は最表面層にのフッ素樹脂粒子の含有によりすることが好ましい。フッ素樹脂粒子を含有するこで、クリーニングブレードと感光体の摺擦摩擦力が低減し、感光体摩耗を抑制し、球状のトナーを用いた場合に於いても良好なクリーニング性を維持する事が可能である。そして本発明の不定形複合微粒子と併用することで、長寿命で画像流れも生じない画像形成装置を得ることができる。
感光体へのフッ素系樹脂の電荷輸送層中含量は、電荷輸送層全量に対し、0.1〜40wt%が適当であり、1〜30wt%がより好ましく、特には3〜10%が好ましい。含量が0.1wt%未満ではフッ素系樹脂粒子の分散による摩擦低減効果が接触型帯電器との組合せに於いては十分でなく、一方、40wt%を越えると光通過性及び電荷輸送性顕著に低下し、かつ、繰返し使用による残留電位の上昇が生じてくる。黒用の像担持体のフッ素系樹脂の電荷輸送層中含量は、カラー用の像担持体のフッ素系樹脂の電荷輸送層中含量よりも少なく、且つ0〜3wt%が適当であり、0〜2wt%が適当である。3wt%よりも多い場合は、高速画像形成時電荷移動速度が低下し易い。
本発明で用いるフッ素系樹脂粒子としては、4フッ化エチレン樹脂、3フッ化塩化エチレン樹脂、6フッ化プロピレン樹脂、フッ化ビニル樹脂、フッ化ビニリデン樹脂、2フッ化2塩化エチレン樹脂およびそれらの共重合体の中から1種あるいは2種以上を適宜選択するのが望ましいが、特に、4フッ化エチレン樹脂、フッ化ビニリデン樹脂が好ましい。前記フッ素系樹脂の一次粒径は0.05〜1μmが良く、更に好ましくは0.1〜0.5μmが好ましい。一次粒径が0.05μmを下回ると分散時の凝集が進みやすくなる。又、1μmを上回ると画質欠陥が発生しやすくなる。
次いで、最表面層に形成する保護層について説明する。
本発明の感光体としては表面層の傷などに対する耐性を持たせ長寿命化をはかるため高強度表面層を設けることが好ましい。この高強度表面層としては、バインダー樹脂中に導電性微粒子を分散したもの、通常の電荷輸送層材料にフッ素樹脂、アクリル樹脂などの潤滑性微粒子を分散させたもの、シリコンや、アクリルなどのハードコート剤を使用することができるが、膜強度の観点から、電荷輸送性を有し、架橋構造を有するものが好ましい。感光体の表面(最表面層)に架橋構造を有する樹脂が含まれるために、表面の硬度が高く耐磨耗性に優れ、本発明でのキャリア進入抑制効果とあわせることでクリーニングブレードの摺擦により起こる表面の傷を大幅に抑制させることが出来る。
架橋構造を形成するものとしては種々の材料を用いることが出来るが、特性上フェノール樹脂、シロキサン樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂などが好ましく、特にフェノール樹脂またはシロキサン系樹脂からなるものが好ましい。なお、保護層には、架橋構造を有する樹脂以外にも必要に応じて、架橋構造を有さないバインダー樹脂や、導電性微粒子、また、フッ素樹脂やアクリル樹脂などからなる潤滑性微粒子が含まれていてもよく、最表面層の形成に際しては、必要に応じてシリコンや、アクリルなどのハードコート剤を使用することができる。また、最表面層の形成方法の詳細については後述するが、最表面層の形成には架橋構造を有する樹脂を構成する前駆体を少なくとも含む最表面層形成用溶液が用いられる。
さらに電気特性や画質維持性などの観点からは、架橋構造を有する樹脂は、電荷輸送性を有している(電荷輸送能を有する構造単位を含む)ことが好ましい。このような電荷輸送能を有する構造単位を含み、且つ、架橋構造を有する樹脂を構成する電荷輸送能を有する構造単位は、架橋構造を有する樹脂としてメチロール基を有するフェノール誘導体またはシロキサン系樹脂と、水酸基、カルボキシル基、アルコキシシリル基、エポキシ基、チオール基及びアミノ基から選択される少なくとも1種を有する電荷輸送材料とを含有するものがより好ましい。更に当該フェノール誘導体含有層の赤外吸収スペクトルがが下記式で示される条件を満たすことで電気特性に優れ高画質化が図れる為より好ましい。
(P2/P1)≦0.2
(式中、P1は1560cm−1〜1640cm−1に存在する最大吸収ピークの吸光度を、P2は1645cm−1〜1700cm−1に存在する最大吸収ピークの吸光度を示す。)
上記式で上述の効果が得られる理由は必ずしも明確ではないが、本発明者らは以下のように推察する。すなわち、メチロール基を有するフェノール誘導体を用いて塗膜を形成する過程において、フェノール誘導体のメチロール基のうちの一部は、ホルミル基等の酸化物になると考えられる。このようなホルミル基等の酸化物は、感光体中の電荷輸送を妨げるキャリアトラップとして作用し、感光体の電気特性を低下させると考えられる。ここで、赤外吸収スペクトルにおいて、1560cm−1〜1640cm−1に存在する最大吸収ピーク(P1)は、フェノール誘導体の芳香族C−C伸縮振動に相当する。また、1645cm−1〜1700cm−1に存在する最大吸収ピーク(P2)は、ホルミル基等の酸化物に由来すると考えられる。
つまり、吸光度比(P2/P1)が小さい感光体は、感光体中のホルミル基等の酸化物が少なく、キャリア輸送性に優れると考えられる。そして、本発明の電子写真感光体は、上記特定の材料を用い且つ吸光度比(P2/P1)が0.2以下であることから、電気特性に優れ、高画質化が達成できたと考えられる。なお、本発明の電子写真感光体は、電気特性と共に機械強度も優れており、この点も高画質化が達成できた要因であると考えられる。なお、吸光度比(P2/P1)は、0.18以下が好ましく、0.17以下がより好ましい。吸光度比(P2/P1)が0.2を超えると、キャリア輸送性が低下し、感光体の電気特性が不十分となり、画質が低下する。
上記メチロール基を有するフェノール誘導体としては、モノメチロールフェノール類、ジメチロールフェノール類若しくはトリメチロールフェノール類のモノマー、それらの混合物、それらがオリゴマー化されたもの、又はそれらモノマーとオリゴマーの混合物が挙げられる。このようなメチロール基を有するフェノール誘導体は、レゾルシン、ビスフェノール等、フェノール、クレゾール、キシレノール、パラアルキルフェノール、パラフェニルフェノール等の水酸基を1個含む置換フェノール類、カテコール、レゾルシノール、ヒドロキノン等の水酸基を2個含む置換フェノール類、ビスフェノールA、ビスフェノールZ等のビスフェノール類、ビフェノール類等、フェノール構造を有する化合物と、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド等とを、酸触媒又はアルカリ触媒下で反応させることで得られるもので、一般にフェノール樹脂として市販されているものも使用できる。なお、本明細書では、分子の構造単位の繰り返しが2〜20程度の比較的大きな分子をオリゴマーといい、それ以下のものをモノマーという。
上記酸触媒としては、硫酸、パラトルエンスルホン酸、リン酸等が用いられる。また、アルカリ触媒としては、NaOH、KOH、Ca(OH)2、Ba(OH)2等のアルカリ金属及びアルカリ土類金属の水酸化物やアミン系触媒が用いられる。
アミン系触媒としては、アンモニア、ヘキサメチレンテトラミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリエタノールアミン等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。塩基性触媒を使用した場合には、残留する触媒によりキャリアが著しくトラップされ、電子写真特性を悪化させる傾向がある。そのため、酸で中和するか、シリカゲル等の吸着剤や、イオン交換樹脂等と接触させることにより不活性化又は除去することが好ましい。
また、メチロール基を有するフェノール誘導体としては、フェノール樹脂が好ましく、レゾール型フェノール樹脂がより好ましい。
水酸基、カルボキシル基、アルコキシシリル基、エポキシ基、チオール基及びアミノ基から選択される少なくとも1種を有する電荷輸送材料としては、下記一般式(I)、(II)、(III)で示される化合物であることが好ましい。
F−[(X1)m1−(R1)m2−Y]m3 …式(I)
上記式(I)中、Fは正孔輸送能を有する化合物から誘導される有機基を、X1は酸素原子又は硫黄原子を、R1はアルキレン基(炭素数は1〜15が好ましく、1〜10がより好ましい)を、Yは水酸基、カルボキシル基(−COOH)、チオール基(−SH)又はアミノ基(−NH2)を示し、m1及びm2はそれぞれ独立に0又は1を、m3は1〜4の整数を示す。
F−[(X2)n1−(R2)n2−(Z)n3G]n4 …式(II)
上記式(II)中、Fは正孔輸送能を有する化合物から誘導される有機基を、X2は酸素原子又は硫黄原子を、R2はアルキレン基(炭素数は1〜15が好ましく、1〜10がより好ましい)を、Zはアルキレン基、酸素原子、硫黄原子、NH又はCOOを、Gはエポキシ基を、n1、n2及びn3はそれぞれ独立に0又は1を、n4は1〜4の整数を示す。
F−[D−Si(R3)(3−a)Qa]b …式(III)
式(III)中、Fは正孔輸送能を有する化合物から誘導される有機基を、Dは可とう性を有する2価の基を、R3は水素原子、置換若しくは未置換のアルキル基(炭素数は1〜15が好ましく、1〜10がより好ましい)又は置換若しくは未置換のアリール基(炭素数は6〜20が好ましく、6〜15がより好ましい)を、Qは加水分解性基を、aは1〜3の整数を、bは1〜4の整数を示す。
また、上記可とう性を有する2価の基Dとしては、具体的には、光電特性を付与するためのFの部位と、3次元的な無機ガラス質ネットワークの構築に寄与する置換ケイ素基とを結びつける働きを担う2価の基である。また、Dは、堅い反面もろさも有する無機ガラス質ネットワークの部分に適度な可とう性を付与し、膜としての機械的強靱さを向上させる働きを担う有機基構造を表す。Dとして具体的には、−CαH2α−、−CβH2β−2−、−CγH2γ−4−で表わされる2価の炭化水素基(ここで、αは1〜15の整数を表し、βは2〜15の整数を表し、γは3〜15の整数を表す)、−COO−、−S−、−O−、−CH2−C6H4−、−N=CH−、−(C6H4)−(C6H4)−、及び、これらの特性基を任意に組み合わせた構造を有する特性基、更にはこれらの特性基の構成原子を他の置換基と置換したもの等が挙げられる。また、上記加水分解性基Qとしては、アルコキシ基が好ましく、炭素数1〜15のアルコキシ基がより好ましい。
上記一般式(I)〜(III)で示される化合物における正孔輸送能を有する化合物か
ら誘導される有機基Fとしては、下記一般式(IV)で示される化合物が好ましい。
ここで、上記式(IV)中、Ar1、Ar2、Ar3及びAr4はそれぞれ独立に置換又
は未置換のアリール基を示し、Ar5は置換若しくは未置換のアリール基又はアリーレン基を示し、且つAr1〜Ar5のうち1〜4個は、上記式(I)〜(III)で示される
化合物における−[(X1)m1−(R1)m2−Y]、−[(X2)n1−(R2)n2−(Z)n3G]、又は、−[D−Si(R3)(3−a)Qa]で示される基と結合する。
上記化学式(IV)中のAr1、Ar2、Ar3、Ar4、Ar4、D−SiR3−aQ
aで表される基および整数kの好ましい組み合わせを表1に示す。なお、表中、XはAr1〜Ar5と結合したD−SiR3−aQaを表し、Meはメチル基を表し、Etはエチル基を表し、Prはプロピル基を表す。
また、保護層には、残留電位を下げるために導電性粒子を添加してもよい。導電性粒子としては、金属、金属酸化物及びカーボンブラック等が挙げられる。これらの中でも、金属又は金属酸化物がより好ましい。金属としては、アルミニウム、亜鉛、銅、クロム、ニッケル、銀及びステンレス等、又はこれらの金属をプラスチックの粒子の表面に蒸着したもの等が挙げられる。金属酸化物としては、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化スズ、酸化アンチモン、酸化インジウム、酸化ビスマス、スズをドープした酸化インジウム、アンチモンやタンタルをドープした酸化スズ、及びアンチモンをドープした酸化ジルコニウム等が挙げられる。これらは単独で用いることも、2種以上を組み合わせて用いることもできる。2種以上を組み合わせて用いる場合は、単に混合しても、固溶体や融着の形にしてもよい。導電性粒子の平均粒径は保護層の透明性の観点から、0.3μm以下が好ましく、0.1μm以下が特に好ましい。
また、保護層には、保護層の強度、膜抵抗等の種々の物性をコントロールするために、下記一般式(V−1)で示される化合物を添加することもできる。
Si(R30)(4−c)Qc …式(V−1)
上記式(V)中、R30は水素原子、アルキル基又は置換若しくは未置換のアリール基
を、Qは加水分解性基を、cは1〜4の整数を示す。
上記一般式(V)で示される化合物の具体例としては以下のようなシランカップリング
剤が挙げられる。シランカップリング剤としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン等の四官能性アルコキシシラン(c=4);メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、メチルトリメトキシエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、(トリデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロオクチル)トリエトキシシラン、(3,3,3−トリフルオロプロピル)トリメトキシシラン、3−(ヘプタフルオロイソプロポキシ)プロピルトリエトキシシラン、1H,1H,2H,2H−パーフルオロアルキルトリエトキシシラン、1H,1H,2H,2H−パーフルオロデシルトリエトキシシラン、1H,1H,2H,2H−パーフルオロオクチルトリエトシキシラン等の三官能性アルコキシシラン(c=3);ジメチルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、メチルフェニルジメトキシシラン等の二官能性アルコキシシラン(c=2);トリメチルメトキシシラン等の1官能アルコキシシラン(c=1)等を挙げることができる。膜の強度を向上させるためには3及び4官能のアルコキシシランが好ましく、可とう性、成膜性を向上させるためには1及び2官能のアルコキシシランが好ましい。
また、主にこれらのカップリング剤より作製されるシリコン系ハードコート剤も用いることができる。市販のハードコート剤としては、KP−85、X−40−9740、X−40−2239(以上、信越シリコーン社製)、及びAY42−440、AY42−441、AY49−208(以上、東レダウコーニング社製)等を用いることができる。
本発明にかかる架橋体は、上記の重合性単量体を加水分解することにより得ることができる。かかる加水分解における水の添加量は特に制限されないが、重合性単量体が有する全ての加水分解性基を加水分解するために必要な理論量の0.3〜5倍量であることが好ましく、0.5〜3倍量であることがより好ましい。
また、保護層には、その強度を高めるために、下記一般式(V−2)に示すような2つ
以上のケイ素原子を有する化合物を用いることも好ましい。
B−(Si(R31)(3−d)Qd)2 …式(V−2)
上記式(V−2)中、Bは2価の有機基を、R31は水素原子、アルキル基又は置換若
しくは未置換のアリール基を、Qは加水分解性基を、aは1〜3の整数を示す。
ここで、上記式(V−2)の具体例を表2に示す。
また、保護層には、ポットライフの延長、膜特性のコントロール、トルク低減、塗布膜表面の均一性向上のため、下記一般式(V−3)で示される繰り返し構造単位を持つ環状
化合物、若しくはその化合物からの誘導体を含有させることもできる。
上記式(V−3)中、A1及びA2は、それぞれ独立に一価の有機基を示す。
一般式(V−3)で示される繰り返し構造単位を持つ環状化合物としては、市販の環状
シロキサンを挙げることができる。具体的には、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン等の環状ジメチルシクロシロキサン類、1,3,5−トリメチル−1,3,5−トリフェニルシクロトリシロキサン、1,3,5,7−テトラメチル−1,3,5,7−テトラフェニルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7,9−ペンタメチル−1,3,5,7,9−ペンタフェニルシクロペンタシロキサン等の環状メチルフェニルシクロシロキサン類、ヘキサフェニルシクロトリシロキサン等の環状フェニルシクロシロキサン類、3−(3,3,3−トリフルオロプロピル)メチルシクロトリシロキサン等のフッ素原子含有シクロシロキサン類、メチルヒドロシロキサン混合物、ペンタメチルシクロペンタシロキサン、フェニルヒドロシクロシロキサン等のヒドロシリル基含有シクロシロキサン類、ペンタビニルペンタメチルシクロペンタシロキサン等のビニル基含有シクロシロキサン類等の環状のシロキサン等を挙げることができる。これらの環状シロキサン化合物は1種を単独で用いてもよいが、2種以上を混合して用いてもよい。
更に、電子写真感光体表面の耐汚染物付着性、潤滑性、硬度等を制御するために、各種微粒子を添加することもできる。それらは、単独で用いることもできるが、2種以上を併用してもよい。
微粒子の一例として、ケイ素原子含有微粒子を挙げることができる。ケイ素原子含有微粒子とは、構成元素にケイ素を含む微粒子であり、具体的には、コロイダルシリカ及びシリコーン微粒子等が挙げられる。ケイ素原子含有微粒子として用いられるコロイダルシリカは、平均粒子径が好ましくは1〜100nm、より好ましくは10〜30nmであり、酸性若しくはアルカリ性の水分散液、或いはアルコール、ケトン、エステル等の有機溶媒中に分散させたものから選ばれ、一般に市販されているものを使用することができる。保護層中のコロイダルシリカの固形分含有量は、特に限定されるものではないが、成膜性、電気特性、強度の面から保護層の固形分全量を基準として好ましくは0.1〜50質量%の範囲、より好ましくは0.1〜30質量%の範囲で用いられる。
ケイ素原子含有微粒子として用いられるシリコーン微粒子は、球状で、平均粒子径が好ましくは1〜500nm、より好ましくは10〜100nmであり、シリコーン樹脂粒子、シリコーンゴム粒子及びシリコーン表面処理シリカ粒子から選ばれ、一般に市販されているものを使用することができる。
シリコーン微粒子は、化学的に不活性で、樹脂への分散性に優れる小径粒子であり、さらに十分な特性を得るために必要とされる含有量が低いため、架橋反応を阻害することなく、電子写真感光体の表面性状を改善することができる。即ち、強固な架橋構造中に均一に取り込まれた状態で、電子写真感光体表面の潤滑性、撥水性を向上させ、長期間にわたって良好な耐摩耗性、耐汚染物付着性を維持することができる。保護層中のシリコーン微粒子の含有量は、保護層の固形分全量を基準として好ましくは0.1〜30質量%の範囲であり、より好ましくは0.5〜10質量%の範囲である。
また、その他の微粒子としては、4弗化エチレン、3弗化エチレン、6弗化プロピレン、弗化ビニル、弗化ビニリデン等のフッ素系微粒子や”第8回ポリマー材料フォーラム講演予稿集 p89”に示される様な、フッ素樹脂と水酸基を有するモノマーを共重合させた樹脂からなる微粒子、ZnO−Al2O3、SnO2−Sb2O3、In2O3−SnO2、ZnO−TiO2、ZnO−TiO2、MgO−Al2O3、FeO−TiO2、TiO2、SnO2、In2O3、ZnO、MgO等の半導電性金属酸化物を挙げることができる。また、同様な目的でシリコーンオイル等のオイルを添加することもできる。
シリコーンオイルとしては、例えば、ジメチルポリシロキサン、ジフェニルポリシロキサン、フェニルメチルシロキサン等のシリコーンオイル、アミノ変性ポリシロキサン、エポキシ変性ポリシロキサン、カルボキシル変性ポリシロキサン、カルビノール変性ポリシロキサン、メタクリル変性ポリシロキサン、メルカプト変性ポリシロキサン、フェノール変性ポリシロキサン等の反応性シリコーンオイル等を挙げることができる。これらは、保護層形成用塗布液に予め添加してもよいし、感光体を作製後、減圧、或いは加圧下等で含浸処理してもよい。
また、可塑剤、表面改質剤、酸化防止剤、光劣化防止剤等の添加剤を使用することもできる。可塑剤としては、例えば、ビフェニル、塩化ビフェニル、ターフェニル、ジブチルフタレート、ジエチレングリコールフタレート、ジオクチルフタレート、トリフェニル燐酸、メチルナフタレン、ベンゾフェノン、塩素化パラフィン、ポリプロピレン、ポリスチレン、各種フルオロ炭化水素等が挙げられる。保護層にはヒンダートフェノール、ヒンダートアミン、チオエーテル又はホスファイト部分構造を持つ酸化防止剤を添加することができ、環境変動時の電位安定性・画質の向上に効果的である。
酸化防止剤としては以下のような化合物が挙げられる。例えば、ヒンダートフェノール系としては、「Sumilizer BHT−R」、「Sumilizer MDP−S」、「Sumilizer BBM−S」、「Sumilizer WX−R」、「Sumilizer NW」、「Sumilizer BP−76」、「Sumilizer BP−101」、「Sumilizer GA−80」、「Sumilizer GM」、「Sumilizer GS」以上住友化学社製、「IRGANOX1010」、「IRGANOX1035」、「IRGANOX1076」、「IRGANOX1098」、「IRGANOX1135」、「IRGANOX1141」、「IRGANOX1222」、「IRGANOX1330」、「IRGANOX1425WL」、「IRGANOX1520L」、「IRGANOX245」、「IRGANOX259」、「IRGANOX3114」、「IRGANOX3790」、「IRGANOX5057」、「IRGANOX565」以上チバスペシャリティーケミカルズ社製、「アデカスタブAO−20」、「アデカスタブAO−30」、「アデカスタブAO−40」、「アデカスタブAO−50」、「アデカスタブAO−60」、「アデカスタブAO−70」、「アデカスタブAO−80」、「アデカスタブAO−330」以上旭電化製。ヒンダートアミン系としては、「サノールLS2626」、「サノールLS765」、「サノールLS770」、「サノールLS744」、「チヌビン144」、「チヌビン622LD」、「マークLA57」、「マークLA67」、「マークLA62」、「マークLA68」、「マークLA63」、「スミライザーTPS」、チオエーテル系としては、「スミライザーTP−D」、ホスファイト系としては、「マーク2112」、「マークPEP・8」、「マークPEP・24G」、「マークPEP・36」、「マーク329K」、「マークHP・10」が挙げられ、特にヒンダートフェノール、ヒンダートアミン系酸化防止剤が好ましい。さらに、これらは架橋膜を形成する材料と架橋反応可能な例えばアルコキシシリル基等の置換基で変性してもよい。
また、保護層には、ポリビニルブチラール樹脂、ポリアリレート樹脂(ビスフェノールAとフタル酸の重縮合体等)、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、フェノキシ樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、ポリビニルピリジン樹脂、セルロース樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、カゼイン、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルピロリドン樹脂等の絶縁性樹脂を含有させてもよい。この場合、絶縁性樹脂は、所望の割合で添加することができ、これにより、電荷輸送層6との接着性、熱収縮やハジキによる塗布膜欠陥等を抑制することができる。
保護層は、上述した構成材料を含有する保護層形成用塗布液を、電荷輸送層6上に塗布して硬化させることで形成される。
保護層は、上述した電荷輸送材料を用いて形成されることから、保護層形成用塗布液に触媒を添加すること、又は保護層形成用塗布液作製時に触媒を用いることが好ましい。用いられる触媒としては、塩酸、酢酸、リン酸、硫酸等の無機酸、蟻酸、プロピオン酸、シュウ酸、パラトルエンスルホン酸、安息香酸、フタル酸、マレイン酸等の有機酸、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム、アンモニア、トリエチルアミン等のアルカリ触媒、さらに系に不溶な固体触媒を用いることもできる。
また、メチロール基を有するフェノール誘導体から、合成時の触媒を除去するために、フェノール誘導体をメタノール、エタノール、トルエン、酢酸エチル等の適当な溶剤に溶解させ、水洗、貧溶剤を用いた再沈殿等の処理を行うか、イオン交換樹脂、又は無機固体を用いて処理を行うことが好ましい。
例えば、イオン交換樹脂としては、アンバーライト15、アンバーライト200C、アンバーリスト15E(以上、ローム・アンド・ハース社製);ダウエックスMWC−1−H、ダウエックス88、ダウエックスHCR−W2(以上、ダウ・ケミカル社製);レバチットSPC−108、レバチットSPC−118(以上、バイエル社製);ダイヤイオンRCP−150H(三菱化成社製);スミカイオンKC−470、デュオライトC26−C、デュオライトC−433、デュオライト−464(以上、住友化学工業社製);ナフィオン−H(デュポン社製)等の陽イオン交換樹脂;アンバーライトIRA−400、アンバーライトIRA−45(以上、ローム・アンド・ハース社製)等の陰イオン交換樹脂が挙げられる。
また、無機固体としては、Zr(O3PCH2CH2SO3H)2,Th(O3PCH2CH2COOH)2等のプロトン酸基を含有する基が表面に結合されている無機固体;スルホン酸基を有するポリオルガノシロキサン等のプロトン酸基を含有するポリオルガノシロキサン;コバルトタングステン酸、リンモリブデン酸等のヘテロポリ酸;ニオブ酸、タンタル酸、モリブデン酸等のイソポリ酸;シリカゲル、アルミナ、クロミア、ジルコニア、CaO、MgO等の単元系金属酸化物;シリカ−アルミナ、シリカ−マグネシア、シリカ−ジルコニア、ゼオライト類等複合系金属酸化物;酸性白土、活性白土、モンモリロナイト、カオリナイト等の粘土鉱物;LiSO4,MgSO4等の金属硫酸塩;リン酸ジルコニア、リン酸ランタン等の金属リン酸塩;LiNO3,Mn(NO3)2等の金属硝酸塩;シリカゲル上にアミノプロピルトリエトキシシランを反応させて得られた固体等のアミノ基を含有する基が表面に結合されている無機固体;アミノ変性シリコーン樹脂等のアミノ基を含有するポリオルガノシロキサン等が挙げられる。
保護層形成用塗布液には、必要に応じてメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;テトラヒドロフラン;ジエチルエーテル、ジオキサン等のエーテル類等の他、種々の溶媒が使用できる。なお、電子写真感光体の生産に一般的に使用されるディップコーティング法を適用するためには、アルコール系溶剤、ケトン系溶剤、又はそれらの混合系溶剤が好ましい。また、使用される溶媒の沸点は50〜150℃のものが好ましく、それら任意に混合して使用することができる。
なお、溶剤としてアルコール系溶剤、ケトン系溶剤、又はそれらの混合系溶剤が好ましいことから、使用される保護層の形成に使用される電荷輸送材料としては、それらの溶剤に可溶であることが好ましい。
また、溶媒量は任意に設定できるが、少なすぎると構成材料が析出しやすくなるため、保護層形成用塗布液中に含まれる固形分の合計1質量部に対し好ましくは0.5〜30質量部、より好ましくは1〜20質量部とすることが好ましい。
保護層形成用塗布液を用いて保護層を形成する際の塗布方法としては、ブレードコーティング法、ワイヤーバーコーティング法、スプレーコーティング法、浸漬コーティング法、ビードコーティング法、エアーナイフコーティング法、カーテンコーティング法等の通常の方法を用いることができる。ただし、1回の塗布により必要な膜厚が得られない場合、複数回重ね塗布することにより必要な膜厚を得ることができる。なお、複数回の重ね塗布を行なう場合、加熱処理は塗布の度に行なってもよいし、複数回重ね塗布した後でもよい。
電荷輸送層上に保護層形成用塗布液を塗布後には、硬化処理を行う。通常、硬化処理の際には、フェノール誘導体の架橋反応を促進し、保護層の機械強度を上げるためには硬化温度は高く、硬化時間長いほど好ましい。しかし、そうした場合には、吸光度比(P2/P1)が0.2を超えやすく、電気特性が著しく悪化してしまう。そこで、保護層のIRスペクトルが上記条件を満たすように、硬化温度、硬化時間、架橋雰囲気又は硬化触媒で制御することが好ましい。
すなわち、保護層のIRスペクトルが上記式(1)で示される条件を満たすようにするために、硬化処理の際の硬化温度は100〜170℃が好ましく、100〜150℃が、さらに100〜140℃がより好ましい。また、硬化時間は、30分〜2時間が好ましく、30分〜1時間がより好ましい。
また、硬化処理(架橋反応)を行う雰囲気としては、窒素、ヘリウム、アルゴン等の、いわゆる酸化に対して不活性なガス雰囲気(不活性ガス雰囲気)下が吸光度比(P2/P1)を小さくするのに効果的である。不活性ガス雰囲気下で架橋反応を行う場合には、空気雰囲気(酸素含有雰囲気)下よりも硬化温度を高く設定することができ、硬化温度は100〜160℃(好ましくは110〜150℃)とすることが可能である。また、硬化時間は30分〜2時間(好ましくは30分〜1時間)とすることが可能である。また、一般式(I)で示される化合物において、(−(X1)m1−(R1)m2−Y)で示される部位が−CH2−OHの場合が最も硬化温度による電気特性の影響が大きい傾向があり、酸化に対して敏感であるので、上記好ましい温度範囲で硬化処理を行うことが好ましい。
さらに、硬化処理の際には、硬化触媒を使用することが好ましい。硬化触媒としては、例えば、ビス(イソプロピルスルホニル)ジアゾメタンのようなビススルホニルジアゾメタン類、メチルスルホニルp−トルエンスルホニルメタンのようなビススルホニルメタン類、シクロヘキシルスルホニルシクロヘキシルカルボニルジアゾメタンのようなスルホニルカルボニルジアゾメタン類、2−メチル−2−(4−メチルフェニルスルホニル)プロピオフェノンのようなスルホニルカルボニルアルカン類、2−ニトロベンジルp−トルエンスルホネートのようなニトロベンジルスルホネート類、ピロガロールトリスメタンスルホネートのようなアルキル及びアリールスルホネート類(g)ベンゾイントシレートのようなベンゾインスルホネート類、N−(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)フタルイミドのようなN−スルホニルオキシイミド類、(4−フルオロベンゼンスルホニルオキシ)−3,4,6−トリメチル−2−ピリドンのようなピリドン類、2,2,2−トリフルオロ−1−トリフルオロメチル−1−(3−ビニルフェニル)−エチル−4−クロロベンゼンスルホネートのようなスルホン酸エステル類、トリフェニルスルホニウムメタンスルホネート、ジフェニルヨードニウムトリフルオロメタンスルホネートのようなオニウム塩類等の光酸発生剤や、プロトン酸或いはルイス酸をルイス塩基で中和した化合物、ルイス酸とトリアルキルホスフェートの混合物、スルホン酸エステル類、リン酸エステル類、オニウム化合物、無水カルボン酸化合物等が挙げられる。
プロトン酸或いはルイス酸をルイス塩基で中和した化合物としては、ハロゲノカルボン酸類、スルホン酸類、硫酸モノエステル類、リン酸モノ及びジエステル類、ポリリン酸エステル類、ホウ酸モノ及びジエステル類等を、アンモニア、モノエチルアミン、トリエチルアミン、ピリジン、ピペリジン、アニリン、モルホリン、シクロヘキシルアミン、n−ブチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等の各種アミン若しくはトリアルキルホスフィン、トリアリールホスフィン、トリアルキルホスファイト、トリアリールホスファイトで中和した化合物、さらには酸−塩基ブロック化触媒として市販されているネイキュア2500X、4167、X−47−110、3525、5225(商品名、キングインダストリー社製)等が挙げられる。また、ルイス酸をルイス塩基で中和した化合物としては、例えば、BF3、FeCl3、SnCl4、AlCl3、ZnCl2等のルイス酸を上記のルイス塩基で中和した化合物が挙げられる。
オニウム化合物としては、トリフェニルスルホニウムメタンスルホネート、ジフェニルヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート等が挙げられる。
無水カルボン酸化合物としては、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸、無水イソ酪酸、無水ラウリン酸、無水オレイン酸、無水ステアリン酸、無水n−カプロン酸、無水n−カプリル酸、無水n−カプリン酸、無水パルミチン酸、無水ミリスチン酸、無水トリクロロ酢酸、無水ジクロロ酢酸、無水モノクロロ酢酸、無水トリフルオロ酢酸、無水ヘプタフルオロ酪酸等が挙げられる。
ルイス酸の具体例としては、例えば、三フッ化ホウ素、三塩化アルミニウム、塩化第一チタン、塩化第二チタン、塩化第一鉄、塩化第二鉄、塩化亜鉛、臭化亜鉛、塩化第一スズ、塩化第二スズ、臭化第一スズ、臭化第二スズ等の金属ハロゲン化物、トリアルキルホウ素、トリアルキルアルミニウム、ジアルキルハロゲン化アルミニウム、モノアルキルハロゲン化アルミニウム、テトラアルキルスズ等の有機金属化合物、ジイソプロポキシエチルアセトアセテートアルミニウム、トリス(エチルアセトアセテート)アルミニウム、トリス(アセチルアセトナト)アルミニウム、ジイソプロポキシ・ビス(エチルアセトアセテート)チタニウム、ジイソプロポキシ・ビス(アセチルアセトナト)チタニウム、テトラキス(n−プロピルアセトアセテート)ジルコニウム、テトラキス(アセチルアセトナト)ジルコニウム、テトラキス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、ジブチル・ビス(アセチルアセトナト)スズ、トリス(アセチルアセトナト)鉄、トリス(アセチルアセトナト)ロジウム、ビス(アセチルアセトナト)亜鉛、トリス(アセチルアセトナト)コバルト等の金属キレート化合物、ジブチルスズジラウレート、ジオクチルスズエステルマレート、ナフテン酸マグネシウム、ナフテン酸カルシウム、ナフテン酸マンガン、ナフテン酸鉄、ナフテン酸コバルト、ナフテン酸銅、ナフテン酸亜鉛、ナフテン酸ジルコニウム、ナフテン酸鉛、オクチル酸カルシウム、オクチル酸マンガン、オクチル酸鉄、オクチル酸コバルト、オクチル酸亜鉛、オクチル酸ジルコニウム、オクチル酸スズ、オクチル酸鉛、ラウリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸コバルト、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸鉛等の金属石鹸が挙げられる。これらは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
これら硬化触媒の使用量は特に制限されないが、保護層形成用塗布液に含まれる固形分の合計100質量部に対して0.1〜20質量部が好ましく、0.3〜10質量部が特に好ましい。
また、保護層を形成する際に、有機金属化合物を触媒として用いる場合には、ポットライフ、硬化効率の面から、多座配位子を添加することが好ましい。このような多座配位子としては、以下に示すようなもの及びそれらから誘導されるものを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
具体的には、アセチルアセトン、トリフルオロアセチルアセトン、ヘキサフルオロアセチルアセトン、ジピバロイルメチルアセトン等のβ−ジケトン類;アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル等のアセト酢酸エステル類;ビピリジン及びその誘導体;グリシン及びその誘導体;エチレンジアミン及びその誘導体;8−オキシキノリン及びその誘導体;サリチルアルデヒド及びその誘導体;カテコール及びその誘導体;2−オキシアゾ化合物等の2座配位子;ジエチルトリアミン及びその誘導体;ニトリロトリ酢酸及びその誘導体等の3座配位子;エチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)及びその誘導体等の6座配位子;等を挙げることができる。さらに、上記のような有機系配位子の他、ピロリン酸、トリリン酸等の無機系の配位子を挙げることができる。多座配位子としては、特に2座配位子が好ましく、具体例としては、上記の他、下記一般式(V−4)で示される2座配位子が挙
げられる。
上記式(V−4)中、R32及びR33はそれぞれ独立に炭素数1〜10のアルキル基
、フッ化アルキル基、又は炭素数1〜10のアルコキシ基を示す。
多座配位子としては、上記の中でも、下記一般式(V−4)で示される2座配位子がよ
り好ましく、下記一般式(V−4)中のR32とR33とが同一のものが特に好ましい。
R32とR33とを同一にすることで、室温付近での配位子の配位力が強くなり、保護層形成用塗布液のさらなる安定化を図ることができる。
多座配位子の配合量は、任意に設定することができるが、有機金属化合物の使用量1モルに対し、好ましくは0.01モル以上、より好ましくは0.1モル以上、さらに好ましくは1モル以上である。
保護層の25℃における酸素透過係数は、4×1012fm/s・Pa以下であることが好ましく、3.5×1012fm/s・Pa以下であることがより好ましく、3×1012fm/s・Pa以下であることがさらに好ましい。
ここで、酸素透過係数は層の酸素ガス透過のし易さを表す尺度であるが、見方を変えると、層の物理的な隙間率の代用特性と捕らえることもできる。なお、ガスの種類が変われば透過率の絶対値は変わるものの、検体となる層間で大小関係の逆転は殆どない。したがって、酸素透過係数は、一般的なガス透過のし易さを表現する尺度と解釈して良い。
つまり、保護層の25℃における酸素透過係数が上記条件を満たす場合には、保護層においてガスが浸透しにくい。したがって、画像形成プロセスにより生じる放電生成物の浸透が抑制され、保護層に含有される化合物の劣化が抑制され、電気特性を高水準に維持することができ、高画質化、長寿命化に有効である。
また、赤外吸収スペクトルの吸光度比(P2/P1)が上記条件を満たすように保護層を形成しようとする場合には、空気雰囲気下では硬化温度を比較的低く設定することが必要である。そのため、保護層の25℃における酸素透過係数を下げることは困難であるが、吸光度比(P2/P1)が上記条件を満たすようにすると共に、保護層の25℃における酸素透過係数が上記条件を満たすようにすることで、電気特性がさらに向上し、さらに高画質を達成できる感光体が得られる。
保護層の膜厚は、0.5〜15μmが好ましく、1〜10μmがさらに好ましく、1〜5μmがより好ましい。
(感光体の実施例)
■感光体A_1
4重量部のポリビニルブチラール樹脂(エスレックBM−S、積水化学社製)を溶解したn−ブチルアルコール170重量部に、有機ジルコニウム化合物(アセチルアセトンジルコニウムブチレート)30重量部および有機シラン化合物(γ−アミノプロピルトリメトキシシラン)3重量部を添加、混合撹拌して下引き層形成用の塗布液を得た。この塗布液を、ホーニング処理により粗面化された外径40mmのアルミニウム支持体の上に浸漬塗布し、室温で5分間風乾を行った後、支持体を10分間で50℃に昇温し、50℃、85%RH(露点47℃)の恒温恒湿槽中に入れて、20分間加湿硬化促進処理を行った。その後、熱風乾燥機に入れて170℃で10分間乾燥を行い下引層を形成した。
電荷発生材料として、塩化ガリウムフタロシアニンを用い、その15重量部、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂(VMCH、日本ユニオンカーバイト社製)10重量部およびn−ブチルアルコール300重量部からなる混合物をサンドミルにて4時間分散した。得られた分散液を、上記下引き層上に浸漬塗布し、乾燥して、膜厚0.2μmの電荷発生層を形成した。次に、N,N′−ビス(3−メチルフェニル)−N,N′−ジフェニルベンジジン40部とビスフェノールZポリカーボネート樹脂(分子量40,000)60重量部とをテトロヒドロフラン235重量部及びモノクロロベンゼン100重量部に十分に溶解混合して得られた塗布液を電荷発生層まで塗布したアルミニウム支持体上に浸漬塗布し、乾燥することにより、膜厚20μmの電荷輸送層を形成した。
上記記載のうち表2中の化合物(13)2部、メチルトリメトキシシラン2部、テトラメトキシシラン0.5部、コロイダルシリカ0.3部を、イソプロピルアルコール5部、テトラヒドロフラン3部、蒸留水0.3部に溶解させ、イオン交換樹脂(アンバーリスト15E:ローム・アンド・ハース社製)0.5部を加えて室温で攪拌することにより24時間加水分解を行なった。
加水分解後の反応液からイオン交換樹脂を濾過分離した液体2部に対し、アルミニウムトリスアセチルアセトナート0.04部及び3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシトルエン(BTH)0.1部を加え、このコーティング液を前記電荷輸送層の上にリング型浸漬塗布法により塗布し、室温で30分風乾した後、170℃で1時間加熱処理して硬化し、膜厚約3μmの保護層を形成して表面保護層A_1を得た。こうして表面保護層A_1が形成された感光体を感光体A_1とした。
■感光体A_2
前記電荷輸送層の上に、表2中の化合物(13)の代わりに表2中の化合物(14)を用いた以外は表面保護層A_1と同様にして表面保護層A_2を作製した。こうして表面保護層A_2が形成された感光体を感光体A_2とした。
■感光体B
下記に示す化合物2を5部、イソプロピルアルコールを15部、テトラヒドロフランを9部、及び蒸留水を0.9部混合し、それにイオン交換樹脂(アンバーリスト15E)を0.5部加え、室温で攪拌することにより2時間加水分解を行った。さらに、ブチラール樹脂を0.5部、レゾール型フェノール樹脂(PL−2211、群栄化学社製)を5部、ヒンダードアミン系酸化防止剤(サノールLS2626)を0.2部、及び触媒(ネイキュア4167、楠本化成社製)を0.5部加え保護層形成用塗布液を調製した。この保護層形成用塗布液を浸漬コーティング法で前記電荷輸送層の上に塗布して130℃で30分乾燥し、膜厚3μmの表面保護層Bを形成した。こうして表面保護層Bが形成された感光体を感光体Bとした。
■感光体C
感光体A_1の表面保護層A_1を除いた感光体を感光体Cとした。
(ブレード部の実施例)
図2に示すブレード部151の実施例として、クリーニング層151aのみの1層で構成されており、JIS−A硬度を本発明に規定する範囲内(JIS−A硬度80度以上)で変えた2種類の実施例(ブレードA_1,ブレードA_2)と、クリーニング層151aと吸収層151bの2層で構成されており、JIS−A硬度が本発明に規定する範囲内である1種類の実施例(ブレードA_3)を挙げる。
次に、上述の実施例に対する比較例として、JIS−A硬度を本発明に規定する範囲から外した1種類の比較例(ブレードB_1)を挙げる。
表3は、前述の実施例および比較例を示す表である。
表3に示す実施例、および比較例を構成する材料としては、ポリウレタンを適用した。JIS−A硬度は高分子計器株式会社製のアナログ型硬度計A型によりJIS K630
1に準拠して測定した値であり、反撥弾性率はJISK6301で規格化されている方法によって23℃で測定した値である。Tanδのピーク温度は、短冊状にした幅5mm×長さ20mmの試験片を、ダイナミックアナライザーを使用し、周波数10Hz、5%変位のときのピーク温度である。伸びはJIS K6251に準じた値である。
(支持部の実施例)
まず、支持部152の実施例として、筐体部分11およびブレード部151と接触していない中央部分152bを有し、先端部分152aがブレード部151の裏面全体を覆った実施例(支持部A_1)を挙げる。
次に、上述の実施例に対する比較例として、弾性部材を有さない比較例(支持部B_1)と、先端部分152aがブレード部151の裏面の一部を覆った比較例(支持部B_2)を挙げる。
図2に示す支持部152の中央部分152bを構成する部材としては、撓ませる事で弾性力が発生するものであれば何でも良く、特にステインレス、黄銅などからなる金属材料が良い。支持部152の先端部分152aとブレード部151とは、既知の接着方法で接着される(ホットメルト、両面テープ、瞬間接着剤等)。また、支持部152の後端部分152cと筐体部分11との間も同様の方法で接着される。
かかる支持部152により、感光体110へ荷重が付与されるが、この単位長さ当たりの荷重(圧接力)は必要に応じ適宜以下に示す一般式(1)で表すことが出来る。よってこの圧接力大きさは画像形成装置全体の大きさで決められるため、本発明においては長さや厚みの特別な制限はない。
圧接力=(((3×E×I)/L3)×食い込み量)/ ブレード長手方向長さ (1)
E:支持部152のヤング率、I:支持部152の断面2次モーメント、L:支持部152の長さ
(クリーニング装置の実施例)
以上のようなブレード部と支持部とを組み合わせ、クリーニング装置を構成する。
図4は、クリーニング装置の実施例および比較例のイメージを示す図であり、表4は、
クリーニング装置の実施例および比較例と、それらに対する評価結果を示す表である。
(実施例1)
実施例1においては、表面保護層A_1が塗布された強度の高い感光体A_1が適用され、クリーニング装置としては、1層構造のブレード部412と、筐体部分11およびブレード部412と接触していない中央部分411bを有し、先端部分411aがブレード部412の裏面全体を覆った支持部411(支持部A_1の構造)とが組み合わされた、図4のパート(A)に示すクリーニング装置410が適用される。また、クリーニング装置410のブレード部412として、JIS−A硬度が十分に高く、一層構造を有するブレード部A_1が用いられる。
(実施例2)
実施例2においては、表面保護層A_2が塗布された感光体A_2が適用され、クリーニング装置としては、実施例1と同様に、図4のパート(A)に示すクリーニング装置410が適用される。本実施例は、実施例1とは異なり、ブレード部412として、JIS−A硬度が規定値ぎりぎりであるブレード部A_2が用いられる。
(実施例3)
実施例3においては、実施例2でも用いた感光体A_2が適用され、クリーニング装置としては、2層構造のブレード部422と、ブレード部422の裏面全体を覆った支持部421(支持部A_1の構造)とが組み合わされた、図4のパート(B)に示すクリーニング装置420が適用される。また、クリーニング装置420のブレード部422として、JIS−A硬度が十分に高く、二層構造を有するブレード部A_3が用いられる。
(実施例4)
実施例4は、実施例1のクリーニング装置(図4のパート(A)に示すクリーニング装置410に、ブレード部A_1を備える)において、感光体A_1を、表面保護層Bが塗布された感光体Bに替えたものである。
(実施例5)
実施例5は、実施例2のクリーニング装置(図4のパート(A)に示すクリーニング装置410に、ブレード部A_2を備える)において、感光体A_2を、実施例4でも用いた感光体Bに替えたものである。
(実施例6)
実施例6は、実施例3のクリーニング装置(図4のパート(B)に示すクリーニング装置420に、ブレード部A_3を備える)において、感光体A_2を、実施例4でも用いた感光体Bに替えたものである。
(比較例1)
比較例1では、表面保護膜が塗布されていない感光体Cが適用される。また、クリーニング装置としては、一層構造のブレード部432と、弾性部材で構成された部分を有していない支持部材431(支持部B_1の構造)とが組み合わされた、図4のパート(C)に示すクリーニング装置430が適用される。ブレード部432としては、JIS−A硬度が低く、一層構造を有するブレード部B_1が用いられる。この比較例1は、従来から知られている感光体とクリーニング装置との組み合わせである。
(比較例2)
比較例2では、比較例1とは異なり、表面保護膜A_1が塗布された感光体A_1が適用される。また、クリーニング装置としては、比較例1と同じ、図4のパート(C)に示すクリーニング装置430が適用される。また、ブレード部432としても、比較例と同じ、低硬度のブレード部B_1が用いられる。
(比較例3)
比較例3では、比較例2でも用いた感光体A_1が適用される。また、クリーニング装置としては、比較例1,2と同じ、図4のパート(C)に示すクリーニング装置430が適用されるが、ブレード部432として、高硬度のブレード部A_1が用いられる。
(比較例4)
比較例4では、比較例2,3でも用いた感光体A_1が適用され、クリーニング装置としては、一層のブレード部442と、ブレード部442の一部を覆う支持部441(支持部B_2の構造)とが組み合わされた、図4のパート(D)に示すクリーニング装置440が適用される。ブレード部432としては、高硬度のブレード部A_1が用いられる。この比較例4においては、ブレード部432の先端側に、支持部441によって支えられていない自由部分442Aが存在する。
(比較例5)
比較例5は、比較例2のクリーニング装置(図4のパート(C)に示すクリーニング装置430に、ブレード部B_1を備える)において、感光体A_2を、表面保護層Bが塗布された感光体Bに替えたものである。
(比較例6)
比較例6は、比較例3のクリーニング装置(図4のパート(C)に示すクリーニング装置430に、ブレード部A_1を備える)において、感光体A_2を、表面保護層Bが塗布された感光体Bに替えたものである。
(比較例7)
比較例7は、比較例4のクリーニング装置(図4のパート(D)に示すクリーニング装置430に、ブレード部A_1を備える)において、感光体A_2を、表面保護層Bが塗布された感光体Bに替えたものである。
次に、これらの実施例および比較例に対する評価結果について説明する。
(評価結果)
ここでは、実験機として帯電器を接触帯電ロール(直流電圧を重畳した交流電圧を印加)に改造した富士ゼロックスDocu−Centre Color 500を用い、フルカラーにて高温高湿(28℃、85%RH)及び低温低湿(10℃、15%RH)で10万枚の走行試験を行い、感光体表面のテープ転写によるクリーニング性の評価、感光体磨耗量の評価、ならびにブレードへたり量の評価を行った。ブレードへたり量としては、圧接力の初期から1000分経過後の減少率として観察した。
尚、ブレード部と感光体との当接角は8°として試験を行った。当接角をこれ以上大きくすると、ブレード部の磨耗が多くなってしまい、良好なクリーニングを維持することができないことが確認された。
まず、上述の実施例1から実施例6における評価結果について説明する。
実施例1〜実施例6においては、クリーニング性、感光体磨耗量、およびブレードへたり量全ての試験において良好な結果が得られた。尚、実施例3および実施例6においては、ブレード鳴きが軽減されている。これは、2層構造のブレード部を適用することによって、図4パート(B)に示すクリーニング層422aの振動を吸収層422bが吸収しているためであると考えられる。
続いて、比較例1から比較例7における評価結果について説明する。
クリーニング性の試験で上記の実施例と同様の良好な評価結果が得られたのは、比較例4と比較例7のみであった。比較例1については、筋状のトナーの拭き残しが発生しており、比較例2と比較例5については、図4パート(C)のブレード部432が欠けてしまってクリーニング不良が生じており、比較例3と比較例6については、トナーの拭き残しが発生していた。
感光体磨耗量の試験では、比較例1を除くものについては、実施例と同様に良好な評価結果が得られた。
ブレードへたり量の試験では、全ての比較例でへたり量が多いと判定されたが、比較例4と比較例7については、他の比較例と比べればやや良好な評価結果が得られた。
これらの評価結果について検証する。
比較例1は、従来から知られている感光体とクリーニング装置の組み合わせである。支持部B_1には、弾性部材が備えられていないため、均一で安定した押圧力を得ることができず、クリーニング性やブレードへたり量に不具合が生じたと考えられる。また、感光体Cは、表面保護層が施されておらず、表面の強度が低いため、クリーニングを続けるうちに感光体の磨耗が進んでしまい、感光体磨耗量においても不具合が生じたと考えられる。このことから、感光体としては、感光体の最表層に、電荷輸送能を有する構造単位をもち、かつ架橋構造を有する樹脂を含有する表面層から構成されている表面保護層を備えたことを特徴とし、その表面保護層が、架橋構造を有する樹脂としてメチロール基を有するフェノール誘導体またはシロキサン系樹脂で構成し、水酸基、カルボキシル基、アルコキシシリル基、エポキシ基、チオール基及びアミノ基から選択される少なくとも1種を有する電荷輸送材料とを含有するものをを適用することが好ましいと確認された。
比較例2は、表面保護層A_1が塗布された感光体A_1を、低硬度なブレードB_1(JIS−A硬度77度)でクリーニングしており、比較例5は、表面保護層Bが塗布された感光体Bを、低硬度なブレードB_1でクリーニングしている。したがって、感光体磨耗量は少ないが、ブレードB_1が欠けてしまい、クリーニング性に不具合が生じてしまっている。ブレード部の硬度が規定値ぎりぎりのブレードA_2(JIS−A硬度80度)を適用した実施例2や実施例5においては、良好な評価結果が得られていることから、ブレード部の硬度はJIS−A硬度で80度程度必要であることが確認された。
比較例3は、表面保護層A_1が塗布された感光体A_1を、高硬度なブレードA_1でクリーニングしており、比較例6は、表面保護層Bが塗布された感光体Bを、高硬度なブレードA_1でクリーニングしている。したがって、感光体磨耗量については良好な評価結果が得られている。しかし、支持部B_1には、弾性部材が備えられおらず、クリーニング性やブレードへたり量に不具合が生じたと考えられる。また、ブレードへたり量については、比較例3および比較例5のブレードA_1よりも硬度が低いブレードB_1を適用した比較例2や比較例4のほうが良好な評価結果が得られた。これは、硬度が高いものほど、永久変形が生じやすいことが起因していると考えられる。弾性部材が備えられた支持部A_1が適用された実施例1や実施例4については、良好な結果が得られていることから、支持部に弾性部材を備えることが必要であることが確認された。
比較例4と比較例7は、ブレードへたり量以外の試験においては、良好な評価結果が得られた。しかし、ブレード部の先端側に、支持部によって支えられていない自由部分が存在する支持部B_2が適用されているため、自由部分にへたりが生じてしまっている。自由部分が存在しない支持部A_1を適用した実施例1や実施例4においては、良好な評価結果が得られていることから、補助部材はブレードの裏面全体を覆うことが必要であることが確認された。
以上で、第1実施形態に相応した実施例の説明を終了し、第2実施形態に相応した実施例の説明を行う。
まず、第2実施形態の実施例として、図3に示す2層構造を有するブレード部151を備え、ブレード部151と感光体110との当接角θ2を本発明に規定する範囲内の値に設定して、温湿度環境をそれぞれ変えた3種類の実施例を挙げる。
次に、上述の実施例に対する比較例として、当接角を本発明に規定する範囲から外す、あるいは、1層構造を有するブレード部が適用された7種類の比較例を挙げる。
表5は、前述の実施例および比較例、さらに、それらに対する評価結果を示す表である。
(実施例1)
実施例1は、当接角θ2が規定範囲内の値に設定され、2層構造を有するブレード部151を備えたクリーニング装置を使って、高温高湿(28℃/85%RH)の環境下でクリーニングを行う。
(実施例2)
実施例2は、実施例1と同様の構成を有するクリーニング装置を使い、中温中湿(22℃/55%RH)の環境下でクリーニングを行う。
(実施例3)
実施例3は、実施例1と同様の構成を有するクリーニング装置を使い、低温低湿(10℃/15%RH)の環境下クリーニングを行う。
(比較例1)
比較例1は、当接角θ2が規定範囲内の値に設定され、中程度の硬度(JIS−A硬度で73度)で1層構造を有するブレード部を備えたクリーニング装置を使って、高温高湿(28℃/85%RH)の環境下でクリーニングを行う。
(比較例2)
比較例2は、比較例1と同様の構成を有するクリーニング装置を使い、中温中湿(22℃/55%RH)の環境下でクリーニングを行う。
(比較例3)
比較例3は、比較例1と同様の構成を有するクリーニング装置を使い、低温低湿(10℃/15%RH)の環境下でクリーニングを行う。
(比較例4)
比較例4は、当接角θ2が規定範囲内の値に設定され、高硬度(JIS−A硬度で84度)で1層構造を有するブレード部が備えられたクリーニング装置を使い、高温高湿(28℃/85%RH)の環境下でクリーニングを行う。
(比較例5)
比較例5は、当接角θ2が規定範囲内の値に設定され、高程度の硬度(JIS−A硬度で81度)で1層構造を有するブレード部が備えられたクリーニング装置を使い、高温高湿(28℃/85%RH)の環境下でクリーニングを行う。
(比較例6)
比較例6は、当接角θ2が規定範囲を小さい方に外れた値(〜4°)に設定され、2層構造を有するブレード部が備えられたクリーニング装置を使い、高温高湿(28℃/85%RH)の環境下でクリーニングを行う。
(比較例7)
比較例7は、当接角θ2が規定範囲を大きい方に外れた値(15°〜)に設定され、2層構造を有するブレード部が適用され、高温高湿(28℃/85%RH)の環境下で試験が行われる。
次に、これらの実施例および比較例に対する評価結果について説明する。
(評価結果)
ここでは、図3に示す感光体110およびクリーニング装置150´を適用したプリンタを使って試験を行う。クリーニング特性評価については、プリンタでテストプリント(画像面積率5%の画像を2000枚出力する)を、表5における実施例および比較例それぞれの条件下で行い、プリント画像と感光体110表面の観察をすることによって評価を行った。詳しい評価項目は、以下の通りである。
1.感光体への固着
感光体のフィルミング性(ブレード部当接による感光体表面へのトナーの膜状付着の有無)を確認した。
2.ブレード鳴き
プリント時に、ブレード鳴きの有無を確認した。
3.クリーニング性能
クリーニング不良による筋状の画質欠陥、色筋の発生の有無を確認した。
上記の評価項目に従い、以下のように判定する。
◎:2000枚のテストプリント終了時で評価対象の症状が発生せず、それ以降も良好な結果が得られると予測される場合
○:2000枚のテストプリント終了時で評価対象の症状が発生しないが、その時点でほぼ寿命であると判断される場合
×:テストプリント中に評価対象の症状が発生し、2000枚のテストプリントを完遂することができない場合
表5に示すように、実施例1、実施例2、実施例3については、全ての試験において良好な評価結果が得られた。尚、高温高湿においては、放電生成物が感光体の表面に付着しやすいため、中温中湿時などと比較すると、若干クリーニング性能が劣っている。本実施形態によると、高温高湿、中温中湿、低温低湿において、長期間にわたって精度よくクリーニングを行うことができることが確認された。
また、比較例については、ブレード部のJIS−A硬度が中程度である比較例1、比較例2、および比較例3においては、初期状態において、良好なクリーニング特性が得られている。これは、低硬度なブレード部が感光体の回転に追随しやすく、効率よくクリーニングが行われているためであると考えられる。しかし、2000枚のプリントテスト終了後では、ブレード部が磨耗してしまって、クリーニング性能が低下している。
ブレード部の磨耗を抑えるため、ブレード部の硬度を上げて試験を行うと、比較例4および比較例5に示すように、初期状態においても、良好な評価が得られなかった。これは、感光体とブレード部との間に大きな摩擦力が生じてしまい、ブレード部に振動が生じてトナーのすり抜けなどが起こっているためであると考えられる。実施例1、実施例2、実施例3では、図3に示すように、ブレード部151のクリーニング層151aにおいて生じる振動が、吸収部151bで吸収されており、良好な評価結果が得られている。このことから、ブレード部は2層構造で構成することが好ましいことが確認された。
また、ブレード部151が2層構造を有している場合であっても、当接角θ2が4°よりも小さい場合には、初期状態からクリーニング不良が発生した(比較例6)。これは、ブレード部150が感光体110を掻くことができず、トナーのすり抜けなどが生じたためであると考えられる。逆に、当接角θ2が15°よりも大きい場合、ブレード部150が感光体110を強く摺擦するため、初期状態におけるクリーニング性能は良好であるが、ブレード鳴きなどが生じてしまう(比較例7)。このことから、当接角θ2は、4°以上でかつ15°以下であることが好ましいことが確認された。
図5は、本実施形態のクリーニング装置と、従来から知られているクリーニング装置を示す図である。
パート(A)に示す本実施形態のクリーニング装置510における支持部512は、ブレード部511の裏面全体を覆う先端部分512aと、筐体部分11に取り付けられた根元部分512cと、弾性部材513に取り付けられた分岐部分512bとを備えている。パート(B)に示す、従来のクリーニング装置520における支持部522には、根元部分512cと同様の根元部分522c、分岐部分512bと同様の分岐部分532bが備えられているが、先端部分522Raがブレード部521の裏面の全てを覆っておらず、ブレード部521がむき出しの自由部分521Aが存在する。このようなクリーニング装置510、およびクリーニング装置520で感光体110のクリーニングを行い、ブレード部が感光体110を押圧する当接圧の経時変化を測定する。
図6は、図5に示すクリーニング装置510、およびクリーニング装置520の当接圧の経時変化を示す図である。
曲線510は、ブレード部に自由部分を有さないクリーニング装置510における当接圧の経時変化を示しており、曲線520は、ブレード部に自由部分を有するクリーニング装置520における当接圧の経時変化を示している。図5に示すクリーニング装置520のブレード部521では、感光体110からの応力が自由部分521Aに集中的にかかってしまうため、長時間を経るとへたりが生じてクリーニング性能が劣化してしまう。図6においても、経時とともに曲線510´の当接圧が曲線520´の当接圧を超えている。このことから、ブレード部に自由部分を有さないクリーニング装置を用いることによって、長期に渡って、精度の良いクリーニングを行うことができることが確認された。