JP4179014B2 - 電子写真感光体及びその製造方法、画像形成装置、並びにプロセスカートリッジ - Google Patents

電子写真感光体及びその製造方法、画像形成装置、並びにプロセスカートリッジ Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は電子写真感光体及びその製造方法、画像形成装置、並びにプロセスカートリッジに関する。
【0002】
【従来の技術】
複写機、プリンター、ファクシミリ等の画像形成装置においては、電子写真感光体を用いて帯電、露光、現像、転写等を行う電子写真方式が広く採用されている。このような画像形成装置にあっては、画像形成プロセスの高速化、画質向上、装置の小型化及び長寿命化、製造コスト及びランニングコストの低減等の要請が益々高まっている。また、近年のコンピューターや通信等の技術の発達に伴い、画像形成装置においてもデジタル方式やカラー画像出力方式の適用が進められている。
【0003】
このような背景の下、電子写真感光体における電子写真特性及び耐久性の向上、低コスト化、小径化等の検討がなされている。特に、電荷発生機能と電荷輸送機能を分離した機能分離型の有機感光体が提案されて以来、有機物の設計のしやすさを生かし様々な有機機能材料の開発がなされ、種々の有機材料を用いた電子写真感光体が開発されている。
【0004】
例えば、特許文献1においては、耐久性の向上のために、電子写真感光体の表面層に特定の構造単位を含むシロキサン系硬化樹脂を含有させることが開示されている。
【0005】
【特許文献1】
特開2000−275886号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来の電子写真感光体であっても、特に接触帯電方式の帯電器(接触帯電器)やクリーニングブレード等のクリーニング装置と組み合わせて用いる場合には、電子写真特性や耐久性等は必ずしも十分とは言えない。
【0007】
また、感光体を接触帯電器、化学重合法によるトナー(重合トナー)と組み合わせた場合には、接触帯電の際に生成する放電生成物や、転写工程後に残存した重合トナーにより感光体表面が汚染されて、画像品質が低下する場合がある。
【0008】
更に、電子写真感光体を製造する際には、電子写真特性や耐久性の向上に加えて製造コストを低減することが重要な課題となるが、従来の電子写真感光体の場合、製造時にゆず肌、ブツ等の塗膜欠陥が生じやすいという問題がある。
【0009】
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、現像剤、放電ガス及び放電生成物等に対する耐汚染性、並びに接触帯電器やクリーニングブレード等に対する耐久性が十分に高い電子写真感光体及びその製造方法、並びに長期にわたって良好な画質を得ることが可能な画像形成装置及びプロセスカートリッジを提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、従来の特定の構造単位を含むシロキサン系硬化樹脂を表面層に用いた電子写真感光体では、樹脂を構成する構造単位同士が十分に反応していないため、架橋密度が低く、そのため耐久性が不十分であることを見出した。そして、かかる知見に基づいてさらに研究した結果、特定の2つの構造単位と特定の有機基とを有するシロキサン系樹脂を含有するシロキサン系樹脂含有層を感光層に設けることにより、現像剤、放電ガス及び放電生成物等に対する耐汚染性、並びに接触帯電器やクリーニングブレード等に対する耐久性の向上が可能となることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明の電子写真感光体は、導電性基体上に感光層が形成された電子写真感光体であって、感光層が、下記一般式(1)で表される構造単位と、下記一般式(2)で表される構造単位と、正孔輸送能を有する化合物から誘導される有機基と、を有するシロキサン系樹脂を含有するシロキサン系樹脂含有層を備えることを特徴とするものである。
【0012】
【化8】
【0013】
【化9】
[式(1)中、Yは主鎖中に炭素原子をつ以上含む2価の基を表し、式(2)中、Rはアルキレン基を表し、Zは酸素原子又は硫黄原子を表す。]
また、本発明の電子写真感光体は、導電性基体上に感光層が形成された電子写真感光体であって、感光層が、上記一般式(1)で表される構造単位及び加水分解性基を有する有機ケイ素化合物と、下記一般式(3)で表される化合物と、を用いて得られるシロキサン系樹脂を含有するシロキサン系樹脂含有層を備えることを特徴としてもよい。
【0014】
【化10】
[式(3)中、F1は正孔輸送能を有する化合物から誘導される有機基を表し、R1はアルキレン基を表し、Zは酸素原子又は硫黄原子を表し、hは1〜4の整数を表す。]
上記本発明の電子写真感光体においては、上記正孔輸送能を有する化合物から誘導される有機基が、下記一般式(4)で表される有機基であることが好ましい。
【0015】
【化11】
[式(4)中、Ar1、Ar2、Ar3及びAr4は同一でも異なっていてもよく、それぞれ置換又は未置換のアリール基を表し、Ar5は置換若しくは未置換のアリール基又はアリーレン基を表し、iは0又は1を表し、Ar1〜Ar5のうちの少なくとも1つは上記一般式(2)又は(3)中のR1との結合手を有する。]本発明の電子写真感光体の製造方法は、導電性基体上にシロキサン系樹脂含有層を含む感光層を形成させる電子写真感光体の製造方法であって、上記一般式(1)で表される構造単位及び加水分解性基を有する有機ケイ素化合物と上記一般式(3)で表される化合物とを用いてシロキサン系樹脂含有層形成用塗布液を調製する塗布液調製工程と、塗布液を用いてシロキサン系樹脂含有層を形成させるシロキサン系樹脂含有層形成工程と、を含むことを特徴とする。
【0016】
上記本発明の電子写真感光体の製造方法においては、塗布液が金属キレート化合物及び/又は多座配位子を含有することが好ましい。
【0017】
また、本発明の画像形成装置は、上記本発明の電子写真感光体と、電子写真感光体を帯電させる帯電装置と、帯電した電子写真感光体を露光して静電潜像を形成させる露光装置と、静電潜像を現像してトナー像を形成する現像装置と、トナー像を被転写体に転写する転写装置と、を備えることを特徴とする。
【0018】
また、本発明のプロセスカートリッジは、上記本発明の電子写真感光体と、電子写真感光体を帯電させる帯電装置、帯電した電子写真感光体を露光して静電潜像を形成させる露光装置、並びに電子写真感光体をクリーニングするクリーニング装置から選ばれる少なくとも1種と、を備えることを特徴とする。
【0019】
このように本発明の電子写真感光体を用いることで、長期にわたって良好な画質を得ることが可能な画像形成装置及びプロセスカートリッジが実現可能となる。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、場合により図面を参照しつつ、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面中、同一要素には同一符号を付することとし、重複する説明は省略する。
【0021】
(電子写真感光体)
本発明の電子写真感光体は、その感光層において、以下に述べるシロキサン系樹脂を含有するシロキサン系樹脂含有層を備えたものである。
【0022】
先ず、シロキサン系樹脂について説明する。シロキサン系樹脂は、下記一般式(1)で表される構造単位と、下記一般式(2)で表される構造単位と、正孔輸送能を有する化合物から誘導される有機基と、を有する樹脂である。
【0023】
【化12】
【0024】
【化13】
[一般式(1)中、Yは主鎖中に炭素原子を1つ以上含む2価の基を表し、式(2)中、Rはアルキレン基を表し、Zは酸素原子、硫黄原子又はNHを表す。]
上記式(2)中の−Z−R−で表される基が結合するケイ素原子(Si)は、上記式(1)中のSiであってもよく、また、それ以外のSiであってもよい。従って、本発明にかかるシロキサン系樹脂は、下記一般式(5)で表される構造単位を有し得る。
【0025】
【化14】
[式(5)中、Yは主鎖中に炭素原子を1つ以上含む2価の基を表し、Rはアルキレン基を表し、Zは酸素原子、硫黄原子又はNHを表す。]
また、本発明にかかるシロキサン系樹脂は、下記一般式(6)で表される構造単位を有する場合もある。
【0026】
【化15】
[式(6)中、Yは主鎖中に炭素原子を1つ以上含む2価の基を表し、Rはアルキレン基を表し、Zは酸素原子、硫黄原子又はNHを表し、jは1以上の整数を表す。]
上記式(1)、(5)及び(6)中、Yで表される2価の基としては、主鎖中に少なくとも炭素原子を1つ以上含む2価の基であればよく、好ましくは、−C2n−、−C2n−2−、−C2n−4−(nは1〜15の整数であり、好ましくは2〜10の整数である)、−C−又は−C−C−で表される2価の炭化水素基、−NH−又は−C2n−(nは1〜15の整数であり、好ましくは2〜10の整数である)で表される2価の基、オキシカルボニル基(−COO−)、チオ基(−S−)、オキシ基(−O−)、イソシアノ基(−N=CH−)、あるいはこれら2種以上の組み合わせによる2価の基である。なお、これらの2価の基は側鎖にアルキル基、フェニル基、アルコキシ基、アミノ基などの置換基を有していてもよい。Yが上記の好ましい2価の基であると、得られる樹脂に適度な可とう性が付与されて層の強度が向上する傾向にある。
【0027】
上記式(2)、(5)及び(6)中、R1で表されるアルキレン基の炭素数は1〜20であることが好ましい。当該アルキレン基の炭素数が上記範囲内であると、塗布液中でのシロキサン系樹脂の相溶性を向上させることができる。
【0028】
また、シロキサン系樹脂が有する上記正孔輸送能を有する化合物から誘導される有機基とは、正孔輸送能を有する化合物から誘導される有機基であれば特に制限されないが、下記一般式(4)で表される有機基であることが好ましい。
【0029】
【化16】
[式(4)中、Ar1、Ar2、Ar3及びAr4は同一でも異なっていてもよく、それぞれ置換又は未置換のアリール基を表し、Ar5は置換若しくは未置換のアリール基又はアリーレン基を表し、iは0又は1を表し、Ar1〜Ar5のうちの少なくとも1つは上記一般式(2)又は(3)中のR1との結合手を有する。]上記式(4)中のAr1〜Ar4としては、下記式(7)〜(13)のうちのいずれかであることが好ましい。
【0030】
【化17】
【0031】
【化18】
【0032】
【化19】
【0033】
【化20】
【0034】
【化21】
【0035】
【化22】
−Ar−Z's−Ar−Xm (13)
[式(7)〜(13)中、R2は水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルキル基若しくは炭素数1〜4のアルコキシ基で置換されたフェニル基、または未置換のフェニル基、炭素数7〜10のアラルキル基からなる群より選ばれる1種を表し、R3〜R5はそれぞれ水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、若しくは炭素数1〜4のアルコキシ基で置換されたフェニル基、または未置換のフェニル基、炭素数7〜10のアラルキル基、ハロゲン原子からなる群より選ばれる1種を表し、Arは置換又は未置換のアリーレン基を表し、Xは一般式(3)中の−R1−ZHを表し、m及びsはそれぞれ0又は1を表し、tはそれぞれ1〜3の整数を表す。]
ここで、式(12)中のArとしては、下記式(13)又は(14)で表されるものが好ましい。
【0036】
【化23】
【0037】
【化24】
[式(14)、(15)中、R6及びR7はそれぞれ水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、若しくは炭素数1〜4のアルコキシ基で置換されたフェニル基、または未置換のフェニル基、炭素数7〜10のアラルキル基、ハロゲン原子からなる群より選ばれる1種を表し、tは1〜3の整数を表す。]
また、式(13)中のZ'としては、下記式(16)〜(23)のうちのいずれかで表されるものが好ましい。
−(CH2q− (16)
−(CH2CH2O)r− (17)
【0038】
【化25】
【0039】
【化26】
【0040】
【化27】
【0041】
【化28】
【0042】
【化29】
【0043】
【化30】
[式(16)〜(23)中、R8及びR9はそれぞれ水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、若しくは炭素数1〜4のアルコキシ基で置換されたフェニル基、または未置換のフェニル基、炭素数7〜10のアラルキル基、ハロゲン原子からなる群より選ばれる1種を表し、Wは2価の基を表し、q及びrはそれぞれ1〜10の整数を表し、tはそれぞれ1〜3の整数を表す。]
上記式(22)、(23)中のWとしては、下記(24)〜(32)で表される2価の基のうちのいずれかであることが好ましい。
【0044】
−CH2− (24)
−C(CH32− (25)
−O− (26)
−S− (27)
−C(CF32− (28)
−Si(CH32− (29)
【0045】
【化31】
【0046】
【化32】
【0047】
【化33】
[式(31)中、uは0〜3の整数を表す]
また、上記式(4)中、Ar5は、kが0のときはAr1〜Ar4の説明で例示されたアリール基であり、kが1のときはかかるアリール基から所定の水素原子を除いたアリーレン基である。
【0048】
上述のシロキサン系樹脂は、上記一般式(1)で表される構造単位及び加水分解性基を有する有機ケイ素化合物(以下、場合により有機ケイ素化合物という)と、下記一般式(3)で表される化合物と、を用いて得ることができる。
【0049】
【化34】
[式(3)中、F1は正孔輸送能を有する化合物から誘導される有機基(上述した正孔輸送能を有する化合物から誘導される有機基と同一の定義内容)を表し、R1はアルキレン基(好ましくは炭素数1〜20のアルキレン基)を表し、Zは酸素原子、硫黄原子又はNHを表し、hは1〜4の整数を表す。]
この場合、シロキサン系樹脂中には、下記一般式(2a)で表される構造単位が形成される。
【0050】
【化35】
[式(2a)中、F1は正孔輸送能を有する化合物から誘導される有機基を表し、R1はアルキレン基を表し、Zは酸素原子、硫黄原子又はNHを表し、hは1〜4の整数を表す。]
ここで、有機ケイ素化合物が有する上記加水分解性基とは、加水分解によりシロキサン結合(O−Si−O)を形成し得る官能基、もしくは縮合反応によりシラノール基(Si−OH)を形成し得る官能基をいう。このような加水分解性基の好ましい例としては、具体的には、水酸基、アルコキシ基、メチルエチルケトオキシム基、ジエチルアミノ基、アセトキシ基、プロペノキシ基、クロロ基が挙げられるが、これらの中でも、−OR"(R"は炭素数1〜15のアルキル基またはトリメチルシリル基)で表される基がより好ましい。
【0051】
有機ケイ素化合物としては、下記一般式(I)で表される化合物が好ましい。
Y−(Si(R10(3−a) ・・・(I)
[式(I)中、Yは主鎖中に炭素原子を1つ以上含む2価の基を表し(式(1)におけるYと同一の定義内容)、R10は水素原子、アルキル基、又は、置換若しくは未置換のアリール基を表し、Qは加水分解性基を表し、aは1〜3の整数を表す。]
また、式(I)で表される化合物のうち、a=3の化合物を用いるとより高い強度を得ることができる。一方、a≦2の化合物を用いるとシロキサン系樹脂含有層に可とう性を付与することができ、また、高温高湿下での画質特性を安定させることができる。さらに、Yがフッ素原子を含むものはクリーニング特性や転写特性の面で好ましい。
【0052】
式(I)で表される化合物は、特に限定されないが、具体的には、表1に示す化合物を好ましいものとして挙げることができる。
【0053】
【表1】
次に、一般式(3)で表される化合物について説明する。上記式(3)中、有機基F1は、上記式(2)におけるF1と同一の定義内容を表す。また、Zは、上述のように、酸素原子、硫黄原子又はNHを表す。言い換えれば、Zは、水酸基(−OH)、チオール基(又はメルカプト基、−SH)又はアミノ基(−NH2)から1個の水素原子を除いた残基である。
【0054】
上記式(3)で表される化合物は、公知の方法により安価に製造することができる。特に、Zが酸素原子のものは特性的にも優れており、さらに製造も容易で安価に製造できるため非常に好ましい。Zが酸素原子のものは種々の方法で合成でき、例えば下記式(33)及び(34)で示される反応により合成できる。
【0055】
【化36】
【0056】
【化37】
一般式(3)で表される化合物としては特に限定されないが、具体的には、下記式(3−1)〜(3−16)で表される化合物を挙げることができる。
【0057】
【化38】
【0058】
【化39】
【0059】
【化40】
【0060】
【化41】
【0061】
【化42】
【0062】
【化43】
【0063】
【化44】
【0064】
【化45】
【0065】
【化46】
【0066】
【化47】
【0067】
【化48】
【0068】
【化49】
【0069】
【化50】
【0070】
【化51】
【0071】
【化52】
【0072】
【化53】
本発明の電子写真感光体が備える感光層は、電荷発生物質と電荷輸送物質とを同一の層に含有する単層型感光層、あるいは電荷発生物質を含有する層(電荷発生層)と電荷輸送物質を含有する層(電荷輸送層)とを別個に設けた機能分離型感光層のいずれであってもよい。そして、本発明に係るシロキサン系樹脂含有層とは、単一型感光層、電荷発生層、電荷輸送層、さらに後述する保護層等のうち、上記シロキサン系樹脂を含有する層を意味する。
【0073】
図1〜3はそれぞれ本発明の電子写真感光体の好適な一実施形態を示す模式断面図であり、電子写真感光体1を基体2及び感光層3の積層方向に沿って切断したものである。図1〜3に示した電子写真感光体1はいずれも機能分離型感光体であり、各感光体が備える感光層3には電荷発生層5と電荷輸送層6とが別個に設けられている。
【0074】
より詳しくは、図1に示した電子写真感光体1においては、導電性基体2上に電荷発生層5及び電荷輸送層6がこの順で積層されて感光層3が構成されており;
図2に示した電子写真感光体1においては、導電性基体2上に下引き層4、電荷発生層5及び電荷輸送層6がこの順で積層されて感光層3が構成されており;
図3に示した電子写真感光体1においては、導電性基体2上に下引き層4、電荷発生層5、電荷輸送層6及び保護層7がこの順で積層されて感光層3が構成されている。
【0075】
以下、電子写真感光体1の各構成要素について詳述する。なお、本実施形態においては、電荷輸送層6が、本発明に係るシロキサン系樹脂を含有するシロキサン系樹脂含有層である。
【0076】
導電性基体2としては、アルミニウム、銅、亜鉛、ステンレス、クロム、ニッケル、モリブデン、バナジウム、インジウム、金、白金等の金属又はそれらの合金を用いた金属板、金属ドラム、金属ベルト;導電性ポリマー、酸化インジウム等の導電性化合物やアルミニウム、パラジウム、金等の金属又は合金を塗布、蒸着、あるいはラミネートした紙、プラスチックフィルム、ベルト等が挙げられる。
【0077】
導電性基体2として、金属ドラムがレーザープリンターに使用される場合には、レーザーの発振波長としては350nmから850nmのものが好ましく、短波長のものほど解像度に優れるため好ましい。また、レーザー光を照射する際に生じる干渉縞を防止するために、基体表面は中心線平均粗さ(Ra)で0.04μm〜0.5μmに粗面化することが好ましい。粗面化の方法としては、研磨剤を水に懸濁させて基体に吹き付けることによって行う湿式ホーニング、回転する砥石に基体を圧接し、連続的に研削加工を行うセンタレス研削、又は、陽極酸化等が好ましい。Raが0.04μmより小さいと、鏡面に近くなるので干渉防止効果が得られ難くなる傾向があり、他方、Raが0.5μmより大きいと、基体上に被膜を形成しても画質が粗くなる傾向がある。非干渉光を光源に用いる場合には、干渉縞防止の粗面化は特に必要なく、基体表面の凹凸による欠陥の発生が防げるため、より長寿命化に適する。
【0078】
陽極酸化処理は、アルミニウムを陽極とし電解質溶液中で陽極酸化することによりアルミニウム表面に酸化膜を形成するものである。電解質溶液としては硫酸溶液、シュウ酸溶液等が挙げられる。しかし、そのままの多孔質陽極酸化膜は化学的に活性であり、汚染され易く、環境による抵抗変動も大きい。そこで、陽極酸化膜の微細孔を加圧水蒸気又は沸騰水中(ニッケル等の金属塩を加えてもよい)で水和反応による体積膨張でふさぎ、より安定な水和酸化物に変える封孔処理を行う。
【0079】
陽極酸化膜の膜厚については0.3〜15μmが好ましい。膜厚が0.3μm未満の場合は注入に対するバリア性が乏しく効果が不十分となる傾向があり、他方、15μmを超える場合は繰り返し使用による残留電位の上昇を招く傾向がある。
【0080】
また、リン酸、クロム酸及びフッ酸からなる酸性処理液による処理を行うことも可能であり、以下の様に実施される。酸性処理液におけるリン酸、クロム酸及びフッ酸の配合割合は、リン酸が10〜11重量%の範囲、クロム酸が3〜5重量%の範囲、フッ酸が0.5〜2重量%の範囲であって、これらの酸全体の濃度は13.5〜18重量%の範囲が好ましい。処理温度は42〜48℃であるが、処理温度を高く保つことにより、一層速く且つ厚い被膜を形成することができる。被膜の膜厚については、0.3〜15μmが好ましい。被膜の膜厚が、0.3μm未満の場合は注入に対するバリア性が乏しく効果が不十分となる傾向がある。他方、15μmを超える場合は繰り返し使用による残留電位の上昇を招く傾向がある。
【0081】
また、ベーマイト処理は、90〜100℃の純水中に5〜60分間浸漬するか、90〜120℃の加熱水蒸気に5〜60分間接触させることにより行うことができる。被膜の膜厚については、0.1〜5μmが好ましい。これをさらに、アジピン酸、硼酸、硼酸塩、燐酸塩、フタル酸塩、マレイン酸塩、安息香酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩等の皮膜溶解性の低い電解質溶液を用いて陽極酸化処理してもよい。
【0082】
導電性基体2上には、図1に示すように電荷発生層5が設けられる。その電荷発生層5に用いられる電荷発生物質には、例えば、アゾ系顔料、キノン系顔料、ペリレン系顔料、インジゴ系顔料、チオインジゴ系顔料、ビスベンゾイミダゾール系顔料、フタロシアニン系顔料、キナクリドン系顔料、キノリン系顔料、レーキ系顔料、アゾレーキ系顔料、アントラキノン系顔料、オキサジン系顔料、ジオキサジン系顔料、トリフェニルメタン系顔料等の種々の有機顔料、アズレニウム系染料、スクウェアリウム系染料、ピリリウム系染料、トリアリルメタン系染料、キサンテン系染料、チアジン系染料、シアニン系染料等の種々の染料や、更にアモルファスシリコン、アモルファスセレン、テルル、セレン−テルル合金、硫化カドミウム、硫化アンチモン、酸化亜鉛、硫化亜鉛等の無機材料が挙げられるが、縮環芳香族系顔料、ペリレン系顔料又はアゾ系顔料が、感度、電気的安定性、更に、照射光に対する光化学的安定性の面で好ましい。
【0083】
なお、感光層(光導電層)に用いる電荷発生物質は、その使用に際しては、ここに挙げたものを単独で用いることもできるが、2種類以上の電荷発生物質を混合して用いることもできる。電荷発生層5は電荷発生物質を真空蒸着により形成するか、又は有機溶剤中の結着樹脂に電荷発生物質を分散し塗布することにより形成することができる。
【0084】
塗布する場合、用いる結着樹脂としては、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、ブチラールの一部がホルマールやアセトアセタール等で変性された部分アセタール化ポリビニルアセタール樹脂等のポリビニルアセタール系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル樹脂、変性エーテル型ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、シリコーン樹脂、フェノール樹脂、フェノキシ樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、尿素樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリ−N−ビニルカルバゾール樹脂、ポリビニルアントラセン樹脂、ポリビニルピレン等がある。これらの中で特にポリビニルアセタール系樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル系共重合体、フェノキシ樹脂及び変性エーテル型ポリエステル樹脂が顔料を良く分散させ、顔料が凝集せず長期にわたり分散塗工液が安定で、その塗工液を用いることで均一な被膜を形成し、その結果、電気特性を良くし画質欠陥を少なくすることができる。しかしながら、通常の状態で被膜を形成しうる樹脂であればこれらに限定されるものではない。これらの結着樹脂は、単独あるいは2種以上混合して用いることができる。電荷発生物質と結着樹脂との配合比は、体積比で、5:1〜1:2の範囲が好ましい。
【0085】
電荷発生層5を形成する際には、上記材料を適宜配合した塗布液が用いられる。塗布液を調製する際に用いられる溶剤としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、n−ブタノール、ベンジルアルコール、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、クロロベンゼン、酢酸メチル、酢酸n−ブチル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、メチレンクロライド、クロロホルム等の通常使用される有機溶剤を単独あるいは2種以上混合して用いることができる。
【0086】
塗布方法としては、ブレードコーティング法、マイヤーバーコーティング法、スプレーコーティング法、浸漬コーティング法、ビードコーティング法、エアーナイフコーティング法、カーテンコーティング法等の通常使用される方法を用いることができる。
【0087】
電荷発生層5の膜厚は一般的に0.01〜5μm、好ましくは0.1〜2μmが適当である。この膜厚が0.01μm未満の場合は、電荷発生層を均一に形成することが困難となる傾向にあり、5μmを越えると電子写真特性が著しく低下する傾向がある。
【0088】
また、電荷発生層中に酸化防止剤、失活剤等の安定剤を添加することもできる。酸化防止剤としては、例えば、フェノール系、硫黄系、リン系、アミン系化合物等の酸化防止剤が挙げられる。失活剤としてはビス(ジチオベンジル)ニッケル、ジ−n−ブチルチオカルバミン酸ニッケル等が挙げられる。
【0089】
電荷発生層5と導電性基体2との間には、図2又は3に示すように下引き層4を設けることもできる。下引き層4に用いられる材料としては、ジルコニウムキレート化合物、ジルコニウムアルコキシド化合物、ジルコニウムカップリング剤等の有機ジルコニウム化合物、チタンキレート化合物、チタンアルコキシド化合物、チタネートカップリング剤等の有機チタン化合物、アルミニウムキレート化合物、アルミニウムカップリング剤等の有機アルミニウム化合物、アンチモンアルコキシド化合物、ゲルマニウムアルコキシド化合物、インジウムアルコキシド化合物、インジウムキレート化合物、マンガンアルコキシド化合物、マンガンキレート化合物、スズアルコキシド化合物、スズキレート化合物、アルミニウムシリコンアルコキシド化合物、アルミニウムチタンアルコキシド化合物、アルミニウムジルコニウムアルコキシド化合物等の有機金属化合物が挙げられる。特に、有機ジルコニウム化合物、有機チタニル化合物及び有機アルミニウム化合物は、残留電位が低く良好な電子写真特性を示すため、好ましく使用される。
【0090】
また、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス−2−メトキシエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、γ−2−アミノエチルアミノプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプロプロピルトリメトキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、β−3,4−エポキシシクロヘキシルトリメトキシシラン等のシランカップリング剤を含有させて使用することができる。
【0091】
さらに、従来の下引き層に用いられるポリビニルアルコール、ポリビニルメチルエーテル、ポリ−N−ビニルイミダゾール、ポリエチレノキシド、エチルセルロース、メチルセルロース、エチレン−アクリル酸共重合体、ポリアミド、ポリイミド、カゼイン、ゼラチン、ポリエチレン、ポリエステル、フェノール樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、エポキシ樹脂、ポリビニルピロリドン、ポリビニルピリジン、ポリウレタン、ポリグルタミン酸、ポリアクリル酸等の公知の結着樹脂を用いることもできる。
【0092】
これらの混合割合は、必要に応じて適宜設定することができる。また、下引き層中には、電子輸送性顔料を混合/分散して使用することもできる。電子輸送性顔料としては、特開昭47−30330号公報に記載のペリレン顔料、ビスベンズイミダゾールペリレン顔料、多環キノン顔料、インジゴ顔料、キナクリドン顔料等の有機顔料、また、シアノ基、ニトロ基、ニトロソ基、ハロゲン原子等の電子吸引性の置換基を有するビスアゾ顔料やフタロシアニン顔料等の有機顔料、酸化亜鉛、酸化チタン等の無機顔料が上げられる。これらの顔料の中で、ペリレン顔料、ビスベンズイミダゾールペリレン顔料、多環キノン顔料、酸化亜鉛、酸化チタンは、電子移動性が高いので好ましく使用される。
【0093】
これらの顔料は、シランカップリング剤、チタネート系カップリング剤等により表面処理してもよい。電子輸送性顔料は、多すぎると下引き層の強度が低下し、塗膜欠陥を生じる傾向があるため、好ましくは95重量%以下、より好ましくは90重量%以下で使用される。混合/分散方法は、ボールミル、ロールミル、サンドミル、アトライター、超音波等を用いる常法が適用される。
【0094】
混合/分散は有機溶剤中で行われるが、有機溶剤としては、有機金属化合物や樹脂を溶解し、また、電子輸送性顔料を混合/分散したときにゲル化や凝集を起こさないものであれば、如何なるものでも使用できる。例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、n−ブタノール、ベンジルアルコール、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、酢酸n−ブチル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、メチレンクロライド、クロロホルム、クロルベンゼン、トルエン等の通常の有機溶剤を単独あるいは2種以上混合して用いることができる。下引き層4の膜厚は、好ましくは0.1〜30μm、より好ましくは0.2〜25μmである。
【0095】
図1〜3に示すように電荷輸送層6は電荷発生層5上に設けられる。なお、本実施形態に係る電荷輸送層6は、前述の通り本発明に係るシロキサン系樹脂を含有するシロキサン系樹脂含有層である。
【0096】
シロキサン系樹脂を含有する電荷輸送層6を形成する場合、先ず、有機ケイ素化合物と一般式(3)で表される化合物とを反応させる。次に、反応液に電荷輸送物質、結着樹脂、さらに必要に応じて添加剤、微粒子、架橋剤等を加えて電荷輸送層形成用塗布液を調製する(塗布液調製工程)。このようにシロキサン系樹脂の原料として有機ケイ素化合物を用いると、樹脂を形成させる際の反応サイトが増加して反応性が向上すると共に得られる樹脂の架橋密度が十分に高くなり、さらに樹脂中により多くの正孔輸送能を有する化合物から誘導される有機基が導入されることにより、電子写真感光体の耐汚染性及び耐久性が向上したと考えられる。
【0097】
電荷輸送物質としては、低分子化合物では、ピレン系、カルバゾール系、ヒドラゾン系、オキサゾール系、オキサジアゾール系、ピラゾリン系、アリールアミン系、アリールメタン系、ベンジジン系、チアゾール系、スチルベン系、ブタジエン系等の化合物が挙げられる。また、高分子化合物では、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ハロゲン化ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリビニルピレン、ポリビニルアンスラセン、ポリビニルアクリジン、ピレン−ホルムアルデヒド樹脂、エチルカルバゾール−ホルムアルデヒド樹脂、トリフェニルメタンポリマー、ポリシラン等が挙げられる。このうち、トリフェニルアミン化合物、トリフェニルメタン化合物及びベンジジン化合物が、モビリティー、安定性、光に対する透明性の面で好ましい。
【0098】
結着樹脂としては、電気絶縁性のフィルム形成可能な高分子重合体が好ましい。このような高分子重合体としては、例えば、ポリカーボネート、ポリエステル、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、ポリビニルアセテート、スチレン−ブタジエン共重合体、塩化ビニリデン−アクリロニトリル重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸共重合体、シリコン樹脂、シリコン−アルキッド樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、スチレン−アルキッド樹脂、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリビニルブチラール、ポリビニルフォルマール、ポリスルホン、カゼイン、ゼラチン、ポリビニルアルコール、エチルセルロース、フェノール樹脂、ポリアミド、カルボキシ−メチルセルロース、塩化ビニリデン系ポリマーラテックス、ポリウレタン等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの中でもポリカーボネート、ポリエステル、メタクリル樹脂、アクリル樹脂が、電荷輸送材料との相溶性、溶剤への溶解性、強度の点で優れており好ましい。これらの結着樹脂は、1種を単独で又は2種類以上混合して用いることができる。
【0099】
また、強度、膜抵抗等の種々の物性をコントロールすることができることから、下記一般式(35)で表される化合物を添加することが好ましい。
Si(R11)(3-b)b (35)
[式(35)中、R11は、水素原子、アルキル基、又は、置換若しくは未置換のアリール基を表し、Qは加水分解性基を表し、bは1〜4の整数を表す。]
上記式(35)で表される化合物の具体例としては、以下のようなシランカップリング剤が挙げられる。テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン等の四官能性アルコキシシラン(b=4);メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、メチルトリメトキシエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、(トリデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロオクチル)トリエトキシシラン、(3,3,3−トリフルオロプロピル)トリメトキシシラン、3−(ヘプタフルオロイソプロポキシ)プロピルトリエトキシシラン、1H,1H,2H,2H−パーフルオロアルキルトリエトキシシラン、1H,1H,2H,2H−パーフルオロデシルトリエトキシシラン、1H,1H,2H,2H−パーフルオロオクチルトリエトシキシラン等の三官能性アルコキシシラン(b=3);ジメチルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、メチルフェニルジメトキシシラン等の二官能性アルコキシシラン(b=2);トリメチルメトキシシラン等の1官能アルコキシシラン(b=1)等を挙げることができる。電荷輸送層の強度を向上させるためには3及び4官能のアルコキシシランが好ましく、可とう性、製膜性を向上させるためには2及び1官能のアルコキシシランが好ましい。また、このような化合物を電荷輸送層形成用塗布液に添加した場合には、シロキサン系樹脂は一般式(6)で表される構造単位を有し得る。
【0100】
また、主にこれらのカップリング剤より作製されるシリコン系ハードコート剤も添加することができる。市販のハードコート剤としては、KP−85、X−40−9740、X−40−2239(以上、信越シリコーン社製);AY42−440、AY42−441、AY49−208(以上、東レダウコーニング社製)等を用いることができる。
【0101】
微粒子としては、ケイ素含有微粒子、フッ素系微粒子、樹脂からなる微粒子、半導電性金属酸化物からなる微粒子が好ましい。このような微粒子は、電子写真感光体表面の耐汚染物付着性、潤滑性を改善する効果がある。これらの微粒子は、1種を単独で又は2種類以上混合して用いることができる。
【0102】
ケイ素含有微粒子とは、構成元素にケイ素を含む微粒子であり、具体的には、コロイダルシリカ及びシリコーン微粒子等が挙げられる。ケイ素含有微粒子として用いられるコロイダルシリカは、平均粒子径が好ましくは1〜100nm、より好ましくは10〜30nmの酸性若しくはアルカリ性の水分散液、又はアルコール、ケトン、エステル等の有機溶媒中に分散させたものから選ばれ、一般に市販されているものを使用することができる。
【0103】
本実施形態の電子写真感光体におけるコロイダルシリカの固形分含有量は、特に制限されないが、製膜性、電気特性、強度の面から電荷輸送層6の全固形分中、好ましくは1〜50重量%、より好ましくは5〜30重量%である。
【0104】
また、ケイ素含有微粒子として用いられるシリコーン微粒子は、球状で平均粒子径が好ましくは1〜500nm、より好ましくは10〜100nmのシリコーン樹脂粒子、シリコーンゴム粒子、シリコーン表面処理シリカ粒子で一般に市販されているものを使用することができる。
【0105】
シリコーン微粒子は、化学的に不活性で樹脂への分散性に優れる小径粒子であり、さらに十分な特性を得るために必要とされる含有量が低いため、架橋反応を阻害することなく、電子写真感光体の表面性状を改善することができる。即ち、強固な架橋構造中に均一に取り込まれた状態で、電子写真感光体表面の潤滑性、撥水性を向上させ、長期間にわたって良好な耐摩耗性、耐汚染物付着性を維持することができる。本実施形態の電子写真感光体における電荷輸送層中のシリコーン微粒子の含有量は、電荷輸送層の全固形分中、好ましく0.1〜20重量%であり、より好ましくは0.5〜10重量%である。
【0106】
また、フッ素系微粒子としては、4弗化エチレン、3弗化エチレン、6弗化プロピレン、弗化ビニル、弗化ビニリデン等が挙げられ、樹脂からなる微粒子としては、「第8回ポリマー材料フォーラム講演予稿集 p89」に表される様なフッ素樹脂と水酸基を有するモノマーを共重合させた微粒子が挙げられ、半導電性金属酸化物からなる微粒子としては、ZnO−Al23、SnO2−Sb23、In23−SnO2、ZnO−TiO2、ZnO−TiO2、MgO−Al23、FeO−TiO2、TiO2、SnO2、In23、ZnO、MgO等の半導電性金属酸化物からなる微粒子を挙げることができる。
【0107】
また、同様の目的でシリコーンオイル等のオイルを添加することもでき、ジメチルポリシロキサン、ジフェニルポリシロキサン、フェニルメチルシロキサン等のシリコーンオイル;アミノ変性ポリシロキサン、エポキシ変性ポリシロキサン、カルボキシル変性ポリシロキサン、カルビノール変性ポリシロキサン、メタクリル変性ポリシロキサン、メルカプト変性ポリシロキサン、フェノール変性ポリシロキサン等の反応性シリコーンオイルを挙げることができる。
【0108】
また、下記一般式(36)で表される繰り返し構造単位を持つ環状化合物、又はその化合物からの誘導体を添加することもできる。
【0109】
【化54】
[式(36)中、A1及びA2は、それぞれ独立に一価の有機基を表す。]
一般式(36)で表される繰り返し構造単位を持つ環状化合物として、市販の環状シロキサンをあげることができる。具体的には、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン等の環状ジメチルシクロシロキサン類;1,3,5−トリメチル−1,3,5−トリフェニルシクロトリシロキサン、1,3,5,7−テトラメチル−1,3,5,7−テトラフェニルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7,9−ペンタメチル−1,3,5,7,9−ペンタフェニルシクロペンタシロキサン等の環状メチルフェニルシクロシロキサン類;ヘキサフェニルシクロトリシロキサン等の環状フェニルシクロシロキサン類;3−(3,3,3−トリフルオロプロピル)メチルシクロトリシロキサン等のフッ素含有シクロシロキサン類;メチルヒドロシロキサン混合物、ペンタメチルシクロペンタシロキサン、フェニルヒドロシクロシロキサン等のヒドロシリル基含有シクロシロキサン類;ペンタビニルペンタメチルシクロペンタシロキサン等のビニル基含有シクロシロキサン類等の環状のシロキサンを挙げることができる。これらの環状シロキサン化合物は単独で用いても良いが、それらを混合して用いても良い。
【0110】
また、電荷輸送層形成用塗布液には、可塑剤、表面改質剤、酸化防止剤、光劣化防止剤等を添加することもできる。可塑剤としては、例えば、ビフェニル、塩化ビフェニル、ターフェニル、ジブチルフタレート、ジエチレングリコールフタレート、ジオクチルフタレート、トリフェニル燐酸、メチルナフタレン、ベンゾフェノン、塩素化パラフィン、ポリプロピレン、ポリスチレン、各種フルオロ炭化水素等が挙げられる。
【0111】
さらに、ヒンダートフェノール、ヒンダートアミン、チオエーテル又はホスファイト部分構造を持つ酸化防止剤を添加することもでき、環境変動時の電位安定性・画質の向上に効果的である。
【0112】
酸化防止剤としては以下のような化合物、例えばヒンダートフェノール系として「Sumilizer BHT−R」、「Sumilizer MDP−S」、「Sumilizer BBM−S」、「Sumilizer WX−R」、「Sumilizer NW」、「Sumilizer BP−76」、「Sumilizer BP−101」、「Sumilizer GA−80」、「SumilizerGM」、「Sumilizer GS」(以上住友化学社製);「IRGANOX1010」、「IRGANOX1035」、「IRGANOX1076」、「IRGANOX1098」、「IRGANOX1135」、「IRGANOX1141」、「IRGANOX1222」、「IRGANOX1330」、「IRGANOX1425WL」、「IRGANOX1520L」、「IRGANOX245」、「IRGANOX259」、「IRGANOX3114」、「IRGANOX3790」、「IRGANOX5057」、「IRGANOX565」(以上チバスペシャリティーケミカルズ社製);「アデカスタブAO−20」、「アデカスタブAO−30」、「アデカスタブAO−40」、「アデカスタブAO−50」、「アデカスタブAO−60」、「アデカスタブAO−70」、「アデカスタブAO−80」、「アデカスタブAO−330」(以上旭電化社製)が挙げられる。
【0113】
また、ヒンダートアミン系としては、「サノールLS2626」、「サノールLS765」、「サノールLS770」、「サノールLS744」、「チヌビン144」、「チヌビン622LD」、「マークLA57」、「マークLA67」、「マークLA62」、「マークLA68」、「マークLA63」、「スミライザーTPS」等が挙げられる。また、チオエーテル系として「スミライザーTP−D」、ホスファイト系として「マーク2112」、「マークPEP・8」、「マークPEP・24G」、「マークPEP・36」、「マーク329K」、「マークHP・10」等が挙げられ、特にヒンダートフェノール、ヒンダートアミン系酸化防止剤が好ましい。
【0114】
さらに、アルコール系若しくはケトン系の溶剤に溶解する樹脂、又は該樹脂以外の成分に溶解する樹脂を添加することで、放電ガス耐性、機械強度、耐傷性、粒子分散性、粘度コントロール、トルク低減、磨耗量コントロール、ポットライフの延長等の効果が得られる。アルコール系若しくはケトン系の溶剤に可溶な樹脂としては、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、ブチラールの一部がホルマールやアセトアセタール等で変性された部分アセタール化ポリビニルアセタール樹脂等のポリビニルアセタール樹脂(例えば、積水化学社製エスレックB、K)、ポリアミド樹脂、セルロ−ス樹脂、フェノール樹脂等が挙げられる。特に、電気特性上ポリビニルアセタール樹脂が好ましい。
【0115】
上記樹脂の分子量は2,000〜100,000が好ましく、5,000〜50,000がさらに好ましい。分子量は、2,000未満であると所望の効果が得られなくなる傾向にあり、他方、100,000と超えると溶解度が低くなり添加量が限られたり、塗布時に製膜不良の原因になる傾向がある。
【0116】
上記樹脂の添加量は、電荷輸送層の全固形分中1〜40重量%が好ましく、さらに好ましくは5〜30重量%である。1重量%よりも少ない場合は所望の効果が得られ難くなる傾向があり、他方、40重量%を超えると高温高湿下での画像ボケが発生しやすくなる傾向がある。また、それらの樹脂は単独で用いてもよいが、それらを混合して用いてもよい。
【0117】
また、塗布液調製工程又は塗布液調製工程後の電荷輸送層形成用塗布液には、触媒を添加することが好ましい。触媒としては、塩酸、酢酸、リン酸、硫酸等の無機酸;蟻酸、プロピオン酸、シュウ酸、パラトルエンスルホン酸、安息香酸、フタル酸、マレイン酸等の有機酸;水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム、アンモニア、トリエチルアミン等のアルカリ触媒が挙げられる。更に、以下に示すような系に不溶な固体触媒を用いることもできる。なお、系に不溶な固体触媒とは、触媒成分が一般式(3)で表される化合物、有機ケイ素化合物及びその構成成分、電荷輸送物質、結着樹脂、上記添加剤、水、溶剤等に不溶であれば特に限定されない。
【0118】
固体触媒としては、アンバーライト15、アンバーライト200C、アンバーリスト15E(以上、ローム・アンド・ハース社製);ダウエックスMWC−1−H、ダウエックス88、ダウエックスHCR−W2(以上、ダウ・ケミカル社製);レバチットSPC−108、レバチットSPC−118(以上、バイエル社製);ダイヤイオンRCP−150H(三菱化成社製);スミカイオンKC−470、デュオライトC26−C、デュオライトC−433、デュオライト−464(以上、住友化学工業社製);ナフィオン−H(デュポン社製)等の陽イオン交換樹脂;アンバーライトIRA−400、アンバーライトIRA−45(以上、ローム・アンド・ハース社製)等の陰イオン交換樹脂;Zr(O3PCH2CH2SO3H)2、Th(O3PCH2CH2COOH)2等のプロトン酸基を含有する基が表面に結合されている無機固体;スルホン酸基を有するポリオルガノシロキサン等のプロトン酸基を含有するポリオルガノシロキサン;コバルトタングステン酸、リンモリブデン酸等のヘテロポリ酸;ニオブ酸、タンタル酸、モリブデン酸等のイソポリ酸;シリカゲル、アルミナ、クロミア、ジルコニア、CaO、MgO等の単元系金属酸化物;シリカ−アルミナ、シリカ−マグネシア、シリカ−ジルコニア、ゼオライト類等複合系金属酸化物;酸性白土、活性白土、モンモリロナイト、カオリナイト等の粘土鉱物;LiSO4、MgSO4等の金属硫酸塩;リン酸ジルコニア、リン酸ランタン等の金属リン酸塩;LiNO3、Mn(NO32等の金属硝酸塩;シリカゲル上にアミノプロピルトリエトキシシランを反応させて得られた固体等のアミノ基を含有する基が表面に結合されている無機固体;アミノ変性シリコーン樹脂等のアミノ基を含有するポリオルガノシロキサン等が挙げられる。
【0119】
また、上記固体触媒を塗布液調製工程において用いると、電荷輸送層形成用塗布液の安定性が向上するので好ましい。これらの固体触媒の使用量は特に制限されないが、有機ケイ素化合物100重量部に対して0.1〜100重量部が好ましい。また、これらの固体触媒は、前述の通り、上記各成分に不溶であるので、反応後、常法に従い容易に除去することができる。
【0120】
塗布液調製工程における反応温度及び反応時間は、一般式(3)で表される化合物、有機ケイ素化合物等の原料化合物や触媒の種類及び使用量に応じて適宜選択されるものであるが、反応温度は好ましくは0〜100℃、より好ましくは10〜70℃、さらに好ましくは15〜50℃であり、反応時間は好ましくは10分〜100時間である。なお、反応時間が、前記上限値を超えるとゲル化が起こりやすくなる傾向にある。
【0121】
また、塗布液調製工程において、系に不溶な固体触媒を用いた場合は、強度、液保存安定性等を向上させる目的で、系に溶解する触媒、例えば金属キレート化合物を併用することが好ましい。そのような金属キレート化合物としては、前述のものに加え、アルミニウムトリエチレート、アルミニウムトリイソプロピレート、アルミニウムトリ(sec−ブチレート)、モノ(sec−ブトキシ)アルミニウムジイソプロピレート、ジイソプロポキシアルミニウム(エチルアセトアセテート)、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、アルミニウムビス(エチルアセトアセテート)モノアセチルアセトネート、アルミニウムトリス(アセチルアセトネート)、アルミニウムジイソプロポキシ(アセチルアセトネート)、アルミニウムイソプロポキシ−ビス(アセチルアセトネート)、アルミニウムトリス(トリフルオロアセチルアセトネート)、アルミニウムトリス(ヘキサフルオロアセチルアセトネート)等の有機アルミニウム化合物を使用することが好ましい。
【0122】
また、有機アルミニウム化合物以外には、ジブチルスズジラウリレート、ジブチルスズジオクチエート、ジブチルスズジアセテート等の有機スズ化合物;チタニウムテトラキス(アセチルアセトネート)、チタニウムビス(ブトキシ)ビス(アセチルアセトネート)、チタニウムビス(イソプロポキシ)ビス(アセチルアセトネート)等の有機チタニウム化合物;ジルコニウムテトラキス(アセチルアセトネート)、ジルコニウムビス(ブトキシ)ビス(アセチルアセトネート)、ジルコニウムビス(イソプロポキシ)ビス(アセチルアセトネート)等のジルコニウム化合物等も使用することができるが、安全性、低コスト、ポットライフ長さの観点から、有機アルミニウム化合物を使用することが好ましく、特にアルミニウムキレート化合物がより好ましい。これらの金属キレート化合物の使用量は特に制限されないが、有機ケイ素化合物100重量部に対して0.1〜20重量部が好ましく、0.3〜10重量部が特に好ましい。
【0123】
また、本実施形態において金属キレート化合物を用いた場合は、ポットライフ、硬化効率の点から、多座配位子を電荷輸送層形成用塗布液に添加することが好ましい。このような多座配位子としては、以下に示すようなもの及びそれらから誘導されるものを挙げることができる。
【0124】
具体的には、アセチルアセトン、トリフルオロアセチルアセトン、ヘキサフルオロアセチルアセトン、ジピバロイルメチルアセトン等のβ−ジケトン類;アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル等のアセト酢酸エステル類;ビピリジン及びその誘導体;グリシン及びその誘導体;エチレンジアミン及びその誘導体;8-オキシキノリン及びその誘導体;サリチルアルデヒド及びその誘導体;カテコール及びその誘導体;2−オキシアゾ化合物等の2座配位子;ジエチルトリアミン及びその誘導体;ニトリロトリ酢酸及びその誘導体等の3座配位子;エチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)及びその誘導体等の6座配位子等を挙げることができる。
【0125】
さらに、上記のような有機系配位子の他、ピロリン酸、トリリン酸等の無機系の配位子を挙げることができる。多座配位子としては、特に2座配位子が好ましく、下記一般式(37)で表される2座配位子がより好ましく、下記一般式(37)中のR12とR13が同一のものが特に好ましい。R12とR13とを同一にすることで、室温付近での配位子の配位力が強くなり、コーティング剤のさらなる安定化を図ることができる。
【0126】
【化55】
[式(37)中、R12及びR13は、それぞれ独立に炭素数1〜10のアルキル基、フッ化アルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基を示す。]
多座配位子の配合量は、任意に設定することができるが、用いる有機金属化合物1モルに対し、好ましくは0.01モル以上、より好ましくは0.1モル以上、更に好ましくは1モル以上である。
【0127】
塗布液調整工程における電荷輸送層形成用塗布液の調製は、無溶媒下で行うこともできるが、必要に応じて以下に述べる溶媒を用いて、上記各成分を混合又は攪拌して行うことができる。メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;テトラヒドロフラン;ジエチルエーテル、ジオキサン等のエーテル類等の他、種々の溶媒が使用できる。このような溶媒としては、沸点が100℃以下のものが好ましく、上記溶媒を任意に混合して使用することもできる。溶媒量は任意であるが、少なすぎると有機ケイ素化合物が析出しやすくなるため、有機ケイ素化合物1重量部に対して、好ましくは0.5〜30重量部、より好ましくは1〜20重量部添加する。
【0128】
次に、得られた電荷輸送層形成用塗布液を用いて電荷輸送層6を形成させる(シロキサン系樹脂含有層形成工程)。なお、塗布方法としては電荷発生層5を形成する際に述べたような通常の方法が挙げられ、本実施形態においては電荷発生層5上に塗布する。
【0129】
電荷輸送層形成用塗布液を硬化させる際の硬化温度及び硬化時間は特に制限されないが、硬化するシロキサン系樹脂の機械的強度及び化学的安定性の点から、硬化温度は好ましくは60℃以上、より好ましくは80〜200℃であり、硬化時間は好ましくは10分〜5時間である。また、電荷輸送層形成用塗布液の硬化により得られる電荷輸送層を高湿度状態に保つことは、電荷輸送層の特性の安定化を図る上で有効である。さらには、用途に応じてヘキサメチルジシラザンやトリメチルクロロシラン等を用いて電荷輸送層に表面処理を施して疎水化することもできる。
【0130】
電荷輸送層6の膜厚は、好ましくは5〜50μmであり、より好ましくは10〜40μmである。この膜厚が5μm未満であると帯電が困難となる傾向にあり、他方、50μmを越えると電子写真特性が著しく低下する傾向がある。
【0131】
電荷輸送層6上には、図3に示すように保護層7を設けることもできる。保護層7は、アルコールに溶解する樹脂、若しくは該樹脂以外の成分に溶解する樹脂を含んで構成される。また、この保護層に分子中に2つ以上のケイ素原子を有する化合物、その加水分解物及びその加水分解縮合物を含有させると強度の高い保護層を形成できるため好ましい。また、用いる成分等は電荷輸送層で述べたものとほぼ同様の成分を用いることが可能である。
【0132】
更に、保護層の形成に使用する溶剤としては、保護層の構成材料を溶解し、且つ、下層の電荷輸送層を犯しにくい溶剤が好ましく、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、t−ブタノール、シクロヘキサノール等のアルコール類、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン等のエーテル類、キシレン、p−シメン等の芳香族系溶剤、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ等のセルソルブ類が挙げられ、中でも特に沸点が60〜150℃であるアルコール類が、製膜性、塗布液の保存安定性の面で好ましい。
【0133】
また、保護層の膜厚は、好ましくは0.1〜10μm、より好ましくは0.5〜7μmである。この保護層を設ける際の塗布方法としては、ブレードコーティング法、マイヤーバーコーティング法、スプレーコーティング法、浸漬コーティング法、ビードコーティング法、エアーナイフコーティング法、カーテンコーティング法等の通常の方法を用いることができる。
【0134】
(画像形成装置及びプロセスカートリッジ)
図4は、本発明の画像形成装置の好適な一実施形態の基本構成を概略的に示す断面図である。図4に示す画像形成装置200は、本発明の電子写真感光体207と、電子写真感光体207を接触帯電方式により帯電させる帯電装置208と、帯電装置208に接続された電源209と、帯電装置208により帯電される電子写真感光体207を露光して静電潜像を形成する露光装置210と、露光装置210により形成された静電潜像をトナーにより現像してトナー像を形成する現像装置211と、現像装置211により形成されたトナー像を被転写体500に転写する転写装置212と、クリーニング装置213と、除電器214と、定着装置215とを備える。なお、この場合には、除電器214が設けられていないものもある。
【0135】
図4に示した帯電装置208は、感光体207の表面に接触型帯電部材(例えば、帯電ロール)を接触させて感光体に電圧を均一に印加し、感光体表面を所定の電位に帯電させるものである。
【0136】
接触型帯電部材としては、芯材の外周面に弾性層、抵抗層、保護層等を設けたローラ状のものが好適に用いられる。なお、接触型帯電部材の形状は、上記したローラ状の他、ブラシ状、ブレード状、ピン電極状等何れでもよく、画像形成装置の仕様や形態に合わせて任意に選択することができる。
【0137】
ローラ状の接触型帯電部材における芯材の材質としては、導電性を有するもの、例えば、鉄、銅、真鍮、ステンレス、アルミニウム、ニッケル等が用いられる。また、導電性粒子等を分散した樹脂成形品等を用いることができる。弾性層の材質としては、導電性あるいは半導電性を有するもの、例えば、ゴム材に導電性粒子あるいは半導電性粒子を分散したものが使用可能である。抵抗層及び保護層の材質としては結着樹脂に導電性粒子あるいは半導電性粒子を分散し、その抵抗を制御したものである。
【0138】
これらの接触型帯電部材を用いて感光体を帯電させる際には、接触型帯電部材に電圧が印加されるが、かかる印加電圧は直流電圧、直流電圧に交流電圧を重畳したもののいずれでもよい。
【0139】
なお、図4における接触型帯電部材の代わりに、コロトロン、スコロトロン等の非接触方式のコロナ帯電装置を用いることも可能である。これらは画像形成装置の仕様や形態に合わせて任意に選択することができる。
【0140】
露光装置210としては、電子写真感光体表面に、半導体レーザー、LED(light emitting diode)、液晶シャッター等の光源を所望の像様に露光できる光学系装置等を用いることができる。
【0141】
現像装置211としては、一成分系、ニ成分系等の正規または反転現像剤を用いた従来より公知の現像装置等を用いることができる。現像装置211に使用されるトナーの形状は特に限定されないが、高画質化、エコロジーの観点から球形トナーが好ましい。
【0142】
転写装置212としては、ローラー状の接触帯電部材の他、ベルト、フィルム、ゴムブレード等を用いた接触型転写帯電器、あるいはコロナ放電を利用したスコロトロン転写帯電器やコロトロン転写帯電器等、が挙げられる。
【0143】
クリーニング装置213は、転写工程後の電子写真感光体の表面に付着する残存トナーを除去するためのもので、これにより清浄面化された電子写真感光体は上記の画像形成プロセスに繰り返し供される。クリーニング装置としては、クリーニングブレードの他、ブラシクリーニング、ロールクリーニング等を用いることができるが、これらの中でもクリーニングブレードを用いることが好ましい。また、クリーニングブレードの材質としてはウレタンゴム、ネオプレンゴム、シリコーンゴム等が挙げられる。
【0144】
また、本発明の画像形成装置は、図4に示したように、イレース光照射装置214をさらに備えていてもよい。これにより、電子写真感光体が繰り返し使用される場合に、電子写真感光体の残留電位が次のサイクルに持ち込まれる現象が防止されるので、画像品質をより高めることができる。
【0145】
図5は本発明の画像形成装置の他の実施形態の基本構成を概略的に示す断面図である。図5に示す画像形成装置220は中間転写方式の画像形成装置であり、ハウジング400内において4つの電子写真感光体401a〜401d(例えば、電子写真感光体401aがイエロー、電子写真感光体401bがマゼンタ、電子写真感光体401cがシアン、電子写真感光体401dがブラックの色からなる画像をそれぞれ形成可能である)が中間転写ベルト409に沿って相互に並列に配置されている。ここで、画像形成装置220に搭載されている電子写真感光体401a〜401dは、それぞれ本発明の電子写真感光体である。
【0146】
電子写真感光体401a〜401dのそれぞれは所定の方向(紙面上は反時計回り)に回転可能であり、その回転方向に沿って帯電ロール402a〜402d、現像装置404a〜404d、1次転写ロール410a〜410d、クリーニングブレード415a〜415dが配置されている。現像装置404a〜404dのそれぞれにはトナーカートリッジ405a〜405dに収容されたブラック、イエロー、マゼンタ、シアンの4色のトナーが供給可能であり、また、1次転写ロール410a〜410dはそれぞれ中間転写ベルト409を介して電子写真感光体401a〜401dに当接している。
【0147】
さらに、ハウジング400内の所定の位置にはレーザー光源(露光装置)403が配置されており、レーザー光源403から出射されたレーザー光を帯電後の電子写真感光体401a〜401dの表面に照射することが可能となっている。これにより、電子写真感光体401a〜401dの回転工程において帯電、露光、現像、1次転写、クリーニングの各工程が順次行われ、各色のトナー像が中間転写ベルト409上に重ねて転写される。
【0148】
中間転写ベルト409は駆動ロール406、バックアップロール408及びテンションロール407により所定の張力をもって支持されており、これらのロールの回転によりたわみを生じることなく回転可能となっている。また、2次転写ロール413は、中間転写ベルト409を介してバックアップロール408と当接するように配置されている。バックアップロール408と2次転写ロール413との間を通った中間転写ベルト409は、例えば駆動ロール406の近傍に配置されたクリーニングブレード416により清浄面化された後、次の画像形成プロセスに繰り返し供される。
【0149】
また、ハウジング400内の所定の位置にはトレイ(被転写体トレイ)411が設けられており、トレイ411内の紙等の被転写体500が移送ロール412により中間転写ベルト409と2次転写ロール413との間、さらには相互に当接する2個の定着ロール414の間に順次移送された後、ハウジング400の外部に排紙される。
【0150】
なお、上述の説明においては中間転写体として中間転写ベルト409を使用する場合について説明したが、中間転写体は、上記中間転写ベルト409のようにベルト状であってもよく、ドラム状であってもよい。中間転写体として中間転写ベルト409のようなベルトの形状の構成を採用する場合、一般にベルトの厚さは50〜500μmが好ましく、60〜150μmがより好ましいが、材料の硬度に応じて適宜選択することができる。また、中間転写体としてドラム形状を有する構成を採用する場合、基材としては、アルミニウム、ステンレス鋼(SUS)、銅等で形成された円筒状基材を用いることが好ましい。この円筒状基材上に、必要に応じて弾性層を被覆し、該弾性層上に表面層を形成することができる。
【0151】
なお、本発明でいう被転写体とは、電子写真感光体状に形成されたトナー像を転写する媒体であれば特に制限はない。例えば、電子写真感光体から直接、紙等に転写する場合は紙等が被転写体であり、また、中間転写体を用いる場合には中間転写体が被転写体になる。
【0152】
更に、図6は、本発明の電子写真感光体を備えるプロセスカートリッジの好適な一実施形態の基本構成を概略的に示す断面図である。プロセスカートリッジ300は、電子写真感光体207とともに、帯電装置208、現像装置211、クリーニング装置(クリーニング手段)213、露光のための開口部218、及び、除電露光のための開口部217を取り付けレール216を用いて組み合わせ、そして一体化したものである。
【0153】
そして、このプロセスカートリッジ300は、転写装置212と、定着装置215と、図示しない他の構成部分とからなる画像形成装置本体に対して着脱自在としたものであり、画像形成装置本体とともに画像形成装置を構成するものである。
【0154】
上述の画像形成装置及びプロセスカートリッジにおいては、電気特性及び画像特性に優れる本発明の電子写真感光体を用いることによって、高水準の画像品質を得ることができる。
【0155】
【実施例】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明を更に具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。なお、以下の実施例において「部」は重量部を意味する。
【0156】
(実施例1)
以下の手順にて図3に示した電子写真感光体1と同様の構成を有する電子写真感光体を作製した。ホーニング処理を施した円筒状のAl基体上にジルコニウム化合物(商品名:オルガチックスZC540、マツモト製薬社製)100部、シラン化合物(商品名:A1100、日本ユニカー社製)10部、イソプロパノール400部及びブタノール200部からなる溶液を浸漬塗布し、150℃で10分間加熱乾燥し、0.1μmの下引き層を形成した。
【0157】
次いで、電荷発生物質としてX線回析スペクトルにおけるブラッグ角(2θ±0.2°)が7.4°、16.6°、25.5°、28.3°に強い回析ピークを持つクロロガリウムフタロシアニン結晶10部をポリビニルブチラール樹脂(商品名:エスレックBM−S、積水化学社製)10部及び酢酸ブチル1000部と混合し、ガラスビーズとともにペイントシェーカーで1時間処理して分散させて電荷発生層用塗布液を得た。得られた塗布液を下引き層上に浸漬塗布し、100℃で10分間加熱乾燥し、膜厚約0.15μmの電荷発生層を形成した。
【0158】
更に、下記構造式(38)で表されるベンジジン化合物20部及びビスフェノール(Z)ポリカーボネート樹脂(粘度平均分子量4.4×104)30部、モノクロロベンゼン150部、テトラヒドロフラン150部を混合して得られた塗布液を上記電荷発生層上に浸漬塗布し、115℃で1時間加熱乾燥し、20μmの電荷輸送層を形成した。
【0159】
【化56】
更に、シロキサン系樹脂形成成分として例示化合物(3−1)40部、例示化合物(I−10)40部及びシランカップリング剤(KBM−7402、信越化学社製)5部、更にメタノール40部を採取し良く混合し、触媒としてイオン交換樹脂(アンバーリスト15E)5部を加えた。2時間攪拌した後、ブタノール100部、さらに蒸留水5部を加え、室温にて15分攪拌し、イオン交換樹脂をろ過により取り除いた。更に、触媒としてアルミニウムトリスアセチルアセトネート1部、多座配位子としてアセチルアセトン1部、ポリビニルブチラール樹脂(商品名:エスレックKW−1、積水化学社製)5部、ヒンダードフェノール系酸化防止剤(商品名:Sumilizer MDP−S、住友化学社製)1部を加え、さらにシリカゾル(商品名:R812、アエロジル社製)10部、フッ素微粒子(商品名:ルブロンL2、ダイキン工業社製)3部を加えガラスビーズとともにペイントシェーカーにて分散し、保護層形成用塗布液(シロキサン系樹脂含有層形成用塗布液)を得た。この塗布液を上記電荷輸送層上に浸漬塗布し(塗布スピード約170mm/min)、130℃で1時間加熱乾燥し、3μmの保護層(シロキサン系樹脂含有層)を形成し、目的の電子写真感光体を得た。
【0160】
(実施例2)
実施例1と同様に、下引き層、電荷発生層、電荷輸送層を形成した。その後、シロキサン系樹脂形成成分、ポリビニルブチラール樹脂、微粒子、蒸留水、触媒、多座配位子、酸化防止剤の種類及び配合量(部)を表2のように変え、実施例1と同様に電荷輸送層上に3μmの保護層を形成し、目的の電子写真感光体を得た。なお、実施例2は分散工程を省略した。また、表1中、SumilizerBHTとは、ヒンダードフェノール系酸化防止剤(住友化学社製商品名)である。
【0161】
(実施例3)
実施例1と同様に、下引き層、電荷発生層、電荷輸送層を形成した。その後、シロキサン系樹脂形成成分、ポリビニルブチラール樹脂、微粒子、蒸留水、触媒、多座配位子、酸化防止剤の種類及び配合量(部)を表2のように変え、実施例1と同様に電荷輸送層上に3μmの保護層を形成し、目的の電子写真感光体を得た。
【0162】
(実施例4)
実施例1と同様に、下引き層、電荷発生層、電荷輸送層を形成した。その後、シロキサン系樹脂形成成分として例示化合物(3−1)40部、例示化合物(I−10)40部及びシランカップリング剤(商品名:KBM−7402、信越化学社製)5部、更にメタノール40部を採取し良く混合し、触媒として1N塩酸5部、さらに、蒸留水5部を加え、室温で15分攪拌した。その後、ポリビニルブチラール樹脂(商品名:エスレックKW−1、積水化学社製)5部、ヒンダードフェノール系酸化防止剤(商品名:Sumilizer MDP−S、住友化学社製)1部を加えて溶解させたものを上記電荷輸送層上に浸漬塗布し(塗布スピード約170mm/min)、130℃で1時間加熱乾燥して3μmの保護層を形成し、目的の電子写真感光体を得た。
【0163】
(実施例5)
実施例1と同様に、下引き層、電荷発生層、電荷輸送層を形成した。その後、シロキサン系樹脂形成成分、ポリビニルブチラール樹脂、蒸留水、触媒、多座配位子、酸化防止剤の種類及び配合量(部)を表2のように変え、実施例1と同様に電荷輸送層上に3μmの保護層を形成し、目的の電子写真感光体を得た。
【0164】
(実施例6)
電荷発生物質としてX線回析スペクトルにおけるブラッグ角(2θ±0.2°)が7.5°、9.9°、12.5°、16.3°、18.6°、25.1°、28.3°に強い回析ピークを持つヒドロキシガリウムフタロシアニン結晶10部を用いた以外は、実施例5と同様に、下引き層、電荷発生層、電荷輸送層、保護層を形成し、目的の電子写真感光体を得た。
【0165】
(実施例7)
円筒状のAl基板上に酸化亜鉛(商品名:SMZ−017N、テイカ社製)100部をトルエン500部と攪拌混合し、更にシランカップリング剤(商品名:A1100、日本ユニカー社製)2部を添加し5時間攪拌した。その後、トルエンを減圧蒸留にて留去し、120℃で2時間焼き付けを行った。得られた表面処理酸化亜鉛を蛍光X線により分析した結果、Si元素強度は亜鉛元素強度の1.8×10-4であった。
【0166】
表面処理を施した酸化亜鉛35部、硬化剤のブロック化イソシアネート(商品名:スミジュール3175、住友バイエルンウレタン社製)15部、ブチラール樹脂(商品名:BM−1、積水化学社製)6部、メチルエチルケトン44部を混合し、1mmφのガラスビーズを用いてサンドミルにて2時間分散して分散液を得た。得られた分散液に触媒としてジオクチルスズジラウレート0.005部、シリコーンボール(商品名:トスパール130、GE東芝シリコン社製)17部を添加して下引き層形成用塗布液を得た。この塗布液を浸漬塗布法でJIS A3003合金よりなる引き抜き管基材(直径84mm、長さ347mm)上に塗布し、160℃で100分の乾燥硬化を行い、膜厚20μmの下引き層を得た。その後、実施例1と同様に電荷発生層、電荷輸送層、保護層を形成し、目的の電子写真感光体を得た。
【0167】
(実施例8)
実施例1と同様に、下引き層、電荷発生層を形成した。その後、更に、シロキサン系樹脂形成成分として例示化合物(3−1)40部及び例示化合物(I−10)20部、テトラヒドロフラン50部、ブタノール30部、メタノール30部を混合し、触媒としてイオン交換樹脂(アンバーリスト15E)5部を加えた。2時間攪拌した後、さらに、蒸留水5部を加え、室温にて15分攪拌し、イオン交換樹脂をろ過により取り除き、ポリビニルブチラール樹脂(商品名:エスレックBXL、積水化学社製)20部、アルミニウムトリスアセチルアセトネート1部、アセチルアセトン1部、及びヒンダードフェノール系酸化防止剤(商品名:Sumilizer MDP-S、住友化学社製)1部を加えて得られた電荷輸送層用塗布液を、上記電荷発生層上に浸漬塗布し、125℃にて、1時間加熱乾燥し、18μmの電荷輸送層を形成し、目的の電子写真感光体を得た。
【0168】
(比較例1)
実施例1と同様に、下引き層、電荷発生層、電荷輸送層を形成した。その後、実施例1におけるシロキサン系樹脂形成成分の種類及び配合量(部)を表2のように変え、実施例1と同様に電荷輸送層上に3μmの保護層を形成し、目的の電子写真感光体を得た。
【0169】
【表2】
[塗布液のポットライフ評価試験]
実施例1〜8及び比較例1それぞれで用いた保護層形成用塗布液をサンプル瓶に移して密閉した。このサンプル瓶を40℃の温度下に保持してからゲル化、分離又は沈殿が発生するまでの時間を測定し、以下の基準:
A:20日以上
B:10日以上20日未満
C:5日以上10日未満
D:2日以上5日未満
E:2日未満
に基づいて塗布液のポットライフを評価した。得られた結果を表3に示す。
【0170】
表3に示したように、実施例1〜8で用いた保護層形成用塗布液は十分なポットライフを有していることが確認された。
【0171】
[プリント試験]
実施例1〜8及び比較例1それぞれで得られた電子写真感光体を用いて図6に示す画像形成装置を作製した。なお、電子写真感光体以外の要素は、Docu Centre Color 500(富士ゼロックス社製)と同様のものを用いた。
【0172】
次に、得られた画像形成装置を用いて、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)によるカラープリント試験を行った。試験は低温低湿(10℃、15%RH)、常温常湿(20℃、40%RH)、高温高湿(30℃、85%RH)の3条件で行い、初期及び5000万枚プリント後における画質、感光体の表面状態を評価した。なお、プリント用紙は中性紙を用い、常温常湿、低温低湿、高温高湿の順に行った。感光体の表面状態は、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)それぞれの感光体について、以下の基準:
A:傷、付着物ともに認められない
B:傷又は付着物が僅かに認められる(顕微鏡で確認可能)
C:傷又は付着物が僅かに認められる(ルーペで確認可能)
D:傷又は付着物が認められる(肉眼で確認可能)
E:傷又は付着物が顕著に認められる(肉眼で確認可能)
に基づいて評価した。得られた結果を表3に示す。
【0173】
【表3】
表3に示したように、実施例1〜8の電子写真感光体を搭載した画像形成装置の場合は、5000万枚プリント後であっても、画質及び感光体表面の状態が良好であることが確認された。
【0174】
【発明の効果】
以上説明した通り、本発明によれば、現像剤や放電生成物などに対する耐汚染性、並びに接触帯電器やクリーニングブレード等に対する耐久性が十分に高い電子写真感光体、並びに長期にわたって良好な画質を得ることが可能な画像形成装置及びプロセスカートリッジが提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の電子写真感光体の好適な一実施形態を示す模式断面図である。
【図2】本発明の電子写真感光体の他の実施形態を示す模式断面図である。
【図3】本発明の電子写真感光体の他の実施形態を示す模式断面図である。
【図4】本発明の画像形成装置の好適な一実施形態を示す概略構成図である。
【図5】本発明の画像形成装置の他の実施形態を示す概略構成図である。
【図6】本発明のプロセスカートリッジの好適な一実施形態を示す概略構成図である。
【符号の説明】
1…電子写真感光体、2…導電性基体、3…感光層、4…下引き層、5…電荷発生層、6…電荷輸送層、7…保護層、200、220…画像形成装置、207…電子写真感光体、208…帯電装置、209…電源、210…露光装置、211…現像装置、212…転写装置、213…クリーニング装置、214…除電器、215…定着装置、216…取り付けレール、217…除電露光のための開口部、218…露光のための開口部、300…プロセスカートリッジ、400…ハウジング、402a〜402d…帯電ロール、403…レーザー光源(露光装置)、404a〜404d・・・現像装置、405a〜405d…トナーカートリッジ、406…駆動ロール、407…テンションロール、408…バックアップロール、409…中間転写ベルト、410a〜410d…1次転写ロール、411…トレイ(被転写体トレイ)、412…移送ロール、413…2次転写ロール、414…定着ロール、415a〜415d…クリーニングブレード、416…クリーニングブレード、500…被転写体。

Claims (8)

  1. 導電性基体上に感光層が形成された電子写真感光体であって、
    前記感光層が、下記一般式(1)で表される構造単位と、下記一般式(2)で表される構造単位と、正孔輸送能を有する化合物から誘導される有機基と、を有するシロキサン系樹脂を含有するシロキサン系樹脂含有層を備えることを特徴とする電子写真感光体。
    [式(1)中、Yは主鎖中に炭素原子をつ以上含む2価の基を表し、式(2)中、Rはアルキレン基を表し、Zは酸素原子又は硫黄原子を表す。]
  2. 導電性基体上に感光層が形成された電子写真感光体であって、
    前記感光層が、下記一般式(1)で表される構造単位及び加水分解性基を有する有機ケイ素化合物と、下記一般式(3)で表される化合物と、を用いて得られるシロキサン系樹脂を含有するシロキサン系樹脂含有層を備えることを特徴とする電子写真感光体。
    [式(1)中、Yは主鎖中に炭素原子をつ以上含む2価の基を表し、式(3)中、Fは正孔輸送能を有する化合物から誘導される有機基を表し、Rはアルキレン基を表し、Zは酸素原子又は硫黄原子を表し、hは1〜4の整数を表す。]
  3. 前記正孔輸送能を有する化合物から誘導される有機基が、下記一般式(4)で表される有機基であることを特徴とする請求項1又は2に記載の電子写真感光体。
    [式(4)中、Ar、Ar、Ar及びArは同一でも異なっていてもよく、それぞれ置換又は未置換のアリール基を表し、Arは置換若しくは未置換のアリール基又はアリーレン基を表し、iは0又は1を表し、Ar〜Arのうちの少なくとも1つは前記一般式(2)又は(3)中のRとの結合手を有する。]
  4. 導電性基体上にシロキサン系樹脂含有層を含む感光層を形成させる電子写真感光体の製造方法であって、
    下記一般式(1)で表される構造単位及び加水分解性基を有する有機ケイ素化合物と下記一般式(3)で表される化合物とを用いてシロキサン系樹脂含有層形成用塗布液を調製する塗布液調製工程と、
    前記塗布液を用いてシロキサン系樹脂含有層を形成させるシロキサン系樹脂含有層形成工程と、
    を含むことを特徴とする電子写真感光体の製造方法。
    [式(1)中、Yは主鎖中に炭素原子をつ以上含む2価の基を表し、式(3)中、Fは正孔輸送能を有する化合物から誘導される有機基を表し、Rはアルキレン基を表し、Zは酸素原子又は硫黄原子を表し、hは1〜4の整数を表す。]
  5. 前記塗布液が金属キレート化合物を含有することを特徴とする、請求項4に記載の電子写真感光体の製造方法。
  6. 前記塗布液が多座配位子を含有することを特徴とする、請求項4又は5に記載の電子写真感光体の製造方法。
  7. 請求項1〜3のうちのいずれか一項に記載の電子写真感光体と、
    前記電子写真感光体を帯電させる帯電装置と、
    帯電した前記電子写真感光体を露光して静電潜像を形成させる露光装置と、
    前記静電潜像を現像してトナー像を形成する現像装置と、
    前記トナー像を被転写体に転写する転写装置と、
    を備えることを特徴とする画像形成装置。
  8. 請求項1〜3のうちのいずれか一項に記載の電子写真感光体と、
    前記電子写真感光体を帯電させる帯電装置、帯電した前記電子写真感光体を露光して静電潜像を形成させる露光装置、並びに前記電子写真感光体をクリーニングするクリーニング装置から選ばれる少なくとも1種と、
    を備えることを特徴とするプロセスカートリッジ。
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