JP2005299948A - マイクロ波焼成炉 - Google Patents

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義博 久松
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和彦 刀川
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Abstract

【課題】 焼成室を画成する発熱体エレメントを構成している内殻壁が熱衝撃によって破損せず、寿命を延ばすことができるマイクロ波焼成炉を得る。
【解決手段】 焼成室23を区画する発熱体エレメント33の隔壁35が、マイクロ波の照射によって自己発熱すると共に照射されたマイクロ波の一部を透過させる材料で形成された内殻壁35bと、マイクロ波の透過を許容する断熱性材料で形成されて前記内殻壁35bの外周を覆う外殻壁35aとを備えたマイクロ波焼成炉31において、前記内殻壁35bと前記外殻壁35aとの間に、焼成室23内の熱の対流路となる隙間39を確保すると共に、前記内殻壁35bは前記外殻壁35aに対して全方位に所定量の相対移動が可能に取り付けられる。
【選択図】 図1

Description

本発明は、陶磁器材料やファインセラミックス材料などで形成された被焼成体を焼成するためのマイクロ波焼成炉に関するものである。
近年、マイクロ波加熱によって陶磁器材料やファインセラミックスを焼成することが提案され、既に実用化が始まっている。
マイクロ波加熱により被焼成体を焼成する場合、被焼成体が均質なもので有れば原理的にはマイクロ波が被焼成体の各部分を均一に加熱することになる。しかし、焼成処理初期時、炉内の雰囲気温度は被焼成体の表面温度よりもかなり低温であるため、被焼成体の表面から熱が放射され、結果的に被焼成体の中心部と表面の間に温度勾配を生じ、クラックが発生し易い。
更に、マイクロ波加熱の特性として、同一物質であれば、温度が高いほど誘電損が大きい。従って、一旦温度勾配が生じれば、温度の高い部分のマイクロ波吸収効率が高く、マイクロ波吸収効率の差が更に進み、部分的な局所加熱が起こる。
このようにして、一旦温度勾配が生じれば、マイクロ波加熱により温度差がより拡大されて、これにより、クラックの発生が助長される。
また、マイクロ波加熱による焼成では、被焼成体の材質が、常温での誘電損が小さいセラミックスの主材料であるアルミナやシリカ等を原料としている場合に、低温域昇温でのマイクロ波加熱によるエネルギ効率が悪いという問題も有していた。
そこで、このような温度勾配の発生を抑止して、クラックの発生を低減させることのできるマイクロ波焼成炉として、図5に示す構成のものが提案された(例えば、特許文献1参照)。
このマイクロ波焼成炉1は、マイクロ波空間2を画成するキャビティ3と、このキャビティ3に導波管4を介して接続されてキャビティ3内にマイクロ波を放射するマイクロ波発生手段としてのマグネトロン6と、キャビティ3内に放射されたマイクロ波を攪拌するマイクロ波攪拌手段8と、キャビティ3内に設置されたブランケット10と、ブランケット10の周囲を囲った補助ブランケット11とを備えた構成である。
キャビティ3は、少なくとも内面が、マイクロ波をマイクロ波空間2に反射し、マイクロ波の漏洩を防止する構成となっている。
マイクロ波攪拌手段8は、キャビティ3内に配置された攪拌羽根14と、キャビティ3の外部に配置された駆動モータ16と、駆動モータ16の回転を攪拌羽根14に伝達する回転伝達軸18とを備え、攪拌羽根14の回転によって、キャビティ3内の雰囲気を攪拌する。
ブランケット10は、被焼成体21を設置する焼成室23を区画形成したもので、焼成室23を区画形成している隔壁25が、外殻壁25aと、内殻壁25bとの二重壁構造になっている。
外殻壁25aは、断熱性を有すると共に、マイクロ波の透過を許容する材料で形成したもので、具体的には、アルミナファイバーや、発泡アルミナ等で形成されている。
内殻壁25bは外部から照射されたマイクロ波によって自己発熱し、且つ、マイクロ波の一部を焼成室23内まで透過可能な誘電材料によって形成されている。
この内殻壁25bに好適な誘電材料としては、例えば、被焼成体21の焼成温度付近の高温域で被焼成体21と同等以上に自己発熱する高温域用発熱材料が利用される。被焼成体21が陶磁器であればムライト系材料が好ましい。
補助ブランケット11は、ブランケット10の周囲を断熱空間として、ブランケット10からその周囲の雰囲気への放熱による温度勾配の発生を抑止するためのもので、ブランケット10の外殻壁25aと同様に、断熱性を有すると共にマイクロ波の透過を許容するアルミナファイバーや、発泡アルミナ等の断熱材料で形成されている。
特開2002−130960号公報(第3頁,図1)
以上のように、焼成室23を画成するブランケット10の隔壁25を、照射されたマイクロ波によって自己発熱すると共に、マイクロ波の一部を焼成室23内に透過可能な内殻壁25bと、その周囲を囲う断熱性材料製の外殻壁25aとで構成すると、被焼成体21に対するマイクロ波加熱の進行に並行して、内殻壁25b自体の発熱によって焼成室23内の雰囲気が昇温すると共に、焼成室23から外部への放熱が外殻壁25aによって抑止される。
従って、被焼成体21の昇温に応じて、焼成室23内の雰囲気が高温に安定維持されるため、被焼成体21の表面からその周囲の雰囲気への放熱が抑えられる。
その結果、被焼成体の中心部と表面との間に温度勾配が発生し難くなり、温度勾配の発生に起因したクラックの発生を防止し、安定した焼成が可能になる。
ところが、従来の隔壁25は、断熱を主目的とした外殻壁25aと発熱を主目的とした内殻壁25bとが互いに密着した状態で、二重壁構造を形成しているため、焼成時に内殻壁25bが高温域まで一気に昇温される時、或いは、焼成後に冷却された時に、これらの外殻壁25aと内殻壁25bとの間には、これらの両壁材の熱膨張差によって、大きな熱衝撃が作用し、例えばムライト系材料製の内殻壁25bに破損が生じ易く、温度勾配の発生を防止するための二重壁構造の寿命が短くなる虞があった。
また、内殻壁25bに使用されているムライト系材料は、被焼成体21の焼成温度に近い高温域では高い発熱性を示すが、常温を含む低温域では発熱性が低い。従って、マイクロ波加熱による加熱初期の低温域昇温時は、内殻壁25b自体の発熱が小さく、常温での誘電損が小さい被焼成体を焼成するような場合には、従来と同様に、効率良く被焼成体を加熱することができないという問題を残す。
本発明は、焼成室を画成する内殻壁と外殻壁との二重壁構造の隔壁において、該隔壁を構成している内殻壁が熱衝撃によって破損することがなく、従って、二重壁構造の隔壁の寿命を延ばして、焼成室内における温度勾配の発生防止効果を長期に渡って安定維持することができるマイクロ波焼成炉を提供すること、更には、低温域昇温及び高温域昇温のそれぞれを、マイクロ波加熱のみで効率良く実現することができ、常温での誘電損が小さい被焼成体を焼成するような場合でも、効率良く焼成することができるマイクロ波焼成炉を提供することを目的とする。
上記目的は下記構成により達成される。
(1) 焼成室を区画し且つマイクロ波の照射によって自己発熱すると共にマイクロ波の一部を透過させる内殻壁と、マイクロ波の透過を許容する断熱性材料で形成されて前記内殻壁の外周を覆う外殻壁とで形成されたマイクロ波焼成炉において、
前記焼成室を画成する各内殻壁と前記外殻壁との間に、前記焼成室内の熱の対流路となる隙間を確保すると共に、各内殻壁を前記外殻壁に対し全方位に所定量の相対移動が可能に取り付けたことを特徴とするマイクロ波焼成炉。
(2) 上記(1)において、前記内殻壁は、マイクロ波の照射によって主として焼成温度となる高温域で自己発熱する高温域用発熱材により形成し、
前記外殻壁には、マイクロ波の照射によって主として常温を含む低温域で自己発熱すると共にマイクロ波の一部を透過させる低温域用発熱材製の補助発熱体を、埋設装備したことを特徴とするマイクロ波焼成炉。
(3) 上記(2)において、前記低温域用発熱材は、常温を含む低温域から焼成温度となる高温域未満で前記高温域用発熱材より高い発熱量を呈し、焼成温度となる高温域では、前記高温域用発熱材と同等又はそれ以下の発熱量となることを特徴とするマイクロ波焼成炉。
(4) 上記(2)又は(3)において、前記補助発熱体は、前記内殻壁の中央域に対応する範囲で、前記外殻壁に埋設装備したことを特徴とするマイクロ波焼成炉。
焼成室を区画する内殻壁と外殻壁との二重壁構造の隔壁は、外殻壁と内殻壁との間に焼成室内の熱の対流路となる隙間が確保されて、この隙間を流れる対流によって外殻壁と内殻壁との間の温度差が低減され、更に、内殻壁が全方位に所定量の相対移動が可能であるため、外殻壁及び内殻壁が互いに熱膨張を拘束し合うことがなくなり、マイクロ波加熱による昇温時に、外殻壁及び内殻壁のそれぞれに対して熱衝撃の作用が軽減される。
従って、内殻壁が熱衝撃によって破損することがなくなり、二重壁構造の隔壁の寿命を延ばして、焼成室内における温度勾配の発生防止効果を長期に渡って安定維持することができる。
以下、本発明に係るマイクロ波焼成炉の好適な実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明に係るマイクロ波焼成炉の一実施の形態を示したものである。
この一実施の形態のマイクロ波焼成炉31は、マイクロ波加熱によって陶磁器材料やファインセラミックスなどの被焼成体21を焼成するもので、マイクロ波空間2を画成するキャビティ3と、このキャビティ3に導波管4を介して接続されてキャビティ3内にマイクロ波を放射するマイクロ波発生手段としてのマグネトロン6と、キャビティ3内に放射されたマイクロ波を攪拌するマイクロ波攪拌手段8と、キャビティ3内に設置された後述する発熱体エレメント33とを備えた構成である。
キャビティ3は、少なくとも内面が、マイクロ波をマイクロ波空間2に反射し、マイクロ波の漏洩を防止する構成となっている。
マイクロ波攪拌手段8は、キャビティ3内に配置された攪拌羽根14と、キャビティ3の外部に配置された駆動モータ16と、駆動モータ16の回転を攪拌羽根14に伝達する回転伝達軸18とを備えた構成で、攪拌羽根14の回転によって、キャビティ3内の雰囲気を攪拌する。
発熱体エレメント33は、被焼成体21を設置する焼成室23を形成すると共に、自己発熱して被焼成体21を加熱するもので、焼成室23を区画形成している隔壁35が、外殻壁35aと、内殻壁35bとの二層構造になっている。
外殻壁35aは、断熱性を有すると共に、マイクロ波の透過を許容する材料で形成したもので、具体的には、アルミナファイバーや、発泡アルミナ等で形成されている。
この外殻壁35aは、厚みを大きくする程、焼成室23や発熱体エレメント33から外部への放熱を押さえることができる。
内殻壁35bは外部から照射されたマイクロ波によって自己発熱し、且つ、照射されたマイクロ波の一部を焼成室23内の被焼成体21まで透過可能な誘電材料によって形成されている。
更に詳述すると、内殻壁35bは、マイクロ波の照射によって主として焼成温度となる高温域で自己発熱する高温域用発熱材により形成されている。
ここに、高温域用発熱材は、マイクロ波加熱による単位体積当たりの発熱量が、被焼成体21の単位体積当たりの発熱量よりも大きいことが必須であり、具体的には、ムライト系材料、窒化珪素系材料、アルミナなどが挙げられる。焼成する被焼成体21の温度特性によって、発熱量が適した材料を選択する。
なお、この高温域用発熱材には、上記の材料に、マイクロ波吸収率の大きい金属酸化物(例えば、マグネシア、ジルコニア、酸化鉄など)、又は無機材料(例えば炭化ケイ素など)を小量添加して、発熱特性を調整するようにしても良い。
本実施の形態の場合、発熱体エレメント33の隔壁35は、焼成室23を区画する上面、下面、前面、後面、右側面、左側面の各面が、図2に示す隔壁ユニット37で構成されていて、各面毎に、分割可能に組み立てられている。
隔壁ユニット37は、図2及び図3に示すように、厚肉平板状の外殻壁35aの内側に、薄肉平板状の内殻壁35bを取り付けて、外殻壁35aと内殻壁35bとからなる二重壁構造を形成している。
外殻壁35aは、その四隅に突設した支柱部38aに、内殻壁35bの周縁が嵌合可能な支持溝38bを形成したものである。
各支柱部38aに形成された支持溝38bは、外殻壁35aと内殻壁35bとの間に焼成室23内の熱の対流路となる隙間39を確保するように装備位置が設定されている。
隙間39による対流路には、図2に矢印(イ)で示すように、内殻壁35bの外周部に空いた開口から焼成室23内の熱流が流入して、隙間39内の温度差を無くす。
また、支持溝38bは、内殻壁35bがその外側を覆う外殻壁35aに対して全方位(板厚方向と、面方向の双方を含む)に所定量の相対移動が可能なように、溝の深さ寸法や、溝の幅寸法が設定されている。
即ち、本実施の形態のユニット37は、外殻壁35aと内殻壁35bとの間に、焼成室23内の熱の対流路となる隙間39を確保すると共に、各内殻壁35bはその外側を覆う外殻壁35aに対して全方位に所定量の相対移動が可能に取り付けられている。
また、外殻壁35aには、マイクロ波の照射によって主として常温を含む低温域で自己発熱すると共に照射されたマイクロ波の一部を透過させる低温域用発熱材製の補助発熱体41を、埋設装備している。
そして、外殻壁35aの中心部には、内殻壁35bの中心部が撓んで外殻壁35aに接触することを防止するための位置規制突起38cが突設されている。
この位置規制突起38cは、内殻壁35bの中心部が撓んで補助発熱体41に接触することを回避すると同時に、外殻壁35aと内殻壁35bとの間に上記の隙間39を確保するスペーサとして機能する。
補助発熱体41に使用される低温域用発熱材とは、常温を含む低温域から焼成温度となる高温域未満で、内殻壁35bに使用されるムライト系材料等の高温域用発熱材より高い発熱量を呈し、焼成温度となる高温域では、上記高温域用発熱材と同等又はそれ以下の発熱量となる誘電材料を指す。
詳述すれば、補助発熱体41に使用される低温域用発熱材は、マイクロ波による単位体積当たりの発熱量が、常温時は被焼成体21を構成する材料の単位体積当たりの数倍から数十倍の発熱量を呈し、焼成温度になる高温域では、高温域用発熱材と同等又はそれ以下の発熱量を呈するマイクロ波吸収性に優れた材料が使用される。具体的には、例えば、マグネシア、ジルコニア、酸化鉄、炭化ケイ素などである。
本実施形態の場合、補助発熱体41は、球形又は直方体状の小寸法のチップで、内殻壁35bの中央域に対応する範囲で、外殻壁35aの内表面に埋設装備されている。
図4は、マイクロ波加熱時における内殻壁35b及び補助発熱体41の加熱温度と単位時間当たりの昇温量の相関を示したもので、図中の曲線f1は内殻壁35bに高温域用発熱材としてムライト系材料を使用した場合の加熱温度と単位時間当たりの昇温量の相関を示し、曲線f2は補助発熱体41に低温域用発熱材として炭化ケイ素を使用した場合の加熱温度と単位時間当たりの昇温量の相関を示している。
以上のマイクロ波焼成炉31によれば、マイクロ波発生手段であるマグネトロン6から発熱体エレメント33にマイクロ波が照射されると、発熱体エレメント33がマイクロ波加熱によって昇温すると同時に、発熱体エレメント33を透過したマイクロ波によって焼成室23内の被焼成体21がマイクロ波加熱によって昇温する。
そして、このような焼成処理時、被焼成体21に対するマイクロ波加熱の進行に並行して、内殻壁35b自体の発熱によって焼成室23内の雰囲気が昇温すると共に、焼成室23及び内殻壁35bから外部への放熱が断熱性に優れた外殻壁35aによって抑止される。
従って、被焼成体21の昇温に応じて、焼成室23内の雰囲気が高温に安定維持されるため、被焼成体21の表面からその周囲の雰囲気への放熱が抑えられる。
その結果、被焼成体21の中心部と表面との間に温度勾配が発生し難くなり、温度勾配に起因したクラックの発生を防止し、安定した焼成が可能になる。
しかも、焼成室23を区画する発熱体エレメント33の二重壁構造の隔壁35は、外殻壁35aと内殻壁35bとの間に焼成室23内の熱の対流路となる隙間39が確保されて、この隙間39を流れる対流によって外殻壁35aと内殻壁35bとの間の温度差が低減され、更に、内殻壁35bが全方位に所定量の相対移動が可能であるため、外殻壁35a及び内殻壁35bが互いに熱膨張を拘束し合うことがなくなり、マイクロ波加熱による昇温時に、外殻壁35a及び内殻壁35bのそれぞれに対して熱衝撃の作用が軽減される。
従って、内殻壁35bが熱衝撃によって破損することがなくなり、二重壁構造の隔壁35の寿命を延ばして、焼成室23内における温度勾配の発生防止効果を長期に渡って安定維持することができる。
また、上記の焼成処理時、マイクロ波加熱による加熱初期の低温域昇温時は、発熱体エレメント33の隔壁35の内、外殻壁35aに埋設装備した低温域用発熱材製の補助発熱体41が、高いエネルギ効率で発熱して、周囲の温度上昇を早める。そして、マイクロ波加熱が進んで、発熱体エレメント33の隔壁35が所定の高温域まで昇温すると、内殻壁35bを形成している高温域用発熱材が、本来の高いエネルギ効率で発熱して、周囲の温度上昇を担う。
従って、低温域昇温及び高温域昇温のそれぞれを、マイクロ波加熱のみで効率良く実現することができ、例えば、被焼成体21の材質が、常温での誘電損が小さいセラミックスの主材料であるアルミナやシリカ等を原料としている場合でも、高いエネルギ効率で円滑に焼成を進めることができる。
しかも、低温域昇温及び高温域昇温のそれぞれが、低温域用発熱材及び高温域用発熱材によって高いエネルギ効率によってなされ、これらの低温域用発熱材や高温域用発熱材からの熱輻射によって、周囲の温度が低温域から高温域まで、安定して加熱されるため、発熱体エレメント33によって画成された焼成室23内の雰囲気温度だけでなく、発熱体エレメント33外部のマイクロ波空間までが、被焼成体21と差異無く加熱昇温され、被焼成体21と周囲雰囲気との間の温度差の発生が抑制される。
従って、低温域から高温域まで、被焼成体21からの放熱を抑制し、被焼成体21の表面と内深部との間に温度勾配の発生を防止することができる。
従って、温度勾配に起因したクラックの発生を防止でき、高品位な焼成が可能になる。
また、本実施の形態のマイクロ波焼成炉31では、補助発熱体41に使用される低温域用発熱材には、常温を含む低温域から焼成温度となる高温域未満で、内殻壁35bに使用されるムライト系材料等の高温域用発熱材より高い発熱量を呈し、焼成温度となる高温域では、上記高温域用発熱材と同等又はそれ以下の発熱量となる誘電材料を使用したため、マイクロ波加熱時における低温域における昇温速度と、高温域における昇温速度を、変動の少ない安定した昇温幅に抑えた温度制御が可能になり、低温域から高温域まで、高いエネルギ効率で安定した焼成処理を行うことができ、クラック等の発生を防止する高精度な加熱焼成を実現することができる。
また、本実施の形態のマイクロ波焼成炉31では、内殻壁35bの中央域に対応する範囲で、補助発熱体41を外殻壁35aに埋設装備したため、低温域用発熱材である補助発熱体41の発熱による内殻壁35bの加熱は、内殻壁35bの中央域に集中し、局部的な熱変形を生じ易い内殻壁35bの周辺部には、それほど影響しない。
即ち、内殻壁35bは、補助発熱体41からの加熱による熱膨張を中央域の範囲に分散させて、外殻壁35aに支持される周縁部に局所的に大きな熱変形が生じることを防止することができ、周縁部の急激な変形に起因した内殻壁35bの破損を防止することができ、内殻壁35bの長寿命化を促進することができる。
なお、外殻壁35aと内殻壁35bとの間に隙間を確保するための外殻壁35aと内殻壁35bとの連結構造、内殻壁35bを全方位に所定量の移動可能に支持するための構造等は、上記実施の形態で示した構造に限定するものではない。
本発明に係るマイクロ波焼成炉の一実施の形態の概略構成図である。 図1に示した発熱体エレメントの隔壁の外殻壁と内殻壁との連結構造を示す斜視図である。 図2のIII−III矢視図である。 本発明の一実施の形態のマイクロ波焼成炉で使用している内殻壁及び補助発熱体のマイクロ波加熱による昇温特性図である。 従来のマイクロ波焼成炉の概略構成図である。
符号の説明
2 マイクロ波空間
3 キャビティ
4 導波管
6 マグネトロン
8 マイクロ波攪拌手段
14 攪拌羽根
16 駆動モータ
21 被焼成体
23 焼成室
31 マイクロ波焼成炉
33 発熱体エレメント
35 隔壁
35a 外殻壁
35b 内殻壁
39 隙間
41 補助発熱体

Claims (4)

  1. 焼成室を区画し且つマイクロ波の照射によって自己発熱すると共にマイクロ波の一部を透過させる内殻壁と、マイクロ波の透過を許容する断熱性材料で形成されて前記内殻壁の外周を覆う外殻壁とで形成されたマイクロ波焼成炉において、
    前記焼成室を画成する各内殻壁と前記外殻壁との間に、前記焼成室内の熱の対流路となる隙間を確保すると共に、各内殻壁を前記外殻壁に対し全方位に所定量の相対移動が可能に取り付けたことを特徴とするマイクロ波焼成炉。
  2. 前記内殻壁は、マイクロ波の照射によって主として焼成温度となる高温域で自己発熱する高温域用発熱材により形成し、
    前記外殻壁には、マイクロ波の照射によって主として常温を含む低温域で自己発熱すると共にマイクロ波の一部を透過させる低温域用発熱材製の補助発熱体を、埋設装備したことを特徴とする請求項1に記載のマイクロ波焼成炉。
  3. 前記低温域用発熱材は、常温を含む低温域から焼成温度となる高温域未満で前記高温域用発熱材より高い発熱量を呈し、焼成温度となる高温域では、前記高温域用発熱材と同等又はそれ以下の発熱量となることを特徴とする請求項2に記載のマイクロ波焼成炉。
  4. 前記補助発熱体は、前記内殻壁の中央域に対応する範囲で、前記外殻壁に埋設装備したことを特徴とする請求項2又は3に記載のマイクロ波焼成炉。
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