JP2005298237A - 防曇性物品およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 無機微粒子群が無機物品の表面に結合されて複数の凸部が形成されており、親水性有機ポリマーとシリコンアルコキシドの重合物を含んでなる防曇被膜が、前記無機物品の表面を覆うように形成されていることを特徴とする防曇性物品である。この防曇性物品において、前記無機微粒子群は酸化錫微粒子またはコロイダルシリカであることが好ましい。
【選択図】 図1
Description
上述した特開2001−152137号公報に記載の技術を用いて、物品の防曇性を向上させることを検討した。そのためには、吸水性有機−無機複合被膜の膜厚を厚くするとよい。つまり、防曇性のために必要な防曇被膜の単位面積あたりの体積を、所定量以上確保するようにしたのである。そこで、この複合被覆を厚くしたところ、耐摩耗性などの耐久性が劣化してしまうことが明らかとなった。
無機微粒子群が無機物品の表面に結合されて複数の凸部が形成されており、
親水性有機ポリマーとシリコンアルコキシドの重合物を含んでなる防曇被膜が、前記無機物品の表面を覆うように形成されていることを特徴とする防曇性物品である。
請求項1に記載の防曇性物品において、
前記凸部の平均高さが300nm以下である防曇性物品である。
請求項1または2に記載の防曇性物品において、
前記複数の凸部の全ての高さが所定の範囲内にある防曇性物品。
性物品である。
請求項1〜3のいずれか1項に記載の防曇性物品において、
前記無機微粒子群は酸化錫微粒子である防曇性物品である。
請求項1〜3のいずれか1項に記載の防曇性物品において、
前記無機微粒子群はコロイダルシリカであり、無機バインダーを介して前記無機物品の表面に結合されている防曇性物品である。
請求項5に記載の防曇性物品において、
前記コロイダルシリカの粒径が20〜300nmである防曇性物品である。
請求項5に記載の防曇性物品において、
前記コロイダルシリカは、粒径の異なる2つの微粒子群を含んでなる防曇性物品である。
請求項5〜7のいずれか1項に記載の防曇性物品において、
前記無機バインダーはSiO2を主成分とする酸化物である防曇性物品である。
請求項1〜8のいずれか1項に記載の防曇性物品において、
前記防曇被膜は、前記複数の凸部の隙間を充填して被覆されている防曇性物品である。
請求項1〜9のいずれか1項に記載の防曇性物品において、
前記防曇被膜の厚みが20〜150nmである防曇性物品である。
請求項1〜10のいずれか1項に記載の防曇性物品において、
前記親水性有機ポリマーはポリビニルピロリドンである防曇性物品である。
請求項1〜11のいずれか1項に記載の防曇性物品において、
前記シリコンアルコキシドの重合物は、シリコン原子に結合した親水性の有機基を含む防曇性物品である。
請求項12に記載の防曇性物品において、
前記シリコン原子に結合した親水性の有機基は、アミノ基を含む有機基である防曇性物品である。
無機物品の表面に無機微粒子群を直接または無機バインダーを介して結合して複数の凸部を形成し、
親水性有機ポリマーとシリコンアルコキシドの重合物を含んでなる防曇被膜を、前記無機物品の表面を覆うように形成することを特徴とする防曇性物品の製造方法である。
1.外観評価
フローコートによって発生する防曇被膜の塗布ムラやスジ等の欠点を、目視にて判定した。判定基準は以下の通りである。
○:ムラ・スジ等なく表面が均一である
△:若干ムラやスジが見られるが、透過したとき視界を妨げるほどではない
×:ヘイズ(白濁による曇り)やムラ等により視界が妨げられる
室温に保持した防曇被膜付きガラスに呼気を一定量拭き掛け、曇りの程度を目視にて判断した。判定基準は以下の通りである。
◎:呼気法によっても全く曇らない
○:呼気法によって若干の曇りは発生する
△:呼気によって水滴や水膜が形成される
×:通常のガラス板と同等か、それ以上に曇る
湿布を用いて膜表面を往復して擦り、付いた傷の程度および試験後の防曇性を目視にて判定した。判定基準は以下の通りである。
○:目視で傷が確認できず、防曇性も維持されている
△:目視で傷が確認され、防曇性は維持または若干低下する
×:目視で傷や膜剥離が確認され、防曇性も著しく低下する
(A)無機凸部下地形成用コーティング液の調製
エタノール系溶媒(AP−7、日本アルコール販売(株))、触媒として濃塩酸(HCl、キシダ化学(株)製)、無機微粒子としてコロイダルシリカ水分散溶液(KE−W10、(株)日本触媒製、粒径110nm、固形分濃度15質量%)、バインダーとしてテトラエトキシシラン(以下、TEOSと略することがある)(KBE−04、信越化学工業(株)製)を適宜混合し、サンプル瓶にて約20時間撹拌してコーティング液を得た。無機凸部下地形成用コーティング液の固形分組成比を表1(A)に示す。なお、TEOSは、コロイダルシリカを物品表面に固着するバインダーとして含ませている。
――――――――――――――――――――――――――――
(A) (B)
――――――――――――――――――――――――――――
KE−W10(質量%) 0.7 0.56
SiO2(質量%) 0.3 0.24
HCl(質量%) 0.1 0.1
AP−7(質量%) 98.9 99.1
――――――――――――――――――――――――――――
*SiO2量は、添加したTEOSが100%加水分解したとして算出した値である。
上述の(A)で得られたコーティング液を、基体として洗浄したソーダライムガラス板(100×100×3.4mm)上にフローコートし、無機凸部下地を形成した。なお、フローコートは温度20℃、湿度30%に調整した室内で実施した。無機凸部下地の形成後は自然乾燥し、620℃に加熱した電気炉中にて10分間加熱して、無機凸部下地付きガラス板を得た。
溶媒としてAP−7、触媒として濃塩酸、無機成分としてテトラエトキシシラン、親水性有機ポリマーとしてポリビニルピロリドン(東京化成(株)製、K−90、MW:630,000)5質量%のAP−7溶液、精製水を適宜混合し、サンプル瓶にて約20時間撹拌してコーティング液を得た。なお、撹拌は20℃に設定した恒温槽中にて行った。有機−無機複合防曇被膜形成用コーティング液の固形分組成比を表2(a)に示す。
――――――――――――――――――――――――――――
(a) (b)
――――――――――――――――――――――――――――
HCl(質量部) 0.01 0.01
SiO2(質量部) 0.5 0.5
PVP(質量部) 0.5 0.6
H2O(質量部) 0.45 0.45
AP−7(質量部) 残部 残部
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
合 計 100 100
――――――――――――――――――――――――――――
*PVP:ポリビニルピロリドン
*SiO2量は、添加したTEOSが100%加水分解したとして算出した値である。
上述の(1)で得られた無機凸部下地付きガラス板は予め純水で洗浄した。この上に、上述の(a)で得られたコーティング液をフローコートし、防曇被膜を形成した。なお、フローコートは温度20℃、湿度30%に調整した室内で実施した。成膜後は自然乾燥し、200℃に加熱した熱風乾燥炉中にて30分間加熱して、防曇被膜付きガラス板を得た。こうして得た防曇被膜付きガラス板を、走査型電子顕微鏡で観察した結果を図3に示す。この防曇被膜付きガラス板の特性評価の結果を表3に示す。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
実施例1 実施例2 実施例3 実施例4
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
下地膜 (A) (B) CVD-SnO2 (D)
平均高さ(nm) 110 110 80 110
防曇被膜 (a) (a) (a) (a)
厚み(nm) 100 90 60 120
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
外観 ○ ○ ○ ○
防曇性 ○ ○ ○ ○
耐擦傷性 ○ ○ ○ ○
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
無機凸部下地形成用コーティング液を(B)とし、防曇被膜形成用コーティング液を(a)と表3に示すとおりとし、それ以外は実施例1と同様にして、防曇被膜付きガラス板を得た。この防曇被膜付きガラス板の特性評価の結果を表3に示す。
実施例1および2では、無機微粒子としてコロイダルシリカを用いて、凸部下地を形成した。この実施例3においては、いわゆるオンラインCVD法によって基板上に形成された酸化スズ(SnO2)微粒子を、凸部下地を形成するための微粒子として用いた。
図5に示したオンラインCVD装置を用いて、以下の条件で金属酸化物の微粒子群が表面に形成されたガラス板を製造した。具体的には、フロートバス空間内には98体積%の窒素と2体積%の水素とを供給し、バス内を非酸化性雰囲気に保持し、最上流側に位置するコータ16aから、ジメチル錫ジクロライド(蒸気)0.27mol%、水蒸気19.88mol%、酸素7.99mol%の濃度で含有する、ヘリウムで希釈した混合気体1を供給し、温度720℃のガラスリボン上に酸化錫を主成分とする金属酸化物の微粒子群を形成した。無機材料である金属酸化物の微粒子群をガラスリボン上に形成し、これを適宜切断して、無機凸部下地付きガラス板とした。
上述の実施例1〜3では、粒径が一定の範囲内にある無機微粒子群を一つ用いた例であった。この実施例4では、粒径が一定の範囲内にある無機微粒子群二つを用いて、凸部下地を形成した例である。
溶媒として純水、バインダーとして珪酸リチウム塩(LSS−35、日産化学工業(株)製、固形分濃度 23.4質量%)、第1コロイダルシリカ水分散溶液(KE−W10、(株)日本触媒製、粒径110nm、固形分濃度15質量%)、第2コロイダルシリカ水分散溶液(ST−20、日産化学工業(株)製、粒径20nm、固形分濃度20質量%)、分散剤としてポリビニルアルコール(PVA−117、(株)クラレ製)1質量%水溶液を適宜混合し、サンプル瓶にて撹拌してコーティング液を得た。凸部下地形成用コーティング液の固形分組成比を表4(D)に示す。
―――――――――――――――――――――――――――――――
(D) (E)
―――――――――――――――――――――――――――――――
LSS−35(質量%) 0.11 0.05
KE−W10(質量%) 0.75 0.3
ST−20(質量%) 0.22 0.09
PVA−117(質量%) 0.4 0.16
H2O(質量%) 98.52 99.41
―――――――――――――――――――――――――――――――
無機凸部下地形成用コーティング液を(A)とし、防曇被膜形成用コーティング液を(b)と、表5に示すとおりとし、それ以外は実施例1と同様にして、防曇被膜付きガラス板を得た。この防曇被膜付きガラス板の特性評価の結果を表5に示す。
―――――――――――――――――――――――――――――
実施例5 実施例6 実施例7
―――――――――――――――――――――――――――――
下地膜 (A) (A) (A)
平均高さ(nm) 110 110 110
防曇被膜 (b) (c) (d)
厚み(nm) 100 100 100
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
外観 ○ ○ ○
防曇性 ○ ◎ ◎
耐擦傷性 ○ ○ ○
―――――――――――――――――――――――――――――
(c)有機−無機複合防曇被膜形成用コーティング液の調製
AP−7、濃塩酸、TEOS、3−アミノプロピルトリメトキシシラン(KBM−903、信越化学工業(株)製)、ポリビニルピロリドンの5質量%AP−7溶液、精製水を適宜混合し、サンプル瓶にて約20時間撹拌してコーティング液を得た。なお、撹拌は20℃に設定した恒温槽中にて行った。有機−無機複合防曇被膜形成用コーティング液の固形分組成比を表6(c)に示す。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
(c) (d)
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
HCl(質量%) 0.01 0.01
SiO2(TEOS由来)(質量%) 0.25 0.25
SiO2(KBM−903由来)(質量%) 0.25 0.25
PVP(質量%) 0.50 0.60
H2O(質量%) 0.45 0.45
AP−7(質量%) 98.54 98.44
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
*PVP:ポリビニルピロリドン
*SiO2量は、添加したシランが100%加水分解したものとして計算した値。
無機凸部下地形成用コーティング液を(A)とし、防曇被膜形成用コーティング液を(d)と、表5に示すとおりとし、それ以外は実施例1と同様にして、防曇被膜付きガラス板を得た。この防曇被膜付きガラス板の特性評価の結果を表5に示す。
洗浄したガラス板上に無機凸部下地を形成せずに、直接、有機−無機複合防曇被膜形成用コーティング液(a)または(b)をフローコートし、以降は実施例1と同様にして防曇被膜付きガラス板を得た。この防曇被膜付きガラス板の特性評価の結果を表7に示す。
――――――――――――――――――――――――――――――
比較例1 比較例2 比較例3
――――――――――――――――――――――――――――――
下地膜 (なし) (なし) (E)
平均高さ(nm) −−− −−− 110
防曇被膜 (a) (b) (a)
厚み(nm) 120 120 90
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
外観 ○ ○ ○
防曇性 ○〜△ ○ ○
耐擦傷性 × × △
――――――――――――――――――――――――――――――
無機凸部下地形成用コーティング液を表4(E)に変更した以外は、実施例1と同様にして、防曇被膜付きガラス板を得た。この防曇被膜付きガラス板の特性評価の結果を表7に示した。無機凸部下地を構成するシリカ微粒子の充填度が低く、基板上にまばらにしかついていない場合には、下地膜そのものの強度が著しく低下する。したがって、防曇被膜をオーバーコートした場合にも十分な強度が得られないことが示されている。
11:熔融炉
12:フロートバス
13:徐冷炉
15:熔融スズ浴
16(16a,16b,16c):コータ
17:ローラ
Claims (14)
- 無機微粒子群が無機物品の表面に結合されて複数の凸部が形成されており、
親水性有機ポリマーとシリコンアルコキシドの重合物を含んでなる防曇被膜が、前記無機物品の表面を覆うように形成されていることを特徴とする防曇性物品。 - 請求項1に記載の防曇性物品において、
前記凸部の平均高さが300nm以下である防曇性物品。 - 請求項1または2に記載の防曇性物品において、
前記複数の凸部の全ての高さが所定の範囲内にある防曇性物品。
性物品。 - 請求項1〜3のいずれか1項に記載の防曇性物品において、
前記無機微粒子群は酸化錫微粒子である防曇性物品。 - 請求項1〜3のいずれか1項に記載の防曇性物品において、
前記無機微粒子群はコロイダルシリカであり、無機バインダーを介して前記無機物品の表面に結合されている防曇性物品。 - 請求項5に記載の防曇性物品において、
前記コロイダルシリカの粒径が20〜300nmである防曇性物品。 - 請求項5に記載の防曇性物品において、
前記コロイダルシリカは、粒径の異なる2つの微粒子群を含んでなる防曇性物品。 - 請求項5〜7のいずれか1項に記載の防曇性物品において、
前記無機バインダーはSiO2を主成分とする酸化物である防曇性物品。 - 請求項1〜8のいずれか1項に記載の防曇性物品において、
前記防曇被膜は、前記複数の凸部の隙間を充填して被覆されている防曇性物品。 - 請求項1〜9のいずれか1項に記載の防曇性物品において、
前記防曇被膜の厚みが20〜150nmである防曇性物品。 - 請求項1〜10のいずれか1項に記載の防曇性物品において、
前記親水性有機ポリマーはポリビニルピロリドンである防曇性物品。 - 請求項1〜11のいずれか1項に記載の防曇性物品において、
前記シリコンアルコキシドの重合物は、シリコン原子に結合した親水性の有機基を含む防曇性物品。 - 請求項12に記載の防曇性物品において、
前記シリコン原子に結合した親水性の有機基は、アミノ基を含む有機基である防曇性物品。 - 無機物品の表面に無機微粒子群を直接または無機バインダーを介して結合して複数の凸部を形成し、
親水性有機ポリマーとシリコンアルコキシドの重合物を含んでなる防曇被膜を、前記無機物品の表面を覆うように形成することを特徴とする防曇性物品の製造方法。
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