JP5942140B2 - 被覆部材 - Google Patents

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Description

本発明は、ケイ素化合物を含有する被覆層を備える被覆部材に関する。
ケイ素化合物を含有する被覆層は、種々の部材に対して、様々な機能を付与するために、広く適用されている。
例えば、ゾルゲル法などにより形成されるシリカ膜から構成され、或いは更に中空シリカ粒子を含有する被覆層(反射防止層)は、光学部材における反射防止のために適用される。また、ゾルゲル法などにより形成されるシリカ膜から構成され、更に酸化チタン等の光触媒を含有する被覆層(光触媒層)は、部材の防汚性向上などのために適用される。反射防止層は、近年注目されている屋外用途のデジタルサイネージ等の広告系ディスプレイ装置や、太陽電池などにおいて、表面反射率低減による視認性向上や透過率向上などのために利用される。また、光触媒層は、建築部材用のガラス、外装材などの表面に防汚性を付与するために利用される。
このようなケイ素化合物を含有する被覆層は、アルカリ成分に弱いという問題がある。例えば、強化ガラス、光学ガラス、外壁材等の基材は、ナトリウム、リチウム等のアルカリ成分を含有することが多く、このような基材上に被覆層が形成され、この基材中や基材と被覆層との界面などに水分が侵入すると、この水分を媒介としてアルカリ成分が基材から被覆層へ移動し、これによりアルカリ成分が被覆層と反応してしまって、被覆層が劣化してしまうことがある。そうすると、被覆層の外観の悪化、強度の低下、被覆層の機能の低下などの、不具合が生じてしまう。
アルカリ成分による問題に対処するための方法として、例えば特許文献1には、ガラス基板を化学強化することにより化学強化ガラス基板が形成され、化学強化ガラス基板上に透明導電膜が形成されてなる透明導電膜付き化学強化ガラス基板において、ガラス基板から酸化スズ膜などの透明導電膜へのアルカリマイグレーションを防止するため、酸化ケイ素などのアルカリ中間層をガラス基板と透明導電膜との間に設けることが、開示されている。
特開2004−131314号公報(段落0034)
しかし、特許文献1のように酸化ケイ素からアルカリ中間層を形成しても、このアルカリ中間層はアルカリ成分によって侵されてしまう。すなわち特許文献1では、アルカリ中間層を犠牲にすることで、アルカリ成分がガラス基板から透明導電膜に達するまでに要する時間を長引かせているに過ぎない。
このため、特許文献1に記載の技術を、被覆層をアルカリ成分から防御するために用いても、十分な効果は期待できない。
本発明は上記事由に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、アルカリ成分を含有する基材に対してケイ素化合物を含有する被覆層を設けるにもかかわらず、この被覆層が基材中のアルカリ成分によって侵されることを長期に亘り抑制することができる被覆部材を提供することにある。
本発明に係る被覆部材は、アルカリ成分を含有する基材と、ケイ素化合物を含有する被覆層と、前記基材と前記被覆層との間に介在する中間層とを備え、
前記中間層が、酸化カルシウム、酸化アルミニウム、酸化ホウ素、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化ハフニウム及び酸化セリウムのうち、少なくとも一種を含む。
本発明において、前記中間層が、酸化カルシウム、酸化アルミニウム、酸化ホウ素、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化ハフニウム、及び酸化セリウムのうち、少なくとも一種からなる酸化物粒子と、無機マトリックスとから構成されてもよい。
本発明において、前記中間層が、酸化カルシウム、酸化アルミニウム、酸化ホウ素、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化ハフニウム、及び酸化セリウムから選ばれる金属酸化物からなるものでもよい。
本発明において、前記中間層内の前記酸化物粒子の割合が5〜90質量%の範囲であることが好ましい。
本発明によれば、アルカリ成分を含有する基材に対してケイ素化合物を含有する被覆層を設けるにもかかわらず、この被覆層が基材中のアルカリ成分によって侵されることを、中間層によって長期に亘り抑制することができる。
本発明の一実施形態を示す、被覆部材の断面図である。
本実施形態では、被覆部材1は、アルカリ成分を含有する基材2と、ケイ素化合物を含有する被覆層3と、基材2と前記被覆層3との間に介在する中間層4とを備える。すなわち、被覆部材1は、基材2、中間層4、及び被覆層3を備え、且つ基材2、中間層4、及び被覆層3がこの順番に積層している構造を有する。
基材2は、アルカリ成分を含有するのであれば、特に制限されないが、例えばアルカリ成分を含有するガラスから形成される板材、無機系基材2、金属系基材2等が挙げられる。アルカリ成分を含有するガラスとしては、例えばソーダ石灰ガラスが挙げられる。
中間層4は、酸化カルシウム、酸化アルミニウム、酸化ホウ素、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化ハフニウム、及び酸化セリウムのうち、少なくとも一種を含む。これらの酸化物は、比較的安定した結合を有し、そのため、ナトリウム、リチウム等のアルカリ成分とは反応し難く、このため、これらの酸化物を含有する中間層4の耐アルカリ性は高い。このため、空気中から基材2等へ侵入した水分を媒介として基材2から中間層4へアルカリ成分が侵入しても、中間層4の劣化、分解が起こり難く、中間層4内でアルカリ成分が留まるため、中間層4から被覆層3へのアルカリ成分の移動が長期に亘って抑制される。
また、この中間層4では、中間層4中の酸化物の割合に応じて、中間層4の屈折率が変動する。このため、中間層4中の酸化物の種類並びに割合を調整することで、被覆部材1の光学特性を制御することも可能である。特に被覆層3が屈折率の低い反射防止層である場合には、中間層4中の酸化物粒子の種類並びに割合を適宜設定することにより、中間層4の屈折率を反射防止層よりも高くすると共にこの屈折率の値を適切に制御することで、被覆部材1の光反射率を大きく低減し、これにより被覆部材1の機能を高めることも可能となる。
本実施形態における第一の態様では、中間層4が、無機マトリックスと、この無機マトリックス中に分散している酸化物粒子とから構成される。無機マトリックスは、例えばシロキサン(シリコーン)から構成される。この中間層4は、湿式の成膜法により形成されることが好ましい。この場合、中間層4は、例えばマトリクス形成材料と、酸化物粒子とを含有するコーティング組成物から形成される。
マトリックス形成材料としては、メチルシリケート、オルトケイ酸テトラエチル(TEOS)等の、加水分解性シリコン化合物が挙げられる。
酸化物粒子は、酸化カルシウム、酸化アルミニウム、酸化ホウ素、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化ハフニウム、及び酸化セリウムのうち、少なくとも一種からなる。酸化物粒子は、前記の酸化物の粒子のうち、一種のみを含んでいても、二種以上を含んでいてもよい。酸化物粒子の平均粒径は、特に制限されないが、中間層4の強度を向上する観点及び中間層4の良好な透明性を確保する観点からは、この平均粒径が100nm以下であることが好ましく、5〜80nmの範囲であればより好ましく、10〜60nmの範囲であれば更に好ましい。尚、この平均粒径は、動的光散乱法により測定される体積平均径であり、例えば大塚電子株式会社製のダイナミック光散乱光度計(型番DLS−6500)を用いて測定される。
コーティング組成物が調製される場合、適宜の形態の酸化物粒子が使用される。例えば酸化物粒子の粉体が使用され、或いは酸化物粒子を含むゾルが使用される。酸化物粒子を含むゾル、すなわち酸化物コロイドが使用される場合、例えば、水分散性酸化物コロイドが使用され、或いはアルコール等の親水性の有機溶媒分散性酸化物コロイドが使用される。一般に、このような酸化物コロイドは、固形分としての酸化物微粒子を5〜50質量%含有しており、この値から酸化物粒子の配合量を決定することができる。
本態様において、中間層4内の酸化物粒子の割合は、特に制限されないが、5〜90質量%の範囲であることが好ましく、30〜70質量%の範囲であれば更に好ましい。すなわち、コーティング組成物から中間層4が形成される場合には、コーティング組成物中の酸化物粒子の含有量が、コーティング組成物中の固形分全量に対して5〜90質量%の範囲であることが好ましく、30〜70質量%の範囲であれば更に好ましい。この割合が5質量%以上、好ましくは30質量%以上であれば、酸化物粒子によって中間層4の耐アルカリ性を十分に向上する。また、この割合が90質量%以下、好ましくは70質量%以下であることで、中間層4と基材2との間、並びに中間層4と被覆層3との間で、良好な密着性が確保され、このため、被覆層3の密着性、耐摩耗性等の性能が高く維持される。
このようなコーティング組成物を基材2上に塗布し、更にこれを乾燥・硬化させることで、基材2上に中間層4を形成することができる。
基材2上へのコーティング組成物の塗布方法としては、特に制限されないが、例えば、刷毛塗り、スプレーコート、浸漬(ディッピング、ディップコート)、ロールコート、フローコート、カーテンコート、ナイフコート、スピンコート、テーブルコート、シートコート、枚葉コート、ダイコート、バーコート、メニスカスコーター、フレキソ印刷、スクリーン印刷、ビードコーター等の通常の各種の塗膜の形成方法から選択される。
基材2へ塗布されたコーティング組成物は、乾燥された後、更に熱処理が施されることが好ましい。この熱処理によって、中間層4の機械的強度が更に向上する。熱処理時の条件は、熱処理の効果が充分に得られるように適宜設定されればよいが、例えば加熱温度を比較的低温、例えば100〜300℃の範囲とし、処理時間を5〜30分間の範囲とすることが好ましい。尚、コーティング組成物が加水分解性シリコン化合物を含有し、この加水分解性シリコン化合物の加水分解反応によりコーティング組成物が硬化する場合、熱処理温度が100℃程度の低温であっても、熱処理温度が高温である場合と同等の機械的強度を中間層4に与えることができるため、製造コストが低減され得る。特に、基材2がガラス製である場合には、基材2の熱伝導率性が低いため、温度の上昇と冷却に時間がかかり、そのため熱処理温度が高いほど処理に要する時間が長くなるが、処理温度が低い場合には逆に処理に要する時間が短縮され、このため製造効率が向上する。
このようにコーティング組成物が塗布成膜されると、コーティング組成物中でマトリックス形成材料と酸化物粒子とが混在した状態でマトリックス形成材料が加水分解することで、無機マトリックスが形成されると共に、この無機マトリックス中に酸化物微粒子が分散した状態で固定される。これにより、無機マトリックスと、この無機マトリックス中に分散している酸化物粒子とから構成される中間層4が、形成される。
このように中間層4が構成されると、アルカリ成分に対して安定な酸化物粒子が中間層4内に分散して存在することで、中間層4内の無機マトリックスの占める割合が減少する。このため、無機マトリックスがアルカリ成分と反応しやすいシロキサン(シリコーン)から構成される場合であっても、中間層4内ではアルカリ成分と反応し易いSi−O結合が減少し、その結果、中間層4内にけるアルカリ成分によりアタックされて反応する部位が減少する。このため、中間層4には十分に高い耐アルカリ性が付与され、このため中間層4から被覆層3へのアルカリ成分の移動が長期に亘って抑制される。
本実施形態における第二の態様では、中間層4が、酸化カルシウム、酸化アルミニウム、酸化ホウ素、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化ハフニウム、及び酸化セリウムから選ばれる金属酸化物から成る。
中間層4は、湿式の成膜法により形成されることが好ましい。例えば本態様では、中間層4は、カルシウムの加水分解性化合物、アルミニウムの加水分解性化合物、ホウ素の加水分解性化合物、ジルコニウムの加水分解性化合物、チタンの加水分解性化合物、ハフニウムの加水分解性化合物、及びセリウムの加水分解性化合物のうち、少なくとも一種を含むコーティング組成物から形成される。このような加水分解性化合物としては、カルシウムアルコキシド、アルミニウムアルコキシド、ホウ素アルコキシド、ジルコニウムアルコキシド、チタンアルコキシド、ハフニウムアルコキシド、セリウムアルコキシド等が、挙げられる。コーティング組成物は、これらの加水分解性化合物以外の適宜の添加物を含有してもよい。
このようなコーティング組成物を用い、第一の態様の場合と同様にコーティング組成物を基材2上に塗布し、更にこのコーティング組成物を乾燥・成膜することで、基材2上に中間層4を形成することができる。
また、第二の態様においては、酸化カルシウム、酸化アルミニウム、酸化ホウ素、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化ハフニウム、及び酸化セリウムから選ばれる金属酸化物から成る中間層4を、蒸着、スパッタ等の乾式の成膜法により形成してもよい。
中間層4は、上記のような酸化物を含有する一層の層のみで構成されてもよいが、酸化物を含有する二種以上の層から構成されてもよい。また、中間層4が、複数種の酸化物が混在する層から構成されてもよい。
中間層4の厚みは適宜設定されるが、被覆層3のアルカリ成分がアルカリ成分によって侵されることが十分に抑制されるためには、厚みが5nm以上であることが好ましい。この中間層4の厚みは、更に5〜1000nmの範囲であることが好ましく、10〜300nmの範囲であればより好ましい。
被覆層3は、ケイ素化合物を含有するのであれば、その詳細は特に制限されず、被覆部材1の使用用途や目的に応じて、適宜の構成を有する被覆層3が形成される。被覆層3の具体例としては、下記の反射防止層及び光触媒層が、挙げられる。
反射防止層は、例えばシロキサン(シリコーン)から構成される無機マトリックスを備える、低屈折率の層である。反射防止層の屈折率は、例えば1.30〜1.45の範囲である。反射防止層は、例えばケイ素化合物からなるバインダー材料及び必要に応じて使用される屈折率調整用の粒子を含有する組成物から形成される。バインダー材料と屈折率調整用の粒子とが併用される場合、両者の組み合わせ、配合比等により反射防止層の屈折率が適宜調整される。
バインダー材料として、例えば加水分解性ケイ素化合物が用いられる。加水分解性ケイ素化合物としては、RmSi(OR´)nで表されるシリコンアルコキシド(R、R´は炭素数1〜10のアルキル基、m+n=4、m及びnはそれぞれ整数。)の部分加水分解縮合物であるオリゴマー及びポリマーが、挙げられる。シリコンアルコキシドとしては、具体的にはテトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ−iso−プロポキシシラン、テトラ−n−プロポキシシラン、テトラ−n−ブトキシシラン、テトラ−sec−ブトキシシラン、テトラ−tert−ブトキシシラン、テトラペンタエトキシシラン、テトラペンタ−iso−プロポキシシラン、テトラペンタ−n−プロポキシシラン、テトラペンタ−n−ブトキシシラン、テトラペンタ−sec−ブトキシシラン、テトラペンタ−tert−ブトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、メチルトリブトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルエトキシシラン、ジメチルメトキシシラン、ジメチルプロポキシシラン、ジメチルブトキシシラン、メチルジメトキシシラン、メチルジエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン等が例示される。
バインダー材料として、熱又は電離放射線によって反応架橋する複数の基(重合性二重結合基等)を有する反応性有機ケイ素化合物が用いられてもよい。この有機ケイ素化合物の分子量は5000以下であることが好ましい。このような反応性有機ケイ素化合物としては、片末端ビニル官能性ポリシラン、両末端ビニル官能性ポリシラン、片末端ビニル官能ポリシロキサン、両末端ビニル官能性ポリシロキサン、並びにこれらの化合物を反応させて得られるビニル官能性ポリシラン及びビニル官能性ポリシロキサン等が挙げられる。これら以外にも、反応性有機ケイ素化合物としては、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン等の(メタ)アクリロキシシラン化合物が挙げられる。
屈折率調整用の粒子としては、比較的低屈折率の粒子が使用されることが好ましい。屈折率調整用の粒子の材質としては、シリカ、フッ化マグネシウム、フッ化リチウム、フッ化アルミニウム、フッ化カルシウム、フッ化ナトリウム等が挙げられる。屈折率調整用の粒子が中空粒子を含むことが好ましい。中空粒子とは外殻によって包囲された空洞を有する粒子である。中空粒子の屈折率は1.20〜1.45であることが好ましい。屈折率調整用の粒子として、特にシリカから成る中空粒子(中空シリカ)が用いられることが好ましい。
屈折率調整用の粒子には、必要に応じて、バインダー材料との濡れ性を向上するための表面処理が施されていることが好ましい。
屈折率調整用の粒子の粒径は十分に小さいこと、すなわち屈折率調整用の粒子がいわゆる超微粒子であることが好ましく、この場合、反射防止層の光透過性が十分に維持されるようになる。屈折率調整用の粒子の粒径は特に、0.5nm〜200nmの範囲であることが好ましい。この屈折率調整用の粒子の粒径とは、粒子の電子顕微鏡写真画像から算出される投影面積と同一の面積を有する円(面積相当円)の径のことである。
反射防止層中の屈折率調整用の粒子の含有量は、反射防止層の屈折率の値が適切な値となるように適宜調整されるが、特に反射防止層中の屈折率調整用の粒子の割合が20〜99体積%となるように調整されることが好ましい。
組成物は、更に撥水、撥油性材料を含有してもよい。この場合、反射防止層に防汚性が付与され得る。撥水、撥油性材料としては、一般的なワックス系の材料等が使用され得る。特に含フッ素化合物が使用されると、反射防止層の汚れ、指紋等の除去性が特に向上すると共に、反射防止層の表面の摩擦抵抗が低減して反射防止層の耐摩耗性が向上する。
反射防止層は、特にバインダー材料としてテトラメトキシシラン部分加水分解縮合物を含有すると共に、屈折率調整用粒子として中空シリカ粒子を含有する組成物から形成されることが好ましい。この場合、反射防止層の低屈折率化が特に容易になる。
反射防止層は、上記のような組成物が中間層4の上に塗布され、更にこの組成物がバインダー材料の性状に応じて加熱、加湿、紫外線照射、電子線照射等の処理が施されることで硬化することにより、形成され得る。
反射防止層の厚みは、この反射防止層に要求される性能に応じて適宜設定されるが、例えば50〜400nmの範囲である。
光触媒層は、例えばシロキサン(シリコーン)から構成される無機マトリックスと、この無機マトリックス中に分散している光触媒とを備える層である。光触媒層は、例えば中間層4の表面上に、光触媒を含有するコーティング組成物が塗布成膜されることで形成される。
コーティング組成物は、例えばシリコンアルコキシドの部分加水分解縮合物を含有する。コーティング組成物は、例えばオルガノシランのシリカ分散オリゴマー溶液にポリオルガノシロキサンや、アルキルチタン酸塩等の縮合反応触媒が加えられ、或いは更にシリカが加えられることで調製される。
光触媒としては、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化錫、酸化鉄、酸化ジルコニウム、酸化タングステン、酸化クロム、酸化モリブデン、酸化ルテニウム、酸化ゲルマニウム、酸化鉛、酸化カドミウム、酸化銅、酸化バナジウム、酸化ニオブ、酸化タンタル、酸化マンガン、酸化コバルト、酸化ロジウム、酸化ニッケル、酸化レニウムなどの金属酸化物の他、チタン酸ストロンチウム等を挙げることができる。これらの金属酸化物等の中でも特に酸化チタンがその光触媒性能、安全性、入手の容易さ及びコストの面で好ましい。尚、酸化チタンを光触媒として用いる場合は、結晶型がアナタース型(アナターゼ型)であるものを用いる方が光触媒性能及び硬化促進性能が最も強く、しかもこれらの性能が長期間発現すると共に、光触媒性能がより短時間で発現する点で好ましい。光触媒は1種のみ用いても良いし、2種以上を組み合わせても良い。
光触媒層における光触媒の含有量は、特に制限されないが、例えば光触媒層に対して20〜80質量%の範囲であることが好ましく、すなわち光触媒を含有する無機質塗料中の固形分全量に対して、20〜80質量%の範囲であることが好ましい。
このような無機質塗料が、例えば静電塗装、スプレー塗装等により塗布された後、60〜120℃で焼き付け乾燥されて成膜されることで、光触媒層が形成される。光触媒層の厚みは特に制限されないが、例えば0.2〜10μmの範囲に形成される。
以上のように構成される被覆部材1では、特に屋外などの紫外線、雨、湿度等の影響を受け易い高い耐久性が求められる環境下で使用される場合でも、被覆層3のアルカリ成分による劣化が長期的に亘って抑制される。このため被覆層3の性能が、長期に亘って安定して発揮されるようになる。
被覆部材1の用途は、特に制限されないが、例えば屋外用のディスプレイの最表面部分を構成する部材(機能性膜付きガラス);自動車のサイドミラー、フロントガラス、サイドガラス、リアガラス、その他車両用ガラス(自動車用の機能性膜付きガラス);建材ガラス(建材用の機能性膜付きガラス)及び外装材;太陽電池等の光学装置における機能性膜付きガラスなどの光の経路を構成する部材等が、挙げられる。また、被覆部材1は、高耐候性が要求される屋外用途に特に好適に用いられる。
また、これらの用途以外にも、高耐久性が要求され、基材2中のアルカリ成分による被覆層3の劣化を抑制する用途であれば、幅広く適用可能である。
以下、本発明を実施例により説明する。尚、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
[実施例1]
本実施例では、被覆層として、まず中空シリカ粒子とシリコン系無機マトリックスで構成される反射防止層を選定し、中間層の有無による反射防止層の性能の劣化の差を検証した。
(実施例1−1)
次に示すようにして、反射防止層を形成するためのコーティング組成物を調製した。まず、3.92質量部の三菱化学株式会社製のメチルシリケートMS51に、72.23質量部のプロピレングリコールモノメチルエーテルを加え、さらに8.78質量部の硝酸水溶液(0.1N)を加え、これらをディスパーを用いてよく混合することで、混合液を得た。この混合液に、中空シリカ粒子のイソプロピルアルコール分散液(日揮触媒化成工業社製、固形分20質量%、平均粒径40nm)を15.0質量部加えて、これらを室温でよく混合し、さらに25℃の恒温雰囲気下で1時間撹拌混合した。これにより、固形分全量に対する中空シリカ粒子の割合が60質量%であるコーティング組成物を得た。
また、次に示すようにして、中間層を形成するためのコーティング組成物を調製した。まず、7.84質量部の三菱化学株式会社製のメチルシリケートMS51に、78.37質量部のプロピレングリコールモノメチルエーテルを加え、さらに8.78質量部の硝酸水溶液(0.1N)を加え、これらをディスパーを用いてよく混合することで、混合液を得た。この混合液に、ジルコニア粒子のプロピレングリコールモノメチルエーテル分散液(CIKナノテック製、固形分20質量%、平均粒径40nm)5.00質量部を加えて、これらを室温でよく混合し、さらに25℃の恒温雰囲気下で1時間撹拌混合した。これにより、固形分全量に対するジルコニア粒子の割合が20質量%であるコーティング組成物を得た。
これらの二種類のコーティング組成物を、調製してから1時間以上放置した。
基材として強化ガラス板を用意し、この強化ガラスの表面から汚れを除去し、続いて、強化ガラスの表面に中間層を形成するためのコーティング組成物をスピンコータによって塗布した。続いて、このコーティング組成物を200℃で10分間熱処理した。これにより、厚み100nmの中間層を形成した。
続いて、中間層の上に、反射防止層を形成するためのコーティング組成物をスピンコータにより塗布した。続いて、このコーティング組成物を200℃で10分間熱処理した。これにより、厚み130nmの反射防止層を形成した。
これにより、基材、中間層、及び被覆層(反射防止層)を備える被覆部材を得た。
(実施例1−2)
実施例1−1の場合と同じ方法で、反射防止層を形成するためのコーティング組成物を調製した。
また、次に示すようにして、中間層を形成するためのコーティング組成物を調製した。まず、4.90質量部の三菱化学株式会社製のメチルシリケートMS51に、73.82質量部のプロピレングリコールモノメチルエーテルを加え、さらに8.78質量部の硝酸水溶液(0.1N)を加え、これらをディスパーを用いてよく混合することで、混合液を得た。この混合液に、ジルコニア粒子のプロピレングリコールモノメチルエーテル分散液(CIKナノテック株式会社製、固形分20質量%、平均粒径40nm)12.50質量部を加えて、これらを室温でよく混合し、さらに25℃の恒温雰囲気下で1時間撹拌混合した。これにより、固形分全量に対するジルコニア粒子の割合が50質量%であるコーティング組成物を得た。
これらの二種類のコーティング組成物を、調製してから1時間以上放置し、続いて、実施例1−1の場合と同じ方法により、強化ガラス板上に、厚み100nmの中間層と、厚み130nmの反射防止層とを、順次形成した。
これにより、基材、中間層、及び被覆層(反射防止層)を備える被覆部材を得た。
(実施例1−3)
実施例1−1の場合と同じ方法で、反射防止層を形成するためのコーティング組成物を調製した。
また、次に示すようにして、中間層を形成するためのコーティング組成物を調製した。まず、1.96質量部の三菱化学株式会社製のメチルシリケートMS51に、69.26質量部のプロピレングリコールモノメチルエーテルを加え、さらに8.78質量部の硝酸水溶液(0.1N)を加え、これらをディスパーを用いてよく混合することで、混合液を得た。この混合液に、ジルコニア粒子のプロピレングリコールモノメチルエーテル分散液(CIKナノテック株式会社製、固形分20質量%、平均粒径40nm)20.00質量部を加えて、これらを室温でよく混合し、さらに25℃の恒温雰囲気下で1時間撹拌混合した。これにより、固形分全量に対するジルコニア粒子の割合が80質量%であるコーティング組成物を得た。
これらの二種類のコーティング組成物を、調製してから1時間以上放置し、続いて、実施例1−1の場合と同じ方法により、強化ガラス板上に、厚み100nmの中間層と、厚み130nmの反射防止層とを、順次形成した。
これにより、基材、中間層、及び被覆層(反射防止層)を備える被覆部材を得た。
(実施例1−4)
実施例1−1の場合と同じ方法で、反射防止層を形成するためのコーティング組成物を調製した。
また、次に示すようにして、中間層を形成するためのコーティング組成物を調製した。まず、1.96質量部のジルコニウムアルコキシド(マツモトファインケミカル製、1−プロパノール溶媒、固形75質量%)に、89.26質量部のプロピレングリコールモノメチルエーテルを加え、さらに8.78質量部の硝酸水溶液(0.1N)を加え、これらをディスパーを用いてよく混合することで、混合液を得た。この混合液に、ジルコニア粒子のプロピレングリコールモノメチルエーテル分散液(CIKナノテック株式会社製、固形分20質量%、平均粒径40nm)20.00質量部を加えて、これらを室温でよく混合し、さらに25℃の恒温雰囲気下で1時間撹拌混合した。これにより、固形分全量に対するジルコニア粒子の割合が80質量%であるコーティング組成物を得た。
これらの二種類のコーティング組成物を、調製してから1時間以上放置し、続いて、実施例1−1の場合と同じ方法により、強化ガラス板上に、厚み100nmの中間層と、厚み130nmの反射防止層とを、順次形成した。
これにより、基材、中間層、及び被覆層(反射防止層)を備える被覆部材を得た。
(比較例1−1)
実施例1−1の場合と同じ方法で、反射防止層を形成するためのコーティング組成物を調製した。このコーティング組成物を、調製してから1時間以上放置した。
基材として強化ガラス板を用意し、この強化ガラスの表面から汚れを除去し、続いて、強化ガラスの表面に反射防止層を形成するためのコーティング組成物をスピンコータにより塗布した。続いて、このコーティング組成物を200℃で10分間熱処理した。これにより、厚み130nmの反射防止層を形成した。
これにより、基材、及び被覆層(反射防止層)を備える被覆部材を得た。
(比較例1−2)
実施例1−1の場合と同じ方法で、反射防止層を形成するためのコーティング組成物を調製した。このコーティング組成物を、調製してから1時間以上放置した。
基材として強化ガラス板を用意し、この強化ガラスの表面から汚れを除去し、続いて、強化ガラスの表面に、CVD方式でシランガスを用いて二酸化ケイ素からなる厚み100nmの層を形成した。この層の上に、反射防止層を形成するためのコーティング組成物をスピンコータにより塗布した。続いて、このコーティング組成物を200℃で10分間熱処理した。これにより、厚み130nmの反射防止層を形成した。
これにより、基材、二酸化ケイ素からなる層、及び被覆層(反射防止層)を備える被覆部材を得た。
(初期透過率評価)
各実施例及び比較例で得られた被覆部材の、波長300〜1500nmの範囲の分光透過率を、分光光度計(株式会社日立製作所製、型番U−4100)を使用して測定し、その結果に基づいて、400〜1100nmの範囲での透過率の平均を算出した。尚、強化ガラス板のみの場合の結果は91.0%である。
(耐久性評価)
小型環境試験装置(Espec社製、型番SH−241)を用いて、各実施例及び比較例で得られた被覆部材を、温度85℃、湿度80%の高温高湿雰囲気下に1000時間曝露した。続いて、上記初期透過率評価の場合と同じ方法で、被覆部材の400〜1100nmの範囲での透過率の平均を算出した。更に、これにより得られた透過率の値の、初期透過率からの変化率を算出した。
(耐摩耗性評価)
摩耗試験機(新束科学社製、型番HEIDON−14DR)を用いて、各実施例及び比較例の被覆部材における反射防止層が形成されている側の表面を、スチールウール#0000で、500g荷重で10往復擦り、続いて、この被覆部材の表面を目視で観察した。その結果、被覆部材の表面にキズが認められず、或いはキズが10本未満の場合を○、キズが10以上50本未満認められる場合を△、キズが50本以上認められる場合を×と、評価した。
(鉛筆硬度)
各実施例及び比較例の被覆部材における反射防止層が形成されている側の表面の鉛筆硬度を、JIS K5600に従って評価した。
以上の結果を、下記表1に示す。
Figure 0005942140
表1に示されるように、各実施例及び比較例では被覆部材の透過率は強化ガラスのみの場合と比べて2%以上も高く、このためこれらの被覆部材の初期の光学性能は良好であった。特に実施例1−2,1−3,1−4では透過率が特に高かった。これは、中間層の屈折率が、高屈折率材料であるジルコニアによって適切に調整されることで、反射防止層の反射防止性能が特に向上したためと考えられる。
また、耐久性の評価に関しては、比較例1では、透過率が1.2%も低下した。これは、被覆部材が中間層を備えないために反射防止層が強化ガラス板中のアルカリ成分により速やかに侵されたためであると考えられる。
また、比較例2では比較例1の場合よりも透過率の低下が抑制された。これは、二酸化ケイ素から成る層によって強化ガラス板から反射防止層へのアルカリ成分の移動がある程度抑制されたためであると考えられる。しかし、この比較例2でも、反射防止層の耐久性は十分ではない。
一方、各実施例では、いずれも透過率が0.5%以内に抑えられた。これは、耐アルカリ性の高いジルコニアを含有する中間層により、強化ガラス板から反射防止層へのアルカリ成分の移動が十分に抑制されたためであると考えられる。この効果は、実施例1−1,1−2,1−3の結果によると、中間層中のジルコニア粒子の割合が増大するほど、透過率の低下が改善されていることからも、確認できる。また、実施例4のようにジルコニアから成る中間層が形成された場合には、反射防止層の耐久性が最も高くなった。
[実施例2]
本実施例では、被覆層として、酸化チタン粒子とシリコン系無機マトリックスで構成される光触媒層を選定し、中間層の有無による光触媒層の性能の劣化の差を検証した。
(実施例2−1)
次に示すようにして、光触媒層を形成するためのコーティング組成物を調製した。まず、4.90質量部の三菱化学株式会社製のメチルシリケートMS51に、77.99質量部のメタノールを加え、さらに8.78質量部の硝酸水溶液(0.1N)を加え、これらをディスパーを用いてよく混合することで、混合液を得た。この混合液に、アナターゼ型酸化チタン粒子の水分散液(石原産業株式会社製、品番STS−01、固形分30質量%)を8.33質量部加えて、これらを室温でよく混合し、さらに25℃の恒温雰囲気下で1時間撹拌混合した。これにより、固形分全量に対する中空シリカ粒子の割合が50質量%であるコーティング組成物を得た。
また、次に示すようにして、中間層を形成するためのコーティング組成物を調製した。まず、31.46質量部の三菱化学株式会社製のメチルシリケートMS51に、432.04部のメタノールを加え、さらに、カルシウムメトキサイド(GELEID,Ltd製、品番AKC−165)と硝酸水溶液(0.1N)とを1.5:48.5の質量比で混合した混合液を50.0部加え、これらをディスパーを用いてよく混合することで、混合液を得た。この混合液を、25℃の恒温雰囲気下で24時間静置した。続いて、この混合液にイソプロパノールを加えて希釈した。これにより、コーティング組成物を得た。
これらの二種類のコーティング組成物を、調製してから1時間以上放置した。
基材としてソーダライムガラス板(屈折率1.54)を用意し、このソーダライムガラス板の表面を酸化セリウム微粒子で研磨洗浄した。続いて、ソーダライムガラス板の表面に中間層を形成するためのコーティング組成物をスピンコータによって塗布した。続いて、このコーティング組成物を200℃で10分間熱処理した。これにより、厚み100nmの中間層を形成した。
続いて、中間層の上に、光触媒層を形成するためのコーティング組成物をスピンコータにより塗布した。続いて、このコーティング組成物を200℃で15分間熱処理した。これにより、厚み300nmの光触媒層を形成した。
これにより、基材、中間層、及び被覆層(光触媒層)を備える被覆部材を得た。
(実施例2−2)
実施例2−1の場合と同じ方法で、光触媒層を形成するためのコーティング組成物を調製した。
また、次に示すようにして、中間層を形成するためのコーティング組成物を調製した。まず、2.75質量部の三菱化学株式会社製のメチルシリケートMS51に、74.47質量部のプロピレングリコールモノメチルエーテルを加え、さらに8.78質量部の硝酸水溶液(0.1N)を加え、これらをディスパーを用いてよく混合することで、混合液を得た。この混合液に、アルミナ粒子のメチルイソブチルケトン系溶媒分散液(CIKナノテック株式会社製、固形分15質量%、平均粒径40nm)14.00質量部を加えて、これらを室温でよく混合し、さらに25℃の恒温雰囲気下で1時間撹拌混合した。これにより、固形分全量に対するアルミナ粒子の割合が60質量%であるコーティング組成物を得た。
これらの二種類のコーティング組成物を、調製してから1時間以上放置し、続いて、実施例2−1の場合と同じ方法により、強化ガラス板上に、厚み100nmの中間層と、厚み300nmの光触媒層とを、順次形成した。
これにより、基材、中間層、及び被覆層(光触媒層)を備える被覆部材を得た。
(実施例2−3)
実施例2−1の場合と同じ方法で、光触媒層を形成するためのコーティング組成物を調製した。
また、次に示すようにして、中間層を形成するためのコーティング組成物を調製した。まず、2.75質量部の三菱化学株式会社製のメチルシリケートMS51に、74.47質量部のイソプロピルアルコールを加え、さらに8.78質量部の硝酸水溶液(0.1N)を加え、これらをディスパーを用いてよく混合することで、混合液を得た。この混合液に、ルチル型酸化チタン粒子のイソプロピル系溶媒分散液(CIKナノテック株式会社製、固形分15質量%、平均粒径40nm)14.00質量部を加えて、これらを室温でよく混合し、さらに25℃の恒温雰囲気下で1時間撹拌混合した。これにより、固形分全量に対する酸化チタン粒子の割合が60質量%であるコーティング組成物を得た。
これらの二種類のコーティング組成物を、調製してから1時間以上放置し、続いて、実施例2−1の場合と同じ方法により、強化ガラス板上に、厚み100nmの中間層と、厚み300nmの光触媒層とを、順次形成した。
これにより、基材、中間層、及び被覆層(光触媒層)を備える被覆部材を得た。
(比較例2−1)
実施例2−1の場合と同じ方法で、光触媒層を形成するためのコーティング組成物を調製した。このコーティング組成物を、調製してから1時間以上放置した。
基材としてソーダライムガラス板(屈折率1.54)を用意し、このソーダライムガラス板の表面を酸化セリウム微粒子で研磨洗浄した。続いて、ソーダライムガラス板の表面に、光触媒層を形成するためのコーティング組成物をスピンコータにより塗布した。続いて、このコーティング組成物を200℃で15分間熱処理した。これにより、厚み300nmの光反射層を形成した。
これにより、基材、及び被覆層(光触媒層)を備える被覆部材を得た。
(初期光触媒性能評価)
各実施例及び比較例で得られた被覆部材における光触媒層上にオレイン酸を塗布し、続いてこの光触媒層へ向けてブラックライトから紫外線を1mW/cm2の強度で24時間照射した。続いて、光触媒層上の水の接触角を測定した。この場合、水の接触角が小さいほど、光触媒層の光触媒性能が十分に機能してこの光触媒層上のオレイン酸の分解が促進されたものと、判断される。
(耐久性評価)
小型環境試験装置(Espec社製、型番SH−241)を用いて、各実施例及び比較例で得られた被覆部材を、温度85℃、湿度80%の高温高湿雰囲気下に1000時間曝露した。続いて、上記初期光触媒性能評価の場合と同じ方法で、光触媒層の水の接触角を測定した。
以上の結果を、下記表2に示す。
Figure 0005942140
表2に示される結果によると、各実施例及び比較例での初期光触媒活性の評価結果は、水接触角30°以下であり、これにより、いずれの実施例及び比較例でも初期の光触媒活性が高いことが確認された。
しかし、高温高湿試験後は、比較例2−1では水の接触角は30°を大きく超えてしまった。これは、比較例2−1では、ソーダライムガラス板から光触媒層へアルカリ成分が移動したことで光触媒層が大きく劣化し、これにより光触媒性能が大きく低下したためと、考えられる。
一方、実施例2−1,2−2,2−3では、高温高湿試験後でも、水の接触角は30°以下に維持された。これは、耐アルカリ性の高い酸化物を含有する中間層により、ソーダライムガラス板から光触媒層へのアルカリ成分の移動が十分に抑制されたためであると考えられる。
1 被覆部材
2 基材
3 被覆層
4 中間層

Claims (2)

  1. アルカリ成分を含有する基材と、
    中空シリカとケイ素化合物とを含有する反射防止層である被覆層と、
    前記基材と前記被覆層との間に介在する中間層とを備え、
    前記中間層が、無機マトリックスと、この無機マトリックス中に分散している酸化カルシウム、酸化アルミニウム、酸化ホウ素、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化ハフニウム及び酸化セリウムのうち、少なくとも1種からなる酸化物粒子とから構成され、
    前記酸化物粒子の平均粒径が5〜80nmの範囲である被覆部材。
  2. 前記中間層内の前記酸化物粒子の割合が5〜90質量%の範囲である請求項1に記載の被覆部材。
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