JP2005286204A - 積層セラミック電子部品の製造方法 - Google Patents

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研次郎 羽田野
Ken Takaoka
建 高岡
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Abstract

【課題】 界面近傍の誘電体積層部にポーラス層が発生せず、マイグレーションによる絶縁抵抗劣化の少ない積層セラミック電子部品の製造方法を提供する。
【解決手段】 磁性体グリーンシート2と誘電体グリーンシート3,4を作製する。磁性体グリーンシート2を積層して構成した磁性体積層部8と誘電体グリーンシート3,4を積層して構成した誘電体積層部9が一体となった積層体を形成し、焼成する。誘電体グリーンシート3,4は誘電体セラミックスとガラスを含有し、誘電体グリーンシート3,4のうち、磁性体積層部8との界面近傍に配置される誘電体グリーンシート4のガラス添加量を30重量%以上80重量%以下に設定し、該誘電体グリーンシート4のガラス濃度を誘電体グリーンシート3のガラス濃度より高くしている。
【選択図】 図1

Description

本発明は、積層セラミック電子部品、特に、磁性体積層部と誘電体積層部を一体的に焼成して得られるLC複合部品などの積層セラミック電子部品の製造方法に関する。
従来より、磁性体グリーンシートを積層して構成した磁性体積層部(コイル部)と誘電体グリーンシートを積層して構成した誘電体積層部(コンデンサ部)が一体となった積層体を同時焼成するとき、誘電体グリーンシートの焼結温度を下げるために誘電体グリーンシートにガラスを添加することが行われている(特許文献1参照)。
しかしながら、磁性体グリーンシートとガラスを添加した誘電体グリーンシートとを同時焼成した場合、誘電体グリーンシートのガラスが磁性体グリーンシートへ拡散し、誘電体積層部と磁性体積層部の界面近傍の誘電体積層部内にガラス抜け層が発生する。このガラス抜けにより、界面近傍の誘電体積層部のガラス(焼結助剤)濃度が、誘電体積層部を緻密に焼結させることができるガラス濃度以下になる。この結果、緻密に焼結しなかった界面近傍の誘電体積層部が、ポーラス層となって吸湿し易い性質を有するようになる。このため、吸湿したポーラス層で、内部導体材料や外部電極材料がマイグレーションを起こし、絶縁抵抗値が低下してしまうという問題があった。
特開2000−348972号公報
そこで、本発明の目的は、界面近傍の誘電体積層部にポーラス層が発生せず、マイグレーションによる絶縁抵抗劣化の少ない積層セラミック電子部品の製造方法を提供することにある。
前記目的を達成するため、本発明に係る積層セラミック電子部品の製造方法は、
(a)磁性体グリーンシートと誘電体グリーンシートを作製する工程と、
(b)磁性体グリーンシートを積層して構成した磁性体積層部と誘電体グリーンシートを積層して構成した誘電体積層部が一体となった積層体を形成する工程と、
(c)積層体を焼成する工程とを備え、
(d)誘電体グリーンシートは誘電体セラミックスとガラスを含有し、誘電体グリーンシートのうち、磁性体積層部との界面近傍に配置される誘電体グリーンシートのガラス添加量は30重量%以上80重量%以下であり、該誘電体グリーンシートのガラス濃度は他の誘電体グリーンシートのガラス濃度より高いこと、
を特徴とする。ここに、ガラス濃度=ガラス重量/(ガラス重量+誘電体セラミックス重量)である。
以上の方法により、同時焼成の際に、誘電体積層部から磁性体積層部へガラスが拡散しても、界面近傍の誘電体積層部のガラス濃度が、誘電体積層部を緻密に焼結させることができるガラス濃度以下にならない。
また、本発明に係る積層セラミック電子部品の製造方法は、磁性体積層部は、磁性体グリーンシートと内部導体とを交互に積層することにより構成され、内部導体はAgを主成分とする導電材料からなる。そして、積層体を焼成する工程において、焼成温度が900℃以下であることを特徴とする。
本発明によれば、誘電体グリーンシートのうち、磁性体積層部との界面近傍に配置される誘電体グリーンシートのガラス濃度を他の誘電体グリーンシートのガラス濃度より高くしているので、同時焼成の際に誘電体積層部から磁性体積層部へガラスが拡散しても、界面近傍の誘電体積層部のガラス濃度が、誘電体積層部を緻密に焼結させることができるガラス濃度以下にならない。この結果、界面近傍の誘電体積層部が緻密に焼結し、ポーラス層が発生せず、マイグレーションによる絶縁抵抗劣化の少ない積層セラミック電子部品を得ることができる。
以下に、本発明に係る積層セラミック電子部品の製造方法の実施例について添付の図面を参照して説明する。なお、各実施例は個産品の場合を例にしているが、量産する場合には、多数の内部導体をマザーのセラミックグリーンシートの表面に印刷し、このマザーのセラミックグリーンシートを複数枚積層圧着させて未焼成のセラミック積層体ブロックを形成する。そして、セラミック積層体ブロックを内部導体パターンの配置に合わせてカットして個々の積層セラミックチップを切り出し、切り出された積層セラミックチップを焼成し、焼成した積層セラミックチップに外部電極を形成することにより生産される。
図1に示すように、LCフィルタ1は、コイル用導体5や層間接続用ビアホール15をそれぞれ設けた磁性体セラミックグリーンシート2と、予め導体が設けられていない磁性体セラミックグリーンシート2と、コンデンサ用導体6を設けた誘電体セラミックグリーンシート3と、予め導体が設けられていない誘電体セラミックグリーンシート3と、予め導体が設けられていないガラス高濃度誘電体セラミックグリーンシート4などで構成されている。
磁性体セラミックグリーンシート2は、以下のようにして製作される。Fe23−ZnO−NiO−CuO系のフェライトセラミック粉末を準備し、このフェライトセラミック粉末に対してバインダと可塑剤、溶剤、分散剤を加えてボールミルで混合を行い、その後、減圧により脱泡を行う。得られたセラミックスラリーをドクターブレード法などによって、シート状に形成して乾燥させ、所望の膜厚の磁性体セラミックグリーンシート2を作製する。
所定の磁性体セラミックグリーンシート2には、層間接続用ビアホール15が設けられている。層間接続用ビアホール15は、シート2にレーザビームなどを用いて貫通孔を形成し、この貫通孔にAg,Pd,Cu,Auやこれらの合金などの導電ペーストを印刷塗布などの方法により充填することによって形成される。
さらに、所定の磁性体セラミックグリーンシート2上には、コイル用導体5がそれぞれ導電性ペーストをスクリーン印刷法やフォトリソグラフィ法などの方法で塗布することにより形成される。コイル用導体5は、Ag,Pd,Cu,Auやこれらの合金などからなる。
複数のコイル用導体5は、磁性体セラミックグリーンシート2に設けた層間接続用ビアホール15を介して電気的に直列に接続され、螺旋状コイルLを形成する。コイルLのコイル軸はシート2,3,4の積み重ね方向に対して平行である。螺旋状コイルLの引出し部はそれぞれシート2の右辺および左辺に露出している。
誘電体セラミックグリーンシート3は、以下のようにして製作される。BaO−CaO−TiO2−ZrO2系の誘電体セラミック粉末とSiO2−TiO2−BaO−CuOを主成分とするガラス粉末を8対2の重量比の割合で準備し、この誘電体セラミック粉末に対してバインダと可塑剤、溶剤、分散剤を加えてボールミルで混合を行い、その後、減圧により脱泡を行う。得られたセラミックスラリーをドクターブレード法などによって、シート状に形成して乾燥させ、所望の膜厚の誘電体セラミックグリーンシート3を作製する。
所定の誘電体セラミックグリーンシート3上には、コンデンサ用導体6がそれぞれ導電性ペーストをスクリーン印刷法やフォトリソグラフィ法などの方法で塗布することにより形成される。コンデンサ用導体6は、Ag,Pd,Cu,Auやこれらの合金などからなる。複数のコンデンサ用導体6は、誘電体セラミックグリーンシート3を間にして対向し、コンデンサC1,C2を形成する。
ガラス高濃度誘電体セラミックグリーンシート4は、以下のようにして製作される。BaO−CaO−TiO2−ZrO2系の誘電体セラミック粉末とSiO2−TiO2−BaO−CuOを主成分とするガラス粉末とを、種々の重量比の割合で混合したものを準備し、言い換えると、誘電体セラミック粉末に対するガラス粉末の添加量を種々変えたものを準備し(表1の試料番号1〜10参照)、この誘電体セラミック粉末に対してバインダと可塑剤、溶剤、分散剤を加えてボールミルで混合を行い、その後、減圧により脱泡を行う。得られたセラミックスラリーをドクターブレード法などによって、シート状に形成して乾燥させ、所望の膜厚のガラス高濃度誘電体セラミックグリーンシート4を作製する。
なお、本実施例で使用したBaO−CaO−TiO2−ZrO2系の誘電体セラミック粉末は、1300℃以上で焼結する材料であるが、SiO2−TiO2−BaO−CuOを主成分とするガラス粉末を15重量%の濃度で混合することで、900℃以下での焼結を可能とする。内部導体であるコイル用導体5やコンデンサ導体6の材料としてAgを使用する場合、Agの溶融を防止するために焼成温度を900℃程度にする必要があるからである。一般に、誘電体セラミックスの焼成温度は1000℃を超えるため、焼成温度を下げるためにガラスを添加するが、ガラス濃度が15%以上にならないと、焼成温度を900℃程度まで下げられず、不十分な焼結になってポーラス層が形成されてしまう。
磁性体セラミックグリーンシート2、誘電体セラミックグリーンシート3およびガラス高濃度誘電体セラミックグリーンシート4は図1に示すように積み重ねられた後、一体的に圧着されて未焼成積層体とされる。
次に、この未焼成積層体は、例えば空気中で約500℃の温度で脱バインダ処理をした後、約900℃の温度で約2時間の焼成を行う。これにより、図2に示すように、磁性体セラミックグリーンシート2を積層して構成した磁性体積層部8と、誘電体セラミックグリーンシート3およびガラス高濃度誘電体セラミックグリーンシート4を積層して構成した誘電体積層部9とが一体となった直方体形状を有するセラミック積層体20とされる。
セラミック積層体20の左右の端面には入出力電極21,22が形成され、奥側および手前側の側面にはグランド電極23a,23bが形成されている。螺旋状コイルLの両端部は、入出力電極21,22に電気的に接続されている。コンデンサC1,C2のそれぞれの一端は入出力電極21,22に電気的に接続され、他端はグランド電極23a,23bに電気的に接続されている。
積層LCフィルタ1は、図3に示すように、複数のコイル用導体パターン5を電気的に接続して構成した螺旋状コイルLを内蔵した磁性体積層部8と、コンデンサC1,C2を内蔵した誘電体積層部9とを有している。そして、積層LCフィルタ1の積層方向において、誘電体積層部9の磁性体積層部8との界面側に、ガラス高濃度誘電体セラミックシート4にて構成されたガラス高濃度誘電体層10が配置されている。図4は積層LCフィルタ1の電気等価回路図である。
ここで、ガラス高濃度誘電体セラミックグリーンシート4の誘電体セラミック粉末に対するガラス粉末の添加量を種々変えて積層LCフィルタ1を作製し、評価した結果を表1に示す。ガラス高濃度誘電体層10の厚みは20μmに設定した。
なお、表1の「焼成後の接合界面近傍の誘電体積層部9のガラス濃度」とは、焼成後の界面から10〜20μmの部分の誘電体積層部9のガラス濃度のピーク値である。焼成後の界面から10〜20μmの部分の誘電体積層部9のガラス濃度を測定しているのは、積層LCフィルタ1の全ての試料において、界面におけるガラス濃度が略100%になるので、その部分を外して評価するためである。ガラス濃度は、ガラス濃度=ガラス重量/(ガラス重量+誘電体セラミックス重量)で算出した。
Figure 2005286204
表1より、ガラス高濃度誘電体セラミックグリーンシート4のガラス添加量が30重量%より少なくなると、焼成後の接合界面近傍の誘電体積層部9のガラス濃度が15%より低くなる(試料番号1,2参照)。このため、900℃の焼成温度では、接合界面近傍の誘電体積層部9が十分に焼結せず、接合界面近傍の誘電体積層部9にポーラス層が発生した。
逆に、ガラス高濃度誘電体セラミックグリーンシート4のガラス添加量が80重量%より多くなると、誘電体積層部9から磁性体積層部8へのガラス拡散距離が大きくなり過ぎ、磁性体積層部8の特性を阻害する(試料番号10参照)。
一方、ガラス高濃度誘電体セラミックグリーンシート4のガラス添加量が30重量%以上80重量%以下の場合には、同時焼成の際に誘電体積層部9から磁性体積層部8へガラスが拡散しても、界面近傍の誘電体積層部9のガラス濃度が、誘電体積層部9を緻密に焼結させることができるガラス濃度以下にならない。すなわち、焼成後の接合界面近傍の誘電体積層部9のガラス濃度が15%以上となる(試料番号3〜9参照)。このため、900℃の焼成温度で、接合界面近傍の誘電体積層部9が十分に焼結し、ポーラス層が発生せず、マイグレーションによる絶縁抵抗劣化の少ない積層LCフィルタ1を容易にかつ生産性良く得ることができる。
また、図5(A)は、表1の試料番号8の積層LCフィルタ1の磁性体積層部8と誘電体積層部9の界面部分におけるガラス濃度分布を示すグラフである。比較のために、図5(B)には、表1の試料番号1の積層LCフィルタ1の磁性体積層部8と誘電体積層部9の界面部分におけるガラス濃度分布を示すグラフを記載している。図5において、実線30が焼成前のガラス濃度分布を表示し、実線31が焼成後のガラス濃度分布を表示している。ここに、焼成前のガラス濃度は、セラミックグリーンシート2〜4を作製する際の誘電体セラミック粉末とガラス粉末との重量混合比から算出した。焼成後のガラス濃度は、焼成後の積層LCフィルタ1を鏡面研磨し、ガラスの主成分元素であるSiを波長分散型X線分光器によって線分析を行い、ガラス中のSi組成比から算出した。
図5(A)より、同時焼成の際に誘電体積層部9から磁性体積層部8へガラスが拡散しても、界面近傍の誘電体積層部9のガラス濃度が15%以上となり、900℃の焼成温度で、接合界面近傍の誘電体積層部9が十分に焼結し、ポーラス層が発生していないことがわかる。一方、図5(B)からは、界面近傍の誘電体積層部9のガラス濃度が15%より低くなり(図中の符号Fで示した領域を参照)、900℃の焼成温度で、接合界面近傍の誘電体積層部9が十分に焼結せず、ポーラス層が発生していることがわかる。
なお、表1の試料番号7〜10において、焼成前と焼成後とで接合界面近傍の誘電体積層部9のガラス濃度が変わっていないように見える。これは、焼成前は界面から0〜20μmの部分で等しく高濃度になっているのに対して、焼成後はピーク値を測定しているためであり、表1ではガラス濃度が低下していないように見えても、実際は低下している(図5(A)参照)。
なお、本発明は前記実施例に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々に変更することができる。積層セラミック電子部品としては、磁性体積層部と誘電体積層部を一体的に焼成して得られるセラミック電子部品であれば、LCフィルタに限るものではない。
本発明に係る積層セラミック電子部品の製造方法の一実施例を示す分解斜視図。 図1に示した積層セラミック電子部品の外観斜視図。 図2に示した積層セラミック電子部品の断面図。 図2に示した積層セラミック電子部品の電気等価回路図。 磁性体積層部と誘電体積層部の界面部分におけるガラス濃度分布を示すグラフ。
符号の説明
1…積層LCフィルタ
2…磁性体セラミックグリーンシート
3…誘電体セラミックグリーンシート
4…ガラス高濃度誘電体セラミックグリーンシート
5…コイル用導体
6…コンデンサ用導体
8…磁性体積層部
9…誘電体積層部
10…ガラス高濃度誘電体層
20…セラミック積層体
L…螺旋状コイル

Claims (3)

  1. 磁性体グリーンシートと誘電体グリーンシートを作製する工程と、
    前記磁性体グリーンシートを積層して構成した磁性体積層部と前記誘電体グリーンシートを積層して構成した誘電体積層部が一体となった積層体を形成する工程と、
    前記積層体を焼成する工程とを備え、
    前記誘電体グリーンシートは誘電体セラミックスとガラスを含有し、前記誘電体グリーンシートのうち、前記磁性体積層部との界面近傍に配置される誘電体グリーンシートのガラス添加量は30重量%以上80重量%以下であり、該誘電体グリーンシートのガラス濃度は他の誘電体グリーンシートのガラス濃度より高いこと、
    を特徴とする積層セラミック電子部品の製造方法。
  2. 前記磁性体積層部は、前記磁性体グリーンシートと内部導体とを交互に積層することにより構成され、前記内部導体はAgを主成分とする導電材料からなることを特徴とする請求項1に記載の積層セラミック電子部品の製造方法。
  3. 前記積層体を焼成する工程において、焼成温度が900℃以下であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の積層セラミック電子部品の製造方法。
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