JP2005281794A - 樹脂被覆錫合金めっき鋼板 - Google Patents

樹脂被覆錫合金めっき鋼板 Download PDF

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Abstract

【課題】 錫合金めっき層の上層に形成される化成皮膜中に、環境上の問題から望ましくないとされるCrを含有させることなく、被覆樹脂との密着性に優れ、かつ、熱可塑性樹脂を膨潤させる溶剤やアルコールを含有する内容物に対してさえも、耐食性に優れた樹脂被覆層を有する樹脂被覆錫合金めっき鋼板を提供する。
【解決手段】 鋼板表面上に、FeおよびNiのうちから選んだ1種または2種を含有する錫合金層を有し、その上層に0.5〜100mg/mのPと0.1〜250mg/mのSiを含有する化成皮膜を有し、前記化成皮膜の表面に、接着樹脂層を下層とし、25℃での水に対する表面接触角が87度以上である撥水性樹脂層を上層とする複合樹脂層を有することを特徴とする。
【選択図】なし

Description

この発明は、食缶、飲料缶、一般缶などに使用される缶用表面処理鋼板に関するものであって、熱可塑性樹脂を被覆した樹脂被覆錫合金めっき鋼板に関するものである。
従来、食缶、飲料缶、一般缶などを製缶するには、錫めっき鋼板や薄クロムめっき鋼板に塗装を施した表面処理鋼板が用いられていた。塗装は複数回行われることが多く、塗料の焼き付け工程が煩雑であるばかりでなく、塗装に使用する塗料のほとんどが大気への放出によって公害問題を引き起こしかねない有機溶剤であるため、廃棄溶剤を処理する設備が必要となって、設備コスト負担が大きくなるという問題がある。また、有機溶剤の塗料を使用しないようにするため、水性の塗料も開発されているが、塗膜性能が劣るため、実用化レベルにまでは達していないのが現状である。
これらの問題点を解決するため、熱可塑性の樹脂フィルムをラミネートする試みが多数なされており、ポリエチレン樹脂やポリプロピレン樹脂などのポリオレフィン樹脂のフィルムやポリエチレンテレフタレート樹脂などのポリエステル樹脂のフィルムをラミネートする検討が行われた。
さらに、特許文献1および2には、溶融樹脂を金属板に直接接触させて被覆する、いわゆる押し出しラミネート技術が開示されている。かかる技術は、フィルムラミネート技術に比ベて低コストでラミネートが可能である。
特開昭57−203545号公報 特開平2−241737号公報
しかし、フィルムラミネート技術や押し出しラミネート技術を適用したラミネート鋼板でも、フィルムを膨潤させる溶剤やアルコールを含有する内容物の場合、フィルムのバリヤ性を保持することが困難であるため、長時間の保管時、加工部や溶接部において発錆が観察され、実用上問題であった。また、このようなケースでは、フィルムの下層に熱硬化性樹脂からなるプライマーをフィルム下層に塗布し耐食性を向上させる方法もあるが、コストが大きく上がり、問題であった。
一方、缶用表面処理鋼板としては、従来からぶりきと称される錫めっき鋼板と薄クロムめっき鋼板がある。
錫めっき鋼板では、通常、ぶりき原板に錫めっきを施した後に、重クロム酸、クロム酸などの6価のクロム化合物を使った水溶液中に浸漬もしくはこの溶液中で電解することによってクロム酸化物あるいは金属クロムとクロム酸化物からなるクロメート皮膜を形成するのが一般的である。
また、薄クロムめっき鋼板は、同様の原板をクロム酸の水溶液中での電解処理によって金属クロムとクロム酸化物からなる層を形成させる。これら缶用表面処理鋼板の最表層にはクロム酸化物があり、このクロム酸化物は、ポリエチレンフィルムとの密着性を向上させる作用を有することが知られている。
しかし、重クロム酸、クロム酸などの6価のクロム化合物を使った水溶液で浸漬処理または電解処理を行う場合、作業環境上の安全性確保及び廃水処理に多大な費用を要するだけでなく、万が一、事故等でクロメート処理液などが漏洩した場合には、環境に大きな被害を及ぼす危険性が大きい。昨今の環境問題から、クロムを規制する動きが各分野で進行しており、缶用表面処理鋼板においてもクロムを使わずに、ラミネート樹脂との密着性を向上させる化成処理の必要性が増大している。
缶用表面処理鋼板のクロメート処理に代わる化成処理に関する技術としては、例えば、特許文献3に、リン酸系溶液中で錫めっき鋼板を陰極として直流電解することにより、錫めっき鋼板上にCrを含有しない化成皮膜を形成した錫めっき鋼板の表面処理法が開示されており、また、特許文献4には、化成皮膜中にPもしくはPとAlを含有させて、Crを含有しない化成皮膜を錫めっき層表面に施したシームレス缶用電気めっきぶりきが開示されている。
しかしながら、ラミネートにおいて、上掲公報に記載された化成皮膜はいずれも、従来の重クロム酸やクロム酸溶液によって形成したクロメート皮膜に比べると密着性が十分に得られているとはいえない。
特公昭55−24516号公報 特公平1−32308号公報
この発明の目的は、耐食性に優れた錫系めっき鋼板として、錫合金めっき層の上層に形成される化成皮膜中に、環境上の問題から望ましくないとされるCrを含有させることなく、被覆樹脂との密着性に優れ、かつ、熱可塑性樹脂を膨潤させる溶剤やアルコールを含有する内容物に対してさえも、耐食性に優れた樹脂被覆層を有する樹脂被覆錫合金めっき鋼板を提供することにある。
以下にこの発明をさらに詳細に説明する。
錫合金層の上層に、上記従来技術を用いてCrを含有しない化成皮膜を形成した場合には、ラミネート樹脂との密着性を満足させることは困難であった。
このため、発明者らは、表面処理鋼板における上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、錫合金層の上層にPとSiを含有する化成皮膜を形成させた場合には、ラミネート樹脂との十分な密着性を満足させることができることを見出した。より具体的には、錫合金層の上層に、好ましくはPとシランカップリング剤を含有する化成処理液により、適正量のPとSiを含有する化成皮膜を形成すれば、このシランカップリング剤に存在する反応基が配向して樹脂密着性の向上に大きく寄与することがわかった。
この発明の表面処理鋼板は、鋼板表面上に、FeおよびNiのうちから選んだ1種または2種を含有する錫合金層を有し、その上層に0.5〜100mg/mのPと0.1〜250mg/mのSiを含有する化成皮膜を有し、前記化成皮膜の表面に、接着樹脂層を下層とし、25℃での水に対する表面接触角が87度以上である撥水性樹脂層を上層とする複合樹脂層を有することにある。尚、化成皮膜中のSi/P比(質量比)は0.05〜100の範囲にすることが好ましい。
また、前記化成皮膜は、Pとシランカップリング剤を含有する化成処理液により形成することが好ましく、前記シランカップリング剤がエポキシ基を有することがより好適である。
さらに、前記錫合金層中のSnの付着量が0.1〜3.0g/mであることが好ましい。
さらにまた、前記撥水性樹脂層は、フッ素を含有する樹脂と熱可塑性樹脂とのブレンド樹脂、珪素を含有する樹脂と熱可塑性樹脂とのブレンド樹脂、または、フッ素原子もしくはアルキル基を有するシランカップリング剤を熱可塑性樹脂に混合したブレンド樹脂からなることが好ましい。
この発明によれば、錫合金層の上層に形成される化成皮膜中に、その皮膜特性を向上させる作用を有するものの環境上の問題から望ましくないとされるCrを含有させることなく、被覆樹脂との密着性に優れ、かつ、熱可塑性樹脂を膨潤させる溶剤やアルコールを含有する内容物に対してさえも、耐食性に優れた樹脂被覆層を有する樹脂被覆錫合金めっき鋼板の提供を可能にした。
以下にこの発明の実施形態を詳細に説明する。
この発明の樹脂被覆錫合金めっき鋼板に用いる錫合金めっき鋼板は、通常のぶりき原板に錫合金層を形成したものであり、この発明における「錫合金層」とは、FeおよびNiのうちから選んだ1種または2種を含有する錫合金層を意味する。
通常のぶりきは、ぶりき原板にSnめっきした後、そのままか、あるいはSnを加熱溶融するための一般的な加熱処理(リフロー処理)を施すが(この場合、ぶりき原板とSnめっき層との間にFe−Sn合金層が形成されることになる)、表面の大部分は金属Snであるため、使用されるまでの保管期間が長いと、金属Snの表面でSn酸化物が成長する。このSn酸化物は脆いため、ラミネート後にこのSn酸化物を起点としてフィルム剥離が生じやすくフィルム密着性を著しく悪化させる。
この欠点を解決するため、従来はクロメート処理を施すことによって対処していたが、クロメート処理を施したとしても、金属Snの表面で生じがちなSn酸化物の成長を完全には抑制することができない。
そこで、この発明では、鋼板(ぶりき原版)表面上に、Sn酸化物が成長しやすい金属Sn層の代わり錫合金層を有し、該錫合金層の上層に化成皮膜を形成することとし、これによって、優れた密着性を得ることができる。
錫合金層を形成する手段としては、錫めっき後の加熱処理でSnを地鉄と完全に合金化させてFe−Sn合金層とする方法がよく用いられる。また、錫めっき前に、鋼板表面にNi系の前処理を施しておけば、より緻密なFe−Sn−Ni合金層を形成することができる。
Ni系前処理としては、Niを微量めっきするNiフラッシュめっき処理や、Niめっき後に熱処理するNi拡散処理がよく用いられている。Niフラッシュめっき処理では、その上層に施したSnめっきと常温でも合金化が進み、NiとSnの比が1:3のときに合金化するので、Ni量とSn量の比を1:3にしておけば、熱処理なしでNi−Sn合金層が得られる。また、Ni拡散処理では、錫合金層の下層にNi拡散層であるFe−Ni合金層が存在する。
さらに、錫合金層の他の形成方法として、めっき後の拡散合金化反応によらず、Feイオンおよび/またはNiイオンを含有させたSnめっき液を用いてSn合金めっきを施すことによって錫合金層を形成してもよい。
また、この発明では、錫合金層中のSnの付着量が0.1〜3.0g/mの範囲であることが好ましい。錫合金層中のSn付着量が0.1g/m未満だと十分な密着性が得られなくなるおそれがあるからであり、また、3.0g/m超えだと、性能は十分であるがコスト高になるので好ましくなく、特に熱処理による合金化の場合には、合金化を高温かつ長時間で行う必要があり、生産性の点からも好ましくないからである。尚、Sn付着量は、電量法又は蛍光X線による表面分析により測定できる。
さらに、この発明における錫合金層は、FeおよびNiのうちから選んだ1種または2種を含有する錫合金層であればよく、特に限定はしないが、Sn−Fe合金層の場合には、FeSn合金層またはFeSn合金層であることが好ましく、Sn−Ni合金層の場合には、SnNi合金層またはSnNi合金層であることが好ましく、Sn−Fe−Ni合金層の場合には、(Fe・Ni)Sn合金層または(Fe・Ni)Sn合金層であることが好ましい。
そして、この発明の構成上の主な特徴は、前記錫合金層の上層に、0.5〜100mg/mのPと0.1〜250mg/mのSiを含有する化成皮膜を有し、前記化成皮膜の表面に、接着樹脂層を下層とし、25℃での水に対する表面接触角が87度以上である撥水性樹脂層を上層とする複合樹脂層を有することにある。
(1)化成皮膜中のP含有量をその付着量にして0.5〜100mg/mの範囲とすること
この発明において、化成皮膜中のP含有量は、その付着量にして0.5〜100mg/mの範囲とすることが必要である。0.5mg/m未満では、密着性が十分に得られず、また、100mg/m超えでは化成皮膜に欠陥が生じやすくなり、密着性が劣化するからである。尚、P付着量は、蛍光X線による表面分析により測定できる。
また、Pを含有させた化成皮膜の形成方法としては、例えば、リン酸系化成処理によって行なうことが好ましく、この場合、化成処理液中のPの供給源としては、リン酸イオン(PO4 3-)換算で1〜80g/lのリン酸、リン酸ナトリウム、リン酸アルミニウム、リン酸カリウム等の金属塩、及び/又は、1水素リン酸塩など使用することがより好適である。
尚、化成処理液には、Sn、Fe、Niの金属塩、例えば、SnC1、FeC1、NiC1、SnSO、FeSO、NiSOなどの金属塩を適宜添加することができる。この場合には、促進剤として塩素酸ナトリウム、亜硝酸塩などの酸化剤、フッ素イオンなどのエッチング剤を適宜添加してもよい。
上記錫合金層を形成した鋼板を、上記リン酸系化成処理液に浸漬または電解処理することによりPを含有させた化成皮膜を形成することができる。
(2)化成皮膜中のSi含有量をその付着量にして0.1〜250mg/mの範囲とすること
この発明では、化成皮膜中に含有するSiの付着量は、密着性向上効果が顕著に現われる0.1〜250mg/mの範囲とする。0.1mg/m未満だと、密着性向上効果が十分に得られないからであり、また、250mg/m超えでは、未反応のSi成分が残存し、特にシランカップリング剤を用いた場合はシランカップリング剤が自己縮合して、密着性向上効果が低減するからである。Siを化成皮膜に含有させるには、シランカップリング剤を含有する溶液で処理することが好ましい。尚、Si付着量は蛍光X線による表面分析により測定できる。
PとSiを含有する化成皮膜の形成方法としては、前述のリン酸系化成処理液を用いてPを含有させた化成皮膜を形成させ、さらに好ましくはシランカップリング剤を水に希釈した溶液で処理することによって行うことができる。尚、シランカップリング剤を水に希釈した溶液で処理した場合に、表面の濡れ性が悪いためはじきが発生するときは、アルコールで希釈した溶液を使用することができる。例えば、エタノールを50mass%以上、シランカップリング剤を0.5〜20mass%、残りを水とした溶液にて均一に処理することができる。シランカップリング剤を含有する溶液を用いた処理は、溶液の塗布、乾燥あるいは浸漬処理によって行えばよい。
シランカップリング剤の一般化学式は、X−Si−OR2or3(OR:アルコキシ基)である。シランカップリング剤は、アルコキシシリル基(Si−OR)が水により加水分解されてシラノール基を生成し、金属表面のOH基との脱水縮合反応により密着する。また、鋼板の上層には、一般化学式のXにあたる反応基が配向し樹脂と相溶もしくは結合する。
尚、シランカップリング剤としては、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロへキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、アミノ基の存在する、N−2−(アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシランなどが使用できるが、特にシランカップリング剤の一般化学式におけるX−Si−OR2or3のXにエポキシ基が存在する2−(3,4−エポキシシクロへキシル)エチルトリメトキシシランや3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランが好適である。
化成皮膜は、Pとシランカップリング剤を含有する化成処理液により形成することが好ましい。
Pを含有する化成皮膜の形成方法であるリン酸系化成処理溶液にシランカップリング剤を含有させることで、1液でPとSiを含有する化成皮膜を形成することもできる。この場合、pHを1.5〜5.5の範囲にすることが好ましい。即ち、化成処理液のpHを1.5〜5.5の範囲に調整すれば、シランカップリング剤を化成処理液中に均一に溶解することができ、優れた密着性が得られる。pHが上記範囲外であるとシランカップリング剤を化成処理液に均一に溶解させることが難しくなり、密着性向上効果が十分に得られなくなる傾向があるからである。
(3)前記化成皮膜の表面に、接着樹脂層を下層とし、25℃での水に対する表面接触角が87度以上である撥水性樹脂層を上層とする複合樹脂層を有すること
本発明では、前記化成皮膜の表面に、接着樹脂層を下層とし、25℃での水に対する表面接触角が87度以上である撥水性樹脂層を上層とする複合樹脂層を形成する。
熱可塑性の樹脂を被覆する従来のラミネート技術では、メチルエチルケトン、トルエン、キシレンなどの有機溶剤成分やアルコール類を含有する水溶性塗料、水溶性樹脂、界面活性剤などを容器缶として充填した場合、フィルムが膨潤し、内容物中の含有水分が金属表面に到達し、加工部や溶接部などを起点に発錆を起こすケースが多く、良好な耐食性を保持することは困難であった。
このため、発明者らは、熱可塑性樹脂ラミネート鋼板における上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、フィルムの最上層に表面エネルギーの小さい撥水成分が存在している場合、内容物中の水分は、フィルムの撥水効果により樹脂層から除去され、その結果、溶剤やアルコールによってフィルム層が膨潤している場合でも、優れた耐食性を有することを発見した。さらに、最表面の水に対する接触角で整理すると、25℃雰囲気下、より具体的には、25℃、1気圧の大気雰囲気下で87度以上を有する場合、良好な耐食性を有することが判明した。前記水の表面接触角が87度未満である撥水性樹脂だと、内容物中に含有する水分に対する撥水効果が低く、内容物耐食性が向上しないからである。
撥水性樹脂層としては、フッ素を含有する樹脂と熱可塑性樹脂とのブレンド樹脂、珪素を含有する樹脂と熱可塑性樹脂とのブレンド樹脂、またはフッ素原子もしくはアルキル基を有するシランカップリング剤を熱可塑性樹脂に混合したブレンド樹脂からなることが好適である。
撥水性樹脂層が、フッ素を含有する樹脂と熱可塑性樹脂とのブレンド樹脂からなる場合には、そのフッ素含有樹脂としては、例えば、三フッ化エチレン樹脂や四フッ化エチレン樹脂が挙げられ、熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、エチレン−プロピレン共重合体、ポリエステルが挙げられる。フッ素含有樹脂として四フッ化エチレン樹脂を用いる場合には、分子量が20〜200万の比較的小さいものであることが、ポリエチレン樹脂やポリプロピレン樹脂等のポリオレフィン樹脂に対し優れた分散性が得られる点で好ましい。
また、ブレンド樹脂中のフッ素含有樹脂の含有量は、0.5〜15質量%とすることが好適である。フッ素含有樹脂の含有量が15質量%を超えると、撥水性樹脂層と下層の樹脂層(例えば接着樹脂層)とで層間剥離が生じやすくなる傾向があるからであり、0.5質量%未満では、十分な耐食性が得られないおそれがあるからである。
撥水性樹脂層が、珪素含有樹脂と熱可塑性樹脂とのブレンド樹脂からなる場合には、その珪素含有樹脂としては、シロキサン変性したポリオレフィン、例えばジメチルポリシロキサン変性エチレン−ブテンコポリマーが好適である。
また、珪素を含有する樹脂とともにブレンド樹脂を構成する熱可塑性樹脂としては、例えば、上記フッ素系のブレンド樹脂の場合と同様、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、エチレン−プロピレン共重合体、ポリエステル樹脂などを使用することが好適である。このとき、珪素含有樹脂の含有量は、0.5〜15質量%とすることが好適である。珪素含有樹脂の含有量が15質量%を超えると、撥水性有機物層とその下層の樹脂層とで層間剥離が生じやすくなる傾向があるからであり、0.5質量%未満では、十分な耐食性が得られないおそれがあるからである。
撥水性樹脂層が、フッ素原子を有するシランカップリング剤を熱可塑性樹脂に混合したブレンド樹脂からなる場合には、そのシランカップリング剤としては、疎水性を示す官能基を有するものが好ましく、特に、アルキルシラン基もしくはフッ素を含有する基を有するシランカップリング剤の1種もしくは2種を用いることが好適で、たとえば、メチルトリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、n−ヘキシルトリエトキシシラン、n−ヘキシルトリメトキシシラン、n−オクチルトリエトキシシラン、CFCHCHSi(OCH、CF(CFCHCHSi(OCH、CF(CFCOO(CHSi(OCHなどが挙げられ、熱可塑性樹脂としては、上記フッ素系のブレンド樹脂の場合と同様、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、エチレン−プロピレン共重合体、ポリエステル樹脂などが挙げられる。
撥水性樹脂中のシランカップリング剤の含有量は、0.5〜5.0質量%が好適である。0.5質量%未満では、十分な耐食性が得られないからであり、また、5.0質量%超えでは、撥水性樹脂層とその下層の樹脂層で層間剥離が生じやすくなる傾向にあるからである。
接着樹脂層に好適な樹脂としては、例えば、ポリオレフィン系やポリエステル系が挙げられる。
ポリオレフィン系では、カルボキシル基含有ポリオレフィンが好適で、エチレン、プロピレンあるいはブテンなどのオレフィン系単量体と、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、フマル酸、マレイン酸、無水マレイン酸などのα、β不飽和カルボン酸を共重合もしくはグラフト重合したものが好適である。特に、α、β不飽和カルボン酸の含有量は、オレフィン成分100重量部に対して0.01〜35重量部とすることが好ましい。35重量部超えでは、効果が飽和してコスト的に不利になるからであり、0.01重量部未満では、鋼板との十分な密着性が得られないおそれがあるからである。
また、ポリエステル系では、例えば、イソフタル酸変性をしたポリエチレンテレフタレートが好適である。
さらに、接着樹脂層と撥水性樹脂層の膜厚は、特に限定しないが、撥水性樹脂層として5〜100μm、接着樹脂層として2〜40μmが好適である。接着樹脂層が2μm未満では、鋼板に対する樹脂密着性が不足する傾向があり、また、40μmを超えると、性能上の問題はないが、コストの点で不利である。撥水性樹脂層が5μm未満では、内容物耐食性が劣化するおそれがあり、また、100μmを超えると、性能上の問題はないが、コストの点で不利である。
次にこの発明に従う具体的な製造方法の一例を説明する。
化成処理錫合金めっき鋼板は、通常のぶりき原板あるいはNiフラッシュめっき処理を施した原板若しくはNi拡散処理を施した原板に、Snめっきを施した後、錫の融点(231.9℃)以上の温度で加熱溶融(リフロー)処理を行ってSnを地鉄と合金化し、引き続き、浸漬処理によって化成処理を行うことによって、化成皮膜を形成した錫合金めっき鋼板を製造する。尚、リフロー処理後に、化成処理の反応性を向上させるため、15g/lの炭酸ナトリウム水溶液中で1C/dmの陰極処理を行ってもよい。
化成処理液としては、リン酸イオン換算で1〜80g/lのリン酸、錫イオン換算で0.001〜10g/lの塩化第一錫、及び0.1〜1.0g/lの塩素酸ナトリウムを含有し、さらにシランカップリング剤を0.5〜20.0mass%添加した水溶液を用いる。
化成処理の条件は、温度を40〜60℃、処理(浸漬)時間を1〜5秒とすることが好ましい。化成処理後の錫合金めっき鋼板は、35〜150℃の温風で乾燥する。
また、化成皮膜を形成する別の方法としては、シランカップリング剤を含まない上記化成処理液で処理した後、Siを含有する層を形成するためのシランカップリング処理液、例えば、エタノールを50mass%以上、シランカップリング剤を0.5〜20mass%、残りを水とした溶液を均一に塗布し、鋼板表面温度が50〜150℃に到達するように乾燥する方法がある。
その後、撥水性樹脂と、接着樹脂の少なくとも2種類の樹脂を、別々に加熱溶融させた後、これら接着樹脂および撥水性樹脂樹脂を、化成処理錫合金めっき鋼板上に、接着樹脂層が下層、撥水性樹脂層が上層となるように流下させ、少なくとも接着樹脂層と上層樹脂層で構成される複合樹脂層を熱融着することによって、樹脂被覆錫合金めっき鋼板を得ることができる。なお、化成処理した錫合金めっき鋼板に、溶融状態の接着樹脂を接触させるとき、接着樹脂の温度が極力低下しないようにするため、化成処理した錫合金めっき鋼板金属板の温度は、前記接着樹脂との接触時には、前記接着樹脂の温度と同等程度、好適には接着樹脂の融点〜接着樹脂の融点+200℃程度になるように加熱装置で予熱することが好ましい。
上述したところは、この発明の実施形態の一例を示したにすぎず、請求の範囲において種々の変更を加えることができる。
たとえば、上記撥水性樹脂層と接着樹脂層の間に、用途に応じてさらに1層以上の樹脂層を設けてもよい。
また、上記では化成皮膜を形成した錫合金めっき鋼板上に、溶融樹脂を鋼板に直接接触させて被覆する、いわゆる押し出しラミネート技術で樹脂被覆錫合金めっき鋼板とする場合について示したが、あらかじめ複合樹脂層をフィルムとして作製した後ラミネートする、いわゆるフィルムラミネート技術により被覆する方法としてもよい。ここで、押し出しラミネート法の方が、樹脂層の薄膜化やコストの面などで有利であり好ましい。
次に、この発明の実施例について以下で詳細に説明する。
・実施例1〜11
板厚0.3mmの低炭素鋼または極低炭素鋼からなるぶりき原板に、表1に示す錫合金めっき層を形成させた後、表2に示す4種類の化成処理条件(A〜D)のいずれかを適用して化成皮膜を形成させた。その後、化成皮膜を形成した錫合金めっき鋼板を加熱した後、表3に記載の9種類の樹脂のいずれかを押し出し法によりラミネートし、樹脂被覆錫合金めっき鋼板を製造した。得られた樹脂被覆錫合金めっき鋼板について、錫合金層の合金種およびSn付着量、化成皮膜中のPとSi付着量、被覆樹脂層の種類および25℃での水に対する表面接触角(度)を表1に示す。なお、水に対する表面接触角の測定は、以下のようにして行なった。
〔水の接触角の測定〕
接触角計(CA−SミクロII型、協和界面科学製)を用いて接触角計周囲の温度を25℃に設定した上で測定した。鋼板表面のたわみが無いように、サンプルを固定した後、付属の滴下機で純水を1滴落とし、表面に水滴を付着させた。次いで、鋼板表面と平行な方向から倍率300倍にて写真を撮り、その写真から分度器にて接触角を測定した。
・比較例1〜6
比較のため、化成皮膜中のPおよびSi付着量のいずれか一方がこの発明の適正範囲外であるか、あるいは、被覆樹脂層の構成がこの発明の適正範囲外である樹脂被覆錫合金めっき鋼板についても製造した。
(性能評価)
実施例及び比較例の各樹脂被覆錫合金めっき鋼板について、樹脂密着性と内容物耐食性を評価するための試験を行った。
1.樹脂密着性試験
得られた各樹脂被覆錫合金めっき鋼板を、エリクセン試験機を用いて樹脂被覆面が3mmだけ凸側になるように張出し成形を行い、その後、沸騰水中に5時間浸漬した後、凸部の剥離状況によって樹脂密着性を下記に示す基準によって3段階で評価した。その評価結果を表1に示す。
<密着性評価基準>
評点3:フィルムが剥離しない場合
評点2:フィルムが僅かに浮き上がる状態の剥離が生じた場合
評点1:フィルムが完全に浮き上がった状態の剥離が生じた場合
2.内容物耐食性試験
得られた各樹脂被覆錫合金めっき鋼板を、デュボン衝撃機にて凸部加工し、メチルエチルケトン30重量部、トルエン20重量部、ウレタン変性ポリエステル樹脂50重量部の溶剤含有樹脂溶液が凸加工部に接触するように充填した状態で、50℃の恒温室に90日間放置し、発錆の有無を観察した。デュボン衝撃の条件は、3/8”(インチ)ポンチを金属板の裏から押しあて、300gの錘を30cmの高さから評価面(表面)に落下させることによって凸部加工を行った。内容物耐食性は、凸加工部に発錆が発生しない場合を「○」とし、凸部に発錆が発生した場合を「×」として評価した。その評価結果を表1に示す。
Figure 2005281794
Figure 2005281794
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表1に示す評価結果から、実施例はいずれも、内容物耐食性および樹脂密着性に優れている。
一方、化成皮膜中のPおよびSi付着量のいずれか一方がこの発明の適正範囲外である比較例1〜4は、いずれも樹脂密着性が悪く、また、被覆樹脂層の構成がこの発明の適正範囲外である比較例5および6は、いずれも内容物耐食性が劣っている。
この発明によれば、錫合金層の上層に形成される化成皮膜中に、その皮膜特性を向上させる作用を有するものの環境上の問題から望ましくないとされるCrを含有させることなく、被覆樹脂との密着性に優れ、かつ、熱可塑性樹脂を膨潤させる溶剤やアルコールを含有する内容物に対してさえも、耐食性に優れた樹脂被覆層を有する樹脂被覆錫合金めっき鋼板の提供を可能にした。

Claims (6)

  1. 鋼板表面上に、FeおよびNiのうちから選んだ1種または2種を含有する錫合金層を有し、その上層に0.5〜100mg/mのPと0.1〜250mg/mのSiを含有する化成皮膜を有し、前記化成皮膜の表面に、接着樹脂層を下層とし、25℃での水に対する表面接触角が87度以上である撥水性樹脂層を上層とする複合樹脂層を有することを特徴とする樹脂被覆錫合金めっき鋼板。
  2. 前記化成皮膜は、Pとシランカップリング剤を含有する化成処理液により形成することを特徴とする請求項1に記載の樹脂被覆錫合金めっき鋼板。
  3. 前記錫合金層中のSnの付着量が0.1〜3.0g/mであることを特徴とする請求項1又は2に記載の樹脂被覆錫合金めっき鋼板。
  4. 前記撥水性樹脂層が、フッ素を含有する樹脂と熱可塑性樹脂とのブレンド樹脂からなる請求項1、2または3記載の樹脂被覆錫合金めっき鋼板。
  5. 前記撥水性樹脂層が、珪素を含有する樹脂と熱可塑性樹脂とのブレンド樹脂からなる請求項1、2または3記載の樹脂被覆錫合金めっき鋼板。
  6. 前記撥水性樹脂層が、フッ素原子もしくはアルキル基を有するシランカップリング剤を熱可塑性樹脂に混合したブレンド樹脂からなる請求項1、2または3記載の樹脂被覆錫合金めっき鋼板。
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