JP2014162742A - 含フッ素アルコキシシラン化合物、コーティング剤、及び撥水膜 - Google Patents

含フッ素アルコキシシラン化合物、コーティング剤、及び撥水膜 Download PDF

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Abstract

【課題】環境問題に適合するとともに、パーフルオロアルキル基のフッ素数の減少に伴う撥水性の低下が抑制され、炭素数8以上のパーフルオロアルキル基を有する従来の含フッ素アルコキシシラン化合物を用いた場合と同等又はそれ以上の撥水性及び耐久性を示す撥水膜を形成することが可能な含フッ素アルコキシシラン化合物を提供する。
【解決手段】下記一般式(1)で表される含フッ素アルコキシシラン化合物である。
Rf−A−B−SiX3 ・・・(1)
(前記一般式(1)中、Rfは炭素数3〜7のパーフルオロアルキル基を示し、Aは−COO−、−O−、−S−、又は−CO−S−を示し、Bは−(CH2m−(m=5〜20)を示し、Xは−OCn2n+1(n=1〜4)を示し、3つのXは互いに同一でも異なっていてもよい)
【選択図】なし

Description

本発明は、物質表面を改質するコーティング剤として有用な含フッ素アルコキシシラン化合物、この含フッ素アルコキシシラン化合物を含有するコーティング剤、及びこのコーティング剤を用いて形成される撥水膜に関する。
パーフルオロアルキル基(以下、「Rf基」とも記す)を有する含フッ素アルコキシシラン化合物は、フッ素原子に由来する撥水性及び撥油性を有することから、表面改質用のコーティング剤として広く用いられている。
このような用途で使用される含フッ素アルコキシシラン化合物は、テロメリゼーションによって合成された、炭素数8以上のRf基を有する化合物が主流であった。しかしながら、炭素数8以上のRf基を有する化合物は、分解又は代謝によって生体内への蓄積性を示すパーフルオロオクタン酸(以下、「PFOA」と記す)を生成することが報告されている(非特許文献1)。このため、PFOAは、米国においてパーフルオロオクタンスルホン酸塩(以下、「PFOS」と記す)と同様に環境汚染物質として規制されることが確定している。
生体蓄積性が少ない化合物として、炭素数7以下のRf基を有する含フッ素アルコキシシラン化合物を挙げることができる(例えば、特許文献1〜4参照)。また、炭素数7以下のRf基を有する含フッ素アルコキシシラン化合物は、上記特許文献に記載されているもの以外にも既に幾つか知られている。
特許第4325555号公報 特開2008−24748号公報 特開2005−254601号公報 特開昭58−120637号公報
EPA OPPT FACT SHEET April 14,2003(http://www.fluoridealert.org/pesticides/pfoa.us.epa.fact.sheet.2003.pdf)
しかしながら、炭素数7以下のRf基を有する従来の含フッ素アルコキシシラン化合物をコーティング剤として使用すると、形成される撥水膜の撥水性や耐久性が不十分であるといった問題があった。
本発明は、このような従来技術の有する問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、環境問題に適合するとともに、パーフルオロアルキル基のフッ素数の減少に伴う撥水性の低下が抑制され、炭素数8以上のパーフルオロアルキル基を有する従来の含フッ素アルコキシシラン化合物を用いた場合と同等又はそれ以上の撥水性及び耐久性を示す撥水膜を形成することが可能な含フッ素アルコキシシラン化合物を提供することにある。また、本発明の目的とするところは、炭素数8以上のパーフルオロアルキル基を有する従来の含フッ素アルコキシシラン化合物を用いた場合と同等又はそれ以上の撥水性及び耐久性を示す撥水膜を提供することにある。
本発明者らは上記課題を達成すべく鋭意検討した結果、特定構造を有する含フッ素アルコキシシラン化合物を用いることによって、上記課題を達成することが可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明によれば、以下に示す含フッ素アルコキシシラン化合物が提供される。
[1]下記一般式(1)で表される含フッ素アルコキシシラン化合物。
Rf−A−B−SiX3 ・・・(1)
(前記一般式(1)中、Rfは炭素数3〜7のパーフルオロアルキル基を示し、Aは−COO−、−O−、−S−、又は−CO−S−を示し、Bは−(CH2m−(m=5〜20)を示し、Xは−OCn2n+1(n=1〜4)を示し、3つのXは互いに同一でも異なっていてもよい)
[2]前記一般式(1)中、Aが−COO−である前記[1]に記載の含フッ素アルコキシシラン化合物。
また、本発明によれば、以下に示すコーティング剤が提供される。
[3]前記[1]又は[2]に記載の含フッ素アルコキシシラン化合物を含有するコーティング剤。
さらに、本発明によれば、以下に示す撥水膜が提供される。
[4]前記[3]に記載のコーティング剤を用いて形成される撥水膜。
本発明の含フッ素アルコキシシラン化合物を用いれば、パーフルオロアルキル基のフッ素数の減少に伴う撥水性の低下が抑制され、炭素数8以上のパーフルオロアルキル基を有する従来の含フッ素アルコキシシラン化合物を用いた場合と同等又はそれ以上の撥水性及び耐久性を示す撥水膜を形成することができる。また、本発明の含フッ素アルコキシシラン化合物は、パーフルオロアルキル基の炭素数が8に満たないため、環境問題にも適合している。そして、本発明の含フッ素アルコキシシラン化合物をコーティング剤として利用することで、高い撥水性と耐久性を示す撥水膜を提供することができる。
以下、本発明の実施の形態について説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではない。
(含フッ素アルコキシシラン化合物)
本発明の含フッ素アルコキシシラン化合物は、下記一般式(1)で表される化合物である。
Rf−A−B−SiX3 ・・・(1)
(前記一般式(1)中、Rfは炭素数3〜7のパーフルオロアルキル基を示し、Aは−COO−、−O−、−S−、又は−CO−S−を示し、Bは−(CH2m−(m=5〜20)を示し、Xは−OCn2n+1(n=1〜4)を示し、3つのXは互いに同一でも異なっていてもよい)
一般式(1)中のRfは、炭素数3〜7のパーフルオロアルキル基である。Rf基の炭素数を上記範囲とすることで、環境問題に適合した化合物でありながらも、良好な撥水性を示す撥水膜を形成することができる。また、本発明の含フッ素アルコキシシラン化合物は、一般式(1)中のA基がRf基と直接結合した構造を有する。このような構造とすることで、形成される撥水膜の耐久性が飛躍的に向上する。形成される撥水膜の耐久性がこのように向上する理由については明らかではないが、A基をRf基と直接結合させたことでA基が水の求核攻撃を受けにくくなり、加水分解しにくくなったためであると推測される。
一般式(1)中のAは、合成の容易さ及び形成される撥水膜の耐久性を向上させる観点から、−COO−、−O−、−S−、及び−CO−S−から選択される連結基である。一般式(1)中のAが上記以外の連結基、例えば、−NHCO−、−NHCOO−、又は−NHCONH−等であると親水性が増大してしまい、加水分解を受けやすくなって撥水膜の耐久性が低下する場合がある。なお、一般式(1)中のAは−COO−であることが、他の連結基に比して凝集エネルギーが高くなり、撥水膜の耐久性が向上するためにより好ましい。
一般式(1)中のBは、炭素数5〜20(m=5〜20)のアルキレンであり、炭素数5〜10(m=5〜10)のアルキレンであることがさらに好ましい。Bの炭素数を上記範囲とすることで含フッ素アルコキシシラン化合物の疎水性が強まり、Rf基の撥水性を補うのに効果的となる。なお、Bの炭素数が5未満(4以下)であると含フッ素アルコキシシラン化合物の疎水性が弱まってしまい、Rf基の撥水性を補うほどの効果が出ない。一方、Bの炭素数が20を超える(21以上)であると、アルコキシシランがシラノールへと加水分解しにくくなる場合がある。
一般式(1)中のXは、シラン化合物等に従来用いられているアルコキシ基であればよいが、具体的には−OCn2n+1(n=1〜4)である。一般式(1)中のXを−OCn2n+1(n=1〜4)とすることで、アルコキシシランのシラノールへの加水分解が容易となるために好ましい。なお、一般式(1)中の3つのXは、互いに同一でも異なっていてもよい。
(含フッ素アルコキシシラン化合物の合成方法)
本発明の含フッ素アルコキシシラン化合物は、従来公知の方法で合成することができる。例えば、一般式(1)中のAが−COO−である含フッ素アルコキシシラン化合物については、以下に示すスキームに従って合成することができる。
Figure 2014162742
また、一般式(1)中のAが−O−である含フッ素アルコキシシラン化合物については、以下に示すスキームに従って合成することができる。
Figure 2014162742
さらに、一般式(1)中のAが−S−である含フッ素アルコキシシラン化合物については、以下に示すスキームに従って合成することができる。
Figure 2014162742
なお、一般式(1)中のAが−CO−S−である含フッ素アルコキシシラン化合物については、以下に示すスキームに従って合成することができる。
Figure 2014162742
(反応溶媒)
本発明の含フッ素アルコキシシラン化合物の合成するための反応は、溶媒中又は無溶媒下で実施することができる。溶媒中で合成する際に用いる反応溶媒としては、反応に影響しにくく、原料の溶解性が適度なものを選択すればよい。一般式(1)中のAが−COO−である含フッ素アルコキシシラン化合物を合成する場合に用いる反応溶媒の具体例としては、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒;アセトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒;ヘキサン、ヘプタン、トルエン、キシレン等の炭化水素系溶媒;ジクロロメタン、クロロホルム等のハロゲン系溶媒等を挙げることができる。また、原料のアルコールを反応系に過剰量添加し、これを反応溶媒として用いることもできる。
一般式(1)中のAが−O−及び−S−である含フッ素アルコキシシラン化合物を合成する場合には、第1ステップのエーテル化反応又はスルフィド化反応において、例えば、ジメチルスルホキシド、アセトニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド等を使用することができる。また、第2ステップのヒドロシリル化反応においては、例えば、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒;アセトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒;ヘキサン、ヘプタン、トルエン、キシレン等の炭化水素系溶媒;ジクロロメタン、クロロホルム等のハロゲン系溶媒;メタノール、エタノール等のアルコール等を使用することができる。
一般式(1)中のAが−CO−S−である含フッ素アルコキシシラン化合物を合成する場合には、第1ステップのチオエステル化反応において、例えば、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒;アセトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒;ヘキサン、ヘプタン、トルエン、キシレン等の炭化水素系溶媒;ジクロロメタン、クロロホルム等のハロゲン系溶媒;トリエチルアミン、ピリジン等のアミン系溶媒等を使用することができる。また、原料のチオールを反応系に過剰量添加し、これを反応溶媒として用いることもできる。
第2ステップのヒドロシリル化反応においては、例えば、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒;アセトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒;ヘキサン、ヘプタン、トルエン、キシレン等の炭化水素系溶媒;ジクロロメタン、クロロホルム等のハロゲン系溶媒;メタノール、エタノール等のアルコール等を使用することができる。なお、これらの反応溶媒の使用量は特に限定されない。
(触媒)
本発明の含フッ素アルコキシシラン化合物を合成する際には、従来公知の触媒を使用することができる。例えば、前述のヒドロシリル化反応においては、Speier触媒、及びKarstedt触媒等を使用することができる。
(反応温度)
本発明の含フッ素アルコキシシラン化合物を合成する際の反応温度は特に限定されない。反応の進行具合、使用する試薬、又は反応溶媒の沸点等によって適宜設定すればよい。
(反応雰囲気)
本発明の含フッ素アルコキシシラン化合物を合成する際の反応雰囲気は特に限定されない。具体的には、窒素やアルゴン等の不活性ガス雰囲気下、又は空気等の雰囲気化で反応させることができる。
合成した含フッ素アルコキシシラン化合物の分子構造は、NMR(核磁気共鳴装置)やIR(赤外分光光度計)等を用いて同定することができる。
本発明の含フッ素アルコキシシラン化合物の分子構造のうち、代表的なものを以下に例示する。ただし、本発明の含フッ素アルコキシシラン化合物は以下に示す分子構造を有するものに限定されない。
含フッ素アルコキシシラン化合物1:C613−COO−(CH210−Si−(OCH2CH33
含フッ素アルコキシシラン化合物2:C613−COO−(CH210−Si−(OCH33
含フッ素アルコキシシラン化合物3:C37−COO−(CH210−Si−(OCH33
含フッ素アルコキシシラン化合物4:C37−COO−(CH210−Si−(OCH2CH33
含フッ素アルコキシシラン化合物5:C613−COO−(CH220−Si−(OCH2CH33
含フッ素アルコキシシラン化合物6:C613−COO−(CH25−Si−(OCH2CH33
含フッ素アルコキシシラン化合物7:C613−O−(CH210−Si−(OCH2CH33
含フッ素アルコキシシラン化合物8:C613−S−(CH210−Si−(OCH2CH33
含フッ素アルコキシシラン化合物9:C613−C(=O)S−(CH210−Si−(OCH2CH33
(撥水膜)
上述の含フッ素アルコキシシラン化合物をコーティング剤として用いることで、本発明の撥水膜を形成することができる。より具体的には、本発明の撥水膜は、以下に示す(i)〜(iii)をコーティング剤として使用し、基材等の表面上に塗布して成膜することで製造することができる。
(i)含フッ素アルコキシシラン化合物のみ
(ii)含フッ素アルコキシシラン化合物の一部が縮合されたもの
(iii)含フッ素アルコキシシラン化合物と、メチルトリエトキシシランやテトラエトキシシラン等の従来使用されているシランカップリング剤とを混合して得られる、含フッ素アルコキシシラン化合物の一部が縮合された混合物
コーティング剤として使用される上記(ii)、(iii)は、アルコキシシランが加水分解された後に脱水縮合して得られる、Si−O−Si結合で一部が繋がった縮合物である。
(縮合物を合成する際の反応溶媒)
上記の縮合物を合成する際に用いられる反応溶媒は特に限定されない。反応溶媒の具体例としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール溶媒等を挙げることができる。なお、反応溶媒の使用量は特に限定されない。
(縮合物を合成する際の触媒)
上記の縮合物を合成する際には触媒を用いることができる。触媒の具体例としては、ギ酸、酢酸等の有機酸;塩酸、硫酸等の無機酸;ジブチル錫ジメトキシド、テトラ−n−ブチルチタネート等の有機金属等を挙げることができる。
(縮合物を合成する際の反応温度)
上記の縮合物を合成する際の反応温度は特に限定されない。反応の進行具合、使用する試薬、又は反応溶媒の沸点等によって適宜設定すればよい。
(縮合物を合成する際の反応雰囲気)
上記の縮合物を合成する際の反応雰囲気は特に限定されない。具体的には、窒素やアルゴン等の不活性ガス雰囲気下、又は空気等の雰囲気化で反応させることができる。
(コーティング剤の希釈溶媒)
上記のコーティング剤はそのまま用いることもできるが、希釈溶媒で希釈したものを使用してもよい。希釈溶媒としては、例えば、1,1,1,2,2,3,3,4,4,5,5,6,6−トリデカフルオロオクタン、パーフルオロヘプタン等の含フッ素脂肪族炭化水素系溶媒;ベンゾトリフロライド、m−キシレンヘキサンフロライド等の含フッ素芳香族炭化水素系溶媒;HFE−347pc−f、HFE−569sf等の含フッ素エーテル系溶媒;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒;アセトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒;ヘキサン、ヘプタン、トルエン、キシレン等の炭化水素系溶媒;ジクロロメタン、クロロホルム等のハロゲン系溶媒;メタノール、エタノール等のアルコール等を使用することができる。これらの希釈溶媒のなかでも、フッ素系溶媒、又はフッ素系溶媒と非フッ素系溶媒の混合溶媒は、含フッ素アルコキシシラン化合物を容易に溶解することができるために好ましい。なお、希釈溶媒の使用量は、使用状況に応じて適宜設定すればよい。
本発明の撥水膜は、上記コーティング剤を基材の表面上に塗布した後、室温条件下又は加熱条件下で乾燥すること等によって形成することができる。
(基材)
基材としては、例えば、無機系反射防止膜(SiO2)、ガラス、ハードコート膜、陶磁器、金属等を使用することができる。
(塗布方法)
塗布方法は特に限定されないが、例えば、ディップ法、スピンコート法、バーコート法、スプレー法、刷毛を用いた塗布方法等の方法を利用することができる。
(乾燥方法)
乾燥温度は、溶媒の発火点や引火点、基材の耐熱温度等により適宜設定すればよい。具体的には、室温(25℃)以上300℃以下とすることが好ましく、40℃以上250℃以下とすることがさらに好ましく、50℃以上150℃以下とすることが特に好ましい。また、乾燥時間は、溶媒が十分に除去され、形成される撥水膜の表面が硬化する時間とすればよい。
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、以下の記載における「部」及び「%」は、特に断らない限り質量基準である。
(1)含フッ素アルコキシシラン化合物の合成
[実施例1]
反応容器中に、9−デセン−1−オール1.00部及びトリデカフルオロヘプタン酸2.80部を投入し、撹拌しながら100℃で5時間加熱した。反応液を水酸化ナトリウム水溶液とクロロホルムで分液した後、有機層を回収して濃縮し、中間体を得た。得られた中間体1.00部とトリエトキシシラン0.39部を80℃で2時間反応させて含フッ素アルコキシシラン化合物1を得た。得られた含フッ素アルコキシシラン化合物1を1H−NMR(商品名「ECA400」、日本電子社製)で測定したところ、δ0.60ppm(2H,t)、δ1.15−1.45ppm(23H,m)、δ1.72ppm(2H,m)、δ3.75−3.90ppm(6H,m)、δ4.35ppm(2H,t)にシグナルが観測された。また、19F−NMR(商品名「ECA400」、日本電子社製)による測定から、フッ素の積分比が13であることを確認した。さらに、含フッ素アルコキシシラン化合物1をFT−IR(商品名「Prestige21」、島津製作所社製)で測定したところ、1782cm-1にエステル、1080cm-1、1105cm-1にエトキシシリルによる吸収が観測された。これらの結果から帰属される含フッ素アルコキシシラン化合物1の構造を表1に示す。
[実施例2]
トリエトキシシランをトリメトキシシラン0.29部に変更したこと以外は、前述の実施例1と同様にして含フッ素アルコキシシラン化合物2を得た。実施例1と同様にして、得られた含フッ素アルコキシシラン化合物2をNMRで測定し、−(CH210−Si−(OCH33によるプロトンのシグナル及びフッ素積分比を確認した。また、FT−IRにてエステル、メトキシシリルによる吸収を観測した。含フッ素アルコキシシラン化合物2の構造を表1に示す。
[実施例3]
トリデカフルオロヘプタン酸をヘプタフルオロ酪酸1.64部に変更するとともに、トリエトキシシランを0.56部用いたこと以外は、前述の実施例1と同様にして含フッ素アルコキシシラン化合物3を得た。実施例1と同様にして、得られた含フッ素アルコキシシラン化合物3をNMRで測定し、−(CH210−Si−(OCH33によるプロトンのシグナル及びフッ素積分比を確認した。また、FT−IRにてエステル、メトキシシリルによる吸収を観測した。得られた含フッ素アルコキシシラン化合物3の構造を表1に示す。
[実施例4]
トリデカフルオロヘプタン酸をヘプタフルオロ酪酸1.64部に変更するとともに、トリエトキシシランをトリメトキシシラン0.42部に変更したこと以外は、前述の実施例1と同様にして含フッ素アルコキシシラン化合物4を得た。実施例1と同様にして、得られた含フッ素アルコキシシラン化合物4をNMRで測定し、−(CH210−Si−(OCH2CH33によるプロトンのシグナル及びフッ素積分比を確認した。また、FT−IRにてエステル、メトキシシリルによる吸収を観測した。得られた含フッ素アルコキシシラン化合物4の構造を表1に示す。
[実施例5]
エチレンオキシドと18−ブロモ−1−オクタデセンを使用し、非特許文献(Organic Syntheses,Coll.Vol.1,p.306(1941);Vol.6,p.54(1926))の記載を参考にして19−エイコセン−1−オールを合成した。次いで、9−デセン−1−オールを19−エイコセン−1−オール1.00部に変更するとともに、トリデカフルオロヘプタン酸を1.47部及びトリエトキシシランを0.31部用いたこと以外は、前述の実施例1と同様にして含フッ素アルコキシシラン化合物5を得た。実施例1と同様にして、得られた含フッ素アルコキシシラン化合物5をNMRで測定し、−(CH220−Si−(OCH2CH33によるプロトンのシグナル及びフッ素積分比を確認した。また、FT−IRにてエステル、エトキシシリルによる吸収を観測した。得られた含フッ素アルコキシシラン化合物5の構造を表1に示す。
[実施例6]
9−デセン−1−オールを4−ヘキセン−1−オール1.00部に変更するとともに、トリデカフルオロヘプタン酸を4.36部及びトリエトキシシランを0.44部用いたこと以外は、前述の実施例1と同様にして含フッ素アルコキシシラン化合物6を得た。実施例1と同様にして、得られた含フッ素アルコキシシラン化合物6をNMRで測定し、−(CH25−Si−(OCH2CH33によるプロトンのシグナル及びフッ素積分比を確認した。また、FT−IRにてエステル、エトキシシリルによる吸収を観測した。得られた含フッ素アルコキシシラン化合物6の構造を表1に示す。
[実施例7]
反応容器中に、ジメチルスルホキシド、9−デセン−1−オール1.00部、及び過剰量の水素化ナトリウムを投入し、撹拌しながら室温で1時間反応させた。反応液をろ過後、反応容器中に、ろ液と1−ブロモパーフルオロヘキサン2.55部を投入し、撹拌しながら室温で48時間反応させた。反応液をフッ素系溶媒と水で分液した後、フッ素系溶媒層を回収して濃縮し、中間体を得た。得られた中間体1.00部とトリエトキシシラン0.42部を反応容器中で撹拌しながら80℃で2時間反応させ、含フッ素アルコキシシラン化合物7を得た。実施例1と同様にして、得られた含フッ素アルコキシシラン化合物7をNMRで測定し、−(CH210−Si−(OCH2CH33によるプロトンのシグナル及びフッ素積分比を確認した。また、FT−IRにてエーテル、エトキシシリルによる吸収を観測した。得られた含フッ素アルコキシシラン化合物7の構造を表1に示す。
[実施例8]
10−ブロモ−1−デセンを原料として使用し、非特許文献(Organic Syntheses,Coll.Vol.4,p.401(1963);Vol.30,p.35(1950))の記載を参考にして9−デセン−1−チオールを合成した。反応容器中に、ジメチルスルホキシド、9−デセン−1−チオール1.00部、及び過剰量の水素化ナトリウムを投入し、撹拌しながら室温で1時間反応させた。反応液をろ過後、反応容器中に、ろ液と1−ブロモパーフルオロヘキサン2.31部を投入し、撹拌しながら70℃で5時間反応させた。反応液をフッ素系溶媒と水で分液した後、フッ素系溶媒層を回収して濃縮し、中間体を得た。得られた中間体1.00部とトリエトキシシラン0.40部を反応容器中で撹拌しながら80℃で2時間反応させ、含フッ素アルコキシシラン化合物8を得た。実施例1と同様にして、得られた含フッ素アルコキシシラン化合物8をNMRで測定し、−(CH210−Si−(OCH2CH33によるプロトンのシグナル及びフッ素積分比を確認した。また、FT−IRにてチオエーテル、エトキシシリルによる吸収を観測した。得られた含フッ素アルコキシシラン化合物8の構造を表1に示す。
[実施例9]
反応容器中に、9−デセン−1−チオール1.00部、パーフルオロヘプタン酸クロリド2.22部、及びピリジンを投入し、撹拌しながら室温で反応させた。薄層クロマトグラフィーにより原料の消失を確認して反応終了とした。反応液をフッ素系溶媒と水で分液した後、フッ素系溶媒層を回収して濃縮し、中間体を得た。得られた中間体1.00部とトリエトキシシラン0.38部を反応容器中で撹拌しながら80℃で2時間反応させ、含フッ素アルコキシシラン化合物9を得た。実施例1と同様にして、得られた含フッ素アルコキシシラン化合物9をNMRで測定し、−(CH210−Si−(OCH2CH33によるプロトンのシグナル及びフッ素積分比を確認した。また、FT−IRにてチオエステル、エトキシシリルによる吸収を観測した。得られた含フッ素アルコキシシラン化合物9の構造を表1に示す。
[比較例1]
反応容器中に、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン1.00部及び少量の炭酸カリウムを投入して冷却下で撹拌した。その後、2−(パーフルオロヘキシル)エタノール1.40部を滴下投入した。2−(パーフルオロヘキシル)エタノール投入後に、撹拌しながら室温で7時間反応させた。ろ過して炭酸カリウムを除去し、含フッ素アルコキシシラン化合物10を得た。実施例1と同様にして、得られた含フッ素アルコキシシラン化合物10をNMRで測定し、−(CH22−OCONH−(CH23−Si−(OCH2CH33によるプロトンのシグナル及びフッ素積分比を確認した。また、FT−IRにてウレタン、エトキシシリルによる吸収を観測した。得られた含フッ素アルコキシシラン化合物10の構造を表1に示す。
[比較例2]
反応容器中に、2H,2H,3H,3H−パーフルオロノナン酸1.00部、ジフェニルホスホリルアジド0.74部、及び3−ブテン−1−オール0.19部を投入し、撹拌しながら加熱下で5時間反応させた。反応液をフッ素系溶媒と水で分液した後、フッ素系溶媒層を回収して濃縮し、中間体を得た。得られた中間体1.00部とトリエトキシシラン0.43部を反応容器中で撹拌しながら80℃で2時間反応させ、含フッ素アルコキシシラン化合物11を得た。実施例1と同様にして、得られた含フッ素アルコキシシラン化合物11をNMRで測定し、−(CH22−NHCOO−(CH24−Si−(OCH2CH33によるプロトンのシグナル及びフッ素積分比を確認した。また、FT−IRにてウレタン、エトキシシリルによる吸収を観測した。得られた含フッ素アルコキシシラン化合物11の構造を表1に示す。
[比較例3]
9−デセン−1−オールを2−(パーフルオロヘキシル)エタノール1.00部に変更するとともに、トリデカフルオロヘプタン酸を4−ペンテン酸0.33部に変更し、かつ、トリエトキシシランを0.44部用いたこと以外は、前述の実施例1と同様にして含フッ素アルコキシシラン化合物12を得た。実施例1と同様にして、得られた含フッ素アルコキシシラン化合物12をNMRで測定し、−(CH22−OCO−(CH24−Si−(OCH2CH33によるプロトンのシグナル及びフッ素積分比を確認した。また、FT−IRにてエステル、エトキシシリルによる吸収を観測した。得られた含フッ素アルコキシシラン化合物12の構造を表1に示す。
[比較例4]
9−デセン−1−オールを3−ブテン−1−オール1.00部に変更するとともに、トリデカフルオロヘプタン酸を2H,2H,3H,3H−パーフルオロノナン酸6.53部に変更し、かつ、トリエトキシシランを0.44部用いたこと以外は、前述の実施例1と同様にして含フッ素アルコキシシラン化合物13を得た。実施例1と同様にして、得られた含フッ素アルコキシシラン化合物13をNMRで測定し、−(CH22−COO−(CH24−Si−(OCH2CH33によるプロトンのシグナル及びフッ素積分比を確認した。また、FT−IRにてエステル、エトキシシリルによる吸収を観測した。得られた含フッ素アルコキシシラン化合物13の構造を表1に示す。
[比較例5]
9−デセン−1−オールを3−ブテン−1−オール1.00部に変更するとともに、1−ブロモパーフルオロヘキサンを1−ブロモ−1H,1H,2H,2H−パーフルオロオクタン5.92部に変更し、かつ、トリエトキシシランを0.47部用いたこと以外は、前述の実施例7と同様にして含フッ素アルコキシシラン化合物14を得た。実施例1と同様にして、得られた含フッ素アルコキシシラン化合物14をNMRで測定し、−(CH22−O−(CH24−Si−(OCH2CH33によるプロトンのシグナル及びフッ素積分比を確認した。また、FT−IRにてエーテル、エトキシシリルによる吸収を観測した。得られた含フッ素アルコキシシラン化合物14の構造を表1に示す。
[比較例6]
反応容器中に、4−ペンテン酸1.00部及び塩化チオニル3.56部を投入し、撹拌しながら90℃で3時間反応させた。反応液を減圧蒸留して4−ペンテン酸クロライドを得た。得られた4−ペンテン酸クロライド1.00部と1H,1H,2H,2H−パーフルオロオクチルアミン2.70部を反応容器中で撹拌しながら100℃で5時間反応させた。反応液をフッ素系溶媒と水で分液した後、フッ素系溶媒層を回収して濃縮し、中間体を得た。得られた中間体1.00部とトリエトキシシラン0.43部を反応容器中で撹拌しながら80℃で2時間反応させ、含フッ素アルコキシシラン化合物15を得た。実施例1と同様にして、得られた含フッ素アルコキシシラン化合物15をNMRで測定し、−(CH22−NHCO−(CH24−Si−(OCH2CH33によるプロトンのシグナル及びフッ素積分比を確認した。また、FT−IRにてアミド、エトキシシリルによる吸収を観測した。得られた含フッ素アルコキシシラン化合物15の構造を表1に示す。
[比較例7]
4−ペンテン酸を2H,2H,3H,3H−パーフルオロノナン酸1.00部に変更するとともに、塩化チオニルを0.91部用いたこと以外は、前述の比較例6と同様にして2H,2H,3H,3H−パーフルオロノナン酸クロライドを得た。得られた2H,2H,3H,3H−パーフルオロノナン酸クロライド1.00部と3−ブテン−1−アミン0.17部を反応容器中で撹拌しながら反応させた。反応液をフッ素系溶媒と水で分液した後、フッ素系溶媒層を回収して濃縮し、中間体を得た。得られた中間体1.00部とトリエトキシシラン0.43部を反応容器中で撹拌しながら80℃で2時間反応させ、含フッ素アルコキシシラン化合物16を得た。実施例1と同様にして、得られた含フッ素アルコキシシラン化合物16をNMRで測定し、−(CH22−CONH−(CH24−Si−(OCH2CH33によるプロトンのシグナル及びフッ素積分比を確認した。また、FT−IRにてアミド、エトキシシリルによる吸収を観測した。得られた含フッ素アルコキシシラン化合物16の構造を表1に示す。
[比較例8]
反応容器中に、パーフルオロヘプタン酸クロリド1.00部及び3−ブテン−1−アミン0.19部を投入し、撹拌しながら100℃で5時間反応させた。反応液をフッ素系溶媒と水で分液した後、フッ素系溶媒層を回収して濃縮し、中間体を得た。得られた中間体1.00部とトリエトキシシラン0.47部を反応容器中で撹拌しながら80℃で2時間反応させ、含フッ素アルコキシシラン化合物17を得た。実施例1と同様にして、得られた含フッ素アルコキシシラン化合物17をNMRで測定し、−CONH−(CH24−Si−(OCH2CH33によるプロトンのシグナル及びフッ素積分比を確認した。また、FT−IRにてアミド、エトキシシリルによる吸収を観測した。得られた含フッ素アルコキシシラン化合物17の構造を表1に示す。
[比較例9]
9−デセン−1−オールをアリルアルコール1.00部に変更するとともに、トリデカフルオロヘプタン酸をパーフルオロオクタン酸8.56部に変更し、かつ、トリエトキシシランをトリメトキシシラン0.32部に変更したこと以外は、前述の実施例1と同様にして含フッ素アルコキシシラン化合物18を得た。実施例1と同様にして、得られた含フッ素アルコキシシラン化合物18をNMRで測定し、−(CH23−Si−(OCH33によるプロトンのシグナル及びフッ素積分比を確認した。また、FT−IRにてエステル、メトキシシリルによる吸収を観測した。得られた含フッ素アルコキシシラン化合物18の構造を表1に示す。
[比較例10]
9−デセン−1−オールを3−ブテン−1−オール1.00部に変更するとともに、トリエトキシシランをトリメトキシシラン0.38部に変更し、かつ、1−ブロモパーフルオロヘキサンを5.53部用いたこと以外は、前述の実施例7と同様にして含フッ素アルコキシシラン化合物19を得た。実施例1と同様にして、得られた含フッ素アルコキシシラン化合物19をNMRで測定し、−(CH24−Si−(OCH33によるプロトンのシグナル及びフッ素積分比を確認した。また、FT−IRにてエーテル、メトキシシリルによる吸収を観測した。得られた含フッ素アルコキシシラン化合物19の構造を表1に示す。
[比較例11]
21−ドコセン酸を原料として使用し、非特許文献(Organic Syntheses,Coll.Vol.1,p.306(1941);Vol.6,p.54(1926))の記載を参考にして21−ドコセン−1−オールを合成した。そして、9−デセン−1−オールを21−ドコセン−1−オール1.00部に変更するとともに、トリデカフルオロヘプタン酸を1.35部及びトリエトキシシランを0.29部用いたこと以外は、前述の実施例1と同様にして含フッ素アルコキシシラン化合物20を得た。実施例1と同様にして、得られた含フッ素アルコキシシラン化合物20をNMRで測定し、−(CH222−Si−(OCH2CH33によるプロトンのシグナル及びフッ素積分比を確認した。また、FT−IRにてエステル、エトキシシリルによる吸収を観測した。得られた含フッ素アルコキシシラン化合物20の構造を表1に示す。
[比較例12]
トリデカフルオロヘプタンをトリフルオロ酢酸0.88部に変更するとともに、トリエトキシシランを0.78部用いたこと以外は、前述の実施例1と同様にして含フッ素アルコキシシラン化合物21を得た。実施例1と同様にして、得られた含フッ素アルコキシシラン化合物21をNMRで測定し、−(CH210−Si−(OCH2CH33によるプロトンのシグナル及びフッ素積分比を確認した。また、FT−IRにてエステル、エトキシシリルによる吸収を観測した。得られた含フッ素アルコキシシラン化合物21の構造を表1に示す。
[比較例13]
ヘプタン酸1.00部と塩化チオニル2.74部を使用し、前述の比較例6と同様にしてヘプタン酸クロライドを得た。得られたヘプタン酸クロライド1.00部と9−デセン−1−オール0.95部を反応容器中で撹拌しながら100℃で5時間反応させた。反応液をフッ素系溶媒と水で分液した後、フッ素系溶媒層を回収して濃縮し、中間体を得た。得られた中間体1.00部とトリエトキシシラン0.69部を反応容器中で撹拌しながら80℃で2時間反応させ、含フッ素アルコキシシラン化合物22を得た。実施例1と同様にして、得られた含フッ素アルコキシシラン化合物22をNMRで測定し、C613−COO−(CH210−Si−(OCH2CH33によるプロトンのシグナルを確認した。また、FT−IRにてエステル、エトキシシリルによる吸収を観測した。得られたアルコキシシラン化合物22の構造を表1に示す。
Figure 2014162742
(2)撥水膜の作製
[実施例10]
商品名「Novec(登録商標)7200」(3M社製):エタノール=1:1溶液を使用し、含フッ素アルコキシシラン化合物1を固形分0.5%となるように希釈した。スピンコーターを使用して得られた希釈液をスライドガラス上に塗布した後、80℃で2時間乾燥させて撥水膜1を作製した。
[実施例11〜18、比較例14〜26]
含フッ素アルコキシシラン化合物1を含フッ素アルコキシシラン化合物2〜21、及びアルコキシシラン化合物22に変更したこと以外は、前述の実施例10と同様にして撥水膜2〜22を作製した。
(3)評価
[撥水性の評価]
自動接触角計(CA−VP、協和界面化学社製)を使用し、作製した撥水膜表面の接触角を測定した。具体的には、作製した撥水膜表面上の異なる5箇所で水の静的接触角を測定した。次いで、測定した静的接触角の最大値と最小値を切り捨てた3点の平均値を算出し、以下に示す評価基準に従って撥水膜の撥水性を評価した。結果を表2に示す。
◎:静的接触角の平均値が100°以上
○:90°以上100°未満
△:80°以上90°未満
×:80°未満
[耐久性]
撥水膜を形成したスライドガラスを60℃の1.0×10-4規定の水酸化ナトリウム水溶液中に浸漬した。1週間後にスライドガラスを取り出し、表面をアセトンで洗い流して乾燥させた。次いで、前述の[撥水性の評価]の場合と同様にして撥水膜表面の静的接触角を測定し、3点の平均値を算出した。そして、浸漬前の撥水膜の撥水膜表面の静的接触角と、浸漬前の撥水膜の撥水膜表面の静的接触角を比較し、以下に示す評価基準に従って撥水膜の耐久性を評価した。評価結果を表2に示す。
◎:浸漬後の静的接触角が、浸漬前の静的接触角の90%以上
○:浸漬後の静的接触角が、浸漬前の静的接触角の75%以上90%未満
△:浸漬後の静的接触角が、浸漬前の静的接触角の60%以上75%未満
×:浸漬後の静的接触角が、浸漬前の静的接触角の60%未満
Figure 2014162742
表2に示す評価結果から明らかなように、実施例1〜9の含フッ素アルコキシシラン化合物を用いて作製した撥水膜は、比較例1〜12の含フッ素アルコキシシラン化合物、及び比較例13のアルコキシシラン化合物を用いて作製した撥水膜に比して、十分に優れた撥水性及び耐久性を発揮するものであった。
本発明の含フッ素アルコキシシラン化合物をコーティング剤として使用すれば、環境問題に配慮しつつ、撥水性及び耐久性に優れた撥水膜を形成することができる。

Claims (4)

  1. 下記一般式(1)で表される含フッ素アルコキシシラン化合物。
    Rf−A−B−SiX3 ・・・(1)
    (前記一般式(1)中、Rfは炭素数3〜7のパーフルオロアルキル基を示し、Aは−COO−、−O−、−S−、又は−CO−S−を示し、Bは−(CH2m−(m=5〜20)を示し、Xは−OCn2n+1(n=1〜4)を示し、3つのXは互いに同一でも異なっていてもよい)
  2. 前記一般式(1)中、Aが−COO−である請求項1に記載の含フッ素アルコキシシラン化合物。
  3. 請求項1又は2に記載の含フッ素アルコキシシラン化合物を含有するコーティング剤。
  4. 請求項3に記載のコーティング剤を用いて形成される撥水膜。
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