JP2005281032A - 焼結用グラファイトトレー - Google Patents
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Abstract
【課題】 超硬合金、サーメット又は金属類の製品を焼結する焼結用グラファイトトレー基材に形成した溶射被膜が緻密になりにくく、その結果、溶射被膜に割れが発生する現象やトレー基材からの溶射被膜の剥離現象が起こりにくく、製品と溶射被膜との溶着も生じにくいグラファイトトレーを提供する。
【解決手段】 基材であるグラファイトトレーの上に積層形成された複数の溶射被膜を備え、基材に接する一層目の溶射被膜をエルビア含有ジルコニア又はガドリニア含有ジルコニアを主成分とする溶射被膜から構成し、製品が接する最上層の溶射被膜をイットリアを主成分とするイットリア−ジルコニア複合物又はイットリアを主成分とするイットリア−イットリビウム複合物から構成する。
【選択図】なし
【解決手段】 基材であるグラファイトトレーの上に積層形成された複数の溶射被膜を備え、基材に接する一層目の溶射被膜をエルビア含有ジルコニア又はガドリニア含有ジルコニアを主成分とする溶射被膜から構成し、製品が接する最上層の溶射被膜をイットリアを主成分とするイットリア−ジルコニア複合物又はイットリアを主成分とするイットリア−イットリビウム複合物から構成する。
【選択図】なし
Description
本発明は、超硬合金、サーメット又は金属類の製品を焼結製造する際に、製品を搭載して焼結するために使用される焼結用のグラファイト製トレーに関する。
従来、超硬合金またはサーメット類の製品の焼結は、グラファイト製トレー上に製品を搭載して、各種ガスを充填した低真空状態の炉内で1300〜1600℃に昇温して実施していた。この焼結の際、超硬合金またはサーメット類の製品の主成分である炭化物の炭素とグラファイトトレーの間で炭素の移動現象(浸炭或いは脱炭)が起こり、製品品質に悪影響を及ぼしていた。また、超硬合金またはサーメット類の製品に含まれているバインダー成分(Co、Ni等)とグラファイトトレーの炭素が反応し、溶着等の現象が起こり、製品品質に悪影警を及ぼしていた。
そこで、それらを防止するために、グラファイトトレー上に耐熱性の酸化物或いは窒化物等の微粉をスラリー状にして塗布、乾燥してそれらの被膜を形成して使用していた。しかし、形成された被膜は付着強度等が弱く、繰り返しの使用や、斜面等の異形状面への被膜の保持が困難であった。この為、完全な防止策とはならなかった。
さらに従来技術として、グラファイトトレー上にプラズマ溶射により80質量%ZrO2 −20質量%Y2 O3 複合物の被膜を形成する反応防止技術がある。この方法で形成された被膜は、グラファイトトレーとの結合力は塗布等に比べてはるかに強く安定した被膜である。しかし、被膜形成の際に、プラズマという高熱源(炎中心温度:約10,000〜15,000℃)で瞬時に溶解されるため、本来安定な酸化物状態である原料が酸素欠損型の物質になる。この為、製品の焼結においてグラファイトトレーの炭素が被膜中に侵入し、新たな炭化物を形成する。そして、これが製品との間で反応し、品質の低下を起こすことが知られている。
上記の現象を防止するため、本願と同一出願人は、還元雰囲気及び真空中での蒸気圧が低く、非常に安定なY2 O3 の組成比率(質量%)を大きくして性能の改善を行い、さらには酸素欠損型になるのを防止した溶射被膜を形成した焼結用グラファイトトレーを提案した(特許文献1)。さらに本願と同一出願人は、寿命延長を図った溶射材料として、80質量%以上のYb2 O3 を含む酸化物の溶射被膜又は50質量%以上のYb2 O3 を含むYb2 O3 −Y2 O3 複合物の溶射被膜を形成した焼結用グラファイトトレーを提案した(特許文献2)。
これらの溶射被膜を形成した焼結用グラファイトトレーは、焼結作業を長時間繰り返すうちに溶射被膜の再結晶化が起こり、従来溶射被膜に存在していた5〜20%程度の空孔が緻密な被膜となり、焼結作業における昇温・冷却の熱サイクルにより溶射被膜に割れが発生する場合があった。かような被膜の割れを通して製品構成元素成分とトレーのグラファイトが反応すると、製品とグラファイトトレーが溶着を起こし、溶射被膜の剥離現象を生じる可能性もある。
そこで本発明は、超硬合金、サーメット又は金属類の製品を焼結するために最適な焼結用グラファイトトレーであって、トレー基材に形成した溶射被膜が緻密になりにくく、その結果、溶射被膜に割れが発生する現象やトレー基材からの溶射被膜の剥離現象が起こりにくく、製品と溶射被膜との溶着も生じにくい、改良された焼結用グラファイトトレーを提供することを課題とする。
すなわち本発明の請求項1に係る発明は、超硬合金、サーメット又は金属類の製品を搭載して焼結するために使用される焼結用グラファイトトレーであって、基材であるグラファイトトレーの上に積層形成された複数の溶射被膜を備え、前記基材に接する一層目の溶射被膜がエルビア含有ジルコニア又はガドリニア含有ジルコニアを主成分とする溶射被膜からなり、前記製品が接する最上層の溶射被膜がイットリアを主成分とするイットリア−ジルコニア複合物又はイットリアを主成分とするイットリア−イットリビウム複合物からなることを特徴とする焼結用グラファイトトレーである。
本発明の請求項2に係る発明は、請求項1の焼結用グラファイトトレーにおいて、前記エルビア含有ジルコニア中のエルビアの含有量が8〜30質量%であることを特徴とする。
本発明の請求項3に係る発明は、請求項1の焼結用グラファイトトレーにおいて、前記ガドリニア含有ジルコニア中のガドリニアの含有量が8〜30質量%であることを特徴とする。
本発明の請求項4に係る発明は、請求項1の焼結用グラファイトトレーにおいて、前記イットリアを主成分とするイットリア−ジルコニア複合物中のジルコニアの含有量が20質量%超50質量%以下であることを特徴とする。
本発明の請求項5に係る発明は、請求項1の焼結用グラファイトトレーにおいて、前記イットリアを主成分とするイットリア−イットリビウム複合物中のイットリビウムの含有量が20質量%超50質量%以下であることを特徴とする。
本発明によれぱ、グラファイトトレー基材に接する一層目の溶射被膜を、割れが発生しにくく、基材からの剥離を起こしにくい溶射被膜とするとともに、製品が接する最上層の溶射皮膜を、製品と溶着が起こりにくい溶射被膜とすることができる。これによって、超硬合金、サーメヅト又は金属類の製品を焼結して製造する用途に最適な焼結用グラファイトトレーを提供することができる。
〈第1実施形態〉
本発明の第1実施形態に係る焼成用トレーは、超硬合金、サーメット又は金属類の製品を焼結し製造する用途に使用されるものであって、基材であるグラファイトトレーの表面に設けられた積層の溶射被膜を備える。
積層溶射被膜の一層目(基材に接する層)は、エルビア(Er2 O3 )を含有したジルコニア(ZrO2 )、すなわちエルビア含有ジルコニア(ZrO2 −Er2 O3 )から形成されている。溶射被膜を構成するエルビア含有ジルコニア中のエルビアの含有量は、8質量%以上30質量%以下、より好ましくは12質量%以上25質量%以下である。
本発明の第1実施形態に係る焼成用トレーは、超硬合金、サーメット又は金属類の製品を焼結し製造する用途に使用されるものであって、基材であるグラファイトトレーの表面に設けられた積層の溶射被膜を備える。
積層溶射被膜の一層目(基材に接する層)は、エルビア(Er2 O3 )を含有したジルコニア(ZrO2 )、すなわちエルビア含有ジルコニア(ZrO2 −Er2 O3 )から形成されている。溶射被膜を構成するエルビア含有ジルコニア中のエルビアの含有量は、8質量%以上30質量%以下、より好ましくは12質量%以上25質量%以下である。
この一層目の溶射被膜を構成するエルビア含有ジルコニアは、繰り返し高温に曝されても再結晶化が進行しにくく、溶射被膜が緻密になりにくい特性を有する。また、一般のジルコニア溶射被膜が熱サイクルを受ける場合、結晶構造が単斜晶から正方晶へと変化することにより膨張収縮が起こり溶射被膜の割れ、剥離を起こす。しかし、エルビア含有ジルコニア溶射被膜は、部分安定化或いは完全安定化ジルコニアとなっており、熱サイクルを受けても被膜の膨張収縮を起こさない。つまり、長時問の昇温・冷却の熱サイクルを受けても、溶射被膜に割れが発生しにくく、基材との剥離現象を起こしにくい。
一層目の溶射被膜の厚さは、好ましくは20〜500μmであり、エルビア含有ジルコニアからなる溶射材料を溶射して形成される。溶射材料を溶射する方法としては、ガスフレーム溶射法、爆裂溶射法、プラズマ溶射法があり、好ましくはプラズマ溶射法である。溶射材料の形態が粉末である場合、その粉末の平均粒子径は好ましくは10μm以上100μm以下、より好ましくは20μm以上80μm以下である。
一層目の溶射被膜が酸素欠損型となるのを防止するために、溶射材料粉末をプラズマ炎の比較的低温の領域、好ましくは溶射材料粉末の融点より500〜1000℃程度高い温度領域中に供給して被膜を形成する。
最上層(製品と接する層)の溶射被膜は、イットリアを主成分とするイットリア−ジルコニア複合物から形成されている。この複合物中のジルコニアの含有量は、好ましくは20質量%超50質量%以下、より好ましくは23質量%以上35質量%以下である。この溶射被膜を構成するイットリア−ジルコニア複合物はトレー上に搭載する超硬合金、サーメット又は金属類の製品との冶金的な反応を防止し、焼成後の製品とトレーとの溶着を効果的に防止できる。
最上層の溶射被膜の厚さは、好ましくは20〜500μmであり、イットリアを主成分とするイットリア−ジルコニア複合物からなる溶射材料を溶射して形成される。溶射材料を溶射する方法としては、ガスフレーム溶射法、爆裂溶射法、プラズマ溶射法があり、好ましくはプラズマ溶射法である。溶射材料の形態が粉末である場合、その粉末の平均粒子径は好ましくは10μm以上100μm以下、より好ましくは20μm以上80μm以下である。
最上層の溶射被膜が酸素欠損型となるのを防止するために、溶射材料粉末をプラズマ炎の比較的低温の領域、好ましくは溶射材料粉末の融点より500〜1000℃程度高い温度領域中に供給して被膜を形成する。
〈第2実施形態〉
本発明の第2実施形態に係る焼成用トレーは、超硬合金、サーメット又は金属類の製品を焼結し製造する用途に使用されるものであって、基材であるグラファイトトレーの表面に設けられた積層の溶射被膜を備える。
積層溶射被膜の一層目(基材に接する層)は、エルビア(Er2 O3 )を含有したジルコニア(ZrO2 )、すなわちエルビア含有ジルコニア(ZrO2 −Er2 O3 )から形成されている。溶射被膜を構成するエルビア含有ジルコニア中のエルビアの含有量は、8質量%以上30質量%以下、より好ましくは12質量%以上25質量%以下である。
本発明の第2実施形態に係る焼成用トレーは、超硬合金、サーメット又は金属類の製品を焼結し製造する用途に使用されるものであって、基材であるグラファイトトレーの表面に設けられた積層の溶射被膜を備える。
積層溶射被膜の一層目(基材に接する層)は、エルビア(Er2 O3 )を含有したジルコニア(ZrO2 )、すなわちエルビア含有ジルコニア(ZrO2 −Er2 O3 )から形成されている。溶射被膜を構成するエルビア含有ジルコニア中のエルビアの含有量は、8質量%以上30質量%以下、より好ましくは12質量%以上25質量%以下である。
この一層目の溶射被膜を構成するエルビア含有ジルコニアは、繰り返し高温に曝されても再結晶化が進行しにくく、溶射被膜が緻密になりにくい特性を有する。また、一般のジルコニア溶射被膜が熱サイクルを受ける場合、結晶構造が単斜晶から正方晶へと変化することにより膨張収縮が起こり溶射被膜の割れ、剥離を起こす。しかし、エルビア含有ジルコニア溶射被膜は、部分安定化或いは完全安定化ジルコニアとなっており、熱サイクルを受けても被膜の膨張収縮を起こさない。つまり、長時問の昇温・冷却の熱サイクルを受けても、溶射被膜に割れが発生しにくく、基材との剥離現象を起こしにくい。
一層目の溶射被膜の厚さは、好ましくは20〜500μmであり、エルビア含有ジルコニアからなる溶射材料を溶射して形成される。溶射材料を溶射する方法としては、ガスフレーム溶射法、爆裂溶射法、プラズマ溶射法があり、好ましくはプラズマ溶射法である。溶射材料の形態が粉末である場合、その粉末の平均粒子径は好ましくは10μm以上100μm以下、より好ましくは20μm以上80μm以下である。
一層目の溶射被膜が酸素欠損型となるのを防止するために、溶射材料粉末をプラズマ炎の比較的低温の領域、好ましくは溶射材料粉末の融点より500〜1000℃程度高い温度領域中に供給して被膜を形成する。
最上層(製品と接する層)の溶射被膜は、イットリアを主成分とするイットリア−イットリビウム複合物から形成されている。この複合物中のイットリビウムの含有量は、好ましくは20質量%超50質量%以下、より好ましくは23質量%以上35質量%以下である。この溶射被膜を構成するイットリア−イットリビウム複合物はトレー上に搭載する超硬合金、サーメヅト又は金属類の製品との冶金的な反応を防止し、焼成後の製品とトレーとの溶着を効果的に防止できる。
最上層の溶射被膜の厚さは、好ましくは20〜500μmであり、イットリアを主成分とするイットリア−イットリビウム複合物からなる溶射材料を溶射して形成される。溶射材料を溶射する方法としては、ガスフレーム溶射法、爆裂溶射法、プラズマ溶射法があり、好ましくはプラズマ溶射法である。溶射材料の形態が粉末である場合、その粉末の平均粒子径は好ましくは10μm以上100μm以下、より好ましくは20μm以上80μm以下である。
最上層の溶射被膜が酸素欠損型となるのを防止するために、溶射材料粉末をプラズマ炎の比較的低温の領域、好ましくは溶射材料粉末の融点より500〜1000℃程度高い温度領域中に供給して被膜を形成する。
〈第3実施形態〉
本発明の第3実施形態に係る焼成用トレーは、超硬合金、サーメット又は金属類の製品を焼結し製造する用途に使用されるものであって、基材であるグラファイトトレーの表面に設けられた積層の溶射被膜を備える。
積層溶射被膜の一層目(基材に接する層)は、ガドリニア(Gd2 O3 )を含有したジルコニア(ZrO2 )、すなわちガドリニア含有ジルコニア(ZrO2 −Gd2 O3 )から形成されている。溶射被膜を構成するガドリニア含有ジルコニア中のガドリニアの含有量は、8質量%以上30質量%以下、より好ましくは12質量%以上25質量%以下である。
本発明の第3実施形態に係る焼成用トレーは、超硬合金、サーメット又は金属類の製品を焼結し製造する用途に使用されるものであって、基材であるグラファイトトレーの表面に設けられた積層の溶射被膜を備える。
積層溶射被膜の一層目(基材に接する層)は、ガドリニア(Gd2 O3 )を含有したジルコニア(ZrO2 )、すなわちガドリニア含有ジルコニア(ZrO2 −Gd2 O3 )から形成されている。溶射被膜を構成するガドリニア含有ジルコニア中のガドリニアの含有量は、8質量%以上30質量%以下、より好ましくは12質量%以上25質量%以下である。
この一層目の溶射被膜を構成するガドリニア含有ジルコニアは、繰り返し高温に曝されても再結晶化が進行しにくく、溶射被膜が緻密になりにくい特性を有する。また、一般のジルコニア溶射被膜が熱サイクルを受ける場合、結晶構造が単斜晶から正方晶へと変化することにより膨張収縮が起こり溶射被膜の割れ、剥離を起こす。しかし、ガドリニア含有ジルコニア溶射被膜は、部分安定化或いは完全安定化ジルコニアとなっており、熱サイクルを受けても被膜の膨張収縮を起こさない。つまり、長時問の昇温・冷却の熱サイクルを受けても、溶射被膜に割れが発生しにくく、基材との剥離現象を起こしにくい。
一層目の溶射被膜の厚さは、好ましくは20〜500μmであり、ガドリニア含有ジルコニアからなる溶射材料を溶射して形成される。溶射材料を溶射する方法としては、ガスフレーム溶射法、爆裂溶射法、プラズマ溶射法があり、好ましくはプラズマ溶射法である。溶射材料の形態が粉末である場合、その粉末の平均粒子径は好ましくは10μm以上100μm以下、より好ましくは20μm以上80μm以下である。
一層目の溶射被膜が酸素欠損型となるのを防止するために、溶射材料粉末をプラズマ炎の比較的低温の領域、好ましくは溶射材料粉末の融点より500〜1000℃程度高い温度領域中に供給して被膜を形成する。
最上層(製品と接する層)の溶射被膜は、イットリアを主成分とするイットリア−ジルコニア複合物から形成されている。この複合物中のジルコニアの含有量は、好ましくは20質量%超50質量%以下、より好ましくは23質量%以上35質量%以下である。この溶射被膜を構成するイットリア−ジルコニア複合物はトレー上に搭載する超硬合金、サーメット又は金属類の製品との冶金的な反応を防止し、焼成後の製品とトレーとの溶着を効果的に防止できる。
最上層の溶射被膜の厚さは、好ましくは20〜500μmであり、イットリアを主成分とするイットリア−ジルコニア複合物からなる溶射材料を溶射して形成される。溶射材料を溶射する方法としては、ガスフレーム溶射法、爆裂溶射法、プラズマ溶射法があり、好ましくはプラズマ溶射法である。溶射材料の形態が粉末である場合、その粉末の平均粒子径は好ましくは10μm以上100μm以下、より好ましくは20μm以上80μm以下である。
最上層の溶射被膜が酸素欠損型となるのを防止するために、溶射材料粉末をプラズマ炎の比較的低温の領域、好ましくは溶射材料粉末の融点より500〜1000℃程度高い温度領域中に供給して被膜を形成する。
〈第4実施形態〉
本発明の第4実施形態に係る焼成用トレーは、超硬合金、サーメット又は金属類の製品を焼結し製造する用途に使用されるものであって、基材であるグラファイトトレーの表面に設けられた積層の溶射被膜を備える。
積層溶射被膜の一層目(基材に接する層)は、ガドリニア(Gd2 O3 )を含有したジルコニア(ZrO2 )、すなわちガドリニア含有ジルコニア(ZrO2 −Gd2 O3 )から形成されている。溶射被膜を構成するガドリニア含有ジルコニア中のガドリニアの含有量は、8質量%以上30質量%以下、より好ましくは12質量%以上25質量%以下である。
本発明の第4実施形態に係る焼成用トレーは、超硬合金、サーメット又は金属類の製品を焼結し製造する用途に使用されるものであって、基材であるグラファイトトレーの表面に設けられた積層の溶射被膜を備える。
積層溶射被膜の一層目(基材に接する層)は、ガドリニア(Gd2 O3 )を含有したジルコニア(ZrO2 )、すなわちガドリニア含有ジルコニア(ZrO2 −Gd2 O3 )から形成されている。溶射被膜を構成するガドリニア含有ジルコニア中のガドリニアの含有量は、8質量%以上30質量%以下、より好ましくは12質量%以上25質量%以下である。
この一層目の溶射被膜を構成するガドリニア含有ジルコニアは、繰り返し高温に曝されても再結晶化が進行しにくく、溶射被膜が緻密になりにくい特性を有する。また、一般のジルコニア溶射被膜が熱サイクルを受ける場合、結晶構造が単斜晶から正方晶へと変化することにより膨張収縮が起こり溶射被膜の割れ、剥離を起こす。しかし、ガドリニア含有ジルコニア溶射被膜は、部分安定化或いは完全安定化ジルコニアとなっており、熱サイクルを受けても被膜の膨張収縮を起こさない。つまり、長時問の昇温・冷却の熱サイクルを受けても、溶射被膜に割れが発生しにくく、基材との剥離現象を起こしにくい。
一層目の溶射被膜の厚さは、好ましくは20〜500μmであり、ガドリニア含有ジルコニアからなる溶射材料を溶射して形成される。溶射材料を溶射する方法としては、ガスフレーム溶射法、爆裂溶射法、プラズマ溶射法があり、好ましくはプラズマ溶射法である。溶射材料の形態が粉末である場合、その粉末の平均粒子径は好ましくは10μm以上100μm以下、より好ましくは20μm以上80μm以下である。
一層目の溶射被膜が酸素欠損型となるのを防止するために、溶射材料粉末をプラズマ炎の比較的低温の領域、好ましくは溶射材料粉末の融点より500〜1000℃程度高い温度領域中に供給して被膜を形成する。
最上層(製品と接する層)の溶射被膜は、イットリアを主成分とするイットリア−イットリビウム複合物から形成されている。この複合物中のイットリビウムの含有量は、好ましくは20質量%超50質量%以下、より好ましくは23質量%以上35質量%以下である。この溶射被膜を構成するイットリア−イットリビウム複合物はトレー上に搭載する超硬合金、サーメット又は金属類の製品との冶金的な反応を防止し、焼成後の製品とトレーとの溶着を効果的に防止できる。
最上層の溶射被膜の厚さは、好ましくは20〜500μmであり、イットリアを主成分とするイットリア−イットリビウム複合物からなる溶射材料を溶射して形成される。溶射材料を溶射する方法としては、ガスフレーム溶射法、爆裂溶射法、プラズマ溶射法があり、好ましくはプラズマ溶射法である。溶射材料の形態が粉末である場合、その粉末の平均粒子径は好ましくは10μm以上100μm以下、より好ましくは20μm以上80μm以下である。
最上層の溶射被膜が酸素欠損型となるのを防止するために、溶射材料粉末をプラズマ炎の比較的低温の領域、好ましくは溶射材料粉末の融点より500〜1000℃程度高い温度領域中に供給して被膜を形成する。
第1実施形態及び第2実施形態に係る溶射被膜においては、各実施形態の一層目のエルビア含有ジルコニアはエルビア含有ジルコニア以外の成分が含まれていても良い。但し、エルビア含有ジルコニアのみで構成されることが望ましく、エルビア含有ジルコニア以外の成分を含む場合もあくまでもエルビア含有ジルコニアを主成分とする。
第3実施形態及び第4実施形態に係る溶射被膜においては、各実施形態の一層目のガドリニア含有ジルコニアはガドリニア含有ジルコニア以外の成分が含まれていても良い。但し、ガドリニア含有ジルコニアのみで構成されることが望ましく、ガドリニア含有ジルコニア以外の成分を含む場合もあくまでもガドリニア含有ジルコニアを主成分とする。
第1実施形態及び第3実施形態に係る溶射被膜においては、各実施形態の最上層のイットリアを主成分とするイットリア−ジルコニア複合物はイットリア−ジルコニア複合物以外の成分が含まれていても良い。但し、イットリア−ジルコニア複合物のみで構成されることが望ましく、イットリア−ジルコニア複合物以外の成分を含む場合もあくまでもイットリア−ジルコニア複合物を主成分とする。
第2実施形態及び第4実施形態に係る溶射被膜においては、各実施形態の最上層のイットリアを主成分とするイットリア−イットリビウム複合物はイットリア−イットリビウム複合物以外の成分が含まれていても良い。但し、イットリア−イットリビウム複合物のみで構成されることが望ましく、イットリア−イットリビウム複合物以外の成分を含む場合もあくまでもイットリアーイットリビウム複合物を主成分とする。
なお以上の説明では、一層目の溶射被膜とその上に積層形成する最上層の溶射被膜について説明したが、一層目と最上層との間に中間層となる溶射被膜を必要に応じて形成してもよい。中間層の溶射被膜としては、その目的に応じて、アルミナ、スピネル、ムライト、チタン酸アルミニウム、タングステン、モリブデン等の溶射材料から適宜選択して使用することができる。
焼結用トレーとして、基材グラファイトトレー上に、表1の「組成」欄に示す実施例1〜12及び比較例1〜8の一層目および最上層の溶射被膜を積層形成した。溶射被膜はプラズマ溶射装置にて形成した。溶射装置としては、スルザーメテコ社製9MB溶射装置を使用し、溶射条件は、
一次ガス:Ar、流量80SCFH、圧力100PSI
二次ガス:H2 、流量15SCFH、圧力100PSI
電流:500A
電圧:65V
溶射材料供給量:5.4kg/時間
とした。
一次ガス:Ar、流量80SCFH、圧力100PSI
二次ガス:H2 、流量15SCFH、圧力100PSI
電流:500A
電圧:65V
溶射材料供給量:5.4kg/時間
とした。
基材であるグラファイトトレーは、縦300mm×横300mm×厚さ6mmであり、このトレーの上に、炭化タングステン/コバルト(WC−15wt%Co)の焼結前超硬合金小片を搭載して、焼結炉内で加熱・冷却を繰り返す熱サイクル試験を行った。この試験では、1.3×102 Paの低真空状態の焼結炉内で室温から1450℃まで300℃/時間の加熱速度で加熱し、1450℃で2時問保持し、その後300℃/時問の冷却速度で600℃まで冷却し、その後室温まで炉冷した。この熱サイクル試験を、溶射被膜に亀裂が生じるまで繰り返し実施し、その繰り返し回数により耐剥離性を下記の4段階で評価した。
51回以上 :◎
41〜50回:○
31〜40回:□
21〜30回:△
20回以下 :×
また、溶射被膜と超硬合金小片との「溶着」の有無についても評価した。
評価結果を表1にまとめて示す。
51回以上 :◎
41〜50回:○
31〜40回:□
21〜30回:△
20回以下 :×
また、溶射被膜と超硬合金小片との「溶着」の有無についても評価した。
評価結果を表1にまとめて示す。
表1からわかるように、本発明による実施例1〜12はすべて、繰り返し回数41回以上という優れた耐剥離性を示すとともに、焼結後の製品とトレーの溶着も認められなかった。
これに対して、一層目の溶射被膜のみ形成し、最上層の被膜は形成していない比較例1と2は、焼結後の製品とトレーの溶着が認められ、耐剥離性も30回以下の繰り返し回数で剥離した。
さらに、一層目に従来のZrO2 −Y2 O3 の溶射被膜を形成し、最上層にZrO2 −Y2 O3 又はYb2 O3 −Y2 O3 の溶射被膜を形成した比較例3〜6の場合には、焼結後の製品とトレーとの溶着はないものの、耐剥離性は劣ったものとなった。また、従来のZrO2 −Y2 O3 の溶射被膜のみを形成した比較例7と8の場合には、溶着もみられ、耐剥離性も劣ったものとなった。
これに対して、一層目の溶射被膜のみ形成し、最上層の被膜は形成していない比較例1と2は、焼結後の製品とトレーの溶着が認められ、耐剥離性も30回以下の繰り返し回数で剥離した。
さらに、一層目に従来のZrO2 −Y2 O3 の溶射被膜を形成し、最上層にZrO2 −Y2 O3 又はYb2 O3 −Y2 O3 の溶射被膜を形成した比較例3〜6の場合には、焼結後の製品とトレーとの溶着はないものの、耐剥離性は劣ったものとなった。また、従来のZrO2 −Y2 O3 の溶射被膜のみを形成した比較例7と8の場合には、溶着もみられ、耐剥離性も劣ったものとなった。
Claims (5)
- 超硬合金、サーメット又は金属類の製品を搭載して焼結するために使用される焼結用グラファイトトレーであって、基材であるグラファイトトレーの上に積層形成された複数の溶射被膜を備え、前記基材に接する一層目の溶射被膜がエルビア含有ジルコニア又はガドリニア含有ジルコニアを主成分とする溶射被膜からなり、前記製品が接する最上層の溶射被膜がイットリアを主成分とするイットリア−ジルコニア複合物又はイットリアを主成分とするイットリア−イットリビウム複合物からなることを特徴とする焼結用グラファイトトレー。
- 前記エルビア含有ジルコニア中のエルビアの含有量が8〜30質量%であることを特徴とする請求項1に記載の焼結用グラファイトトレー。
- 前記ガドリニア含有ジルコニア中のガドリニアの含有量が8〜30質量%であることを特徴とする請求項1に記載の焼結用グラファイトトレー。
- 前記イットリアを主成分とするイットリア−ジルコニア複合物中のジルコニアの含有量が20質量%超50質量%以下であることを特徴とする請求項1に記載の焼結用グラファイトトレー。
- 前記イットリアを主成分とするイットリア−イットリビウム複合物中のイットリビウムの含有量が20質量%超50質量%以下であることを特徴とする請求項1に記載の焼結用グラファイトトレー。
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