本発明は、積層コンデンサや積層セラミック配線基板等のような電子部品の製造方法に関するものである。
近年、電子機器の小型化に伴い、積層コンデンサや積層セラミック配線基板のような電子部品において、小型化および高性能化が望まれている。例えば、積層コンデンサにおいては小型化および高容量化のためにより薄い誘電体層および導体層を多層化したものが求められている。また、積層セラミック配線基板においては、小型化および配線導体の高密度化のためにより薄い絶縁層および配線導体層を多層に形成し、配線導体層の幅および間隔もより微細なものが求められている。
このような電子部品は、セラミック粉末に有機バインダー、可塑剤、溶剤等を加えてスラリーとし、ドクターブレード等によりセラミックグリーンシート(以下、グリーンシートともいう)を成形した後、金属粉末を含有する導体ペーストを印刷するなどして前記グリーンシート上に導体層を形成し、ついで複数枚の導体層が形成されたグリーンシートを積層して加圧することにより圧着して積層体を得て、この積層体を焼成することで得られる。
電子部品に対する要求に対応して導体層が形成されたグリーンシートを多数積層すると、導体層が形成された領域が重なる部分とそうでないない部分ではその厚み差が大きくなる。このため積層されたグリーンシートを厚み方向に加圧した場合、導体層が形成された領域が重なる部分においては加圧力が十分に加わるものの、そうでない部分においては加圧力が十分に加わりにくくなるので、不十分な圧着となってしまいやすい。その結果、そのような積層体を焼成すると、圧着が不十分な部分でデラミネーション(層間剥離)が発生するという問題があった。
このようなデラミネーションが電子部品の内部に存在すると、容量値の変化や絶縁破壊が起りやすくなるので電気的な特性が確保できないという問題があった。
この問題に対して、特許文献1では、加圧された際の流動性が高い高流動性部分を有する積層体を用いることが提案されている。積層体を厚み方向に加圧した際に、内部電極が積層されている領域に存在する高流動性部分が残りの部分に移動して残りの部分の厚みが増大しようとすることにより、加圧力が全体に均一に加わることとなるので、デラネーションが生じ難くなるものである。
また、グリーンシート上に形成された導体層の上に別のグリーンシートを積層する場合、この導体層の断面形状にグリーンシートが追従し難いために導体層の周辺に空隙が発生し、この空隙を起因とするデラミネーションが発生しやすいという問題があった。特に導体層の間隔が微細な場合は、導体層間に空隙が発生しやすかった。
この問題に対しては、特許文献2では、グリーンシート上に導体層を形成した後、導体層の形成されている部分の周囲の領域にセラミックペーストを印刷することが提案されている。このような方法を用いれば、導体層の形成されている部分の周囲の領域にセラミックペーストを印刷することで導体層とグリーンシートとの段差をなくすことができる。このため、導体層の周辺や配線導体層間に空隙が発生することを抑え、空隙に起因するデラミネーションの発生も抑えることが可能となる。また、導体層が形成されたグリーンシートを複数枚積層しても厚み差が発生しないので、ムラなく加圧して圧着することが可能となり、圧着が不十分な部分が発生することを抑え、デラミネーションの発生を抑えることが可能となる。
特許第3344100号公報
特開平5−217448号公報
しかしながら、従来の高流動性部分を有する積層体を用いる方法においては、高流動性部分を移動させてデラミネーションが発生しないような圧着を行なうためには、例えば厚み方向に180MPaという高い圧力を加える必要がある。このような高い圧力を導体層が形成されたグリーンシートに加えると、グリーンシートや導体パターンの形状が変形してしまうこととなる。その結果、基板の所望の寸法精度が得られないために基板上への部品実装が困難となったり、設計通りの導体パターンの形状が得られないために、特に高周波用配線基板等ではインピーダンス整合等の電気的特性が得られなくなるという問題があった。さらに、配線導体層の間隔が微細な場合の配線導体層間に発生する空隙の問題は解決されないままであった。
また、この高流動性部分は樹脂バインダーの含有量や可塑剤の含有量が高い組成であるので、このような組成のグリーンシートは、常温で粘着性の高いものであるためハンドリングが容易でなく、またそのために積層時に空気を巻き込みやすいのでデラミネーションが発生してしまう問題点があった。
また、導体層の形成されている部分の周囲の領域にセラミックペーストを印刷する方法においては、導体層が形成されたグリーンシート上にさらにセラミックペーストを印刷するという工程が加わるばかりでなく、配線導体層の間隔が微細な場合は配線導体層間にセラミックペーストを印刷することが困難であった。このため、配線導体層の上にもセラミックペーストが印刷されてしまい、配線導体層上に印刷されたセラミックペーストにより、積層されて上下に配置される配線導体層間を接続するための貫通導体が配線導体層と接続されなくなるという問題があった。
さらに、キャビティを有するような電子部品を製造する場合、キャビティとなる貫通穴を形成したグリーンシートとキャビティの底部となる貫通穴が形成されていないグリーンシートとを積層して圧着すると、グリーンシート積層体のキャビティ底部が反るという問題があった。これは、圧着するための加圧によりキャビティの周囲だけに圧力が加わり、キャビティ周囲のグリーンシートが加圧により伸びるのに対して、キャビティ底部には圧力が加わらないのでキャビティ底部のグリーンシートは周囲から押されることによる。これは、電子部品がより小型でキャビティ底部の厚みがより薄い場合により発生しやすい。キャビティ底部が反ると、水晶振動子やICチップ等の電子素子を搭載することが困難となる。搭載できても搭載された部品が傾くので、CCDやC−MOS等の光半導体素子を搭載した場合は受光精度が悪くなるという問題があった。
本発明は、上記従来の問題点に鑑みて完成されたものであり、その目的は、デラミネーションがなく、かつ高い寸法精度を有する電子部品の製造方法を提供することである。
本発明の電子部品の製造方法は、第1のセラミックグリーンシートを作製する工程と、第2のセラミックグリーンシートを作製する工程と、前記第1のセラミックグリーンシートと前記第2のセラミックグリーンシートとを積層して加熱することによってセラミックグリーンシートを作製する工程と、前記セラミックグリーンシート上に導体層を形成する工程と、前記導体層が形成された前記セラミックグリーンシートを複数枚積層して加熱することによってセラミックグリーンシート積層体を作製する工程と、前記セラミックグリーンシート積層体を焼成する工程とを具備しており、前記第1のセラミックグリーンシートは、前記セラミックグリーンシートを作製する際および前記セラミックグリーンシート積層体を作製する際の加熱時に溶融状態となる溶融成分を含有していることを特徴とするものである。
また、本発明の電子部品の製造方法は、好ましくは前記溶融成分の融点が35℃から100℃であることを特徴とするものである。
また、本発明において好ましくは、前記第1のセラミックグリーンシートに含まれる有機バインダーの添加量がセラミック粉末100質量部に対して19乃至25質量部であることを特徴とするものである。
また、本発明において好ましくは、前記第1のセラミックグリーンシートに含まれる有機バインダーの分子量が8万乃至30万であることを特徴とするものである。
また、本発明において好ましくは、前記第1のセラミックグリーンシートに含まれる有機バインダーの酸価が0.1乃至0.8KOHmg/gであることを特徴とするものである。
また、本発明において好ましくは、前記第2のセラミックグリーンシートに含まれる有機バインダーの添加量がセラミック粉末100質量部に対して8乃至20質量部であることを特徴とする。
また、本発明において好ましくは、前記第2のセラミックグリーンシートに含まれる有機バインダーの分子量が5万乃至80万であることを特徴とする。
また、本発明において好ましくは、前記第2のセラミックグリーンシートに含まれる有機バインダーの酸価が0.1乃至5KOHmg/gであることを特徴とする。
また、本発明において好ましくは、前記第1のセラミックグリーンシートに含まれる有機バインダーのガラス転移点が−20乃至0℃であることを特徴とする。
また、本発明において好ましくは、前記第1のセラミックグリーンシートに含まれる有機バインダーの水酸基価が0.1乃至5KOHmg/gであることを特徴とする。
また、本発明において好ましくは、前記第2のセラミックグリーンシートに含まれる有機バインダーのガラス転移点が−20乃至10℃であることを特徴とする。
また、本発明において好ましくは、前記第2のセラミックグリーンシートに含まれる有機バインダーの水酸基価が5乃至100KOHmg/gであることを特徴とする。
本発明の電子部品の製造方法によれば、第1のセラミックグリーンシートは加熱時に溶融する溶融成分を含有することから、まず別々に作製した第1のセラミックグリーンシートと第2のセラミックグリーンシートとを積層して加熱することによってセラミックグリーンシートを作製する際に第1のセラミックグリーンシートが軟化するので、第1のセラミックグリーンシートはその上また下に位置する第2のセラミックグリーンシートの形状に追従して変形することとなる。その結果、第1のセラミックグリーンシートと第2のセラミックグリーンシートとの間に空隙が発生することなくセラミックグリーンシート同士が密着することができる。
次に導体層が形成されたセラミックグリーンシートを積層して加熱した際には第1のセラミックグリーンシートが軟化するので、第1のセラミックグリーンシートはその上また下に位置する第2のセラミックグリーンシートおよびその上に形成された導体層のパターンの形状に追従して変形することとなる。その結果、導体層周囲や導体層間に空隙が発生することなくセラミックグリーンシート同士が密着することとなり、セラミックグリーンシート積層体を焼成して得られる電子部品はデラミネーションの発生のないものとなる。
また、第1のセラミックグリーンシートは、加熱時に溶融する溶融成分を含有することから、加熱のみで第1のセラミックグリーンシートが軟化して接着性を有するものとなるので、大きな加圧力によりセラミックグリーンシートを圧着させる必要がない。さらに加熱しない常温においては第1のセラミックグリーンシートが軟化せず接着性を持たない為、加熱しない加工においてハンドリングが容易である利点をもつ。
そして、導体層のパターンの形成される第2のセラミックグリーンシートは加熱時に溶融する溶融成分を含有しないことから、第2のセラミックグリーンシートは加熱時に変形することはなく、積層したセラミックグリーンシートが位置ずれしないように、また、軟化した第1のセラミックグリーンシートを第2のセラミックグリーンシートおよびその上に形成された導体層のパターンの形状に追従して変形するのを補助するために押さえる程度では変形しないものである。よって、セラミックグリーンシートおよびそれに形成された導体層のパターン形状が変形することがなく、得られるセラミックグリーンシート積層体およびそれを焼成して得られる電子部品は高い寸法精度を有するものとなる。
また、加熱時に溶融する溶融成分の融点が35℃乃至100℃であるものを用いた場合は、常温では第1のセラミックグリーンシートが軟化して変形することはないので、積層工程までのハンドリングが容易となり、加熱時にセラミックグリーンシート中の有機バインダー(バインダー)や可塑剤等の有機成分が分解することがないので、分解ガスによりデラミネーションが発生してしまうことがなく、より好ましいものとなる。
また、第1のセラミックグリーンシートに含まれる有機バインダーの添加量が19乃至25質量部であれば、第1のセラミックグリーンシートの保形性を維持し、かつ第1のセラミックグリーンシートはその下に位置するセラミックグリーンシートの第2のセラミックグリーンシートおよびその上に形成された導体パターンの形状に追従して変形するため、加圧によるグリーンシートへの歪みが無いほどの低い加圧力で圧着でき、かつ寸法ばらつきが小さく、かつ層間での剥離やデラミネーションが発生することなく、より好ましいものとなる。
なお、ここで言う有機バインダーの添加量とは、セラミック粉末100質量部に対する有機バインダーの質量部である。
また、第1のセラミックグリーンシートに含まれる有機バインダーの分子量が8万乃至30万であれば、第1のセラミックグリーンシートの保形性を維持し、かつ第1のセラミックグリーンシートに含有する溶融成分が加熱により溶融した際に均一に分散され、かつセラミックグリーンシートを加熱して第1のセラミックグリーンシート層の溶融成分が十分な量を維持でき、かつ加圧によるグリーンシートへの歪みが無いほどの低い加圧力で圧着でき、かつ寸法ばらつきが小さく、かつ層間での剥離やデラミネーションが発生することなく、より好ましいものとなる。
また、第1のセラミックグリーンシートに含まれる有機バインダーの酸価が0.1乃至0.8KOHmg/gであれば、第1のセラミックグリーンシートに含有される溶融成分が加熱により溶融した際に均一に分散され、かつセラミックグリーンシートを加熱して第1のセラミックグリーンシートに含有される溶融成分が十分な量を維持でき、かつ加圧によるグリーンシートへの歪みが無いほどの低い加圧力で圧着でき、かつ寸法ばらつきが小さく、かつ層間での剥離やデラミネーションが発生することなく、より好ましいものとなる。
また、第2のセラミックグリーンシートに含まれる有機バインダーの添加量が8乃至20質量部であれば、第1および第2のセラミックグリーンシートを積層して加熱することによってセラミックグリーンシートを作製する際に、第1のセラミックグリーンシートに含有される溶融成分が第2のセラミックグリーンシートへ拡散することを抑制することができ、かつ積層時にセラミックグリーンシートを加熱して第1のセラミックグリーンシートに含有される溶融成分が十分な量を維持できるため、第2のセラミックグリーンシートおよびその上に形成された導体パターンの形状に追従して変形し、加圧によるセラミックグリーンシートへの歪みが無いほどの低い加圧力で圧着できるため、寸法ばらつきが小さく、かつ層間剥離やデラミネーションが発生することなく、より好ましいものとなる。
また、第2のセラミックグリーンシートに含まれる有機バインダーの分子量が5万乃至80万であれば、第1および第2のセラミックグリーンシートを積層して加熱することによってセラミックグリーンシートを作製する際に、第1のセラミックグリーンシートに含有される溶融成分が第2のセラミックグリーンシートへ拡散することを抑制することができ、かつ積層時にセラミックグリーンシートを加熱して第1のセラミックグリーンシートに含有される溶融成分が十分な量を維持できるため、第2のセラミックグリーンシートおよびその上に形成された導体パターンの形状に追従して変形し、加圧によるセラミックグリーンシートへの歪みが無いほどの低い加圧力で圧着できるため、寸法ばらつきが小さく、かつ層間剥離やデラミネーションが発生することなく、かつ第2のセラミックグリーンシートの外観状態がよいため、より好ましいものとなる。
また、第2のセラミックグリーンシートに含まれる有機バインダーの酸価が0.1乃至5.0KOHmg/gであれば、第1および第2のセラミックグリーンシートを積層し加熱することによってセラミックグリーンシートを作製する際に、第1のセラミックグリーンシートに含有される溶融成分が第2のセラミックグリーンシートへ拡散することを抑制することができ、かつ積層時にセラミックグリーンシートを加熱して第1のセラミックグリーンシートに含有される溶融成分が十分な量を維持できるため、第2のセラミックグリーンシートおよびその上に形成された導体パターンの形状に追従して変形し、加圧によるセラミックグリーンシートへの歪みが無いほどの低い加圧力で圧着できるため、寸法ばらつきが小さく、かつ層間剥離やデラミネーションが発生することなく、かつ第2のグリーンシートの外観状態がよいため、より好ましいものとなる。
また、第1のセラミックグリーンシートに含まれる有機バインダーのガラス転移点が−20乃至0℃であれば、第1のセラミックグリーンシートの保形性を維持し、かつ積層時にセラミックグリーンシートを加熱して第1のセラミックグリーンシートに含有される溶融成分が十分な量を維持できるため、第2のセラミックグリーンシートおよびその上に形成された導体パターンの形状に追従して変形し、加圧によるセラミックグリーンシートへの歪みが無いほどの低い加圧力で圧着できるため、寸法ばらつきが小さく、かつ層間剥離やデラミネーションが発生することなく、より好ましいものとなる。
また、第1のセラミックグリーンシートに含まれる有機バインダーの水酸基価が0.1乃至5KOHmg/gであれば、第1のセラミックグリーンシートに含有される溶融成分が加熱により溶融した際に均一に分散され、かつ積層時にセラミックグリーンシートを加熱して第1のセラミックグリーンシートに含有される溶融成分が十分な量を維持できるため、第2のセラミックグリーンシートおよびその上に形成された導体パターンの形状に追従して変形し、加圧によるセラミックグリーンシートへの歪みが無いほどの低い加圧力で圧着できるため、寸法ばらつきが小さく、かつ層間剥離やデラミネーションが発生することなく、より好ましいものとなる。
また、第2のセラミックグリーンシートに含まれる有機バインダーのガラス転移点が−20乃至10℃であれば、第1および第2のセラミックグリーンシートを積層して加熱することによってセラミックグリーンシートを作製した際に、加熱時の第1のセラミックグリーンシートに含有される溶融成分が第2のセラミックグリーンシートおよびその上に形成された導体パターンの形状へ追従するのに伴う微小な寸法変形を抑制することができるため、より好ましいものとなる。
また、第2のセラミックグリーンシートに含まれる有機バインダーの水酸基価が5乃至100KOHmg/gであるものを用いた場合、第2のセラミックグリーンシートに含まれる無機粉末および有機バインダーが均一に分散され、加熱時の第1のセラミックグリーンシート層の溶融成分が第2のセラミックグリーンシート層およびその上に形成された導体パターンの形状へ追従するのに伴う微小な寸法変形を抑制することができるため、より好ましいものとなる。
また、キャビティを有する電子部品を製造する場合、大きな加圧力によりセラミックグリーンシートを圧着させる必要がないので、キャビティ周囲部とキャビティ底部との加圧によるグリーンシートの伸びの違いによるキャビティ底部の反りの発生を抑えることが可能となり、キャビティ底部に電子素子を精度よく確実に搭載することが可能な電子部品を得ることができる。
このように、本発明の製造方法によれば、セラミックグリーンシート間に空隙を発生させることがなく、セラミックグリーンシートや導体層の変形を抑えたセラミックグリーンシート積層体を得ることが可能となり、本発明の製造方法により作製された電子部品はデラミネーションがなく、高い寸法精度を有する電子部品となる。
本発明の電子部品の製造方法について以下に詳細に説明する。
図1は本発明の電子部品の製造方法の実施の形態の一例を示す工程毎の断面図であり、1は支持体、2は第1のセラミックグリーンシート、3は第2のセラミックグリーンシート、4はセラミックグリーンシート、5は導体層、6はセラミックグリーンシート積層体である。
まず、図1(a)に示すように、第1のセラミックグリーンシート2および第2のセラミックグリーンシート3をそれぞれ作製する。第1のセラミックグリーンシート2は、セラミック粉末,有機バインダー,溶融成分に溶剤(有機溶剤,水等)、必要に応じて硬度や強度を調整するための所定量の可塑剤,分散剤を加えてスラリーを得、これをPETフィルムや紙等の支持体1上にドクターブレード法,リップコーター法,ダイコーター法等により成形することによって得られる。第1のセラミックグリーンシート2の厚さは、導体層5とセラミックグリーンシート4との段差を埋めるために、導体層5の厚みより厚くなるように作製される。第2のセラミックグリーンシート3は、第1のセラミックグリーンシート2に用いるスラリーに対して、溶融成分を含まないスラリーを用いて同様に作製される。
セラミック粉末としては、例えばセラミック配線基板であれば、Al2O3,AlN,ガラスセラミック粉末(ガラス粉末とフィラー粉末との混合物)等が挙げられ、積層コンデンサであればBaTiO3系,PbTiO3系等の複合ペロブスカイト系セラミック粉末が挙げられ、電子部品に要求される特性に合わせて適宜選択される。
ガラスセラミック粉末のガラス成分としては、例えばSiO2−B2O3系、SiO2−B2O3−Al2O3系,SiO2−B2O3−Al2O3−MO系(ただし、MはCa,Sr,Mg,BaまたはZnを示す),SiO2−Al2O3−M1O−M2O系(ただし、M1およびM2は同一または異なってCa,Sr,Mg,BaまたはZnを示す),SiO2−B2O3−Al2O3−M1O−M2O系(ただし、M1およびM2は上記と同じである),SiO2−B2O3−M3 2O系(ただし、M3はLi,NaまたはKを示す,SiO2−B2O3−Al2O3−M3 2O系(ただし、M3は上記と同じである),Pb系ガラス,Bi系ガラス等が挙げられる。
また、ガラスセラミック粉末のフィラー粉末としては、例えばAl2O3,SiO2,ZrO2とアルカリ土類金属酸化物との複合酸化物,TiO2とアルカリ土類金属酸化物との複合酸化物,Al2O3およびSiO2から選ばれる少なくとも1種を含む複合酸化物(例えばスピネル,ムライト,コージェライト)等のセラミック粉末が挙げられる。
セラミックグリーンシート4に配合される有機バインダーとしては、従来よりセラミックグリーンシートに使用されているものが使用可能であり、例えばアクリル系(アクリル酸,メタクリル酸またはそれらのエステルの単独重合体または共重合体,具体的にはアクリル酸エステル共重合体,メタクリル酸エステル共重合体,アクリル酸エステル−メタクリル酸エステル共重合体等),ポリビニルブチラ−ル系,ポリビニルアルコール系,アクリル−スチレン系,ポリプロピレンカーボネート系,セルロース系等の単独重合体または共重合体が挙げられる。焼成工程での分解、揮発性を考慮すると、アクリル系バインダーがより好ましい。
第1のセラミックグリーンシート2に含有される溶融成分は、セラミックグリーンシート積層体6を作製する際の加熱時に溶融状態となるものであり、炭化水素,脂肪酸,エステル,脂肪アルコール,多価アルコール等が挙げられる。スラリーを調整する際の溶媒への溶解性を考慮すると、分子量が小さくかつ極性を有する炭化水素,エステル,脂肪アルコール,多価アルコールが好ましい。さらに上述したアクリルバインダーとの相溶性を考慮すると、エステル,脂肪アルコール,多価アルコールがより好ましい。
溶融成分は上記のものの中でも、その融点が35乃至100℃であるものが好ましい。これは、この範囲の融点のものを用いると、常温では第1のセラミックグリーンシート2が軟化して変形することはないので、積層工程までのハンドリングが容易となり、セラミックグリーンシート積層体6を作製する工程における加熱時にセラミックグリーンシート4中のバインダーや可塑剤等の有機成分が分解することがないので、分解ガスによりデラミネーションが発生してしまうことがないからである。融点が35乃至100℃である溶融成分としては具体的には、ヘキサデカノール,ポリエチレングリコール,ポリグリセロール,ステアリルアミド,オレイルアミド,エチレングリコールモノステアレート,パラフィン,ステアリン酸,シリコーン等が挙げられる。
第1のセラミックグリーンシート2に含有される溶融成分の含有量は、使用するバインダー成分およびその量や使用する溶融成分により異なるが、溶融成分が溶融した状態で第1のセラミックグリーンシート2が軟化し、その上また下に(図1では下)に位置するセラミックグリーンシート4の第2のセラミックグリーンシート3およびその上に形成された導体パターンの形状に追従して変形するような量であればよい。
また、第1のセラミックグリーンシートに含まれる有機バインダーの添加量が19乃至25質量部であることが好ましい。上記添加量が19質量部よりも低いと、溶融成分が溶融した状態で第1のセラミックグリーンシート2が充分に軟化しない。そのため、第1のセラミックグリーンシート2と第2のセラミックグリーンシート3を積層して加圧して形成したセラミックグリーンシート4が、その下に位置する別のセラミックグリーンシート4’の第2のセラミックグリーンシート3およびその上に形成された導体層5の形状に追従して形状変化しないため、加圧によるセラミックグリーンシート4への歪みが無いほどの低い加圧力で圧着できず、層間での剥離やデラミネーションが発生する。また、上記添加量が25質量部よりも高いと、第1のセラミックグリーンシート2の加圧によるグリーンシートへの歪みが無いほどの低い加圧力で圧着しても流動により積層寸法ずれが大きく、かつ焼成時の有機バインダーの分解ガスが過剰なため、ブクやピンホール、デラミネーションの発生が顕著となる。
なお、ここで言う有機バインダーの添加量とは、セラミック粉末100質量部に対する有機バインダーの質量部である。
また、第1のセラミックグリーンシートに含まれる有機バインダーの分子量は8万乃至30万であることが好ましい。上記分子量が8万よりも低いと、常温での有機バインダーの流動性が過剰となり、第1のセラミックグリーンシート2の保形性が得られず、第1のセラミックグリーンシート2と第2のセラミックグリーンシート3を積層して加圧して形成したセラミックグリーンシート4を積層してセラミックグリーンシート積層体6を形成する際に、加圧によるセラミックグリーンシート4への歪みが無いほどの低い加圧力で圧着しても流動により積層寸法ずれが大きくなり、第2のセラミックグリーンシート3およびその上に形成された導体層5上に第1のセラミックグリーンシート2の有機バインダーが過剰に多くなるため、焼成時の有機バインダーの分解ガスがセラミックグリーンシート4内部で局所的に過剰に発生し、ブクやピンホール、デラミネーションの発生が顕著となる。
また、上記分子量が30万を超えると、有機バインダー同士が絡まりやすくなり、凝集が顕著となる。そのため、第1のセラミックグリーンシート2に含有される溶融成分が均一に分散されず、第1のセラミックグリーンシート2に含有される溶融成分が加熱により溶融した際に均一に分散されない。また、セラミックグリーンシート4を加熱しても第1のセラミックグリーンシート2の溶融成分が充分な量を維持できず、溶融成分が溶融した状態で第1のセラミックグリーンシート2が充分に軟化せず、セラミックグリーンシート4はその下に位置する別のセラミックグリーンシート4’の第2のセラミックグリーンシート3およびその上に形成された導体層5の形状に追従して形状変化しないため、セラミックグリーンシート積層体6を形成する際に、加圧によるセラミックグリーンシート4への歪みが無いほどの低い加圧力で圧着できず、層間での剥離やデラミネーションが発生する。
また、第1のセラミックグリーンシートに含まれる有機バインダーの酸価は0.1乃至0.8KOHmg/gであることが好ましい。上記酸価が0.1KOHmg/gよりも低いと、無機粉末と有機バインダーの結合性が弱くなり、第1のセラミックグリーンシート2の内部に無機粉末と有機バインダーがそれぞれ凝集し、不均一な状態で存在するため、有機バインダーと相溶して第1のセラミックグリーンシートに含有される溶融成分も均一に分散されない。その結果、セラミックグリーンシート4を加熱して溶融成分が溶融した状態でも第1のセラミックグリーンシート2が充分に軟化せず、セラミックグリーンシート4はその下に位置する別のセラミックグリーンシート4’の第2のセラミックグリーンシート3およびその上に形成された導体層5の形状に追従して形状変化しないため、セラミックグリーンシート積層体6を形成する際に、加圧によるセラミックグリーンシート4への歪みが無いほどの低い加圧力で圧着できず、層間での剥離やデラミネーションが発生する。
また、上記酸価が0.8KOHmg/gを超えると、有機バインダーの結合性が過剰に強くなり、有機バインダー同士で凝集してしまう。そのため、有機バインダーと溶融成分が相溶しにくくなり、第1のセラミックグリーンシートに含有される溶融成分が均一に分散されない。その結果、セラミックグリーンシート4を加熱して溶融成分が溶融した状態でも第1のセラミックグリーンシート2が充分に軟化せず、セラミックグリーンシート4はその下に位置する別のセラミックグリーンシート4’の第2のセラミックグリーンシート層3およびその上に形成された導体層5の形状に追従して形状変化しないため、セラミックグリーンシート積層体6を形成する際に加圧によるセラミックグリーンシート4への歪みが無いほどの低い加圧力で圧着できず、層間での剥離やデラミネーションが発生する。
また、第2のセラミックグリーンシート3に含まれる有機バインダーの添加量が8乃至20質量部であることが好ましい。上記添加量が8質量部未満であれば、第1および第2のセラミックグリーンシート2,3を積層して加熱することによってセラミックグリーンシート4を作製した際に、第2のセラミックグリーンシート3の密度が低いため第1のセラミックグリーンシート2内の溶融成分が拡散しやすく、積層時にセラミックグリーンシート4の第1のセラミックグリーンシート2がその下に位置する別のセラミックグリーンシート4’の第2のセラミックグリーンシート層3およびその上に形成された導体層5の形状に追従して変形するために必要な溶融成分量を保持できず、層間剥離やデラミネーションが発生する。
また、第1のセラミックグリーンシート2に含まれる有機バインダーのガラス転移点が−20乃至0℃であることが好ましい。上記ガラス転移点が−20℃より低いと、常温での有機バインダーの流動性が過剰となり、第1のセラミックグリーンシート2の保形性が得られず、第1のセラミックグリーンシート2同士の付着が発生する。また、第1のセラミックグリーンシート2と第2のセラミックグリーンシート3を積層して加圧して形成したセラミックグリーンシート4を積層してセラミックグリーンシート積層体6を形成する際に、加圧によるセラミックグリーンシート4への歪みが無いほどの低い加圧力で圧着しても流動により積層寸法ずれが大きくなる。
上記ガラス転移点が0℃より高いと、セラミックグリーンシート4を加熱して溶融成分が溶融した状態でも第1のセラミックグリーンシート2に含まれる有機バインダーが充分に軟化せず、セラミックグリーンシート4はその下に位置する別のセラミックグリーンシート4’の第2のセラミックグリーンシート3およびその上に形成された導体層5の形状に追従して形状変化しないため、セラミックグリーンシート積層体6を形成する際に加圧によるセラミックグリーンシート4への歪みが無いほどの低い加圧力で圧着できず、層間剥離やデラミネーションが発生する。
また、第1のセラミックグリーンシート2に含まれる有機バインダーの水酸基価は0.1乃至5KOHmg/gであることが好ましい。上記水酸基価が0.1KOHmg/gよりも低いと、無機粉末と有機バインダーの結合性が弱くなり、第1のセラミックグリーンシート2内部で無機粉末と有機バインダーがそれぞれ凝集し、不均一な状態で存在する。そのため、有機バインダーと相溶して第1のセラミックグリーンシート2に含有される溶融成分も均一に分散されず、セラミックグリーンシート4を加熱して溶融成分が溶融した状態でも第1のセラミックグリーンシート2が充分に軟化しない部分が発生する。そのため、セラミックグリーンシート4はその下に位置する別のセラミックグリーンシート4’の第2のセラミックグリーンシート3およびその上に形成された導体層5の形状に追従して形状変化せず、セラミックグリーンシート積層体6を形成する際に、加圧によるセラミックグリーンシート4への歪みが無いほどの低い加圧力で圧着できず、層間剥離やデラミネーションが発生する。
上記有機バインダーの水酸基価が5KOHmg/gを超えると、無機粉末と有機バインダーの結合性が過剰に強くなり、有機バインダーと溶融成分が相溶しにくくなる。そのため、第1のセラミックグリーンシート2に含有される溶融成分が均一に分散されず、有機バインダーと相溶して第1のセラミックグリーンシート2に含有される溶融成分も均一に分散されず、セラミックグリーンシート4を加熱して溶融成分が溶融した状態でも第1のセラミックグリーンシート2が充分に軟化しない部分が発生する。そのため、セラミックグリーンシート4はその下に位置する別のセラミックグリーンシート4’の第2のセラミックグリーンシート3およびその上に形成された導体層5の形状に追従して形状変化せず、セラミックグリーンシート積層体6を形成する際に、加圧によるセラミックグリーンシート4への歪みが無いほどの低い加圧力で圧着できず、層間剥離やデラミネーションが発生する。
また、第2のセラミックグリーンシート3に含まれる有機バインダーのガラス転移点が−20乃至10℃であることが好ましい。上記ガラス転移点が−20℃より低いと、常温での有機バインダーの流動性が過剰となりセラミックグリーンシート4同士の付着が発生する。上記ガラス転移点が10℃より高いと、第2のセラミックグリーンシート3の保形性が不十分となり取り扱う際に割れや欠けを生じやすくなる。
また、第2のセラミックグリーンシート3に含まれる有機バインダーの水酸基価は5乃至100KOHmg/gであることが好ましい。上記水酸基価が5KOHmg/gよりも低いと、無機粉末と有機バインダーの結合性が弱くなり、第2のセラミックグリーンシート3の内部に無機粉末と有機バインダーが不均一な状態で存在する。そのため、第2のセラミックグリーンシート3の粗な部分が加圧時に変形しやすく寸法変形を抑えることが難しくなる。また、焼結体は第2のセラミックグリーンシート3の粗な部分によって、内部にデラミネ−ションが生じやすくなる。
上記水酸基価が100KOHmg/gを超えると、有機バインダーの結合性が過剰に強くなり、無機粉末と結合せずに有機バインダー同士で結合する。そのため、第2のセラミックグリーンシート3内部に無機粉末と有機バインダーが不均一な状態で存在する。そのため、第2のセラミックグリーンシート3の粗な部分が加圧時に変形しやすく寸法変形を抑えることが難しくなる。また、焼結体は第2のセラミックグリーンシート3の粗な部分によって、内部にデラミネ−ションが生じやすくなる。
次に図1(b)に示すように、第1のセラミックグリーンシート2と第2のセラミックグリーンシート3を積層して加熱することによって、溶融成分が溶融状態となり第1のセラミックグリーンシート2が軟化して変形する程度の温度つまり溶融成分の融点程度の温度で加熱することでセラミックグリーンシート4を作製する。このとき、図1(b)のように厚みの薄い第1のセラミックグリーンシート2を支持体1上に保持した状態で、第2のセラミックグリーンシート3を積層する方がハンドリングの容易さの点でより好ましい。また、このとき、積層したセラミックグリーンシート4が位置ずれしないように、軟化した第1のセラミックグリーンシート2を第2のセラミックグリーンシート3の形状に追従して変形するのを補助するために押さえる程度の加圧(0.1〜1MPa)を行なうと、より精度よく確実な圧着が可能となる。
次に図1(c)に示すように、セラミックグリーンシート4の第2のセラミックグリーンシート3上に導体層4を形成する。セラミックグリーンシート4上に導体層5を形成する方法としては、例えば導体材料の粉末をペースト化したものをスクリーン印刷法やグラビア印刷法等により印刷したり、めっき法や蒸着法等により所定パターン形状の金属膜を形成するようなセラミックグリーンシート4上に直接形成する方法、あるいは印刷により所定パターン形状に形成した導体厚膜や所定パターン形状に加工した金属箔、めっき法や蒸着法等により形成した所定パターン形状の金属膜を、セラミックグリーンシート4上に転写する方法がある。導体材料としては、例えばW,Mo,Mn,Au,Ag,Cu,Pd(パラジウム),Pt(白金)等の1種または2種以上が挙げられ、2種以上の場合は混合、合金、コーティング等のいずれの形態であってもよい。
導体層5はセラミックグリーンシート4の第2のセラミックグリーンシート3上に形成されるのが好ましい。これは、第2のセラミックグリーンシート3は加熱時に溶融する溶融成分を含有しないことから、第2のセラミックグリーンシート3は加熱時に変形することはないので、その上に導体層5を形成することにより導体層5を変形させないようにするためである。
なお、導体層5を形成する前に必要に応じて上下の層間の導体層5同士を接続するためのビアホール導体やスルーホール導体等の貫通導体を形成してもよい。これら貫通導体は、パンチング加工やレーザ加工等によりセラミックグリーンシート4に形成した貫通孔に、導体材料の粉末をペースト化したもの(導体ペースト)を印刷やプレス充填により埋め込む等の手段によって形成される。
キャビティを有する電子部品を製造する場合、次の積層体を作製する工程より前に、キャビティ形状の貫通穴を金型による打ち抜き等によりセラミックグリーンシート4の一部に形成しておく。貫通穴の形成は、キャビティの内壁面への導体層5の形成の有無や形成方法に応じて、導体層5を形成する前でもよいし、形成した後でもよい。
次に図1(d)に示すように、位置合わせして積み重ねたセラミックグリーンシート4を、溶融成分が溶融状態となり第1のセラミックグリーンシート2が軟化して変形する程度の温度、つまり溶融成分の融点程度の温度で加熱することで、セラミックグリーンシート積層体6を作製する。また、このとき、積層したセラミックグリーンシート4が位置ずれしないように、また、軟化した第1のセラミックグリーンシート2を第2のセラミックグリーンシート3およびその上に形成された導体層5のパターン形状に追従して変形するのを補助するために押さえる程度の加圧(0.1〜1MPa)を行なうと、より精度よく確実な圧着が可能となる。
セラミックグリーンシート積層体6を作製する工程において、第1のセラミックグリーンシート2は加熱時に溶融する溶融成分を含有することから、導体層5が形成されたセラミックグリーンシート4を積層して加熱した際に第1のセラミックグリーンシート2が軟化するので、第1のセラミックグリーンシート2はその上また下に位置するセラミックグリーンシート4の第2のセラミックグリーンシート3およびその上に形成された導体層5の形状に追従して変形することとなる。これにより、導体層5の周囲や導体層5間に空隙が発生することなくセラミックグリーンシート4同士が密着することとなり、セラミックグリーンシート積層体6を焼成して得られる電子部品はデラミネーションの発生のないものとなる。
また、第1のセラミックグリーンシート2は、加熱時に溶融する溶融成分を含有することから、加熱のみで第1のセラミックグリーンシート2が軟化して接着性を有するものとなるので、大きな加圧力によりセラミックグリーンシート4を圧着させる必要がない。そして、導体層5の形成される第2のセラミックグリーンシート3は加熱時に溶融する溶融成分を含有しないことから、第2のセラミックグリーンシート3は加熱時に変形することはなく、積層したセラミックグリーンシート4が位置ずれしないように、また、軟化した第1のセラミックグリーンシート2を第2のセラミックグリーンシート3およびその上に形成された導体層5のパターンの形状に追従して変形するのを補助するために押さえる程度では変形しないものである。よって、セラミックグリーンシート4およびそれに形成された導体層5の形状が変形することがなく、さらに加圧によるセラミックグリーンシート4への歪がなく得られるセラミックグリーンシート積層体6およびそれを焼成して得られる電子部品は高い寸法精度を有するものとなる。
例えば、加熱時に溶融する溶融成分を含有しない第1のセラミックグリーンシート2を用いた場合、セラミックグリーンシート積層体6および電子部品の寸法精度は±0.5%程度であったが、本発明の溶融成分を含有する第1のセラミックグリーンシート2を用いた場合、セラミックグリーンシート積層体6および電子部品の寸法精度は±0.3%程度となり、大幅に向上することが実験により判明した。
また、キャビティを有する電子部品を製造する場合、大きな加圧力によりセラミックグリーンシートを圧着させる必要がないので、キャビティ周囲部とキャビティ底部との加圧によるグリーンシートの伸びの違いによるキャビティ底部の反りの発生を抑えることが可能となり、キャビティ底部に電子素子を精度よく確実に搭載することが可能な電子部品を得ることができる。
図1(d)の最下部に位置するセラミックグリーンシートとしては、第2のセラミックグリーンシート3のみで構成されるセラミックグリーンシート4’を用いればよい。積層コンデンサのように表面に導体層5が露出しないような電子部品の場合は、図1(d)の最上部に位置するセラミックグリーンシート4には導体層5が形成されていないセラミックグリーンシート4を用いればよく、積層セラミック配線基板のような両面に導体層5が露出するような電子部品の場合は、最下部のセラミックグリーンシート4’の両面に導体層5を形成したものを用いればよい。
そして最後に、セラミックグリーンシート積層体6を焼成することにより本発明の電子部品が作製される。焼成する工程は有機成分の除去とセラミック粉末の焼結とから成る。有機成分の除去は100〜800℃の温度範囲でセラミックグリーンシート積層体6を加熱することによって行い、有機成分を分解、揮発させ、焼結温度はセラミック組成により異なり、約800〜1600℃の範囲内で行なう。焼成雰囲気はセラミック粉末や導体材料により異なり、大気中、還元雰囲気中、非酸化性雰囲気中等で行なわれ、有機成分の除去を効果的に行なうために水蒸気等を含ませてもよい。
焼成後の電子部品は、その表面に露出した導体層5の表面には、導体層5の腐食防止のために、または半田や金属ワイヤ等の外部基板や電子部品との接続手段の良好な接続のために、NiやAuのめっきを施すとよい。
セラミック材料としてガラスセラミックスのような低温焼結材料を用いる場合は、セラミックグリーンシート積層体6の上下面にさらに拘束グリーンシートを積層して焼成し、焼成後に拘束シートを除去するようにすれば、より高寸法精度のセラミック基板を得ることが可能となる。拘束グリーンシートは、Al2O3等の難焼結性無機材料を主成分とするグリーンシートであり、焼成時に収縮しないものである。この拘束グリーンシートが積層された積層体は、収縮しない拘束グリーンシートにより積層平面方向(xy平面方向)の収縮が抑制され、積層方向(z方向)にのみ収縮するので、焼成収縮に伴う寸法ばらつきが抑制される。このときの拘束グリーンシートも本発明のセラミックグリーンシート4と同様の第1のセラミックグリーンシート2と第2のセラミックグリーンシート3とを有する構成にすると、拘束グリーンシートを積層して圧着する際にも大きな加圧力を必要とせず、得られる電子部品はより高寸法精度のものとなるのでよい。
また、拘束グリーンシートには難焼結性無機成分に加えて、焼成温度以下の軟化点を有するガラス成分、例えばセラミックグリーンシート4中のガラスと同じガラスを含有させるとよい。焼成中にこのガラスが軟化してセラミックグリーンシート4と結合することによりセラミックグリーンシート4と拘束グリーンシートとの結合が強固なものとなり、より確実な拘束力が得られるからである。このときのガラス量は難焼結性無機成分とガラス成分を合わせた無機成分に対して0.5〜15質量部とすると拘束力が向上し、かつ拘束グリーンシートの焼成収縮が0.5%以下に抑えられる。
焼成後、拘束シートを除去する。除去方法としては、例えば研磨、ウォータージェット、ケミカルブラスト、サンドブラスト、ウェットブラスト(砥粒と水とを空気圧により噴射させる方法)等が挙げられる。
以上のような方法で作製された電子部品は、その内部にデラミネーションを有さず寸法精度の高いものであるので、電子部品として要求される優れた電気特性や気密性の高いものとなる。
第1のセラミックグリーンシート用に、平均粒径1μmのアルミナを90質量部、焼結助剤としてシリカ、マグネシア、カルシアと、着色顔料として遷移金属の酸化物(三酸化クロム)とを合わせて10質量部の割合で調合したセラミック粉末100質量部に対してメタクリル酸メチル樹脂を固形分で18,19,20,23,25,26,30質量部を各々調合し、低融点成分としてヘキサデカノールを固形分で10質量部、トルエン及び酢酸エチルを溶媒としてボールミルにより混合し、セラミックスラリーを調製した。
次に、これらの第1のセラミックグリーンシート用のセラミックスラリーをPETフィルム上にリップコーター法により厚さ50μmで塗布し、乾燥させて第1のセラミックグリーンシートを作製した。
続いて、第1のセラミックグリーンシート用のセラミックスラリーと同様の割合で調合したセラミック粉末と有機バインダーとしてメタクリル酸メチル樹脂をセラミック粉末100質量部に対して固形分で10質量部、可塑剤としてフタル酸ジブチルを1質量部添加し、トルエン及び酢酸エチルを溶媒としてボールミルにより混合して第2のセラミックグリーンシート用のセラミックスラリーを調製し、PETフィルム上にリップコーター法により厚さ100μmで塗布し、乾燥することにより第2のセラミックグリーンシートを作製した。
これらの第1のセラミックグリーンシートと第2のセラミックグリーンシートを40℃、0.5MPaで加圧し、一体化したセラミックグリーンシートを作製した。
このセラミックグリーンシートの第2のセラミックグリーンシート上に、タングステンを主成分とする導体ペーストを用いスクリーン印刷法により10〜20μmの厚みで所定パターンに印刷し、導体層を形成した。
導体層を形成したセラミックグリーンシートをそれぞれ4層重ねあわせて、厚み方向に0.5MPaの圧力および80℃の温度で加熱圧着してセラミックグリーンシート積層体を作製した。その際の剥離強度は、セラミックグリーンシートを剥離した際の剥離発生箇所を双眼顕微鏡にて観察し、剥離箇所が第2のセラミックグリーンシート内である場合を良品とした。
それから、得られたセラミックグリーンシート積層体中の有機バインダー等の有機成分や、有機成分が分解した後に残留するカーボンを除去するため、7.33×103Paの水蒸気を含んだ窒素雰囲気中に約1000℃の温度で1時間保持する熱処理を行った後、還元雰囲気中にて約1600℃の温度で1時間保持して評価用のセラミック焼結体を作製した。
この焼結体のクロスセクションの観察を行い、セラミック層間のデラミネーション、ブクやピンホールの発生の有無及び製品寸法を調査した。第1のセラミックグリーンシート層の有機バインダー量別の評価結果を表1に示す。
表1で、第1のセラミックグリーンシートの保形性の欄が「○」は、第1のセラミックグリーンシートを成形した後、それを5枚重ねて常温で24時間放置しても、互いの第1のセラミックグリーンシートがくっつくこと無く保形性を維持していたことを示す。「△」は、第1のセラミックグリーンシートの成形はできたが、成形後に第1のセラミックグリーンシートを5枚重ねて常温で24時間放置すると互いの第1のセラミックグリーンシートがくっついてしまい、保形性を維持できなかったことを示す。また、剥離強度の欄が「○」は、セラミックグリーンシート積層体を剥離した際に、剥離箇所が第2のセラミックグリーンシート内であったことを示す。「△」は、第2のセラミックグリーンシート外であったことを示す。また、積層寸法の欄が「○」は、積層後の寸法を3次元測定機で測定し、寸法ばらつきが±0.05%よりも小さいものであったことを示す。「△」は、製品寸法に問題は無いものの、寸法ばらつきが±0.05%以上であったことを示す。また、内層デラミネーション有無の欄が「○」は、焼結体内部にデラミネーションが見られず優れていたことを示す。「△」は、セラミックグリーンシート積層体の形成に問題は無いものの、焼結体内部にデラミネーションが見られたことを示す。また、ブク/ピンホール有無の欄が「○」は、焼結体内部にブクやピンホールがないことを示す。「△」は、セラミックグリーンシート積層体の形成に問題は無いものの、焼結体内部にブクやピンホールが見られたことを示す。
表1より、第1のセラミックグリーンシートに含まれる有機バインダーの添加量が19質量部未満の試料No.1は、剥離箇所が第2のセラミックグリーンシート外であり、焼結体内部にデラミネーションが発生した。
また、上記添加量が25質量部より大きい試料No.6,7は、積層寸法の寸法バラツキが±0.05%以上であり、焼結体内部にデラミネーションが見られ、ブク/ピンホールが見られた。
これに対して、上記添加量が19乃至25質量部の試料No.2,3,4,5は、剥離箇所は第2のセラミックグリーンシート内で、積層寸法の寸法バラツキが±0.05%よりも小さく、焼結体内部のデラミネーションが無く、ブク/ピンホールも見られなかった。
実施例1と同様に、第1のセラミックグリーンシート用に、平均粒径1μmのアルミナを90質量部、焼結助剤としてシリカ、マグネシア、カルシアと、着色顔料として遷移金属の酸化物(三酸化クロム)とを合わせて10質量部の割合で調合したセラミック粉末100質量部に対して、メタクリル酸メチル樹脂を固形分で20質量部、メタクリル酸メチル樹脂の分子量を4万,8万,10万,20万,30万,36万,50万で各々調合し、低融点成分としてヘキサデカノールを固形分で10質量部、トルエン及び酢酸エチルを溶媒としてボールミルにより40時間混合し、セラミックスラリーを調製した。
次に、これらの第1のセラミックグリーンシート用のセラミックスラリーをPETフィルム上にリップコーター法により厚さ50μmで塗布し、乾燥させて第1のセラミックグリーンシートを形成した。
続いて、第1のセラミックグリーンシート用のセラミックスラリーと同様の割合で調合したセラミック粉末と有機バインダーとしてメタクリル酸メチル樹脂をセラミック粉末100質量部に対して固形分で10質量部、可塑剤としてフタル酸ジブチルを1質量部添加し、トルエン及び酢酸エチルを溶媒としてボールミルにより混合して第2のセラミックグリーンシート用のセラミックスラリーを調製し、PETフィルム上にリップコーター法により厚さ100μmで塗布し、乾燥することにより第2のセラミックグリーンシートを作製した。
これらの第1のセラミックグリーンシートと第2のセラミックグリーンシートを40℃、0.5MPaで加圧し、一体化したセラミックグリーンシートを作製した。
これらのセラミックグリーンシートの第2のセラミックグリーンシート上に、タングステンを主成分とする導体ペーストを用いスクリーン印刷法により10〜20μmの厚みで所定パターンに印刷し、導体層を形成した。
導体層を形成したセラミックグリーンシートをそれぞれ4層重ねあわせて、厚み方向に0.5MPaの圧力および80℃の温度で加熱圧着してセラミックグリーンシート積層体を作製した。その際の剥離強度は、セラミックグリーンシートを剥離した際の剥離発生箇所を双眼顕微鏡にて観察し、剥離箇所が第2のセラミックグリーンシート内である場合を良品とした。
それから、得られたセラミックグリーンシート積層体中の有機バインダー等の有機成分や、有機成分が分解した後に残留するカーボンを除去するため、7.33×103Paの水蒸気を含んだ窒素雰囲気中に約1000℃の温度で1時間保持する熱処理を行った後、還元雰囲気中にて約1600℃の温度で1時間保持して評価用のセラミック焼結体を作製した。
この焼結体のクロスセクションの観察を行い、セラミック層間のデラミネーション及びブクやピンホールの発生の有無及び製品寸法を調査した。第1のセラミックグリーンシート層の有機バインダーの分子量別の評価結果を表2に示す。
表2で、第1のセラミックグリーンシートの保形性の欄が「○」は、第1のセラミックグリーンシートを成形した後、それを5枚重ねて常温で24時間放置しても、互いの第1のセラミックグリーンシートがくっつくこと無く保形性を維持していたことを示す。「△」は、第1のセラミックグリーンシートの成形はできたが、成形後に第1のセラミックグリーンシートを5枚重ねて常温で24時間放置すると互いの第1のセラミックグリーンシートがくっついてしまい、保形性を維持できなかったことを示す。また、積層寸法の欄が「○」は、積層後の寸法を3次元測定機で測定し、寸法ばらつきが±0.05%よりも小さいものであったことを示す。「△」は、製品寸法に問題は無いものの、寸法ばらつきが±0.05%以上であったことを示す。また、内層デラミネーション有無の欄が「○」は、焼結体内部にデラミネーションが見られず優れていたことを示す。「△」は、積層体の形成に問題は無いものの、焼結体内部にデラミネーションが見られたことを示す。また、ブク/ピンホール有無の欄が「○」は、焼結体内部にブクやピンホールがないことを示す。「△」は、セラミックグリーンシート積層体の形成に問題は無いものの、焼結体内部にブクやピンホールが見られたことを示す。
表2より、第1のセラミックグリーンシートに含まれる有機バインダーの分子量が8万未満の試料No.1は、第1のセラミックグリーンシートの保形性が維持できず、積層寸法の寸法バラツキが0.05%以上であり、焼結体内部にデラミネーションが発生し、ブク/ピンホールが見られた。
また、上記分子量が30万より大きい試料No.6,7は、剥離箇所が第2のセラミックグリーンシート外であり、積層寸法の寸法バラツキが0.05%以上であり、焼結体内部にデラミネーションが発生し、ブク/ピンホールが見られた。
これに対して、上記分子量が8万乃至30万の試料No.2,3,4,5は、第1のセラミックグリーンシートの保形性が得られ、剥離箇所が第2のセラミックグリーンシート内で、積層寸法の寸法バラツキが±0.05%よりも小さく、焼結体内部のデラミネーションが無く、ブク/ピンホールも見られなかった。内層デラミネーションが無く、寸法バラツキ優れたものであった。
実施例2と同様に、第1のセラミックグリーンシート用に、アルミナ粉末と有機バインダーとして平均粒径1μmのアルミナを90質量部、焼結助剤としてシリカ、マグネシア、カルシアと、着色顔料として遷移金属の酸化物(三酸化クロム)とを合わせて10質量部の割合で調合したセラミック粉末100質量部に対して、メタクリル酸メチル樹脂を固形分で20質量部、メタクリル酸メチル樹脂の有機バインダーの酸価を0.0,0.1,0.5,0.8,0.9,1.5で各々調合し、低融点成分としてヘキサデカノールを固形分で10質量部、トルエン及び酢酸エチルを溶媒としてボールミルにより40時間混合し、セラミックスラリーを調製した。
次に、これらの第1のセラミックグリーンシート用のセラミックスラリーをPETフィルム上にリップコーター法により厚さ50μmで塗布し、乾燥させて第1のセラミックグリーンシートを形成した。
続いて、第1のセラミックグリーンシート用のセラミックスラリーと同様の割合で調合したセラミック粉末と有機バインダーとしてメタクリル酸メチル樹脂をセラミック粉末100質量部に対して固形分で10質量部、可塑剤としてフタル酸ジブチルを1質量部添加し、トルエン及び酢酸エチルを溶媒としてボールミルにより混合して第2のセラミックグリーンシート用のセラミックスラリーを調製し、PETフィルム上にリップコーター法により厚さ100μmで塗布し、乾燥することにより第2のセラミックグリーンシートを作製した。
これらの第1のセラミックグリーンシートと第2のセラミックグリーンシートを40℃、0.5MPaで加圧し、一体化したセラミックグリーンシートを作製した。
このセラミックグリーンシートの第2のセラミックグリーンシート上に、タングステンを主成分とする導体ペーストを用いスクリーン印刷法により10〜20μmの厚みで所定パターンに印刷し、導体層を形成した
導体層を形成したセラミックグリーンシートをそれぞれ4層重ねあわせて、厚み方向に0.5MPaの圧力および80℃の温度で加熱圧着してセラミックグリーンシート積層体を作製した。その際の剥離強度は、セラミックグリーンシートを剥離した際の剥離発生箇所を双眼顕微鏡にて観察し、剥離箇所が第2のセラミックグリーンシート内である場合を良品とした。
それから、得られたセラミックグリーンシート積層体中の有機バインダー等の有機成分や、有機成分が分解した後に残留するカーボンを除去するため、7.33×103Paの水蒸気を含んだ窒素雰囲気中に約1000℃の温度で1時間保持する熱処理を行った後、還元雰囲気中にて約1600℃の温度で1時間保持して評価用のセラミック焼結体を作製した。
この焼結体のクロスセクションの観察を行い、セラミック層間のデラミネーション及びブクやピンホールの発生の有無及び製品寸法を調査した。第1のセラミックグリーンシート層の有機バインダーの酸価別の評価結果を表3に示す。
表3における内層デラミネーション有無の欄が「○」は、焼結体内部にデラミネーションが見られず優れていたことを示す。「△」は、積層体の形成に問題は無いものの、焼結体内部にデラミネーションが見られたことを示す。また、積層寸法の欄が「○」は、積層後の寸法を3次元測定機で測定し、寸法ばらつきが±0.05%よりも小さいものであったことを示す。「△」は、製品寸法に問題は無いものの、寸法ばらつきが±0.05%以上であったことを示す。
表3より、第1のセラミックグリーンシートに含まれる有機バインダーの酸価が0.1KOHmg/g未満の試料No.1は、剥離箇所は第2のセラミックグリーンシート外であり、積層寸法の寸法バラツキが±0.05%以上であり、焼結体内部にデラミネーションが発生していた。
また、上記酸価が0.8KOHmg/gより大きい試料No.5,6は、剥離箇所は第2のセラミックグリーンシート外であり、積層寸法の寸法バラツキが±0.05%以上であり、焼結体内部にデラミネーションが発生していた。
これに対して、第1のセラミックグリーンシートに含まれる有機バインダーの添加量が0.1乃至0.8質量部の試料No.2,3,4は、剥離箇所は第2のセラミックグリーンシート内で、積層寸法の寸法バラツキが±0.05%よりも小さく、焼結体内部のデラミネーションが無かった。
第1のセラミックグリーンシート用に、平均粒径1μmのアルミナを90質量部、焼結助剤としてシリカ、マグネシア、カルシアと、着色顔料として遷移金属の酸化物(三酸化クロム)とを合わせて10質量部の割合で調合したセラミック粉末100質量部に対して、メタクリル酸メチル樹脂を固形分で20質量部を添加し、溶融成分としてヘキサデカノールを固形分で10質量部、トルエン及び酢酸エチルを溶媒としてボールミルにより40時間混合し、セラミックスラリーを調製した。
次に、このセラミックスラリーをPETフィルム上にリップコーター法により厚さ50μmで塗布し、乾燥させて第1のセラミックグリーンシートを形成した。
続いて、第1のセラミックグリーンシート用のセラミックスラリーと同様の割合で調合したセラミック粉末と有機バインダーとしてメタクリル酸メチル樹脂をセラミック粉末100質量部に対して、固形分で6,8,10,12,15,18,20,22,24質量部を各々添加し、可塑剤としてフタル酸ジブチルを1質量部添加し、トルエン及び酢酸エチルを溶媒としてボールミルにより混合して第2のセラミックグリーンシート用のセラミックスラリーを調製し、PETフィルム上にリップコーター法により厚さ100μmで塗布し、乾燥することにより第2のセラミックグリーンシートを作製した。
これらの第1のセラミックグリーンシートと第2のセラミックグリーンシートを40℃、0.5MPaで加圧し、一体化したセラミックグリーンシートを作製した。このセラミックグリーンシートの第2のセラミックグリーンシート上に、タングステンを主成分とする導体ペーストを用いスクリーン印刷法により10〜20μmの厚みで所定パターンに印刷し、導体層を形成した。
導体層を形成したセラミックグリーンシートをそれぞれ4層重ねあわせて厚み方向に0.5MPaの圧力および80℃の温度で加熱圧着してセラミックグリーンシート積層体を作製した。その際の剥離強度は、セラミックグリーンシートを剥離した際の剥離発生箇所を双眼顕微鏡にて観察し、剥離箇所が第2のセラミックグリーンシート内である場合を良品とした。
それから、得られたセラミックグリーンシート積層体中の有機バインダー等の有機成分や、有機成分が分解した後に残留するカーボンを除去するため、7.33×103Paの水蒸気を含んだ窒素雰囲気中に約1000℃の温度で1時間保持する熱処理を行った後、還元雰囲気中にて約1600℃の温度で1時間保持して評価用のセラミック焼結体を作製した。
この焼結体のクロスセクションの観察を行い、セラミック層間のデラミネーションを調査した。そして、第2のセラミックグリーンシートに含まれる有機バインダーの添加量別の評価の結果を表4に示す。
表4の剥離強度の欄の「○」は、セラミックグリーンシート積層体を剥離した際に、剥離箇所が第2のセラミックグリーンシート内であったことを示す。「△」は、剥離箇所が第2のセラミックグリーンシート外であったことを示す。また、内層デラミネーション有無の欄の「○」は、焼結体内部にデラミネーションが見られず優れていたことを示す。「△」は、セラミックグリーンシート積層体の形成に問題は無いものの、焼結体内部にデラミネーションが見られたことを示す。
表4より、第2のセラミックグリーンシートに含まれる有機バインダーの添加量が8質量部未満の試料No.1は、剥離箇所が第2のセラミックグリーンシート外であり、かつ焼結体内部にデラミネーションが発生した。
また、上記添加量が20質量部より大きい試料No.8,9も、同様に剥離箇所が第2のセラミックグリーンシート外であり、かつ焼結体内部にデラミネーションが発生した。
これに対して、上記添加量が8乃至20質量部の試料No.2,3,4,5,6,7は、剥離箇所が第2のグリーンシート内で、かつ内層デラミネーションが無かった。
第1のセラミックグリーンシート用に、平均粒径1μmのアルミナを90質量部、焼結助剤としてシリカ、マグネシア、カルシアと、着色顔料として遷移金属の酸化物(三酸化クロム)とを合わせて10質量部の割合で調合したセラミック粉末100質量部に対して、メタクリル酸メチル樹脂を固形分で20質量部添加し、溶融成分としてヘキサデカノールを固形分で10質量部、トルエン及び酢酸エチルを溶媒としてボールミルにより40時間混合し、セラミックスラリーを調製した。
次に、このセラミックスラリーをPETフィルム上にリップコーター法により厚さ50μmで塗布し、乾燥させて第1のセラミックグリーンシートを形成した。
続いて、第1のセラミックグリーンシート用のセラミックスラリーと同様の割合で調合したセラミック粉末と有機バインダーとしてメタクリル酸メチル樹脂を、セラミック粉末100質量部に対して固形分で10質量部添加し、このメタクリル酸メチル樹脂の分子量を1万,5万,10万,40万,80万,90万,100万で各々調合した。また、可塑剤としてフタル酸ジブチルを1質量部添加し、トルエン及び酢酸エチルを溶媒としてボールミルにより混合して第2のセラミックグリーンシート用のセラミックスラリーを調製し、PETフィルム上にリップコーター法により厚さ100μmで塗布し、乾燥することにより第2のセラミックグリーンシートを作製した。
これらの第1のセラミックグリーンシートと第2のセラミックグリーンシートを40℃、0.5MPaで加圧し、一体化したセラミックグリーンシートを作製した。このセラミックグリーンシートの第2のセラミックグリーンシート上に、タングステンを主成分とする導体ペーストを用いスクリーン印刷法により10〜20μmの厚みで所定パターンに印刷し、導体層を形成した。
導体層を形成したセラミックグリーンシートをそれぞれ4層重ねあわせて厚み方向に0.5MPaの圧力および80℃の温度で加熱圧着してセラミックグリーンシート積層体を作製した。その際の剥離強度は、セラミックグリーンシートを剥離した際の剥離発生箇所を双眼顕微鏡にて観察し、剥離箇所が第2のセラミックグリーンシート内である場合を良品とした。また、第2のセラミックグリーンシートの裏面を観測し、ピンホールを調査した。
それから、得られたセラミックグリーンシート積層体中の有機バインダー等の有機成分や、有機成分が分解した後に残留するカーボンを除去するため、7.33×103Paの水蒸気を含んだ窒素雰囲気中に約1000℃の温度で1時間保持する熱処理を行った後、還元雰囲気中にて約1600℃の温度で1時間保持して評価用のセラミック焼結体を作製した。
この焼結体のクロスセクションの観察を行い、セラミック層間のデラミネーション及びブクやピンホールの発生の有無及び製品寸法を調査した。第2のセラミックグリーンシート層の有機バインダーの分子量別の評価の結果を表5に示す。
表5おける内層デラミネーション有無の欄の「○」は、焼結体内部にデラミネーションが見られず優れていたことを示す。「△」は、積層体の形成に問題は無いものの、焼結体内部にデラミネーションが見られたことを示す。また、第2のセラミックグリーンシートのピンホール有無の欄の「○」は、第2のセラミックグリーンシートの裏面にピンホールがないことを示す。「△」は、第2のセラミックグリーンシートの裏面にピンホールが見られたことを示す。また、積層寸法の欄の「○」は、積層後の寸法を3次元測定機で測定し、寸法ばらつきが±0.05%よりも小さいものであったことを示す。「△」は、製品寸法に問題は無いものの、寸法ばらつきが±0.05%以上であったことを示す。
表5より、第2のセラミックグリーンシートに含まれる有機バインダーの分子量が5万未満の試料No.1は、積層寸法の寸法ばらつきが0.05%以上であった。
また、上記分子量が80万より大きい試料No.6,7は、焼結体内部にデラミネーションが発生し、かつ第2のセラミックグリーンシートの裏面にピンホールが発生し、かつ積層寸法の寸法ばらつきが0.05%以上であった。
これに対して、上記分子量が5万乃至80万の試料No.2,3,4,5は、内層デラミネーションが無く、第2のセラミックグリーンシートの裏面にピンホールも無く、寸法ばらつきも優れたものであった。
第1のセラミックグリーンシート用に、平均粒径1μmのアルミナを90質量部、焼結助剤としてシリカ、マグネシア、カルシアと、着色顔料として遷移金属の酸化物(三酸化クロム)とを合わせて10質量部の割合で調合したセラミック粉末100質量部に対して、メタクリル酸メチル樹脂を固形分で20質量部添加し、溶融成分としてヘキサデカノールを固形分で10質量部、トルエン及び酢酸エチルを溶媒としてボールミルにより40時間混合し、セラミックスラリーを調製した。
次に、このセラミックスラリーをPETフィルム上にリップコーター法により厚さ50μmで塗布し、乾燥させて第1のセラミックグリーンシートを形成した。
続いて、第1のセラミックグリーンシート用のセラミックスラリーと同様の割合で調合したセラミック粉末と有機バインダーとしてメタクリル酸メチル樹脂を、セラミック粉末100質量部に対して固形分で10質量部添加し、このメタクリル酸メチル樹脂の酸価を0.0,0.1,0.5,1.0,5.0,8.0KOHmg/gで各々調合した。また、可塑剤としてフタル酸ジブチルを1質量部添加し、トルエン及び酢酸エチルを溶媒としてボールミルにより混合して第2のセラミックグリーンシート用のセラミックスラリーを調製し、PETフィルム上にリップコーター法により厚さ100μmで塗布し、乾燥することにより第2のセラミックグリーンシートを作製した。
これらの第1のセラミックグリーンシートと第2のセラミックグリーンシートを40℃、0.5MPaで加圧し、一体化したセラミックグリーンシートを作製した。このセラミックグリーンシートの第2のセラミックグリーンシート上に、タングステンを主成分とする導体ペーストを用いスクリーン印刷法により10〜20μmの厚みで所定パターンに印刷し、導体層を形成した。
導体層を形成したセラミックグリーンシートをそれぞれ4層重ねあわせて厚み方向に0.5MPaの圧力および80℃の温度で加熱圧着してセラミックグリーンシート積層体を作製した。その際の剥離強度は、セラミックグリーンシートを剥離した際の剥離発生箇所を双眼顕微鏡にて観察し、剥離箇所が第2のグリーンシート内である場合を良品とした。また、第2のセラミックグリーンシートの裏面を観測し、ピンホールを調査した。
それから、得られたセラミックグリーンシート積層体中の有機バインダー等の有機成分や、有機成分が分解した後に残留するカーボンを除去するため、7.33×103Paの水蒸気を含んだ窒素雰囲気中に約1000℃の温度で1時間保持する熱処理を行った後、還元雰囲気中にて約1600℃の温度で1時間保持して評価用のセラミック焼結体を作製した。
この焼結体のクロスセクションの観察を行い、セラミック層間のデラミネーション及びブクやピンホールの発生の有無及び製品寸法を調査した。そして、第2のセラミックグリーンシートに含まれる有機バインダーの酸価別の評価結果を表6に示す。
表6おける内層デラミネーション有無の欄の「○」は、焼結体内部にデラミネーションが見られず優れていたことを示す。「△」は、積層体の形成に問題は無いものの、焼結体内部にデラミネーションが見られたことを示す。また、第2のセラミックグリーンシートのピンホール有無の欄の「○」は、第2のセラミックグリーンシートの裏面にピンホールがないことを示す。「△」は、第2のセラミックグリーンシートの裏面にピンホールが見られたことを示す。また、積層寸法の欄の「○」は、積層後の寸法を3次元測定機で測定し、寸法ばらつきが±0.05%よりも小さいものであったことを示す。「△」は、製品寸法に問題は無いものの、寸法ばらつきが±0.05%以上であったことを示す。
表6より、第2のセラミックグリーンシートに含まれる有機バインダーの酸価が0.1KOHmg/g未満の試料No.1は、焼結体内部にデラミネーションが発生し、かつ第2のセラミックグリーンシートの裏面にピンホールが発生した。
また、上記酸価が5.0KOHmg/gより大きい試料No.6は、焼結体内部にデラミネーションが発生し、かつ第2のセラミックグリーンシートの裏面にピンホールが発生した。
これに対して、上記酸価が0.1乃至5.0KOHmg/gの試料No.2〜5は内層デラミネーション及びピンホールが無かった。
第1のセラミックグリーンシート用に、アルミナ粉末と有機バインダーとして平均粒径1μmのアルミナを90質量部、焼結助剤としてシリカ、マグネシア、カルシアと、着色顔料として遷移金属の酸化物(三酸化クロム)とを合わせて10質量部の割合で調合したセラミック粉末100質量部に対して、メタクリル酸メチル樹脂を固形分で20質量部、メタクリル酸メチル樹脂の有機バインダーのガラス転移点を−25,−20,−10,−5,0,5,10℃で各々調合し、溶融成分としてヘキサデカノールを固形分で10質量部、トルエン及び酢酸エチルを溶媒としてボールミルにより40時間混合し、セラミックスラリーを調製した。
次に、このセラミックスラリーをPETフィルム上にリップコーター法により厚さ50μmで塗布し、乾燥させて第1のセラミックグリーンシートを形成した。
続いて、第1のセラミックグリーンシート用のセラミックスラリーと同様の割合で調合したセラミック粉末と有機バインダーとしてメタクリル酸メチル樹脂を、セラミック粉末100質量部に対して固形分で10質量部、可塑剤としてフタル酸ジブチルを1質量部添加し、トルエン及び酢酸エチルを溶媒としてボールミルにより混合して第2のセラミックグリーンシート用のセラミックスラリーを調製し、PETフィルム上にリップコーター法により厚さ100μmで塗布し、乾燥することにより第2のセラミックグリーンシートを作製した。
これらの第1のセラミックグリーンシートと第2のセラミックグリーンシートを40℃、0.5MPaで加圧し、一体化したセラミックグリーンシートを作製した。このセラミックグリーンシートの第2のセラミックグリーンシート上に、タングステンを主成分とする導体ペーストを用いスクリーン印刷法により10〜20μmの厚みで所定パターンに印刷し、導体層を形成した。
導体層を形成したセラミックグリーンシートをそれぞれ4層重ねあわせて、厚み方向に0.5MPaの圧力および80℃の温度で加熱圧着してセラミックグリーンシート積層体を作製した。その際の剥離強度は、セラミックグリーンシートを剥離した際の剥離発生箇所を双眼顕微鏡にて観察し、剥離箇所が第2のセラミックグリーンシート内である場合を良品とした。
それから、得られたセラミックグリーンシート積層体中の有機バインダー等の有機成分や、有機成分が分解した後に残留するカーボンを除去するため、7.33×103Paの水蒸気を含んだ窒素雰囲気中に約1000℃の温度で1時間保持する熱処理を行った後、還元雰囲気中にて約1600℃の温度で1時間保持して評価用のセラミック焼結体を作製した。
この焼結体のクロスセクションの観察を行い、セラミック層間のデラミネーションの有無及び製品寸法を調査した。そして、第1のセラミックグリーンシートの有機バインダーのガラス転移点別の評価結果を表7に示す。
表7で、第1のセラミックグリーンシートの保形性の欄の「○」は、第1のセラミックグリーンシートを成形した後、それを5枚重ねて常温で24時間放置しても、互いの第1のセラミックグリーンシートがくっつくこと無く保形性を維持していたことを示す。「△」は、第1のセラミックグリーンシートの成形はできたが、成形後に第1のセラミックグリーンシートを5枚重ねて常温で24時間放置すると、互いの第1のセラミックグリーンシートがくっついてしまい、保形性を維持できなかったことを示す。また、剥離強度の欄の「○」は、セラミックグリーンシート積層体を剥離した際に、剥離箇所が第2のセラミックグリーンシート内であったことを示す。「△」は、第2のセラミックグリーンシート外であったことを示す。また、積層寸法の欄の「○」は、積層後の寸法を3次元測定機で測定し、寸法ばらつきが±0.05%よりも小さかったことを示す。「△」は、製品寸法に問題は無いものの、寸法ばらつきが±0.05%以上であったことを示す。また、内層デラミネーション有無の欄の「○」は、焼結体内部にデラミネーションが見られず優れていたことを示す。「△」は、積層体の形成に問題は無いものの、焼結体内部にデラミネーションが見られたことを示す。
表7より、第1のセラミックグリーンシートに含まれる有機バインダーのガラス転移点が−20℃よりも低い試料No.1は、第1のセラミックグリーンシートの保形性が維持できず、かつ積層寸法の寸法ばらつきが0.05%以上であった。
また、上記ガラス転移点が0℃より高い試料No.6,7は、剥離箇所が第2のセラミックグリーンシート外であり、かつ積層寸法の寸法ばらつきが0.05%以上であり、かつ焼結体内部にデラミネーションが発生していた。
これに対して、上記ガラス転移点が−20乃至0℃の試料No.2〜5は、第1のセラミックグリーンシートの保形性が得られ、かつ剥離箇所が第2のセラミックグリーンシート内で、かつ積層寸法の寸法ばらつきが±0.05%よりも小さく、焼結体内部のデラミネーションが無かった。
第1のセラミックグリーンシート用に、アルミナ粉末と有機バインダーとして平均粒径1μmのアルミナを90質量部、焼結助剤としてシリカ、マグネシア、カルシアと、着色顔料として遷移金属の酸化物(三酸化クロム)とを合わせて10質量部の割合で調合したセラミック粉末100質量部に対して、メタクリル酸メチル樹脂を固形分で20質量部、メタクリル酸メチル樹脂の有機バインダーの水酸基価を0,0.1,1,3,4,5,5.5,6KOHmg/gで各々調合し、溶融成分としてヘキサデカノールを固形分で10質量部、トルエン及び酢酸エチルを溶媒としてボールミルにより40時間混合し、セラミックスラリーを調製した。
次に、このセラミックスラリーをPETフィルム上にリップコーター法により厚さ50μmで塗布し、乾燥させて第1のセラミックグリーンシートを形成した。
続いて、第1のセラミックグリーンシート用のセラミックスラリーと同様の割合で調合したセラミック粉末と有機バインダーとしてメタクリル酸メチル樹脂を、セラミック粉末100質量部に対して固形分で10質量部、可塑剤としてフタル酸ジブチルを1質量部添加し、トルエン及び酢酸エチルを溶媒としてボールミルにより混合して第2のセラミックグリーンシート用のセラミックスラリーを調製し、PETフィルム上にリップコーター法により厚さ100μmで塗布し、乾燥することにより第2のセラミックグリーンシートを作製した。
これらの第1のセラミックグリーンシートと第2のセラミックグリーンシートを40℃、0.5MPaで加圧し、一体化したセラミックグリーンシートを作製した。
このセラミックグリーンシートの第2のセラミックグリーンシート上に、タングステンを主成分とする導体ペーストを用いスクリーン印刷法により10〜20μmの厚みで所定パターンに印刷し、導体層を形成した。
導体層を形成したセラミックグリーンシートをそれぞれ4層重ねあわせて、厚み方向に0.5MPaの圧力および80℃の温度で加熱圧着してセラミックグリーンシート積層体を作製した。その際の剥離強度は、セラミックグリーンシートを剥離した際の剥離発生箇所を双眼顕微鏡にて観察し、剥離箇所が第2のセラミックグリーンシート内である場合を良品とした。
それから、得られたセラミックグリーンシート積層体中の有機バインダー等の有機成分や、有機成分が分解した後に残留するカーボンを除去するため、7.33×103Paの水蒸気を含んだ窒素雰囲気中に約1000℃の温度で1時間保持する熱処理を行った後、還元雰囲気中にて約1600℃の温度で1時間保持して評価用のセラミック焼結体を作製した。
この焼結体のクロスセクションの観察を行い、セラミック層間のデラミネーションの有無及び製品寸法を調査した。そして、第1のセラミックグリーンシートの有機バインダーの水酸基価別の評価結果を表8に示す。
表8における剥離強度の欄の「○」は、セラミックグリーンシート積層体を剥離した際に、剥離箇所が第2のセラミックグリーンシート内であったことを示す。「△」は、第2のセラミックグリーンシート外であったことを示す。また、積層寸法の欄の「○」は、積層後の寸法を3次元測定機で測定し、寸法ばらつきが±0.05%よりも小さかったことを示す。「△」は、製品寸法に問題は無いものの、寸法ばらつきが±0.05%以上であったことを示す。また、層間デラミネーション有無の欄の「○」は、焼結体内部にデラミネーションが見られず優れていたことを示す。「△」は、積層体の形成に問題は無いものの、焼結体内部にデラミネーションが見られたことを示す。
表8より、第1のセラミックグリーンシートに含まれる有機バインダーの水酸基価が0.1KOHmg/g未満の試料No.1は、剥離箇所は第2のセラミックグリーンシート外であり、かつ積層寸法の寸法ばらつきが±0.05%以上であり、かつ焼結体内部にデラミネーションが発生していた。
また、上記水酸基価が5KOHmg/gより大きい試料No.7,8は、剥離箇所は第2のセラミックグリーンシート外であり、かつ積層寸法の寸法ばらつきが±0.05%以上であり、かつ焼結体内部にデラミネーションが発生していた。
これに対して、上記水酸基価が0.1乃至5KOHmg/gの試料No.2〜6は、剥離箇所は第2のセラミックグリーンシート内で、かつ積層寸法の寸法ばらつきが±0.05%よりも小さく、かつ焼結体内部のデラミネーションが無かった。
第2のセラミックグリーンシート用に、平均粒径1μmのアルミナを90質量部、焼結助剤としてシリカ、マグネシア、カルシアと、着色顔料として遷移金属の酸化物(三酸化クロム)とを合わせて10質量部の割合で調合したセラミック粉末100質量部に対して、メタクリル酸メチル樹脂を固形分で10質量部添加し、このメタクリル酸メチル樹脂のガラス転移点を−22,−20,0,10,20,25℃で各々調合した。また、可塑剤としてフタル酸ジブチルを1質量部添加し、トルエン及び酢酸エチルを溶媒としてボールミルにより40時間混合し、スラリーを調製した。
このスラリーからダイコーターシート成形機を用いて、成形速度2m/分、成形シート幅が250mmの条件にて第2のセラミックグリーンシートを厚み100μmで塗布し、乾燥することにより第1のセラミックグリーンシートを作製した。
この第2のセラミックグリーンシートを用い、常温で取り扱う際の第2のセラミックグリーンシート同士の付着や、第2のセラミックグリーンシートの割れ欠けの評価を行った。そして、第2のセラミックグリーンシートに含まれる有機バインダーのガラス転移点別の評価結果を表9に示す
表9におけるシート付着の欄の「○」は、第2のセラミックグリーンシートを常温で取り扱う際に第2のセラミックグリーンシート同士が付着せずに取り扱いが容易であったことを示す。「△」は、常温で重ねるだけで第2のセラミックグリーンシート同士が付着し取り扱いが難しいものであったことを示す。シート割れ欠けの欄の「○」は、常温で取り扱う際に第2のセラミックグリーンシートに割れや欠けが起こらずに取り扱いが容易であったことを示す。「△」は、常温で取り扱う際に第2のセラミックグリーンシートに割れや欠けが起こり取り扱いが難しいものであったことを示す。
表9より、第2のセラミックグリーンシートに含まれる有機バインダーのガラス転移点が−20℃未満の試料No.1はシート付着が発生した。
また、上記ガラス転移点が10℃より大きい試料No.5,6は、シート割れや欠けが発生した。
これに対して、上記ガラス転移点が−20乃至10℃の試料No.2〜4は、内層デラミネーションが無く、寸法ばらつき優れたものであった。
第1のセラミックグリーンシート用に、平均粒径1μmのアルミナを90質量部、焼結助剤としてシリカ、マグネシア、カルシアと、着色顔料として遷移金属の酸化物(三酸化クロム)とを合わせて10質量部の割合で調合したセラミック粉末100質量部に対して、メタクリル酸メチル樹脂を固形分で20質量部添加し、溶融成分としてヘキサデカノールを固形分で10質量部、トルエン及び酢酸エチルを溶媒としてボールミルにより40時間混合し、セラミックスラリーを調製した。
次に、このセラミックスラリーをPETフィルム上にリップコーター法により厚さ50μmで塗布し、乾燥させて第1のセラミックグリーンシートを形成した。
続いて、第1のセラミックグリーンシート用のセラミックスラリーと同様の割合で調合したセラミック粉末と有機バインダーとしてメタクリル酸メチル樹脂を、セラミック粉末100質量部に対して固形分で10質量部添加し、このメタクリル酸メチル樹脂の水酸基価を0,3,5,10,20,40,60,80,100,104,110KOHmg/gで各々調合した。また、可塑剤としてフタル酸ジブチルを1質量部添加し、トルエン及び酢酸エチルを溶媒としてボールミルにより混合して第2のセラミックグリーンシート用のセラミックスラリーを調製し、PETフィルム上にリップコーター法により厚さ100μmで塗布し、乾燥することにより第2のセラミックグリーンシートを作製した。
これらの第1のセラミックグリーンシートと第2のセラミックグリーンシートを40℃、0.5MPaで加圧し、一体化したセラミックグリーンシートを作製した。このセラミックグリーンシートの第2のセラミックグリーンシート上に、タングステンを主成分とする導体ペーストを用いスクリーン印刷法により10〜20μmの厚みで所定パターンに印刷し、導体層を形成した。
導体層を形成したセラミックグリーンシートをそれぞれ4層重ねあわせて厚み方向に0.5MPaの圧力および80℃の温度で加熱圧着してセラミックグリーンシート積層体を作製した。
それから、得られたセラミックグリーンシート積層体中の有機バインダー等の有機成分や、有機成分が分解した後に残留するカーボンを除去するため、7.33×103Paの水蒸気を含んだ窒素雰囲気中に約1000℃の温度で1時間保持する熱処理を行った後、還元雰囲気中にて約1600℃の温度で1時間保持して評価用のセラミック焼結体を作製した。
この焼結体のクロスセクションの観察を行い、セラミック層間のデラミネーション及びブクやピンホールの発生の有無及び製品寸法を調査した。そして、表2のセラミックグリーンシートに含まれる有機バインダーの水酸基価別の評価の結果を表10に示す。
表10における層間デラミネーション有無の欄の「○」は、焼結体内部にデラミネーションが見られず優れていたことを示す。「△」は、積層体の形成に問題は無いものの、焼結体内部にデラミネーションが見られたことを示す。また、積層寸法の欄の「○」は、積層後の寸法を3次元測定機で測定し、寸法ばらつきが±0.05%以下であったことを示す。「△」は、製品寸法に問題は無いものの、寸法ばらつきが±0.05%以上であったことを示す。
表10より、第2のセラミックグリーンシート層となるセラミックスラリーに含まれる有機バインダーの水酸基価が5KOHmg/g未満の試料No.1,2は、焼結体内部にデラミネーションが発生し、かつ積層寸法の寸法ばらつきが0.05%以上であった。
また、上記水酸基価が100KOHmg/gより大きい試料No.10,11は、焼結体内部にデラミネーションが発生し、かつ積層寸法の寸法ばらつきが0.05%以上であった。
これに対して、上記水酸基価が5乃至100KOHmg/gの試料No.3〜9は、内層デラミネーションが無く、かつ寸法ばらつき優れたものであった。
なお、本発明は上述の実施の形態の例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲であれば、種々の変更は可能である。たとえば、上述の実施の形態の例では、無機粉末と有機バインダーと溶媒を添加混合してセラミックスラリーを作製したが、セラミックグリーンシートに柔軟性を付与するために可塑剤を添加してもよく、また無機粉末の分散性を高めるために分散剤を添加してもよい。
(a)〜(d)は、本発明の電子部品の製造方法の実施の形態の一例を示す工程毎の断面図である。
符号の説明
1・・・支持体
2・・・第1のセラミックグリーンシート
3・・・第2のセラミックグリーンシート
4・・・セラミックグリーンシート
5・・・導体層
6・・・セラミックグリーンシート積層体