JP2005273781A - アウターロータ型モータ - Google Patents
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Abstract
【課題】 軸受負荷容量及び減衰効果が大きく且つ傾動させる外乱に対して制動効果の高い軸受構造を有するアウターロータ型モータを提供する。
【解決手段】 アウターロータ型モータ1において、ロータハブ5の外周下面11をモータ1のベース板2と対面する円盤状に形成すると共に、その円盤状下面11に対向するベース板2にスラスト軸受12を固着したので、軸受摺動面積を最大限にすることができ、その軸受摺動面積に比例する軸受負荷容量と減衰効果を高めることができると共に傾動させる外乱に対して軸受反力のモーメントを大きくすることができるため、外乱に対する制動力を大きくすることができる。
【選択図】 図1
【解決手段】 アウターロータ型モータ1において、ロータハブ5の外周下面11をモータ1のベース板2と対面する円盤状に形成すると共に、その円盤状下面11に対向するベース板2にスラスト軸受12を固着したので、軸受摺動面積を最大限にすることができ、その軸受摺動面積に比例する軸受負荷容量と減衰効果を高めることができると共に傾動させる外乱に対して軸受反力のモーメントを大きくすることができるため、外乱に対する制動力を大きくすることができる。
【選択図】 図1
Description
本発明は、軸と、該軸を中心に回転し且つその内周にロータマグネットが固着されるロータハブと、該ロータハブの内周側に配置され且つ前記ロータマグネットとの間の電磁作用によって回転力を発生させるステータコイルを設けたステータと、該ステータを一体的に立設させたベース板と、からなるアウターロータ型モータに関するものである。
近年、ハードディスク装置又はレーザービームプリンターのような事務機器においては、これらの機器の高性能化と高機能化が追求されている。前者においては、記録容量の大容量化と情報アクセス時間の短縮とが、後者においては印字品質の向上と印字速度の高速化が要求されている。このために、おのおのハードディスク駆動モータとポリゴンミラースキャナーモータの高速回転かつ高精度回転が要求されている。したがって、これらのモータを高速回転かつ高精度回転する軸受の高性能化が課題となる。
まず、ハードディスク装置(以下、「HDD装置」という。)においては、高速回転に対しては、ロータとディスクからなる回転体のアンバランス量やディスクの回転に伴う気体の乱れなどにより、半径方向の回転振動やディスク面の傾きが生じる。前述のような動作環境下において、静止している磁気ヘッドは回転ディスク面において1ミクロン以下の隙間で近接して情報を読み書きしているので、できるだけ外乱による振動を小さくする必要がある。そして、そのような要求に対する近年の技術は、モータ内において使用されている軸受において、転がり軸受の代わりに油を潤滑剤に用いた流体軸受を適用することである。これにより、流体軸受は、優れたダンピング特性により転がり軸受に対して耐衝撃性を向上させ、振動を低減することができる。このような流体動圧軸受を用いた例は、たとえば、特開平8−321131号公報(以下、「特許文献1」という。)に示されている。
上記した特許文献1に開示される技術は、軸と、磁気ディスクが載架されると共に前記軸を中心に流体動圧軸受を介して回転し且つその内周にロータマグネットが固着されるロータハブと、該ロータハブの内周側に配置され且つ前記ロータマグネットとの間の電磁作用によって回転力を発生させるステータコイルを設けたステータと、からなる流体動圧軸受モータを回転体の駆動源に採用したHDD装置である。一般に、このようなモータは、回転子であるロータハブが固定子であるステータに対し外側にあるのでアウターロータ型モータ呼ばれている。
ところで、上記したHDD装置の流体動圧軸受モータに用いられている動圧軸受は、軸と、軸が回転自在に挿入されるジャーナル軸受と、軸に固定された上部スラスト軸受と、これらの軸受構成部材によって形成された微小隙間に充填された潤滑剤(潤滑用油)とから構成されている。そして、軸とジャーナル軸受の内周面のいずれか一方には、ヘリングボーン型のラジアル動圧発生溝が形成されている。また、この流体動圧軸受モータには、モータの設置方向にもよるが自重とモータのロータマグネットとステータコイルとの間に軸方向の荷重が作用し、またディスクの傾きや振動に伴う流体力が外乱として軸方向及び半径方向の荷重として作用する。この軸方向の荷重を支持する軸受として、上部スラスト軸受が設けられており、この上部スラスト軸受の下面と軸受の上面のいずれか一方には軸受負荷容量を高めるためスパイラル溝のスラスト動圧発生溝が形成されている。また、ポリゴンミラースキャナーモータにおいては、同様の油潤滑の流体軸受を用いている例が多い。そして、ジャーナル軸受と上部スラスト軸受の微小隙間には、油が流体潤滑剤として使用されている。
しかして、流体潤滑剤に油を用いた流体潤滑軸受では、さらなる高速回転化の要求に対して、潤滑油の漏れ、キャビテーションの発生に伴なう不規則振動、軸受損失(消費動力)などの課題がある。また、ポリゴンミラー装置においては、多角形のミラーを回転させるため回転数×ミラーの面数の加振振動数を持つ風損が作用するために、軸受の剛性が大きいことが要求される。この場合は、HDD装置の場合と同じように、高速回転化に対して、潤滑油の漏れや蒸発により油がミラー面を曇らし印字品質に影響、潤滑油不足に伴う潤滑上の問題及び軸受損失が大きく温度が上昇し潤滑剤の劣化をもたらすといった問題が生じる。また、キャビテーションが発生すると、流体摩擦(潤滑状態)が変動し回転速度が微小に変動(ジッター)するため印字のズレが生じる可能性がある。
上記したように、HDD装置やポリゴンミラー装置のモータの流体潤滑軸受として流体潤滑剤に油を用いた場合には、潤滑油によってそれぞれの装置にとって極めて大きな問題があるため、最近では、流体潤滑軸受として空気軸受(気体軸受)にするものも提案されつつある。例えば、ポリゴンミラースキャナーモータに空気軸受を利用したものとして特開2002−303815号公報(以下、「特許文献2」という。)が挙げられる。この特許文献2に記載される技術は、ヘリングボーン型やスパイラル溝付軸受を用いた空気潤滑軸受をジャーナル軸受として用い、スラスト荷重に対してはジャーナル軸受で発生した圧力で支持する方法や、磁気軸受を適用したものである。
特開平8−321131号公報
特開2002−303815公報
しかし、空気潤滑軸受をジャーナル軸受及びスラスト軸受に利用しても、特に、スラスト軸受が軸中心に近い位置、すなわち軸受摺動面積が小さい場合、軸受負荷容量及び減衰効果が低く、ディスクやポリゴンミラーを傾動させる外乱に対する制動力が弱いという欠点がある。本発明は、上記した問題点に鑑みなされたもので、その目的とするところは、軸受負荷容量及び減衰効果が大きく且つ傾動させる外乱に対して制動効果の高い軸受構造を有するアウターロータ型モータを提供することにある。
上記した目的を達成するために、請求項1に係る発明が採用した手段を、図面を参照して説明すると、図1に示すように、軸4と、該軸4を中心に回転し且つその内周にロータマグネット10が固着されるロータハブ5と、該ロータハブ5の内周側に配置され且つ前記ロータマグネット10との間の電磁作用によって回転力を発生させるステータコイル9を設けたステータ2aと、該ステータ2aを一体的に立設させたベース板2と、からなるアウターロータ型モータ1において、前記ロータハブ5の外周下面11をモータ1のベース板2と対面する円盤状に形成すると共に、その円盤状下面11又は該下面11に対応するベース板2のいずれか一方にスラスト軸受12を固着したことを特徴とするアウターロータ型モータ1とした。
また、請求項2に係る発明が採用した手段を、図面を参照して説明すると、図1、図2に示すように、請求項1記載のアウターロータ型モータ1において、前記スラスト軸受12(又はロータハブ5の円盤状下面11)は、回転に対して流体を前記ロータハブ5の外部から内部に取り入れて加圧するインフロー型のスパイラル溝16付軸受とした。
また、請求項3に係る発明が採用した手段を、図面を参照して説明すると、図1に示すように、請求項1又は請求項2記載のアウターロータ型モータ1において、前記スラスト軸受12は、粘弾性体13(又は弾性体)を介して前記ベース板2(又は円盤状下面11)に固着されている。
また、請求項4に係る発明が採用した手段を、図面を参照して説明すると、図1に示すように、請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のアウターロータ型モータ1において、前記スラスト軸受12(又はロータハブ5の円盤状下面11)の摺動表面に潤滑機能剤をコーティングした。
また、請求項5に係る発明が採用した手段を、図面を参照して説明すると、図1及び図7に示すように、請求項1乃至請求項4のいずれかに記載のアウターロータ型モータ1において、前記アウターロータ型モータ1を内包するケーシング20にヘリウム又はヘリウム主体の混合気体を封入密閉して、磁気ディスクドライブモータ又はポリゴンミラースキャナーモータとして使用した。
請求項1に係る発明においては、ロータハブ5の外周下面11をモータ1のベース板2と対面する円盤状に形成すると共に、その円盤状下面11又は該下面11に対向するベース板2のいずれか一方にスラスト軸受12を固着したので、軸受摺動面積を最大限にすることができ、その軸受摺動面積に比例する軸受負荷容量と減衰効果を高めることができると共に傾動させる外乱に対して軸受反力のモーメントを大きくすることができるため、外乱に対する制動力を大きくすることができる。
また、請求項2に係る発明においては、スラスト軸受12を回転に対して流体をロータハブ5の外部から内部に取り入れて加圧するインフロー型のスパイラル溝16を設けたので、ロータハブ5の内部空間においても圧力が発生するため、軸受負荷容量を高めることができる。
また、請求項3に係る発明においては、スラスト軸受12がゴム材料や高分子ゲルなどの粘弾性体13(又は弾性体)を介してベース板2(又は円盤状下面11)に固着されているので、摺動面に生じる流体潤滑圧力により粘弾性体13が変形することによって、外乱時に生じるロータハブ5とスラスト軸受12の接触を防ぐことができる。
また、請求項4に係る発明においては、スラスト軸受12(又はロータハブ5の円盤状下面11)の摺動表面にDLC、PTFE、MoS2等の潤滑機能剤をコーティングしたので、起動・停止時及び低回転時の気体の粘度が小さいことにより十分な動圧が発生しない場合において生ずる、接触による摺動面の摩擦係数を小さくすることができる。
また、請求項5に係る発明においては、アウターロータ型モータ1を内包するケーシング20にヘリウム又はヘリウム主体の混合気体を封入密閉して、磁気ディスクドライブモータ又はポリゴンミラースキャナーモータとして使用したので、空気よりも密度が小さく且つ流体潤滑の基本となる粘度が空気と同等のヘリウム(He)又はヘリウム(He)主体の混合気体によって磁気ディスクドライブモータ又はポリゴンミラースキャナーモータによって回転されるディスクやポリゴンミラーの外径位置での外乱となる流体力を低減することができる。
以下、図面を参照して本発明の好適な実施形態について説明する。まず、図1乃至図4を参照して実施形態に係るアウターロータ型モータ1を磁気ディスクドライブモータとして使用した場合について説明する。図1は、実施形態に係るアウターロータ型モータ1の断面図であり、図2乃至図4は、スラスト軸受の摺動表面に形成される溝形状を示す平面図である。
図1において、実施形態に係るアウターロータ型モータ1(以下、単に「モータ1」という場合もある。)は、軸4と、該軸4を中心に回転し且つその内周にロータマグネット10が固着されるロータハブ5と、該ロータハブ5の内周側に配置され且つロータマグネット10との間の電磁作用によって回転力を発生させるステータコイル9を設けたステータ2aと、該ステータ2aを一体的に立設させたベース板2と、からなる。
より具体的に説明すると、モータ1のベース板2は、平板状に形成され、該ベース板2に円筒形状のステータ2aが一体的に立設され、そのステータ2aの内周にジャーナル軸受3が固着されている。このジャーナル軸受3は、軸4を回転自在に軸支するものであり、本実施形態においては、流体(気体)動圧軸受として構成されており、軸4の回転時にジャーナル軸受3と軸4との間に気体による動圧が発生して微小隙間14(例えば、数μm)が形成されるようになっている。また、ステータ2aの外側には、ステータコイル9が固定されている。なお、図示の実施形態では、軸4が回転する方式のものであるが、軸4をベース板2に固定し且つ前記ジャーナル軸受3を次に説明するロータハブ5に固着することにより、ロータハブ5及びジャーナル軸受3が回転するように構成したアウターロータ型モータであっても良い。
ここで、ジャーナル軸受3の一例について図5及び図6を参照して説明する。図5は、実施形態に係るフォイル式動圧ジャーナル軸受3の断面図であり、図6は、図5の四角で囲った部分Aの拡大図である。
図5において、フォイル式動圧ジャーナル軸受3は、軸4の外周を空隙を介して囲む軸受保持部材30と、空隙に配置されて軸4と対向する軸受摺動面を構成するフォイル31と、軸受保持部材30とフォイル31の空隙に充填された粘弾性体32より構成されている。フォイル31は、2個の頂点部31aと2個の膨出状円弧面31bとを有した閉ループとして構成されている。即ち、フォイル31は、2枚の平坦な方形状薄板を重ね合わせてその両端辺をスポット、シーム、レーザ等の溶接や接着剤等の方法で接合され、図示しない専用の組立用治具によって2個の頂点部31a(接合部が頂点部を構成する)と2個の膨出状円弧面31bとを有する閉ループとして構成される。そして、この場合、軸4の中心から見て最も遠い位置のフォイル31の頂点部31aと軸受保持部材30との間には、間隙C1(数μm)が存し、その間隙C1にも粘弾性体32が充填されている。つまり、フォイル31が軸受保持部材30に拘束された状態となっていない。なお、フォイル31は、リン青銅、真鍮、アルミニウム等の金属薄板が使用され、その厚さは10〜100μmのものが使用される。また、フォイル31を製造する場合に、2枚の薄板を使用するのではなく、1枚の薄板を折り曲げて、その折り曲げ部分と端辺とをそれぞれ接合することにより、2個の頂点部31aと2個の膨出状円弧面31bとを有した閉ループとして構成しても良い。ここで、粘弾性体又は弾性体において、粘弾性体としては、シリコーン系やアクリル系等のゴム材料や高分子ゲルが、弾性体としては、ばねや波状フォイルが使用される。
また、フォイル式動圧ジャーナル軸受3が軸4を支持したときに、軸4とフォイル31の間には所定の微小隙間14(一般的に、数μm)が設けられており、その隙間14の分布は、図6に示すように、頂点部31aの近傍部分の隙間14aが最も大きく、2つの頂点のほぼ中間部分での隙間14bで最小となっている。なお、静止時においては、中間部分での隙間14bの位置で軸4とフォイル31とが接触している。また、微小隙間14は、最も小さい部分での隙間14bで軸4の径の約3/1000以下に設計するのが一般である。また、軸4の回転振動を小さくするには、微小隙間14を小さく設定するとよい。フォイル式動圧ジャーナル軸受3においては、静止時に微小隙間14がほとんどない状態でもフォイル31とそれを支持する粘弾性体32の弾性効果により、ある回転数以上で流体潤滑膜を形成し軸4を浮上させることができる。なお、図5、図6においてフォイル31の厚さ及び微小隙間14は、判りやすいように誇張して図示してある。実際の微小隙間14は、大きくても10μm以下である。
しかして、上記のように構成されるフォイル式動圧ジャーナル軸受3の作用について説明すると、軸4が回転すると、頂点部31a付近の隙間14aの近傍より流体が引き込まれ、隙間形状が末狭まりになっている隙間14bに向かって流体圧力が発生し、軸4に作用する回転機器の荷重を支持する。回転に伴う不釣合いなどの振動荷重は、隙間14で発生した流体潤滑膜と粘弾性体32の復元力と減衰力とにより支持、減衰され、振動の小さな安定した回転を実現することができる。また、フォイル31の頂点部31aと軸受保持部材30の内周面とが直接接触することがないように間隙C1が形成されているので、フォイル31の頂点部31a及び膨出状円弧面31bを含む全外周面が弾性効果のある粘弾性体32とによって支持されていることになり、回転振動に対する復元力や減衰力特性を向上させて軸受性能をより高めることができる。
また、本実施形態における特徴は、フォイル31が複数個の頂点をなす頂点部31aを有する閉ループより構成されていることである。頂点部31aは板厚が厚いため強度的には強く、動荷重が軸受摺動面である膨出状円弧面31bに作用時、その方向の軸受摺動面が変位しても、フォイル31は膨出状円弧面31bのほぼ中央と頂点部31aの中間位置である円弧面31cの近傍で曲がり張りの効果により変形する。この時、他の膨出状円弧面31bにほとんど影響を及ぼすことはないため、フォイル式動圧ジャーナル軸受3の剛性を確保できる。そして、上記した特徴のため、本実施形態においては、軸4とフォイル31との微小隙間14の形状が流体圧力が発生しやすいような形状になっている。
更に、軸4は、起動時又は低回転時にフォイル31の表面に固体接触するために、フォイル31と軸4との間の摩擦を低減させる必要がある。そのため、フォイル31の内周面に潤滑特性の優れたPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)等の固体潤滑剤のコーティングを施すことが望ましい。その他にも固体潤滑剤として、DLC(ダイヤモンドライクカーボン)やMoS2(二硫化モリブデン)などの優れた潤滑特性をもつコーティング剤にて代用できる。
ところで、上記した軸4の上端には、ロータハブ5が固着されている。このロータハブ5は、断面ほぼコ字状の円筒形に形成され、その円筒周壁に複数のディスク8を挟んで取り付けるスペーサ6がクランプ7によって固定されている。また、ロータハブ5の内周側には、前記ステータコイル9との磁気作用によってロータハブ5に回転力を付与するためのロータマグネット10(永久磁石)が固着されている。更に、ロータハブ5の外周下面は、前記ベース板2と対応する円盤状に形成された円盤状下面11となっている。そして、その円盤状下面11に対向するベース板2上には、スラスト軸受12が配置されている。
スラスト軸受12は、本実施形態の場合、粘弾性体13(又は弾性体)を介してベース板2に固着されており、その摺動表面の形状は、図2に示すような、回転に対して流体(気体)をロータハブ5の外部から内部に取り入れて加圧するインフロー型のスパイラル溝付軸受16としている。このように、スラスト軸受12をスパイラル溝付軸受16とすることにより、ロータハブ5の内部空間においても圧力が発生するため、軸受負荷容量を高めることができるものである。もちろん、スラスト軸受12の摺動表面の形状は、スパイラル溝形状のものに限られるわけではなく、図3に示すステップ溝形状のステップ溝付軸受17や、図4に示すヘリングボーン溝形状のヘリングボーン溝付軸受18としても動圧を発生させることができる。なお、図2においてスパイラル溝は外周から内周に向かって貫通しているが、途中で止まっていてもよい。更に、スラスト軸受12の摺動表面には、DLC(ダイヤモンドライクカーボン)、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、MoS2(二硫化モリブデン)等の潤滑機能剤がコーティングされている。このように潤滑機能剤をコーティングすることにより、起動・停止時及び低回転時の気体の粘度が小さいことにより十分な動圧が発生しない場合において生ずる、ロータハブ5とベース板2との接触による摺動面の摩擦係数を小さくすることができるものである。
また、スラスト軸受12を支持する粘弾性体13(又は弾性体)は、粘弾性体としては、シリコーン系やアクリル系等のゴム材料や高分子ゲル又は弾性体としては、ばねや波状フォイルによって構成されており、摺動面に生じる流体潤滑圧力により粘弾性体13(又は弾性体)が変形することによって、外乱時に生じるロータハブ5とスラスト軸受12の接触を防ぐことができる。なお、図示の実施形態においては、スラスト軸受12をベース板2に固着したものを示したが、円盤状下面11に粘弾性体13(又は弾性体)を介してスラスト軸受12を固着しても良い。
なお、図示の実施形態においては、図1に示すように、ステータ2aとジャーナル軸受3の上端は、同一平面となるように形成され、その同一平面とロータハブ5の上辺裏面との間にも微小隙間15が形成されるようになっている。この微小隙間15にもスラスト軸受を設けても良い。例えば、上記同一平面上にスパイラル溝付軸受を形成しても良い。
しかして、上記のように構成されるアウターロータ型モータ1の作用について説明すると、ステータコイル9に通電されると、ステータコイル9とロータマグネット10との電磁作用により、ロータハブ5が軸4を中心として回転する。この回転に伴って軸4とジャーナル軸受3との間に流体圧力が発生しロータハブ5の荷重を支持する。回転に伴う不釣合いなどの振動荷重は、微小隙間14で発生した流体潤滑膜の復元力と減衰力とにより支持、減衰され、振動の小さな安定した回転を実現することができる。また、回転にともなってロータハブ5の円盤状下面に対応する位置に設けられるスパイラル溝付軸受16(スラスト軸受12)によって流体(気体)がロータハブ5の外部から内部に取り入れて加圧するので、スラスト軸受12と円盤状下面との間に微小隙間19が形成され、これによっても軸受負荷容量を高めた状態で振動の小さな安定した回転を実現することができる。そして、スラスト軸受12がロータハブ5の最外周に形成されているため、軸受摺動面積を最大限にすることができ、その軸受摺動面積に比例する軸受負荷容量と減衰効果を高めることができると共に傾動させる外乱に対して軸受反力のモーメントを大きくすることができるため、外乱に対する制動力を大きくすることができる。
また、上記のように構成され且つ作用を及ぼすアウターロータ型モータ1を磁気ディスクドライブモータとして利用してケーシング20に封入した場合には、図7に示すように、ケーシング20内に磁気ヘッド22をキャリッジ21を介して移動させる磁気ヘッド移動機構23が設けられるが、このケーシング20内にヘリウム(He)又はヘリウム(He)を主体とした混合気体を封入して使用することもできる。これは、ディスク8の回転による外乱となる流体力を低減するためである。一般に、かかる流体力は、流体の密度をρ、ディスクの周速をUとすると、ρU2に比例する。従来のこのような機器においては、ディスクの周辺は空気に接触しており、回転による速度は外径位置でUは10m/s以上となるため流体力は無視できなくなる。そこで、流体力を小さくする手段として、空気よりも密度が小さく、流体潤滑の基本となる粘度が空気と同等の流体をもちればよい。このような特性をもつ流体として、上記したヘリウム(He)又はヘリウム(He)を主体とした混合気体が挙げられる。なお、ヘリウム(He)又はヘリウム(He)を主体とした混合気体が封入されるケーシング内に設けられる装置としては、ハードディスク装置に限らず、ポリゴンミラースキャナーモータ装置でも良い。
なお、上記した実施形態においては、ジャーナル軸受3とスラスト軸受12について共に気体動圧軸受として説明したが、少なくとも気体動圧軸受としてスラスト軸受だけに使用し、ジャーナル軸受には、気体潤滑軸受でも油潤滑軸受のどちらを用いてもよい。また、上記した実施形態においては、スラスト軸受12の表面側にスパイラル溝を設けたり、あるいは潤滑機能剤をコーティングしたものを示したが、スラスト軸受12に対向するロータハブの円盤状下面にスパイラル溝を設けたり、あるいは潤滑機能剤をコーティングしたものでも良い。
1 アウターロータ型モータ
2 ベース板
2a ステータ
3 ジャーナル軸受
4 軸
5 ロータハブ
8 ディスク
9 ステータコイル
10 ロータマグネット
11 円盤状下面
12 スラスト軸受
13 粘弾性体(又は弾性体)
14 微小隙間
15 微小隙間
16 スパイラル溝付軸受
17 ステップ溝付軸受
18 ヘリングボーン溝付軸受
19 微小隙間
20 ケーシング
2 ベース板
2a ステータ
3 ジャーナル軸受
4 軸
5 ロータハブ
8 ディスク
9 ステータコイル
10 ロータマグネット
11 円盤状下面
12 スラスト軸受
13 粘弾性体(又は弾性体)
14 微小隙間
15 微小隙間
16 スパイラル溝付軸受
17 ステップ溝付軸受
18 ヘリングボーン溝付軸受
19 微小隙間
20 ケーシング
Claims (5)
- 軸と、該軸を中心に回転し且つその内周にロータマグネットが固着されるロータハブと、該ロータハブの内周側に配置され且つ前記ロータマグネットとの間の電磁作用によって回転力を発生させるステータコイルを設けたステータと、該ステータを一体的に立設させたベース板と、からなるアウターロータ型モータにおいて、
前記ロータハブの外周下面をモータのベース板と対面する円盤状に形成すると共に、その円盤状下面又は該下面に対向するベース板のいずれか一方にスラスト軸受を固着したことを特徴とするアウターロータ型モータ。 - 前記スラスト軸受又は前記ロータハブの円盤状下面のいずれか一方に、回転に対して流体を前記ロータハブの外部から内部に取り入れて加圧するインフロー型のスパイラル溝を設けたことを特徴とする請求項1記載のアウターロータ型モータ。
- 前記スラスト軸受は、粘弾性体又は弾性体を介して前記円盤状下面又はベース板のいずれか一方に固着されていることを特徴とする請求項1又は請求項2記載のアウターロータ型モータ。
- 前記スラスト軸受又は前記ロータハブの円盤状下面のいずれか一方の摺動表面に潤滑機能剤をコーティングしたことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のアウターロータ型モータ。
- 前記アウターロータ型モータを内包するケーシングにヘリウム又はヘリウム主体の混合気体を封入密閉して、磁気ディスクドライブモータ又はポリゴンミラースキャナーモータとして使用したことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載のアウターロータ型モータ。
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