JP2005272412A - 苗の葉いもち防除のための潅注処理用薬液における有効成分としてのベンズイミダゾール系殺菌活性化合物の使用 - Google Patents
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Abstract
育苗期のいもち防除策として、苗いもちを抑制すると同時に、外部から飛散してきたいもち病菌胞子による苗の葉いもちをも防除対象とする防除方法が望まれている。
【解決手段】
苗の葉いもち防除のための潅注処理用薬液における有効成分としての細胞分裂阻害作用を有するベンズイミダゾール系殺菌活性化合物、育苗期のイネ苗に発生する葉いもちを防除する方法であって種子の播種時から苗の移植までに期間において当該殺菌活性化合物を有効成分として含有する潅注処理用薬液を育苗箱内の床土に対して当該育苗箱内の床土の最大容水量を100としたときにその土壌の容水量が50から100までの範囲になる液量の潅注処理を施すことを特徴とする方法、及び、当該殺菌活性化合物を有効成分として含有することを特徴とする育苗期のイネ苗に発生する葉いもちを防除するための潅注処理用薬液等。
【選択図】 なし
Description
現在、育苗期のいもち防除策として様々な薬剤を種子消毒して種子伝染性のいもち病を防除することが実施されている。これらの方法により「苗いもち」を抑制することができるが、外部から飛散してきたいもち病菌胞子による「苗の葉いもち」までは防除できるものではなかった。それ故、飛散してきたいもち病菌によって汚染された苗を本田に持ち込み、いもち病の大発生をまねく事例も散見される。
即ち、本発明は、
1.苗の葉いもち防除のための潅注処理用薬液における有効成分としての、細胞分裂阻害作用を有するベンズイミダゾール系殺菌活性化合物(以下、本殺菌活性化合物と記すこともある。)の使用(以下、本発明使用と記すこともある。);
2.細胞分裂阻害作用を有するベンズイミダゾール系殺菌活性化合物が、メチル1-(ブチルカルバモイル)ベンズイミダゾール−2−イルカーバメート、メチルベンズイミダゾール−2−イルカーバメート、ジメチル[(1,2-フェニレン)ビス−(イミノカルボノチオイル)]ビス[カーバメート]又は2,4−チアゾール−1H−ベンズイミダゾールであることを特徴とする前項1記載の使用;
3.育苗期のイネ苗に発生する葉いもちを防除する方法であって、種子の播種時から苗の移植までに期間において、細胞分裂阻害作用を有するベンズイミダゾール系殺菌活性化合物を有効成分として含有する潅注処理用薬液を、育苗箱内の床土に対して、当該育苗箱内の床土の最大容水量を100としたときにその土壌の容水量が50から100までの範囲になる液量の潅注処理を施すことを特徴とする方法(以下、本発明方法と記すこともある。);
4.細胞分裂阻害作用を有するベンズイミダゾール系殺菌活性化合物を有効成分として含有することを特徴とする育苗期のイネ苗に発生する葉いもちを防除するための潅注処理用薬液(以下、本発明薬液と記すこともある。);
5.潅注処理用薬液が、さらに他の殺菌活性化合物として、細胞分裂阻害作用を有するベンズイミダゾール系殺菌活性化合物以外の殺菌活性化合物を含有することを特徴とする前項1又は2記載の使用;
6.潅注処理用薬液が、さらに他の殺菌活性化合物として、細胞分裂阻害作用を有するベンズイミダゾール系殺菌活性化合物以外の殺菌活性化合物を含有することを特徴とする前項3記載の方法;
7.細胞分裂阻害作用を有するベンズイミダゾール系殺菌活性化合物以外の殺菌活性化合物が、ビス(ジメチルチオカルバモイル)ジスルフィド及び/又はテトラクロロイソフタロニトリルを含有することを特徴とする前項6記載の方法;
8.さらに他の殺菌活性化合物として、細胞分裂阻害作用を有するベンズイミダゾール系殺菌活性化合物以外の殺菌活性化合物を含有することを特徴とする前項4記載の潅注処理用薬液;
9.細胞分裂阻害作用を有するベンズイミダゾール系殺菌活性化合物以外の殺菌活性化合物が、ビス(ジメチルチオカルバモイル)ジスルフィド及び/又はテトラクロロイソフタロニトリルを含有することを特徴とする前項8記載の潅注処理用薬液;
等を提供するものである。
土壌の容水量=100×処理後の土壌水分含量/土壌の飽和水分含量
通常、土壌水分含量は、サンプル土壌の重量(W1とする。)を測定した後、105℃下で一昼夜置き、土壌中の水分を完全に蒸発させた後の土壌の重量(W2)を測定する。その後、以下の式により算出する。
土壌含水量=100×(W1-W2)/W1
本殺菌活性化合物であるベノミル50部を、ラウリル硫酸ナトリウム4部リグニンスルホン酸カルシウム2部、合成含水酸化珪素微粉末22部及び珪藻土22部を混合した中に加え、よく攪拌混合して水和剤を得る。得られた水和剤1gと500mLの水とをよく混合することにより、本発明薬液を調製する。
本殺菌活性化合物であるベノミル20部と、他の殺菌活性化合物であるクロロタロニル50部とを、ラウリル硫酸ナトリウム4部リグニンスルホン酸カルシウム2部、合成含水酸化珪素微粉末12部及び珪藻土12部を混合した中に加え、よく攪拌混合して水和剤を得る。得られた水和剤1gと400mLの水とをよく混合することにより、本発明薬液を調製する。
本殺菌活性化合物であるMBC10部とソルビタントリオエレート1.5部とを、ポリビニルアルコール2部を含む水溶液27部中に加え、よく攪拌混合し、次いでこれらの混合物をサンドグライダーで微粉砕(粒径3μm以下)した後、この中に、キサンタンガム0.05部及びアルミニウムマグネシウムシリケート0.1部を含む水溶液48部を加え、さらにプロピレングリコール15部を加えて攪拌混合してフロアブル剤を得る。得られたフロアブル剤5gと500mLの水とをよく混合することにより、本発明薬液を調製する。
本殺菌活性化合物であるMBC3部及び他の殺菌活性化合物であるクロロタロニル8部と、ソルビタントリオエレート1.5部とを、ポリビニルアルコール2部を含む水溶液26部中に加え、よく攪拌混合し、次いでこれらの混合物をサンドグライダーで微粉砕(粒径3μm以下)した後、この中に、キサンタンガム0.05部及びアルミニウムマグネシウムシリケート0.1部を含む水溶液48部を加え、さらにプロピレングリコール15部を加えて攪拌混合してフロアブル剤を得る。得られたフロアブル剤10gと500mLの水とをよく混合することにより、本発明薬液を調製する。
プラスチックカップに床土を詰め、イネ(コシヒカリ)種子の播種時に所定濃度に希釈された薬液を、育苗箱内の床土に対して、育苗箱当たり500mL換算量の液量(床土の最大容水量を100としたときにその土壌容水量が約100に相当する液量)の潅注処理を施した直後に、イネ種子を播種した。その後、当該イネを温室内で育成した。播種15日後に、外部からの飛散を想定していもち病菌胞子(5×103 spores/ml)をイネ苗に噴霧接種した。接種後は、イネ苗を多湿下に保ち、苗の葉いもちの発病を促した。接種12日後に、苗の葉いもちの発病苗率を調査し、各薬液における苗の葉いもちに対する防除価を算出した。
尚、比較対照として、ベノミル又はプロクロラズを用いた種子浸漬処理による種子消毒方法、及び、ベノミル(1000ppm)の代わりにプロクロラズ(250ppm)を用いたこと以外は上記と同様な育苗箱潅注処理による防除方法も同時に試験した。尚、後者の防除方法における殺菌活性化合物の供試濃度は、24時間種子浸漬処理における農薬登録上での当該殺菌活性化合物の濃度を基準とした。その結果を表1に示した。
本発明における方法は、比較対照における方法に比べて顕著に優れた苗の葉いもちに対する防除価を示した。つまり、育苗箱潅注処理による苗の葉いもちの防除効果は、種子消毒剤の有効成分として用いられる殺菌活性化合物であれば何でも併せ持つ性質ではなく、特定な殺菌活性化合物(即ち、本殺菌活性化合物)に特異的に存在する性質であることが明らかになった。
種子浸漬処理による種子消毒方法では、プロクロラズのフロアブル製剤が1000倍希釈された薬液に、いもち病菌保菌イネ(ヒノヒカリ)種子を24時間浸漬した後、当該イネ種子を1日間風乾することにより、消毒済みイネ種子を調製した。これを以下の試験で用いた。
プラスチックカップに床土を詰め、イネ(ヒノヒカリ)種子の播種時に所定濃度に希釈された薬液を、育苗箱内の床土に対して、育苗箱当たり500mL換算量の液量(床土の最大容水量を100としたときにその土壌容水量が約100に相当する液量)の潅注処理を施した直後に、上記の消毒済みイネ種子又は未消毒のいもち病菌保菌イネ種子を播種した。その後、当該イネを夜間のみ多湿条件(湿度90%以上)という環境条件下のもと自動開閉式発病装置内で育成した。播種37日後に、任意の60枚の葉を選抜して、当該葉における苗の葉いもちによる病斑数を調査し、各体系処理方法における1葉当たりの苗の葉いもちによる病斑数を算出した。その結果を表2に示した。
本発明における方法は、比較対照における方法に比べて顕著に優れた苗の葉いもちに対する防除効果を示した。さらに、種子消毒剤を用いてイネ種子を浸漬処理により消毒した後、さらにイネ種子に対して本発明を適用することでより効果的にかつ安定した苗の葉いもちの防除が得られることが判った。
プラスチックカップに床土を詰め、イネ(ヒノヒカリ)種子の播種時に所定濃度に希釈された薬液を、育苗箱内の床土に対して、育苗箱当たり500mL換算量の液量(床土の最大容水量を100としたときにその土壌容水量が約100に相当する液量)の潅注処理を施した直後に、未消毒のいもち病菌保菌イネ種子を播種した。その後、当該イネを夜間のみ多湿条件(湿度90%以上)という環境条件下のもと自動開閉式発病装置内で育成した。
一方、プラスチックカップに床土を詰め、薬液の潅注処理を施すことなく、未消毒のいもち病菌保菌イネ種子を播種した。その後、当該イネを夜間のみ多湿条件(湿度90%以上)という環境条件下のもと自動開閉式発病装置内で育成した。播種7日後に、イネ苗に所定濃度に希釈された薬液を、育苗箱内の床土に対して、育苗箱当たり500mL換算量の液量(床土の最大容水量を100としたときにその土壌容水量が約100に相当する液量)の潅注処理を施した。
上記のいずれの試験系においても、播種37日後に、任意の60枚の葉を選抜して、当該葉における苗の葉いもちによる病斑数を調査した。両処理方法における1葉当たりの苗の葉いもちによる病斑数を算出した。その結果を表3に示した。
いずれの本発明における方法でも、苗の葉いもちに対する優れた防除効果が判明した。つまり、本殺菌活性化合物と他の殺菌活性化合物とを含有する本発明薬液を用いた潅注処理も、本殺菌活性化合物のみを含有する本発明薬液を用いた潅注処理と同様な苗の葉いもち防除効果を期待できることが確認された。
Claims (9)
- 苗の葉いもち防除のための潅注処理用薬液における有効成分としての、細胞分裂阻害作用を有するベンズイミダゾール系殺菌活性化合物の使用。
- 細胞分裂阻害作用を有するベンズイミダゾール系殺菌活性化合物が、メチル1-(ブチルカルバモイル)ベンズイミダゾール−2−イルカーバメート、メチルベンズイミダゾール−2−イルカーバメート、ジメチル[(1,2-フェニレン)ビス−(イミノカルボノチオイル)]ビス[カーバメート]又は2,4−チアゾール−1H−ベンズイミダゾールであることを特徴とする請求項1記載の使用。
- 育苗期のイネ苗に発生する葉いもちを防除する方法であって、種子の播種時から苗の移植までに期間において、細胞分裂阻害作用を有するベンズイミダゾール系殺菌活性化合物を有効成分として含有する潅注処理用薬液を、育苗箱内の床土に対して、当該育苗箱内の床土の最大容水量を100としたときにその土壌の容水量が50から100までの範囲になる液量の潅注処理を施すことを特徴とする方法。
- 細胞分裂阻害作用を有するベンズイミダゾール系殺菌活性化合物を有効成分として含有することを特徴とする育苗期のイネ苗に発生する葉いもちを防除するための潅注処理用薬液。
- 潅注処理用薬液が、さらに他の殺菌活性化合物として、細胞分裂阻害作用を有するベンズイミダゾール系殺菌活性化合物以外の殺菌活性化合物を含有することを特徴とする請求項1又は2記載の使用。
- 潅注処理用薬液が、さらに他の殺菌活性化合物として、細胞分裂阻害作用を有するベンズイミダゾール系殺菌活性化合物以外の殺菌活性化合物を含有することを特徴とする請求項3記載の方法。
- 細胞分裂阻害作用を有するベンズイミダゾール系殺菌活性化合物以外の殺菌活性化合物が、ビス(ジメチルチオカルバモイル)ジスルフィド及び/又はテトラクロロイソフタロニトリルを含有することを特徴とする請求項6記載の方法。
- さらに他の殺菌活性化合物として、細胞分裂阻害作用を有するベンズイミダゾール系殺菌活性化合物以外の殺菌活性化合物を含有することを特徴とする請求項4記載の潅注処理用薬液。
- 細胞分裂阻害作用を有するベンズイミダゾール系殺菌活性化合物以外の殺菌活性化合物が、ビス(ジメチルチオカルバモイル)ジスルフィド及び/又はテトラクロロイソフタロニトリルを含有することを特徴とする請求項8記載の潅注処理用薬液。
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